説明

油汚染土砂の油・土砂分離方法、及び油汚染土砂の油・土砂分離装置

【課題】 油汚染土砂から簡易かつ効果的に油分と土砂分を分離し得る方法及び装置を提供する。
【解決手段】 蒸気ボイラ1によって水を沸騰させて水蒸気を生成し、この水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタ2を用い、このスチームエジェクタ2により油汚染土砂を吸引するようにした。このため、油汚染土砂が高温の水蒸気にさらされることにより、油分を土砂から分離させることができる。また、スチームエジェクタの吸引時に、強いせん断力が油分に作用し、油分を土砂から分離させることができる。その後、サイクロン分離器3や、油・土砂分離水槽5により、油分を土砂から分離させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油によって汚染された油汚染土砂を、スチームエジェクタによって吸引させることにより、油分と土砂分を分離する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルタンカーが座礁や沈没するなどして海に流出した原油は、海水を汚染するだけでなく、付近の海浜の砂や土の中に油分を混入させ、あるいは染み込ませて汚染する。このような油汚染土砂の処理方法としては、種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、油汚染土砂を焼却し油分を燃焼させた後に廃棄物の最終処分場に廃棄する方法、薬品を用いて油汚染土砂の油分を凝固させた後に廃棄物の最終処分場に廃棄する方法などである。しかし、油汚染土砂の量が多量の場合には、油汚染土砂から油分のみを除去し、残りの土砂を現地に戻したり、再利用することが要請される場合もある。
【0004】
そのような場合の処理方法としては、水を入れた水槽に投入して油分を水面に浮上させるとともに、土砂分を沈殿させる方法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、この方法では、残留する油分が多く、他の油分離手段又は油除去手段を併用する必要があった。また、この方法では、油の粘度が高い場合などでは、土砂から油分を除去することが困難な場合も多かった。
【特許文献1】特開2002−129245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、油汚染土砂から簡易かつ効果的に油分と土砂分を分離し得る方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
水を沸騰させて水蒸気を生成し、前記水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に前記内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引し、前記油汚染土砂から油分と土砂分を分離させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、遠心力を利用して分離を行う遠心力分離手段に入れ、油分と土砂分を分離させること
を特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
請求項2記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記遠心力分離手段は、下方分離口へ向かって縮径する縮径筒部と、中心部付近から上方外部に向けて延設される上方分離管を有し、前記縮径筒部の内壁に沿って回転しながら下降し前記下方分離口から排出される第1回転流と、前記第1回転流に伴って生起され前記上方分離管を上昇して外部へ排出される第2回転流とを利用して、前記縮径筒部に流入した混合物を分離させるサイクロン分離器であること
を特徴とする
【0010】
また、本発明の請求項4に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、濾過部材によって濾過し、油分と土砂分に分離させること
を特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、水を入れた水槽に投入し、前記油分を水面に浮上させるとともに、前記土砂分を沈殿させることにより、両者を分離させること
を特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法は、
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引される前に、界面活性剤を添加して、前記油分と土砂分の分離を促進させること
を特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に係る油汚染土砂の油・土砂分離装置は、
水を沸騰させて水蒸気を生成する水蒸気生成手段と、
前記水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に前記内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタを備え、
前記スチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引し、前記油汚染土砂から油分と土砂分を分離させること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油汚染土砂の油・土砂分離方法、及び油汚染土砂の油・土砂分離装置では、水を沸騰させて水蒸気を生成し、この水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引するようにした。このため、油汚染土砂が高温の水蒸気にさらされることにより、油分を土砂から分離させることができる、という利点を有している。また、スチームエジェクタの吸引時に、強いせん断力が油分に作用し、油分を土砂から分離させることができる、という利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に説明する実施例は、水を沸騰させて水蒸気を生成し、この水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引するようにした。このため、油汚染土砂が高温の水蒸気にさらされることにより、油分を土砂から分離させることができ、かつ、スチームエジェクタの吸引時に、強いせん断力が油分に作用し、油分を土砂から分離させることができ、本発明を実現するための構成として最良の形態である。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置について、図面等を参照しながら詳細に説明を行う。
【0017】
図1は、本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置の全体構成を示す図である。また、図2は、図1の油汚染土砂の油・土砂分離装置におけるスチームエジェクタの構成と作用を説明する断面図である。また、図3は、図1の油汚染土砂の油・土砂分離装置におけるサイクロン分離器の構成と作用を説明する断面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置101は、蒸気ボイラ1と、スチームエジェクタ2と、サイクロン分離器3と、撹拌機4と、油・土砂分離水槽5を備えて構成されている。
【0019】
蒸気ボイラ1は、その内部に、水容器71と、加熱機72を有している。水容器71は、金属等からなり、中空箱状などに形成された容器であり、内部に水(図示せず)が収容される。加熱機72は、例えば、水容器71の下部に配置され、水容器71の底部などを加熱し、水容器71の内部の水を加熱する。これにより、水容器71内の水の温度は上昇し、1気圧(約0.1メガパスカル)の状態では約100゜Cで沸騰(気化)し、水蒸気(図示せず)となる。蒸気ボイラ1は、特許請求の範囲における水蒸気生成手段に相当している。加熱機72としては、天然ガス等のガス燃料、又は重油等の液体燃料、石炭その他の固形燃料などを燃焼させたときの熱を利用する燃焼手段、通電した際の電気抵抗を熱に変換して加熱を行う電熱手段などが利用可能である。
【0020】
蒸気ボイラ1により生成された水蒸気82(図2参照。後述。)は、配管25aと蒸気弁26と配管25bを通って、スチームエジェクタ2に導かれる。蒸気弁26は、配管の断面積などを調節可能となっており、配管25aから配管25bへ流入する水蒸気の量を調節することができ、蒸気弁26の開度を零にすることにより、スチームエジェクタ2への水蒸気の供給を停止することができる。
【0021】
スチームエジェクタ2の上部には、撹拌機4が装着されている。撹拌機4は、ホッパー7と、回転駆動源8と、回転軸9と、羽根部材10を有している。
【0022】
ホッパー7は、金属等からなり、下方に向かうにつれて内径が縮小(縮径)する両端開放の円錐管状に形成されており、上端開口7aには、シュート6の下端6aが接続している。また、ホッパー7の下端開口7bは、スチームエジェクタ2の上部の第1開口20b(図2参照。後述。)に連通している。
【0023】
ホッパー7の内部中央付近には、回転軸9が鉛直上下方向に延びるように配置され、鉛直方向線を回転の中心として回転可能なように支持されている。回転軸9の周囲には、板状の羽根部材10が複数個、取り付けられている。回転駆動源8は、例えば、電動モータなどが用いられ、回転軸9を回転駆動するように設置されている。
【0024】
シュート6は、樋状の部材であり、内底面が傾斜するように設置され、下端6aが、ホッパー7の上端開口7aの内部に差し込まれるような状態になっている。
【0025】
撹拌機4の上方には、水管41cが配置されており、水管41の下部には、複数個の開口である散水口が開設されている。このため、後述する水循環機構17のポンプ40が吸い上げた水84は、水管41aと水管41bを経て水管41cに導かれ、散水口42から、下方の撹拌機4のホッパー7の内部へ散布されるようになっている。
【0026】
上記のような構成により、回転駆動源8を始動させると、回転軸9が回転し、それに伴って羽根部材10がホッパー7内で、例えば図1の矢印D1の方向(又はD1の逆方向)に回転する。シュート6の下端6aからホッパー7内に投入された油汚染土砂81は、散水口42から散布される水84が添加されるとともに、回転する羽根部材10によってかき混ぜられ、泥土のような流動体(スラリー)状の油汚染土砂81Aとなる。このスラリー状となった油汚染土砂81Aは、スチームエジェクタ2によって吸引される。
【0027】
図2は、スチームエジェクタ2の構成と作用を説明する断面図である。図2に示すように、スチームエジェクタ2は、本体20と、蒸気流入部材21と、排出部材22を有して構成されている。
【0028】
本体20は、内部空間である内室20aを有する部材であり、本体20の上部には、内室20aに上方から連通する開口である第1開口20bが開設されている。第1開口20bは、上記したホッパー7の下端開口7bに連通している。
【0029】
また、本体20の側部、例えば図2における左側には、内室20aに図2の左方から連通する開口である第2開口20cが開設されている。第2開口20cには、蒸気流入部材21が差し込まれて取り付けられている。蒸気流入部材21は、略管状の部材であり、内部に貫通孔が形成されている。この貫通孔は、図2における左端である蒸気入口21aに開口を有し、図2における右へ向かうにつれて内径が縮小(縮径)し、内径の最小の箇所がノズル21bとなっている。ノズル21bから図2における右へ向かうにつれて内径が拡大(拡径)し、図2における右端に開口である蒸気出口21cを有している。また、蒸気流入部材21の蒸気入口21aは、上記した配管25bの左端開口に連通している。また、蒸気流入部材21の蒸気出口21cは、上記した本体20の内室20aに連通している。
【0030】
また、本体20の側部、例えば図2における右側には、内室20aに図2の右方から連通する開口である第3開口20dが開設されている。第3開口20dには、排出部材22が差し込まれて取り付けられている。排出部材22は、略管状の部材であり、内部に貫通孔が形成されている。この貫通孔は、図2における左端である入口22aに開口を有し、図2における右へ向かうにつれて内径が縮小(縮径)する縮径孔部22bとなり、その後内径が最小で等しくなる等径孔部22cとなり、最後に、内径が拡大(拡径)する拡径孔部22dとなっている。そして、図2における右端に開口である排出口22eを有している。また、排出部材22の出口22aは、上記した本体20の内室20aに連通している。また、排出部材22の排出口22eは、スチームエジェクタ2とサイクロン分離器3の間を連絡する配管25cの右端開口に連通している。
【0031】
上記のような構成により、蒸気ボイラ1により生成され配管25bによりスチームエジェクタ2に導かれた水蒸気82は、蒸気流入部材21のノズル21bの箇所に到達する。ノズル21bでは、孔の内径が最小となっているから、流体である水蒸気82は、流体における「ベルヌーイの法則(原理)」から、水蒸気の圧力が上昇し、蒸気出口21cに向かって噴出し、内室20aに入り、入口22aから排出部材22の中に流入しようとする。蒸気出口21cの断面積よりも、内室20aの断面積(水蒸気82の流動方向に垂直となる断面の面積)はかなり大きい。このため、水蒸気82が内室20aに出たときに、水蒸気82の圧力は急に減少する。したがって、排出部材22の入口22a付近では、本体20の上部の第1開口20b付近よりも圧力が格段に低くなっており、いわゆる「負圧」の状態となっており、これによって吸引力が発生する。この吸引力により、撹拌機4の下端(ホッパー7の下端開口7a)からスチームエジェクタ2の内室20aに入ってくるスラリー状の油汚染土砂81Aは、水蒸気82とともに、入口22aから排出部材22の中に吸引され、スチームエジェクタ2の排出口22eから配管25cの中へ流入しスチームエジェクタ通過物83となったときには、土砂(固体)と水蒸気(気体)が混合された流体(以下、「混相流」という。)となっている。
【0032】
上記したスチームエジェクタ2内においては、高温の水蒸気82が、内室20aに入り再び入口22aから流入する。このときに、スラリー状の油汚染土砂81Aは、高温の水蒸気82にさらされることになる。この際の作用により、油分が土砂から分離される。また、スチームエジェクタ2は、一種の「ジェットポンプ」であり、その吸引時には、強い「せん断力」がスラリー状の油汚染土砂81Aの油分に作用する。この吸引時の強大なせん断力も、油分を土砂から分離させることを助ける。ここに、スラリー状の油汚染土砂81Aは、特許請求の範囲における被吸引物に相当している。
【0033】
図1に示すように、水蒸気と油汚染土砂とが混合した流体(混相流)であるスチームエジェクタ通過物83(図2参照)は、配管25cを通って、サイクロン分離器3に投入される。図3は、サイクロン分離器3の構成と作用を説明する断面図である。
【0034】
図3に示すように、サイクロン分離器3は、本体30と、上方分離管31を有して構成されている。
【0035】
本体30は、等径筒部32と、縮径筒部33を有している。等径筒部32は、鉛直上下方向において、内径が等しい中空筒状に形成され、等径筒部32の上端は上板32aによって閉塞され、側部は円筒状の側板32bとなっており、下端は開口32eとなっている。また、等径筒部32の側板32bの側部、例えば図3における左側には、内部空間に図3の左方から連通する開口である第1開口32cが開設され、第1開口32cには、配管25cの右端が連通するように取り付けられている。
【0036】
また、等径筒部32の上板32aの中央付近には、内部空間に図3の上方から連通する開口である第2開口32dが開設され、第2開口32dには、等径筒部32よりも小径の上方分離管31が差し込まれるようにして取り付けられている。上方分離管31は、等径筒部32の中心部付近から上方外部に向けて延設されており、その上端は配管25dに連通し接続している。
【0037】
縮径筒部33は、鉛直下方に向かって縮径する中空筒状に形成され、縮径筒部33の上端は、等径筒部32の下端開口32eに連通するように接続しており、下端は下方分離口33aとなっている。
【0038】
このような構成により、サイクロン分離器3は、側部の第1開口32cから流体が高速度で流入すると、流れは、等径筒部32の内壁に沿って回転しながら下降し、さらに、縮径筒部33の内壁に沿って回転しながら下降する。この渦流88(以下、「第1回転流」という。)は、下降していき、最後には、下方分離口33aから排出される。この第1回転流88が起こると、第1回転流88の中心付近は、圧力が減少する。このため、第1回転流88の中心付近からは、第1回転流88よりも回転半径が小さくかつ上昇する渦流89(以下、「第2回転流」という。)が生起される。この第2回転流89は、第1回転流88の中心付近を上昇し、上方分離管31の下端開口31aから内部へ入り、上方分離管31内を通ってサイクロン分離器3の外部へ排出され、配管25d内へと移動する。
【0039】
この際、第1開口32cから流入した流体が混合物で構成されている場合には、混合物のうち、相対的に重量の大きな成分や、相対的に寸法(粒径等)の大きな成分は、下降する渦流である第1回転流88によって移動し、下方分離口33aから下方へ排出される。一方、混合物のうち、相対的に重量の小さな成分や、相対的に寸法(粒径等)の小さな成分は、上昇する渦流である第2回転流89によって移動し、上方分離管31から外部(配管25d)へ排出される。
【0040】
このようなサイクロン分離器3の原理により、水蒸気と油汚染土砂とが混合した流体(混相流)であるスチームエジェクタ通過物83は、第1開口32cから流入した後、比重が小さな油分、微少な油滴となった油分は、上昇する渦流である第2回転流89によって移動し、上方分離管31から外部(配管25d)へ排出される。また、比重が大きな土砂分は、下降する渦流である第1回転流88によって移動し、下方分離口33aから下方へ排出される。ここに、サイクロン分離器3は、特許請求の範囲における遠心力分離手段に相当している。サイクロン分離器3から下方へ排出された物85(以下、「サイクロン分離器通過物」という。)には、まだ油分が付着している場合がある。そのような油分は、次に説明する油・土砂分離水槽5(図1参照)によって分離される。
【0041】
図1に示すように、油・土砂分離水槽5は、上方が開放された箱状に形成されており、底板51と、図1における左側の側板52と、図1における右側の側板となる傾斜板53を有している。なお、図示はしていないが、図1の紙面の手前側に、側部を構成する側板が設けられており、図1の紙面の奥側にも、側部を構成する側板が設けられている。このような構成を有する油・土砂分離水槽5には、水84が収容されている。
【0042】
また、油・土砂分離水槽5は、第1仕切壁11と、第2仕切壁12を有している。第1仕切壁11は、図1の紙面の手前側に設けられ、側部を構成する側板(図示せず)と、図1の紙面の奥側に設けられ、側部を構成する側板(図示せず)との間を連結するように配置され、第1仕切壁11の下方が開放されている。また、第2仕切壁12は、図1の紙面の手前側に設けられ、側部を構成する側板(図示せず)と、図1の紙面の奥側に設けられ、側部を構成する側板(図示せず)との間を連結するように配置され、第2仕切壁12の上方は、水面S1には達しない程度の低い高さに設定されている。
【0043】
サイクロン分離器3から下方へ排出されたサイクロン分離器通過物85は、第1仕切壁11と側板52の間の水面S1に落下する。サイクロン分離器通過物85に残存している油分は、比重が軽いために水面S1に浮上して油層86となる。
【0044】
第2仕切壁12で仕切られた領域の底板51には、開口が設けられており、この底部開口には、配水管60と排水バルブ(弁)61と配水管62が接続されている。そして、第2仕切壁12で仕切られた領域の水中には、油吸着部材16が設置されている。油吸着部材16としては、多孔性の軽石部材、不織布等からなるフィルタなどが利用可能である。
【0045】
このような構成により、排水バルブ61を開けて静かに排水すると、水面S1の油層86は、徐々に、第2仕切壁12で仕切られた領域に移動し、油吸着部材16を通過する際に、油分が吸着される。
【0046】
また、油・土砂分離水槽5の底板51の上には、ベルトコンベア14が設置されている。また、油・土砂分離水槽5の傾斜板53の上には、ベルトコンベア14に連絡するようにして、ベルトコンベア15が設置されている。このため、サイクロン分離器3から下方へ排出され、第1仕切壁11と側板52の間の水面S1に落下したサイクロン分離器通過物85のうち、油分が浮上した残りの土砂分は、比重が重いために下方に沈殿する(図1の符号87を参照。)。この沈殿した土砂87は、ベルトコンベア14及び15によって搬送され、油・土砂分離水槽5の外部の土砂回収容器13へ投下される(図1の符号87Aを参照。)。
【0047】
また、油・土砂分離水槽5内の水84は、水循環機構17のポンプ40によってが吸い上げられ、水管41aと水管41bを経て水管41cに導かれ、散水口42から、下方の撹拌機4のホッパー7の内部へ散布されるようになっている。
【0048】
なお、図示はしていないが、サイクロン分離器3の上方分離管31から配管25dを経て運ばれた油分は、容器、濾過器、油吸着部材等へ導かれ、油分を回収するように構成すればよい。また、サイクロン分離器3の上方分離管31から配管25dを経て運ばれた物の中に土砂分が含まれている場合には、その土砂分を、再度撹拌機4に戻すように構成してもよい。
【0049】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0050】
例えば、本発明における油汚染土砂は、オイルタンカーの海難事故によって流出した油によって汚染された土砂には限定されない。地上の原油タンクや重油タンク等の破損に起因して流出した油によって汚染された土砂、ガソリンスタンドのタンク等から漏洩した油によって汚染された土砂、油田から原油を採取する場合に地盤を掘削した際に発生する油田掘削土砂などにも適用可能である。
【0051】
また、本発明は、水を沸騰させて水蒸気を生成し、水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引することにのみで成立する。上記したように、油汚染土砂がスチームエジェクタに急激に吸引された際、油汚染土砂が高温の水蒸気にさらされることにより、油分を土砂から分離させることができ、かつ、スチームエジェクタの吸引時に、強いせん断力が油分に作用し、油分を土砂から分離させることを助けるからである。したがって、スチームエジェクタを通過した時点で、すでに、油汚染土砂の油分と土砂分は、分離している。すなわち、本発明におけるスチームエジェクタは、油汚染土砂の吸引手段や搬送手段なのではなく、油汚染土砂の物性、すなわち物理的性質及び化学的性質を変化させるように処理する物性変質手段というべき装置である。ホッパー7からサイクロン分離器3まで油汚染土砂を搬送するだけなら、ベルトコンベア等の他の公知の搬送手段を用いればよいし、サイクロン分離器3に投入するために、空気等との混相流にする必要があるのならば、エジェクタの駆動流体として、常温の空気(圧縮空気)などの気体を使用すればよいからである。したがって、スチームエジェクタ通過物83は、サイクロン分離器3を通さずに、スチームエジェクタ2から直接、油・土砂分離水槽5のような水槽に投入し、比重の差(浮上と沈殿)による油・土砂分離を行ってもよい。
【0052】
スチームエジェクタを通過させた後で、他の分離手段により油分を分離してもよい。例えば、スチームエジェクタ通過物83を、濾過(フィルタ)部材、例えば、多孔性の軽石部材、不織布等からなるフィルタの上に置き、重力による浸透落下による濾過を行ってもよい。あるいは、スチームエジェクタ通過物83を、濾過(フィルタ)部材、例えば、多孔性の軽石部材、不織布等からなるフィルタの上に置き、その上から圧力を加えたり、濾過(フィルタ)部材の下方から吸引するなどして、強制的に濾過を行ってもよい。あるいは、スチームエジェクタ通過物83を、サイクロン分離器以外の他の公知の遠心力分離手段に入れ、遠心力よる油・土砂分離を行ってもよい。
【0053】
また、スチームエジェクタの後に、さらにスチームエジェクタに入れるなど、スチームエジェクタを多段階に接続してもよい。
【0054】
また、スチームエジェクタを通す以前に、油・土砂分離水槽5のような水槽に投入したり、サイクロン分離器3を通過させるなどして、あらかじめ油分を除去する前工程を行うようにしてもよい。あるいは、図1に示すように、スチームエジェクタ2の前の配管25bの途中に、界面活性剤供給器78と、配管75、77と、弁76を設け、界面活性剤(図示せず)を適宜に添加するように構成してもよい。このように構成すれば、油分と土砂分の分離を、さらに促進させることが可能となる。界面活性剤供給器78は、図示はしていないが、その内部に、界面活性剤の入った容器と、界面活性剤を配管77に送るポンプを有している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、油汚染土砂から油分と土砂分を分離処理する産業等で実施可能であり、これらの産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置におけるスチームエジェクタの構成と作用を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1実施例である油汚染土砂の油・土砂分離装置におけるサイクロン分離器の構成と作用を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 蒸気ボイラ
2 スチームエジェクタ
3 サイクロン分離器
4 撹拌機
5 油・土砂分離水槽
6 シュート
6a 下端
7 ホッパー
7a 上端開口
7b 下端開口
8 回転駆動源
9 回転軸
10 羽根部材
11 第1仕切壁
12 第2仕切壁
13 土砂回収容器
14、15 ベルトコンベア
16 油吸着部材
17 水循環機構
20 本体
20a 内室
20b 第1開口
20c 第2開口
20d 第3開口
21 蒸気流入部材
21a 蒸気入口
21b ノズル
21c 蒸気出口
22 排出部材
22a 入口
22b 縮径孔部
22c 等径孔部
22d 拡径孔部
22e 排出口
25a〜25d 配管
26 蒸気弁
30 本体
31 上方分離管
31a 下端開口
32 等径筒部
32a 上板
32b 側板
32c 第1開口
32d 第2開口
32e 下端開口
33 縮径筒部
33a 下方分離口
40 ポンプ
41a〜41c 水管
42 散水口
51 底板
52 側板
53 傾斜板
60 排水管
61 排水バルブ
62 排水管
71 水容器
72 加熱機
75 配管
76 弁
77 配管
78 界面活性剤供給器
81 油汚染土砂
81A スラリー状の油汚染土砂
82 水蒸気
83 スチームエジェクタ通過物
84 水
85 サイクロン分離器通過物
86 油層
87、87A 土砂
88 第1回転流
89 第2回転流
101 油汚染土砂の油・土砂分離装置
S1、S2 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を沸騰させて水蒸気を生成し、前記水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に前記内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引し、前記油汚染土砂から油分と土砂分を分離させることを特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項2】
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、遠心力を利用して分離を行う遠心力分離手段に入れ、油分と土砂分を分離させること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項3】
請求項2記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記遠心力分離手段は、下方分離口へ向かって縮径する縮径筒部と、中心部付近から上方外部に向けて延設される上方分離管を有し、前記縮径筒部の内壁に沿って回転しながら下降し前記下方分離口から排出される第1回転流と、前記第1回転流に伴って生起され前記上方分離管を上昇して外部へ排出される第2回転流とを利用して、前記縮径筒部に流入した混合物を分離させるサイクロン分離器であること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項4】
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、濾過部材によって濾過し、油分と土砂分に分離させること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項5】
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引された後に排出されて生成されたスチームエジェクタ通過物を、水を入れた水槽に投入し、前記油分を水面に浮上させるとともに、前記土砂分を沈殿させることにより、両者を分離させること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項6】
請求項1記載の油汚染土砂の油・土砂分離方法において、
前記油汚染土砂が前記スチームエジェクタにより吸引される前に、界面活性剤を添加して、前記油分と土砂分の分離を促進させること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離方法。
【請求項7】
水を沸騰させて水蒸気を生成する水蒸気生成手段と、
前記水蒸気をノズルから内室へ噴出させた後に外部へ排出させる際に前記内室に発生する負圧を利用して被吸引物を吸引するスチームエジェクタを備え、
前記スチームエジェクタにより油汚染土砂を吸引し、前記油汚染土砂から油分と土砂分を分離させること
を特徴とする油汚染土砂の油・土砂分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−198530(P2006−198530A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13335(P2005−13335)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【Fターム(参考)】