説明

油圧制御装置

【課題】エンジンの回転数に拘らず、油圧の調整が可能な油圧制御装置を提供する。
【解決手段】油圧制御装置100は、第1油路17に連通して設けられる第2油路18の流路面積を調節する流路面積調節部20を備え、当該流路面積調節部20は、第2油路18のオイルが供給される供給部21と、当該供給部21の油圧を受ける受圧面31と当該受圧面31に対向配置される対向面32とを有し、第2油路18と交差する方向に往復移動して第2油路18の流路面積を調節するスプール22と、当該スプール22を対向面32から受圧面31の方向に付勢する付勢手段23と、供給部21の油圧が所定の圧力に達するまで供給部21と初期連通状態で連通され、調整油圧を流路面積調節部20から排出する排出部24と、供給部21の油圧に応じて初期連通状態から段階的に増大させる、複数の連通路25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプによって昇圧されたオイルの油圧を制御する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧により駆動される装置が広く利用されてきた。このような装置では、駆動制御を行う油圧を制御する油圧制御装置が利用されている。このような油圧制御装置として、下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている車両用オイル供給装置は、エンジンの回転によって駆動されてオイルを吐出するポンプと、ポンプから吐出されるオイルの油圧により作動する油圧アクチュエータと、ポンプから吐出されるオイルの油圧を用いてエンジンの各部材を潤滑するエンジン潤滑装置と、を備えて構成される。この車両用オイル供給装置は、油圧が低い時にポンプからエンジン潤滑装置へのオイル流量を制限し、ポンプから油圧アクチュエータへのオイル供給を優先させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ポンプの効率を鑑みた場合、低容量のポンプで油圧アクチュエータからの要求油圧を満足させることが望ましい。係る場合、ポンプから吐出されるオイルの油圧を昇圧した上で前記要求油圧に調圧することにより、ポンプの負荷を低減させることができる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、昇圧及び調圧油圧は流路面積を連続して変更できるものの、その流路面積の変更は1段階でのみ行われるので、低回転域での要求油圧を満足させると中回転域での要求油圧を満足できない。このため、エンジンの回転数が低回転域〜中回転域、及び高回転域において、油圧アクチュエータの要求油圧が複数ある場合にはポンプの仕事量を十分に低減させながら油圧アクチュエータの要求油圧を満足させることができない。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、エンジンの回転数の変化に伴い、油圧の調整が可能な油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る油圧制御装置の特徴構成は、
エンジンの回転により駆動されてオイルを吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出されるオイルが供給される第1所定部位と、
前記ポンプと前記第1所定部位とを連通する第1油路と、
前記第1油路に連通して設けられ、前記第1所定部位と異なる第2所定部位にオイルを供給する第2油路と、
前記第2油路に設けられ、前記第2油路の油圧の増大によって前記第2油路の流路面積を増大させ、前記第2油路の油圧の減少によって前記流路面積を減少させる流路面積調節部と、を備え、
前記流路面積調節部は、
前記第2油路のオイルが供給される供給部と、
前記供給部の油圧を受ける受圧面と当該受圧面に対向配置される対向面とを有し、前記第2油路と交差する方向に往復移動して前記第2油路の流路面積を調節するスプールと、
前記スプールを前記対向面から前記受圧面の方向に付勢する付勢手段と、
前記第2油路の油圧が所定の圧力に達するまで前記供給部と初期連通状態で連通され、前記ポンプから吐出されるオイルの油圧が調整された調整油圧を前記流路面積調節部から排出する排出部と、
前記第2油路の油圧の増大によって前記スプールが往復移動方向の一方側に移動しつつ、前記第2油路の流路面積を前記初期連通状態から段階的に増大させる、前記スプールに形成された複数の連通路と、
を有して構成されている点にある。
【0008】
このように、スプールに複数の連通路を設けることで、エンジンの回転数が変化した場合に、エンジンの回転数に拘らず、油圧の調整を複数段階で行うことが可能となる。本構成の装置であれば、エンジン回転数の増大に伴い、スプールが移動して第2油路の流路面積が増大する際に、当該流路面積の増加の程度を段階的に変更することができる。例えば、スプールが第2油路に対して移動する際に、スプールに設けた連通路が次第に第2油路に露出して第2油路の流路面積が順次拡大する状態が生じる。また、スプールの特定の連通路が第2油路に露出したあとの所定の時間内においては、スプールは移動するものの第2油路に対する連通路の露出面積は変化しないため結果として第2油路の流路面積が変化しない状態が生じる。このように、本構成の装置であれば、エンジンの回転数が高まり、第2油路の圧力が増大する過程で、第2油路の流路面積が段階的に変化する。この結果、エンジン各部に供給される油の圧力を段階的に変化させることができる。よって、エンジン回転数の増大に供なって必要な油圧を適宜設定することができるから、ポンプに不必要な仕事を強いることがなくなり、燃費の向上等に寄与することができる。
【0009】
また、前記複数の連通路は、前記スプールの外周面に形成された複数の溝であると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、スプールの外周を削る等により複数の連通路を容易に加工することができる。また、溝の高さ及び深さ等も任意に設定できるので、所期の流路面積を有するスプールを容易に得ることができる。
【0011】
また、前記スプールは、当該スプールの移動過程において前記第2油路の流路面積が一定となる状態が維持された後、前記複数の連通路又は前記スプールの頂部を介して新たな流路が形成されるよう構成されてあると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば初期連通状態から第1連通路及び第2連通路の双方が連通状態となったとき、初期連通状態の第1連通路の流路面積に対して第2連通路の流路面積が加えられるので第2油路の流路面積が増加する。このため、第1連通路及び第2連通路の双方が連通状態となったときの油圧勾配を、初期連通状態の油圧勾配に対して著しく緩やかにすることができる。また、例えば第2連通路のみが連通している状態から第2連通路及びスプールの頂部の双方を介して連通する状態となったとき、第2連通路の流路面積に対してスプールの頂部を介した流路の流路面積が加えられるので第2油路の流路面積が増加する。このため、第1連通路及び第2連通路の双方が連通状態となったときの油圧勾配を、第2連通路のみを介して流通していた状態の油圧勾配に対して著しく緩やかにすることができる。したがって、それぞれの状態において油圧勾配を変更することができるので、油圧勾配を適宜変更しない従来の油圧制御装置に比べて損失を大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】油圧制御装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】油圧調整部の動作を模式的に示す図である。
【図3】その他の実施形態に係る連通路を示す図である。
【図4】その他の実施形態に係るスプールを示す図である。
【図5】その他の実施形態に係る連通路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る油圧制御装置100は、車両のエンジンにより駆動されるポンプの回転数が変更した場合でも、各種装置からの要求油圧に対応した油圧を生成する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0015】
1.油圧制御装置の構成
図1には、油圧制御装置100の構成を模式的に示したブロック図が示される。図1に示されるように、油圧制御装置100は、ポンプ10、第1所定部位11、第2所定部位12、オイルコントロールバルブ15、第1油路17、第2油路18、流路面積調節部20の各機能部を備えて構成される。
【0016】
ポンプ10は、エンジン(図示せず)の回転により駆動されてオイルを吐出する。ポンプ10の回転軸は、エンジン(図示しない)のクランクシャフトに連結固定される。これにより、クランクシャフトの回転駆動力によりポンプ10は機械的に駆動される。ポンプ10は、オイルパン1に貯留されたオイルを吸入し、そのオイルを吐出油路2へ吐出する。吐出油路2にはオイルフィルタ3が配設され、オイルストレーナ4で濾過されなかった小さなごみやスラッジを濾過する。オイルフィルタ3による濾過後のオイルは、後述する第1油路17に供給される。
【0017】
第1油路17は、ポンプ10と第1所定部位11とを連通する。第1所定部位11は、ポンプ10から吐出されるオイルが供給される部位である。本実施形態では、第1所定部位11は、弁開閉時期制御装置(VVT)11A、ターボチャージャ11B、ピストンジェット11Cが相当する。もちろん、車両によっては、上記3つを備えていない場合もある。このため、第1所定部位11は弁開閉時期制御装置(VVT)11A、ターボチャージャ11B、ピストンジェット11Cの少なくとも一つであっても良い。
【0018】
オイルコントロールバルブ15は、電磁制御型であって、弁開閉時期制御装置11Aの進角室連通路及び遅角室連通路に対するオイルの供給、排出、及び給排遮断の制御が可能である。オイルコントロールバルブ15は、スプール式に構成され、図示しないECU(エンジンコントロールユニット)による給電量の制御に基づいて動作する。すなわち、オイルコントロールバルブ15によって、進角油路5Aへのオイル供給・遅角油路5Bからのオイル排出、進角油路5Aからのオイル排出・遅角油路5Bへのオイル供給、進角油路5A及び遅角油路5Bへのオイル給排遮断、といった制御が可能である。弁開閉時期制御装置11Aの制御については、公知であるので説明は省略する。
【0019】
オイルコントロールバルブ15は、給電すると進角油路5Aにオイルを供給可能な状態となり、給電を停止すると遅角油路5Bにオイルを供給可能な状態となるよう設定されている。また、オイルコントロールバルブ15は、電磁ソレノイドに供給する電力のデューティ比の調節により開度を設定するものである。これにより、オイルの給排量の微調節が可能である。このように、オイルコントロールバルブ15を制御することによって、弁開閉時期制御装置11Aの進角室及び遅角室に対してオイルを供給、排出、又は給排量保持し、ベーンにそのオイルの油圧力を作用させることができる。これにより、エンジンのバルブの開閉時期を調整することが可能となる。
【0020】
また、第1油路17は分岐して弁開閉時期制御装置11A以外の第1所定部位、即ちターボチャージャ11Bやピストンジェット11Cにもオイルを供給する。ターボチャージャ11B及びピストンジェット11Cは、ポンプ10から吐出されるオイルの油圧がそのまま伝達される。なお、第1所定部位11として、弁開閉時期制御装置11A、ターボチャージャ11B、及びピストンジェット11C以外のものを備えることも可能である。
【0021】
第2油路18は、第1油路17に連通して設けられ、第1所定部位11と異なる第2所定部位12にオイルを供給する。第1所定部位11とは、本実施形態では上述の弁開閉時期制御装置11A、ターボチャージャ11B、及びピストンジェット11Cである。第2所定部位12とは、本実施形態ではメインギャラリ12が相当する。第2油路18は、第1油路17から分岐して設けられる。
【0022】
第2油路18には、流路面積調節部20が設けられる。流路面積調節部20は、詳細は後述するが、第2油路18の油圧の増大によって第2油路18の流路面積を増大させ、第2油路18の油圧の減少によって流路面積を減少させる。流路面積調節部20は、第2油路18が連通して設けられる。この第2油路18には、流路面積調節部20により生成された調整油圧を受けて駆動されるメインギャラリ12も設けられる。したがって、第2油路18は、流路面積調節部20とメインギャラリ12とを連通する。
【0023】
メインギャラリ12とは、図示しないピストン、シリンダ、クランクシャフトの軸受等の摺動部材全体を示す。また、その他車両に備えられ、油圧により駆動される装置も相当する。なお、第2油路18には、油圧を検出する油圧センサ13が備えられる。この油圧センサ13の検出結果に基づき車両の乗員に油圧が低くなっていることを明示することも可能となる。
【0024】
2.流路面積調節部の構成
次に、流路面積調節部20について説明する。流路面積調節部20は、供給部21、スプール22、付勢手段23、排出部24、連通路25を備えて構成される。供給部21は、第2油路18のオイルが供給される供給口に相当する。第2油路18のオイルは、上述のようにポンプ10から吐出されるオイルである。したがって、供給部21は第2油路18を介して第1油路17と連通して設けられる。
【0025】
スプール22は、受圧面31と対向面32とを有して構成される。ここで、本実施形態に係るスプール22は円筒状に構成され、円筒状の軸方向一端のみが閉口される。このように閉口された軸方向外側の面が受圧面31にあたる。当該軸方向外側の面には、軸方向外側に突出する突出部51が形成される。これにより、受圧面31は、スプール22を収容するハウジング40の天部41と所定の空隙49を有するように構成される。
【0026】
ここで、詳細は後述するがスプール22は、ハウジング40内を移動可能に構成される。ハウジング40の側部42と、ハウジング40を収容するケース部材60との間には、供給部21からのオイルが空隙49へ流通する側方流通路61が設けられる。これにより、受圧面31が、供給部21からの油圧を受け、この油圧に応じてスプール22が第2油路18と交差する方向に往復移動して第2油路18の流路面積を調節することが可能となる。
【0027】
一方、対向面32は、受圧面31に対向配置される。すなわち、上述の開口された部分の軸方向内側の面が対向面32に相当する。ここで、円筒状のスプール22の軸方向他端には、付勢手段23が挿入配置される。これにより、スプール22は、対向面32から受圧面31の方向に付勢される。したがって、受圧面31に油圧が給じられていない場合には、突出部51が天部41に当接する位置までスプール22が移動する。一方、受圧面31に油圧が給じられると、付勢手段23の付勢力に抗してスプール22が移動する。なお、ハウジング40の底部43には、スムーズにスプール22がハウジング40の側部44に沿って移動し易くなるように、空気孔45が形成されている。
【0028】
排出部24は、ポンプ10から吐出されるオイルの油圧が調整された調整油圧を流路面積調節部20から排出する。詳細は後述するが、流路面積調節部20は、ポンプ10からのオイルの油圧を調整可能に複数段階で切替え可能に構成されている。ここで、上述のように、受圧面31に油圧が給じられていない場合には、スプール22は突出部51が天部41に当接する位置にある。本実施形態に係る流路面積調節部20は、係る場合でも供給部21と排出部24とが連通状態となるように構成されている。この状態を「初期連通状態」と称する。この初期連通状態は、第2油路18の油圧が所定の圧力に達するまで維持される。
【0029】
連通路25はスプール22に形成され、供給部21と排出部24とを連通する。また、連通路25は、複数設けられる。本実施形態では、連通路25は第1連通路25A及び第2連通路25Bであるとして説明する。また、複数の連通路25は、スプール22の外周面に形成された複数の溝が相当する。
【0030】
連通路25は、第2油路18の流路面積を変更する。この変更は、供給部21の油圧に応じて変更される。すなわち、第2油路18の油圧が増大によってスプール22が往復移動方向の一方側に移動しつつ、第2油路18の流路面積を初期連通状態から段階的に増大させる。ここで、上述のように連通路25は、第1連通路25A及び第2連通路25Bの複数からなる。第2連通路25Bの流路面積は、第1連通路25Aの流路面積よりも大きな流路面積を有するように形成される。第1連通路25Aが初期連通状態を形成する。すなわち、第1連通路25Aを介して供給部21と排出部24とが連通する状態が、上述の初期連通状態に相当する。一方、第1連通路25Aが全閉状態となり、第2連通路25Bを介して供給部21と排出部24とが連通する状態は、第1連通状態と称する(図2上段のI)。
【0031】
ここで、受圧面31に給じられる油圧が所定の値以上になると、スプール22はハウジング40の底部43及びハウジング40の側部44に収容されるように完全に引退する。係る場合、供給部21と排出部24とは、スプール22に設けられた連通路25を介さずに連通することになる。このような状態は第2連通状態と称される(図2上段のII)。このため、本流路面積調節部20によれば、初期連通状態にある流路面積を、第1連通状態、及び第2連通状態に段階的に変更することが可能となる。
【0032】
3.流路面積調節部による流路面積の変更
次に、流路面積調節部20による流路面積の変更について図面を用いて説明する。図2には、流路面積調節部20の動作の模式図、及び流路面積調節部20の油圧特性が示される。図2(i)は、油圧制御装置100の初期状態が示される。したがって、供給部21と排出部24とが第1連通路25Aで連通している状態である初期連通状態に相当する。この状態にあっては、供給部21からのオイルは破線で示されるように流通する。
【0033】
ここで、図2の上部には、横軸をポンプ10の回転数とし、縦軸を第2油路18の油圧とした油圧特性が示される。上述の図2(i)の状態にあっては、第2油路18の油圧は、ポンプ10の回転数に応じて増大する。この状態は、ポンプ10の回転数がT1になり、供給部21の油圧が受圧面31に給じられて第2連通路25Bが開口するまで継続する。この状態が図2(ii)に示される。ここで、スプール22は、当該スプール22の移動過程において第2油路18の流路面積が一定となる状態が維持された後、第2連通路25Bを介して新たな流路が形成されるよう構成されている。すなわち、初期連通状態から第2連通路25Bが開口するまでの間、第2油路18の流路面積は第1連通路25Aの流路面積で維持される。したがって、初期連通状態から第2連通路25Bが開口するまでの間は、所定の油圧勾配が維持される。
【0034】
更にポンプ10の回転数が増大すると、供給部21の油圧が増大し、受圧面31に給じられる油圧が増大する。これにより、第2連通路25Bの一部が連通状態となるが、第1連通路25Aは第2連通路25Bの一部が連通状態となった直後は初期連通状態と同じ流路面積を維持するように構成されている。このため、初期連通状態から第1連通路25A及び第2連通路25Bの双方が連通状態となった場合の油圧勾配を、初期連通状態における油圧勾配よりも緩やかにすることができる。このような第2連通路25Bの一部が連通状態である時の油圧勾配は、第2連通路25Bの流路面積が小さい程、大きくすることができる。
【0035】
その後、第2油路18の油圧が増大すると、図2(iii)に示されるように、第2連通路25Bが全開状態となり、第1連通路25Aが全閉状態となる。この状態のポンプ10の回転数をT2とする。このような回転数がT2になった直後の油圧勾配は、第2連通路25Bが構成する流路面積が小さい程、大きくなる。この状態は、図2(iv)に示されるように、第2連通路25Bの流路面積が小さくなり始めると共に、スプール22の頂部を介して供給部21と排出部24とが連通可能となるまで継続する。
【0036】
ここで、スプール22が、当該スプール22の移動過程において第2油路18の流路面積が一定となる状態が維持された後、スプール22の頂部を介して新たな流路が形成されるよう構成されている。つまり、更に、ポンプ10の回転数が増大し、スプール22の頂部を介して供給部21と排出部24とが連通し始めるまで、第2油路18の流路面積は第2連通路25Bの流路面積で維持される。したがって、スプール22の頂部を介して新たな流路が形成された後の油圧勾配を、第2連通路25Bの流路面積で維持されている状態の油圧勾配よりも緩やかにすることが可能となる。なお、この際、スプール22の頂部とハウジング40の天部41とで構成される流路面積と、第2連通路25Bの流路面積の減少分のバランスにより油圧勾配が設定される。この時の油圧の変曲は第2連通路25Bにより構成される流路面積が小さい程、急になり、この時の油圧勾配は第2連通路25Bにより構成される流路面積が小さい程、大きくなる。
【0037】
その後、スプール22がハウジング40の底部43及びハウジング40の側部44に完全に引退されるまで(図2(v)参照)、所定の油圧勾配で油圧が高くなる。完全にスプール22が引退すると、ポンプ10の吐出容量まで油圧が増大する。このように、本流路面積調節部20によれば、ポンプ10の回転数が変動しても、図2に示される第1連通状態I及び第2連通状態IIのように段階的に油圧を調整するが可能である。したがって、適切に弁開閉時期制御装置11A、ターボチャージャ11B、ピストンジェット11C、及びメインギャラリ12にオイルを供給することが可能となる。
【0038】
このように本油圧制御装置100によれば、スプール22に複数の連通路25(25a、25b)が設けられているので、エンジンの回転数が変化した場合であっても、エンジンの回転数に拘らず、油圧の調整を複数段階で行うことが可能となる。したがって、ポンプ10の損失を低減することができるので、燃費を向上させることができる。
【0039】
4.その他の実施形態
上記実施形態では、連通路25が、スプール22の外周面に形成された複数の溝であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示されるように、連通路25を、スプール22を径方向に貫通する連通孔25として設けることも可能である。係る場合、受圧面31と対向面32との間に連通孔25を設けるので、受圧面31と対向面32とが対向する間隔を、少なくとも連通孔25が形成できるように大きくすると好適である。また、連通孔25は、第1連通孔25Aの開口面積を第2連通孔25Bの開口面積よりも小さくすることにより、上述の溝で形成した場合と同様の特性を得ることができる。
【0040】
更に、連通孔25(連通孔25の開口部)が供給部21と排出部24とに対向する位置からずれないように、スプール22の外周面に軸方向に沿って凹部91を形成し、ハウジング40の側部42に当該凹部と嵌合する凸部(図示せず)を形成すると好適である。これにより、スプール22が軸心に沿って回転することを防止できる。このような場合であっても、流路面積調節部20は適切に油圧を調整することが可能である。
【0041】
上記実施形態では、スプール22に第1連通路25A及び第2連通路25Bが形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば図4に示されるように、スプール22に第1連通路25A、第2連通路25B、及び第3連通路25Cの3つの連通路25を形成することも可能である。係る場合、供給部21の流路面積の変更を更に多くの段階的に増大させることが可能である。もちろん、更に増やして4つ以上の連通路25を形成することも当然に可能である。
【0042】
上記実施形態では、連通路25が供給部21の流路面積を変更するとして説明した。例えば、図5(a)及び図5(b)に示されるように、連通路25のスプール22の軸方向の長さaと、連通路25の深さbとを変更することにより流路面積を設定することも可能である。
【0043】
上記実施形態では、第1連通路25Aは、第2連通路25Bの一部が連通状態となった直後は初期連通状態と同じ流路面積を維持するように構成されてあると共に、第2連通路25Bが全開状態となった場合に全閉状態となるように構成されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1連通路25Aが
、第2連通路25Bの一部が連通状態となった場合に初期連通状態よりも小さい流路面積となるように構成することも可能であるし、第2連通路25Bが全開状態となった場合に一部が連通状態となるように構成しても良い。
【0044】
本発明は、ポンプによって昇圧されたオイルの油圧を制御する油圧制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10:ポンプ
11:第1所定部位
11A:弁開閉時期制御装置(VVT)
11B:ターボチャージャ
11C:ピストンジェット
12:メインギャラリ(第2所定部位)
17:第1油路
18:第2油路
20:流路面積調節部
21:供給部
22:スプール
23:付勢手段
24:排出部
25:連通路
25A:第1連通路
25B:第2連通路
31:受圧面
32:対向面
100:油圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転により駆動されてオイルを吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出されるオイルが供給される第1所定部位と、
前記ポンプと前記第1所定部位とを連通する第1油路と、
前記第1油路に連通して設けられ、前記第1所定部位と異なる第2所定部位にオイルを供給する第2油路と、
前記第2油路に設けられ、前記第2油路の油圧の増大によって前記第2油路の流路面積を増大させ、前記第2油路の油圧の減少によって前記流路面積を減少させる流路面積調節部と、を備え、
前記流路面積調節部は、
前記第2油路のオイルが供給される供給部と、
前記供給部の油圧を受ける受圧面と当該受圧面に対向配置される対向面とを有し、前記第2油路と交差する方向に往復移動して前記第2油路の流路面積を調節するスプールと、
前記スプールを前記対向面から前記受圧面の方向に付勢する付勢手段と、
前記第2油路の油圧が所定の圧力に達するまで前記供給部と初期連通状態で連通され、前記ポンプから吐出されるオイルの油圧が調整された調整油圧を前記流路面積調節部から排出する排出部と、
前記第2油路の油圧の増大によって前記スプールが往復移動方向の一方側に移動しつつ、前記第2油路の流路面積を前記初期連通状態から段階的に増大させる、前記スプールに形成された複数の連通路と、を有して構成されている油圧制御装置。
【請求項2】
前記複数の連通路は、前記スプールの外周面に形成された複数の溝である請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記スプールは、当該スプールの移動過程において前記第2油路の流路面積が一定となる状態が維持された後、前記複数の連通路又は前記スプールの頂部を介して新たな流路が形成されるよう構成されてある請求項1又は2に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92088(P2013−92088A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234056(P2011−234056)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】