説明

油圧制御式のリザーバチャンババルブ

【課題】車両用油圧ブレーキシステムのリザーバタンクに使用するバルブに於いて、構造を簡単にし、弁体の移動に際し流体流れに抵抗を与えない構造とする。
【解決手段】弁体22の弁座26を密閉する、第1の圧縮ばね14を介して初期応力をかけられた閉止部材13と、第2の圧縮ばね15により付勢されるリザーバピストン10と結合され、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間で固有の力比率が生じたときに閉止部材13を弁座26から押し出すタペット12とを有する、油圧制御式のリザーバチャンババルブ1に関するものであり、第1の圧縮ばね14と閉止部材13はフィルタ24の中で案内されている。弁座26を含む弁体22と案内手段を含むフィルタ24とは一体的なプラスチック部材20として製作されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の分野に属する油圧制御式のリザーバチャンババルブを前提とするものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1より、ばねで初期応力をかけられたボール弁座バルブがリザーバピストンのタペットを介して開放される、油圧制御式のリザーバチャンババルブが公知である。このことは、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間の、システムについて固有の力比率で行われる。ボール弁座バルブは、通常、金属性の弁体と、この弁体に押し付けられるプラスチック製フィルタとで構成されている。フィルタは圧縮ばねとボールを収容しており、これら両方の構成部品の案内機能も担っている。予備組み付けされたモジュールがポンプハウジングへ挿入されて、たとえばセルフクリンチ結合により固定されて密閉される。ボール弁座バルブの操作は、リザーバピストンの中に押し込まれた円筒状の金属製タペットを介して行われる。リザーバピストンは、シールリングならびに案内リングも収容している。リザーバピストンと、保持かしめ部を介してポンプハウジングと結合された閉止蓋との間には、相応に初期応力をかけられた圧縮ばねがある。ばね力はリザーバピストンで油圧式に作用する力に抗して作用しており、ばね力が超過したときに、リザーバチャンババルブの開放方向へのリザーバピストン・タペット複合体のスライドを惹起する。このときボールはタペットにより弁座から外へ動いて、リザーバチャンババルブを開放する。
【0003】
たとえば特許文献2には、自動車用の油圧式のブレーキ設備が記載されている。記載されているブレーキ設備は、弁体の弁座を密閉する、第1の圧縮ばねを介して初期応力をかけられた閉止部材と、第2の圧縮ばねにより付勢されるリザーバピストンを備え、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間で固有の力比率が生じたときに閉止部材を弁座から押し出すタペットとを備える、油圧制御式のリザーバチャンババルブを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,543,896B2号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第4202388A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
それに対して、独立請求項1の構成要件を備える本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブは、個別部品の製造手段を簡素化し、製造コストを下げることができるという利点を有している。フィルタと弁体とを含む、直接的に射出成形される一体的なプラスチック部材により、きわめて低コストに製造が可能である。さらに、プラスチック部材での複雑で正確な弁座ないし流出部のジオメトリーの具体化が、たとえば金属の冷間衝撃成形部品などに比べて明らかに容易になる。
【0006】
本発明の実施形態は、弁体の弁座を密閉する、第1の圧縮ばねを介して初期応力をかけられた閉止部材と、第2の圧縮ばねにより付勢されるリザーバピストンと結合され、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間で固有の力比率が生じたときに閉止部材を弁座から押し出すタペットとを含む、油圧制御式のリザーバチャンババルブを提供するものである。このことは、リザーバピストンに作用する第2の圧縮ばねのばね力が、リザーバピストンに作用する油圧力、および閉止部材に作用する第1の圧縮ばねの初期応力よりも大きいことを意味している。さらに第1の圧縮ばねと閉止部材は、フィルタの中で案内されている。本発明によると、弁座を含む弁体と案内手段を含むフィルタとは一体的なプラスチック部材として製作されている。
【0007】
従属請求項に記載されている方策および発展例により、独立請求項1に記載されている油圧制御式のリザーバチャンババルブの好ましい改良が可能である。
【0008】
弁座を含む弁体はプラスチック部材の下側の終端部を形成することができるのが特別に好ましく、弁体は、プラスチック部材の上側の終端部を形成する閉止片が押し込まれたフィルタへと移行している。さらに、閉止部材と第1の圧縮ばねはプラスチック部材の内部に配置することができる。それにより、閉止部材に対する第1の圧縮ばねの初期応力を、閉止片の押込み深さを通じて簡単かつ迅速に調整できるという利点がある。
【0009】
本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブの好ましい実施形態では、案内手段は、プラスチック部材の内部空間へ垂直に突入する案内ウェブとして構成することができる。3つの案内ウェブがフィルタの内側円周に沿って配分されて構成されて、それぞれ120°の角度を相互に有しているのが好ましい。それにより、圧縮ばねおよび閉止部材という両方の個別部品の機能のために必要な案内の役割が保証されるという利点がある。
【0010】
本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブの別の好ましい実施形態では、かしめ板を弁体の外側に押し付けることができる。かしめ板を介して、予備検査されたモジュール全体を流体ブロックないしポンプハウジングへ組み付け、保持かしめ部を介して位置に関して固定することができる。
【0011】
本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブの別の好ましい実施形態では、タペットは中実円筒として構成されており、リザーバピストンの収容穴に押し込むことができる。このようなタペットの単純な円筒状の構成は、きわめて低コストなニードル軸受の円筒状の転動体の使用を可能にするという利点がある。さらに、このような円筒状の転動体を使用すれば、タペットとリザーバピストンとの間のプレス結合を介して保持機能と封止機能を保証するために、外径の所要の精度が与えられる。
【0012】
本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブの別の好ましい実施形態では、リザーバピストンはシールリングを備えるシール溝と案内リングを備える案内溝とを有していてもよく、前記シール溝と前記案内溝はリザーバピストンを組付け状態のときに収容穴の中で案内することができる。
【0013】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述において詳しく説明する。図面では同じ符号は、同じ機能ないし対応する機能を果たすコンポーネントないし部材を表している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるリザーバチャンババルブの実施例を備えるバルブ構造を示す模式的な縦断面図である。
【図2】図1の本発明によるリザーバチャンババルブの実施例を示す模式的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、流体ブロック3ないしポンプハウジングの段差のある収容穴4の中に配置された、本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブ1を備えるバルブ構造を示している。本発明による油圧制御式のリザーバチャンババルブ1の実施形態は、たとえば車両の油圧ブレーキシステムで採用することができる。
【0016】
図1と図2から明らかなように、図示した油圧制御式のリザーバチャンババルブ1は、ボールとして製作され、第1の圧縮ばね14を介して初期応力をかけられる閉止部材13と、第2の圧縮ばね15により付勢されるリザーバピストン10と結合されたタペット12とを含んでいる。ここでは閉止部材13は、弁体22の弁座26を密閉している。タペット12は、縁部に弁座26が構成されている弁体22のネック状の狭隘部を貫通しており、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間で固有の力比率が生じたときに、弁座26から閉止部材13を押し出す。図示した実施例でこれに該当するのは、リザーバピストン10に作用する第2の圧縮ばね15のばね力が、リザーバピストン10に作用する油圧力、および閉止部材13に作用する第1の圧縮ばね14の初期応力よりも大きくなったときである。リザーバピストン10に作用する第2の圧縮ばね15のばね力が、リザーバピストン10に作用する油圧力、および閉止部材13に作用する第1の圧縮ばね14の初期応力よりも小さいとき、閉止部材13は弁座26に押し付けられる。第1の圧縮ばね14と閉止部材13は、送出される媒体から浮遊物を追加的に濾過するフィルタ24の中で案内されている。
【0017】
本発明によると、弁座26を含む弁体22と案内手段28を含むフィルタ24は一体的なプラスチック部材20として製作されている。フィルタ24と弁体22で構成される、直接的に射出成形された一体的なプラスチック部材20により、きわめて低コストな製造が可能である。さらに、プラスチック部品での複雑で厳密な弁座ないし流出部のジオメトリーの具体化は、たとえば金属の冷間衝撃成形部品よりも明らかに簡単に行うことが可能である。
【0018】
図1と図2からさらに明らかなとおり、弁座26を含む弁体22はプラスチック部材20の下側の終端部を形成しており、弁体22は上方に向かって、波形のフィルタジオメトリー24.1を有する実質的に円筒状のフィルタ24へと移行している。プラスチック部材20の上側の終端部を形成するのは、フィルタ24に押込まれた閉止片29である。閉止片29に配置された円筒状のピン29.1は、円筒状のピン29.1の可塑変形によって具体化することができる、軸方向の誤差補正としての役目を果たす。
【0019】
図1と図2からさらに明らかなとおり、プラスチック部材20はボールとして製作された閉止部材13と第1の圧縮ばね14とを収容しており、それぞれ互いに120°の角度を有する3つの案内ウェブ28を通じて、閉止部材13および第1の圧縮ばね14という両方の個別部材の機能のために必要な案内の役割を保証する。第1の圧縮ばね14の所定の初期応力を設定するために、閉止片29は相応の深さでプラスチック部材20のフィルタ24に押し込まれる。プラスチック部材20の弁体22の一体成形された案内鍔22.2に押し付けられるかしめ板17を介して、予備検査されたモジュール全体が流体ブロック3ないしポンプハウジングへ組み付けられ、第1の保持かしめ部18を介して位置に関して固定される。密閉をするために、プラスチック部材20の弁体22には、流体ブロック3ないしポンプハウジングの収容穴4に対して封止をする、周回するシールリップ22.1が一体成形されている。かしめ板17との保持かしめ部18を製作するために、流体モジュール3ないしポンプハウジングの材料が適当なかしめ工具により可塑変形させられ、それにより、かしめ板17を少なくとも部分的に覆う、特に周回するウェブが形成される。
【0020】
図1からさらに明らかなとおり、タペット12は中実円筒として製作されている。こうしたタペット12の単純な円筒状の構成は、きわめて低コストなニードル軸受の円筒状の転動体の使用を可能にする。このような転動体をタペット12として使用することで、タペット12とリザーバピストン10の収容穴11の間のプレス結合を通じて保持機能と密閉機能を保証するために、外径の必要な精度が与えられる。
【0021】
リザーバチャンババルブ1の操作はリザーバピストン10の軸方向のスライドによって行われ、ボールとして製作された閉止部材13の操作はタペット12を介して行われる。リザーバピストン10は、シールリング16を介して、ならびに案内リング19を介して、流体ブロック3ないしポンプハウジングの段差のある収容穴4の中で案内される。リザーバピストン10と、さらに別の保持かしめ部9を介して流体ブロック3ないしポンプハウジングと結合される閉止蓋7の間には、初期応力をかけられた第2の圧縮ばね15が配置されている。閉止蓋7との別の保持かしめ部9を製作するために、流体モジュール3ないしポンプハウジングの材料が適当なかしめ工具により可塑変形させられ、それにより、閉止蓋7の縁部を少なくとも部分的に覆う、特に周回するウェブが形成される。さらにリザーバピストン10の下面は、閉止蓋7の開口部8を介して大気圧とつながっている。リザーバピストン10の上面と弁体22との間に、リザーバチャンババルブ1のリザーバチャンバ5が形成されている。リザーバチャンババルブ1は、圧力がない状態のときに開放される。このことは、リザーバピストン10の下面に作用する、初期応力をかけられた第2の圧縮ばね15によって引き起こされる、リザーバピストン10の上側の最終位置へのスライドを通じて行われる。
【0022】
油圧システムの作動中、特に車両用の油圧ブレーキシステムの作動中、第2の圧縮ばね15のばね力は、第1の圧縮ばね14のばね力およびリザーバピストン10で油圧式に作用する力に抗して作用している。このとき油圧力の超過は、ボールとして製作された閉止部材13およびリザーバピストン・タペット複合体の、リザーバチャンババルブ1の閉止方向へのスライドを惹起する。このとき、ボールとして製作された閉止部材13は第1の圧縮ばね14のばね力によって弁座26に押し込まれる。第2の圧縮ばね15のばね力の超過は、リザーバピストン・タペット複合体の、リザーバチャンババルブ1の開放方向へのスライドを惹起する。このときボールとして製作された閉止部材13はタペット12により弁座26から外へ動き、リザーバチャンババルブ1が開放される。開放状態のとき流体は、たとえばメインブレーキシリンダと接続された流体接続部6から、フィルタ24および開いた弁座26を介して、リザーバチャンバ5に連通してたとえばリターンポンプと接続された図示しない流体接続部へ、ほぼ妨げられることなく流れることができる。
【0023】
本発明の実施形態は、個別部品を好ましい仕方で簡素化して製造することができるリザーバチャンババルブを提供するものであり、それにより、製造コストを引き下げることができる。フィルタと弁体とを含む、直接的に射出成形される一体的なプラスチック部材により、複雑で厳密な弁座ないし流出部のジオメトリーの具体化を、たとえば金属の冷間衝撃成形部品よりも明らかに簡単に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体(22)の弁座(26)を密閉する、第1の圧縮ばね(14)を介して初期応力をかけられた閉止部材(13)と、第2の圧縮ばね(15)により付勢されるリザーバピストン(10)と結合され、ばね初期応力と油圧式に作用する力との間で固有の力比率が生じたときに前記閉止部材(13)を前記弁座(26)から押し出すタペット(12)とを有する油圧制御式のリザーバチャンババルブであって、
前記第1の圧縮ばね(14)と前記閉止部材(13)はフィルタ(24)の中で案内されている、そのようなリザーバチャンババルブにおいて、前記弁座(26)を含む前記弁体(22)と案内手段(28)を含む前記フィルタ(24)とは一体的なプラスチック部材(20)として製作されていることを特徴とするリザーバチャンババルブ。
【請求項2】
前記弁座(26)を含む前記弁体(22)は前記プラスチック部材(20)の下側の終端部を形成しており、前記弁体(22)は前記プラスチック部材(20)の上側の終端部を形成する閉止片(29)が押し込まれたフィルタ(24)へと移行していることを特徴とする、請求項1に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項3】
前記閉止部材(13)と前記第1の圧縮ばね(14)は前記プラスチック部材(20)の内部に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項4】
前記閉止片(29)の押込み深さを通じて前記閉止部材(13)に対する前記第1の圧縮ばね(14)の初期応力を調整可能であることを特徴とする、請求項3に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項5】
前記案内手段は前記プラスチック部材(20)の内部空間へ垂直に突入する案内ウェブ(28)として構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項6】
前記3つの案内ウェブ(28)は前記フィルタ(24)の内側円周に沿って配分されて構成されており、それぞれ120°の角度を相互に有していることを特徴とする、請求項5に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項7】
かしめ板(17)が前記弁体(22)に外側で押し付けられており、該かしめ板を介して前記プラスチック部材(20)が流体ブロック(3)と結合可能なことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項8】
前記タペット(12)は中実円筒として製作されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項9】
前記タペット(12)は前記リザーバピストン(10)の収容穴(11)に押し込まれていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のリザーバチャンババルブ。
【請求項10】
前記リザーバピストン(10)は、前記リザーバピストン(10)を組付け状態のときに前記収容穴(4)の中で案内する、シールリング(16)を備えるシール溝と案内リング(19)を備える案内溝とを有していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のリザーバチャンババルブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−113443(P2013−113443A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255765(P2012−255765)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】