説明

油性製剤

【課題】ジフェンヒドラミンを含む、臭気のない油性製剤を提供する。
【解決手段】
本発明は、油性基剤、ジフェンヒドラミン、および常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を含む油性製剤に関する。常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を、ジフェンヒドラミン100重量部に対して50重量部以上含有することが好ましく、200重量部以上含有することがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェンヒドラミンを含有する油性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油成分を基剤とした油性製剤は、様々なボディケア製品として使用されてきている(非特許文献1)。より具体的には、滑りのよさから、マッサージ用途に使用されたり(特許文献1)、角質閉塞効果から、保湿・乾燥予防用途に使用されている(特許文献2)。特に、油性製剤は油性基剤を主成分とすることから、皮膚の水分の蒸発を抑制する効果が非常に高く、皮膚の柔軟性や弾力性が低下したドライスキンと呼ばれる状態に使用されることも多い。このようなドライスキンという肌の乾燥に伴う不具合として、肌のかゆみが知られており、抗ヒスタミン剤の中でもジフェンヒドラミンを油性製剤に配合することが求められている。
【0003】
しかしながら、ジフェンヒドラミンは独特のアミン臭を有しており、単に油性製剤に配合するだけでは、その臭いが目立つという問題があり、広くボディケア製品に適用することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−82481号公報
【特許文献2】特開平2−15015号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOUNAL, 2010-3, 28-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジフェンヒドラミンを配合することで生じる臭気の問題を解決し、抗ヒスタミン効果を有する油性製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、油性基剤、ジフェンヒドラミン、および常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を含む油性製剤に関する。
【0008】
ジフェンヒドラミン100重量部に対して、常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を50重量部以上含有することが好ましく、200重量部以上含有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を含有するので、ジフェンヒドラミンのアミン臭が少ない油性製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油性製剤は、油性基剤と、ジフェンヒドラミン、および常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を含む。ここで、油性製剤とは、実質的に水分を含有しないものである。実質的に水分を含有しないとは、油性製剤中の水分が3g/100mL以下であり、好ましくは1g/100mL以下である。水の含有量が3g/100mLを超えると、皮膚に対する刺激やスティンギングが懸念される界面活性剤や防腐剤等の多くの添加物を配合する必要が生じるため好ましくない。
【0011】
本発明の油性製剤の基剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品などで通常使用されるものであれば、特に限定されない。たとえば、植物油、動物油、鉱物油、レシチン誘導体、エステル油、シリコーン類、脂肪酸類、高級アルコール、ホルモン類、精油類、シリコンオイル、ワックス類などが挙げられる。植物油としては、オリーブ油、ごま油、ひまし油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油などが挙げられ、動物油としては、ラード、魚油、スクワラン、蜜蝋などが挙げられ、鉱物油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリンなどが挙げられる。レシチン誘導体としては、大豆レシチンなどが挙げられ、エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、2−エチルヘキサン酸トリグリセリド(トリオクタノイン)、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジブチル、イソノナン酸イソノニル、炭酸ジカプリリル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、イソステアリン酸エチルヘキシル、イソステアリルパルミテート、ハードファットなどが挙げられ、シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーンなどが挙げられ、脂肪酸類としては、オレイン酸、リノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。高級アルコールとしては、炭素数6以上の脂肪族アルコールであって、具体的には、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、イソステアリルアルコールなどが挙げられる。ホルモン類としては、エチニルエストラジオールなどが挙げられ、精油類としては、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油などが挙げられる。これらの油性基剤は、1種だけで使用することも、2種以上を組合せて使用することもできる。中でも、無〜低極性の油性基剤は、皮膚の閉塞効果が高く、またべたつきの少ないテクスチャーという点で好ましく、さらに、低粘度のものは、伸びの良さの点で好ましい。具体的には、炭化水素系の液状油が好ましく、スクワランのような一種からなるものや、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィンのような複数の成分が混合している油等が挙げられるが、これらに限定されるものものではない。炭化水素系の液状油の中でも、流動パラフィン、軽質流動パラフィンが伸びのよさや安全性といった点で特に好ましい。
【0012】
基剤の粘度は特に限定されないが、流動パラフィンの場合、100゜FのSUS粘度(セイボルト ユニバーサル粘度)において50〜500秒が好ましく、70〜350秒がより好ましい。500秒を超えると、伸びの良さが低下し、感触が重くなり、50秒未満であれば、角質閉塞効果が低下する傾向がある。ここで、セイボルト ユニバーサル粘度とは、60mLの試料がセイボルトユニバーサル粘度計を流出する秒数で示される工業粘度の一種である(単位はセイボルトユニバーサル秒)。測定温度の100゜Fとは、約37.8℃に換算される。
【0013】
ジフェンヒドラミンとは、抗ヒスタミン剤であり、肌のかゆみを抑制する有効成分である。ジフェンヒドラミンの含有量は、特に限定されないが、油性製剤中に0.3〜3.0g/100mLが好ましく、0.5〜2.0g/100mLがより好ましい。3.0g/100mLを超えると、刺激や副作用が懸念され、0.3g/100mL未満であれば、かゆみを抑制する効果が十分でなくなる傾向がある。
【0014】
常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸とは、常温(20℃)で液体であれば特に限定されないが、油性製剤の低温安定性(固体成分の析出や製剤の固化などの懸念)の点で、常温で液体である必要がある。炭素数は8以上であるが、12以上が好ましく、上限は特に限定されないが、22以下が好ましい。また、該脂肪酸は、炭素数が8以上であっても常温液体になるために融点を下げる必要があり、その点で、分岐構造を有する必要があり、また不飽和脂肪酸と異なり、飽和脂肪酸は基剤臭が少ないため ニオイを防ぐという点で、飽和である必要がある。具体的には、イソステアリン酸、ヘキシルデカン酸、ブチルオクタン酸などがあげられる。イソステアリン酸とは、炭素数18の飽和直鎖脂肪酸であるステアリン酸の異性体であって、分岐構造を有し、外用剤では一般的に有効成分の経皮吸収性を上げるためや、製品の肌へのなじみや感触を良くするために使用される成分である。同じような脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸があり、化粧料などで使用される酸としては、リン酸、乳酸、クエン酸などが挙げられる。しかしながら、リン酸や乳酸のような酸は、油性製剤には溶解せず、また同じ炭素数のオレイン酸では、酸化基剤臭がして、臭気抑制に適さないのに対し、イソステアリン酸では、油性製剤にも安定に配合でき、かつジフェンヒドラミンのアミン臭を抑制する効果は極めて優れている。
【0015】
常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸の含有量は、油性製剤中に0.15〜30g/100mLが好ましく、0.25〜12g/100mLがより好ましく、0.4〜8g/100mLがさらに好ましく、0.5〜6g/100mLが最も好ましい。30g/100mLを超えると、本発明の油性製剤を使用した際の感触が重くなる傾向があり、0.15g/100mL未満であれば、抑臭効果が十分でなくなる傾向がある。
【0016】
常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸の配合量は、ジフェンヒドラミン100重量部に対して、50重量部以上が好ましく、100重量部以上が好ましい。上限は特に限定されないが、1000重量部以下が好ましく、600重量部以下がより好ましい。50重量部未満であれば、抑臭効果が十分でなく、1000重量部を超えると、本発明の油性製剤を使用した際の感触が重くなる傾向がある。
【0017】
本発明の油性製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して配合できる。例えば、安定化剤、増粘剤、防腐剤、殺菌剤、緩衝剤、pH調整剤、鎮痒剤、局所麻酔剤、消炎剤、抗ヒスタミン剤、血行促進剤、香料又は清涼化剤、伸び向上剤、ビタミン類等の各種添加剤を挙げることができる。より具体的には以下のものが挙げられる。
【0018】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム等。
【0019】
増粘剤:ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、水添(スチレン/イソプレン)コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸等。
【0020】
防腐剤:ブチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩、ベンジルアルコール等。
【0021】
殺菌剤:塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、トリクロサン、トリクロカルバン、フェノール等。
【0022】
緩衝剤:ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等。
【0023】
pH調整剤:モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンン等の有機塩基等。
【0024】
鎮痒剤、局所麻酔剤:リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの誘導体、クロタミトン、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、テシットデシチン。
【0025】
消炎剤、抗ヒスタミン剤:例えば、ハイドロコルチゾン、ブレドニゾロン、及びそれらの誘導体などのステロイド系消炎剤。グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、甘草エキス、インドメタシン、ジクロフェナク、フェルビナク、サリチル酸グリコール、ピロキシカム及びサリチル酸メチルなどの非ステロイド系消炎剤。マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸フェニラミン及びオキサトミド等の抗ヒスタミン剤。
【0026】
血行促進剤:酢酸トコフェロールなどのビタミンE類、ノナン酸バニリルアミド、オクタン酸バニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド、ジヒドロキシカプサイシン、ノルカプサイシン、ホモカプサイシン及びカプサンチン等のカプサイシン類似体、トウガラシエキス、トウガラシチンキ及びトウガラシ末などのトウガラシ由来物質、ヘスペリジン等。
【0027】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオ−ル、メントール、リュウノウ、リモネン、テルピノレン、メンタン及びテルピネンなどのp−メンタン、及びそれから誘導される単環式モノテルペン系炭化水素化合物等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(具体的には、ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油、オレンジ油など)、イソプレゴール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、1−(2−ヒドロキジフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロキシピリミジン−2−オン、エチルメンタンカルボキサミド、p−メンタン−3,8−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−p−メンタン−3−9−ジオール及びトリアルキル置換シクロヘキサンカルボキシアマイド等のメントール類縁化合物等。
【0028】
伸び向上剤:アジピン酸ジイソプロピル。
【0029】
ビタミン類:例えば、ビタミンA類、ビタミンB類(ビタミンB12類以外)、ビタミンC類、ビタミンD類、酢酸トコフェロールなどのビタミンE類。
【0030】
その他:乳糖、D−ソルビトール、ジベンジリデンソルビトール、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000など)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソキシリトール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール及びへキシレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、金属石鹸、N−アシルグルタミン酸誘導体、POE/POPジメチルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、イソオクタン酸グリセリン、グリセリルモノミリステアレート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、ジグリセリルモノオレエート、テトラグリセリルモノステアレート)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、プロピレングリコールモノステアレート)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油)などの界面活性剤、タルク、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、合成スメクタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ナイロン、シリカ、シリル化シリカ、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンビーズ、シリコーンエラストマー粒子、セルロース粉末及びトウモロコシデンプンなどの粉末類、高重合ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーンワックス等。
【0031】
伸び向上剤を配合する場合、伸び向上剤の含有量は、油性製剤中に2〜30g/100mLが好ましく、3〜15g/100mLがより好ましく、5〜15g/100mLがいっそう好ましい。30g/100mLを超えると、角質閉塞効果が低下し、2g/100mL未満であれば、伸びが十分に向上しない傾向がある。
【0032】
本発明の油性製剤は、ボディケアオイルとして広く適用することができる。具体的には、マッサージ用、保湿・乾燥予防用、乾燥を伴うかゆみの抑制用などの用途に適用することができ、従来、クリーム、乳液といった乳化物、軟膏などが使用されている用途にも好適に適用することができる。
【実施例】
【0033】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1〜10及び比較例1〜15)
表1および2に記載の処方に従って、配合成分を混合し、流動パラフィンを100mlになるように添加して、油性製剤を得た。
【0035】
なお、原料としては、以下のものを使用した。
流動パラフィン(SUS粘度:350):流動パラフィンNo.350(三光化学工業(株)製)
流動パラフィン(SUS粘度:70):軽質流動パラフィンNo.70(三光化学工業(株)製)
トリオクタノイン:NIKKOL Trifat S−308(日光ケミカルズ(株)製)
ジフェンヒドラミン:ジフェンヒドラミン(金剛化学(株)製)
イソステアリン酸:イソステアリン酸EX(高級アルコール工業(株)製)
【0036】
得られた油性製剤の外観と臭気強度を以下の方法で評価した。
【0037】
(外観)
ガラス瓶に油性製剤を入れ、一夜放置した。翌日の外観を以下の基準に従って目視評価した。
◎:無色透明
○:淡有色透明
▲:濃有色透明または半透明
×:白濁または白色沈殿
【0038】
(臭気強度)
ガラス瓶に油性製剤を入れ、一夜放置する。翌日のヘッドスペースの臭気を以下の基準に従って官能評価した(n=4)。
5:強い臭気
4:楽に感知できる臭気
3:弱い臭気
2:探せばわかる弱い臭気
1:臭気なし
【0039】
評価結果を表1および2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1の結果から、比較例1〜3のようにジフェンヒドラミンを配合すると、臭気(アミン臭)が強くなるが、実施例1〜9のようにイソステアリン酸を配合すると臭気が強く抑制されていることがわかる。表2の結果から、イソステアリン酸の代わりに、ステアリン酸、リン酸、酢酸、クエン酸を使用すると、比較例4〜7に示すように油性製剤が白濁する。オレイン酸では、比較例9に示すように白濁は認められないがオレイン酸自身が基剤臭を有するため、臭気は全く改善していないだけでなく、製剤の着色も見られた。また、種々の脂肪酸エステルについても、比較例9〜14に示すように臭気の改善はほとんど見られず、逆に悪化している製剤がある。
【0043】
(実施例:実施例11〜16及び比較例16〜20)
伸び向上剤として、アジピン酸ジイソプロピルを使用し、表3に記載の処方に従って、配合成分を混合し、流動パラフィンを100mlになるように添加して、油性製剤を得た。各製剤について、前述の評価を行った結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3の結果から、伸び向上剤として、アジピン酸ジイソプロピルを使用した油性製剤においても、イソステアリン酸を配合することで臭気を抑制できている(実施例11〜16)。また、アジピン酸ジイソプロピルを使用したこれらの油性製剤は、使用しないもの(実施例1〜10)に比べて製剤の伸びが向上しており、使用感がより良好であった。一方、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルのような脂肪酸や脂肪酸エステルでは、比較例17〜19に示すように臭気の改善はほとんど見られず、逆に悪化している製剤がある。
【0046】
処方例1〜3
表4に示す処方に従い、各成分を秤量し、流動パラフィンを100mlになるように添加して撹拌し、油性製剤を調製した。種々の任意成分を配合しているが、いずれも製剤が白濁することなく、臭気が十分に抑制されていた。
【0047】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の油性製剤は、抗ヒスタミン剤であるジフェンヒドラミン由来の臭気がなく、種々のボディケア製品に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性基剤、ジフェンヒドラミン、および常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を含む油性製剤。
【請求項2】
ジフェンヒドラミン100重量部に対して、常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を50重量部以上含有する請求項1記載の油性製剤。
【請求項3】
ジフェンヒドラミン100重量部に対して、常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を200重量部以上含有する請求項2記載の油性製剤。
【請求項4】
さらに、アジピン酸ジイソプロピルを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の油性製剤。
【請求項5】
油性基剤およびジフェンヒドラミンを含む油性製剤の臭気抑制方法であって、臭気抑制剤として常温で液体である炭素数8以上の分岐型飽和脂肪酸を使用することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−214411(P2012−214411A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80851(P2011−80851)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】