説明

油圧作動油

【課題】本発明の油圧作動油は、圧縮によるエネルギー損失が小さく、油圧回路に利用した際の応答性に優れ、油圧回路における省エネルギー、高速化および制御の高精密化を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、エステルを基油とする油圧作動油であって、前記エステルが2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルであり、前記カルボン酸エステルは、下記式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル骨格構造を含有する化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積弾性係数が高い油圧作動油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば建設機械や射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタなど、油圧作動油を有した各種の油圧機器が広く利用されている。これら油圧機器には、各種の油が利用されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、制振ダンパー用の作動油で、体積弾性係数が1.3以上、粘度指数が110以上、流動点が−25℃以下のもので、具体的にはポリα−オレフィン、ポリオールエステル、ポリエーテルを用いる構成が採られている。
特許文献2に記載のものは、圧縮機油、タービン油、作動油などの作動負荷の大きい潤滑系統に使用する潤滑油で、アルキルジフェニルやアルキルジフェニルエーテルを用いる構成が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−119672号公報
【特許文献2】特開平6−200277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧機器において、使用する油圧作動油における作用する圧力が20MPa以上に高くなると、圧縮による油圧作動油の体積減少に起因するエネルギーロスが無視できなくなる。そして、圧縮による油の体積変化率、およびこの体積変化率によるパワーロス(エネルギーロス)率は、圧縮圧力をP、体積弾性係数をKとすると、以下に示す式(I),(II)で表される。
【0006】
体積変化率=ΔP/K …(I)
パワーロス率=ΔP/(2K) …(II)
【0007】
例えば、体積弾性係数Kの値が1.4[GPa]の鉱物油を28[MPa]で使用すると、上述した式(I),(II)から、体積は2%収縮し、油圧エネルギーは1%弾性エネルギーとして鉱物油に保持されるが、この弾性エネルギーは回生されずに損失となってしまう。特に、慣性重量を低減するために窪んだピストンを備えたアキシャルピストンポンプにおいて、フルストロークでも吐出容量と同じデッドボリュームに設定された構成が広く利用されており、このような構成では2%のエネルギーロスとなってしまう。また、可変ストロークポンプで定圧あるいは定馬力で運転する構成では、大半が高圧低ストローク運転となるので、吐出容積が減少してデットボリュームが増大することとなり、パワーロスが最大定格入力の10%レベルに直ぐに到達してしまう。
一方、サーボ油圧制御回路の性能は、応答速度と安定性でほぼ決定され、サーボ油圧制御回路における制御ループの固有振動数ω0と、減衰係数Dとに依存する。そして、これら固有振動数ω0および減衰係数Dは、両者とも大きい方が好ましく、ともに体積弾性率K1/2に正比例するので、油圧作動油のK値の増大は油圧回路における作動の高速化や油圧制御の高精密化が図れることとなる。
これらのことから、油圧作動油のK値は高く設定する必要があることがわかる。しかしながら、従来の通常用いられる鉱物油系化合物や脂肪酸エステル系化合物、特許文献1に記載の通常の作動油基油では体積弾性係数Kが低い。また、含水系化合物やリン酸エステル系化合物では、体積弾性係数は比較的高いが、潤滑性や熱安定性に劣り、高温・高圧の厳しい条件では利用できない。
これらの含水系化合物やリン酸エステル系化合物は、難燃性作動油として使用されているほど、油圧作動油は工場火災に敏感なので、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの低分子化合物は、比較的体積弾性係数は高いが、引火点が低いため使用できない。最低でも、200℃以上の引火点は必要である。
油圧作動油には、その他の合成潤滑油を基油として用いることがあるが、その他の基油でも、特許文献2に記載のような体積弾性係数が高いポリフェニルエーテルは粘度指数が低く、低温流動性が悪く、さらには他の化合物に比して高価で、利用に適していない。
【0008】
本発明は、このような点を考慮して、体積弾性係数が高く、エネルギー損失を抑制し、油圧の応答性および安定性に優れた油圧作動油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油圧作動油においては、エステルを基油とする油圧作動油であって、芳香環および飽和ナフテン環から選ばれた少なくともいずれかの環構造を2個以上有することが必要である。
この構成によれば、芳香環および飽和ナフテン環から選ばれた少なくともいずれかの環構造を2個以上有するエステルを基油として用いるので、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性の高い油圧作動油を提供できる。
【0010】
本発明では、上述のエステルの好ましい構造として二塩基酸ジエステル、ジオールのジエステル、あるいはトリオールのジエステルまたはトリエステルが挙げられる。特に、これらのエステルにおいては、環構造のうち、少なくとも一つが芳香環であることがより好ましい。
この発明によれば、基油として上述の所定の構造のエステルを用いるので、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性により優れた油圧作動油を提供できる。
【0011】
また、本発明では、上述のエステルが2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルであることが好ましい。
この発明では、2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルを基油として用いるので、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性がより高い。すなわち、圧縮によるエネルギー損失が小さく、例えば油圧回路に利用した際の応答性に優れ、油圧回路における省エネルギー、高速化および制御の高精密化が得られる。さらに、密度が高いので、加圧下と常圧下との溶存ガス濃度の差が小さく、例えばリザーバタンクでの気泡の生成が少なく、また仮に気泡が発生しても気泡との比重差が大きく、気泡分離が容易で、気泡の発生による油圧制御の低下やキャビテーションおよびエロージョンの発生を防止できる。上記のように、本発明化合物は、低圧の油圧回路にも高性能で利用でき、汎用性に優れる。
【0012】
本発明に記載の油圧作動油は、上述したいずれかのエステルのカルボン酸部位および/またはアルコール部位に、少なくとも2つの芳香環を有するカルボン酸エステルを基油として含有することが必要である。
この発明では、基油としてのエステルがカルボン酸部位および/またはアルコール部位に、少なくとも2つの芳香環を有するので、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性がより高い。すなわち、圧縮によるエネルギー損失が小さく、例えば油圧回路に利用した際の応答性に優れ、油圧回路における省エネルギー、高速化および制御の高精密化が得られる。さらに、密度が高いので、加圧下と常圧下との溶存ガス濃度の差が小さく、例えばリザーバタンクでの気泡の生成が少なく、また仮に気泡が発生しても気泡との比重差が大きく、気泡分離が容易で、気泡の発生による油圧制御の低下やキャビテーションおよびエロージョンの発生を防止できる。上記のように、本発明化合物は、低圧の油圧回路にも高性能で利用でき、汎用性に優れる。
【0013】
そして、本発明に関連する発明では、前記カルボン酸エステルは、下記の一般式(1)で示される芳香族エステル骨格構造を含有する化合物である構成とすることが好ましい。
【0014】
【化1】


n,m:0または1
p,q:0ないし3の整数
X,Y:炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基
【0015】
このことにより、上記一般式(1)で示す芳香族エステル骨格構造のカルボン酸エステルを用いることで、摩擦係数を低く維持しつつ体積弾性係数を高くできるという特有の作用効果を奏する。
ここで、一般式(1)におけるnまたはmが2以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、n,mは、0または1の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
そして、一般式(1)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が必要以上に高くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(1)において、XおよびYは炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基である。ここで、XおよびYの総炭素数が31以上のアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また、XおよびYが炭素数13以上のシクロアルキル基、芳香族基では、動粘度が高くなり過ぎるとともに低温流動性が悪くなるという不都合が生じるおそれがある。
【0016】
また、本発明に関連する発明では、前記カルボン酸エステルは、下記の一般式(2)で示される安息香酸フェニル骨格構造を含有する化合物である構成とすることが好ましい。
【0017】
【化2】


p,q:0ないし3の整数
X,Y:炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基
【0018】
このことにより、上記一般式(2)で示す安息香酸フェニル骨格構造のカルボン酸エステルを用いることで、さらに体積弾性係数を高くできるという特有の作用効果を奏する。
ここで、一般式(2)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(2)において、XおよびYは、炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基である。ここで、XおよびYの総炭素数が31以上のアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また、XおよびYが炭素数13以上のシクロアルキル基、芳香族基では、動粘度が高くなり過ぎるとともに低温流動性が悪くなるという不都合が生じるおそれがある。
【0019】
また、本発明に関連する発明では、前記カルボン酸エステルは、下記の一般式(3)で示されるジオールの芳香族カルボン酸ジエステル骨格構造を含有する化合物である構成とすることが好ましい。
【0020】
【化3】


n,m:0または1
p,q:0ないし3の整数
,R:水素または炭素数1以上10以下のアルキル基
A:主鎖に酸素を含んでも良く,側鎖を持っていても良い炭素数2以上18以下のアルキレン基
【0021】
上記一般式(3)で示すジオールの芳香族カルボン酸ジエステル骨格構造のカルボン酸エステルを用いることで、さらに体積弾性係数を高くできるという特有の作用効果を奏する。
ここで、一般式(3)におけるnまたはmが2以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、n,mは、0または1の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(3)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(3)において、R,Rは,水素または炭素数1以上10以下のアルキル基である。ここで、RおよびRの炭素数がいずれも11以上のアルキル基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また、Aは、主鎖に酸素を含んでも良く、側鎖を持っていても良いが、炭素数19以上のアルキレン基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。
【0022】
また、本発明では、前記カルボン酸エステルは、下記の一般式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル骨格構造を含有する化合物である構成とすることを特徴とする。
【0023】
【化4】


j,k:0または1、n,m:0ないし2の整数
p,q:0ないし3の整数
,R:水素または炭素数1以上10以下のアルキル基
Z:側鎖を持っていても良い炭素数1以上18以下のアルキレン基
【0024】
上記一般式(4)で示す二塩基酸の芳香族アルコールジエステル骨格構造のカルボン酸エステルを用いることで、体積弾性係数を高く維持したまま粘度指数を高くできるという特有の作用効果を奏する。
ここで、一般式(4)におけるj,kが2以上の自然数、nまたはmが3以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、j,kは、0または1、n,mは、0ないし2の整数の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(4)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(4)において、R,Rは,水素または炭素数1以上10以下のアルキルである。ここで,RおよびRの総炭素数が11以上のアルキル基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また,Zは、側鎖を持っていても良いが、炭素数19以上のアルキレン基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。
【0025】
そして、本発明では、前記エステルを、基油として10質量%以上含有する構成とすることが好ましい。
この発明では、基油として、カルボン酸エステルを10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有する。
このことにより、体積弾性係数を高くできるという特有の作用効果を奏する。
ここで、カルボン酸エステルが10質量%未満では、体積弾性係数を高くする効果がほとんど現れないという不都合を生じるおそれがある。このため、カルボン酸エステルを10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有することが好ましい。
【0026】
本発明に関連する発明では、前記芳香環を持つエステルは1個以上のニトロ基を有することが好ましい。
この発明では、所定個数のニトロ基を有する芳香族エステルとすることで、さらに体積弾性係数が高くなる。このため、芳香族エステルを基油として含有する油圧作動油は、例えば、油圧装置に用いられた際には、圧縮されても体積収縮しにくい状態となるので、エネルギー損失が小さく、省エネルギーとなる。
【0027】
本発明のに関連する油圧作動油は、1個以上のニトロ基を有する芳香族エステルを基油として含有することを特徴とする。
本発明に関連する発明では、所定個数のニトロ基を有する芳香族エステルは体積弾性係数が高くなる。このため、芳香族エステルを基油として含有する油圧作動油は、例えば、油圧装置に用いられた際には、圧縮されても体積収縮しにくい状態となるので、エネルギー損失が小さく、省エネルギーとなる。
また、例えば、油圧装置にサーボ油圧制御回路が設けられる際には、油圧作動油は体積弾性係数が高いので制御ループの固有振動数ω0および減衰係数Dが大きくなる。このことにより、油圧の応答性および安定性に優れ、油圧回路の高速化および油圧制御の高精度化が得られる。
さらに、油圧作動油は密度が高いので、加圧下と常圧下との溶存ガス濃度の差が小さく、例えばリザーバタンクが油圧装置に設けられる際には、リザーバタンクでの気泡の生成が少なく、また仮に気泡が発生しても気泡との比重差が大きく、気泡分離が容易で、気泡の発生による油圧性能の低下やキャビテーションおよびエロージョンの発生を防止できる。このため、ポンプ寿命を延ばすことができる。上記のように、本発明の油圧作動油は低圧の油圧回路にも高性能で利用でき、汎用性に優れる。
【0028】
また、前記芳香族エステルは、ニトロ芳香族カルボン酸、ニトロフェノール、ニトロ芳香族アルコールのうち少なくともいずれかの化合物から誘導されるエステルであることが好ましい。
このような構成によれば、芳香族エステルは、ニトロ芳香族カルボン酸、ニトロフェノール、ニトロ芳香族アルコールのうち少なくともいずれかの化合物から誘導されたエステル化合物であるので、体積弾性係数を高くできるという特有の作用効果を良好に奏することができる。
なお、本発明の芳香族エステルは、通常のエステル化法で製造すればよく、特に制限されない。
芳香族エステルの原料としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物あるいはそれらの誘導体、アルコールあるいはそれらの誘導体が用いられる。
また、芳香族エステルの芳香環には、例えば、アルキル基などが置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。そして、アルキル基は、エステル化後に導入してもよく、エステル化前に導入していてもよい。
エステル化には、触媒を用いてもよく、また無触媒でエステル化してもよい。エステル化触媒としては、例えば、ルイス酸、有機酸、無機酸、これらの誘導体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、チタン酸テトライソプロピルなどのチタンアルコキシド、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化鉄、三フッ化ホウ素、これら誘導体、またはこれらの混合物などが挙げられる。
有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、これらの誘導体、またはこれらの混合物、スルホン酸型イオン交換樹脂などが挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸などが挙げられる。
【0029】
そして、前記ニトロ芳香族カルボン酸は、ニトロ安息香酸であることが好ましい。
このような構成によれば、ニトロ安息香酸から誘導された芳香族エステルは体積弾性係数がさらに高くなる。
【0030】
さらに前記芳香族エステルは、基油として10質量%以上含有されることが好ましい。
このような構成によれば、芳香族エステルの含有量を10質量%以上とすることで、体積弾性率を高くする効果をより奏することができる。よって、ニトロ安息香酸エステルの含有量は、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。さらに、ニトロ安息香酸エステルは基油の全量を構成していてもよい(100質量%)。
なお、本発明の油圧作動油と他の基油とを混合して用いる際、他の基油としては、大量に混合する場合には体積弾性係数が高い基油、例えば、フタル酸ベンジルイソノニルなどのフタル酸エステルや、イソフタル酸エステル、サリチル酸エステル、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、トリメリット酸エステルなどが混合物の体積弾性係数を高く維持できるため好ましいが、少量混合する場合には、パラフィン系やナフテン系などの鉱物油、ポリブテン、アルキルジフェニルエーテル、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ジエステルなど特に制限はなく何でも良い。
また、油圧作動油には、添加剤が混合されてもよい。添加剤としては、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄分散剤、摩擦低減剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、耐摩耗剤、消泡剤,極圧剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の油圧作動油は、高圧下で用いられる油圧回路の油圧作動油としての用途に限らず、合成潤滑油として用いてもよい。具体的な用途としては、切削油、研削油、圧延油、絞り加工油、打ち抜き油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、摺動面油、電気絶縁油、ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、エアーコンプレッサー油、タービン油、ギヤー油、圧縮機油、真空ポンプ油、軸受け油、熱媒体油、ミスト油、冷凍機油、ロックドリル油、ブレーキ油、またはトルクコンバーター油などに利用されてもよい。これらの用途における合成潤滑油として用いられた場合でも、本発明の油圧作動油は、前述した本発明の構成により、特に加圧される状況において優れた効果を発揮することができる。
【0032】
本発明の油圧作動油は、基油として、下記(a)〜(f)の性状を有することを特徴とする。
(a)動粘度(40℃):15〜100mm/s
(b)流動点:−10℃以下
(c)密度(15℃):1.0g/ml以上
(d)40℃で50MPaにおける正接体積弾性係数(K値):1.65GPa以上
(e)引火点:200℃以上
(f)構成元素:炭素、水素、酸素、および、窒素
【0033】
動粘度(40℃)が15mm/s未満になるとシール部分からの液漏れが多くなり、また、100mm/sを超えると流動抵抗が大きくなり過ぎて消費エネルギーが増大するため好ましくない。好ましい粘度範囲は装置により異なるため一概に決められないが、液漏れからの制限や潤滑性からの制限が許す限り、省エネルギーの観点からなるべく低い方が好ましい。
【0034】
流動点が−10℃より高くなると、冬場の工場内建屋においても固化し、機器の運転が不可能となるので好ましくない。流動点は−10℃より低いほど好ましいので下限はない。
【0035】
密度が1.0g/mlより低くなると、分子自由体積が小さくなるため体積弾性係数が低くなるので好ましくない。密度は高いほど好ましいので上限はない。
【0036】
40℃で50MPaにおける正接体積弾性係数(K値)が1.65GPaより低いと、通常の鉱物油やエステル基油に値が近くなり、圧縮エネルギー損失、油圧の応答性および安定性の改善効果が小さいので好ましくない。正接体積弾性係数は高いほど好ましいので上限はない。
【0037】
引火点が200℃を下回ると、工場での火災誘発危険性が高まるので好ましくない。
【0038】
構成元素は、環境適合性の観点から、廃液処理性や生分解性を付与するために、環境に優しい元素、すなわち炭素、水素、酸素、窒素の中から選ばれたものとすることが必要である。
【0039】
上記(f)構成元素:炭素、水素、酸素および窒素で、上記(c)および(d)を具備するためには、分子の原子密度を高くして、分子の自由体積を小さくする必要がある。分子の原子密度を高くするには、分子中に環構造を2個以上持つことが好ましく、さらに、そのうち1個以上は分子間力を増すために芳香族環を持つことが好ましい。分子の自由体積を小さくするには、分子間力を増やしてやれば良く、そのためにはエステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合、アミド結合、水酸基、ニトロ基、アミノ基などの導入や、環を構成する元素に酸素や窒素を導入して極性を持たせるのが有効である。しかし、過度に行うと、動粘度の極端な増加や、結晶化が起こり、上記(a)および(b)を逸脱してしまう。動粘度を100mm/s以下にするためには、分子構造により相違するので一概に決められないが、2環化合物の場合は分子量を約500以下、3環化合物の場合は分子量を約400以下にするのが目安であり、また動粘度を15mm/s以上にするためには、分子構造により相違するので一概に決められないが、分子量約200以上が目安である。流動点を−10℃以下にするには、結晶化を防ぐために分子中にアルキレン鎖などの柔軟構造を持たせたり、分子の対称性を崩したり、混合物にして凝固点降下を図ったりすると良い。上記(e)を具備するためには、最低でも分子量が約200以上必要である。この様な分子設計をすることにより、上記(a)〜(f)の性状を具備する作動油として好適な基油を製造することができる。
【0040】
本発明の油圧装置は、上述したいずれかの油圧作動油を用いることを特徴とする。
本発明の油圧装置によれば、上述したいずれかの油圧作動油を用いており、この油圧作動油は、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性がいずれも高い。それ故、本発明の油圧装置は、建設機械や射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタ、油圧式無段変速機、ロボット、工作機械など、比較的に高圧の油圧装置として好適である。
また、低圧の油圧機器の油圧回路、さらにはサーボ油圧制御回路、ダンパー、ブレーキシステム、パワーステアリングなどの油圧装置としても好適である。
さらに、油圧装置には油圧ポンプが備えられていてもよく、油圧ポンプとしては、例えば、ターボ式、容積式などでよく、また、ギアポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプ、アキシャルピストンポンプ、ラジアルピストンポンプなどである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について詳述する。
【0042】
〔基油の構成〕
本実施形態における油圧作動油の構成である組成としては、特定のエステルを基油として、必要に応じて添加剤が配合されたものである。
前記した特定のエステルとしては、芳香環および飽和ナフテン環から選ばれた少なくともいずれかの環構造を2個以上有するエステルが用いられる。このようなエステルの好ましい構造としては、二塩基酸ジエステル、ジオールのジエステル、あるいはトリオールのジエステルまたはトリエステルが挙げられる。特に、これらのエステルにおいては、環構造のうち、少なくとも一つが芳香環であることがより好ましい。
上述した本実施形態のエステルを合成する具体的な製造方法は後述するが、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物あるいはそれらの誘導体とアルコールあるいはそれらの誘導体とを反応させることで容易に得ることが可能である。
また、芳香環もしくはナフテン環には、アルキル基、ニトロ基あるいは水酸基が置換されていても良い。通常それらの置換基を含有した原料を用いるが、アルキル基の場合は,エステル化後にアルキル化しても良い。
原料の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ニトロ安息香酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそれらの誘導体など、脂環式カルボン酸としては、シクロヘキサンカルボン酸およびそれらの誘導体など、ニ塩基酸としてはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそれらの誘導体など、芳香族アルコールとしては、フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノールなど、脂環式アルコールとしては、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、ノルボルナンメタノール、ボルネオール、イソボルネオールなど、ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど、トリオールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパンなどがあるが、例示した原料に制約されるものではない。
また、安息香酸、サリチル酸、テレフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェノール、ベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、2−フェノキシエタノール、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの生分解性があるカルボン酸やアルコールを原料に用いれば,生分解性のエステルが得られる。
【0043】
本実施形態においては、特に、2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルを含有するものが好ましく用いられる。このようなカルボン酸エステルとしては、下記の一般式(1)で示される芳香族エステル骨格構造を含有する化合物と、下記の一般式(2)で示される安息香酸フェニル骨格構造を含有する化合物と、下記の一般式(3)で示されるジオールの芳香族カルボン酸ジエステル化合物と、下記の一般式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル化合物のうちの少なくともいずれか一つが適度な粘度性状を持ち体積弾性係数が高いので好ましい。
【0044】
【化5】


n,m:0または1
p,q:0ないし3の整数
X,Y:炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基
【0045】
【化6】


p,q:0ないし3の整数
X,Y:炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基
【0046】
【化7】


n,m:0または1
p,q:0ないし3の整数
,R:水素または炭素数1以上10以下のアルキル基
A:主鎖に酸素を含んでも良く,側鎖を持っていても良い炭素数2以上18以下のアルキレン基
【0047】
【化8】


j,k:0または1、n,m:0ないし2の整数
p,q:0ないし3の整数
,R:水素または炭素数1以上10以下のアルキル基
Z:側鎖を持っていても良い炭素数1以上18以下のアルキレン基
【0048】
そして、一般式(1)で示される芳香族エステル骨格構造を含有するカルボン酸エステルでは、nまたはmが2以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、n,mは、0または1の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
そして、一般式(1)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(1)において、XおよびYは炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基である。ここで、XおよびYの総炭素数が31以上のアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また、XおよびYが炭素数13以上のシクロアルキル基、芳香族基では、動粘度が高くなり過ぎるとともに低温流動性が悪くなるという不都合が生じるおそれがある。
【0049】
また、一般式(2)で示される安息香酸フェニル骨格構造を含有するカルボン酸エステルでは、pまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(2)において、XおよびYは炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基である。ここで、XおよびYの総炭素数が31以上のアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また、XおよびYが炭素数13以上のシクロアルキル基、芳香族基では、動粘度が高くなり過ぎるとともに低温流動性が悪くなるという不都合が生じるおそれがある。
【0050】
ここで、一般式(3)で示されるジオールの芳香族カルボン酸ジエステル骨格構造を含有するカルボン酸エステルでは、nまたはmが2以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、n,mは、0または1の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(3)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(3)において、R,Rは,水素または炭素数1以上10以下のアルキル基である。ここで、RおよびRの総炭素数が11以上のアルキル基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また,Aが主鎖に酸素を含んでも良く、側鎖を持っていても良い炭素数19以上のアルキレン基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。
【0051】
ここで、一般式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル骨格構造を含有するカルボン酸エステルでは,j,kが2以上の自然数、nまたはmが3以上の自然数となると、体積弾性係数が低くなるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、j,kは、0または1、n,mは、0ないし2の整数の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(4)におけるpまたはqが4以上の自然数となると、動粘度が高くなり過ぎるという不都合が生じるおそれがある。このことにより、p,qは0ないし3の値となるカルボン酸エステルが用いられる。
また、一般式(4)において、R,Rは,水素または炭素数1以上10以下のアルキル基である。ここで、RおよびRの総炭素数が11以上のアルキル基では、動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。また,Zが側鎖を持っていても良い炭素数19以上のアルキレン基では,動粘度が高くなり過ぎるという不都合を生じるおそれがある。
【0052】
なお、2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルの製造方法は、特に制限はなく、通常の各種のエステル化の製造方法が適用できる。
例えば、原料としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物あるいはそれらの誘導体アルコールあるいはそれらの誘導体が用いられる。また、アルキル基は、エステル化後にアルキル化してもよく、また、最初からアルキル化された原料を用いてもよい。
そして、エステル化触媒としては、特に制限はなく、また無触媒でエステル化してもよい。
【0053】
そして、基油として、カルボン酸エステルを10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有する。
ここで、カルボン酸エステルが10質量%未満では、体積弾性係数を高くする効果がほとんど現れないという不都合を生じるおそれがある。このため、カルボン酸エステルを10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有することが好ましい。
【0054】
〔添加剤〕
そして、油圧作動油は、本発明の目的、すなわち体積弾性係数が高く油圧回路に用いた場合のエネルギー損失を抑制でき良好な作動効率が得られれば、各種の添加剤を適宜配合できる。
添加剤としては、例えば粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄分散剤、摩擦低減剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、耐摩耗剤、消泡剤,極圧剤などが適宜用いられる。
【0055】
粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系共重合体、分散型オレフィン系共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体などのスチレン系共重合体が、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。これら粘度指数向上剤としては、通常、0.5質量%以上10質量%以下で配合される。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤、ジアルキルチオジプロピオネート、ジアルキルジチオカルバミン酸誘導体(金属塩は除く)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、メルカプトベンゾチアゾール、五硫化リンとオレフィンとの反応生成物、硫化ジセチルなどの硫黄系酸化防止剤が、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。特に、フェノール系やアミン系のもの、あるいはアルキルジチオリン酸亜鉛、さらにはそれらの混合物などが好ましく用いられる。これら酸化防止剤は、通常、0.1質量%以上10質量%以下で配合される。
【0056】
清浄分散剤としては、例えばアルケニルコハク酸イミドが用いられる。これら清浄分散剤としては、通常、0.1質量%以上10質量%以下で配合される。
金属不活性化剤としては、例えばベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどが、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。これら金属不活性化剤は、通常、0.1質量%以上5質量%以下で配合される。
流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレートなどが用いられる。この流動点降下剤は、通常、0.5質量%以上10質量%以下で配合される。
耐摩耗剤としては、例えばアルキルジチオリン酸亜鉛が用いられる。これら耐摩耗剤としては、通常、0.1質量%以上10質量%以下で配合される。
消泡剤としては、例えばシリコーン系化合物、エステル系化合物などが、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。これら消泡剤は、通常、0.01質量%以上1質量%以下で配合される。
極圧剤としては、例えばリン酸トリクレジルが用いられる。これら極圧剤としては、通常、0.1質量%以上10質量%以下で配合される。
【0057】
〔作用効果〕
本実施形態によれば、芳香環および飽和ナフテン環から選ばれた少なくともいずれかの環構造を2個以上有するエステルを基油として用いるので、体積弾性係数、潤滑性および熱安定性の高い油圧作動油を提供できる。
特に、2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルを基油として用いた場合、圧縮によるエネルギー損失が小さく、例えば油圧機器の油圧回路に利用した際の応答性に優れ、油圧回路における省エネルギー、高速化および制御の高精密化が得られる。さらに、密度が高いので、加圧下と常圧下との溶存ガス濃度の差が小さく、例えばリザーバタンクでの気泡の生成が少なく、また仮に気泡が発生しても気泡との比重差が大きく、気泡分離が容易で、気泡の発生による油圧制御の低下やキャビテーションおよびエロージョンの発生を防止できる。このように、本実施形態の化合物は、低圧の油圧回路にも高性能で利用でき、汎用性に優れる。
【0058】
そして、カルボン酸エステルとしては、上述した一般式(1)で示される芳香族エステル骨格構造を含有する化合物と、一般式(2)で示される安息香酸フェニル骨格構造を含有する化合物と、一般式(3)で示されるジオールの芳香族カルボン酸ジエステル化合物と、一般式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル化合物のうちの少なくともいずれか一つが好ましく用いられる。このため、体積弾性係数が高いという特有の作用効果を奏する。
特に、一般式(1)、(2)におけるXおよびYは炭素数1以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキル基、または、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基または芳香族基、あるいは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルオキシカルボニル基、もしくは、炭素数2以上30以下のシクロアルキル基または芳香族基を含んでもよいアルキルカルボニルオキシ基のいずれかのカルボン酸エステルを用いることで、一般式(3)、(4)におけるR,Rは、水素または炭素数1以上10以下のアルキル基にすることで、さらに一般式(3)におけるAは主鎖に酸素を含んでも良く、側鎖を持っていても良い炭素数2以上18以下のアルキレン基にすることで、一般式(4)におけるZは側鎖を持っていても良い炭素数1以上18以下のアルキレン基とすることでより適度な粘性の化合物が得られるという特有の作用効果を奏する。
【0059】
また、油圧作動基油として、カルボン酸エステルを10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有すると、体積弾性係数をより高くできるという特有の作用効果を奏する。
【0060】
従って、本実施形態の作動油圧油は、建設機械や射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタ、油圧式無段変速機、ロボット、工作機械など、比較的に高圧の油圧装置としての油圧機器における油圧装置である油圧回路に用いる油圧作動油として好適に使用できる。また、低圧の油圧機器の油圧回路、さらにはサーボ油圧制御回路、ダンパー、ブレーキシステム、パワーステアリングなどにも好適に適用できる。
【0061】
なお、本第1実施形態の油圧作動油において、基油に含まれる芳香環を持つエステルは、その何れかに1個以上のニトロ基を備えているものとしてもよい。
このように、所定個数のニトロ基を有する芳香族エステルとすることで、さらに体積弾性係数が高くなる。このため、芳香族エステルを基油として含有する油圧作動油は、例えば、油圧装置に用いられた際には、圧縮されても体積収縮しにくい状態となるので、エネルギー損失が小さく、省エネルギーとなる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について詳述する。
なお、本実施形態では、前述した第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0063】
〔基油の構成〕
本実施形態の油圧作動油は、1個のニトロ基を有するニトロ安息香酸エステルを基油として含有する合成潤滑油、あるいは必要に応じてニトロ安息香酸エステル以外の基油との混合物から構成されている。
ニトロ安息香酸エステルの原料としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物あるいはそれらの誘導体、アルコールあるいはそれらの誘導体が用いられる。
また、ニトロ安息香酸エステルの芳香環には、アルキル基などが置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。アルキル基はエステル化後にアルキル化してもよく、エステル化前にアルキル化していてもよい。
ニトロ安息香酸エステルの合成には、無触媒でも良いが、通常エステル化触媒が用いられ、エステル化触媒としては、例えば、ルイス酸、有機酸、無機酸、これらの誘導体、およびこれらの混合物などが用いられる。
ルイス酸としては、例えば、チタン酸テトライソプロピルなどのチタンアルコキシド、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化鉄、三フッ化ホウ素、これら誘導体、およびこれらの混合物などが用いられる。
有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、これらの誘導体、およびこれらの混合物、スルホン酸型イオン交換樹脂などが用いられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸などが用いられる。
【0064】
ニトロ安息香酸エステルの含有量は、10質量%以上である。
ニトロ安息香酸エステルの含有量を10質量%以上とすることで、体積弾性係数を高くする効果をより奏することができる。よって、ニトロ安息香酸エステルの含有量は、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。さらに、ニトロ安息香酸エステルは基油の全量を構成していてもよい(100質量%)。
【0065】
ニトロ安息香酸エステル以外の基油としては、大量に混合する場合には体積弾性係数が高い基油、例えば、フタル酸ベンジルイソノニルなどのフタル酸エステルや、イソフタル酸エステル、サリチル酸エステル、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、トリメリット酸エステルなどが混合物の体積弾性係数を高く維持できるため好ましいが、少量混合する場合には、パラフィン系やナフテン系などの鉱物油、ポリブテン、アルキルジフェニルエーテル、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ジエステルなど特に制限はなく何でも良い。
【0066】
〔添加剤〕
また、油圧作動油に含有される添加剤としては、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄分散剤、摩擦低減剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、耐摩耗剤、消泡剤、極圧剤などが適宜用いられる。
なお、前記各添加剤は、前述した第1実施形態と重複するため本実施形態においてはその説明を省略する。
本第2実施形態においては、油圧作動油に含有される合成潤滑油の基油として、前述した第1実施形態の芳香環を有するカルボン酸エステルなど他の基油を含有させる構成も考えられる。しかしながら、基油としてニトロ基を有する芳香族エステルを単独で含有させる構成とすることにより体積弾性係数をより高くすることができる。
【0067】
〔作用効果〕
本実施形態によれば、油圧装置に用いられる油圧作動油は、1個のニトロ基を有するニトロ安息香酸エステルを基油とした合成潤滑油を含有する。
このため、ニトロ安息香酸エステルは体積弾性係数が高いので、圧縮されても体積収縮しにくい状態となる。このため、エネルギー損失が小さくなり、省エネルギーとなる。
また、油圧装置にはサーボ油圧制御回路が設けられており、体積弾性係数が高いので制御ループの固有振動数ω0および減衰係数Dが大きくなる。このことにより、油圧回路の応答性および油圧制御の安定性に優れ、作動の高速化および高精度化が得られる。
さらに、本実施形態の油圧作動油に含有される合成潤滑油は密度が高いので、加圧下と常圧下との溶存ガス濃度の差が小さく、リザーバタンクでの気泡の生成が少なく、また仮に気泡が発生しても気泡との比重差が大きく、気泡分離が容易で、気泡の発生による油圧性能の低下やキャビテーションおよびエロージョンの発生を防止できる。そして、ポンプ寿命を延ばすことができる。上記のように、本実施形態の油圧作動油に含有される合成潤滑油は低圧の油圧回路にも高性能で利用でき、汎用性に優れる。
【0068】
また、ニトロ安息香酸エステルは基油として10質量%以上含有されている。
このため、ニトロ安息香酸エステルが基油として特定の含有量で含有されているので、体積弾性係数を高くする効果をより奏することができる。
【0069】
従って、本実施形態の油圧作動油は、建設機械や射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタなどの油圧機器に設けられた比較的に高圧の油圧装置に用いられる油圧作動油として好適に使用できる。また、ダンパー、ショックアブソーバーなど低圧の油圧装置にも好適に適用できる。
【0070】
<実施形態の変形例>
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様をそれぞれ示したものであって、本発明は、前記した第1および第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造や組成などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や組成としても問題はない。
すなわち、前記第1実施形態では、添加剤を適宜配合する構成を例示したが、添加剤を用いなくともよい。
【0071】
また、前記第2実施形態の合成潤滑油におけるニトロ安息香酸エステルは、ニトロ基を1個有するニトロ安息香酸エステルとしたが、例えば、メタ(m)―ニトロ安息香酸、オルト(o)―ニトロ安息香酸、パラ(p)―ニトロ安息香酸、これらの誘導体、これらの混合物でもよい。
そして、前記第2実施形態では、添加剤を適宜添加する構成を例示したが、添加剤を用いなくてもよい。
さらに、前記第2実施形態のニトロ安息香酸エステルは、基油として10質量%以上含有する構成を例示したが、含有量が10質量%未満であってもよい。
また、前記第2実施形態の油圧装置はサーボ油圧制御回路、アクチュエータおよびリザーバタンクを備える構成を示したが、適宜サーボ油圧制御回路およびリザーバタンクを省略した構成としてもよい。
【実施例】
【0072】
次に、実施例および比較例を挙げて、前述した本発明の第1および第2実施形態をさらに詳しく説明する。
なお、本発明は、これらの実施例などの記載内容に何ら制限されるものではない。
【0073】
<第1実施形態の実施例>
{試料の調製}
上述した第1実施形態における油圧作動油の性能を確認する実験を実施した。実験としては、以下の条件で調製した各種の油圧作動油を用いて、それぞれの物性、すなわち、動粘度、粘度指数、密度、流動点および正接体積弾性係数を測定し、比較評価した。
動粘度はJIS K 2283の方法により測定し、粘度指数はJIS K 2283の方法により算出した。
密度は、JIS K 2249の方法により測定した。
流動点は、JIS K 2269の方法により測定した。
正接体積弾性係数は、高圧密度測定により求めた40℃、50MPaにおける値とした。なお、高圧密度測定は、以下に示す構造の佐賀大式プランジャ型高圧密度計を用い、常圧から200MPaまで段階的に加圧して、40℃で測定した。なお、容器内の油圧作動油の体積は、プランジャの変位をリニアゲージで検出して求めた。
・シリンダ:Ni−Cr−Mo鋼製 外径80.0mm 内径29.93mm
・プランジャおよびプラグ:Cr−Mo鋼製
・高圧シール:ベリリウム銅製
これらの物性の結果を、表1ないし表4に示す。
【0074】
(実施例1−1)
2リットルの四つ口フラスコに、フタロイルクロライド(東京化成工業株式会社製 試薬)203g、トルエン(東京化成工業株式会社製 試薬)600ml、トリエチルアミン(東京化成工業株式会社製 試薬)225gを入れ、攪拌しつつフェノール(東京化成工業株式会社製 試薬)60gとn−ドデカノール(東京化成工業株式会社製 試薬)254gとの混合物を40℃で4時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、メタノール(東京化成工業株式会社製 試薬)30mlを添加して酸塩化物を十分に反応させた。
この後、飽和食塩水による洗浄、および、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液による洗浄をそれぞれ3回ずつ実施した後、無水硫酸マグネシウム(東京化成工業株式会社製 試薬)で乾燥した。さらに、硫酸マグネシウムを濾過した後、エバポレータでトルエンを留去し、減圧蒸留により沸点215〜237℃/(0.1mmHg)留分140gを得た。
この留分を、ガスクロマトグラフィにより分析した結果、フタル酸フェニルドデシル84質量%と、フタル酸ジドデシル16質量%との混合物であった。
この混合物を実施例1−1として、上述した物性を測定した。
【0075】
(実施例1−2)
実施例1−1におけるフタロイルクロライド203gに代えて、イソフタロイルクロライド(東京化成工業株式会社製 試薬)203gを用いて実施例1−1と同様に調製し、沸点223〜241℃/(0.1mmHg)留分130gを得た。
この留分を実施例1−1と同様に分析した結果、イソフタル酸フェニルドデシル37質量%と、イソフタル酸ジドデシル63質量%との混合物であった。
この混合物を実施例1−2として、同様に物性を求めた。
【0076】
(実施例1−3)
実施例1−1におけるフェノール60gとn−ドデカノール254gとの混合物の代わりに、m−クレゾール(東京化成工業株式会社製 試薬)71gとn−ドデカノール254gとの混合物を用いて実施例1−1と同様に調製し、沸点224〜237℃/(0.1mmHg)留分140gを得た。
この留分を実施例1−1と同様に分析した結果、フタル酸クレジルドデシル71質量%とフタル酸ジドデシル29質量%との混合物であった。
この混合物を実施例1−3として、同様に物性を求めた。
【0077】
(実施例1−4)
1リットルのディーン・スターク(Dean-Stark)装置付の四つ口フラスコに、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業株式会社製 試薬)194g、ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)140g、n−ドデカノール220g、チタン酸テトライソプロピル(東京化成工業株式会社製 試薬)0.2gを入れ、窒素気流で攪拌しつつ、メタノールを留去しながら140℃で4時間反応させた。この後、飽和食塩水による洗浄、および、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液による洗浄をそれぞれ3回ずつ実施した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、硫酸マグネシウムを濾過した後、減圧蒸留により沸点211〜230℃/(0.1mmHg)留分206gを得た。
この留分を実施例1−1と同様に分析した結果、イソフタル酸ジベンジル59質量%と、イソフタル酸ベンジルドデシル35質量%と、イソフタル酸ジドデシル6質量%との混合物であった。
この混合物を実施例1−4として、同様に物性を求めた。
【0078】
(実施例1−5)
まず、ドデシルフェノールを調製した。具体的には、2リットルの四つ口フラスコに、フェノール325g、乾燥した活性白土(水澤化学工業株式会社製 商品名;ガレオナイト♯136)30gを入れ、攪拌しつつ135℃で4時間かけて1−ドデセン575gを滴下して反応させた。そして、活性白土を濾過した後、減圧蒸留によりドデシルフェノール537gを得た。
そして、調製したドデシルフェノールを用いて、安息香酸エステルを調製した。具体的には、2リットルの四つ口フラスコに、ベンゾイルクロライド(東京化成工業株式会社製 試薬)121g、トルエン500ml、トリエチルアミン95gを入れ、攪拌しつつ先に調製したドデシルフェノール225gを40℃で3時間掛けて滴下し、さらに1時間攪拌した後、メタノール30mlを添加して酸塩化物を十分に反応させた。
この後、飽和食塩水による洗浄、および、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液による洗浄をそれぞれ3回ずつ実施した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、硫酸マグネシウムを濾過した後、エバポレータでトルエンを留去し、減圧蒸留により沸点213〜219℃/(0.1mmHg)留分145gを得た。
この留分を実施例1−1と同様に分析した結果、o−ドデシルフェノールのエステル60質量%とp−ドデシルフェノールのエステル40質量%との混合物であった。
この混合物を実施例1−5として、同様に物性を求めた。
【0079】
(実施例1−6)
500mlのディーン・スターク装置付の四つ口フラスコに、サリチル酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)25g、n−ドデカノール31g、チタン酸テトライソプロピル0.1gを入れ、窒素気流で攪拌しつつ、メタノールを留去しながら220℃で2時間反応させた。室温まで冷却した後、トルエン150ml、トリエチルアミン28gを入れ、攪拌しつつベンゾイルクロライド30gを40℃で30分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、メタノール20mlを添加して酸塩化物を十分に反応させた。
この後、飽和食塩水による洗浄、および、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液による洗浄をそれぞれ3回ずつ実施した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、硫酸マグネシウムを濾過した後、減圧蒸留により沸点220℃/(0.1mmHg)留分46gを得た。
この留分を実施例1−1と同様に分析した結果、o−ベンゾイルオキシ安息香酸ドデシルであった。
この化合物を実施例1−6として、同様に物性を求めた。
【0080】
(実施例1−7)
実施例1−6におけるサリチル酸メチル25gとn−ドデカノール31gとの代わりに、p−ヒドロキシ安息香酸メチル25gと2−ブチルオクタノール31gとを用いて実施例1−6と同様に調製し、p−ベンゾイルオキシ安息香酸2−ブチルオクチル48gを得た。
この化合物を実施例1−7として、同様に物性を求めた。
【0081】
(実施例1−8)
500mlのディーン・スターク装置付の四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチル120g、ベンジルアルコール80g、2−ヘキシルデカノール190g、チタン酸テトライソプロピル0.2gを入れ、窒素気流で攪拌しつつ、メタノールを留去しながら140℃で4時間反応させた。
この後、飽和食塩水による洗浄、および、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液による洗浄をそれぞれ3回ずつ実施した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、硫酸マグネシウムを濾過した後、減圧下で未反応アルコールを留去し、テレフタル酸ジベンジル5質量%、テレフタル酸ベンジル2−ヘキシルデシル45質量%、および、テレフタル酸ジ2−ヘキシルデシル50質量%の混合物を得た。
この混合物を実施例1−8として、同様に物性を求めた。
【0082】
(実施例1−9)
フタル酸ベンジルイソノニル(東京化成工業株式会社製 試薬)を実施例1−9として、同様に物性を求めた。
【0083】
(実施例1−10)
1リットルのディーン・スターク装置付き四つ口フラスコにアゼライン酸(東京化成工業株式会社製 試薬)125g、ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)130g、2−フェネチルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)100g、混合キシレン80ml(東京化成工業株式会社製 試薬)、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.1gを入れ、窒素気流攪拌下に水を留去しながら165℃で4時間反応させた。その後、飽和食塩水洗浄、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後、無水硫酸マグネシウム(東京化成工業株式会社製 試薬)で乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後、過剰の原料アルコールを留去して、ジベンジルエステル29質量%、ベンジルフェネチルエステル質量50%、ジフェネチルエステル21質量%のエステル混合物を160g得た。
この混合物を実施例1−10として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0084】
(実施例1−11)
500ミリリットルのディーン・スターク装置付き四つ口フラスコにフェニル酢酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)180g、ジエチレングリコール(東京化成工業株式会社製 試薬)43g、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.1gを入れ、窒素気流攪拌下にメタノールを留去しながら150℃で4時間反応させた。実施例1−10と同様の後処理をすることにより、ジエチレングリコールのフェニル酢酸ジエステルを98g得た。
このエステルを実施例1−11として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0085】
(実施例1−12)
実施例1−11で、フェニル酢酸メチル180g、ジエチレングリコール43gの代わりに、フェニル酢酸メチル225g、グリセリン27gを用い200℃で7時間反応させた事以外は同様に行って、グリセリンのフェニル酢酸トリエステルを70g得た。
このエステルを実施例1−12として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0086】
(実施例1−13)
実施例1−11で、フェニル酢酸メチル180g、ジエチレングリコール43gの代わりに、フェニル酢酸メチル120g、安息香酸メチル55g、1,4−ブタンジオール36gを用いた事以外は同様に行って、1,4−ブタンジオールのフェニル酢酸ジエステル48%、1,4−ブタンジオールのフェニル酢酸と安息香酸のエステル42質量%,1,4−ブタンジオールの安息香酸ジエステル10質量%の混合物を80g得た。
この混合物を実施例1−13として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0087】
(実施例1−14)
実施例1−10で、2−フェネチルアルコール100gの代わりに、2−ノルボルナンメタノール150gを用いた事以外は同様に行って、ジベンジルエステル20質量%、ベンジルノルボルニルメチルエステル47質量%,ジノルボルニルメチルエステル33質量%のエステル混合物を155g得た。
この混合物を実施例1−14として、同様に物性を求めた。
【0088】
(実施例1−15)
実施例1−10で、ベンジルアルコール130g、2−フェネチルアルコール100gの代わりに、ベンジルアルコール100g、2−フェノキシエタノール110g(東京化成工業株式会社製 試薬)、2-エチルヘキサノール40g(東京化成工業株式会社製 試薬)を用いた事以外は同様に行って、ジフェノキシエチルエステル17質量%、ベンジルフェノキシエチルエステル31質量%、ジベンジルエステル16質量%、フェノキシエチルエチルヘキシルエステル17質量%、ベンジルエチルヘキシルエステル15質量%、ジエチルヘキシルエステル4質量%のエステル混合物を165g得た。
この混合物を実施例1−15として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0089】
(実施例1−16)
500ミリリットルのディーン・スターク装置付き四つ口フラスコに安息香酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)245g、トリエチレングリコール(東京化成工業株式会社製 試薬)36g、テトラエチレングリコール(東京化成工業株式会社製 試薬)70g、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.1gを入れ、窒素気流攪拌下にメタノールを留去しながら150℃で4時間反応させた。実施例1−10と同様の後処理をすることにより、トリエチレングリコールの安息香酸ジエステル40質量%とテトラエチレングリコールの安息香酸ジエステル60質量%のエステル混合物を170g得た。
このエステルを実施例1−16として、同様に物性を求めた。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表3に併記する。
【0090】
(比較例1−1)
パラフィン系鉱物油(出光興産株式会社製 商品名;ダイアナフレシアP90)を比較例1−1として、同様に物性を求めた。
また、本鉱物油を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表4に併記する。
【0091】
(比較例1−2)
ポリブテン(出光興産株式会社製 商品名;出光ポリブテン5H)を比較例1−2として、同様に物性を求めた。
また、本ポリブテンを、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表4に併記する。
【0092】
(比較例1−3)
2リットルのディーン・スターク装置付き四つ口フラスコに無水ピロメリット酸218g、nーオクタノール650g,チタンテトライソプロポキシド0.2g、キシレン300ミリリットルを入れ,窒素気流攪拌下に水を留去しながら160℃で4時間反応させた。その後,飽和食塩水洗浄,0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後,無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後,減圧下に未反応アルコールを留去し,残分としてピロメリット酸テトラオクチル630gを得た。得られた化合物を比較例1−3として、同様に物性を求めた。
【0093】
(比較例1−4)
アルキルジフェニルエーテル(株式会社松村石油研究所製 商品名;モレスコハイルーブLB−68)を比較例1−4として、同様に物性を求めた。
【0094】
(比較例1−5)
ペンタフェニルエーテル(株式会社松村石油研究所製 商品名;S−3105)を比較例1−5として、同様に物性を求めた。
また、本エーテルを、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表4に併記する。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
これら表1ないし表4に示す結果からわかるように、潤滑油として利用される比較例1−1のパラフィン系鉱物油および合成油である比較例1−2では、体積弾性係数が低い。また、生分解性も低い。エステルである比較例1−3でも芳香環を一つしか有していないので体積弾性係数が低い。さらに、ジフェニルエーテルである比較例1−4でも体積弾性係数は低い。また、ペンタフェニルエーテルである比較例1−5では、体積弾性係数は高いが、動粘度および流動点が高く、かつ粘度指数が低く、油圧作動油としての利用に適していない。また、生分解性も低い。
一方、実施例1−1ないし実施例1−16の各カルボン酸エステルでは、動粘度および流動点が比較的に低いとともに粘度指数が比較的に高く、油圧作動油として適用できるとともに、体積弾性係数が比較的に高く、圧縮によるエネルギー損失が小さく、油圧回路における効率的な作動が得られることがわかる。
【0100】
<第2実施形態の実施例>
{試料の調製}
上述した第2実施形態における油圧作動油の性能を確認する実験を実施した。実験としては、前述した第1実施形態の実施例と同様の条件で調製した各種の油圧作動油を用いて、それぞれの物性、すなわち、動粘度、粘度指数、密度、流動点および正接体積弾性係数を測定し、比較評価した。
これらの物性の結果を、表5ないし表7に示す。
【0101】
(実施例2−1)
500ミリリットルのディーン・スターク(Dean-Stark)装置付き四つ口フラスコに、m−ニトロ安息香酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)120g,ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)60g,2−フェネチルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)55g、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.1gを入れ,窒素気流攪拌下にメタノールを留去しながら155℃で4時間反応させた。その後,飽和食塩水洗浄,0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後,無水硫酸マグネシウム(東京化成工業株式会社製 試薬)で乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後,過剰の原料アルコールを留去して,残分145gを得た。
この残分をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、m−ニトロ安息香酸ベンジル50質量%と、m−ニトロ安息香酸フェネチル50質量%との混合物であった。
この混合物を実施例2−1として、上述した物性を測定した。
【0102】
(実施例2−2)
実施例2−1で得られた混合エステル40gに、フタル酸ベンジルイソノニル(東京化成工業株式会社製 試薬)10gを混合し、得られた混合物を実施例2−2として、同様に物性を求めた。
【0103】
(実施例2−3)
実施例2−1におけるベンジルアルコール60gおよび2−フェネチルアルコール55gの代わりに,ベンジルアルコール108gを用いて実施例2−1と同様に調製し,m−ニトロ安息香酸ベンジル134gを得た。さらに、このm−ニトロ安息香酸ベンジルにフタル酸ベンジルイソノニル134gを混合し、得られた混合物を実施例2−3として、同様に物性を求めた。
【0104】
(実施例2−4)
実施例2−1におけるベンジルアルコール60gを用いず、2−フェネチルアルコールを122g用いて実施例2−1と同様に調製し,m−ニトロ安息香酸フェネチル150gを得た。さらに、このm−ニトロ安息香酸フェネチルにフタル酸ベンジルイソノニル150gを混合し、得られた混合物を実施例2−4として、同様に物性を求めた。
【0105】
(実施例2−5)
500ミリリットルのディーン・スターク装置付の四つ口フラスコに、m−ニトロ安息香酸(東京化成工業株式会社製 試薬)50g,ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)100g,n−デカノール(東京化成工業株式会社製 試薬)30g、キシレン(東京化成工業株式会社製 試薬)100g、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.2gを入れ,窒素気流攪拌下に水を留去しながら175℃で5時間反応させた。その後,飽和食塩水洗浄,0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後,無水硫酸マグネシウム(東京化成工業株式会社製 試薬)で乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後,過剰の原料アルコールを留去して,残分63gを得た。
この残分を実施例2−1と同様に分析した結果、m−ニトロ安息香酸ベンジル75質量%とm−ニトロ安息香酸デシル25質量%との混合物であった。
この混合物を実施例2−5として、同様に物性を求めた。
【0106】
(実施例2−6)
実施例2−1におけるベンジルアルコール60gおよび2−フェネチルアルコール55gの代わりに、1−フェノキシ−2−プロパノール(東京化成工業株式会社製 試薬)158gを用いて実施例2−1と同様に調製し,m−ニトロ安息香酸フェノキシプロピル138gを得た。得られた化合物を実施例2−6として、同様に物性を求めた。
【0107】
(実施例2−7)
実施例2−1におけるベンジルアルコール60gおよび2−フェネチルアルコール55gの代わりに、トリデカノール混合物(東京化成工業株式会社製 試薬)200gを用いて実施例2−1と同様に調製し,m−ニトロ安息香酸トリデシル186gを得た。得られた混合物を実施例2−7として、同様に物性を求めた。
【0108】
(実施例2−8)
1リットルの四つ口フラスコに、サリチル酸4−ニトロフェニル50g,トルエン500ミリリットル,トリエチルアミン28gを入れ,攪拌下にn−オクタン酸クロライド35gを30℃で1時間かけて滴下し,さらに1時間攪拌した後,メタノール40ミリリットルを添加して酸塩化物を全て反応させた。その後,飽和食塩水洗浄,0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後,無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後,トルエンと少量のn−オクタン酸メチルを留去し,残分としてサリチル酸4−ニトロフェニルのn−オクタン酸エステル70gを得た。得られた化合物を実施例2−8として、同様に物性を求めた。
【0109】
(実施例2−9)
500ミリリットルのディーン・スターク(Dean-Stark)装置付き四つ口フラスコに、m−ニトロ安息香酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)60g、p−ニトロ安息香酸メチル(東京化成工業株式会社製 試薬)60g、2−フェネチルアルコール(東京化成工業株式会社製 試薬)110g、チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業株式会社製 試薬)0.1gを入れ、窒素気流攪拌下にメタノールを留去しながら155℃で4時間反応させた。その後、飽和食塩水洗浄、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後、無水硫酸マグネシウム(東京化成工業株式会社製 試薬)で乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後、過剰の原料アルコールを留去して、残分155gを得た。
この残分をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、m−ニトロ安息香酸フェネチル50質量%と、p−ニトロ安息香酸フェネチル50質量%との混合物であった。
この混合物120gと実施例2−3で得られたm−ニトロ安息香酸ベンジル80gを混合し、実施例2−9として、同様に物性を測定した。
また、本混合物を、タイテック株式会社製BODテスター 200F を使用し、JIS K6950に準拠して、28日間の生分解性試験を行った結果(生分解度:BOD)を表6に併記する。
【0110】
(比較例2−1)
パラフィン系鉱物油(出光興産株式会社製 商品名;ダイアナフレシアP90)を比較例2−1として、同様に物性を求めた。
【0111】
(比較例2−2)
ポリブテン(出光興産株式会社製 商品名;出光ポリブテン5H)を比較例2−2として、同様に物性を求めた。
【0112】
(比較例2−3)
2リットルのディーン・スターク装置付き四つ口フラスコに無水ピロメリット酸218g、nーオクタノール650g,チタンテトライソプロポキシド0.2g、キシレン300ミリリットルを入れ,窒素気流攪拌下に水を留去しながら160℃で4時間反応させた。その後,飽和食塩水洗浄,0.1規定水酸化ナトリウム水溶液洗浄を各3回行った後,無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後,減圧下に未反応アルコールを留去し,残分としてピロメリット酸テトラオクチル630gを得た。得られた化合物を比較例2−3として、同様に物性を求めた。
【0113】
(比較例2−4)
アルキルジフェニルエーテル(株式会社松村石油研究所製 商品名;モレスコハイルーブLB−68)を比較例2−4として、同様に物性を求めた。
【0114】
(比較例2−5)
ペンタフェニルエーテル(株式会社松村石油研究所製 商品名;S−3105)を比較例2−5として、同様に物性を求めた。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
これら表5ないし表7に示す結果から、潤滑油として利用される比較例2−1のパラフィン系鉱物油および合成油である比較例2−2では、体積弾性係数が低い。また、エステルである比較例2−3でも体積弾性係数が低い。さらに、ジフェニルエーテルである比較例2−4でも体積弾性係数は低い。また、ペンタフェニルエーテルである比較例2−5では、体積弾性係数は高いが、動粘度および流動点が高く、油圧作動油としての利用に適していない。
一方、実施例2−1ないし実施例2−9の各カルボン酸エステルでは、動粘度および流動点が比較的に低く、油圧作動油として適用できるとともに、体積弾性係数が比較的に高く、圧縮によるエネルギー損失が小さく、油圧回路における効率的な作動が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、例えば建設機械や射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタ、油圧式無段変速機、ロボット、工作機械,ダンパー、ブレーキシステム、パワーステアリングなど、油圧機器における油圧回路に用いられる油圧作動油、さらにはこの油圧作動油を利用した油圧回路や油圧機器などの油圧装置として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステルを基油とする油圧作動油であって、
前記エステルが2個以上の芳香環を持つカルボン酸エステルであり、
前記カルボン酸エステルは、下記式(4)で示される二塩基酸の芳香族アルコールジエステル骨格構造を含有する化合物である
ことを特徴とする油圧作動油。
【化1】


(j,k:0または1、n,m:1または2の整数
p,q:0ないし3の整数
,R:水素または炭素数1以上10以下のアルキル基
Z:側鎖を持っていても良い炭素数1以上18以下のアルキレン基)
【請求項2】
請求項1に記載の油圧作動油において、
前記エステルを、基油として10質量%以上含有する
ことを特徴とする油圧作動油。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の油圧作動油において、
前記式(4)におけるjおよびkは0である
ことを特徴とする油圧作動油。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の油圧作動油において、
前記式(4)におけるjおよびkは1である
ことを特徴とする油圧作動油。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の油圧作動油において、
前記式(4)におけるZは、側鎖を持っていても良い炭素数7以上18以下のアルキレン基である
ことを特徴とする油圧作動油。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の油圧作動油において、
前記式(4)におけるZは、炭素数7のアルキレン基である
ことを特徴とする油圧作動油。

【公開番号】特開2013−76098(P2013−76098A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16089(P2013−16089)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2009−511869(P2009−511869)の分割
【原出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】