説明

油圧緩衝器

【課題】 外周に介装される懸架バネの下端を担持するのに最適なのはもちろんのこと、懸架バネの長さが変更されるとしても、バネ受けの共通部品化を可能にする。
【解決手段】 下端側部材とされるシリンダ1と、このシリンダ1に出没自在に挿通される上端側部材たるロッド2とを有し、外周に介装の懸架バネSにおける下端を担持するバネ受け10をシリンダ1の外周に有する油圧緩衝器SAにおいて、バネ受け10が懸架バネSの下端を担持するフランジ状に形成のシート部11と、このシート部11を外周側部に有して内周面をシリンダ1の外周面に対向させる環状基部12とを有し、シリンダ1が外周面に周方向に任意の間隔で設けられる外向き縦溝1aを有し、環状基部12が内周面に内向き縦溝12aを有し、外向き縦溝1aに嵌装される連結部材20を有し、この連結部材20に内向き縦溝12aを嵌合させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧緩衝器に関し、特に、外周に介装の懸架バネの下端を担持するバネ受けを有する油圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
外周に介装の懸架バネの下端を担持するバネ受けを有する油圧緩衝器としては、これまでに種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、バネ受けが油圧緩衝器を構成するシリンダの上端から吊持される。
【0003】
すなわち、この特許文献1に開示の提案にあって、バネ受けは、いわゆるシルクハット状に形成され、内側に油圧緩衝器の上端側部を挿通させる有底筒状に形成の本体部における下端に懸架バネの下端を担持するフランジ状に形成のシート部を有してなる。
【0004】
このとき、有底筒状に形成の本体部における上端部は、シリンダの上端軸芯部から上方に突出するロッドを挿通させる孔を有し、この孔を有する上端部がシリンダの上端に載置され、これによって、バネ受けが油圧緩衝器の上端に吊持される。
【0005】
ちなみに、懸架バネの上端は、シリンダの上端軸芯部から上方に突出するロッドにおける上端部たる基端部あるいはその近傍部に一体的に設けられた上方バネ受けに係止される。
【0006】
一方、図示しないが、内側にシリンダの下端側部を挿通させた筒状に形成の本体部の下端をシリンダのボトム端部に溶接させ、本体部の上端に設けたフランジ状に形成のシート部に懸架バネの下端を担持させるバネ受けを備える油圧緩衝器もある。
【0007】
それゆえ、上記したいずれの油圧緩衝器にあっても、バネ受けにおけるフランジ状に形成のシート部に懸架バネの下端を担持させ、懸架バネの上端位置の変位を実現し得ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−144952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1に開示の提案にあっては、バネ受けが懸架バネの下端の担持を可能にし得る点で基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0010】
すなわち、上記したバネ受けにあっては、たとえば、懸架バネの長さが変わる場合には、バネ受けにおけるシート部のいわゆる高さ位置が変更されることになり、このとき、本体部の長さが変更される。
【0011】
しかし、バネ受けが型利用で形成される場合には、バネ受けにおける本体部の長さが変更されるたびに成形用の型が設計変更されることになり、結果的に部品の共通化を図りづらくする。
【0012】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、外周に介装の懸架バネの長さが変更されるとしても、バネ受けをそのまま利用できる、すなわち、バネ受けの部品共通化を可能にする油圧緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明による油圧緩衝器の構成を、下端側部材とされるシリンダと、このシリンダに出没自在に挿通される上端側部材たるロッドとを有し、外周に介装の懸架バネにおける下端を担持するバネ受けを上記シリンダの外周に有する油圧緩衝器において、上記バネ受けが上記懸架バネの下端を担持するフランジ状に形成のシート部と、このシート部を外周側部に有して内周面を上記シリンダの外周面に対向させる環状基部とを有し、上記シリンダが外周面に周方向に任意の間隔で設けられる外向き縦溝を有し、上記環状基部が内周面に内向き縦溝を有し、上記外向き縦溝に嵌装される連結部材を有し、この連結部材に上記内向き縦溝を嵌合させてなるとする。
【0014】
すなわち、この発明にあっては、シリンダの外周面に形成の外向き縦溝に連結部材を嵌装すると共に、この外向き縦溝に嵌装された連結部材をバネ受けにおける環状基部の内周面に形成の内向き縦溝に嵌合させる。
【0015】
このとき、この発明にあって、シリンダの外向き縦溝に嵌装された連結部材は、シリンダに対しての下降がおよび回転阻止されるので、この連結部材に上方から下降されるバネ受けにおける環状基部の内向き縦溝を嵌合させることによって、バネ受けをシリンダに固定的に連結することが可能になり、バネ受けのシリンダの外周面における周方向への回動を阻止して懸架バネの下端の担持を可能にし得る。
【0016】
そして、この発明にあっては、外周に介装の懸架バネの長さが変更されるとき、新たな懸架バネの下端位置に相応するようにシリンダの外周面に新たな外向き縦溝を形成すれば足りるから、あるいは、初めから、複数の外向き縦溝を上下にも形成しておけば良いから、迅速に、また、容易に、さらには、安価に懸架バネの長さの変更に対応できる。
【発明の効果】
【0017】
その結果、この発明によれば、外周に介装の懸架バネの長さが変更されるとしても、バネ受けをそのまま利用する、すなわち、バネ受けの共通部品化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明による油圧緩衝器を一部破断して示す部分正面図である。
【図2】バネ受けを示す半截平面図である。
【図3】シリンダを連結部材と共に示す半截横断面図である。
【図4】シリンダの外周面に形成される外向き縦溝を示す半截縦断面図である。
【図5】連結部材を示す斜視図である。
【図6】シリンダにバネ受けを連結させる状態を示す半截一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図1に示すように、この発明による油圧緩衝器SAは、外周に介装の懸架バネSにおける下端を担持するバネ受け10を有してなる。
【0020】
順次説明すると、先ず、油圧緩衝器SAは、下端側部材とされて下端側部が車輪(図示せず)側に連結されるシリンダ1と、上端側部材とされて上端側部が車体(図示せず)側に連結されるロッド2とを有し、シリンダ1に対してロッド2が出入自在に挿通されてなる。
【0021】
そして、この油圧緩衝器SAは、ロッド2がシリンダ1に対して出入するときに、このロッド2の先端部に保持されてシリンダ1内で摺動するピストン(図示せず)に設けた減衰部が作動油の通過を許容して所定の減衰作用をなす。
【0022】
一方、懸架バネSは、図示するように、下端がバネ受け10に担持される一方で、シリンダ1の上端軸芯部から上方に突出するロッド2における図示しない上端部たる基端部あるいはその近傍部に設けられた上方バネ受けに係止される。
【0023】
それゆえ、油圧緩衝器SAにおけるシリンダ1が車輪を介して立設されるとき、ロッド2が懸架バネSの附勢力でシリンダ1内から突出して車体を持ち上げるようになり、このとき、バネ受け10は、懸架バネSの附勢力たる反力を受けるように下端を担持する。
【0024】
ところで、この発明にあっては、バネ受け10が油圧緩衝器SAにおけるシリンダ1の上端から吊持されたり、あるいは、油圧緩衝器SAにおけるシリンダ1のボトム端部に溶接されたりせずして油圧緩衝器SAに、つまり、シリンダ1の外周に設けられる。
【0025】
それゆえ、この発明にあって、バネ受け10は、たとえば、特許文献1に開示の言わば従来のバネ受けのように内側にシリンダ1を収装させる筒状部を有しなくて済むから、従来のバネ受けに比較して構成の簡素化が可能になり、バネ受け10の共通部品化を容易にする。
【0026】
バネ受け10は、図示するところにあって、図2にも示すように、懸架バネSの下端を担持するフランジ状に形成のシート部11と、このシート部11を外周側部に有して内周面を緩衝器SAにおけるシリンダ1(図1参照)の外周面に対向させる環状基部12とを有してなる。
【0027】
このとき、図示するところでは、環状基部12の内周面がシリンダ1の外周面に接するが、これに代えて、図示しないが、環状基部12の内周面がシリンダ1の外周面から離れても良い。
【0028】
そして、環状基部12の内周面がシリンダ1の外周面から離れる場合には、バネ受け10にシリンダ1を導通させるようにするいわゆる介装作業が容易になる点で有利になる。
【0029】
また、図示するように、環状基部12の内周面がシリンダ1の外周面に接する場合には、後述する連結部材20の上下方向となる軸線方向の長さをいたずらに大きくしなくて済む点で有利となる。
【0030】
シート部11は、懸架バネSの下端を上端に着座させて担持する(図1参照)もので、その限りには任意の形状に形成されて良く、図示するフランジ状に形成されるのに代えて、図示しないが、懸架バネSの下端部を下方から包み込むように断面凹状に湾曲形成されるとしても良い。
【0031】
このとき、断面凹状に湾曲形成されるシート部11は、下底部などに水抜き孔を有して、懸架バネSの下端部が泥混じりの水に浸る状態を回避し得るように配慮されるのが良い。
【0032】
環状基部12は、後述する連結部材20(図1,図3,図5および図6参照)の嵌合を許容する部位、すなわち、内向き縦溝12aを有するもので、この内向き縦溝12aを有する限りには、任意に構成されて良い。
【0033】
すなわち、図示するところでは、環状基部12は、シート部11と別体に形成されて、溶接(図1中および図6中の符号M参照)でシート部11に一体化されてなるが、これに代えて、図示しないが、たとえば、シート部11の内周側部が環状基部とされて、この環状基部、つまり、シート部11の内周側部に上記の内向き縦溝12aが直接形成されるとしても良い。
【0034】
この場合には、バネ受け10の形成にあって、部品点数の削減が可能になり、その分、バネ受け10についてのコスト低減を可能にし得る。
【0035】
戻って、環状基部12は、シリンダ1の外周面に対向する内周面に後述するシリンダ1の外周面に形成の外向き縦溝1aに対向する内向き縦溝12aを有する。
【0036】
そして、環状基部12にあって、内向き縦溝12aは、軸線方向を上下方向にして周方向に適宜の間隔を有して複数形成され、好ましくは、シリンダ1に形成される外向き縦溝1aの個数に相応する個数とされるのが良い。
【0037】
一方、この環状基部12に形成される内向き縦溝12aの形状についてであるが、先ず、周方向となる横幅は、後述する連結部材20の言わば横幅に一致する、つまり、連結部材20の嵌合を許容する横幅を有する。
【0038】
これによって、内向き縦溝12aと連結部材20との間における周方向のいわゆるガタのない一体化が可能になり、後述するシリンダ1に対するバネ受け10の周方向への回動を効果的に阻止し得ることになる。
【0039】
次に、内向き縦溝12aにおける上下方向となる軸線方向の長さであるが、図示するところでは、環状基部12の上下方向の長さと同じに、つまり、環状基部12の内周側部を上下方向に貫通する長さを有する。
【0040】
ちなみに、内向き縦溝12aにおける上下方向の長さ、つまり、環状基部12における上下方向となる肉厚は、後述する連結部材20における上下方向の長さ、つまり、軸線方向の長さより小さくなるとする。
【0041】
環状基部12の肉厚が連結部材20の長さより小さくなることによって、環状基部12を、つまり、バネ受け10を連結部材20の利用下にシリンダ1の外周面に保持させる際の作業性を良くする、すなわち、たとえば、連結部材20を指で押えるようにする作業を容易にし得る点で有利となる。
【0042】
さらに、内向き縦溝12aの縦断面形状についてであるが、図1に示すように、連結部材20の嵌合を許容することから、図6に示すように、左右となる両辺が上方で収斂する縦長の台形となるように形成されてなる。
【0043】
つまり、内向き縦溝12aは、後述する連結部材20を嵌合させるが、この連結部材20は、シリンダ1の外周に一体的に保持されながらこの内向き縦溝12aに嵌合される(図1および図6参照)。
【0044】
そこで、以下には、連結部材20およびシリンダ1に形成される外向き縦溝1aについて説明する。
【0045】
先ず、連結部材20は、油圧緩衝器SAにおけるシリンダ1に形成の外向き縦溝1aに嵌装されると共に、上記したバネ受け10に形成の内向き縦溝12aに嵌合される。
【0046】
この意味からすると、この連結部材20は、嵌合部材と称されても良く、また、上記した収斂する内向き縦溝12aに嵌合することから楔部材と称されても良く、さらには、バネ受け10のシリンダ1に対する周方向の回動を阻止することからすればキー部材と称されても良い。
【0047】
戻って、連結部材20は、図5に示すように、基本的には、図中での矢印aで示す正面視で、また、符示などしないが、背面視で、上方で収斂する縦長の台形を呈するように形成され、左側面(図5中に符号20cで示す)視および右側面(符示なし)視で縦長の矩形を呈するように形成されてなる。
【0048】
ちなみに、連結部材20における平面20aは、いわゆる奥行方向に長めになる矩形を呈するように、また、底面20bは、いわゆる幅方向に長くなる矩形を呈するように形成される。
【0049】
なお、連結部材20の構成素材については、基本的には、バネ受け10やシリンダ1の構成素材と同じ、たとえば、鋼材など硬質材からなるのが良いが、機械的強度が充足されるものであれば、アルミ材や硬質合成樹脂材からなるとして、各縦溝1a,12a内でいわゆる馴染むことを期待できるとしても良い。
【0050】
上記した連結部材20は、この発明にあって、シリンダ1の外周面に形成される外向き縦溝1aに嵌装されてから、上記したバネ受け10に形成の内向き縦溝12aに嵌合される。
【0051】
そのため、この連結部材20は、複数個とされるもので、好ましくは、内向き縦溝12aおよびこれに相応する外向き縦溝1aの全てとなる個数とされるのが良いが、所定の連結態勢を具現化できるのであれば、選ばれた個数、たとえば、計6個所中の3個所、あるいは、計8個所中の4個所に相応する個数とされるとしても良い。
【0052】
また、この連結部材20は、この発明のバネ受け構造を具現化するのにあって、複数個用意されて複数個利用されるが、このことからすると、いわゆるバラバラに準備されるのは、好ましいことではないとも言い得る。
【0053】
そこで、連結部材20を複数個用意する場合には、複数となる連結部材20がいわゆるバラバラにならないように、図示しないが、剥離紙系のテープなどに適宜の間隔で保持された状態で利用に供されるのが良いと言い得る。
【0054】
一方、シリンダ1は、図3に示すように、この発明にあって、前記したバネ受け10の内周面、つまり、環状基部12の内周面に対向する外周面に周方向に任意の間隔で設けられる外向き縦溝1aを有する。
【0055】
このとき、外向き縦溝1aは、軸線方向を上下方向にし、周方向に適宜の間隔を有して形成され、個数については、図示するところでは、前記したバネ受け10の内周面に形成の内向き縦溝12aの個数と同じになる個数とされている。
【0056】
これによって、外向き縦溝1aに嵌装した連結部材20をバネ受け10の内向き縦溝12aに嵌合するについて、一箇所での照合ができていれば他の個所の照合も自動的に実現されることになる点で有利となる。
【0057】
このように、この発明にあっては、シリンダ1の外周面にバネ受け10を設けるのに当たって、外向き縦溝1aを周方向に任意の間隔で形成すれば足りるから、シリンダ1の外周面に溶接を施す場合のように、シリンダ1における溶接熱による歪み発生を危惧しなくて済む。
【0058】
このシリンダ1における溶接熱による歪み発生を危惧しなくて済む点については、特に、油圧緩衝器が単筒型に設定されてなる場合に効果がある。
【0059】
戻って、シリンダ1の外周面に形成される外向き縦溝1aについてであるが、その平面形状は、図3に示すように、上記した連結部材20の嵌装を許容するように矩形を呈する。
【0060】
その一方で、この外向き縦溝の縦断面形状については、図4に示すように、形成されることが可能となる。
【0061】
つまり、図1,図3および図6に示すところにあっては、図4(A)に示すように、外向き縦溝12aの底部がシリンダ1の軸線方向に沿う平坦面からなるとしたが、これは、連結部材20を外向き縦溝1a内に確実に嵌め込むようにすることが可能になるからである。
【0062】
ちなみに、この場合には、連結部材20をシリンダ1の外周面に保持させるいわゆる仮止め状態のときの定着性、すなわち、下降阻止状態および回動阻止状態を得易くなる。
【0063】
一方、図4(B)に示すところでは、外向き縦溝1aの底部が凹状の湾曲面からなるとし、このとき、連結部材20における左側面20c(図5参照)は、図示しないが、上記の凹状の湾曲面における曲率に一致する曲率の凸状の湾曲面からなるとし、これによって、連結部材20を外向き縦溝1aにいわゆる滑り込ませるようにして嵌装することが可能になる。
【0064】
また、図4(C)に示すところでは、外向き縦溝1aの底部が一方向に向けて、つまり、図示するところでは、上方に向けて浅くなるテーパ状に形成されてなる、すなわち、底部が上方に向けて浅くなる傾斜面とされてなるもので、この実施形態による場合には、図4(A)に示す実施形態の場合に比較して、外向き縦溝1aの形成が容易になる点で有利となる。
【0065】
以上のように形成されたこの発明によるバネ受け構造の組立に際しては、先ずは、バネ受け10の内側に油圧緩衝器SAにおけるシリンダ1を導通させるようにしてバネ受け10をシリンダ1に介装する。
【0066】
このとき、バネ受け10にあっては、内周面がシリンダ1の外周面に形成の外向き縦溝1aに対向することになる位置まで下降されないように配慮する。
【0067】
そして、この状態からシリンダ1の外周面に形成の外向き縦溝1a内に連結部材20を嵌装する。
【0068】
このとき、シリンダ1の外周面にあって周方向に複数の外向き縦溝1aが形成されているから、所定数となる外向き縦溝1aに適宜の手段でそれぞれ連結部材20を嵌装することが肝要となる。
【0069】
シリンダ1に形成の外向き縦溝1aに連結部材20を嵌装した状態で、言わば上方にあるバネ受け10を下降させて、バネ受け10の内周面に形成の内向き縦溝12aにシリンダ1の外向き縦溝1aに嵌装されている連結部材20を嵌合させる。
【0070】
これによって、つまり、シリンダ1の外向き縦溝1aに嵌装されている連結部材20は、この態勢でシリンダ1に対する回動および下降が阻止された態勢にあるので、この連結部材20に内向き縦溝12aを嵌合させるバネ受け10は、内向き縦溝12aに連結部材20を嵌合させた時点でシリンダ1に対する回動および下降が阻止されて固定状態に維持される。
【0071】
その結果、この状態でバネ受け10におけるシール部11に懸架バネSにおける下端を担持させることで、懸架バネSの下端の担持が可能とされる。
【0072】
そして、この発明にあって、バネ受け10は、フランジ状に形成のシート部11とこのシート部11を有する環状基部12とからなり、内側にシリンダ1を挿通させる筒状部を有しないから、従来の筒状部を有するバネ受けに比較して、部品の共通化を図り易くする。
【0073】
また、この発明にあっては、シリンダ1の外周面に外向き縦溝1aを周方向に任意の間隔で形成すれば足りるから、シリンダ1の外周面に溶接が施される場合に比較して、シリンダ1における溶接熱による歪み発生を危惧しなくて済む。
【0074】
さらに、この発明にあっては、介装される懸架バネSの長さが変更されるとき、新たな懸架バネSの下端位置に相応するようにシリンダ1の外周面に新たな外向き縦溝1aを形成すれば足りるから、あるいは、初めから、複数の外向き縦溝を上下に形成しておけば良いから、迅速に、また、容易に、さらには、安価に懸架バネの長さの変更に対応できる。
【0075】
その結果、この発明によれば、介装される懸架バネSの下端を担持するのに最適なのはもちろんのこと、懸架バネの長さが変更されるとしても、バネ受けをそのまま利用する、すなわち、バネ受けの共通部品化が可能になる。
【符号の説明】
【0076】
1 シリンダ
1a 外向き縦溝
2 ロッド
10 バネ受け
11 シート部
12 環状基部
12a内向き縦溝
20 連結部材
20a 平面
20b 底面
20c 左側面
M 溶接(部)
S 懸架バネ
SA 油圧緩衝器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端側部材とされるシリンダと、このシリンダに出没自在に挿通される上端側部材たるロッドとを有し、外周に介装の懸架バネにおける下端を担持するバネ受けを上記シリンダの外周に有する油圧緩衝器において、
上記バネ受けが上記懸架バネの下端を担持するフランジ状に形成のシート部と、このシート部を外周側部に有して内周面を上記シリンダの外周面に対向させる環状基部とを有し、
上記シリンダが外周面に周方向に任意の間隔で設けられる外向き縦溝を有し、
上記環状基部が内周面に内向き縦溝を有し、
上記外向き縦溝に嵌装される連結部材を有し、
この連結部材に上記内向き縦溝を嵌合させてなることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項2】
上記バネ受けにあって、上記シート部と上記環状基部とが別部品に形成されて溶接で一体化されてなる請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項3】
上記外向き縦溝が底部を上方に向けて浅くする傾斜面にしてなる請求項1に記載のバネ受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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