説明

油性化粧料

【課題】 シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有する油性化粧料において、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に由来する特有の酸化物臭が抑えられた油性化粧料を提供する。
【解決手段】 シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有する油性化粧料に、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有させることでペプチド−シラン化合物共重合組成物に由来する特有の酸化物臭が抑えられる。油性化粧料中のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜20質量%で3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有量が0.02〜20質量%が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口紅、リップグロス、コンシーラー、油性美容液、パウダーファンデーション、ヘアスティックなどの油性化粧料に関し、更に詳しくは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有する油性化粧料に3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有させることによって、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に起因する酸化物臭が抑制された油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料には、肌や口唇等の塗布部位の閉塞性に優れる剤形として、液状油性成分やキャンデリラロウ、カルナウバロウなどのワックスエステルを配合した口紅、リップクリーム、コンシーラー、油性美容液、パウダーファンデーション、油性のヘアスティックなどがあり、良好な感触や密着性の付与、油性感の軽減を目的にシリコーン類が配合されることが多い(特許文献1)。また、油性化粧料への保湿性の付与を目的にポリエーテル変性シリコーンを配合することも行われている(特許文献2)。
【0003】
しかし、シリコーン類の配合では油性感の多少の軽減は認められるものの、肌への密着性や感触の面では充分に満足できるものではなかった。そのため、本発明者らは、シリル化ペプチドとシラン化合物を共重合させたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を化粧料に配合することを提案してきた(特許文献3)。また、油性化粧料への保湿感の付与に関しても、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物はペプチド鎖を有するため毛髪や皮膚へのなじみがよく、ポリエーテル変性シリコーンより保湿性が高く、油性感を低減させ、さっぱりとした仕上げ感を付与し、しかも保湿性を付与する効果を発揮するため、口紅等のメイクアップ化粧料に利用されてきた(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、肌への密着性や伸展性、潤い感、柔軟性、保湿性の付与効果に優れるものの、独特の酸化物臭があり、その効果を充分に発揮させる量を配合しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−191033号公報
【特許文献2】特開2003−113016号公報
【特許文献3】特開2001−048775号公報
【特許文献4】特開2005−263674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚や口唇、睫毛、毛髪に対して優れた親和性、伸展性、密着性を有し、なめらかさ、柔軟性、保湿効果を有し、酸化物臭の少ない油性化粧料を提供することを目的とする。この酸化物臭は、ペプチドとシランを重合させる際に、加熱や強酸性下という過酷な条件が必要となり、それに起因して生じるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油性化粧料にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と共に3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有させることで、皮膚や毛髪に対して優れた親和性、伸展性、密着性をを示し、なめらかさ、柔軟性、保湿感を付与し、しかも酸化物臭が少ない油性化粧料が得られることを見出し本発明を完成するにいたった。
【0008】
すなわち、本発明は、油性物質を主剤とする化粧料に、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物および3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有する油性化粧料である(請求項1)。
【0009】
本発明の油性化粧料は、主剤となる油性物質とシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物および3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを必須成分として製造されるが、本発明で用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とは、シリル化ペプチドとシラン化合物を共重合させたもので、例えば、特開2001−48732号公報や特開2001−48755号公報などに開示の方法で合成できる。また、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールは市販のものを使用することができる。さらに、主剤となる油性物質としては、化粧品に用いられるものなら制限はない。
【0010】
また、前記課題を解決するためには、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が全組成物中0.01〜20質量%であり、かつ3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が全組成物中0.02〜20質量%である油性化粧料が、皮膚や毛髪に対して優れた親和性、伸展性、密着性を有し、なめらかさ、柔軟性、保湿性を付与する効果に優れ、かつ酸化物臭の少ない油性化粧料になるので、これを請求項2に係わる発明とする。
【0011】
油性化粧料中、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が上記範囲より少ない場合は、皮膚や毛髪になめらかさ、柔軟性、保湿効果を付与する効果が発揮できない恐れがあり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が上記範囲より多くなっても、配合量に見合う効果が期待できない恐れがある。また、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が上記範囲より少ない場合は、酸化物臭を抑制する効果が低くなり、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が上記範囲より多くなっても配合量に見合う効果が期待できない恐れがある。そのため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量は、油性化粧料中0.01〜20質量%が好ましく、また、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量は油性化粧料中0.02〜20質量%が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の油性化粧料は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有することで、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に由来する特異な酸化物臭が抑制され、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が有する皮膚や毛髪への親和性、伸展性、密着性、保湿性を充分に発揮し、皮膚や毛髪になめらかさ、柔軟性、保湿感を付与する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態について説明する。本発明の油性化粧料の主剤となる油性物質としては、炭化水素類、天然ロウ類、エステル油類、油脂類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油など、通常化粧品に使用できるものなら制限はなく、これらの油性物質を単独或いは二種以上混合して用いる。
【0014】
炭化水素として、例えば、パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、オゾケライト、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマーなどが挙げられ、天然ロウ類としては、例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリン、ゲイロウ、モクロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、オレンジラフィー油、ホホバ油、水添ホホバ油、水添ヒマシ油、モンタンロウ、パームロウ、サトウキビロウ、羊毛脂などが挙げられる。
【0015】
エステル油類としては、例えば、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、(水添ロジン/ジイソステアリン酸)グリセリル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、リシノール酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリウンデシル酸グリセリル、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、クエン酸トリオクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセリル、テトラオクタン酸ペンタエリトリトール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、ステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、酢酸ポリオキシエチレン(3)モノオキシプロピレンセチルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
油脂類としては、例えば、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、大豆油、ヒマシ油、ククイナッツ油、小麦胚芽油、米胚芽油、シアバター、アボガド油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ヤシ油、エミュー油、硬化油、馬油、ミンク油、卵黄脂肪油、月見草油、マンゴーバター、ローズヒップ油などが挙げられ、脂肪酸類としては、例えば、オレイン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。また、高級アルコール類としては、例えば、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、キミルアルコール、コレステロール、シトステロール、セタノール、セトステアリルアルコール、セラキルアルコール、デシルテトラデカノール、バチルアルコール、フィトステロール、ヘキシルデカノール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ミリスチルアルコールなどが挙げられ、フッ素油としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロオクタンなどが挙げられる。
【0017】
さらに、高重合ジメチルポリシロキサン、低重合ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン油類も用いることができる。
【0018】
本発明の油性化粧料に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、特開2001−48732号公報や特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できるが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の構成成分であるシリル化ペプチドは、例えば、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で合成できる。
【0019】
シリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質加水分解物などが挙げられるが、入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、タンパク質加水分解物を用いるのが好ましい。
【0020】
前記タンパク質加水分解物は、タンパク質を酸、アルカリ、酵素、又はそれらの併用によって部分加水分解することで得られ、このタンパク源としては、動物性タンパク質、植物性タンパク質および微生物由来のタンパク質などが挙げられる。動物性タンパク質としては、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、プロタミン、鶏などの卵黄タンパク質や卵白タンパク質などを挙げることができ、植物性タンパク質としては、大豆、小麦、米(米糠)、ゴマ、エンドウ、トウモロコシ、イモ類などに含まれるタンパク質を挙げることができる。また、微生物由来のタンパク質としては、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌、ビール酵母や清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク質、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離したタンパク質、海藻由来のスピルリナタンパク質などを挙げることができる。
【0021】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記シリル化ペプチドと、下記一般式(I)
R1SiX(4−n) (I)
〔式中、nは0から2の整数で、R1は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基で、n個のR1は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基から選ばれる少なくとも一種の基である〕で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することで得られる下記一般式(II)
R1Si(OH)(4−p−n) (II)
〔式中、mは0から2の整数、pは2から4の整数で、m+p≦4であり、R1は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基で、m個のR1は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−n)個のYアルコキシ基または水素原子である〕で表されるシラン化合物の加水分解物を縮重合させたものである。
【0022】
本発明の油性化粧料に含有させる最適のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物としては、(株)成和化成製のPROTESIL FN、PROTESIL F、PROTESIL LH、PROTESIL GLH(いずれも商品名)などを挙げることができる。
【0023】
本発明の油性化粧料に含有させる3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール〔1−(2−エチルヘキシル)グリセロールエーテルとも言う〕は、下記式(III)
【化1】

で表されるものであるが、市販品としては、Suhulke & Mayr社製のSENSIVA SC 50JP(商品名)を挙げることができる。
【0024】
本発明の油性化粧料は、口紅、リキッド口紅、リップクリーム、リップグロス、口紅オーバーコート、コンシーラー、油性マスカラ、マスカラオーバーコート、マスカラ下地、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、へアステック、油性美容液、アイライナー、アイシャドウ、頬紅、フェイスカラー、アイブロウ、ハンドクリーム、化粧下地、コントロールカラー、日焼け止め乳液、乳液、クリーム、アイクリーム、ヘアクリーム、ヘアワックス等など油性成分が主構成成分であるものを対象とし、これらの化粧料に上記のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有させることによって構成される。
【0025】
そして、本発明の油性化粧料中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量(油性化粧料への配合量)としては、化粧料の用途によっても多少の違いはあるが、一般的には油性化粧料中にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は0.01〜20質量%で、かつ、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールは0.02〜20質量%が好ましく、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が0.1〜10質量%で、かつ、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールが0.2〜15質量%であることがより好ましい。
【0026】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の油性化粧料中での含有量が上記範囲より少ない場合は、皮膚や毛髪になめらかさ、柔軟性、保湿効果を付与する効果が発揮できない恐れがあり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が上記範囲より多くなっても、配合量に見合う効果が期待できない恐れがある。また、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が上記範囲より少ない場合は、酸化物臭を抑制する効果が乏しくなり、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が上記範囲より多くなっても配合量に見合う効果が期待できない恐れがある。そのため、油性化粧料中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量は上記範囲が好ましい。
【0027】
本発明の油性化粧料は、上記のように、従来の各種油性化粧料にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有させることによって構成されるが、一般的には、油性物質とシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と他の成分を加えて加熱混合し、均一に混合後に3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを加えて加熱混合し、冷却することによって製造することができる。
【0028】
本発明の油性化粧料は、主剤の油性物質とシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを必須成分とするが、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲において他の成分を適宜配合することができる。そのような成分としては、例えば、界面活性剤、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、増粘剤、高分子化合物、水溶性高分子、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料等の粉体、染料、防腐剤、香料、アルコール類、水等の水性成分、紫外線吸収剤、美容成分、薬効成分、清涼剤、色素などが挙げられる。
【実施例】
【0029】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中で表記されている%はいずれも質量%である。また、以下の実施例や比較例の処方を示す表では、各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名の後に括弧書きで固形分濃度を示している。
【0030】
実施例1〜3および比較例1〜2:口紅
表1に示す組成の口紅を下記の調製方法で調製し、調製品の使用感触について評価し、調製直後および50℃で1カ月保管後のにおいを評価した。なお、比較例2は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物も3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールも含まない対照品である。各調製品とも全量は100であり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物や3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合、配合量の違いによる全量の差異は、リンゴ酸ジイソステアリルで調整し、全量が100になるようにしてある。
【0031】
【表1】

【0032】
表1中、*1は(株)成和化成製のPROTESIL FN(商品名)〔(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー〕、*2は、赤色202号、黄色4号、青色1号、酸化チタンのリンゴ酸ジイソステアリル分散液(各色素分散液とも50%濃度)を14:50:1:30の割合(質量比)で混合し、3本ローラーによって十分練ったものである。また、*3は、Suhulke&Mayr社製のSENSIVA SC 50JP(商品名)である。
【0033】
<調製方法>
A部を撹拌釜に投入して90℃で撹拌・混合し、次にC部を投入し、色調が均一になるまで混合・撹拌を繰り返した。その間生じた気泡を減圧状態にして取り除いた。ついでB部を投入し、溶解したことを確認後、D部を投入して混合した。混合物を撹拌釜から取り出し、口紅型に充填して冷却した。
【0034】
<使用感触の評価方法>
被験者10名に手のひらの親指付け根部分に口紅を塗布させ、しっとり感、密着感、発色について良い、悪いで判定させ、良いと答えた人数をもとに下記評価基準で調製品を判定した。その結果を表2に示す。
◎:10人中8人以上が、各評価項目について、良いと判定した。
○:10人中5〜7人が、各評価項目について、良いと判定した。
△:10人中2〜4人が、各評価項目について、良いと判定した。
×:10人中0〜1人が、各評価項目について、良いと判定した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有しない比較例2の口紅については、大多数の被験者が、しっとり感、密着感、発色の使用感触について、悪いと判定したが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有した実施例1〜3および比較例1の口紅に関しては、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合、配合量の違いによる差はなく、全ての評価項目において優れた評価結果であった。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を1.0%含有する口紅は、しっとり感、密着感、発色等の優れた使用感を有することが明らかであった。
【0037】
<においの評価方法>
上記のように調製した口紅について、調製直後及び50℃で1ヶ月保存後、室温に戻したのち、被験者10名に手の甲の親指付け根部分に口紅を塗布させ、強いにおいを感じるかあるいは気にならないかを判定させた。においの評価は、においが強いと答えた人数をもとに下記評価基準に基づいて行った。その結果を表3に示す。
◎:10人中0〜1人が、においが強いと判定した。
○:10人中2〜4人が、においが強いと判定した。
△:10人中5〜7人が、においが強いと判定した。
×:10人中8人以上が、においが強いと判定した。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有して3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有しない比較例1の口紅については大多数の被験者が、においが強いと判定したが、実施例1〜3の結果を見て分かるように、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール添加するとシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に由来する酸化臭が抑制され、しかも、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの濃度が高くなるほどにおいの抑制効果が大きくなるのは明らかであった。これらの結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を1.0%含む口紅では、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを2.0%含有させるとにおいが抑えられた口紅とすることできることが分かった。
【0040】
実施例4〜5および比較例3〜4:液状グロス
表4に示す組成の液状グロスを下記の調製方法で調製し、調製品の使用感触について評価し、また、調製直後および50℃で1カ月保管後のにおいを評価した。なお、比較例4は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物も3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールも含まない対照品である。各調製品とも全量は100であり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物や3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合、配合量の違いによる全量の差異は、ミネラルオイルで調整し、全量が100になるようにした。
【0041】
【表4】

【0042】
表4中、*1と*3は表1と同じで、*4は、赤色202号、黄色4号、青色1号のリンゴ酸ジイソステアリル分散液(各色素分散液とも50%濃度)を14:50:1の割合(質量比)で混合し、3本ローラーによって十分練ったものである。また、*5はシルバー系のパール剤で酸化チタンにマイカを被覆したものである。
【0043】
<調製方法>
A部を撹拌釜に投入して90℃で撹拌・混合し、次にC部を投入し、色調が均一になるまで混合・撹拌を繰り返した。その間、生じた気泡を減圧にして取り除いた。ついでB部を投入し、溶解したことを確認後、D部を投入して混合した。混合物を撹拌釜から取り出し、グロス型に充填して冷却した。
【0044】
上記のように調製した実施例4〜5および比較例3〜4の液状グロスの使用感触およびにおいを、実施例1と同様の方法および同様の評価基準で評価した。それらの結果を表5、および表6に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
表5に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有しない比較例4の液状グロスについては、大多数の被験者が、しっとり感、密着感、発色の使用感触について、悪いと判定したが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有した実施例4〜5および比較例3の液状グロスに関しては、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合、配合量の違いによる差はなく、全ての評価項目において優れた評価結果であった。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を2.0%含有する液状グロスは、しっとり感、密着感、発色等の優れた使用感を有することが明らかであった。
【0047】
【表6】

【0048】
表6に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有して3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有しない比較例3の液状グロスは、においが強いと判定したパネラーが多かったが、実施例4〜5の結果から、それに3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール添加すると、においが抑制されるのは明らかであった。この結果からは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を2.0%含む液状グロスでは、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを6.0%含有させるとにおいが抑えられた液状グロスにすることできることが分かった。
【0049】
実施例6および比較例5〜6:コンシーラー
表7に示す組成のコンシーラーを下記の調製方法に従って調製し、調製品を肌に適用したときの使用感触について評価し、さらに、調製直後および50℃で1カ月間保管後のにおいについて評価した。なお、比較例6は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物も3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールも含まない対照品である。各調製品とも全量は100であり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物や3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合の有無による全量の差異は、リンゴ酸ジイソステアリルで調整し、全量が100になるようにしてある。
【0050】
【表7】

【0051】
表7中、*6は(株)成和化成製のPROTESIL F(商品名)〔(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー〕、*3は表1と同じで、*7は、酸化チタン、黄酸化鉄、赤酸化鉄および黒酸化鉄の294:438:88:35(質量比)の混合物である。
【0052】
<調製方法>
A部を撹拌釜に投入し、よく混合した後、ホモミキサーで均一に撹拌・混合した。次にB部を投入し、90℃で色調が均一になるまで混合・撹拌を繰り返した。同時に、生じた気泡を減圧にして取り除いた。溶解したことを確認後、C部を投入して混合し、混合物を撹拌釜から取り出し、容器に充填して冷却した。
【0053】
上記のように調製したコンシーラーの塗り広げやすさ、密着感、なじみやすさの使用感触、および、においについて実施例1と同様の方法、同様の評価基準で評価した。それらの結果を表8および表9に示す。
【0054】
【表8】

【0055】
表8に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有しない比較例6のコンシーラーについては、大多数の被験者が、塗り広げやすさ、密着感、なじみやすさの使用感触について、悪いと判定したが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有した実施例6および比較例5のコンシーラーに関しては、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合の違いによる差はなく、全ての評価項目において優れた評価結果であった。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を10.0%含有する液状グロスは、塗り広げやすさ、密着感、なじみやすさ等に優れた使用感を有することが明らかであった。
【0056】
【表9】

【0057】
表9に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有して3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有しない比較例5のコンシーラーは、においが調製直後、50℃1カ月保存後ともにおいが強いが、それに3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール配合した実施例6のコンシーラーでは、においが抑制されていた。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を10.0%含むコンシーラーでは、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを10.0%含有させるとにおいが抑えられたコンシーラーにすることができることが分かった。
【0058】
実施例7および比較例7〜8:ヘアスティック
表10示す組成のヘアスティックを下記に示す調製方法に従って調製し、調製品を毛髪に適用したときの使用感触について評価し、さらに、調製直後および50℃で1カ月間保管後のにおいについて評価した。なお、比較例8は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物も3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールも含まない対照品である。各調製品とも全量は100であり、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物や3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合の有無による全量の差異は、リンゴ酸ジイソステアリルで調整し、全量が100になるようにした。
【0059】
【表10】

【0060】
表10中、*8は(株)成和化成製のPROTESIL LH(商品名)〔(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー〕、*3は表1と同じである。
【0061】
<調製方法>
A部を撹拌釜に投入し、90℃で撹拌・混合した後、生じた気泡を減圧にして取り除いた。ついでB部を投入し、溶解したことを確認後、C部を投入して混合し、混合物を撹拌釜から取り出し、ヘアスティック型に充填して冷却した。
【0062】
上記のように調製したヘアスティックの塗り広げやすさおよびべたつきのなさの使用感触、および、においについて実施例1と同様の方法、同様の評価基準で評価した。ただし、使用感触の評価部位は親指付け根ではなく、毛髪で行った。それらの結果を表11および表12に示す。
【0063】
【表11】

【0064】
表11に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有しない比較例8のヘアステッィクについては、大多数の被験者が、塗り広げやすさ、べたつきのなさの使用感触について、悪いと判定したが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有した実施例7および比較例7のヘアステッィクに関しては、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの配合・無配合の違いによる差はなく、両評価項目において優れた評価結果であった。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を5.0%含有するヘアステッィクは、塗り広げやすさ、べたつきのなさに優れた使用感を有することが明らかであった。
【0065】
【表12】

【0066】
表12に示したように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有して3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有しない比較例7のへヘアスティックは、においが調製直後、50℃1カ月保存後とも強いが、それに3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール配合した実施例7のヘアスティックでは、においが抑制されていた。この結果から、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を5.0%含むヘアスティックでは、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを10.0%含有させるとにおいが抑えられたヘアスティックにすることができることが分かった。
【0067】
実施例8:リップスティック
表9に示す組成のリップスティックを下記の方法で調製し、調製直後および50℃で1カ月間保存したときのにおいを評価した。
【0068】
【表13】

【0069】
表13中、*9は(株)成和化成製のPROTESIL GLH(商品名)〔(トリメチルシリル加水分解コムギタンパク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー〕、*3は表1と同じである。
【0070】
<調製方法>
A部を撹拌釜に投入し、90℃で撹拌・混合した後、生じた気泡を減圧にして取り除いた。次いでB部を投入し、溶解したことを確認後、C部を投入し混合した。混合物を撹拌釜から取り出し、口紅型に充填して冷却した。
【0071】
調製したリップスティックを実施例1と同様の方法および評価方法でにおいの評価を行った。その結果を表14に示す。
【0072】
【表14】

【0073】
表14に示したように、実施例8のリップスティックは、調製直後も調製後50℃で1カ月保存してもにおいが強く感じられることなく、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールがシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のにおいを抑えているのが明らかであった。
【0074】
実施例9:パウダーファンデーション
表15に示す組成のパウダーファンデーションを下記の調製方法で調製し、調製直後および50℃で1カ月間保存したときのにおいを評価した。
【0075】
【表15】

【0076】
表15中、*7は表7と同じであり、*1および*3は表1と同じである。
【0077】
<調製方法>
A部をジューサーミキサーで均一混合し、その中にB部を添加してジューサーミキサーで均一混合した。混合物を金皿に量りとり、プレスし、パウダーファンデーションを得た。
【0078】
調製したパウダーファンデーションを実施例1と同様の方法および評価方法でにおいの評価を行った。その結果を表16に示す。
【0079】
【表16】

【0080】
表16に示したように、実施例9のパウダーファンデーションは、調製直後も調製後50℃で1カ月間保存してもにおいが強く感じられることなく、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールがシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のにおいを抑えているのが明らかであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物および3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを含有することを特徴とする油性化粧料。
【請求項2】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜20質量%であり、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの含有量が0.02〜20質量%である請求項1に記載の油性化粧料。


【公開番号】特開2011−144119(P2011−144119A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4743(P2010−4743)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】