説明

油性固形化粧料

次の成分(a)〜(c);(a)炭化水素ワックス(b)グリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル置換度が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル(c)無水ケイ酸を含有することを特徴とする油性固形化粧料である。 本発明の油性固形化粧料は、従来の油脂固形化粧料の問題点を解消し、塗布時の伸び広がりが良く、ソフトな肌あたりを有するとともに、化粧膜のツヤ、潤い感に優れ、形状保持性、経時安定性が良好な油性固形化粧料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧料に関し、更に詳細には、塗布時の伸び広がりが良く、ソフトな肌あたりを有するとともに、化粧膜のツヤや、潤い感に優れ、形状保持性、経時安定性も良好である油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は、口紅等に汎用されている化粧料剤形であり、主に、固形油、半固形油、液体油等の油成分と、着色顔料、光輝性顔料、体質粉体の粉体成分から構成されている。そして、上記化粧料においては、その形状を保持するために、油成分と粉体成分の配合量を変えることや、その強度を上げるために添加する固化剤の検討、更には、経時安定性を向上させるための検討あるいは当該化粧料に様々な官能を付与し、質感、色調を演出する試みがなされてきた。
【0003】
例えば、油性固形化粧料の固化剤として、エチレン・プロピレンコポリマーを用いることにより、安定性を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、ベヘン酸トリグリセライドを用いペンシル状化粧料の発粉を抑制した技術(例えば、特許文献3)や、通常界面活性剤として用いられることの多いポリグリセリン脂肪酸エステル(特許文献4)のうち、ベヘン酸を主体とした固体のポリグリセリン脂肪酸エステルを発汗現象の抑制のために用いる技術が知られている(例えば、特許文献5)。
【0004】
さらには、均一性、柔軟性、光沢に優れる化粧膜を得るために、特定のシリコーンオイルとエチレンホモポリマー及び/又はコポリマーとを組み合わせた技術も提案されている(例えば、特許文献6)。
【0005】
しかしながら、これらの技術では、使用感、化粧持ち、ツヤ等、それぞれは向上するものの、全ての効果を充分に満足するものは得られず、特に、良好な潤い感が得られるものではなかった。シリコーンオイルを用いた場合、潤い感が満足に得られ難く、高温下において発汗しやすいために経時安定性が良好でないといった問題点があった。
【0006】
また、上記問題点に加え、ここ最近、油性固形化粧料の使用感に対する要求品質が変化し、硬さを感じるツルツルとした軽い使用感よりも、ソフトな肌あたりで密着感を感じる使用感が好まれるようになってきた。
【0007】
しかし、従来のワックスと油剤の組み合わせにより成型された油性固形化粧料では、ワックスの結晶性が高いため、室温時と高温時の硬度に大きな差があり、硬さを感じる油性固形化粧料となっていた。さらに、硬さを感じることを低減させるために、ワックスの配合量を極力少量配合とすることが考えられるが、この手法では、ソフトな肌あたりを得られる反面、連用使用により折れや、形状保持性不良、経時で発汗が発生するなどの経時安定性において満足のいく油性固形化粧料を得ることができなかった。
【特許文献1】特許第2519469号公報
【特許文献2】特許第3073869号公報
【特許文献3】特公平7−100645号公報
【特許文献4】特開平7−187947号公報
【特許文献5】特開2002−53420号公報
【特許文献6】特許第2960658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前述した問題点の解消のみならず、油性固形化粧料に対する新たな要求品質、すなわち、塗布時の伸び広がりが良く、ソフトな肌あたりを有するとともに、化粧膜のツヤ、潤い感に優れ、形状保持性、経時安定性が良好である等の品質要求を満たす油性固形化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭化水素ワックスと、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルとを組み合わせ配合することにより、結晶性の低いソフトなゲルを形成させることができ、塗布時の滑らかさ、ソフトな肌あたり、ツヤ、潤い感が得られことを見出した。また、これに更に無水ケイ酸を配合することにより、前記ゲル構造を壊すことなく、油性成分の保持力を向上させることができ、発汗現象が生じにくく、形状保持性および経時安定性が良好である油性固形化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)炭化水素ワックス
(b)グリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル置換度が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル
(c)無水ケイ酸
を含有することを特徴とする油性固形化粧料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性固形化粧料は、塗布時の滑らかさに優れるとともに、ソフトな肌あたりといった使用性や、化粧膜のツヤ、潤い感の持続に優れ、形状保持性および経時安定性も良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、成分(a)として用いられる炭化水素ワックスの例としては、パラフィンワックス、セレシンワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられ、さらにこの中でも合成炭化水素ワックスである、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。このエチレン・プロピレンコポリマーは分子量が500〜700の範囲にあるものが特に好ましく、また、その融点が80〜110℃の範囲のものが形状保持性の観点より特に好ましい。
【0013】
このようなエチレン・プロピレンコポリマーの市販品としては、ペトロライトEP−700(Baker Petrolite社製)等が例示でき、ポリエチレンワックスの市販品としては、PERFORMALENE500、PERFORMALENE655、PERFORMALENE725、PERFORMALENE850(Baker Petrolite社製)等が例示でき、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、CIREBELLE108(CIREBELLE社製)等が例示できる。
【0014】
本発明の油性固形化粧料における成分(a)の含有量は、全組成中、0.1〜20質量%(以下、単に「%」と記す)が好ましく、特に、2〜15%がより好ましい。この範囲で含有すると、使用感、経時安定性が良好で、ツヤに優れるとともに、形状保持性がより向上するものとなる。
【0015】
また、本発明の成分(b)は、グリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル置換度が65%以上の室温で液状であるポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0016】
このポリグリセリン脂肪酸エステルにおいてポリグリセリンを構成するグリセリンの重合度は、上記のように7〜11であるが、このうち10のもの(デカグリセリン)が好ましい。また、このポリグリセリンは、重合して環を形成していても良いが、好ましくは、鎖状にグリセリンが重合したものである。
【0017】
さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、上記のように炭素数16〜20の分岐脂肪酸であるが、この中でも植物より抽出して得られる炭素数18のイソステアリン酸がより好ましい。
【0018】
またポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル置換度は、上記のように65%以上であり、75%以上が好ましい。なお本発明において、エステル置換度とは、ポリグリセリンのエステル化可能な全水酸基のうち、脂肪酸とエステル化している水酸基の比率をいう。
【0019】
上記のようなポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、NIKKOL Decaglyn 10−IS(日光ケミカルズ社製)、S−フェイス IS−1009P(坂本薬品工業社製)等が例示でき、これらを使用することができる。
【0020】
本発明の油性固形化粧料における成分(b)の含有量は、0.1〜50%が好ましく、特に、1〜35%がより好ましい。この範囲で含有すると、使用感、経時安定性が良好で、ツヤに優れるものとなる。
【0021】
更に、本発明の油性固形化粧料において成分(c)として使用される無水ケイ酸は、化粧品一般に使用されるものであり、無定形構造のもの、疎水化処理したもの、あるいは結晶構造を有するものの何れであっても良い。この無水ケイ酸のうち、好ましいものとしては、比表面積が100m/g以上のものを挙げることができる。
【0022】
このような無水ケイ酸の市販品としては,AEROSIL200、AEROSIL300、AEROSIL380S、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R976S(日本AEROSIL社製)等が例示できる。
【0023】
本発明の油性固形化粧料における成分(c)の含有量は、0.1〜5%が好ましく、特に、0.5〜3%がより好ましい。この範囲で含有すると、使用感、経時安定性が良好で、ツヤに優れるものとなる。
【0024】
本発明の油性固形化粧料の調製は、例えば、成分(a)及び成分(b)を、110〜120℃程度にて加熱溶解後、成分(c)を加え均一に混合する。更に加温し、脱泡後、型に流し込み充填し、冷却して成型すればよい。
【0025】
また、本発明の油性固形化粧料には、上記の成分(a)〜(c)以外に、目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、適当な任意成分を配合することができる。このような任意成分の例としては、モイスチャー効果を付与するための油性成分、感触調整や着色等を付与するための粉体、顔料分散性や化粧持ち効果を付与するための界面活性剤、繊維、紫外線吸収剤、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等の通常化粧品に配合される他の成分を挙げることができる。
【0026】
上記任意成分のうち、油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0027】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、リンゴ酸ジイソステアリル、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、ホホバ油、ロジン酸ペンタエリスリット等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0028】
また、粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。
【0029】
具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素、酸化チタン被覆ガラス末等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0030】
更に、界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
この界面活性剤のうち、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等が挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0034】
更にまた、繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられる。また、これらの繊維は本発明の効果を妨げない範囲で一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等を挙げることができる。
【0036】
一方、本発明の油性固形化粧料のモイスチャー効果や感触を調整する目的のために配合する成分としては、例えば水溶性高分子、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチンや水性成分等が挙げられる。
【0037】
このうち、水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー等の合成系のものを挙げることができる。
【0038】
また、水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
【0039】
更に酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばp−オキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0040】
以上説明した本発明の油性固形化粧料は、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、頭髪化粧料等とすることができ、目的に応じて種々の形状、製品形態とすることができる。形状としては、スティック状、皿状、ペンシル状等が挙げられ、製品形態としては、口紅、リップグロス、リップクリーム、ファンデーション、頬紅、アイカラー、アイライナー、アイブロウ、アイクリーム、ヘアワックスなどが挙げられる。特に、口唇化粧料とすると効果が顕著に現れ好ましい。
【0041】
なお、本発明の油性固形化粧料は、針入荷重を、金皿に流し込み成型し、レオメーター(レオテック社製)(直径1.5mm、2cm/min)を用いて測定した時、45℃における針入荷重値と35℃における針入荷重値との差が75g以下であることが望ましい。このような条件を満たすことにより、特にソフトな肌あたりの効果が顕著に現れる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0043】
実施例1
スティック状口紅:
表1に示す処方により、本発明品1〜11及び比較品1〜4のスティック状口紅を製造した。得られた各スティック状口紅について、後記官能評価基準により、使用感(伸び広がり、ソフトな肌あたり)、化粧膜のツヤ、潤い感を評価した。また、高温に口紅を保管し、形状保持性、経時安定性を評価した。その結果もあわせて表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
*1:ペトロライト EP−700(Baker Petrolite社製)
*2:PERFORMALENE500(Baker Petrolite社製)
*3:CIREBELLE108(CIREBELLE社製)
*4:S−フェイス IS−1009P(坂本薬品工業社製)
*5:グリセリンの重合度が10で、ベヘン酸のエステル置換度が90%以上である
ポリグリセン脂肪酸エステル
*6:グリセリンの重合度が4で、イソステアリン酸のエステル置換度が80%であ
るポリグリセン脂肪酸エステル
*7:AEROSIL R976S(日本AEROSIL社製)
*8:パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩5%処理
*9:ジメチルポリシロキサン3%処理
【0046】
(製造方法)
A.成分(1)〜(13)を110〜120℃にて加熱溶解後、成分(14)〜(20)を加えて、均一混合する。
B.Aに成分(21)〜(24)を加えて均一に混合する。
C.Bに成分(25)を加えて加熱し、脱泡後、型に流し込み充填し、冷却して成型する。
【0047】
(評価)
1.官能評価
(イ)の伸び広がり、(ロ)のソフトな肌あたり(ハ)の化粧膜のツヤ、(ニ)の潤い感について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、各試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0048】
(絶対評価)
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良 い
4 :やや良い
3 :普 通
2 :やや悪い
1 :悪 い
0 :非常に悪い
【0049】
(4段階判定基準)
(評点平均値) : (判定)
5点を超える : 非常に良好(◎)
3点を超えて5点以下 : 良好(○)
1点を超えて3点以下 : やや不良(△)
1点以下 : 不良(×)
【0050】
2.形状保持性
口紅を容器から繰り出して、50℃の恒温槽に、横置きで1週間設置し、1週間後の状態を観察して、変化のないものから折れてしまうものまで、◎〜×の4段階で判定した。
【0051】
(状態) :(判定)
変化なし : ◎
わずかに曲っているが気にならない: ○
曲っていて使用しずらい : △
かなり曲っている又は折れている :×
【0052】
3.経時安定性
50℃の恒温槽に、1ヶ月設置し、1ヶ月後の状態を観察して、変化のないものから発汗しているものまで、◎〜×の4段階で判定した。
【0053】
(状態) :(判定)
変化なし : ◎
わずかに発汗している : ○
発汗している : △
著しい発汗が見られる : ×
【0054】
表1から明らかなごとく、本発明品のスティック状口紅は、形状保持性、経時安定性に優れ、しかも塗布時の使用感(伸び広がり、ソフトな肌あたり)、化粧膜のツヤ、潤い感が良好であった。
【0055】
これに対して成分(a)が配合されていない比較品1では、特に経時安定性の点で満足するものが得られず、成分(b)の代わりにデカグリセリンベヘン酸エステル、テトラグリセリンイソステアリン酸エステルを配合した比較品2、3では、潤い感の点で満足するものが得られず、成分(c)が配合されていない比較品4では、特に経時安定性の点で満足するものが得られなかった。
【0056】
実施例2
皿状アイシャドウ:
(成分) (%)
1.エチレン・プロピレンコポリマー*1 2
2.カルナウバワックス 2
3.セレシンワックス 2
4.デキストリン脂肪酸エステル 1
5.無水ケイ酸*10 1
6.ポリグリセリン脂肪酸エステル*11 20
7.ジカプリン酸プロピレングリコール 10
8.テトライソステアリン酸ジグリセリル 残量
9.紫外線吸収剤(オキシベンゾン) 0.1
10.酸化防止剤(ビタミンE) 0.1
11.雲母チタン 10
12.酸化鉄処理雲母 10
13.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
エポキシ積層末 3
14.酸化チタン被覆ガラス末 3
15.赤色226号 0.5
16.赤色酸化鉄 2
*10:AEROSIL380S(日本AEROSIL社製)
*11:グリセリンの重合度が10で、イソステアリン酸のエステル置換度
が80%以上であるポリグリセン脂肪酸エステル
【0057】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を均一に加熱混合溶解した後、成分(11)〜(16)を加え、均一に混合する。
B.Aを充填して製品とする。
本実施例で得られた皿状アイシャドウは、滑らかな使用感であるとともに、化粧膜のツヤに優れ、発汗等もなく経時安定性が良好なものであった。
【0058】
実施例3
リップクリーム:
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス*12 5
2.オゾケライトワックス 5
3.フィッシャートロプシュワックス*3 5
4.ミツロウ 3
5.カルナウバワックス 3
6.ポリグリセリン脂肪酸エステル*13 20
7.ワセリン 10
8.紫外線吸収剤(シア脂) 0.1
9.酸化防止剤(ビタミンE) 0.1
10.トリオクタン酸グリセリル 残量
11.無水ケイ酸*14 0.5
*12:PERFORMALENE655(Baker Petrolit
e社製)
*13:グリセリンの重合度が10で、イソパルミチン酸のエステル置換度
が70%以上であるポリグリセン脂肪酸エステル
*14:AEROSIL R972(日本AEROSIL社製)
【0059】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を均一に加熱混合溶解する。成分(11)を加え、均一に混合する。
B.Aを充填成型して製品とする。
本実施例で得られたリップクリームは、ソフトな肌あたりで、滑らかな使用感であるとともに、潤い感に優れ、形状保持性の良好なものであった。
【0060】
実施例4
ペンシルアイライナー:
(成分) (%)
1.エチレン・プロピレンコポリマー*1 5
2.ステアリン酸 15
3.モクロウ 5
4.ミツロウ 2
5.カルナウバワックス 2
6.ポリグリセリン脂肪酸エステル*4 10
7.スクワラン 残量
8.紫外線吸収剤(シア脂) 0.1
9.酸化防止剤(ビタミンE) 0.1
10.黒色酸化鉄 40
11.黒色酸化鉄被覆雲母チタン 5
12.無水ケイ酸*15 1
*15:AEROSIL300(日本AEROSIL社製)
【0061】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を均一に加熱混合溶解する。
B.Aに成分(10)〜(12)を添加し、均一に分散する。
C.Bを充填成型して製品とする。
本実施例で得られたペンシルアイライナーは、ソフトな肌あたりで、滑らかな使用感であるとともに、ツヤに優れ、経時安定性が良好なものであった。
【0062】
実施例5
油性固形ファンデーション:
(成分) (%)
1.キャンデリラワックス 5
2.マイクロクリスタリンワックス 10
3.セレシン 2
4.ポリグリセリン脂肪酸エステル*11 10
5.揮発性シリコーン 15
6.シリコーン樹脂*16 3
7.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ
(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデジル) 2
8.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセライド 残量
9.ステアリル変性アクリレートシリコーン*17 10
10.微粒子酸化チタン 1
11.微粒子酸化亜鉛 1
12.酸化チタン 8
13.硫酸バリウム 2
14.セリサイト 15
15.ベンガラ 1.0
16.黄色酸化鉄 2.0
17.黒色酸化鉄 0.5
18.無水ケイ酸*18 1.5
19.アロエエキス 適量
20.香料 適量
*16:シリコン KF−7312J(信越化学工業社製)
*17:KP−561(信越化学工業社製)
*18:AEROSIL200(日本AEROSIL社製)
【0063】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を100℃にて均一溶解する。
B.Aに成分(10)〜(20)を加え均一に分散する。
C.Bを金皿に流し込み、冷却固化してファンデーションを得た。
本実施例で得られた油性固形ファンデーションは、ソフトな肌あたりで、滑らかな使用感であるとともに、ツヤに優れ、経時安定性が良好なものであった。
【0064】
実施例6
油性固形アイシャドウ:
(成分) (%)
1.マイクロクリスタリンワックス 5
2.セレシンワックス 10
3.トリイソステアリン酸ジグリセリル 4
4.ワセリン 5
5.シリコーン樹脂*19 2
6.揮発性シリコーン 5
7.ポリグリセリン脂肪酸エステル*4 5
8.スクワラン 残量
9.カプリン酸プロピレングリコール 15
10.ステアリル変性アクリレートシリコーン*17 15
11.球状ナイロン粉末 5
12.シリコーン処理タルク 10
13.赤色202号 0.5
14.青色404号 1
15.シリコーン処理酸化チタン 2
16.カルボキシビニルポリマー 2
17.無水ケイ酸*15 0.5
18.コラーゲン水溶液 適量
19.香料 適量
*19:シリコン KF−9021(信越化学工業社製)
【0065】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を100℃にて均一溶解する。
B.Aに成分(11)〜(19)を加え、均一に混合分散する。
C.Bを金皿に流し込み、冷却固化して油性アイシャドウを得た。
本実施例で得られた油性固形アイカラーは、ソフトな肌あたりで、滑らかな使用感であるとともに、ツヤに優れ、経時安定性が良好なものであった。
【0066】
実施例7
ヘアワックス:
(成分) (%)
1.エチレン・プロピレンコポリマー*1 10
2.モクロウ 20
3.ラノリン 10
4.ミツロウ 10
5.ジオクタン酸ネオペンチルグリコール 5
6.ポリグリセリン脂肪酸エステル*11 5
7.ワセリン 5
8.紫外線吸収剤(シア脂) 0.1
9.酸化防止剤(ビタミンE) 0.1
10.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
11.無水ケイ酸*7 1
【0067】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を均一に加熱混合溶解する。成分(11)を加え、均一に混合する。
B.Aを充填成型して製品とする。
本実施例で得られたヘアワックスは、髪にソフトで、滑らかな使用感であるとともに、潤い感に優れ、形状保持性の良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)炭化水素ワックス
(b)グリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル置換度が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル
(c)無水ケイ酸
を含有することを特徴とする油性固形化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)の配合量が0.1〜20質量%、成分(b)の配合量が0.1〜50質量%、成分(c)の配合量が0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
油性固形化粧料が口唇用化粧料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性固形化粧料。
【請求項4】
炭化水素ワックスが、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックスまたはフィッシャートロプシュワックスから選ばれる1種または2種以上あることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油性固形化粧料。

【国際公開番号】WO2005/039516
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514911(P2005−514911)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013420
【国際出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】