説明

油圧配管の保護カバー

【課題】既に所定の機械に組み込まれた油圧配管を構成するホースに着脱可能に装着されて、このホースを有効に保護し、ホースが損傷しても、外部油漏れを生じることなく、しかも損傷したホースを迅速かつ容易に検出できるようにする。
【解決手段】保護カバー30は可撓性を有するシート部材からなり、ホース17bの外周を覆うように装着されるカバー本体31を有するものであり、このカバー本体31を構成する第1,第2のカバーシート31a,31bの両側部の両側部には、ホース17bに被装させ状態で固着される面ファスナ32が設けられており、またカバー本体31の両端に設けた取付部33は接続口部18に着脱可能に面ファスナを用いて固着され、第1のカバーシート31aと取付部33との間には、ホース17bからの油漏れがあると、膨張する蛇腹部37が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式建設機械等のように、油圧配管が引き回され、この油圧配管の少なくとも一部を曲げ方向に可撓性を有するホースで構成した機械に装着され、この油圧配管を構成するホースの保護を図るための油圧配管の保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧式建設機械の一例として、図1に示した油圧ショベルがある。油圧ショベルは下部走行体1に旋回装置2を介して上部旋回体3を連結して設けたものから構成され、上部旋回体3のフレーム3aには運転室4や機械室を構成する建屋5等が設けられると共に、土砂の掘削作業等を行うための作業機10が装着されている。
【0003】
作業機10は上部旋回体3のフレーム3aに俯仰動作可能に設けたブーム11と、このブーム11の先端に上下方向に回動可能に連結して設けたアーム12と、このアーム12の先端に設けたフロントアタッチメントとしてのバケット13とから大略構成される。アーム12とバケット13との間はリンク機構14が介在しており、このリンク機構14を作動させることにより関節の動きが行われる。
【0004】
作業機10を構成するブーム11,アーム12及びバケット13を駆動するために、油圧シリンダからなるブームシリンダ11a,アームシリンダ12a及びバケットシリンダ13aが設けられる。これらの油圧シリンダには、一対からなる油圧配管が接続される。油圧シリンダにおける一対の油圧配管は建屋5内に延在されており、この建屋5内に設けたコントロールバルブに接続される。また、コントロールバルブからの配管は油圧ポンプと作動油タンクとに接続されている。従って、コントロールバルブを切り換えることによって、作動油の流れが制御されて、油圧シリンダが駆動される。油圧シリンダは油圧モータと共に作業機10の各部を駆動するための油圧アクチュエータを構成するものである。なお、コントロールバルブ,油圧ポンプ及び作動油タンクについては、従来から周知であるので、図示及び説明は省略する。
【0005】
油圧アクチュエータへの油圧配管の引き回し構造の一例として、図2にアームシリンダ12aへの油圧配管の接続部の構成を示す。この場合、油圧配管はブーム11の背面に沿って引き回される。そして、ブーム11の背面には一対のブラケット15,15が設けられており、アームシリンダ12aの基端部は、ピン16を用いてブラケット15に回動可能に支持されている。アームシリンダ12aに接続される2本の配管のうちの一方はシリンダボトム側の端部に接続され、他端はロッド導出側の端部に接続されることになる。
【0006】
アームシリンダ12aが駆動されて、そのロッドが伸長したり、縮小したりするように駆動されるが、このときにはアームシリンダ12aの基端部はピン16を中心として回動することになる結果、油圧配管が曲げられるようになる。従って、油圧配管は曲げ方向に可撓性を持たせなければならない。しかしながら、強度や耐久性の観点からは、油圧配管を剛性部材、特に金属パイプから構成するのが望ましい。そこで、図2に示したように、油圧配管17のうち、曲らない部位、即ちブーム11の背面に沿って延在される部位をパイプ17aで構成し、アームシリンダ12aのボトム側端部近傍まではホース17bで構成して、アームシリンダ12aに接続するようになし、またロッド導出側端部への接続部分までは再びパイプ17aで構成している。このために、パイプ17の端部に接続口部18を設け、またホース17bの両端部に口金19を設け、アームシリンダ12aのボトム側端部における配管接続部にも接続口部18を設けて、ホース17bの両端における口金19をパイプ17a及びアームシリンダ12aの接続口部18に接続する構成としている。以上の方式による配管接続部の構成は、例えば特許文献1に開示されている。なお、特許文献1では、ブームフート部での配管の接続構造となっているが、アームシリンダ12aへの油圧配管17の接続部も同様である。
【0007】
ところで、ホース18は繰り返し曲げられ、また他の物体と衝突すると、亀裂を生じたり、破損したりする等の損傷を生じるおそれがある。アームシリンダ12aはもとより、バケットシリンダ13a、さらにはブームシリンダ11aに接続される油圧配管も同様、これらの油圧配管17内には作動油が流れ、特に油圧シリンダの駆動圧が作用した高圧油が流れることから、ホース17aが損傷すると、高圧となった作動油が損傷箇所から外部に噴出することになり、その結果周囲に作動油がまき散らされることになり、土壌等が汚染されることから、広い範囲にわたって清掃して、油分を除去しなければならなくなる。
【0008】
以上のような事態の発生を防止するためには、例えば特許文献2に示されているように、内管と外管との2重の可撓管から油圧配管を構成することが考えられる。ただし、2重管で可撓配管を構成した場合には、内管が損傷したときに、外部から損傷があったことを検出することはできない。引用文献3において、2重配管の液漏れを検出する方法及び装置が提案されている。即ち、内管である送液管を保護管で覆うようになし、送液管と保護管との間に、一端側から他端側に向けて空気を供給して、他端側に圧力検出手段を接続して、この圧力検出手段による圧力の変化を検出することによって、液漏れを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−212993号公報
【特許文献2】特開平5−272666号公報
【特許文献3】特開2008−208877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、前述した特許文献2や特許文献3にあっては、予め2重管として構成したものを配管として使用している。前述した油圧配管17のように、パイプ17aとホース17bとを着脱可能に接続するには、構成の簡素化を考慮すると、接続口部18と口金19との間をねじ結合することになる。このためには、接続口部18及び口金19は外部に露出していなければならない。一方、ホース17bに保護カバーを装着する場合、保護カバーとしての機能を十分発揮させるためには、保護カバーは少なくとも口金19を覆うように、好ましくはパイプ17a側の接続口部18まで覆うようにしなければならない。
【0011】
以上のことから、パイプ17aとホース17bとの接続を、接続口部18と口金19との間でのねじ結合とする場合には、接続口部18及び口金19を外部に露出させておく必要があり、保護カバーで当該部位を覆うのは好ましくはない。従って、特許文献2や特許文献3におけるように、予め2重管として組み立てたものは、ホースを配管に着脱可能に接続するためのものとして使用することはできないか、または少なくとも構成の簡易さ等の観点から好ましいものではない。
【0012】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、油圧配管を構成するホースとパイプが機械に組み込まれて接合された後に容易に着脱できる油圧配管の保護カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明は、油圧配管を構成し、相互に可動な部位に架け渡すようにして設けられ、両端が金属パイプまたは油圧機器の接続口部に着脱可能に接続される口金となり、可撓性を有するホースに被装される保護カバーであって、可撓性を有するシート部材からなり、前記ホースの外周を覆うように装着されるカバー本体と、前記カバー本体の両側部に設けられ、前記ホースを内部に収納させた状態で筒状となし、前記ホースの両端の口金またはこれら両口金を接続した前記接続口部に着脱可能に固定される側部連結部とから構成したことをその特徴とするものである。
【0014】
油圧配管において、例えば油圧ポンプと油圧シリンダとの間を接続する油圧配管において、相互に可動な部位、例えば油圧ショベルの上部旋回体のフレームとブームとの間、ブームとアームとの間、アームとバケットとの間、さらにブームとアームシリンダとの間、アームとバケットシリンダとの間等、一方側の部材に対して他方側の部材が相対動作する部材間に架け渡す部位では、曲げ可能なものとする必要があることから、可撓性を有するホースで油圧配管を構成する。一方、油圧配管のうち、ブームやアームを構成する壁面の部位を延在させる位置では曲げ可能であることが要求されないので、金属パイプで油圧配管を構成する。ホースは、一端が金属パイプに接続され、他端は油圧シリンダといった油圧機器に直接接続されるか、前後の金属パイプ間に接続され、さらに油圧機器間に接続される場合もある。このために、ホースの両端には口金を設け、これらの口金に接続される金属パイプや油圧機器に接続口部を設けて、これら口金と接続口部とを通常は着脱可能に接続される。
【0015】
以上のようにして引き回した油圧配管のうち、少なくともホースの部位を保護カバーにより覆うことにより保護する。保護は障害物や飛来物等と衝突したときに、ホースに無理な外力が作用して、折損したり、亀裂や破損が発生したりするのを防止することである。また、機械が野外で稼働する油圧ショベル等の建設機械の場合には、太陽光の照射によりホースの劣化防止等のためにも有効である。
【0016】
ホースに保護カバーを被装させるが、ホースの両端の口金が油圧配管を構成する金属パイプの端部または油圧機器に設けた接続口部に接続されている状態で、そのホースに被装する。このために、保護カバーは可撓性を有する合成樹脂製のシートからなるカバー本体を構成し、既設のホースを包み込むようにして被装させて、このカバー本体の両側部を連結して筒状にする。このために、カバー本体の側部には側部連結部を形成する。側部連結部による固着は着脱が容易であって、装着した状態で内部の密閉性を持たせる。このために、面ファスナまたは線ファスナを用いるのが望ましい。勿論、側部連結部の構成としては、これら以外にも、例えば接着や縫い付け等によることもできる。
【0017】
カバー本体の両端はホースの先端における口金の部位かまたは口金が接続される金属パイプの端部を構成する接続口部に固定する。ここで、ホースの全体を保護するという観点からは、接続口部まで延在させて、この接続口部に固定するのが望ましい。側部連結部は、このカバー本体の両端部における口金または接続口部からなる固定対象部の位置まで延在させるか、または側部連結部とは独立した取付部として構成することもできる。そして、この取付部も着脱可能となっていなければならないので、側部連結部と同様の着脱機構を持たせるようにしても良い。
【0018】
いずれにしろ、ホースを収納させて筒状にしたカバー本体は、その両側部を連結する側部連結部だけでなく、口金や接続口部等といった固定対象部に固定する部位も密閉する必要がある。この固定対象部に対して強く締め付けることにより密閉性を確保できるが、固定対象部が六角ナット等、円筒形でない場合には、密閉性を確保するという点で有利ではない。そこで、この場合には、固定対象部とカバー本体との間にゴム等のクッション性を有するシール部材を介在させることができる。シール部材は、その内面形状が固定対象部の外面形状と一致させ、外面が円筒形とすることによって、この部位の密閉性を確保することができる。
【0019】
保護カバーはホースを収納させた筒状の鞘部材として構成されるが、この保護カバーには追加の機能を持たせることができる。この追加の機能の一つとして、油漏れ検出機能である。ホースは、油圧ショベルの上部旋回体のフレームとブームとの間、ブームとアームとの間、アームとバケットとの間、さらにブームとアームシリンダとの間、アームとバケットシリンダとの間等といった高所に設けられている。従って、ホースが損傷して、油漏れが生じたときに、その油漏れ箇所を検出するのが困難な場合がある。ホース内には高圧油が流れ、保護カバーによりホースが密閉されているので、保護カバー内部の圧力が急激に上昇する。そこで、保護カバー内に圧力上昇があると、この保護カバーの少なくとも一部が膨張するように構成する。例えば、蛇腹部を一部に設けておき、この蛇腹部を縮小させた状態にして組み付けておくと、内部圧力の上昇によって、蛇腹部が膨張することになる。従って、蛇腹部の膨張を検出できるようにすると、例えば蛇腹部に視覚的に刺激される色付けを行うと、外部からの視認が容易になる。また、高圧油が噴出するのではなく、比較的低い圧力の作動油が徐々に流出することもある。この場合にも、油の流出により保護カバーの内部容積が増えることになるので、やはり蛇腹部が膨張する。
【0020】
油の流出時には、保護カバーの内部の圧力が上昇し、また容積が拡大する。従って、保護カバーの内部を密閉状態にする必要があるが、油は粘性流体であることから、特別高度な気密性を確保しなくても、ホースから油が流出したときに、蛇腹部の容積が拡大することから、保護カバーから外部に漏出するのを防止できる。また、カバー本体に、油溜めバッグ等、常時は縮径状態でコンパクトなものであり、ホースから油漏れがあると、拡張する可撓容袋を設けるようにすると、外部油漏れ防止機能がより確実に発揮する。さらに、カバー本体の内面に油を吸収する吸収マットを設けたり、また油受け用のポケットを設けたりしておけば、また吸収マットと油受けポケットとの両方を設けるようにすると、油の外部流出防止のためにより効果的である。さらに、面ファスナを使用する場合、その重畳部位に油を吸収するとゲル化するゲル化剤を塗布しておくと、内部油漏れが生じたときに、ゲル化による密閉性がより高くなり、外部油漏れをより確実に防止することができる。
【0021】
ホースの耐候性を高めるために、保護カバーの外面は太陽光等を効率的に反射するシルバー系に着色することが望ましい。また、保護カバーとホースとの間には隙間を形成することによって、断熱部とすることもできる。このために、保護カバーの直径をホースの直径より大きくする。そして、この間の隙間を全長にわたってほぼ一定のものとするには、保護カバーのカバー本体における内面に複数箇所のスペーサを装着すれば良い。
【発明の効果】
【0022】
保護カバーを以上のように構成することによって、油圧配管を構成するホースを有効に保護し、既に機械に組み込まれた油圧配管におけるホースに容易に装着したり、脱着したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】油圧配管を備えた機械の一例としての油圧ショベルの正面図である。
【図2】図1の油圧ショベルにおいて、アームシリンダへの油圧配管を示す構成説明図である。
【図3】油圧配管を構成するパイプとホースとの接続部を分離した状態を示す正面図である。
【図4】油圧配管を構成するパイプとホースとの接続部を分離した状態を示す正面図である。
【図5】油圧配管におけるホースに本発明の第1の実施形態における保護カバーを装着した状態を示す正面図である。
【図6】図5の保護カバーを展開した状態で示す正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】保護カバーにおける蛇腹部が膨張した状態を示す要部拡大図である。
【図9】蛇腹部を形成する円環状可撓性シートの構成説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態を示す保護カバーを展開した状態で示す正面図である。
【図11】図10の保護カバーをホースに装着した状態を示す正面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における保護カバーにおける側部連結部を構成する線ファスナの構成説明図である。
【図13】装着状態での保護カバーの基端部分の断面図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における変形例を示す図11と同様の図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態を示す保護カバーのホースへの装着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。ここで、本実施の形態に示す油圧配管の保護カバーは、前述した従来技術と同様、図1に示した油圧ショベルの作業機10において、図2に示したブーム11の背面に設けた金属製のパイプ17aと、このパイプ17aの接続口部18に接続される口金19を有するホース17bとから油圧配管17のホース17bを保護するものとして構成される。なお、保護カバーの装着位置はこれに限定されるものではなく、機械に設けられているいずれかの油圧配管におけるホースを保護するためのものとして使用することができる。
【0025】
そこで、図3及び図4にパイプ17aとホース17bとの間の接続部の構成を示す。図3は、パイプ17aとホース17bとを分離した状態を示し、図4はパイプ17aとホース17bとの接続状態を示す。このように、パイプ17aとホース17bとを接続するために、パイプ17aの先端部分の外周面にはねじ部20が形成されており、このねじ部20にはロック用ナット21が螺合して設けられており、これらから接続口部18が構成されている。一方、ホース17bの口金19は、ナット状突出部22aを設けたホース連結部22と、このホース連結部22の先端に回転自在に連結したナット部23とから構成されている。
【0026】
従って、パイプ17aのねじ部20の先端部にホース17bにおける口金19を構成するナット部23を螺合させ、パイプ17a側に設けたロック用ナット21を螺回して、ナット部23の端面に当接する位置まで移動させることによって、パイプ17aとホース17bとが接続される。また、ホース17bの他端はアームシリンダ12aに設けた接続口部18に接続されるが、この接続口部18はパイプ17aの先端に設けた接続口部18と同じ構成としており、従って前述したと同様の手順でホース17bの他端がアームシリンダ12aに連結される。
【0027】
本発明の第1の実施の形態に係る保護カバー30は、このようにして組み付けられたホース17bの外周を覆うように装着されることになる。即ち、図5に示したように、保護カバー30はホース17bの両端における口金19,19の位置を越して、パイプ17a及びアームシリンダ12aに設けた接続口部18を構成するナット21の位置まで延在されて、このナット21の外面に固定される。
【0028】
保護カバー30は、図6及び図7に示したように、全体が所定幅を有し、ホース17bより僅かに長いシート部材からなるカバー本体31を有するものであり、このカバー本体31の両側部には所定幅にわたって面ファスナ32が止着されている。一方側の側部には、面ファスナ32が表面側に設けられており、他方側の側部には、裏面側に面ファスナ32が設けられている。従って、ホース17bを内部に配置して、このホース17bを包み込んで、面ファスナ32同士を当接させて、押圧力を作用させることによって、ホース17bには保護カバー30が被装されることになる。従って、これら面ファスナ32,32により側部連結部が構成される。
【0029】
カバー本体31の両端には取付部33が止着されており、この取付部33の両端にも面ファスナ34が表裏に設けられている。取付部33は、接続口部18を構成するナット21の外周面を囲繞するように装着して、両側に設けた面ファスナ34を当接させて、押圧することにより固着される。なお、図6には、取付部33とカバー本体31との連結部は展開して示している。
【0030】
カバー本体31は、第1のカバーシート31aと、第2のカバーシート31bとに分割されており、これら第1,第2のカバーシート31a,31bは少なくとも防水性のあり、布や軟性樹脂等からなる可撓性を有するシート状の部材から構成されている。また、取付部33も、第1,第2のカバーシート31a,31bと同様の部材から構成されている。そして、第1,第2のカバーシート31a,31b間及び取付部33との間は縫い付け等の手段で固着されている。ここで、第1のカバーシート31aは第2のカバーシート31bに対して、また第2のカバーシート31bは取付部33に対して、所謂ギャザー縫いとすることによって、湾曲癖を付けるようにしている。そして、第2のカバーシート31bには、油吸収マット35が固着して設けられており、また油吸収マット35に近接した位置には油受けポケット36が、それぞれ上下2段設けられている。
【0031】
第2のカバーシート31bと取付部33との間は直接連結されているが、第1のカバーシート31aは取付部33に対して直接連結されているのではなく、その間に蛇腹部37が介在している。この蛇腹部37は油漏れ検出部として機能するものであって、蛇腹部37は組み付け状態では、図5に示したように、縮小状態に保持されており、内部の容積が拡大すると、図8に示したように上下に拡張するように膨張することになる。この蛇腹部37は、図9(a)に示したように、上下に複数枚重ね合わせた円環状可撓性シート38から構成され、上下に配置した円環状可撓性シート38,38を順次外周側同士、内周側同士を縫い合わせるようにして形成したものであるが、この円環状可撓性シート38には1箇所の半径方向に向けた切れ目38aが設けられており、この切れ目38aの一方側から連結用舌片38bが延在されており、この連結用舌辺38bが図9(b)に示したように、上下の円環状可撓性シート38の間に差し込まれるようになっている。これによって、切れ目38aを境にして左右に開閉できるようになり、連結用舌片38bを上下の円環状可撓性シート38,38間に差し込むことによって、蛇腹部37が組み付けられて、内部の密閉性が確保されるようになっている。
【0032】
本実施の形態は以上のように構成されるものであって、作業機10におけるブーム11の背面に設けたパイプ17aと、アームシリンダ12aの端部に設けた接続口部18間にホース17bの両端の口金19,19を接続することによって、アームシリンダ12aへの油圧配管17が形成される。このようにして油圧配管17が所定の位置に設けられた状態で、ホース17bに保護カバー30が装着される。
【0033】
このために、図6に示したように、カバー本体31を構成する第1,第2のカバーシート31a,31b及びそれらの両端に設けた取付部33を平面化する。そして、蛇腹部37は、その切れ目38aの部位を左右に開くようになし、ホース17bの外周部に巻き付けて、連結用舌片38bを上下の円環状可撓性シート38,38間に挿入して、ホース17bを囲繞させて、蛇腹部37を構築するようにして、この状態で、カバー本体31の両端に設けた取付部33,33をパイプ17aとアームシリンダ12aとにそれぞれ設けられている接続口部18,18に巻き付けて、このホース17bをカバー本体31で包み込み、それらの両側部に設けた面ファスナ34を重ね合わせるようにして相互に固着させる。これによって、ホース17bは保護カバー30で被装されることになり、保護カバー30の両端は接続口部18の位置まで延在される。
【0034】
これによって、ホース17bの外周部はその全長にわたって保護カバー30により完全に被装されて、外部に露出することはない。しかも、カバー本体31の部位及び取付部33の部位は面ファスナ32,34により着脱可能に固着されて、内部のホース17bが密閉される。蛇腹部37の部位は切れ目38aとなっているが、連結用舌片38bにより隙間が閉塞されている。従って、保護カバー30の内部は密閉状態に保持される。ただし、保護カバー30の内部は完全な気密状態となっている訳ではなく、アームシリンダ12aが作動して、ピン16を中心として回動したときには、この保護カバー30の内部が多少拡縮して、排気や吸気を行うことができるものである。保護カバー30の内部は液密性があり、特に所定の粘度を有する作動油が漏出しない程度には密閉性が得られている。
【0035】
アームシリンダ12aを繰り返し作動させると、それに伴いホース17bに曲げ力が作用することになり、特にホース17bの口金19への接続部分には応力が集中して、亀裂が発生する等、破損のおそれがある。その結果、ホース17bから油漏れが発生する。特に、アームシリンダ12aに高圧油が供給されているときに、ホース17bが破損すると、高圧の作動油が噴出することになる。しかしながら、ホース17bは保護カバー30で覆われているので、外部に油漏れが生じるおそれはなく、周囲が油で汚損されるようなことはない。特に、ホース17bだけでなく、このホース17bの両端が接続される接続口部18の位置まで保護カバー30で覆われていることから、油漏れ対策としては、ほぼ完全なものとなる。
【0036】
また、保護カバー30の内部には、油吸収マット35が装着されているので、ホース17bから漏れ出した油はこの油吸収マット35により吸収され、さらに油受けポケット36も設けられているので、この油受けポケット36がダム効果を発揮して、漏れ油が外部に漏出するのを防止できる。
【0037】
油漏れに対する対策としては、面ファスナにより、また油吸収マット35と油受けポケット36により保護カバー30内に滞留する油を外部に漏出させないようにしているが、さらにより高度な油漏れ機能を発揮させるためには、面ファスナ32,34に予めゲル化剤を含浸させておく。ここで、ゲル化剤は、例えばポリ(p-オキシベンゾイル),ポリ(2‐オキシ‐6‐ナフトイル)、ポリ(オキシメチレン)等が好適である。このように面ファスナ32,34にゲル化剤を含浸させておくと、ホース17bに油漏れが生じたときに、このゲル化剤がゲルの状態になって、面ファスナ32,34の重畳箇所の密閉性がより高度になる。
【0038】
以上のように、ホース17bに油漏れが生じていると、その交換が必要となる。このホース17bの交換はできるだけ迅速に行わなければならない。しかしながら、アームシリンダ12aは高所に取り付けられているので、ホース17bの破損の有無は外部から確認するのは困難なことがある。ここで、ホース17bから高圧の油が噴出したときには、このホース17bを覆っている保護カバー30の内部圧力が上昇して、膨張しようとする。保護カバー30の一部に拡縮可能な蛇腹部37が設けられている。この蛇腹部37は常時においては、図5に示したように、円環状可撓性シート38は上下にほぼ重なり合う状態となっており、保護カバー30の内部圧力が上昇すると、蛇腹部37が上下に膨張して、図8に示した状態となり、その外面が露出する。従って、この蛇腹部37を構成する円環状可撓性シート38の外面を刺激の強い色に着色しておくことによって、蛇腹部37の膨張に対する視認性が高くなり、ホース17bが破損したことを迅速かつ的確に認識できるようになる。また、低圧油漏れが生じたときにも、保護カバー30の内部空間が油漏れにより減少して、圧力が上昇することから、やはり蛇腹部37が膨張することになり、ホース17bの破損を検出することができる。
【0039】
保護カバー30は、ホース17bが破損したときに、油が周囲に飛散するのを防止するためのものだけでなく、構築物,瓦礫や樹木等と衝突したときに、保護カバー30がクッション作用を発揮して、ホース17bに衝撃が加わるのを防止する緩衝機能を発揮する。これによって、ホース17bが他の物体と衝突することにより生じる損傷も防止することができるようになる。また、ホース17bは一般に黒色のものであり、一般的には、その主な原料はゴムである。しかも、油圧ショベルは野外で稼働するものであるから、ホース17bは太陽光に晒されることになって劣化が進行する。しかしながら、ホース17bは保護カバー30により覆われているので、太陽光が直接照射されることはない。従って、耐候性が向上して、劣化の度合いを緩和することができ、その長寿命化が図られる。そして、保護カバー30は光の反射性に優れたものとすることが望ましく、このためにはシルバー系の色調とするのが望ましい。
【0040】
次に、図10乃至図14は本発明の第2の実施の形態を示すものである。図10及び図11に示したように、保護カバー40のカバー本体41は、前述した第1の実施の形態と同様、長方形のシルバー系の合成樹脂製のシート材から構成されるものである。このカバー本体41は1枚もののシートから構成され、図10に展開して示したように、その両側部にそれぞれファスナ片42a,42bが設けられており、図11に示したようにカバー本体41を筒状に連結したときには、線ファスナ42となる。その結果、カバー本体41はほぼ円筒形の鞘部材となり、内部にホース17bを収納できる空間が形成される。
【0041】
ここで、線ファスナ42は合成樹脂製のエレメントを使用している場合はともかく、エレメントが金属製のものである場合には、ホース17bや外部の部材等と擦れ合って、それらを損傷させないようにするために、図12に示したように、両ファスナ片42a,42bには、覆いテープ43が止着されており、一方のファスナ片42a側から他方のファスナ片42bに向けては外面側に、また他方のファスナ片42bから一方のファスナ片42aに向けては内面側に、それぞれ覆いテープ43が止着されており、これら覆いテープ43は線ファスナ42における金属製エレメントの噛合部を上下から挟みこむようにして締結される。なお、覆いテープ43は図10及び図11に仮想線で示している。
【0042】
カバー本体41には、その一端側に開口44が1乃至複数箇所開設されており、開口44には伸縮可能な可撓性シート45を装着することにより密閉されている。線ファスナ42でカバー本体41の両側部を閉じて筒状に形成されると、図13及び図14に示したように、ホース17bの外面とカバー本体41の内面との間に円環状の内部空間が形成される。そして、カバー本体41における一端側の部位は、内部空間が常圧状態のときには、実線で示したように、カバー本体41の外面から突出しない状態に保持されており、内部空間が高圧になると、可撓性シート45が外方に向けて拡張して、同図に仮想線で示したように膨出することになる。
【0043】
ここで、可撓性シート45が膨出するのは、ホース17bの外面とカバー本体41の内面との間に油圧配管17内を流れる作動油が漏出した場合であり、ホース17bが損傷して、ホース17bとカバー本体41との間の円環状の内部空間に作動油が漏れ出すと、可撓性シート45が膨出することにより油溜め部として機能することになる。その結果、漏出油は外部に飛散することはない。また、可撓性シート45が膨出すると、外部から視認できるものであり、従って油漏れ検出も可能になる。
【0044】
保護カバー40における可撓性シート45を装着した部位は、油溜めという観点から、下方に位置させる方が望ましい。図1の油圧ショベルでは、ブーム11が下げられた状態が示されているが、これは油圧ショベルの休止姿勢である。油圧ショベルが稼働して、土砂の掘削等の作業を行う際には、ブーム11が水平より上げられた位置となるのが一般的である。このときにおいては、アームシリンダ12aに接続されている油圧配管を構成するホース17bは、アームシリンダ12aへの接続側が上方になり、ブーム11の背面に延在されているパイプ17aが下方の部位となる。従って、図2に示した油圧配管17のホース17bに保護カバー40を装着する場合には、パイプ17aへの接続部側に可撓性シート45が位置するようにして装着される。図1に示した休止姿勢では、油溜め部となる可撓性シート45を設けた側が上方になることもあるが、休止姿勢では、ホース17bの内部に高圧油が流れることはないことから、このホース17bが損傷していても、軽微な損傷であれば、ホース17bの外に油漏れすることはない。
【0045】
このように、稼働状態で下方位置となる保護カバー40のパイプ17aへの連結部は、油漏れがないように密閉する必要がある。このために、保護カバー40のパイプ17aへの装着部、及び好ましくはアームシリンダ12aへの装着部も、図13及び図14に示した構成とする。即ち、接続口部18に装着したロックナット24は、その外面が六角形からなるものであり、このロックナット24には、ゴム等の弾性部材からなるシール部材46が装着されている。シール部材46は、端板部46aと周胴部46bとが一体に設けられており、端板部46aはホース17bの外径と同じか、それより僅かに小さい円形の孔47が形成されている。周胴部46bは内周面がロックナット24の外面に密着可能な六角部となり、外面は円筒形状となっている。
【0046】
シール部材46には、その端板部46aから周胴部46bの端部に至る切込48が形成されており、この切込48によって左右に開くことができ、パイプ17aに端板部46aの孔47を係合させるようにしてパイプ17aに装着できるようになっている。そして、端板部46aはロックナット24の端面部に当接させることによって、その位置に固定的に保持されるようになっている。また、シール部材46の外面は保護カバー40を筒状にしたときに、この保護カバー40の端部内面より僅かに大きい直径を有するものとすることによって、線ファスナ42を閉じたときに、保護カバー40の端部が油圧配管17に強固に固定されると共に、この端部が油漏れしないように密閉されることになる。
【0047】
このように構成することによって、ホース17bの全長のうち、口金19への連結部を含むいずれかの部位が損傷して、内部の作動油が漏れ出したとしても、ホース17aと保護カバー40との間の円環状隙間の内部に保持されることになる。そして、この円環状隙間の内部が漏れ出した作動油で充満すると、可撓性シート45が押動されて、外方に膨らむことによって、油溜め部となるので、作動油の外部漏れを防止することができる。ここで、ホース17bの破損による作動油の漏れは、このホース17bの内部が高圧状態となっているときに生じるものであり、ホース17b内の圧力がタンク圧にまで低下すると、ホース17bからの破損部からの油漏れは殆どなくなる。つまり、作動油の漏れ量は有限のものであり、従って通常の状態でホース17bが破損したときに外部に漏れる作動油の量を基準として開口44の大きさ及びこの開口44に装着される可撓性シート45の特性等を選定すれば良い。
【0048】
保護カバー40はホース17bが損傷しないように保護するものであり、かつ損傷したとしても外部油漏れを防止するためのものである。既に説明したように、このホース17bは、油圧配管のうち、可動部分に設けられて、曲げ方向に可撓性を持たせるために設けられるものであり、このときには保護カバー40も曲げられることになる。このように、保護カバー40が曲がる際に、ホース17bに無理に押し付けられるのを避けるために、保護カバー40は一定の方向に曲がるようにするのが望ましい。このためには、図15に示したように、保護カバー40を筒状とするための線ファスナ142を保護カバー40の軸線方向に設けるのではなく、所定角度分だけ回転方向に曲げるようにして装着する。これによって、保護カバー40が曲がるときに、その方向性が与えられて、内部に設けられているホース17bに押し付けられることがなく、円滑に曲がるようになる。
【0049】
さらに、図16に示した保護カバー50のように、カバー本体51の内面に発泡樹脂からなるスペーサ52を複数箇所固定的に配置することもできる。これによって、保護カバー50の内面とホース17bの外面との間に円周方向にほぼ一定の円環状隙間53を確保することができる。これによって、円環状隙間53がホース17bと外気との間の断熱部として機能することになり、ホース17bが外気温により極端に加熱されたり、また極端に冷却されたりするのを抑制することができる。その結果、ホース17bの柔軟性及び靭性が損なわれるのを防止乃至抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 作業機 11 ブーム
12 アーム 13 バケット
12a アームシリンダ 17 油圧配管
17a パイプ 17b ホース
18 接続口部 19 口金
20 ねじ部 21 ナット
22 ホース連結部 23 ナット
30,40,50 保護カバー 31,41,51 カバー本体
31a 第1のカバーシート 31b 第2のカバーシート
32,34 面ファスナ 33 取付部
35 油吸収マット 36 油受けポケット
37 蛇腹部 38 円環状可撓性シート
42,142 線フ 43 覆いテープ
44 開口 45 可撓性シート
46 シール部材 52 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧配管を構成し、相互に可動な部位に架け渡すようにして設けられ、両端が金属パイプまたは油圧機器の接続口部に着脱可能に接続される口金となり、可撓性を有するホースに被装される保護カバーであって、
可撓性を有するシート部材からなり、前記ホースの外周を覆うように装着されるカバー本体と、
前記カバー本体の両側部に設けられ、前記ホースを内部に収納させた状態で筒状となし、前記ホースの両端の口金またはこれら両口金を接続した前記接続口部に着脱可能に固定される側部連結部と
から構成したことを特徴とする油圧配管の保護カバー。
【請求項2】
前記側部連結部は、面ファスナまたは線ファスナから構成したことを特徴とする請求項1記載の油圧配管の保護カバー。
【請求項3】
前記カバー本体には、前記ホースを覆った状態で、内部圧力が上昇して膨張するものとなし、この膨張状態を外部から視認可能とする油漏れ検出部を備えると
から構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の油圧配管の保護カバー。
【請求項4】
前記カバー本体に拡縮可能な油溜め部を形成する構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の油圧配管の保護カバー。
【請求項5】
前記側部連結部は直線的または曲線的に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の油圧配管の保護カバー。
【請求項6】
前記カバー本体を筒状としたときに、このカバー本体の内面と前記ホースの外面との間に隙間を形成するためのスペーサ部材を介装する構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の油圧配管の保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−189198(P2012−189198A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90837(P2011−90837)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】