説明

油性固形状毛髪化粧料

【課題】使用時指で取り易く、のび広がりに優れ、使用中および使用後にべたつきがなく、不自然なツヤ感のないマットな仕上がりの固形状毛髪化粧料で、優れた整髪力を有し、容器に充填する際の流動性が良好で、高温安定性にも優れる整髪料を提供。
【解決手段】次の成分(a)〜(d);(a)油膨潤性粘土鉱物(b)特定の界面活性剤、(c)25℃においてペースト状の炭化水素油30〜70質量%、(d)融点が35〜120℃の油剤を含有することを特徴とする油性固形状毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は整髪用の油性固形状毛髪化粧料に関し、さらに詳細には、適度な硬さで、使用時指で取り易く、のび広がりに優れ、使用中および使用後に油性成分特有のべたつきがなく、不自然なツヤ感のないマットな仕上がりで、優れた整髪力を有しながら、高温下でも排液することなく安定で、容器に溶融充填する際の流動性にも優れる油性固形状毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整髪用の毛髪化粧料としては、ヘアリキッド、ヘアミルク、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアチック、ポマード、ブローローション、ヘアフォーム、ヘアスプレー等、種々の形態のものが使用されてきた。これらに配合される整髪成分としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性等の各種の被膜形成性ポリマーや油性成分等が用いられてきており、更に、毛髪のセット保持性や仕上がりの風合いを考慮してアニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーを組み合わせたものや(例えば、特許文献1参照)、両性ポリマーと陽イオンポリマー(カチオン性ポリマー)を組み合わせたもの(例えば、特許文献2参照)、また、アクリル系樹脂にソルビット脂肪酸エステル酸化エチレン付加物等の特定の可塑剤を配合するもの等も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、整髪成分に油性成分を用いたものとしては、エステル油とトリグリセライドを組み合わせて配合したもの等(例えば、特許文献4参照)や、油膨潤性粘土鉱物と液状油と各種粉体やロウ類等を組み合わせたもの(例えば、特許文献5〜7参照)等も提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−139734号公報
【特許文献2】特開昭56−92182号公報
【特許文献3】特開昭53−99338号公報
【特許文献4】特開平10−310510号公報
【特許文献5】特開2003−26549号公報
【特許文献6】特開2003−26550号公報
【特許文献7】特開2003−26551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、整髪成分として被膜形成性ポリマーを用いた整髪料は、整髪保持力は高いものの、再整髪性(髪型が崩れた際の元の髪型への戻し易さ)が悪い、使用後にごわつきを感じる、フレーキング(被膜形成性ポリマーが割れてフケ状の細かな破砕物となり頭髪の外観を損なう現象)等の問題を生じる場合があった。
【0005】
一方、整髪成分に液状油やペースト油のような油性成分を用いたものは、再整髪性は優れるものの、使用時にべたついたり、或いは油性成分特有の光沢(テカリ)が生じ、自然な仕上がりになりにくい、仕上がりが重い、整髪保持効果が弱い等の欠点を有する場合もあった。べたつきやテカリ、整髪保持効果の弱さは、油性成分に液状油を多量に配合した場合に生じることが多く、特にダメージのある毛髪ではより顕著に現われる傾向がある。
そこで、べたつきやテカリを抑え、整髪保持効果を補い、高温安定性を上げるために水を配合せず、固形状油を大量に配合し、系全体を固化させ油性固形状の整髪料とする場合もあるが、系が硬くなり過ぎ使用時に指で取ることが難しくなったり、塗布時ののびが悪く一層重い感触になる場合があった。更に、製造時や充填時等100℃前後に溶解した場合の系の粘度も高く、製造や充填が容易ではなくなってしまう傾向があった。溶解時の系の粘度を下げ充填し易くするためや、使用時、指に取れ易くするために液状油を配合する場合もあるが、夏の直射日光下や車中に放置した場合等、高温下で排液したり、その後再固化した際に化粧料に亀裂や収縮、気泡が発生してしまったりする等、系の安定性や外観を損なう場合があった。
【0006】
しかし、油性固形状整髪料は、乳液状やクリーム状もしくはゲル状の整髪料と比較して整髪保持効果が高く、また、被膜形成性ポリマーに整髪保持効果を依存しないことから皮膜形成後の皮膜が割れることによるフレーキングの現象も発生しない。また、水を配合しないことから、水含有の整髪料独特のツヤ感がなく、マット感を強調した演出をするためには油性固形状の整髪料とする必要があった。
このため、指等で取りやすい適度な硬さでありながら、使用中および使用後に油性成分特有のべたつきがなく、不自然なツヤ感のないマットな仕上がりで、整髪料としての良好な整髪力や整髪保持力、再整髪性を有し、また、製造時や充填時等、溶融時には良好な流動性を有し、且つ、高温安定性にも優れる油性固形状毛髪化粧料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、油膨潤性粘土鉱物と特定の構造を有する界面活性剤、特定量のペースト状炭化水素油、特定の融点を有する油剤とを組み合わせることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(a)〜(d);
(a)油膨潤性粘土鉱物
(b)下記構造式(1)もしくは(2)で表される界面活性剤
【化3】

(式中、Rは炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、nは25〜55の整数である)
【化4】

(式中、Rは炭素数18の直鎖もしくは分岐の飽和のアルキル基であり、mは8〜150の整数である)
(c)25℃においてペースト状の炭化水素油 30〜70質量%
(d)融点が35〜120℃の油剤
を含有する油性固形状毛髪化粧料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、更に成分(e)として、成分(a)の油膨潤性粘土鉱物以外の粉体を含有することを特徴とする油性固形状毛髪化粧料を提供するものである。
【0010】
また、本発明は容器に溶融充填してなることを特徴とする油性固形状毛髪化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性固形状毛髪化粧料は、適度な硬さを有することにより指で取りやすく、毛髪への塗布時にはのび広がりが良く手や毛髪がべたつくことなく均一に塗布することができ、不自然なツヤ感もなくマットな仕上がりでありながら、整髪料としての優れた整髪力と整髪保持力を有し、髪型が崩れた時にも元の髪型に戻し易い再整髪性に優れる。また、製造充填時(溶融時)の流動性に優れ、良好な充填性を有し、さらに、夏の直射日光下等、高温下においても安定性に優れ、排液したり、その後再冷却され固化した際に化粧料に亀裂や収縮、気泡等が発生することもない優れた品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳述する。
本発明の油性固形状毛髪化粧料において「油性」とは、連続相が油性成分で、水の含有量が5%未満のものを言う。また、「固形状」とは、室温(1〜30℃)で固まっていて全く流動性のない状態を言う。
【0013】
本発明に用いられる成分(a)の油膨潤性粘土鉱物は、べたつきや不自然なツヤのない仕上がりにし、高温下での安定性確保(排液防止)の目的で配合される。成分(a)の油膨潤性粘土鉱物としては、化粧料に一般に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することが可能である。水膨潤性粘土鉱物をアルキル四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤でイオン交換して得られるものであり、具体的には、例えば、カチオン系界面活性剤としてベンジルジメチルステアリルアンモニウムイオンで交換されたものや、ジメチルジステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの等が挙げられる。市販品としては、例えば、BENTONE 27 BC、BENTONE 38 BC、BENTONE 27V BC、BENTONE 38V BC(いずれもエレメンティス社製)等がある。成分(a)は、必要に応じて、これらの1種または2種以上を用いることができる。
これらを用いることで、使用中および使用後に油性成分特有のべたつきがなく、不自然なツヤ感のない仕上がりで、また、高温下での排液や、排液後再冷却され固化した際、化粧料に亀裂や収縮、気泡等が発生することもない高温安定性に優れたものが得られる。
【0014】
本発明における成分(a)の配合量は、特に限定されないが、0.5〜10質量%(以下、単に「%」と略記する)が好ましく、4〜10%がべたつきや不自然なツヤ感を抑え、高温安定性が良好なものを得る上でより好ましい。
【0015】
本発明で用いられる成分(b)の界面活性剤は、下記構造式(1)または(2)で表されるポリエチレングリコールの脂肪酸エステルで、使用中および仕上がり後のべたつきの軽減、製造充填時(溶融時)の流動性の向上のために、また、洗髪時に落とし易くする(洗髪性向上)ために配合される。
【0016】
【化5】

【0017】
式(1)において、Rは炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、nは25〜55の整数であるが、Rがラウリル基、オレイル基、ステアリル基、イソステアリル基から選ばれるものが好ましく、より好ましくは、Rがステアリル基で、nが40〜55のものが、べたつきがなく使用感に優れ、製造充填時(溶融時)の流動性が良好な粘度のものが得られ好ましい。
市販品としては、たとえばNIKKOL MYS−40V、NIKKOL MYS−55V(いずれも日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0018】
【化6】

【0019】
式(2)において、Rは炭素数18の直鎖もしくは分岐の飽和のアルキル基であり、mは8〜150の整数である。好ましくは、Rがステアリル基、mが150のものがべたつきがなく使用感に優れ、製造充填時(溶融時)の流動性が良好な粘度のものが得られ好ましい。
市販品としては、例えばNIKKOL CDS−6000P(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明における成分(b)の配合量は、特に限定されないが、0.1〜20%が好ましく、4〜15%が使用中及び仕上がり後のべたつきがなく、製造充填時(溶融時)の流動性が良好なものを得る上でより好ましい。
【0021】
本発明で用いられる成分(c)の25℃においてペースト状の炭化水素油は、系の硬さ、すなわち指で取りやすい適度な硬さに調節する上で重要な成分であると共に、塗布時の毛髪上でのスムーズなのび広がりや、毛髪へのしっとり感の付与、整髪保持力や再整髪性を発現する目的で配合される。
成分(c)の25℃においてペースト状の炭化水素油としては、ワセリン、パラフィン等が挙げられる。
市販品としては、例えば、SNOW WHITE SPECIAL(ソネボーン社製)、PARACERA 256(PARAMELT社製)等が挙げられる。
成分(c)は、必要に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明の毛髪化粧料において、成分(c)の配合量は、毛髪化粧料中30〜70%であり、より優れた整髪保持力や再整髪性、塗布時ののび広がりの良さ、べたつきのなさ等を得る上で40〜60%がより好ましい。30%より少ないと十分な整髪保持力が得られず、逆に70%を超えるとべたつきや重い感触を生じる場合がある。
【0023】
本発明で用いられる成分(d)の融点が35℃〜120℃の油剤は、整髪力や高温安定性の向上、マットな仕上がりを得る目的で配合される。成分(d)としては、具体的には固形パラフィンワックス(融点35℃以上)、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、ベヘニルアルコール、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、フィッシャートロプシュワックス等を例示することができ、特に、ポリエチレンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスが優れた整髪保持力を得る上で好ましい。成分(d)の市販品としてはPERFORMALENE500(ニューフェーズテクノロジー社製)、合成セレシンJNP−81(日本ナチュラルプロダクツ社製)、ムルチワックスW−445(ソネボーン社製)、CIREBELLE505、同305、同303(以上、シイベルヘグナー社製)が挙げられる。
成分(d)は、1種または2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0024】
本発明で用いられる成分(d)の配合量は、上記成分(a)〜(c)や、後述する成分(e)や任意成分とのバランスにより適宜決められるものであり、特に限定されないが、0.1〜15%が好ましく、4〜8%がより好ましい。この範囲であれば、不自然なツヤ感がなくマットな仕上がりになり、高温安定性と整髪性にも優れた良好なものが得られる。
【0025】
本発明では、更に成分(e)として、上記成分(a)の油膨潤性粘土鉱物以外の粉体を配合することができる。成分(e)の粉体を配合することによって、よりべたつきがなく、油性成分由来の不自然なツヤの無いマットな仕上がりとすることができる。
成分(e)の粉体としては、上記成分(a)以外で通常化粧料に使用される粉体であれば球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等を用いることができる。
具体的に例示すれば、タルク、マイカ、合成マイカ、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0026】
本発明における成分(e)の配合量は、特に限定されないが、0〜40%が好ましく、10〜35%がより好ましい。この範囲であれば、上記成分(a)〜(d)を組合せることにより得られる、べたつきや不自然なツヤのない仕上がりにする効果をより一層増すことができ好ましい。
【0027】
本発明の油性固形状毛髪化粧料組成物には、上記成分(a)〜(e)の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、例えば、液状油、成分(d)の炭化水素油以外のペースト状油、成分(e)以外の固形状油、界面活性剤、水溶性ポリマー、油溶性樹脂、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、植物エキス、各種薬剤等、通常化粧料に配合される成分を配合することができる。
【0028】
液状油、成分(c)以外のペースト状油、成分(d)以外の固形状油としては通常化粧品用に使用される常温液状、ペースト状、固形状の油性成分であれば特に制限されず、具体的にはスクワラン、スクワレン、流動パラフィン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、カプリン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸2−エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油、ヤシ油、オリーブ油、米胚芽油、米ヌカ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、オリーブ油、アボカド油、サフラワー油、サンフラワー油、ホホバ油等の植物油脂、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロデカン等のフッ素系油、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等を例示することができる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、PABA系としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等が挙げられ、ケイ皮酸系としては、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等が挙げられ、サリチル酸系としては、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、その他、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0030】
保湿効果や感触を調整する目的としては、例えば水溶性高分子、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチンや水性成分等が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー等の合成系のものを挙げることができる。
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばp−オキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0031】
本発明の油性固形状毛髪化粧料は、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアチック、ポマード、ヘアカラー等の整髪用製品または整髪機能を有する他の毛髪用製品に用いることができる。
また、その製造方法は通常の油性固形状毛髪化粧料を製造する方法で製造可能であり、特に限定はされないが、例えば、成分(c)を加熱溶解し成分(a)を分散させた後に、加熱溶解した成分(b)および(d)を加え分散させ、これを加熱溶融した状態で軟膏用容器等適当な容器に流し込み充填(溶融充填)した後、室温まで冷却して本発明の油性固形状毛髪化粧料とすることができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定
されるものではない。
【0033】
実施例1(本発明品1〜8及び比較品1〜7):整髪料
下記表1および表2に示す組成および製造方法にて整髪料を調製し、得られた整髪料の各試料について、(a)指への取れ易さ、(b)整髪力および整髪持続性、(c)使用感(のび広がりの良さ)、(d)使用感(使用中・使用後の手や髪の毛のべたつきのなさ)、(e)マットな仕上がり(不自然なツヤ感のなさ)、(f)再整髪性、(g)充填のし易さ(90℃加熱溶融時の流動性)、(h)高温安定性(50℃に1日静置後の排液の有無)を下記評価方法にて評価した。その結果も表1および表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
注1:コスモール168ARNV(日清オイリオ社製)
注2:BENTONE
38V(エレメンティスジャパン社製)
注3:PERFORMALENE
500(ニューフェーズテクノロジー社製)
注4:ムルチワックス W−445(ソネボーン社製)
注5:合成セレシン JNP−81(日本ナチュラルプロダクツ社製)
注6:NIKKOL MYS−40V(日本サーファクタント工業社製)
注7:NIKKOL BC−20TX(日本サーファクタント工業社製)
注8:NIKKOL HCO−10(日本サーファクタント工業社製)
【0036】
【表2】

【0037】
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)を60℃にて溶解し、成分(4)を分散させたのちに、成分(5)と(12)を加え、60℃で膨潤する。
B:成分(6)〜(11)を90℃に加熱溶解し、Aに添加し、90℃にて分散させる。
C:Aに(13)を均一に分散させた後、広口アルミ容器(直径7cm、深さ3cm)に充填し、室温にて12時間冷却して整髪料を得た。
【0038】
<(a)〜(f)の評価方法>
(a)指への取れ易さ、
(b)整髪力および整髪持続性
(c)使用感(のび広がりの良さ)
(d)使用感(使用中・使用後の手や髪の毛のべたつきのなさ)
(e)マットな仕上がり(不自然なツヤ感のなさ)
(f)再整髪性
専門評価者5名により、人毛ウィッグ(市販の通常タイプのシャンプーとリンスにて施術後、乾燥)に、本発明品1〜8および比較品1〜7の試料1gをそれぞれ塗布し、(a)指への取れ易さ、(b)整髪力および整髪持続性、(c)使用感(のび広がりの良さ)、(d)使用感(使用中・使用後の手や髪の毛のべたつきのなさ)、(e)マットな仕上がり(不自然なツヤ感のなさ)について下記の5段階評価基準(A)を用いて評価した。
その後、この人毛ウィッグを30℃、湿度80%で1時間静置後、(f)再整髪性について、(a)〜(e)同様、下記の5段階評価基準(A)を用いて評価した。
さらに(a)〜(f)について、それぞれの評点の平均値を下記判定基準(B)を用いて判定した。
【0039】
(A)5段階評価基準
(評価):(評価)
5点 :非常に良好
4点 :良好
3点 :普通
2点 :やや不良
1点 :非常に不良
(B)判定基準
(判定)(評点)
◎ :平均点4.5点以上
○ :平均点3.5点以上4.5点未満
△ :平均点2.5点以上3.5点未満
× :平均点1.5点以上2.5点未満
×× :平均点1.5点未満
− :製造できず評価不能で判定できず
【0040】
<(g)の評価方法>
(g)充填のし易さ(90℃加熱溶融時の流動性)
本発明品1〜8および比較品1〜7の試料(直径7cm、深さ3cmの広口アルミ容器に75g充填すると容器口から約7mm下の高さまで充填される)を容器ごと90℃に加熱溶解し、容器を傾けた際の試料の流動性を(g)充填のし易さとして、下記判定基準(C)を用いて判定した。
【0041】
(C)判定基準
(判定):(評価)
◎ :十分に流動性があり、容器を15°傾けると試料が連続的に流れる。
○ :流動性があり、容器を30°傾けると試料が連続的に流れる。
△ :容器を45°傾けるとゆっくりと試料が動き出し不連続的に塊で垂れ落ちる。
× :容器を45°に15秒傾けても試料が流れ出さない(垂れ落ちない)。
− :製造できず評価不能で判定できず。
【0042】
<(h)の評価方法>
(h)高温安定性(50℃に1日静置後の排液の有無)
更に、(h)高温安定性として、本発明品1〜8および比較品1〜7の各試料を50℃にて24時間静置した後、バルクの状態の変化を目視観察し、下記判定基準(D)を用いて判定した。
(D)判定基準
(判定):(評価)
◎ :室温静置品と比較して、差が確認されない。
○ :バルク表面にツヤが確認できるが、排液・発汗は確認されない。
△ :バルク表面にツヤがあり、容器壁面に沿ってごく薄い液体の層が確認できる。
× :バルク表面の一部に排液・発汗が確認できる。
×× :バルク表面が液体で覆われている状況(排液)が確認できる。
− :製造できず評価不能で判定できず。
【0043】
表1の結果から明らかなように、本発明品1〜8は全ての項目において良好な結果を示し、指で取り易く、のび広がりに優れ、使用中および使用後にべたつきがなく、不自然なツヤ感のないマットな仕上がりで、優れた整髪力を有しながら、高温下でも排液することなく安定で、加熱溶融時の流動性にも優れる油性固形状の整髪料として優れたものであることが実証された。
これに対して、成分(a)の油膨潤性粘土鉱物が配合されていない比較品1ではワセリンによる不自然なツヤ感がありマットな仕上がりにはならず、また高温下における排液がひどく、品質面で劣るものであった。
成分(b)の代わりに別の構造の界面活性剤を用いた比較品2及び3は、のび広がりやべたつき等使用感において満足するものが得られず、また、充填し易さの点でも不満足なものであった。
成分(c)の代わりにエステル系のペースト油を用いた比較品4では、成分(a)の油膨潤性粘土鉱物やその他成分を分散させることができず、油性固形状の整髪料を調製することができなかった。また、成分(c)のペースト状の炭化水素油の配合量を下げ(10%配合)、炭化水素系の液状油を40%配合した比較品5では、液状油による不自然なツヤ感があり、整髪力およびその持続性、さらには再整髪性も劣り、高温安定性も悪いものであった。
成分(d)が配合されていない比較品6は使用感、高温安定性に劣るもので、整髪料としての整髪力および整髪持続性が著しく悪いものであった。
また成分(c)の配合量が70%より多く、成分(e)も含まない比較品7においてはワセリンの不自然なツヤ感が出てしまい、マットな仕上がりにはならず、のび広がりやべたつき等の使用感において満足するものが得られなかった。
【0044】
実施例2(本発明品9及び比較品8〜9):整髪料
実施例1より、成分(a)〜(d)、若しくは、成分(a)〜(e)を配合することの優位性を確認することができたが、更に、充填のし易さについて、特にこれに影響すると考えられる成分(b)に着目し、下記表3に示す組成および製造方法にて整髪料を調製し、充填のし易さの指標として、(i)90℃における粘度を下記評価方法にて評価した。評価結果を表3に併せて示す。
【0045】
【表3】

【0046】
(製造方法)
成分(1)〜(3)を均一に分散させたのち、溶解した成分(4)〜(9)を加え、最後に成分(10)を添加し分散させた。
【0047】
<評価方法3>
(i)90℃における粘度
充填のし易さを確認する指標として、各試料を8号規格ビンに充填しバルク全体が90℃に均一に加熱溶融したものについて、ブルックフィールド型回転粘度計(ウォーターバスにて70℃以上に加温した4号ローター、60秒、6回転)を用いて粘度を測定した。
【0048】
表3の結果から明らかなように、成分(b)を用いた本発明品9は、充填のし易さの指標として確認した溶融状態の粘度値が低い良好なものであった。
【0049】
実施例3:整髪料(ヘアワックス)
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス (注9) 3.0
2.マイクロクリスタリンワックス (注4) 2.0
3.エチレン・プロピレンコポリマー (注10) 0.5
4.ワセリン 55.0
5.流動パラフィン 5.0
6.ジステアルジモニウムヘクトライト (注2) 4.5
7.ジプロピレングリコール 1.5
8.パラメトキシ安息香酸メチル 0.1
9.モノステアリン酸ポリエチレングリコール (注6) 5.0
10.セリサイト 3.0
11.黒酸化鉄 5.0
12.ポリメチルシルセスキオキサン (注11) 15.0
13.ジメチルポリシロキサン(10mPa・s)(注12) 0.1
14.1,2−ペンタンジオール 0.1
15.香料 0.2
【0050】
(注9):CIREBELLE 305(シイベルヘグナー社製)
(注10):ペトロライト EP−700(Baker Petrolite社製)
(注11):トスパール2000B*(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
(注12):シリコン KF−96(信越化学工業社製)
【0051】
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)、(9)を110℃で溶解する。
B:成分(4)〜(6)を60℃で混合し、成分(7)、(8)を添加し膨潤する。
C:BにA、成分(10)〜(15)を加え90℃にて均一に混合し、90℃にて軟膏用容器に充填し、室温で十分に冷却することによりヘアワックス整髪料を得た。
【0052】
以上のようにして得られた実施例3は、容器に溶融充填する際の流動性が良好で、使用中および使用後にべたつきがなく、不自然なツヤ感のないマットな仕上がりで、優れた整髪力を有し、高温安定性にも優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)油膨潤性粘土鉱物
(b)下記構造式(1)もしくは(2)で表される界面活性剤
【化1】

(式中、Rは炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、nは25〜55の整数である)
【化2】

(式中、Rは炭素数18の直鎖もしくは分岐の飽和のアルキル基であり、mは8〜150の整数である)
(c)25℃においてペースト状の炭化水素油 30〜70質量%
(d)融点が35〜120℃の油剤
を含有することを特徴とする油性固形状毛髪化粧料。
【請求項2】
さらに成分(e)として、前記成分(a)以外の粉体を含有することを特徴とする請求項1記載の油性固形状毛髪化粧料。
【請求項3】
容器に溶融充填してなることを特徴とする請求項1又は2記載の油性固形状毛髪化粧料。

【公開番号】特開2010−229071(P2010−229071A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77793(P2009−77793)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】