説明

油脂含有組成物、及びそれを含む経口製剤

【課題】ドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸として高含有するグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有させた場合であっても、安定性が良好であり、且つ自己乳化性に優れた油脂含有組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤を含有する油脂含有組成物であって、(A)油性成分として構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルを含み、(C)乳化剤として構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の含有比率が、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の合計質量に対して以下の範囲内にある油脂含有組成物。
(A)油性成分:55質量%以上78質量%以下
(B)グリセリン:10質量%以上35質量%以下
(C)乳化剤:5質量%以上13質量%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油脂含有組成物に関し、より詳細には、構成脂肪酸としてドコサヘキサエン酸を含むグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有する油脂含有組成物、及び、該油脂含有組成物を用いた経口製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ドコサヘキサエン酸(以下、適宜「DHA」と略称する。)は、魚油中に多く含まれる不飽和脂肪酸であり、その生理活性能(脳、眼等に対する生理活性)が着目されて、DHA及びそれを構成脂肪酸として含むグリセリン脂肪酸エステルが、栄養補助食品、食品添加物、等に多く利用されている。
【0003】
油性成分などの水に難溶性の生理活性成分について、体内での吸収性を改善するための技術として、当該生理活性成分を、自己乳化能を有する組成物に含有させ、該組成物と水又は消化液とが接触するだけで、自然に乳化・分散するように工夫されたものが提案されている。例えば、特許文献1には、油性成分を高配合とし且つ乳化剤の使用を大幅に低減させた製剤を得るべく、油性成分、グリセリン、澱粉又は澱粉誘導体、及びリゾレシチンを含有する自己乳化能を有するソフトカプセル製剤用乳化組成物が開示されている。そのような自己乳化型の組成物に適用される剤型としては、取り扱い性や摂取の容易性の点から、ソフトカプセル等のカプセル剤型が適している旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摂取回数や摂取量の負担を低減しつつも、ドコサヘキサエン酸(DHA)を高効率で摂取可能とする方策として、DHAを構成脂肪酸として高含有するグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で、自己乳化型の油脂含有組成物中に含有させることが考えられる。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、DHAを構成脂肪酸として高含有するグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有する自己乳化型の油脂含有組成物を得ようとすると、油脂含有組成物中に含有される油性成分が離液してしまい安定性が損なわれ、また、自己乳化性にも劣ることが判明した。
本発明は、上記の状況に鑑みたものであり、ドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸として高含有するグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有させた場合であっても、安定性が良好であり、且つ自己乳化性に優れた油脂含有組成物、及び該油脂含有組成物を用いた経口製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
[1] 少なくとも、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤を含有する油脂含有組成物であって、
前記(A)油性成分として構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルを含み、
前記(C)乳化剤として構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、
前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の含有比率が、前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の合計質量に対して以下の範囲内にある油脂含有組成物。
(A)油性成分:55質量%以上78質量%以下
(B)グリセリン:10質量%以上35質量%以下
(C)乳化剤:5質量%以上13質量%以下
[2] 前記構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン骨格が有するヒドロキシ基の平均脂肪酸エステル化数が2.5以上3.0以下のグリセリン脂肪酸エステルである前記[1]に記載の組成物。
[3] 前記[1]又は[2]に記載の組成物を含有する経口製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸として高含有するグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有させた場合であっても、安定性が良好であり、且つ自己乳化性に優れた油脂含有組成物、及び該油脂含有組成物を用いた経口製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の油脂含有組成物は、少なくとも、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤を含有する油脂含有組成物であって、前記(A)油性成分として構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルを含み、前記(C)乳化剤として構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の含有比率が、前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の合計質量に対して以下の範囲内にある油脂含有組成物である。
(A)油性成分:55質量%以上78質量%以下
(B)グリセリン:10質量%以上35質量%以下
(C)乳化剤:5質量%以上13質量%以下
【0009】
なお、以下では、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の各成分を、適宜、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)と称する。
【0010】
本明細書において油脂とは、脂肪酸とグリセリンのエステル化合物(グリセリド)を意味し、本発明の油脂含有組成物は、該油脂として、ドコサヘキサエン酸を有するグリセリン脂肪酸エステルを必須に含有するものである。
【0011】
本発明の油脂含有組成物は、自己乳化能を有する油脂含有組成物である。
ここで、「油脂含有組成物が自己乳化能を有する」とは、油脂含有組成物が、水、消化液等の水性液体に接触した際において、機械的操作により加えられる外力を必要することなく自然に乳化することを意味する。
【0012】
本発明の油脂含有組成物は、構成脂肪酸としてドコサヘキサエン酸を含むグリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有させるに際して、構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステルと、グリセリンとを、選択的に且つ特定量で組み合わせて併用したことで、優れた安定性及び自己乳化性を発揮する。
【0013】
なお、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
以下、本発明の組成物が含有する必須成分及び任意成分について説明する。
【0014】
[成分(A)]
本発明の油脂含有組成物は、(A)油性成分〔成分(A)〕を含有し、該油性成分として、構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステル(以下、適宜「特定グリセリン脂肪酸エステル」と称する。)を含む。
なお、後述する構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステル等の(C)乳化剤に包まれる油性成分は、成分(A)である油性成分には含まれない。
【0015】
成分(A)における「構成脂肪酸」とは、本発明の油脂含有組成物に成分(A)として含有される総てのグリセリン脂肪酸エステルが有する構成脂肪酸を意味し、本発明においては、その30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であることを要する。
【0016】
成分(A)に含まれるドコサヘキサエン酸の含有比率は、アルカリ分解法による脂肪酸の定量方法(下記(a)〜(d)に示す操作)により求めることができる。
<(a)試料のけん化、及び脂肪酸成分の抽出>
測定対象となる試料を、1mol/L水酸化カリウム−エタノール(1質量%ピロガロール含有)溶液に溶解し、けん化する。なお、内部標準としてヘプタデカン酸を用いる。
けん化後の試料溶液に、水、30質量%硫酸、ジエチルエーテルを添加した後、ジエチルエーテル層(有機層)を分液し、水洗する。水洗後のジエチルエーテル層から溶媒(ジエチルエーテル)を留去し、脂肪酸成分を得る。
<(b)けん化>
上記(a)にて得られた脂肪酸成分に、0.5mol/L水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加し、けん化する。
<(c)メチルエステル化>
上記(b)にてけん化後の試料に、三フッ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液を添加して、試料中に含まれる脂肪酸成分をメチルエステル化する。
<(d)ガスクロマトグラフ法(水素炎イオン検出器)による脂肪酸の同定>
上記(c)にてメチルエステル化後の試料に、ヘキサン、飽和食塩水を添加した後、ヘキサン層(有機層)を分液する。分液後のヘキサン層を測定試料として、水素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフ法により、試料中に含まれる脂肪酸の種類及び量を分析する。
【0017】
成分(A)中に含まれる特定グリセリン脂肪酸エステルおいては、グリセリン骨格が有するヒドロキシ基の平均脂肪酸エステル化数が2.5以上3.0以下であることが好ましく、2.7以上3.0以下であることがより好ましい。ここで、該平均脂肪酸エステル化数とは、本発明の油脂含有組成物に、成分(A)として含有されるグリセリン脂肪酸エステル1分子当たりが有する脂肪酸エステルの数の平均値である。
平均脂肪酸エステル化数は、平均エステル化率(%)×3÷100で算出できる。
平均エステル化率(%)は、「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)により測定した、グリセリン脂肪酸エステルのケン化価(SV)、酸価(AV)、水酸基価(OHV)を用い、次式より算出する。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。
【0018】
成分(A)中に含まれる特定グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセライド、ジグリセライド、及びトリグリセライドのいずれであってもよいが、ジグリセライド及びトリグリセライドであることがより好ましく、トリグリセライドであることが更に好ましい。
【0019】
特定グリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を用いてもよく、例えば、アルガトリウム(ブルディーテクノロジー社製)、DHA−46A、DHA−70(株式会社マルハニチロ食品)などが挙げられる。
【0020】
成分(A)である油性成分としては、特定グリセリン脂肪酸エステル以外のその他の油性成分を含有してもよい。該その他の油性成分としては、例えば、特定グリセリン脂肪酸エステル及び成分(C)として機能するグリセリン脂肪酸エステル以外の他の油脂、目的に応じた物性や機能性を有する他の油性成分などが挙げられる。
【0021】
本発明の油脂含有組成物は、成分(A)として特定グリセリン脂肪酸エステルのみを含有することが特に好ましい。
【0022】
本発明の油脂含有組成物における成分(A)の含有比率は、該組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計質量に対して、55質量%以上78質量%以下であり、60質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
成分(A)の含有比率は、併用される他の成分の含有量を考慮して、上記の範囲内において適宜設定することができる。
【0023】
[成分(B)]
本発明の油脂含有組成物は、(B)グリセリン〔成分(B)〕を、該組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計質量に対して、10質量%以上35質量%以下含有する。
グリセリンとしては、濃度98%以上の濃グリセリンが特に好ましい。
【0024】
本発明の油脂含有組成物における(B)グリセリンの含有比率は、該組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計質量に対して、10質量%以上35質量%以下であり、組成物の分散性・安定性・カプセル製剤化した際のカプセルの安定性などの観点からは、15質量%以上30質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0025】
[成分(C)]
本発明の油脂含有組成物は、(C)乳化剤〔成分(C)〕を含有し、該乳化剤として、構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステル(以下、適宜「特定乳化剤」と称する。)を含む。
【0026】
成分(C)として含まれる特定乳化剤は、同一分子内に、親水部であるデカグリセリンと疎水部である不飽和結合を有するオレイン酸とを併有することで、界面活性能を有する化合物である。
成分(C)として含まれる特定乳化剤は、本発明の油脂含有組成物が、水、消化液等の水性液体に接触して自己乳化能を発揮する際において、乳化剤として機能しうる。
【0027】
特定乳化剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、ポエムJ−0381V(理研ビタミン(株)製、サンソフトQ−17S(太陽化学(株)製)などが挙げられる。
【0028】
本発明の油脂含有組成物における成分(C)の含有比率は、該組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計質量に対して、5質量%以上13質量%以下であり、組成物の安定性確保の観点からは、8質量%以上11質量%以下であることが好ましい。
【0029】
成分(C)である乳化剤としては、特定乳化剤以外のその他の乳化剤を含有してもよい。該その他の乳化剤としては、例えば、i)オレイン酸以外の他の脂肪酸を構成脂肪酸とするか、若しくは、特定乳化剤とはグリセリン重合度が異なるポリグリセリン脂肪酸エステルである乳化剤、ii)ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル等の油溶性のポリグリセリン脂肪酸エステルである乳化剤を含有してもよい。
【0030】
本発明の油脂含有組成物は、成分(C)として特定乳化剤のみを含有することが特に好ましい。
【0031】
ここで、本発明の油脂含有組成物において、成分(A)に必須に含まれる特定グリセリン脂肪酸エステルを高濃度で含有させるに際し、成分(B)であるグリセリンとの組み合わせにおいて、成分(C)に必須に含まれる特定乳化剤を用いることを見出した本発明者らの知見について述べる。
疎水性基として脂肪鎖を有する乳化剤としては、一般的には、脂肪鎖が飽和脂肪酸である乳化剤の方が、脂肪鎖が不飽和脂肪酸である乳化剤に比べてHLBが低いことから、油脂への溶解性が高いことが知られている(吉田時行他 編「新版 界面活性剤ハンドブック」、工学図書株式会社、1987年、等の成書を参照。)。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、DHAを構成脂肪酸として高含有する油脂を高濃度で含有させた自己乳化型の油脂含有組成物においては、一般に有効とされる脂肪鎖が飽和脂肪酸である乳化剤を用いた場合では、組成物の安定性や再分散性(自己乳化性)が発揮されず、脂肪鎖中に不飽和結合を有するオレイン酸を構成脂肪酸とするデカグリセリン脂肪酸エステルとグリセリンとを組み合わせた一定の領域においてはじめて、DHAを構成脂肪酸として高含有する油脂を高配合しても、安定性及び再分散性の双方に優れた自己乳化型の油脂含有組成物を得ることが可能となることが判明した。
また、本発明者らは、疎水性基である脂肪鎖としてオレイン酸を有する乳化剤であっても、親水基がショ糖であるショ糖脂肪酸エステルやポリソルベートでは、DHAを構成脂肪酸として高含有する油脂を高濃度で含有させた自己乳化型の油脂含有組成物の安定性及び再分散性は発揮されず、オレイン酸を構成脂肪酸とするデカグリセリン脂肪酸エステル(特定乳化剤)のみが選択的に乳化性能において優れた効果を発揮することを見出したものである。
【0032】
また、成分(B)と成分(C)との含有比(B:C)としては、質量基準で、7:1〜10:13であることが好ましく、15:4〜15:11であることがより好ましい。
【0033】
[(D)その他の成分]
本発明の油脂含有組成物は、成分(A)、(B)及び(C)の各成分と共に、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、目的に応じた物性や機能性を有する他の油性成分(例えば、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン等のカロテノイド色素を含有する油脂類、リン脂質類等)、香料、酸化防止剤、植物や果実等の抽出物などが挙げられる。
油類に関しては、成分(A)と混合して配合することができる。この場合、当該油類の含有量は、成分(A)の含有量に包含される。
【0034】
本発明の油脂含有組成物は、成分(A)、(B)及び(C)の各成分、及び、任意成分を混合することにより調製することができる。
本発明の油脂含有組成物、例えば、(B)成分と(C)成分とを混合し、湯せん中で均一に溶解して、混合液を得た後、該混合液に、(A)成分を十分撹拌しながら徐々に添加していき、全量添加する方法により調製することができる。
例えば、本発明の油脂含有組成物は、特定乳化剤を含む成分(C)を、成分(B)であるグリセリンに溶解したものを水相とし、成分(A)である油性成分を油相として、該油相を該水相にわずかずつ添加して乳化する方法よって好適に調製することができる。水相には、水を更に添加してもよい。
【0035】
本発明の油脂含有組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、等として好適に適用することができる。
【0036】
本発明の油脂含有組成物は、該組成物を含有する経口製剤として好適に調製することができる。該経口製剤は、特に加工することなく、水等の水性液体中に直接投入して乳化・分散させる態様のものであってもよいし、カプセル製剤としてもよい。
更に、カプセル製剤としては、ソフトカプセル製剤及びハードカプセル製剤のいずれであってもよいが、内容物の漏れや摂取容易性の点からは、ソフトカプセル製剤であることがより好ましい。
【0037】
本発明の油脂組成物を含有するソフトカプセル製剤は、ソフトカプセル皮膜内に、該油脂組成物を封入(充填)させて、ソフトカプセル型製剤にすることも可能である。
ソフトカプセル皮膜としては、ゼラチン等の動物原料に由来する成分、又は、デンプン、カラギーナン等の植物原料に由来する成分を主成分とするものであることが好ましい。
ソフトカプセル製剤の製造において、製造適性の点から、本発明の油脂含有組成物を封入(充填)させる際には、該油脂含有組成物の温度を上げて粘度を下げること、あるいは、水などを添加して粘度を下げることが望ましい。ソフトカプセル完成後における油脂含有組成物の経時安定性の観点からは、水を添加して粘度を下げることが好ましい。加える水の量は油脂含有組成物の粘度によって異なるが、油脂含有組成物の単位質量あたり3〜8質量%程度が好ましい。
【0038】
ソフトカプセル皮膜の形成に用いる皮膜形成用組成物の例としては、例えば、デンプン、カラギーナン等の水溶性高分子、グリセリン等の可塑剤、水、及び他の任意成分を含有する皮膜形成用組成物が挙げられる。
【0039】
ソフトカプセル製剤は、例えば、ロータリーダイ方式等の公知の製造方法により製造することができ、例えば、特開2005−112849号に記載される方法に準じて製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0041】
[実施例1〜14、比較例1〜15]
<油脂含有組成物の調製>
実施例1〜14、比較例1〜15の各油脂含有組成物を、以下のようにして調製した。
【0042】
実施例1〜13、及び、比較例1〜15については、表1に示す種類及び量で、(B)成分と(C)成分とを混合し、80℃の湯せん中で均一に溶解して、混合液を得た。その後、室温(25℃)にて、得られた混合液に、(A)成分を十分撹拌しながら徐々に添加していき、全量添加したところで、油脂含有組成物の完成とした。
また、実施例14については、表1に示す種類及び量で、(B)成分、(C)成分及び水を混合して混合液を得た以外は、実施例1と同様にして油脂含有組成物を得た。
【0043】
<油脂含有組成物の評価>
実施例1〜14、比較例1〜15の油脂含有組成物を用いて、初期安定性、及び自己乳化性についての評価を行った。
【0044】
1.初期安定性
各油脂含有組成物を、蓋付ガラス容器中に、25℃で1日放置後、組成物の状態を目視にて観察し、下記の評価基準により評価した。結果を表1に併記する。
<評価基準>
A:分離はもちろんなく均一であり安定性が非常に優れている
B:油性成分が、組成物中から分離することなく、安定している
C:油性成分が分離して、組成物の表面に染み出ている
D:油性成分が、組成物中から完全に分離している
ここで、油性成分は、(A)成分等の油性成分である。
【0045】
2.自己乳化性
初期安定性の評価結果が「A」又は「B」であったものに関して、100mgの油脂含有組成物に25℃の水50mlを添加し、マグネティックスターラーで撹拌し、分散させることにより、水に接触させた際の自己乳化性を目視により観察し、以下の評価基準により評価した。結果を表1に併記する。
A:微細に自己乳化した
B:油滴の合一なく、自己乳化した
C:自己乳化はするが油滴の合一が見られる、もしくは、濁りが大きい(分散径が大きい)
D:全く自己乳化しない
【0046】
【表1】

【0047】
表1に記載される各成分の詳細は、以下の通りである。
【0048】
<成分(A):油性成分>
・油脂A:構成脂肪酸の70質量%以上がドコサヘキサエン酸、平均脂肪酸エステル化数:約2.7以上である油脂含有原料(商品名:アルガトリウム(ブルディーテクノロジー社製))(特定グリセリン脂肪酸エステル)
・油脂B:含有脂肪酸の46質量%がドコサヘキサエン酸、平均脂肪酸エステル化数:約2.8以上である油脂含有原料(商品名:DHA−46A、(株)マルハニチロ食品製)(特定グリセリン脂肪酸エステル)
・油脂C:含有脂肪酸の22質量%がドコサヘキサエン酸、平均脂肪酸エステル化数:約2.8以上である油脂含有原料(商品名:DHA−22、(株)マルハニチロ食品製)
・油脂D:脂肪酸がカプリル酸(飽和脂肪酸C8:ドコサヘキサエン酸非含有)のトリグリセリドである油脂含有原料、平均脂肪酸エステル化数:約2.9以上(商品名:ココナードRK、花王(株)製)
【0049】
<成分(B)>
・グリセリン(食添用グリセリン、花王(株)製)(成分(B))
【0050】
<成分(C):乳化剤>
・乳化剤A:脂肪鎖がステアリン酸(C18飽和脂肪酸)のデカグリセリン脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQ−18S、太陽化学(株)製)
・乳化剤B:脂肪鎖がオレイン酸(C18不飽和脂肪酸)のデカグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ−0381V、理研ビタミン(株)製)(特定乳化剤)
・乳化剤C:脂肪鎖ラウリン酸(C12飽和脂肪酸)のデカグリセリン脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQ−12S、太陽化学(株)製)
・乳化剤D:ポリソルベート80(商品名:ウィルサーフTF−80、日油(株))
・乳化剤E:脂肪鎖がオレイン酸のショ糖脂肪酸エステル(商品名:Q−1570Y、三菱化学フーズ(株)製)
【0051】
表1に示されるように、実施例の油脂含有組成物は、初期安定性が高く、再分散性が良好な自己乳化型の組成物であることが分る。
【0052】
実施例にて得られた各油脂含有組成物は、ソフトカプセル皮膜に封入してソフトカプセル製剤とすることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤を含有する油脂含有組成物であって、
前記(A)油性成分として構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルを含み、
前記(C)乳化剤として構成脂肪酸がオレイン酸であるデカグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、
前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の含有比率が、前記(A)油性成分、(B)グリセリン、及び(C)乳化剤の合計質量に対して以下の範囲内にある油脂含有組成物。
(A)油性成分:55質量%以上78質量%以下
(B)グリセリン:10質量%以上35質量%以下
(C)乳化剤:5質量%以上13質量%以下
【請求項2】
前記構成脂肪酸の30質量%以上75質量%以下がドコサヘキサエン酸であるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン骨格が有するヒドロキシ基の平均脂肪酸エステル化数が2.5以上3.0以下のグリセリン脂肪酸エステルである請求項1に記載の油脂含有組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の油脂含有組成物を含有する経口製剤。

【公開番号】特開2012−46500(P2012−46500A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163147(P2011−163147)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】