説明

治療および美容適用のためのエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物

必要とする対象において、創傷治癒または結合組織再建を促進する方法および虚血を処置する方法が開示される。この方法は、創傷組織1cmあたり約10〜30μgのエリスロポイエチンと、創傷組織1cmあたり約100〜300μgのフィブロネクチンとを対象に局所投与し、それにより、対象において創傷治癒または結合組織再建を促進するか、または虚血を処置することを含む。エリスロポイエチンおよび/またはフィブロネクチンを含む単位投薬形態、医薬組成物、化粧用組成物、および配合物もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物に関し、より具体的には、限定されないが、治療および美容適用におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス(ECM)は、結合組織と呼ばれることが多く、細胞を取り囲み支える哺乳動物組織内に見出される複雑な構造的実体である。ECM生体分子の3つの主要な種類が、構造タンパク質(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)、特化したタンパク質(例えば、フィブリン、フィブロネクチンおよびラミニン)およびプロテオグリカン[例えば、グリコサミノグリカン(GAG)]である。
【0003】
コラーゲンは、皮膚の75パーセントまでを構成するものであり、身体の主要な構造タンパク質であり、主に線維芽細胞によって産生される。健全なコラーゲンのレベルが、若い健全な皮膚の滑らかな、ふっくらした外観にあると考えられる。しかしながら、皮膚における健全なコラーゲンの破壊、コラーゲン産生における低下(例えば、皮膚細胞の分裂速度の減速による)、ならびに、コラーゲン繊維およびエラスチン繊維の不完全な架橋は、ざ瘡、日光角化症、光線加齢皮膚、望まれないしわ、および、加齢皮膚の外観(例えば、たるみ、張りおよび肌触りの変化)を含めて、皮膚の様々な疾患および状態の発生を引き起こす。コラーゲン沈着もまた、創傷治癒および瘢痕形成のプロセスにおける中心的事象である。
【0004】
創傷治癒は、様々な細胞(例えば、ケラチノサイト、線維芽細胞および表皮微小血管内皮細胞)、増殖因子、サイトカインおよび媒介因子の間の相互作用によって媒介される複雑なプロセスである。このプロセスは、炎症、凝固、血管新生、コラーゲン沈着、肉芽組織の形成、上皮化および組織再構築を含む事象の繰り返しによって調節される。創傷治癒プロセスの期間中、様々な増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子および線維芽細胞増殖因子)が、創傷治癒を加速するために分泌される。健康な個体では、正常な創傷治癒プロセスは比較的短く、最適な速度で生じ、創傷のタイプおよびサイズに依存する。しかしながら、糖尿病または古典的皮膚疾患の患者では、創傷治癒が通常は遅くなるか、または、完全に損なわれさえし、結果として、慢性的な創傷が生じる。この損なわれたプロセスは、かなりの社会経済的影響を伴う大きな医療問題を表す。
【0005】
糖尿病は高血糖症によって引き起こされ、慢性的な創傷を含む多くの合併症を伴う慢性的疾患である。糖尿病により誘導される損傷した創傷治癒の根底にある細胞機構および分子機構は十分には理解されていない。非常に重要な役割を果たし得る1つの寄与因子が、不良な皮下血液供給である。高い血中グルコースは細胞の増殖を妨げ、新血管形成を低下させ、したがって、創傷治癒に関連する数多くの媒介因子、因子および補因子(例えば、増殖因子)のレベルの低下の一因となる。同様に、糖尿病においては、線維芽細胞は細胞外マトリックス(ECM)を産生することができず、ケラチノサイトは再上皮化を誘導することができない。さらに、低下したコラーゲン沈着、走化性、および、線維芽細胞増殖の阻害はすべて、糖尿病における創傷治癒の障害に関連し得る。
【0006】
切開、切除、手術後、圧迫潰瘍、および、急性または慢性的である火傷を含む皮膚の創傷治癒がこれまで、様々な研究者の注目を払っている。多くの報告では、種々の技術および材料が、糖尿病患者の創傷を含めて、創傷の治癒、ならびに、局所的創傷治療、手術、皮膚移植、壊死組織切除、局所的抗生物質および血管再建を加速させるために提案されている。さらに、線維芽細胞増殖因子(FGF)[Fu他、Chin Med J Engl(2002)、115(3):331〜5]、血小板由来増殖因子(PDGF)[Steed、J Vasc Surg(1995)、21(1):71〜8]、血小板ゲル[Crovetti他、Transfus Apher Sci(2004)、30(2):145〜51]および酸性化亜硝酸塩[WellerおよびFinnen、Nitric Oxide(2006)、15(4):395〜9]を含む多種多様な薬剤の全身的処置および局所的適用がこれまで、創傷治癒を加速させるための試みにおいて意図されている。
【0007】
エリスロポイエチン(EPO)は、骨髄における赤血球前駆体のためのサイトカインである糖タンパク質ホルモンであり、赤血球の産生を調節するホルモンである。EPO受容体が、内皮細胞、線維芽細胞、毛包細胞およびケラチノサイトを含めて、多くの細胞の表面に存在しており、したがって、EPOは、内皮細胞の増殖、血管形成、細胞外マトリックスの産生、および、再上皮化を誘導するために直接機能する。EPOが内皮細胞の有糸分裂および運動性を刺激できることが、血管新生および創傷治癒において重要であり得る[Buemi他、Acta Derm Venereol(2002)、82(6):411〜7]。
【0008】
フィブロネクチン(FN)は、細胞膜のインテグリンおよび細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブリン、エラスチンおよびヘパリン)と結合する高分子量の糖タンパク質である。FNは、恒常性および食作用に寄与すること、感染の抑制を助けること、線維芽細胞の遊走および増殖を促進すること、肉芽組織の上皮化および組織化を高めることによって、そして、最終的には、瘢痕組織の引張り強さを変更することによって創傷治癒に関与する[Grinnell、J Cell Biochem(1984)、26(2):107〜16]。血漿FNが糖尿病性創傷部では分解されることが明らかにされており[WyscockiおよびGrinnell、Lab Invest(1990)、63(6):825〜31]、また、糖尿病ラットにおける損なわれた創傷治癒が、創傷部位での血漿フィブロネクチンの減少によって特徴づけられた[Qiu他、J Surg Res(2007)、138(1):64〜70]。
【0009】
EPOまたはFNを使用して創傷を処置するための様々な取り組み、および、美容適用におけるそれらの他の使用が試みられており、一部が下記においてまとめられる。
【0010】
創傷処置のためのEPOの投与が糖尿病マウスの創傷モデルにおいてGaleano他によって記載されている[Galeano他、Diabetes(2004)、53(9):2509〜17]。Galeano他の教示によれば、組換えヒトエリスロポイエチン(rHuEPO)の糖尿病マウスへの注射は、損なわれた創傷治癒を改善し、創傷破壊強度を増大させた。
【0011】
米国特許第6458889号は、架橋されたマトリックスをもたらす反応にそれぞれが関与する少なくとも3つの成分(ポリ求核性成分、ポリ親電子性成分および求核性成分)を含有する架橋可能なポリマー組成物を開示する。例えば、この架橋可能なポリマー組成物は、組織の再成長を促進するために創傷内に適用することができる。架橋可能な組成物の成分は、架橋により、生体適合性で、非免疫原性のマトリックスが生じるように選択される。米国特許第6458889号の教示によれば、サイトカイン(例えば、EPO)を、創傷の処置を助けるためにコラーゲン−ポリマーコンジュゲートとともに組み込むことができる。加えて、天然に存在する親水性ポリマー(例えば、フィブロネクチン)およびサイトカイン(例えば、エリスロポイエチン)を、瘢痕およびしわの処置を助けるためにコラーゲン−ポリマーコンジュゲートとともに組み込むことができる。
【0012】
創傷処置のためのFNの局所適用が糖尿病ラットモデルにおいてQiu他によって記載されている[Qiu他、上掲]。Qiu他の教示によれば、FNの局所適用は創傷閉鎖を著しく高めた。さらに、FN処置の創傷部は、増大した線維芽細胞血管化、コラーゲン再生および上皮化を示した。
【0013】
PCT公開番号WO07055760は、創傷治癒および皮膚再生を促進するためのタンパク質組成物を開示する。このタンパク質組成物は、ラクトフェリンおよびアルカリホスファターゼ(例えば、胎盤アルカリホスファターゼ)の組合せを含み、また、細胞の増殖および生存を促進することができるさらなる創傷修復促進剤(例えば、フィブロネクチン)を含むことができる。PCT公開番号WO07055760の教示によれば、このタンパク質組成物は、注射によって、または、他の好適な手段によって局所投与することができ、また、皮膚の質を改善することに加えて、皮膚における炎症および微生物感染を低下させることにおいても効果的であり得る。
【0014】
米国特許出願公開第20070014777号は、創傷治癒、皮膚再生を促進するための、また、皮膚の質を高めるためのタンパク質組成物を開示する。米国特許出願公開第20070014777号の教示によれば、それぞれが異なるスペクトルの細胞作用を有し、かつ、他のタンパク質と協同で創傷治癒プロセスに正の影響を及ぼす4つのタンパク質[α(1)−アンチトリプシン(AT)、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(PALP)、ヒトトランスフェリン(TF)およびα−1−酸性糖タンパク質(AGP)]が選択された。創傷の性質、サイズおよび場所に依存して、これらのタンパク質に由来する組成物は、皮膚再生、皮膚の質および創傷治癒プロセスに正の影響を及ぼすことが知られている他の薬剤(FNまたはEPOを含む)によって強化され得る。
【0015】
米国特許出願公開第20030068297号は、哺乳動物の皮膚を修復し、若返らせるための組成物を開示する。これらの組成物は、皮膚細胞の成長速度を増大させるための細胞成長強化剤(例えば、EPOまたはFN)、皮膚細胞の対数期成長を支えるための栄養物(例えば、炭水化物)、細胞外マトリックスタンパク質(例えば、インテグリン)、細胞外マトリックスタンパク質の刺激剤(例えば、接着タンパク質)、および、浸透強化剤(例えば、鉱油)を含有する。米国特許出願公開第20030068297号の教示によれば、各群の少なくとも1つの成分から、皮膚修復組成物は構成されなければならない。これらの組成物は、皮膚におけるしわを修復するために、毛の成長を生じさせるために、また、傷(日焼け、切り傷、擦り傷または表皮剥離)を受けている皮膚の治癒を促進するために記載される。
【0016】
米国特許出願公開第20040265268号は、哺乳動物の皮膚を修復し、若返らせるための組成物を開示する。これらの組成物は、皮膚細胞の成長速度を増大させるための細胞成長強化剤(例えば、EPOまたはFN)、細胞成長強化剤の刺激剤(例えば、アスコルビン酸)、皮膚細胞の対数期成長を支えるための栄養物(例えば、炭水化物)、成長している細胞および高まった細胞活性を保護するための細胞保護剤(例えば、インスリン)、若返った細胞を保護するための抗酸化剤(例えば、ビタミンC)、細胞外マトリックスタンパク質(例えば、接着分子)、細胞外マトリックスタンパク質の刺激剤(例えば、接着タンパク質、FN)、ならびに、浸透強化剤(例えば、リポタンパク質)を含有する。米国特許出願公開第20040265268号の教示によれば、各群の少なくとも1つの成分から、皮膚修復組成物は構成されなければならない。これらの組成物は、皮膚におけるしわを修復するために、毛の成長を生じさせるために、また、傷(日焼け、切り傷、擦り傷または表皮剥離)を受けている皮膚の治癒を促進するために記載される。
【発明の概要】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、創傷治癒または結合組織再建をその必要性のある対象において促進する方法が提供され、この方法は、創傷組織1cmあたり約10〜30μgのエリスロポイエチンと、創傷組織1cmあたり約100〜300μgのフィブロネクチンとを対象に局所投与し、それにより、対象において創傷治癒または結合組織再建を促進することを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、虚血をその必要性のある対象において処置する方法が提供され、この方法は、組織1cmあたり約10〜30μgのエリスロポイエチンと、組織1cmあたり約100〜300μgのフィブロネクチンとを対象に局所投与し、それにより、対象において虚血を処置することを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、結合組織はコラーゲンを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンの用量が組織1cmあたり約20μgである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フィブロネクチンの用量が組織1cmあたり約200μgである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与が1日に少なくとも1回行われる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法はさらに、細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子を投与することを含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が糖尿病によって与えられる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が慢性創傷である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が急性創傷である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が、潰瘍、火傷および手術創傷からなる群から選択される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象がヒトである。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、結合組織再建の促進が皮膚の状態または疾患において行われる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、皮膚の状態または疾患が、たるみ、微細な線、しわ、老人斑、光損傷、斑点、乾燥皮膚、ざ瘡、ただれ、およびいぼからなる群から選択される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの投与が同時に行われる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンが共配合物に存在する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンが別個の配合物に存在する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、エリスロポイエチンを約10〜30μgの用量で含む単位投薬形態物が提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、フィブロネクチンを約100〜300μgの用量で含む単位投薬形態物が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、エリスロポイエチンを約10〜30μgの用量で含み、かつ、フィブロネクチンを約100〜300μgの用量で含む単位投薬形態物が提供される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチン、および、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、および、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチンおよび約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、ならびに、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単位投薬形態物が、ガーゼ付き絆創膏(adhesive bandage)、非接着性包帯、ワイプ、ガーゼおよびパッドからなる群から選択される形態である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤が、クリーム、ゲル、スプレー剤、ローション、軟膏、オイルおよび洗浄液からなる群から選択される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単位投薬形態物または医薬組成物はさらに、細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子を含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチン、および、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、および、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチンおよび約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、ならびに、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物が提供される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤が、クリーム、ゲル、スプレー剤、ローション、軟膏、オイルおよび洗浄液からなる群から選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化粧用組成物はさらに、細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、創傷治癒を促進するための単位投薬形態物または医薬組成物の使用が提供される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が慢性創傷である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が急性創傷である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が糖尿病によって与えられる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、創傷が、潰瘍、火傷および手術創傷からなる群から選択される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、虚血を処置するための単位投薬形態物または医薬組成物の使用が提供される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、(i)有効成分としてのエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン(エリスロポイエチンの濃度が約10〜30μg/mLであり、フィブロネクチンの濃度が約100〜300μg/mLである)、(ii)約0.20%のメチルパラベン、(iii)約9%のLaurethおよびイソパラフィンおよびポリアクリルアミド、(iv)約12%の脱イオン水、ならびに、(v)100%までのリン酸塩緩衝液を含む配合物が提供される。
【0055】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、糖尿病ラットにおける創傷治癒の定量的評価および完全な創傷閉鎖までの時間を示す線グラフである。グラフは、ビヒクル単独による(四角によって示される)、低用量のエリスロポイエチン(EPO)を含有するクリームによる(丸によって示される)、または、高用量のEPOを含有するクリームによる(三角によって示される)処置の開始後2、4、6、8、10および12日での糖尿病ラットにおける創傷治癒割合を示す。注目すべきことに、これらの結果は、創傷治癒の間での大きい差を、低用量のEPOおよびコントロールラットと比較して、高用量のEPOを含有するクリームにより処置されたラットにおいて示す。
【図2】図2は、糖尿病ラットの創傷部における微小血管密度(MVD)を処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、CD31の免疫組織化学染色を使用する、ビヒクル(左側の柱)、低用量のEPOを含有するクリーム(中央の柱)、または、高用量のEPOを含有するクリーム(右側の柱)により処置されたラットの創傷部からの組織サンプルにおける毛細血管の評価を示す。
【図3】図3は、糖尿病ラットの創傷部における血管内皮増殖因子(VEGF)のレベルを処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、ビヒクル(左側の柱)、低用量のEPOを含有するクリーム(中央の柱)、または、高用量のEPOを含有するクリーム(右側の柱)により処置されたラットの創傷部からの組織サンプルにおけるVEGF含有量を示す。
【図4】図4は、糖尿病ラットの創傷部におけるヒドロキシプロリン(HP)のレベルを処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、ビヒクル(左側の柱)、低用量のEPOを含有するクリーム(中央の柱)、または、高用量のEPOを含有するクリーム(右側の柱)により処置されたラットの創傷部からの組織サンプルにおけるHP含有量を示す。
【図5】図5A〜図5Cは、実験0日目での糖尿病CD1ヌードマウスを示す写真である。図5Aは、2つの全層皮膚創傷(創傷あたり直径がおよそ20mm)がマウスの背側の皮膚に生じている実験0日目での3匹の代表的なマウスを示す。図5Bは、エリスロポイエチン(EPO)およびフィブロネクチン(FN)を含有するクリーム(A/Bとして示される;その左側)、または、基礎クリーム(ビヒクル;その右側)により処置される実験0日目での代表的なマウスを示す。図5Cは、EPO/FNを含有するクリーム(A/Bとして示される)により処置される実験0日目での代表的なマウスを示す。
【図6】図6は、糖尿病CD1ヌードマウスにおける創傷治癒の定量的評価および完全な創傷閉鎖までの時間を示す線グラフである。グラフは、ビヒクル単独による(四角によって示される)、EPOのみを含有するクリームによる(丸によって示される)、FNのみを含有するクリームによる(逆三角によって示される)、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリームによる(三角によって示される)処置の開始後2、4、6、8、10および12日での糖尿病CD1ヌードマウスにおける創傷治癒割合を示す。注目すべきことに、これらの結果は、創傷治癒の間での大きい差を、EPO、FNおよびコントロールのマウスと比較して、EPO/FNの併用により処置されたマウスにおいて示す。
【図7】図7A〜図7Dは、実験4日目での糖尿病CD1ヌードマウスを示す写真である。図7Aは、背側の皮膚創傷が、FNのみを含有するクリーム(中央のマウス)、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(それ以外の2匹のマウス)により処置されている実験4日目での3匹の代表的なマウスを示す。図7Bは、創傷がビヒクル(V)により処置されている実験4日目での代表的なマウスを示す。図7Cは、創傷が、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/B)により処置されている実験4日目での代表的なマウスを示す。図7Dは、背側の皮膚創傷が、FNのみを含有するクリーム(中央のマウス)、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(それ以外の2匹のマウス)により処置されている実験4日目での3匹の代表的なマウスを示す。マウスがA/Bによって表され(EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置され)、または、Aによって表され(EPOのみを含有するクリームにより処置され)、または、Bによって表され(FNのみを含有するクリームにより処置され)、または、Vによって表される(ビヒクルクリームにより処置される)。
【図8】図8A〜図8Gは、実験8日目での糖尿病CD1ヌードマウスを示す写真である。図8Aは、背側の皮膚創傷が、ビヒクル、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置されている実験8日目での3匹の代表的なマウスを示す。図8Bは、背側の皮膚創傷が、EPOのみを含有するクリーム(Aとして表される)、または、FNのみを含有するクリーム(Bとして表される)により処置されている実験8日目での3匹の代表的なマウスを示す。図8Cは、背側の皮膚創傷が、EPOのみを含有するクリーム(一番下のマウス)、FNのみを含有するクリーム(中央のマウス)、ならびに、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(一番上のマウス)により処置されている実験4日目での3匹の代表的なマウスを示す。図8Dは、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置される実験8日目での創傷部を示す。図8Eは、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置される実験8日目での創傷部を示す。図8Fは、ビヒクルによる処置と比較して、それぞれのマウスの背側の皮膚創傷が、EPOのみを含有するクリーム(Aとして表される)、または、FNのみを含有するクリーム(Bとして表される)により処置された実験8日目での2匹の代表的なマウスを示す。図8Gは、一方が、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/B)により処置され、他方がビヒクルにより処置される実験8日目での2匹のマウスの創傷部の間での比較を示す。
【図9】図9A〜図9Fは、実験12日目での糖尿病CD1ヌードマウスを示す写真である。図9Aは、背側の皮膚創傷が、ビヒクル、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置されている実験12日目での2匹の代表的なマウスの間での比較を示す。図9Bは、背側の皮膚創傷が、ビヒクル、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置されている実験12日目での2匹の代表的なマウスの間での比較を示す。図9Cは、ビヒクルクリームにより処置される実験12日目での創傷部を示す。図9Dは、EPOのみを含有するクリーム(Aとして表される)により処置される実験12日目での創傷部を示す。図9Eは、FNのみを含有するクリーム(Bとして表される)により処置される実験12日目での創傷部を示す。図9Fは、EPOおよびFNの両方を含有するクリーム(A/Bとして表される)により処置される実験12日目での創傷部を示す。
【図10】図10A〜図10Lは、糖尿病CD1ヌードマウスにおける創傷閉鎖を処置の1日目から12日目まで示す写真である。図10Aは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される0日目での創傷部を示す。図10Bは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される2日目での創傷部を示す。図10Cは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される4日目での創傷部を示す。図10Dは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される6日目での創傷部を示す。図10Eは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される8日目での創傷部を示す。図10Fは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される10日目での創傷部を示す。図10Gは、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置される12日目での創傷部を示す。図10Hは、ビヒクルクリームにより処置される0日目での創傷部を示す。図10Iは、ビヒクルクリームにより処置される4日目での創傷部を示す。図10Jは、ビヒクルクリームにより処置される6日目での創傷部を示す。図10Kは、ビヒクルクリームにより処置される8日目での創傷部を示す。図10Lは、ビヒクルクリームにより処置される12日目での創傷部を示す。
【図11】図11は、糖尿病マウスの創傷部における微小血管密度(MVD)を処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、CD31の免疫組織化学染色を使用する、ビヒクル、EPOのみを含有するクリーム、FNのみを含有するクリーム、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置されたマウスの創傷部からの組織サンプルにおける毛細血管の評価を示す。
【図12】図12は、糖尿病マウスの創傷部における血管内皮増殖因子(VEGF)のレベルを処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、ビヒクル、EPOのみを含有するクリーム、FNのみを含有するクリーム、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置されたマウスの創傷部からの組織サンプルにおけるVEGF含有量を示す。
【図13】図13は、糖尿病マウスの創傷部におけるヒドロキシプロリン(HP)のレベルを処置終了時において示す棒グラフである。グラフは、ビヒクル、EPOのみを含有するクリーム、FNのみを含有するクリーム、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリームにより処置されたマウスの創傷部からの組織サンプルにおけるHP含有量を示す。
【図14】図14A〜図14Bは、HEMCをEPOによりインビトロ刺激した後のβ−1インテグリンの発現レベルを示す。図14Aは、増大する用量のEPO(0.01、0.1および1μg/mL/日)により3日間連続して処理された初代ヒト上皮微小血管細胞(HEMC)を示す。3日目が終了したとき、HEMCをウエスタンブロットによってβ−1インテグリンの発現について調べた。図14Bはウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示す。
【図15A】図15Aは、細胞増殖に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図15Aは、初代ケラチノサイト(KRCT)の増殖に対するEPOの影響を示す。
【図15B】図15Bは、細胞増殖に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図15Bは、初代ケラチノサイトの増殖に対するEPOおよびFNの影響を示す(フィブロネクチン被覆)。
【図16A】図16Aは、SOD活性に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図16Aは、初代ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)および成人皮膚のケラチノサイト(KRCT)におけるSOD活性に対するEPOの影響を示す(プレートがFNにより被覆されなかった)。
【図16B】図16Bは、SOD活性に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図16Bは、NHDFおよびKRCTにおけるSOD活性に対するEPOおよびFNの影響を示す(プレートがFNにより被覆された)。
【図17A】図17Aは、アクアポリン−3の発現に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図17Aは、NHDFおよびKRCTにおけるAQP3発現に対するEPOの影響を示す(プレートがFNにより被覆されなかった)。
【図17B】図17Bは、アクアポリン−3の発現に対する(示されるように)FNの存在下または非存在下でのEPOの影響を示す。図17Bは、NHDFおよびKRCTにおけるAQP3発現に対するEPOの影響を示す(プレートがFNにより被覆された)。
【図18】図18A〜図18Bは、ビヒクルを含有するクリーム、低いEPO濃度(5μg/mL)を含有するクリーム、および、高いEPO濃度(25μg/mL)を含有するクリームにより局所的に処置された創傷組織におけるアポトーシス促進タンパク質Baxおよび抗アポトーシスタンパク質Bcl−xLの発現を示す。各ラット群から無作為に選ばれた6つの創傷部から得られる創傷化組織由来のタンパク質(40μg/創傷)をウエスタン免疫ブロットのために負荷した。図18Aは、Bax発現(黒棒)またはBcl−xL発現(白棒)のどちらかの任意設定単位(平均±S.E.M.)を示す。代表的なブロットが示される。図18Bは、BaxおよびBcl−xLの平均発現の間での比率(Bax/Bcl−xL)によって求められるようなアポトーシス感受性を示す。はP<0.05を示し、**はP<0.001を示すことに留意すること;ビヒクル群との有意な差。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物に関し、より具体的には、限定されないが、治療および美容適用におけるその使用に関する。
【0058】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0059】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0060】
本発明を実施に移しているとき、本発明者は、局所適用されたエリスロポイエチン(EPO)およびフィブロネクチン(FN)の特定の投薬量が創傷治癒を著しく加速させる一方で、細胞外マトリックスの産生および再上皮化を含めた血管形成を促進することを発見している。これらの発見は、本発明の教示が、創傷治癒および結合組織再建を促進する際に使用されることを示唆する。
【0061】
以下、および、下記の実施例の節において示されるように、本発明者は、特定の濃度のEPOおよびFNが、創傷治癒、および、コラーゲン合成の促進に望ましいことを、労力を要する実験から発見している。本発明者は、EPOおよびFNが、血管形成、細胞外マトリックス(コラーゲン)沈着および創傷治癒を促進するために、おそらくは(しかし、必ずではないが)、β1−インテグリン経路を介して(以下の実施例3を参照のこと)、または、エリスロポイエチン受容体経路を介して相乗的に作用することを具体的に示している。したがって、本発明では、創傷治癒、虚血の処置、および、結合組織再建の促進のために、EPOおよびFNのこれらの特定の投薬量の使用が想定される。
【0062】
図1および図6に示されるように、また、下記の実施例の節の実施例1および2において記載されるように、EPO含有クリームまたはFN含有クリームの局所適用は創傷治癒を糖尿病ラットおよび糖尿病マウスにおいて著しく加速させた。糖尿病ラットにおいて、著しい創傷治癒が処置開始後6日もの早くに記録され、また、完全な創傷閉鎖がEPO処置開始後12日で記録された(図1を参照のこと)。しかしながら、EPOおよびFNの両方を含有するクリームの局所適用は創傷閉鎖を糖尿病マウスにおいて処置開始後4日もの早くで著しく加速させ、創傷閉鎖を処置の8日目にもたらした(図6および図10A〜Lを参照のこと)。さらに、EPOを含有するクリーム、または、EPOおよびFNの両方を含有するクリームの局所適用は、微小血管密度(図2および11を参照のこと)および血管内皮増殖因子のレベル(図3および12を参照のこと)を糖尿病ラットおよび糖尿病マウスにおいてそれぞれ著しく増大させた。加えて、図4および13に示されるように、また、実施例1および2において記載されるように、EPOのみを含有するクリーム、または、FNのみを含有するクリームの局所適用は、結合組織再建における増大をもたらした(図4および13)。しかしながら、EPOおよびFNの両方を含有するクリームの局所適用は、EPOのみまたはFNのみを含有するクリームによる処置と比較して2倍、また、ビヒクルによる処置と比較して5倍、結合組織再建を著しく加速させた(図13を参照のこと)。まとめると、これらの結果は、血管形成、結合組織再建において、また、創傷治癒において、本研究によって発見されたそのような投薬量でのEPOおよびFNの価値を実証している。
【0063】
したがって、本発明の1つの態様によれば、創傷治癒および結合組織再建をその必要性のある対象において促進する方法が提供される。
【0064】
本明細書中で使用される表現「結合組織」は、細胞外マトリックス(ECM)、具体的にはコラーゲンが主要な部分を形成する動物組織であって、他の身体組織および身体部分を支え、互いに結合するために機能する組織を示す。典型的な例が皮膚および内部器官である。
【0065】
本明細書中で使用される表現「結合組織再建」は、損傷したまたは不健全な組織に対する、美学、構造、機能および生理学の回復を示す。この再建は再生治癒につながる。さらに、結合組織再建は、健全な組織でのコラーゲン産生における増大を示す。例示的な実施形態において、再建は組織衰退における停止をもたらす。他の例示的な実施形態において、結合組織再建は線維症がない。
【0066】
本明細書中で使用される表現「損傷したまたは不健全な組織」は、健全な機能的組織からの逸脱を示す。皮膚の場合、健全な皮膚よりも弱く、弾力性がなく、傷害を受けやすい皮膚。不健全なまたは損傷した皮膚の構造は、健全な皮膚の構造よりも劣っている(例えば、真皮および表皮はより少ない細胞およびコラーゲンを含有する)。不健全な皮膚を処置するための1つの目的が、皮膚のさらなる衰退を低下させ、その機能を正常なまたは正常に近いレベルにまで回復させることである。
【0067】
本明細書中で使用される表現「健全な組織」は、強く、弾力性があり、滑らかで、ふっくらしている皮膚を示す。健全な皮膚を処置するための1つの目的が、加齢または環境ストレス(過度な日光および微生物感染を含む)によって誘導される皮膚の衰退を妨げることである。
【0068】
結合組織に関連しての用語「促進する」は、皮膚細胞(例えば、線維芽細胞およびケラチノサイト)によるコラーゲンの産生を、組織再生を可能にする様式で増大させるプロセスを示す。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、促進するとは、組織再生における少なくとも約10%、20%、50%、80%の増大、または、組織分解における少なくとも約10%、20%、50%、80%の阻止を示す。当業者は、様々な方法論およびアッセイが、組織再生の促進を評価するために使用できること、また、同様に、様々な方法論およびアッセイが、組織分解の阻止を評価するために使用され得ることを理解する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態の組成物が、老化する皮膚、過度な日光にさらされた皮膚(例えば、光老化または光損傷した皮膚)、老人斑、望ましくないしわ、微細な線、老化した皮膚の外観(たるみ、張りおよび肌触りにおける変化)、斑点、ストレスを受けた皮膚、荒れた皮膚、乾燥皮膚、蜂巣炎、炎症を起こした皮膚、瘢痕、垂れ下がった唇、ざ瘡、光線角化症(これらに限定されない)を含めて、多くの皮膚状態および皮膚疾患において結合組織再建を促進するために想定される。
【0070】
本明細書中で使用される用語「創傷(傷)」は、広義には、様々な特徴を伴って、様々な様式のいずれか1つで開始される皮膚および皮下組織ならびに内部器官に対する傷害(例えば、長期間にわたる床上安静から生じる床ずれ、外傷によって誘導される傷、外科的手法の間またはその後で受けた傷など)を示す。例示的な例には、挫傷、擦り傷、火傷、日焼け傷、切開傷、切除傷、手術傷、壊死性筋膜炎、潰瘍、静脈うっ血潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、アフタ性潰瘍、圧迫潰瘍、瘢痕、円形脱毛症、皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ベルロック皮膚炎、おむつ皮膚炎、異汗性皮膚炎、乾癬、湿疹、紅斑、いぼ、肛門ゆうぜい、血管腫、サクランボ色血管腫、足白癬、非定型母斑、基底細胞ガン、ベイトマン紫斑病、水疱性類天疱瘡、カンジダ症、耳輪軟骨皮膚炎、クラーク母斑、口辺ヘルペス、コンジローム、嚢腫、ダリエ病、皮膚線維腫、円板状紅斑性狼瘡、貨幣状湿疹、アトピー性湿疹、異汗性湿疹、手湿疹、多形性結節性紅斑、フォーダイス状態、項部ケロイド状毛包炎、毛包炎、環状肉芽腫、グロヴァー病、紅色汗疹、単純ヘルペス、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、化膿性汗腺炎、じんま疹、多汗症、魚鱗癬、膿痂疹、毛孔角化症、ケロイド、角化棘細胞腫、扁平苔癬、扁平苔癬様角化症、慢性単純性苔癬、硬化性苔癬、リンパ腫様丘疹症、皮膚の狼瘡、ライム病、線状苔癬、粘液様嚢胞、菌状息肉腫、伝染性軟属腫、母斑、爪真菌、糖尿病性リポイド類壊死症、貨幣状皮膚炎、爪甲層状分裂症、爪甲真菌症、苔癬状ひこう疹、バラ色ひこう疹、毛孔性紅色ひこう疹、足底いぼ、ウルシ(Poison ivy、Poison Oak)、汗疱、髭毛部偽性毛嚢炎、肛門そう痒症および白色ひこう疹が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
創傷(傷)は典型的には、傷の深さに依存して、4段階のうちの1つに分類される:(i)I度:上皮に限定される傷;(ii)II度:真皮内に及ぶ傷;(iii)III度:皮下組織内に及ぶ傷;および(iv)IV度(または全層傷):骨が露出する傷(例えば、骨性圧覚点、例えば、大転子または仙骨)。
【0072】
本明細書中で使用される用語「中間層創傷」は、I度〜III度を包含する傷を示す;中間層創傷の例には、火傷、床ずれ、静脈うっ血潰瘍および糖尿病性潰瘍が含まれる。
【0073】
本明細書中で使用される用語「深部創傷」は、III度の傷およびIV度の傷の両方を含むと意図される。
【0074】
本明細書中で使用される用語「慢性創傷」は、30日以内に治癒しない傷を示す。
【0075】
創傷に関しての用語「治癒する」は、創傷を、例えば、瘢痕形成などによって修復するプロセスを示す(例示的な実施形態において、治癒するとは線維性組織の形成がない)。
【0076】
具体的な実施形態において、本発明のいくつかの実施形態の組成物は治癒プロセスを促進し、すなわち、加速する。
【0077】
表現「皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速する」は、創傷収縮の肉芽組織の形成の誘導、および/または、上皮化の誘導(すなわち、新しい細胞が上皮において生じること)のどちらかを示す。創傷治癒は便宜上、縮小する創傷面積によって測定される。
【0078】
本発明では、深部創傷および慢性創傷を含めて、すべての創傷タイプを処置することが意図される。
【0079】
本発明者はまた、述べられた組成物が、虚血を、例えば、傷を受けた組織において血管形成を促進することによって処置するために使用され得ることを発見していることが理解される。
【0080】
本明細書中で使用される用語「虚血」は、動脈血液の流入の少なくとも部分的な障害に起因する限局性の組織貧血を示す。虚血に関連する組織損傷の例示的な例には、組織への低下したまたは中断された血流の結果としての皮膚組織の損傷および死(例えば、創傷)が含まれる。
【0081】
本明細書中で使用される用語「処置する」は、虚血状態の有害な影響を、例えば、灌流を高めることなどによって防止すること、治療すること、逆転させること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、または停止させることを示す。当業者は、様々な方法論およびアッセイが、状態の発生を評価するために使用できること、また、同様に、様々な方法論およびアッセイが、状態の軽減、寛解または退縮を評価するために使用され得ることを理解する。
【0082】
処置は日常的な実験によって評価することができ、例えば、下記の実施例の節において記載される方法などによって評価することができる。組織学的および機能的な基準と同様に結果の測定基準(例えば、灌流および生存)を、虚血状態を処置する際に最大の治療的価値を有する細胞の数において最適な効率に近づくために、種々のパラメータを変化させることの効力を評価するために用いることができる。罹患組織における灌流を求めるために定量化され得る当該技術分野で知られているさらなるパラメータは、血管造影法およびMRI、ならびに、臨床パラメータ(例えば、罹患区域における組織壊死、虚血区域における組織潰瘍化、ならびに、指および/または手足の切断の程度など)である。
【0083】
創傷治癒に関連して、「促進する」は、創傷治癒を、その処置を可能にする様式で許容または支援することができることを示す。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、促進するとは、治癒を達成するために要する時間における少なくとも約10%、20%、50%、80%の低下、または、創傷閉鎖における少なくとも約10%、20%、50%、80%の増大を示す。
【0084】
本明細書中で使用される用語「対象」は、どのような段階および/または程度であっても、組織損傷を経験するか、または経験することがあるか、あるいは、創傷または虚血に苦しむ任意の哺乳動物(例えば、ヒトまたは飼育動物)(任意の年齢の雌雄(男女))を示す。
【0085】
述べられたように、本発明のこの態様による方法は、示された投薬量のEPOおよびFNを対象に局所投与することによって達成される。
【0086】
本明細書中で使用される用語「エリスロポイエチン」は、哺乳動物(例えば、ヒト)のエリスロポイエチンタンパク質(交換可能に、ポリペプチドとともに使用される)またはその模倣体を示す(例えば、GenBankアクセション番号NP_000790に示されるもの)。エリスロポイエチンは、組換えDNA技術または固相技術を使用して合成することができる。エリスロポイエチンはまた市販されている(例えば、Cytolab/Peprotech、Rehovot、イスラエル;Arenesp、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国;およびEpogen、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国、Bristrol−Meyers Squibb、RocheおよびSanofi−Aventis)。エリスロポイエチンは、完全な糖タンパク質として、または、結合した糖を欠くタンパク質サブユニットのみとして使用することができる。本発明のエリスロポイエチンは、臨床適用のために使用されるので、好ましくは無菌であるか、または、考えられる混入因子(例えば、細菌または細菌成分)が、例えばフィルタによって除かれ得る。
【0087】
本明細書中で使用される用語「フィブロネクチン」は、哺乳動物(例えば、ヒト)のフィブロネクチンタンパク質(交換可能に、ポリペプチドとともに使用される)またはその模倣体を示す(例えば、GenBankアクセション番号NP_002017に示されるもの)。フィブロネクチンは、組換えDNA技術または固相技術を使用して合成することができる。フィブロネクチンはまた市販されている(例えば、Chemicon International Inc.、Temecula、CA、アメリカ合衆国)。本発明のフィブロネクチンは、臨床適用のために使用されるので、好ましくは無菌であるか、または、考えられる混入因子(例えば、細菌または細菌成分)が、例えばフィルタによって除かれ得る。
【0088】
模倣体の組成物が使用されるとき、FNおよびEPOの投薬量は、例えば、モル価に従うなどして較正されなければならないことが理解される。そのような較正は、当業者には日常的な計算である。
【0089】
本発明の医薬組成物または化粧用組成物は、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンを共配合物(例えば、さらには下記の実施例2で提供される共配合物)において、または、2つの別個の組成物において含むことができる。
【0090】
本明細書中で使用される表現「局所投与する」は、本発明の組成物を身体の表面に、すなわち、皮膚、頭皮、毛、爪などに、好ましくは、損傷を受けた組織(例えば、皮膚)の表面、創傷部、または、虚血組織の表面に塗布または展開することを示す。共配合されていないとき、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの投与は、同時に、または、連続して行うことができる。
【0091】
本発明の教示に従って適用されるエリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの用量は変化し得ることが理解される。したがって、エリスロポイエチンは、処置される組織損傷または組織創傷の重篤度に依存して、組織1cmあたり10〜30μgの間での用量で投与することができる。1つの実施形態において、エリスロポイエチンの用量は組織1cmあたり15〜25μgの間である。別の実施形態において、エリスロポイエチンの用量は組織1cmあたり約20μgである。フィブロネクチンは、処置される組織損傷または組織創傷の重篤度に依存して、組織1cmあたり100〜300μgの間の用量で投与することができる。1つの実施形態において、フィブロネクチンの用量は組織1cmあたり150〜250μgの間である。別の実施形態において、フィブロネクチンの用量は組織1cmあたり約200μgである。
【0092】
同様に、虚血の処置についても、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの用量は変化し得る。エリスロポイエチンは、処置される虚血の重篤度に依存して、組織1cmあたり10〜30μgの間での用量で投与することができる。1つの実施形態において、エリスロポイエチンの用量は組織1cmあたり15〜25μgの間である。別の実施形態において、エリスロポイエチンの用量は組織1cmあたり約20μgである。フィブロネクチンは、処置される虚血に依存して、組織1cmあたり100〜300μgの間での用量で投与することができる。1つの実施形態において、フィブロネクチンの用量は組織1cmあたり150〜250μgの間である。別の実施形態において、フィブロネクチンの用量は組織1cmあたり約200μgである。
【0093】
本発明のエリスロポイエチンおよび/またはフィブロネクチンを含む組成物は、それ自体で、あるいは、医薬組成物または化粧用組成物において対象に投与することができる。
【0094】
本明細書中で使用される「医薬組成物または化粧用組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の調製物と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。組成物の目的は、対象に対する有効成分(例えば、EPOおよびFN)の投与を容易にすることである。
【0095】
本明細書中で使用される用語「有効成分」は、意図される生物学的効果(すなわち、創傷治癒を促進すること、結合組織再建、および虚血を処置すること)を担うエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物を示す。
【0096】
以降、交換可能に使用されうる表現「生理学的に許容されるキャリア」および表現「医薬的に許容されるキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された有効成分の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0097】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、本発明の有効成分の投与をさらに容易にするために組成物(医薬組成物または化粧用組成物)に添加される不活性な物質を示す。
【0098】
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0099】
組成物は単位投薬形態物として配合することができる。そのような形態物において、調製物は、適量の有効成分を含有する単位服用量物に、例えば単回投与のための単位服用量物に小分けされる。単位投薬形態物は、包装された調製物であり得、この場合、包装物は個別量の調製物を含有する(例えば、ガーゼ付き絆創膏、非接着性包帯、ワイプ、赤ちゃん用ウェットティシュ、ガーゼ、パッドおよび衛生用パッド)。
【0100】
本発明の教示による単位投薬形態物は、約10〜30μgの用量でのエリスロポイエチン、または、約100〜300μgの用量でのフィブロネクチン、または、約10〜30μgの用量でのエリスロポイエチンおよび約100〜300μgの用量でのフィブロネクチンの両方を含むことができる。1つの実施形態において、単位投薬形態物は、約15〜25μgの用量でのエリスロポイエチン、または、約150〜250μgの用量でのフィブロネクチン、または、約15〜25μgの用量でのエリスロポイエチンおよび約150〜250μgの用量でのフィブロネクチンの両方を含む。別の実施形態において、単位投薬形態物は、約20μgの用量でのエリスロポイエチン、または、約200μgの用量でのフィブロネクチン、または、約20μgの用量でのエリスロポイエチンおよび約200μgの用量でのフィブロネクチンの両方を含む。
【0101】
調製物の単位服用量物における活性な化合物の量は、具体的な適用に従って変化または調節することができる。
【0102】
本発明の組成物(例えば、医薬組成物または化粧用組成物)は、局所的様式で、例えば、組成物を患者の組織領域(例えば、創傷部)に対して直接に投与することによって適用することができる。組成物の好適な投与経路には、例えば、局所投与(例えば、角質性組織(例えば、皮膚、毛、爪、頭皮)に対して)、および、粘膜投与(例えば、経口投与、膣投与、眼投与)が含まれ得る。
【0103】
本発明の組成物はまた、有効成分(例えば、EPOおよびFN)と、生理学的に許容されるキャリアとを含む組成物を注射することによって適用することができる。局所投与のために、組成物は、創傷部、および/または、傷を受けた皮膚を取り囲む健全な皮膚、または、それらの両方に注射することができる。
【0104】
本発明の組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0105】
有効成分はまた、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン非含有水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0106】
本発明に従って使用される組成物は、調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容されるキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0107】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に鑑みて、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0108】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、(治療的に)効果的な量または用量は、最初はインビトロでアッセイから推定することができる。さらに、所望の濃度または滴定量を達成するために、用量は組織培養系または動物モデルにおいて配合することが可能である。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0109】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における、インビトロで標準的な薬学的手法によって、明らかにすることができる。これらのインビトロでの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照)。
【0110】
組織の状態の重篤度(例えば、組織損傷、創傷または虚血の面積、深さ、および程度)および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治癒が達成されるまで、または皮膚状態の縮小が達成されるまで続く。好ましくは、本発明の組成物は少なくとも1日につき1回投与される。
【0111】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0112】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、通知が添付されていることがあり、その通知は、ヒトまたは動物への投与用の組成物の形態の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に許容されるキャリア中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0113】
本発明の組成物はインビボで利用されるので、組成物は好ましくは高純度であり、かつ、潜在的に有害な混入物を実質的に含まず、例えば、少なくともNational Food(NF)規格であり、一般には少なくとも分析規格であり、好ましくは少なくとも医薬品規格である。所与の化合物が使用前に合成されなければならないという点では、そのような合成またはその後の精製は好ましくは、合成または精製手順の間に使用され得る何らかの潜在的に混入し得る毒性の薬剤を実質的に含まない生成物をもたらさなければならない。
【0114】
さらなる因子を本発明の組成物(すなわち、上記のエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン)に配合することができる。これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:細胞外マトリックス成分(例えば、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン)、増殖因子(例えば、FGF1、FGF2、IGF1、IGF2、PDGF、EGF、KGF、HGF、VEGF、SDF−1、GM−CSF、CSF、G−CSF、TGFα、TGFβ、NGFおよびECGF)、低酸素誘導因子(例えば、HIF−1αおよびHIF−1βならびにHIF−2)、ホルモン(例えば、インスリン、成長ホルモン(GH)、CRH、レプチン、プロラクチンおよびTSH)、血管形成因子(例えば、アンギオゲニンおよびアンギオポイエチン)、凝固および抗凝固因子[例えば、第I因子、第XIII因子、組織因子、カルシウム、vWF、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、フィブロネクチン、アンチトロンビン、ヘパリン、プラスミノーゲン、低分子量ヘパリン(Clixan)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2(PAI2)、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、α2−アンチプラスミンおよびプロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)]、サイトカイン(IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、ならびに、INF−α、INF−βおよびINF−γ)、ケモカイン(例えば、MCP−1またはCCL2)、酵素(例えば、エンドグリコシダーゼ、エキソグリコシダーゼ、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、デカルボキシラーゼ、ヒドラーゼ、コンドロイチナーゼ、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、ヒアルロニダーゼ、ケラタナーゼ、へパラナーゼ、へパラナーゼスプライス変化体、コラゲナーゼ、トリプシン、カタラーゼ)、神経伝達物質(例えば、アセチルコリンおよびモノアミン)、神経ペプチド(例えば、サブスタンスP)、ビタミン(例えば、D−ビオチン、塩化コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、D−パントテン酸、カルシウム塩、ピリドキサール.HCl、ピリドキシン.HCl、リボフラビン、チアミン.HCl、ビタミンB12、ビタミンE、
ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1〜6、ビタミンK、ビタミンAおよびビタミンPP)、炭水化物(例えば、単糖/二糖/多糖、これらには、グルコース、マンノース、マルトースおよびフルクトースが含まれる)、イオン、キレーター(例えば、Feキレーター、Caキレーター)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、ケルセチン、超酸化物スカベンジャー、スーパーオキシドジスムターゼ、H2O2スカベンジャー、フリーラジカルスカベンジャー、Feスカベンジャー)、脂肪酸(例えば、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸および非遊離脂肪酸、脂肪アルコール、リノール酸、オレイン酸およびリポ酸)、抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリンおよびテトラサイクリン)、鎮痛剤、麻酔剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、プロバイオティック剤、抗原虫剤、かゆみ止め剤、抗皮膚炎剤、制吐剤、抗炎症剤、抗高角質溶解剤、制汗剤、抗乾癬剤、抗脂漏剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸(例えば、必須アミノ酸および非必須アミノ酸(A〜Z)、特に、グルタミンおよびアルギニン)、塩(例えば、ピルビン酸塩および硫酸塩)、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム)、ステロイド(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲスタゲン、グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)、カテコールアミン(例えば、エピネフリンおよびノルエピネフリン)、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(例えば、プリンおよびピリミジン)、プロスタグランジン(例えば、プロスタグランジンE2)、ロイコトリエン、エリスロポイエチン(例えば、トロンボポイエチン)、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)、ヒドロキシアパタイト[例えば、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))]、ヘパトグロビン(Hp1−1、Hp2−2およびHp1−2)、スーパーオキシドジスムターゼ(例えば、SOD1/2/3)、一酸化窒素、一酸化窒素供与体(例えば、ニトロプルシド(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国))、グルタチオンペルオキシダーゼ、水和化合物(例えば、バソプレシン)、細胞(例えば、血小板)、細胞培地(例えば、M199、DMEM/F12、RPMI、Iscovs)、血清(例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清)、緩衝剤(例えば、HEPES、重炭酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、Tween)、消毒剤、薬草、果実抽出物、野菜抽出物(例えば、キャベツ、キュウリ)、花抽出物、植物抽出物、フラビノイド(例えば、ザクロ果汁)、香辛料、葉(例えば、緑茶、カモミール)、ポリフェノール(例えば、赤ワイン)、ハチミツ、レクチン、マイクロ粒子、ナノ粒子(リポソーム)、ミセル、炭酸カルシウム(CaCO、例えば、沈降炭酸カルシウム、粉砕/微粉化炭酸カルシウム、albacar、PCC、GCC)、方解石、石灰石、破砕大理石、粉砕大理石、石灰、チョーク(白亜、シャンパンチョーク、フレンチチョーク)、ならびに、補因子(例えば、BH4(テトラヒドロビオブテリン))。
【0115】
本発明の組成物はまた、水素、アルキル基、アリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボアミド基、スルホンアミド基、アミノアシル基、アミド基、アミン基、ニトロ基、有機セレン化合物、炭化水素および環式炭化水素を含有する成分、物質、要素および材料を含有することができる。
【0116】
本発明の組成物は、例えば、ベンゾールペルオキシド、血管収縮剤、血管拡張剤、サリチル酸、レチノイン酸、アゼライン酸、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、タンニン、ベンジリデンカンファーおよびその誘導体、αヒドロキシイス、界面活性剤などの物質と組み合わせることができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、有効成分(すなわち、本発明のEPOおよび/またはFN組成物)の安定性(例えば、プロテアーゼ活性に対する安定性)および/または溶解性(例えば、生物学的流体(例えば、血液、消化液)における溶解性)を保ち、一方で、それらの生物学的活性を保ち、かつ、その半減期を延ばすポリエチレングリコール(例えば、PEG、SE−PEG)にバイオコンジュゲート化することができる。
【0118】
本明細書に開示される薬剤の医薬的に効果的な量に加えて、本発明のこの態様の組成物はまた、皮膚科学的に許容されるキャリアを含む。
【0119】
表現「皮膚科学的に許容されるキャリア」は、皮膚(すなわち、角質性組織)への局所適用に好適であり、良好な審美的性質を有し、本発明の活性な薬剤および任意の他の成分との適合性を有し、かつ、哺乳動物における使用のために安全で、非毒性であるキャリアを示す。
【0120】
有効成分(例えば、本発明のエリスロポイエチンおよび/またはフィブロネクチン)の経皮吸収を高めるために、数多くの薬剤の1つまたは複数を組成物に加えることができ、そのような薬剤には、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン、アルコール、アセトン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の組成物において利用されるキャリアは多種多様な形態であり得る。これらには、エマルションキャリア(水中油型、油中水型、水中油中水型およびシリコーン中水中油型エマルションが含まれるが、これらに限定されない)、クリーム、軟膏、水溶液、ローション、石けん、ペースト、エマルション、ゲル、スプレーまたはエアロゾルが含まれるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、所与の成分は、組成物における成分の水溶性/分散性に依存して、水相または油/シリコーン相のどちらかに主として分布する。
【0122】
本発明によるエマルションは一般に、医薬的に有効な量の本明細書に開示される薬剤と、脂質または油とを含有する。脂質および油は、動物、植物または石油に由来することができ、天然または合成(すなわち、人工)であり得る。好適な乳化剤の例が、例えば、米国特許第3755560号(Dickert他に対して発行、1973年8月28日)、米国特許第4421769号(Dixon他に対して発行、1983年12月20日)、および、McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers(北アメリカ版、317頁〜324頁(1986年))に記載される(これらのそれぞれがその全体において参照によって全面的に組み込まれる)。
【0123】
エマルションはまた、角質性組織に適用したとき、泡立ちを最小限に抑えるための消泡剤を含有することができる。消泡剤には、そのような使用について当該技術分野で知られている高分子量シリコーンおよび他の物質が含まれる。
【0124】
好適なエマルションは、所望される生成物形態に依存して、多種多様な粘度を有することができる。
【0125】
水中油型エマルションを構成する好適なキャリアの例が、米国特許第5073371号(Turner,D.J.他、1991年12月17日発行)および米国特許第5073372号(Turner,D.J.他、1991年12月17日発行)に記載される(これらのそれぞれがその全体において参照によって全面的に組み込まれる)。構造化剤、親水性界面活性剤および水を含有する特に好ましい水中油型エマルションが本明細書中下記で詳しく記載される。
【0126】
好ましい水中油型エマルションは、液晶性のゲルネットワーク構造の形成を助けるための構造化剤を含む。理論によって限定されることはないが、構造化剤は、組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を組成物に与えることを助けると考えられる。構造化剤はまた、乳化剤または界面活性剤として機能することができる。
【0127】
多種多様なアニオン性界面活性剤もまた本明細書において有用である。例えば、米国特許第3929678号(Laughlin他、1975年12月30日発行)を参照のこと(これはその全体において参照によって全面的に組み込まれる)。加えて、両性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤もまた本明細書において有用である。
【0128】
本発明の組成物は、下記のように、溶液、ローション、スプレー、クリーム、軟膏、膏薬、ゲル、オイル、洗浄液などを含めて、皮膚適用のために製薬業界によって利用される様々な形態のいずれかで配合することができる。
【0129】
加えて、本発明の組成物は様々な化粧品において補助剤として使用することができる。化粧品は、ヒト身体の外観または香りを高めるか、または保護するために使用される物質である。化粧品の例には、スキンケアクリーム、ローション、粉末剤、香水、口紅、指爪および足指爪のつや出し剤、眼および顔の化粧品、ひげ剃り後用ローション、マニキュア、パーマ、ひげ剃り用のフォームおよびクリーム、髪染め剤、ヘアスプレーおよび整髪用ジェル、脱臭剤、ベビー用品、浴用オイル、泡立て浴剤、浴用塩、バター状物質、ならびに、多くの他のタイプの製品が含まれる。
【0130】
本発明の組成物は、処置された皮膚区域に留まるために十分な粘性で配合することができ、容易に蒸発せず、および/または、水ですすぐことによって容易に除かれず、むしろ、石けん、洗剤および/またはシャンプーの助けをかりて除去可能である。
【0131】
そのような性質を有する組成物を調製するための方法が当業者には広く知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990、上掲)、および、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(第6版、Williams&Wilkins、1995)に詳しく記載される。
【0132】
本発明の局所用組成物(ローションおよびクリームが含まれるが、これらに限定されない)は、皮膚科学的に許容される皮膚軟化剤を含むことができる。本明細書で使用される「皮膚軟化剤」は、皮膚の保護のためだけではなく、乾燥状態の防止または軽減のために有用な物質を示す。多種多様な好適な皮膚軟化剤が知られており、本明細書において使用することができる。例えば、Sagarin、Cosmetics,Science and Technology(第2版、第1巻、3243頁(1972))を参照のこと。これは、皮膚軟化剤として好適な物質の数多くの例を含有し、その全体において参照によって全面的に本明細書中に組み込まれる。好ましい皮膚軟化剤がグリセリンである。
【0133】
本発明によるローションおよびクリームは一般に、溶液キャリアシステムと、1つまたは複数の皮膚軟化剤とを含む。
【0134】
本発明の局所適用される組成物はまた、例えば、組成物の価値を芳香および皮膚栄養因子により高めるために添加されるさらなる成分を含むことができる。
【0135】
そのような成分は、妥当な医学的判断の範囲内で、毒性、不適合性、不安定性およびアレルギー性応答などの誘導を伴わないヒトの角質性組織での使用のために好適に選択される。加えて、必要に応じて使用されるそのような成分は、本発明の活性な化合物の利益を許容できないほどに変化させないならば、有用である。
【0136】
CTFA Cosmetic Ingredient Handbook(第2版)(1992)は、本発明の組成物における使用のために好適である、スキンケア産業で一般に使用される多種多様な限定されない化粧品成分を記載する。これらの成分クラスの例には、研磨剤、吸収剤、審美的成分(例えば、香料、顔料、着色剤/染料、精油、皮膚感覚剤、収斂剤、その他(例えば、チョウジ油、メントール、ショウノウ、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、ウイッチヘーゼル油))、抗ざ瘡剤、凝固防止剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピルブチルカルバメート)、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝化剤、増量剤、キレート化剤、化学的添加物、染料、化粧品用収斂剤、化粧品用殺生物剤、変性剤、薬物収斂剤、外用鎮痛剤、組成物の薄膜形成特性および持続性を助けるための薄膜形成剤または材料(例えば、ポリマー)(例えば、エイコセンおよびビニルピロリドンのコポリマー)、不透明化剤、pH調節剤、噴射剤、還元剤、金属イオン封鎖剤、スキンコンディショニング剤(例えば、湿潤剤、これには、種々のものおよび閉塞性が含まれる)、皮膚緩和剤および/または皮膚治癒剤(例えば、パンテノールおよび誘導体(例えば、エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸およびその誘導体、アラントイン、ビサボロール、ならびに、グリチルリチン酸二カリウム)、皮膚処置剤、増粘剤、ならびに、ビタミンおよびその誘導体が含まれる。
【0137】
本発明の組成物は皮膚に対して直接に適用することができる。代替では、本発明の組成物は、この技術分野で知られている様々な経皮薬物送達システムによって、例えば、組成物を徐放性様式で皮膚内に放出する経皮パッチなどによって通常の皮膚適用により送達することができる。この技術分野で知られている他の薬物送達システムには、加圧エアロゾルボトル、イオントフォレーシスまたはソノフォレーシスが含まれる。イオントフォレーシスが、皮膚透過性を増大させ、かつ、経皮送達を容易にするために用いられる。米国特許第5667487号および同第5658247号が、皮膚を横断する治療剤の超音波−イオントフォレーシス媒介輸送に好適なイオンソニック装置を開示する。代替として、または、加えて、リポソームまたはミセルもまた、送達ビヒクルとして用いることができる。
【0138】
創傷および虚血は頭皮に関わることがあるので、本発明の組成物はさらに、頭皮の皮膚および毛髪での使用に好適である皮膚軟化剤、界面活性剤および/またはコンディショナーを含む。
【0139】
そのような皮膚軟化剤には、炭化水素系の油およびワックス(例えば、鉱油およびワセリン)、植物系および動物系の油脂(例えば、オリーブ油、パーム油、ひまし油、トウモロコシ油およびダイズ油など)、ならびに、ラノリンおよびその誘導体(例えば、ラノリン、ラノリン油、ラノリンワックスおよびラノリンアルコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。他の皮膚軟化剤には、10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸(これには、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびパルミチン酸などが含まれる)のエステルが含まれ、例えば、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸プロピル、イソステアリン酸プロピルおよびパルミチン酸プロピルなどが含まれる。他の皮膚軟化剤には、10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸が含まれ、そのような脂肪酸には、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、イソステアリン酸およびパルミチン酸などが含まれる。皮膚軟化剤にはまた、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコールおよびステアリルアルコールなどの10〜20個の炭素原子を有する脂肪アルコールが含まれる。
【0140】
本発明の組成物を毛髪での使用のために配合するとき、乳化剤/界面活性剤が好ましくは利用される。
【0141】
界面活性剤の例には、親水性のアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールとの縮合に利用可能なフリーの反応性水素を有する疎水性のアルキル官能基、アルケン官能基またはアルキル芳香族官能基のポリオキシアルキレンオキシド縮合生成物が含まれるが、これらに限定されない。特に効果的なものが、Rohm&Haas Companyによって商品名TRITON100(登録商標)シリーズの製品で販売される、約7〜約13モルのエチレンオキシドとのオクチルフェノールの縮合生成物である。
【0142】
他の成分、例えば、香料、安定化剤、色素、抗微生物剤、抗細菌剤、抗凝集剤および紫外線吸収剤などもまた、毛髪での使用のために配合される本発明の組成物に含められる。
【0143】
酸加水分解に対して安定なコンディショナー剤、例えば、少なくとも1つの第四級アンモニウム成分をエトキシ化モノコートと一緒に有するシリコーン化合物などもまた好ましくは、毛髪での使用のために配合される本発明の組成物を安定化し、かつ、場合によりその粘性を高めるために利用される。
【0144】
必要に応じて使用される増粘剤もまた、組成物の審美学を改善するために、また、毛髪への組成物の適用を容易にするために含めることができる。例示的な増粘剤が、メチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、ジ(水素化タロー)フタル酸アミド、架橋された無水マレイン酸−メチルビニルエーテルコポリマー、グアーガム、キサンタンガムおよびアラビアゴムである。
【0145】
コンディショニング組成物のキャリアは主に水であるが、有機溶媒もまた、組成物の製造を容易にするために、または、審美的性質(例えば、粘度制御)を提供するために含めることができる。好適な溶媒には、低級アルコール、例えば、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコール;グリコールエーテル、例えば、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテルまたはモノメチルエーテル;ならびにそれらの混合物が含まれる。不透明なコンディショナーにおいて使用することができる限定されないコンディショニング剤には、ステアリルトリメチルアンモニウム塩化物;ベヘントリメチルアンモニウム塩化物;セトリモニウム臭化物;ソイトリモニウム塩化物;タロートリモニウム塩化物;ジ水素化タロージメチルアンモニウム塩化物;ベヘントリメチルアンモニウムメトサルフェート;Peg−2オレアンモニウム塩化物;ジ水素化タロージメチルアンモニウム臭化物;ジ水素化タロージメチルアンモニウムメトサルフェート;パルミチルトリメチルアンモニウム塩化物;水素化タロートリメチルアンモニウム塩化物;水素化タロートリメチルアンモニウム臭化物;ジセチルジメチルアンモニウム塩化物;ジステアリルジメチルアンモニウム塩化物;ジパルミチルジメチルアンモニウム塩化物;水素化タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート;セトリモニウムトシラート;エイコシルトリメチルアンモニウム塩化物およびジタロージメチルアンモニウム塩化物が含まれる。
【0146】
本発明の組成物を不透明にするために使用することができる物質には、脂肪エステル、不透明化ポリマー(例えば、スチレンポリマー、例えば、Morton,International,Inc.から得られるOPACIFIER653(商標))、および、脂肪アルコールが含まれる。下記は脂肪アルコールの限定されない列挙である:セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコールおよびアラキジルアルコール。透明でない本発明のコンディショニング組成物はまた、Lexamine S−13、ジセチルアンモニウム塩化物およびceteareth−20を含むことができる。
【0147】
シャンプー配合物は時には、頭皮の皮膚状態(例えば、病変部、乾癬)を処置するために好都合である。
【0148】
本発明の毛髪シャンプー組成物は、必要に応じて、液体、粉末、ゲルおよび顆粒から選択されるいずれかで提供され得る。水または低級アルコールを溶媒として使用する液体組成物が好ましく、水を使用する液体組成物が特に好ましい。本発明の教示に従って使用され得るシャンプー組成物が米国特許第6194363号および米国特許第6007802号においてさらに記載される。
【0149】
具体的な実施形態において、本発明のエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン配合物は、約10〜30μg/mLのエリスロポイエチンおよび約100〜300μg/mLのフィブロネクチン、約0.20%のメチルパラベン、約9%のLaurethおよびイソパラフィンおよびポリアクリルアミド、約12%の脱イオン水、ならびに、100%までのリン酸塩緩衝液を含む。
【0150】
したがって、本発明の実施形態は、血管形成および創傷治癒を促進させるための局所用組成物を含む。
【0151】
本発明の組成物は、他の現在実施されている治療法との組合せで使用され得ること、例えば、限定されないが、光線療法(例えば、National Biological Corp.(Beachwood、OH)による創傷ケアのためのDermanwand(商標))および超音波療法(例えば、米国特許第6960173号を参照のこと)などとの組合せで使用され得ることが理解される。
【0152】
本出願から成熟する特許の有効期間中に、多くの関連するエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物が開発されることが予想され、したがって、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を演繹的に包含することが意図される。
【0153】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0154】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0155】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0156】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0157】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0158】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0159】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0160】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の各種の特徴は、別個にまたは適切なサブコンビネーションで、または本発明の他の実施形態において好適に提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0161】
本明細書の上記に詳述され、かつ添付の特許請求の範囲において特許請求される本発明の種々の実施形態および側面は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0162】
上記説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する以下の実施例を参照する。
【0163】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0164】
実施例1
エリスロポイエチンによる局所処置は糖尿病ラットの皮膚創傷において血管形成および創傷治癒を改善する
材料および実験手順
実験動物
30匹のオスSprague−Dawleyラット(8週齢)(Harlan(Jerusalem、イスラエル)から得られる)を、一定の温度および湿度を含む環境で、かつ、人工的な12時間の明暗サイクルとともに飼育した。すべてのラットは、食物および水を自由に取ることが許された。すべての実験手順が、Rappaport Faculty of Medicine−Technion Animal Centerの動物管理使用委員会のガイドラインに従った。
【0165】
糖尿病の誘導
糖尿病を、生理食塩水−クエン酸ナトリウム緩衝液(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国、pH4.5)におけるストレプトゾトシン(STZ、Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国)(インスリン産生細胞に対して特異的な毒素)の60mg/kgの1回の腹腔内注射によって誘導した。血中グルコースレベルを、鋭敏なグルコメータ(FreeStyle、Alameda、CA、アメリカ合衆国)を使用して測定した。STZを受けた10日後、300mg/dLを越える血中グルコースレベルを示すラットを糖尿病とみなし、研究においてさらに使用した。
【0166】
全層皮膚創傷の作製および処置
300mg/dLを越えるグルコースレベルが確認された糖尿病ラットをケタミン(100mg/kg体重)およびキシラジン(50mg/kg)により腹腔内麻酔した。各ラットの背側の皮膚を剃毛し、ヨウ素溶液により消毒し、2つの全層皮膚創傷(創傷あたり直径がおよそ30mm)を各ラットの背中の右側および左側に作製した。その後、糖尿病ラットを、10匹のラットを各群に含む3つの処置群に無作為に分けた:第1群)傷を、生理食塩水を含有する基礎クリームにより処置した(コントロール群と呼ばれる);第2群)傷を、低いエリスロポイエチン濃度(EPO、500U/ml)を含有するクリームにより処置した(低用量群と呼ばれる;Cytolab/Peprotech、Rehovot、イスラエル);および、第3群)傷を、高EPO濃度(3000U/ml)を含有するクリームにより処置した(高用量群と呼ばれる)。すべてのラットを適切なクリームにより(12日間にわたって)1日に1回処置した。
【0167】
創傷治癒(創傷閉鎖)の定量的評価
創傷治癒割合を計算するために、透明な紙を傷の場所に置き、その形状を紙に描いた。次いで、創傷面積を、傷の形状を方眼紙に照合することによって測定した。創傷治癒割合をWalker式(式I、下記)によって計算した。創傷治癒割合を、実験開始時(0日目)に、また、その後、再び、2、4、6、8、10および12日目に計算した。
式I:
%創傷面積=[(X日目の創傷面積)/(初日の創傷面積)]×100
創傷治癒割合=100−創傷面積の割合
【0168】
組織学的検査
免疫組織化学を、以前に定義された手順を使用して行った。簡単に記載すると、ラットを実験12日目に屠殺し、各群から組織サンプルを採取し、10%ホルマリンにおいて固定処理した。パラフィン包埋された組織を切片化し(5μm)、抗原回復を、クエン酸塩緩衝液(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国)を使用して行った。組織を一次抗体の抗CD31(R&D Systems、MN、アメリカ合衆国)で処理し、続いて、適切な二次抗体(R&D Systems、MN、アメリカ合衆国)で処理した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、カバースリップにより固定した。
【0169】
血管形成応答を評価するために、微小血管密度(MVD)を計算した。簡単に記載すると、視認される血管密度が最大である、切片あたり3つの区域を選び、視認される管腔を有する血管の数を高倍率視野(×40の倍率)で計数した。6つの無作為に選ばれた切片において合計で10〜15の視野を各群について分析した。2名の独立した病理学者が盲検様式で組織学的検査を行った。
【0170】
創傷部におけるVEGFの測定
ラットを実験12日目に屠殺し、創傷部に存在する血管内皮増殖因子(VEGF)の量をELISAによって求めた。簡単に記載すると、創傷組織を、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を含有する1.0mlのPBSにおいてホモジネートした。ホモジネートを遠心分離して、破片を除き、1.2μm細孔のシリンジフィルタによりろ過した。分析を市販のヒトVEGF特異的ELISAキット(R&D Systems、MN、アメリカ合衆国)によって行った。VEGFの量をピコグラム/創傷部として示した。
【0171】
ヒドロキシプロリン(HP)分析
HPがほとんど例外なくコラーゲンに見出されるので、HPを、創傷組織に存在するコラーゲンの量の指標として使用した。創傷部のHP濃度を、以前に記載されたように求めた[Kwon他、Exp Biol Med(Maywood)(2007)、232(7):935〜41]。簡単に記載すると、創傷組織(実験12日目の屠殺ラットから採取される)を、130℃で4時間、2mlのHCL(6mol/l)において加水分解した。その後、混合物を2.5mol/lの水酸化ナトリウムによりpH7.0に中和し、脱イオン水により40倍に希釈した。次いで、2mlの希釈された混合物を1mlのクロラミン−T溶液(0.05mol/l)と混合し、室温で20分間インキュベーションした。その後、1mlの20%p−ジメチルアミノベンズアルデヒドを加え、溶液を60℃で20分間インキュベーションした。各サンプルの吸光度を蛍光マイクロプレートリーダーによって557nmにおいて求め、HPの量を標準曲線との比較によって求めた。
【0172】
統計学的分析
コルモゴロフ−スミルノフ検定によれば、データは正規分布を有していた。さらに、スチューデントt検定およびANOVAを、異なる実験群の間での差を明らかにするために使用した。P<0.05のとき、差は、有意であると見なした。結果を値の平均±標準偏差として示した。
【0173】
結果
糖尿病のラットモデルをSTZ注射によって作製した。血中グルコースレベルにおける緩やかな増大が期間を通して認められ、これには、体重減少が伴った。STZ投与(研究の初日)の10日後、ラットは、それらのSTZ前の状態と比較して、8.7±2.3gの体重を失い、(研究の最終日で測定されたとき)12日後では体重をさらに失っていた(それらのSTZ前の状態と比較して、19.4±7.1gの体重を失っていた)。本研究で使用された糖尿病ラットの血中グルコースレベルは一貫して300mg/mLよりも高く、EPOまたはビヒクルのどちらかを含有する外因性クリームの局所適用によって変化しなかった。
【0174】
さらに、糖尿病の誘導のために、死亡率評価を動物屠殺の当日に行った。結果は、7匹のラットが本実験の経過中に死亡したことを示していた(コントロール群からの2匹のラット、高EPO群からの3匹のラット、および、低EPO群からの2匹のラット)。
【0175】
創傷治癒の定量的評価および完全な創傷閉鎖までの時間
図1に示されるように、創傷治癒割合における有意な統計学的差(P<0.05)が、高用量のEPOと、(ビヒクルにより処置された)コントロールラットとの間において実験の6日目に記録された。しかしながら、低用量のEPOと、コントロールラットとの間での有意な統計学的差(P<0.05)が、実験の10日目でのみ検出された。重要なことに、これら2つのEPO処置群(低用量のEPOおよび高用量のEPO)の間の比較では、実験の6、8、10および12日目での創傷治癒割合における有意な統計学的差(P<0.05)が存在したことが明らかにされた。
【0176】
さらに、12日目において、創傷面積における減少が、ビヒクルにより処置されたラットと比較して、EPOにより局所処置されたラットでは著しくより大きかった(データは示されず)。ビヒクルにより処置されたラットは完全な創傷閉鎖を12日目に達成しておらず、これに対して、EPOにより処置されたラット(特に、高用量のEPOによって処置されたラット)は完全な創傷閉鎖を12日目に達成した。高用量のEPOが創傷治癒プロセスを加速させていたことが結果から明らかである。まとめると、このデータは、創傷治癒に関しての局所的EPOの著しい臨床的価値を顕著に示す。
【0177】
組織学的結果
CD31(内皮細胞および血管細胞に特異的なマーカー)の免疫組織化学的染色を使用して、各処置群からの組織サンプルを、処置終了時に、新血管形成を実証するために微小血管密度(MVD)について評価した。図2に示されるように、MVDの評価では、統計学的に有意な差が、ビヒクルにより処置されたコントロールラット(2.83±0.98)と比較して、EPOにより処置されたラット(低用量のEPOおよび高用量のEPO、それぞれ、5±1.55および8.5±1.05)との間において示された(P<0.05)。さらに、創傷部へのEPOの局所適用はMVDを用量依存的な様式で増大させた(図2)。
【0178】
コントロール群のすべてのサンプルが、無血管区域、浮腫を伴う拡張性血管、血管周囲の出血、および、毛細血管分岐の際立った低下を示した。しかしながら、局所的EPOにより処置されたラットの創傷部は、CD31の増大した発現を伴うより良好な血管化区域を、創傷部の端において、また、無数の内皮小島を伴う肉芽組織において示した。より少ない数の内皮小島が、高用量のEPOにより処置された創傷部と比較して、低用量のEPOにより処置された創傷部において認められた(データは示されず)。
【0179】
EPO処置および非処置ラットの創傷部におけるVEGFのレベル
図3に示されるように、血管内皮増殖因子(VEGF)のレベルが、処置された創傷部と非処置の創傷部との間で著しく異なっていた。ビヒクルによってのみ処置されたコントロールラットのサンプルはVEGFの非常に低い含有量を示した(0.3±0.02pg/mgタンパク質)。しかしながら、低用量のEPOによる処置ラットおよび高用量のEPOによる処置ラットからのサンプルはVEGFの著しく高いレベルを示した(それぞれ、0.9±0.2および1.1±0.2pg/mgタンパク質)。したがって、創傷治癒には、VEGFにおける有意な増大が伴った。
【0180】
創傷組織におけるヒドロキシプロリン(HP)分析
HPがほとんど例外なくコラーゲンに見出されるという事実のために、HPを、創傷組織に存在するコラーゲンの量の指標として使用した。図4に示されるように、EPOによる創傷部の局所的処置は組織のHP含有量を高めた。結果は、有意な差を、低用量のEPOまたは高用量のEPOのどちらかにより処置されたラット(それぞれ、39±5または48±7μg/創傷部)と、ビヒクルだけにより処置されたコントロールラット(22±6μg/創傷部)との間で示した。EPO処置は、創傷組織のコラーゲン含有量における増大を用量依存的な様式でもたらした。このことは、結合組織再建および創傷治癒における示された用量のEPOの治療的価値を実証している。
【0181】
実施例2
エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンによる局所的処置による糖尿病マウスにおける加速された皮膚創傷治癒
材料および実験手順
実験動物
32匹のCD1ヌードマウス(6週齢)(Harlan(Jerusalem、イスラエル)から得られる)を、一定の温度および湿度を含む環境で、かつ、人工的な12時間の明暗サイクルとともに飼育した。すべてのラットは、食物および水を自由に取ることが許された。すべての実験手順が、Rappaport Faculty of Medicine−Technion Animal Centerの動物管理使用委員会のガイドラインに従った。
【0182】
糖尿病の誘導
糖尿病を、生理食塩水−クエン酸ナトリウム緩衝液(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国、pH4.5)におけるストレプトゾトシン(STZ、Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国)(インスリン産生細胞に対して特異的な毒素)の60mg/kgの1回の腹腔内注射によって誘導した。血中グルコースレベルを、鋭敏なグルコメータ(FreeStyle、Alameda、CA、アメリカ合衆国)を使用して測定した。STZ注射の5日後、300mg/dLを越える血中グルコースレベルを示すマウスを糖尿病として定義し、研究においてさらに使用した。
【0183】
全層皮膚創傷の作製および処置
300mg/dLを越えるグルコースレベルが確認された糖尿病マウスをケタミン(100mg/kg体重)およびキシラジン(20mg/kg)により腹腔内麻酔した。各マウスの背側の皮膚を剃毛し、ヨウ素溶液により消毒し、2つの全層皮膚創傷(創傷あたり直径がおよそ20mm)を各マウスの背中の右側および左側に作製した(図5A)。その後、糖尿病マウスを、8匹のマウスを各群に含む4つの処置群に無作為に分けた:第1群)傷を、生理食塩水を含有する基礎クリームにより処置した(コントロール群、図5B);第2群)傷を、エリスロポイエチン(EPO、3000U/mL、Cytolab/Peprotech、Rehovot、イスラエル)を含有するクリームにより処置した;第3群)傷を、フィブロネクチン(FN、200μg/mL、Chemicon International Inc.、Temecula、CA、アメリカ合衆国)を含有するクリームにより処置した;および、第4群)傷を、EPOおよびFN(それぞれ、3000U/mLおよび200μg/mL)を含有するクリームにより処置した(図5B〜C)。すべてのマウスを適切なクリームにより(12日間にわたって)1日に1回処置した。
【0184】
創傷治癒(創傷閉鎖)の定量的評価
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0185】
組織学的検査
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0186】
創傷部におけるVEGFの測定
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0187】
ヒドロキシプロリン(HP)分析
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0188】
統計学的分析
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0189】
結果
糖尿病のマウスモデルをSTZ注射によって作製した。血中グルコースレベルにおける緩やかな増大が期間を通して認められ、これには、体重減少が伴った(データは示されず)。STZ投与(研究の初日)の5日後、マウスは、それらのSTZ前の状態と比較して、1.3±0.3gの体重を失い、(研究の最終日に測定されるとき)12日後では体重をさらに失っていた(それらのSTZ前の状態と比較して、2.2±0.7gの体重を失っていた)。本研究で使用された糖尿病マウスの血中グルコースレベルは一貫して300mg/mLよりも高く、EPO、FN、EPO/FNまたはビヒクルを含有する外因性クリームの局所適用によって変化しなかった。
【0190】
さらに、糖尿病の誘導のために、死亡率評価を動物屠殺の当日に行った。結果(データは示されず)は、5匹のマウスが本実験の経過中に死亡したことを示していた(コントロール群からの2匹のマウス、EPO群からの2匹のマウス、および、EPO/FN群からの1匹のマウス)。
【0191】
創傷治癒の定量的評価および完全な創傷閉鎖までの時間
FNにより処置されたマウスと比較して、EPOにより処置されたマウスとの間での統計学的差は有意でなかった(P>0.05)。これに対して、創傷治癒割合における有意な統計学的差(P<0.05)が、ビヒクルによって処置されたマウスに対して、EPOまたはFNによって処置されたマウスとの間で実験の6日目から12日目まで記録された(図6)。しかしながら、EPOおよびFNによる併用処置は、創傷治癒における有意な統計学的差(P<0.05)を、EPO、FNまたはビヒクルによる処置と比較して、処置後4日もの早くにもたらした(図6および7A〜D)。創傷治癒における際立った増大がさらに、実験の6日目に記録され(図6)、このとき、達成された治癒割合が、EPOにより処置されたマウス(およそ46%、P<0.001)、FNにより処置されたマウス(およそ41%、P<0.001)、または、コントロールマウス(およそ30%、P<0.001)と比較して、EPOおよびFNにより処置されたマウスについてはおよそ86%であった。それ以降、8日目において、EPOおよびFNの併用により処置されたマウスにおける全体的な創傷閉鎖が、記録された創傷閉鎖が著しくより低かった他の処置群(EPOについてはおよそ65%、FNについてはおよそ55%、および、コントトールマウスについてはおよそ41%、図6、ならびに、8A〜Cおよび8F〜G)と比較して、およそ96%であった(図6、ならびに、図8A、8D、8Eおよび8G)。さらに、12日目において、EPOおよびFNの併用により処置されたマウスのみが完全な創傷閉鎖を達成し(およそ99%、P<0.001)、これに対して、すべての他の処置群は完全な創傷閉鎖を達成していなかった(図6、図9A〜F、および、図10A〜L)。したがって、EPOおよびFNの併用による創傷処置は創傷治癒プロセスを大きく加速させていたこと、また、完全な創傷閉鎖を達成していたことが、これらの結果から明らかである。
【0192】
組織学的結果(微小血管密度)
処置終了時(12日目)に、CD31の免疫染色を、各処置群からの組織サンプルにおける新血管形成(微小血管密度、MVD)を確認するために行った。図11に示されるように、MVDの評価は、統計学的に有意な差を、ビヒクルにより処置されたコントロールマウスと比較して、EPOを含有するクリームにより処置されたマウスとの間で示し(それぞれ、2.33±1.033に対して6.83±1.47、P<0.01)、しかし、有意な差が、ビヒクルにより処置されたマウスと比較して、FNを含有するクリームにより処置されたマウスとの間では検出されなかった(それぞれ、2.33±1.03に対して3.17±0.75、P>0.05)。しかしながら、EPOおよびFNを含有するクリームの局所適用はMVDを顕著に増大させ、この増大は、他の処置群のすべてと比較して、統計学的に有意であった(P<0.001)。
【0193】
FNを含有するクリームにより処置されたか、または、ビヒクルによって処置されたマウスから採取されたすべての組織サンプルが、無血管区域、浮腫を伴う拡張性血管、血管周囲の出血、および、毛細血管分岐の際立った低下を示した(データは示されず)。しかしながら、EPOまたはEPOおよびFNを含有するクリームにより処置されたマウスの創傷部は、CD31の増大した発現を伴う大きい血管化区域を、創傷部の端において、また、無数の内皮小島を伴う肉芽組織において示した(データは示されず)。
【0194】
処置および非処置マウスの創傷部におけるVEGFのレベル
図12に示されるように、血管形成因子(VEGF)のレベルが、処置終了時(12日目)に、異なる処置群の間で著しく異なっていた。ビヒクルにより処置されたコントロールマウス、または、FNを含有するクリームにより処置されたマウスから採取されたサンプルでは、非常に低いレベルのVEGF(それぞれ、0.31±0.08または0.39±0.12pg/mgタンパク質)が、EPOまたはEPOおよびFNを含有するクリームにより処置されたマウスから採取されたサンプル(それぞれ、0.74±0.15または0.87±0.13pg/mgタンパク質)と比較して示された(P<0.001)。有意な統計学的差が、コントロールマウスと、FNを含有するクリームにより処置されたマウスとの間において何ら認められなかった(P>0.05)。そのうえ、有意な統計学的差が、EPOを含有するクリームにより処置されたマウスと、EPOおよびFNを含有するクリームにより処置されたマウスとの間において何ら認められなかった(P>0.05)。
【0195】
ヒドロキシプロリン(HP)分析
HPを、創傷組織に存在するコラーゲンの量の指標として使用した。図13に示されるように、EPOのみまたはFNのみを含有するクリームによる局所的処置は同等に、創傷組織におけるHP含有量を高め(それぞれ、44±6.1または45.3±7.2μg/創傷部)、また、ビヒクルによる処置(16.2±4.7μg/創傷部)と比較して著しくより高かった(P<0.001)。逆に、EPOおよびFNの両方を含有するクリームによる局所的処置は、創傷組織におけるHP含有量を著しく増大させた(81±8.8μg/創傷部;P<0.001)。したがって、EPOのみまたはFNのみを含有するクリームによる処置と比較して2倍であり、また、ビヒクルによる処置と比較して5倍であった。まとめると、これらの結果は、EPOおよびFNの両方を含有するクリームによる創傷処置は、組織修復において、コラーゲンにおける際立った増大をもたらし、EPOとFNとの間における密接な相互作用の存在を示すことを示している。
【0196】
実施例3
EPOはHEMCにおけるβ1−インテグリンの発現をアップレギュレーションする
材料および実験手順
ヒト表皮微小血管細胞培養および実験条件
初代ヒト表皮微小血管細胞(HEMC)をPromoCell(GmbH、Heidelberg、ドイツ)から購入した。HEMCを、15mMのHEPES、10%のウシ胎児血清(FBS)、増殖因子(ヘパリンにより安定化された酸性FGF)、ならびに、ストレプトマイシン、ネオマイシンおよびペニシリン(Biological Industries、Beit Haemek、イスラエル)を含有する1%の抗生物質溶液が補充される改変および最適化されたDMEM/F−12(1:1)であるヒト表皮微小血管内皮培地(PromoCell,GmbH、Heidelberg、ドイツ)で維持した。すべての実験を3〜6代目の継代培養物で行った。HEMCを、フィブロネクチン(10μg/ml、Chemicon International、Temecula、CA、アメリカ合衆国)で被覆された培養ディッシュに播種した。培養されたHEMCをトリプシン処理によって剥がし、フィブロネクチン被覆の24×ウエルプレートに三連で再播種した(2.5×10細胞/ウエル)。これらの培養されたHEMCを、培養培地を毎日取り替えながら、3日間連続して、増大する用量のEPO(0.01、0.1および1μg/ml/日)により処理した。3日目が終了したとき、HEMCをトリプシン処理によって剥がし、ウエスタンブロットによってβ−1インテグリンの発現について試験した。
【0197】
ウエスタンブロット分析
採取された細胞をRIPA緩衝液(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国)によって溶解した。30μgのタンパク質サンプルを、5%のβ−メルカプトエタノールを含有する還元性緩衝液において変性し、ドデシル硫酸ナトリウム(12%)ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分離した。分離されたタンパク質を、転写緩衝液を使用して、200mAで1時間、ニトロセルロースメンブランに転写した。メンブランを、室温で1時間、TBS/0.1%Tweenにおける5%脱脂乾燥乳によりブロッキング処理し、洗浄し、TBS/0.1%Tweenにおける一次β−1インテグリン抗体(Abcam、Cambridge、英国)と4℃で一晩インキュベーションした。TBS/0.15%Tweenで洗浄した後、メンブランを適切な二次抗体(R&D Systems、MN、アメリカ合衆国)と室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、メンブランを、製造者のプロトコル(Amersham、英国)に従って増強化学発光システムによって分析した。
【0198】
結果
β1−インテグリン(フィブロネクチンの受容体)の発現が、HEMCをEPOにさらすことによって著しく増強された(図14A〜B)。β1−インテグリンの発現が用量依存的な様式で増大し、この場合、低用量のEPO(0.01μg/ml)は2.3±0.9の発現レベルをもたらし、0.1μg/mlのEPOによる刺激は5.3±1.1の発現レベルをもたらし、高用量のEPO(1μg/ml)は18±1.4の発現レベルをもたらした(図14B)。HEMCでのβ1−インテグリン発現における際立った増大は、EPOによる刺激の結果としてであるが、EPOの結果として生じるFNの生物学的作用における増大を示唆した。したがって、このことから、血管新生、コラーゲン沈着および創傷治癒におけるEPOおよびFNの相乗作用が説明される。
【0199】
実施例4
FNの存在下および非存在下でのEPOは、線維芽細胞およびケラチノサイト細胞において、増殖、スーパーオキシドジスムターゼ活性およびアクアポリン−3発現をアップレギュレーションする
材料および実験手順
細胞培養
初代ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)および成人皮膚のケラチノサイト(KRCT)の凍結保存された二次培養物をともにLonza(Lonza、Walkersville、MD、アメリカ合衆国)から得た。NHDFおよびKRCT細胞の増殖に対するエリスロポイエチン(EPO)およびフィブロネクチン(FN)の影響を評価した。簡単に記載すると、細胞を、10%のFBSをそれぞれが含有する線維芽細胞成長培地(FGM−2、Lonza、Walkersville、MD、アメリカ合衆国)およびケラチノサイト成長培地(KGM、Lonza、Walkersville、MD、アメリカ合衆国)とともにそれぞれ穏やかに解凍した。細胞を1×10細胞/mlの密度で60mmのプレートに播種し、15%のFBS、ペニシリンGナトリウムおよび硫酸ストレプトマイシンがそれぞれに補充されたFGM−2またはKGMで12日間、5%COおよび95%空気での加湿インキュベータにおいて37℃で培養した。培地を毎日交換し、細胞を3回複製させた。8日目に、すべての非接着性細胞を培養物から除き、接着性細胞を、4日までのさらなる期間、成長させた。その後の実験において、培養の開始を0日目として定義した。実験当日に、細胞をRIPA緩衝液によって溶解し、溶解物をタンパク質発現測定のために採取した。
【0200】
[3H]−チミジン取り込みアッセイ
NHDFおよびKRCT細胞をフィブロネクチン(10μg/ml)被覆または非被覆の6ウエルプレートに1×10細胞/mlの密度で播種し、5日間培養して、(それぞれ、15%のFBSがそれぞれに補充されたFGM−2およびKGM培地において)60%〜70%のコンフルエンスに到達させた。細胞をEPO(1、5および10μg/ml)で48時間処理した。実験の24時間前に、培養物を、0.1%のFBSが補充されたフェノールレッド非含有の成長培地に入れた。24時間後、細胞を、7.5%のデキストラン−木炭処理FBSを含有するフェノールレッド非含有の成長培地に入れた。それぞれのウエルにおける細胞を、インキュベーションの最後の24時間、10μCiの[3H]−チミジン(Shanghai、中国)により標識した。その後、細胞をリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)により3回洗浄し(それぞれの洗浄について5分)、その後、10%トリクロロ酢酸によるさらなる濯ぎを30分間行った。最後に、細胞を0.2mlの0.2mol/lのNaOHに溶解し、4℃で一晩放置した。放射能をシンチレーション計数によって求めた。
【0201】
SOD活性の測定
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を求めるために、各サンプルの接着性NHDF細胞または接着性KRCT細胞を穏やかなトリプシン処理(0.5%トリプシン、0.2%EDTA)によって剥がし、計数し、RIPA溶解緩衝液によって溶解した。このキットでは、SOaにより還元されたとき、水溶性のホルマザン色素を生じさせたテトラゾリウム塩WST−1(4−[3−(4−ヨードフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−2H−5−テトラゾリオ]−1,3−ベンゼンジスルホネートナトリウム塩)が利用された。O2−による還元の速度が、キサンチンオキシダーゼ活性に対して直線的に関連づけられ、SODによって阻害された。WST−1ホルマザンの形成を400nmの吸光度変化により測定した。各サンプルの阻害率(%)を、阻害(%)=100×(H0−H1)/H0(式中、H0およびH1は、コントロールおよびSODを含有するサンプルにおいて観測されたピーク高さをそれぞれ表した)として計算した。
【0202】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析
タンパク質を非還元条件下のPAGEによって分析し、ポリビニルジフルオライドメンブラン(Millipore、Molsheim、フランス)に電気ブロットした。メンブランを、5%の脱脂乾燥乳および0.05%のTween20を含有する0.1M Tris緩衝化生理食塩水において1:200で希釈されたAQP3抗体(Calbiochem、Nottingham、英国)、または、1:1000で希釈されたアクチン抗体(Calbiochem)と2時間インキュベーションした。その後、メンブランをTris緩衝化生理食塩水/脱脂乾燥乳/Tween20で洗浄し、1:2000で希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化ヤギ抗ウサギIg(R&D systems)と1時間インキュベーションした。最後に、メンブランをTris緩衝化生理食塩水で洗浄し、反応生成物を、化学発光検出キット(Amersham Biosciences、Freiburg、ドイツ)を使用して検出した。生じたシグナルをデンシトメトリーによって分析し、結果を、アクチンの光学濃度に対するAQP3対応バンドの光学濃度の比率として表した。
【0203】
統計学的分析
データを平均±SEMとして、または、コントロールの百分率として表した。結果の統計学的比較を、分散分析(ANOVA)を使用して行った。コントロール群および試験群の平均間の有意な差(P<0.05)をダネット検定によって分析した。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0204】
結果
成人皮膚のケラチノサイト(KRCT)を、細胞増殖に対するその影響を評価するために、フィブロネクチン(FN)の存在下または非存在下、エリスロポイエチン(EPO)により処理した。図15Aから明白であるように、EPO(特に10μg)によるKRCTの処理は細胞増殖における有意な増大をもたらした。さらに、FNをこれらの細胞に加えることにより、細胞増殖における相乗的な増大がもたらされた(図15B)。
【0205】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、フリーラジカルの超酸化物アニオンを細胞内空間または細胞外空間において捕捉する膜酵素である。超酸化物アニオンを表皮層および真皮層において低下させることが、皮膚を損傷および老化から保護するために不可欠である。SODは、超酸化物アニオンの蓄積によって誘導されるこれらの有害な影響を弱めることにおける主要な因子である。図16Aから明白であるように、初代ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)またはKRCT細胞をEPOとともに培養することにより、SOD(抗酸化活性)がアップレギュレーションされる。これらの細胞培養物へのFNの添加はSOD活性を約1.5倍相乗的にアップレギュレーションする(図16B)。
【0206】
ヒト皮膚の老化の大きな特徴の1つが、皮膚の脱水である。原形質膜を横断する水移動が、脂質二重層を通過する拡散を介して、また、アクアポリン(AQP)を介して生じる。アクアポリン−3(AQP3)は、正常な皮膚においてケラチノサイトの基底層における細胞原形質膜を横断する水およびグリセロールの輸送を容易にする膜輸送タンパク質である。皮膚創傷の治癒は、水/グリセロール輸送タンパク質(AQP3)を強く発現する表皮内の基底ケラチノサイトの遊走および増殖を伴う多段階プロセスである。したがって、すべての処理されたNHDFまたはKRCTサンプルのタンパク質抽出物を、AQP3の発現を明らかにするために使用した。図17A〜Bから明白であるように、NHDFまたはKRCT細胞培養物へのEPOの添加はAQP3発現における増大をもたらし(図17A)、細胞がFNと共培養されたとき、この増大が著しく増大した(図17B)。
【0207】
実施例5
EPOはBcI−xLの発現をアップレギュレーションし、アポトーシス感受性を低下させる
材料および実験手順
実験動物
上記で実施例1において詳しく説明される通りである。
【0208】
BaxおよびBcI−xについてのウエスタンブロットによるアポトーシス分析
ウエスタンブロットを行った。簡単に記載すると、各群の創傷化組織のサンプルを実験12日目に得て、サンプルを、プロテアーゼ阻害剤(2.5μg/mlのロイペプチン、0.95μg/mlのアプロチニンおよび2.5mMのフェニルメチルスルホニルフッ化物)が補充されたRIPA緩衝液(50mMのTris、150mMのNaCl、2.5mg/mlのデオキシコール酸、1mMのEGTA、10μg/mlのNonidet−40、pH7.4)とともにホモジネートし、処理した。全組織溶解物に由来するタンパク質を12%SDS−PAGEに負荷した(40μg/ウエル)。ゲル内の分画化されたタンパク質をクーマシーブルーR−250により染色し、または、ウエスタンブロットを行うためにニトロセルロースメンブランに転写した。TBS−T緩衝液(50mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、175mMのNaCl、HClでpH7.5に調節され、0.1%のTween20が補充された)における5%の低脂肪乳をブロッキング溶液として使用した。メンブランをマウスモノクローナル抗Bax(クローンYTH6A7)一次抗体およびマウスモノクローナル抗Bcl−x(クローンYTH2H12)一次抗体(ともに、R&D Systmesから得られる)とインキュベーションした。抗体をブロッキング溶液で1/500で希釈した。インキュベーション条件を各抗体について最適化した。二次抗体:IgGロバ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識物(R&D Systems)をブロッキング溶液で1/2000で希釈した。インキュベーションを室温で1時間行った。結果を、調べられているタンパク質のデンシトメトリー単位と、負荷されたタンパク質の総μgとの比率から得られる平均±S.E.M.任意設定単位(AU)として表した。
【0209】
統計学的分析
コルモゴロフ−スミルノフ検定によれば、データは正規分布を有していた。さらに、スチューデントt検定およびANOVAを、異なる実験群の間での差を明らかにするために使用した。P<0.05のとき、差は、有意であると見なした。結果を値の平均±標準偏差として示した。
【0210】
結果
EPOは、抗アポトーシスタンパク質のBcl−xLをアップレギュレーションすることによってアポトーシスを阻害する[Dolzing(2001)]。加えて、以前の研究では、いずれか1つのメンバーの絶対的な発現レベルではなく、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進メンバーと抗アポトーシスメンバーとの間での比率における変化により、アポトーシス感受性が決定されることが示されている[Zhang(2000)]。
【0211】
図18A〜Bに示されるように、EPOによる局所的処置はBaxの発現を阻害しなかった。事実、このアポトーシス促進タンパク質は、EPO用量における増加にもかかわらず、変化しないままであった(ANOVA検定では、群間での有意な差が明らかにされなかった。P=NS、図18A)。それにもかかわらず、Bcl−xLが、コントロールの糖尿病性創傷部と比較して、EPOにより処置された糖尿病性創傷部では強くアップレギュレーションされた(図18A)。EPOを含有するクリームは、この抗アポトーシスタンパク質を糖尿病性創傷部において用量依存的にアップレギュレーションした(ANOVA検定;コントロール対低用量EPO、コントロール対高用量EPO、および、低用量EPO対高用量EPO;それぞれ、P<0.05、P<0.001、および、P<0.05;図18A)。アポトーシス感受性を、アポトーシス促進タンパク質発現の平均(Bax)と、抗アポトーシスタンパク質発現の平均(Bcl−xL)との間における比率によって求めた。図18Bに示されるように、アポトーシスが、EPO処置後、著しく、かつ、用量依存的に低下し、ANOVA分析では、これら3つの群の間における有意な差(P<0.05)が明らかにされた。
【0212】
実施例6
EPO、FN、または、両者を含有するクリームの配合
材料および実験手順
EPOおよびFNの配合
A=エリスロポイエチン(EPO)
B=フィブロネクチン(FN)
クリームAについて:25μg/g(最終調製物の2.50mg%)
クリームBについて:250μg/g(最終調製物の25mg%)
クリームA/B(併用クリーム)について:25μg/g(最終調製物の2.50mg%)および250μg/g(最終調製物の25mg%)
【0213】
配合
1.有効成分 必要量
2.メチルパラベン 0.20%
3.Laureth&イソパラフィン&ポリアクリルアミド 9%
4.脱イオン水 12%
5.リン酸塩緩衝溶液 100%まで
【0214】
方法:
1.調製のために必要な量を計算する。
2.#2および#3を乾燥した清浄なガラス容器に計り取る。
3.下記をまとめる:
1.#2〜#4を加え、撹拌する。
2.混合物を、#2が溶解するまで撹拌しながら、ガラス容器において55℃〜60℃に加熱する。溶液を室温に冷却する。
3.#5の70%を加え、撹拌する。
4.有効成分(#1)を溶液に加え、撹拌する。
5.撹拌しながら、#3を溶液に徐々に加える。
6.#5の残りを(必要とされる体積を得るために)加え、撹拌を、均質な調製物が得られるまで続ける。
7.気密性の閉じた暗色容器において4℃で貯蔵する。
【0215】
結果
白色で、不透過性の半固体調製物が得られる。得られた調製物のpHは約6.40である。調製物は調製時のまま使用することができる。
【0216】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0217】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願ならびにGenBankアクセッション番号はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願またはGenBankアクセッション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治癒または結合組織再建をその必要性のある対象において促進する方法であって、創傷組織1cmあたり約10〜30μgのエリスロポイエチンと、創傷組織1cmあたり約100〜300μgのフィブロネクチンとを対象に局所投与し、それにより、対象において創傷治癒または結合組織再建を促進することを含む方法。
【請求項2】
虚血をその必要性のある対象において処置する方法であって、組織1cmあたり約10〜30μgのエリスロポイエチンと、組織1cmあたり約100〜300μgのフィブロネクチンとを対象に局所投与し、それにより、対象において虚血を処置することを含む方法。
【請求項3】
結合組織はコラーゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エリスロポイエチンの用量が組織1cmあたり約20μgである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記フィブロネクチンの用量が組織1cmあたり約200μgである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が1日に少なくとも1回行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子を投与することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記創傷が糖尿病によって与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記創傷が慢性創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記創傷が急性創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記創傷が、潰瘍、火傷および手術創傷からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象がヒトである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
結合組織再建の促進が皮膚の状態または疾患において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記皮膚の状態または疾患が、たるみ、微細な線、しわ、老人斑、光損傷、斑点、乾燥皮膚、ざ瘡、ただれ、およびいぼからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンの前記投与が同時に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンが共配合物に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンが別個の配合物に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
エリスロポイエチンを約10〜30μgの用量で含む単位投薬形態物。
【請求項19】
フィブロネクチンを約100〜300μgの用量で含む単位投薬形態物。
【請求項20】
エリスロポイエチンを約10〜30μgの用量で含み、かつ、フィブロネクチンを約100〜300μgの用量で含む単位投薬形態物。
【請求項21】
有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチン、および、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
有効成分としての約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、および、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチンおよび約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、ならびに、局所投与のための医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
ガーゼ付き絆創膏、非接着性包帯、ワイプ、ガーゼおよびパッドからなる群から選択される形態である、請求項18〜20のいずれかに記載の単位投薬形態物。
【請求項25】
前記医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤が、クリーム、ゲル、スプレー剤、ローション、軟膏、オイルおよび洗浄液からなる群から選択される、請求項21〜23のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子をさらに含む、請求項18〜23のいずれかに記載の単位投薬形態物または医薬組成物。
【請求項27】
有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチン、および、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物。
【請求項28】
有効成分としての約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、および、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物。
【請求項29】
有効成分としての約10〜30μg/mlのエリスロポイエチンおよび約100〜300μg/mlのフィブロネクチン、ならびに、化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む化粧用組成物。
【請求項30】
前記化粧品に許容されるキャリアまたは希釈剤が、クリーム、ゲル、スプレー剤、ローション、軟膏、オイルおよび洗浄液からなる群から選択される、請求項27〜29のいずれかに記載の化粧用組成物。
【請求項31】
細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレーター、脂肪酸、抗生物質およびアミノ酸からなる群から選択される因子をさらに含む、請求項27〜29のいずれかに記載の化粧用組成物。
【請求項32】
(i)有効成分としてのエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン、ただし、前記エリスロポイエチンの濃度が約10〜30μg/mLであり、前記フィブロネクチンの濃度が約100〜300μg/mLである、
(ii)約0.20%のメチルパラベン、
(iii)約9%のLaurethおよびイソパラフィンおよびポリアクリルアミド、
(iv)約12%の脱イオン水、ならびに、
(v)100%までのリン酸塩緩衝液
を含む配合物。

【図15A】
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【図15B】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【公表番号】特表2010−536745(P2010−536745A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520684(P2010−520684)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001119
【国際公開番号】WO2009/022338
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510042688)レメドー バイオメッド リミテッド (2)
【Fターム(参考)】