説明

治療および診断用抗Hsp70抗体

【課題】結腸腫瘍等の癌の検出、処置のための抗体、および組成物を提供する。
【解決手段】腫瘍細胞上で熱ショックタンパク質(Hsp70)の細胞外局在化エピトープに結合し、ヒト結腸腫瘍等の治療又は診断に使用される抗体またはその抗原結合フラグメント。また、該抗体又はそれの抗原結合フラグメント、および少なくとも1つの別の官能性ドメインとを包含する、腫瘍の治療又は診断に使用される二または多官能性分子と、その使用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性疾患、それに限定されないが、白血病、ヒト肉腫および癌腫が挙げられる原発性および転移性新生物疾患の検出、防止および処置のための方法および組成物に関する。本発明によって、感染性疾患および癌の検出、防止および処置の実施は、罹患した組織または細胞の細胞表面上でのある種の腫瘍マーカーの存在および局在化によって指向および/または指示される。特に、本発明は、腫瘍細胞上に細胞外で局在化される熱ショックタンパク質Hsp70のエピトープへの結合の能力がある抗体および抗原結合分子に関する。さらに、本発明は、上記抗体を包含する組成物、そして関連した免疫反応および腫瘍を含めた他の疾患を診断および治療する方法におけるそれらの使用法に関する。本発明は、さらに、腫瘍または感染性疾患の検出および/または処置のための膜結合Hsp70タンパク質またはそれの結合ドメインを識別する能力のある抗体の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質(Hsp)は、原核生物および真核生物の細胞における種々のストレス刺激に続く致死的損傷に対する保護を指向する高度に保存された分子である。さらに、生理学的条件下で、それらは、非原種または折畳みそこなったタンパク質の折畳を支持し、そして増殖および細胞分化(非特許文献1)の間の凝集を防止する。シャペロンの特徴を最もよく表す群は、Hsp70ファミリーに属する。他のストレスタンパク質のように、Hsp70は、それらが、細胞のシャペロン機としてのコ-ファクターと同時に操作する場合、最も有効である。Jドメイン・コシャペロン(すなわち、Hsp40)と一緒に、それらは、タンパク質折畳を支持し、そして膜を横切る輸送を支援する(非特許文献2)。熱ショックタンパク質(HSP)は、細胞分化および発生(非特許文献3)を含めた生理学的方法によっても誘発される。細胞内HSPは、分子シャペロンとしてのみ機能するのでなく、それらは、その上に、抗原プロセシングおよび表示にも関与する(非特許文献4;非特許文献5)。70および90kDaの分子量を示すHSPは、癌に対するT細胞指向性免疫応答を誘発する免疫原性腫瘍由来のペプチドに関する担体タンパク質として機能することも示された(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。抗原表示細胞は、HSPペプチド複合体の受容体で指向される摂取にとって重要である(非特許文献9)。いくつかのグループは、腫瘍細胞におけるHSPの通常でない原形質膜局在化を報告した(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。発明者らは、NK細胞も、腫瘍細胞における膜結合Hsp70の識別についての関連エフェクター細胞と見なされなければならないことを示した最初の者達であった(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18)。これらの知見に関して、そして正常な細胞は、Hsp70の発現を欠くという事実により、原形質膜では、Hsp70が、NK細胞についての腫瘍選択性識別構造として作用すると推測するかもしれない。抗体遮断研究は、Hsp70が、一過性形成接着剤NK細胞についての関連の識別構造であることを示した(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献19)。
【0003】
Hsp70発現腫瘍細胞に対するNK細胞の増殖および細胞溶解活性が、HscまたはDnaKでなく、組換えHsp70タンパク質で刺激されうることが、最近示された(非特許文献20)。NK細胞の細胞溶解活性についての標的細胞として、原形質膜上でのHsp70を発現する許容量に関して異なる同一のMHCおよび接着分子発現パターンを示す腫瘍サブラインCX+およびCX−を使用した(非特許文献16)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】HartlおよびHayer−Hartl、Science 295(2002年)、1852−1858頁。
【非特許文献2】PilonおよびSchekman、Cell 97巻(1999年)、679−682頁。
【非特許文献3】LindquistおよびCraig、Annu.Rev.Genet.22巻(1988年)、631頁。
【非特許文献4】DeNagelおよびPierce、Immunol.Today 13巻(1992年)、86頁。
【非特許文献5】Hartlら、Nature 381巻(1996年)、571頁。
【非特許文献6】Tamuraら、Science 278巻(1997年)、117頁。
【非特許文献7】Schildら、Current Opinion in Immunology 11巻(1999年)、109頁。
【非特許文献8】Srivastavaら、Immunity 8巻(1998年)、657頁。
【非特許文献9】Arnold−Schildら、J.Immunol.162巻(1999年)3757頁。
【非特許文献10】Altmeyerら、Int.J.Cancer 69巻(1996年)、340頁。
【非特許文献11】Ferrariniら、Int.J.Cancer 51巻(1992年)、613頁。
【非特許文献12】Piselliら、J.Biol.Regul.Homeost Agents 9巻(1995年)、55巻。
【非特許文献13】Tamuraら、J.Immunol.151巻(1993年)、5516頁。
【非特許文献14】Multhoffら、Blood 86巻(1995a),1374頁。
【非特許文献15】Multhoffら、Int.J.Cancer 61巻(1995b)、272頁。
【非特許文献16】Multhoffら、J.Immunol.158巻(1997年)、4341頁。
【非特許文献17】Botzlerら、Cancer Immunol.Immunother.43巻(1996a),226頁。
【非特許文献18】Botzlerら、Int.J.Cancer 65巻(1996b)、633頁。
【非特許文献19】Botzlerら、Cell Stress & Chaperones 3巻(1998年)、6頁。
【非特許文献20】Multhoffら、Exp.Hematology 27巻(1999年)、1627頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に記述されるとおり、罹患した組織または細胞の細胞表面上の、特に腫瘍細胞上のHsp70の存在および局在化は、治療的介入のための有益なマーカーおよび標的を提供する。そのような組織および細胞上でのHsp70の細胞外エピトープを特異的に識別する抗体または他の結合分子を有することが、それにより非常に望ましい。
【0006】
Hsp70を対象とするいくつかの抗体は、市販で利用可能であり、そして文献で記述されているが、これらは、細胞の表面上で膜結合Hsp70を検出する上で、能力がない、および/または信頼できないように見える。発明者らは、これらの抗体のパネルを、原形質膜結合Hsp70を検出する能力について試験した。試験された抗体のほとんどは、この作業(SPA−820、ストレスゲン;H553220−クローン7;BDファーミンゲン;H5147クローンBRM−22;シグマ;OA500ポリクローナル、ダコ;MS−482クローンW27、ネオマーカー)のために不適当であったのに対して、他方は、相反する結果を示した。
【0007】
アフィニティー・バイオリージェンツから得た抗−Hsp70抗体(MA3−006およびMA3−009)は、様々なバッチについての様々な特異性を示した。いくつかのバッチは、ある程度の範囲(非特許文献19)まで、原形質膜上のHsp70の検出に適切であったが、しかし最近のバッチは、腫瘍細胞の細胞表面上に局在されるHsp70に対してなんら反応性を示さなかった。類似に、SPA−810としてストレスゲン・インク.(Stressgen Inc.)によって、SR−B810として日本国のエム・ビー・エル(MBL)によって供給されるクローンC92F3A−5は、ある場合(Barretoら、Cell.Immunol.222巻(2003年)、97−104頁;Fengら、Blood 100巻(2002年)、4108−4115頁)に、細胞表面で局在化されたHsp70と反応することが記述されたが、しかし発明者らは、報告された結果を反復することができなかった。Fengらの報告では、細胞表面Hsp70は、アポトーシス細胞で検出されるのみで、そしてそれは、その細胞膜が、もはや無傷でない分解中のアポトーシス細胞に進入し、そして細胞内のHsp70を検出する抗体による可能性がある。Barettoらおよび他の研究者らの対立する結果は、さらに、個々の実験のために使用されるバッチの品質の差による可能性がある。さらに、MBLで供給される抗体についてこれまで細胞表面Hsp70を結合する報告はない。
【0008】
モノクローナル抗体の特異性の損失または特異性の変化も、単独の細胞系から誘導されない上記抗体を産生するハイブリドーマ細胞系による可能性がある。2つまたはそれより多くの異なるハイブリドーマの混合物は、様々な特異性を示す2つまたはそれより多くのモノクローナル抗体の混合物を産生する。培養物中の細胞の比、およびそれにより、それらにより産生される様々なモノクローナル抗体の比は、培養中に変化する可能性がある。さらに、所望の特異性を示す抗体を産生する特定のハイブリドーマは、他のハイブリドーマ細胞が進化するのに有利である場合に、その混合物から失われる可能性がある。培養物中のハイブリドーマの混合物は、産生される抗体の特異性を変化させるある種の細胞での突然変異からも生じうる。
【0009】
したがって、Hsp70の細胞外エピトープを検出し、そしてそれにより、腫瘍細胞、または病原により感染された細胞の特異的検出および処置を可能にする能力のある抗Hsp70抗体の信頼性のある源に対する必要性がある。
【0010】
上記技術的問題に対する解決策は、請求項で特徴づけられた、そして下にさらに記述される実施態様を提供することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、罹患した組織または細胞の細胞表面におけるある種の腫瘍マーカーの存在および局在化により指向および/または示される疾患の免疫学および治療の技術分野に関する。第一の態様では、本発明は、腫瘍細胞で細胞外に局在化されるHsp70のエピトープに結合する抗体またはそれの抗原結合フラグメントに関する。
【0012】
特に、本発明は、ハイブリドーマcmHsp70.1によって産生される場合、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1b(Mascheroder Weg1b, D38124 Braunschweig,
Germany)のDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbH(DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)に寄託され、そして受託番号DSM ACC2629号と指定されたハイブリドーマcmHsp70.1によって産生されるモノクローナル後退cmHsp70.1、およびcmHsp70.2並びに2003年11月14日に、DSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2630号と指定されたそれを産生するハイブリドーマcmHsp70.2に関する。
【0013】
好ましい実施態様では、抗体は、ヒト、ヒト化、異種間またはキメラ・ヒト−ネズミ抗体である。抗体またはそれの活性フラグメントを含む治療用組成物、または作動薬および同系の分子、または代替的に、それの拮抗薬、およびこれらの組成物を使用した腫瘍原性または感染性疾患の防止、診断または治療におけるこのような組成物の使用の方法も含まれ、そして有効量の組成物を、そのような治療の必要な患者に投与する。しかし、診断用途および研究については、一般に、ネズミ抗体も同様に好ましい。
【0014】
モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントは、一本鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、およびF(ab’)フラグメント、または他のいずれかの抗原結合フラグメントでありうる。以下の特定の実施態様では、モノクローナル抗体またはそれのフラグメントは、ネズミIgGまたはIgMアイソタイプ抗体である。
【0015】
自然には、本発明は、そのハイブリドーマが、ここで以前に示されるとおりDSMZ(生物学的材料に関するドイツ国リサーチセンター、ドイツ細胞バンク)に寄託されている、モノクローナル抗体cmHsp70.1またはcmHsp70.2を産生するハイブリドーマにまで及ぶ。
【0016】
本発明は、少なくとも、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドにも関する。好ましくは、上記可変領域は、抗体cmHsp70.1またはcmHsp70.2の可変領域のVおよび/またはVの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を包含する。
【0017】
したがって、本発明は、上記ポリヌクレオチドを包含するベクター、およびそこで形質転換される宿主細胞、並びに、無傷の細胞、特に腫瘍細胞上でのHsp70の細胞外局在化エピトープ、またはそれの官能性フラグメントまたは免疫グロブリン鎖を結合する能力のある抗体の産生のためのそれらの使用法も包含する。
【0018】
細胞表面膜結合熱ショックたんぱく質(HSP)および少なくとも1つの別の官能性ドメインを結合する、本発明の抗体の結合ドメイン、免疫グロブリン鎖または結合フラグメントを包含する二または多官能性分子を提供することも、本発明の目的である。
【0019】
抗体、(複数の)免疫グロブリン鎖、それの結合フラグメント、および上記抗体に結合するHsp70以外のリガンドは、免疫応答を調節および検出するための、または腫瘍の検出および/または治療のための医薬および診断用組成物で使用されうる。
【0020】
さらに、細胞外の局在化Hsp70の存在または増大量が、腫瘍を示すものである本発明による抗体または二または多官能性分子を用いて、患者から得たサンプル中の細胞を分析することを包含するものである、腫瘍を決定し、そして対象に、治療上有効な量の上記抗体または二または多官能性分子を投与することを包含するものであるそれを必要とする対象における腫瘍を治療するか、または免疫応答を調節する方法が提供される。
【0021】
医薬品の製造における前述の組成物の使用が好ましい。好ましい実施態様では、医薬品は、腫瘍または感染性疾患に関連した症状の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のHsp70抗体は活性化NK細胞(NKd3)の細胞溶解活性を遮断する。図1は、モノクローナル抗体cmHsp70.1を用いた代表的実験の結果を示す。未刺激(NKd0)または刺激(NKd3)NK細胞のいずれかを、20:1から2:1までの範囲に入るE:T比で、エフェクター細胞として使用した。未刺激NK細胞(NKd3)は、CX+およびCX−腫瘍細胞のほんの弱い溶解を示し、対照的に、Hsp70活性化NK細胞(NKd3)は、CX+腫瘍細胞の明らかな溶解を示したが、CX−腫瘍標的細胞はほんの弱い溶解であった。1時間、Hsp70特異的抗体(5μg/ml)を用いたCX+およびCX−腫瘍標的細胞の予備培養、そしてその後、4時間Cr−51放出アッセイでの標的細胞として使用した後、CX+腫瘍細胞の溶解(左側グラフ)は、Hsp70Abにより完全に遮断されうるのに対して、CX−標的細胞の溶解(右側グラフ)は、影響を及ぼされないままであった。データは、3つの独立の実験の中央値+/−SEを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、原発性および転移性新生物疾患、および感染性疾患の診断、防止および治療のための、そしてヒト個体における免疫応答を引き出すための方法および組成物に関する。特に、本発明は、腫瘍細胞、特に無傷の腫瘍細胞でのHsp70の細胞外の局在化エピトープに結合する分子に関する。さらに詳細には、本発明は、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2629号と指定された、ハイブリドーマcmHsp70.1によって産生される、モノクローナル抗体cmHsp70.1の、または、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2630号と指定された、ハイブリドーマcmHsp70.2により産生されるcmHsp70.2の免疫学上の結合特徴を示す、抗体およびそれの抗原結合フラグメントに関する。現在のところ、用語「免疫学上の結合特徴」またはそれの文法的形態のすべてでは、抗原との抗体の他の結合特徴は、抗体の特異性、親和性、交叉反応性、および他の結合特徴に該当する。
【0024】
前に明記されるとおり、Hsp70に特異的ないくつかの抗体が存在するが、それらの内のただ2つが、細胞外に局在化されるエピトープを時折識別することが報告された。それの細胞外のエピトープにより、原形質膜に結合したHsp70に結合しそこなうことは、抗体の不安定さ、または変動する品質によるか、または常に与えられるものではない非常に特別な結合条件をそれが要求していることによる可能性がある。
【0025】
しかし、診断および/または治療目的のための抗体は、通常の実験室で出会う種々の条件下で確かに働くことが必要であり、そして安定な源、すなわち、ハイブリドーマ細胞系により産生されるべきである。
【0026】
本発明は、2つのハイブリドーマ系およびそれらにより産生される抗体を提供する。両方の精製抗体が、細胞外エピトープを介して、原形質膜上に局在化されるHsp70に結合する能力があることを、驚くべきことに見出した。形質転換され、そして感染したヒト細胞のみが、個々に、それらの細胞表面上でHsp70を発現するように見えるので、本発明による抗体は、正常および腫瘍の細胞の間の区別を可能にする。したがって、本発明は、ここに記述される数種の実施態様に起こる、腫瘍細胞上でのHsp70の細胞外に局在化されたエピトープに結合する抗体またはそれの抗原結合フラグメントを提供する。
【0027】
細胞表面上のHsp70の発現は、数種の異なる型の癌の特質であるので、正常な細胞の原形質膜に不在でありつつ、上記(Multhoffら、Int.J. Cancer 61巻(1995b)、272頁)を参照し、本発明の抗体の好ましい実施態様は、その腫瘍が、結腸、肺、胃、膵臓、頭部および頸部、卵巣、および/または乳癌、黒色腫、神経膠腫、肉腫、芽球腫、および/または通常、腫瘍型と強く相互関係にあり、そして腫瘍開始の初期段階で役割を果たしうる血液学上の悪性腫瘍より構成される群から選択されるヒト腫瘍であり、血液学上の悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄性形成異常症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(MPD)、急性リンパ芽球白血病(ALL);バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫および非バーキットリンパ腫のようなリンパ腫、およびリンパ増殖障害(LPD)、すなわち、BおよびT系統障害を包含する腫瘍細胞に結合する。
【0028】
本発明の好ましい実施態様では、抗体は、アミノ酸配列NLLGRFEL(配列番号:1)またはTKDNNLLGREFLSG(配列番号:2)を包含するか、またはそれにより構成されるエピトープを識別する。Hsp70が細胞表面に局在化され、そして用量依存手段で、本発明による抗体の結合を阻害するときに、配列番号:1および2のペプチドは、原形質膜の細胞外の側に現れることが示された。最も好ましくは、上記抗体は、モノクローナル抗体である。特に、本発明の抗体またはそれの抗原結合フラグメントは、好ましくは、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2629号と指定された、ハイブリドーマcmHsp70.1によって産生される、モノクローナル抗体cmHsp70.1の、または2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2630号と指定された、ハイブリドーマcmHsp70.2によって産生される場合、モノクローナル抗体cmHsp70.2の免疫学上の結合特徴を示す。モノクローナル抗体cmHsp70.1の免疫学上の結合特徴は、中でも国際特許出願WO02/22656号で記述される抗体RPN1197のものと実質的に同じである;特に実施例を参照、その開示は、参照してここに組込まれる。しかし、国際出願WO02/22656号並びに発明者らによる他の出版物、例えば、Botzlerら、Cell Stress & Chaperones 3巻(1998年)、6−11頁は、本発明の抗体の所望の免疫学上の特徴、特に抗体が、可変Hsp70−発現(CX+)腫瘍細胞に結合する能力があり、そして好ましくは、CX+細胞の溶解を実質的に阻害することも記述する一方で、本発明は、初めて、このような抗体および信頼できる起源、特に、対応のハイブリドーマ細胞系の無制限の条件を可能にする。したがって、モノクローナル抗体cmHsp70.1およびcmHsp70.2を産生するハイブリドーマの条件は、各々、例えば前述の抗体のいずれかの抗原結合部位を適応させることによって、当業者に、機能的に等価な抗体を設計および生成させることを可能にする。
【0029】
特異的に供される2つの抗体の各々は、それの個々の免疫学上および生物学上の活性に関して特長的である。両方は、特に、無傷でそして成長できる腫瘍細胞において、Hsp70の細胞外エピトープに結合するそれらの能力により他の抗−Hsp70抗体から区別されうる。それらは、Hsp70発現腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞溶解活性における阻害効果を示す能力もある;図1を参照。したがって、cmHsp70.1から、またはcmHsp70.2から誘導されるHsp70結合分子を、治療および診断用途に使用することが好ましいが、しかしそれに限定されない。
【0030】
さらに、1つの実施態様では、本発明の抗体は、好ましくは、0.1から10μg/mlまで、好ましくは5μg/ml未満、そして最も好ましくは約0.1から1μg/mlまでの本発明の抗体が、CX腫瘍細胞の検出、続いてプロテインAボールド標識(10μmアウリオン)に十分であり、そしてツァイス(Zeiss)のEM 10CR電子顕微鏡で観察されるという点で特徴づけられる。実験の詳細については、例えば、Botzlerら、Cell Stress & Chaperons 3巻(1998年)、6−11を参照。さらに、本発明の抗体は、好ましくは、それらが、活性化NK細胞の細胞溶解活性を遮断できる点で特徴づけられる;図1を参照。このような実験では、通常には、1から20μg/mlまで、好ましくは5から10μg/mlまで、そして最も好ましくはほぼ5μg/mlまたは5μg/ml未満の所定の抗体が、図1で記述されるのと同じ結果を得るのに十分である。
【0031】
代わりに、本発明の抗体は、Hsp70の細胞外エピトープへの結合を、本発明により提供される抗体と競合するモノクローナル抗体またはそれの抗原結合フラグメントである。それらの抗体は、同様にネズミでありうる;しかし、ヒトの、ヒト化された、異種の、またはヒト−ネズミキメラの抗体が、特に治療用途に好ましい。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、一本鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントでありうる。したがって、ある種の用途については、抗体の可変領域のみが要求され、そしてそれは、Fab’、Fab、またはF(ab’’)部分を発生するように適切な試薬を用いて、ハイブリドーマから単離されたモノクローナル抗体を処理することによって得ることができる。このようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異的部分を、放射性同位体のような検出試薬と結合させることを含めた免疫診断手段で使用するために十分である。
【0032】
当然、本発明は、同様に本発明による抗体を産生するハイブリドーマに及ぶ。したがって、本発明は、本発明のモノクローナル抗体:ハイブリドーマの無限に拡大した細胞源を有利に提供する。特に好ましいのは、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2629号と指定された、ハイブリドーマcmHsp70.1、または2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1bのDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして受託番号DSM ACC2670号と指定された、cmHsp70.2より構成される群から選択されるハイブリドーマである。
【0033】
ハイブリドーマの培養物から直接的に免疫グロブリンを得るための代替策として、不死化ハイブリドーマ細胞を、連続発現および/または遺伝子操作のために再構成された重鎖および軽鎖遺伝子座の源として使用しうる。再構成された抗体遺伝子は、適切なmRNAから逆転写して、cDNAを産生しうる。所望の場合、重鎖定常領域は、様々なアイソタイプのものを交換、または一緒に排除しうる。可変領域を、一本鎖Fv領域をコードするために連結しうる。多重Fv領域は、1つより多くの標的に対する結合能力を付与するためにつなげることができるか、またはキメラ重および軽鎖組合せを使用しうる。いったん遺伝子材料が利用可能になれば、所望の標的を結合する両方のそれらの能力を保持する、上に記述されるとおりの類似体の設計は、確実である。抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の発生のための方法は、当業者に知られており、そして例えば、Gillilandら、Tissue Antigens 47巻(1996年)、1−20頁;Doeneckeら、Leukemia 11巻(1997年)、1787−1792頁に記述される。
【0034】
上記により、本発明は、上に記述される抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドにも関する。典型的には、ポリヌクレオチドによりコードされる上記可変領域は、上述のハイブリドーマのいずれか1つによって産生される抗体の可変領域のVおよび/またはVの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を包含する。当業者は、抗体の各可変ドメイン(重鎖Vおよび軽鎖V)が、しばしば、4つの比較的保存されたフレームワーク領域あるいは「FR」によって側面に配置される相補性決定領域あるいは「CDR」と呼ばれる3つの高頻度可変領域を包含することを知っている。本発明の抗体の可変領域に含まれるCDRは、例えば、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(米国公衆衛生局、3版、1983年、4版 1987年、5版 1990年、およびそれの最新版)によって決定されうる。当業者は、上述の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインを、他のポリペプチドの構築、または所望の特異性および生物学上の機能の抗体として使用しうることを十分に認識する。したがって、本発明は、上述の可変ドメインの少なくとも1つのCDRを包含するポリペプチドおよび抗体を包含し、そしてそれは、上でここに記述される抗体と実質的に同じか、または類似の結合特性を示す。当業者は、ここに記述される可変ドメインまたはCDRを使用して、抗体を、例えば、欧州特許公報A1 0451216号および欧州特許公報A1 0549581号で記述されるとおり、当業界で知られる方法によって構築しうることを十分に認識する。さらに、当業者は、結合親和性が、Kabatにより定義されるとおりCDRと部分的に重複するCDR内で、または超可変性ループ(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol. 196巻(1987年)、901−917頁)内でアミノ酸置換を行うことによって増強されうることを知っている。したがって、本発明は、1つまたはそれより多くの前述のCDRが、1つまたはそれより多くの、好ましくは2より多くないアミノ酸置換を包含する抗体にも関する。
【0035】
上に記述される抗体をコードする本発明のポリヌクレオチドは、例えば、DNA、cDNA、RNAまたは合成で生成されたDNAまたはRNA、またはそれらのポリヌクレオチドのいずれかを、単独で、または組合せでのいずれかで包含する組換えで生成されたキメラ・核酸分子でありうる。好ましくは、上記ポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。このようなベクターは、さらに、適切な宿主細胞中、そして適切な条件下での上記ベクターの選択に対処するマーカー遺伝子のような遺伝子を包含しうる。
【0036】
したがって、都合により、上記抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドと組み合わせて上記ポリヌクレオチドを包含するベクターは、本発明の好ましい実施態様である。
【0037】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物の細胞における発現を可能にする発現制御配列に操作的に繋げられる。上記ポリヌクレオチドの発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を包含する。真核生物の細胞、好ましくは、哺乳類細胞における発現を確保する調節構成要素は、当業者に周知である。それらは、通常には、転写の開始を確保する調節配列、および都合により、転写の終止および転写物の安定化を確保するポリ−Aシグナルを包含する。追加の調節構成要素は、転写並びに翻訳エンハンサー、および/または自然に連結した、または異種のプロモーター領域を含みうる。
【0038】
これに関して、当業者は、軽および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドが、両方の免疫グロブリン鎖または一方のみの可変ドメインをコードしうることを十分に認識する。同様に、上記ポリヌクレオチドは、同じプロモーターの制御下にありうるか、または発現については個別に制御されうる。原核生物の宿主細胞での発現を可能にする有望な調節構成要素は、例えば、大腸菌中のP、lac、trpまたはtacプロモーターを包含し、そして、真核生物の宿主細胞における発現を可能にする調節要素の例は、酵母におけるAOX1またはGAL1プロモーター、または哺乳類および他の動物細胞におけるCMV−、SV40−、RSV−プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV−エンハンサー、SV40−エンハンサーまたはグロビンイントロンである。
【0039】
転写の開始に起因する構成要素の外に、このような調節構成要素は、ポリヌクレオチドの下流に、SV40−ポリ−A部位またはtk−ポリ−A部位のような転写終止シグナルも包含しうる。さらに、使用される発現系によって、ポリペプチドを、細胞の区画に向けさせるか、またはそれを培地中に分泌する能力のあるリーダー配列は、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に加えることができ、そして当業界で周知である。(複数の)リーダー配列は、翻訳、開始および終止配列と、適切な相で、そして好ましくは、翻訳されたタンパク質、またはそれの部分の分泌を周辺腔または細胞外培地に向ける能力のあるリーダー配列と組み立てうる。都合により、異種配列は、所望の特徴、例えば、発現組換え産物の安定化または簡素化精製を与えるC−またはN−末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードしうる。この状況で、オカヤマ−バーグのcDNA発現ベクターpcDV1(ファルマシア)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(インビトロゲン(Invitrogen))またはpSPORT1(ギブコ・ビーアールエル(GIBCO BRL))のような適切な発現ベクターが当業界で知られている。
【0040】
好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換または形質移入する能力のあるベクター中での真核生物のプロモーター系であるが、しかし原核生物の宿主のための制御配列も使用しうる。いったんベクターが、適切な宿主に組込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現に適した条件下で維持され、そして所望の場合、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽/重鎖二量体または無傷の抗体、結合フラグメントまたは他の免疫グロブリン形態の収集および精製を続けうる;Beychok、Cells of Immunoglobulin Synthesis、アカデミック・プレス、ニューヨーク(Academic Press、N.Y.)(1979年)。
【0041】
いったん適切な遺伝物質が得られ、そして所望の場合には、類似体重および軽鎖の可変領域を最小限でコードするものを含めたコード配列をコードするように修飾され、そして適切な発現系、すなわち、形質移入されうるベクターに挿入されると、抗体またはそれのフラグメントは、宿主細胞中で組換えで発現されうる。多様なこのような宿主細胞を使用しうる;しかし、効率的な加工のために、哺乳類細胞が好ましい。この目的のために有用な典型的な哺乳類細胞系としては、CHO細胞、293細胞またはNSO細胞が挙げられる。
【0042】
したがって、本発明によるポリヌクレオチドまたはベクターを包含する宿主細胞は、好ましい実施態様である。ベクターは、遺伝子工学で従来使用されるプラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージでありうる。本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドと別々に、それらは、都合により、本発明の抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードする本発明のポリヌクレオチドを包含しうる。好ましくは、上記ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子移行または標的ベクターである。レトルウイルス、ワクシニア・ウイルス、アデノ関連ウイルス、肝炎ウイルス、またはウシ乳頭腫ウイルスのようなウイルスから由来する発現ベクターは、標的細胞集団への本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを送出のために使用されうる。当業者に周知である方法を、組換え体ウイルス・ベクターを構築するために使用しうる;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)(1989年)、ニューヨーク(N.Y.)およびAusubel、Current Protocols in
Molecular Biology、グリーン・パブリシング・アソシエーツ・アンド・ウイリー・インターサイエンス(Green
Publishing Associates and Wiley Interscience)に記述される技術を参照。代わりに、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターを、標的細胞を送出するためにリポソームに再構成しうる。本発明のポリヌクレオチド(例えば、免疫グロブリン鎖コード化配列と発現制御配列の重および/または軽鎖ドメイン)を含有するベクターを、細胞宿主の型により変化する周知方法により、宿主細胞に移行させうる。例えば、塩化カルシウム形質移入が、一般に、原核生物の細胞に利用されるのに対して、燐酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションを、他の細胞宿主のために使用しうる;Sambrook、上記を参照。
【0043】
本発明は、さらに、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞に関する。上記の宿主細胞は、原核生物または真核生物の細胞でありうる。宿主細胞中に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組込まれるか、または染色体外に維持されるかのいずれかでありうる。宿主細胞は、細菌、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞のようないずれかの原核生物または真核生物の細胞でありうる。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロマイセス属のもの、特に、サッカロマイセス・セレヴィシエ種のものである。用語「原核生物の」は、本発明の抗体または関連の免疫グロブリン鎖の発現のためのDNAまたはRNA分子で形質転換または形質移入されうる全ての細菌を含むことが意味される。原核生物の宿主は、例えば、大腸菌、ねずみチフス菌、セラチア・マルセッセンスおよび枯草菌のようなグラム陰性並びにグラム陽性細菌を含みうる。用語「真核生物の」は、酵母、高等植物、昆虫および好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくはNSOおよびCHO細胞を含むことが意味される。組換え体生成手段で使用される宿主によって、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる抗体または免疫グロブリン鎖は、糖化されうるか、または非糖化されうる。本発明の抗体、または対応の免疫グロブリン鎖も、当初のメチオニンアミノ酸残基を含みうる。本発明のポリヌクレオチドは、当業者に一般に知られる技術のいずれかを使用して、宿主を形質転換または形質移入するのに使用されうる。さらに、融合し、操作可能に連結された遺伝子を作製し、そしてそれらを、例えば、哺乳類細胞および細菌中で発現させる方法は、当業界で周知である(Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク(Cold Spring Harbor,N.Y.)(1989年))。遺伝子構築物およびそこに記述される方法は、真核生物または原核生物の宿主における本発明の抗体または対応の免疫グロブリン鎖の発現のために利用されうる。一般に、挿入されたポリヌクレオチドの十分な転写を促進するプロモーター配列を含有する発現ベクターを、宿主と繋げて使用する。発現ベクターは、特に、複製の起点、プロモーター、およびターミネーター、並びに形質転換された細胞の表現型選択を提供する能力がある特異的遺伝子を包含する。免疫グロブリン発現および分泌に関するDNA配列および宿主細胞のための適切な源細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(「Catalogue of Cell Lines and Hybridoma」、5版(1985年)、米国メリーランド州ロックビル(Rockville,Maryland)、そしてそれは、参照してここに組込まれる)のような多数の源から得ることができる。さらに、発明の細胞を包含する遺伝子組み換え動物、好ましくは哺乳類は、本発明の抗体の大規模生成のために使用されうる。
【0044】
本発明は、腫瘍細胞上でHsp70の細胞外局在化エピトープ、またはそれの官能性フラグメントまたは(複数の)免疫グロブリン鎖に結合する抗体を作製する方法も提供し、そして上記方法は、
(a)上に記述される細胞を培養し、そして
(b)その培養物から、上記抗体またはそれの官能性フラグメントまたは(複数の)免疫グロブリン鎖を単離すること
を包含する。発現系は、好ましくは、シグナル・ペプチドを含むように設計されて、その結果、生じる抗体は、培地中に分泌される;しかし、細胞間産生も可能である。
【0045】
形質転換宿主は、発酵装置で育成し、そして当業界で知られる技術によって培養して、最適な細胞成長を達成しうる。いったん発現されると、本発明の全抗体、それらの二量体、個々の軽および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を、硫酸アンモニウム沈降法、アフィニティーカラム、カラム・クロマトグラフィー、ゲル電子穿孔法などを含めた当業界の標準手段によって精製しうる;Scopes、「Protein Purification」、スプリンガー・ベルラーグ(Springer Verlag)、ニューヨーク(N.Y.)(1982年)を参照。その後、本発明の抗体またはそれの対応の(複数の)免疫グロブリン鎖を、成長用培地、細胞溶解物、または細胞膜分画から単離しうる。たとえば、本発明の微生物で発現された抗体または免疫グロブリン鎖の単離および精製は、例えば、本発明の抗体の定常領域に対して向けられるモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を包含するもののような、分取クロマトグラフィー分離および免疫学上の分離のようなあらゆる従来の手段によりうる。本発明の抗体を、例えば、薬剤標的および画像アプリケーションのための他の部分に、さらに繋げうることは、当業者に明らかである。このような結合は、抗体または抗原の発現の後に、付属物の部位に、化学的に行われうるか、または結合産物を、DNAレベルで、本発明の抗体または抗原に操作しうる。その後、DNAを、適切な宿主系で発現させ、そして必要な場合、発現タンパク質を、収集および変性させる。
【0046】
医薬用途として、少なくとも約90から95%までの同質性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、そして98から99%まで、またはそれより多くの同質性が、最も好ましい。いったん部分的に、または所望の場合同質性まで精製すると、その後抗体を、治療用途に(体外にを含めて)、またはアッセイ手段を開発および行う上で使用しうる。
【0047】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを用いて、またはベクターを用いて、細胞を遺伝子操作することを包含する、本発明の抗体を発現する能力のある細胞、またはそれの対応の(複数の)免疫グロブリン鎖を産生する方法にも関する。本発明の方法により得ることができる細胞は、例えば、本発明の抗体とそれの抗原との相互作用を試験するために使用しうる。
【0048】
さらに、本発明は、実施例2で概略されるとおり、新規精製プロトコールを包含するハイブリドーマから抗体を得る方法に関する。一般の精製プロトコールが、本発明の抗体を得るために使用されうる場合、それらは、実施例2で記述される方法より有効性が低い可能性がある。歴史的に、プロテインAは、免疫グロブリン精製の好ましい方法であった。しかし、プロテインAを使用して精製できない一本鎖抗体IgE、IgYおよびIgMのような所定の型の抗体がある。免疫グロブリン精製、チオ親和性吸収クロマトグラフィーの代替的方法は、一般に、これらの型の用途、並びに免疫グロブリン精製に理想的である。免疫グロブリンの精製を含めたタンパク質精製に関する全般的参照のために、例えばビーディー・バイオサイエンシズ・クロンテック(BD Biosciences Clontech)、米国カリフォルニア州パブロアルト(Pablo
Alto, California, USA)、www.clontech.comから得た冊子を参照。チオ親和性アガロースを用いた先の方法に基づいて、新規精製プロトコールが、本発明により確立され、そしてそれは、ハイブリドーマから、特に、ここに記述されるべき本発明の抗体を産生するハイブリドーマのものからIgG1、IgG2aおよびIgM型の抗体を得るのに適している。しかし、抗体の精製のための新規方法は、一般に、使用可能であり、したがって、本発明の課題であることは、理解されるべきである。実験の詳細に関しては、実施例2を参照。この点で、例えば、様々の成分の濃度の+/−10%の偏差が許容できうるものである個々の緩衝液の組成で些細な修飾を有しうる実施例2で記述されるとおりの精製プロトコールを含めて、抗体を得る方法は、同様に本発明の範囲に包含されると理解すべきである。さらに、本発明は、ここに記述される新規方法により得られる抗体に、並びにこのような抗体の結合フラグメントに関する。当然、本発明は、ここに記述されるもののようなこのような抗体と結合フラグメントの偏差にも及ぶ。
【0049】
前に明記したとおり、免疫グロブリンまたはそれのコード化cDNAを、さらに修飾しうる。したがって、別の実施態様では、本発明の方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異的抗体、融合抗体、標識抗体、またはそれらの内のいずれか1つの類似体を産生する段階の内のいずれか1つを包含する。対応の方法は、当業者に知られており、そして例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies, A Laboratory Manual」、シーエスエイチ・プレス(CSH Press)、コールド・スプリング・ハーバー、1988年で記述される。上記抗体の誘導体は、ファージ表示技術によって得ることができるとき、BIAコア・システムで使用される場合の表面プラズモン共鳴を、ここに記述された抗体の内のいずれか1つのものと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるのに使用しうる(Schier、Human Antibodies hybridoma 7巻(1996年)、97−105頁;Malmborg、J. Immunol.Methods 183巻(1995年)、7−13頁)。キメラ抗体の産生は、例えば国際公開公報WO89/09622号で記述される。ヒト化抗体の生成の方法は、例えば、欧州特許公報A1 0239400号および国際公開公報WO90/07861号で記述される。本発明により利用されるべき抗体の別の源は、いわゆる異種間抗体である。マウスでのヒト抗体のような異種間抗体の生成の一般原則は、例えば、国際公開公報WO91/10741号、
国際公開公報WO94/02602号、 国際公開公報WO96/34096号および国際公開公報WO96/33735号で記述される。上に検討されるとおり、本発明の抗体は、例えば、Fv、FabおよびF(ab)、並びに一本鎖を含めて、完全抗体以外に多様な形態で存在しうる;例えば国際公開公報WO88/09344号を参照。
【0050】
例えば、(複数の)アミノ酸欠失、(複数の)挿入、(複数の)置換、(複数の)付加、および/または(複数の)組換えおよび/または当業界で知られる他のあらゆる(複数の)修飾を、単独で、または組合わせて使用することによって、本発明の抗体またはそれらの対応の免疫グロブリン鎖を、当業界で知られる従来の技術を使用してさらに修飾しうる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の下にあるDNAに、このような修飾を導入する方法は、当業者に周知である;例えば、Sambrook、Molecular
Cloning A Laboratory Manual、コールト・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(1989年)ニューヨークおよびAusubel、Current Protocols in
Molecular Biology、グリーン・パブリシング・アソシエーツ・アンド・ウイリー・インターサイエンス、ニューヨーク(1994年)を参照。本発明の抗体の修飾は、アセチル化、水酸化、メチル化、アミド化、および炭化水素または脂質部分の付着、コファクターなどを含む側鎖修飾、骨格修飾、およびN−およびC−末端修飾を含めた1つまたはそれより多くの構成要素アミノ酸での化学的および/または酵素的誘導体化を含む。同様に、本発明は、カルボキシル末端で免疫刺激性リガンドのような異種分子に融合したアミノ酸末端に、記述された抗体またはそれのある種のフラグメントを包含するキメラ・タンパク質の産生を包含する;例えば、対応の技術詳細についてはWO00/30680号を参照。
【0051】
さらに、本発明は、上に記述されるとおりHsp70結合フラグメントを含有する、例えば、明記されたモノクローナル抗体の内のいずれか1つの可変領域のCDR3領域を含有するものを含めた小型ポリペプチドを包含する。このようなペプチドは、本発明により有用なHsp70結合剤を産生する組換え手段により容易に合成または産生されうる。このような方法は、当業者に周知である。商業上利用可能な自動ペプチド合成機を使用して、ペプチドを合成しうる。ペプチドを発現するDNAを、発現ベクターに組込み、そして細胞を発現ベクターで形質転換して、ペプチドを産生することによる組換え体技術によって、ペプチドを産生しうる。ペプチドHsp70結合剤を合成する上で使用するためのCDR領域の配列は、当業界で知られる方法によって決定されうる。重鎖可変領域は、一般に長さ100から150個までのアミノ酸の範囲に入るペプチドである。軽鎖可変領域は、一般に長さ80から130個までのアミノ酸の範囲に入るペプチドである。およそ3−25個のアミノ酸のみを含む重および軽鎖可変領域内のCDR配列を、当業者によって、容易に配列決定しうる。ペプチドは、市販の源により合成することもできる。
【0052】
ペプチドが、Hsp70に結合するかどうかを決定するために、あらゆる既知結合アッセイを使用しうる。例えば、ペプチドを、表面上に固定し、そしてその後、標識Hsp70と接触させうる。ペプチドと相互作用するHsp70の量、またはペプチドと結合しない量を、その後定量して、ペプチドがHsp70に結合するかどうかを決定しうる。そこに固定された前述の抗−Hsp70モノクローナル抗体を有する表面は、陽性対照として役割を果たしうる。
【0053】
Hsp70結合剤のスクリーニングは、拮抗実験を利用しても行われうる。試験されるべきHsp70結合剤が、モノクローナル抗体の結合における減少により示されるとおり、本発明の抗−Hsp70モノクローナル抗体と競合する場合、それにより、その剤および抗−Hsp70モノクローナル抗体が、同じものと、または密接に関連したエピトープと結合することがありそうである。剤が、上に記述される抗−Hsp70モノクローナル抗体の特異性を示すかどうかを決定するためのさらに別の方法は、それが、正常には反応性であり(すなわち、結合する)、そしてその後、試験されるべき剤を添加して、試験されるべき剤が、Hsp70を結合するそれの能力において阻害されるかどうかを決定するものであるHsp70と、モノクローナル抗体を、前培養することである。試験されるべき剤が、その後阻害される場合、全体の見込みでは、それは、抗−Hsp70モノクローナル抗体と同じか、または機能的に等価なエピトープおよび特異性を示す。
【0054】
当業者に知られる日常的手段を使用して、剤が、T細胞からTNFの放出を測定することのようなインビトロアッセイでT細胞増殖または細胞毒性を調節するものであるかどうかを決定することによって、または51Cr放出アッセイによって、Hsp結合剤が、本発明により有用であるかどうかを決定できる;例えば、Herinら、Int.J.Cancer 39巻(1987年)、390−396頁を参照。他のアッセイは、実施例およびここのどこかに記述される;国際公開公報WO02/22656号も参照。
【0055】
上に記述されるポリペプチド(例えば、抗体)および他のHsp70結合剤も、ヒトにおける障害について免疫療法で使用しうる。Hsp70結合剤と関連してここに使用される場合、用語「免疫療法で」または「免疫療法」は、予防的、並びに治療的投与の両方を示す。したがって、腫瘍、または感染性疾患のような疾患の可能性および/または重篤度を減らすために、ペプチドを、危険度の高い対象に投与するか、またはそのような疾患をすでに明白に示している対象に投与しうる。
【0056】
NK細胞活性を増大または減少させるHsp70結合剤は、例えば、国際出願公報WO02/22656号に記述されるアッセイを使用して、そして混成リンパ球反応、クロム送出アッセイ、TNF送出アッセイ、およびチミジン組込アッセイのような標準キラー細胞細胞毒性および増殖アッセイによって選択されうる。一価Hsp70結合剤、例えば、当初の抗体のわずか1つの結合ドメインを有する一本鎖抗体の誘導体は、標的細胞により発現されたHsp70ポリヌクレオチドを還元することによって、Hsp70の刺激性シグナルを阻害すると思われる。
【0057】
したがって、本発明は、好ましくは、モノクローナル抗体cmHsp70.1またはcmHsp70.2と実質的に同じ免疫学上の結合特徴を有する、すなわち、ここに例示される本発明の抗体と同じエピトープ、そして実質的に同じ親和性、または少なくとも1/10の親和性を示すものを識別する、いずれかの抗体および類似の結合分子に関する。このような抗体および結合分子を、例えば本発明のハイブリドーマにより産生される抗体を用いた競合アッセイを使用することにより、それらの結合特異性および親和性について試験しうる。本発明の抗体は、特に、モノクローナル抗体基本の療法に影響を受けやすい実質的にあらゆる疾患を治療する上で個々に利用法を見出す。特に、免疫グロブリンは、免疫抑制剤として使用されうる。本発明の抗体に関して、処置に適切な典型的疾患状態としては、炎症症状が挙げられる。抗体は、例えば、免疫応答に関連した疾患に罹患する患者で、治療的に使用しうる。;上記を参照。このような療法は、例えば、本発明の抗体の投与によって達成されうる。
【0058】
このような投与は、未標識、並びに標識抗体または抗原を利用しうる。標識剤を、本発明の抗体または抗原に、直接的または間接的にのいずれかで、結合しうる。間接結合の1つの例は、スペーサー部分の使用によるものである。さらに、本発明の抗体は、別のドメインを包含でき、そしてそのドメインは、共有または非共有結合によって連結される。連結は、当業界で知られており、そして上に記述される方法による遺伝子融合に基づくか、または例えば、国際公開公報WO94/04686号に記述されるとおり化学的架橋によって行われうる。本発明の抗体を包含する融合タンパク質に存在する別のドメインは、好ましくは、柔軟性リンカー、有利には、そのポリペプチドリンカーが、その別のドメインのC末端と、本発明の抗体のN末端との間、またはその逆の距離を埋めるために十分な長さの複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を包含するものであるポリペプチドリンカーによって連結されうる。上に記述される融合タンパク質は、さらに、切断可能なリンカーまたはプロテイナーゼについての切断部位を包含しうる。これらのスペーサー部分は、順に、不溶性または可溶性のいずれかであり得て(Dienerら、Science 231巻(1986年)148頁)、そして標的部位で、抗原から薬剤送出を可能にするために選択されうる。免疫療法のための本発明の抗体、抗原およびエピトープに結合させうる治療剤の例は、薬剤、放射性同位体、レクチン、および毒素である。本発明の抗体、抗原およびエピトープに接合させうる薬剤としては、マイトマイシンC、ダウノルビシン、およびビンブラスチンのような薬剤と伝統的に称される化合物が挙げられる。例えば、免疫療法のために放射性同位体で接合した本発明の抗体、抗原またはエピトープを使用する上で、所定の同位体が、白血球分布、並びに安定性および排出のような因子によって、他のものよりいっそう好ましい可能性がある。自己免疫応答によって、ある種のエミッターが、他のものに好ましい可能性がある。一般に、αおよびβ粒子放出放射性同位体が、免疫療法では好ましい。好まれるのは、短い範囲の高エネルギーの、212Biのようなエミッターである。治療目的のための本発明の抗体、抗原またはエピトープに結合させうる放射性同位体は、125I、131I、90Y、67Cu、212Bi、212At、211Pb、47Sc、109Pdおよび188Reである。本発明の抗体、抗原またはエピトープに結合させうる他の治療剤、並びにエキソビボおよびインビボ治療プロトコールは、当業者によって知られているか、または容易に確かめられうる。適切な場合どんな場合でも、当業者は、タンパク質様材料それ自身の代わりに、上に記述される抗体、抗原または対応のベクターのいずれか1つをコードする本発明のポリヌクレオチドを使用しうる。
【0059】
上に記述されるとおり、本発明のポリヌクレオチドは、単独で、または細胞中の本発明の(ポリ)ペプチドを発現するベクターの一部として使用されうる。原則として、これは、原形質膜上でのHsp70の不適当な発現に関連した疾患の遺伝子療法をも可能にする。例えば、細胞が本発明の抗体の結合ドメインを包含する受容体を発現することを可能にするために、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを免疫系の細胞に、特に細胞毒性キラー細胞に導入すること、そしてそれが細胞にそれらの細胞表面でHsp70を発現する腫瘍細胞または他の罹患した細胞を特異的に識別する能力をもたせることは、予想される。本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを、順に、抗体または対応の受容体分子を産生する細胞に導入する。エキソビボまたはインビボ技術によって、治療遺伝子を細胞に導入することに基づく遺伝子療法は、遺伝子移行の最も重要な使用法の内の1つである。適切なベクターおよびインビトロまたはインビボ遺伝子療法に関する方法は、文献で記述され、そして当業者に知られている;例えば、Giordano、Nature Medicine 2巻(1996年)、534−539頁;Schaper、Circ.Res.79巻(1996年)、911−919頁;Anderson、Science 256巻(1992年)、808−813頁;Isner、Lancet 348巻(1996年)、370−374頁;Muhlhauser、Circ.Res.77巻(1995年)、1077−1086頁;Wang、Nature Medicine 2巻(1996年)、714−716頁;国際公開公報WO94/29469頁;国際公開公報WO97/00957頁またはSchaper、Current Opinion in Biotechnology 7巻(1996年)、635−640頁、およびそこに引用される文献を参照。本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは、細胞への、直接導入のために、またはリボソームまたはウイルス性ベクター(例えば、アデノウイルス性、レトロウイルス性)を介した導入のために設計されうる。好ましくは、上記細胞は、生殖系細胞、胚性細胞、または卵細胞またはそれから誘導されたものであり、最も好ましくは、上記細胞は、幹細胞である。
【0060】
原形質膜に結合したHsp70は、他の細胞表面分子と相互作用し、そしてそれは、これらの相互作用を調節する剤が、これらのタンパク質のいずれかが関与する疾患および症状の治療において有益で、付加的で、そして好ましくは相乗効果を示すことを推測するのが理にかなっている。さらに、このような剤は、上記タンパク質のいずれかの存在または不在が、上記疾患または症状に関連している診断に有用であることが予想される。したがって、本発明は、本発明による抗体の結合ドメイン、細胞表面膜と結合した熱ショックタンパク質(HSP70)を結合するそれの免疫グロブリン鎖またはそれの結合フラグメント、および少なくとも1つの別の官能性ドメインを包含する新規の二または多官能性分子も提供する;上記も参照。好ましい実施態様では、上記二または多官能性分子は、二重特異的分子、特に好ましくは、二重特異的抗体である。
【0061】
用語「二重特異的分子」としては、物理的または化学的手段により直接的または間接的に連結された少なくとも2つの明示された結合ドメインを含む分子が挙げられる。しかし、本発明の二重特異的分子は、別の結合ドメインのような別の官能性ドメインおよび/または細胞毒性剤または標識などのような部分を包含しうる;上記も参照。
【0062】
所望の抗原について少なくとも1つの特異性を示す多価の多重特異的分子の製造のための手段および方法は、当業者に知られている。例えば、国際公開公報WO99/59633号は、HLAクラスII不変鎖(Ii)について少なくとも1つの特異性を示す多量体分子、および治療または診断剤、自己抗体、抗移植片抗体、および他の望ましくない化合物のクリアランスのためのそれらの使用法を記述する。ここで使用される場合、特に指示されるか、または文脈から明らかでない限り、抗体または結合ドメイン、領域およびフラグメントは、当業界で周知であるとおり標準の定義による;例えば、Abbasら、Cellular and Molecular Immunology(1991年)、ダブリュー.ビー.サウンダース・カンパニー(W.B.Saunders Company)、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia, PA.)を参照。
【0063】
本発明の所定の二重特異的分子は、抗原への結合のために、またはタンパク質とそれのリガンドとの相互作用を遮断するために使用される;しかし、免疫細胞と標的細胞との間の相互作用を促進するためのそれらの使用法が、好ましい。最終的には、本発明の抗原結合分子は、免疫細胞、腫瘍細胞、感染した細胞、抗腫瘍剤、標的部分、レポーター分子または目的の抗原に対する検出可能なシグナル発生剤を局在化するために使用される。
【0064】
本発明の二重特異的分子は、標的細胞上の抗原を、免疫系エフェクター細胞上の抗原と架橋させうる。これは、例えば、細胞表面上に目的の特定の抗原を有する細胞に向けられる免疫応答を促進するのに有用でありうる。本発明により、免疫系エフェクター細胞としては、細胞の免疫応答を活性化するT細胞のような抗原特異的細胞、およびマクロファージ、好中球、および細胞の免疫応答を仲介するナチュラルキラー(NK)細胞のような非特異的細胞を含む。したがって、本発明の二重特異的分子は、免疫系エフェクター細胞のあらゆる細胞表面抗原についての別の結合部位を有しうる。このような細胞表面抗原としては、例えば、サイトカインおよびリンホカイン受容体、Fc受容体、CD3、CD16、CD28、CD32、CD64およびCD94が挙げられる。一般に、抗原結合部位は、前述の抗原に対する抗体から誘導され、そして当業で周知であるscFvによって供される。サイトカインおよびリンホカイン受容体に特異的である本発明の抗原結合部位は、受容体に関する天然のリガンドの全てまたは一部に対応するアミノ酸の配列でもありうる。例えば、細胞表面抗原は、IL−2受容体である場合、本発明の抗原結合タンパク質は、IL−2に対応するアミノ酸の配列を包含する抗原結合部位を有しうる。他のサイトカインおよびリンホカインとしては、例えば、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−15(IL−15)のようなインターロイキン、および顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)および顆粒球CSF(G−CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF)が挙げられる。
【0065】
さらに、記述される二重特異的分子のいずれか1つは、活性化エフェクター細胞上にFcガンマRIを結合する結合ドメインを含有しうる。B細胞悪性腫瘍のような腫瘍の治療のためのこのアプローチの医療性能は、最も魅力的に見える。癌細胞表面上の抗FcガンマR scFvの発現による抗腫瘍免疫性の誘発は、Gruelら、Gene Ther.8巻(2001年)、1721−1728頁により記述される。
【0066】
さらに、または代わりに、本発明の二重特異的分子は、CD3を結合する結合ドメインを包含しうる。この実施態様は、特に、癌腫の治療のために有用である;例えば、三官能性二重特異的抗体(アルファEpCAM×アルファCD3)による前立腺癌腫細胞の溶解について報告するRiesenbergら、J.Histochem.Cytochem.49巻(2001年)、911−917頁を参照。
【0067】
本発明の二重特異的分子における官能性ドメインおよびそれの使用法のこれらおよび他の組合わせは、本発明によって包含される。
好ましい実施態様では、本発明の二重特異的分子は、二重特異的抗体である。二重特異的抗体は、例えば結合ドメインを包含するポリペプチド鎖の結合のためのFc定常領域を包含しうる。ポリペプチド鎖の結合を供することに加えて、Fc定常ドメインは、他の免疫グロブリン機能に寄与する。その機能としては、補体介在細胞毒性の活性化、抗体依存性細胞介在細胞内毒性の活性化、およびFc受容体結合が挙げられる。本発明の抗原結合タンパク質を、治療または診断目的で投与する場合、Fc定常ドメインは、血清半減期にも寄与しうる。Fc定常ドメインは、あらゆる哺乳類または鳥類種から得ることができる。本発明の抗原結合タンパク質を、ヒトの治療に使用する場合、可変ドメインが非ヒトでありうるが、ヒト起源の定常ドメインが好ましい。ヒト可変ドメインが好まれる場合には、キメラscFvsを使用しうる。二重特異的抗体の産生の別の手段および方法は、当業界で記述される;例えば、二重特異的または二価二重ヘッド抗体フラグメントを産生する方法を記述し、2つのポリペプチド鎖を含有する結合複合体より構成される国際公開公報WO97/14719号、および国際公開公報WO01/80883号を参照。さらに、本発明の二重特異的分子は、補体介在細胞毒性および抗体依存性細胞毒性を活性化する能力を含めた、天然の抗体として機能するそれらの能力を維持しつつ、抗原に対するそれらの親和性で最適化されうる;例えば国際公開公報WO01/90192号を参照。
【0068】
さらに、本発明は、本発明の抗体、二または多官能性分子、ポリヌクレオチドまたは上述のベクターまたは細胞を包含する組成物に関する。本発明の組成物は、さらに医薬上許容しうる担体を含有しうる。
さらに、基本の分子の溶解性、半減期、吸収などを改善する部分を添加しうる。代わりに、その部分は、基本の分子の望ましくない副作用を弱めるか、または基本の分子の毒性を減少させうる。このような部分の例は、レミントンの製薬科学のような多様な教科書で記述される。
【0069】
適切な医薬担体の例は、当業界で周知であり、そしてリン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンのようなエマルジョン、多様な型の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。このような担体を包含する組成物は、周知の従来の方法によって配合されうる。これらの医薬組成物を、適切な用量で対象に投与しうる。適切な組成物の投与は、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与による様々な方法によってもたらされる。鼻用噴霧配合物のようなエアゾル配合物としては、保存剤および等張剤と活性剤の精製水性または他の溶液が挙げられる。このような配合物は、好ましくは、鼻の粘膜に適合するpHおよび等張状態に調節される。直腸または膣投与のための配合物は、適切な担体を伴う坐剤として現されうる。
【0070】
用法は、担当の医師および臨床的因子によって決定される。医療業界で周知であるとおり、いずれか一人の患者のための投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全般的健康、および併用して投与される予定の他の薬剤を含めた多くの因子による。典型的用量は、例えば、0.001から1000μgまでの範囲(またはこの範囲内での発現について、または発現の阻害について核酸の)にありうる;しかし、この典型的範囲の上または下の用量は、特に、前述の因子を考慮して予想される。一般に、医薬組成物の通常の投与としての用法は、一日当たり1μgから10mg単位の範囲内にあるべきである。用法が、継続的注入である場合、それぞれ分当たり体重のキログラム当たり1μgから10mg単位までの範囲にあるべきである。経時的評価により進展を観察しうる。投与量は、変化するが、しかしDNAの静脈内投与についての好ましい投与量は、DNA分子のおよそ10から1012までのコピーである。本発明の組成物は、局所に、または全身に投与しうる。投与は、一般に、非経口で、例えば、静脈である;DNAは、標的部位に直接的に、例えば、内部または外部標的部位への遺伝子銃送出により、または動脈での部位に対するカテーテルにより投与されうる。非経口投与のための製剤としては、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含めた、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口伝搬体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液、または固定油が挙げられる。
【0071】
静脈内伝搬体としては、流動体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンガーのデキストロースに基づいたもののような)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような保存剤および他の添加剤も、存在しうる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図される使用法によって、インターロイキンまたはインターフェロンのような別の剤を包含しうる。さらに、医薬組成物は、例えば、本発明の医薬組成物が、受動免疫法に関して上に記述される二重特異的分子を包含する場合、ワクチンとして処方されうる。
【0072】
本発明の治療または診断用組成物を、上に明記されるとおり障害を治療または診断するのに治療上十分有効な用量で、個体に投与する。有効な量は、個体の症状、体重、性別および年齢のような多様な因子によって変化しうる。他の因子は、投与の形態を含む。医薬用組成物は、冠状動脈内、腹腔内、皮下、静脈内、経皮、滑液内、筋肉内、または経口経路によるような多様な経路によって個体に供されうる。さらに、他の剤の同時投与または連続投与が望ましい可能性がある。治療上有効な用量は、兆候または症状を改善するのに十分な本発明の活性分子の量に該当する。そのような化合物の治療上の効率および毒性は、細胞培養または実験動物での標準の製薬手段、例えばED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%までが死に到る用量)によって決定されうる。治療および毒性効果の間の用量比は、治療上の指数であり、そしてそれは、比LD50/ED50として表されうる。
【0073】
本発明の医薬組成物は、さらに、好ましい実施態様では、免疫刺激剤を包含する。免疫刺激剤は、免疫反応を増強するか、または正常な条件下では、ヒトまたは細胞毒性の防御反応を誘発しないエピトープに対する免疫反応を誘発するために使用される。このような剤は、当業界で周知であり、そして同時刺激分子、例えばサイトカインおよび/またはアジュバントのような多様な分子から選択されうる。
【0074】
「アジュバント」は、例えば、それに限定されないが、抗原の免疫刺激特性、または化合物または薬剤の薬理学上の効果を含めた免疫応答を増強する物質に該当する。アジュバントは、免疫応答、例えば、抗原に対する免疫応答を非特異的に増強しうる。例えば、「フロイントの完全アジュバント」は、免疫原、乳化剤およびマイコバクテリアを含有する油および水のエマルジョンである。別の例「フロイントの不完全アジュバント」は、マイコバクテリアなしである以外は同じものである。アジュバントは、油、乳化剤、弱毒化細菌、水酸化アルミニウム、またはリン酸カルシウム(例えば、ゲル形態で)、またはそれの組み合わせを包含する。アジュバントを、対象(例えば、筋肉内で、または皮下での注射を介して)に、抗体を産生するのに十分な量で、投与しうる。抗体およびT細胞応答における様々の免疫学上のアジュバントの効果を、マウスでのMUC1−KLHとGD3−KLH接合癌ワクチンを用いた免疫化と比較するのは、Kimら、Vaccine 18巻(1999年)、597−603頁に記述された。この刊行物では、IgMおよびIgG抗体応答についてのELSIAアッセイ、並びにT細胞応答についての増殖およびサイトカイン放出(IFN−ガンマおよびIL−4)も、記述されており、そしてそれらも、本発明によって行われうる。
【0075】
本発明は、本発明による抗体、二または多官能性分子、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、そして、都合により、免疫または核酸基本の診断方法で従来使用された試薬を包含する診断用組成物に該当する。診断での用途としては、多様な技術は、生物分子を標識するのに利用可能であり、当業者に周知であり、そして本発明の範囲内にあると考えられる。このような技術は、例えば、Tijssen、「Practice and theory of enzyme immuno assays」、Burden,RHおよびvon Knippenburg(編)、15巻(1985年)、「Basic methods in molecular in biology」;Davis LG,Dibmer MD;Battey Elsevier(1990年)、Mayerら(編)「Immunochemical methods in cell and molecular biology」、アカデミック・プレス(Academic Press)、ロンドン(London)(1987年)、またはシリーズで「Methods in Enzymology」、アカデミック・プレス,インク.に記述される。当業者に知られる多くの異なる標識および標識する方法がある。一般に使用される標識は、中でも、蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、テキサス・レッドなどのような)、酵素(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼのような)、放射性同位体(32Pまたは125Iのような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド性金属、化学−または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノールまたはアクリジニウムのような)を包含する。酵素またはビオチニル基の共役結合、ヨウ化、リン酸化、ビオチン化、ランダム初回刺激、ニック翻訳、テーリング(終止トランスフェラーゼを用いた)のような標識手段は、当業界で周知である。検出方法は、それに限定されないが、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡法、直接および間接酵素的反応などを包含する。
【0076】
さらに、上述の化合物などを、固相に付着させうる。固相は、当業者に知られており、そしてポリスチレン・ビーズ、ラテックス・ビーズ、磁性ビーズ、コロイド様金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロース・ストリップ、膜、シート、動物赤血球細胞、または赤血球細胞ゴースト、反応トレイのウエルのデュラサイトおよび壁、樹脂管または他の試験管を包含しうる。固相で本発明の二重特異的分子を固定する適切な方法は、それに限定されないが、イオン性、疎水性、共役結合相互作用などが挙げられる。固相は、上で定義されたとおり、その領域を誘引および固定する能力を示す1つまたはそれより多くの別の受容体(類)を保有しうる。この受容体は、試薬それ自体に、または捕捉試薬に接合した荷電物質に関して反対に荷電される物質を包含するか、または受容体は、固相に固定(に付着)され、そして上に定義されるとおり試薬を固定する能力があるあらゆる特異的結合相手でありうる。
【0077】
一般に使用される検出アッセイは、放射性同位体または非放射性同位体法を包含しうる。これらは、中でも、RIA(放射性同位体アッセイ)およびIRMA(免疫放射性免疫アッセイ)、EIA(酵素免疫アッセイ)、ELISA(酵素結合免疫アッセイ)、FIA(蛍光免疫アッセイ)、およびCLIA(化学発光免疫アッセイ)を含む。当業界で使用される他の検出方法は、トレーサー分子を利用しないものである。これらの方法の1つの原型は、少なくとも2つの粒子を架橋する所定の分子の特性に基づいた凝集アッセイである。
【0078】
核酸に基づいた診断フォーマットも、当業者に周知であり、そして、それに限定されないが、サザンまたはノーザンブロットのハイブリダイゼーション、PCR、配列決定、RFLPおよびSSCP分析が挙げられる。
【0079】
本発明は、本発明の抗体または二重特異的分子を包含するキットにも関する。このようなキットは、多様な目的のために有用であり、そしてそれに限定されないが、法医学的分析、診断用途、および上に記述される疾患および障害による皮膚科学研究が挙げられる。このようなキットは、典型的には、密な閉じ込めで、少なくとも1つの容器を保持するのに適切な区画化された担体を包含する。担体は、さらに、標識抗原または酵素基質または同等物のような検出のための試薬を包含する。
【0080】
当然、本発明は、細胞外の局在化Hsp70の存在または増大量が腫瘍を示すものである本発明による抗体、または二または多機能性分子を用いて、患者から得たサンプル中の細胞を分析することを包含する腫瘍を診断する方法も包含する。
【0081】
本方法は、好ましくは、免疫学上の段階を包含する。抗体および/または二または多官能性分子を使用する一般に使用される診断方法は、例えば、凍結またはパラフィン埋設組織断片での免疫組織化学、ウエスタンブロット、免疫沈降法などである。都合により、シグナル発生剤を容易に検出することは、上記抗体または二または多官能性分子に関連して使用されうる。
【0082】
検出可能なシグナル発生剤は、診断目的のためにインビボおよびインビトロで有用である。シグナル発生剤は、外部手段、通常には電磁照射の測定によって検出可能である測定可能なシグナルを発生する。ほとんどの部分について、シグナル発生剤は、酵素または発色団であるか、または蛍光、燐光または化学発光物質により光を発散する。発色団としては、紫外線または可視光波長範囲で光を吸収し、そして酵素で触媒される反応の基質または分解産物でありうる色素が挙げられる。
【0083】
前に記述されるとおり、本発明の組成物は、診断、予防、ワクチン接種または治療に有用である。したがって、本発明は、腫瘍の治療または免疫応答を調節するための医薬組成物の作製のための本発明の抗体、二または多官能性分子、核酸分子、または細胞の使用に関する。
【0084】
これらの実施態様については、本発明の抗体または二または多官能性分子を、抗腫瘍剤または検出可能なシグナル発生剤に化学的に、または生合成で連結させうる;上記も参照。二特異的分子に連結した抗腫瘍剤、例えば、二特異的抗体は、抗体が結合したか、または細胞の環境下では抗体が結合した腫瘍を破壊するか、または損傷を与えるあらゆる剤が挙げられる。例えば、抗腫瘍剤は、化学療法剤または放射性同位体のような毒性剤である。適切な化学療法剤は、当業者に知られており、そしてアントラサイクリン(例えば、ダウノマイシンおよびドキソルビシン)、メトトレキサート、ビンデシン、ネオカルチノスタチン、シス−プラチナ、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5−フルオロウリジン、メルファラン、リシンおよびカリケアマイシンが挙げられる。化学療法剤を、従来の方法を使用して抗体に接合させる;例えば、HermentinおよびSeiler、Behring Inst.Mitt.82巻(1988年)、197−215頁を参照。それを必要とする対象で、腫瘍を治療するか、または免疫応答を調節する方法は、通常には、対象に、治療上有効な量の抗体または二または多官能性分子を投与することを包含する。上に明記されるとおり、治療上有効な用量は、兆候または症状を緩和するのに十分な本発明の活性分子の量のものに該当する。このような化合物の治療上の有効性および毒性は、細胞培養物または実験動物での標準医療手段により決定されうる;上記も参照。
【0085】
本発明の目的については、上記医薬組成物は、好ましくは、静脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、またはエアゾルとして投与するように設計される。
【0086】
好ましくは、治療または診断されるべき腫瘍は、肺、結腸直腸、膵臓、喉頭、胃、頭、首、胸部、卵巣、子宮、頸、肝臓、腹腔および中枢神経系の癌腫、肉腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、骨髄性増殖症候群(MPS)、骨髄形成異常症候群(MDS)、プラズマ細胞腫、黒色腫および転移性細胞より構成される群から選択される。
【0087】
さらに本発明の使用法および方法によって包含されるのは、それに限定されないが、ウイルス感染、細菌感染、リューマチ様関節炎、紅斑性狼瘡、気管支喘息などを含めた免疫応答に関連する障害である。
【0088】
用語「治療」、「治療する」および同等物は、一般に、所望の薬理学上および/または生理学上の効果を得ることを意味するためにここに使用される。その効果は、疾患またはそれの兆候を完全に、または部分的に防止する点で予防的でありうるか、および/またはその疾患に寄与した疾患および/または有害な影響を部分的に、または完全に治癒する点で治療的でもありうる。ここに使用される場合、用語「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅し、そして(a)疾患が、その疾患の傾向を与える可能性があるが、しかしまだその疾患を有すると診断されていなかった対象に起こることを防ぐこと、(b)その疾患を阻害すること、すなわち、それの発生を食い止めるか、または(c)疾患から解放すること、すなわち、その疾患の退行を引き起こすことを包含する。
【0089】
さらに、ここで使用する場合、用語「対象」は、新生物または感染性疾患の改善、治療および/または防止の必要な動物に関する。最も好ましくは、上記対象が、ヒトである。
【0090】
疾患の表面上のHsp70の占有的発現が、細胞に関連するので、本発明は、正常な細胞を避けながら、これらの細胞を標的とし送出のための手段を提供する。これは、毒性部分が、上に記述されるとおりの治療用分子に連結されている場合、特に有利なものである。治療および/または診断剤に、細胞表面上のHsp70の細胞外局在化エピトープを発現する細胞を標的にさせるこのような方法は、対象に、治療上有効な量の本発明の二または多官能性分子を投与することを包含する。治療および/または診断剤に、細胞表面上にHsp70の細胞外局在化エピトープを発現する細胞を標的にさせるために二または多官能性分子を使用することは、もちろん、本発明の好ましい実施態様である。上記標的細胞は、好ましくは腫瘍細胞であるか、または免疫障害または感染性疾患に関連した細胞かのいずれかでありうる。
【0091】
前述から、本発明が、特に、標的細胞、特に腫瘍細胞または感染細胞の細胞表面上でHsp70の発現または不全に関連した障害の診断および/または治療のために、上に記述の抗体の少なくとも1つのCDRを包含するリガンド結合分子のあらゆる使用法を包含することは明らかである。好ましくは、上記リガンド結合分子は、本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。さらに、本発明は、以前に記述された明記されたモノクローナル抗体のいずれか1つの抗イディオタイプ性抗体に関する。これらは、抗原結合部位の近くの抗体の可変領域上に配置される特徴的抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合分子である。癌の免疫療法の1つの概念は、免疫系に、腫瘍細胞に対する応答を起こさせる抗原擬態抗体の誘導を含む。他の抗体(Ab1)の抗原組合せ部位に対して指向される抗イディオタイプ性抗体(Ab2)は、抗原を官能的に、そして構造的にさえも擬態し、そして抗−抗−イディオタイプ性免疫応答を誘発しうる。卵巣癌抗原CA125の境界を明確にするネズミのモノクローナル免疫グロブリン(Ab1)に対する抗イディオタイプ性抗体の官能性擬態の例は、Maら、Jpn.J.Cancer Res.93巻(2002年)、78−84頁に記述される。ヒトHer−2/neuについての代理抗原としてのネズミのモノクローナル抗イディオタイプ性抗体は、Baralら、Int.J.Cancer 92巻(2001年)、88 95に記述されている。別の例は、Liら、Cancer Biother.Radiopharm.17巻(2002年)、673−679頁に記述される鼻咽頭の癌腫(NPC)を有する患者についての抗イディオタイプ性抗体を用いた活性免疫療法を包含し、そしてペプチドYIGSRの「内部画像」を担持する抗イディオタイプ性抗体は、Koliakosら、In Vivo 16巻(2002年)511−518頁によって記述されるマウスにおけるルイスの肺癌腫の自発の転移を阻害する。好ましくは、抗イディオタイプ性抗体は、ヒト化される;上記も参照。
【0092】
ここに識別される抗体の生物学上の活性は、それらの抗体が、それらを、適切な表面構造を発現する細胞に対する薬剤局在化についての有力な候補にするのに十分な親和性を示すことを示唆する。細胞に対するこの標的化および結合は、治療上または診断上の活性剤の送出(標的化薬剤、DNA配列、RNA配列、脂質、タンパク質(例えば、ヒト成長因子)を含めた)、および遺伝子療法/遺伝子送出に有用でありうる。本発明の抗体を有する分子/粒子は、細胞表面上でHsp70を発現する細胞/組織に特異的に結合し、したがって、診断および治療用途を示しうるであろう。したがって、本発明の抗体または抗原は、標識され(例えば、蛍光、放射活性、酵素、核磁性)、そしてインビトロでの「免疫化学」様アッセイを含めたインビボまたはインビトロで特異的標的を検出するために使用されうる。インビボでは、それらは、特に、標的細胞の細胞表面上で、Hsp70を発現する組織、細胞または他の材料を検出する核医薬品画像化技術に類似の手段で使用されうる。別の方法は、患者に治療用活性剤を送出することに関与する。その方法は、少なくとも1つの抗体または抗原結合フラグメント、および治療上活性な剤を、患者に投与することを包含する。好ましくは、治療上活性な剤は、薬剤、DNA配列、RNA配列、タンパク質、脂質、およびそれの組合わせから選択される。さらに好ましくは、治療上活性な剤は、抗微生物剤、抗炎症剤、または抗新生物剤である。
【0093】
治療上または診断上活性な剤を、種々の手段によって、本発明の抗体、またはそれの抗原結合フラグメントに結合させうる。これには、例えば、共有結合法、例えばペプチド連結により、治療上または診断上活性な剤に結合される本発明の抗体の可変領域を包含する一本鎖融合タンパク質を含む。別の例は、以下の限定されない例示のリストにあるものを含めた、共有結合で、または非共有結合で別の分子に結合される少なくとも抗原結合フラグメントを包含する分子を含む。Traunecker、Int.J.Caner Surp. SuDP7(1992年)、51−52頁には、CD3に指向されるFv領域が、可溶性CD4に、またはOVCAおよびIL−7のような他のリガンドに結合される二重特異的試薬ヤヌシンが記述される。同様に、本発明の抗体の可変領域を、Fv分子中に構築させ、そして引用された文献で示されるもののような代替のリガンドに結合させうる。Higgins、J.Infect Disease 166巻(1992年)、198−202頁には、GP120のV3領域中の特異的配列に指向される抗体に架橋されたOKT3により構成される異種接合抗体が記述されている。このような異種接合抗体は、本発明の方法の抗体に含有される少なくとも可変領域を使用しても構築されうる。特異的抗体の別の例としては、Fanger、Cancer Treat.Res.68巻(1993年)、181−194頁により、そしてFanger、Crit.Rev.Immunol.12巻(1992年)、101−124頁によって記述されるものを含む。従来の抗体を含む免疫毒素である接合体は、広く当業界で記述されてきた。従来の結合技術により、毒素を、抗体に結合させうるか、または免疫毒素含有タンパク質毒素部分を、融合タンパク質として産生しうる。このような免疫毒素を得る対応の方法で、本発明の抗体を使用しうる。このような免疫毒素の例は、Byers、Seminars Cell.Biol.2巻(1991年)、59−70頁により、そしてFanger、Immunol.Today 12巻(1991年)、51−54頁によって記述されるものである。
【0094】
本発明は、さらに、本発明の分子を、標的またはレポーター部分に連結することを意図する。標的部分は、結合対の第一構成要素である。例えば、抗腫瘍剤を、このような対の第二構成要素に接合し、そしてそれにより、抗原結合タンパク質を結合する部位に向ける。このような結合対の共通の例は、アジビンおよびビオチンである。ビオチンを、本発明の分子と接合させ、そしてそれにより、抗腫瘍剤についての標的、またはアビジンまたはストレプトアビジンに接合される他の部位を提供する。代わりに、ビオチンまたは別のこのような部分を、本発明の分子に連結し、そして例えば検出可能なシグナル発生剤が、アビジンまたはストレプトアビジンに接合される診断システムでレポーターとして使用する。抗腫瘍剤として使用するための適切な放射性同位体も、当業者に知られている。例えば、131Iまたは211Atを使用する。これらの同位体は、従来の技術を使用して抗体に接着させる;例えば、Pedleyら、Br.J.Cancer 68巻(1993年)、69−73頁を参照。代わりに、抗体に接着される抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化する酵素である。この方法で、いったん抗体複合体を投与すると、プロドラッグが、それの毒性形態に変換される腫瘍部位に到達するまで、それの不活性形態のままでいるプロドラックを投与する。実際には、抗体−酵素接合体を、患者に投与し、そして治療されるべきその組織の領域に局在化させる。その後、プロドラックを、患者に投与し、その結果、細胞毒性薬剤への変換が、治療されるべき組織の領域で起こる。代わりに、抗体に接合した抗腫瘍剤は、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−15(IL−15)または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)のようなサイトカインである。抗体は、腫瘍に対するサイトカインを標的にし、その結果、サイトカインは、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍に損傷を、または破壊をもたらす。従来の組換えDNA技術を使用して、サイトカインを、DNAレベルで抗体に融合する。
【0095】
前に明記されるとおり別の実施態様によって、リガンド結合分子および本発明の抗体も、試験される個体から血液サンプル、リンパ球サンプルまたは他のあらゆる体液サンプルでありうる体液サンプルを得ること、そして抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で、その体液サンプルを、本発明の抗体と接触させることによって、個体でのHsp70関連疾患を診断する方法に使用されうる。同様に、生検または他の試験片は、腫瘍診断で共通して考慮されうる。その後、このような複合体の濃度を、当業界で知られる方法により測定し、そして対照サンプル中に形成されるものより明らかに高い濃度が、試験された個体での疾患を示す。同じ手段では、本発明の抗体によって結合される特異的抗原も使用しうる。したがって、本発明は、本発明の抗体または抗原を包含するインビトロ免疫アッセイに関する。
【0096】
これらおよび他の実施態様は、本発明の説明および実施例によって開示され、そして包含される。本発明により使用されるべき材料、方法、使用法および化合物のいずれか1つに関する別の文献を、例えば電子デバイスを使用して、公共の図書館およびデータベースから取得しうる。例えば、国立バイオテクノロジー情報センターおよび/または国立公衆衛生研究所にある医薬品国立図書館によって主催される公共のデータベース「メッドライン」を利用しうる。欧州分子生物学図書館(EMBL)の一部である欧州バイオインフォマチックス研究所(EBI)のもののような別のデータベースおよびウエブ・アドレスは、当業者に知られており、そしてインターネットの検索エンジンを使用しても得ることができる。逆上がり検索やカレントアウェアネスに便利なバイオテクノロジーにおける特許情報の閲覧や、関係のある特許情報源の調査は、Berks、TIBTECH 12巻(1994年)、352−364頁に示される。
【0097】
全ての引用文献の内容(本出願を通して引用されるとおりの学術文献、公告特許、公開特許出願、および製造業者の明細書、指示書などを含めた)は、参照してここではっきりと組込まれる;しかし、引用されたいずれかの書面が、実際に、本発明より先行技術であることを認めるものはない。
【0098】
上の開示は、本発明を全般的に記述する。さらに完全な理解は、以下の特定の実施例に対する文献によって得ることができ、そしてそれは、例示の目的のみのためにここに供されるものであって、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0099】
続く実施例は、本発明をさらに示すが、しかしいかなる方法でも本発明の範囲を限定するとみなされるべきでない。ここで使用されるもののような従来の方法の詳細な説明は、引用文献で見出されうる;「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」、BeersおよびBerkow編、第17版(メルク・アンド・シーオー.,インク.(Merck & Co.,Inc.)、2003年)も参照。
【0100】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当業界の技術内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術を使用する。二重特異的分子の組換え産生のための特に有用な手段および方法は、国際公開公報WO94/13804号、WO01/80883号およびWO01/90192号に記述される。ここに明記される全ての文献は、全体に組込まれる。
【0101】
分子遺伝学および遺伝子工学での方法は、一般に、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら(1989年)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・バーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Press))の最新版;DNA Cloning、IおよびII巻(Glover編、1985年);Oligonucleotide Synthesis(Gait編、1984年);Nucleic Acid Hybridization(HamesおよびHiggins編、1984年);Transcription And Translation(HamesおよびHiggins編、1984年);Culture Of Animal Cells(FreshneyおよびAlan、リズ,インク.(Liss,Inc.)、1987年);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編);Current Protocols in
Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology、3版(Ausubelら編);およびRecombinant DNA Methodology(Wu編、アカデミック・プレス)で記述される。Gene Transfer
Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編、1987年、コールド・スプリング・バーバー・ラボラトリー);Methods in
Enzymology、154および155巻(Wuら編);Immobilized Cells And Enxymes(アイアールエル・プレス、1986年);Perbal,A、Practical Guide To Molecular Cloning(1984年);the
treatise、Methods in Enzymology(アカデミック・プレス,インク.、ニューヨーク);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編、アカデミック・プレス、ロンドン、(1987年));Handbook Of Experimental Immunology、I−IV巻(WeirおよびBlackwell編、1986年)。この開示に該当した遺伝子操作のための試薬、クローニング・ベクター、およびキットは、バイオラッド(BioRad)、ストラタジーン(Stratagene)、インビトロゲン(Invitrogen)、およびクローンテック(Clontech)のような商業的販売業者から入手可能である。細胞培養および培地収集における全般的技術は、Large Scale Mammalian Cell Culture(Huら、Curr.Opin.Biotechnol.8巻(1997年)、148頁);Serum−free
Media(Kitano、Biotechnology 17巻(1991年)、73頁);Large Scale Mammalian Cell Culture (Curr.Opin.Biotechnol.2巻(1991年)、375頁);およびSuspension Culture of Mammalian Cells(Birchら、Bioprocess Technol.19巻(1990年)、251頁);Extracting information from cDNA arrays、Herzelら、CHAOS 11巻(2001年)、98−107頁で概説される。
【0102】
実施例1
cmHsp70.1およびcmHsp70.2を発現するハイブリドーマを提供すること
マウスを、ペプチドTKDNNLLGRFELSG(配列番号:2)で免疫し、そして発明者らにより改善されたプロトコールによって初回刺激した。Hsp70を識別することが測定されうる抗体を供する数種の細胞系を確立した後、腫瘍細胞上に細胞外に局在化されるHsp70のエピトープを結合する能力のある抗体を産生する2つのハイブリドーマを同定しうる。特に、2003年11月14日に、ドイツ国D−38124ブラウンシュワイグ、マシェローダー・ベグ1bのDSMZ−ドイツ国サムルンク・ホン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレン・ジーエムビーエイチ(Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbH)で寄託され、そして受託番号DSM ACC2629号と割り当てられたハイブリドーマcmHsp70.1によって産生される、cmHsp70.1、および2003年11月14日に、ドイツ国D−38124ブラウンシュワイグ、マシェローダー・ベグ1bのDSMZ−ドイツ国サムルンク・ホン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレン・ジーエムビーエイチ(Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbH)で寄託され、そして受託番号DSM ACC2630号と割り当てられたハイブリドーマcmHsp70.2によって産生される、cmHsp70.2を提供する。ハイブリドーマcmHsp70.1によって産生される抗−Hsp70抗体は、IgG−型免疫グロブリンであることが決定された一方で、ハイブリドーマcmHsp70.2によって産生される抗−Hsp70抗体は、IgM−型免疫グロブリンであることがわかる。
【0103】
実施例2:チオ親和性クロマトグラフィーによる抗体cmHsp70.1およびcmHsp70.2の精製
免疫グロブリンの精製のための先のプロトコールは、抗−Hsp70抗体の精製について厄介であることが分かるので、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および以下の材料および方法を含めた新規精製プロトコールが、確立された。
材料
カラム材料:T−ゲル(商標)アドソーバント(ピアース、製品番号:20500)
体積:10ml
結合許容量:20mg免疫グロブリン/mlゲル
湿潤ビーズ直径:45−165μm(6%ビーズ化アガロース)
【0104】
エクタ・プライムFPLCシステム(アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)
上清を、それぞれ、RPMI1640/10%FCSまたはDEMEM/20%FCSで培養されたクローンcmHsp70.1またはcmHsp70.2から得られるおよそ1000mlハイブリドーマ上清から誘導した。0.2×10細胞/mlの出発細胞密度で48時間インキュベーションから得られる上清を収集し、そして300×g(5分、4℃)で、続いて1000×g遠心分離(5分、4℃)で遠心分離した。上清を、4℃で保存した。
【0105】
化合物は、シグマ(Sigma)(NaPO;NaN)またはロス(Roth)((NHSO;トリス)によって得られ、全ての緩衝液は、ミリポア水で作製した。
緩衝液
結合緩衝液:0.5M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムおよび0.05%ナトリウムアジド、pH8.0
16.5g (NHSO
1.78g NaPO
125mg NaN
pH8.0、250ml添加
【0106】
抽出緩衝液:50mMリン酸ナトリウムおよび0.05%ナトリウムアジド、pH8.0
1.78g NaPO
125mg NaN
pH8.0、250ml添加
【0107】
保存緩衝液:0.5Mトリスおよび0.02%ナトリウムアジド、pH7.4
1.51g トリス
50mg NaN
pH8.0、250ml添加
【0108】
サンプル標品
混合しながら、66mgの硫酸アンモニウムを、透明なハイブリドーマ上清のml当たりで添加した;上記参照。最終濃度は、サンプル中0.5M硫酸アンモニウムであった。ハイブリドーマ上清を、穏やかに混合して、局所高塩濃度または空気により、免疫グロブリンの変性を避けた。硫酸アンモニウムを十分に溶解させるとき、サンプルを、pH8.0に調節し、そして1000×gで遠心分離した。上清を、注意深く除去し、そして0.8μm細胞培養フィルター(ナルジーン(Nalgene)、製品番号:126−0020号)を通過させた。
【0109】
カラムの平衡
エクタ・プライムFPLCシステムを、冷所室施設(6℃)で使用した。管システムを、緩衝液フラスコおよびハイブリドーマ上清と繋げた。エクタ・プライムFPLCシステムの自動洗浄プロトコールを使用して、管を、個々の緩衝液(最小50ml、50ml/分の流速で)で集中的に洗浄した。気泡がカラムに入るのを避けながら、管を、T−ゲル−カラムと繋げた。Tゲルを、1ml/分の流速で、結合緩衝液(最小50ml)で洗浄した。吸光度を、280nmで記録し、そして伝導性を、洗浄段階の間に記録した。カラムは、吸光度が、10分より多くの間、最小プラトーに達し、そして伝導性は、およそ140mSi/cmであったときに使用する準備ができた。
【0110】
サンプルの使用法
それを、エクタ・プライムFPLCシステムで緩衝液弁を用いて、結合緩衝液から、ハイブリドーマ上清に変えさせた。サンプルを、0.5ml/分の流速で、カラムにかけ、そしてその流出物を十分に収集した。吸光度は、およそ0.2から0.6までに上昇し、そしてそれは、非結合タンパク質の吸光度を示した。対照的に、伝導性は、サンプル使用中に変化すべきでない。上清は、一夜でカラムを通過した。その後、それを、エクタ・プライムFPLCシステムで緩衝液弁を用いて、ハイブリドーマ上清から、結合緩衝液に変えさせた。カラムを、0.5ml/分の流速で、結合緩衝液(最小50ml)で洗浄した。吸光度が、10分間より多く、最小プラトーに達し、そして伝導性がおよそ140mSi/cmになったときに、カラムを洗浄した。
【0111】
結合免疫グロブリンの溶出
それを、アクタ・プライムFPLCシステムで緩衝液弁を用いて、結合緩衝液から、溶出緩衝液に変えさせた。自動サンプル採取機を始動させ、そして4mlの分画を収集した。結合タンパク質を、0.5ml/分の流速で溶出させた。吸光度および伝導性を記録し、後者は、およそ12mSi/cmに入った。付随して、吸光度は、頂点を示し、そして溶出された免疫グロブリンの通過を示した。吸光度が10分間より多くの間、最小に達するまで、それを、溶出緩衝液で洗浄した。
【0112】
Tゲルカラムの保存
それを、エクタ・プライムFPLCシステムで緩衝液弁を用いて、溶出緩衝液から、保存緩衝液に変えさせた。カラムを、2ml/分の流速で、最小50mlで洗浄した。カラムを外し、密閉し、そして冷所施設で保存した。
免疫グロブリン特異的ELISAを用いて、溶出タンパク質のおのおのの分画を、免疫グロブリンの存在について試験した。免疫グロブリン含有分画を保存し、そして1000×gで、4℃で、セントリプレプYM−30遠心分離/濾過ユニット(アミコン、製品番号:4306号)によって、PBSに対して濃縮/透析した。従来のブラッドフォードアッセイによりタンパク質の濃度を測定した。
【0113】
精製cmHsp70.1またはcmHsp70.2抗体の特異性を、
A)Hsp70膜陽性(コロ+、CX+)または−陰性(コロ−/CX−)細胞を使用したFACS分析。
B)10%SDS−PAGEにより分離される10μgの全細胞溶解物(K562)を用いたウエスタンブロッティング。
C)Hsp70膜陽性腫瘍標的細胞(コロ+、CX+)のNK介在による死滅の阻止;および/または
D)Hsp70膜陽性腫瘍細胞を用いた免疫組織化学;実施例3も参照
によって評価した。
【0114】
本発明の精製法の個々の段階の1つまたはそれより多くのさらなる詳細については、例えば、Belewら、J.Immunol.Meth.102巻(1987年)、173−182頁およびNopperら、Anal.Biochem.180巻(1989年)、66−71頁を参照。そしてそれらは、それぞれ、塩促進吸着、およびチオ親和性吸着剤上のクロマトグラフィーおよび1段階高速液体クロマトグラフィー用のチオ親和性吸着剤を用いた、モノクローナル抗体の精製の先の方法に該当する。
【0115】
実施例3:抗体cmHsp70.1およびcmHsp70.2の結合特性および生物学上の活性の特徴付け
抗体cmHsp70.1およびcmHsp70.2は、Multhoffら、Int.J.Cancer 61巻(1995年b)、272頁および国際公開公報WO02/22656号に記述される方法を使用して、腫瘍細胞を発現するHsp70に対する細胞の細胞溶解活性を阻害することが見出された;図1も参照。cmHsp70.1およびcmHsp70.2が、腫瘍細胞を発現するHsp70に対してNK細胞の細胞溶解活性に阻害効果を示すという事実により、それは、それらのエピトープを解読するために重要であった。aa384−618内のC末端基質結合ドメインのペプチド走査(ペプスキャン)により、8−マーペプチドNLLGRFEL(aa454−461)は、cmHsp70.1抗体について関連の識別構造として決定されうる。この抗体は、Hsp70と特異的に反応するが、しかし標準アッセイで測定される場合、Hsc70と実質的に架橋反応しない。8−マー抗体結合エピトープ(aa454−460)内のHsp70とHsc70の唯一のアミノ酸差異は、アルギニン(R)からリシン(K)までの位置458での交換である。同様に、抗体cmHsp70.2は、アミノおよび配列TKDNNLLGRFELSGより構成されるペプチドを特異的に識別するために測定された。
【0116】
上に記述および寄託されたハイブリドーマの供給は、生育可能な細胞、好ましくは腫瘍細胞上のHsp70の細胞外エピトープを検出し、そしてそれにより、それらの細胞表面、特に腫瘍細胞および病原体によって感染した細胞上にHsp70を表示する細胞の特異的検出および処置を可能にする能力のある抗Hsp70抗体の信頼できる源を提供する。したがって、本発明は、治療および診断で、並びに一般に研究で使用するための新規クラスの抗−Hsp70抗体を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞上でHsp70の細胞外局在化エピトープに結合し、腫瘍の治療又は診断に使用される抗体またはそれの抗原結合フラグメントであって、該抗体又はそれの抗原結合フラグメントは、ヒト腫瘍細胞上のHsp70の細胞外局在化エピトープに結合するために、2003年11月14日に、ドイツ国ブラウンシュヴァイン D−38124、マシェローダー・ヴェク1b(Mascheroder Weg1b, D38124 Braunschweig,
Germany)のDSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbH(DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)に寄託され、そして寄託番号DSM ACC2629号と指定されたハイブリドーマcmHsp70.1によって産生されるモノクローナル抗体cmHsp70.1、または2003年11月14日に、DSMZ−ドイチェ・サムルンク・フォン・ミイクロオルガニズメン・ウント・ツェルクルトゥレンGmbHに寄託され、そして寄託番号DSM ACC2630号と指定されたハイブリドーマcmHsp70.2によって産生されるモノクローナル抗体cmHsp70.2と競合する、抗体又はそれの抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記腫瘍細胞が、ヒト結腸腫瘍であり、前記抗体は、成長できるHsp70膜陽性腫瘍細胞に対して結合能を示す、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記エピトープが、アミノ酸配列NLLGRFEL(配列番号:1)またはTKDNNLLGRFELSG(配列番号:2)を包含するか、またはそれにより構成される請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である請求項1から3までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
腫瘍細胞を発現するHsp70に対するNK細胞の細胞溶解活性における阻害効果を示す能力のある請求項1から4までのいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
ヒトの、ヒト化された、異種の、またはヒト−ネズミキメラの抗体である請求項1から5までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
一本鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントより構成される群から選択される請求項1から6までのいずれか1項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項の抗体又はそれの抗原結合フラグメント、および少なくとも1つの別の官能性ドメインと、を包含する、腫瘍の治療又は診断に使用される二または多官能性分子。
【請求項9】
二重特異的分子である請求項8に記載の二または多官能性分子。
【請求項10】
二重特異的抗体である請求項9に記載の二重特異的分子。
【請求項11】
前記別の官能性ドメインが、細胞毒性剤または標識である請求項8から10までのいずれか1項に記載の二または多官能性分子。
【請求項12】
細胞外局在化Hsp70の存在または増大量が、腫瘍を示すものである、請求項1から7までのいずれか1項の抗体、または請求項8から11までのいずれか1項の二または多官能性分子を用いて、患者から得られるサンプル中の細胞を分析することを包含する腫瘍を測定する方法。
【請求項13】
腫瘍の治療のための、または免疫応答を調節する医薬組成物を作製するための請求項1から7までのいずれか1項の抗体、または請求項8から11までのいずれか1項の二または多官能性分子の使用法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、またはエアロゾルで投与されるように設計される請求項13に記載の使用法。
【請求項15】
前記腫瘍が、肺、結腸直腸、膵臓、喉頭、胃、頭、首、胸部、卵巣、子宮頸、肝臓、腹腔および中枢神経系の癌腫、肉腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、骨髄性増殖症候群(MPS)、骨髄形成異常症候群(MDS)、プラズマ細胞腫、黒色腫および転移性腫瘍より構成される群から選択される、請求項13または14に記載の使用法または請求項12に記載の方法。
【請求項16】
治療および/または診断剤に、細胞表面上のHsp70の細胞外局在化エピトープを発現する細胞を標的にさせるための、請求項8から11までのいずれか1項の二または多官能性分子、または請求項1〜7までのいずれか1項の抗体の使用法であって、好ましくは該細胞が腫瘍細胞または免疫若しくは感染性疾患に関連した細胞である、使用法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−6933(P2012−6933A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156295(P2011−156295)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2006−541918(P2006−541918)の分割
【原出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(506177925)マルチミューン ジーエムビーエイチ (2)
【氏名又は名称原語表記】MULTIMMUNE GmbH
【住所又は居所原語表記】Arnulfstr. 197, 80634 Munchen, Germany
【Fターム(参考)】