説明

油性香料組成物

【課題】使用性が良好であり、透明性の高い外観を有し、更には、芳香の持続性にも優れる油性香料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】特定の直鎖アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と、特定の分岐アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体とを含む油ゲル化剤、油剤、及び香料成分とを配合した油性香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の直鎖アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と、特定の分岐アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を組み合わせた油ゲル化剤を用いて、油剤及び香料成分とをゲル化した油性香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香料組成物は、室内用芳香剤や人体に使用する香水や練香水などのフレグランス化粧料が知られている。室内用芳香剤は室内や車内に長期間にわたり置いて使用する物であることから、その外観が重要視され、また、化粧料はフレグランスという性質上、ファッション性が重要視され、香水等の液状のフレグランスは、ボトルに意匠を凝らし、香りのイメージを形でも表現したものが広く好まれている。
一方、油性香料組成物は化粧料とした場合、水やアルコールを主成分とする香水やオー・デ・コロンと異なり、組成物が揮発せずに肌上に残る為、芳香を持続することができる。油性香料組成物は油剤をゲル化剤させることで、粘度を調整したり、固形状にして使用性や携帯性を考慮したものが一般的である。
【0003】
従来、より用いられる油ゲル化剤としては、ワックス等の固形状油剤、デキストリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる(特許文献1)。しかしながら、ワックスを油ゲル化剤として用いると、安定な油ゲル組成物を形成する濃度では、油ゲル組成物が白濁してしまい、また、デキストリン脂肪酸エステルを油ゲル化剤として用いると、透明な油ゲル組成物を形成するが、高濃度配合する必要があり、また高温では柔らかくなるなど化粧料に配合する際の使用性において好ましくない場合があるとされる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸を油ゲル化剤として用いた場合は、ゲル化できる油剤の種類が少なく、ゲル化できる場合でも、得られたゲル組成物は粗いゲル状で、使用性が今一つであった。
このように、従来のゲル化剤では、高温での安定なゲル、透明な油性組成物を得ることは困難であり、特に香料成分を多量に配合する油性香料組成物においては、香料成分は天然や合成の複数の成分の混合物であるため、安定なゲル形成と透明なゲル形成を得にくいものであった。
【0004】
ジアミノシクロヘキサン誘導体については、ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を含有する医薬品、化粧品、食品等の組成物について提案されており(特許文献2)、また、炭素数6〜22の飽和の直鎖及び/又は分岐脂肪酸の1種または2種以上のモノアミド誘導体及び/又はジアミド誘導体を有効成分とする有機液体のゲル化又は固化剤についても提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3657148号公報
【特許文献2】特開平10−237034号公報
【特許文献3】特許第3620878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、すなわち、使用性や携帯性の良さに優れ、外観に透明性を備えた油性香料組成物を提供すること、特定の1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を組み合わせた新規な油ゲル化剤を用いた、油性香料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記実情より、本発明者は、アシル部分が、炭素数15〜21の直鎖アルキル基を有する1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と、アシル部分が、合計炭素数が15〜21の、1位に置換基として直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル基を持つ1,2
−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体とを一種類ずつ組み合わせた油ゲル化剤を用いると、添加量が従来の油ゲル化剤と比べて低濃度であっても、透明性が高く、安定性が良く、化粧料に配合するために適したゲルが形成されることを見出した。また、アシル部分が、炭素数15〜21の直鎖アルキル基を有する特定の1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を一種類単独で油ゲル化剤とすると、油ゲル組成物が白濁し、アシル部分が炭素数8の分岐アルキル基を含む特定の1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を組み合わせた油ゲル化剤では溶解温度が非常に高くなる場合があり、さらに、1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体において、シクロへキサン環の1位と2位の置換基のアシル部分が一方は直鎖で他方が分岐鎖である場合は、ゲル組成物が白濁したり、溶解温度が高くなったり、化粧料に配合するためには不都合な場合があることを確認した。
特許文献2にはビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体がオイル等の増粘・ゲル化剤として用いられることの記載があり、特許文献3にはジアミノシクロヘキサン誘導体と炭素数6〜22の飽和の直鎖及び/又は分岐脂肪酸の1種または2種以上のモノアミド誘導体及び/又はジアミド誘導体を用いた有機液体のゲル化、固化物とする方法が記載されているが、特定の構造の1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体を組み合わせて使用することに関して、また、透明な組成物を作ることに関しての検討はされていない。
【0008】
本発明は上記の知見に基づき、(A1)下記式(I)で表される直鎖アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と、
【化1】

(A2)下記式(II)で表される分岐アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と
【化2】

を含む(A)油ゲル化剤が各種油剤を透明に固化することに着目し、(B)油剤、及び(C)香料成分に配合することで、透明性の高い、ペースト状からスティックのような固形状の油性香料組成物が得られることを見出した。更には、透明性に加えて外観につやがあり、使用時の指へのとれがよく、肌への付着性があることから芳香持続性のある、油性香料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性香料組成物は、使用性が良好であり、更には、芳香の持続性にも優れるものであり、透明性の高い外観を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)は、(A1)上記式(I)で表される直鎖アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と、(A2)上記式(II)で表される分岐アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の一種又は二種以上とを含むものであれば特に制限されないが、上記(A1)と(A2)は各一種類用いることが好ましい。なお、本発明において、式(I)のR同士、及び式(II)のR同士は、それぞれ同一である。また、本発明の油ゲル化剤は、上記(A1)と(A2)のみからなる油ゲル化剤であるのみならず、その他の成分として、(A1)と(A2)の作用効果を阻害しない限り、製造時の副産物や不純物などを含有していてもよい。
【0011】
上記式(I)のRにおける、「炭素数15〜21の直鎖アルキル基」としては、具体的には、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基を例示することができる。
【0012】
上記式(II)のRにおける「合計炭素数が15〜21の、1位に置換基として直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル基」とは、直鎖である主鎖の1位、即ち、カルボニル基に結合している炭素原子に直鎖アルキル基が置換したものであって、合計の炭素数が15〜21であるアルキル基を意味する。合計炭素数が15〜21の、1位に置換基として直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル基としては、具体的には、1−メチルテトラデシル基、1−メチルペンタデシル基、1−メチルヘキサデシル基、1−メチルヘプタデシル基、1−メチルオクタデシル基、1−メチルノナデシル基、1−メチルエイコシル基、1−エチルトリデシル基、1−エチルテトラデシル基、1−エチルペンタデシル基、1−エチルヘキサデシル基、1−エチルヘプタデシル基、1−エチルオクタデシル基、1−エチルノナデシル基、1−プロピルドデシル基、1−プロピルトリデシル基、1−プロピルテトラデシル基、1−プロピルペンタデシル基、1−プロピルヘキサデシル基、1−プロピルヘプタデシル基、1−プロピルオクタデシル基、1−ブチルウンデシル基、1−ブチルドデシル基、1−ブチルトリデシル基、1−ブチルテトラデシル基、1−ブチルペンタデシル基、1−ブチルヘキサデシル基、1−ブチルヘプタデシル基、1−ペンチルデシル基、1−ペンチルウンデシル基、1−ペンチルドデシル基、1−ペンチルトリデシル基、1−ペンチルテトラデシル基、1−ペンチルペンタデシル基、1−ペンチルヘキサデシル基、1−ヘキシルノニル基、1−ヘキシルデシル基、1−ヘキシルウンデシル基、1−ヘキシルドデシル基、1−ヘキシルトリデシル基、1−ヘキシルテトラデシル基、1−ヘキシルペンタデシル基、1−ヘプチルオクチル基、1−ヘプチルノニル基、1−ヘプチルデシル基、1−ヘプチルウンデシル基、1−ヘプチルドデシル基、1−ヘプチルトリデシル基、1−ヘプチルテトラデシル基、1−オクチルオクチル基、1−オクチルノニル基、1−オクチルデシル基、1−オクチルウンデシル基、1−オクチルドデシル基、1−オクチルトリデシル基、1−ノニルノニル基、1−ノニルデシル基、1−ノニルウンデシル基、1−ノニルドデシル基、1−デシルデシル基、1−デシルウンデシル基等を挙げることができる。
【0013】
本発明の油ゲル化剤は、油剤に添加することで、分子会合により油剤中に網目状又は繊維状等の三次元網目構造を形成し、網目の中に油剤分子を保持することなどにより液状油を固化(ゲル化)できる組成物であると推定される。
【0014】
上記式(I)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の合成方法としては、1,2−ジアミノシクロヘキサンと、適宜選択された一種類の炭素数16〜22の直鎖飽和脂肪酸を塩化チオニル等のハロゲン化剤で処理して得られた酸ハロゲナイドとをアルカリ存在下縮合させる方法や、1,2−ジアミノシクロヘキサンと適宜選択された一種類の炭素数16〜22の直鎖飽和脂肪酸を、必要に応じてスズ、ニッケル等の金属酸化物等の触媒の存在下に、100〜250℃にて5〜20時間程度脱水反応させるアミド化反応等の化学的方法など公知の方法を含めた合成方法を挙げることができる。さらに、これらの反応の生成物を再結晶やカラムクロマトグラフィー等の公知の方法を含めた精製手段で精製してもよい。上記1,2−ジアミノシクロヘキサンとしては、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンでもシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンでもよいが、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンが好ましい。上記直鎖飽和脂肪酸としては、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸(ドコサン酸)を例示することができる。
【0015】
上記式(II)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の合成方法としては、1,2−ジアミノシクロヘキサンと、適宜選択された一種類の炭素数16〜22の、2位に置換基として直鎖アルキル基を有する飽和脂肪酸とを、上記化学的方法など公知の方法を含めた合成方法を挙げることができる。上記1,2−ジアミノシクロヘキサンとしては、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンでもシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンでもよいが、好ましくはトランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンである。2位に置換基として直鎖アルキル基を有する飽和脂肪酸としては、具体的には、2−メチルペンタデカン酸、2−メチルヘキサデカン酸、2−メチルヘプタデカン酸、2−メチルオクタデカン酸、2−メチルノナデカン酸、2−メチルエイコサン酸、2−メチルヘンエイコサン酸、2−エチルテトラデカン酸、2−エチルペンタデカン酸、2−エチルヘキサデカン酸、2−エチルヘプタデカン酸、2−エチルオクタデカン酸、2−エチルノナデカン酸、2−エチルエイコサン酸、2−プロピルトリデカン酸、2−プロピルテトラデカン酸、2−プロピルペンタデカン酸、2−プロピルヘキサデカン酸、2−プロピルヘプタデカン酸、2−プロピルオクタデカン酸、2−プロピルノナデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−ブチルトリデカン酸、2−ブチルテトラデカン酸、2−ブチルペンタデカン酸、2−ブチルヘキサデカン酸、2−ブチルヘプタデカン酸、2−ブチルオクタデカン酸、2−ペンチルウンデカン酸、2−ペンチルドデカン酸、2−ペンチルトリデカン酸、2−ペンチルテトラデカン酸、2−ペンチルペンタデカン酸、2−ペンチルヘキサデカン酸、2−ペンチルヘプタデカン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルウンデカン酸、2−ヘキシルドデカン酸、2−ヘキシルトリデカン酸、2−ヘキシルテトラデカン酸、2−ヘキシルペンタデカン酸、2−ヘキシルヘキサデカン酸、2−ヘプチルノナン酸、2−ヘプチルデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、2−ヘプチルトリデカン酸、2
−ヘプチルテトラデカン酸、2−ヘプチルペンタデカン酸、2−オクチルオクタン酸、2−オクチルノナン酸、2−オクチルデカン酸、2−オクチルウンデカン酸、2−オクチルドデカン酸、2−オクチルトリデカン酸、2−オクチルテトラデカン酸、2−ノニルノナン酸、2−ノニルデカン酸、2−ノニルウンデカン酸、2−ノニルドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−デシルデカン酸、2−デシルウンデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−ウンデシルウンデカン酸等を挙げることができる。
【0016】
本発明の(A)油ゲル化剤における(A1)上記式(I)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体と(A2)上記式(II)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の質量比は、特に限定されないが、80:20〜20:80が好ましく、60:40〜20:80がより好ましい。式(I)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の割合が、80質量%を超えると、本発明の油ゲル化剤が、結晶性が高くなり、硬くなりすぎたり透明性が著しく低下する可能性があり、20質量%未満となるとゲル硬度が著しく低下する可能性がある。
【0017】
本発明の油性香料組成物における成分(A)の油ゲル化剤の含有量は特に限定されないが、0.01〜20質量%(以下%と略す)が好ましく、0.1〜15%がより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる成分(B)の油剤としては、通常化粧料に用いられるものを使用することができ、例えば、以下のものが挙げられる。
流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素類;
パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;
アボガド油、アマニ油、アーモンド油、エノ油、カヤ油、菜種油、オリーブ油、コーン油、ヒマシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、小麦胚芽油、大豆油、落花生油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ツバキ油、月見草油等の植物油類;
ミンク油、魚油、ラード、ヘット等の動物油類;
アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキ
シル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル類;
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類;
パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類などを挙げることができる。
ゲルの硬さや透明性を高めるには、イソパラフィン類、オレフィンオリゴマー、水添C6−14オレフィンポリマー、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の分岐を有するポリオレフィンを含有することが有利である。中でも、水添ポリイソブテンが、ゲルの透明性の点でも付着性などの使用性からもより好ましく、肌への付着性が良いことから、組成物が肌上に滞留し、長時間にわたり芳香を持続する。市販品としては、パールリーム18、パールリーム24(日油社製)等が挙げられる。これらの油剤は単独で又は二種以上用いてもよく、成分(B)の油剤中に30%以上含有することが好ましい。
【0019】
本発明の油性香料組成物における成分(B)の油剤は70%以上、更には80%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明には、炭化水素油、ロウ、硬化油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンワックス等の常温で固体状を呈する固体油を用いることもできるが、高い透明性を得る為には、これらの固体油は1%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の油性香料組成物に用いられる成分(C)の香料成分としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、天然香料、合成香料、またはこれらを組み合わせた調合香料等が挙げられ、目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0022】
本発明における、成分(C)の香料成分の含有量は3〜30%が好ましく、更に5〜20%が好ましい。この範囲であると良好な香りの演出や香りの持続性が得られ、外観や安定性の点で有利である。
【0023】
本発明の油性香料組成物の調製方法としては、特に限定されないが、上記成分(A)と成分(B)及び成分(C)とを混合した後、均一状態になるまで80〜120℃で加熱溶解する方法や、上記(A)と(B)とを混合した油ゲル化剤を調製後、それを80〜120℃に加熱した油剤に添加し、均一状態になるまで混合分散し、常温にて静置する方法を挙げることができる。必要に応じて任意成分を配合して本発明の油性香料組成物を調製してもよい。
【0024】
本発明の油性香料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば、粉体、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、褪色防止剤、消泡剤などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0025】
本発明の油性香料組成物とは、油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする実質的に水を含有しないもので、水の含有量は1%以下であることが望ましい。ペースト状から固形の形状であり、練香水、フレグランススティック等として使用することができる。また、本発明の油性香料組成物は、優れた透明性を有している為、油溶性色材で異なる色に着色した複数の着色透明の組成物や無色透明な組成物を同一容器に充填したり、組成物の中に造花やマスコット等の造形物を入れたりすることで、よりファッション性のある油性香料組成物を得ることができる。
【0026】
以下、本発明品の成分(A)の油ゲル化剤に用いられる成分(A1)、(A2)の1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の合成例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
1,2−ビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体の合成例
[化合物(1)の合成]
1,2−ジアミノシクロヘキサン3.43gとトリエチルアミン7.29gを130mLのテトラヒドロフラン(以下THF)に溶かし、氷冷下、パルミトイルクロリド19.24gを加えた。室温で1時間撹拌し、数分間加熱還流した。100mLのアセトンを加え不溶物を濾取し、アセトンで洗浄した。得た化合物を直ちに100mLのエタノールに溶解し放冷後、300mLの水を加え、不溶物を濾取した。更にアセトンで洗い乾燥後、得られた粗生成物を150mLのエタノールに加熱溶解した後、400mLのアセトンを加え、白色の析出物を濾取し、以下の式(III)で示される化合物(1)を得た。収量は12.91gであった。
【0028】
【化3】

【0029】
[化合物(2)の合成]
1,2−ジアミノシクロヘキサン3.43gとトリエチルアミン7.29gを130mLのTHFに溶かし、氷冷下、ステアロイルクロリド21.1gを加えた。室温で1時間撹拌後、数分間加熱還流した。100mLのアセトンを加え不溶物を濾取し、アセトンで洗浄した。得た化合物を直ちに100mLのエタノールに溶解し放冷後、300mLの水を加え、不溶物を濾取した。更にアセトンで洗い乾燥後、得られた粗生成物を150mLのエタノールに加熱溶解し、150mLのアセトンを加え、白色の析出物を濾取し、以下の式(IV)で示される化合物(2)を得た。収量は11.5gであった。
【0030】
【化4】

【0031】
[化合物(3)の合成]
1,2−ジアミノシクロヘキサン11.42gとトリエチルアミン24.29gを250mLのTHFに溶かし、氷冷下、2−ヘキシルデカノイルクロリド54.98gを加えた。室温で1時間撹拌後、数分間加熱還流した。エバポレーターでTHFを留去し、100mLのアセトンを加え不溶物を濾取し、アセトンで洗浄した。得た化合物を直ちに100mLのエタノールに溶解し放冷後、300mLの水を加え、不溶物を濾取した。更にアセトンで洗い乾燥後、得られた粗生成物を400mLのアセトンから再結晶し、白色の析出物を濾取し、以下の式(V)で示される化合物(3)を得た。収量は43.14gであった。
【0032】
【化5】

【0033】
[化合物(4)の合成]
1,2−ジアミノシクロヘキサン3.43gとトリエチルアミン7.29gを130mLのTHFに溶かし、氷冷下、2−ヘプチルウンデカノイルクロリド18.18gを加えた。室温で1時間撹拌後、数分間加熱還流した。エバポレーターでTHFを留去し、100mLのアセトンを加え不溶物を濾取し、アセトンで洗浄した。得た化合物を直ちに100mLのエタノールに溶解し放冷後、300mLの水を加え、不溶物を濾取した。更にアセトンで洗い乾燥後、得られた粗生成物を400mLのアセトンから再結晶し、白色の析出物を濾取し、以下の式(VI)で示される化合物(4)を得た。収量は10.81gであった。
【0034】
【化6】

【実施例】
【0035】
以下に本発明品の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜5及び比較例1〜3:油性香料化粧料(固形・流し込み)]
下記の表1に示す組成の油性香料化粧料(固形)を調整し、外観、使用性、芳香の持続性について、下記の評価方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【表1】

※1:レオパールKL2(千葉製粉社製)
※2:パールリーム18(日油社製)

【0036】
<製造方法>
A.成分(1)〜(7)を120℃で加温溶解し、均一に混合する。
B.Aに成分(8)を加え、均一に混合する。
C.Bを脱泡後、ジャー容器に充填、冷却し、油性香料化粧料(固形)を得た。
【0037】
<評価方法>
評価は下記評価基準に基づき、外観の透明性については評価者1名が目視にて、外観のツヤ感、使用性、芳香の持続性については評価者10名が、組成物を指でとり肌に使用して評価し、下記4段階評価にて評点を付け、評点の平均値を算出した。
外観の透明性の評価基準:
得られた油性香料組成物をポリメチルメタクリレート樹脂製1cm角セルに充填し、セルを通してCentury体12フォントの文字が判読できない場合は「白濁」、濁りがありながらも判読できる場合を「半透明」、濁りが殆どなくはっきり判読できる場合を「透明」と判断して評価した。
外観のツヤの評価基準:
得られた油性香料組成物が表面にツヤがある美しい外観であるかを目視にて評価した。
使用性の評価基準:
得られた油性香料組成物を指でとり、肌に塗布する際に、組成物の指へのとれや、肌への付着が良く使いやすさが良好であるかを評価した。
芳香の持続の評価基準:
肌への付着後、通常の生活をおこなってもらい6時間後までの香りの持続が良好であるかを評価した。
(4段階評価)
評点:評価
3点:非常に良好
2点:良好
1点:やや不良
0点:不良
【0038】
実施例1〜5の油性香料組成物は組成物の外観、使用性、芳香の持続の全ての項目において良好な結果が得られた。特に実施例1と実施例2は、濁りのない透明な組成物が得られ、外観のツヤ感も十分に感じられるものであった。実施例5は組成物を指でとる時にやや硬さが感じられた。一方、油ゲル化剤として、直鎖アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体である化合物のみを配合した比較例1、分岐アルキル基を含有するビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体である化合物のみを配合した比較例2、油ゲル化剤としてパルミチン酸デキストリンを用いた比較例3では外観が不透明であった。
【0039】
[実施例6:油性香料化粧料(スティック状)]
(成分) (%)
1.化合物(2) 3.5
2.化合物(4) 3.5
3.水添ポリイソブテン※2 残量
4.ジメチルポリシロキサン 0.03
5.香料成分 7
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を120℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(5)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、容器に充填し、冷却してスティック状油性香料化粧料を得た。
上記により得られたスティック状油性香料化粧料は、塗布時の滑らかな使用性、肌への付着に優れ、芳香の持続性のある、透明でツヤ感のある外観を持つ審美性に優れたものであった。
【0040】
[実施例7:油性香料化粧料(ペースト状)]
(成分) (%)
1.化合物(1) 0.1
2.化合物(3) 0.1
3.リンゴ酸ジイソステアリル 20
4.ポリブテン※3 残量
5.メチルポリシロキサン 0.1
6.フェノキシエタノール 0.2
7.ジブチルヒドロキシトルエン 0.01
8.赤色226号 微量
9.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末
(星型、平均粒径3mm) 0.5
10.香料成分 20
※3:ポリブテン2000H(出光興産社製)
【0041】
(製造方法)
A.成分(1)〜(7)を110℃で加温溶解し、均一に混合する。
B.Aに(8)〜(10)を添加して均一に混合する。
C.Bを脱泡後、透明樹脂チューブに充填し、ペースト状油性香料化粧料を作成した。
上記により得られたペースト状油性香料化粧料は、塗布時の使用感に優れ、芳香の持続性のある、着色した透明な組成物中に星型のラメ剤が見える、審美性に優れたものであった。
【0042】
[実施例8:油性室内芳香剤(固形・円筒型)]
(成分) (%)
1.化合物(1) 5
2.化合物(4) 5
3.ポリエチレンワックス 0.2
4.水添ポリイソブテン※2 10
5.トリオクタン酸ジグリセリル 残量
6.ジメチルポリシロキサン 0.1
7.香料成分 25
【0043】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を120℃で加温溶解し、、均一に混合する。
B.Aに(7)を添加して均一に混合する。
C.Bを脱泡後、造花を配した円筒型の型に充填し、冷却後、型から抜いて固形油性室内芳香剤を作成した。
上記により得られた固形の油性室内芳香剤は、透明な組成物の中に造花が配された外観の美しいものであり、芳香の持続性に優れたものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)(A1)式(I)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体
及び、
【化1】

(A2)式(II)で表されるビス(アシルアミノ)シクロヘキサン誘導体
とを含む油ゲル化剤;
【化2】

(B)油剤;
(C)香料成分;
を含むことを特徴とする油性香料組成物。
【請求項2】
前記成分(A)における(A1):(A2)の質量比が80:20〜20:80であることを特徴とする請求項1に記載の油性香料組成物。
【請求項3】
前記成分(B)が、分岐を有するポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の油性香料組成物。
【請求項4】
前記分岐を有するポリオレフィンが、水添ポリイソブテンであることを特徴とする請求項3に記載の油性香料組成物。
【請求項5】
前記成分(C)を3〜30質量%を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油性香料組成物。
【請求項6】
前記油性香料組成物が化粧料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油性香料組成物。


【公開番号】特開2012−52056(P2012−52056A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197401(P2010−197401)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】