説明

油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法及び油状物質含有錠剤用固形剤

【課題】スティッキング等の打錠障害を抑制することができる、簡便な油状物含有錠剤用固形剤の製造方法、及び、該製造方法により製造された油状物含有錠剤用固形剤の提供。
【解決手段】油状物質を含有する錠剤用固形剤の製造方法であって、(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程と、(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程と、(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程と、(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程と、を有することを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法、及び、該油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法により製造された油状物質含有錠剤用固形剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油状物質を含有する錠剤用固形剤、及び該錠剤用固形剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤には、錠剤、カプセル剤、散剤、水剤、座薬、注射剤、軟膏等、様々な剤形があり、期待する治療効果や服用する患者等に応じて、適宜選択される。特に錠剤は、飛散性の高い散剤等よりも取り扱いや服用が簡便であること、水剤等よりも味や臭いのマスキングが簡便であること、気温や湿度の変動により外被が劣化しやすいカプセル剤等よりも保存安定性に優れていること、及び、服用量の適正化が簡便であること等から、処方薬から市販薬まで広く好まれる剤形である。
【0003】
一方で、主薬として用いられる人体に有効な物質には、水溶性物質だけではなく、ビタミンE等の油状物質も数多くあり、油状物質の製剤化については種々検討されている。しかしながら、油状物質を錠剤等の固形剤化する場合には、水溶性物質を固形剤化する場合よりも、問題が生じる場合がある。例えば、錠剤を製造する場合には、主薬たる油状物質を多孔質物質に吸着させた後、打錠機を用いて錠剤化する方法が一般的に用いられているが、主薬として水溶性物質を用いた場合よりも、スティッキング等の打錠障害が生じ易いという問題がある。スティッキングとは、粉末の付着等により杵面が荒れ、錠剤表面に凹凸等の傷やくすみが生じる現象をいい、打錠時に多孔質物質から油状成分が滲み出すことで、打錠機の杵の部分に油状物質が付着するために生じると考えられている。特に、割れにくいしっかりした錠剤を得るためには、打錠時においてより高い圧力をかける必要があるが、圧力が高くなればなるほど、より顕著にスティッキング現象が生じてしまう。スティッキングにより、外観不良となるのみならず、含有される主薬量の均一性や、崩壊性、溶出性等が不適当となり、商品価値が著しく損なわれてしまうことから、スティッキング等の打錠障害が抑制された油状物含有錠剤の製造方法の開発が強く望まれている。
【0004】
スティッキング等の打錠障害の少ない油状物質の錠剤の製造方法として、種々の方法が開示されている。例えば、(1)油状物質であるテプレノンを水溶性高分子水溶液中に乳化又は界面活性剤を使用して水中に乳化し、得られた乳化液を二酸化ケイ素又はケイ酸カルシウムに吸着させるテプレノン含有錠剤の製造方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−16934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記(1)の方法のように、油状物質を単に乳化処理した後に二酸化ケイ素又はケイ酸カルシウム等の吸着剤に吸着させただけでは、打錠時の圧力が高くなると、吸着剤からの油状物質の滲みだしを防止することは出来ない。このため、特に安定性に優れた充分な硬度や強度を有する錠剤を製造する場合には、スティッキングの防止効果は充分ではなかった。さらに、上記(1)の方法では、油状物質を乳化処理する必要があるため、操作が煩雑であるという問題もあった。
【0006】
本発明は、スティッキング等の打錠障害を抑制することができる、簡便な油状物含有錠剤用固形剤の製造方法、及び、該製造方法により製造された油状物含有錠剤用固形剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、油状物質を吸着させた吸着剤を充分に乾燥させた後、糖類等の適当なコーティング基材で被覆することにより得られる固形剤であれば、打錠時のスティッキング現象が顕著に抑制されるため、打錠機等による錠剤への製剤化に非常に適した固形剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、油状物質を含有する錠剤用固形剤の製造方法であって、(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程と、(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程と、(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程と、(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程と、を有することを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(b)が、前記工程(a)得られた吸着剤中の前記油溶性溶媒の残留量が30%以下となるように、前記吸着剤を乾燥する工程であることを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記コーティング基材が、糖類又はセルロース系高分子であることを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記吸着剤がケイ酸カルシウムであることを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法によって製造された油状物質含有錠剤用固形剤を提供するものである。
また、本発明は、次の工程(a)〜(d)を有する製造方法によって製造された油状物質含有錠剤用固形剤を提供するものである。(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程。(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程。(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程。(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程。
また、本発明は、前記いずれか記載の油状物質含有錠剤用固形剤を原料として打錠成型することにより製造される錠剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法により製造された油状物質含有錠剤用固形剤は、打錠障害、特にスティッキングを顕著に抑制することができるため、打錠機等を用いて製造される錠剤に非常に好適な油状物質含有錠剤用固形剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における油状物質は、操作時の温度において油状の物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、室温で操作する場合には、20〜25℃において油状の物質であれば、特に限定されるものではない。該油状物質として、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンK、コエンザイムQ6、コエンザイムQ10、DHA、EPA、リノレン酸、リノール酸、共役リノール酸、シソ油、ジアシルグリセロール、キサンチン、カロテン、ルテイン等が挙げられる。
【0011】
本発明の油状物質を含有する錠剤用固形剤の製造方法は、油状物質を含有する錠剤用固形剤の製造方法であって、(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程と、(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程と、(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程と、(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程と、を有することを特徴とする。以下、工程ごとに説明する。
【0012】
まず、工程(a)として、油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる。油状物質を吸着剤に吸着させることにより、油状物質の製剤化のための取り扱い性や成形性を向上させることができる。また、吸着剤に吸着させる前に、油状物質を予め油溶性溶媒に溶解させることにより、通常水溶性物質よりも粘性の高い油状物質を、吸着材に均一に吸着させやすくなる。なお、本発明において錠剤用固形剤とは、錠剤化に供される顆粒状又は粉末状の固形物質を意味する。
【0013】
本発明における油溶性溶媒は、油状物質を溶解させることができる溶媒であれば特に限定されるものではなく、用いる油状物質の種類等を考慮して適宜決定することができる。該油溶性溶媒として、例えば、エタノール、プロパノール、メタノール等のアルコール類、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル等の有機溶媒等が挙げられる。安全性が高く、かつ揮発性が高いために、エタノール、プロパノール、メタノール等のアルコール類であることが好ましく、エタノール又はプロパノールであることがより好ましい。また、油溶性溶媒に溶解させる油状物質の濃度は、特に限定されるものではなく、油状物質の種類や、最終的に錠剤に含有させる油状物質の所望の濃度等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、0.01%〜10%の油状物質濃度に調整することが好ましい。
【0014】
本発明における吸着剤は、特に限定されるものではなく、油状物質を吸着させるために通常用いられている吸着剤を、通常用いられる濃度で用いることができる。該吸着剤として、例えば、アドソリダー(フロイント産業社製)、アエロジール200(日本アエロジル社製)等の軽質無水ケイ酸、フローライトRE、フローライトRM−30、フローライトRM−60(いずれもエーザイ社製)等のケイ酸カルシウム、ノイシリンA(富士化学工業社製)等のケイ酸アルミン酸マグネシウム、ノイシリン(富士化学工業社製)等のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。本発明における吸着剤として、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウムであることが好ましく、ケイ酸カルシウムであることがより好ましい。
【0015】
吸着剤への油状物質の吸着方法は、特に限定されるものではなく、通常、吸着剤に油状物質を吸着させる場合に用いられるいずれの方法を用いてもよい。例えば、油状物質を溶解させた油溶性溶媒に吸着剤を浸漬させることにより、吸着させることができる。浸漬温度や時間は、油状物質や吸着剤の種類、吸着剤に吸着させる油状物質の量等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、浸漬温度は、0℃〜50℃であることが好ましく、5〜30℃であることがより好ましく、室温であることが特に好ましい。また、浸漬時間は、10分〜1時間であることが好ましい。
【0016】
次に、工程(b)として、前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる。乾燥方法は、油状物質を吸着させた吸着剤に残留する油溶性溶媒の量を低下させることができる方法であれば、特に限定されるものではなく、風乾、熱乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。ここで、風乾とは、そのまま室温で放置することにより乾燥させる方法をいう。熱乾燥とは、40〜60℃で30分〜24時間加熱することにより乾燥させる方法をいう。凍結乾燥とは、油溶性溶媒を含む吸着剤を、凍結させた状態で減圧処理することにより、吸着剤から油溶性溶媒を昇華させて除去し乾燥させる方法であり、市販の凍結乾燥機を用いて行うことができる。凍結乾燥により、沸点が低い油状物質や熱安定性が低い油状物質であっても、油状物質の損失を抑えつつ乾燥させることができる。工程(b)においては、乾燥時間を短縮することができるため、熱乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることが好ましい。操作性に優れているため、熱乾燥により乾燥させることがより好ましい。
【0017】
工程(b)における乾燥は、油状物質を吸着させた吸着剤に残留する油溶性溶媒の量を30%以下の状態となるようにすることが好ましく、20%以下の状態となるようにすることがより好ましく、10%以下の状態となるようにすることがさらに好ましく、5%以下の状態となるようにすることが特に好ましい。
【0018】
次に、工程(c)として、前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する。吸着剤の表面には無数の孔があり、該コーティング基材による被覆は、該吸着剤の表面の孔の部分に蓋をするように被覆すればよく、孔以外の部分を完全に被覆する必要はない。また、吸着剤表面の全ての孔を被覆する必要はないが、全ての孔を完全に被覆することにより、打錠成型した場合にスティッキング等の打錠障害をより効果的に抑制し得る油状物質含有錠剤用固形剤を製造することができる。
【0019】
工程(c)における被覆方法は、通常、顆粒状又は粉末状の乾燥固形物をコーティング基材で被覆する場合に用いられるいずれの方法を用いてもよい。例えば、コーティング基材を適当な溶媒に溶解して0.01%〜10%のコーティング基材溶液を調整し、工程(b)で乾燥させた吸着剤を0℃〜50℃の温度で浸漬させることにより、該吸着剤をコーティング基材で被覆することができる。また、該吸着剤に該コーティング基材溶液を1分〜60分間噴霧した後、乾燥させることによっても、該吸着剤をコーティング基材で被覆することができる。コーティング基材を溶解させる溶媒は、油状物質の生理活性を損なわないものであれば、特に限定されるものではなく、コーティング基材の種類等を考慮して適宜決定することができる。例えば、水等の水溶性溶媒であってもよく、アルコール類等の有機溶媒であってもよい。水溶性溶媒としては、経済性と安全性に優れているため、水であることが好ましい。有機溶媒としては、揮発性が高いため、エタノール、プロパノール、メタノール等のアルコール類であることが好ましく、安全性が高いため、エタノール又はプロパノールであることがより好ましい。
【0020】
工程(c)において用いられる糖類としては、例えば、フルクトース、フコース、マンノース、グルコース、ガラクトース及びリボース等の単糖類、トレハロース、ショ糖等の二糖類、デンプン類、プルラン、ヘミロース、マンニトール、オリゴ糖、デキストリン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、D−ソルビトール、ラクチトール、グリセロール、イノシトール等の糖アルコール等が挙げられ、好ましくはマンニトール、フルクトース、グルコース、トレハロース、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、D−ソルビトールが挙げられる。工程(c)において用いられる糖類としては、特に、可溶性デンプン等のデンプン類、マンニトール、フルクトース、グルコース、トレハロース、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、D−ソルビトール等であることが好ましい。
【0021】
工程(c)において用いられるゼラチン類としては、例えば、酸処理ゼラチン、化学修飾ゼラチン、両性処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等が挙げられる。
【0022】
工程(c)において用いられるセルロース系高分子としては、水溶性セルロース系高分子であってもよく、難水溶性セルロース系高分子であってもよいが、水溶性セルロース系高分子であることが好ましい。水溶性セルロース系高分子としては、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等が挙げられる。難水溶性セルロース系高分子としては、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。工程(c)において用いられるセルロース系高分子としては、特に、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース等であることが好ましい。
【0023】
工程(c)において用いられる合成高分子としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。工程(c)において用いられる合成高分子としては、特に、ポリビニルピロリドンであることが好ましい。
【0024】
工程(c)において用いられるコーティング基材としては、糖類又はセルロース系高分子であることが好ましい。特に、トレハロース、ショ糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、D−ソルビトール等であることよりが好ましい。
【0025】
工程(c)において用いられるコーティング基材は、1種類のコーティング基材であってもよく、複数種類のコーティング基材を混合して用いてもよい。また、吸着剤を1種類のコーティング基材を用いて被覆した後、別の種類のコーティング基材を用いて被覆するように、多層に被覆してもよい。
【0026】
さらに、工程(d)として、前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる。乾燥方法は、前記工程(b)において挙げられた方法を用いることができる。
【0027】
このようにして得られた油状物質含有錠剤用固形剤は、打錠機等により高い圧縮圧力で打錠成型した場合に、従来の油状物質含有錠剤用固形剤よりも、スティッキングが顕著に抑制されている。
【0028】
工程(a)〜(d)により得られた油状物質含有錠剤用固形剤は、顆粒状又は粉末状の乾燥固形剤を錠剤化する場合に用いられる公知の方法により錠剤にすることができる。特に該油状物質含有錠剤用固形剤を原料として打錠成型することにより錠剤を製造することが好ましい。例えば、工程(d)により得られた油状物質含有錠剤用固形剤に、セルロース、糖類等の一般的な賦形剤、無水ケイ酸等の流動化剤、並びにステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を配合後、市販の打錠機を用いて打錠成型する方法等が挙げられる。打錠機における打錠時の圧縮圧力は、錠剤用固形剤の種類や、錠剤の所望の硬度や強度等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、5〜20kNの圧縮圧力で打錠成型することができる。本発明の錠剤用固形剤は、圧縮圧力が高い場合であっても、スティッキングが顕著に抑制されているため、非常に効率よく、充分な硬度と強度を有する良好な油状物質含有錠剤を製造することができる。
【実施例】
【0029】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
ビタミンE(エーザイ社製)120gを純度98%のエタノール(和光純薬工業社製)350gへ室温下で分散溶解させた後、特殊ケイ酸カルシウム100g(エーザイ社製:商品名フローライトRE)へ室温で添加後、10分間練合することにより、特殊ケイ酸カルシウムにビタミンEを吸着させた。その後、得られたビタミンE吸着済み特殊ケイ酸カルシウムをエタノール中から取り出し、50℃で2時間乾燥させることにより、特殊ケイ酸カルシウム中のエタノール残量が20%以下になるようにした。次に、精製水150gにトレハロース100gを攪拌溶解して調製した無色透明なトレハロース水溶液を、ビタミンE吸着済み特殊ケイ酸カルシウムに添加混合し、50℃で24時間乾燥(二次乾燥)させることにより、本発明のビタミンE含有錠剤用固形剤を得た。
その後、得られたビタミンE含有錠剤用固形剤を30メッシュの篩いで篩過を行った。得られた篩過品280〜300gに、結晶セルロース150g、無水リン酸カルシウム56g、ステアリン酸マグネシウム4gを加えて混合し、打錠機クリーンプレス19K(菊水製作所製)を用いて、打錠圧5kN、回転数20〜30rpmの条件で60分間打錠操作をすることにより、一錠あたり径8mm、重量200mgのビタミンE単独含有錠剤(実施例1)約5,000錠を得た。
【0031】
(実施例2)
特殊ケイ酸カルシウムに代えて軽質無水ケイ酸(日本アエロジル社製:商品名アエロジール200)を用いた以外は実施例1と同様にして、ビタミンE単独含有錠剤(実施例2)を得た。
【0032】
(実施例3)
トレハロースに代えてショ糖を用いた以外は実施例1と同様にして、ビタミンE単独含有錠剤(実施例3)を得た。
【0033】
(実施例4)
トレハロースに代えてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた以外は実施例1と同様にして、ビタミンE単独含有錠剤(実施例4)を得た。
【0034】
(実施例5)
トレハロースに代えてD−ソルビトールを用いた以外は実施例1と同様にして、ビタミンE単独含有錠剤(実施例5)を得た。
【0035】
(実施例5)
トレハロースに代えてD−ソルビトールを用いた以外は実施例1と同様にして、ビタミンE単独含有錠剤(実施例5)を得た。
【0036】
(実施例6)
ビタミンEに代えてコエンザイムQ10を用いた以外は実施例1と同様にして、コエンザイムQ10単独含有錠剤(実施例7)を得た。
【0037】
(比較例1)
ビタミンE(エーザイ社製)120gを純度98%のエタノール(和光純薬工業社製)350gへ室温下で分散溶解させた後、特殊ケイ酸カルシウム100g(エーザイ社製:商品名フローライトRE)へ室温で添加後、10分間練合することにより、特殊ケイ酸カルシウムにビタミンEを吸着させた。その後、得られたビタミンE吸着済み特殊ケイ酸カルシウムをエタノール中から取り出し、50℃で24時間乾燥させた後、30メッシュの篩いで篩過した。篩過品280〜300gに結晶セルロース200g、無水リン酸カルシウム 56g、ステアリン酸マグネシウム4gを加えて混合し打錠機クリーンプレス19K(菊水製作所製)を用いて、打錠圧5kN、回転数20〜30rpmの条件で60分間打錠操作をすることにより、一錠あたり径8mm、重量200mgのビタミンE単独含有錠剤(比較例1)約5,000錠を得た。
【0038】
(比較例2)
ビタミンE(エーザイ社製)120gを純度98%のエタノール350gへ室温下で分散溶解させた後、特殊ケイ酸カルシウム100g(エーザイ社製:商品名フローライトRE)へ室温で添加後、10分間練合することにより、特殊ケイ酸カルシウムにビタミンEを吸着させた。その後、得られたビタミンE吸着済み特殊ケイ酸カルシウムをエタノール中から取り出し、精製水150gにトレハロース100gを攪拌溶解して調製した無色透明なトレハロース水溶液に添加混合し、50℃で24時間乾燥(二次乾燥)させた後、30メッシュの篩いで篩過を行った。得られた篩過品280〜300gに、結晶セルロース150g、無水リン酸カルシウム56g、ステアリン酸マグネシウム4gを加えて混合し、打錠機クリーンプレス19K(菊水製作所製)を用いて、打錠圧5kNで打錠し、一錠あたり径8mm、重量200mgのビタミンE単独含有錠剤(比較例2)約5,000錠を得た。
【0039】
ビタミンE単独含有錠剤の実施例1、比較例1及び比較例2について、打錠障害の有無を目視で確認した。図1は、実施例1、比較例1、比較例2において得られたビタミンE単独含有錠剤の写真である。この結果、比較例1のビタミンE単独含有錠剤では、打錠開始5分後から杵表面への強い粉体の付着(スティッキング)に伴う剥がれが認められた。また、比較例2のビタミンE単独含有錠剤においても、打錠開始5分後から杵表面への粉体の付着に伴う錠剤表面に剥がれが認められた。つまり、比較例1及び2のいずれのビタミンE単独含有錠剤も商品として耐えられるものではなかった。これに対して、実施例1のビタミンE単独含有錠剤では、打錠終了時(開始後60分)まで杵表面への打錠粉末の付着に伴う錠剤表面の剥がれは認められず、良好な錠剤が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法により、打錠障害、特にスティッキングを顕著に抑制することができるため、油状物質含有錠剤の製造分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1、比較例1、比較例2において得られたビタミンE単独含有錠剤の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油状物質を含有する錠剤用固形剤の製造方法であって、
(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程と、
(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程と、
(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程と、
(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法。
【請求項2】
前記工程(b)が、前記工程(a)で得られた吸着剤中の前記油溶性溶媒の残留量が30%以下となるように、前記吸着剤を乾燥する工程であることを特徴とする請求項1記載の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法。
【請求項3】
前記コーティング基材が、糖類又はセルロース系高分子であることを特徴とする請求項1又は2記載の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤がケイ酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の油状物質含有錠剤用固形剤の製造方法によって製造された油状物質含有錠剤用固形剤。
【請求項6】
下記の工程(a)〜(d)を有する製造方法によって製造された油状物質含有錠剤用固形剤。
(a)油溶性溶媒に溶解させた油状物質を吸着剤に吸着させる工程。
(b)前記工程(a)で得られた吸着剤を乾燥させる工程。
(c)前記工程(b)で乾燥させた吸着剤の表面の少なくとも一部を、糖類、ゼラチン類、セルロース系高分子、及び合成高分子からなる群より選択される1種以上のコーティング基材で被覆する工程。
(d)前記工程(c)で被覆された吸着剤を乾燥させる工程。
【請求項7】
請求項5又は6記載の油状物質含有錠剤用固形剤を原料として打錠成型することにより製造される錠剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84205(P2009−84205A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255745(P2007−255745)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】