説明

油圧式移動装置

【課題】高精度の油圧式移動装置を提供する。
【解決手段】油圧モーターが回転させる回転軸と、ボールネジ8のシャフト11とを連係し、油圧モーターの駆動によりシャフト11を回転させ、鉛直方向に起立したシャフト11に沿ってナット13を昇降可能とした。さらに、このナット13に嵌着されたテンション上下スライド体15にバランサー油圧シリンダー19を配設し、当該ナット13を鉛直上方に引張するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モーターを備えた油圧式移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のワーク(例えばアルミサッシュの母材)を、予め定められた基準位置から所望位置まで上昇又は下降させる移動装置は、いくつか提案されている。例えば、電源により駆動するサーボモーターと鉛直方向に起立したボールネジとを組み合わせた構成が良く知られている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、サーボモーターの回転軸と、ボールネジのシャフトとを連結させると共に、当該シャフトに、シャフトに沿って昇降可能なナットが係合されている構成である。さらに、このナットは、ワークを保持する保持手段が配設されている。かかる構成にあって、サーボモーターをON状態として回転軸を回転させ、ボールネジのシャフトを回転させると、ナットがシャフトに沿って上昇又は下降し、これに伴いワークも上下動する。一方、ワークが所望の停止位置に到達したところでサーボモーターをOFF状態とすると、ナットが停止してその位置でワークを静止させることができる。なお、このようにサーボモーターとボールネジとを用いた構成は、ナットを微小量で移動させることも可能なため、高い精度でワークを所望位置に移動させることができることが良く知られている。
【0003】
また、他の移動装置としては、鉛直方向に起立させた油圧シリンダーを用いた構成が知られている。具体的には、油圧シリンダーのロッド先端にワークを固定し、油圧シリンダーの内圧調整によりロッドを所定の移動量だけ進退させて、ワークを所定位置に移動させる構成である(例えば、特許文献2参照。)。なお、このように油圧シリンダーを用いた構成は、油圧式装置の特性上、装置が安価であると共に、大トルクを発生させて非常に重いワークを移動させることができる利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−247885号公報
【特許文献2】特開2005−089109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の二つの従来構成には、それぞれ欠点があった。
まず、サーボモーターを用いた構成にあっては、サーボモーターの維持メンテナンスが油圧シリンダーを用いた構成に比して困難であった。例えば、サーボモーターには安定して電源を供給する必要があり、装置の保守管理に十分に配慮しなければならなかった。このため、電源供給の不安定な場所では使用を避けなければならず、装置の設置箇所が限定されるという問題があった。さらに、かかる構成は、大トルクを発生させることができないため、ワークの重量に制限があった。
【0006】
一方、油圧シリンダーを用いた構成にあっては、油圧式装置の特性上、ロッドを微細に精度良く移動させることが困難なため、ワークの移動精度が低いという問題があった。また、ワークを所定の高さ位置で保持しようとしても、時間経過に伴って作動油のリークが進行してしまい、ワークの自重によりロッドが沈降して当該ワークが所望の停止位置から徐々に下降してしまう問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題を解消することができる油圧式移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転軸と、該回転軸を回転させる油圧モーターとを備えた回転駆動装置と、前記回転駆動装置の回転軸と連係し、該回転軸が回転することにより回転する長尺状で鉛直方向に起立した回転軸部材と、前記回転軸部材と係合し、該回転軸部材が回転することにより当該回転軸部材上を長手方向に沿って昇降する係合移動部材と、作動油が内在するシリンダーチューブと該シリンダーチューブに配設されて進退移動するロッドとを有し、前記シリンダーチューブ及び前記ロッドのうち一方が前記係合移動部材に接続され、他方が回転軸部材に対して相対移動不能な固定部位に接続されてなり、当該係合移動部材が所定引張力で鉛直上方に引張されるように、前記シリンダーチューブに作動油が供給されて当該シリンダーチューブ内が内圧調整されてなるバランサー用油圧シリンダーとを備えたことを特徴とする油圧式移動装置である。
【0009】
かかる構成にあって、油圧モーターにより回転軸が回転すると、該回転軸に連係した回転軸部材がその軸線周りに回転することとなる。そして、この回転軸部材に係合した係合移動部材が、当該回転軸部材の回転により、昇降することとなる。このような回転軸部材と係合移動部材とで構成される昇降装置は、回転運動を直線運動に変換する構成であって、回転軸部材の回転量に対応して係合移動部材が所定量だけ移動するものである。このため、保守管理が簡便で大トルクを発生させることができる油圧式装置としての油圧モーターを使用しつつ、係合移動部材を精度良く所望位置に移動させることができる。さらに、この係合移動部材は、バランサー用油圧シリンダーが配設されており、所定引張力で鉛直上方に付勢されている。したがって、係合移動部材を所定の高さ位置で長時間保持する場合でも、その自重等により当該高さ位置から降下してしまうことを防ぐことができる。なお、所定引張力としては、係合移動部材に作用する鉛直下方への荷重に相当する大きさの引張力が好適である。これにより、当該係合移動部材は、静止時において見かけ上、鉛直下方への荷重がゼロとなって、その停止位置に安定して保持されることとなる。
【0010】
また、上記構成にあって、回転軸部材の回転量を検出する回転量検出手段と、回転軸部材の回転を停止させるブレーキ手段と、回転量検出手段が検出した回転軸部材の回転量が入力され、入力された回転軸部材の回転量に基づき係合移動部材の移動量を算出すると共に、回転駆動装置を駆動させて回転軸部材を回転させることにより係合移動部材を予め定められた基準位置から移動開始し、当該係合移動部材の移動量が予め定められた規定移動量となると、前記ブレーキ手段により回転軸部材の回転を停止させて係合移動部材を停止させる制御内容を具備する係合移動部材制御装置とを備えた構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあって、回転軸部材の回転量を検出し、この回転量に基づいて係合移動部材の移動量を算出することにより、係合移動部材の基準位置からの移動距離を正確に管理することが可能となる。したがって、本発明は、係合移動部材を所望の停止位置まで精度良く移動させることができる。
【0012】
なお、これまでに述べた構成にあっては、係合移動部材に、ワークを保持する保持手段が接続されてなる構成が好適である。
【0013】
かかる構成にあっては、回転軸部材に沿って係合移動部材を昇降させることにより、ワークを上下動させることが可能となる。なお、本発明にあって、仮にワークの重量が大きい場合にも、大トルクで精度良く移動制御できると共に、所定の高さ位置で長時間保持する場合でも、係合移動部材が時間経過に伴い下降してしまうことがなく、ワークを安定して所望位置に長時間保持できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油圧式移動装置は、油圧モーターを備えた回転駆動装置と、油圧モーターを駆動源として回転する回転軸部材と、回転軸部材の回転に伴い昇降する係合移動部材と、係合移動部材を所定引張力で鉛直上方に引張するバランサー用油圧シリンダーとを備えた構成としたため、作動油のリークに起因する意図しない係合移動部材の下降が防止されると共に、大トルクを発生させることができる油圧式装置の利点を生かしつつ、高精度に位置制御を行うことができる効果がある。
【0015】
また、係合移動部材の移動量が規定移動量となると、ブレーキ手段により回転軸部材の回転を停止させて係合移動部材を停止させる構成とした場合は、係合移動部材を簡便かつ高精度で適宜に位置制御することができる効果がある。
【0016】
また、係合移動部材に、ワークを保持する保持手段を接続した場合は、仮にワークが非常に重い物体であっても、安定して所望位置に保持することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る油圧式移動装置の実施例を添付図面に従って説明する。
油圧式移動装置1は、ワークW(公知の油圧式テンションシリンダー)を所定の予め定められた基準位置から所望の移動量だけ上昇又は下降させる機能を有するものである。なお、本実施例に係る油圧式移動装置1は、図1に示されるように、公知のストレッチベンダー機2に好適に採用される。
【0018】
まず、ストレッチベンダー機2について説明する。
図1に示されるように、ストレッチベンダー機2は、直線形状のアルミサッシュ母材Y(図8参照)を後述の曲げ加工用金型17により曲げ加工して湾曲製品(自動車用アルミサッシュ)を製造する機能を有する。さらに詳述すると、ストレッチベンダー機2は、床面に固定された支持台4を中央に備えている。また、この支持台4は、板状の金型台5が載置されている。さらに、この金型台5の上面に、曲げ加工用金型17が脱着可能に配設されている。
【0019】
また、支持台4の側部からは、二つのラップアーム部3,3が水平状に突設されている。ここで、ラップアーム部3の基端には、ヒンジ構造の軸支部9が形成されており、支持台4を中心にして左右に回動可能となっている。さらに、ラップアーム部3の側面には、水平支持された回動用油圧シリンダー10が接続されており、この回動用油圧シリンダー10が伸縮することにより、ラップアーム部3は軸支部9を回動中心として回動制御される。なお、両ラップアーム部3は共に同じ構成であるため、以下、一方のラップアーム部3について説明する。
【0020】
ラップアーム部3の上縁であってほぼ中腹には、支持土台7が配設されている。この支持土台7は、当該ラップアーム部3の上縁に沿って水平移動可能に取り付けられている。さらに、この支持土台7には、支持柱としてのテンションポスト6が起立状に配設されている。
【0021】
前記テンションポスト6には、ワークWを保持するためのワーク保持部材40が配設されている。このワーク保持部材40は、上下に配された一対の突状部41を備えると共に、テンションポスト6の側面に配設された上下方向の案内レール45に装着されて、上下移動可能に保持されている。
【0022】
なお、ワーク保持部材40は、図8に示されるように、上下の突状部41間に形成された間隙に長尺状のワークWを水平状に嵌着することにより当該ワークWを脱落することなく保持している。なお、ワークW(油圧式テンションシリンダー)は、進退するロッドw1を備え、該ロッドw1の先端にテンションチャックw2が接続されている。そして、このテンションチャックw2により、直線形状のアルミサッシュ母材Yが保持されることとなる。
【0023】
そして、これまでに述べた構成にあって、ラップアーム部3が所定回転角度、及び所定回転速度で回動することにより、アルミサッシュ母材Yが所定引張力で引張されながら曲げ加工用金型17に沿って曲げ加工されて、一連の成形加工が実行される。
【0024】
次に、本発明の要部について説明する。
図2,3に示されるように、テンションポスト6の内部であって、その最下位置には、油圧モーター27が配設されている。この油圧モーター27は、下方に突設された回転軸36を備え、該回転軸36がテンションポスト6の下端から露出している。なお、この油圧モーター27は、公知品が好適に採用される。
【0025】
さらに、図5に示されるように、油圧モーター27には、油圧ポンプ28が接続されている。また、この油圧ポンプ28には、作動油が貯留される作動油タンク29が接続されており、油圧ポンプ28が駆動することにより作動油タンク29内の作動油を油圧モーター27に供給可能としている。なお、油圧モーター27に供給される作動油量は、油圧モーター27と油圧ポンプ28との間に配設されたソレノイドバルブ33により制御される。例えば、ソレノイドバルブ33を開放状態とすると作動油が供給されて油圧モーター27が駆動する。一方、閉鎖状態とすると作動油の供給が停止されて油圧モーター27の駆動が中断される。なお、油圧モーター27、油圧ポンプ28、作動油タンク29、及びソレノイドバルブ33により、回転駆動装置20が構成される。
【0026】
また、前記テンションポスト6には、鉛直方向に起立するボールネジ8が配設されている。さらに詳述すると、このボールネジ8は、公知品が好適に用いられ、長尺棒状で周面に螺旋状で凹溝が形成されてなるシャフト11と、凹溝内に配される鋼球34を介してシャフト11に係合するナット13(図4参照)とで構成されている。そして、前記シャフト11は、支持土台7に配設されたホルダー12とテンションポスト6に配設されたホルダー12とにより回転可能に支持されて、当該テンションポスト6に沿って起立している。また、シャフト11の下端部14は、支持土台7の直下で帯状のベルト48により、油圧モーター27の回転軸36と連係している。かかる構成にあって、油圧モーター27が駆動して回転軸36が回転開始すると、その回転力がベルト48を介して下端部14に伝達され、当該シャフト11がホルダー12に支持されながら軸心周りに回転することとなる。そして、このようにシャフト11が回転開始すると、シャフト11と係合するナット13が、当該シャフト11に沿って昇降することとなる。なお、シャフト11が一方向に回転すると、ナット13が上昇し、他方向に回転するとナット13が下降する。なお、図1等に示されるように、油圧モーター27の回転軸36とシャフト11とが連係する部位は、カバーケース18により遮閉されている。
【0027】
また、前記シャフト11には、当該シャフト11の回転角度(回転量)を検出する回転角度検出装置50が配設されている。この回転角度検出装置50は、市販のロータリーエンコーダ51により構成されている。このロータリーエンコーダ51は、図2,3に示されるように、テンションポスト6の側面に取り付けられた支持部材55に配設されていると共に、図6に示されるように、シャフト11の上端と接続している。このロータリーエンコーダ51とシャフト11とが接続する接続部位xについて詳述すると、図6に示されるように、ロータリーエンコーダ51は、下方突成された回転軸52を備え、この回転軸52の先端にエンコーダ側歯車53が配設されている。一方、シャフト11の上端にもシャフト側歯車54が上方に向けて配設されており、エンコーダ側歯車53とシャフト側歯車54とが対向状に係合して回転力が伝達可能となっている。かかる構成にあって、シャフト11が回転すると、ロータリーエンコーダ51の回転軸52も連動して回転し、シャフト11の回転角度がロータリーエンコーダ51で検出されることとなる。なお、検出された回転角度の測定データは、後述の管理制御装置60に入力される。
【0028】
また、図4に示されるように、ボールネジ8のナット13には、ボックス形状のテンション上下スライド体15が嵌着されている。このテンション上下スライド体15には、上下方向に挿通孔16が形成されており、この挿通孔16にボールネジ8のシャフト11が挿通されている。かかる構成にあって、シャフト11が回転してナット13が昇降すると、シャフト11に接触することなく、テンション上下スライド体15も昇降する。
【0029】
また、このテンション上下スライド体15の側部には、縦長で矩形の接続固定部材49が接続され、さらにこの接続固定部材49に前記のワーク保持部材40の側部が配設されている。すなわち、ボールネジ8のナット13に、ワーク保持部材40が一体的に固定されていることとなる。
【0030】
さらに、テンション上下スライド体15には、図2,3に示されるように、バランサー用油圧シリンダー19が鉛直方向に起立した状態で接続されている。以下、バランサー用油圧シリンダー19について詳述する。
【0031】
図2〜図4に示されるように、バランサー用油圧シリンダー19は、作動油が内在する中空形状のシリンダーチューブ21を備えている。具体的には、シリンダーチューブ21は、両端が開放した円筒形の胴部25、並びに、胴部25の両端にそれぞれ配設される蓋体のヘッドブロック24及びキャップブロック26が一体化されて構成されている。
【0032】
ここで、ヘッドブロック24は、油路を構成する第一ポート31を具備すると共に、キャップブロック26は、油路を構成する第二ポート32を具備している。そして、各ポート31,32は、公知の作動油供給装置38と連通し、各ポート31,32を介して所定量の作動油がシリンダーチューブ21内に供給される構成となっている。
【0033】
ここで、ヘッドブロック24は、前記テンション上下スライド体15の上面にL形の固定部材39を介して固結されている。これにより、シリンダーチューブ21がボールネジ8のナット13に接続されることとなる。なお、シリンダーチューブ21は、キャップブロック26が上側に配され、ヘッドブロック24が下側に配されて、全体として倒立状態で保持されている。
【0034】
また、シリンダーチューブ21内には、円板状のピストン部30が摺動可能に設けられている。さらに、このピストン部30には、ヘッドブロック24を気密状に貫通する棒状のロッド22の末端が接続されている。また、このロッド22は、テンション上下スライド体15に鉛直方向で貫設された貫通孔44に挿通されている。なお、かかる貫通孔44の内径は、ロッド22の外径に比して十分大きく、挿通状態で相互が非接触となるように設計されている。さらに、ロッド22の先端は、円筒形の高さ調整ブロック35が接続されていると共に、この高さ調整ブロック35が、上述の支持土台7の上面に固結されている。これにより、ロッド22は、支持土台7に接続されることとなる。なお、ボールネジ8のシャフト11は、支持土台7に取り付けられたホルダー12によって支持されているため、結局、支持土台7とシャフト11とは、相対的に高さ位置が変動しない。
【0035】
かかる構成にあって、バランサー用油圧シリンダー19のシリンダーチューブ21内は、作動油供給装置38により内圧調整されてテンション上下スライド体15を所定引張力で鉛直上方に引張している。すなわち、このバランサー用油圧シリンダー19により、ボールネジ8のナット13が上方に付勢されている。なお、かかる引張力の詳細については後述する。
【0036】
なお、図1等に示されるように、上述したバランサー用油圧シリンダー19の周囲には、シリンダーチューブ21と平行なガイドロッド37が複数設けられている。これにより、バランサー用油圧シリンダー19の支持が補強されると共に、バランサー用油圧シリンダー19がその軸線周りに回転してしまうことが防止される。
【0037】
また、本実施例に係る油圧式移動装置1は、図5に示されるように、管理制御装置60を備えている。この管理制御装置60は、上述した、ソレノイドバルブ33と回転角度検出装置50と各々接続されており、それぞれ信号の送受信が伝達可能となっている。また、管理制御装置60は、基板回路(図示省略)を備え、該基板回路上に中央制御装置(CPU)61を具備している。そして、この中央制御装置61は、ソレノイドバルブ33に開閉制御信号を送信してバルブの開閉作動を制御する処理を実行する制御内容を具備している。また、中央制御装置61は、回転角度検出装置50のロータリーエンコーダ51から送信される測定データに基づいて、ナット13の移動量を算出する等の処理を実行する制御内容も具備している。
【0038】
次に、油圧式移動装置1の作動態様について説明する。
まず、アルミサッシュ母材Yの両端を図8に示される態様で保持し、当該アルミサッシュ母材Yの加工部位を曲げ加工用金型17に密着させる。そして、図示しない固定器具により、密着部位を固定保持して加工中に密着部位が離間しないようにする。なお、このアルミサッシュ母材Yが保持された加工前の状態においては、前記ワークWが所定高さ位置に配置される。そして、係るワークWの高さ位置におけるナット13の高さ位置を、ナット13の基準位置α(図7参照)としている。
【0039】
そして、かかる加工前状態でラップアーム部3を所定の動作態様(回転速度、回転角度)で回動開始し、一連の成形加工を開始する。
【0040】
これと共に、ナット13を予め定めた基準位置αから所定の停止位置β(図7参照)まで上昇させて、当該ワークWを鉛直方向に上昇させる。具体的には、ソレノイドバルブ33を開放状態として油圧モーター27を駆動させ、シャフト11を一方向に回転させてナット13を上昇させる。
【0041】
そして、このようにワークWが上昇すると、ワークWに保持されたアルミサッシュ母材Yの端部が鉛直方向においても湾曲加工されることとなり、結果的に三次元加工された湾曲製品(自動車用アルミサッシュ)が得られることとなる。なお、前記ナット13の停止位置βは、基準位置αから予め定められた規定移動量d(図7参照)だけ高い位置にある。
【0042】
ここで、前記管理制御装置60は、図7に示されるように、入力されたシャフト11の回転角度に基づき算出したナット13の移動量が、所定の規定移動量dに到達すると、前記ソレノイドバルブ33に、閉鎖状態とする信号を送信して油圧モーター27の駆動を停止させる。そうすると、油圧モーター27の回転軸36が回転停止し、これに伴ってシャフト11が回転停止して、ナット13が停止位置βで停止する。
【0043】
なお、ナット13が停止位置βに位置した状態にあっては、バランサー用油圧シリンダー19は、ナット13、テンション上下スライド体15、及びワークWの総重量に相当する鉛直上方への引張力を発生させるように内圧調整される。かかる構成により、ナット13に作用する鉛直下方への荷重が見かけ上ゼロとなって、当該ナット13は停止位置βに安定して保持されることとなる。
【0044】
なお、本実施例に係るボールネジ8のシャフト11により、本発明に係る回転軸部材が構成される。また、シャフト11に装着されたナット13により、本発明に係る係合移動部材が構成される。また、本実施例に係る支持土台7の上面により、本発明に係る回転軸部材に対して相対移動不能な固定部位が構成される。また、本実施例に係る回転角度検出装置50により、本発明に係る回転量検出手段が構成される。また、本実施例に係るソレノイドバルブ33により、本発明に係るブレーキ手段が構成される。また、ナット13を移動開始及び停止させる管理制御装置60により、本発明に係る係合移動部材制御装置が構成される。さらに、本実施例に係るワーク保持部材40により、本発明に係る保持手段が構成される。
【0045】
なお、これまでに述べた構成に代えて、バランサー用油圧シリンダー19を、テンション上下スライド体15の下方に配設すると共に、シリンダーチューブ21と支持土台7とを接続し、ロッド22とテンション上下スライド体15とを接続して、ナット13を鉛直上方に引張する構成としても良い。
【0046】
また、ソレノイドバルブ33によりシャフト11を停止させる構成に代えて、油圧モーターとしてブレーキ付き油圧モーターを採用し、当該油圧モーターのブレーキ機能により回転軸36を回転制御してシャフト11を停止させる構成としても良い。
【0047】
また、上記構成のボールネジ8に代えて、公知のすべりネジ、台形ネジ等を用いても良い。
【0048】
また、シャフト11の回転量を検出する構成は、他の検出装置を用いた構成としても勿論良い。
【0049】
さらに、油圧式移動装置1としては、ストレッチベンダー機2に用いられる構成の他、様々な態様で適用される構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】油圧式移動装置1を備えたストレッチベンダー機2の外観斜視図である。
【図2】テンションポスト6を示す拡大背面図である。
【図3】テンションポスト6を示す拡大側面図である。
【図4】テンション上下スライド体15の概要を示す説明図である。
【図5】油圧式移動装置1のブロック回路図である。
【図6】接続部位xを示す側面図である。
【図7】ナット13の移動態様を示す説明図である。
【図8】ワークWの保持態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧式移動装置
7 支持土台(固定部位)
11 シャフト(回転軸部材)
13 ナット(係合移動部材)
20 回転駆動装置
21 シリンダーチューブ
22 ロッド
27 油圧モーター
33 ソレノイドバルブ(ブレーキ手段)
36 回転軸
40 ワーク保持部材(保持手段)
50 回転角度検出装置(回転量検出手段)
60 管理制御装置(係合移動部材制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、該回転軸を回転させる油圧モーターとを備えた回転駆動装置と、
前記回転駆動装置の回転軸と連係し、該回転軸が回転することにより回転する長尺状で鉛直方向に起立した回転軸部材と、
前記回転軸部材と係合し、該回転軸部材が回転することにより当該回転軸部材上を長手方向に沿って昇降する係合移動部材と、
作動油が内在するシリンダーチューブと該シリンダーチューブに配設されて進退移動するロッドとを有し、前記シリンダーチューブ及び前記ロッドのうち一方が前記係合移動部材に接続され、他方が回転軸部材に対して相対移動不能な固定部位に接続されてなり、当該係合移動部材が所定引張力で鉛直上方に引張されるように、前記シリンダーチューブに作動油が供給されて当該シリンダーチューブ内が内圧調整されてなるバランサー用油圧シリンダーと
を備えたことを特徴とする油圧式移動装置。
【請求項2】
回転軸部材の回転量を検出する回転量検出手段と、
回転軸部材の回転を停止させるブレーキ手段と、
回転量検出手段が検出した回転軸部材の回転量が入力され、入力された回転軸部材の回転量に基づき係合移動部材の移動量を算出すると共に、回転駆動装置を駆動させて回転軸部材を回転させることにより係合移動部材を予め定められた基準位置から移動開始し、当該係合移動部材の移動量が予め定められた規定移動量となると、前記ブレーキ手段により回転軸部材の回転を停止させて係合移動部材を停止させる制御内容を具備する係合移動部材制御装置と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の油圧式移動装置。
【請求項3】
係合移動部材に、ワークを保持する保持手段が接続されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の油圧式移動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−143621(P2008−143621A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329743(P2006−329743)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(592172699)株式会社東晃製作所 (5)