説明

油溶性消臭剤組成物

【課題】安全性が高く、かつ効率良くアンモニアおよびアミン類等の臭気を除去することができ、刺激臭などがない油溶性消臭剤組成物を提供する。
【解決手段】ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を有効成分として含有する油溶性消臭剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアおよびアミン類等の臭気を有効に除去しうる油溶性消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アミン類の臭気を除去する目的で使用される油溶性消臭剤としては、メタアクリル酸のエステル類(特許文献1、特許文献2)、香料組成物のアルデヒド類等(特許文献3)が報告されている。
【0003】
また、ジカルボン酸構造をもつ物質として、コハク酸、フタル酸、ジメチルエイコ酸二酸およびテトラデカン二酸等が挙げられるが、油性溶剤例えば炭化水素系溶剤に溶解することができないため水性消臭剤にしか展開ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−44441号公報
【特許文献2】特開平1−129854号公報
【特許文献3】特開2001−303090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メタアクリル酸エステル類として一般に用いられているラウリルメタアクリレートは、アミン類の臭気に対して消臭効果が弱いという欠点を有している。また、アルデヒド類などは、アミン類の臭気に消臭効果を示すが、消臭効果を示す物質には特有の強い刺激臭があり使用者に不快感を与えるため、その使用方法が限定されるという欠点がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、安全性が高く、かつ効率良くアンモニアおよびアミン類等の臭気を除去することができ、刺激臭などがない油溶性消臭剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ダイマー酸類及びトリマー酸類が、アンモニア、およびトリメチルアミン等のアミン類の臭気に対して優れた消臭効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下である。
1.ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を有効成分として含有する油溶性消臭剤組成物。
2.ダイマー酸類がダイマー酸および水素化ダイマー酸の少なくとも一方である前項1に記載の油溶性消臭剤組成物。
3.トリマー酸類がトリマー酸および水素化トリマー酸の少なくとも一方である前項1または2に記載の油溶性消臭剤組成物。
4.さらに脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方を含有する前項1〜3のいずれか1項に記載の油溶性消臭剤組成物。
5.脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、銅、鉄、亜鉛及びマグネシウムから選ばれる1種以上である前項4に記載の油溶性消臭剤組成物。
6.脂肪酸金属塩がリシノレイン酸亜鉛である前項4または5に記載の油溶性消臭剤組成物。
7.ダイマー酸類およびトリマー酸類の合計含有量が0.1重量%以上である前項1〜6のいずれか1項に記載の油溶性消臭剤組成物。
8.ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を用いて、アンモニア臭またはアミン臭を消臭する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を有効成分として含有することにより、従来の油溶性消臭剤組成物と比較して、アンモニア、トリメチルアミン等のアミン類の臭気に優れた消臭効果を示す。
【0010】
また、本発明の油溶性消臭剤組成物に含まれるダイマー酸類はジカルボン酸の骨格を持ち、トリマー酸類はトリカルボン酸の骨格を持つが、油性溶剤の炭化水素等に容易に溶解することが可能であり、非常に有用である。
【0011】
さらに、ダイマー酸類およびトリマー酸類は、巨大な分子量にもかかわらず流動性がある液状物質であり、本発明の油溶性消臭剤組成物は、取り扱いの点においても優れている。
【0012】
また、本発明の油溶性消臭剤組成物は、刺激臭などがないため、安全性が高く、様々な製品に添加して使用することができ、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、「重量%」は「質量%」と同義である。
【0014】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を有効成分として含有する。
【0015】
本発明において、ダイマー酸類とは、不飽和脂肪酸の二量体からなるジカルボン酸およびダイマー酸が通常有する不飽和結合を還元した水素化ダイマー酸をいう。ダイマー酸類は、ダイマー酸および水素化ダイマー酸の少なくとも一方であることが好ましい。ダイマー酸および水素化ダイマー酸は、単独または混合して使用することができる。
【0016】
本発明において、ダイマー酸とは、不飽和脂肪酸の二量体からなるジカルボン酸である。ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸としては、炭素数10以上のものが好ましく、特に炭素数が18のものがより好ましい。
【0017】
炭素数が18の不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸等が挙げられる。ダイマー酸はこれらの不飽和脂肪酸を二量化することにより調製することができる。
【0018】
一般に入手可能なダイマー酸は、菜種油、大豆油およびトール油等の植物由来の原料から精製され、不飽和脂肪酸の低重合体からダイマーを分離することにより得られるものである。
【0019】
ダイマー酸としては、例えば、脂肪族ダイマー酸、並びに脂環族ダイマー酸、芳香族ダイマー酸および二環状ダイマー酸などの環状ダイマー酸などが挙げられる。ダイマー酸は、1種類のダイマー酸を使用することもできるし、2種以上のダイマー酸を混合して使用することもできる。
【0020】
水素化ダイマー酸とは、ダイマー酸に水素添加することにより、ダイマー酸が通常有する不飽和結合を還元したダイマー酸をいう。本発明に使用する水素化ダイマー酸は、前記説明したダイマー酸をそれぞれ水素添加して還元したものを使用することができる。
【0021】
特に、ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸の炭素数が18であるダイマー酸を水素添加して還元したものが好ましく、ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸であるダイマー酸を水素添加して還元したものがより好ましい。
【0022】
水素化ダイマー酸は、1種類の水素化ダイマー酸を使用することもできるし、2種以上の水素化ダイマー酸を混合して使用することもできる。
【0023】
本発明において、トリマー酸類とは、不飽和脂肪酸の三量体からなるトリカルボン酸およびトリマー酸が通常有する不飽和結合を還元した水素化トリマー酸をいう。トリマー酸類は、トリマー酸および水素化トリマー酸の少なくとも一方であることが好ましい。トリマー酸および水素化トリマー酸は単独または混合して使用することができる。
【0024】
本発明において、トリマー酸とは、不飽和脂肪酸の三量体からなるトリカルボン酸である。トリマー酸を構成する不飽和脂肪酸としては、炭素数10以上のものが好ましく、特に炭素数が18のものがより好ましい。
【0025】
炭素数が18の不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸等が挙げられる。トリマー酸はこれらの不飽和脂肪酸を三量化することにより調製することができる。
【0026】
一般に入手可能なトリマー酸は、菜種油、大豆油およびトール油等の植物由来の原料から精製され、不飽和脂肪酸の低重合体からトリマーを分離することにより得られるものである。
【0027】
トリマー酸としては、例えば、脂肪族トリマー酸、並びに脂環族トリマー酸、芳香族トリマー酸および二環状トリマー酸などの環状トリマー酸などが挙げられる。トリマー酸は、1種類のトリマー酸を使用することもできるし、2種以上のトリマー酸を混合して使用することもできる。
【0028】
水素化トリマー酸とは、トリマー酸に水素添加することにより、トリマー酸が通常有する不飽和結合を還元したトリマー酸をいう。本発明に使用する水素化トリマー酸は、前記説明したトリマー酸をそれぞれ水素添加して還元したものを使用することができる。
【0029】
特に、トリマー酸を構成する不飽和脂肪酸の炭素数が18であるトリマー酸を水素添加して還元したものが好ましく、トリマー酸を構成する不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸であるトリマー酸を水素添加して還元したものがより好ましい。
【0030】
水素化トリマー酸は、1種類の水素化トリマー酸を使用することもできるし、2種以上の水素化トリマー酸を混合して使用することもできる。
【0031】
本発明に用いるダイマー酸類およびトリマー酸類は、消臭組成物として、色調が薄く、無色に近い等の好適さの観点から、ダイマー酸、水素化ダイマー酸、水素化トリマー酸が好ましく、これらの中でも水素化ダイマー酸がより好ましい。
【0032】
特に、水素添化された水素化ダイマー酸は無色かつ無臭であり、水素添加していないダイマー酸は、わずかに黄色を帯びていることから、水素化ダイマー酸が色調及び香調の点から最も好ましい。
【0033】
本発明に使用するダイマー酸類およびトリマー酸類は、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、「PRIPOL1017」、「PRIPOL1022」、「PRIPOL1029」(全てダイマー酸80重量%、トリマー酸20重量%の混合比);「PRIPOL1012」、「PRIPOL1013」(全てダイマー酸95重量%);「PRIPOL1009」(水素化ダイマー酸99重量%);「PRIPOL1025」(水素化ダイマー酸80重量%、水素化トリマー酸20重量%の混合比)(全てCRODA社製)などが挙げられる。
【0034】
本発明の油溶性消臭剤組成物において、有効成分として含有するダイマー酸類およびトリマー酸類の合計含有量は、厳密に制限されるものではなく、消臭するアンモニア、アミン類の濃度によって異なるが、油溶性消臭剤組成物全体に対して0.1重量%以上であることが好ましく、0.1〜100重量%であることがより好ましく、1〜80重量%であることがさらに好ましい。
【0035】
油溶性消臭剤組成物におけるダイマー酸類およびトリマー酸類の合計含有量を0.1重量%以上とすることにより、アンモニア、アミン類に対する消臭効果を向上することができる。
【0036】
ダイマー酸類及びトリマー酸類の混合比は、厳密に制限されるものではなく、使用形態によって異なるが、ダイマー酸類/トリマー酸類(重量比)を、0:10〜10:0とすることが好ましく、1:9〜9:1とすることがより好ましく、2:1〜4:1とすることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、さらに、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方を含有することが好ましい。本発明の消臭剤組成物は、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方を配合することにより、アンモニアおよびアミン類以外に、硫化水素およびメルカプタン等の悪臭に対しても優れた消臭効果を有する。
【0038】
脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ウンデシレン酸およびラウリン酸などが挙げられる。これらの中でも、溶解性、安全性の観点から、リシノレイン酸が好ましい。
【0039】
有機酸金属塩の有機酸としては、例えば、グルコン酸、クエン酸、酒石酸およびオキソ酸などが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、グルコン酸が好ましい。
【0040】
脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の金属塩の金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、銅、鉄、亜鉛およびマグネシウムが挙げられる。これらの中でも消臭効果の観点から、特に亜鉛が好ましい。
【0041】
脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方は、これらから選ばれる1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
本発明においては、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の中でも、油性への溶解性の観点から、脂肪酸金属塩を使用することが好ましく、脂肪酸亜鉛塩がより好ましい。脂肪酸亜鉛塩の中でも、溶解性、安全性の観点から、リシノレイン酸亜鉛が最も好ましい。
【0043】
本発明の油溶性消臭剤組成物において、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の合計含有量は、厳密には制限されるものではなく、硫化水素、メルカプタン類の濃度によって異なるが、油溶性消臭剤組成物全体に対して0.0001重量%以上とすることが好ましく、0.001〜50.0重量%とすることがより好ましく、0.01〜20重量%とすることがさらに好ましい。
【0044】
本発明の油溶性消臭剤組成物において、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の合計含有量を0.0001重量%以上とすることにより、硫化水素、メルカプタン類を消臭することができる。
【0045】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を含有していればよいが、さらに他の消臭剤と組み合わせて用いることができる。また、油脂類、ロウ類、炭化水素類、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪酸類等の溶剤、並びに酸化防止剤、光安定化剤、pH調整剤、防腐剤、香料、界面活性剤、色素、紫外線吸収剤、抗菌剤、ゲル化剤および増粘剤等の通常の添加剤を本発明の油溶性消臭剤組成物に加えることもできる。
【0046】
油脂類としては、例えば、アボガド油、アルモンド油、オリブ油、硬化油、ヤシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、大豆油およびゴマ油等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対する油脂類の添加量は、厳密には制限されないが、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0047】
ロウ類としては、例えば、キャンデリラロウ、ホホバ油およびミツロウ等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するロウ類の添加量は、厳密には制限されないが、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0048】
炭化水素類としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、パラフィン、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、イソヘキサン、ノルマルデカンおよびノルマルヘプタン等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対する炭化水素類の添加量は、厳密には制限されないが、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0049】
アルコール類としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソプロパノール、イソステアリルアルコールおよび1,3−ブタンジオール等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するアルコール類の添加量は、厳密には制限されないが、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0050】
グリコール類としては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、ブチレングリコールおよびグリセリン等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するグリコール類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0051】
グリコールエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジモノメチルエーテルおよび3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するグリコールエーテル類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0052】
グリコールエステル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテートおよびジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するグリコールエステル類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0053】
エーテル類としては、例えば、ブチルカルビトールおよび2−メトキシエタノール等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するエーテル類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0054】
エステル類としては、例えば、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、オレイン酸デシルおよびフタル酸ジエチル等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するエステル類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0055】
ケトン類としては、例えば、アセトン、ダイアセトンアルコールおよびシクロヘキサノン等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するケトン類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0056】
脂肪酸類としては、例えば、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびヤシ油脂肪酸等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対するケトン類の添加量は、0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0057】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対する界面活性剤の添加量は、厳密には制限されないが、香料の可溶化の観点から0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0058】
香料としては、例えば、レモンオイル、オレンジオイル、ライムオイル、ベルガモットオイル、ラバンジンオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイルおよびローズオイルサンダルウッドオイル等の天然精油、α―ピネン、β―ピネン、リモネンおよびp−サイメンツヨン等の炭化水素類、オクタノールおよびp−tert−ブチルシクロヘキサノールなどの脂肪族アルコール、メントール、シトロネロールおよびゲラニオール等のテルペン系アルコール類、ベンジルアルコールおよびフェニルエチルアルコールなどの芳香族アルコール類、脂肪族アルデヒド類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、アセタール類、鎖式ケトン類、ダマスコン、β―ヨノンおよびメチルヨノン等の環式ケトン類、カルボン、メントン、イソメントンおよびカンファー等のテルペン系ケトン類、アセトフェノンおよびラズベリーケトン等の芳香族ケトン類、ジベンジルエーテルなどのエーテル類、リナロールオキサイドおよびローズオキサイド等のオキサイド類、シクロペンタデカノリドおよびシクロヘキサデカノリド等のムスク類、γ―ノナラクトン、γ―ウンデカラクトンおよびクマリン等のラクトン類、酢酸エステルおよびプロピオン酸エステル等の脂肪族エステル類、安息香酸エステルおよびフェニル酢酸エステル等の芳香族エステル等が挙げられる。本発明の油溶性消臭剤組成物に対する香料の添加量は、0.001重量%以上とすることが好ましい。
【0059】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、公知の担体と組み合わせることができる。担体としては、例えば、アルコール類、グリコール類、油脂類、ロウ類、炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、エーテル類、エステル類、ケトン類等の溶剤、および香料組成物等の液体担体、LPG等のガス担体、並びにケイ酸カルシウム、シリカゲル、ゲル化剤、および増粘剤等の固体担体が挙げられる。
【0060】
本発明の油溶性消臭剤組成物の担体中の含有量は、厳密に制限されるものではないが、悪臭の濃度によって異なるが、0.001〜50重量%であることが好ましく、0.001〜30重量%であることが好ましい。
【0061】
また、油溶性消臭剤組成物の形態は、使用に応じて液状、粉状、ゲル状、粒状およびエアゾール等とすることができる。
【0062】
本発明の消臭剤組成物は油性であるが、界面活性剤、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪酸等の溶剤および香料組成物等と組み合わせることにより、水溶性成分にも配合することができる。
【0063】
前記成分の配合により、油溶性、水溶性のいずれの最終製品にも使用することができる。
【0064】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、そのままでも消臭剤、芳香剤および脱臭剤等の最終製品として使用することができる。すなわち、本発明の油溶性消臭剤組成物は、消臭剤用油溶性組成物、芳香剤用油溶性組成物および脱臭剤用油溶性組成物等として用いることができる。
【0065】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、ハウスホールド製品およびトイレタリー製品等の最終製品に添加することができる。
【0066】
ハウスホールド製品としては、例えば、消臭スプレー、衣類用洗剤、衣類用漂白剤、衣類用柔軟剤、食器用洗剤、浴室用洗浄剤およびトイレ洗浄剤などが挙げられる。
【0067】
本発明の油溶性消臭剤組成物のハウスホールド製品における含有量は、厳密には制限されないが、悪臭濃度によって異なるが、ハウスホールド製品の全重量に対して、0.001〜30重量%であることが好ましく、0.001〜10重量%であることがより好ましい。
【0068】
トイレタリー製品としては、例えば、身体洗浄剤、デオドラント剤、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、ブリーチ剤、パーマネント剤およびヘアカラー剤などが挙げられる。
【0069】
本発明の油溶性消臭剤組成物のトイレタリー製品における含有量は、厳密には制限されないが、悪臭の濃度によって異なるが、トイレタリー製品の全重量に対して、0.001〜30重量%であることが好ましく、0.001〜10重量%であることがより好ましい。
【0070】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、生ゴミ用、衣類用、冷蔵庫用、たんす・クローゼット・押入れ用、室内用、車内用、トイレ用、浴室用、ペット用品用、工場内用、工業廃液用、空気清浄機、空調機、脱臭機、送・排風機用のフィルター、下水処理場、家畜舎および塵芥処理場等の消臭または脱臭に利用することができる。
【0071】
本発明の油溶性消臭剤組成物は、消臭剤組成物自体を消臭または脱臭しようとする対象物に直接適用してもよく、対象物の周囲に適用してもよい。
【0072】
本発明の油溶性消臭剤組成物に有効成分として含有するダイマー酸類およびトリマー酸類は、アンモニア、およびトリメチルアミン等のアミン類の消臭効果に優れている。これらの悪臭成分を多く含み、日常の生活環境から生ずるトイレ臭、汚物臭、室内臭またはペット臭に、本発明の油溶性消臭剤組成物を適用すると、消臭効果が機能して悪臭の発生を効果的に防止できる。
【0073】
更に、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方に、脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方を併用することにより、硫化水素、メルカプタン類などに対しても優れた消臭効果を示す。
【実施例】
【0074】
以下本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
〈水素化ダイマー酸、水素化ダイマー酸と水素化トリマー酸の混合物、ダイマー酸とトリマー酸の混合物のアンモニア臭に対する消臭効果〉
フィルターペーパーφ55mmに、試料として水素化ダイマー酸[「PRIPOL1009」(商品名)(CRODA社製)]、水素化ダイマー酸80重量%と水素化トリマー酸20重量%との混合物[「PRIPOL1025」(商品名)(CRODA社製)]、又は、ダイマー酸80重量%とトリマー酸20%との混合物[「PRIPOL1017」(商品名)(CRODA社製)」]の20重量%イソパラフィン溶液を1.0g滴下し、5lテドラーバックにいれ密封した後、無臭空気を注入した。
【0076】
その後、テドラーバック内にアンモニアガスを注入した後、60分後、120分後に容器中のアンモニア濃度を(株)ガステック製ガス検知管にて測定し、下記に示す式により消臭率を求めた。結果を表1に示す。なおアンモニアの初期濃度は80ppmであった。
【0077】
(消臭率の算出式)
消臭率(%)=[(C−S)/C]×100
S:試料を添加した容器中の臭気ガス濃度 (ppm)
C:コントロールの容器中の臭気ガス濃度 (ppm)
コントロールは、フィルターペーパーにイソパラフィンを1.0g滴下したものを用いた。
【0078】
(比較例1)
〈ラウリルメタアクリレートのアンモニア臭に対する消臭効果〉
試料としてラウリルメタアクリレートを用い、実施例1と同様の調整を行い、アンモニア濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を含む実施例1−1〜実施例1−3は、ラウリルメタアクリレートと比較して、アンモニア臭に対する高い消臭効果を示した。
【0081】
(実施例2)
〈水素化ダイマー酸、水素化ダイマー酸と水素化トリマー酸の混合物、ダイマー酸とトリマー酸の混合物のトリメチルアミン臭に対する消臭効果〉
悪臭物質としてトリメチルアミンを使用する以外は実施例1と同様の調整方法を行い、トリメチルアミンに対する消臭効果を測定した。なお、トリメチルアミンの初期濃度は、25ppmになるように調整した。
結果を表2に示す。
【0082】
(比較例2)
〈ラウリルメタアクリレートのトリメチルアミン臭に対する消臭効果〉
試料としてラウリルメタアクリレートを用い実施例2と同様の調整を行い、トリメチルアミン濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
表2に示すように、ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を含む実施例2−1〜実施例2−3は、ラウリルメタアクリレートと比較して、トリメチルアミン臭に対する高い消臭効果を示した。
【0085】
(実施例3)
〈水素化ダイマー酸とリシノレイン酸亜鉛との混合物のアンモニアと硫化水素に対する消臭効果〉
フィルターペーパーφ55mmに、試料として水素化ダイマー酸50重量%、リシノレイン酸亜鉛1.0重量%、アルコール系溶剤49.0重量%を混合調整したサンプルの20重量%イソパラフィン溶液を1.0g滴下し、5lテドラーバックにいれ密封した後、無臭空気を注入した。
【0086】
その後、テドラーバック内にアンモニアガスを注入した後、60分後、120分後に容器中のアンモニアを(株)ガステック製ガス検知管にて測定した。同様にして硫化水素ガスを注入し、硫化水素濃度を測定した。
【0087】
消臭率は実施例1に記載の式により求めた。結果を表3に示す。なおアンモニアの初期濃度は40ppm、硫化水素の初期濃度は10ppmであった。
【0088】
(比較例3)
〈ラウリルメタアクリレートのアンモニア、硫化水素臭に対する消臭効果〉
試料としてラウリルメタアクリレートを用い実施例3と同様の調整を行い、アンモニア、硫化水素濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表3に示すように、水素化ダイマー酸とリシノレイン酸亜鉛との混合物は、アンモニア臭、硫化水素臭に対する高い消臭効果を示した。
【0091】
(実施例4−1)
〈調合香料と水素化ダイマー酸の混合物のアンモニア臭に対する消臭効果〉
フィルターペーパーφ55mmに、試料としてレモンバーベナ調合香料50重量%、水素化ダイマー酸50重量%を混合調整したサンプルの20重量%イソパラフィン溶液を1.0g滴下し、5lテドラーバックにいれ密封した後、無臭空気を注入した。
【0092】
その後、テドラーバック内にアンモニアガスを注入した後、60分後、120分後に容器中のアンモニア濃度を(株)ガステック製ガス検知管にて測定した。消臭率は実施例1に記載の式により求めた。結果を表4に示す。なおアンモニアの初期濃度は40ppmであった。
【0093】
(実施例4−2)
〈水素化ダイマー酸のアンモニア臭に対する消臭効果〉
試料として水素化ダイマー酸を用い実施例4−1と同様の調整を行い、アンモニア濃度を測定した。結果を表4に示す。
【0094】
(比較例4)
ラウリルメタアクリレートのアンモニア臭に対する消臭効果
試料としてレモンバーベナ調合香料50重量%、ラウリルメタアクリレート50重量%の混合調合したサンプルを用い実施例4と同様の調整を行い、アンモニア濃度を測定した。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
表4に示すように、水素化ダイマー酸とレモンバーベナ調合香料との混合物は、ラウリルメタアクリレートとレモンバーベナ調合香料との混合物と比較して、アンモニア臭に対する高い消臭効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を有効成分として含有する油溶性消臭剤組成物。
【請求項2】
ダイマー酸類がダイマー酸および水素化ダイマー酸の少なくとも一方である請求項1に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項3】
トリマー酸類がトリマー酸および水素化トリマー酸の少なくとも一方である請求項1または2に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項4】
さらに脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項5】
脂肪酸金属塩および有機酸金属塩の少なくとも一方の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、銅、鉄、亜鉛及びマグネシウムから選ばれる1種以上である請求項4に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項6】
脂肪酸金属塩がリシノレイン酸亜鉛である請求項4または5に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項7】
ダイマー酸類およびトリマー酸類の合計含有量が0.1重量%以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の油溶性消臭剤組成物。
【請求項8】
ダイマー酸類およびトリマー酸類の少なくとも一方を用いて、アンモニア臭またはアミン臭を消臭する方法。

【公開番号】特開2012−183189(P2012−183189A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48207(P2011−48207)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】