説明

油揚食品

【課題】口の中で崩れるように溶ける食感の油揚食品を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜100部を配合することを特徴とする油揚食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口の中で崩れるように溶ける食感を有する油揚食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツ、てんぷら、唐揚げ等の油揚食品は、現在の日本人の食生活においてなくてはならない食品となっている。また、最近では、歯応えが少なく、口の中で崩れるように溶ける食感が好まれる傾向にあり、杏仁豆腐、プリン、クリーム等のゲル状又は液状食品に留まらず、ドーナツやクッキー等の固形状食品においても同様の食感が求められている。
【0003】
口の中で崩れるように溶ける食感を有する油揚食品を調製する方法として、特開2007−215499号公報(特許文献1)には、パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、前記パフ種を油で被覆する工程と、前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程とを備えることを特徴とするスナック菓子の製造方法が記載されている。しかしながら、パフ状の食品にしか用いることができず、また、調製する工程が煩雑であるため消費者の要望を十分に満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−215499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、口の中で崩れるように溶ける食感を有する油揚食品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し特定比率のショ糖脂肪酸エステルを配合するならば、意外にも油揚食品が口の中で崩れるように溶ける食感に仕上がることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜100部を配合する油揚食品、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口の中で崩れるように溶ける食感の商品価値の高い油揚食品を提供することができ、新たな需要を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
本発明の油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜100部を配合することを特徴とする。好ましくは、0.5〜100部であり、より好ましくは1〜20部である。ショ糖脂肪酸エステルの配合量が、前記範囲より少ないと、モチモチとして口の中に残る食感となり好ましくない。前記範囲より多いと、油っこく重い食感となり好ましくない。
【0011】
本発明において油揚食品とは、100℃以上に熱した油の中で食材を加熱調理した食品を指す。例えば、ルウや野菜、畜肉、魚介類等の食材を中種とし、その表面に澱粉や蛋白質から成る衣を付着させた、コロッケ、唐揚げ、海老フライ等の衣付きの油揚食品、揚げ玉等の衣そのもの、ドーナツ、ポテトチップ等の素揚げの油揚食品が挙げられる。特に、ドーナツ、ポテトチップ、揚げ玉が好ましく、ドーナツが本発明の効果を顕著に感じられるためもっとも好ましい。
【0012】
ヒアルロン酸とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。本発明で使用する原料ヒアルロン酸及び/又はその塩は、特に限定されるものではないが、例えば鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生体組織、あるいはストレプトコッカス属等のヒアルロン酸産生微生物を培養して得られる培養液等を原料として、抽出(更に必要に応じて精製)して得られるものである。
【0013】
本発明の油揚食品に用いるヒアルロン酸及び/又はその塩は、特に限定されるものではなく、当該粗抽出物あるいは精製物の何れを用いても良いが、精製物、具体的にはヒアルロン酸及び/又はその塩の純度が90%以上のものが好ましい。純度が90%未満の場合は、保管中に着色等の性状変化が生じ、ひいては本発明の口の中で崩れるように溶ける食感が損なわれる恐れがあり好ましくない。
【0014】
また、本発明で使用するヒアルロン酸の塩としては、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されない。好ましくは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0015】
本発明の油揚食品に用いるヒアルロン酸及び/又はその塩の配合量は、0.002〜4%が好ましく、0.05〜0.6%がより好ましい。ヒアルロン酸及び/又はその塩の配合量が前記範囲より少ないと、口の中で崩れるように溶ける食感が得られないことがあり、前記範囲より多いと、配合量に応じた効果が得られ難く経済的でない。
【0016】
本発明に用いるショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖中の1個あるいは2個以上の水酸基と飽和あるいは不飽和の脂肪酸とがエステル結合したものであり、市販されているものであれば何れでも良いが、油分離を防止する効果が得られ易いことから、HLB(親水性親油性バランス)が6〜16のものが好ましく、10〜16がより好ましい。
【0017】
本発明の油揚食品に用いるショ糖脂肪酸エステルの配合量は、0.02〜2%が好ましく、0.05〜1%がより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの配合量が前記範囲より少ない場合、口の中で崩れるように溶ける食感が得られないことがあり、前記範囲より多い場合、油っこく重い食感となり好ましくない。
【0018】
本発明の油揚食品が衣付きの場合、ヒアルロン酸及び/又はその塩及びショ糖脂肪酸エステルは、衣に配合した場合により本発明の効果を奏し易く好ましい。
【0019】
本発明の油揚食品が衣付きの場合、衣として付着させる澱粉は、特に限定されるものではないが、例えば、小麦粉、米粉等の穀粉、片栗粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉等の生澱粉、これらを常法によりα化処理、湿熱処理等の物理的処理を行った澱粉、酵素処理を行った澱粉、更に、常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理等の化学的処理の1種又は2種以上を行った架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酸化澱粉等の加工澱粉を1種又は2種以上用いることができる。
【0020】
本発明の油揚食品が衣付きの場合、衣として付着させる蛋白質は、特に限定されるものではないが、例えば、液卵、牛乳、ホエイ、豆乳、大豆蛋白、小麦蛋白等、これらを常法により酵素処理、脱脂処理、脱糖処理、分画処理等の処理を1種又は2種以上行った蛋白質を1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
本発明の油揚食品に用いる食材は、特に限定されるものではなく、例えば、ホワイトソース、ドミグラスソース、カレー、トマトクリームソース、カルボナーラソース、カスタードクリーム、フラワーペースト等のルウ、小麦、薄力粉、米、米粉、大豆、きな粉、とうもろこし、インゲン豆、レンズ豆等の穀類、カボチャ、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ホウレンソウ、キャベツ、ナス、トマト、ピーマン、アスパラガス、タマネギ等の野菜、シイタケ、マッシュルーム等のきのこ類、牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉、家禽の卵、チーズ等の乳製品、マグロ、サケ、マス、カニ、エビ、イカ、ホタテ、牡蛎等の魚介類等が挙げられ、必要に応じてミンチ、加熱、成型等の下処理を施して用いれば良い。
【0022】
本発明の油揚食品には、前記原料以外に、本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、グルコース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、オリゴ糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、トレハロース、パラチノース等の甘味料、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リゾリン脂質等の乳化剤、ラム酒、味醂、日本酒等の酒類、醤油、食塩、核酸、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、胡椒等の香辛料、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸及びその塩、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のミネラル類、ビタミン類、各種ペプチド、デキストリン、色素、香料等が挙げられる。
【0023】
また、本発明で得られる油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し0.1〜100部のショ糖脂肪酸エステルを配合することにより、脂質含有率を全体の25%以下、好ましくは20%以下まで低減したヘルシーな油揚食品を供することができる。
【0024】
本発明の油揚食品を製造する方法は、常法に則り調製すればよいが、冷凍保存し、必要により取り出して油揚調理しても、口の中で崩れるように溶ける食感に仕上がるため冷凍処理することが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の油揚食品を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0026】
〔実施例1〕
まず、薄力粉54%、鶏卵を割卵後30メッシュのストレーナーでろ過して調製した全卵液17%、グラニュ糖12%、バター7%、ベーキングパウダー1%、ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)0.4%、ヒアルロン酸及び/又はその塩0.2%、清水8.6%を攪拌混合した。次に、へらで生地を良くこねた後、約7mmの厚さに伸ばし、ドーナツ型(外径φ80mm、内径40mm)で打ち抜き、ドーナツ型の生地を調製した。最後に、いったん冷凍保管をした後、油温170℃で3分間油揚し、本発明の油揚食品(ドーナツ)を調製した。なお、得られた油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステルを2部配合していた。
【0027】
〔実施例2〕
ヒアルロン酸及び/又はその塩0.2%をヒアルロン酸及び/又はその塩0.02%及び清水0.18%に置換えた以外は、実施例1に準じて本発明の油揚食品(ドーナツ)を調製した。なお、得られた油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステルを20部配合していた。
【0028】
〔実施例3〕
ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)0.4%をショ糖脂肪酸エステル(HLB15)0.04%及び清水0.36%に置換えた以外は、実施例1に準じて本発明の油揚食品(ドーナツ)を調製した。なお、得られた油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステルを0.2部配合していた。
【0029】
〔比較例1〕
ヒアルロン酸及び/又はその塩をグラニュ糖に置き換えた以外は、実施例1に準じて油揚食品(ドーナツ)を調製した。
【0030】
〔比較例2〕
ヒアルロン酸及び/又はその塩をキサンタンガムに置き換えた以外は、実施例1に準じて油揚食品(ドーナツ)を調製した。
【0031】
〔比較例3〕
ヒアルロン酸及び/又はその塩をカラギーナンに置き換えた以外は、実施例1に準じて油揚食品(ドーナツ)を調製した。
【0032】
〔比較例4〕
ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)をグラニュ糖に置き換えた以外は、実施例1に準じて油揚食品(ドーナツ)を調製した。
【0033】
〔試験例1〕
実施例1〜3及び比較例1〜4の油揚食品(ドーナツ)について、下記の評価基準に従い、口の中で崩れるように溶ける食感を官能評価により判定した。結果を表1に示す。
<食感>
A:非常に口の中で崩れるように溶ける食感を呈する。
B:若干口の中で崩れるように溶ける食感に劣るが、品位上問題はない。
C:口の中で崩れるように溶ける食感に欠け、油揚食品の適性に欠ける。
【0034】
〔表1〕

【0035】
表1の結果、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜100部を配合した場合、口の中で崩れるように溶ける食感が得られ好ましかった(実施例1〜3)。特に、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.5〜100部を配合した場合、非常に口の中で崩れるように溶ける食感を呈し好ましかった(実施例1、2)。一方、ショ糖脂肪酸エステルを0.1部未満配合した場合、100部より多く配合した場合、また、ヒアルロン酸及び/又はその塩を同じ多糖類であるキサンタンガムやカラギーナンに置き換えた場合、粘稠性の食感となり口溶けが悪かった(比較例1〜4)。また、冷凍保管を行わなかった以外は、実施例1に準じて油揚食品(ドーナツ)を調製したところ、実施例1と比べ若干劣るものの、口の中で崩れるように溶ける食感が得られた。なお、比較例1の油揚食品(ドーナツ)の脂質含有率はが29%だった。これに対し、実施例1の脂質含有率は20%であり、比較例1と比べ相対的に30%も減少していた。
【0036】
〔実施例4〕
ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)をショ糖脂肪酸エステル(HLB8)に置換えた以外は、実施例1に準じて本発明の油揚食品(ドーナツ)を調製した。得られた油揚食品(ドーナツ)は、実施例1にはやや劣るものの、口の中で崩れるように溶ける食感が得られ好ましいものであった。なお、得られた油揚食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステルを2部配合していた。
【0037】
〔実施例5〕
まず、液全卵8%、清水22.4%を合わせた中に、薄力粉15.5%、ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)0.3%、ヒアルロン酸及び/又はその塩0.3%を混合し衣液を調製した。次に、前記衣液に剥きエビ46%、2〜3cmに切った三つ葉7.5%を加えて混ぜた後、油温170℃で3分間油揚し、本発明の油揚食品(かき揚げ)を調製した。得られた油揚食品(かき揚げ)の衣は、口の中で崩れるように溶ける食感が得られ好ましいものであった。なお、得られた油揚食品(かき揚げ)は、ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル(HLB15)を1部配合していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸及び/又はその塩1部に対し、ショ糖脂肪酸エステル0.1〜100部を配合することを特徴とする油揚食品。

【公開番号】特開2012−115212(P2012−115212A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268340(P2010−268340)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】