説明

治療におけるレニン阻害剤の使用

【課題】2型糖尿病(高血圧症を伴うか伴わない)、重症高血圧症等の疾患の予防、進行遅延又は処置方法の提供。
【解決手段】式(1)のレニン阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アリスキレンは、天然に存在する酵素であるレニンの作用を阻害する。レニンは、腎臓を通り、血中に移動し、そこでアンジオテンシノーゲンを切断し、デカペプチドであるアンジオテンシンIを放出し、次いでこのアンジオテンシンIは、肺、腎臓およびその他の臓器中で切断され、オクタペプチドであるアンジオテンシノーゲンIIを形成する。このオクタペプチドは、動脈血管収縮によって直接的に、そしてまた、細胞外液量の増加を伴って、ナトリウム−イオン貯留ホルモンであるアルドステロンを副腎から遊離させることによって間接的に血圧を上昇させる。この上昇は、アルドステロンの作用であると考えられる。レニン酵素活性の阻害剤は、アンジオテンシンI形成の減少をもたらす。その結果、それに見合うようにより少量のアンジオテンシンIIが産生される。こうした活性なペプチドホルモンの濃度の減少は、例えば、レニン阻害剤の降圧効果の直接的な理由である。
【0002】
別の評価によって、レニン阻害剤はより広い範囲の治療的適応症に使用することができることが判明している。
【0003】
本発明は、温血動物に有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる、
(a)2型糖尿病(高血圧症を伴うか伴わない)。HTを伴う2型糖尿病における腎臓保護の処置を示すのに有用なモデルの例としては、Kelly et al., Kid Int, Vol.54,pp.343−352(1998)参照; そして、HTを伴わない腎臓保護DMとしては、db/db,mice, Ziyadeh et al., Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 97, No. 14, pp.8015−8020(2000)参照;
(b)重症高血圧症、肺高血圧症(PH)、悪性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症および家族性脂質代謝異常高血圧症(familial dyslipidemic hypertension)。重症高血圧症および悪性高血圧症の処置を示すのに有用なモデルの例としては、Park et al., Am J Hypertens, Vol.15, No.1, Part 1, pp.78−84(2002)参照; およびPHとしては、Jones et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol (2004)参照;
(c)内皮機能不全(高血圧症を伴うか伴わない)。内皮機能不全(高血圧を伴うか伴わない)の処置を示すのに有用なモデルの例としては、Shinozaki et al., Diabetes, Vol.48,pp.2437−2445(1999)参照;
(d)心筋梗塞(MI)後生存;コラーゲンおよびその他の細胞外マトリックスタンパク質の形成の増加および大動脈縮窄症。心筋梗塞後生存の処置およびコラーゲンの形成の増加を示すのに有用なモデルの例としてはVillarreal et al., Circulation, Vol.108, No.12,pp.1487−1492(2003)参照;
(e)ステント後の再狭窄。血管形成術の処置を示すのに有用なモデルの例としては、Huang et al., Heart, Vol.90,pp.195−199(2004)参照;
(f)末梢動脈疾患(PAD)および末梢静脈疾患を含む末梢血管疾患(PVD);
(g)冠動脈疾患(CAD)。CADの処置を示すのに有用なモデルの例としては、Gerrity et al., Diabetes, Vol.50, No.7,pp.1654−1655(2001)参照;
(h)モービディティおよびモータリティ;
(i)脳血管疾患。この適応症の処置を示すのに有用なモデルの例としては、Park et al. (2002), 上記参照;
(j)代謝疾患(シンドロームX)。Wang et al., Circulation, Vol.107, pp. 1923−1929(2003)参照;
(k)心房細動(AF);
(l)腎保護およびタンパク尿の減少;
(m)例えば、慢性腎不全のような腎不全;
(n)糸球体腎炎(ネフローゼ症候群、高血圧および腎機能低下を伴ってもよい)、限局性、部分的糸球体腎炎および微小変化型腎症;
(o)ネフローゼ症候群および腎線維症;
(p)急性間質性腎炎(AIN)、急性尿細管腎炎(ATN)および急性尿細管間質性腎炎;
(q)PKD。Martinez et al., Am J Kidney Dis, Vol. 29, pp. 435−444(1997)参照;
(r)血管炎症;
(s)レニン分泌腫瘍;
(t)偏頭痛;
(u)脈管炎;および
(v)透析アクセスグラフトの閉塞および再狭窄
から選択される状態または疾患の予防、顕性化への進行遅延または処置方法に関する。
【0004】
本発明の別の目的は、温血動物に有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる、プラークの安定化を更に促進する治療組成物および方法を提供することにある。プラークの安定化とは、マクロファージの密度の増加により、脂質芯(lipid core)が増殖し、繊維性被膜(fibrous cap)が極めて薄く弱くなり破裂に至る相をプラークが通過するのを阻害することを意味する。
【0005】
本発明の好ましい局面では、2型糖尿病(高血圧症を伴うかまたは伴わない)、孤立性収縮期高血圧症、内皮機能不全(高血圧を伴うか伴わない)、MI後の生存、ステント後の再狭窄、PVD、CAD、モービディティ、モータリティ、脳血管疾患、代謝疾患(シンドロームX)、腎保護および血管炎症から選択される病気または疾患の予防、顕性化への進行遅延および処置方法を提供する。
【0006】
上記または下記のカテゴリー(b)と異なる状態または疾患の予防、進行遅延または処置は、高血圧を伴わないかまたは伴う患者で実施されるものと理解されるべきである。
【背景技術】
【0007】
レニン阻害剤は、レニンの阻害と関連する状態および疾患の、特に、上記および下記に明記の状態および疾患の予防、進行遅延および処置をもたらす、薬理学的に有効に酵素であるレニンを阻害する薬剤である。
【0008】
レニン阻害剤は、例えば、ペプチド系および、好ましくは非ペプチド系レニン阻害剤を含む。
【0009】
非ペプチド系レニン阻害剤は、例えば、ジテキレン(ditekiren)、テルラキレン(terlakiren)、ザンキレン(zankiren)、SPP−100または式(I):
【化1】

の化合物またはそれぞれの場合のそれらの薬学的に許容される塩である。
【0010】
化学的に2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)フェニル]−オクタンアミドとして定義される式(I)のレニン阻害剤は、EP678503Aに明確に開示されている。このヘミフマル酸塩が特に好ましい。
【0011】
非ペプチド系レニン阻害剤には、WO97/09311に開示されている、特にその請求項および実施例に開示されている対応するレニン阻害剤、特に式:
【化2】

のSPP100、
特に式
【化3】

または、
【化4】

のRO66−1132およびRO−66−1168であり、それぞれ、WO04/002957、特にその実施例および請求項に開示されているレニン阻害剤が含まれる。上記の国際特許出願の主題は、本明細書に引用により包含される。
【0012】
一般名または商品名によって上記または下記で特定化された活性物質の構造は、標準概説“メルクインデックス(The Merck Index)”の現行版または例えば、パテントフォーカス(Patent Focus)、例えば、IMS ライフサイクル(IMS Life Cycle)−IMS World Publicationsのようなデータベースから入手可能である。それらの対応する内容は、引用により本明細書に包含される。当業者であれば、だれでも活性物質を同定することが可能であり、そして、こうした引例に基づいて、同様に、製造し、インビトロおよびインビボ双方にて標準試験モデルで医薬適応症および特性を試験することが可能である。
【発明の概要】
【0013】
定義
高血圧症を伴う2型糖尿病を含む2型糖尿病は、膵臓が膵臓のベータ(β)−細胞の機能の低下により十分なインスリンを分泌せず、および/または産生されたインスリンに対して非感受性である(インスリン抵抗性)疾患である。一般的には、空腹時血糖値が126mg/dL以下であるが、糖尿病前症(prediabetes)は、例えば、次の条件の一つによって特徴付けられる状態である:空腹時血糖異常(110−125mg/dL)および耐糖能異常(126mg/dL以下の空腹時血糖値であり、そして140mg/dLから199mg/dLの間の食事後の血糖値)。2型糖尿病は、高血圧症を伴うかあるいは伴わなくてもよい。糖尿病は、例えば、アフリカ系アメリカ人、ラテン/ヒスパニック系アメリカ人、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人、太平洋島民に頻繁に起きる。インスリン耐性のマーカーには、HbA1C、HOMA IR、測定用コラーゲン断片、尿中のTGF−β、PAI−1およびプロレニンが含まれる。
【0014】
重症高血圧症は、180mmHg以上の収縮期圧および110mmHg以上の拡張期圧によって特徴付けられる。
【0015】
PHは、肺の血管疾患であり、例えば、肺に血液を供給する小血管が収縮または締め付けられることによって、肺動脈の圧力が通常のレベル(≦25/10)より上昇する(特に、原発性および二次性PH)。WHOによれば、PHは5つのカテゴリーに分割され得る:肺動脈高血圧症(PAH)、公知の原因が存在しないで起こるPHは原発性PHと呼ばれ、一方、二次性PHは、例えば、肺気腫、気管支炎、強皮症、クレスト症候群または全身性紅斑狼瘡(SLE)のような膠原血管病(collagen vascular diseases)から選択される状態によって引き起こされる;呼吸器系の疾患に伴うPH;慢性血栓または塞栓疾患によるPH;肺血管に直接影響を与える疾患によるPH;および肺静脈高血圧症(PVH)。
【0016】
悪性高血圧症は、通常、乳頭浮腫(グレードIV Keith−Wagner 高血圧網膜症)と呼ばれている、眼の後ろの視神経の膨潤を伴う極めて高い血圧であることを定義されている。これには、また、小児の悪性HTNが含まれる。
【0017】
孤立性収縮期高血圧症は、140mmHg以上の収縮期血圧および90mmHgより低い拡張期血圧によって特徴付けられる。
【0018】
家族性脂質異常高血圧症は、混合型脂質異常症疾患によって特徴付けられる。バイオマーカーには、酸化LDL、HDL、グルタチオンおよびホモシステインLPaが含まれる。
【0019】
腎血管高血圧症(腎動脈狭窄症)は、腎動脈の狭小化が著しく、それが、腎臓によって発せられるシグナルから血圧の上昇をもたらす疾患である。バイオマーカーには、レニン、PRAおよびプロレニンが含まれる。
【0020】
高血圧症を伴うか伴わない内皮機能不全は、内皮由来血管拡張因子の欠乏によって、血管の通常の拡張が低下している状態である。バイオマーカーには、CRP、IL6、ET1、BIG ET1、VCAMおよびICAMが含まれる。MI後生存のバイオマーカーには、BNPおよびプロコラーゲンファクターが含まれる。
【0021】
臓器/腎臓/心臓線維症は、コラーゲンおよび他の細胞外マトリックスタンパク質の、こうしたタンパク質の産生増加または分解減少による異常に高い蓄積であると定義される。バイオマーカーとしては、BNP、プロコラーゲンファクター、LVH、AGE RAGEおよびCAGEが含まれる。
【0022】
大動脈狭窄症は、ある部分の大きな動脈(大動脈)の局在化した狭小化である。この狭小化は、この領域を縮小させる血管内の“棚(shelf)”組織によって引き起こされる。あるいは、大動脈自身の発育不全の部分によって引き起こされ得て、これはより長い部分の直径の減少をもたらす。
【0023】
経皮経血管血管形成術後の再狭窄は、プラークまたは他の疾患の蓄積によって完全にまたは一部分、閉塞されている動脈を開口する処置後の該動脈の閉塞と定義される。バイオマーカーとしては、冠動脈血流予備能(coronary flow reserve)が含まれる。
【0024】
末梢血管疾患(PVD)は、末梢血管の損傷または障害を意味する。二つのタイプの末梢血管疾患がある:病的な末梢動脈を意味する末梢動脈疾患(PAD)および足関節上腕血圧比によって測定することができる末梢静脈疾患。
【0025】
PADは、プラークが漸進的に増大するために、次第に動脈が硬くなり狭くなる状態であり、心臓以外の体の動脈、静脈および毛細血管のような血管に影響を与える状態を意味する。これはまた、末梢静脈疾患とも呼ばれている。
【0026】
血栓静脈炎は、閉塞性の血塊が形成されて、周辺の静脈が炎症を起こす状態である。
【0027】
静脈瘤は、異常に広くなった静脈が膨張し、黒ずみ(dark)、また曲がったり、ねじれたりする状態である。これは、通常、脚で起こる。
【0028】
慢性静脈不全は、静脈が機能不全になり、血液が脚部および足部に貯留し、時々後方にもれる、脚静脈疾患の進行した段階である。
【0029】
冠動脈疾患(CAD)は、プラークが漸進的に増大するために、次第に動脈が硬くなり狭くなる状態であり、心臓内の動脈のような血管に影響を与える状態を意味する。CADは、心筋に酸素に富んだ血液を供給する三つの小動脈で起こる特別の形態のアテローム性動脈硬化症である。バイオマーカーには、CPKおよびトロポニンが含まれる。
【0030】
脳血管疾患は、塞栓および血栓による卒中;大血管血栓症および小血管疾患;および出血誘発性卒中のような卒中疾患を含んでなる。
【0031】
塞栓性卒中は、血塊が脳における血流を介して下降したときに、例えば、心臓において、血塊を形成することによって特徴付けられる。これは小血管の閉塞に至り、卒中を引き起こし得る。
【0032】
血栓性卒中は、脳に血液を供給している一つまたはそれ以上の動脈の閉塞によって、血流が障害を生じる状態である。このプロセスは、通常、血栓性卒中を引き起こす血栓症に至る。バイオマーカーには、PAI 1、TPAおよび血小板機能が含まれる。
【0033】
代謝疾患(シンドロームX):知られている種々のメタボリックシンドロームの定義の中の、三つが特に関連している。メタボリックシンドロームは三つまたはそれ以上の次の基準によって特徴付けられている:
1.腹部肥満:胴囲>102cm(男性)および>88cm(女性)
2.高トリグリセリド血症:>150mg/dL(1.695mmol/L)
3.低HDLコレステロール:<40mg/dL(1.036mmol/L)(男性)および<50mg/dL(1.295mmol/L)(女性)
4.高血圧:>130/85mmHg
5.高空腹時血糖:>110mg/dL(>6.1mmol/L)
【0034】
メタボリックシンドロームはまた、次の3個以上の基準によって特徴づけられ得る:
トリグリセリド>150mg/dL、収縮期血圧(BP)≧130mmHgまたは拡張期BP≧85mmHgまたは抗高血圧症処置中、高比重リポタンパクコレステロール<40mg/dL、空腹時血糖(FBS)>110mg/dL、およびBMI(body mass index)>28.8kg/m
【0035】
メタボリックシンドロームは、糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常またはインスリン抵抗性および加えて次の2個以上の異常によっても特徴付けられ得る:
1.高血圧:≧160/90mmHg
2.高脂血症:トリグリセリド濃度≧150mg/dL(1.695mmol/L)および/またはHDLコレステロール<35mg/dL(0.9mmol/L)(男性)および<39mg/dL(1.0mmol/L)(女性)
3.中心性肥満:ウェスト・ヒップ比>0.90(男性)または>0.85(女性)および/またはBMI>30kg/m
4.微量アルブミン尿:尿アルブミン排泄率≧20μg/分またはアルブミン・クレアチニン比≧20mg/g。バイオマーカーには、タンパク尿、TGF−β、TNF−αおよびアディポネクチン(adiponectin)が含まれる。
バイオマーカーとしては、LDL、HDLおよび内皮障害マーカーのすべてが含まれる。
【0036】
AFは、不規則または“速く動く”心臓の鼓動のタイプであり、これが血液を心臓に集めさせ、血塊を形成して、それが脳に移動して、卒中を引き起こす可能性がある。
【0037】
臓器保護は、肉体臓器の機能の障害を回復する働きの低下の予防である。
【0038】
腎保護は、タンパク尿症の軽減である。バイオマーカーには、尿中のコラーゲン断片およびTGF−βが含まれる。
【0039】
例えば、慢性腎不全のような腎不全は、例えば、タンパク尿および/または血漿クレアチニン濃度のわずかな上昇(1.2−2.0mg/dLに相当する106−177mmol/L)によって特徴付けられる。
【0040】
糸球体腎炎は、ネフローゼ症候群、高血圧症および腎機能不全;限局性の部分的な糸球体腎炎;微小変化型腎症、ループス腎炎、溶連菌感染後GNおよびIgA腎症と関連し得る。
【0041】
ネフローゼ症候群は、大量のタンパク尿、浮腫およびCNS不整性(CNS irregularities)を含む状態の合併症である。バイオマーカーには、尿タンパク排泄が含まれる。
【0042】
プラーク安定化は、線維性被膜(fibrous cap)の菲薄化/破綻、平滑筋細胞の欠如および炎症細胞の蓄積を予防することによってプラークの脆弱性をより少なくすることを意味する。
【0043】
腎線維症は、コラーゲンおよびその他の細胞外マトリックスタンパク質の異常な蓄積であり、腎臓機能の低下につながる。バイオマーカーには、尿中のコラーゲン断片およびTGF−βが含まれる。
【0044】
末期腎病変(ESRD)とは、透析または腎臓置換が必要になる程度の腎臓機能の欠如である。バイオマーカーとしては、糸球体ろ過量およびクレアチニンクリアランスが含まれる。
【0045】
多発性嚢胞腎(PKD)は、数多くの嚢胞の腎臓中での増殖により特徴付けられる遺伝性の疾患である。PKD嚢胞は、腎臓全体の大部分をゆっくり縮小させ、腎機能を低下させ、腎不全に至らしめる。PKDは、常染色体性優性PKDと常染色体劣性PKDの二つの大きなPKDの遺伝の形態に分けることができ、一方、非遺伝性のPKDは、後天性嚢胞腎症と呼ばれる。バイオマーカーとしては、非侵襲性イメージングによる腎嚢胞の減少が含まれる。
【0046】
肥満症は、BMIが30以上であると定義される肥満状態である。
【0047】
“予防”という用語は、本明細書で言及された状態の発生を防止するために、健常な患者に予防的に投与することを意味する。更に、“予防”という用語は、処置すべき状態の前段階にある患者に予防的に投与することを意味する。
【0048】
本明細書で使用されている“顕性化への進行遅延”という用語は、処置すべき状態の前段階である患者に投与することを意味し、該患者は該当する状態の前形態であることが診断されている。
【0049】
“処置”という用語は、疾患、状態または障害と闘う目的のための患者の管理およびケアであると理解される。
【0050】
“有効量”とは、研究者または臨床医師によって求められる、組織、系または動物(ヒトを含む)の生物学的または医学的応答を引き出すだろう化合物の量を意味するものとする。
【0051】
“温血動物または患者”という用語は、本明細書では互換性をもって使用され、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物を含むが、これらに限定されない。好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【0052】
“薬学的に許容される塩”とは、本技術分野でよく知られている方法によって製造される、製薬工業において通常使用される非毒性塩を意味する。
【0053】
驚くべきことに、本発明は、同一の有効性を維持しながら、ACEまたはARBよりも長い作用時間を有する。更に、レニンは、直接的な血管拡張剤であり、また直接的な向線維化作用を有する。レニン活性を阻害することによって、RIのANGIIおよびレニン(rennin)遮断に対する付加的な作用のため、ACEおよびARBで見られるものに加えて、抗炎症および抗線維化作用を予測するであろう。更に、レニン遮断はANG4およびANG1−7に作用する。ANG1−7は、炎症、血栓、繊維化および細胞増殖に作用する有利な作用を有していると予期されている。
【0054】
いっそう驚くべきことには、式(I)のレニン阻害剤またはその塩と、下記に定義されている(i)−(xiv)からなる群より選択される治療剤との組合せ投与は、組合せ剤との有利な効果、特に相乗効果、治療効果または少なくとも一つの組合せの薬効の増強をもたらすのみならず、ここに開示されている組合せに使用される薬学的に活性な化合物の一方のみを適用する単剤療法と比較して、併用治療から生じる付加的な有利な点および更に驚くべき有利な効果を生み出すことが実験的に発見された。
【0055】
本発明は、同様に、本発明のレニン阻害剤または、それぞれの場合、薬学的に許容されるその塩を、少なくとも一つの活性成分、またはそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩と組み合わせて含む、組合せ剤、たとえば薬学的組合せ剤に関連する。
【0056】
この組合せ剤は、例えば、下記からなる群より選択される組成物と製造することができる:
(i)アンジオテンシンIIレセプターアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(ii)ACE阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(iii)CCBまたはその薬学的に許容される塩;
(iv)HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(v)アルドステロン合成酵素阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(vi)アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(vii)デュアルACE/NEP(dual ACE/NEP)阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(viii)β−ブロッカーまたはその薬学的に許容される塩;
(ix)エンドセリン(ET)アンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(x)利尿剤またはその薬学的に許容される塩;
(xi)経口血糖降下薬またはその薬学的に許容される塩;
(xii)Mrp2阻害剤
(xiii)フロセミドまたはその薬学的に許容される塩;および
(xiv)グリベック(Gleevec)またはその薬学的に許容される塩。
【0057】
本発明による組合せ剤は、例えば、
(a)2型糖尿病(高血圧症を伴うか伴わない);
(b)重症高血圧症、PH、悪性高血圧症、心臓収縮期高血圧症および家族性脂質代謝異常高血圧症;
(c)内皮機能不全(高血圧症を伴うか伴わない);
(d)心筋梗塞(MI)後生存;コラーゲンの形成の増加および大動脈縮窄症;
(e)経皮経血管血管形成術後の再狭窄;
(f)PVD(PADおよび末梢静脈疾患を含む);
(g)CAD;
(h)モービディティおよびモータリティにあること;
(i)脳血管疾患;
(j)代謝疾患(シンドロームX);
(k)AF;
(l)臓器保護;
(m)腎保護;
(n)腎不全(例えば、慢性腎不全);
(o)糸球体腎炎(腎炎症候群、高血圧および腎機能低下を伴ってもよい)、限局性、部分的糸球体腎炎および微小変化型腎症;
(p)ネフローゼ症候群および腎繊維症;
(q)AIN、ATNおよび急性尿細管性間質性腎炎;
(r)ESRD;
(s)PKD;
(t)血管炎症性疾患;
(u)肥満症;
(v)偏頭痛;
(w)レニン分泌腫瘍;および
(x)脈管炎
から選択される状態または疾患の予防、顕性化への進行遅延または処置のために使用することができる。
【0058】
本発明による組合せ剤は、温血動物に有効量の本発明の組合せ剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなるプラークの安定化方法において使用することができる。
【実施例】
【0059】
レニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含んでなる本発明による組合せ剤は、種々の投与経路によって投与することができる。それぞれの薬剤は、広範囲の投与量に関して試験し、最大の応答を引き出すために組合せ剤中のそれぞれの薬剤の最適の薬剤濃度を決定することができる。こうした試験のためには、各グループにつき少なくとも6匹の動物からなる処置群を用いることが好ましい。それぞれの試験では、個々の成分を評価すると同時に、組合せ処置群の効果を決定することを行う試験が適切である。薬剤の効果は、短期の投与(例えば、1日)で観察することができるが、下記(実験は2から3週間の観察期間で行われた)に示すように長期にわたるセッティングで応答を観察することが好ましい。長期間試験は、起こる代償性応答の十分な進展を斟酌するのに十分な期間であり、それゆえ、観察された効果は、持続的または永続的な効果(作用)を示している試験系の実際の応答を最もよく示すであろう。
【0060】
AT−レセプターアンタゴニスト(またはアンジオテンシンIIレセプターアンタゴニストとも呼ばれる)は、アンジオテンシンIIレセプターのAT−レセプターサブタイプに結合するが、レセプターの活性化を起こさない活性成分であると理解される。AT−レセプターの阻害の結果として、こうしたアンタゴニストは、例えば、抗高血圧剤として、またはうっ血性心不全の処置のために使用することができる。
【0061】
AT−レセプターアンタゴニストの部類には、種々の構造的特徴を有する化合物が含まれ、本質的に好ましいのは非ペプチド系である。例えば、バルサルタン(EP443983参照)、ロサルタン(EP253310参照)、カンデサルタン(459136参照)、エプロサルタン(EP403159参照)、イルベサルタン(EP454511参照)、オイメサルタン(EP503785参照)、タソサルタン(EP539086参照)、テルミサルタン(EP522314参照)、式:
【化5】

である名称E−1477を有する化合物、
式:
【化6】

である名称SC−52458を有する化合物、
および、
式:
【化7】

である名称ZD−8731を有する化合物、
またはそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩、からなる群より選択される化合物であり得る。
【0062】
好ましいAT−レセプターアンタゴニストは、市販されている薬剤であり、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩が最も好ましい。
【0063】
HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤(β−ヒドロキシ−β−メチルグルタリル−補酵素Aレダクターゼ阻害剤とも呼ばれる)は、血中のコレステロールを含む脂質レベルを低くするために使用することができる活性薬剤であると理解される。
【0064】
HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤のクラスは、種々の構造的特徴を有する化合物を含んでなる。例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、コンパクチン(compactin)、ダルバスタチン、ジヒドロコンパクチン、フルインドスタチン(fluindostatin)、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチンおよびベロスタチン、またはそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物が言及される。
【0065】
好ましいHMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤は、市販されている薬剤であり、フルバスタチンおよびピタバスタチンまたはそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩が最も好ましい。
【0066】
アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへのいわゆるACE阻害剤での酵素分解の遮断は、血圧の調節に好結果を招く変法であり、したがって、うっ血性心不全の処置のための治療方法としても利用される。
【0067】
ACE阻害剤のクラスは、種々の構造的特徴を有する化合物を含む。例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート(benazeprilat)、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート(enaprilat)、フォシノプリル(fosinopril)、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびトランドラプリル、または、それぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物であり得る。
【0068】
好ましいACE阻害剤は、市販されている薬剤であり、ベナゼプリルおよびエナラプリルが最も好ましい。
【0069】
CCBの部類には、ジルチアゼム系およびベラパミル系CCBのようなジヒドロピリジン(DHP)および非DHPを本質的に含む。
【0070】
上記の組合せ剤において有用なCCBは、アムロジピン、フェロジピン、リヨシジン、イスラジピン(isradipine)、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン(nitrendipine)およびニバルジピンからなる群より選択されるDHP代表例が好ましく、そして、フルナリジン、プレニルアミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミルおよびベラパミル、およびそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩、からなる群より選択される非DHP代表例が好ましい。こうしたCCBのすべては、治療的に、例えば、降圧剤、抗狭心症剤または抗不整脈剤として使用される。
【0071】
好ましいCCBは、アムロジピン、ジルチアゼム、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピンおよびベラパミル、または、例えば、特定のCCBに依存して、その薬学的に許容される塩を含む。DHPとしては特にアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩、特にそのベシル酸塩が好ましい。非DHPの特に好ましい代表例は、ベラパミルまたはその薬学的に許容される塩、特にその塩酸塩である。
【0072】
アルドステロン合成酵素は、コルチコステロンをヒドロキシル化することによってコルチコステロンをアルドステロンに変換する酵素であり、そして、18−OHコルチコステロンを形成し、そして18−OH−コルチコステロンをアルドステロンに変換する。アルドステロン合成酵素阻害剤のクラスは、高血圧症および原発性アルドステロン症の処置に適用されることが知られており、ステロイドおよび非ステロイドアルドステロン合成酵素阻害剤の両者を含んでおり、後者が最も好ましい。
【0073】
商業上入手可能なアルドステロン合成酵素阻害剤または保健当局によって承認されているこうしたアルドステロン合成酵素阻害剤が優先される。
【0074】
アルドステロン合成酵素阻害剤のクラスには、種々の構造的特徴を有する化合物が含まれる。例えば、非ステロイド系アロマターゼ阻害剤、アナストロゾール、ファドロゾール(その(+)−エナンチオマーを含む)およびステロイド系アロマターゼ阻害剤、エキセメスタン、または、それぞれの場合、該当するときには、その薬学的に許容される塩より成る群より選択される化合物が言及される。
【0075】
最も好ましい非ステロイド系アルドステロン合成酵素阻害剤は、(米国特許番号第4,617,307号および同第4,889,861号)に含まれる(+)−エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩であり、例えば、式:
【化8】

のファドロゾール(fadrozole)塩酸塩である。
【0076】
好ましいステロイド系アルドステロンアンタゴニストは、式:
【化9】

のエプレレノンまたは、スピロノラクトンである。
【0077】
好ましいデュアルACE/NEP阻害剤(dualACE/NEP inhibitor)は、例えば、オマパトリレート(omapatrilate)(EP629627参照)、ファシドトリル(fasidotril)またはファシドトリレート(fasidotrilate)、またはZ 13752A(WO 97/24342参照)または、適宜、その薬学的に許容される塩である。
【0078】
本発明での使用に適切なβ−ブロッカーには、β−アドレナリン受容体のためにエピネフィリンと競合し、エピネフィリンの作用を妨げるβ−アドレナリン遮断薬(β−ブロッカー)が含まれる。好ましくは、このβ−ブロッカーは、アルファ(α)−アドレナリン受容体と比較してβ−アドレナリン受容体に選択的であり、そして、その結果顕著なα−遮断効果を有しないのが好ましい。適切なβ−ブロッカーには、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロールおよびチモロールから選択される化合物が含まれる。β−ブロッカーが、酸または塩基であるか、あるいは、薬学的に許容される塩またはプロドラッグを形成することができるとき、こうした形態は、本明細書に包含されるものと考えられ、そして、該化合物は、遊離形または薬学的に許容される塩形態または生理学的に加水分解可能な許容されるエステルのようなプロドラッグ形態で投与することができるものと理解される。例えば、メトプロロールは、酒石酸塩としての投与が適切であり、プロプラノロールは塩酸塩などとしての投与が適切である。
【0079】
ETは、血管内皮によって合成され、放出される、強力な血管収縮ペプチドである。ETは、三つのアイソフォーム(ET−1、ET−2およびET−3)で存在する。ETは、ETのいずれかまたはすべてのアイソフォームを意味するものとする。ETの上昇したレベルについては、例えば、本態性高血圧症の患者からの血漿中で報告されてきた。ETレセプターアンタゴニストは、ETによって誘発される血管収縮作用を阻害するのに使用することができる。
【0080】
好ましいETアンタゴニストは、例えば、ボセンタン(bosentan)(EP526708A参照)、エンラセンタン(WO 94/25013参照)、アトラセンタン(WO 96/06095参照)、特にアトラセンタン塩酸塩、ダルセンタン(EP785926A参照)、BMS 193884(EP702012A参照)、シタキセンタン(米国特許No.5,594,021参照)、特にシタキセンタンナトリウム、YM 598(EP882719A参照)、S 0139(WO 97/27314参照)、J 104132(EP714897AまたはWO 97/37665参照)、更に、テゾセンタン(WO 96/19459参照)、またはそれぞれの場合、それらの薬学的に許容される塩である。
【0081】
利尿剤は、例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロチアジド(methylclothiazide)、アミロリド、トリアムテレンおよびクロロサリドンからなる群から選択されるチアジド誘導体である。ヒドロクロロチアジドが最も好ましい。
【0082】
好ましくは、本発明の組合せによる共同で治療的に有効量の活性成分を、同時にまたは任意の順序で逐次に、別個にまたは固定された組合せで投与することができる。
【0083】
上記および下記に述べられる本発明による医薬組成物は、同時使用または任意の順序での逐次使用のために、別個にまたは固定された組合せとして使用することができる。
【0084】
該当する活性成分またはその薬学的に許容される塩は、水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含む溶媒和物の形で使用することもできる。
【0085】
組み合わせるべき化合物は、薬学的に許容される塩として存在することができる。こうした化合物が例えば、少なくとも一つの塩基性中心を有する場合は、それらは、酸付加塩を形成することができる。該当する酸付加塩は、所望により、更に存在する塩基性中心を有して形成することもできる。例えば、酸基である、COOHを有している化合物は塩基との塩を形成することもできる。
【0086】
変法においては、本発明によって組み合わされるべき構成成分は、独立して投与できるか、またはその構成成分が区別される量である異なる固定された組合せ剤を使用して、すなわち同時または異なった時刻に使用して投与できるという意味で、本発明は更に“複数パーツのキット”に関する。複数パーツのキットは、たとえば同時投与することもできるし、または時間をずらして、すなわち、キットの任意のパーツに対して、同一もしくは異なる時間間隔の異なった時点で投与することができる。好ましくは、時間間隔は、そのパーツの組合せ使用において、処置する疾患または状態に対する効果が、いずれか一つの構成成分のみを使用するときに得られる効果と比較して有益であるように選択される。
【0087】
本発明は、更に、同時、別個または逐次使用の指示書と共に、本発明による組合せ剤を含んでなる商業上の包装に関する。
【0088】
投与は、適用方法、種、年齢および/または個々の条件のような種々の要素に左右され得る。経口適用の場合は、一日の投与量は、10mgないし1gの間である。
【0089】
本明細書中で使用されている“相乗効果”という用語は、本発明の方法および組成物で達成される効果が、この発明の活性成分を別個に含んでいる個々の方法および組成物から生じる効果の総計より大きいということを意味する。
【0090】
本技術分野の当業者は、上記および下記に示された治療薬効および有益な効果を証明するために適切かつ標準的な動物試験モデルを選択することが十分可能である。
【0091】
こうした医薬製剤は、恒温動物への経口そして直腸のような経腸、または非経口投与用であり、該製剤は、薬理学的に活性な化合物を単独でまたは慣習的な薬剤補助物質と一緒に含む。例えば、医薬製剤は活性化合物を約0.1〜90%、好ましくは、約1%〜約80%含んでいる。経腸または非経超およびまた眼科用投与医薬製剤は、例えば、被覆錠剤、錠剤、カプセルまたは座剤およびまたアンプルのような単位投与形態である。これらは、例えば、通常の混合、顆粒化、コーティング、溶解または凍結乾燥方法を用いて、それ自体公知の方法で調製される。したがって、経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と結合させ、所望により、得られた混合物を顆粒化し、そして、要求または必要に応じて適切な補助物質を加えた後、この混合物または顆粒を錠剤または被覆錠剤コアに加工することによって得ることができる。
【0092】
活性化合物の投与量は、投与形式、恒温動物種、年齢、および/または個々の状態のような種々の要素に左右され得る。
【0093】
本発明による薬剤組合せの活性成分の好ましい投与量は、治療的に有効な投与量、特に商業上利用可能な投与量である。
【0094】
通常、経口投与の場合、例えば、体重約75kgの患者に対し、約1mg〜約360mgのおおよその一日の投与量が推定される。
【0095】
活性化合物の投与量は、例えば、投与形式、恒温動物種、年齢、および/または個々の状態のような種々の要素に左右され得る。
【0096】
医薬製剤は、共同して効果のある更なる成分と一緒に一定量を含んで、例えば、カプセルまたは錠剤のような適切な投与単位形態の形で提供される。
【0097】
温血動物、例えば、ヒト(たとえば約70kg体重)に投与すべき式(I)のレニン阻害剤の投与量、例えば、血圧を低下させおよび/または緑内障の症状を改善する際に、特に酵素レニンの阻害に効果のある投与量は、約3mg〜約3g、好ましくは、約10mg〜約1g、例えば、約20〜200mg/ヒト/日であり、好ましくは、1〜4回の単回投与(例えば、同一のサイズであり得る)に分割する。通常、子供は、大人の服用量の約半分を受け入れる。各個々に必要な投与量は、例えば、活性成分の血清濃度を測定することによってモニタリングし、最適なレベルに調節することができる。単回投与(single doses)は、例えば、大人の患者あたり75mg、150mgまたは300mgを含む。
【0098】
AT−レセプターアンタゴニストのクラスの代表例としてのバルサルタンは、適切な投与単位形態の形(例えば、カプセルまたは錠剤)で、それは、患者に投与され得る治療的に有効な量、例えば、約20mg〜約320mg量のバルサルタンを含んでいる。活性成分の適用はバルサルタンの一日量、20mgまたは40mgから始まって、一日80mgを経由して、更に一日160mgから一日320mgまで増加させ、一日3回投与(t.i.d.)まで行い得る。好ましくは、バルサルタンは、一日に2回(b.i.d.)適用され、それぞれ、各80mgまたは160mgの投与量である。該当する投与量は、例えば、朝、昼または晩に服用することができる。好ましいのは、一日2回投与である。
【0099】
HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤の場合は、HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤の好ましい投与単位形態は、例えば、約5mg〜約120mgを含んでいる錠剤またはカプセルであり、好ましくは、フルバスタチンを使用する際は、例えば、20mg、40mgまたは80mg(遊離酸と等価)のフルバスタチンを、例えば、一日に1回投与する。
【0100】
ACE阻害剤の場合、好ましいACE阻害剤投与単位形態は、例えば、例えば、ベナゼプリルの場合約5mg〜約20mg、好ましくは、5mg、10mg、20mgまたは40mg;カプトプリルの場合、約6.5〜100mg、好ましくは、6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mgまたは100mg;エナラプリルの場合、約2.5mg〜約20mg、好ましくは、2.5mg、5mg、10mgまたは20mg;フォシノプリルの場合、約10mg〜約20mg、好ましくは10mgまたは20mg;ペリンドプリルの場合、約2.5mg〜約4mg、好ましくは2mgまたは4mg;キナプリルの場合、約5mg〜約20mg、好ましくは5mg、10mgまたは20mg;またはラミプリルの場合、約1.25mg〜約5mg、好ましくは、1.25mg、2.5mg、または5mgを含む錠剤またはカプセルである。好ましいのは、一日3回投与である。
【0101】
例えば、β−ブロッカーの適切な一日の投与量については、次の化合物の経口投与(大人)で示される:アセブトール、200〜1200mg;アテノロール、25〜100mg;ベタキソロール、10〜20mg;ビソプロロール、5〜10mg;カルテオロール、2.5〜10mg;ラベタロール、100〜1,800mg;メトプロロール、50〜450mg;ナドロール、40〜240mg;オクスプレノール、60〜480mg;ペンブトロール、20〜80mg;ピンドロール、10〜60mg;プロプラノロール、40〜320mgまたは60〜320mg(長時間作用製剤);ソタロール、160〜320mg;チモロール、20〜60mg。本発明の使用においては、アテノロール、メトプロロールおよびプロプラノロールが、特に好ましいβ−ブロッカーである。
【0102】
特に、低用量での組合せ剤が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温血動物に有効な量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる、2型糖尿病(高血圧症を伴うか伴わない)、重症高血圧症、肺高血圧症(PH)、悪性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、家族性脂質代謝異常高血圧症、内皮機能不全(高血圧症を伴うか伴わない)、心筋梗塞(MI)後生存、コラーゲンおよび他の細胞外マトリックスタンパク質形成の増加、ステント後の再狭窄、末梢動脈疾患(PAD)および末梢静脈疾患を含む末梢血管疾患(PVD)、冠状動脈疾患(CAD)、モービディティ、モータリティ、脳血管疾患、代謝疾患(シンドロームX)、心房細動(AF)、腎保護、タンパク尿の減少、腎不全、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎線維症、急性間質性腎炎(AIN)、急性尿細管腎炎(ATN)、急性尿細管間質性腎炎、多発性嚢胞腎(PKD)、血管炎、レニン分泌腫瘍、脈管炎または透析アクセスグラフトの閉塞、再狭窄から選択される状態または疾患の予防、進行遅延または処置方法。
【請求項2】
温血動物に有効な量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる、プラークの安定化を促進する方法。
【請求項3】
レニン阻害剤が、式(I)
【化1】

の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
レニン阻害剤が、式(I)
【化2】

の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
レニン阻害剤を、
(i)アンジオテンシンIIレセプターアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(ii)ACE阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(iii)CCBまたはその薬学的に許容される塩;
(iv)HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(v)アルドステロン合成酵素阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(vi)アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(vii)デュアルACE/NEP阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(viii)β−ブロッカーまたはその薬学的に許容される塩;
(ix)エンドセリンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;
(x)利尿剤またはその薬学的に許容される塩;
(xi)経口血糖降下薬またはその薬学的に許容される塩;
(xii)Mrp2阻害剤
(xiii)フロセミドまたはその薬学的に許容される塩;および
(xiv)グリベックまたはその薬学的に許容される塩;
からなる群より選択される少なくとも一つの別の活性薬剤と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項6】
レニン阻害剤が、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
温血動物に有効量の請求項5の医薬組成物を投与することを含んでなる、
(a)2型糖尿病(高血圧症を伴うか伴わない);
(b)重症高血圧症、PH、悪性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症および家族性脂質代謝異常高血圧症;
(c)内皮機能不全(高血圧症を伴うか伴わない);
(d)心筋梗塞(MI)後生存、コラーゲン形成の増加および大動脈縮窄症;
(e)経皮経血管血管形成術後の再狭窄;
(f)PVD(PADおよび末梢静脈疾患を含む);
(g)CAD;
(h)モービディティおよびモータリティ;
(i)脳血管疾患;
(j)代謝疾患(シンドロームX);
(k)AF;
(l)臓器保護;
(m)腎保護;
(n)腎不全(例えば、慢性腎不全);
(o)糸球体腎炎(ネフローゼ症候群、高血圧および腎機能低下を伴ってもよい)、限局性、部分的糸球体腎炎および微小変化型腎症;
(p)ネフローゼ症候群および腎線維症;
(q)AIN、ATNおよび急性尿細管間質性腎炎;
(r)末期腎疾患(ESRD);
(s)PKD;
(t)血管炎;
(u)肥満症;
(v)偏頭痛;
(w)レニン分泌腫瘍;および
(x)脈管炎
から選択される状態または疾患の予防、顕性化への進行遅延または処置方法。
【請求項8】
レニン阻害剤が、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
温血動物に有効量の請求項5の医薬組成物を投与することを含んでなる、プラークの安定化を促進する方法。
【請求項10】
レニン阻害剤が、式(I)
【化3】

の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2011−178799(P2011−178799A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−97214(P2011−97214)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2007−503285(P2007−503285)の分割
【原出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】