説明

油圧ジャッキ

【課題】油圧ジャッキの設置安定性を向上させる。
【解決手段】油圧ジャッキの設置面となるベース10の下面に、平面視において、ベース10の範囲内に収まる収納位置と、ベース10の外縁から外方へと引き出した引出位置と、の間で移動可能な補助ベース50を取り付ける。補助ベース50としては、例えば、ベース10と同一形状の板材を、その図心を通る、直交する2つ線分で略等面積に4分割した分割体を採用することができる。そして、油圧ジャッキを使用するときに、補助ベース50を引出位置まで移動させることで、路面などに対する油圧ジャッキの設置範囲が拡大し、油圧ジャッキの設置安定性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体などの対象物をジャッキアップする油圧ジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
車体などの対象物をジャッキアップするため、特開2002−87767号公報(特許文献1)に記載されるような油圧ジャッキが知られている。この油圧ジャッキは、ポンプピストンの近傍を支点として揺動するハンドルを上下させることで、オイルタンクからシリンダにジャッキオイルを供給し、シリンダに嵌挿されたピストンを突出させて対象物をジャッキアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−87767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧ジャッキは、タイヤのパンクなどに備えて車載されるものであるため、路面などに載置するベースが小さくなっている。このため、路面などに油圧ジャッキを設置した状態では、その設置面積が小さいことから、例えば、対象物をジャッキアップするときに油圧ジャッキが傾き、その設置安定性が低下するおそれがあった。
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、設置安定性を向上させた油圧ジャッキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、油圧ジャッキの設置面となるベースの下面に、平面視において、前記ベースの範囲内に収まる収納位置と、前記ベースの外縁から外方へと引き出した引出位置と、の間で移動可能な補助ベースを取り付ける。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、油圧ジャッキを使用するときには、補助ベースを引出位置まで移動させることで、路面などに対する油圧ジャッキの設置範囲が拡大し、油圧ジャッキの設置安定性を向上させることができる。一方、油圧ジャッキを使用しないときには、補助ベースを収納位置まで移動させることで、油圧ジャッキの外形寸法が小さくなり、例えば、車載が困難となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を実施するための実施形態における油圧ジャッキの説明図
【図2】油圧ジャッキの油圧回路図
【図3】補助ベースの第1実施例を示し、(A)は収納時、(B)は使用時の説明図
【図4】補助ベースの第2実施例を示し、(A)は収納時、(B)は使用時の説明図
【図5】補助ベースの第3実施例を示し、(A)は収納時、(B)は使用時の説明図
【図6】補助ベースの第3実施例の変形例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付された図面を参照して、本発明を実施するための実施形態を詳述する。
図1は、本実施形態における油圧ジャッキの一例を示す。
路面などに載置される略矩形形状をなすベース10の上面には、その板面に対して垂直となるように、薄肉円筒形状をなすシリンダ12の基端が固定される。シリンダ12には、略円柱形状をなす中実又は中空のピストン14が往復動可能に嵌挿される。シリンダ12の先端から上方に突出するピストン14の先端には、例えば、対象物のジャッキポイントを支持する略円板形状をなすサドル16が取り付けられる。なお、サドル16は、公知のアジャスターを介してピストン14の先端に取り付けられてもよい。
【0009】
また、ベース10の上面には、シリンダ12と略同心に配置されつつこれを取り囲むように、上端が中心軸方向に向かって屈曲した略薄肉円筒形状をなすオイルタンク18の基端が固定される。そして、オイルタンク18は、その内周面,ベース10の上面及びシリンダ12の外周面により区画される領域に、作動油としてのジャッキオイル20を貯蔵する。
【0010】
さらに、ベース10の上面には、ベース10の上面,シリンダ12の内周面及びピストン14の下面により区画される作動室22にジャッキオイル20を供給するためのポンプピストン24が立設される。ポンプピストン24は、具体的には、ベース10の周縁の近傍であって、矩形の外縁を形成する縦辺又は横辺の中間(両端を除く位置)に立設される。ポンプピストン24から上方に突出するロッド24Aには、例えば、クレビスを介して、長尺形状のハンドル26を着脱可能に嵌合するハンドルスリーブ28の中間が揺動可能に連結される。また、ポンプピストン24を挟んでハンドル26の反対側に位置するベース10には、例えば、略矩形形状をなすリンク部材30の基端が揺動可能に連結されるブラケット32が立設される。そして、リンク部材30の先端は、ハンドルスリーブ28の先端に揺動可能に連結される。
【0011】
ポンプピストン24の作動室24Bは、図2に示すように、第1の油路34を介してオイルタンク18の下部に連通接続されると共に、第2の油路36を介してピストン14の作動室22に連通接続される。第1の油路34には、オイルタンク18からポンプピストン24へと向かう方向にのみ開弁する第1のチェックバルブ38が配設される一方、第2の油路36には、ポンプピストン24からピストン14の作動室22へと向かう方向にのみ開弁する第2のチェックバルブ40が配設される。また、ピストン14の作動室22は、リリースバルブ42が配設された連通路44を介して、オイルタンク18の下部に連通接続される。なお、第1の油路34,第2の油路36及び連通路44は、夫々、ベース10の内部に形成される。
【0012】
そして、ハンドル26を上方に動かすと、ポンプピストン24のロッド24Aが引き出され、その作動室24Bの容積が増大して負圧となることから、オイルタンク18に貯蔵されたジャッキオイル20が第1の油路38を介して作動室24Bに吸い込まれる。このとき、第2の油路36に配設された第2のチェックバルブ40が開弁しないため、ピストン14の作動室22に供給されたジャッキオイル20がポンプピストン24の作動室24Bに逆流することを阻止できる。一方、ハンドル26を下方に動かすと、ポンプピストン24のロッド24Aが押し込まれ、その作動室24Bの容積が減少して圧力が上昇することから、作動室24Bに吸い込まれたジャッキオイル20が第2の油路36を介してピストン14の作動室22に供給される。このとき、第1の油路34に配設された第1のチェックバルブ38が開弁しないため、ポンプピストン24の作動室24Bからオイルタンク18にジャッキオイル20が逆流することを阻止できる。このように、ハンドル26を連続して上下することで、オイルタンク18からピストン14の作動室22にジャッキオイル20が供給され、対象物がジャッキアップされる。なお、対象物をジャッキダウンするときには、リリースバルブ42を開弁させることで、ピストン14の作動室22に供給されたジャッキオイル20が連通路44を介してオイルタンク18に排出される。
【0013】
かかる油圧ジャッキの設置安定性を向上させるため、ベース10の下面に、図3に示すように、任意に引き出し可能な補助ベース50を取り付ける。即ち、ベース10の下面に、その矩形の交差する対角線に沿って移動可能なように、ベース10と同一形状をなす板材を複数、例えば、隣接する2辺に平行な線分で4分割した分割体からなる補助ベース50を取り付ける。補助ベース50は、同図(A)に示すように、平面視でベース10の範囲内に収まる「収納位置」と、同図(B)に示すように、ベース10の外縁から外方へと引き出された「引出位置」と、の間で移動できるようにする。ここで、ベース10に対する補助ベース50の取り付けは、例えば、ベース10に略T字断面をなす溝10Aを形成する一方、補助ベース50に略T字形状をなすピン50Aを立設し、溝10Aとピン50Aとを嵌合すればよい。
【0014】
そして、油圧ジャッキを使用するときには、図3(B)に示すように、補助ベース50を引出位置まで引き出すことで、路面などに対する油圧ジャッキの設置範囲が拡大し、油圧ジャッキの設置安定性を向上させることができる。一方、油圧ジャッキを使用しないときには、図3(A)に示すように、補助ベース50を収納位置まで移動させることで、油圧ジャッキの外形寸法が小さくなり、例えば、車載が困難となることを抑制できる。
【0015】
なお、補助ベース50は、多方向に対する油圧ジャッキの設置安定性を向上させるため、ベース10と同一形状の板材について、隣接する2辺に平行な線分であって、図心を通る線分で略等面積に4分割した形状とすることが望ましい。
補助ベース50は、図4に示すように、ベース10と同一形状の板材について、2つの対角線で4分割した略等面積の略三角形状とし、ベース10の図心を通る、隣接した2辺に平行な線に沿って移動可能としてもよい。
【0016】
また、補助ベース50は、図5に示すように、ベース10の四隅に回動可能に取り付けられた略矩形形状をなす4つの板材とし、これを同図(A)に示す「収納位置」と、同図(B)に示す「引出位置」と、の間で回動(移動)できるようにしてもよい。ここで、ベース10の下面に、補助ベース50を収納位置まで回動させたときに、これが嵌まりつつその下面まで突出する凸部10Bを形成することが望ましい。このようにすれば、ベース10の凸部10Bも油圧ジャッキの設置に資するため、例えば、設置に係る面圧が必要以上に増大することを抑制できる。また、補助ベース50は、多方向に対する油圧ジャッキの設置安定性を向上させるため、図6に示すように、ベース10の2つの対角線上を引出位置としてもよい。
【0017】
なお、本発明は、他の機構により対象物をジャッキアップする油圧ジャッキにも適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
10 ベース
10A 溝
10B 凸部
50 補助ベース
50A ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面となるベースの下面に、平面視において、前記ベースの範囲内に収まる収納位置と、前記ベースの外縁から外方へと引き出した引出位置と、の間で移動可能な補助ベースを取り付けたことを特徴とする油圧ジャッキ。
【請求項2】
前記ベースは、平面視で略矩形形状をなし、
前記補助ベースは、前記ベースと同一形状をなす板材を複数に分割した各分割体からなることを特徴とする請求項1記載の油圧ジャッキ。
【請求項3】
前記分割体は、前記板材をその図心を通る線分で略等面積に4分割したものであることを特徴とする請求項2記載の油圧ジャッキ。
【請求項4】
前記ベースは、平面視で略矩形形状をなし、
前記補助ベースは、前記ベースの四隅に回動可能に取り付けられた略矩形形状をなす4つの板材からなることを特徴とする請求項1記載の油圧ジャッキ。
【請求項5】
前記補助ベースは、前記ベースの2つの対角線上を引出位置とすることを特徴とする請求項4記載の油圧ジャッキ。
【請求項6】
前記ベースの下面には、前記補助ベースを収納位置に移動させたとき、該補助ベースが嵌りつつその下面まで突出する凸部が形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の油圧ジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−1322(P2012−1322A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138243(P2010−138243)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)