説明

油性化粧料

【課題】 発色の良さおよび安定性や、化粧料自体の安定性を有しながら、優れた使用感や、優れた化粧効果、特に立体感を与えることのできる油性化粧料を提供すること。
【解決手段】 (A)常温で液状であり、30℃における粘度が10Pa・s以上である油剤と、(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色の色調が異なる二色性を呈する顔料を含有することを特徴とする油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性に優れ、均一な化粧膜を形成すると共に、ツヤおよび鮮やかな二色性を有することによる立体感が得られ、またなめらかな使用感を有する油性化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ化粧料には、使用したときの化粧効果に加え、その発色の良さや化粧料自体の安定性など、様々な機能が求められる。また、化粧効果や発色は顔料、パールの配合量や色、分散性によって大きく変化する。そのため、これまで化粧効果や発色の良さを発揮するために、様々な顔料やパールが開発され配合検討がなされてきた(例えば特許文献1、2参照)。また、高粘性油剤を配合した、塗布時の滑らかさや密着感等の使用感に優れた油性化粧料の技術がある(例えば特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、高い化粧効果を目的に、化粧料中に顔料に加えて干渉パールを配合する場合、干渉パール自体は白色であるため、効果を出そうとより多く配合することにより化粧料の外観や塗膜が白ぼけてしまい、際だった発色が失われるという問題があった。また、発色を得る為に、化粧料中に顔料を多くいれると、粉っぽくなり、使用時の滑らかさが失われ、使用性が悪くなる等の問題があった。
【0004】
また、酸化鉄で被覆された着色パールを配合する技術もあるが、酸化鉄には磁性があるため、分散性が悪く、着色パール自体が凝集してしまうという問題があった。そして、このように凝集した状態では、化粧膜が不均一となり、きれいな立体感を得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO05/028566
【特許文献2】特開平6−211521号公報
【特許文献3】特開平2002−128623号公報
【特許文献4】特開昭60−60163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、発色の良さや安定性や化粧料自体の安定性を有しながら、使用したときの化粧効果、特に立体感を与えることのできる油性化粧料の提供が求められており、本発明はこのような油性化粧料の提供をその課題とするものである。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、優れた二色性を有する特定の顔料と、30℃における粘度が10Pa・s以上の油剤とを組み合わせることにより、塗布膜の明度を挙げることなく、使用性や安定性、分散性が良好で、均一な化粧膜を形成する油性化粧料が得られ、化粧した際に立体感を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)および(B);
(A)常温で液状であり、30℃における粘度が10Pa・s以上である油剤
(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色の色調が
異なる二色性を呈する顔料;
を含有することを特徴とする油性化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性化粧料は、分散性に優れ均一な化粧膜を形成し、ツヤおよび鮮やかな二色性を有し、立体感のある化粧効果を付与できる化粧料である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いる二色性顔料において、低次酸化チタンの単層を設けることで外観色と干渉色の異なる二色性を得ることができる理由を模式的に示した図面。
【図2】製造例1で用いた前駆体Aおよび得られた二色性顔料についての、XRD測定結果を示す図面である。
【図3】製造例7で用いた前駆体Bおよび得られた二色性顔料についての、XRD測定結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる、成分(A)の油剤は、常温(25℃)において液状であり、30℃での粘度が10Pa・s以上のものである。この条件を満たすもので、通常化粧料に用いられるものであれば、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、特に制限されずに使用することができる。塗布時の使用性においても、この範囲の油剤を使用することで、滑らかな使用感を得ることができる。
【0012】
本発明における成分(A)の粘度値はブルックフィールド型粘度計を使用して測定したものである。このブルックフィールド型粘度計としては、例えば単一円筒型回転粘度計であるビスメトロン(登録商標)(芝浦システム社製)などが挙げられる。測定方法は、ブルックフィールド型粘度計の説明書等の記載に準じて行えばよいが、例えば、ビスメトロン(登録商標)(芝浦システム社製)等の単一円筒型回転粘度計にて測定する場合は、次のようにすればよい。すなわち、測定試料を外径45mm、内径38mm、高さ82mmのガラス製ビンにエアスペースが生じないように充填し、ふたをして30℃恒温槽にて一昼夜放置する。翌日、回転粘度計に付属の1〜4号ローターを用い、6〜30回転で1分後の測定値を読み取り、各々の乗数を乗し、粘度値を得れば良い。
【0013】
上記成分(A)の油剤としては、例えば、上記条件を満たすポリブテン、重質流動イソパラフィン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ダイマー酸エステル等が挙げられる。これらの市販品としては、精製ポリブテンHV−100F(SB)(日本ナチュラルプロダクツ社製)、ポリブテン100R、ポリブテン300R、ポリブテン300H、ポリブテン2000H(出光興産社製)、パールリーム18、パールリーム24、パールリーム46(日油社製)、エステロールPT−ISHV(ナショナル美松社製)、LUSPLAN DA−DD−IS(日本精化社製)等が挙げられる。
【0014】
本発明の油性化粧料では、上記の成分(A)を利用することで、後記成分(B)による立体感をより強調することができる。また、これらの油剤は、塗布部分の凹凸を埋めて平滑性を高める上に、塗布膜の表面の均一性に優れることにより化粧膜のツヤを強く感じることで効果的である。
【0015】
なお、上記した成分(A)において、その粘度が15Pa・s以上であると化粧膜のツヤの点でより好ましく、粘度が400Pa・s以下であると、使用時のなめらかさにおいてより好ましいので、成分(A)の油剤の粘度は、この範囲であることがより好ましい。
【0016】
本発明の油性化粧料における、成分(A)の配合量は、油性化粧料中、10〜90質量%(以下、単に「%」とする)が好ましく、更に30〜70%が好ましい。成分(A)をこの範囲内で用いると、ツヤ感、化粧膜の美しさの観点から良好なものが得られ、成分(B)の二色性顔料の外観色と干渉色を鮮やかに見せることができ、その効果である立体感をえることができ好ましい
【0017】
一方、本発明においては、成分(B)として、板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料(以下、「二色性顔料」という)が用いられる。
【0018】
この二色性顔料は板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成して得られるものである。より具体的には、板状粒子の基材に二酸化チタンが被覆されている顔料を還元処理して、二酸化チタン層を低次酸化チタン層にする方法や、低次酸化チタン組成物を板状粒子に被覆する方法により得られるが、板状粒子の基材に二酸化チタンが被覆されている顔料を還元処理して、二酸化チタン層を低次酸化チタン層にする方法で得られたものが好ましい。
【0019】
二色性顔料の基材となる板状粒子としては、天然又は合成雲母、ガラス末、アルミフレークを挙げることができる。このうち雲母としては、特にこれらの物質に限定されるものではないが、白雲母、金雲母、黒雲母等の有色、無色の基材であってもよい。
【0020】
板状粒子の基材に二酸化チタンを被覆した顔料は、既に一般に市販されており、これを用いることができる。例えば、雲母に二酸化チタンを被覆したものの市販品としては、イリオジン(メルク社製)やフラメンコスパークルゴールド(エンゲルハード社製)を挙げることができる。また、例えば、ガラス末に二酸化チタンを被覆したものの市販品としては、メタシャイン(日本板硝子社製)を挙げることができる。
【0021】
上記二色性顔料は、板状粒子の表面に、二酸化チタンから酸素を一部欠損させた状態の低次酸化チタンからなる単層が形成されたことが特徴である。この低次酸化チタンは、下式
TiOx
(式中、xは1.0を超え、2.0未満の数を意味する)
で表すことができる。なお、本発明の二色性顔料で言うところの低次酸化チタン単層とは、一酸化チタンTiOと二酸化チタンTiOを含まない組成からなり、単層の組成が上記式で表記される低次酸化チタン化合物1種類以上より構成されるものである。なお、この低次酸化チタン単層には、低次酸化チタンの酸素の一部が窒素と置き換わった、酸化窒化チタンが含まれていても良い。
【0022】
そして、低次酸化チタン層の酸素欠損量が多くなり、上記式のxが1.0に近づくと、光の吸収が強くなり、干渉色が弱くなる。一方、酸素欠損量が少なくなり、xが2.0に近づくと、光の吸収が弱くなり、干渉色が強くなる。また、外観色では、xが1.0に近づくと、光の吸収が強くなり外観色が強くなる。逆にxが2.0に近づくと光の吸収が弱くなり、外観色が弱くなる。
【0023】
二色性顔料における低次酸化チタンの組成は、上記のようにTiOx(1.0<x<2.0)であるから、板状粒子上の二酸化チタンを低次酸化チタンに代えるためには二酸化チタンと比べた酸素の不足量(酸素欠損量)を適宜調整する必要がある。
【0024】
低次酸化チタン層の形成は、板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料を、窒素、水素、アンモニア、一酸化炭素、一酸化一窒素、一酸化二窒素、硫化水素又は二酸化硫黄等のガス又は混合ガス雰囲気下又は真空雰囲気において500〜1500℃で焼成することにより行なうことができる。
【0025】
また、上記焼成時に板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料に還元助剤として水素化チタン、金属チタンのチタン化合物、又は水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムの水素化物を含む化合物を添加して、500〜1500℃で還元焼成することもできる。
【0026】
一方、板状粒子上への低次酸化チタン層の形成には、低次酸化チタン組成物を板状粒子に被覆することでも可能である。被覆方法としては、低次酸化チタン組成物を塗布又はメカノケミカルを用いることで可能である。その際に、不活性雰囲気または真空雰囲気にて500〜1500℃の熱処理をして低次酸化チタン粒子を焼結させて、被覆された低次酸化チタン層を強固にすることも出来る。
【0027】
前記低次酸化チタン単層の組成を決定する要素は還元度であるが、この制御は、焼成温度、添加する還元助剤およびその量等で行なうことができる。
【0028】
このうち、焼成温度は500〜1500℃の範囲にすることで可能であるが、還元度を低くするには焼成温度を500℃付近まで下げ、還元度を高くするには焼成温度を1500℃付近まで上げれば良い。すなわち、焼成温度を調整することで、二酸化チタンからの酸素欠損反応を調整することが可能である。
【0029】
また、還元度の制御は、還元助剤の添加やその量を調整することでも可能である。還元助剤を添加する場合の焼成温度は、還元助剤の分解温度以上で、500〜1500℃の範囲にすることが好ましい。還元助剤の添加量は、還元助剤に含まれている還元成分ガスとなる物質が、二酸化チタン100gに対して0.001〜30.0molの範囲(好ましくは0.01〜10.0molの範囲)で含まれていることが必要である。ここで還元成分ガスとは、特に限定されるものではないが、水素、窒素、アンモニア、一酸化炭素、一酸化一窒素、一酸化二窒素、硫化水素、二酸化硫黄等である。二酸化チタンに対して還元助剤から生じる還元性物質の量を変化させることで、酸素欠損反応を制御することが可能となる。
【0030】
例えば、還元助剤の添加量が0.001mol以下であると還元度が低くなり、外観色が白色に近く、干渉色の発色も有意に認識できないことがあり、鮮やかな二色性が得られない。また、還元助剤の添加量が30.0mol以上であると還元度が高くなりすぎ、干渉色が弱くなり、外観色の色調のみとなることで、鮮やかな二色性が失われてしまい好ましくない。
【0031】
更に還元度の制御は、金属チタンを用いることでも可能である。還元雰囲気にて板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料と金属チタンとを混合し、500〜1500℃の範囲(好ましくは900〜1300℃)で焼成することで、二酸化チタンの酸素原子の一部が金属チタンによって還元され低次酸化チタンとなる。一方、金属チタンは二酸化チタンの酸素原子と結合して低次酸化チタンとなる。チタン化合物の添加量は、二酸化チタン100gに対してチタン成分で0.01〜2.0molを添加することが必要である。
【0032】
一方、低次酸化チタン層の膜厚の制御は、特許文献5に記載されている二酸化チタンの膜厚制御方法を利用できる。例えば、低次酸化チタン単層の膜厚が10nm以下では、低次酸化チタン層での光路差が少なくなることから鮮やかな干渉色を得ることが出来なくなる。また、低次酸化チタン層の膜厚が厚くなることに関しては、位相差により循環的に色調が変化するのみであるため特に制限がないが、光が減衰してしまい鮮やかな色調が得られなくなる。従って、低次酸化チタン層の膜厚は1000nm以下が好ましく、より好ましくは、低次酸化チタンの膜厚を10〜1000nm(特に好ましくは10〜600nm)の範囲に制御することにより、外観色と干渉色が異なる鮮やかな二色性を得ることが可能となる。
【0033】
なお、二色性顔料の低次酸化チタン層は、二酸化チタン層を還元することによって得ることができるが、その二酸化チタン層が、メタチタン酸、水酸化チタン、オキシチタン酸、硫酸チタンを含むチタン化合物層であっても、還元焼成による熱処理で低次酸化チタン組成へと変化するので利用可能である。また、還元処理に用いるガスとして窒素が含まれる化合物や、還元助剤として窒素が含まれる化合物が利用されることで、還元焼成において酸化窒化チタンも形成する。この酸化窒化チタンは、低次酸化チタン単層の低次酸化チタンの酸素の一部が、窒素と置き換わり変性したものであるが、低次酸化チタン単層にこのものが含まれていても光の吸収と反射の関係は変わらず、干渉色と外観色を調整することが可能である。
【0034】
以上のようにして得られる成分(B)の二色性顔料は、外観色と干渉色の異なる鮮やかな二色性を有する点で従来の真珠光沢顔料とは異なる色調を有するものである。例えば、従来の二酸化チタン系の干渉顔料は、ハンターのLab表色系でL値が70〜80と明度が高く、白色の強い外観のものであった。また、低次酸化チタンからなる黒色系真珠光沢顔料では、L値が25以下と明度が低く黒色に近い外観であった。
【0035】
しかし、本発明で用いる二色性顔料は、L値25以上の明度において干渉色と外観色の異なる二色性を呈するものである。また、ハンターのLab表色系のb値は、青〜黄色の表色値であり、絶対値が大きい程に彩度は高くなるが、本発明で用いる二色性顔料は、このb値を−3.0以下又は3.0以上の範囲に調整することが可能で、彩度の高い色調を得ることができる。
【0036】
次に、二色性顔料が二色性を呈する理由を模式的に示した図1を参照しながら、酸素欠損量を調整することで鮮やかな外観色と干渉色を呈することを説明する。
【0037】
成分(B)である二色性顔料は、基材となる板状粒子(1)と、これを被覆する低次酸化チタン層(2)から形成されている。低次酸化チタンは、還元度を変えることで酸素欠損量を調整することができる。そして、可視光は電磁波であることから、酸素欠損によるホールに可視光の一部が吸収される。
【0038】
すなわち、図1の模式図に示すように、顔料表面での反射光(5)は、入射光(3)が低次酸化チタン層により特定の波長を吸収され、外観色としての色調を発色する。干渉色は、反射光(5)と、低次酸化チタン層で吸収され特定波長を失った透過光(4)が基材(1)で反射された反射光(6)が干渉することにより特有の色調を発する。これら(5)および(6)の反射光からなる干渉色と、低次酸化チタン層の吸収光による外観色により、鮮やかな二色性の色調を有する顔料を得ることができる。このように、酸素欠損量を調整することで、吸収する波長域や吸収量を変えることが可能となる。また、同様に反射光の波長も制御することが可能となる。
【0039】
また、上記のように(5)および(6)の反射光の干渉により干渉色が生じるため、低次酸化チタン層の膜厚を調整することで、低次酸化チタン層表面での反射光(5)と、低次酸化チタン層を通り基材(1)からの反射光(6)の光路差を変えることができる結果、波長の位相を変化させ、干渉色を変えることが可能となる。
【0040】
このように成分(B)の二色性顔料は、低次酸化チタン層の酸素欠損量、組成をコントロールすることで、反射光、吸収光の調整が可能となり、また低次酸化チタン層の膜厚を制御することでも波長の位相を変化させて干渉色を調整することが可能な、今までにない鮮やかな干渉色、外観色を有する多品種の二色性を有する顔料である。
【0041】
更にまた、本発明の成分(B)で使用される低次酸化チタンは、非常に安定で、耐酸性・耐アルカリ性にも優れており、しかも熱的にも非常に安定であり、大気中にて350℃の熱にも耐えうる物質である。従って、低次酸化チタンの層を設けた二色性顔料は、耐酸性・アルカリ性且つ熱的にも安定な顔料として使用しうるものである。
【0042】
このように、本発明の成分(B)の二色性顔料は、今までにない鮮やかな干渉色、外観色を有する二色性顔料であり、見る角度により異なる色に見える。そのため、平面的ではない、優れた立体感を演出することができ、化粧料に配合して、唇やまぶたにに塗布した場合、その曲面に、より立体感を与えることができる。また、鮮やかな色調を有するため、少量の配合で発色の高いものが得られることから、粉体成分の配合量を少量にすることで、なめらかで使用性が良く、化粧膜も均一でツヤに優れ、化粧持続性の高い化粧料が得られる。また、従来から問題であった光や分散媒等による劣化が見られないものである。
【0043】
本発明の油性化粧料における、成分(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、全量中0.1〜30%が好ましく、更に、0.5〜20%が好ましい。成分(B)をこの範囲内で用いると、使用性、使用感、二色性による立体感演出効果の観点から良好なものが得られる。
【0044】
本発明の油性化粧料には、上記必須成分を適宜混合し、製剤化することにより製造できるが、必要によりこれら必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に配合される成分を配合することができる。
【0045】
配合することのできる成分としては、感触調整や着色の目的で成分(A)以外の油性成分や、成分(B)以外の粉体成分、保湿、粉体分散剤として水性成分、粉体分散、感触調整の為の界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水溶性皮膜形成性樹脂、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを適宜配合することができる。
【0046】
このうち、成分(A)以外の油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油(30℃で粘度が10Pa・s未満)、揮発性油等の性状を問わず、種々の炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等を利用することができる。
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0047】
また、成分(B)以外の粉体成分としては、化粧品一般に使用される粉体であれば、板状、紡錘状、針状等の形状や、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により制約されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が利用できる。
【0048】
より具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン・酸化チタン焼結物、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、カオリン、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、珪ソウ土、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、魚燐箔、二酸化チタン被覆ガラスフレーク、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体類、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機油剤樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機粉体類、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。また、これら粉体は2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石ケン、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、油脂、炭化水素、界面活性剤、アミノ酸系化合物、水溶性高分子等の1種又は2種以上を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0049】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば広く利用することができ、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、でんぷん糖、ラクチトール等の糖類、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ、ウィッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等及び水が挙げられる。
【0050】
また、界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0051】
更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、1,2−ペンタンジオール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0052】
かくして得られる本発明の油性化粧料は、固形、液状、ペースト等の形状とすることができる。またその用途としては、口紅、リップグロス等の口唇化粧料や、アイカラー、ヘアマスカラ等のメークアップ化粧料を挙げることができ、中でも口唇化粧料において、その効果が特に発揮される。
【実施例】
【0053】
次に、実施例および製造例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0054】
なお、以下の製造例で製造した二色性顔料の評価は、低次酸化チタン層の膜厚、低次酸化チタンの組成および顔料の色調で行なった。このうち、膜厚測定には、断面SEM(日立:S−4500)を、低次酸化チタンの組成は、粉末X線回折装置(理学:RINT2400)を用いて行った。また、顔料の色調は、測色色差計(東京電色:TC−8600A)を用い、粉末セル法により行なった。すなわち、石英セル(直径35mm、深さ15mm、厚み2mm)に顔料1gを量り取り、サンプル上面に対して面圧25g/cmで顔料に均等に加圧して充填した後、ハンターのLab表色系で色調を測定した。
【0055】
また、各顔料の外観色と干渉色の評価は、下記手法により行なった。すなわち、顔料と水を1:2の重量比で混ぜ込んで攪拌機にて均一なスラリー状にし、透明ガラス基板(50mm×50mm、厚さ1mm)上に2g滴下する。その上に、ガラス板を合わせて、滴下したスラリーをガラス板間で引き延ばして、顔料を配向させる。顔料を配向させたガラス板サンプルを、目視観察を行なう事で外観色と干渉色を評価する。その際の観察方法は、白色蛍光灯から垂直方向にサンプルを設置し、外観色を観察面から90度の角度より目視観察を行ない、干渉色を観察面から45度の角度より目視観察を行う方法とした。
【0056】
製 造 例 1
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。前駆体Aは、XRD測定を行ない二酸化チタンのアナターゼ構造であることを確認した(図2)。
【0057】
この前駆体A 100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 3.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が緑色・干渉色が薄青色となり、二色性を有していた。得られた顔料のXRDの解析結果を図2に示す。この図から、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていることが示された。
【0058】
製 造 例 2
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0059】
この前駆体A 100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 7.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料を回収して、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた(図2)。色調は、外観色が濃緑色、干渉色が青色であった。
【0060】
比較製造例 1
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0061】
この前駆体A 100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 10.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃で3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料を回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiO・Tiが生成されていた(図2)。色調は、外観色の黒色が際立つ色調となった。
【0062】
製造例1〜2および比較製造例1では、低次酸化チタン層の膜厚を一定(140nm)とし、低次酸化チタンの組成を変化させた。還元条件を変えることで低次酸化チタンの組成が変化することをXRDの解析結果として図2に示す。このXRD測定は、前駆体および顔料(還元処理品)をそれぞれメノウ乳鉢で粉砕し、粉末エックス線回折装置にて行なった。還元条件を変えることで、二酸化チタンのピークは完全に消失し、低次酸化チタンのみのピークとなった。
【0063】
下記の表1は、還元度を変化させた際の色調の変化を示す。前駆体では干渉色の淡い発色のみであるが、酸化チタン層を低次酸化チタンにすることで外観色・干渉色を変化させ、鮮やかな二色性を有する色調を得ることかできた。更に、低次酸化チタンの組成を制御することで、干渉色・外観色のそれぞれの色調を変えることができた。これに対し、TiOが含まれた低次酸化チタン層の場合は、TiOによる光の反射が強くなり、外観色が白色に近くなるため、本発明が示すところの鮮やかな二色性を得ることができない。鮮やかな二色性を有するためには、TiOを含まない低次酸化チタンからなる組成の単層を形成する必要がある。
【0064】
【表1】

【0065】
比較製造例1では、主組成物が還元度の高い低次酸化チタンTiO(x=1)になり、入射光の低次酸化チタンへの吸収が強く、干渉色が認識出来なくなり、外観色の黒色が際立つ色調になった。TiOが含まれる低次酸化チタン層の場合は、光の吸収が強いため、反射光が弱くなり、本発明の示すところの干渉色が得られず、外観色が際立つものとなる。鮮やかな二色性を有するためには、TiOを含まない低次酸化チタン組成からなる単層を形成する必要がある。この板状粒子上の単層を、TiOとTiOを含まない[TiOx(1.0<x<2.0)]からなる低次酸化チタンの組成を制御することで、入射する光の吸収を調整することが可能となり、様々な外観色と干渉色を得ることができる。
【0066】
特許文献7においては、最内層である雲母と最外層である二酸化チタンとの間に、中間層として低次酸化チタン層又は低次酸化チタンを含むチタン化合物層を存在させることで有色雲母を得ている。そして、中間層が全て低次酸化チタン又は低次酸化チタンと窒化チタンの混合物である場合には外観色・干渉色が黒色のものになると記載されている。しかし、本発明者らの検討の結果、低次酸化チタン単層で、且つ低次酸化チタンの組成をTiOx(1.0<x<2.0)で制御することで、入射する光の反射と吸収をコントロールして、干渉色と外観色の異なる二色性を発色させることが可能であることが見出された。
【0067】
製 造 例 3
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が銀色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:30nm)を作製した。
【0068】
この前駆体100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 1.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が銀色、干渉色が薄黄色であった。
【0069】
製 造 例 4
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が黄色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:70nm)を作製した。
【0070】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 1.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が黄色、干渉色が深緑色であった。
【0071】
製 造 例 5
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が赤色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:100nm)を作製した。
【0072】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 2.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料品の色調は、外観色が薄赤(ピンク)色、干渉色が濃黄色であった。
【0073】
製 造 例 6
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が青色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:130nm)を作製した。
【0074】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 2.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0075】
上記製造例3〜6では、低次酸化チタン層の組成を一定にして、低次酸化チタン層の膜厚を変化させた。下記表2は、低次酸化チタン層の組成をTiにして、膜厚を30〜140nmにした際の色調の変化を示す。膜厚を変化させることで、干渉色と外観色を大幅に変化させることが出来た。
【0076】
【表2】

【0077】
これら製造例1〜6に示すように、低次酸化チタン層の組成と膜厚を制御することで、今までにない種類の鮮やかな外観色と干渉色の異なる二色性を有する顔料を合成することが可能となった。
【0078】
製 造 例 7
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。この前駆体Bは、XRD測定により二酸化チタンのアナターゼ構造であることを確認した(図3)。
【0079】
この前駆体B 100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 3.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分として600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元処理品を顔料として回収したが、このものの色調は、外観色が緑色、干渉色が薄青色であった。この顔料のXRDの解析結果を図3に示すが、この結果から明らかなように、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた。
【0080】
製 造 例 8
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0081】
この前駆体B 100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 7.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、700℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元処理品を顔料として回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた(図3)。色調は、外観色が濃緑色、干渉色が青色であった。
【0082】
比較製造例 2
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0083】
この前駆体B 100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 10.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、800℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元処理品を顔料として回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTi・TiO・Tiが生成されていた(図3)。色調は、外観色の黒色が際立つ色調であった。
【0084】
製造例7〜8のガラス末に二酸化チタンを被覆した顔料においても、製造例1〜2と同様に還元処理を行なうことで同じ色調が得られた。また、図3に示すように低次酸化チタンの組成も、製造例1〜2と同様の傾向を示した。
【0085】
【表3】

【0086】
製 造 例 9
市販の、二酸化チタンで被覆されており、外観色が白色・干渉色が青色であるガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用い、還元処理を行なった。上記ガラス末100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。この混合材料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0087】
製 造 例 10
市販の、外観色が白色・干渉色が青色の雲母チタン(メルク社製:Iridion225)を原料として用い、還元焼成を行なった。上記雲母チタン100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。この混合原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0088】
製 造 例 11
アルミフレークにチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、アルミフレークが二酸化チタンで被覆された外観色が白色で、干渉色が青色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:130nm)を作製した。
【0089】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム 2.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0090】
製造例9〜10から、市販の材料を用い、これを還元処理とすることでも鮮やかな二色性顔料が得られることがわかった。また、製造例11では、原料基材がアルミフレークにおいても同様に鮮やかな二色性を有する顔料が得られることが分かった。
【0091】
【表4】

【0092】
製 造 例 12
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用いて還元処理を行なった。まず、水素化チタン粉末をメノウ乳鉢にて粉砕し、目開き25μmの篩を通過した粉末を回収して還元助剤とした。上記ガラス末100gに、還元助剤である水素化チタンを4.3g加え、ミキサーで均一に混合した。混合した原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元処理処理物は、水で撹拌した後、目開き25μmの湿式篩を行ない、還元助剤である水素化チタンから形成された低次酸化チタンを除去した。回収物として得られた顔料は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0093】
製 造 例 13
市販の、ガラス末に二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用いて還元処理を行なった。まず、チタン粉末をメノウ乳鉢にて粉砕し、目開き25μmの篩を通過した粉末を回収して還元助剤とした。上記ガラス末100gに、還元助剤であるチタンを3.8g加え、ミキサーで均一に混合した。混合した原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:2)の流量を100ml/分とし、700℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元処理物は、水で撹拌した後、目開き25μmの湿式篩を行ない、還元助剤である水素化チタンから形成された低次酸化チタンを除去した。回収物として得られた顔料は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0094】
製 造 例 14
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用い、還元助剤として水素化アルミニウムリチウムを用いて還元処理を行なった。まず、上記ガラス粉末100gに、還元助剤として水素化アルミニウムリチウム2.7gを加え、混合原料を作製する。この混合原料を窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0095】
製 造 例 15
市販のガラス末に二酸化チタンが被覆されている(日本板硝子社製:メタシャイン)を用い、水素と窒素の混合ガスで還元焼成を行なう。メタシャイン(MC1080RB)20gを雰囲気炉内に入れ、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:3)の流量を100ml/分とし、1000℃、8時間の条件で還元焼成を行なった。得られた還元焼成品の色調は、外観色が青色・干渉色が紫色となった。
【0096】
製造例12〜13は、還元助剤に水素化チタンと金属チタンをそれぞれ用いることでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものである。また、製造例14は、還元助剤に水素化アルミニウムリチウムを用いたものでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものであり、製造例15は、窒素と水素の混合ガスの混合比を代えてで還元処理を行なうことでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものである。
【0097】
【表5】

【0098】
製 造 例 16
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用い、還元処理を行なった。まず、上記ガラス末100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gおよびグアニジン0.2gを加え、混合原料を作製した。この混合原料を、窒素と水素の混合ガス(アンモニア:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が赤紫色、干渉色が青色であった。
【0099】
製 造 例 17
市販の、二酸化チタンが被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャイン(MC1080RB))を用い、還元処理を行なった。上記ガラス末100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。アンモニアと水素の混合ガス(アンモニア:水素=2:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行なった。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が茶色、干渉色が紫色であった。
【0100】
製造例16は、還元助剤中に窒素を含む化合物を用いた例である。また、製造例17は、還元処理にアンモニアと水素の混合ガスを用いた例である。これらの例では、それぞれの低次酸化チタン層の一部が、窒素と置き換わり変性するが、その場合においても、鮮やかな二色性顔料を得ることができた。
【0101】
【表6】

【0102】
製 造 例 18
低次酸化チタンの組成がTi、粒子径が10〜30nmである粒子で、雲母を被覆する。この被覆は、低次酸化チタン粒子を水溶媒に均一に分散させ、雲母を加えて懸濁させ、その後、低次酸化チタン粒子が被覆された雲母粒子を回収し、105℃で乾燥し、水分を除去することにより行なった。
【0103】
この低次酸化チタンが被覆された雲母を、真空雰囲気下、800℃で3時間の熱処理を行なった。得られた還元処理品の色調は、外観色が緑色、干渉色が薄青色となり二色性を有していた。
【0104】
【表7】

【0105】
比較製造例 3
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行なった。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、二酸化チタンで被覆されたガラス末を得た、このものは外観色が白色で干渉色が緑色(二酸化チタン層の膜厚:140nm)であった。
【0106】
比較製造例 4
特開昭60−060163号公報(特許文献6)の実施例1に基づき、雲母50部に対してイオン交換水500部を加え、十分撹拌することで得られたスラリーに、硫酸チタニル水溶液(40wt%)を208.5部加え、加熱撹拌を6時間行なった。放冷後、濾過水洗を行ない、900℃で焼成し、二酸化チタンで被覆された雲母を得た。この二酸化チタンで被覆された雲母を、アンモニアガス3L/分の流量で、800℃、4時間の還元処理を行なった。得られた生成物のXRD解析を行なったところ、TiOとTiOの混合物であり、その外観色と干渉色が青色のものであった。
【0107】
以下の表8に、比較製造例1ないし4で得られたものの外観に関するデータを示す。前記比較製造例1〜2では、還元度の高い低次酸化チタンTiO(x=1)になると、入射光の低次酸化チタンへの吸収が強くなり、干渉色が見られなって外観色の黒色のみのものとなった。これに対し比較製造例3では、組成がTiO(x=2)となり、外観色が白色のため、干渉色の発色が有意に認識できないものとなった。
【0108】
また、上記比較製造例4で得られたものは、被覆組成物がTiOとTiOの混合物であるが、このような被覆組成物である低次酸化チタンがTiOとTiOの混合物であると、TiOが光を強く吸収し、反射光は微弱となる。よって、反射される光はTiOから発せられる青色のみとなり、TiOはそれを際立たせる効果(下地色としての効果)のみを与え単調な色調となってしまう。
【0109】
本発明では、実施例で示したように、光を反射させることができる還元度合TiOx(1.0<x<2.0)の低次酸化チタンの単層を設けることで、図1に見られる光の反射・吸収が生じさせ、外観色と干渉色の異なる二色性を得ることができるのである。
【0110】
【表8】

【0111】
実 施 例 1
リップグロス(油性液状):
下記表9に示す組成および下記製造方法により、実施品1〜5及び比較品1〜4のリップグロスを調製した。得られたリップグロスについて、「色材の分散性」、「均一な化粧膜」、「ツヤ」、「鮮やかな二色性による立体感」、「なめらかな使用感」の各項目について、以下に示す評価方法により評価した。この結果も併せて表9に示した。
【0112】
(処方)
【表9】

※1:精製ポリブテンHV−100F(SB)(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※2:コスモール43N(日清オイリオ社製)
※3:コスモール525(日清オイリオ社製)
※4:ポリブテン35R(出光興産社製)
※5:レオパールKL2(千葉製粉社製)
※6:MYRYTOL GTEH(コグニス社製)
※7:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
※8:COLORONA BLACKSTAR BLUE(メルク社製)
※9:TIMIRON SUPERBLUE(メルク社製)
※10:赤色202号(大東化成社製)
※11:CREABLACK(CREATION COLORS社製)
【0113】
( 製造方法 )
A : 成分1〜5を90℃で均一に混合溶解する。
B : Aに成分6〜14を添加し均一に混合する。
C : Bを容器に充填し、製品とする。
【0114】
( 評 価 )
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
<評価項目>
イ:色材の分散性
ロ:均一な化粧膜
ハ:ツヤ
ニ:鮮やかな二色性による立体感
ホ:なめらかな使用感
【0115】
<評価方法>
「色材の分散性(イ)」は、各試料を透明なガラス瓶に充填し、室温で6時間静置したときの粉体の凝集状態を目視による観察にて判定を行い下記判定基準1により判定した。
【0116】
判定基準1:
凝集物の状態 : 判 定
凝集物が確認されない : ◎(非常に良好)
小さな凝集物が確認される : ○(良好)
凝集物が試料全体に確認できる : △(やや不良)
大きな凝集物が試料全体に確認できる : ×(不良)
【0117】
「均一な化粧膜(ロ)」、「ツヤ(ハ)」、「鮮やかな二色性による立体感(ニ)」および「なめらかな使用感(ホ)」については、各試料について専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価基準1にて7段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記判定基準2により判定した。なお、表9中には判定基準2による判定の他、( )内に評価基準1の評点の平均値を記載した。
【0118】
評価に際しては、鮮やかな二色性による立体感(ニ)の評価に際しては、塗布面を正面と、正面に対し上、下、右、左の角度から見たとき、立体感が得られているかどうか、角度によって色の変化が感じられるかどうかを評価のポイントとした。
【0119】
評価基準1:
評 価 : 評 点
非常に良好 : 6
良 好 : 5
やや良好 : 4
普 通 : 3
やや不良 : 2
不 良 : 1
非常に不良 : 0
【0120】
判定基準2:
評点の平均点 : 判 定
5点以上 : ◎
3.5点以上5点未満 : ○
1.5点以上3.5点未満: △
1.5点未満 : ×
【0121】
表9の結果から明らかな如く、本発明の実施品1〜5のリップグロス(油性液状)は、比較品1〜4のリップグロス(油性液状)に比べ、色材の分散性、均一な化粧膜、ツヤ、鮮やかな二色性による立体感、なめらかな使用感の全てにおいて優れたものであった。これに対して、成分(A)の代わりに30℃における粘度が10Pa・sより低い油剤を配合した比較品1や比較品2では化粧料の付着性に乏しく、十分な厚みの化粧膜が得られない為に、成分(B)の二色性顔料による立体感が十分に得られず、ツヤにおいても満足いくものが得られなかった。また、成分(B)の二色性顔料の代わりに黒酸化鉄被覆雲母を配合した比較品3や雲母チタンを配合した比較品4は鮮やかな二色性による立体感が得られず、特に比較品3においては、全体に凝集物が見られ、分散性およびそれにともなう化粧膜の均一性において満足いくものが得られなかった。
【0122】
実 施 例 2
リップグロス(油性液状):
下記表10の組成および下記製法により、本発明の実施品6〜17のリップグロス(油性液状)を得た。
【0123】
( 処 方 )
【表10】

※1 前出
※4 〃
※5 〃
※6 〃
※9 〃
※10 〃
【0124】
( 製造方法 )
A : 成分1〜5を均一に混合溶解する。
B : Aに成分18〜20と、成分6〜17の一種とを添加し、均一に混合する。
C : Bを容器に充填し、製品とする。
【0125】
得られた実施品6〜17のリップグロス(油性液状)について、実施例1と同様に評価を行ったところ、表10に示すとおり、いずれも色材の分散性、均一な化粧膜、ツヤ、鮮やかな二色性による立体感、なめらかな使用感において優れたものであった。
【0126】
実 施 例 3
口紅(油性スティック状):
下記処方および製造方法により、口紅を製造した。
【0127】
( 処 方 )
成 分: (質量%)
1.ポリエチレン ※12 10
2.マイクロクリスタリンワックス ※13 5
3.パラフィン 10
4.テトライソステアリン酸ジグリセリル ※14 30
5.リンゴ酸ジイソステアリル ※15 10
6.ポリブテン(粘度:347Pa・s) ※16 10
7.2−エチルヘキサン酸セチル ※17 残 量
8.炭酸カルシウム 0.1
9.赤色202号 0.5
10.黄色4号 2
11.酸化チタン 1
12.黒酸化鉄 0.1
13.製造例3の二色性顔料 5
14.パラオキシ安息香酸ブチル 適 量
15.香料 適 量
※12:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
※13:ムルチワックス W−445(SONNEBORN社製)
※14:コスモール44V(日清オイリオ社製)
※15:コスモール222(日清オイリオ社製)
※16:ポリブテン2000H(出光興産社製)
※17:サラコス816T(日清オイリオ社製)
【0128】
( 製造方法 )
A:成分1〜6を90℃で加熱溶解後、成分7〜14を加えて均一に分散する。
B:Aを脱泡し、成分15を加えて均一に混合し、加熱溶解して容器に流し込み充
填する。
【0129】
本実施例で得られた口紅(油性スティック状)について、実施品1〜5と同様に評価を行ったところ、色材の分散性、均一な化粧膜、ツヤ、優れた立体感を有し、使用性がなめらかなものであった。
【0130】
実 施 例 4
アイカラー(油性固形):
下記処方および製造方法により、アイカラーを製造した。
【0131】
( 処 方 )
成 分: (質量%)
1.パルミチン酸デキストリン ※18 4
2.パルミチン酸デキストリン ※19 4
3.トリイソステアリン酸ジグリセリル 12
(粘度:0.18Pa・s)※20
4.2−エチルヘキサン酸セチル ※17 残 部
5.キャンデリラワックス ※21 1
6.パラフィン・マイクロクリスタリンワックス混合物 ※22 1
7.水添ポリイソブテン(粘度:18Pa・s) ※23 3
8.ポリブテン(粘度:347Pa・s) ※16 1
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル 3
(粘度:11Pa・s)※24
10.メチルポリシロキサン ※25 3.5
11.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン) 10
クロスポリマー ※26
12.レシチン 0.3
13.シリル化処理無水ケイ酸 ※7 0.5
14.セリサイト 1
15.ベンガラ 0.3
16.製造例1の二色性顔料 5
17.製造例6の二色性顔料 5
※18:レオパールKL2(千葉製粉社製)
※19:レオパールTL2(千葉製粉社製)
※20:コスモール43V(日清オイリオ社製)
※21:精製キャンデリラワックス SR−3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※22:合成セレシン JNP−81(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※23:パールリーム18(日油社製)
※24:コスモール43N(日清オイリオ社製)
※25:SH200C FLUID 6CS(東レ・ダウコーニング社製)
※26:KSP−100(信越化学工業社製)
【0132】
( 製造方法 )
A : 成分1〜10を90℃で加熱溶解後、成分11〜17を加えて均一に分散 する。
B : Aを容器に流し込み充填する。
【0133】
本実施例で得られたアイカラー(油性固形)について、実施品1〜5と同様に評価を行ったところ、色材の分散性、均一な化粧膜、ツヤ、優れた立体感を有し、使用性がなめらかなものであった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の油性化粧料は、分散性に優れ均一な化粧膜を形成し、ツヤおよび鮮やかな二色性を有し、立体感のある化粧効果を付与できる化粧料である。
【0135】
従ってこのものは、口紅、リップグロス等の口唇化粧料や、アイカラー、ヘアマスカラ等のメークアップ化粧料として、特に口唇化粧料として有利に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)および(B);
(A)常温で液状であり、30℃における粘度が10Pa・s以上である油剤;
(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色の色調が 異なる二色性を呈する顔料;
を含有することを特徴とする油性化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)の油剤が、30℃における粘度が15Pa・s以上、400Pa・s以下である請求項1記載の油性化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)の配合量が10〜90質量%である請求項1または2記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)の低次酸化チタン単層が次の組成式
TiOX
(ここで、Xは1.0を超えて2.0未満の数を意味する)
で示される低次酸化チタンである請求項1ないし3の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項5】
前記成分(B)の低次酸化チタン単層が酸化窒化チタンの単層である請求項1ないし4の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)の板状粒子が、天然または合成の金雲母、アルミフレークまたはガラス粉末である請求項1ないし5の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項7】
前記成分(B)の二色性顔料が、ハンターのL、a、b表色系において、L値が25以上である請求項1ないし6の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項8】
前記成分(B)の二色性顔料が、ハンターのL、a、b表色系において、b値が−3.0以下または3.0以上である請求項1ないし7の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項9】
前記成分(B)の配合量が0.1〜30質量%である請求項1ないし8の何れかに記載の油性化粧料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235530(P2010−235530A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86386(P2009−86386)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】