説明

油性固形状香料組成物

【課題】香りの質を変化させず、外観上のムラが無く、美麗な外観を有する油性固形状香料組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(a)〜(c);(a)香料を3〜30質量%、(b)25℃での動粘度が2mm/s以上1000mm/s未満である直鎖状のオルガノポリシロキサンを0.01〜5質量%、(c)固形油を含有することを特徴とする油性固形状香料組成物を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料と、特定の粘度の直鎖状オルガノポリシロキサンと、固形油とを含有する油性固形状香料組成物に関し、詳しくは、内部にまで存在するようなムラを解消した油性固形状香料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肌に塗布する香料組成物においては、香料とアルコールを主成分とする液状の香水、オーデコロンや、香料と粉体を主成分とするフレグランスパウダー、香料と油剤を主成分とする固形状の練り香水が知られている。固形化された練香水は、携帯に便利であるという特性を有し、皿流し込みタイプやスティックタイプのものが用いられている。
【0003】
香料組成物は、審美的な目的から外観の美麗さが重要であり、これを高める技術として、高粘度のオルガノポリシロキサンと香料を配合する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、固形状の香料組成物は、配合する香料と基材となる油との相溶性が悪く、固形状にした際に発汗し経時安定性上問題があるようなものや、外観上の美麗さを欠くことがあった。そこで、外観の透明性を上げて美麗にする技術が開発されており、特定の多価アルコールと石鹸、アルコキシレートコポリマー、エステル化合物を組み合わせて透明ゲルスティックにする技術(例えば、特許文献2参照)や揮発性テルペン炭化水素とアミノ酸系油ゲル化剤、香料、1,2−ブタジエンを組み合わせて外観の美麗さを上げる技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特許373345号公報
【特許文献2】特許2549963号公報
【特許文献3】特公平3−80025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高粘度のオルガノポリシロキサンと組み合わせる技術は高度な透明感と外観の美麗さを上げることはできるが液状の芳香剤組成物に関する技術であり、使用性の良い硬化物とするのは困難であった。また、様々な成分を組み合わせることで外観の透明性を上げて美麗に見せる技術が報告されているが、それぞれは透明性は上がるものの成型時にできるムラを解消することに関しては言及されていない。
【0006】
油性成分を固形油で固める油性固形組成物は、皿充填、スティック形状などに成型でき、安定性にもすぐれるものであるが、香料が多量に配合される練香水のような香料組成物では、組成物中に白色部位と半透明部位が混在し、著しく外観の美麗さを損なうムラを生じる場合がある。
表面のみに存在する斑模様のようなムラは、着色により目立たないようにすることも出来るが、香料組成物として体に塗布して使用することを考えると無着色又はわずかな着色をするにとどまり、目立たなくするのは困難である。他にも、得られた固形状香料組成物の表面をあぶることや充填条件を変更することで解消することが知られているが、それは表面上のムラに関してであり、結晶性の違いにより発生すると思われる内部まで存在するようなムラに関しては解消できなかったり、表面や組成物に熱をかけることで、香りに変質をきたす場合があった。このため、このような内部まで存在するようなムラを解消できる油性固形状香料組成物開発が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、25℃での動粘度が2mm/s以上1000mm/sの直鎖状のオルガノポリシロキサンを用いることにより香りを変質させること無く、ムラを解消し美麗なものを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は次の成分(a)〜(c);
(a)香料を3〜30質量%
(b)25℃での動粘度が2mm/s以上1000mm/s未満である直鎖状のオルガノポリシロキサンを0.01〜5質量%
(c)固形油
を含有することを特徴とする油性固形状香料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性固形状香料組成物は、香りを変質させること無く、内部にまで存在するようなムラを解消し美麗なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の油性固形状香料組成物の実施例1及び比較例1の外観を示す図面(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(a)の香料としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、天然香料、合成香料、又はこれらを組み合わせた調合香料等が挙げられ、目的に応じてこれらの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0012】
成分(a)の香料の香調としては、シトラス系香料、グリーン系香料、フルーティ系香料、フローラル系香料、ムスキー系香料、ウッディ系香料、スウィート系香料等が挙げられる。これらを更に発展させたシトラスグリーン系やグリーンハーバル系等の香料も挙げられる。
【0013】
成分(a)の香料がシトラス系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、リモネン、レモン油、オレンジ油、ビターオレンジ油、スイートオレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、シトラール、n−オクタナール(アルデヒドC−8)、n−ノネナール(アルデヒドC−9)、デカナール(アルデヒドC−10)、ウンデカナール(アルデヒドC−11)、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−テルピネオール等が挙げられる。
【0014】
成分(a)の香料がグリーン系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、シス−3−ヘキセノール、ガルバナム油、スターアニス油、セージ油、バイオレットリーフ油、ローズマリー油、バジル油、ラバンジン油、ラベンダー油、ローレル油、カシスベース345、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、ローズオキサイド等が挙げられる。
【0015】
成分(a)の香料がフルーティ系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、γ−ウンデカラクトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ラズベリーケトン等が挙げられる。
【0016】
成分(a)の香料がフローラル系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ローズ油、ジャスミンアブソリュート、リナロール、エチルリナロール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、シクラメンアルデヒド、イランイラン油、カミツレ油、ゼラニウム油、タジェート油、ネロリ油、酢酸ベンジル、イソイースーパー、クマリン、ヘリオトロピン、オリス油、パチュリ油、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ゲラニオール、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、β−フェニルエチルアルコール、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイソオイゲノール、メチルヨノン、α−ヨノン、β−ヨノン等が挙げられる。
【0017】
成分(a)の香料がムスキー系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンブラシレート、アンブレットリド、インドール、11−オキサヘキサデカノリド(Musk R−1)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油等が挙げられる。
【0018】
成分(a)の香料がウッディ系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アンブロキサン、イソカンフィルシクロヘキサノール(=Sandela)、カシュメラン、グリサルバ、酢酸グアヤック、酢酸ベチベリル、サンタロール、サンダロール、セドロールメチルエーテル(=セドランバー)、バンガロール(=バクダノール)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油、グアヤックウッド油、サンダルウッド油、セダーウッド油、ヒノキ油、ベチパー油等が挙げられる。
【0019】
成分(a)の香料がスウィート系香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチルバニリン、エチルマルトール、バニリン、マルトール、ラズベリーケトン、オークモスアブソリュート、トンカビーンズアブソリュート、バルサムトルー、バルサムペルー、ベンゾイン等が挙げられる。
【0020】
油性固形化粧料において、成分(a)の香料が、沸点が150〜180℃程度の低沸点の香料を多く含むものである場合に、特に組成物が不均一であることから生じるムラを生じやすい傾向がある。低沸点の香料としては、特に限定されるものではないが、α−ピネン(沸点:155℃)、シス−3−ヘキセノール(沸点:159℃)、β−ピネン(沸点:165℃)、β−ミルセン(沸点:177℃)等が挙げられる。
【0021】
成分(a)の香料の含有量は、本発明の油性固形状香料組成物中3〜30質量%(以下、単に「%」と示す)が好ましく、更に5〜20%が好ましい。成分(a)の含有量が3%未満であると良好な香りの演出や香りの持続性が得られない場合があり、また30%を超えると、経時安定性を損なったり、塗布時の使用感が悪くなる場合がある。
【0022】
成分(a)の香料は、アルコールやジプロピレングリコール、ブチレングリコールなどを溶媒とした溶液として使用することもできる。
【0023】
成分(b)の直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、通常化粧料に用いられるもので、直鎖状のシロキサン鎖を持ち25℃での動粘度(以下、粘度という)が2mm/s以上1000mm/s未満であれば特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、ラウリル変性ポリシロキサン等が挙げられ、更には、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノールが好ましい。また、成分(b)のオルガノポリシロキサンはその1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
オルガノポリシロキサンとしては、2〜200万mm/s程度のものが市販されているが、本発明では2mm/s以上1000mm/s未満のものが用いられる。成分(b)の粘度が1000mm/s以上になると外観ムラを引き起こす場合がある。
【0025】
成分(b)のオルガノポリシロキサンの含有量は、本発明の油性固形状香料組成物中0.01〜5%が好ましく、更に0.1〜1%が好ましい。成分(b)の含有量が5%を超えると香りに変質をきたす場合があり、また0.01%未満であると、外観の美麗さを得られない場合がある。
【0026】
本発明に用いられる成分(c)の固形油としては、通常化粧料に用いられるもので、融点35℃以上の油性成分であれば特に限定されず、炭化水素油、ロウ、硬化油、高級脂肪酸、樹脂、高級アルコール、シリコーンワックス等が使用できる。具体的には、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水素添加マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モンタンワックス、硬化ヒマシ油、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベへニン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアロキシ変性オルガノポリシロキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、更にパラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水素添加マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマー、エステルガム、水素添加エステルガム、合成ワックスが特に好ましい。
【0027】
成分(c)の固形油の含有量は、特に限定されるものではないが形状保持能や塗布時の使用感の点で本発明の油性固形状香料組成物中5〜35%が好ましく、更に10〜30%が好ましい。
【0028】
本発明には更に(d)のペースト状又は液状油を感触調整や経時安定性の向上の為に配合させることができる。
本発明に用いられる成分(d)のペースト状又は液状油は、成分(b)以外であれば、通常化粧料原料として許容されるものであれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や不揮発性油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、成分(b)以外のシリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等を使用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテンの炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリオクタン酸グリセリル(トリ2−エチルへキサン酸グリセリル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ホホバ油等のエステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高重合度ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類が挙げられ、更に流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、炭酸ジアルクル、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、2−エチルへキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリメリト酸トリデシル、トリイソステアリン、ダイマージリノール酸アルキル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、酢酸ラノリンが特に好ましい。
【0029】
本発明の油性固形状香料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば、粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、油ゲル化剤、保湿剤、水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0030】
本発明において、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに粉体を配合することにより、調色、塗布時の感触調整ができる。ここで用いる粉体としては、球状、板状、針状等の形状や煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、あるいは多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等を使用することがでる。具体的な粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆合成金雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、二酸化チタン被覆ガラス末等の光輝性粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末等の樹脂積層末のラメ剤、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等を例示することができる。なお、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0031】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、油ゲル化剤としては、多糖脂肪酸エステルやアシルアミノ酸誘導体等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0032】
更にまた、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
また更に、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0033】
本発明の油性固形状香料組成物とは、液状、半固形状、又は固形状の油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする実質的に水を含有しない固形状のもので、練り香水、フレグランススティック、室内芳香剤等として使用することができ、化粧用途であるものが好ましい。
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1〜7及び比較例1〜5:油性固形状香料組成物(練り香水)
下記表1に示す組成の油性固形状香料組成物を下記の製法で調製し、ムラについて下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0035】
【表1】

注1:沸点170℃以下の成分を47%含有
注2:ムルチワックスW−445(SONNEBORN社製)
注3:コスモール43(日清オイリオグループ社製)
【0036】
(製法)
A.成分(1)〜(17)を110℃に加熱し均一に混合する。
B.Aに(18)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で縦25mm・横25mm・厚み3mmの金属製の皿容器に充填し、冷却して練り香水を得た。
【0037】
(評価方法)
実施例1〜7及び比較例1〜5の油性固形状香料組成物を組成物の内部、外部にムラが存在するかを目視にて観察し、判定した。
判定 : 評 価
◎ : ムラなし
○ : ほぼムラなし
△ : ややムラあり
× : 著しくムラあり
【0038】
表1の結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1〜7の練り香水は外観にムラを生じず、美麗な外観を有する油性固形状香料組成物である。
これに対して成分(b)を配合しない比較例1では、図1に示すような白色部・半透明部が混合したムラが生じてしまい、外観が劣るものとなった。成分(b)の代わりに重合度の高いオルガノポリシロキサンを配合した比較例2及び3、パーフルオロポリエーテルを配合した比較例4、エタノールを配合した比較例5は、比較例1と同様なムラが観察され、外観が劣るものであった。
図1は実施例1と比較例1の外観の写真である。実施例1と実施例2では外観に大きな違いが見られる。
尚、実施例1〜7は香りに変質がなく、香料組成物として十分な品質であった。
【0039】
実施例8:油性固形状香料組成物(練り香水)
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー 6
2.合成ワックス 3
3.キャンデリラロウ 3
4.水添ポリイソブテン 残量
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 注3 30
6.酢酸ラノリン 9
7.ジメチコノール(100mm/s) 0.5
8.香料 注4 10
注4:沸点170℃〜180℃程度の成分を80%以上含有
【0040】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を110℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(8)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、90℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
【0041】
以上のようにして得られた練り香水は、外観のムラがなく、美麗さに優れたものであった。
【0042】
実施例9:油性固形状香料組成物(フレグランススティック)
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー 12
2.セレシン 5
3.パラフィンワックス 注5 5
4.ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル
ビスイソステアリル 8
5.テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 8
6.デカイソステアリン酸デカグリセリル 25
7.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
8.ジメチルポリシロキサン(20mm/s) 0.1
9.香料 注1 10
10.ローズ水 1
注5:PARACERA 256(PARAMELT社製)
【0043】
(製法)
A.成分(1)〜(8)を95℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(9)、(10)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、90℃で容器に充填し冷却してフレグランススティックを得た。
【0044】
以上のようにして得られたフレグランススティックは、外観のムラがなく、美麗さに優れたものであった。
【0045】
実施例10:油性固形状香料組成物(練り香水)
(成分) (%)
1.パルミチン酸デキストリン 注6 12
2.ポリエチレンワックス 注7 10
3.ポリブテン 残量
4.ミネラルオイル 8
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 注3 10
6.ジメチルポリシロキサン(50mm/s) 0.2
7.無水ケイ酸 注8 5
8.香料 注1 20
9.赤色226 0.05
注6:レオパールKL(千葉製粉社製)
注7:Performlene 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
注8:AEROSIL R−976S(日本アエロジル社製)
【0046】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を90℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(8)、(9)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
【0047】
以上のようにして得られた練り香水は、香りの変質や外観のムラがなく、美麗さに優れたものであった。
【0048】
実施例11:油性固形上香料組成物(室内用芳香剤)
(成分) (%)
1.ステアリン酸 5
2.パラフィンワックス 残量
3.ジメチルポリシロキサン(200mm/s) 0.5
4.水添ポリイソブテン 5
5.香料 注1 30
【0049】
(製法)
A.成分(1)〜(3)を110℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(4)、(5)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で容器に充填し冷却して室内用芳香剤を得た。
【0050】
以上のようにして得られた室内用芳香剤は、香りの変質や外観のムラがなく、美麗さに優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)香料を3〜30質量%
(b)25℃での動粘度が2mm/s以上1000mm/s未満である直鎖状のオルガノポリシロキサンを0.01〜5質量%
(c)固形油
を含有することを特徴とする油性固形状香料組成物。
【請求項2】
さらに成分(d)として25℃でペースト状もしくは液状の油剤を含有することを特徴とする請求項1記載の油性固形状香料組成物。
【請求項3】
成分(c)の固形油がパラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水素添加マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマー、エステルガム、水素添加エステルガム、合成ワックスから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性固形状香料組成物。
【請求項4】
化粧用途であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油性固形状香料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−98913(P2011−98913A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254852(P2009−254852)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】