説明

油槽シールを交換するための方法およびシールアセンブリ

【課題】サービス作業員が、油槽シールが車両で交換されるときに、旧式のトーンリング型ターゲットをより新しく、かつ好ましいエンコーダ式リングと交換することができる油槽シールを交換するための方法を提供する。
【解決手段】油槽シール16を交換するための方法であって、その方法は、静止車軸12を設けるステップと、車軸12上に回転可能に支持されるハブ14を設けるステップと、ハブ14と車軸12との間の間隙区間から使用済みの油槽シールを除去するステップとを含み、使用済みの油槽シールは、一体型トーンリング式ターゲットを有し、さらにハブ14と車軸12との間の間隙区間に新たな油槽シール16を装着するステップを含む。新たな油槽シール16は、北極性と南極性との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備えるエンコーダリング56を備える式エンコーダリングターゲットを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は一般に、一体型のオイルシールおよび速度センサ特徴部を含む車両のホイールハブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ホイールアセンブリに組み込まれた車両速度センサは、多くの有用な目的を有する。速度センサアセンブリに関する1つの共通の使用は、車両のアンチロックブレーキングシステムと協働することである。車両のブレーキング状態中に、速度センサアセンブリからのパルス化された電気信号によって生成された速度信号が、車両速度における低下に応答する車載コンピュータに送信される。ホイールのロックアップ状態が予想される場合には、コンピュータは、ブレーキシステムにおける弁に、ホイールにあるブレーキアセンブリの中の液圧を緩和または調整するように指示し、それによって、望ましくないホイールのロックアップ状態を回避する。コンピュータが、ロックアップ状態がもはや差し迫っていないと決定すると、制動圧力は、正常動作に戻る。
【0003】
大型のトラックおよび商用車両の場合には、回転ハブとその静止車軸との間にいわゆる油槽シールを組み込み、ころ軸受アセンブリの領域内に収容される潤滑流体を維持することが一般的である。車両速度センサが所望であるような用途の場合には、速度センサアセンブリのターゲット部分を油槽シールに組み込むことが教示されている。言い換えれば、速度センサアセンブリ用のターゲットが、油槽シールのその部分に取り付けられ、静止車軸を中心にしてハブと共に回転する。検知デバイスの静止部分、すなわち、センサ自体は、きわめて近接したターゲットに向けられ、これによって、ハブの回転に伴って電気パルスを生成することができ、電気パルスはその後車両の速度に変換される。
【0004】
従来技術の技法によれば、車両のホイールシステムに用いられるような速度センサアセンブリは、2つの一般的なカテゴリ、すなわち、可変磁気抵抗型センサシステムおよび誘導型センサシステムに入る。可変磁気抵抗センサは、コイルを介して鉄製のターゲットに向かう磁界を放射し、アクチュエータとして機能する受動デバイスである。アクチュエータのターゲットが移動するとき、歯車の歯、ブレードなどの形態のその不連続性が、コイルに電圧を励起し、したがって、ターゲット速度に比例する周波数および電圧を有する正弦波電流を生成する。各不連続性が、ピックオフコイルの近傍を通過すると、サイクルが反復されるため、それはパルスおよびパルス列を生成する。可変磁気抵抗型センサは、動作において比較的大きな電圧の振幅が生成される場合に好ましい場合がある。
【0005】
誘導センサは、構成において可変磁気抵抗型にある程度類似しており、同種の信号を生成するが、その誘導ピックオフコイルは、内部永久磁石を有していない点で区別される。もっと正確に言えば、誘導センサは、信号パルスを生成するために、回転永久磁石などの外部磁場の変化に依存する。回転永久磁石は、エンコーダリングと呼ばれることがよくあり、旧式のVRセンサと共に用いられることはない。エンコーダリングによって生成される磁束場は、弱すぎて、十分な信号強度を生成することができないと考えられているためである。
【0006】
両タイプのセンサアセンブリは、車両のホイール検知用途における使用のために提案されているが、油槽シールが回転ハブおよび車軸アセンブリに関連して用いられる大型トラック用途または商用車用途は、可変磁気抵抗(VR)型センサ構成を利用することがさらに一般的である。VRシステム用のターゲットは、トーンリングとも呼ばれ、油槽シールと共に組み込まれてもよい。トーンリングは、その厚い歯車状の歯または他の小鈍鋸歯状のリングのような特徴部によって特徴付けられる。このタイプの用途における使用のための可変磁気抵抗センサの一実施例は、1995年12月19日に付与され、本発明の譲受人に譲渡されたHixonの米国特許第5,476,272号において見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,476,272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
保守点検作業中、油槽シールが除去される場合には、可変磁気抵抗型センサと誘導型センサとの間の基本的な差のために、その交換には、交換中の部品と同数の歯または小円鋸歯を有する可変磁気抵抗センサのためのトーンリング型ターゲットを含むことが必要である。トーンリング型ターゲット設計は、比較的低い耐久性、厚さ/重量およびデブリの累積および腐食に対する感受性のために、多少不評になっているが、誘導型センサへの変更は、追加費用のほか、その誘導ピックオフコイルを誘導型センサアセンブリにおいて用いられるタイプに変更する労力も必要であろう。したがって、一旦、可変磁気抵抗型センサアセンブリが車両に装着されると、業界の好みが誘導型センサアセンブリに移行しつつあるとしても、次の保守点検作業では、旧式の不評のトーンリング型ターゲットを引き続き必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、回転軸を画定する車軸を備える、油潤滑式回転ハブおよび静止車軸アセンブリを備える。ハブは、軸を中心とした回転のために、車軸上で支持される。油槽シールは、ハブと車軸との間の動的シーリングインターフェイスを確立する。油槽シールは、ハブに対して固定される金属キャリアと、ハブと車軸との間の相対的な回転中に流体不透過性シールを確立するためにキャリアから延在する可撓性シーリング要素と、を含む。環状のエンコーダリングは、キャリア上に配置され、軸に対して同軸状に位置決めされる。エンコードリングは、北極性と南極性との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備える露出面を有する。可変磁気抵抗センサは、エンコードリングに隣接して配置され、偏向セクタに向かって磁界を放射し、中を通る偏向セクタの移動に応じて、正弦波電流を生成する。正弦波電流は、ハブの回転速度に比例する周波数を有する。
【0010】
したがって、本発明は、誘導センサ型アセンブリに用いられ、従来技術のトーンリング式ターゲット4に比べた場合、その低コスト、コンパクトなサイズ、軽量および耐久性のために、使用においてさらに好ましくなっているエンコーダリング型ターゲットを有利に利用する。しかし、本エンコーダリングと共に用いられるセンサは、可変磁気抵抗(VR)型センサであり、従来技術によれば、より厚いトーンリング式ターゲットに関連してのみ以前は用いられていた。したがって、本発明は、可変磁気抵抗型センサとエンコーダリング式ターゲットを合体し、車両速度を計算するために用いられる信号を生成する。この新規な手法により、サービス作業員が、油槽シールが車両で交換されるときに、旧式のトーンリング型ターゲットをより新しく、かつ好ましいエンコーダ式リングと交換することができる。
【0011】
本発明の別の態様によれば、回転ハブと静止車軸との間で動的シーリングインターフェイスを確立するためのタイプの油槽シールが、設けられる。油槽シールは、炭素鋼フランジを含む金属キャリアを備える。可撓性シーリング要素は、磨耗スリーブまたは車軸自体などの対向する面に対して流体不透過性シールを確立するために、キャリアに固定して接合される。環状のエンコーダリングは、軸に対して同軸状にフランジに固定される。エンコーダリングは、北極と南極との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備える露出面を有する。炭素鋼フランジは、軸に対して中心をなす状態にフランジ上にエンコーダリングを位置決めするためのパイロット特徴部を含む。したがって、パイロット特徴部が迅速な位置特定および完全に中心をなす状態で、フランジ上のエンコーダリングの配置を可能にするという点で、本油槽シールは、さらに迅速に作製されることができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、油槽シールを交換するための方法は、静止車軸を設けるステップと、車軸の上に回転可能に支持されるハブを設けるステップと、ハブと車軸との間の間隙区間に使用済みの油槽シールを設けるステップと、使用済みの油槽シールは、可変磁気抵抗センサ用の一体型トーンリング式ターゲットを有し、使用済みの油槽シールを除去するステップと、ハブと車軸との間の間隙区間に新たな油槽シールを装着するステップと、を含み、新たな油槽シールは、北極性と南極性との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備えるエンコーダリング式ターゲットを有する。本方法によれば、好ましいエンコーダリング式ターゲットを有する新たな油槽シールアセンブリは、旧式のトーンリング式ターゲットのための交換品として用いられる。旧式のトーンリングに関連する可変磁気抵抗センサユニットは、ターゲットのスタイルが、従来技術の教示によれば、誘導型センサに関連してのみ用いられていたスタイルに変更された場合であっても、再利用されることができる。
【0013】
本発明のこれらの特徴および利点および他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付図面に関連して考慮すれば、さらに容易に認識されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による油潤滑式回転ハブおよび静止車軸アセンブリを示す簡略化された断片の断面図である。
【図2】本発明による油槽シールアセンブリの断面図である。
【図3】本油槽シールアセンブリに関する別の構成の断面図である。
【図4】キャリアの炭素鋼フランジの上に配置された、本エンコーダリングを構成する磁気的偏向セクタを示す断片の斜視図である。
【図5】図4の場合と同様の断片の斜視図であるが、本発明の別の実施形態を示しており、溝が隣接する偏向セクタ間に形成される。
【図6】図5の場合と同様の断片の斜視図であるが、さらに別の構成を示しており、溝が各磁気的偏向セクタ内部に中心に形成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
図を参照すると、類似の数字は、複数の図面を通じて類似の部品または対応する部品を示しており、油潤滑式回転ハブおよび静止車軸アセンブリの簡略化された断面図が一般に、10で示されている。アセンブリ10は、トラックのアクスルホイール型からなってもよく、一般に12で示されている静止アクスルまたは車軸と、一般に14で示されている回転ホイールハブと、を含む。ハブ14は、中心軸「A」を中心とした回転のために、車軸12上に支持される。図1において、中心軸「A」の上のアセンブリ10の半分のみが示されており、下半分は、鏡像であると理解される。
【0016】
油槽シールは、一般に16で示され、ハブ14と車軸12との間に動的シーリングインターフェイスを確立する。一般的な配置において、油または他の潤滑流体は、図1に示すように、油槽シール16の左側で、ハブ14と車軸12との間の間隙空間に収容されるのに対して、油槽シール16の右側は、周辺空気に曝されている。円すいころ軸受アセンブリ18は、車軸12の上でハブ14用の回転支持材を提供する。ころ軸受アセンブリ18は、油槽シール16の油側に収容されるため、動作中、連続的な潤滑を受ける。さらなる円すいころ軸受アセンブリ18は、安定性を加えるために設けられてもよく、明示されてもよい。
【0017】
ここで図2を参照すると、油槽シール16は、好ましくは炭素鋼材料から作製される形成された金属ケースつまりキャリア20を含むようにさらに詳細に示されている。キャリア20は、ハブ14に対して固定され、車軸12およびその軸「A」を中心にしてハブと共に回転されるようになっている。この固定は、ハブ14の対応する形状の雌型特徴部の中にキャリア20の円筒形の外壁部分22を圧入することによって達成される。フローオンガスケット(flow−on−gasket)24は、流体密シールを完成し、ハブ14内の保持を改善するために、外壁22に施されることができる。円筒形の内壁26は、エルボ特徴部28によって、外壁22に一体に接続される。キャリア20はさらに、内壁26から延在する半径方向に延在するシェルフ30を含む。シェルフ30とは反対に、外壁22から半径方向外向きに延在しているのが、フランジ32である。
【0018】
油槽シール16はさらに、ハブ14と車軸12との間の相対的回転中における流体不透過性シールを確立するために、キャリア12から延在する可撓性シーリング要素を含む。可撓性シーリング要素は、種々の形態をとることができる。図2において、可撓性シーリング要素は、接合ポリテトラフロロエチレン(PTFE)型シール34として示され、シェルフ30に接合される。これらの公知の流体力学式シール34は、油槽シール用途において、長い耐用年数を提供する。接合PTFEシール34に加えて、可撓性シーリング要素はまた、半径方向内側のダストリップ36および半径方向外側のダストリップ38と、軸方向に延在する第1の半径方向のダストリップ40および軸方向に延在する第2の半径方向のダストリップ42と、を含んでもよい。これらのダストリップシール36〜42はすべて、動的シーリングインターフェイスに寄与し、回転ハブ14内側の油と外側の空気との間で清浄な分離を維持するようになっている。好ましくは、ダストリップ36〜42は、オーバモールディング作業において、PTFEシール34をシェルフ30に接合する作業と同時に、形成される。したがって、PTFEシール34をシェルフ30に接合するために用いられる特定の弾性の製法は、種々の動的ダストリップ36〜42を作製するのに適していてもよく、または別法において、何らかの中間結合剤が、PTFEシール34に関して良好な接着を達成するために必要であってもよい。
【0019】
好ましい実施形態の油槽シール16はまた、キャリア20と入れ子である磨耗スリーブ44を含む。磨耗スリーブ44は、軸「A」に対して同軸状に配置された環状走行面46を備える。シーリング要素の種々のシールおよびリップ特徴部は、ハブ14の回転中に走行面46との動的係合状態に保持される。図2に示されているように、走行面46は、PTFEシール34およびダストリップ36〜42が係合する半径方向係合面および軸方向係合面の両方を提供するような輪郭をなし、それによって、油槽シール16の空気側への油の移動のためのほか、空気側からの埃の浸入に対するための障壁を形成する。軸方向のスラストパッド48は、キャリア20上のオーバモールディング作業と同時に形成されてもよく、走行面46が係合する離隔バンパを提供し、それによって、軸方向のダストリップ40〜42の圧迫および磨耗スリーブ44に対する全シーリング要素の位置ずれを回避する。磨耗スリーブ44の内径は、静止車軸12との流体不透性の締まり嵌め係合を完成するために、エラストマ構成体50と共にオーバモールドされることができる。
【0020】
磨耗スリーブ44は、任意の特徴部であるが、油槽シール用の一部の用途は、種々の可撓性シーリング要素とのシーリング接触を確立するために、車軸12の一体特徴部を採用してもよい。しかし、図1および図2に示される実施例において、油槽シール16は、合体される種々のものであることが好ましい一体型磨耗スリーブ44を備え、このことは、磨耗スリーブ44が油槽シール16と永久に接合されることを意味している。この合体効果は、キャリア20から磨耗スリーブ44の分離を防止するキーパ52によって達成される。キーパ52は、この実施形態において、キャリア20が走行面46上に適切に着座された後、磨耗スリーブ44の油側に対して所定の位置に圧着されるL字型リングを備える。
【0021】
本油槽シール16は、ホイール速度を検知または検出するために用いられてもよいようなホイール速度センサアセンブリと協働するように構成される。図1を再び参照すると、ホイール速度センサアセンブリは、可変磁気抵抗(VR)型の静止センサ54を含むことが示されている。VRセンサ54は、車軸12によって把持される、示されていない取り付け構造に対して任意の周知の方式で固着され、VRセンサ54の静止取り付けを結果的に生じる。VRセンサ54は、内部コイルを介して磁界を放射する一般的な歪みに基づく種々のものからなる。交流電圧が、磁界の変化によってコイルに生成される。
【0022】
従来技術の構成において、トーンリング型ターゲットの歯は、コイルにおける電圧を励起し、したがって、正弦波電流を生成する。しかし、本発明において、さらに伝統的なトーンリング型ターゲットは、誘導センサシステムにおいてのみ見られるようなエンコーダリング56によって取って代わられる。エンコーダリング56は、キャリア20の上に配置され、軸「A」に対して同軸状に位置決めされる環状部材である。同軸性は、キャリアフランジ32の縁に張り出している外部リップなどの適切なパイロット特徴部の使用や、エンコーダリング56の内径に至るエラストマオーバモールド材料の延在によって保証される。エンコーダリング56は、北極性と南極性との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備える露出面58を有する。VRセンサ54は、エンコーダリング56の露出面58の近隣に位置決めされ、その磁界を偏向セクタに向かって放射し、磁界を通る偏向セクタの移動に応じて正弦波電流を生成する。正弦波電流は、ハブ14の回転速度に比例する周波数を有する。
【0023】
偏向セクタはおそらく、図4に最もよく示され、全体的な面と面との接触状態で、フランジ32の上に配置される永久磁石の連続的な環状ストリップによって形成される。エンコーダリング56は、図2に示されているように、フランジ32の最も外側の縁に重なってもよく、または図4に示されているように、重ならなくてもよい。好ましくは、必ずしもというわけではないが、エンコーダリング56は、エラストマベースのセラミック磁気型からなり、その一般的な組成は、そのような磁石のガスケット型用途または他のシート型用途から周知である。あるいは、エンコーダリング56は、次の磁化作業において与えられる磁石の品質によって、オーバモールディング作業において形成されることができる。そのようなセクタの数が均一であり、アーチ状の寸法が実質的に等しいという条件であれば、フランジ32の周縁部において、エンコーダリング56は、任意の数の偏向セクタに分割されてもよい。各セクタは、露出面58において、隣接するセクタとは異なる北または南の分極化を提示し、露出面58は、その周縁に沿って測定した場合、規則的に北‐南の増分において交互になっている。エンコーダリング56の軸方向の厚さは、正中線60によって区別されてもよく、目には見えないが、エンコーダリング56の後ろ側に向かって各セクタの内部で極性の逆転を示す。
【0024】
そのようなエンコーダリング56の磁気強度は、かなり弱いため、VRセンサ54によって生成される磁界における変化の量は通常、弱すぎて検出することができない。しかし、フランジ32は、炭素鋼材料から構成され、全体的な面と面との接触状態でエンコーダリング56を裏打ちするため、隣接する極またはセクタの間でループを描いているエンコーダリング56によって生成される磁界強度は、VRセンサ54が検出することができ、磁気的不連続性によって影響を及ぼされることができる点に対して、実質的に強化される。したがって、正弦波電流は、エンコーダリング56の磁気的に強化された場によって生成され、炭素鋼フランジ32による全体的な面と面との裏打ちから結果として生じる。したがって、炭素鋼フランジ32によって裏打ちされている場合には、エンコーダリング56の磁束の振幅においてゲインが達成される。
【0025】
図5は、露出面58において配置された複数の半径方向の溝62を含む本エンコーダリング56の別の実施形態を示している。1つの溝62は、偏向セクタのそれぞれに関連し、隣接する偏向セクタの間の分離線に沿って半径方向に延在する。溝62の深さは、特定の用途に合わせて可変であってもよいが、好ましい実施形態において、溝62は、露出面58から測定した軸方向の深さがエンコーダリング56の軸方向の厚さの2/3以下である。溝62は、エンコーダリング56によって生成される磁界を強める効果を有し、ハブ14が回転されるときに生成される正弦波電流の波形を鋭くする。したがって、車両ホイール速度センサシステムにおいて用いるために、より正確なパルスを生成することができることが可能である。
【0026】
図6において、溝62’の別の実施形態が、示されている。この場合には、溝62’は、露出面58において再び半径方向に配置されるが、隣接する偏向セクタの間の分離線に沿って置かれる代わりに、各溝62’が、各偏向セクタの中で中心に配置され、それによって、その偏向面を2つの半分セクタに分割する。図5に示される境界線をなす溝62のように、セクタを二等分する溝62’は、エンコーダリング56によって生成される磁界を強め、それによって検知品質を向上する。
【0027】
図3において、本油槽シールに関する別法の構成は、一般に16’で示される。図3に関連して、主要な呼称は、他の図面に関連して上述したものと同一または容易に対応する特徴部を識別するために用いられる。したがって、図3の油槽シール16’は、エンコーダリング56’が接合によって取り付けられるフランジ32’を有するキャリア20’を含む。この実施例において、エンコーダリング56’は、図2に示される出っ張っている外側リップ特徴部を含んでいない。正確に言えば、エンコーダリング56’の位置は、フランジ32’上に形成されるパイロット64’によって達成される。パイロット64’は、ダストリップ36’〜42’とは別個の特徴部であってもよく、またはダストリップ36’〜42’と一体成形されてもよい。出っ張っている外側リップの代わりに、パイロット64’が、エンコーダリング56’の内径に対応する外縁を有する単独の中央揃え特徴部として機能し、その結果、フランジ32’に対して容易に配置して接合することができる。この目的のために、接着剤66’が、静止接合を達成するために用いられることができる。接着剤66’は、たとえば、厚さ0.005〜0.025インチのエラストマフィルムを含んでもよく、これは予め磁化されていてもされていなくてもよい。実際に、接着剤66’は、意図的に非磁性であってもよい。この別法の実施形態において、磨耗スリーブ44’の直立部品つまり半径方向外向きに突出する端部フランジ45に張り出す非接触保持リップ68’の使用によって、柔軟な合体構成が達成される。柔軟な合体保持リップ68’は、この実施形態において、図3に示されているようにリップ68’を越えて押される端部フランジ45を捕捉することによって、キーパとして機能し、それによって、図2に示される剛性構成体を排除する。
【0028】
図3、図5および図6に示される種々の別法の構成は、互いにおよび図2および図4の好ましい実施形態において示される特徴部と交換されることができることは、十分に認識されよう。さらに、キャリア20および磨耗スリーブ44のシーリングの配置および構成は、目的とする用途に主に応じて、他のタイプとすることができる。
【0029】
VRセンサ54用のエンコーダリング式ターゲットの具体的な利点は、図2および図3において分かることができ、油槽シール16、16’の空気側が、耐腐食材料の中に実質的に入れられる。この事実は、パイロット特徴部64、64’の使用によって強化され、オーバモールドされたエラストマによって、実質的なシーリングの一体性および露出された炭素鋼構成要素の保護を提供する。さらに、エンコーダリング56、56’は、歯車の歯または小鈍鋸歯のような認識可能な不連続性を必要とする従来のトーンリングより実質的に薄く構成されることができるため、キャリア20、20’は、実質的に薄く、コストのかからない材料から構成されることができる。したがって、キャリア20、20’の空気側の露出面をエラストマオーバモールディングを用いて保護すること、および耐腐食性のエンコーダリング56によって、より薄く、廉価なシート金属を用いて、耐腐食性のコーティングまたは塗料を必要とすることなく、キャリア20を形成することができる。本エンコーダリング56、56’の別の利点は、この種のターゲットの永久磁石の品質から生じる。さらに詳細には、永久磁石のエンコーダリング56、56’は、油槽シール16、16’に落下し、可撓性シーリング要素を劣化させうるフェライト粒子を引き付ける。
【0030】
VRセンサ54とエンコーダリング56、56’を組み合わせる本発明の別の重要な利点は、最小ホイール速度および比較的大きな空気間隙において許容可能な電圧信号の動きを示すその能力にある。たとえば、以下の表に示されているように、VRセンサと組み合わせた従来技術のトーンリングによって生成される電圧出力と比べるために行われた試験は、同じVRセンサ54を用いるように配置された、本エンコーダリング56、56’に対して行われた。試験は、30RPM、50RPMおよび100RPMのホイール速度で行われ、各ホイール速度は、0.01インチ、0.02インチおよび0.03インチの空隙(すなわち、VRセンサ54と露出面58、58’との間の軸方向の間隔)で測定された。
【0031】
【表1】

【0032】
上記で示されているように、本エンコーダリング56、56’によって生成されたピーク電圧は、より狭い空隙の間隔において、従来技術のトーンリングによって生成されるピーク電圧より低いものの、本エンコーダリング56、56’は、空隙が増大すると、より少ない全体的信号損失を達成することは注目に値すべきである。さらに、本エンコーダリング56、56’は、より大きな空隙でより低速のホイール速度で著しく高い電圧の振幅を維持し、それによって、より低速でより正確な速度を検出することを可能にする。
【0033】
明らかに、本発明の多くの改変および変形は、上記の教示を踏まえて可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、特定的に開示された以外の態様で実行されうることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽シールを交換するための方法であって、前記方法は、
静止車軸を設けるステップと、
車軸上に回転可能に支持されるハブを設けるステップと、
前記ハブと前記車軸との間の間隙区間から使用済みの油槽シールを除去するステップと、前記使用済みの油槽シールは、一体型トーンリング式ターゲットを有し、
前記ハブと前記車軸との間の間隙区間に新たな油槽シールを装着するステップと、を含み、前記新たな油槽シールは、北極性と南極性との間で交互に並べられる複数の磁気的偏向セクタを備えるエンコーダリング式ターゲットを有する方法。
【請求項2】
シールアセンブリであって、
概ね平面のフランジを有するキャリアと、
前記キャリアに取り付けられ、半径方向の内向きに延在する主要シール要素と、
前記キャリアに対して分離して形成され、前記キャリアに対して回転可能である磨耗スリーブであって、前記主要シールが係合する略円筒形の外シーリング面と、前記外シーリング面の半径方向外向きに突出する前記磨耗スリーブの端部フランジとを有する前記磨耗スリーブと、
前記キャリア上に前記フランジと概ね平面に配置され、前記主要シール要素に軸方向に対向する前記フランジの側で、前記磨耗スリーブの前記端部フランジに半径方向に重なる関係に半径方向に内向きに突出するエラストマの可撓性非金属保持特徴部であって、前記保持特徴部に向かう方向において前記キャリアから軸方向の分離に対して、前記磨耗スリーブの前記フランジを保持するように動作する可撓性非金属保持特徴部と、を備えるシールアセンブリ。
【請求項3】
前記主要シールは、エラストマ材料によって前記キャリアに接合されるPTFE要素を備え、前記保持特徴部は、前記PTFE要素を前記キャリアに接合するために用いられるのと同一のエラストマ材料から構成される請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記保持特徴部は、半径方向のリップを備える請求項3に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36614(P2013−36614A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179535(P2012−179535)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2008−558529(P2008−558529)の分割
【原出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】