説明

油性化粧料

【課題】経時的な粘度上昇や離液が抑制され、保存安定性に優れる油性化粧料を提供すること。
【解決手段】(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸、並びに(C)無機酸塩の無水物を含有してなる油性化粧料。好適には、(C)成分が、無水塩化カルシウム、無水塩化マグネシウム、無水硫酸カルシウム、及び無水硫酸マグネシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。さらに詳しくは、保存安定性に優れる油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に発熱作用を付与することで、塗布した際に、快適感や血行促進による肌の活性化作用を与えると同時に、その温熱効果により皮膚や皮溝の清浄性や洗浄性を高めることができる。このような発熱作用を有する化粧料について種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、ポリアルキレングリコール誘導体と活性化ゼオライトが水と接触し発熱するのを応用した化粧料(特許文献1参照)、焼石膏が水と接触し発熱するのを応用したパック(特許文献2参照)が開示されている。また、特許文献3には、特定の油類、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩又は無機酸化物、ならびに非イオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤を含有する非水系化粧料が開示されており、使用時に水と混合して皮膚・毛髪に適用すると、改質成分の収着性が向上することで優れたコンディショニング効果(潤い、滑らかさなど)が得られると記載されている。
【0004】
発熱作用の持続性についても検討がなされており、特許文献4には、発熱作用が持続し、使用時のべたつき感等がなく感触に優れ、かつ、安全性にも優れた発熱化粧料として、合成ハイドロタルサイト及び/又はその焼成物に、粘剤、水と接して発熱する多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコール付加物、さらには無水珪酸及び/又は含水珪酸を配合した化粧料が開示されている。発熱性の制御には、合成ハイドロタルサイト又はその焼成物と共に、該多価アルコール又はポリオキシアルキレングリコール付加物や、無水珪酸又は含水珪酸を併用することが好ましいと記載されている。また、粘剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム塩、合成珪酸アルミニウム、カオリン等が例示されている。また、特許文献5には、特定分子量のポリエチレングリコールと硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の発熱剤を組み合わせることにより、水分との接触で適度な発熱が持続することが記載されている。
【0005】
一方、特許文献6には、良好な発熱効果を有し、保存安定性にも優れる化粧料として、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の無機物を1重量%〜40重量%、多価アルコールを40重量%〜約99重量%、アルコールのゲル化又は固化剤である(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10を0.1重量%含有する化粧料が開示されている。優れた保存安定性には(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10を配合することが好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−100411号公報
【特許文献2】特開昭57−114506号公報
【特許文献3】特開平11−228332号公報
【特許文献4】特許第4550201号公報
【特許文献5】特開2011−88915号公報
【特許文献6】特開2006−219465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの従来技術を参酌して発熱作用に優れた油性化粧料を製造することは可能であるが、保存中に粘度上昇が生じたり、油剤(非水成分)の離液が生じたりして、製剤安定性が未だ十分ではないことが判明した。
【0008】
本発明の課題は、経時的な粘度上昇や離液が抑制され、保存安定性に優れる油性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決する為に検討を重ねた結果、(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸、並びに(C)無機酸塩の無水物を組み合わせた際に、経時的な粘度上昇や離液が抑制され、保存安定性に優れる油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸、並びに(C)無機酸塩の無水物を含有してなる油性化粧料、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性化粧料は、経時的な粘度上昇や離液が抑制されて、保存安定性に優れるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油性化粧料は、(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸、並びに(C)無機酸塩の無水物を組み合わせて用いることに大きな特徴を有する。なお、本発明の油性化粧料は前記成分を含有する非水系組成物であり、水を実質的に含有させないことが望ましい。ここで、「水を実質的に含有させない」とは、「別途、水を配合させることはしない」という意味であり、各配合原料中に含まれる微量の水分までを排除するものではない。
【0013】
無機酸塩の無水物(以降、無機酸塩無水物と記載することもある)は、吸水・吸湿により水和反応を生じて発熱する性質を有する。よって、使用時まで無機酸塩無水物と水分との接触を防ぐことが重要であり、発熱型の油性化粧料(非水系化粧料ともいう)に配合される。一方、デキストリン脂肪酸及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸は、油性化粧料を固化させる観点から、従来粘剤として利用されている。しかしながら、無機酸塩無水物の存在下、デキストリン脂肪酸及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸を単に油性化粧料に配合するだけでは、無機酸塩無水物が凝集して粘性が上昇し、保存安定性が維持できないことが判明した。そこで、本発明者らが検討した結果、驚くべきことに、親油性の粉末である、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムをさらに配合したところ、適度な粘性が得られ、かつ、その粘性が高温下に保存後にも維持され、製剤安定が向上することが判明した。
【0014】
(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムは、トウモロコシデンプンにオクテニルコハク酸をエステル化し、アルミニウム塩を付加した架橋型のデンプン誘導体である。疎水性の白色粉末で、油分を吸収する性質を有する。また、平均粒径は特に限定はなく、例えば、市販品として、「DRY−FLO PC」(NATIONAL STARCH AND CHEMICAL社製)を好適に用いることができる。
【0015】
(A)成分の含有量は、化粧料中、3〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0016】
(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸
デキストリン脂肪酸エステルとしては、デキストリンと好ましくは炭素数8〜22の高級脂肪酸とのエステルが挙げられ、具体的には、エチルヘキサン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン等が挙げられる。本発明では、前記デキストリン脂肪酸エステルと12−ヒドロキシステアリン酸のうち、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、適度な粘性が得られる観点から、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、12−ヒドロキシステアリン酸が好ましい。好適な市販品としては、「レオパールKL2」、「レオパールKS2」、「レオパールTL2」、「レオパールTT2」(以上、千葉製粉社製)、「ヒドロキシステアリン酸」(川研ファインケミカル社製)が例示される。
【0017】
(B)成分の含有量は、化粧料中、デキストリン脂肪酸エステル類に関しては、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸に関しては、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。なお、デキストリン脂肪酸エステル類を複数用いた場合、その含有量とはそれらの合計量を意味する。
【0018】
(C)無機酸塩の無水物
本発明で用いられる無機酸塩の無水物としては、水と混合することで発熱し、適度な温熱感を奏するものであれば特に限定されない。例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの無機酸塩の無水物が例示される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、水との混合後、素早く発熱し、適度な温熱感を奏する観点から、無水塩化カルシウム、無水塩化マグネシウム、無水硫酸カルシウム、無水硫酸マグネシウムが好ましい。好適な市販品としては、「無水硫酸マグネシウムA」(富田製薬社製)が例示される。
【0019】
(C)成分の含有量は、化粧料中、1〜50質量%が好ましく、3〜45質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。なお、(C)成分として複数の化合物を用いた場合、(C)成分の含有量とはそれらの合計量を意味する。
【0020】
また、(A)成分と(C)成分の質量の比〔(A)成分/(C)成分〕は、製剤安定性と発熱効果との兼ね合いの観点から、0.1〜50が好ましく、0.3〜30がより好ましく、0.5〜20がさらに好ましい。
【0021】
本発明の油性化粧料は、前記(A)〜(C)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧品に用いられる成分、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール;シリカ、球状ポリエチレン、結晶セルロースなどの粉体;カオリン、タルク、マイカなどの粘土鉱物、増粘性高分子などの増粘性成分;固形ロウ類、エステル、炭化水素、油脂、高級脂肪酸などの油性成分;非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性などの界面活性剤;無機顔料、有機顔料、パール顔料などの粉体;酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、植物抽出エキス、香料などを適宜含有することができる。
【0022】
本発明の油性化粧料は前記(A)〜(C)成分を含有するのであれば、特に限定なく、公知の方法に従って調製することができる。例えば、前記(A)〜(C)成分を混合し、ディスパーミルで攪拌することにより製造することができる。
【0023】
また、本発明の油性化粧料は、塗布時の良好な使用性を得る観点から、ペースト又はゲル状であるのが好ましく、ペースト状であるのがより好ましい。また、その形態としては、特に限定されないが、ジャー容器、チューブ容器などに充填した商品形態とすることができ、洗顔剤、マッサージ化粧料、シェービング剤、ボディーソープ、ハンドソープ等として好適に用いることができる。
【0024】
使用方法としては、特に限定されないが、例えば、(1)該油性化粧料を乾いた肌に塗布後、水で濡らした指先で馴染ませる方法;(2)該油性化粧料を濡れた肌に塗布後、乾いた指先又は水で濡らした指先で馴染ませる方法;(3)該油性化粧料を乾いた指先に取り、該油性化粧料と指先に水を含ませた後、肌に塗布して馴染ませる方法;(4)該油性化粧料を水で濡らした指先に取り、肌に塗布して馴染ませる方法などを例示することができる。本発明の油性化粧料は、経時保存後にも優れた粘性を有するため、長期に亘っての使用が可能となる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0026】
実施例1〜14及び比較例1〜15
表1〜表4に示す組成の油性化粧料を、(B)成分と油性成分類を加温して均一にした後、粉体類を投入し、ディスパーで攪拌して調製した。
【0027】
次に、得られた油性化粧料について、以下の試験例1〜3の評価を行った。結果を表1〜表4に示す。
【0028】
試験例1(性状)
調製直後の油性化粧料の稠度を、レオメーター(サン科学社製)を用いて、ローター10Φmm球、針入20mm、スピード6cm/minに設定して、25℃にて測定を行ない、以下の評価基準に従って性状を評価した。なお、「○」は口内径6.5Φのチューブからの吐出に適した粘性を有すること、「△」はチューブから垂れる又は硬すぎる粘性であること、「×」は液状もしくは分離しておりチューブに充填できる粘性ではないことを意味する。
【0029】
〔性状の評価基準〕
○:稠度が50gf以上、150gf以下
△:稠度が50gf未満、150gf超
×:稠度が測定できない、もしくは剤が分離している(離液が認められる)
【0030】
試験例2(稠度の上昇抑制)
40℃の恒温槽で1ヶ月保存した油性化粧料について、試験例1と同様にして稠度を測定後、以下の式より稠度の変動性を算出して、稠度の上昇抑制を以下の評価基準に従って評価した。
稠度の変動性(%)=40℃保存後の稠度/調製直後の稠度×100
【0031】
〔稠度の上昇抑制の評価基準〕
○:稠度の変動性が90%以上、150%以下
△:稠度の変動性が150%超、200%以下
×:稠度の変動性が200%超
【0032】
試験例3(離液抑制)
40℃の恒温槽で1ヶ月保存した油性化粧料を目視で観察し、離液抑制を以下の評価基準に従って評価した。
【0033】
〔離液抑制の評価基準〕
○:離液が認められない
△:離液が僅かに認められる
×:明らかな離液が認められる
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
以上の結果より、実施例の油性化粧料は、経時保存後にも離液の発生が認められず、良好な粘性を維持していることが分かる。一方、比較例1〜8及び14は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムの代わりに、種々の粉末やデンプンを配合しているが、いずれも経時保存後に稠度の上昇が見られ、剤の均一性が失われている。また、比較例9〜11は、(A)成分と(C)成分が本発明の油性化粧料と同じであり、粘剤が異なるものであるが、経時保存後に稠度の上昇が見られ、剤の均一性が失われていた。このことから、(A)成分、(B)成分、(C)成分が組み合わされることで初めて、油性化粧料の保存安定性が向上することが示唆される。
【0039】
以下、本発明の油性化粧料の処方例を示す。なお、含有量は質量%である。
【0040】
(処方例1)毛穴用洗浄剤(鼻用)
オクタン酸セチル 38.7
セレシン 1.0
無水硫酸マグネシウム 15.0
無水塩化カルシウム 15.0
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 4.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム 20.0
l−メントール 0.5
球状ポリエチレン 0.5
黒酸化鉄 0.1
ビタミンE 0.2
合 計 100.0
【0041】
(処方例2)ボディー用マッサージ料
オクチルドデカノール 1.0
パルミチン酸オクチル 37.0
無水硫酸マグネシウム 30.0
パルミチン酸デキストリン 3.0
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム 18.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
トリベヘン酸グリセリル 0.5
l−メントール 0.5
ビタミンE 0.2
香料 0.3
結晶セルロース 8.0
ポリエチレン 1.0
合 計 100.0
【0042】
(処方例3)顔用マッサージ料
流動パラフィン 43.0
ワセリン 2.0
無水硫酸マグネシウム 25.0
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム 20.0
12−ヒドロキシステアリン酸 0.5
N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム 3.0
l−メントール 0.5
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 4.0
球状ポリエチレン 2.0
合 計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の油性化粧料は、経時保存後にも優れた粘性を有するため、洗顔剤、マッサージ化粧料、シェービング剤、ボディーソープ、ハンドソープなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、(B)デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸、並びに(C)無機酸塩の無水物を含有してなる油性化粧料。
【請求項2】
(C)成分が、無水塩化カルシウム、無水塩化マグネシウム、無水硫酸カルシウム、及び無水硫酸マグネシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の油性化粧料。

【公開番号】特開2013−28550(P2013−28550A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164658(P2011−164658)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】