説明

油脂及び/又は乳成分含有飲料用安定化剤

【課題】天然素材を原料とし、有効な安定化作用を有し、かつ、油脂及び/又は乳成分含有飲料の本来の味覚に調和した性状を付与する安定化剤を提供すること、及び該安定化剤を用いて、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を提供すること。
【解決手段】マンゴー果実を破砕し、裏ごしして、クリーム状にし、10〜30MPaでホモゲナイズ処理して調製したマンゴーピューレを主要成分とする油脂及び/又は乳成分含有飲料用の安定化剤を調製する。コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造において、該安定化剤を用いることにより、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂及び/又は乳成分含有飲料用安定化剤、及び該安定化剤を用いた安定した性状を有する油脂及び/又は乳成分含有飲料、及びその製造方法に関する。具体的には、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造に際して、特定のホモゲナイズ処理をしたマンゴーピューレを主要成分とする安定化剤を用いて、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を製造する方法、及び該方法によって製造された容器詰飲料等の安定化した性状の飲料調製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分含有飲料は、容器詰飲料等として、ソフトドリンクの主要な位置を占めている。しかしながら、これらの飲料においては、その流通や輸送の段階において、飲料中に含まれる乳タンパクや油脂成分が分離したり、沈殿或いは浮遊したり、又はココアパウダーなどの分散する固形成分が沈殿したりして、製品の品質を損なう場合があり、問題を生じる。したがって、従来よりこれらの油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造に際しては、これらを安定的に分散させるために、その製造に際して、各種の安定剤(増粘多糖類)や乳化剤が添加されている。
【0003】
例えば、乳飲料の乳化安定のために、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルに、ガラクトマンナン、キサンタンガムのような増粘多糖類を混合した乳化安定剤を用いるもの(特開2001−136903号公報)、蔗糖脂肪酸エステル或いはジグリセリン脂肪酸エステルに、大豆タンパク質のような植物タンパク質を配合した乳化安定剤を用いるもの(特開2004−242670号公報、特開2006−25743号公報)、又は、蔗糖脂肪酸エステル、乳酸脂肪酸エステルに、ポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した乳化安定剤を用いるもの(特開2006−6245号公報)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる乳化安定剤を用いるもの(特開2006−6272号公報)、特定のモノエステル含有量のジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルからなる乳化安定剤を用いるもの(特開2006−14725号公報)、特定重合度のポリグリセリンモノパルミチン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド等の有機酸モノグリセリドからなる安定剤を用いるもの(特開2007−306865号公報)等が開示されている。
【0004】
また、発酵乳飲料や酸性飲料の安定化のために、カルボキシメチルセルロース塩や、セルロース生産菌が生産する発酵セルロースからなる安定剤を用いるもの(特開平10−155434号公報、特開平11−346648号公報、特開2007−330256号公報)、更に、発酵乳飲料や酸性蛋白含有飲料の安定化のために、ガラクトマンナンとキサンタンガム(特開平8−252080号公報)、ローカストビーンガム、グアーガム等(特開平10−14547号公報)、ガティガム(特開2007−166913号公報)、ラムザンガム(特開2007−159573号公報)、ジェランガムと、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はペクチン或いは大豆食物繊維(特開2002−300849号公報)のような増粘多糖類或いはその配合物からなる増粘安定剤を用いるもの、酸性乳飲料にペクチンを含む安定剤を用いるもの(特開平10−313781号公報、特開2004−41239号公報)等が開示されている。
【0005】
更に、ココア飲料の乳化安定に、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、微結晶セルロース及びκ−カラギーナンを配合した乳化安定剤を用いるもの(特開平6−125711号公報)、チョコレート飲料の分散安定化に、水溶性ヘミセルロースを分散安定剤として用いるもの(特開平10−229821号公報)、コーヒー乳飲料の乳化安定に、特定重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合物を乳化安定剤として用いるもの(特開2007−143469号公報)、及びココア、コーヒー飲料等の不溶性固形物入り飲料の製造方法において、安定剤としてセルロースを用いるもの(特開2001−29053号公報)等が開示されている。
【0006】
このように、従来から油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造に際しては、飲料の成分を安定的に分散させるために、その製造に際して、各種の安定剤(増粘多糖類)や乳化剤が添加されているが、これらの安定剤や乳化剤を飲料に添加することにより、飲料成分の分散化や乳化の安定化は図れるが、飲料自体に不自然な粘性が出て、飲料本来の味覚が損なわれるという問題がある。また、飲料の容器詰飲料としての製品化に際しては、飲料の原材料表示の義務付けから、「安定剤」、「乳化剤」といった表示がなされ、合成添加物或いは化学物質添加物的な印象を消費者に与え、商品コンセプトとして、必ずしも好ましいものではない。
【0007】
他方で、近年、健康志向や天然物志向から果汁飲料が好まれる中で、マンゴーを果汁飲料の原料として用いたものが消費者の嗜好性を引いている。マンゴーの飲料への利用の形態としては、マンゴー果汁自体又はマンゴー果汁に他の果汁或いは飲料成分を混合したものを原料として飲料を調製するもの(特開2007−89562号公報、特開2002−95450号公報)や、飲料用の果汁香料として、マンゴー香料を飲料の調製に際して添加するもの(特開2006−217807号公報、特開2006−254871号公報、特開2006−296226号公報、特開2006−296376号公報)がある。最近、マンゴー果汁を利用した飲料として、マンゴー果汁のパルプ分を低減したマンゴー果汁加工品を調製し、該マンゴー果汁を、果実酒やリキュール類のようなアルコール飲料、或いは、果汁入り清涼飲料のようなノンアルコール飲料の製造に際して添加した飲料が開示されている(特開2002−238513号公報)。この開示のものでは、飲料の製造に際して、該マンゴー果汁加工品を添加することにより、沈殿の発生が防止され、粘稠性が低く、かつ、果汁由来の優れた香味が付与された飲料を製造することが示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−125711号公報。
【特許文献2】特開平8−252080号公報。
【特許文献3】特開平10−14547号公報。
【特許文献4】特開平10−155434号公報。
【特許文献5】特開平10−229821号公報。
【特許文献6】特開平10−313781号公報。
【特許文献7】特開平11−346648号公報。
【特許文献8】特開2001−29053号公報。
【特許文献9】特開2001−136903号公報。
【特許文献10】特開2002−95450号公報。
【特許文献11】特開2002−238513号公報
【特許文献12】特開2002−300849号公報。
【特許文献13】特開2004−41239号公報。
【特許文献14】特開2004−242670号公報。
【特許文献15】特開2007−89562号公報
【特許文献16】特開2006−6245号公報。
【特許文献17】特開2006−6272号公報。
【特許文献18】特開2006−14725号公報。
【特許文献19】特開2006−25743号公報。
【特許文献20】特開2006−217807号公報。
【特許文献21】特開2006−254871号公報。
【特許文献22】特開2006−296226号公報。
【特許文献23】特開2006−296376号公報。
【特許文献24】特開2007−143469号公報。
【特許文献25】特開2007−159573号公報。
【特許文献26】特開2007−166913号公報。
【特許文献27】特開2007−306865号公報。
【特許文献28】特開2007−330256号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分含有飲料用の安定化剤として、天然素材を原料とし、有効な安定化作用を有し、かつ、油脂及び/又は乳成分含有飲料の本来の味覚に調和した性状を付与する安定化剤を提供すること、及び、該安定化剤を用いて、容器詰飲料等として、貯蔵、流通、販売等においても、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を製造し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分含有飲料用の安定化剤として、従来のような合成の「安定剤」、「乳化剤」を使用することなく、天然素材を原料とし、有効な安定化作用を有し、しかも、油脂及び/又は乳成分含有飲料の本来の特有の味覚に調和した性状を付与する安定化剤について、鋭意検討する中で、マンゴー果実を破砕して裏ごしした、クリーム状にし、特定の圧力でホモゲナイズ処理をし調製した、果汁のパルプ分をそのまま含有したマンゴーピューレが、油脂及び/又は乳成分含有飲料用の安定化剤として、特に優れた安定化作用を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、マンゴー果実を破砕し、裏ごしして、クリーム状にし、10〜30MPaでホモゲナイズ処理して調製したマンゴーピューレを主要成分とする油脂及び/又は乳成分含有飲料用の安定化剤からなる。本発明においては、該安定化剤を油脂及び/又は乳成分含有飲の製造に用いて、例えば容器詰飲料等として、貯蔵、流通、販売等においても、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を製造することができる。本発明における安定化剤の添加量は、飲料の性状に合わせて適宜決定することができるが、好ましくは、飲料全量に対して10〜40重量%の範囲で添加される。
【0012】
本発明の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法において、安定化剤の添加後の飲料の粘度は、常温で40〜150mPa・sであるように調整することが好ましい。該粘度の調整は、安定化剤の添加後、ホモゲナイズ処理を行なうことにより行なうことができる。マンゴー果汁はホモゲナイズ処理を行なうと、大きく粘度が上昇するという特性を有している。本発明の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法における油脂及び/又は乳成分含有飲料としては、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料を挙げることができる。
【0013】
すなわち具体的には本発明は、[1]マンゴー果実を破砕し、裏ごしして、クリーム状にし、10〜30MPaでホモゲナイズ処理したマンゴーピューレを主要成分とする油脂及び/又は乳成分含有飲料用安定化剤や、[2]油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造に際して、安定化剤として、上記[1]記載の安定化剤を添加することを特徴とする油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法や、[3]安定化剤の添加量が、飲料全量に対して10〜40重量%であることを特徴とする上記[2]記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法からなる。
【0014】
また本発明は、[4]上記[1]記載の安定化剤を添加し、添加後の飲料の粘度を常温で40〜150mPa・sであるように調整することを特徴とする上記[2]又は[3]記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法や、[5]上記[1]記載の安定化剤を添加した後の飲料の粘度の調整を、ホモゲナイズ処理を用いて行なうことを特徴とする請求項4記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法や、[6]上記[2]〜[5]のいずれか記載の製造方法によって製造された安定化した性状を有する油脂及び/又は乳成分含有容器詰飲料や、[7]飲料が、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料であることを特徴とする上記[6]記載の油脂及び/又は乳成分含有容器詰飲料からなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の飲料用の安定化剤は、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分を含有する飲料用の安定化剤として、特に優れた安定化作用を有し、本発明は、該安定化剤を用いることにより、該容器詰飲料等として、貯蔵、流通、販売等においても、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を提供することができる。本発明のマンゴーピューレからなる安定化剤は、油脂及び/又は乳成分含有飲料の本来の味覚に調和した性状を飲料に付与することができ、また、該安定化剤は、本来、飲料の原料として用いられる天然素材から調製されるものであるから、該安定化剤を用いて調製される飲料は、その香味上も、また、健康志向の面からも極めて望ましい飲料として提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の飲料用安定化剤は、マンゴー果実を破砕し、裏ごしして、クリーム状にし、10〜30MPaでホモゲナイズすることにより調製したマンゴーピューレを主要成分とする油脂及び/又は乳成分含有飲料用安定化剤からなる。そして、本発明は、油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造において、該飲料用安定化剤を添加することにより、飲料成分の乳化・分散の安定化した飲料を製造する方法を提供することからなる。本発明の飲料の製造方法で製造された飲料は、例えば、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分を含有する飲料を容器詰飲料等として、貯蔵、流通、販売等に供した場合においても、飲料中の不溶性固形分或いは脂肪成分等の沈殿、浮遊、又は分離の起こらない安定化した性状の油脂及び/又は乳成分含有飲料を提供する。
【0017】
[マンゴーピューレの調製]
本発明においてピューレとは、一般的な果実ピューレの製造方法によって製造されたものをいう。すなわち、本発明におけるマンゴーピューレとは、マンゴーを必要に応じて加熱し、その後破砕して裏ごしをし、クリーム状にしたものをいう。本発明において該マンゴーピューレの原料として用いるマンゴーは、特定の原産地、品種によらない。一般に入手できるマンゴー或いはマンゴーピューレであってもよい。例えば、表1のような製品を用いることができる。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明において、飲料用安定化剤として用いられるマンゴーピューレは、マンゴーを加熱破砕して裏ごしし、クリーム状にしたマンゴーピューレを10〜30MPaでホモジナイズ処理することにより調製される。マンゴー果汁は、ホモジナイズ処理をすると大きく粘性が上昇するという特性を有している。ホモジナイズの条件は、常温(20℃)で10〜30MPa、好ましくは15〜20MPaである。ホモジナイズ処理は、飲料用安定化剤の調製に際して、マンゴーピューレ自体を処理することにより行うことができるが、該ホモジナイズ処理は、飲料の製造段階において、マンゴーピューレを飲料に添加した後の製品化の段階で行ってもよい。
【0020】
本発明において、マンゴーピューレのホモジナイズ処理は、油脂及び/又は乳成分含有飲料に対する優れた安定化作用を得る上で重要な処理である。本発明において見い出されたように、本発明のマンゴーピューレは他の果実ピューレに比較して、その飲料の安定化作用において特に優れているが、マンゴーピューレの安定向上性及び乳化性はマンゴーの繊維構造に由来するものと推定される。すなわち、通常の果汁ピューレはある程度粒子サイズが一定の範囲で納まっているが、マンゴーピューレは広く小さいものから、大きなものまで幅広く分布している。またマンゴー自身の特性として食物繊維が比較的豊富に含まれているとされるが、ペクチンを主とする可溶性食物繊維とセルロースを主とする不溶性食物繊維の比率がほぼ1:1で分布していることが知られている。マンゴー果汁を添加することにより、不溶性食物繊維と可溶性食物繊維が架橋構造のようなものを構築し、その構造的なもので物理的に引っ掛けるような状態となり、安定性を向上させているのではないかと推測される。そして、適当なホモジナイズ処理をすることによって、これらの繊維が縮れ構造となり粘性が上がり、より液体中の浮遊粒子の安定化に作用しているものと思われる。
【0021】
[飲料の調製]
本発明の安定化剤を用いた油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法において、マンゴーピューレ安定化剤の添加量は、飲料全量に対して、10〜40重量%、好ましくは、15〜30重量%である。なお、30重量%を超えた場合、製品の成分の沈殿防止及び乳化安定作用は得ることはできるが、この場合は最終製品の粘性が上がることから、製造工程での調整を考慮する必要がある。本発明の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法において、安定化剤の添加後の飲料の粘度は、常温で40〜150mPa・sであるように調整することが好ましい。該粘度の調整は、飲料製造工程における安定化剤の添加後、ホモゲナイズ処理を行なうことにより行なうことができる。
【0022】
本発明の安定化剤を用いた油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法は、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料のような油脂及び/又は乳成分を含有する飲料の製造に適用することができる。本発明の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法においては、その飲料の製造に際して、本発明の安定化剤を添加して、処理を行なう以外は、その油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造原料、製造のための処理及び条件において、従来のものと変わるところはない。また、容器詰飲料としての形態等、提供する飲料製品の形態においても従来のものと変わるところはない。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
ココアパウダー15gを少量の水に溶かしてグラニュー糖と水を加えてココア成分が1.5%のココア飲料1000mlを調合した。一方、マンゴーピューレの有無のみ差ができるように、ココア成分1.5%、マンゴーピューレ77gを加えてマンゴーピューレの添加率が16%となるココア飲料を同量調合した。その後、いずれも20℃、15MPaの条件でホモジナイズ処理を行った。ここで、マンゴーピューレにはエクアドル産マンゴー果汁を用いた。それぞれの、試料を20℃で1月保存した後に、沈殿の発生および脂肪成分の浮き状況を目視観察した。マンゴーピューレを含まないココア飲料は、ココア粒子の沈殿および脂肪成分の浮きが多く発生したが、マンゴーピューレを含むココア飲料は、沈殿および脂肪成分の浮きはいずれも目視では認められなかった。
【実施例2】
【0025】
マンゴーと成分の似ているバナナを用いて安定性の向上、乳化性を比較して、マンゴーの特異性を検証した:ココアパウダー15gを少量の水に溶かしてグラニュー糖とバナナピューレ160gに水を加えてバナナピューレの添加率が16%となる1000mlのバナナピューレを含むココア飲料を調合した。ココア成分は1.5%であった。一方、同様にしてココア成分1.5%、マンゴーピューレ16%のココア飲料を同量調合した。その後、いずれも20℃、15MPaの条件でホモジナイズ処理を行った。
【0026】
それぞれの、試料を20℃で1月保存した後に、沈殿の発生および脂肪成分の浮き状況を目視観察した:バナナピューレを含むココア飲料は、ココア粒子の沈殿および脂肪成分の浮きが少し発生したが、マンゴーピューレを含むココア飲料は、沈殿および脂肪成分の浮きはいずれも目視では認められなかった。これより、バナナピューレを用いてもある程度の安定性向上および乳化性が認められるが、マンゴーピューレの効果には遥かにおよばず、マンゴーピューレの性状に特異な効果があると判断される。
【実施例3】
【0027】
実施例2では、マンゴーピューレとバナナピューレの添加量(重量%)を同じにしたが、添加量を同じにすると添加、調合後の液体の粘度が異なる。そこで、粘度を統一して沈殿、油脂成分の浮き発生を比較した:ココアパウダー15gを少量の水に溶かしてグラニュー糖とバナナピューレ25%に水を加えて1000mlのバナナピューレを含むココア飲料を調合した。一方、ココア成分1.5%、マンゴーピューレ15%のココア飲料を同量調合した。両者の粘度はB型粘度計で測定して50mPa・sとなった。その後、いずれも20℃、15MPaの条件でホモジナイズ処理を行った。
【0028】
それぞれの、試料を20℃で1月保存した後に、沈殿の発生および脂肪成分の浮き状況を目視観察した。バナナピューレを含むココア飲料は、ココア粒子の沈殿および脂肪成分の浮きが少し発生したが、マンゴーピューレを含むココア飲料は、沈殿および脂肪成分の浮きはいずれも目視では認められなかった。
【実施例4】
【0029】
マンゴーピューレを用いることで飲料の安定化をすることができることがわかったので、その添加率の有効範囲を検証した:ココアパウダー15gを少量の水に溶かしてグラニュー糖とマンゴーピューレをそれぞれ0g、24g、48g、72g、96g、143g、193gに水を加えて6種類のマンゴピューレを含むココア飲料をそれぞれ1000ml調合した。マンゴピューレの添加率はそれぞれ0、5、10、15、20、30、40%となった。ココア成分が1.5%であった。その後、これらを20℃、15MPaの条件でホモジナイズ処理を行った。それぞれの、試料を20℃で1月保存した後に、沈殿の発生および脂肪成分の浮き状況を目視観察した。結果を、表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
この結果から、マンゴーピューレの添加率が15%であれば安定性向上の効果はあると判断される。しかし、実際は添加率が30%以上になると飲料の粘性が上がりすぎることから製造工程への影響が現れ始める。よって、マンゴーピューレの添加率は40%以下が好ましい。
【実施例5】
【0032】
ココアパウダー以外の飲料でマンゴーピューレの安定向上を検証した:殺菌乳酸菌飲料64gを少量の水に溶かして脱脂粉乳とマンゴーピューレをそれぞれ0g、24g、48g、72g、96g、143g、193gに水を加えて6種類のマンゴピューレを含む殺菌乳酸菌飲料をそれぞれ1000ml調合した。マンゴピューレの添加率はそれぞれ0、5、10、15、20、30、40%となった。乳酸菌飲料の添加率は3%であった。その後、これらを20℃、15MPaの条件でホモジナイズ処理を行った。それぞれの、試料を20℃で1月保存した後に、沈殿の発生および脂肪成分の浮き状況を目視観察した。結果を、表3に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
この結果から、乳酸菌飲料にもココア飲料と同様にマンゴーピューレの安定性の効果があることがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴー果実を破砕し、裏ごしして、クリーム状にし、10〜30MPaでホモゲナイズ処理したマンゴーピューレを主要成分とする油脂及び/又は乳成分含有飲料用安定化剤。
【請求項2】
油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造に際して、安定化剤として、請求項1記載の安定化剤を添加することを特徴とする油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法。
【請求項3】
安定化剤の添加量が、飲料全量に対して10〜40重量%であることを特徴とする請求項2記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の安定化剤を添加し、添加後の飲料の粘度を常温で40〜150mPa・sであるように調整することを特徴とする請求項2又は3記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の安定化剤を添加した後の飲料の粘度の調整を、ホモゲナイズ処理を用いて行なうことを特徴とする請求項4記載の油脂及び/又は乳成分含有飲料の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか記載の製造方法によって製造された安定化した性状を有する油脂及び/又は乳成分含有容器詰飲料。
【請求項7】
飲料が、コーヒー飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、乳飲料又は乳酸発酵飲料であることを特徴とする請求項6記載の油脂及び/又は乳成分含有容器詰飲料。


【公開番号】特開2010−51240(P2010−51240A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219521(P2008−219521)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(398036911)キリン・トロピカーナ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】