説明

油配合物

【課題】本発明の目的は従来の問題の1つ以上を解決するシクロプロペン錯体を含む粒子の油中の懸濁液を提供することである。
【解決手段】油媒体を含む組成物が提供され、粒子がこの油媒体中に懸濁され、この粒子はシクロプロペンと分子封入剤を含み、この粒子は最大寸法で測定して50マイクロメートル以下の平均サイズを有する。また、かかる組成物を製造する方法、およびかかる組成物を接触させることによって植物を処理する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シクロプロペンを使用する場合、シクロプロペンは分子封入剤との錯体の形態である場合が多い。かかる錯体は、例えば、植物または植物部分とシクロプロペンを接触させるために、植物または植物部分と錯体を接触させることによって植物または植物部分の処理に使用するのに有用である。かかる植物または植物部分の処理は多くの場合、植物または植物部分の1つ以上のエチレン媒介プロセスを望ましく阻害するのに有効である。例えば、植物部分のかかる処理は、時には望まない熟成を、望ましく遅らせることができる。他の例では、収穫前の作物植物へのかかる処理が時には作物の収量を改善することができる。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,313,068号はシクロデキストリンとメチルシクロプロペンの錯体の乾燥粉を製粉し粉砕することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許6,313,068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる錯体の粒子を液体中に溶解または懸濁させることが多くの場合に有用である。しかし、水がその液体である場合には、水と錯体粒子間の接触は望むよりも早期に錯体からのシクロプロペンの放出を招き、それ故にシクロプロペンの一部もしくは全部が周囲に失われ、または化学反応によって破壊され、またはそれら組み合わせが起きることがある。したがって、かかる粒子を油中に懸濁させるのが多くの場合に望ましい。しかし、かかる粒子を油中に懸濁する従来の試みは、多くの場合に懸濁液が適切に噴霧できないので、または適当な粒子濃度では懸濁液の粘度が高すぎるので、または懸濁液が安定ではないので、または懸濁液がこれらの問題の組み合わせを有するので、かかる粒子を油中に効果的に懸濁することができないことが分かっている。本発明の目的はこれらの問題の1つ以上を解決するシクロプロペン錯体を含む粒子の油中の懸濁液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、油媒体を含む組成物であって、粒子が前記油媒体中に懸濁され、該粒子がシクロプロペンと分子封入剤を含み、及び該粒子が最大寸法で測定して50マイクロメートル以下の平均サイズを有する組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の実施は1種以上のシクロプロペンの使用を含む。本明細書において用いられる場合、「シクロプロペン」は、下記式を有する任意の化合物である。
【0007】
【化1】

【0008】
前記式中、各R、R、RおよびRは、Hおよび下記式の化学基からなる群から独立に選択され、
−(L)−Z
式中nは0〜12の整数である。各Lは二価の基である。好適なL基は、例えば、H、B、C、N、O、P、S、Si、またはその混合から選択される1個以上の原子を含む基を含む。L基内の原子は互いに単結合、二重結合、三重結合、またはその混合によって接続され得る。各L基は直鎖、分岐鎖、環状、またはその組み合わせであり得る。任意の1つのR基(すなわち、R、R、RおよびRのいずれか1つ)においてヘテロ原子(すなわち、HでもCでもない原子)の総数は0〜6である。独立に、任意の1つのR基において、非水素原子の総数は50以下である。各Zは一価の基である。各Zは、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロレート、ブロメート、イオデート、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、および化学基Gからなる群から独立に選択され、Gは3〜14員環系である。
【0009】
、R、RおよびR基は好適な基から独立に選択される。R、R、RおよびR基は、互いに同じであってもよく、またはそれらの任意の数が他と異なっていてもよい。R、R、RおよびR基の1つ以上として用いるのに好適な基として、例えば、脂肪族基、脂肪族−オキシ基、アルキルホスホナト基、脂環式基、シクロアルキルスルホニル基、シクロアルキルアミノ基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シリル基、他の基、またはその混合または組み合わせが挙げられる。R、R、RおよびR基の1つ以上として用いるのに好適な基は置換または非置換であり得る。独立に、R、R、RおよびR基の1つ以上として用いるのに好適な基はシクロプロペン環に直接結合されていてもよいし、または、介在基(例えばヘテロ原子含有基など)を介してシクロプロペン環に結合していてもよい。
【0010】
好適なR、R、RおよびR基の中には例えば脂肪族基がある。いくつかの好適な脂肪族基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル基が挙げられる。好適な脂肪族基は直鎖、分岐鎖、環状、またはその組み合わせであり得る。独立に、好適な脂肪族基は置換または非置換であり得る。
【0011】
本明細書に用いられる場合、対象の化学基の1つ以上の水素原子が置換基によって置き換えられている場合に、その対象の化学基は「置換された」と呼ばれる。かかる置換基は、これに限定されないが、対象の化学基の非置換形態を作り次いで置換を行うことを含む任意の方法によって作ることができる。好適な置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アセチルアミノ、ァルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、カルボキシ、ハロ、アロアルコキシ、ヒドロキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、およびその組み合わせが挙げられる。存在するならば、単独または他の好適な置換基との組み合わせで存在し得る追加の好適な置換基は下記式の基であり、
−(L)−Z
式中、mは0〜8であり、並びにLおよびZは本明細書の上記で定義されるものである。一つの対象化学基上に1より多くの置換基が存在する場合、各置換基は異なる水素原子を置き換えてもよく、または1つの置換基が、他の置換基に結合していてもよく、同様に対象化学基に結合していてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば置換または非置換脂肪族−オキシ基、例えばアルケンオキシ、アルコキシ、アルキンオキシおよびアルコキシカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0013】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、置換および非置換アルキルホスホナト、置換および非置換アルキルホスファト、置換および非置換アルキルアミノ、置換および非置換アルキルスルホニル、置換および非置換アルキルカルボニル、並びに置換および非置換アルキルアミノスルホニルが挙げられ、これには例えば、アルキルホスホナト、ジアルキルホスファト、ジアルキルチオホスファト、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルおよびジアルキルアミノスルホニルなどが挙げらる。
【0014】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、置換または非置換シクロアルキルスルホニル基およびシクロアルキルアミノ基が挙げられ、例えば、ジシクロアルキルアミノスルホニルおよびジシクロアルキルアミノなどが挙げられる。
【0015】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、置換および非置換複素環式基(すなわち、環中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族または非芳香族環基)が挙げられる。
【0016】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基またはスルホニル基を介してシクロプロペン化合物に結合された置換および非置換複素環式基が挙げられ、かかるR、R、RおよびR基の例はヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルカルボニル、ジヘテロシクリルアミノおよびジヘテロシクリルアミノスルホニルである。
【0017】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、置換および非置換アリール基が挙げられる。好適な置換基は本明細書の上記に記載されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の置換アリール基が用いられ、置換アリール基における少なくとも1つの置換基は、アルケニル、アルキル、アルキニル、アセチルアミノ、アルコキシアルコキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ、アリールアミノ、ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、スルホニルアルキル、アルキルチオ、チオアルキル、アリールアミノスルホニル、ハロアルキルチオの1つ以上である。
【0018】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、チオアルキル基またはアミノスルホニル基を介してシクロプロペン化合物に結合された置換および非置換複素環式基が挙げられ、かかるR、R、RおよびR基の例は、ジヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールチオアルキルおよびジヘテロアリールアミノスルホニルである。
【0019】
また、好適なR、R、RおよびR基に含まれるものとしては、例えば、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラト(chlorato)、ブロマト(bromato)、ヨーダト(iodato)、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、アセトキシ、カルボエトキシ、シアナト、ニトラト、ニトリト、パークロラト、アレニル、ブチルメルカプト、ジエチルホスホナト、ジメチルフェニルシリル、イソキノリル、メルカプト、ナフチル、フェノキシ、フェニル、ピペリジノ、ピリジル、キノリル、トリエチルシリル、トリメチルシリル、およびその置換類似基が挙げられる。
【0020】
本明細書に用いられる場合、化学基Gは3〜14員環系である。化学基Gとして好適な環系は置換されていても非置換でもよく、それらは、芳香族(例えば、フェニルおよびナフチルを含む)または脂肪族(不飽和脂肪族、部分飽和脂肪族、または飽和脂肪族を含む)であってもよく、並びにそれらは炭環または複素環であってもよい。複素環式G基において、いくつかの好適なヘテロ原子は、例えば、窒素、硫黄、酸素、およびその組み合わせである。化学基Gとして好適な環系は単環、二環、三環、多環、スピロ、または融合されたものであり得る。二環、三環、または融合されたものである好適な化学基G環系において、単一の化学基G中のさまざまな環はすべて同じタイプであってもよいし、または2つ以上のタイプであってもよい(例えば、芳香族環が脂肪族環に融合されていてもよい)。
【0021】
いくつかの実施形態において、Gは、飽和または不飽和3員環を含む環系であり、例えば、置換または非置換シクロプロパン、シクロプロペン、エポキシド、またはアジリジン環などである。
【0022】
いくつかの実施形態において、Gは4員複素環を含む環系であり、それらのいくつかの実施形態において、複素環は厳密に1つのヘテロ原子を含む。独立に、いくつかの実施形態において、Gは5員以上の複素環を含む環系であり、それらのいくつかの実施形態において、複素環は1〜4個のヘテロ原子を含む。独立に、いくつかの実施形態において、G中の環は不飽和であり、他の実施形態において、環系は1〜5個の置換基を含み、Gが置換基を含むいくつかの実施形態において、各置換基は独立に本明細書で上述した置換基から選択される。また、Gが炭環の環系である実施形態も好適である。
【0023】
いくつかの実施形態において、各Gは独立に置換または非置換フェニル、ピリジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、ピロリル、フリル、チオフェニル、トリアゾリル、ピラゾリル、1,3−ジオキソラニル、またはモルホリニルである。これらの実施形態の中には、例えば、Gが不飽和または飽和のフェニル、シクロペンチル、シクロヘプチル、またはシクロヘキシルである実施形態が含まれる。これらのいくつかの実施形態において、Gはシクロペンチル、シクロヘプチル、シクロヘキシル、フェニル、または置換フェニルである。Gが置換フェニルである実施形態の中には、例えば、1,2または3置換基が存在する実施形態がある。また、独立に、Gが置換フェニルである実施形態の中には、例えば、置換基が独立にメチル、メトキシ、ハロから選択される実施形態がある。
【0024】
およびRが単一基に組み合わされ、これが二重結合によってシクロプロペン環の第3炭素に結合される実施形態も考えられる。かかる化合物のいくつかは米国特許公開第2005/0288189号に記載されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、1つ以上のシクロプロペンが用いられ、この場合R、R、RおよびRの1つ以上は水素である。いくつかの実施形態において、RもしくはR、またはRおよびRの両方が水素である。独立に、いくつかの実施形態において、RもしくはR、またはRおよびRの両方が水素である。いくつかの実施形態において、R、R、Rが水素である。
【0026】
いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上は二重結合を有さない構造である。独立に、いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上は三重結合を有さない構造である。独立に、いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上は水素原子置換基を有さない構造である。独立に、いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上はイオン性の置換基を有さない構造である。
【0027】
いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上は水素または(C〜C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの各々は水素または(C〜C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの各々は水素または(C〜C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの各々は水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、Rは(C〜C)アルキルであり、並びにR、RおよびRの各々は水素である。いくつかの実施形態において、Rはメチルであり、並びにR、RおよびRの各々は水素であり、本明細書において、シクロプロペンは「1−MCP」と呼ばれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、1気圧で50℃以下、または25℃以下、または15℃以下の沸点を有するシクロプロペンが用いられる。独立に、いくつかの実施形態において、1気圧で−100℃以上、または−50℃以上、または−25℃以上、または0℃以上の沸点を有するシクロプロペンが用いられる。
【0029】
本発明に適用されるシクロプロペンは任意の方法によって調製することができる。シクロプロペンを調製するいくつかの好適な方法は、米国特許第5,518,988号および第6,017,849号に開示される方法である。
【0030】
本発明の組成物は少なくとも1種の分子封入剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の分子封入剤は1つ以上のシクロプロペンまたは1つ以上のシクロプロペンの一部を封入する。分子封入剤の分子中に封入されたシクロプロペン分子またはシクロプロペン分子の一部を含む錯体は、本明細書において「シクロプロペン錯体」と呼ばれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、包接錯体である少なくとも1種のシクロプロペン錯体が存在する。かかる包接錯体において、分子封入剤は空洞を形成し、シクロプロペンまたはシクロプロペンの一部はその空洞内に位置する。かかる包接錯体のいくつかにおいて、シクロプロペンと分子封入剤の間には共有結合が存在しない。独立に、かかる包接錯体のいくつかにおいて、シクロプロペン中の1つ以上の極性部分と分子封入剤中の1つ以上の極性部分の間に任意の静電気的な引力があろうとなかろうと、シクロプロペンと分子封入錯体の間にはイオン性結合は存在しない。
【0032】
独立に、かかる包接錯体のいくつかにおいて、分子封入剤の空洞内部は実質的に無極性または疎水性、あるいはその両方であり、およびシクロプロペン(または空洞内に位置するシクロプロペンの一部)も実質的に無極性または疎水性、あるいはその両方である。本発明はいかなる特定の理論または機構にも制限されないが、それらの無極性シクロプロペン錯体において、ファンデルワールス力、または疎水性相互作用、あるいはその両方が、シクロプロペン分子またはその一部を分子封入剤の空洞内に留めさせると思われる。
【0033】
シクロプロペン分子封入錯体は任意の手段によって調製することができる。調製の一方法において、例えば、シクロプロペンを分子封入剤の溶液またはスラリーに接触させ、次いで、例えば米国特許第6,017,849号に開示されたプロセスを用いて、錯体を単離することによりかかる錯体が調製される。例えば、シクロプロペンが分子封入剤中に封入される錯体を製造する一方法において、シクロプロペンガスが水中の分子封入剤の溶液を通してバブリングされ、それにより錯体がまず沈殿し、次いで濾過によって単離される。いくつかの実施形態において、錯体は上述の方法によって製造され、単離の後、乾燥されて、後で有用な組成物に添加するために固体形状として(例えば粉として)貯蔵される。
【0034】
分子封入剤の量はシクロプロペンのモルに対する分子封入剤のモル比によって有用に特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、シクロプロペンのモルに対する分子封入剤のモルの比は0.1以上、または0.2以上、または0.5以上、または0.9以上である。独立に、いくつかの実施形態において、シクロプロペンのモルに対する分子封入剤のモルの比は2以下、または1.5以下である。
【0035】
好適な分子封入剤としては、例えば、有機および無機分子封入剤が挙げられる。好適な有機分子封入剤としては、例えば、置換シクロデキストリン、非置換シクロデキストリン、およびクラウンエーテルが挙げられる。好適な無機分子封入剤としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。好適な分子封入剤の混合物も好適である。いくつかの実施形態において、封入剤はアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリン、またはその混合物である。本発明のいくつかの実施形態において、アルファ―シクロデキストリンが用いられる。好ましい封入剤は用いられるシクロプロペンまたはシクロプロパンの構造に応じて変化する。任意のシクロデキストリンまたはシクロデキストリンの混合物、シクロデキストリンポリマー、修飾シクロデキストリン、またはその混合物も本発明に従って用いることができる。例えば、ミシガン州エイドリアンのWacker Biochem社、またはHammond、インディアナ州ハモンドのCerestar USA、ならびに他の供給者から、いくつかのシクロデキストリンが入手可能である。
【0036】
本発明の実施において、1種以上の油が用いられる。本明細書に用いられる場合、「油」は、25℃および1気圧で液体でありおよび1気圧で30℃以上の沸点を有する化合物である。本明細書に用いられる場合、「油」は、水を含まず、界面活性剤(本明細書に記載されるような)を含まず、および分散剤(本明細書に記載されるような)を含まない。
【0037】
いくつかの実施形態において、50℃以上、または75℃以上、または100℃以上の沸点を有する1種以上の油を用いることができる。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は50℃以上の沸点を有する。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は75℃以上の沸点を有する。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は100℃以上の沸点を有する。独立に、油を用いるいくつかの実施形態において、100以上、または200以上、または500以上の平均分子量を有する1種以上の油を用いることができる。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は100以上の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は200以上の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は500以上の平均分子量を有する。
【0038】
油は、炭化水素油(すなわち、その分子が炭素と水素の原子だけを含む油)または非炭化水素油(すなわち、その分子が炭素でも水素でもない少なくとも1つの原子を含む油)のいずれでもよい。
【0039】
いくつかの好適な炭化水素油は、例えば、6個以上の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、または環状アルカン化合物である。いくつかの他の好適な炭化水素油は、例えば、場合により互いに組み合わせて、および/または1つ以上のアルカン基と組み合わせて、1つ以上の炭素−炭素二重結合、1つ以上の炭素−炭素三重結合、または1つ以上の芳香族環を有する。いくつかの好適な炭化水素油は、石油蒸留から得られ、場合によって、不純物と一緒に化合物の混合物を含む。石油蒸留から得られる炭化水素油は、比較的広い範囲の組成物の混合物を含むことができ、または比較的純粋な組成物を含むことができる。いくつかの実施形態において、6個以上の炭素原子を含む炭化水素油が用いられる。いくつかの実施形態において、18個以下の炭素原子を含む炭化水素油が用いられる。いくつかの実施形態において、用いられる全ての炭化水素油は18個以下の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、用いられる全ての炭化水素油は6個以上の炭素原子を含む。いくつかの好適な炭化水素油としては、例えば、ヘキサン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ジーゼル油、精製パラフィン油(例えば、Sun Company製のUltrafine(商標)スプレー油)およびその混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油は炭化水素油である。
【0040】
非炭化水素油を用いる実施形態の中で、いくつかの好適な非炭化水素油としては、例えば、脂肪族非炭化水素油が挙げられる。「脂肪族」は本明細書において1つ以上の脂肪酸残基を含む任意の化合物を意味する。脂肪酸は少なくとも4個の炭素原子の鎖長を有する長鎖カルボン酸である。典型的な脂肪酸は4〜18個の炭素原子の鎖長を有するが、いくつかはさらに長い鎖を有する。直鎖、分岐鎖、または環状脂肪族基を長鎖に結合させることができる。脂肪酸残基は飽和でも不飽和でもよく、それらは、例えば、必然的に発生したまたは添加された、アルキル基、エポキシド基、ハロゲン、スルホネート基、またはヒドロキシ基をはじめとする官能基を含むことができる。いくつかの好適な脂肪族非炭化水素油は、例えば、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪酸のアミド、その二量体、三量体、オリゴマー、またはポリマー、およびその混合物である。
【0041】
いくつかの好適な脂肪族非炭化水素油は、例えば、脂肪酸のエステルである。かかるエステルは、例えば、脂肪酸のグリセリドを含む。グリセリドは脂肪酸とグリセロールのエステルであり、それらはモノ−、ジ−、またはトリグリセリドであり得る。さまざまなトリグリセリドは天然に見出される。天然発生のトリグリセリドの大部分はいくつかの異なる長さおよび/または組成の脂肪酸の残基を含む。いくつかの好適なトリグリセリドは、例えば、乳製品、動物脂肪、または魚などの動物資源に見出される。好適なトリグリセリドのさらに他の例は、植物、例えば、ココナツ、ヤシ、綿実、オリーブ、トール(tall)、ピーナツ、ベニバナ、ヒマワリ、トウモロコシ、大豆、亜麻仁、アブラギリ、カストリウム(castor)、カノーラ、カンキツの実、ココア、オートムギ、ヤシ、ヤシの実、米ぬか、クフェア、または菜種油などの植物に見出される油である。
【0042】
好適なトリグリセリドの中には、それらが見出されるものとは独立に、例えば、14個以上の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪酸残基を含むものがある。いくつかの好適なトリグリセリドは、14個以上の炭素原子、または16個以上の炭素原子、または18個以上の炭素原子を有する脂肪酸残基を残基の重量基準で50重量%以上含む脂肪酸残基を有する。好適なトリグリセリドの一例は大豆油である。
【0043】
好適な脂肪族非炭化水素油は合成または天然または修飾された天然油、またはその組み合わせまたは混合物であり得る。好適な天然油の修飾物の中には、例えば、アルキル化、水素化、ヒドロキシル化、アルキルヒドロキシル化、アルコール化、加水分解、エポキシド化、ハロゲン化、スルホン化、酸化、重合、およびこれらの組み合わせがある。いくつかの実施形態において、アルキル化(例えば、メチル化およびエチル化を含む)油が用いられる。1つの好適な修飾天然油はメチル化大豆油である。
【0044】
好適な脂肪族非炭化水素油の中には、脂肪酸の自己乳化エステルがある。
【0045】
好適な非炭化水素油の他の群はシリコーン油の群である。シリコーン油は部分的または完全に−Si−O−連結から作られた主鎖を有するオリゴマーまたはポリマーである。シリコーン油としては、例えば、ポリジメチルシロキサン油が挙げられる。ポリジメチルシロキサン油は、以下の形の単位を含むオリゴマーまたはポリマーである。
【0046】
【化2】

【0047】
式中、少なくとも1つの単位はX1=CHを有する。他の単位において、X1は、例えば、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキルポリアルコキシル、その置換形、またはその組み合わせをはじめとする、Siに付着することのできる任意の他の基であり得る。置換基は、例えば、ヒドロキシル、アルコキシル、ポリエトキシル、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、他の置換基、またはその任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、用いられる全ての油はシリコーン油である。
【0048】
いくつかの好適なポリジメチルシロキサン油において、全てのX1基は親水性ではない基である。いくつかの好適なポリジメチルシロキサン油において、全てのX1基はアルキル基である。いくつかの好適なポリジメチルシロキサン油において、全てのX1基はメチルである。いくつかの好適なポリジメチルシロキサン油において、すべてのシリコーン油は全てのX1基がメチルであるポリジメチルシロキサン油である。いくつかの好適なポリジメチルシロキサン油において、少なくとも1つの単位はメチルではないX1基を有し;1より多くの非メチルX1単位が存在する場合は、非メチルX1単位は互いに同じであってもよいし、もしくは2つ以上の異なる非メチルX1単位が存在してもよい。ポリジメチルシロキサン油は、例えば、水素、メチル、他のアルキル、またはその任意の組み合わせをはじめとする任意の様々な化学基でエンドキャップすることができる。また環状ポリジメチルシロキサン油も考えられる。
【0049】
また、好適な油の混合物も好適である。
【0050】
本発明の実施は油媒体中に懸濁された粒子を含む。油媒体は本明細書において上述した任意の油とすることができる。本明細書の「懸濁された」は粒子が油に不溶性であるか、またはわずかしか溶解せず、粒子が油全体に分散され、粒子の周囲に連続的な媒体を形成することを意味する。油中に分散された粒子の系は本明細書において「懸濁液」と呼ばれる。本発明の懸濁液は安定であり、すなわち、通常の25℃、1気圧の条件下で、および通常の重力下で、1日の貯蔵の際に粒子の大部分(粒子の総乾燥重量に基づいて少なくとも80重量%)が容器の底に沈まない。いくつかの実施形態において、貯蔵中に容器の底に沈む粒子の量は粒子の総乾燥重量に基づいて10%以下、または5%以下、2%以下、または1%以下である。独立に、いくつかの実施形態において、懸濁液は2日、または5日、または10日の貯蔵で安定なものが用いられる。
【0051】
油媒体中に懸濁された本発明の粒子は、最大寸法で測定して50マイクロメートル以下の平均サイズを有する。すなわち、粒子の集団を評価してサイズを決定する。ひとつの好適な評価方法は、例えば、顕微鏡を用いる検査である。粒子の像、例えば顕微鏡で得られたこれらの像を、場合により長さ基準を参照して、目で検査し評価することができ、あるいはその像は適切な像解析方法、例えば、コンピュータプログラムなどによって検査し評価することができる。
【0052】
粒子が球ではない実施形態において、各粒子の最大寸法によって粒子を特徴付けることが有用である。粒子の集団は最大寸法の平均値によって特徴付けることができる。すなわち、集団中の粒子の重量の半分は集団の平均値よりも大きな最大寸法を有する。本発明の実施において、油媒体中に懸濁された粒子の集団が評価されるとき、その平均値は50マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態において、平均値が20マイクロメートル以下、または10マイクロメートル以下、または5マイクロメートル以下、または2マイクロメートル以下の粒子が用いられる。
【0053】
粒子の単独測定はアスペクト比であり、これは粒子の最小寸法に対する粒子の最大寸法の比である。アスペクト比は粒子のサイズに依存しない。本発明のいくつかの実施形態において、油媒体中に懸濁された粒子の集団は20以下、または10以下、または5以下、または2以下のアスペクト比を有する。
【0054】
油媒体中に懸濁された粒子は固体である。すなわち、粒子は部分的または全て固体状態である物質から作られる。各粒子は多孔質であっても多孔質でなくてもよく、あるいは1つ以上の空隙を有していても有さなくてもよく、あるいは1つ以上の空洞を有しても有さなくてもよく、各孔または空隙または空洞(存在するならば)は部分的または全体的に固体、液体、または気体である物質によって占拠され、または占拠されなくてもよい。油媒体中に懸濁された粒子の系は同意語の「分散体」と呼ばれる。
【0055】
油媒体中に懸濁された粒子はシクロプロペンおよび分子封入剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物中に存在するシクロプロペンの一部または全てはシクロプロペン錯体の一部である。本発明はいかなる特定の理論またはモデルにも制限されないが、組成物中に存在するシクロプロペン分子の大部分または全てはシクロプロペン錯体の一部である分子の形で存在することが考えられる。さらにシクロプロペン錯体の一部ではない組成物中の任意のシクロプロペン分子が、例えば、界面に吸着され、または他の位置、またはその組み合わせで溶液中に存在することが考えられる。いくつかの実施形態において、シクロプロペン錯体の一部として存在するシクロプロペンの量は、組成物中のシクロプロペンの総重量基準で、80%以上、または90%以上、または95%以上、または99%以上である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、油媒体は1種以上の分散剤を含む。分散剤のいくつかまたは全ては油中に溶解され、分散剤のいくつかまたは全ては粒子表面上(すなわち、粒子と油媒体の間の界面)、またはその組み合わせにおいて位置していると考えられる。さらに、少量(またはゼロ)の分散剤が、例えば、油の表面、容器の壁、分子封入剤と錯体化して、またはその組み合わせなど1つ以上の他の場所に位置することができることが考えられる。
【0057】
本明細書に定義される「分散剤」は、固体粒子が液体媒体中に安定な懸濁を形成するのを助けることができる化合物である。いくつかの実施形態において、好適な分散剤は1種以上の親水性基を有する。独立に、いくつかの実施形態において、好適な分散剤は複数の疎水性基を有する。いくつかの好適な疎水性基は、例えば、8個以上の連続的な炭素原子を有する有機基を含む。いくつかの実施形態において、10個以上の連続的な炭素原子を有する疎水性基が存在する。炭素原子の数とは独立に、かかる有機基は直鎖、環状、分岐鎖、またはその組み合わせであり得る。独立に、かかる有機基は炭化水素でもよく、または置換されていてもよい。独立にかかる有機化は置換または非置換であり得る。
【0058】
いくつかの好適な分散剤は分子あたり2個以上、または3個以上、または4個以上、または5個以上の疎水性基を有する。いくつかの実施形態において、すべての分散剤は分子あたり4個以上の疎水性基を有する。いくつかの実施形態において、すべての分散剤は分子あたり5個以上の疎水性基を有する。
【0059】
疎水性基の性質とは独立に、いくつかの好適な分散剤は1個以上の親水性基を有する。いくつかの親水性基は、例えば、水中で或る範囲のpHにわたって、イオン化することのできる基、例えば、カルボキシル基、スルファート基、スルホネート基、およびアミン基などを含む。他の好適な親水性基は非イオン性である。いくつかの好適な非イオン性親水性基としては、例えば、それらが独立にポリマーとして存在する場合に、水に溶解するポリマーの一部が挙げられる。ポリマーのかかる親水性部分としては、例えば、ポリエチレングリコール部分が挙げられる。
【0060】
分子が疎水性基および少なくとも1種の親水性基の両方を含む分散剤が用いられる実施形態において、その基は任意の方法によって分散剤分子に結合させることができる。例えば、いくつかの好適な分散剤は、ポリエチレングリコール部分である少なくとも1つのブロックと複数の疎水性基を含む少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマーである。複数の疎水性基を含むブロックの一例はポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)の部分である。複数の疎水性基を含むブロックの他の例はアルキッドポリマーの部分である。アルキッドポリマーはポリオール、多塩基酸、および脂肪酸またはトリグリセリド油のコポリマーである。
【0061】
本明細書に用いられる場合、非イオン性分散剤は全ての親水性基が非イオン性である分散剤である。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の非イオン性分散剤が用いられる。いくつかの実施形態において、用いられるすべての分散剤は非イオン性である。
【0062】
非イオン性分子のひとつの有用な特性はHLB値であり、下記式で定義される。
HLB=20*M/M
式中、Mは分子の疎水性部分の分子質量であり、Mは分子の分子質量である。
【0063】
対象の分子は、イオン性または非イオン性のいずれでも、酸価(同意語で「酸値」と呼ばれる)によって特徴付けることができ、これは対象分子を中和するのに必要な対象分子グラムあたりKOHのミリグラムである。酸価を試験するひとつの方法はASTM D−7253に示される。試験のいくつかの詳細(例えば、溶媒および/または指示薬の選択など)は必要に応じて特定の対象分子に適用することができる。
【0064】
1つ以上の非イオン性分散剤が用いられるいくつかの実施形態において、1種以上の分散剤は4より大きいHLB、または5以上のHLBを有する。独立に、いくつかの実施形態において、8未満のHLB、または7以下のHLBを有する1種以上の分散剤が用いられる。いくつかの実施形態において、用いられるすべての分散剤は5〜7のHLBを有する。
【0065】
分散剤のHLB値とは独立に、1種以上の非イオン性分散剤が用いられるいくつかの実施形態において、1種以上の分散剤は、mgKOH/g単位で、10以下、9以下または8以下の酸価を有する。独立に、1種以上の非イオン性分散剤が用いられるいくつかの実施形態において、1種以上の分散剤は、mgKOH/g単位で、2以上、または4以上、または6以上の酸価を有する。いくつかの実施形態において、用いられる各分散剤は6〜8mgKOH/gの酸価を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、6〜8mgKOH/g以上の酸価値を有する1種以上の分散剤が用いられ、ここで同じ分散剤が5〜7のHLBも有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、1種以上の界面活性剤が用いられる。本明細書に用いられる「界面活性剤」は「乳化剤」と同意語であり、水中で油滴の安定な懸濁の形成を助ける化合物を意味する。界面活性剤化合物の分子は、少なくとも1つの親水性基と少なくとも1つの疎水性基を含む。通常、界面活性剤は親水性基の性質によって分類される。好適な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびその混合物が挙げられる。
【0068】
1種以上のアニオン性界面活性剤が用いられる実施形態において、いくつかの好適なアニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホコハク酸塩(例えば、モノ−およびジアルキルスルホコハク酸のアルカリ塩を含む)、スルフェートおよびスルホネート(例えば、硫酸アルキルのアルカリ塩を含む)が挙げられる。いくつかの実施形態において、アニオン性界面活性剤は使用されない。
【0069】
1種以上のカチオン性界面活性剤が用いられる実施形態の中で、いくつかの好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、アミン界面活性剤、および第四アンモニウム塩界面活性剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、カチオン性界面活性剤は使用されない。
【0070】
いくつかの実施形態において、1種以上の非イオン性界面活性剤が用いられる。1種以上の非イオン性界面活性剤が用いられるいくつかの実施形態の中で、いくつかの好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族エトキシレート、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、アミドオキシド、アルキルオキシドブロックコポリマー、シリコーン系非イオン性界面活性剤、フルオロ界面活性剤、およびその混合物が挙げられる。
【0071】
好適な脂肪族エトキシレートとしては、例えば、脂肪族アルコールのエトキシレート、脂肪酸のエトキシレート、脂肪族エタノールアミドのエトキシレート、脂肪族アミンのエトキシレートが挙げられる。好適な脂肪族アルコールのエトキシレートとしては、例えば、直鎖または分岐鎖;第1または第2;アルキルまたはアルキルアリール;の特徴の任意の組み合わせを有する脂肪族アルコールのエトキシレートが挙げられる。いくつかの実施形態において、アリールアルキルエトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート、またはその混合物である1種以上の脂肪族エトキシレートが用いられる。
【0072】
好適なシリコーン系非イオン性界面活性剤としては、例えば、下記式を有するものが挙げられる。
【0073】
【化3】

【0074】
上記式中、nは1〜5であり、mは0〜4であり、Qは下記式である。
【0075】
【化4】

【0076】
上記式中、pは1〜6であり、およびqは3〜20である。いくつかの実施形態において、nは1である。独立に、いくつかの実施形態において、mはゼロである。独立に、いくつかの実施形態において、pは3である。独立に、いくつかの実施形態において、qは7または8であり、またはそれらの混合物である。
【0077】
好適な非イオン性界面活性剤のさらなる実施形態のひとつはAtplus595である。
【0078】
好適な界面活性剤の混合物も好適である。
【0079】
非イオン性界面活性剤は、本明細書の上記で定義したように、HLBによって有用に特徴付けられる。いくつかの実施形態において、3〜4のHLBを有する1種以上の非イオン性界面活性剤が用いられる。独立に、いくつかの実施形態において、8〜10のHLBを有する1種以上の非イオン性界面活性剤が用いられる。いくつかの実施形態において、3〜4のHLBを有する1種以上の非イオン性界面活性剤と、8〜10のHLBを有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤の混合物が用いられる。
【0080】
いくつかの実施形態(本明細書において、「連続的油」の実施形態と呼ばれる)において、本発明の組成物の連続的な媒体は、粒子が懸濁された油媒体である。いくつかの連続的油の実施形態において、組成物中に1種以上の界面活性剤が存在する。いくつかの連続的油の実施形態において、組成物中に界面活性剤が存在しない。独立に、いくつかの連続的油の実施形態において、水はわずかしか存在せず、または全く存在しない。すなわち、かかる実施形態において、いくらかの水が存在するならば、水の量は、組成物の重量基準で、5重量%以下、または2重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下または0.1重量%以下である。
【0081】
いくつかの連続的油の実施形態において、シクロプロペンの量は、油1リットルあたり1gのシクロプロペン(「g/L」)以上、または2g/L以上、または5g/L以上、または10g/L以上、または20g/L以上である。独立に、いくつかの連続的油の実施形態において、シクロプロペンの量は200g/L以下、または100g/L以下、または50g/L以下である。
【0082】
いくつかの連続的油の実施形態において、分散剤の量は、組成物の重量基準で、0.1重量%以上、または0.2重量%以上、または0.5重量%以上、または0.75重量%以上である。独立に、いくつかの連続的油の実施形態において、分散剤の量は、組成物の重量基準で、20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または2重量%以下である。
【0083】
いくつかの連続的油の実施形態において、界面活性剤の量は、組成物の重量基準で、0.5重量%以上、または1重量%以上、または2重量%以上である。いくつかの連続的油の実施形態において、界面活性剤の量は、組成物の重量基準で、20重量%以下、または10重量%以下である。いくつかの連続的油の実施形態において、界面活性剤は存在しない。
【0084】
いくつかの実施形態(本明細書において「連続的水」の実施形態と呼ばれる)において、本発明の組成物の連続的媒体は水性媒体である。水性媒体は水性媒体の重量基準で、50重量%以上の水を含む液体である。いくつかの実施形態において、水性媒体の重量基準で、75重量%以上、または90重量%以上、または95重量%以上の水量を有する水性媒体が用いられる。連続的水の実施形態において、粒子が懸濁される油媒体は不連続の液滴に分割され、これらの液滴は水性媒体中に懸濁される。
【0085】
いくつかの連続的水の実施形態において、組成物中には1種以上の界面活性剤が存在する。いくつかの連続的水の実施形態において、組成物中に1種以上の非イオン性界面活性剤が存在する。いくつかの連続的水の実施形態において、組成物中に3〜4のHLBを有する1種以上の非イオン性界面活性剤が存在し、組成物中には8〜10のHLBを有する1種以上の界面活性剤も存在する。いくつかの実施形態において、1種以上の界面活性剤の選択は、界面活性剤が、その実施形態中に油媒体として用いられる特定の油の液滴を乳化するのに十分適していることに基づき行われる。
【0086】
いくつかの連続的水の実施形態において、シクロプロペンの量は、組成物の重量基準で、10重量部/百万重量部(重量ppm)以上、または20重量ppm以上、または50重量ppm以上である。独立に、いくつかの連続的水の実施形態において、シクロプロペンの量は、組成物の重量基準で、500重量ppm以下、または200重量ppm以下である。
【0087】
いくつかの連続的水の実施形態において、分散剤の量は、組成物の重量基準で、2.5重量ppm以上、または10重量ppm以上、または50重量ppm以上、または200重量ppm以上である。独立に、いくつかの連続的水の実施形態において、分散剤の量は、組成物の重量基準で、1250重量ppm以下、または1000重量ppm以下、または750重量ppm以下である。
【0088】
いくつかの連続的水の実施形態において、界面活性剤の量は、組成物の重量基準の乾燥界面活性剤の重量として、0.02重量%以上、または0.05重量%以上、または0.1重量%以上、または0.2重量%以上である。独立に、いくつかの連続的水の実施形態において、界面活性剤の量は、組成物の重量基準の乾燥界面活性剤の重量として、2重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下である。
【0089】
本発明の組成物は、任意の方法によって製造することができる。いくつかの好適な方法において、出発物質は油、分散剤、場合によって界面活性剤、およびシクロプロペン錯体である。いくつかの実施形態において、シクロプロペン錯体出発物質はシクロプロペン錯体を含む粉末粒子の形であり、粉末粒子は最大寸法で測定して50マイクロメートルよりはるかに大きな平均サイズ(例えば、200マイクロメートル以上)を有する。いくつかの実施形態において、出発物質は媒体粉砕機に投入し、次いで、所望の粒子サイズが得られるまで粉砕することができる。いくつかの実施形態において、粉砕プロセスは粒子が最大寸法で測定して50マイクロメートル以下、または20マイクロメートル以下、または10マイクロメートル以下、または5マイクロメートル以下、または2マイクロメートル以下の平均サイズを有するまで行うことができる。
【0090】
粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で2重量%以上、または5重量%以上、または10重量%以上、または20重量%以上の量のシクロプロペン錯体粉体を含む。独立に、粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で60重量%以下、または50重量%以下の量のシクロプロペン錯体粉体を含む。
【0091】
粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で0.02重量%以上、または0.05重量%以上、または0.1重量%以上、または0.2重量%以上、または0.5重量%以上、または1重量%以上の量の分散剤を含む。独立に、粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で10重量%以下、または7重量%以下、または5重量%以下の量の分散剤を含む。
【0092】
粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で、0.2重量%以上、または0.5重量%以上、または1重量%以上の量の界面活性剤を含む。独立に、粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は、粉砕される混合物の重量基準で、30重量%以下、または10重量%以下、または6重量%以下の量の界面活性剤を含む。粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は界面活性剤を含まない。
【0093】
粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は粉砕される混合物の重量基準で、40重量%以上、または50重量%以上の量の油を含む。独立に、粉砕を含むいくつかの実施形態において、粉砕される混合物は粉砕される混合物の重量基準で、98重量%以下、または80重量%以下、または70重量%以下の量の油を含む。
【0094】
粉砕を含むいくつかの実施形態において、水は出発物質から、粉砕される混合物から、および粉砕された混合物が貯蔵されるとき粉砕された混合物から排除される。すなわち、かかる実施形態において、出発物質の混合物中の水の量は、出発物質の総重量基準で、2重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.2重量%以下、または0.1重量%以下、またはゼロ%である。かかる実施形態において、粉砕中の混合物についても、および粉砕された混合物が貯蔵されるとき粉砕された混合物についても、同じ量の水が是認される。貯蔵中の混合物は粉砕中の混合物よりも多い量の水を含んでいても、または含んでいなくてもよい。独立に、粉砕中の混合物は粉砕前の出発物質の混合物よりも多量の水を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。
【0095】
かかる粉砕プロセスの生成物は直ちに用いてもよいし、または貯蔵してもよい。
【0096】
連続的油の実施形態を実施することが望ましいとき、粉砕プロセスの生成物はそのまま用いることができ、またはかかる粉砕プロセスの生成物にさらに油を追加することができる。
【0097】
連続的水の実施形態を実施することが望ましいとき、かかる粉砕プロセスの生成物は液滴に分割され、水性媒体に懸濁される。いくつかの実施形態において、粉砕プロセスの生成物は水性媒体中に添加され攪拌に付されることができ、および粉砕プロセスの生成物は、懸濁された液滴に分割される。かかるいくつかの実施形態において、粉砕プロセスの生成物を分割し水性媒体中に懸濁するのを助けるために1種以上の界面活性剤が選択され、かかる界面活性剤または複数の界面活性剤は出発物質に添加され、粉砕される混合物中に含まれる。界面活性剤が粉砕される混合物中に含まれても含まれなくても、粉砕プロセスが完了した後、1種以上の界面活性剤を(水性媒体が粉砕プロセスの生成物に混合される前または後に)粉砕プロセスの生成物、または水性媒体中に添加することができる。
【0098】
一般に、シクロプロペン錯体が用いられるときはいつでも、シクロプロペン錯体と水の間の直接接触が、望むよりも早期に錯体からシクロプロペンの放出を招くことがあり、シクロプロペンが失われ得ること(例えば、組成物外への拡散によって、または化学反応によって、またはその組み合わせによって)が知られている。本発明の連続的水の実施形態の実施において、シクロプロペン錯体は、シクロプロペン錯体と水の間の接触は最小になりまたは排除されるように、油媒体中に留まるので、したがって、組成物のシクロプロペン分子は望ましい高い割合で組成物中に残るものと考えられる。
【0099】
本発明の組成物ひとつの考えられる用途は、本発明の組成物を植物または植物部分に接触させることによって植物または植物部分を処理することである。有用な植物部分を形成する植物は本明細書において「作物植物」と呼ばれる。処理は成長中の植物または成長中の植物から収穫した植物部分に対して行うことができる。成長中の植物への処理の実施において、本発明の組成物は植物全体に接触させることができ、または1以上の植物部分に接触させることができる。植物部分は植物の任意の部分を包含し、例えば、花弁、つぼみ、花、種子、切り枝、根、球根、果実、野菜、葉、およびその組み合わせなどを包含することを意図する。
【0100】
作物植物から有用な植物部分を取り除くことは収穫として知られる。いくつかの実施形態において、作物植物は有用な植物部分の収穫の前に本発明の組成物で処理される。
【0101】
本発明の組成物は、例えば、噴霧、浸漬、ドレンチング(drenching)、フォギング(fogging)およびこれらの組み合わせをはじめとする任意の方法で植物または植物部分に接触させることができる。いくつかの実施形態において、噴霧が用いられる。
【0102】
好適な処理は、畑、庭、建物内(例えば、温室など)、または他の場所に植えられた植物に行うことができる。好適な処理は空き地や、1つ以上の容器(例えば、ポット、プランター、または花瓶など)の中や、閉じられたまたは持ち上げられた苗床や、他の場所に植えられた植物に行うことができる。いくつかの実施形態において、処理は建物以外の位置にある植物に行うことができる。いくつかの実施形態において、植物はそれらが例えばポット、平らな苗床、または持ち運び可能な苗床などの容器中で成長中の植物に行うことができる。
【0103】
本発明の実施に使用するのに好適な多くの植物は、種類または群に有益に分割することができる。かかる群を定義するひとつの有用な方法は、国際連合食糧農業機関(「FAO」)から「案」として2006年3月23日またはそれ以前に発行された「商品の定義および分類(Definition and Classification of Commodities)」である。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態の実施において、以下の作物群の任意の1種に分類される1種以上の作物を生成する植物の使用が意図される。
【0105】
作物群1は、例えば、小麦、米、大麦、トウモロコシ、ポップコーン、ライ麦、オート麦、キビ、ソルガム、ソバ、キオナ(quiona)、フォニオ、ライコムギ、カナリーシード、カナグア(canagua)、キウイチャ(quihuicha)、ハトムギ、野生の米および他の穀類をはじめとする穀類である。本発明のいくつかの実施形態において、好適な植物は、小麦、または米、またはトウモロコシを生成するものである。いくつかの実施形態において、トウモロコシ植物が好適である。いくつかの実施形態において、小麦植物が好適である。作物群2は根および球根である。
【0106】
作物群3は、糖科作物、例えば、サトウキビ、テンサイ、サトウカエデ、サトウモロコシ、サトウヤシおよび他の砂糖作物などである。作物群4は、豆類(pulse)、例えば豆(beans)、ヒヨコマメ、ガルバンゾ、ササゲ、キマメ、ヒラマメ、および他の豆類が挙げられる。作物群5は、堅果類、例えば、ブラジルナッツ、カシューナッツ、栗、アーモンド、クルミ、ピスタシオ、ヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ(pecan nut)、マカダミアナッツを含むナット、および他の堅果類が挙げられる。
【0107】
作物類6は、油種子、例えば、大豆、落花生(ピーナツを含む)、ココナッツ、アブラヤシ果実、オリーブ、カリテナッツ、トウゴマの実、ヒマワリ種子、菜種、キャノーラ、アブラギリナッツ、ベニバナ種子、ゴマ種子、マスタード種子、ケシの種、メロン種子、ナンキンハゼ種子、カポック果実、種子綿、亜麻仁、麻の実および他の油種子が挙げられる。いくつかの実施形態において、大豆植物が好適である。
【0108】
作物群7は、野菜、例えば、キャベツ、アーティチョーク、アスパラガス、レタス、ホウレンソウ、カッサバ菜、トマト、カリフラワー、カボチャ、キュウリおよびガーキン、ナス、トウガラシおよびペッパー、グリーンオニオン、ドライオニオン、ニンニク、ニラネギ、他のネギ野菜、グリーンビーンズ、グリーンピース、グリーンブロードビーンズ、サヤエンドウ、ニンジン、オクラ、ヤングコーン、マッシュルーム、スイカ、カンタロープメロン、タケノコ、テンサイ、フダンソウ、ケーパー、カルドン、セロリ、チャービル、クレス、ウイキョウ、セイヨウワサビ、マジョラム、オイスタープラント、パセリ、パースニップ、ラディッシュ、ルバーブ、ルタバガ、セイボリー、フタナミソウ、スイバ、クレソンを含む野菜、および他の野菜が挙げられる。
【0109】
作物群8は、果実、例えば、バナナおよびプランテーン;カンキツ果実;ナシ状果;石果;ベリー類;ブドウ;トロピカルフルーツ;雑多な(miscellaneous)果実;および他の果実が挙げられる。作物群9は、繊維、例えば、綿、亜麻、麻、カポック、ジュート、ラミー、サイザル麻、および他の植物から得られる繊維が挙げられる。いくつかの実施形態において、綿植物が好適である。作物群10は香辛料である。作物群11は飼料作物である。飼料作物は主として動物の餌のために栽培される作物である。作物群12は、刺激物作物、例えば、コーヒー、カカオ豆、茶、マテ茶、茶のような浸出液を作るために用いられる他の植物、および他の刺激物作物が挙げられる。
【0110】
作物群13は、タバコおよびゴムおよび他の作物、例えば、香料、食品、および他の産業に用いられる植物油、除虫菊、タバコ、天然ゴム、天然ガム、他の樹脂、および野菜ワックスが挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明は任意の非カンキツ植物(すなわち、カンキツ属ではない任意の植物)の処理を含む。他の実施形態において、本発明の実施は、非カンキツ植物の処理に制限される。独立に、いくつかの実施形態において、処理される全ての植物はタバコ属のメンバーではない。
【0112】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は田畑で成長する作物植物の処理に用いられる。かかる処理作業は単一の成長季節の間に作物植物の特定の群に1回または1回より多くの処理が行われ得る。いくつかの実施形態において、1回の処理に用いられるシクロプロペンの量はヘクタールあたり0.1g(g/ha)以上、または0.5g/ha以上、または1g/ha以上、または5g/ha以上、または25g/ha以上、または50g/ha以上、または100g/ha以上である。独立に、いくつかの実施形態において、1回の噴霧作業に用いられるシクロプロペンの量は、6000g/ha以下、または3000g/ha以下、または1500g/ha以下である。
【0113】
また、収穫された植物部分が処理される実施形態も意図される。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は1種以上の金属錯化剤を含む。金属錯化剤は金属原子と配位結合を形成することのできる1つ以上の電子ドナー原子を含む化合物である。いくつかの金属錯化剤はキレート化剤である。本明細書に用いられる場合、「キレート化剤」は、金属原子と配位結合を形成することのできる2つ以上の電子ドナー原子を含む化合物であり、かつキレート化剤の一つの分子は一つの金属原子と2つ以上の配位結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、1種以上のキレート化剤が用いられる。いくつかの実施形態において、キレート化剤ではない金属配位結合剤は用いられない。
【0115】
1種以上のキレート化剤が用いられる実施形態において、好適なキレート化剤としては、例えば、有機および無機キレート化剤が挙げられる。好適な無機キレート化剤の中には、リン酸塩、例えば、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸などのリン酸塩がある。好適な有機キレート化剤の中には巨大環状構造および非巨大環状構造のものがある。
【0116】
非巨大環状構造を有するいくつかの好適な有機キレート化剤は、例えば、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基、フェノール、アミノフェノール、オキシム、シッフ(Shiff)塩基、硫黄化合物、およびその混合物である。いくつかの実施形態において、キレート化剤には、1種以上のアミノカルボン酸、1種以上のヒドロキシカルボン酸、1種以上のオキシム、またはその混合物が包含される。いくつかの好適なアミノカルボン酸としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDT)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N−ジヒドロキシエチルグリシン(2−HxG)、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)(EHPG)、およびその混合物が挙げられる。いくつかの好適なヒドロキシカルボン酸としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、5−スルホサリチル酸、およびその混合物が挙げられる。いくつかの好適なオキシムとしては、例えば、ジメチルグリオキシム、サリチルアルドキシム、およびその混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、EDTAが用いられる。
【0117】
本発明において金属錯化剤の使用は任意選択的である。いくつかの連続的水の実施形態において、1種以上の金属錯化剤が用いられる。いくつかの連続的水の実施形態において、金属錯化剤は用いられない。いくつかの連続的油の実施形態において、非金属錯化剤が用いられる。
【0118】
特に他に記載しないかぎり、本明細書および請求項のために、値が「XからY」と記載されるとき、その値はXまたはXより大きく、かつYまたはYより小さいことを意味するものと理解される。
【0119】
特に他に記載しないかぎり、本明細書および請求項のために化合物が特定の化学反応の結果として記載されているとき、化合物が実際にその特定の化学反応を実施することによって作られるかどうかにかかわらず、それらの記載は化合物の構造を記載することが意図されているものと理解される。例えば、「脂肪族アルコールのエトキシレート」は、脂肪族アルコールに実施されたエトキシル化プロセスを想定することによって理解することができる構造の化合物であり、およびかかる化合物は脂肪族アルコールに実施されたエトキシル化のプロセスによって製造されても、または異なるプロセスによって製造されてもよい。
【0120】
特に他に記載しないかぎり、本明細書および請求項のための行程は1気圧の空気中で25℃で行われるものと理解される。
【0121】
本明細書および請求項のために本明細書に記載された範囲および比は組み合わせることができるものと理解される。例えば、特定のパラメーターに対し60〜120および80〜110と記載されている場合、範囲60〜110および80〜120も意図されていることが理解される。さらに他の独立の例として、特定のパラメーターが好適な最小値1、2、3を有すると開示され、かつそのパラメーターが好適な最大値9、10を有すると開示されている場合、1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9、および3〜10の範囲の全てが意図される。
【実施例】
【0122】
以下の実施例において、以下の物質が用いられた。
〔錯体1〕=1−MCPとアルファ−シクロデキストリンの錯体を含む乾燥粉末であり、3.8重量%の1−MCPを含む。最長寸法で測定して平均サイズが100マイクロメートルより長い。平均アスペクト比は50を超える。
〔油P1〕=Whitmire Micro−Gen Companyによるアリールアルキルエトキシレート界面活性剤を含むパラフィン油。
〔油P2〕=Petro Canada Companyによるパラフィン油。
〔Brij(商標)30〕=界面活性剤:Grodaによる(エチレンオキシド)ラウリルエーテル(HLB9.7)
〔Silwet(商標)L−77〕=界面活性剤:OSi Specialtiesによる非イオン性シリコーン(HLB5〜8)
〔Atlox(商標)4914〕=分散剤:Crodaによるポリ(エチレンオキシド)とアルキド樹脂のブロックコポリマー(HLB6)
〔EDTA〕=エチレンジアミン四酢酸、ナトリウム塩。
〔Atsurf(商標)595〕=界面活性剤:Croda Company製のグリコールモノオレエート(HLB3.8)。
〔Dyne−Amic(商標)油〕=Helena Chemicalsによる、有機シリコーン系界面活性剤と組み合わせた高度に精製されたメチル化植物油の混合物。
〔油エマルジョン1〕=99.62重量部の水に0.38重量部のDyne−Amic(商標)油を添加し、攪拌されている。
〔Rizo(商標)油〕=Rizo bacter Companyによる、乳化性メチル化大豆油。
〔SoyGold(商標)1100〕=Ag Environmental Products Companyによる、メチル化大豆油。
【0123】
〔実施例1〕配合物Bの形成
以下の成分を媒体粉砕機に添加した。
292.4gの油P1。
102.0gの錯体1。
5.6gのAtlox(商標)4914。
成分の混合物を、平均粒子サイズが最大寸法で測定して2マイクロメートル未満になるまで媒体粉砕機中で処理した。
【0124】
〔実施例2〕配合物Cの形成
以下の成分を媒体粉砕機に添加した。
194.2gの油P2。
175.0gの錯体1。
6.0gのBrij(商標)30。
18.0gのSilwet(商標)L−77。
6.8gのAtlox(商標)4914。
成分の混合物を、平均粒子サイズが最大寸法で測定して2マイクロメートル未満になるまで媒体粉砕機中で処理した。
【0125】
〔実施例3〕配合物Dの形成
以下の成分を媒体粉砕機に添加した。
200.4gのSoyGold1100。
180.0gの錯体1。
10.0gのSilwet(商標)L−77。
4.0gのAtlox(商標)4914。
5.6gのEDTA。
成分の混合物を、平均粒子サイズが最大寸法で測定して2マイクロメートル未満になるまで媒体粉砕機中で処理した。
【0126】
〔実施例4〕1−MCPの保持
噴霧混合物を標準的な噴霧ノズルを通して噴霧し、噴霧ノズルにおいて、および噴霧ノズルから46cm(18インチ)において噴霧液体を採集し、採集した液体を密閉容器中に捕捉し、上部にできた空間のガスをガスクロマトグラフで分析することによって1−MCPを分析し、配合物が1−MCPを保持する能力を評価した。上部にできた空間のガスクロマトグラフィーは米国特許公開第2005/0261132号に記載されているように行った。また、初期および最終の未噴霧部分も分析して噴霧作業中に噴霧に失われた量、および上部にできた空間に失われた量を求めた。
【0127】
噴霧配合物「比較SF−A4」は、油エマルジョン1と錯体1の混合物であった。噴霧配合物「SF−B4」は水に加えられた配合物Bであった。各噴霧配合物は100mg/Lの1−MCPを含み、138kPa(20psi)でTeeJet(商標)XR8002VSノズルを通して噴霧された。結果は表1に示される。
【0128】
【表1】

【0129】
表1は油配合物が1−MCP錯体と油のタンク混合よりもはるかに良好に働き、かつ未噴霧の噴霧液体中の1−MCPの保持を助けることを示す。
【0130】
〔実施例5〕生物学的効果
温室のトマト植物に噴霧し、それらをエチレンに暴露し、特にエチレンに起因する上偏生長(すなわち、葉の曲がり/湾曲)応答に対する抵抗性を評価することによって配合物の効果を評価した。
【0131】
1−MCP処理された植物および対照物をSLX制御気圧配送ボックス中に置き、封止した。このボックスに隔壁を通過させエチレンを注入し、14ppmの濃度を与えた。植物は大気圧のエチレンと共に12〜14時間暗所に封止されて保持された。エチレン処理の終りに、ボックスを開き、上偏生長を記録した。結果は幹に対する葉の角度として報告し、50度の値は影響を受けない葉の典型であり、エチレンの作用で完全に曲がるものは120度である。
【0132】
噴霧配合物「比較SF−A51」は99.99重量部の油エマルジョン1に0.0132重量部の錯体1を加えたものであった。1g1−MCP/Haの割合を与えるように比較SF−A2を植物上に噴霧した。噴霧配合物「比較SF−A52」は99.17重量部の油乳化物1に0.132重量部の錯体1を加えたものであった。10g1−MCP/Haの割合を与えるように比較SF−A2を植物上に噴霧した。
【0133】
噴霧配合物「SF− 51」は0.0279重量部の配合物Cに99.97重量部の水を加えたものであった。1g1−MCP/Haの割合を与えるようにSF−C51を植物上に噴霧した。噴霧配合物「SF−C52」は0.279重量部の配合物Cに99.72重量%の水を加えたものであった。10g1−MCP/Haの割合を与えるようにSF−C52を植物上に噴霧した。
【0134】
結果は以下の通りである。
【0135】
【表2】

【0136】
葉の角度は油配合物SF− 51およびSF−C52はエチレンの影響を妨げる点において比較配合物よりも、より効果的であることを示す。
【0137】
〔実施例6〕作物収量増加
配合物の効果を大豆上への領域適用について評価した。効果の測定は収量増加であった。
【0138】
噴霧配合物「比較SF−A6」を以下のようにして作った。98.97重量部の水を1重量部のRizo(商標)油と噴霧タンク中で混合し、次いで、混合物を0.0329重量部の錯体1と噴霧タンク中で混合した。噴霧割合は2L/HaのRizo(商標)油を含む水200L/Ha中に25g1−MCP/Haを与えるように選択した。比較SF−A6は地上レベル噴霧により適用された。
【0139】
噴霧性配合物SF−D6を、1.25リットルの配合物Dと3.75リットルのRizo(商標)油を混合することによって作った。噴霧性配合物SF−D6は、5Lの総油/Ha中に25g1−MCP/Haの割合で空中噴霧により適用された。(注)SF−D6に水は使用しなかった。したがって、総液体噴霧容積は5L/Haであった。
【0140】
結果は以下の通りであった。収量は未処理対照物から得られた収量のパーセントとして報告する。
【0141】
【表3】

【0142】
SF−D6は比較配合物よりも大豆の収量を著しく増加させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油媒体を含む組成物であって、固体粒子が前記油媒体中に懸濁され、前記固体粒子がシクロプロペンと分子封入剤を含み、及び前記固体粒子が最大寸法で測定して50マイクロメートル以下の平均サイズを有し、かつ前記シクロプロペンが下記式を有する任意の化合物であり、前記分子封入剤が置換シクロデキストリン及び非置換シクロデキストリンからなる群から選択される組成物:
【化1】

(前記式中、各R、RおよびRは水素であり及びRは(C〜C)アルキルである)。
【請求項2】
前記油媒体が1種以上の分散剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記油媒体が1種以上の非イオン性界面活性剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記油媒体が、3〜4のHLB値を有する1種以上の非イオン性界面活性剤および8〜10のHLB値を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記油媒体が、水中に懸濁された液滴の形である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記油媒体が、前記組成物の連続的媒体を形成する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子が20以下の平均アスペクト比を有する請求項1記載の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物を植物または植物部分に接触させることを含む植物または植物部分を処理する方法。
【請求項9】
請求項1記載の組成物の形成方法であって、前記方法が、媒体粉砕機に、前記シクロプロペンと前記分子封入剤とのシクロプロペン錯体を含む固体粒子と油と分散剤を含む混合物を作り、前記混合物を粉砕することを含み、前記粒子が、前記粉砕後に、最長長さで測定して50マイクロメートル以下の平均サイズを有する方法。
【請求項10】
前記油が75℃以上の沸点を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記油媒体が1種以上の分散剤を含み、かつ全ての分散剤が分子あたり4つ以上の疎水性基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
全ての前記分散剤が5〜7のHLB値を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記分子封入剤がアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリンまたはその混合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記分子封入剤の少なくとも1種が、1つ以上のシクロプロペンまたは1つ以上のシクロプロペンの一部を有する包接錯体封を形成する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記シクロプロペンが1−メチルシクロプロペンを含み、および前記分子封入剤がアルファ−シクロデキストリンを含む、請求項14記載の組成物。

【公開番号】特開2012−162575(P2012−162575A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−127967(P2012−127967)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【分割の表示】特願2008−176617(P2008−176617)の分割
【原出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】