説明

油脂組成物

【課題】起泡性や乳化安定性に優れ、バタークリームの原料油脂として使用できるジアシルグリセロール含量の高い油脂組成物の提供。
【解決手段】ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中の炭素数20以上の脂肪酸含量が12質量%以上であり、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含量が5質量%以下であるジアシルグリセロールを50質量%以上含有し、油脂のヨウ素価が120以下である油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタークリーム等の油中水型乳化物の原料油脂として好適な油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バタークリームは、バターやショートニング、マーガリン等の油脂に必要に応じて糖等を添加し、起泡して得られる油中水型乳化物であり、製菓・製パン等のトッピング用、フィリング用、サンド用等に広く利用されている。
バタークリームに利用する油脂は、撹拌することで空気を抱き込む起泡性(クリーミング性)が必要とされ、この起泡性は油脂の結晶の性状が関与することから、原料油脂として動植物油脂の部分硬化油等が広く用いられているが、さらなる起泡性の改善が求められている。
一方、ジアシルグリセロールを高濃度に含む油脂は、食後の血中トリグリセリド(中性脂肪)の増加を抑制し、体内への蓄積性が少ない等の生理作用を有することが知られているため(特許文献1、2)、バタークリーム等の油脂の多い食品において、従来の油脂に代えての使用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−300826号公報
【特許文献2】特開平10−176181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のジアシルグリセロールを含む油脂は、起泡性が十分ではないという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、起泡性や乳化安定性に優れ、バタークリームの原料油脂として使用できるジアシルグリセロール含量の高い油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、構成脂肪酸中に炭素数20以上の脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を一定範囲で含むジアシルグリセロールを高含有し、且つ油脂のヨウ素価が一定以下である油脂組成物が、起泡性、乳化安定性に優れ、バタークリーム等の油中水型乳化物の原料油脂として好適であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中の炭素数20以上の脂肪酸含量が12質量%以上であり、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含量が5質量%以下であるジアシルグリセロールを50質量%以上含有し、油脂のヨウ素価が120以下である油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の油脂組成物を含有し、油相:水相の質量比率が10:90〜90:10である油中水型乳化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、起泡性に優れ、且つ乳化安定性が良好な油中水型乳化物とすることができるジアシルグリセロール含量の高い油脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の油脂組成物は、ジアシルグリセロールを50質量%(以下、「%」とする)以上含有するが、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上、更に好ましく70%以上であり、またその上限は好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。具体的には、55〜95%、更に60〜95%、更に65〜95%、更に70〜85%、更に70〜80%含有するのが好ましい。ジアシルグリセロールが上記範囲にあると、生理効果の点、乳化安定性が良好な点で好ましい。なお、本発明において「油脂」は、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものとする。
【0010】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、炭素数20以上の脂肪酸の含有量は12%以上であるが、好ましくは14%以上、より好ましくは16%以上、更に好ましくは18%以上、更に好ましくは20%以上である。また、その上限は60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。具体的には、12〜60%、更に14〜60%、更に16〜55%、更に18〜55%、更に20〜50%であるのが好ましい。炭素数20以上の脂肪酸の含有量が上記範囲にあると、起泡性及び乳化安定性が良好である点から好ましい。
炭素数20以上の脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。飽和脂肪酸としては、例えば、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸は、1価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸のいずれでもよく、例えば、ガドレイン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、ヘキサコセン酸、オクタコセン酸等が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、保形性の点から、炭素数20〜32が好ましく、更に炭素数20〜26、更に炭素数20〜24が好ましい。
【0011】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の合計含有量は5%以下であるが、更に4%以下、更に3%以下、更に2.5%以下であるのが、起泡性および酸化安定性が良好である点から好ましい。なお、EPAとHAの合計含有量の下限は0であることが好ましい。
【0012】
残余の構成脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。飽和脂肪酸の炭素数は12〜18、更に14〜18であるのが風味の点から好ましい。また、不飽和脂肪酸の炭素数は14〜18、更に16〜18であるのが生理効果の点から好ましい。
【0013】
本発明における油脂組成物は、トリアシルグリセロールを含有するのが好ましく、その含有量は1〜49%が好ましく、更に5〜45%、更に5〜40%、更に5〜35%、更に5〜30%が、工業的生産性の点で好ましい。
また、油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量は10%以下、更に0.01〜8%であるのが好ましく、遊離脂肪酸(塩)の含有量は3.5%以下、更に0.01〜1.5%であるのが風味等の点で好ましい。トリアシルグリセロールとモノアシルグリセロールの構成脂肪酸は、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸と同じであることが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0014】
また、油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は5%以上、更に10%以上、更に20%以上であるのが、食感の点から好ましい。上限は90%以下、さらに80%以下、さらに70%以下であるのが生理機能の点から好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、更に16〜22のものが好ましい。
【0015】
本発明の油脂組成物は、油脂のヨウ素価が120以下であるが、更に100以下、更に80以下、更に100〜20、更に80〜20であることが、乳化安定性及び起泡性が良好である点から好ましい。ヨウ素価は、油中に存在する不飽和二重結合の総数の指標である。
【0016】
本発明の油脂組成物は、ジアシルグリセロールを含有する油脂から調製することができる。
ジアシルグリセロールを含有する油脂は、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、油脂とグリセリンとのグリセロリシス反応等により得ることができる。工業的生産性の点から、油脂とグリセリンとのグリセロリシス反応等により得ることが好ましい。
【0017】
エステル化反応及び/又はグリセロリシス反応は、アルカリ金属又はその合金、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物もしくは炭素数1〜3のアルコキシド等の化学触媒を用いる化学法とリパーゼ等の酵素を用いる酵素法に大別される。風味等の点からは触媒としてリパーゼ等を用いて酵素的に温和な条件で反応を行うのが好ましく、最終製品中のトリアシルグリセロール含有量を低減するという点からは化学法によるのが好ましい。
エステル化反応及び/又はグリセロリシス反応の後、通常油脂に対して用いられる精製工程を行ってもよい。具体的には、酸処理、水洗、脱色、脱臭等の工程を挙げることができる。
【0018】
前記エステル化反応に用いられる脂肪酸の原料油脂や前記グリセロリシス反応に用いられる原料油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよいが、魚油に水素添加した魚油硬化油を利用するのが、炭素数が20以上の脂肪酸含有量が多い点から好適である。
魚油硬化油は、ヨウ素価を指標として魚油の水素添加反応を行って得ることができる。魚油の種類は特に限定されず、カツオ、マグロ、イワシ、オキアミ、サバ、サンマ、サメ、鯨等に由来する油脂が挙げられる。原料油脂として魚油硬化油を用いる場合、魚油硬化油のヨウ素価は、140以下、更に120以下、更に100以下、更に100〜20、更に80〜20であるのが工業的生産性の点から好ましい。
また、魚油硬化油の融点は、20℃〜50℃、更に22℃〜48℃、更に24℃〜46℃であることが、保形性及び食感が良好である点から好ましい。
【0019】
その他、原料油脂として利用できる植物性油脂、動物性油脂の具体的な原料としては、例えば、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂を挙げることができる。また、これらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を利用できる。
これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよい。
また、必要に応じて前記の方法で調整されたジアシルグリセロールを含有する油脂に通常の食用油脂を配合して、本願発明の油脂組成物としてもよい。食用油脂としては、前記原料油脂に挙げられた油脂を用いることができる。
【0020】
本発明の油脂組成物は、抗酸化剤を含有することが好ましい。抗酸化剤の油脂組成物中の含有量は、風味、酸化安定性、着色抑制等の点で0.005〜0.5%であることが好ましく、更に0.04〜0.25%、更に0.08〜0.2%であることが好ましい。抗酸化剤としては、通常食品に使用するものであれば何でも良い。例えば、ビタミンE、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、t−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ビタミンCまたはその誘導体、リン脂質、ローズマリー抽出物等の天然抗酸化剤を用いることができる。
【0021】
本発明の油脂組成物は、油中水型乳化物に用いることができる。水相と油相の質量比は、特に制限されないが、好ましくは油相:水相=10:90〜90:10であり、更に好ましくは油相:水相=20:80〜80:20であり、油相:水相=30:70〜70:30である。
油脂組成物を乳化物の形態とする場合、乳化剤、抗酸化剤、安定化剤、増粘剤、ゲル化剤、界面活性化剤等の通常の乳化物に用いる成分を適宜配合することができる。また、油相には、本発明の油脂組成物以外にその他の油脂を配合してもよい。その他の油脂としては、前述したような通常の食用に用いられる動植物油脂及び加工油脂を挙げることができる。
【0022】
本発明の油脂組成物は、常温(25℃)で固体状であり、食用油脂として各種飲食品に応用することができる。とりわけ、起泡性に優れ、また、乳化安定性も良好であることから、製菓・製パン等のトッピング用、フィリング用、サンド用等に用いられるバタークリーム等の油中水型乳化物の原料油脂として好適である。
【0023】
次に本発明の態様及び好ましい実施態様を示す。
【0024】
<1>ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中の炭素数20以上の脂肪酸含量が12質量%以上であり、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含量が5質量%以下であるジアシルグリセロールを50質量%以上含有し、油脂のヨウ素価が120以下である油脂組成物。
【0025】
<2>油脂組成物中のジアシルグリセロール含有量が、55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、またその上限は好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましく80質量%以下である<1>の油脂組成物。
<3>ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、炭素数20以上の脂肪酸の含有量が、14質量%以上、好ましくは16質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、その上限は好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である<1>又は<2>の油脂組成物。
<4>炭素数20以上の脂肪酸の炭素数が、20〜32、好ましくは20〜26、より好ましくは20〜24である<1>〜<3>の油脂組成物。
<5>ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、エイコサペンタン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の合計含有量が4質量%以下、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下であり、その下限は0が好ましいものである<1>〜<4>の油脂組成物。
<6>ジアシルグリセロールを構成する残余の脂肪酸が、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、飽和脂肪酸の炭素数が12〜18、好ましくは14〜18であり、不飽和脂肪酸の炭素数が14〜18、好ましく16〜18である<1>〜<5>の油脂組成物。
<7>更にトリアシルグリセロールを含有し、その含有量が1〜49質量%が好ましく、更に5〜45質量%、更に5〜40質量%、更に5〜35質量%、更に5〜30質量%が好ましい<1>〜<6>の油脂組成物。
<8>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量が10質量%以下、好ましくは0.01〜8質量%であり、遊離脂肪酸(塩)の含有量が3.5質量%以下、好ましくは0.01〜1.5質量%である<1>〜<7>の油脂組成物。
<9>油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、上限は90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である<1>〜<8>の油脂組成物。
<10>油脂組成物の油脂のヨウ素価が100以下、好ましくは80以下、より好ましくは100〜20、更に好ましくは80〜20である<1>〜<9>の油脂組成物。
<11>抗酸化剤を含有し、その含有量が0.005〜0.5質量%、好ましくは0.04〜0.25質量%、より好ましくは0.08〜0.2質量%である<1>〜<10>の油脂組成物。
<12><1>〜<11>の油脂組成物を含有する油中水型乳化物。
<13>油相と水相の質量比率が、油相:水相=10:90〜90:10であり、好ましくは油相:水相=20:80〜80:20であり、より好ましくは油相:水相=30:70〜70:30である<12>の油中水型乳化物。
<14>バタークリームである<12>又は<13>の油中水型乳化物。
【実施例】
【0026】
〔分析方法〕
(i)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
<GLC条件>
(条件)
装置:アジレント6890シリーズ(アジレントテクノジー社製)
インテグレーター:ケミステーションB 02.01 SR2(アジレントテクノジー社製)
カラム:DB−1ht(Agilent J&W社製)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=320℃
ディテクター:FID、T=350℃
オーブン温度:80℃から10℃/分で340℃まで昇温、15分間保持
【0027】
(ii)油脂の構成脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
なお、飽和脂肪酸とシス不飽和脂肪酸に同定されなかった全てのシグナルをトランス不飽和脂肪酸とした。
【0028】
(iii)ヨウ素価
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「ヨウ素価(ウィス−シクロヘキサン法)(2.3.4.1−1996)」に従って測定した。
【0029】
〔油脂A〜Hの調製〕
(1)油脂A〜C
魚油硬化油(融点29℃、ヨウ素価79、花王株式会社)100質量部とグリセリン40質量部とを混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてグリセロリシス反応を行い、ジアシルグリセロール(DAG)含有油脂を得た。得られたグリセロリシス反応物から、蒸留により脂肪酸とモノアシルグリセロールを除去した後、酸処理(10%クエン酸水溶液を2%添加)及び水洗(蒸留水3回)を行い、次いで、活性白土(ガレオンアースV2R、水澤化学工業)を接触させ、脱色油を得た。さらに、水蒸気を接触させ脱臭を行い、油脂A(DAG78%)を得た。
【0030】
油脂Aと同様にして、魚油硬化油(融点42℃、ヨウ素価52、ミヨシ油脂株式会社)100質量部とグリセリン40質量部から、油脂B(DAG74%)を得た。
【0031】
油脂Aと同様にして、精製魚油(花王株式会社)100質量部とグリセリン40質量部から、油脂C(DAG76%)を得た。
【0032】
(2)油脂D〜E
パーム油脂肪酸100質量部とグリセリン20質量部とを混合し、酵素によりエステル化反応を行い、DAG含有油脂を得た。得られたエステル化物から、蒸留により脂肪酸とモノアシルグリセロールを除去した後、油脂Aと同様にして処理し、油脂D(DAG80%)を得た。
【0033】
油脂Dと同様にして、大豆油脂肪酸:菜種油脂肪酸=7:3(質量比)の混合脂肪酸100質量部とグリセリン20質量部から、油脂E(DAG86%)を得た。
油脂A〜Eの分析値を表1に示す。
【0034】
(3)油脂F〜H
油脂F〜Hとして、表1の組成を持つ油脂(油脂F:魚油硬化油(融点29℃、花王株式会社)、油脂G:魚油硬化油(融点36℃、花王株式会社)、油脂H:精製魚油(花王株式会社))を用いた。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1〜3及び比較例1〜7
(1)表2に示す割合で油脂A〜Hを混合し、80℃で融解して均一混合物とした。チラー(乳化混練機、多摩精器工業株式会社)を用いて混練しながら25℃まで冷却し、油脂組成物を得た。
得られた油脂組成物を5℃で1日間保存し、続いて20℃で1日間保存した後、冷蔵庫(5℃)にて保存し、油脂サンプルを得た。油脂サンプルの起泡性を評価した。
〔起泡性試験〕
油脂サンプル200gを、ホバートミキサー(モデルN−50:ホバートコーポレーション製)にて中速で20分間撹拌し、起泡させた。起泡後の油脂サンプル1gあたりの体積(比容積:ml/g)を測定し、起泡性の評価を行った。
4:比容積が3以上
3:比容積が2.7以上3未満
2:比容積が2.5以上2.7未満
1:比容積が2.5未満
【0037】
(2)油中水型乳化物の調製
50℃に加熱した前記油脂組成物80質量部に対し、50℃に加熱した水20質量部を徐々に添加しながらホモミキサー(特殊機化工業製)で撹拌乳化(7000rpm、10分間)を行い、油中水型乳化物を得た。
【0038】
上記で調製した油中水型乳化物100mLを乳化試験管に採取し、50℃で2時間経過した後の離水量を指標にして、次の判定基準に従って、乳化安定性を評価した。結果を表2に示す。
〔乳化安定性の評価〕
4:乳化安定性が非常に良好であり、離水しない
3:若干離水が見られるが、良好な乳化状態である
2:油水が若干分離するが、良好な乳化状態である
1:油水が分離し、乳化状態が不良である
【0039】
【表2】

【0040】
表2より明らかなように、本発明の油脂組成物は、比較例のものと比べ、良好な起泡性を示すことが確認された。また、本発明の油脂組成物を用いた油中水型乳化物は、乳化安定性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中の炭素数20以上の脂肪酸含量が12質量%以上であり、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含量が5質量%以下であるジアシルグリセロールを50質量%以上含有し、油脂のヨウ素価が120以下である油脂組成物。
【請求項2】
ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中の炭素数20以上の脂肪酸含量が20質量%以上50質量%以下であり、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含量が0質量%以上2.5質量%以下である請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
油脂のヨウ素価が80以下である請求項1又は2記載の油脂組成物。
【請求項4】
ジアシルグリセロールの含有量が70質量%以上85質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
油脂の構成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量が5質量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有し、油相:水相の質量比率が10:90〜90:10である油中水型乳化物。

【公開番号】特開2013−59326(P2013−59326A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179191(P2012−179191)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】