説明

油性香料含有粉末製剤

【課題】飲食品に添加した際に、油性香料の香気、香味が速やかに発現し、かつ、香気、香味が長く持続する油性香料含有粉末製剤を提供する。
【解決手段】油性香料に、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤である。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品に添加された油性香料が、その香気、香味を速やかに発現することができ、かつ香気、香味が持続する油性香料含有粉末製剤に関する。
詳細には、油性香料に特定の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理し、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チューインガム、錠菓、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキーなどの菓子類には、通常香料が添加されており、口に入れた瞬間に感じる香りと、咀嚼をして感じる香りを有する。
また、ソーセージ、サラミ等の畜肉加工食品やその他の加工食品においても、添加される香料の口に入れたときの香味の広がり、咀嚼して飲み込むまでに感じる香りや味覚なども、製品の差別化を図る重要な因子のひとつである。
粉末香料は、これら食品の香味付けなどに広く用いられており、口に入れた瞬間に感じる香りと、咀嚼して感じる香りに影響を与える。
一般的な粉末香料の製法としては、香料をアラビアガムやエステル化加工澱粉等の乳化剤に添加した後、得られた乳化混合物を噴霧乾燥して粉末香料を製造する方法であるが、この方法で得られる粉末香料は香気、香味の発現が遅く、特に口に入れた瞬間に感じる香りに関して満足できるものではない。
また、チューインガムなどでは、香料がガムベースから脱離しにくく、その香気、香味の発現が遅くなり、かつ香気、香味が持続することなく、すぐに弱くなって感じ難くなるという問題点がある。
【0003】
この香気、香味の発現を促進する解決方法として、香料にアラビアガム、大豆多糖類、エステル化加工澱粉、レシチン、キラヤ抽出物、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の乳化剤、及びラクチトールなどの糖アルコールを添加混合して乳化処理した後、粉末製剤とする速放性香料粉末製剤が提案されている(特許文献1)。
一方、香気、香味の持続を促進する解決方法としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンなどの乳化剤の水溶液に、香料を加えて高圧下で乳化を行ない、1μm未満の微小乳化油滴を調製し、これに賦形剤の水溶液を加えて撹拌混合し、噴霧乾燥して香味持続型粉末香料を得ることが提案されている(特許文献2)。
また、油溶性香料と中鎖トリグリセライドなどの油溶性成分を、100:1〜1:1の割合で混合又は溶解した油相成分を、アラビアガムなどの乳化剤溶液中に微分散又は乳化して、油相成分の乳化粒子の平均粒子径を0.1μm未満として得られる、水に透明に溶解し、且つ呈味感やトップノートなどの香味発現性が改善された乳化香料組成物も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−140482号公報
【特許文献2】特開2001−152179号公報
【特許文献3】特開2006−257246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の速放性香料粉末製剤は、使用される乳化剤の乳化粒子径が0.5〜2μmと大きいため、飲食品に添加された場合には、香料がその香気、香味を速やかに発現することが十分にできず、さらに香味の持続効果にも乏しいものであった。
また、上記特許文献2では、使用される乳化剤の乳化粒子径を1μm未満、好ましくは0.1乃至0.8μm(実施例では0.15〜0.6μm)とすることで、香気、香味の持続については実現しているが、香気、香味の発現自体は速やかに起こるものではなかった。
さらに、特許文献3の技術では、本願で目的とする油性香料含有粉末製剤を得ることはできない。
そのため、飲食品に配合された油性香料が、その香気、香味を速やかに発現することができ、かつ香気、香味が持続するような油性香料含有粉末製剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、油性香料に、(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン、(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、(3)ガティガムから選ばれる1又は2以上の乳化剤と、賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤が、飲食品に添加した際に、油性香料の香気、香味が速やかに発現し、かつ香気、香味が長く持続することを見出した。
【0007】
即ち、本発明はかかる知見に基いてなされたものであり、以下の態様を含むものである。
項1.油性香料に、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム
項2.油性香料が、メントールフレーバー及び/又は果実系フレーバーである項1記載の油性香料含有粉末製剤。
項3.油性香料に、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤を、飲食品に添加して、飲食品からの油性香料の香気、香味の発現を促進し、かつ持続する方法。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム
【発明の効果】
【0008】
本発明により、飲食品に添加した際に油性香料が、速やかにその香気、香味が発現し、かつ、香気、香味が持続する油性香料含有粉末製剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用される油性香料としては、例えば動物性や植物性の天然原料から、揮発性溶剤や不揮発性溶剤による抽出や超臨界抽出などにより得られる抽出物、水蒸気蒸留や圧搾法などにより得られる精油や回収フレーバーなどの天然香料、化学的手法で合成された合成香料、これらの香料を油脂や溶剤に配合・溶解した香料ベースが挙げられる。
これら油性香料の具体例としては、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、マンダリン油などの果実系精油類;ラベンダー油などの花精油又はアブソリュート類;ペパーミント油、スペアミント油、シナモン油などの精油類;オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリ、グローブ、ガーリック、ジンジャー、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、ブラックペッパーなどのスパイス類の精油又はオレオレジン類;アリルイソチオシアネートなどのイソチオシアネート類を主体とするワサビオイル又はからし油類、カプサイシン類などを主成分とするトウガラシオイルやオレオレジンなど;リモネン、リナロオール、ゲラニオール、メントール、オイゲノール、バニリン、マルトールなどの合成香料類;コーヒー、カカオ、バニラなどの豆由来の抽出物、紅茶、緑茶、ウーロン茶などのエキストラクト類;その他合成香料化合物、調合香料組成物などを、1種又は2種以上任意に組み合わせて使用することができる。
本発明の油性香料含有粉末製剤における油性香料の配合量は、油性香料の種類などによって異なるが、通常油性香料含有粉末製剤全体に対して、0.1〜50質量%、好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは3〜30質量%である。
【0010】
本発明の油性香料含有粉末製剤では、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤を使用する。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム
(1)ではショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの3種の乳化剤を併用するが、それらの配合割合は、レシチン1質量部に対して、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜50質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.1〜50質量部、好ましくは、レシチン1質量部に対して、ショ糖脂肪酸エステル0.2〜10質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.2〜10質量部である。
グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステルもポリグリセリン脂肪酸エステルも使用できるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
また、レシチンは、植物レシチン、酵素処理レシチン、分別レシチン、卵黄レシチンなどを使用することができる。
(3)のガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる、多糖類を主成分とする天然由来の植物性ガム質であり、増粘安定剤としても公知のものである。
(1)のショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及び(2)のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、いずれも炭素数が12以上で、HLBが10以上のものを用いることが好ましい。
これらの乳化剤は、いずれも市販されている製品を用いることができる。
例示すれば、(1)のショ糖脂肪酸エステルは、甲陽化学株式会社、花王株式会社、第一製薬株式会社、三菱化学フーズ株式会社製のものなどを、グリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む)は、日光ケミカルズ株式会社、花王株式会社、理研ビタミン株式会社、三菱化学フーズ、太陽化学株式会社、甲陽化学株式会社製のものなどを、レシチンでは、例えば理研ビタミン株式会社、辻製油株式会社のものなどを、(2)のポリオキシソルビタン脂肪酸エステルでは、日光ケミカルズ株式会社、花王株式会社、理研ビタミン株式会社のものなど、それぞれ用いることができる。
さらに、(3)のガティガムは、例えば三栄源エフ・エフ・アイ(株)のガティガムSDやGATIFOLIA RDなどが利用される。
本発明において、これら上記(1)〜(3)の乳化剤の使用量((1)の場合は3種の合計量))は、香料の種類や使用量などにより異なるが、通常油性香料1質量部に対して、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、さらに好ましくは0.1〜30質量部である。
さらに、例えば上記(1)と(2)の乳化剤を併用して使用するなどしても良い。
【0011】
本発明の油性香料含有粉末製剤に使用される賦形剤としては、水溶性デキストリン、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類、ラクトース、マルトース、グルコース、トレハロースなどの二糖類、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、オリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、多糖類、パラチット、デキストリン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物などが挙げられる。
【0012】
本発明の油性香料含有粉末製剤は、上記の乳化剤及び賦形剤などの混合溶液に、油性香料を添加した後、常法により乳化機で、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満、好ましくは0.09μm以下、さらに好ましくは0.08μm以下になるように乳化する。
本発明では、香料油乳化物の平均粒子径の下限は特に設定しないが、0.03μm又はそれ以下に調整することができる。
次いで得られた乳化液を、噴霧乾燥機又は真空乾燥機などで乾燥し、必要に応じて所望の粒径になるよう粉砕や造粒などを行なって、粉末又は顆粒とすることにより製造することができる。
【0013】
本発明の油性香料含有粉末製剤には、上記の油性香料、乳化剤や賦形剤の他に、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆多糖類、エステル化加工澱粉、キラヤ抽出物などの界面活性剤、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、プルラン、アラビノガラクタン、トラガントガム、カラギナン(カッパー、イオータ、ラムダ)、タマリンドシードガム、アルギン酸、寒天、タラガム、ジェランガム(ネイティブ、脱アシル)、ペクチンなどの増粘多糖類やゲル化剤、合成及び天然の各種食品用色素類、抽出トコフェロール、dl−α−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物、ルチン抽出物、ルチン酵素分解物、チャ抽出物及びトコトリエノールなどの抗酸化剤、乳酸やクエン酸、酢酸、アルコルビン酸等の酸味料、各種アミノ酸や各種ビタミン類などを添加しても良い。
【0014】
本発明の油性香料含有粉末製剤は、各種の飲食品、例えばチューインガム、錠菓、キャンディー、ドロップ、飴、キャラメル、ヌガー、チョコレート、クッキー、クラッカー、ケーキ、粉末飲料などや、各種加工食品、例えばソーセージ、サラミ等の畜肉加工製品、魚肉加工製品、蒲鉾やはんぺん類のような練り製品、農産加工食品類、各種ふりかけ類、漬物類、粉末ミックス製品などに幅広く適用されるが、特にチューインガムや錠菓に適用するのが好ましい。
これらの飲食品への本発明の油性香料含有粉末製剤の添加量は、0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の油性香料含有粉末製剤は、これらの飲食品の製造工程において特に限定されること無く、いずれの工程においても添加することができる。
そして、これらの飲食品に添加された本発明の油性香料含有粉末製剤から、油性香料の香気、香味が速やかに発現し、さらに長く持続させることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0016】
実施例1
表1の処方に従い、水100gに、植物レシチン2g、グリセリン脂肪酸エステル4g、ショ糖脂肪酸エステル4g及び水溶性デキストリン70gを加えて溶解し、この水溶液にメントールフレーバー20gを添加した後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、毎分3000回転で20分間乳化処理を行った。
得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.08μmであった。
得られた乳化液を、噴霧乾燥機(入口温度:170℃、出口温度100℃)を用いて噴霧乾燥し、本発明の油性香料含有粉末製剤94gを得た。
【0017】
実施例2
表1の処方に従い、水100gに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル15g及び水溶性デキストリン75gを加えて溶解し、この水溶液にメントールフレーバー10gを添加した後、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.09μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤92gを得た。
【0018】
実施例3
表1の処方に従い、水100gに、植物レシチン2g、ショ糖脂肪酸エステル4g、グリセリン脂肪酸エステル4g、及び水溶性デキストリン80gを加えて溶解し、この水溶液にメントールフレーバー10gを添加した後、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.06μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤95gを得た。
【0019】
実施例4
表1の処方に従い、水100gに、植物レシチン3g、ショ糖脂肪酸エステル5g、グリセリン脂肪酸エステル7g、及び水溶性デキストリン75gを加えて溶解し、この水溶液にメントールフレーバー10gを添加した後、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.03μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤95gを得た。
【0020】
実施例5
表1の処方に従い、水100gに、ガティガム20g及びソルビトール75gを加えて溶解し、この水溶液にメントールフレーバー5gを添加した後、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.08μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤96gを得た。
【0021】
比較例1〜5
表1の処方に従い、メントールフレーバー、賦形剤として水溶性デキストリン、乳化剤としてアラビアガム(比較例1と比較例5)、グリセリン脂肪酸エステル(比較例2)、ショ糖脂肪酸エステル(比較例3)、グリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステル(比較例4)をそれぞれ用いて、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は、それぞれ1.5μm(比較例1)、0.5μm(比較例2)、0.9μm(比較例3)、0.2μm(比較例4)、2.5μm(比較例5)であった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、油性香料含有粉末製剤をそれぞれ92g得た。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例6
表2の処方に従い、水100gに、植物レシチン1g、ショ糖脂肪酸エステル2g、グリセリン脂肪酸エステル4g及び水溶性デキストリン85gを加えて溶解し、この水溶液にレモンフレーバー8gを添加した後、以下実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.05μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤95gを得た。
【0024】
実施例7
表2の処方に従い、水100gに、ガティガム25g及び水溶性デキストリン67gを加えて溶解し、この水溶液にレモンフレーバー8gを添加した後、以下実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は0.07μmであった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、本発明の油性香料含有粉末製剤95gを得た。
【0025】
比較例6〜8
表2の処方に従い、レモンフレーバー、賦形剤として水溶性デキストリン、乳化剤としてアラビアガム(比較例5)、グリセリン脂肪酸エステル(比較例6)、ショ糖脂肪酸エステル(比較例7)をそれぞれ用いて、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。得られた香料油乳化物の平均粒子径は、それぞれ1.5μm(比較例5)、0.5μm(比較例6)、0.7μm(比較例7)であった。
次いで実施例1と同様にして噴霧乾燥を行い、油性香料含有粉末製剤92gを得た。
【0026】
【表2】

【0027】
官能評価1
上記実施例1〜7及び比較例1〜8で得られた油性香料含有粉末製剤を添加した錠菓を、次の処方で常法により調製した。
油性香料含有粉末製剤2質量部、粉糖97.5質量部、ショ糖脂肪酸エステル0.5質量部(尚、実施例1と実施例5は、メントールフレーバーの量を他と合せるために、配合割合を変更しており、実施例1は油性香料含有粉末製剤1質量部(実施例5は4質量部)、粉糖98.5質量部(実施例5は95.5質量部)、ショ糖脂肪酸エステル0.5質量部とした)。
調製した錠菓からの香料の香気、香味の発現を、8名のパネラーによる官能評価で、メントールフレーバーの場合は比較例1の製剤を基準(3点)とし、レモンフレーバーの場合は比較例6の製剤を基準(3点)として、表3のように5段階で評価した。
【0028】
【表3】

【0029】
結果を以下の表4及び表5に、それぞれ8名のパネラーの平均点として示す。
【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
官能評価2
上記実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた油性香料含有粉末製剤を、チューインガムベースにそれぞれ2質量%添加したチューインガム(実施例1と実施例5は、メントールフレーバーの量を他と合せるために配合割合を変更しており、油性香料含有粉末製剤を各々1質量%と4質量%を添加)を調製した。
調製したチューインガムからの香料の香気・香味の発現の速さを、上記の官能試験1と同様に、比較例1の製剤を基準(3点)として評価し、結果を以下の表7に8名のパネラーの平均点として示す。
また、香気、香味の持続性についても同時に、比較例1の製剤を基準(3点)として、下記表6の基準で評価し、同様に結果を以下の表7にパネラーの平均点(パネラー8名)として示す。
【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
表4、5及び7の結果から、香料油乳化物の平均粒子径を0.1μm未満となるように調製した本発明の油性香料含有粉末製剤は、香料の香気、香味の発現が比較例に示した平均粒子径が0.2μm以上の大きさの油性香料含有粉末製剤に比べて、明らかに速やかであり、かつ、長く持続して香気、香味を感じることができ、それを官能試験において実感できるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、飲食品に添加した際に、油性香料の香気、香味が速やかに発現し、かつ長く持続する油性香料含有粉末製剤を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性香料に、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム
【請求項2】
油性香料が、メントールフレーバー及び/又は果実系フレーバーである請求項1記載の油性香料含有粉末製剤。
【請求項3】
油性香料に、以下の(1)〜(3)から選ばれる1又は2以上の乳化剤、及び賦形剤を添加混合して、香料油乳化物の平均粒子径が0.1μm未満となるように乳化処理を行った後、乾燥して得られる油性香料含有粉末製剤を、飲食品に添加して、飲食品からの油性香料の香気、香味の発現を促進し、かつ持続する方法。
(1)ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン
(2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(3)ガティガム

【公開番号】特開2011−74306(P2011−74306A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229608(P2009−229608)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】