説明

油種識別方法及び油種識別器

【課題】油中に遮光成分が存在する場合でも油種を正確に識別し、混合油に対する誤識別を未然に防止可能な油種識別方法及び油種識別器を提供する。
【解決手段】近赤外光の透過スペクトルを測定するステップS1と、透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するステップS2と、所定の化学結合の各帰属波長の近傍に存在する2波長の吸光度の差を0.0と比較してガソリン類/非ガソリン類を識別する第1の識別ステップS3と、吸光度の1次微分スペクトルを求めるステップS4と、所定の化学結合による各帰属波長の近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値に係数を乗算し、更に定数を加算した値を0.0と比較してレギュラー/ハイオクタンガソリンを識別する第2の識別ステップS5と、所定の化学結合の各帰属波長の近傍に存在する2波長の吸光度の差を0.0と比較して灯油/軽油を識別する第3の識別ステップS6と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパイプラインや油槽所において、異種の油を時系列的に輸送したり別々のタンクに仕分けして貯蔵する場合に用いられる油種識別方法、及び、この方法を実施するための油種識別器に関し、近赤外光を用いてレギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油の油種を識別する油種識別方法及び油種識別器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の油種識別方法としては、音波を用いる識別方法や、紫外線の特定波長の吸光度を用いる識別方法が知られている。
しかし、音波を用いる方法ではレギュラーガソリン、ハイオクタンガソリンの識別が難しく、音速に温度依存性がある等の問題がある。また、紫外線の特定波長の吸光度を用いる方法では、例えばガソリンの吸光度がメーカーごとに異なるため汎用性に劣ると共に、光源の電源として高電圧電源が必要であるため、防爆構造とするには光源をセンサ部から離して設置しなくてはならず、識別装置が大型化する等の問題がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解決可能な油種識別方法として、近赤外光の吸光度を測定する方法が、例えば特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載された油種識別方法は、油の吸光度または透過光出力を近赤外領域の1波長または複数波長の光で測定し、1波長で得られた吸光度または透過光出力の値または複数波長で得られた吸光度または透過光出力を演算処理した値を、それらの基準値と比較して油種を識別するものである。
ここで、前記1波長は約925〜940〔nm〕または約1210〜1240〔nm〕とするか、あるいは、約930〔nm〕の第1波長と約960〜1000〔nm〕の第2波長との2波長、約1210〔nm〕の第1波長と約1150〜1200〔nm〕の第2波長との2波長、または、約1220〔nm〕の第1波長と約1240〜1400〔nm〕の第2波長との2波長とすることが望ましいとされている。
【0004】
上記特許文献1に係る油種識別方法によれば、レギュラーガソリン、ハイオクタンガソリンの識別も可能であり、温度の影響もないばかりか、小電力電源及びセンサを使用可能なことから防爆構造の実現も比較的容易である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−294428号公報(請求項1〜3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された識別方法では、油中に気泡や水、鉄粉のように透過光を遮る成分(以下、遮光成分という)が存在すると、センサへの入射光に誤差を生じ、油種を正確に識別できないという問題があった。
一方、パイプラインや油槽所において、輸送される油の種類が切り換わる場合には、その切換前後で2種類の油が混合してしまう事態が発生するが、この場合、混合される油種によっては、混合油の吸光度が単一油種の吸光度と極めて類似する場合があり、油種を誤識別する原因となっていた。
【0007】
そこで本発明の解決課題は、油中に遮光成分が存在する場合でも油種を正確に識別可能とし、更に、複数種の油が混合している場合の誤識別を未然に防止することができる油種識別方法及び油種識別器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る油種識別方法は、識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、近赤外光の特定波長の吸光度を測定して前記サンプルの油種を識別する油種識別方法において、
前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類であるか否かを識別する第1の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類と識別した場合に、吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値に係数をそれぞれ乗算した値の加算値に更に定数を加算して得た値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンであるかハイオクタンガソリンであるかを識別する第2の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類でないと識別した場合に、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油であるか軽油であるかを識別する第3の識別ステップと、を有するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長が、875〔nm〕,928〔nm〕,934〔nm〕及び/または938〔nm〕であることを特徴とする。
更に、請求項3に係る発明は、請求項1に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長が、875〔nm〕,928〔nm〕,934〔nm〕及び/または938〔nm〕,970〔nm〕であることを特徴とする
【0010】
請求項4に係る油種識別方法は、識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、近赤外光の特定波長の吸光度を測定して前記サンプルの油種を識別する油種識別方法において、
前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類であるか否かを識別する第1の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類と識別した場合に、吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長(帰属波長群という)の近傍にそれぞれ存在する2波長と所定の化学結合の帰属波長自体(特定帰属波長という)である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値に係数をそれぞれ乗算した値の加算値に更に定数を加算して得た値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンであるかハイオクタンガソリンであるかを識別する第2の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類でないと識別した場合に、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油であるか軽油であるかを識別する第3の識別ステップと、を有するものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長群の波長が、875〔nm〕,913〔nm〕及び/または928〔nm〕であり、前記特定帰属波長が934〔nm〕であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載した油種識別方法において、
第1の識別ステップよりも前に、
前記吸光度スペクトルまたは前記透過スペクトルの前回測定値と今回測定値との偏差が判定値より小さいか否かを判定する混合有無判定ステップを設け、
この混合有無判定ステップにより前記偏差が前記判定値より小さいと判定した場合に前記サンプルの油種が単一であるとみなして第1の識別ステップ以後の処理に移行するものである。
【0013】
請求項7に係る油種識別器は、識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定する検出セルと、前記透過スペクトルから近赤外光の特定波長の吸光度を検出して前記サンプルの油種を識別する油種識別器本体と、を備えた油種識別器において、
前記油種識別器本体は、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類または非ガソリン類であることを識別する第1の識別手段と、
第1の識別手段によりガソリン類と識別した前記サンプルの吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分手段と、
所定の化学結合による各帰属波長近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値を含む値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンまたはハイオクタンガソリンの何れかであることを識別する第2の識別手段と、
第1の識別手段により非ガソリン類であると識別した前記サンプルに対し、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油または軽油であることを識別する第3の識別手段と、を備えたものである。
【0014】
請求項8に係る油種識別器は、識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定する検出セルと、前記透過スペクトルから近赤外光の特定波長の吸光度を検出して前記サンプルの油種を識別する油種識別器本体と、を備えた油種識別器において、
前記油種識別器本体は、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類または非ガソリン類であることを識別する第1の識別手段と、
第1の識別手段によりガソリン類と識別した前記サンプルの吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分手段と、
所定の化学結合の各帰属波長の近傍にそれぞれ存在する2波長と所定の化学結合の帰属波長自体である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値を含む値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンまたはハイオクタンガソリンの何れかであることを識別する第2の識別手段と、
第1の識別手段により非ガソリン類であると識別した前記サンプルに対し、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油または軽油であることを識別する第3の識別手段と、を備えたものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項7または8に記載した油種識別器において、
前記吸光度スペクトルまたは前記透過スペクトルの前回測定値と今回測定値との偏差が判定値より小さいことを判定する混合有無判定手段を備え、
この混合有無判定手段の判定出力により第1の識別手段による処理を実行させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各種のサンプルを構成する複数の化学結合の各帰属波長の近傍に存在する2つの波長の吸光度の差に基づいて、ガソリン類/非ガソリン類、及び、灯油/軽油を正確に識別することができる。また、ガソリン類については、各帰属波長の近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値、または、前記帰属波長群の近傍にそれぞれ存在する2波長と前記特定帰属波長である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値に基づいてレギュラーガソリン/ハイオクタンガソリンを識別するため、サンプル中に気泡等の遮光成分が存在する場合でも、前記1次微分値の不変性に起因してガソリンの種類を確実に識別することが可能である。
更に、近赤外領域のうち比較的短波長領域の光を使用することにより、サンプル中に水分が含まれている場合でも、水分による吸収が少なく、正確な識別が可能であると共に、検出セルとして安価なものを使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る油種識別方法の第1実施形態を示すフローチャートである。なお、この方法は、近赤外光を用いた周知の吸光光度法によりサンプルの吸光度スペクトルを求め、その吸光度スペクトルに基づいてサンプルの油種(レギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油)を識別するものである。
【0018】
前後するが、図2を参照しつつ検出セルの構成を略述すると、図2において、1はタングステンランプ等の光源、2,9はハーフミラー、8はリファレンス部、3,5はプリズムミラー、4はフローセル、6はサンプル導入管、7はサンプル排出管、10は近赤外領域の波長(約800〜1100〔nm〕)を検出可能な分光光度計であり、フローセル4内のサンプル(識別対象である油)を透過した測定光とリファレンス部8を透過したリファレンス光とをハーフミラー9を介して分光光度計10に導入し、サンプルの透過光スペクトルを測定する。
【0019】
上記検出セルは、例えばパイプラインに近接して配置され、パイプラインを流れる油をサンプル導入管6からフローセル4に導入し、サンプル排出管7を介してパイプラインに戻すように使用される。この検出セルには、分光光度計10の出力信号を処理する信号処理回路、後述する種々の識別処理を行う油種識別回路、設定入力回路、出力回路、表示器等を含む油種識別器本体が一体的に取り付けられており、その全体が耐圧防爆構造の油種識別器として構成されている。
【0020】
図1に戻って、第1実施形態における油種識別のフローを説明する。
まず、図2に示した検出セルを用いてサンプルの透過スペクトルを測定する(スペクトル測定ステップS1)。次に、対数演算等の周知の方法により、透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換する(スペクトル変換ステップS2)。
ちなみに、図3は各種の油の吸光度スペクトルを示しており、これらの吸光度スペクトルは油のメーカーに関わらずほぼ一定である。
【0021】
次いで、下記の数式1により値Zを求め、この値Zと第1の基準値である0.0との大小関係を比較して第1の識別処理を行う(第1の識別ステップS3)。
[数式1]
=Abs(930)−Abs(907)
なお、Abs(x)は波長x〔nm〕の吸光度を示す。数式1における波長930〔nm〕は油などのCH結合の帰属波長(化学結合による吸収波長)である928〔nm〕の近傍の波長、907〔nm〕はメチル基のCH結合の帰属波長である913〔nm〕の近傍の波長である。
【0022】
数式1では、前記2波長の吸光度の差を求めており、この値が正になるか負になるかによってガソリン類と非ガソリン類とを識別している。具体的には、図3に示すように907〔nm〕における吸光度を基準値としている。一方、これに対して、他方の波長である930〔nm〕では、前記907〔nm〕における値よりも吸光度が大きい。すなわち、数式1の値Zが正になるのは、サンプルが非ガソリン類、すなわち灯油または軽油の場合であり、逆に値Zが負になるのは、サンプルがガソリン類の場合であることがわかる。
このように、2つの波長のうち一方の波長では吸光度の値が基準値となるような波長を設定し、他方の波長では吸光度の値に大きな差が出るような波長を設定することにより、2波長間の吸光度の顕著な差を求めることができ、ガソリン類と非ガソリン類との識別が実現可能となる。
よって、吸光度スペクトルがピークとなる帰属波長928〔nm〕,913〔nm〕自体の吸光度を用いてZを求めることはせず、これらの帰属波長の近傍にある波長である930〔nm〕,907〔nm〕を故意に選んでいる。この考え方は、後述する第3の識別処理において使用する波長についても同様である。
【0023】
第1の識別処理はガソリン類と非ガソリン類(灯油・軽油類)とを識別するためのものであり、Z<0.0の時(S3 YES)には、油種をガソリン類と識別してステップS4に移行する。また、Z≧0.0の時(S3 NO)には、油種を灯油・軽油類と識別して後述するステップS6に移行する。
【0024】
ここで、第1の識別処理は、上記数式1により求めた所定の2波長の吸光度差の正負に基づいて識別を行うものであり、仮に油中に気泡や水、鉄粉のような遮光成分が存在する場合でも、吸光度はその絶対値が全体的に変化するだけであり、吸光度の差は変化しない。すなわち、図4は、気泡の有無に応じた各種油の吸光度スペクトルを示す図であり、気泡の有無による2波長(例えば930〔nm〕,907〔nm〕)の吸光度差は何れの油種でもおおむね一定であることが分かる。
このため、数式1を用いた第1の識別処理によれば、油中に気泡等の遮光成分が存在する場合でも、所定の2波長の吸光度差、つまり吸光度スペクトルの形状に着目してガソリン類と非ガソリン類とを正確に識別することができる。
【0025】
油種がガソリン類であると判定した場合には(S3 YES)、更にレギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとを識別するために、吸光度を1次微分スペクトル(差分スペクトル)に変換する(1次微分ステップS4)。なお、図5は、レギュラーガソリン及びハイオクタンガソリンの吸光度の1次微分スペクトルを示している。
ここで、吸光度の1次微分スペクトルを用いる理由は、油中に気泡等の遮光成分が存在する結果として吸光度自体が変化しても、吸光度の1次微分値は変化しないためである。
【0026】
次に、下記の数式2または数式3により値Zを求め、この値Zと第2の基準値である0.0との大小関係を比較して第2の識別処理を行う(第2の識別ステップS5)。なお、図1の第2の識別ステップS5において、数式3Aを用いる場合については後述する。
下記の数式2は値Zの演算に4波長を用いた場合の演算式であり、数式3は5波長を用いた場合の演算式である。
【0027】
[数式2]
=α+β×1stD Abs(868)+β×1stD Abs(881)+β×1stD Abs(930)+β×1stD Abs(939)
[数式3]
=α11+β11×1stD Abs(868)+β12×1stD Abs(881)+β13×1stD Abs(930)+β14×1stD Abs(939)+β15×1stD Abs(960)
【0028】
数式2,数式3において、α,α11は定数、β〜β,β11〜β15は係数であり、1stD Abs(x)は波長x〔nm〕の吸光度の1次微分値を示している。
また、868〔nm〕は芳香族のCH結合の帰属波長875〔nm〕の近傍の波長、881〔nm〕は868〔nm〕と同様に芳香族のCH結合の帰属波長875〔nm〕の近傍の波長、930〔nm〕は油などのCH結合の帰属波長928〔nm〕の近傍の波長、939〔nm〕はメチレン基のCH結合の帰属波長934〔nm〕及び/またはメチル基のCH結合の帰属波長938〔nm〕のそれぞれ近傍の波長、960〔nm〕は水などのOH結合の帰属波長である970〔nm〕の近傍の波長である。
数式2,数式3では吸光度の1次微分値を用いており、吸光度スペクトルがピークとなる帰属波長では1次微分値がゼロになることから、基本的に上記帰属波長を避けてその近傍の波長を数式2または数式3の演算に用いるようにしている。
【0029】
更に、定数α,α11及び係数β〜β,β11〜β15は、数式2または数式3により求められる値Zが、レギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとについて両者の差が大きな負値または正値(例えば、4波長を用いる数式2を使用した場合に、レギュラーガソリンについて演算された値Zが−80、ハイオクタンガソリンについて演算された値Zが+80)となるように、多変量解析手法である判別分析等を用いて決定される。
【0030】
発明者が鋭意研究した結果、数式2における各定数及び係数は、例えば以下のように決定された。
α=−589.6
β=29898
β=15729.9
β=−10224.1
β=8306.9
また、数式3における各定数及び係数は、例えば以下のように決定された。
α11=−8620.46
β11=−488440
β12=−81631.2
β13=1144616
β14=−555753
β15=−1000852
【0031】
なお、上記の定数α,α11及び係数β〜β,β11〜β15は、1次微分値を求める波長をいくつ使用するか、及び、その波長の値によって変化するので、一意に決定されるものではない。
また、この実施形態では数式2により4波長、数式3により5波長を用いているが、更に906〔nm〕,920〔nm〕を加えた最大7波長の中から複数波長を選択し、数式2や数式3と同等の演算式を作成して第2の識別処理を行っても良い。
ここで、906〔nm〕はメチル基のCH結合の帰属波長913〔nm〕の近傍の波長、920〔nm〕はメチル基のCH結合の帰属波長913〔nm〕と油などのCH結合の帰属波長928〔nm〕とのほぼ中間値である。
【0032】
数式2または数式3によりZを求めた後、油種同定ステップS7では、Z<0.0の時に(S5 YES)油種をレギュラーガソリンと識別し(S71)、Z≧0.0の時に(S5 NO)油種をハイオクタンガソリンと識別する(S72)。
【0033】
一方、前述したステップS3において、Z≧0.0の時(S3 NO)、すなわち油種を非ガソリン類と識別した場合には、第3の識別処理によって灯油と軽油との識別を行う(第3の識別ステップS6)。この第3の識別処理は、下記の数式4により値Zを求め、この値Zと第3の基準値である0.0との大小関係を比較して実行する。
[数式4]
=Abs(930)−Abs(915)
なお、915〔nm〕はメチル基のCH結合の帰属波長913〔nm〕の近傍の波長である。
【0034】
数式4により値Zを求めた後、油種同定ステップS7において、Z<0.0の時に(S6 YES)油種を灯油と識別し(S73)、Z≧0.0の時に(S6 NO)油種を軽油と識別する(S74)。
【0035】
なお、レギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油の識別結果(S71〜S74)は、油種識別器本体の表示部により表示したり、外部への伝送出力として利用される。
【0036】
上記のように、本実施形態によれば、気泡や水分、鉄粉等の遮光成分が存在する場合でもレギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとを正確に識別することができ、勿論、非ガソリン類である灯油、軽油の識別も可能である。
また、前述した数式2または数式3における使用波長、定数、係数を適切な値に設定することにより、値Zとしてレギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとを明確に識別可能な値を選定することができると共に、レギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとが混合している場合には値Zを評価することで大まかな混合比を把握することも可能である。
【0037】
更に、一般的に長波長の近赤外光を使用する場合、水を含むサンプルでは水分によって近赤外光が吸収されてしまい、正確な測定ができない不都合があるが、本実施形態では、近赤外領域のうち比較的短波長領域の光を利用しているため、水分による吸収が少なく、上述したような不都合がない。
また、長波長の近赤外光を使用する場合、光源や分光光度計として高性能のものを使用したり、透過率を向上させるために、それに合致した材質のフローセル(例えばフッ化カルシウム、ジンクセレン等があるが取り扱いが難しく高価である)を使用したり、あるいは、窒素パージ等によって光学部品の潮解を防ぐような設備を更に設ける等の配慮が必要になり、検出セルとしては高価なものになってしまう。
これに対し、本実施形態のように短波長の近赤外光を使用する場合には、長波長の近赤外光を使用する場合に比べて余分な設備を設ける必要がなく、検出セルとして安価なものを使用可能である。例えば、フローセルの材質としては、比較的取り扱いやすく、しかも安価な無水合成石英、パイレックス(登録商標)等を使用することができる。
【0038】
なお、この第1実施形態では、第2の識別ステップS5において、数式2,数式3により得た値を第2の基準値である0.0と比較してレギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとを識別している。しかし、発明者が更に研究した結果、以下に述べる方法によって更に高精度に識別できることが判明した。
すなわち、その方法は、所定の化学結合の各帰属波長(以下、帰属波長群という)の近傍にそれぞれ存在する2波長と所定の化学結合の帰属波長自体(以下、特定帰属波長という)である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値に係数をそれぞれ乗算した値の加算値に更に定数を加算して得た値を、第2の基準値と比較して、レギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとを識別するものである。
具体的には、次の数式3Aにより値Zを求め、この値Zと第2の基準値である0.0との大小関係を比較して第2の識別処理を行う。
【0039】
[数式3A]
=α21+β21×1stD Abs(880)+β22×1stD Abs(920)+β23×1stD Abs(934)
【0040】
数式3Aにおいて、α21は定数、β21〜β23は係数であり、1stD Abs(x)は前記同様に波長x〔nm〕の吸光度の1次微分値である。
また、数式3Aでは、前記帰属波長群の近傍にそれぞれ存在する2波長として、芳香族のCH結合の帰属波長875〔nm〕の近傍の880〔nm〕と、メチル基のCH結合の帰属波長913〔nm〕と油などのCH結合の帰属波長928〔nm〕とのほぼ中間値である920〔nm〕と、を用いている。更に、前記特定帰属波長である1波長として、メチレン基のCH結合の帰属波長934〔nm〕自体を用いている。
【0041】
発明者による鋭意研究の結果、数式3Aにおける各定数及び係数は、例えば以下のように決定された。
α21=−22.4
β21=−1592.6
β22=−6836.7
β23=13951.8
【0042】
次に、本発明に係る油種識別方法の第2実施形態を説明する。
前述したように、パイプラインや油槽所においては、輸送される油種の切換前後で2種類の油が混合するおそれがある。そして、混合される油種によっては、その吸光度が単一油種の吸光度と明確に識別できないことがある。
図6は、レギュラーガソリン20〔%〕、軽油80〔%〕である混合油と、単一油種の灯油との吸光度スペクトルを示しており、両者の形状は極めて類似している。このため、第1実施形態のように単に吸光度スペクトルの形状のみに基づいて識別すると、油種を誤識別するおそれがある。
そこで、第2実施形態では、第1実施形態における第1の識別処理(第1の識別ステップS3)の前処理として、サンプルが混合油であるか否かを判定する処理を付加することとした。
【0043】
図7は、上記第2実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、上述したように、第1の識別ステップS3の前段に、混合有無の判定処理(混合有無判定ステップS2M)を付加している。
この判定処理は、下記の数式5によって求めた値Mが判定値(例えば0.01等の定数)より小さいか否かを判定するもので、Mが判定値より小さくなるまで繰り返し判定し、小さくなった後にステップS3以降の油種識別処理に移行するものである。
[数式5]
M=sqrt〔{pre Abs(874)−Abs(874)}+{pre Abs(910)−Abs(910)}+{pre Abs(928)−Abs(928)}
数式5において、sqrt〔y〕はyの平方根を示し、pre Abs(x)は波長x〔nm〕の吸光度の前回測定値、Abs(x)は同じく今回測定値を示している。
【0044】
すなわち、パイプラインや油槽所において混合油が長期にわたって定常的に流れることはなく、言い換えれば、複数種の油が混合している場合にはその吸光度スペクトルが経時的に変化し続ける。このため、油種識別に先立って、吸光度スペクトルの変化量が判定値より小さくなった時点をもって油種の混合が解消した(単一油種である)とみなし、ステップS3以降の油種識別処理に移行するようにした。
【0045】
前述した数式5は、複数の波長についてそれらの前回測定値と今回測定値との偏差の二乗和の平方根により値Mを求め、この値Mが予め設定した判定値よりも小さくなった時に実際の油種識別を開始する原理に基づいている。なお、数式5では着目する波長を874〔nm〕,910〔nm〕,928〔nm〕の3波長としてあるが、これらの波長及び波長の数は、混合していると考えられる油種に応じて適宜選択されるものである。
【0046】
本実施形態によれば、複数種の油が混合したままの状態で油種識別を開始するおそれがなく、混合油をこれと吸光度スペクトルが類似する単一種の油として誤識別するのを未然に防止することができる。
また、この実施形態では吸光度の前回測定値及び今回測定値を用いて混合有無の判定処理を行っているが、ステップS1で測定した透過スペクトルの前回測定値及び今回測定値を用いて混合有無の判定処理を行っても良い。
【0047】
本実施形態においても、図7に示す如く、第2の識別ステップS5において、数式2または数式3以外に数式3Aを用いることができる。
【0048】
図8は、本発明に係る油種識別器の実施形態を示す機能ブロック図である。
図8において、100は図2に示したような構成の検出セル、200は油種識別器本体であり、この本体200は耐圧かつ防爆構造として形成されている。
201は検出セル100により測定された透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換手段、202は前述した数式1による第1の識別処理を行う第1の識別手段、203は吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分手段、204は数式2または数式3または数式3Aによる第2の識別処理を行う第2の識別手段、205は数式4による第3の識別処理を行う第3の識別手段、206は各識別手段204,205による識別結果から油種を同定し、表示出力、警報出力、伝送出力等を実行する油種同定・出力手段である。
また、油種識別方法の第2実施形態として説明した図7のフローを実行する際には、スペクトル変換手段201と第1の識別手段202との間に設けられた混合有無判定手段207により、数式5による複数油種の混合の有無が判定される。そして、複数油種が混合していないと判定した場合には第1の識別手段202以降の通常の油種識別処理に移行し、混合していると判定した場合には、前記油種同定・出力手段206に混合判定信号を送出して警報出力等を行わせるようになっている。
【0049】
上述した油種識別器本体200の各手段はCPU及びメモリ等を備えたハードウェアとしての演算処理装置と、上記メモリ内のソフトウェアとしてのプログラムによって実現されるものであり、上記プログラムは前述した図1または図7のフローを実行するように構成されている。また、油種識別器本体200は、油種識別器の初期化、各種設定、校正、警報出力、伝送出力等の各動作をシーケンス制御するためのプログラムや回路構成も備えているが、便宜上、これらの図示を省略する。
【0050】
なお、上述した各実施形態における数式1,2,3,3A,4,5で使用した波長はあくまで例示的なものであり、各種燃料油の特定の化学結合に対応する帰属波長の近傍の波長を用いて第1〜第3の識別処理を行ない、必要に応じて複数油種の混合有無判定を行う着想であれば、本発明に係る油種識別方法または油種識別器に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る油種識別方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の各実施形態において使用される検出セルの構成図である。
【図3】油種に応じた吸光度スペクトルを示す図である。
【図4】油中の気泡の有無に応じた各種油の吸光度スペクトルを示す図である。
【図5】レギュラーガソリン及びハイオクタンガソリンの吸光度の1次微分スペクトルである。
【図6】混合油及び単一油種の吸光度スペクトルを示す図である。
【図7】本発明に係る油種識別方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る油種識別器の実施形態を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1:光源
2,9:ハーフミラー
3,5:プリズムミラー
4:フローセル
6:サンプル導入管
7:サンプル排出管
8:リファレンス部
10:分光光度計
100:検出セル
200:油種識別器本体
201:スペクトル変換手段
202:第1の識別手段
203:1次微分手段
204:第2の識別手段
205:第3の識別手段
206:油種同定・出力手段
207:混合有無判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、近赤外光の特定波長の吸光度を測定して前記サンプルの油種を識別する油種識別方法において、
前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類であるか否かを識別する第1の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類と識別した場合に、吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値に係数をそれぞれ乗算した値の加算値に更に定数を加算して得た値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンであるかハイオクタンガソリンであるかを識別する第2の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類でないと識別した場合に、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油であるか軽油であるかを識別する第3の識別ステップと、
を有することを特徴とする油種識別方法。
【請求項2】
請求項1に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長が、875〔nm〕,928〔nm〕,934〔nm〕及び/または938〔nm〕であることを特徴とする油種識別方法。
【請求項3】
請求項1に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長が、875〔nm〕,928〔nm〕,934〔nm〕及び/または938〔nm〕,970〔nm〕であることを特徴とする油種識別方法。
【請求項4】
識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、近赤外光の特定波長の吸光度を測定して前記サンプルの油種を識別する油種識別方法において、
前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類であるか否かを識別する第1の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類と識別した場合に、吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分ステップと、
所定の化学結合の各帰属波長(帰属波長群という)の近傍にそれぞれ存在する2波長と所定の化学結合の帰属波長自体(特定帰属波長という)である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値に係数をそれぞれ乗算した値の加算値に更に定数を加算して得た値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンであるかハイオクタンガソリンであるかを識別する第2の識別ステップと、
第1の識別ステップにより、前記サンプルをガソリン類でないと識別した場合に、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油であるか軽油であるかを識別する第3の識別ステップと、
を有することを特徴とする油種識別方法。
【請求項5】
請求項4に記載した油種識別方法において、
第2の識別ステップにおける前記帰属波長群の波長が、875〔nm〕,913〔nm〕及び/または928〔nm〕であり、前記特定帰属波長が934〔nm〕であることを特徴とする油種識別方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した油種識別方法において、
第1の識別ステップよりも前に、
前記吸光度スペクトルまたは前記透過スペクトルの前回測定値と今回測定値との偏差が判定値より小さいか否かを判定する混合有無判定ステップを設け、
この混合有無判定ステップにより前記偏差が前記判定値より小さいと判定した場合に前記サンプルの油種が単一であるとみなして第1の識別ステップ以後の処理に移行することを特徴とする油種識別方法。
【請求項7】
識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定する検出セルと、前記透過スペクトルから近赤外光の特定波長の吸光度を検出して前記サンプルの油種を識別する油種識別器本体と、を備えた油種識別器において、
前記油種識別器本体は、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類または非ガソリン類であることを識別する第1の識別手段と、
第1の識別手段によりガソリン類と識別した前記サンプルの吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分手段と、
所定の化学結合による各帰属波長近傍に存在する少なくとも4波長の吸光度の1次微分値を含む値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンまたはハイオクタンガソリンの何れかであることを識別する第2の識別手段と、
第1の識別手段により非ガソリン類であると識別した前記サンプルに対し、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油または軽油であることを識別する第3の識別手段と、
を備えたことを特徴とする油種識別器。
【請求項8】
識別対象の油であるサンプルに近赤外光を照射し、前記サンプルを透過した近赤外光の透過スペクトルを測定する検出セルと、前記透過スペクトルから近赤外光の特定波長の吸光度を検出して前記サンプルの油種を識別する油種識別器本体と、を備えた油種識別器において、
前記油種識別器本体は、
前記透過スペクトルを吸光度スペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第1の基準値と比較して前記サンプルがガソリン類または非ガソリン類であることを識別する第1の識別手段と、
第1の識別手段によりガソリン類と識別した前記サンプルの吸光度を1次微分スペクトルに変換する1次微分手段と、
所定の化学結合の各帰属波長の近傍にそれぞれ存在する2波長と所定の化学結合の帰属波長自体である1波長とからなる3波長の吸光度の1次微分値を含む値を、第2の基準値と比較して前記サンプルがレギュラーガソリンまたはハイオクタンガソリンの何れかであることを識別する第2の識別手段と、
第1の識別手段により非ガソリン類であると識別した前記サンプルに対し、所定の化学結合の各帰属波長近傍に存在する2波長の吸光度差を求め、この吸光度差を第3の基準値と比較して前記サンプルが灯油または軽油であることを識別する第3の識別手段と、
を備えたことを特徴とする油種識別器。
【請求項9】
請求項7または8に記載した油種識別器において、
前記吸光度スペクトルまたは前記透過スペクトルの前回測定値と今回測定値との偏差が判定値より小さいことを判定する混合有無判定手段を備え、
この混合有無判定手段の判定出力により第1の識別手段による処理を実行させることを特徴とする油種識別器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−32694(P2008−32694A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163832(P2007−163832)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】