説明

油圧式杭抜き装置および杭抜き方法

【課題】地盤に埋設された杭、たとえば外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合、必要な引き抜き力を杭に伝えることができ、杭抜き作業が効率的に行なえる簡単なフレーム構造の油圧式杭抜き装置を、杭抜き方法とともに提供する。
【解決手段】前後一対の主フレーム4にクライミングロッド1aがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキ1を搭載するとともに、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具5とを、連結部6で着脱可能に連結した油圧式杭抜き装置および杭抜き方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に埋設された杭、たとえば外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合でも、必要な引き抜き力を鋼管杭に伝えることができる、簡単なフレーム構造の油圧式杭抜き装置および杭抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭抜き装置として、クレーンに吊られたバイブロハンマーを杭頭部に接続し、その上下振動によって、地盤に埋設された杭を引き抜く装置、あるいはクレーンに回転自在に滑車を吊り下げ、この滑車に巻き付けたワイヤロープの一端を杭頭部に接続し、ワイヤロープの他端に反力板を接続し、反力板の落下力を利用して地盤に埋設された杭を引き抜く装置が用いられていた。バイブロハンマーの上下振動、あるいは反力板の落下力を利用する抜き装置では、騒音問題が生じる。そこで、騒音問題が生じ難い油圧式引抜き装置が各種提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1に記載の油圧式引抜き装置は、地盤に埋設され杭を囲むように地盤表面に配置される架台フレームと、架台フレームに固定されている左右一対の引き抜きジャッキと、複数本の支柱の上に載置され、杭本体部に対して前進・後退可能でかつ昇降可能な反力フレームと、反力フレームに搭載され、杭本体部(H形鋼あるいは鋼矢板等のウエブ部)を両面から押圧する一対の締結ジャッキとを具備する。
【0004】
特許文献1に記載の油圧式引抜き装置は、フレーム構造が複雑となり、また、H形鋼あるいは鋼矢板等のウエブ部を両面から押圧する一対の締結ジャッキも必要となる欠点がある。
これに対し、特許文献2に記載の油圧式引抜き装置は、図8(a)、(b)に示したように、小型で持ち運びができる。すなわち、筐体30に、杭Wを挟んで左右一対の油圧ジャッキ31を搭載し、穴部を有する腕部33と、穴部で挟持された杭Wを締着する締着手段34(ボルト・ナット)とからなる杭保持部材32を一対の油圧ジャッキ31上に載置し、ハンドル35を操作して、左右一対の油圧ジャッキ31で杭保持部材32を押し上げる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−31976号公報
【特許文献2】特開2008−297823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された油圧式引抜き装置は、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合、引き抜き力が外径に応じて大きくなるため、筐体30がその反力に抗することができないという、装置上の欠点がある。たとえ、筐体30を架台フレームの上に置いたとしても、保持部材32の穴部と杭W間で滑りが生じやすく、杭抜き作業が効率的に行なえないという問題がある。
【0007】
すなわち、保持部材32の穴部と杭W間での滑りを防止するためには、締着手段34(ボルト・ナット)の締め付けを強くする必要があり、そうしないと、左右一対の油圧ジャッキ31で杭保持部材32を押し上げても、必要な引き抜き力を杭に伝えることができず、その分だけ杭を引き抜くことができないから、上記したとおり、杭抜き作業が効率的に実施できない。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術に鑑み、地盤に埋設された杭、たとえば外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合、必要な引き抜き力を杭に伝えることができ、杭抜き作業が効率的に行なえる簡単なフレーム構造の油圧式杭抜き装置を、杭抜き方法とともに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、油圧式杭抜き装置の問題点について鋭意検討した結果、前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載し、クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具とを、連結部で連結することで、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)地盤に埋設された杭を引き抜くための油圧式杭抜き装置であって、前記杭を囲むように地盤表面に配置された枠状の架台フレームと、該枠状の架台に下端部が固定された複数本の支柱フレームと、複数本の支柱の上端部に左右方向両端部が固定され、かつ前記杭の前後に並設された一対の主フレームを具備し、該前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載するとともに、前記クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具とを、連結部で着脱可能に連結したことを特徴とする油圧式杭抜き装置。
(2)前記クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具との連結部は、係合ピンとピン穴で構成され、前記吊り金具と連結金具の両方に係合ピンに対応するピン穴を設け、該ピン穴に係合ピンを差し込んで回動可能に連結したことを特徴とする上記(1)に記載の油圧式杭抜き装置。
(3)前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具は、梁の両端部に左右方向に貫通したピン穴と前記吊り金具が上方から収まる上部開口を有し、長さが前記杭の外形よりも長い両端部上部開口梁材を、前記杭に設けた部材挿入用貫通孔に、遊嵌状態で前面および後面から突き出るように挿入したものであることを特徴とする上記(2)に記載の油圧式杭抜き装置。
(4)前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具は、梁の一端部に左右方向に貫通したピン穴と前記吊り金具が上方から収まる上部開口を有しかつ梁の他端にフランジを有する一端部上部開口梁材を、前記フランジを介して前記杭の前後面に溶接、接着材等により、固着したものであることを特徴とする上記(2)に記載の油圧式杭抜き装置。
(5)前記杭を所定高さ分だけ引き抜いた状態で、前記杭に設けた部材挿入用貫通孔から、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具を引き出す機構が、前記杭の前方に配設されていることを特徴とする上記(3)に記載の油圧式杭抜き装置。
(6)地盤に埋設された杭を引き抜くための杭抜き方法であって、前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載し、前記杭が地盤表面から所定高さ突出している状態を基準とし、基準状態で、前記杭の前後面に外向きに突出して連結金具を設け、前記クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と前記連結金具を連結部で着脱可能に連結する工程と、前記クライミングロッドを上昇させ、前記杭を所定高さ分だけ引き抜く上昇工程と、所定高さ突出している基準位置で前記杭を切断し、上部を除去する杭切断・除去工程と、前記連結部を開放する工程と、引き続きクライミングロッドの下端部に設けた吊り金具を元の位置にまで下降させる下降工程を有することを特徴とする杭抜き方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる油圧式杭抜き装置によれば、前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載し、クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具とを、連結部で連結した。したがって、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合でも、連結部を介して必要な引き抜き力を杭に伝えることができ、所定の高さ分だけ確実に杭を引き抜くことができる。その結果、杭抜き作業が効率的に行なえる簡単なフレーム構造の油圧式杭抜き装置を実現できる。また本発明の杭抜き方法によれば、所定の高さ分だけ確実に杭を引き抜くことができるから、杭抜き作業が効率的に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明例にかかる油圧式杭抜き装置の正面図である。
【図2】本発明例にかかる油圧式杭抜き装置の平面図である。
【図3】(a)は本発明に用いて好適な主フレームの構造を示す側面図、(b)はその長手方向中央部の断面図である。
【図4】(a)は本発明に好適な連結金具の取付け状態を示す正面図、(b)は同平面図、(c)はその斜視図である。
【図5】(a)は本発明に好適な他の連結金具の取付け状態を示す正面図、(b)は同平面図、(c)はその斜視図である。
【図6】本発明に用いて好適な、杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具を引き出す機構の側面図である。
【図7】杭切断・除去作業に用いて好適な装置を示す正面図である。
【図8】(a)は特許文献2に記載の油圧式引抜き装置の平面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる油圧式杭抜き装置について詳細に説明する。
まず、本発明に用いる油圧式ジャッキは、クライミングロッド1aがシリンダ内を貫通している(図1参照)。この油圧式ジャッキ1の構造は、主シリンダと副シリンダとからなり、その動作は、油圧ユニットから供給される油圧により、クライミングロッド1aを上昇あるいは下降させる。すなわち、主シリンダとこの主シリンダに内挿された主ピストンとの伸縮動作によって、クライミングロッド1a(節付きステップロッドともいう)の所定の間隔で設けた係合用凹所に、上部係合部と下部係合部とを交互に係合させて昇降動作するようにしている。この係合用凹所は、クライミングロッド1aの全周にわたって半円状に切り込み形成しかつ前記上部および下部係合部は、クライミングロッド1aの係合用凹所に係脱される係合用球体と、クライミングロッド1aに嵌装した副シリンダに内挿された副ピストンに連結されこの副ピストンの進退動作によって係合用球体を係合用凹所に係脱動作させるくさび部材と、を具備してなる。このようなクライミングロッド1aがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキ1を、前後一対の主フレームに搭載し、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bで対象物(この場合、杭W)を引き上げる。なお、クライミングロッド1aは、カプラーでつなぎ合わせて適宜な長さにする。
【0014】
次いで、本発明例の油圧式杭抜き装置について説明する。
図1は本発明例にかかる油圧式杭抜き装置の正面図、図2はその平面図である。また、図3(a)は本発明に用いて好適な主フレーム4の構造を示す側面図、図3(b)はその長手方向中央部の断面図である。この場合、前後一対の主フレーム4を所定高さに支持する支柱3は4本とし、枠状の架台フレーム2に下端部を固定した4本の支柱3の安定性を高めるため、左右一対のサブフレーム7を設けている(図2参照)。この左右一対のサブフレーム7は、支柱3の上部近くで固定され、前後一対の主フレーム4を支持する支柱3同士を連結している。
【0015】
図1中、実線で示した杭Wの位置が、杭抜き作業前の基準状態であり、基準状態で、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、杭Wの前後面に外向きに突出して設けた連結金具5とを連結部6で連結した後、クライミングロッド1aを上昇させる一回の杭抜き作業で、所定高さ分Δhだけ、杭Wを引き抜いた状態を2点鎖線で示した。
本発明例の油圧式杭抜き装置は、図1、図2に示したように、地盤表面Gから突出させた杭Wを囲むように、地盤表面Gに配置された枠状の架台フレーム2と、該枠状の架台フレーム2に下端部が固定された4本の支柱フレーム3と、該4本の支柱フレーム3の上端部に左右方向両端部が固定され、かつ杭Wの前後に並設された2本の主フレーム4を具備する。この前後一対の主フレーム4は、杭Wの外形よりも長い部材であり、その長さ方向中央部に、クライミングロッド1aがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキ1を搭載している。そして、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、杭Wの前後面に外向きに突出して設けた連結金具5とを、連結部6で着脱可能に連結した(図1、図2参照)ことに特徴がある。主フレーム4の長さとは、図1、図2で、左右方向のことである。
【0016】
ここで、各主フレーム4の長さ方向中央部には、図3(b)に示したように、クライミングロッド1aが上昇しあるいは下降するロッド用貫通孔8が形成される。そこで、各主フレーム4としては、図3(a)のような梁部材とするのが好適である。図3(a)のような梁部材は、例えば、厚み方向を上下方向に一致させた上下の鋼板間に、厚み方向を上下方向に対して直交するよう、間隔を隔てて2枚の鋼板を並べ、溶接で、上下の鋼板と間隔を隔てて並べた2枚の鋼板とを長さ方向全長にわたり固定して作成する。
【0017】
このような構造をもつ前後一対の主フレーム4に油圧式ジャッキ1を搭載しているから、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合でも、各主フレーム4は反力に効果的に抗することができる。
また、枠状の架台フレーム2、支柱フレーム3およびサブフレーム7の各部材にはH形鋼を用いるのが、適宜な強度および断面寸法のH形鋼を選定できるので好適である。その際、架台フレーム2は、適宜な強度および断面寸法のH形鋼を並べて溶接等で固定して、枠状に作成する。なお、枠状の架台フレーム2の面積は、反力によって枠状の架台フレーム2と地盤間の面圧が地盤の耐力を超えないように広めに設定する。
【0018】
また、本発明にかかる油圧式杭抜き装置は、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、杭Wの前後面に外向きに突出して設けた連結金具5とを、連結部6で着脱可能に連結した。このようにすれば、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合でも、連結部6を介して必要な引き抜き力を杭Wに伝えることができ、クライミングロッド1aを上昇させる一回の杭抜き作業により、杭Wを所定高さ分Δhだけ、確実に引き抜くことができる。続いて、杭Wが所定高さ突出している位置で杭を切断し、上部を除去する杭切断・除去工程を行なった後、連結部を切り離すことが容易にできる。
【0019】
ここで、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具5との連結部6は、係合ピン10とピン穴11とで構成し、吊り金具1bと連結金具5の両方にピン穴11を設け、該ピン穴11に係合ピン10を差し込んで、回動可能に連結するのが、連結部に無理な力が加わることを防止でき、好適である(図4参照)。
【0020】
図4(a)は本発明に好適な連結金具5の取付け状態を示す正面図、図4(b)は同平面図、図4(c)はその斜視図である。図4に示した連結金具5は、長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を、前記杭に設けた部材挿入用貫通孔に、遊嵌状態で前面および後面から突き出るように挿入したものである。両端部上部開口梁材は、梁の両端部に係合ピン10と対応するピン穴11を有するとともに、吊り金具1bが上方から収まる上部開口9を有する。杭Wに設ける部材挿入用貫通孔12の大きさは、両端部上部開口梁材の断面寸法よりも大きい。
【0021】
図5(a)、(b)に示したような、フランジ14を介して杭Wの前後面に溶接、接着材等により、固着して設けた連結金具5としてもよい。すなわち、図5に示した連結金具5は、梁の一端部に左右方向に貫通したピン穴11と吊り金具1bが上方から収まる上部開口9を有しかつ梁の他端にフランジ14を有する一端部上部開口梁材を、フランジ14を介して杭Wの前後面に溶接、接着材等により、固着したものである。
【0022】
なお、図4に示した連結金具5の場合、杭Wに設けた部材挿入用貫通孔12から、長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を引き出して、次の杭抜き作業にそれを再利用できるのでより好ましい。一方、図5に示した連結金具5の場合、一端部上部開口梁材を、フランジ14を介して杭Wの前後面に溶接、接着材等により、固着して設けたものであるから、次の杭抜き作業にそれを再利用することは容易でない。ただし、図4あるいは図5に示したどちらの連結金具5でも、両端部上部開口梁材あるいは一端部上部開口梁材や係合ピン10を適宜とすることで、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合でも、吊り金具1bと、杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具5との連結部6を介して必要な引き抜き力を杭Wに伝えることができる。この両端部上部開口梁材あるいは一端部上部開口梁材としては、図3(a)のような梁部材を加工して用いるのが、その重量を軽減できかつ必要な引き抜き力を杭Wに伝えることができるので好適である。
【0023】
また、外径が大きい鋼管杭を引き抜く場合、長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を、遊嵌状態で前面および後面から突き出るように挿入したものである連結金具5はかなり重くなる。このため、次の杭抜き作業に連結金具5を再利用するため、杭Wを所定高さ分Δhだけ引き抜いた状態で、杭W´に設けた部材挿入用貫通孔12から、長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を引き出す機構が杭Wの前方に配設されているのが好ましい(図6参照)。
【0024】
この長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を引き出す機構は、杭Wに設けた部材挿入用貫通孔12の下部で保持される出入り可能な先行レール16と、先行レール16を収めたレール収納用フレーム17と、両端部上部開口梁材の下部に設けた、複数のころが保持部材周りを転がりつつ移動するころ保持手段18と、ワーヤロープ20の一端が両端部上部開口梁材の後進側に取り付けてられている、収納用フレーム17に回転自在に取り付けた滑車19とを具備してなる。
【0025】
ここで、図6中、21はワーヤロープの一端側取り付け部、22は電動式ウインチ、23はウインチ吊り下げフレームを示した。ウインチ吊り下げフレーム23は、前側の主フレーム4に取り付ける。電動式ウインチ22は、杭W´に設けた部材挿入用貫通孔12から引き出した長さが杭Wの外形よりも長い両端部上部開口梁材を吊り上げた後、下方に吊り下げて、次の杭抜き作業に連結金具5として再利用するためのものである(図1、図6参照)。なお、杭W´は一回の杭抜き作業で杭を引き抜いた状態で切断し除去される部分である。
【実施例】
【0026】
外径が1000mmである鋼管杭を引き抜く油圧式杭抜き装置を構成した(図1、図2、図3参照)。その際、枠状の架台フレーム2は、図1に示したように、設置前に杭Wの周囲の地盤を掘り下げ、叩くなどして杭Wの周囲の地盤表面を1500mm程度下げてから設置した。前後一対の主フレーム4にクライミングロッド1aがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキ1を搭載するとともに、クライミングロッド1aの上昇工程で、杭Wを所定高さ分Δh=3000mmだけ引き抜くことができようにした。クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bと、杭Wの前後面に外向きに突出して設けた連結金具5とは、以下のような連結部6とした。すなわち、地盤表面Gから杭Wが約2000mm突出した位置を基準状態とし、この基準状態で、高さ550mm、幅300mmの両端部上部開口梁材(長さ2000mm)が遊嵌状態で挿入できる部材挿入用貫通孔12を杭Wに設け、この部材挿入用貫通孔12に、前記した長さ2000mmの両端部上部開口梁材を挿入し、連結金具5とした(図4参照)。この長さ2000mmの両端部上部開口梁材の両端部には、係合ピン10と対応するピン穴11を形成した。一方、クライミングロッド1aの下端部に設けた吊り金具1bにも、係合ピン10と対応するピン穴11を形成した。そして、吊り金具1bと連結金具5とを係合ピン10で着脱自在に連結する連結工程、クライミングロッド1aを上昇させ、杭Wを所定高さ分Δhだけ引き抜く上昇工程と、杭Wが所定高さ突出している位置で杭を切断し、上部を除去する杭切断・除去工程と、連結部を切り離す工程と、引き続きクライミングロッドの下端部に設けた吊り金具1bを元の位置にまで下降させる下降工程を繰り返した。
【0027】
元の位置には、前記した高さ550mm、幅300mmの両端部上部開口梁材(長さ2000mm)が遊嵌状態で挿入できる部材挿入用貫通孔12を杭Wに設け、この部材挿入用貫通孔12に、前の上昇工程で用いた両端部上部開口梁材を挿入し、連結金具5とした。この結果、クライミングロッド1aを上昇させる上昇工程で連結部を介して必要な引き抜き力を杭に伝えることができ、所定の高さ分Δhだけ確実に杭を引き抜くことができ、一連の工程を所定回繰り返し、地盤表面Gから下方には杭Wが埋設されていない状態とすることができた。最後に残った杭は、図7に示したように、ワイヤロープの一端を吊り具を介して切断した杭頭部に接続し、滑車24を設けた杭除去用クレーン25を用い、上方から除去した。
【符号の説明】
【0028】
W 杭
G 地盤表面
Δh 所定高さ分
1 油圧式ジャッキ
1a クライミングロッド
1b 吊り金具
2 架台フレーム
3 支柱フレーム
4 主フレーム
5 連結金具
6 連結部
7 サブフレーム
8 ロッド用貫通孔
9 上部開口
10 係合ピン
11 ピン穴
12 部材挿入用貫通孔
14 フランジ
16 先行レール
17 レール収納用フレーム
18 ころ保持手段
19 滑車
20 ワーヤロープ
21 一端側取り付け部
22 電動式ウインチ
23 ウインチ吊り下げフレーム
24 滑車
25 杭除去用クレーン
30 筐体
31 油圧ジャッキ
32 杭保持部材
33 腕部
34 締着手段(ボルト・ナット)
35 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された杭を引き抜くための油圧式杭抜き装置であって、
前記杭を囲むように地盤表面に配置された枠状の架台フレームと、該枠状の架台に下端部が固定された複数本の支柱フレームと、複数本の支柱の上端部に左右方向両端部が固定され、かつ前記杭の前後に並設された一対の主フレームを具備し、該前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載するとともに、前記クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具とを、連結部で着脱可能に連結したことを特徴とする油圧式杭抜き装置。
【請求項2】
前記クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具との連結部は、係合ピンとピン穴で構成し、前記吊り金具と連結金具の両方に係合ピンに対応するピン穴を設け、該ピン穴に係合ピンを差し込んで回動可能に連結したことを特徴とする請求項1に記載の油圧式杭抜き装置。
【請求項3】
前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具は、梁の両端部に左右方向に貫通したピン穴と前記吊り金具が上方から収まる上部開口を有し、長さが前記杭の外形よりも長い両端部上部開口梁材を、前記杭に設けた部材挿入用貫通孔に、遊嵌状態で前面および後面から突き出るように挿入したものであることを特徴とする請求項2に記載の油圧式杭抜き装置。
【請求項4】
前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具は、梁の一端部に左右方向に貫通したピン穴と前記吊り金具が上方から収まる上部開口を有しかつ梁の他端にフランジを有する一端部上部開口梁材を、前記フランジを介して前記杭の前後面に溶接、接着材等により、固着したものであることを特徴とする請求項2に記載の油圧式杭抜き装置。
【請求項5】
前記杭を所定高さ分だけ引き抜いた状態で、前記杭に設けた部材挿入用貫通孔から、前記杭の前後面に外向きに突出して設けた連結金具を引き出す機構が、前記杭の前方に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の油圧式杭抜き装置。
【請求項6】
地盤に埋設された杭を引き抜くための杭抜き方法であって、前後一対の主フレームにクライミングロッドがシリンダ内を貫通している油圧式ジャッキを搭載し、地盤に埋設された杭が地盤表面から所定高さ突出している状態を基準とし、基準状態で、前記杭の前後面に外向きに突出して連結金具を設け、クライミングロッドの下端部に設けた吊り金具と前記連結金具を連結部で着脱可能に連結する工程と、前記クライミングロッドを上昇させ、前記杭を所定高さ分だけ引き抜く上昇工程と、前記杭が所定高さ突出している位置で杭を切断し、上部を除去する杭切断・除去工程と、前記連結部を切り離す工程と、引き続きクライミングロッドの下端部に設けた吊り金具を元の位置にまで下降させる下降工程を有することを特徴とする杭抜き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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