説明

油類飛散評価シート、油類飛散評価画像、油類飛散評価プログラム、および油類飛散評価方法

【課題】微小な油の飛散量に対しても、視覚的かつ定量的に、しかも容易に飛散状況を分析・評価する手法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明にかかる油類飛散評価シートの代表的な構成は、食用油に反応して変色する指示薬を塗布または含有させたことを特徴とする。また、油類飛散評価シートのほぼ中央に食用油の飛散源である鍋類を載置するための鍋類設置領域を設け、鍋類設置領域を中心にして、同心円状または放射状の目盛りを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロ(ガスコンロ及びIHコンロを含む)において調理した際に鍋類(鍋、天ぷら鍋、フライパン等)から飛散した油類の分析・評価を行うための油類飛散評価シート、油類飛散評価画像、油類飛散評価プログラム、および油類飛散評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物や炒め物などの調理をしたときには、ガスコンロやIHコンロの周りに揚げ物や炒め物の油が飛散し、キッチン周りの頑固な汚れの原因になり、また掃除負担の原因にもなっている。このような飛散油の発生状況を少しでも把握し、汚れや掃除の低減に役立てようと定量的な分析、評価が試みられている。
【0003】
油漏れを検知する手法としては従来から様々な方法が検討されている。例えば特許文献1には、検知対象とする油の吸収波長を含むパルス光を照射し、油を構成する分子を励起させて、油が蛍光を発している時間を観測する油検知装置が開示されている。特許文献1によれば、プラント内機器および車両などの部品からの油漏れ、霧状の微粒子になって漏洩する霧状油、および水面に浮いて流出する薄膜状の油を検知でき、漏洩面積、膜厚やその分布、漏洩量、漏洩油種および漏洩部位を特定できるとしている。
【0004】
しかし特許文献1に記載の方法では、装置が大がかりになり、設備コストが高額になるという問題がある。一方、キッチンで調理をした際には油煙と油滴が発生するが、キッチン周りの汚れはもっぱら油滴によるところ、特許文献1の技術では油煙も検知してしまう。そのため、さらに簡略にかつ油滴のみを評価する手法が求められている。
【0005】
そこで非特許文献1には、油の飛散量を重量の面から分析・評価する方法が開示されている。非特許文献1に記載された技術は、ガスコンロやIHコンロの周りに碁盤目のように細分化した板紙(例えば白い紙や白いアクリルパネル)を敷き、揚げ物や炒め物により油が付着した板紙の重量を測定し、付着前の板紙の重量の差から飛散油量の分析・評価をするものである。各板紙を試験前後に上皿電子天秤を用いて1/1000グラムまで計測し、その差分を出すことにより、それぞれの板紙に付着した油滴の量を測定できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−311771号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】住宅用調理レンジを対象とした排気フードの廃気捕集率に関する研究 その3 調理時の油滴の飛散状況に関する実験(富岡誠子・赤林伸一・坂口淳・石山洋平:日本建築学会大会学術講演梗概集 2007年、D-2分冊、p.719)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1に記載のように、油の絶対重量を油が付着した板紙の重量差から測定することは、油の飛散量が数グラム〜数十グラムにおよぶ大量である場合にはおおむね有効な分析・評価手法であると考えられる。
【0009】
しかしガスコンロやIHコンロにおいては、高熱や大量の水蒸気が発生する。このような環境においては、板紙は熱によって内部の水分が蒸発したり、外部から水分を吸収したりして、油分以外の要素によってその重量が変化してしまう。板紙としてアクリルパネルを用いた場合であっても、やはり加熱によって重量が変化してしまう。したがって特に、飛散量が数ミリグラム、数グラムレベルである場合には、その影響が大きな誤差として表れ、正確な分析・評価ができなくなるという問題がある。
【0010】
また、油の飛散状況を把握するために、重量ではなく、板紙に付着した油滴の個数を計数することも行われていた。しかし、各板紙ごとに目視にて計数する必要があり、油自体が透明色であることから計数に苦労が伴い、飛散・付着した油色からの分析・評価も難しいという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、重量にすれば数ミリグラム程度の微小な油の飛散量に対しても、視覚的かつ定量的に、しかも容易に飛散状況を分析・評価する手法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる油類飛散評価シートの代表的な構成は、油類に反応して変色する指示薬を塗布または含有させたことを特徴とする。これにより、飛散して付着した油滴を、明確に視覚化することができる。したがって飛散状況を肉眼で直接かつ容易に把握することができると共に、画像処理を容易に行うことができる。
【0013】
当該油類飛散評価シートのほぼ中央に、油類の飛散源である鍋類を載置するための鍋類設置領域が設けられていることが好ましい。これにより、油滴によって着色された油類飛散評価シートを観察する際に、飛散状況をさらに容易に把握することが可能となる。また、画像処理を行う際にも鍋類が載置されていた位置を油滴の位置の基準とすることができる。なお鍋類とは、鍋、天ぷら鍋、フライパン等、油を用いて調理を行う調理容器をいう。鍋類設置領域は当該シートに設けられた切欠によって形成することができ、これによりガスコンロなどの火を用いる器具においても当該シートを使用することができる。またIHコンロにおいても鍋類設置領域は切欠で形成することが好ましいが、IHコンロなどのように火を用いない器具の場合は、切欠ではなく図柄(例えば円を描く)によって形成することもできる。
【0014】
鍋類設置領域を中心にして、同心円状または放射状の目盛りが設けられていることが好ましい。これにより、どの程度の位置に油滴が飛散しているかを容易に把握することが可能となる。また、画像処理を行う際に、目盛りを読み取って複数の領域に分割することができる。
【0015】
本発明にかかる油類飛散評価画像の代表的な構成は、油類の飛散状態に基づく散点模様と、油類の飛散源である鍋類の載置位置を中心にした同心円状または放射状の目盛りが描かれていることを特徴とする。これにより、肉眼にて油類の飛散状況を容易に把握することができる。特に、同心円状または放射状の目盛りが描かれていることにより、原寸大ではなく画像を縮小または拡大して表示または印刷した場合にも、飛散状況を容易に把握することが可能となる。なお、いうまでもないが、同心円状の目盛りと放射状の目盛りの両方を同時に描いてもよい。
【0016】
本発明にかかる油類飛散評価プログラムの代表的な構成は、油類の飛散によって散点的に変色したシートを撮影した画像に対し、所定の閾値で二値化する二値化部と、前記画像を油類の飛散源である鍋類の載置位置を中心として半径方向または円周方向に複数の領域に分割する領域分割部と、領域ごとに変色箇所を計数する油滴計数部とを備えることを特徴とする。これにより、油類の飛散試験を行って変色したシートの画像を用いて、方向または距離ごとに油滴を計数することができ、飛散状況を数値化して処理に用いることができる。
【0017】
油滴計数部は、変色箇所を、画像の画素単位で計数してもよい。これにより、各領域において変色した面積を求めることができる。なお、輪郭抽出によって変色箇所の個数を計数してもよい。
【0018】
さらに、画像に複数の領域の境界線を描画する境界線描画部を備えることが好ましい。二値化して画像処理を行う場合において、あらかじめシートに目盛りが描画されていると、変色箇所を計数する際にこれを除外する処理が必要となる。そこでシートには目盛りを描かずに飛散試験を行い、これを撮影して画像処理(油滴の計数など)をした後に、領域の境界線を目盛りとして画像中に描画する。これにより、画像処理を簡易としながらも、人間が目視にて飛散状況を直感的に把握することが可能な画像を提供することが可能となる。
【0019】
本発明にかかる油類飛散評価方法の代表的な構成は、コンロに油類に反応して変色する指示薬を塗布または含有させた油類飛散評価シートを載置し、油類飛散評価シートのほぼ中央に鍋類を載置し、鍋類に油類を注入して調理行為を行うことにより油類を飛散させ、飛散した油類によって散点的に変色した油類飛散評価シートを撮影し、撮影した画像を所定の閾値で二値化し、画像を鍋類の設置位置を中心として半径方向または円周方向に複数の領域に分割し、領域ごとに変色した画素を計数することを特徴とする。これにより、油の飛散状況を、方向または距離ごとに油滴を計数し、視覚的かつ定量的に、しかも容易に分析・評価することができる。
【0020】
上記の油類飛散評価方法においては、油類飛散評価シートに基準長さを示す定型指標を設け、画像を複数の領域に分割する際に、定型指標の画像中の長さと定型指標の既知の長さとを比較して、領域の半径方向の長さを決定することが好ましい。これにより撮影機材(カメラなど)や撮影条件(カメラと被写体の距離など)が変動しても、画像中の実寸の縮尺を適正化し、常に安定した領域分割を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、数ミリグラムレベルの微小な油の飛散、付着量に対しても、視覚的かつ定量的に、しかも容易に飛散状況の分析・評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】油類飛散評価シートを説明する図である。
【図2】油類飛散評価方法を説明するフローチャートである。
【図3】調理行為を説明する図である。
【図4】油類が飛散して変色した油類飛散評価シートの例を示す図である。
【図5】油類飛散評価プログラムを含む評価システムの構成を説明する図である。
【図6】画像処理を説明する図である。
【図7】油類飛散評価画像を説明する図である。
【図8】油類の飛散を評価するためのデータ処理の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は本実施形態にかかる油類飛散評価シート(以下、単に「シート100」という。)を説明する図、図2は油類飛散評価方法を説明するフローチャート、図3は調理行為を説明する図、図4は油類が飛散して変色した油類飛散評価シートの例を示す図、図5は油類飛散評価プログラムを含む評価システムの構成を説明する図、図6は画像処理を説明する図、図7は油類飛散評価画像を説明する図、図8は油類の飛散を評価するためのデータ処理の例を説明する図である。
【0025】
図1に示すシート100は、紙またはプラスチックフィルムなどの基材に、食用油に反応して変色する指示薬を塗布または含有させて構成している。シート100は比較的大判であることが好ましく、理想的には食用油の飛散源である鍋類およびその周囲を覆う大きさの1枚のシートであることが好ましい。ただし、取扱が煩雑にならない限りにおいて複数枚に分割されていてもよい(例えば4分割など)。
【0026】
食用油に反応して変色する指示薬は、粉末の指示薬を塗布してもよいし、液状の指示薬を塗布または含浸させてもよい。指示薬には市販のものを利用することができ、例えばタセト社のモレミールOiL−Qを好適に用いることができる。この指示薬は粉体であって、食用油に反応して白色が赤色に変色する。このようにして、飛散して付着した油滴を、明確に視覚化することができる。したがって飛散状況を肉眼で直接かつ容易に把握することができると共に、以下に述べるように画像処理を容易に行うことができる。
【0027】
シート100のほぼ中央には、鍋類を載置するための鍋類設置領域110が設けられている。鍋類とは、鍋、天ぷら鍋、フライパン等、油を用いて調理を行う調理容器をいう。鍋類設置領域110としては図1などには概ね鍋底の大きさをした切欠によって形成している。IHコンロにおいても鍋類設置領域は切欠で形成することが好ましいが、IHコンロ210などのように火を用いない器具の場合は、切欠ではなく、鍋の外縁を示す円や、鍋の中心を示す小円または十字マークを描いて鍋類設置領域110を形成することも可能である。鍋類設置領域110を描画する場合には、鍋類設置領域110の内部は塗りつぶしておいた方が後述する画像処理の際に簡便である。
【0028】
以下、図2に示すフローチャートを参照しながら、油類飛散評価方法と油類飛散評価プログラム、油類飛散評価画像の各部構成をあわせて説明する。
【0029】
図3(a)に示すように、シート100は鍋類220から生じる油滴の飛散状況を評価するために用いられる。まず、キッチン200のIHコンロ210上にシート100を被せるように載置し(S802)、その上のほぼ中央に鍋類220を載置する(S804)。このとき、シート100に鍋類設置領域110が設けられていることにより、確実に位置決めを行うことができる。また図3(b)は、同様にキッチン240のガスコンロ250にシート100を被せるように載置した図である。鍋類設置領域110を切欠で形成したことにより、ガスコンロ250の五徳が鍋類設置領域110内に収まるようにシート100を設置することができ、シート100を燃やすことなく使用することができる。
【0030】
そして鍋類220に油類を注入して、シート100を敷いたままで揚げ物や炒め物などの調理行為を行い(S806)、油滴を飛散させる。鍋類220から油が飛散すると、図4に示すように、シート100に油滴が飛散し、指示薬が変色して散点模様の変色箇所130が形成される。
【0031】
図5に示す評価システム300は、撮像装置としてのカメラ310と、カメラ310が撮影した画像を取得可能なコンピュータ320とを備えている。コンピュータ320は、油類飛散評価プログラム330が実行可能になっている。油類飛散評価プログラム330は、画像取得部332と、前処理部334と、二値化部336と、領域分割部338と、油滴計数部340と、境界線描画部342と、出力部344とから構成されている。
【0032】
まず上述のようにして散点模様の変色箇所130が形成されたシート100を壁面に貼り付け、鍋類設置領域110の位置に、定型指標120を貼付する。定型指標120は寸法が予めわかっているものであればよい。また定型指標120は、撮影の際に貼り付けるのではなく、あらかじめシート100に描いておいてもよい。
【0033】
そしてカメラ310によってシート100を撮影する(S808)。このとき、カメラ310は貼り付けたシート100の中央となるべく同じ高さから撮影することが望ましく、またできるだけ遠距離から望遠を用いて撮影することが遠近によるゆがみを少なくできるため望ましい。
【0034】
油類飛散評価プログラム330の画像取得部332がカメラ310から画像を取得すると、まず前処理部334によって画像を処理しやすいように前処理する(S810)。前処理としては、シート100部分の切り出しや、白色部分を抽出して完全な白色にする正規化処理、レンズの収差に基づく樽型や糸巻き型の歪曲の補正などを行うことができる。
【0035】
次に二値化部336により、所定の閾値で二値化することにより、変色箇所を黒とし、白色部分を白とするように減色する。一例として、画像をまずグレースケール化し、変色部分の輝度に対して所定の判別率(0〜1.0の範囲内。例えば0.7〜0.9)をかけた値を閾値とすることにより、好適に二値化することができる。
【0036】
なお、ある箇所に落下した油滴の量が多いほどに変色の度合いが大きくなることから、油滴の量と色の濃さが比例関係にある。したがって、グレースケールに対する閾値を調整することにより、重畳して落下した部分や、大きな油滴が落下した部分のみを抽出することも可能である。したがって、閾値を変更しながら複数回の二値化処理を行うことにより、あたかも等高線表示のように各部位の油量を描画することにより、総じて飛散重量をも表現することが可能である。
【0037】
領域分割部338は、鍋類220の載置位置である鍋類設置領域110を認識し、その中央を認識する。そして鍋類設置領域110の中央を中心として、画像を半径方向または円周方向に複数の領域に分割する(S814)。
【0038】
図6(a)は、領域分割を行った画像の例を示している。ただしこの段階ではまだ領域の分割は論理的なものでよく、その境界(同心円状の目盛り132、放射状の目盛り134)を画像中に描画するのは後述する計数を行った後でよい。このとき、定型指標120の画像中の長さと定型指標120の既知の長さとを比較して、領域の半径方向の長さを決定する。これによりカメラ310や撮影条件(カメラ310とシート100との距離など)が変動しても、画像中の実寸の縮尺を適正化し、常に安定した領域分割を行うことができる。
【0039】
油滴計数部340は、上記のようにして分割した領域ごとに、変色箇所を計数する(S816)。計数の手法としては、図6(b)に示すように、変色箇所を、画像の画素単位で計数する。油滴は大きさが様々であり、また密集度によっては隣接する変色箇所がつながって大きくなってしまう場合も十分に想定されるため、変色箇所には大小が生じる。この場合において変色箇所の面積を考慮する必要があるが、画素単位で変色しているか否かを計数することにより、各領域において変色した面積を求めることができる。なお、輪郭抽出によって変色箇所の個数を計数してもよい。
【0040】
このようにして油滴の飛散状況を、各領域ごとに、面積として、または個数として数値化することができる。これにより、鍋類220から油滴がどちらの方向に多く飛散し、またどのくらいの距離に多く飛散するかを、演算により集計し、または統計を取ることができる。
【0041】
境界線描画部342は、計数が終了した後に、画像に領域の境界線を描画する(S818)。これにより図6(a)に示したような同心円状の目盛り132と放射状の目盛り134が実際に描き込まれる。これにより、鍋類220から油滴がどちらの方向に多く飛散し、またどのくらいの距離に多く飛散するかを、人間が目視にて直感的に容易に把握することが可能となる。
【0042】
なお、二値化して画像処理を行う場合において、あらかじめシート100に目盛り132、134が描画されていると、変色箇所を計数する際にこれを除外する処理が必要となる。そこで上述のように、シート100には目盛り132、134を描かずに飛散試験を行い、これを撮影して画像処理(油滴の計数など)をした後に、領域の境界線を目盛り132、134として画像中に描画する。これにより、画像処理を簡易としながらも、人間が目視にて飛散状況を直感的に把握することが可能な画像を提供することが可能となる。
【0043】
ただし、人間が主にシート100を直接観察する場合、すなわち画像処理を経ない場合には、シート100にあらかじめ同心円状の目盛り132、放射状の目盛り134を描いておいてもよい。また、あらかじめ描かれた目盛り132、134を用いて、定型指標120の代わりに基準長さを取得し、領域分割に利用してもよい。
【0044】
出力部344は、目盛り132、134が描画された画像と、各領域ごとに計数された数値データを出力する(S820)。
【0045】
画像の出力は、図7(a)に示すようにコンピュータ320の画面上の画像140aであってもよく、図7(b)に示すように紙350やパンフレットに印刷した画像140bであってもよい。出力される画像140a、140bは図6(a)に示した画像と基本的に同じものであるが、画像140a、140bの場合は縮尺が担保されないので(拡縮される可能性が極めて高いため)、縮尺基準114をあわせて描画しておくことが好ましい(図6(a)参照)。また、メモリ132、134の長さを付記することによって、縮尺基準114に代えることもできる。
【0046】
このように、画像140a、140bに、油滴の付着を表す散点模様の変色箇所130と、同心円状の目盛り132、放射状の目盛り134とを示すことによって、原寸大ではなく画像を縮小または拡大して表示または印刷した場合にも、飛散状況を容易に把握することが可能な画像とすることができる。なお、同心円状の目盛り132と放射状の目盛り134の両方を同時に描いてもよいが、いずれか一方のみであってもよく、画像の目的に応じて適宜選択することができる。また食用油の飛散源である鍋類を載置するための鍋類設置領域110が設けられていることにより、シート100を観察する際に、飛散状況をさらに容易に把握することが可能となる。
【0047】
また数値データは、例えば図8(a)に示すように距離に対する油適飛散率(面積率)を集計したり(半径方向の領域ごとに集計)、図8(b)に示すように角度に対する油適飛散率(面積率)を集計したり(円周方向の領域ごとに集計)することができる。これにより、油滴がどのくらいの距離まで飛散するものであるか、またどちらの方向により多く飛散するものであるかを、客観的かつ定量的に把握することが可能となる。これにより汚れに対する対策を立てたり、またキッチンの設計や改良に反映させたりすることができる。
【0048】
上記説明した如く、本実施形態にかかる油類飛散評価シート、油類飛散評価画像、油類飛散評価プログラム、および油類飛散評価方法によれば、数ミリグラムレベルの微小な油の飛散、付着量に対しても、視覚的かつ定量的に、しかも容易に飛散状況の分析・評価を行うことが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、コンロにおいて調理した際に飛散した油類の分析・評価を行うための油類飛散評価シート、油類飛散評価画像、油類飛散評価プログラム、および油類飛散評価方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 …シート(油類飛散評価シート)
110 …鍋類設置領域
114 …縮尺基準
120 …定型指標
130 …変色箇所
132 …同心円状の目盛り
134 …放射状の目盛り
140a …画面上の画像
140b …印刷した画像
200、240 …キッチン
210 …IHコンロ
220 …鍋類
250 …ガスコンロ
300 …評価システム
310 …カメラ
320 …コンピュータ
330 …油類飛散評価プログラム
332 …画像取得部
334 …前処理部
336 …二値化部
338 …領域分割部
340 …飛沫計数部
342 …境界線描画部
344 …出力部
350 …紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油類に反応して変色する指示薬を塗布または含有させたことを特徴とする油類飛散評価シート。
【請求項2】
当該油類飛散評価シートのほぼ中央に、油類の飛散源である鍋類を載置するための鍋類設置領域が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油類飛散評価シート。
【請求項3】
前記鍋類設置領域を中心にして、同心円状または放射状の目盛りが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の油類飛散評価シート。
【請求項4】
油類の飛散状態に基づく散点模様と、
油類の飛散源である鍋類の載置位置を中心にした同心円状または放射状の目盛りが描かれていることを特徴とする油類飛散評価画像。
【請求項5】
油類の飛散によって散点的に変色したシートを撮影した画像に対し、
所定の閾値で二値化する二値化部と、
前記画像を油類の飛散源である鍋類の載置位置を中心として半径方向または円周方向に複数の領域に分割する領域分割部と、
前記領域ごとに変色箇所を計数する油滴計数部とを備えることを特徴とする油類飛散評価プログラム。
【請求項6】
前記油滴計数部は、前記変色箇所を、前記画像の画素単位で計数することを特徴とする請求項5に記載の油類飛散評価プログラム。
【請求項7】
前記画像に前記複数の領域の境界線を描画する境界線描画部を備えることを特徴とする請求項5に記載の油類飛散評価プログラム。
【請求項8】
コンロに油類に反応して変色する指示薬を塗布または含有させた油類飛散評価シートを載置し、
前記油類飛散評価シートのほぼ中央に鍋類を載置し、
前記鍋類に油類を注入して調理行為を行うことにより油類を飛散させ、
飛散した油類によって散点的に変色した前記油類飛散評価シートを撮影し、
撮影した前記画像を所定の閾値で二値化し、
前記画像を前記鍋類の設置位置を中心として半径方向または円周方向に複数の領域に分割し、
前記領域ごとに変色した画素を計数することを特徴とする油類飛散評価方法。
【請求項9】
前記油類飛散評価シートに基準長さを示す定型指標を設け、
前記画像を複数の領域に分割する際に、前記定型指標の画像中の長さと該定型指標の既知の長さとを比較して、前記領域の半径方向の長さを決定することを特徴とする請求項8に記載の油類飛散評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230454(P2010−230454A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77716(P2009−77716)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】