説明

油密検査装置

【課題】ワーク端部のばらつきがあっても、確実にワークを検査装置にセットすることができ、正確な良否の判定が可能な油密検査装置を提供する。
【解決手段】検査すべきワークWを載せる検査部4とこのワークWの油の洩れ量を計測するための計測ヘッド5とを有する計測部3を備える。
計測部3の上方側には、昇降可能に配置した可動部6を備える。この可動部6には、油供給部7と、この油供給部7を保持するクランプ部8と、ワークWを保持するためのワーク保持部9と、油供給部7をワークWへ連結する第1駆動部10とを搭載する。そして、可動部6は、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11と、ワークW端部のばらつきや保持状態のばらつきを吸収するためのコンプライアンスユニット12を介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被検査物の良否判定を行うのに、検査に供する油を被検査物に供給して、油の漏れから被検査物の良否を判定する油密検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1のように、自動車に使用される燃料噴射ノズルの漏れを検査するのに、燃料油を燃料噴射ノズルに供給して、燃料油の漏れから油密の良否を判定する油密検査装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−340324号公報
【0004】
一方、例えば特許文献2においては、流体供給部に最も近い接合部よりも流体供給部に近い位置で、ワークを支持するワーク支持部を設け、ワークがワーク支持部と流体供給部とに挟持されて保持されるようにしている。
また、ワークを基準として、流体供給部と反対側に設けられたワークの軸方向に摺動可能なワーク受け部と、ワークを流体供給部に当接させる方向にワーク受け部を付勢する弾力保持部材とを設けた。
このことにより、漏れ測定時に加える圧接荷重でワークを圧縮することがなくなり、部品同士の軸方向の当接部が圧接して例えば溶接部が不良であっても漏れが止って溶接不良を発見できないという問題をなくせる、としている。
【0005】
【特許文献2】特開2001−165802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の装置では、流体供給部の検査すべきワークへの接続と排出口の押さえを主駆動部により行っている。また同装置では検査流体として高圧空気を用いている。そのためにワークを検査装置にセットする際に空気の漏れに充分、留意する必要がある。漏れが生じると、正確な良否判定が困難となるからである。
すなわち、保持部が上下部に取り付いており、保持部に乗っているワーク端部のばらつきにより検査部への隙間が生じることで、微小洩れ量が変化する。
本発明は、このような背景から提案されたものであって、ワーク端部のばらつきがあっても、確実にワークを検査部にセットすることができ、正確な良否の判定が可能な油密検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、検査に供する油をワーク(W)に供給して、油の漏れから前記ワーク(W)の検査をする油密検査装置(1)であって、検査すべきワーク(W)を載せる検査部(4)とこのワーク(W)の油の洩れ量を計測するための計測ヘッド(5)とを備えた計測部(3)と、油を前記ワーク(W)へ供給するための油供給部(7)と、この油供給部(7)を保持するクランプ部(8)と、ワーク(W)を保持するためのワーク保持部(9)と、油供給部(7)をワーク(W)へ連結するための第1駆動部(10)とを搭載する可動部(6)と、この可動部(6)を駆動するための第2駆動部(11)とを備え、可動部(6)と前記第2駆動部(11)とは、コンプライアンスユニット(12)を介して接続する構成としたことを特徴とする。
【0008】
これにより、第1駆動部(10)を駆動して、可動部(6)を作動し、第2駆動部(11)を作動させることで、コンプライアンスユニット(12)により、ワーク(W)の端部を検査部(4)に密接させることができ、油の漏れを逃さず捉えることができ、正確なワーク(W)の良否判定に寄与することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、計測部(3)における検査部(4)は、載置面にワーク(W)端部側と密接するシール部材(14)を備え、載置面から油の漏れ量を計測する計測ヘッド(5)に至る、導入通路(13)を配設したことを特徴とする。
【0010】
これにより、ワーク(W)端部側から漏洩する検査に供する油を漏れなく導入通路(13)を通じて計測ヘッド(5)に至らしめることができ、油漏れの有無、程度を正確に把握する事ができ、ワーク(W)の良否判定を正確に行い得る。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる油密検査装置の一実施形態を示し、以下、詳細に説明する。
図1に油密検査装置1の要部を模式的に示す。
この油密検査装置1は、ワークWの油漏れを検査するための装置であって、検査に供する油をワークWに供給し、油洩れの有無を検出することにより、ワークWの良否判定を行うものである。
検査対象となるワークWとしては、例えばエンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射ノズルを挙げることができる。
燃料噴射ノズルは、内部の燃料通路へ供給された高圧燃料をボディ先端の噴出孔から、エンジンの燃焼室へ噴射するようにしたもので、ボディと燃料導入側のパイプ及びコネクタとの間をレーザ溶接で接合されており、この溶接箇所の漏れ検査を上述の油密検査装置1により行い、良否の判定を行うようにしている。
【0013】
そこで、図1に基づいて、油密検査装置1を概略的に説明する。
油密検査装置1は、検査基体2の底部2aに配置した計測部3を有する。
この計測部3は、検査すべきワークWを載せる検査部4とこのワークWの油の洩れ量を計測するための計測ヘッド5とを具備している。
また、検査基体2の計測部3の上方側には、後述する手段により、昇降可能に配置した可動部6を備えている。この可動部6には、油をワークWへ供給するための油供給部7と、この油供給部7を保持するクランプ部8と、ワークWを保持するためのワーク保持部9と、油供給部7をワークWへ連結するための第1駆動部10とを搭載している。
そして、以上のような可動部6は、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11と、ワークW端部のばらつきや保持状態のばらつきを吸収するためのコンプライアンスユニット12を介して接続している。
【0014】
計測部3において、計測部3における検査部4には、図2に示すように、上面にワークWを載置する載置面4aを形成している。この載置面4aには、ワークW端部側外径以上の径を有し、載置面4aにワークW端部側外径に比較して小さい径の凹状段差部4cを形成し、さらにこの凹状段差部4cに、載置面4aを直交方向に貫く中心軸に沿って、後述する油の漏れ量を計測する計測ヘッド5に至る、導入通路13を配設している。
凹状段差部4cには、載置面4aに載置されるワークW端部と密接可能なシール部材としてのOリング14が介設される。このOリング14には、例えば耐油性に優れる、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)が可能である。
【0015】
そして、計測ヘッド5は、載置面4aの凹状段差部4cと連通する導入通路13を介して導入された、ワークWの油の洩れ量を、気泡の変動から検出する方式のものを採用している。詳細な構成および説明は、ここでは省略する。
【0016】
次に、計測部3の上方側に、昇降可能に配置した可動部6について説明する。
可動部6は、検査基体2内側に上下方向に配設したガイドポスト15、15に沿って、上下動可能に介装した昇降梁部16に、コンプライアンスユニット12を介して支持されている。昇降梁部16は、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11の作動ロッド11aに接続している。
そして、これら、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11、作動ロッド11a、コンプライアンスユニット12、可動部6は、配置位置が計測部3における検査部4に載置されるワークWの中心軸線X上に一致するように設定されている。
【0017】
油供給部7は、ワークWの油導入口(図示省略)に連結する連結端部7aと、クランプ部8により挟持される挟持部7bとを有している。
油供給部7には、加圧された検査に供する油、ここでは燃料油を供給する燃料供給システム、すなわち周知の燃料タンク、燃料ポンプ、リリーフ弁、減圧弁、アキュームレータ、圧力計、流量計等で構成される燃料供給システムが接続される。
【0018】
クランプ部8は、油供給部7の連結端部7aを、ワークWの油導入口に誘導するために、可動部6内側に、上下方向に平行に固設した案内ガイド17、17に沿って昇降可能に介装され、可動部6に下方向に向かう第1駆動部10の作動ロッド10aと動力的に連結している。
【0019】
そして、コンプライアンスユニット12は、前述のように、中心軸を、ワークWの中心軸線Xに一致させるように配置しているが、例えば可動部6側に取り付けた第1ボディ12aと、昇降梁部16側に取り付けた第2ボディ12bとを、回転自在の複数の転動部材を介して、中心軸線Xに直交する面上で二次元的に相対移動可能に構成している。このような構成により、コンプライアンスユニット12は、昇降梁部16側と、可動部6側との間に中心軸線Xに対し、軸ずれがある場合に、両部材が転動部材を介して相対的に移動することによりその軸ずれを吸収する機能を有している。
【0020】
本発明にかかる油密検査装置1は以上のように構成されるものであり、次にこの油密検査装置1の作動を説明する。
先ず、ワークWをワーク保持部9へセットする。この場合、ワークWは、噴出孔(図示省略)を閉止した状態でセットするようにする。
次に可動部6に搭載した第1駆動部10を作動し、クランプ部8により挟持される油供給部7をワークWへ接続する。この場合、油供給部7は、連結端部7aがワークWの油導入口に連結する。ワークWは、可動部6におけるワーク保持部9により傾くことなく定位置に保持されるため、可動部6内に搭載された案内ガイド17、17に沿って、第1駆動部10によりクランプ部8を下降させることで、油供給部7の連結端部7aを、ワークWの油導入口にずれることなく連結することができる。
【0021】
次に、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11を作動し、作動ロッド11a、昇降梁部16、コンプライアンスユニット12を介し、可動部6と共にワーク保持部9を下降させる。これにより、検査部4の載置面4aにおける、ワークW端部側外径に比較して小さい径の凹状段差部4cに、Oリング14を介してワークW端部が密接する。
【0022】
ところで、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11、作動ロッド11a、コンプライアンスユニット12および可動部6は、ワーク保持部9で保持されるワークWの中心軸線Xに一致するように配置され、この状態で可動部6と共にワーク保持部9を下降させ、ワークW端部を検査部4の載置面4aにおける凹状段差部4cに、Oリング14を介して当接させるので、ワークWを、ずれることなくOリング14に密接させることができる。
【0023】
しかしながら、ワークW端部は、実際上、微妙な加工のばらつきが存在し、ワークW端部をOリング14に当接させる際、そのばらつきの影響が及ぼされ、可動部6全体に微妙なずれが生ずることがある。
可動部6に及ぼされるずれは、コンプライアンスユニット12における第1ボディ12a、昇降梁部16側に取り付けた第2ボディ12bとが、転動部材を介して相対的に移動することによりその軸ずれを吸収するため、ワークWを、ずれることなくOリング14に密接させることができる。
【0024】
次いで、燃料供給システムから燃料油が油供給部7に供給されると、燃料油はワークWの油導入口からワークW内に導入される。なお、燃料油は、所定圧に高められた状態でワークW内に導入されるが、検査部4の載置面4aにおける凹状段差部4cに、Oリング14を介してワークW端部が密接した状態にあるので、燃料油がOリング14から漏れ出ることはない。
【0025】
そして、燃料油が内部通路接合箇所から漏れるようなことが起こると、検査部4における載置面4aの凹状段差部4cによって形成された空間に燃料油が漏出し、この燃料油は、凹状段差部4c中心空間から導入通路13を介し、計測ヘッド5にもたらされる。
【0026】
計測ヘッド5において、漏洩燃料油の量は、気泡の変動から検出することができる。
この漏れ量が許容値を超えるようなときは、そのワークWはNGであると判定することができ、一方、許容値の範囲内であるときは、ワークWはOKであるとする、良否判定を行うことができる。
【0027】
以上のようにして、油の漏れ量を計測、良否判定が終了すると、燃料供給システムからの燃料油の供給を遮断する。
次に、検査基体2の頂部2bに設置した第2駆動部11を作動し、作動ロッド11a、昇降梁部16、コンプライアンスユニット12を介し、可動部6と共にワーク保持部9を上昇させる。
さらに、可動部6に搭載した第1駆動部10を作動し、クランプ部8を介して油供給部7の連結端部7aをワークWの油導入口から離脱させる。
そして、ワーク保持部9から、検査終了後のワークWを取出すことで、一連の検査、良否判定工程が終了する。
【0028】
以上、本発明について、ワークWとして、燃料噴射弁を挙げ、検査に供する流体として、燃料油を用いた実施例を挙げ、説明したが、本発明は、この実施例に限らず、ワークWは、他の部品も可能であり、また、検査に供する油は、燃料の他、温度に対して安定した通常の粘性の比較的小さい工業用油類も適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる油密検査装置の概略的、且つ模式的な構成説明図である。
【図2】図1に示す油密検査装置における計測部の模式的な構成説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 油密検査装置
2 検査基体
2a 底部
2b 頂部
3 計測部
4 検査部
4a 載置面
4c 凹状段差部
5 計測ヘッド
6 上下部
7 油供給部
7a 連結端部
7b 挟持部
8 クランプ部
9 ワーク保持部
10 第1駆動部
11 第2駆動部
10a、11a 作動ロッド
12 コンプライアンスユニット
12a 第1ボディ
12b 第2ボディ
13 導入通路
14 Oリング
15 ガイドポスト
16 昇降梁部
17 案内ガイド
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査に供する油をワーク(W)に供給して、油の漏れから前記ワーク(W)の検査をする油密検査装置(1)であって、
検査すべきワーク(W)を載せる検査部(4)とこのワーク(W)の油の洩れ量を計測するための計測ヘッド(5)とを備えた計測部(3)と、
油を前記ワーク(W)へ供給するための油供給部(7)と、この油供給部(7)を保持するクランプ部(8)と、前記ワーク(W)を保持するためのワーク保持部(9)と、前記油供給部(7)を前記ワーク(W)へ連結するための第1駆動部(10)とを搭載する可動部(6)と、
この可動部(6)を駆動するための第2駆動部(11)とを備え、
前記可動部(6)と前記第2駆動部(11)とは、コンプライアンスユニット(12)を介して接続する構成としたことを特徴とする油密検査装置。
【請求項2】
前記計測部(3)における検査部(4)は、載置面にワーク(W)端部側と密接するシール部材(14)を備え、
前記載置面から油の漏れ量を計測する計測ヘッド(5)に至る、導入通路(13)を配設したことを特徴とする請求項1に記載の油密検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−145130(P2009−145130A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321174(P2007−321174)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】