説明

油性インク及びインクジェット印刷法

【課題】印刷後加熱せずとも、普通紙印刷において、濃い画像を形成することができる油性インク及びインクジェット印刷方法を提供する。
【解決手段】顔料、顔料分散剤、有機溶剤を含む油性インクであって、該油性インクの0.5〜7質量%の樹脂粒子をさらに含み、該樹脂粒子が該有機溶剤によって膨潤し、
(1)該有機溶剤中の該樹脂粒子1質量%分散液の、膨潤平衡状態での700nmにおける光透過率が20%〜70%であり、且つ
(2)該有機溶剤の粘度に対する、該有機溶剤中の該樹脂粒子10質量%分散液の、膨潤平衡状態での粘度の比が1.5〜5.0である、ことを特徴とする油性インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性インク及びインクジェット印刷法に関し、詳細には、油性インクが樹脂粒子を膨潤された状態で含み、該インクを用いてインクジェット印刷を行うことによって、該樹脂粒子が紙の目止め効果を奏し、油性インクの裏抜けを防ぐことができる、油性インク及びインクジェット印刷法に関する。
【背景技術】
【0002】
油性インク(以下、単に「インク」という場合がある)は、印刷用紙のカールを起こさず、インクの乾燥時間が短いなどの特長を有する。しかし、インク中の溶剤が紙、特に普通紙、に浸透する際に、顔料も一緒に紙の中へと引き込まれて画像濃度が低くなる、所謂「裏抜け」という問題がある。
【0003】
これを解決するために、油性インクに無機微粒子を添加して、紙の目止めとして作用させる方法(特許文献1)、非水溶剤中に極性基を備える樹脂を分散させる方法(特許文献2)が提案されている。しかし、前者の方法では、インクジェットプリンタの吐出口を塞がないよう、粒子サイズの上限が制限されるため、その目止め効果にも限界がある。また、後者の方法は、特殊な樹脂の調製が必要となる。
【0004】
ところで、非水系媒体中に樹脂粒子を配合したインクジェット用インクが知られている(特許文献3)。該樹脂粒子は、120℃に加熱し乾燥させる工程により顔料を包み込むように被膜化することによってインクの定着性及び耐候性を高める。しかし、裏抜け防止の点では満足の行くものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−239790号公報
【特許文献2】特開2010−001452号公報
【特許文献3】特開2001−311023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記各方法における問題が無く、普通紙印刷において、裏抜けが無く、濃い画像を形成することができる油性インク及びインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、顔料、顔料分散剤、有機溶剤を含む油性インクであって、該油性インクの0.5〜7質量%の樹脂粒子をさらに含み、該樹脂粒子が該有機溶剤によって膨潤し、
(1)該有機溶剤中の該樹脂粒子1質量%分散液の、膨潤平衡状態での700nmにおける光透過率が20%〜70%であり、且つ
(2)該有機溶剤の粘度に対する、該有機溶剤中の該樹脂粒子10質量%分散液の、膨潤平衡状態での粘度の比が1.5〜5.0である、ことを特徴とする油性インクである。
また、本発明は、
(I)下記油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方を吐出する工程であって、油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方は黒色顔料を含み、他方はカラー顔料を含む、工程、
(A)上記本発明の油性インク
(B)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤からなる油性インク
(II)工程(I)で得られる画像に重なるように他方のインクを吐出する工程、
を含むことを特徴とするインクジェット印刷方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクにおいて、樹脂粒子は有機溶剤によって、所定の程度膨潤された状態で存在する。これにより、インクの吐出性を損なうこと無く、また、印刷後に加熱することなく、紙の目止め効果が奏される。また、本発明のインクジェット印刷方法は、油性インク(A)中の樹脂粒子と油性インク(B)を紙上で組合せることによって、油性インク(B)の顔料を紙表面により残りやすくし、裏抜けが無く、より濃い画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のインクは、樹脂粒子と有機溶剤が以下の要件を満たす組み合わせであることを特徴とする。
(1)該有機溶剤中の該樹脂粒子1質量%分散液の、膨潤平衡状態での700nmにおける光透過率が20%〜70%であり、且つ
(2)該有機溶剤の粘度に対する、該有機溶剤中の該樹脂粒子10質量%分散液の、膨潤平衡状態での粘度の比が1.5〜5.0である。
これらの要件は、樹脂粒子の膨潤の程度を規定する。
【0010】
上記(1)及び(2)において、膨潤平衡状態であることは、樹脂粒子を有機溶剤と混合した後、静置し、所定時間毎に透過率及び粘度をモニタし、一定値に達した事から判断することができる。膨潤平衡に要する時間は、使用する樹脂と有機溶剤の組み合わせに依存して変わるが、通常、室温で1時間〜6時間である。ここで、有機溶剤は2種以上の有機溶剤が混合されたものであってもよく、また、樹脂粒子も2種以上の粒子が混合されたものであってよい。
【0011】
700nmにおける光透過率(以下、「光透過率」という)は、分光光度計を用い、光路長1cmの石英セルに樹脂分散液を入れ、空の石英セルを参照として測定する。また、各粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。(1)の光透過率が20%未満の場合、又は (2)の粘度比(以下、「粘度比」という)が5.0を超える場合、インクのインクジェットヘッドからの吐出性が劣る傾向がある。一方、光透過率が70%を超える場合、又は粘度比が1.5未満の場合、画像濃度及び裏抜け改善の効果が充分ではない。好ましくは、光透過率が30〜60%、粘度比が1.5〜3である。
【0012】
樹脂粒子の材質としては、上記(1)、(2)の条件を満たすことができるものであれば、特に制限は無い。例えば、架橋タイプの、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル共重合体系樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体樹脂、及びポリオレフィン樹脂等であってよく、ファインスフェア(日本ペイント株式会社製)、テクポリマー(積水化成品工業株式会社製)等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0013】
樹脂粒子の、非膨潤時の平均粒径は、50〜300nmであり、好ましくは50〜200nmである。該平均粒径が300nmを超えると、樹脂粒子自体が沈降し易くなったり、吐出性が損なわれたりする場合がある。一方、50nm未満であると、顔料を紙表面に留める目止め効果が小さく、画像濃度及び裏抜け改善の効果が十分ではない場合がある。該平均粒子径は、樹脂粒子を膨潤しない媒体、例えば水、中に分散した時の粒度分布計(動的光散乱法)によるメディアン径(D50、体積平均)の値である。
【0014】
樹脂粒子の配合量は、インクの質量に対して、0.5〜7質量%、好ましくは1〜6質量%、より好ましくは2〜5質量%である。該量が、前記下限値未満の場合には、満足の行く目止め効果が得られず、前記上限値を超えると、インクの粘度が高くなり過ぎる傾向がある。
【0015】
本発明で使用される有機溶剤は、樹脂粒子との組合わせで、上記(1)、(2)の条件を満たすことができるものであれば、非極性有機溶剤、極性有機溶剤のいずれであってもよい。樹脂粒子としてアクリル樹脂系のものを用いた場合には、SP値(MPa1/2)が17.5〜19.5の極性有機溶剤が好ましく使用され、例えば、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;ポリエチレングリコールアセテート等のポリオキシアルキレングリコールエステル;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のポリオキシアルキレングリコールエーテル;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリオキシアルキレングリコールエーテルエステル;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等のポリグリセリン;及びイミダゾリジノン系溶剤が挙げられる。
【0016】
これらのうち、下記式(1)のポリオキシアルキレングリコールエーテルが好ましい。
【化1】

(Rは炭素数1〜8のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、aは1〜3の整数である。)
また、下記式(2)のポリオキシアルキレングリコールエーテルエステルが好ましい。
【化2】

(Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜8のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、bは1〜3の整数である。)
【0017】
より好ましくは、印刷機における安定性の観点から、沸点(760mmHg)が200℃以上の有機溶剤、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のポリアルキレングリコールエーテルエステル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリアルキレングリコールエーテルが使用される。
【0018】
上記溶剤と組合わせて使用することができる非極性有機溶剤の例としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系の溶剤が挙げられる。例えば、以下の商品名で販売されているものが挙げられる。テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、及びAF−7(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製);Isopar(アイソパー)G、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxolD40、ExxolD80、ExxolD100、ExxolD130、及びExxolD140(いずれもExxon社製)。芳香族炭化水素溶剤としては、日石クリーンソルG(アルキルベンゼン、JX日鉱日石エネルギー社製))、ソルベッソ200(Exxon社製)が挙げられる。
【0019】
また、上述の極性溶剤以外の極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤を用いることができる。エステル系溶剤としては、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル;アルコール系溶剤としてはイソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール;高級脂肪酸系溶剤としてはイソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が挙げられる。
【0020】
本発明のインクにおいて、顔料は任意のものであってよく、たとえば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。これらの顔料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、同色のもの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
顔料の平均粒径は、分散性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0022】
インク中の顔料の含有量は、通常、0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から1〜15重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることが一層好ましい。
【0023】
顔料分散剤としては種々の物を使用することができ、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、高分子系分散剤が好ましく、例えば、以下の商品名で販売されているものが挙げられる:ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、11200(ポリアミド系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、22000、24000、及び28000(いずれも日本ルブリゾール社製);エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、及び4055(変性ポリウレタン)(いずれもEfka CHEMICALS社製);デモールP、EP、ポイズ520、521、530、及びホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)(いずれも花王(株)製);ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)(いずれも楠本化成社製);ディスコール202、206、OA−202、及びOA−600(多鎖型高分子非イオン系)(いずれも第一工業製薬(株)製);ANTARON V216(ビニルピロリドン−ヘキサデセンコポリマー)(アイエスピー・ジャパン(株)製)。なかでも、ポリアミド系及びビニルピロリドン−ヘキサデセンコポリマーがより好ましい。
【0025】
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であればよく、通常、顔料に対する分散剤(固形分)の質量比で、0.1から2程度、より好ましくは、0.3〜1.0程度である。
【0026】
上記各成分に加えて、本発明のインク組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、慣用の添加剤を配合することができる。該添加剤としては、各種界面活性剤、酸化防止剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、及びノルジヒドログアヤレチック酸等、が挙げられる。
【0027】
本発明の油性インクは、顔料を有機溶剤の一部にミル等の手段により分散させた顔料分散液、樹脂粒子を有機溶剤の一部に分散させた樹脂粒子分散液を、別々に調製した後、双方の分散液と、残りの有機溶剤を混合し、次いで、フィルター等で固形物を除去して、調製することができる。混合は、ミキサー、超音波処理装置等の公知の混合手段にて行うことができる。混合後、室温で1時間〜6時間程度静置して、樹脂粒子を膨潤させる。或いは、樹脂粒子分散液を調製した後に静置して、樹脂粒子を膨潤させた後に、顔料分散液と混合してもよい。
【0028】
得られるインクは、その粘度が7mPa・s〜20mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、8〜15mPa・sである。該粘度の測定方法は、上述のとおりである。
【0029】
該油性インクは、インクジェット印刷に好適に使用される。インクジェットプリンタは、ピエゾ方式、又はサーマル方式のものであってよく、好ましくは、ピエゾ式のものが使用される。
【0030】
上記本発明の油性インクは、勿論、単独でも濃い画像を形成することができるが、所謂コンポジット黒を形成する際に使用され、濃い黒画像を形成するのに好適である。即ち、本発明は、本発明の油性インクを使用してインクジェット印刷する方法を提供する。該方法は、
(I)下記油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方を吐出する工程であって、油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方は黒色顔料を含み、他方はカラー顔料を含む、工程、
(A)本発明の油性インク
(B)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤からなる油性インク
(II)工程(I)で得られる画像に重なるように他方のインクを吐出する工程、
を含む。
カラー顔料は、シアン、マゼンタ、又はイエローである。いずれの顔料を油性インク(A)に配合してもよいが、好ましくは油性顔料(A)に黒色顔料、好ましくはカーボンブラック、を配合し、他方にカラーインクを配合する。また、油性インク(B)中の樹脂分散剤としては、油性インク(A)について上述したものを使用することができる。
【0031】
油性インク(B)中の有機溶剤は、油性インク(A)に含まれる有機溶剤と同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、SP値(MPa1/2)が17.5未満の溶剤が使用される。斯かる溶剤としては、上述した、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、例えば、日石アイソゾール400、AF−4(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)等が挙げられる。また、上述のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤のうち、SP値(MPa1/2)が17.5未満のもの、例えば、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、オレイルアルコール、イソステアリン酸が挙げられる。
【0032】
工程(II)は、工程(I)の後である必要はなく、黒色とカラーのヘッドを直列に並べて工程(I)とほぼ同時に印刷してもよい。
【0033】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、特に断わりの無い限り、「部」は「質量部」を意味する。
<インクの調製>
表1に示す処方1〜11に従い、油性インクを調製した。顔料分散液を、顔料8部、顔料分散剤8部(有り姿)、有機溶剤16部をガラス容器に入れ、これにジルコニアビーズ(φ0.5mm)を入れ、ロッキングミル(セイワ技研製 RM05S型)を用いて周波数65Hzで120分間運転することによって調製した。
比較用インク処方6、インク(B)用の処方10及び11を除き、樹脂粒子分散液を、有機溶剤に樹脂粒子を添加し、超音波分散機で2分間処理することで調製した。
得られた顔料分散液、インク処方6、10、11以外は樹脂粒子分散液、及び、残りの有機溶剤を攪拌して混合した後、3.0μmのメンブレンフィルターを通した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1における各成分の詳細は以下のとおりである。
ブラック顔料:MA−7(三菱化学社製)
シアン顔料:フタロシアニン銅(DIC社製)
顔料分散剤1:ソルスパースS39000(固形分100%、ルブリゾール社製)
顔料分散剤2:ソルスパースS13940(固形分40%、ルブリゾール社製)
BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製)
DPMA:ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製)
DPNB:ジプロピレングリコールnーブチルエーテル(ダイセル化学工業社製)
アイソゾール400:イソパラフィン系溶剤(JX日鉱日石エネルギー社製)
M−OL:オレイン酸メチル(花王社製)
アクリル系樹脂粒子:ファインスフェアMG151(架橋タイプ、70nm(D50)、日本ペイント社製)
スチレン・アクリル系樹脂粒子:ファインスフェアMG161(架橋タイプ、100nm(D50)日本ペイント社製)
メタクリル酸メチル系樹脂粒子:テクポリマーXX−2059(120nm(D50)、積水化成品工業社製)
比較用アクリル系樹脂粒子:ファインスフェアFS102(非架橋タイプ、80nm(D50)日本ペイント社製)
【0036】
<画質評価>
東芝テック社製のピエゾ方式インクジェットヘッドに、調製したインクを充填し、普通紙(理想科学工業社製「理想用紙薄口」)に、単色印刷の場合、1passでベタを印刷した。
また、二種のインクを重ねて印刷する場合、第一のインク吐出経路から印刷用紙上に吐出されたインクのドットに第二のインク吐出経路から吐出されたインクのドットが重なるように1passでベタを印刷した。
印刷は、解像度300dpi×300dpi、液滴量42plで実施し、印刷物を24時間放置後にベタ部の表裏濃度をOD値(マクベス社)で測定し、表2に示す基準で評価した。結果を表4に示す。
【表2】

【0037】
<吐出性評価方法>
上記画質評価と同様の方法で、マット紙(理想科学工業社製「理想用紙IJマット(W)」)上にベタを印刷し、得られた印刷物上で、インクの不吐、曲がりの発生の有無を目視確認し、下記基準で評価した。結果を表4に示す。
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
表4に示すように、樹脂粒子を欠くインク(比較例1)、樹脂粒子が膨潤していない、又は、仮に膨潤していたとしてもその程度が過小であるインク(比較例4)では、裏抜けが顕著に見られた。また、樹脂粒子が溶解しているインク(比較例2)、膨潤の程度が過剰であるインク(比較例3)は、吐出性が悪く、裏抜けの程度は低かったものの、画像濃度が低かった。これらに対して、実施例1〜5のインクはいずれも裏抜けが少なく、濃い画像を形成した。これらのインクは、油性インク(B)と重ねて印刷することによって、画像濃度がさらに向上した(実施例6〜8)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の油性インクを用いてインクジェット印刷することによって、裏抜けがなく濃度が高い画像を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、顔料分散剤、有機溶剤を含む油性インクであって、該油性インクの0.5〜7質量%の樹脂粒子をさらに含み、該樹脂粒子が該有機溶剤によって膨潤し、
(1)該有機溶剤中の該樹脂粒子1質量%分散液の、膨潤平衡状態での700nmにおける光透過率が20%〜70%であり、且つ
(2)該有機溶剤の粘度に対する、該有機溶剤中の該樹脂粒子10質量%分散液の、膨潤平衡状態での粘度の比が1.5〜5.0である、ことを特徴とする油性インク。
【請求項2】
樹脂粒子が、架橋された、アクリル樹脂又はスチレン・アクリル共重合体樹脂の粒子である、請求項1記載の油性インク。
【請求項3】
有機溶剤が、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、及びポリオキシアルキレングリコールエーテルエステルからなる群より選ばれる、請求項1又は2記載の油性インク。
【請求項4】
(I)下記油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方を吐出する工程であって、油性インク(A)及び油性インク(B)のいずれか一方は黒色顔料を含み、他方はカラー顔料を含む、工程、
(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の油性インク
(B)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤からなる油性インク
(II)工程(I)で得られる画像に重なるように他方のインクを吐出する工程、
を含むことを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項5】
油性インク(B)中の有機溶剤が、SP値(MPa1/2)が17.5未満の、ナフテン系溶剤及び/又はエステル系溶剤であることを特徴とする請求項4記載の方法。

【公開番号】特開2012−153781(P2012−153781A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13054(P2011−13054)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】