説明

油圧駆動システム

【課題】チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができると共に、コストの増大を抑えることができる油圧駆動システムを提供する。
【解決手段】油圧駆動システム1において、作動油流路15は、メインポンプ10と油圧アクチュエータ14との間で閉回路を構成する。チャージ回路16は、作動油流路15の油圧がチャージ流路16の油圧より小さくなったときに作動油流路15へ作動油を補充する。チャージ油圧低減部24d,37は、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、チャージ流路16の油圧を、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ流路16の油圧よりも低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダー等の作業機械は、油圧シリンダや油圧モータなどの油圧アクチュエータを備えている。油圧アクチュエータには、油圧回路を介して油圧ポンプから吐出された作動油が供給される。例えば、特許文献1では、油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧閉回路を備える作業機械が提案されている。油圧回路が閉回路であることにより、油圧アクチュエータによって駆動される部材の運動エネルギーや位置エネルギーが回生される。その結果、油圧ポンプを駆動する原動機の燃費を低減することが可能となる。
【0003】
油圧閉回路には、チャージ回路が併設されることが多い。チャージ回路は、例えば、油圧ポンプからの漏れ油に相当する量の作動油の補充を行うために設けられる。チャージ回路には、チャージポンプと、リリーフ弁などが設けられる。チャージポンプは、通常、固定容量ポンプであり、エンジンなどの駆動源によって駆動される。リリーフ弁は、チャージ回路の油圧(以下、「チャージ圧」と呼ぶ)を規定する。油圧ポンプに供給される作動油の流量が不足して、油圧閉回路の油圧がチャージ圧よりも低下すると、作動油がチャージ回路から油圧閉回路に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−511831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような油圧閉回路は、運動エネルギーや位置エネルギーの回生が十分に見込まれる油圧回路に設けられることが好ましい。このため、油圧閉回路は、通常の油圧回路から独立して設けられることが多い。例えば、油圧ショベルの場合には、油圧閉回路によって、ブームシリンダが駆動される。或いは、ホイールローダーの場合には、油圧閉回路によって、リフトシリンダが駆動される。これらの場合、車両が走行中であるときには、油圧閉回路は作動していない。また、HST(Hydro Static Transmission)を備えるホイールローダーやブルドーザの場合には、油圧閉回路によって油圧モータが駆動される。この場合、車両が停止中であるときには、油圧閉回路は作動していない。このようなときには、チャージポンプでの消費動力は殆どロスとなる。
【0006】
上記のようなチャージポンプでの消費動力のロスを低減するためには、可変容量型ポンプをチャージポンプとして用いることが考えられる。この場合、油圧閉回路の非作動時には、チャージポンプの吐出流量をゼロに変更することによって、チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができる。しかし、可変容量型ポンプは、固定容量型ポンプと比べて高価である。このため、可変容量型ポンプをチャージポンプとして用いた場合には、作業機械のコストが増大するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができると共に、コストの増大を抑えることができる油圧駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムは、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、作動油流路と、チャージ回路と、操作部材と、操作状態判定部と、チャージ油圧低減部とを備える。メインポンプは、作動油を吐出する。油圧アクチュエータは、メインポンプから吐出された作動油によって駆動される。作動油流路は、メインポンプと油圧アクチュエータとを接続し、メインポンプと油圧アクチュエータとの間で閉回路を構成する。チャージ回路は、チャージ流路と、チャージポンプとを有する。チャージ流路は、作動油流路に接続される。チャージポンプは、チャージ流路に作動油を吐出する。チャージ回路は、作動油流路の油圧がチャージ流路の油圧より小さくなったときに作動油流路へ作動油を補充する。操作部材は、例えばメインポンプの吐出流量を制御することにより、油圧アクチュエータを操作するための部材である。操作状態判定部は、油圧アクチュエータが操作中であるのか非操作中であるのかを判定する。チャージ油圧低減部は、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路の油圧を、油圧アクチュエータが操作中であるときのチャージ流路の油圧よりも低減させる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、作動油タンクをさらに備える。作動油タンクは、作動油を貯留する。チャージ油圧低減部は、チャージ流路開閉部と、チャージ油圧制御部とをさらに有する。チャージ流路開閉部は、チャージ流路を作動油タンクに接続する接続状態と、チャージ流路と作動油タンクとの間を閉じる閉塞状態とに切り換え可能である。チャージ油圧制御部は、油圧アクチュエータが操作中であるときには、チャージ流路開閉部を閉塞状態に設定する。チャージ油圧制御部は、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路開閉部を接続状態に設定する。
【0010】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、チャージ油圧低減部は、リリーフ弁とチャージ油圧制御部とを有する。リリーフ弁は、チャージ流路の油圧が所定の設定圧を超えないように調整する。リリーフ弁は、設定圧を第1設定圧と第2設定圧とに切り換え可能である。第2設定圧は、第1設定圧よりも低い。チャージ油圧制御部は、油圧アクチュエータが操作中であるときには、リリーフ弁の設定圧を第1設定圧に設定する。チャージ油圧制御部は、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、リリーフ弁の設定圧を第2設定圧に設定する。
【0011】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、操作状態判定部は、操作部材が所定時間以上、中立位置に保持されているときに、油圧アクチュエータが非操作中であると判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムでは、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路の油圧が、油圧アクチュエータが操作中であるときのチャージ流路の油圧よりも低減される。このため、チャージポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いることなく、チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができる。従って、チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができると共に、コストの増大を抑えることができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムでは、油圧アクチュエータが操作中であるときには、チャージ流路と作動油タンクとの間が閉じられる。また、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路が作動油タンクに接続される。これにより、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路の油圧が、油圧アクチュエータが操作中であるときのチャージ流路の油圧よりも低減される。
【0014】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムでは、油圧アクチュエータが操作中であるときには、リリーフ弁の設定圧が第1設定圧に設定される。また、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、リリーフ弁の設定圧を第2設定圧に設定される。これにより、油圧アクチュエータが非操作中であるときには、チャージ流路の油圧が、油圧アクチュエータが操作中であるときのチャージ流路の油圧よりも低減される。
【0015】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムでは、操作部材が所定時間以上、中立位置に保持されているときに、油圧アクチュエータが非操作中であると判定する。このため、操作部材が一時的に中立位置を通過するときなど、油圧アクチュエータが非操作中ではないときに、油圧アクチュエータが非操作中であると誤って判定されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図2】他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図3】他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図4】他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図5】他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図6】他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る油圧駆動システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る油圧駆動システム1の構成を示すブロック図である。油圧駆動システム1は、例えば油圧ショベル、ホイールローダー、ブルドーザなどの作業機械に搭載される。油圧駆動システム1は、エンジン11と、メインポンプ10と、油圧アクチュエータ14と、作動油流路15と、ポンプコントローラ24とを有する。
【0018】
エンジン11は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを駆動する。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンであり、燃料噴射装置21からの燃料の噴射量が調整されることにより、エンジン11の出力が制御される。燃料噴射量の調整は、燃料噴射装置21がエンジンコントローラ22によって制御されることで行われる。なお、エンジン11の実回転速度は、回転速度センサ23にて検出され、その検出信号は、エンジンコントローラ22およびポンプコントローラ24にそれぞれ入力される。
【0019】
エンジンコントローラ22は、燃料噴射装置21を制御することによりエンジン11の出力を制御する。エンジンコントローラ22には、設定された目標エンジン回転速度および作業モードに基づいて設定されるエンジン出力トルク特性がマップ化されて記憶されている。エンジン出力トルク特性は、エンジン11の出力トルクと回転速度との関係を示す。エンジンコントローラ22は、エンジン出力トルク特性に基づいて、エンジン11の出力を制御する。
【0020】
メインポンプ10は、エンジン11によって駆動され、作動油を吐出する。メインポンプ10から吐出された作動油は、油圧アクチュエータ14に供給される。メインポンプ10は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを有する。
【0021】
第1油圧ポンプ12は、可変容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ12の傾転角が制御されることにより、第1油圧ポンプ12の吐出流量が制御される。第1油圧ポンプ12の傾転角は、第1ポンプ流量制御装置25によって制御される。第1ポンプ流量制御装置25は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて、第1油圧ポンプ12の傾転角を制御することにより、第1油圧ポンプ12の吐出流量を制御する。第1油圧ポンプ12は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第1油圧ポンプ12は、第1ポンプポート12aと第2ポンプポート12bとを有する。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態では、第2ポンプポート12bに作動油が供給され、第1ポンプポート12aから作動油を吐出する。第1油圧ポンプ12は、第2吐出状態では、第1ポンプポート12aに作動油が供給され、第2ポンプポート12bから作動油を吐出する。
【0022】
第2油圧ポンプ13は、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ13の傾転角が制御されることにより、第2油圧ポンプ13の吐出流量が制御される。第2油圧ポンプ13の傾転角は、第2ポンプ流量制御装置26によって制御される。第2ポンプ流量制御装置26は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて第2油圧ポンプ13の傾転角を制御することにより、第2油圧ポンプ13の吐出流量を制御する。第2油圧ポンプ13は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第2油圧ポンプ13は、第1ポンプポート13aと第2ポンプポート13bとを有する。第2油圧ポンプ13は、第1油圧ポンプ12と同様に、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第2油圧ポンプ13は、第1吐出状態では、第2ポンプポート13bに作動油が供給され、第1ポンプポート13aから作動油を吐出する。第2油圧ポンプ13は、第2吐出状態では、第1ポンプポート13aに作動油が供給され、第2ポンプポート13bから作動油を吐出する。
【0023】
油圧アクチュエータ14は、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13から吐出された作動油によって駆動される。油圧アクチュエータ14は、油圧シリンダであり、例えば、ブーム、アーム、或いはバケットなどの作業機を駆動する。油圧アクチュエータ14は、シリンダロッド14aとシリンダチューブ14bとを有する。シリンダロッド14aは、シリンダチューブ14bの内部を第1室14cと第2室14dとに区画している。油圧アクチュエータ14は、第1室14cと第2室14dに対する作動油の供給と排出とが切り換えられることにより伸縮する。具体的には、第1室14cに作動油が供給され、第2室14dから作動油が排出されることによって、シリンダロッド14aが伸長する。第2室14dに作動油が供給され、第1室14cから作動油が排出されることによって、シリンダロッドは収縮する。なお、シリンダロッド14aの第1室14cにおける受圧面積は、シリンダロッド14aの第2室14dにおける受圧面積よりも大きい。従って、油圧アクチュエータ14を伸長させるときには、第2室14dから排出される作動油よりも多量の作動油が第1室14cに供給される。また、油圧アクチュエータ14を収縮させるときには、第2室14dに供給される作動油よりも多量の作動油が第1室14cから排出される。
【0024】
作動油流路15は、第1油圧ポンプ12と、第2油圧ポンプ13と、油圧アクチュエータ14とに接続されている。作動油流路15は、第1室14cと第1ポンプポート12aとを接続し、第2室14dと第2ポンプポート12bとを接続する。作動油流路15は、メインポンプ10と油圧アクチュエータ14との間で閉回路を構成する。具体的には、作動油流路15は、第1流路31と、第2流路32とを有する。第1流路31は、油圧アクチュエータ14の第1室14cと第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12aとを接続する。第1流路31は、油圧アクチュエータ14の第1室14cに作動油を供給する、或いは、油圧アクチュエータ14の第1室14cから作動油を回収するための流路である。第1流路31は、第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aにも接続される。従って、第1流路31には、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との両方からの作動油が供給される。第2流路32は、油圧アクチュエータ14の第2室14dと第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bとに接続される。第2流路32は、油圧アクチュエータ14の第2室14dに作動油を供給する、或いは、油圧アクチュエータ14の第2室14dから作動油を回収するための流路である。なお、第2油圧ポンプ13の第2ポンプポート13bは、作動油タンク27に接続される。作動油タンク27は、作動油を貯留する。従って、第2流路32には、第1油圧ポンプ12からの作動油が供給される。作動油流路15は、第1流路31と第2流路32とによって、メインポンプ10と油圧アクチュエータ14との間で閉回路を構成している。
【0025】
油圧駆動システム1は、チャージ回路16をさらに備える。チャージ回路16は、チャージ流路35と、チャージポンプ28とを有する。チャージポンプ28は、作動油流路15に作動油を補充するための油圧ポンプである。チャージポンプ28は、本発明の第2油圧ポンプに相当する。チャージポンプ28は、エンジン11によって駆動されることによって、作動油をチャージ流路35に吐出する。チャージポンプ28は、固定容量型の油圧ポンプである。チャージ流路35は、チャージポンプ28と作動油流路15とを接続する。具体的には、チャージ流路35は、チェック弁41aを介して第1流路31に接続されている。チェック弁41aは、第1流路31の油圧がチャージ流路35の油圧(以下、「チャージ圧」と呼ぶ)よりも低くなったときに開かれる。チャージ流路35は、チェック弁41bを介して第2流路32に接続されている。チェック弁41bは、第2流路32の油圧がチャージ圧よりも低くなったときに開かれる。これにより、チャージ回路16は、作動油流路15の油圧が、チャージ圧より小さくなったときに、作動油流路15へ作動油を補充する。また、チャージ流路35は、チャージリリーフ弁42を介して作動油タンク27に接続されている。チャージリリーフ弁42は、チャージ圧を所定の設定圧に維持する。第1流路31又は第2流路32の油圧がチャージ圧よりも低くなると、チャージポンプ28からの作動油がチャージ流路35を介して第1流路31又は第2流路32に供給される。これにより、第1流路31及びは第2流路32の油圧が所定値以上に維持される。
【0026】
また、チャージ流路35には、チャージ流路開閉部37が接続されている。チャージ流路開閉部37は、所謂、バイパス弁であり、接続状態Paと閉塞状態Pbとに切換可能である。チャージ流路開閉部37は、接続状態Paでは、チャージ流路35を作動油タンク27に接続する。チャージ流路開閉部37は、閉塞状態Pbでは、チャージ流路35と作動油タンク27との間を閉じる。チャージ流路開閉部37は、電磁切換弁であり、ポンプコントローラ24からの指令信号により、接続状態Paと閉塞状態Pbとに切り換えられる。具体的には、チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときには、付勢部材37aの付勢力により閉塞状態Pbに設定される。チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONであるときには、接続状態Paに設定される。
【0027】
作動油流路15は、リリーフ流路36をさらに有する。リリーフ流路36は、チェック弁41cを介して第1流路31に接続されている。チェック弁41cは、第1流路31の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。リリーフ流路36は、チェック弁41dを介して第2流路32に接続されている。チェック弁41dは、第2流路32の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。また、リリーフ流路36は、リリーフ弁43を介してチャージ流路35に接続されている。リリーフ弁43は、リリーフ流路36の圧力を所定のリリーフ圧以下に維持する。これにより、第1流路31及び第2流路32の油圧が所定のリリーフ圧以下に維持される。
【0028】
油圧アクチュエータ14を伸長させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第1吐出状態で駆動される。これにより、第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12aと、第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aとから吐出された作動油が、第1流路31を通って、油圧アクチュエータ14の第1室14cに供給される。また、油圧アクチュエータ14の第2室14dの作動油が、第2流路32を通って、第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bに回収される。これにより、油圧アクチュエータ14が伸長する。
【0029】
油圧アクチュエータ14を収縮させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第2吐出状態で駆動される。これにより、第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bから吐出された作動油が、第2流路32を通って、油圧アクチュエータ14の第2室14dに供給される。また、油圧アクチュエータ14の第1室14cの作動油が、第1流路31を通って、第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12a及び第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aに回収される。これにより、油圧アクチュエータ14が収縮する。
【0030】
油圧駆動システム1は、操作装置46をさらに備える。操作装置46は、操作部材46aと、操作検出部46bとを有する。操作部材46aは、油圧アクチュエータ14を操作するための部材であり、作業機械の各種の動作を指令するためにオペレータによって操作される。例えば、油圧アクチュエータ14が、ブームを駆動するブームシリンダである場合には、操作部材46aは、ブームを操作するためのブーム操作レバーである。すなわち、操作部材46aは、油圧アクチュエータ14を操作するためにオペレータによって操作される。操作部材46aは、中立位置から油圧アクチュエータ14を伸長させる方向と、油圧アクチュエータ14を収縮させる方向との2方向に操作可能である。操作検出部46bは、操作部材46aの操作量及び操作方向を検出する。操作検出部46bは、例えば操作部材46aの位置を検出するセンサである。操作部材46aが中立位置に位置しているときには、操作部材46aの操作量はゼロである。操作部材46aの操作量及び操作方向を示す検出信号が、操作検出部46bからポンプコントローラ24に入力される。
【0031】
ポンプコントローラ24は、操作部材46aの操作量に応じて第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを制御する。ポンプコントローラ24は、ポンプ制御部24aと、記憶部24bと、操作状態判定部24cと、チャージ油圧制御部24dと、を有する。ポンプ制御部24aと操作状態判定部24cとチャージ油圧制御部24dとは、例えばCPUなどの演算装置によって実現される。記憶部24bは、RAM、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録装置によって実現される。ポンプ制御部24aは、操作部材46aの操作量に応じて油圧アクチュエータ14に供給される作動油の目標流量を演算する。記憶部24bは、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との制御のための情報を記憶している。
【0032】
操作状態判定部24cは、操作検出部46bからの検出信号に基づいて、油圧アクチュエータ14が操作中であるのか非操作中であるのかを判定する。具体的には、操作状態判定部24cは、操作部材46aが所定時間以上、中立位置に保持されているときに、油圧アクチュエータ14が非操作中であると判定する。また、操作状態判定部24cは、操作部材46aの中立位置での保持時間が所定時間より少ないときには、油圧アクチュエータ14が操作中であると判定する。操作状態判定部24cは、操作部材46aが中立位置以外の位置にあるときには、油圧アクチュエータ14が操作中であると判定する。
【0033】
チャージ油圧制御部24dは、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、上述したチャージ流路開閉部37を制御することによって、チャージ圧を、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減させる。具体的には、チャージ油圧制御部24dは、油圧アクチュエータ14が操作中であるときには、チャージ流路開閉部37への指令信号をOFFにすることにより、チャージ流路開閉部37を閉塞状態Pbに設定する。これにより、チャージ圧は、チャージリリーフ弁42の設定圧によって規定される。また、チャージ油圧制御部24dは、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、チャージ流路開閉部37への指令信号をONにすることにより、チャージ流路開閉部37を接続状態Paに設定する。これにより、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、チャージ圧が、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減される。チャージ油圧制御部24dとチャージ流路開閉部37とは、本発明のチャージ油圧低減部を構成する。
【0034】
本実施形態に係る油圧駆動システム1は、以下の特徴を有する。
【0035】
油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、チャージ圧が、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減される。このため、チャージポンプ28として可変容量型の油圧ポンプを用いることなく、チャージポンプ28での消費動力のロスを低減することができる。従って、チャージポンプ28での消費動力のロスを低減することができると共に、コストの増大を抑えることができる。
【0036】
操作部材46aが所定時間以上、中立位置に保持されているときに、油圧アクチュエータ14が非操作中であると判定される。このため、操作部材46aが一時的に中立位置を通過するときなど、油圧アクチュエータ14が非操作中ではないときに、油圧アクチュエータ14が操作中であると誤って判定されることを防止することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、上記の実施形態では、チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときには、閉塞状態Pbに設定される。また、チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONであるときには、接続状態Paに設定される。しかし、上記とは逆に、図2に示すように、チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときに、付勢部材37aの付勢力によって接続状態Paに設定されてもよい。この場合、チャージ流路開閉部37は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONにされると、閉塞状態Pbに設定される。ポンプコントローラ24は、油圧アクチュエータ14が操作中であるときには、チャージ流路開閉部37への指令信号をONにする。これにより、チャージ圧は、チャージリリーフ弁42の設定圧によって規定される。ポンプコントローラ24は、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、チャージ流路開閉部37への指令信号をOFFにする。これにより、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときのチャージ圧が、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減される。
【0039】
上記の実施形態では、チャージ流路開閉部37は、バイパス弁であるが、図3に示すように、チャージ流路開閉部として、チャージリリーフ弁38が用いられてもよい。チャージリリーフ弁38は、チャージ圧が所定の設定圧以上になるとチャージ流路35と作動油タンク27とを接続する。これにより、チャージリリーフ弁38は、チャージ圧が所定の設定圧を超えないように調整する。チャージリリーフ弁38の設定圧は、第1設定圧と第2設定圧とに切換可能である。第2設定圧は第1設定圧よりも小さい。リリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加されているときには、チャージリリーフ弁38の設定圧は、第1設定圧に設定される。チャージリリーフ弁38のリリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加されていないときには、チャージリリーフ弁38の設定圧は、第2設定圧に設定される。チャージリリーフ弁38の設定圧は、設定圧切換部39によって切り換えられる。設定圧切換部39は、例えば電磁制御弁であり、ポンプコントローラ24からの指令信号に応じて第1位置状態P1と第2位置状態P2とに切り換えられる。設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときには、付勢部材39aの付勢力によって第1位置状態P1に設定される。設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONであるときには、第2位置状態P2に設定される。設定圧切換部39は、第1位置状態P1では、リリーフパイロット流路44を油圧源40に接続する。油圧源40は、微小容量の固定容量ポンプであり、例えばギアポンプである。リリーフパイロット流路44は、チャージリリーフ弁38のリリーフパイロットポート38aに接続されている。従って、チャージリリーフ弁38のリリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加され、チャージリリーフ弁38の設定圧は、第1設定圧に設定される。設定圧切換部39は、第2位置状態P2であるときには、リリーフパイロット流路44を作動油タンク27に接続する。このため、チャージリリーフ弁38のリリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加されず、チャージリリーフ弁38の設定圧は、第2設定圧に設定される。チャージ油圧制御部24dは、油圧アクチュエータ14が操作中であるときには、設定圧切換部39への指令信号をOFFにする。これにより、チャージリリーフ弁38の設定圧が第1設定圧に設定される。チャージ油圧制御部24dは、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、設定圧切換部39への指令信号をONにする。これにより、チャージリリーフ弁38の設定圧が第2設定圧に低減される。このため、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときのチャージ圧が、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減される。
【0040】
図3に示す油圧駆動システムでは、設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときには、第1位置状態P1に設定される。また、設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONであるときには、第2位置状態P2に設定される。しかし、上記とは逆に、図4に示すように、設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がONであるときに、第1位置状態P1に設定されてもよい。この場合、設定圧切換部39は、ポンプコントローラ24からの指令信号がOFFであるときに、第2位置状態P2に設定される。ポンプコントローラ24は、油圧アクチュエータ14が操作中であるときには、チャージ流路開閉部37への指令信号をONにする。これにより、チャージリリーフ弁38の設定圧が第1設定圧に設定される。ポンプコントローラ24は、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときには、設定圧切換部39への指令信号をOFFにする。これにより、チャージリリーフ弁38の設定圧が第2設定圧に低減される。このため、油圧アクチュエータ14が非操作中であるときのチャージ圧が、油圧アクチュエータ14が操作中であるときのチャージ圧よりも低減される。
【0041】
図3又は図4に示す油圧駆動システムでは、油圧源40からの作動油によってリリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加されている。しかし、図5に示すように、チャージポンプ28からの作動油によってリリーフパイロットポート38aにパイロット圧が印加されてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、油圧アクチュエータ14に2つの油圧ポンプ12,13が接続されている2ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されているが、油圧アクチュエータ14に1つの油圧ポンプが接続される1ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、油圧アクチュエータ14は油圧シリンダであるが、他の種類の油圧アクチュエータが用いられてもよい。例えば、図6に示すように、油圧モータ49が油圧アクチュエータとして用いられてもよい。油圧モータ49は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)を構成する走行用の油圧モータである。或いは、油圧モータ49は、上部旋回体を旋回させる油圧モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、チャージポンプでの消費動力のロスを低減することができると共に、コストの増大を抑えることができる油圧駆動システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧駆動システム
10 メインポンプ
14 油圧アクチュエータ
15 作動油流路
16 チャージ回路
24c 操作状態判定部
24d チャージ油圧制御部
27 作動油タンク
28 チャージポンプ
35 チャージ流路
37 チャージ流路開閉部
38 リリーフ弁
46a 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を吐出するメインポンプと、
前記メインポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
前記メインポンプと前記油圧アクチュエータとを接続し、前記メインポンプと前記油圧アクチュエータとの間で閉回路を構成する作動油流路と、
前記作動油流路に接続されるチャージ流路と、前記チャージ流路に作動油を吐出するチャージポンプと、を有し、前記作動油流路の油圧が前記チャージ流路の油圧より小さくなったときに前記作動油流路へ作動油を補充するチャージ回路と、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作部材と、
前記油圧アクチュエータが操作中であるのか非操作中であるのかを判定する操作状態判定部と、
前記油圧アクチュエータが非操作中であるときには、前記チャージ流路の油圧を、前記油圧アクチュエータが操作中であるときの前記チャージ流路の油圧よりも低減させるチャージ油圧低減部と、
を備える油圧駆動システム。
【請求項2】
作動油を貯留する作動油タンクをさらに備え、
前記チャージ油圧低減部は、
前記チャージ流路を前記作動油タンクに接続する接続状態と、前記チャージ流路と前記作動油タンクとの間を閉じる閉塞状態とに切り換え可能なチャージ流路開閉部と、
前記油圧アクチュエータが操作中であるときには、前記チャージ流路開閉部を前記閉塞状態に設定し、前記油圧アクチュエータが非操作中であるときには、前記チャージ流路開閉部を前記接続状態に設定するチャージ油圧制御部と、
を有する、
請求項1に記載の油圧駆動システム。
【請求項3】
前記チャージ油圧低減部は、
前記チャージ流路の油圧が所定の設定圧を超えないように調整し、前記設定圧を第1設定圧と、前記第1設定圧よりも低い第2設定圧とに切り換え可能なリリーフ弁と、
前記油圧アクチュエータが操作中であるときには、前記リリーフ弁の設定圧を前記第1設定圧に設定し、前記油圧アクチュエータが非操作中であるときには、前記リリーフ弁の設定圧を前記第2設定圧に設定するチャージ油圧制御部と、
を有する、
請求項1に記載の油圧駆動システム。
【請求項4】
前記操作状態判定部は、前記操作部材が所定時間以上、中立位置に保持されているときに、前記油圧アクチュエータが非操作中であると判定する、
請求項1に記載の油圧駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44398(P2013−44398A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182941(P2011−182941)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】