説明

油圧制御装置および変速機

【課題】ジェットポンプを備えても、小型化を図ることができる油圧制御装置を提供すること。
【解決手段】油圧制御装置100は、アッパーバルブボディ2と、ロアバルブボディ3と、アッパーバルブボディ2とロアバルブボディ3とで挟持されるセパレータプレート4とにより構成される。油圧制御装置100は、アッパーバルブボディ2に形成される吐出油路21と、ロアバルブボディ3に形成され、かつセパレータプレート4に形成される吸入連通穴42を介して、吐出油路21と連通する吸入油路31と、ロアバルブボディ3に形成され、かつ吸入油路31における作動油の圧力よりも高い圧力の作動油が供給される高圧油路32と、セパレータプレート4に形成され、高圧油路32と吐出油路21とを連通する高圧連通穴41と、を備えるジェットポンプ1−1が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1バルブボディと、第2バルブボディと、第1バルブボディと第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置および変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の変速機には、変速機における作動油供給部分に作動油を供給する油圧制御装置が設けられている。油圧制御装置は、第1バルブボディと、第2バルブボディと、第1バルブボディと第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとにより構成される。油圧制御装置には、オイルポンプから吐出された作動油であるオイルが供給される。油圧制御装置は、作動油供給部分、例えばトルクコンバータなどの供給されたオイルをオイルにより駆動する駆動部分や、オイルを潤滑油として使用する潤滑部分に供給する。
【0003】
ここで、特許文献1に示すように、変速機(特許文献1では、ベルト式無段変速機)のオイルを供給する方法としてジェットポンプがある。ジェットポンプは、吸入油路と、高圧油路と、吐出油路とにより構成されており、吸入油路の吸入オイルよりも高圧な高圧油路の高圧オイルを吐出油路に吐出することで、吸入オイルを高圧オイルとともに、吐出油路に吐出するものである。ジェットポンプは、高圧油路から高圧オイルが吐出油路に吐出されることで、吐出油路に発生した負圧により、吸入油路の吸入オイルが吐出油路に吸引されるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平8−219267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す従来技術では、油圧制御装置(特許文献1では、液体式の制御装置)とは、別構成部材としてジェットポンプが変速機に設けられている。従って、変速機において使用される作動油を供給部分に供給する油圧制御装置として大型化する虞がある。また、別構成部材であると、ジェットポンプを変速機に設けることで、部品点数が増加する虞がある。さらに、ジェットポンプと、油圧制御装置あるいは作動油供給部分とを接続するための部品や、加工が必要となる虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ジェットポンプを備えても、小型化を図ることができる油圧制御装置および変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、第1バルブボディと、第2バルブボディと、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置において、前記第1バルブボディに形成される吐出油路と、前記第2バルブボディに形成され、かつ前記セパレータプレートに形成される吸入連通穴を介して、前記吐出油路と連通する吸入油路と、前記第2バルブボディに形成され、かつ前記吸入油路における作動油の圧力よりも高い圧力の作動油が供給される高圧油路と、前記セパレータプレートに形成され、前記高圧油路と前記吐出油路とを連通する高圧連通穴と、を備えるジェットポンプが形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、油圧制御装置を構成する第1バルブボディに吐出油路を形成し、第2バルブボディに吸入油路および高圧油路を形成し、セパレータプレートに高圧油路と吐出油路とを連通する高圧連通穴を形成することで、ジェットポンプを油圧制御装置に構成することができる。つまり、第1バルブボディおよび第2バルブボディによりジェットポンプのボディを構成することができる。従って、油圧制御装置の構成部材をジェットポンプの構成部材として共用することができ、ジェットポンプを備えても、小型化を図ることができる。また、部品点数の削減や、加工数の低減を図ることができる。
【0009】
また、本発明では、第1バルブボディと、第2バルブボディと、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置において、前記第1バルブボディに形成される吐出油路と、前記第1バルブボディに形成され、かつ前記吐出油路と連通する吸入油路と、前記第2バルブボディに形成され、かつ前記吸入油路における作動油の圧力よりも高い圧力の作動油が供給される高圧油路と、前記セパレータプレートに形成され、前記高圧油路と前記吐出油路とを連通する高圧連通穴と、を備えるジェットポンプが形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、油圧制御装置を構成する第1バルブボディに吐出油路および吸入油路を形成し、第2バルブボディに高圧油路を形成し、セパレータプレートに高圧油路と吐出油路とを連通する高圧連通穴を形成することで、ジェットポンプを油圧制御装置に構成することができる。つまり、第1バルブボディおよび第2バルブボディによりジェットポンプのボディを構成することができる。従って、油圧制御装置の構成部材をジェットポンプの構成部材として共用することができ、ジェットポンプを備えても、小型化を図ることができる。また、部品点数の削減を図ることができる。さらに、ジェットポンプを油圧制御装置に構成するためのセパレータプレートの加工は、高圧連通穴の形成のみであるので、加工数のさらなる低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、ノズル部材をさらに備え、前記ノズル部材は、前記第2バルブボディと前記セパレータプレートとで挟持され、かつ前記先端部が前記高圧連通穴を介して吐出油路と対向することが好ましい。
【0012】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、ノズル部材をさらに備え、前記ノズル部材は、前記高圧連通穴に圧入され、かつ前記先端部が前記高圧連通穴を介して吐出油路と対向することが好ましい。
【0013】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、前記ノズル部材は、先端部に向かうに伴い断面が減少することが好ましい。
【0014】
本発明では、ジェットポンプのノズル部材は、油圧制御装置の構成部材以外であり、油圧制御装置内に配置される。従って、セパレータプレートに形成される高圧連通穴と比較して、任意の形状、例えば先端部に向かうに伴い断面を減少して形成することが可能である。従って、高圧の作動油の流れが乱れることを抑制し、ジェットポンプの性能を向上することができる。
【0015】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、前記高圧連通穴は、前記セパレータプレートを前記吐出油路側に突出させることで形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、前記高圧連通穴は、吐出油路側に向かうに伴い断面が減少することが好ましい。
【0017】
本発明では、セパレータプレートの高圧連通穴は、吐出油路側に突出し、例えば吐出油路側に向かうに伴い断面を減少して形成されている。従って、高圧の作動油の流れが乱れることを抑制し、ジェットポンプの性能を向上することができる。
【0018】
また、本発明では、上記油圧制御装置において、作動油を供給する作動油供給部分を有する変速機において、上記油圧制御装置のジェットポンプから吐出された作動油を前記作動油供給部分に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる油圧制御装置は、油圧制御装置の構成部材をジェットポンプの構成部材として共用することができ、ジェットポンプを備えても、小型化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記実施の形態では、本発明にかかる油圧制御装置は、自動車やトラック等の車両に搭載されるオートマチックトランスミッション(ベルト式無段変速機など)やマニュアルトランスミッションを含む変速機に備えられ、変速機において作動油を供給する作動油供給部分に作動油を供給するものとして説明する。また、下記実施の形態では、第1バルブボディをアッパーバルブボディとし、第2バルブボディをロアバルブボディとするが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1バルブボディをロアバルブボディとし、第2バルブボディをアッパーバルブボディとしても良い。
【0021】
〔実施の形態1〕
図1〜図3は、実施の形態1にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。ここで、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。図1〜図3に示すように、実施の形態1にかかる油圧制御装置100は、アッパーバルブボディ2と、ロアバルブボディ3と、セパレータプレート4とにより構成されている。油圧制御装置100が備えるジェットポンプ1−1は、アッパーバルブボディ2と、ロアバルブボディ3と、セパレータプレート4とにより構成されている。
【0022】
アッパーバルブボディ2は、第1バルブボディであり、複数の油路が形成されるものである。アッパーバルブボディ2は、ジェットポンプ1−1を構成する吐出油路21が形成されている。吐出油路21は、高圧油路側、すなわち上流側に合流部21aが形成されている。合流部21aは、セパレータプレート4と対向する部分であり、後述する吸入連通穴42および高圧連通穴が開口するものである。また、吐出油路21は、吐出油路側、すなわち下流側に拡張部21bが形成されている。拡張部21bは、上流側から下流側に向かうに伴い径が拡大して形成されている。なお、吐出油路21は、油圧制御装置100が設けられた図示しない変速機の作動油供給部、例えば多くの油量を必要とする潤滑部分と接続されている。
【0023】
ロアバルブボディ3は、第2バルブボディであり、複数の油路が形成されるものである。ロアバルブボディ3は、ジェットポンプ1−1を構成する吸入油路31および高圧油路32が形成されている。吸入油路31は、端部31aがセパレータプレート4と対向する部分であり、吸入連通穴42が開口するものである。また、高圧油路32は、端部32aがセパレータプレート4と対向する部分であり、高圧連通穴41が開口するものである。ここで、吸入油路31の端部31aおよび高圧油路32の端部32aは、互いに連通していない。実施の形態1では、吸入油路31の端部31aは、高圧油路32の端部32aを囲むように、例えば半円弧状に形成されている。また、高圧油路32は、端部32aがアッパーバルブボディ2の吐出油路21と同軸となるように形成されている。ここで、吸入油路31には、作動油が充填されている。また、高圧油路32には、吸入油路31における作動油よりも高い圧力の作動油が図示しないオイルポンプなどの高圧作動油供給装置から供給される。つまり、高圧油路32の油圧は、吸入油路31の油圧よりも高くなる。
【0024】
セパレータプレート4は、第1バルブボディであるアッパーバルブボディ2と第2バルブボディであるロアバルブボディ3とで挟持されるものである。セパレータプレート4は、アッパーバルブボディ2に形成された油路と、ロアバルブボディ3に形成された油路の連通および連通の遮断を行うものである。セパレータプレート4は、ジェットポンプ1−1を構成する高圧連通穴41および吸入連通穴42が形成されている。
【0025】
高圧連通穴41、高圧油路32と吐出油路21とを連通するものである。ここで、高圧連通穴41は、例えば円形状であり、ジェットポンプ1−1に要求される吐出流量、吐出圧により形状が設定される。なお、実施の形態1では、高圧連通穴41は、高圧油路32から高圧連通穴41を介して吐出油路21に吐出された高圧の作動油の流れが乱れることを抑制するために、高圧油路32の断面、実施の形態では、端部32aの断面以下の断面で形成されていることが好ましい。
【0026】
吸入連通穴42は、吸入油路31と吐出油路21とを連通するものである。吸入連通穴42は、吸入油路31の端部31aと、吐出油路21の合流部21aとを連通するものである。吸入連通穴42は、高圧連通穴41とは連通していない。吸入連通穴42は、端部31aの形状とほぼ同一形状(半円弧状)であり、高圧連通穴41を囲むように形成されている。つまり、実施の形態1にかかる油圧制御装置100では、ジェットポンプ1−1が吐出油路21と、吸入油路31と、高圧油路32と、高圧連通穴41と、吸入連通穴42とにより構成されている。
【0027】
次に、油圧制御装置100に備えられるジェットポンプ1−1の動作について説明する。図示しないオイルポンプから高圧油路32に供給された高圧の作動油は、図1矢印Cに示すように、高圧連通穴41を介して吐出油路21の合流部21aに吐出される。このとき、合流部21aには、負圧が発生する。発生した負圧により、吸入油路31に充填されている作動油(高圧油路32における高圧の作動油よりも圧力の低い作動油)は、同図矢印Dに示すように、吸入連通穴42を介して吐出油路21の合流部21aに吸引される。これにより、吐出油路21には、高圧油路32における高圧の作動油とともに、吸入油路31における作動油が吐出油路21に吐出される。吐出油路21に吐出された作動油は、同図矢印Eに示すように、油圧制御装置100が設けられた図示しない変速機の作動油供給部、例えば多くの油量を必要とする潤滑部分に供給され、潤滑部分の潤滑油として機能することとなる。従って、作動油供給部に供給される作動油をすべて図示しないオイルポンプから吐出された高圧の作動油とした場合と比較して、高圧の作動油の量を低減することができるので、効率を向上することができる。
【0028】
以上のように、実施の形態1にかかる油圧制御装置100では、ジェットポンプ1−1が内部に構成されている。つまり、アッパーバルブボディ2およびロアバルブボディ3によりジェットポンプ1−1のボディを構成することができる。従って、油圧制御装置100の構成部材をジェットポンプ1−1の構成部材として共用することができ、ジェットポンプ1−1を備えても、小型化を図ることができる。
【0029】
また、ジェットポンプ1−1が油圧制御装置100と別構成部材でないので、部品点数の増加を抑制することができる。また、ジェットポンプ1−1が油圧制御装置100の内部に構成されているので、油圧制御装置100および図示しない作動油供給部分とジェットポンプ1−2を接続するための部品や、加工を必要としない。従って、部品点数の削減や、加工数を低減することができる。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0030】
なお、上記実施の形態1では、セパレータプレート4の高圧連通穴41は、セパレータプレート4を打ち抜くことで形成されるが本発明はこれに限定されるものではない。図4は、実施の形態1にかかる油圧制御装置の他の構成例を示す図である。高圧連通穴43は、同図に示すように、セパレータプレート4を吐出油路21側、すなわち下流側に突出させることで形成しても良い。高圧連通穴43は、セパレータプレート4を深絞りすることにより形成することができる。セパレータプレート4を下流側に突出させることで、部品点数を増加することなく、高圧の作動油の流れが乱れることを抑制することができ、ジェットポンプの性能を向上することができる。なお、高圧連通穴43は、吐出油路21側、すなわち下流側に向かうに伴い断面を減少して形成することが好ましい。つまり、高圧連通穴43は、上流側から下流側に向かって絞られて形成されることが好ましい。これにより、高圧の作動油の流れが乱れることをさらに抑制でき、ジェットポンプの性能をさらに向上することができる。
【0031】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2にかかる油圧制御装置について説明する。図4〜図6は、実施の形態2にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。図4〜図6に示す実施の形態2にかかる油圧制御装置200が図1〜図3に示す実施の形態1にかかる油圧制御装置100と異なる点は、ジェットポンプ1−2がノズル部材5を備える点である。なお、実施の形態2にかかる油圧制御装置200の基本的構成は、図4〜図6に示すように、実施の形態1にかかる油圧制御装置100の基本的構成とほぼ同一である。従って、同一符号箇所については、その説明を省略あるいは簡略化する。実施の形態2にかかる油圧制御装置200では、ジェットポンプ1−2が吐出油路21と、吸入油路31と、高圧油路32と、高圧連通穴43と、吸入連通穴42と、ノズル部材5とにより構成されている。なお、6は、ノズル部材5とセパレータプレート4との間をシールするシール部材、例えばOリングである。
【0032】
ロアバルブボディ3の高圧油路32には、切欠部33が形成されている。切欠部33は、端部32aのセパレータプレート4と対向する部分に形成されている。ここで、切欠部33は、略円形状に形成されている。
【0033】
セパレータプレート4の高圧連通穴43は、円形状であり、その径が高圧油路32の端部32aの幅とほぼ同一に形成されている。
【0034】
ノズル部材5は、第2バルブボディであるロアバルブボディ3とセパレータプレート4とで挟持されるものである。ノズル部材5は、略円筒形状であり、つば部51と、本体部52とにより構成されている。つば部51は、ノズル部材5の軸方向における両端部のうち一方の端部に形成されるものであり、径方向外側に突出して形成されている。なお、つば部51の形状は、つば部51がロアバルブボディ3の切欠部33に挿入することができるように、設定されている。本体部52は、先端部5a、ここではノズル部材5の軸方向における両端部のうち他方の端部に向かうに伴い断面が減少して形成されている。つまり、本体部52は、先端部5aに向かうに伴い絞られて形成されている。実施の形態2では、本体部52の内径は、先端部5aに向かうに伴い減少して形成されている。
【0035】
ここで、ノズル部材5は、セパレータプレート4をアッパーバルブボディ2とロアバルブボディ3とに挟持する際に、ロアバルブボディ3とセパレータプレート4との間に挿入される。具体的には、ノズル部材5のつば部51を先端部5aが上流側に位置するように、ロアバルブボディ3の切欠部33に挿入するとともに、Oリング6を本体部52に対して挿入する。そして、ロアバルブボディ3とセパレータプレート4とを対向して接触させる際に、Oリング6が挿入された本体部52を高圧連通穴43に挿入する。このとき、Oリング6がロアバルブボディ3とセパレータプレート4とに接触し、ノズル部材5とセパレータプレート4との間がシールされる。これにより、ノズル部材5の先端部5aが高圧連通穴43を介して吐出油路21と対向する。
【0036】
次に、油圧制御装置200の備えられるジェットポンプ1−2の動作について説明する。図示しないオイルポンプから高圧油路32に供給された高圧の作動油は、図5矢印Hに示すように、高圧連通穴43に挿入されたノズル部材5を介して吐出油路21の合流部21aに吐出される。このとき、合流部21aには、負圧が発生する。発生した負圧により、吸入油路31に充填されている作動油(高圧油路32における高圧の作動油よりも圧力の低い作動油)は、同図矢印Iに示すように、吸入連通穴42を介して吐出油路21の合流部21aに吸引される。これにより、吐出油路21には、高圧油路32における高圧の作動油とともに、吸入油路31における作動油が吐出油路21に吐出される。吐出油路21に吐出された作動油は、同図矢印Jに示すように、油圧制御装置200が設けられた図示しない変速機の作動油供給部、例えば多くの油量を必要とする潤滑部分に供給され、潤滑部分の潤滑油として機能することとなる。従って、作動油供給部に供給される作動油をすべて図示しないオイルポンプから吐出された高圧の作動油とした場合と比較して、高圧の作動油の量を低減することができるので、効率を向上することができる。
【0037】
以上のように、実施の形態2にかかる油圧制御装置200では、ジェットポンプ1−2が内部に構成されている。つまり、アッパーバルブボディ2およびロアバルブボディ3によりジェットポンプ1−2のボディを構成することができる。従って、油圧制御装置200の構成部材をジェットポンプ1−2の構成部材として共用することができ、ジェットポンプ1−2を備えても、小型化を図ることができる。
【0038】
また、ジェットポンプ1−2のノズル部材5は、油圧制御装置200の構成部材以外であり、油圧制御装置200内に配置される。従って、セパレータプレート4に形成される高圧連通穴41と比較して、任意の形状、例えば先端部5aに向かうに伴い断面を減少して形成することが可能である。従って、高圧の作動油の流れが乱れることを抑制し、ジェットポンプ1−2の性能を向上することができる。
【0039】
また、ジェットポンプ1−2が油圧制御装置200と別構成部材でないので、部品点数の増加を抑制することができる。また、ジェットポンプ1−2が油圧制御装置200の内部に構成されているので、油圧制御装置200および図示しない作動油供給部分とジェットポンプ1−2を接続するための部品や、加工を必要としない。従って、部品点数の削減や、加工数を低減することができる。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態2では、ノズル部材5を第2バルブボディであるロアバルブボディ3とセパレータプレート4とで挟持するが本発明はこれに限定されるものではない。図8は、実施の形態2にかかる油圧制御装置の他の構成例を示す図である。同図に示すように、ノズル部材7は、高圧連通穴44に圧入されていても良い。
【0041】
ノズル部材7は、ノズル部材5と同様に、略円筒形状であり、本体部71と、つば部72とにより構成されている。本体部71は、ノズル部材7の軸方向における両端部のうち一方の端部、すなわち上流側から下流側に向かうに伴い断面が減少して形成されている。つまり、本体部71は、上流側から下流側に向かうに伴い絞られて形成されている。ここで、本体部71の内径は、上流側から下流側に向かうに伴い減少して形成されている。つば部72は、ノズル部材7の軸方向における両端部のうち他方の端部に形成されるものであり、径方向外側に突出して形成されている。なお、つば部72の形状は、つば部72がロアバルブボディ3の高圧油路32の端部32aに挿入することができるように設定されている。従って、ノズル部材7とセパレータプレート4との間をシールするためのOリングなどが必要でないので、部品点数をさらに削減することができる。なお、ノズル部材7は、セパレータプレート4をアッパーバルブボディ2とロアバルブボディ3とに挟持する前に、セパレータプレート4の高圧連通穴44に、上流側(高圧油路側)から圧入される。これにより、ノズル部材7の先端部7aが高圧連通穴44を介して吐出油路21と対向する。
【0042】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3にかかる油圧制御装置について説明する。図9〜図11は、実施の形態3にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。図9〜図11に示す実施の形態3にかかる油圧制御装置300が図1〜図3に示す実施の形態1にかかる油圧制御装置100と異なる点は、吸入油路22が第1バルブボディあるアッパーバルブボディ2に形成されている点である。なお、実施の形態3にかかる油圧制御装置300の基本的構成は、図9〜図11に示すように、実施の形態1にかかる油圧制御装置100の基本的構成とほぼ同一である。従って、同一符号箇所については、その説明を省略あるいは簡略化する。実施の形態3にかかる油圧制御装置300では、ジェットポンプ1−3が吐出油路21と、吸入油路22と、高圧油路32と、高圧連通穴43とにより構成されている。
【0043】
アッパーバルブボディ2は、ジェットポンプ1−1を構成する吐出油路21および吸入油路22が形成されている。吸入油路22は、吐出油路21と連通して形成されている。実施の形態3では、吸入油路22は、端部22aが合流部21aと連通するように、アッパーバルブボディ2に形成されている。つまり、吸入油路22の作動油は、一方向から吐出油路21に流入することとなる。なお、吸入油路22の作動油が複数の方向から吐出油路21に流入するように、吸入油路22と吐出油路21とを連通しても良い。
【0044】
一方、ロアバルブボディ3には、ジェットポンプ1−1を構成する高圧油路32のみが形成されている。また、セパレータプレート4には、ジェットポンプ1−1を構成する高圧連通穴41のみが形成されている。
【0045】
次に、油圧制御装置300に備えられるジェットポンプ1−3の動作について説明する。図示しないオイルポンプから高圧油路32に供給された高圧の作動油は、図9矢印Mに示すように、高圧連通穴41を介して吐出油路21の合流部21aに吐出される。このとき、合流部21aには、負圧が発生する。発生した負圧により、吸入油路22に充填されている作動油(高圧油路32における高圧の作動油よりも圧力の低い作動油)は、同図矢印Nに示すように、吐出油路21の合流部21aに吸引される。これにより、吐出油路21には、高圧油路32における高圧の作動油とともに、吸入油路22における作動油が吐出油路21に吐出される。吐出油路21に吐出された作動油は、同図矢印Oに示すように、油圧制御装置300が設けられた図示しない変速機の作動油供給部、例えば多くの油量を必要とする潤滑部分に供給され、潤滑部分の潤滑油として機能することとなる。従って、作動油供給部に供給される作動油をすべて図示しないオイルポンプから吐出された高圧の作動油とした場合と比較して、高圧の作動油の量を低減することができるので、効率を向上することができる。
【0046】
以上のように、実施の形態3にかかる油圧制御装置300では、ジェットポンプ1−3が内部に構成されている。つまり、アッパーバルブボディ2およびロアバルブボディ3によりジェットポンプ1−3のボディを構成することができる。従って、油圧制御装置300の構成部材をジェットポンプ1−3の構成部材として共用することができ、ジェットポンプ1−3を備えても、小型化を図ることができる。
【0047】
また、ジェットポンプ1−3が油圧制御装置300と別構成部材でないので、部品点数の増加を抑制することができる。また、ジェットポンプ1−3が油圧制御装置300の内部に構成されているので、油圧制御装置100および図示しない作動油供給部分とジェットポンプ1−3を接続するための部品を必要としないので、部品点数の削減を図ることができる。さらに、ジェットポンプ1−3を油圧制御装置300に構成するためのセパレータプレート4の加工は、高圧連通穴41の形成のみであるので、実施の形態1,2よりも加工数のさらなる低減を図ることができる。これにより、さらなる低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる油圧制御装置は、第1バルブボディと、第2バルブボディと、第1バルブボディと第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置に有用であり、特に、ジェットポンプを備えても、小型化を図るのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図1のA−A断面図)である。
【図3】実施の形態1にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図1のB−B断面図)である。
【図4】実施の形態1にかかる油圧制御装置の他の構成例を示す図である。
【図5】実施の形態2にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図5のF−F断面図)である。
【図7】実施の形態2にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図5のG−G断面図)である。
【図8】実施の形態2にかかる油圧制御装置の他の構成例を示す図である。
【図9】実施の形態3にかかる油圧制御装置の構成例を示す図である。
【図10】実施の形態3にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図8のK−K断面図)である。
【図11】実施の形態3にかかる油圧制御装置の構成例を示す図(図8のL−L断面図)である。
【符号の説明】
【0050】
1−1〜1−3 ジェットポンプ
2 アッパーバルブボディ(第1バルブボディ)
21 吐出油路
21a 合流部
21b 拡張部
22 吸入油路
3 ロアバルブボディ(第2バルブボディ)
31 吸入油路
31a 端部
32 高圧油路
32a 端部
33 切欠部
4 セパレータプレート
41,43,44 高圧連通穴
42 吸入連通穴
5 ノズル部材
5a 先端部
51 つば部
52 本体部
6 Oリング
7 ノズル部材
7a 先端部
71 つば部
72 本体部
100,200,300 油圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バルブボディと、第2バルブボディと、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置において、
前記第1バルブボディに形成される吐出油路と、
前記第2バルブボディに形成され、かつ前記セパレータプレートに形成される吸入連通穴を介して、前記吐出油路と連通する吸入油路と、
前記第2バルブボディに形成され、かつ前記吸入油路における作動油の圧力よりも高い圧力の作動油が供給される高圧油路と、
前記セパレータプレートに形成され、前記高圧油路と前記吐出油路とを連通する高圧連通穴と、
を備えるジェットポンプが形成されていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
第1バルブボディと、第2バルブボディと、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとで挟持されるセパレータプレートとからなる油圧制御装置において、
前記第1バルブボディに形成される吐出油路と、
前記第1バルブボディに形成され、かつ前記吐出油路と連通する吸入油路と、
前記第2バルブボディに形成され、かつ前記吸入油路における作動油の圧力よりも高い圧力の作動油が供給される高圧油路と、
前記セパレータプレートに形成され、前記高圧油路と前記吐出油路とを連通する高圧連通穴と、
を備えるジェットポンプが形成されていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
ノズル部材をさらに備え、
前記ノズル部材は、前記第2バルブボディと前記セパレータプレートとで挟持され、かつ前記先端部が前記高圧連通穴を介して吐出油路と対向する請求項1または2に記載の油圧制御装置。
【請求項4】
ノズル部材をさらに備え、
前記ノズル部材は、前記高圧連通穴に圧入され、かつ前記先端部が前記高圧連通穴を介して吐出油路と対向する請求項1または2に記載の油圧制御装置。
【請求項5】
前記ノズル部材は、先端部に向かうに伴い断面が減少する請求項3または4に記載の油圧制御装置。
【請求項6】
前記高圧連通穴は、前記セパレータプレートを前記吐出油路側に突出させることで形成されている請求項1または2に記載の油圧制御装置。
【請求項7】
前記高圧連通穴は、吐出油路側に向かうに伴い断面が減少する請求項6に記載の油圧制御装置。
【請求項8】
作動油を供給する作動油供給部分を有する変速機において、
前記請求項1〜7のいずれか1つに記載の油圧制御装置のジェットポンプから吐出された作動油を前記作動油供給部に供給することを特徴とする変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−115267(P2009−115267A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291257(P2007−291257)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】