説明

油性口唇化粧料

【課題】糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続する油性口唇化粧料を提供する。
【解決手段】アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、重量平均分子量10万〜100万の重合体を含有し、200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1の値が、200Pa<N1<1000Paであり、且つ、300s-1で応力成長測定を行ったときピーク状の時間依存性を示さない、油性口唇化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性口唇化粧料に関し、より具体的には、糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続する油性口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性口唇化粧料を唇に塗布する目的のひとつとして、滑らかな感触を付与することが挙げられる。しかしながら、べたつきがなく滑らかな感触をもつ油剤は、通常、唇への残留性に乏しいので、滑らかな感触を維持できないばかりか、塗布感も失われやすく、口唇化粧料では顕著な問題となる。
分子量の大きい高分子化合物等を用いることにより、滑らかな感触を向上させることは可能である。しかしながら、このような高分子化合物を用いると、塗布したときに強い糸曳きが生じてしまう。このことは、特に、唇をすりあわせることの多い口唇化粧料において、重要な問題であった。
【0003】
口唇化粧料とは異なるが、クリームやジェル等の粘性を有する化粧料に関し、その法線応力に着目した技術が知られている。例えば、皮膚に高い摩擦と艶のない仕上がりを与えることを目的とした、特定の値未満の法線応力を有しているクリーム様粘度の化粧組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、高分子を配合した液状組成物の法線応力効果を利用した皮膚マッサージ化粧料及び皮膚洗浄化粧料も知られている(特許文献2及び3)。
【0004】
これらの化粧料は法線応力を有するので、これを用いて皮膚をマッサージすることで、皮膚の法線方向、すなわち、皮膚面と垂直な方向に応力が発生する。この応力が、化粧料を通して毛穴や皮溝の方向や、動かす範囲よりも大きい範囲まで力が伝わることにより、マッサージ行為や洗浄行為が実現できるとされている。
これらの技術は、化粧料のうち、クリームやジェル等を利用して、皮膚への高摩擦の付与やマッサージ効果を高めるためのものであり、法線応力を発現する口唇化粧料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−526781号公報
【特許文献2】特開2007−238571号公報
【特許文献3】特開2007−238572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続する油性口唇化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の会合性基を有する重合体を含有し、特定の法線応力を有する油性口唇化粧料が、糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、重量平均分子量10万〜100万の重合体を含有し、200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1の値が、200Pa<N1<1000Paであり、且つ、300s-1で応力成長測定を行ったときピーク状の時間依存性を示さない、油性口唇化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性口唇化粧料は、糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】応力成長測定を行ったときの、口唇化粧料の第1法線応力差N1の時間依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油性口唇化粧料は、(I)200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1の値が、200Pa<N1<1000Paであり、且つ(II)300s-1で応力成長測定を行ったときピーク状の時間依存性を示さないものである。
(I)本発明の油性口唇化粧料は、200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1の値が、200Pa<N1<1000Paであり、塗膜の存在感や滑らかさを向上させる観点から、好ましくは230Pa<N1<950Paであり、より好ましくは250Pa<N1<900Paである。
200s-1のずり速度下でのN1の値が、N1>200Paであれば、その値が高いほど口紅の使用感である滑らか感や潤い感、及びその持続性は高くなる。また、200s-1のずり速度下でN1の値が、N1<1000Paであれば、口紅の糸曳きを起こり難くすることができる。
ここで、第1法線応力とは、ずり変形を加えた際に、ずりを加えた方向と直行する方向に発生する応力であり、下記実施例に記載の方法により、測定することができる。
【0012】
(II)本発明の油性口唇化粧料は、300s-1で応力成長測定を行ったときピーク状の時間依存性を示さないものである。
特に、ずり速度300s-1でずり応力の成長測定(サンプルに瞬間的に300s-1のずりを印加した際のずり応力や法線応力の応答を計測)を行ったとき、図1に示すように、測定開始から0.1〜10秒間において第1法線応力差N1の値がピーク状の時間依存性を示さず、かつ10秒の時点での第1法線応力差N1の値が900Paを超えない場合、特に895Paを超えない場合に、その口唇化粧料の使用感とその持続性が良好であり、かつ特に糸曳きが起こりにくい油性口唇化粧料を得ることができる。ここで、第1法線応力差N1の値の時間依存性を、0.1〜10秒の間で評価した理由は、この時間内でのN1の時間依存性パターンが糸引き性と関係していることを本発明者らが見いだしたことによるものである。
【0013】
また、本発明の口唇化粧料は、アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、重量平均分子量10万〜100万の重合体を含有するものである。なお、本発明において、重合体とは、特に限定しない限り、共重合体も含む概念である。
本発明で用いる重合体としては、アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、セルロース誘導体、ビニル系重合体、エーテル系重合体、エステル系重合体等が挙げられる。
【0014】
重合体は、分子内に会合性基を有することで、口唇化粧料中で物理的相互作用により見かけの分子量(会合体の分子量)が増加したり、3次元架橋構造が形成されて、使用感である滑らか感や潤い感、及びその持続性が向上すると推定される。
本発明で使用される重合体としては、良好な潤滑性を発現させる観点から、セルロース誘導体、ビニル系重合体が好ましく、ビニル系重合体がより好ましい。
【0015】
<セルロース誘導体>
セルロース誘導体の例としては、主鎖にセルロース骨格を有し、全水酸基の67mol%以上が基−O−M−R(MはCH2又はカルボニル基C=Oを示し、Rは炭素数3〜40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)で置換されているセルロース誘導体が挙げられる。
上記セルロール誘導体において、置換基−O−M−R中のRは、口唇化粧料の塗布時の滑らかさ付与の観点から、直鎖アルキル基が好ましい。更には、伸ばしやすさ、密着性の良さから、炭素数9〜21が好ましく、更に、炭素数11〜17、特に15が好ましい。
【0016】
セルロース誘導体において、基−O−M−Rの置換率は、67mol%以上であり、特に70mol%以上が好ましく、80mol%以上100mol%以下がより好ましい。基−O−M−Rの置換率は、口唇化粧料への溶解性を高める観点からは高い方が好ましいが、うるおい感やすべり性の観点からは、90mol%以下が好ましい。また、水酸基が適当に残留していることが、ざらつきのなさの点で好ましい。好ましい水酸基量は2〜33mol%、より好ましくは、5〜20mol%である。
【0017】
上記セルロース誘導体の重量平均分子量は、10万以上、更には20万以上が好ましく、100万以下、更には90万以下が好ましい。特に、溶解性、滑らかな感触が持続する点で、50万〜90万が好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、下記実施例に記載の測定法によって求められるものである。
【0018】
このようなセルロース誘導体は、原料セルロース誘導体と、炭素数3〜40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する酸ハライドとを反応させ、原料セルロース誘導体の全水酸基の67mol%以上を置換することにより製造される。
また、MがCH2であるものは、塩基存在下に、セルロース誘導体と対応するアルキルハライドあるいはアルキルメシラート等のスルホン酸エステルを反応させることによって製造することができる。主鎖がセルロース骨格からなるものは、アセチルセルロースのエステル交換反応(アシドーリシス)によっても得ることができる。この方法によれば、水酸基の残留量が極めて低いセルロースエステル誘導体が得られる。
【0019】
<ビニル系重合体>
ビニル系重合体の例としては、アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、ビニル系重合体が挙げられる。
ビニル系重合体としては、以下のアミド基、カルボキシル基、水酸基又はスルホ基を有する単量体(A)の重合体を使用することができる。単量体(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜22の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリルアミド;ベンジル(メタ)アクリルアミド等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類等;ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等のジアリルアミン化合物などが挙げられる。
【0020】
更に、上記ビニル系重合体は、上記単量体(A)と下記単量体(B)との共重合体であってもよい。単量体(B)は、置換基を有してもよい炭素数6〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する単量体が好ましく、この中でも、炭素数6〜22の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数6〜22の直鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数12〜16の直鎖のアルキル基が更に好ましい。
【0021】
単量体(B)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート等の炭素数5〜22の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の炭素数6〜22の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基又はアルケニル基を有するビニルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン等のスチレン類などが挙げられる。
【0022】
単量体(A)と単量体(B)との共重合体は、単量体(A)由来の構成単位(a)と単量体(B)由来の構成単位(b)のモル比が、構成単位(a):構成単位(b)で1:99〜30:70であり、油中での潤滑性を向上させる観点から、特に5:95〜25:75であるのが好ましい。
また、共重合体は、潤滑性発現の観点から、構成単位中の構成単位(a)及び構成単位(b)の割合が合計で85質量%以上であるのが好ましく、特に90質量%以上、更に95質量%以上であるのが好ましい。構成単位(a)及び構成単位(b)の割合がこの範囲にある場合、必要に応じて、上記単量体と共重合可能な単量体由来の構成単位を更に含有してもよい。共重合体は、実質的に構成単位(a)及び構成単位(b)からなるものがより好ましい。
【0023】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、潤滑性及び溶媒への溶解性の観点から、10万〜100万が好ましく、特に15万〜90万が好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、下記実施例に記載の測定法によって求められるものである。
共重合体の製造方法は、特に制限されないが、通常の溶液重合法、懸濁重合法等により、上記単量体成分をラジカル重合させることによって、製造することができる。
【0024】
共重合体は、単独で用いても良いが、より強固な会合体を形成させるためには、2種類以上の共重合体を組み合わせて使用することが好ましい。2種以上の共重合体を使用する場合、異種の会合体基を有する共重合体を使用することが好ましく、その中でも、カルボン酸基を有する共重合体とアミド基を有する共重合体の組み合わせがより好ましい。
重合体は、油性口唇化粧料中に、合計で0.01〜30質量%、特に0.1〜20質量%含有されるのが、糸曳きを生じず、滑らかな感触が持続する観点から好ましい。
【0025】
本発明の油性口唇化粧料は、上記のような重合体を含有するものであり、使用感及びその持続性に優れたものである。この使用感とは、口唇化粧料を塗布後に上下の唇を前後にすり合わせたとき、塗膜の存在感や滑らかさを感じ、それを滑らかさや潤い感があるとして表現される使用感である。
また、口唇化粧料の使用感の持続性とは、口唇化粧料塗布後数時間経過後に、単に視覚的に口唇化粧料が残っているということではなく、上下の唇を前後にすり合わせたときの塗膜の存在感や滑らかさを感じたり、それらが持続することにより使用感が持続していると判断することができることである。
【0026】
<疎水性油>
本発明の油性口唇化粧料は、上記のような重合体以外に、疎水性油を含有するのが好ましい。疎水性油としては、(i)25℃で液状のエステル油、及び/又は(ii)25℃で液状の炭化水素油を用いることができる。
(i)25℃で液状のエステル油としては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、アボガド油、ヒマワリ油、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等が挙げられる。これらの中でも、分岐飽和脂肪酸エステルが好ましく、分岐飽和脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル等が挙げられる。特に分岐脂肪酸分岐アルコールエステルが好ましく、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルが好ましく、特に、イソノナン酸イソトリデシルが好ましい。
エステル油は、1種以上用いることができ、潤滑性発現の観点から、油性口唇化粧料中に10〜80質量%、特に20〜60質量%含有するのが好ましい。
【0027】
(ii)25℃で液状の炭化水素油としては、例えば、軽質イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン等が挙げられる。上記炭化水素油は、2種又は3種以上混合して用いることが好ましい。特に、数平均分子量700以下、特に数平均分子量600以下の液状炭化水素油と、数平均分子量1000以上、特に数平均分子量2000以上の液状炭化水素油を混合して用いるのが好ましい。更には、数平均分子量700以下の液状炭化水素油と数平均分子量1000以上の液状炭化水素油を、1/2〜2/1の割合で混合して用いるのが好ましい。
上記炭化水素油は、1種以上用いることができ、潤滑性発現の観点から、油性口唇化粧料中に合計で5〜60質量%、特に15〜40質量%含有するのが好ましい。
【0028】
また、上記(i)25℃で液状のエステル油、及び(ii)25℃で液状の炭化水素油の両方を使用する場合、その合計含有量は、油性化粧料の剤型によっても異なるが、20〜90質量%が好ましく、特に50〜90質量%が好ましい。
【0029】
更に、本発明の口唇化粧料は、前記成分以外に通常の口唇化粧料に用いられる成分、例えば保形剤、色材、界面活性剤、アルコール、多価アルコール、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、香料、色素、防汚剤、保湿剤、水などを含有することができる。
【0030】
本発明の油性口唇化粧料は、通常の方法により製造することができ、その剤型としては、固形、半固形、ゲル、液状などのいずれでも良い。
【実施例】
【0031】
(重量平均分子量の測定)
重合体の平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR−Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのファーミンDM2Oのクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で実施した。
【0032】
(合成例1)
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中に、単量体としてメタクリル酸(和工純薬工業社製)7.15g(0.083mol)、ラルリルメタクリレート(三菱ガス化学社製)94.5g(0.333mol)、溶剤としてメチルエチルケトン40gを添加し、65℃まで昇温した。開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(v−65B:和光純薬工業社製)0.086gを加え、65℃で5時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、黄色無臭のメタクリル酸−ラウリルメタクリレート共重合体(化合物1)101gを得た。得られた化合物の重量平均分子量は35万であった。
【0033】
(合成例2)
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中に、単量体としてメタクリルアミド(和工純薬工業社製)6.54g(0.077mol)、ラルリルメタクリレート(三菱ガス化学社製)80.5g(0.317mol)、溶剤としてメチルエチルケトン100gを添加し、65℃まで昇温した。開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(v−65B:和光純薬工業社製)0.086gを加え、65℃で5時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、黄色無臭のメタクリルアミド−ラウリルメタクリレート共重合体(化合物2)82gを得た。得られた化合物の重量平均分子量は28万であった。
【0034】
(合成例3)
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中、ヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬社製、HPC粘度100〜400(mPa・s))10gをクロロホルム720gに溶解した。ピリジン100g、4-ジメチルアミノピリジン0.35gを添加し、50℃まで昇温した。塩化パルミトイル55gを30分かけて添加し、50℃で15時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、淡い黄色無臭のヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル(化合物3)約22gを得た。得られた化合物の置換率は90%であり、重量平均分子量は80万であった。
【0035】
(比較合成例4)
開始剤仕込み量を1.51gに変える以外は実施例1と同様の方法で合成を行い、メタクリル酸−ラルリルメタクリレート共重合体(比較化合物4)を得た。得られた化合物の重量平均分子量は35000であった。
【0036】
(比較合成例5)
開始剤仕込み量を1.60gに変える以外は実施例2と同様の方法で合成を行い、メタクリルアミド−ラウリルメタクリレート共重合体(比較化合物5)を得た。得られた化合物の重量平均分子量は30000であった。
【0037】
(比較合成例6)
特開2002−193748号公報に記載の方法に従い、アルキル変性ポリエーテル(比較化合物6)を得た。得られた化合物の重量平均分子量は1000万であった。
【0038】
(実施例1〜2及び比較例1〜3)
表1に示す組成の口紅を製造し、第一法線応力差、応力成長のピーク形状の観測、滑らかさの評価、糸曳きの評価を行った。比較例3は、市販の口紅(花王社製、オアーブ ルージュ モイスチュール)を用いた。
【0039】
〔棒状口紅の製造方法〕
表1に示す基剤原料(色材以外)を加熱融解して均一に混合した。次に、これに色材原料を加え、加熱状態でディスパーザーにて均一に分散させ、脱泡した後型に流し込んで成型し、棒状の口紅を得た。
【0040】
〔第1法線応力差の測定、応力成長のピーク形状の観測〕
押し潰した口紅を、更に、平均で120Nの力を加えた状態下にガラス板を摺動させて練った。摺動速度は平板2A、2B間の相対速度で20mm/秒、摺動距離は18mm、摺動回数は10往復とした。その後直ちに、レオメータ(Physica社製、Modular Compact Rheometer MCR500)におけるコーンプレート(直径25mm、円錐角2度)間に挟み込みレオロジー測定を行った。測定条件は温度30℃・湿度55%RHであった。第1法線応力は、ずり速度0.001s-1から1000s-1までの間を対数軸で等分して19点測定した。測定のサンプリング時間は0.001s-1の測定については30s、1000s-1の測定については2sとし、その間の測定点については対数軸で等分した。得られた測定結果から、200s-1において測定された第1法線応力差N1を求めた。また、300s-1で応力成長測定を行ったときの第1法線応力差N1の時間依存性を観察しピーク形状を観測した。
【0041】
〔滑らかさ〕
10名の専門パネラーにより、口紅を塗布した直後の口紅塗膜の滑らかさの程度を官能により評価した
◎;10名中8名以上が滑らかと評価した。
○;10名中6〜7名が滑らかと評価した。
△;10名中4〜5名が滑らかと評価した。
×;10名中3名以下が滑らかと評価した。
【0042】
〔滑らかさの持続性〕
10名の専門パネラーにより、口紅を塗布して数時間経過後の口紅塗膜の滑らかさの持続性を官能により評価した。
◎;10名中8名以上が持続すると評価した。
○;10名中6〜7名が持続すると評価した。
△;10名中4〜5名が持続すると評価した。
×;10名中3名以下が持続すると評価した。
【0043】
〔糸曳き防止性〕
口紅を手の親指と薬指の間に挟んで軽く練った後に、両指の間隔を広げた時に指の間で糸が切れるかどうかを評価した。
◎;全く糸を曳かない。
○;角が立つが直ぐ切れる。
×;糸が切れない
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド基、カルボキシル基、水酸基及びスルホ基から選択される1以上の会合性基を有する、重量平均分子量10万〜100万の重合体を含有し、200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1の値が、200Pa<N1<1000Paであり、且つ、300s-1で応力成長測定を行ったときピーク状の時間依存性を示さない、油性口唇化粧料。
【請求項2】
更に、疎水性油を含有する請求項1記載の油性口唇化粧料。
【請求項3】
疎水性油が、25℃で液状のエステル油及び/又は25℃で液状の炭化水素油である請求項2記載の油性口唇化粧料。
【請求項4】
重合体が、セルロース誘導体又はビニル系重合体である請求項1〜3のいずれか1項記載の油性口唇化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−79742(P2011−79742A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230590(P2009−230590)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】