説明

油性固形化粧料

【課題】取れが柔らかく、使用性、化粧持ちに優れ、更に経時での硬度低下や発汗現象、離油が抑制され、安定性に優れた油性固形化粧料を提供すること。
【解決手段】揮発性油剤を含む油性固形化粧料にヒマワリ種子ロウ、イヌリン脂肪酸エステルを配合した油性固形化粧料。該化粧料は好ましくは、ヒマワリ種子ロウを5〜35重量%、イヌリン脂肪酸エステルを0.1〜20重量%含有する。該化粧料は使用時の取れ、塗布感触、化粧持ちに優れ、経時での硬度低下、離油を抑え安定性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性油剤を含む液状油性成分、固形油を中心に構成された油性固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は固形油、半固形油を含む油性成分を骨格として構成され、必要に応じ顔料等の粉体、保湿成分や紫外線吸収剤などの機能成分が配合される。これらの油性固形化粧料は、製造時においては良好な充填成型性が求められ、使用時においては、取れ、感触が柔らかく、伸びが良く、化粧持ちに優れる等の良好な使用性が求められる。更には成型固化した状態の経時変化で、硬度低下を起こさない、発汗現象、離油を発生しないことが安定性として重要である。
【0003】
従来の技術では、特開昭61−65809号(特許文献1)に示されるような、有機シリコーン樹脂と揮発性シリコーン油を配合し、塗布後に揮発性シリコーン油が揮散することで油性固形化粧料の化粧持ちを改善する検討がされてきた。しかし、有機シリコーン樹脂と揮発性シリコーン油を用いた油性固形化粧料は化粧崩れを抑え、化粧持ちを良くするが、固形化する際、固形状油分を用いても形状保持性と使用性を同時に満足させることはできなかった。この問題を改善するために特開平8−157324(特許文献2)では有機シリコーン樹脂、揮発性シリコーン油にフラクトオリゴ糖エステル、固形状油分を組み合わせる方法が考案されているが、保存時に離油を引き起こし、また経時で硬度が低下してしまうなど安定性に欠けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−65809号
【特許文献2】特開平8−157324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用時の取れ、塗布感触、化粧持ちに優れ、経時での硬度低下、離油を抑え安定性に優れた油性固形化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため鋭意検討を進めた結果、本発明者はヒマワリ種子ロウ、イヌリン脂肪酸エステルと揮発性油剤を含む油性固形化粧料とすることで、製造時の充填成型性、形状保持性が良好で、使用時の取れ、塗布感触、化粧持ちに優れ、経時での硬度低下、離油もない安定性に優れた油性固形化粧料が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
上述のように本発明による油性固形化粧料は、使用時の取れ、塗布感触、化粧持ちなどの使用性に優れ、更に経時での硬度低下、離油が抑えられ安定性に優れた油性固形化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0009】
なお、以下の%は重量%を示し、以後%と表示する。
【0010】
本発明において用いられるヒマワリ種子ロウとしては、化粧品に配合できるヒマワリ種子ロウであれば特に限定されない。ヒマワリ種子ロウは、ヒマワリ種子油を脱ロウした際に得られる植物由来ワックスであり、炭素数20〜32の高級アルコールと炭素数20〜28の脂肪酸からなる長鎖飽和脂肪酸エステルを主成分とするものである。ヒマワリ種子ロウは、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、精製ヒマワリワックス(横関油脂工業株式会社製)、SunflowerWax(KosterKeunenHolland bv社製)、AEC SunflowerWax (A&E Connock社製)等を挙げることができる。
【0011】
本発明において上記ヒマワリ種子ロウの含有量は、5〜35%であることが好ましく、更に5〜30%であることがより好ましい。ヒマワリ種子ロウが、5%未満の場合、離油を引き起こすなど安定性が悪化してしまい。また35%を超える場合取れ、使用感が悪くなってしまう為好ましくない。
【0012】
本発明に用いられるイヌリン脂肪酸エステルは、化粧品に配合できるイヌリン脂肪酸エステルであれば特に限定されない。イヌリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては炭素数8〜32の脂肪酸が好ましく、脂肪酸は飽和でも不飽和でも、また直鎖でも分基鎖でもでもいずれでも構わない。イヌリン脂肪酸エステルを構成するイヌリンの平均分子量は300〜10,000の範囲が好ましい。イヌリン脂肪酸エステルは、レオパールISK2、レオパールISL2(以上、千葉製粉株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0013】
本発明では、イヌリン脂肪酸エステルの含有量は好ましくは油性固形化粧料全量中0.1〜20%であり、より好ましくは、0.1〜10%である。0.1%未満の場合、又、20%を超える場合取れ、使用感が悪化してしまい好ましくない。
【0014】
本発明において用いられる揮発性油剤としては、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、具体的には、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン等の揮発性シリコーン油、軽質イソパラフィン、イソドデカン等の揮発性炭化水素油などが挙げられる。これらの揮発性油剤は1種又は2種以上が適宜選択され用いることができる。
【0015】
上記の揮発性油剤は、市販品を用いることができる。例えば、揮発性シリコーン油としては、KF−994(オクタメチルシクロテトラシロキサン;信越化学工業株式会社製)、KF−995(デカメチルシクロペンタシロキサン;信越化学工業株式会社製)、KF−96−1cs(オクタメチルトリシロキサン;信越化学工業株式会社製)、KF−96−1.5cs(デカメチルテトラシロキサン;信越化学工業株式会社製)TMF−1.5(メチルトリメチコン;信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。また揮発性炭化水素油は、軽質イソパラフィンとして、アイソパーH(エクソンモービル社製)、IPソルベント1620(出光石油化学株式会社製)、イソドデカンとして、マルカゾールR(丸善石油化学株式会社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明に用いられる揮発性油剤の含有量は5〜75%が好ましく、 10〜75%がより好ましく、10〜50%がより更に好ましい。揮発性油剤が5%未満の場合、化粧持ちが低下してしまい好ましくない、また75%を越えた場合、離油などの安定性が悪化してしまい好ましくない。
【0017】
本発明の油性固形化粧料には、上記した必須構成成分の他に、通常化粧品に用いられる他の成分、例えば、固形油、半固形油、非揮発性液状油、皮膜形成剤、樹脂、界面活性剤、油ゲル化剤、粉体、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、薬剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0018】
本発明に適宜用いられる粉体としては、通常化粧品で使用されるものであれば特に限定されない。粉体の例としては、マイカ、カオリン、合成雲母、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、パール顔料(雲母チタン、魚鱗泊、オキシ塩化ビスマス等)、窒化ホウ素、有機顔料(赤色228号、赤色226号、青色404号等)、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー等が挙げられる。これらの粉体は1種または2種以上の粉体を複合化したものを用いても良く、またシリコーン化合物、金属セッケン類、アミノ酸化合物、フッ素化合物等を用いて公知の方法にて表面処理を施したものを用いても良い。本発明において、他の粉体が含有される場合、1種又は2種以上が適宜選択され用いられる。
【0019】
本発明の油性固形化粧料は、前記成分を配合して、常法に従って処理することにより得ることができる。本発明の油性固形化粧料は、例えばファンデーション、化粧用下地、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、チーク、口紅、リップクリーム等に適しているが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。配合量は重量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0021】
[使用テスト]取れ(塗布具への取れの良さ)、使用感(使用時の伸び、しっとり感)、化粧持ち(化粧持ちの良さ)の評価項目それぞれについて、10人の専門パネルによる使用性テストを行い、1〜5点の5段階評価の平均点を求め下記評価基準に基づいて判定した。
【0022】
[評価基準]
◎;平均点4.0点以上
○;平均点3.0点以上、4.0点未満
△;平均点2.0点以上、3.0点未満
×;平均点2.0点未満
【0023】
[硬度変化]密閉容器に油性固形化粧料を溶融充填し、25℃24時間放置したものを針入硬度値の基準とし、5℃〜40℃1日2サイクルにて1か月間保存したものの針入硬度値と比較し硬度変化を下記基準で判定した。針入硬度の測定方法は、レオメーター(不動社製)を用い、3mmφ治具を10mm侵入させ、その抵抗荷重を測定した。
◎;硬度低下25%未満
○;硬度低下25〜35%未満
△;硬度低下35〜45%未満
×;硬度低下45%以上
【0024】
[外観]密閉ガラス容器に油性固形化粧料を溶融充填し、40℃1か月間保存し、その状態を目視にて判定した。
◎;発汗、離油なし
○;微細な発汗、又は発汗跡
△;少量の発汗
×;著しい発汗、離油
【0025】
表1に示す組成からなる油性固形化粧料を調整しこれを評価試料として前記評価方法に基づき、各評価項目に判定を実施した。その結果を併せて表1に示す。
【0026】
(調整法)実施例1〜3及び比較例1〜5を以下の方法で調整した。表1における1〜12の成分を加熱溶解し、表1における成分13〜17を添加し混合撹拌した。次いで、これを脱泡後、容器に溶融充填し、冷却することで油性固形化粧料を得た。
【0027】
なお、表1に示される(注1)〜(注4)の原料については、それぞれ下記の市販品を使用した。
【0028】
(注1)SunflowerWax(KosterKeunenHolland bv社製)
(注2)レオパールISL2 千葉製粉社製
(注3)レオパールKL2 千葉製粉社製
(注4)レオパールTT2 千葉製粉社製
【0029】
【表1】

【0030】
表1から判るように本発明に関わる実施例1〜3は、全ての評価項目において良好であった。
【0031】
一方、ヒマワリ種子ロウ以外のワックスを用いた比較例1〜4及び、イヌリン脂肪酸エステルの替わりにデキストリン脂肪酸エステルを用いた比較例5、6では前記試験において、硬度低下がみられ、また外観で離油、発汗がみられた。
【0032】
以下に処方例として実施例を示す。
[実施例4] アイシャドウ
(配合成分) (重量%)
(1)ヒマワリ種子ロウ(注1) 6.0
(2)ステアリン酸イヌリン(注2) 1.0
(3)トリメチルシロキシケイ酸 20.0
(4)メチルトリメチコン 30.0
(5)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 3.0
(6)イソノナン酸イソトリデシル 5.0
(7)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 4.9
(8)シメチコン 0.05
(9)トコフェロール 0.05
(10)雲母チタン 25.0
(11)酸化鉄 5.0
(製法)配合成分(1)〜(9)を加熱溶解し、(10)〜(11)を添加し混合撹拌した。次いで、これを脱泡後、容器に充填、冷却しアイシャドウを得た。
【0033】
上記の実施例4のアイシャドウは、塗布具への取れ、使用性が良好で、経時での硬度低下、発汗、離油現象もなく良好であった。
【0034】
[実施例5]口紅
(配合成分) (重量%)
(1)ヒマワリ種子ロウ(注1) 15.0
(2)ステアリン酸イヌリン(注2) 0.1
(3)イソドデカン 75.0
(4)リンゴ酸ジイソステアリル 2.4
(5)シメチコン 0.05
(6)トコフェロール 0.05
(7)赤色202号 0.6
(8)黄色4号アルミニウムレーキ 0.7
(9)酸化鉄 0.1
(10)酸化チタン 1.0
(11)ベンガラ被覆雲母チタン 5.0
(製法)配合成分(1)〜(6)を加熱溶解し、(7)〜(11)を添加し混合撹拌した。次いで、これを脱泡後、容器に充填、冷却し口紅を得た。
【0035】
上記の実施例5の口紅は、塗布具への取れ、使用性が良好で、経時での硬度低下、発汗、離油現象もなく良好であった。
【0036】
[実施例6]マスカラ
(配合成分) (重量%)
(1)ヒマワリ種子ロウ(注1) 8.0
(2)ステアリン酸イヌリン(注2) 1.0
(3)トリメチルシロキシケイ酸 20.0
(4)デカメチルテトラシロキサン 20.0
(5)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 1.0
(6)ジメチコン 4.0
(7)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 5.9
(8)トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 5.0
(9)シメチコン 0.05
(10)トコフェロール 0.05
(11)シリコーン、アミノ酸処理黒酸化鉄 20.0
(12)合成金雲母 15.0
(製法)配合成分(1)〜(10)を加熱溶解し、(11)〜(12)を添加し混合撹拌した。次いで、これを脱泡後、容器に充填、冷却しマスカラを得た。
【0037】
上記の実施例6のマスカラは、塗布具への取れ、使用性が良好で、経時での硬度低下、発汗、離油現象もなく良好であった。
【0038】
[実施例7]頬紅
(配合成分) (重量%)
(1)ヒマワリ種子ロウ(注1) 5.0
(2)ステアリン酸イヌリン(注2) 7.0
(3)イソドデカン 28.0
(4)トリエチルヘキサノイン 3.0
(5)イソノナン酸イソトリデシル 6.3
(6)シメチコン 0.05
(7)トコフェロール 0.05
(8)シリル化シリカ 1.5
(9)赤色202号 0.4
(10)黄色4号アルミニウムレーキ 1.6
(11)酸化鉄 0.1
(12)酸化チタン 11.0
(13)メタクリル酸メチルクロスポリマー 28.0
(14)雲母チタン 8.0
(製法)配合成分(1)〜(7)を加熱溶解し、(8)〜(14)を添加し混合撹拌した。次いで、これを脱泡後、容器に充填、冷却し頬紅を得た。
【0039】
上記の実施例7の頬紅は、塗布具への取れ、使用性が良好で、経時での硬度低下、発汗、離油現象もなく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性油剤を含有する油性固形化粧料において、ヒマワリ種子ロウ、イヌリン脂肪酸エステル、を配合することを特徴とする油性固形化粧料。
【請求項2】
前記、ヒマワリ種子ロウを5〜35重量%、イヌリン脂肪酸エステルを0.1〜20重量%、配合することを特徴とする請求項1記載の油性固形化粧料。

【公開番号】特開2013−107827(P2013−107827A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251441(P2011−251441)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】