説明

治療タンパク質に対する免疫反応を評価するための方法および生成物

【課題】治療タンパク質に対する免疫反応を評価するための方法および生成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、治療タンパク質により処置された被験体における臨床的に有意な免疫反応を特定するための方法及び産物に関する。本発明の第1の態様は、治療量のVLA4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)により処置された被験体における臨床的に有意な免疫反応を特定するための方法及び組成物に関する。本発明の第2の態様は、治療タンパク質に対する抗体の力価を測定するための試料収集(例えば、2つの異なる時点における少なくとも2つの試料の収集)の経時的詳細に関する。本発明の第3の態様は、この対照抗体力価の標準偏差の2倍に増大した未処置患者の抗体力価に対応する臨界閾値レベルの選択に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)の下で米国仮特許出願番号第60/668,404号(2005年4月4日出願)からの優先権を主張し、この仮特許出願の全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、治療剤、具体的には、治療タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))に対する免疫反応について患者を評価することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現在、様々な生物学的治療剤が、様々な疾患及び障害(例えば、移植片拒絶、白血病、乳癌、関節炎、多発性硬化症及びクローン病等)の処置に利用可能であり、更なるタンパク質系治療剤が数多く開発中である。現在利用可能な生物学的治療薬には、AMEVIVE(登録商標)(アレファセプト)、ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、ORTHOCLONE(登録商標)(ムロモナブ−CD3)、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)、REOPRO(登録商標)(アブキシマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、SIMULECT(登録商標)(バシリキシマブ)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)、SYNAGIS(登録商標)(パリビズマブ)、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、AVONEX(登録商標)(インターフェロンβ−1a)及びTYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)が含まれる。ナタリズマブはα4β1インテグリン(VLA−4)に対するヒト化モノクローナル抗体である。ナタリズマブは、α4β1及びα4β7インテグリンのα4サブユニットに結合する。ナタリズマブは、多発性硬化症、クローン病及び関節リウマチを含めた特定の炎症性疾患及び病態の処置に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物学的治療剤に対する免疫反応は様々な臨床予後を有する場合があるため、免疫原性アッセイの開発及び妥当性評価は、生物学的治療剤の分野において極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、治療剤、例えば、治療タンパク質(例えば、治療抗体)に対する免疫反応を特定、監視及び/又は評価するための方法及び組成物を提供する。患者が治療剤(例えば、治療タンパク質又は治療抗体)に対する任意の抗体を発達させるという事実は、その治療剤に対する臨床反応と相関する場合もあれば、相関しない場合もある。本発明の種々の態様は、治療剤に対する臨床的に有意な反応を検出するための閾値として使用できる抗体反応の予想外のレベルの発見に一部基づいている。幾つかの実施形態において、閾値レベルは、治療剤が投与されていない患者の統計的分析を使用して予測するよりも高い。臨床的に有意な閾値は一般的に、患者における免疫反応の検出可能な最低レベルよりも高い。例えば、臨床的に有意な閾値レベルは一般的に、陰性対照レベル(例えば、未処置患者集団の平均前処置レベル)を少なくとも2倍上回る標準偏差である。幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用されるより高い閾値レベルは、その閾値レベルが、治療剤が投与されていない患者で測定される免疫反応の5%カットオフ(例えば、平均を1.645倍上回る標準偏差)に基づく場合に特定されるよりも、偽陽性者が少なくなる。本発明の種々の態様によれば、患者試料における検出可能な免疫反応の存在は、免疫反応が少なくとも所定の閾値レベルに達しない限り、臨床的に有意でない。本発明はとりわけ、治療剤(例えば、治療タンパク質(例えば、治療抗体))に対する抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルを同定する方法、並びに治療剤に対する臨床的に有意な抗体反応を有する患者を同定する方法を提供する。本発明は又、被験体における臨床的に有意な抗体を特定するための閾値レベルも一部提供する。本発明の種々の態様によれば、治療剤(例えば、ナタリズマブ)に対する免疫反応は、その免疫反応の大きさが、(例えば、異なる患者群について得られた免疫反応に基づいて)事前に決定することができる閾値レベルに達しない限り、臨床的に有意でない場合がある(例えば、低下した臨床効果との有意な関連性を示さない場合がある)。驚いたことに、本明細書に記載の方法は、処置の前後に各患者から得る試料を比較することに依らず、治療剤に対する検出可能な免疫反応の単なる存在を特定することにも依らない。対照的に、本発明の種々の方法は、治療剤に対する免疫反応の少なくとも閾値レベルを検出することに関しており、この閾値レベルは、免疫反応の検出可能な最低レベルよりも高い場合があり、アッセイでは関連する臨床的有意性を有さない偽陽性者が回避されることもあり、このアッセイの陽性結果は臨床的に有意である。
【0006】
現在、治療タンパク質に対する臨床的に有意な抗体反応を検出するための一般的に適用される技法又は標準は存在しない。異なる治療タンパク質は異なる種類の抗体を誘導する場合があり、このような抗体の存在は、治療タンパク質の安全性、薬物動態及び/又は効果に影響を及ぼす場合もあれば、及ぼさない場合もある。治療抗体に対する患者の反応を監視する現在の方法は一般的に、各患者の処置の前後における血清抗体のレベルを比較する、検出可能な免疫反応の存在を特定する、並びにその検出可能な免疫反応が安全性、薬物動態及び/又は効果の何れかの問題と相関するかどうかを決定するために患者を評価することを伴う。対照的に、本発明の方法は、臨床的に有意な閾値レベルの反応を検出するためのスクリーニングアッセイを提供することによって、臨床的に有意な免疫反応を有する患者を同定するのに有用である。
【0007】
本発明によれば、治療剤に対する臨床的に有意な免疫反応は、患者における1つ以上の臨床パラメータ、並びに/或いは治療剤の薬物動態及び/又は効果に影響を及ぼす可能性がある抗体反応である。一般的に、臨床的に有意な免疫反応は、治療剤の効果の低下若しくは効果の喪失、又は治療剤に対する有害反応を示す。例えば、多発性硬化症の場合、治療タンパク質に対する臨床的に有意な免疫反応には、以下の1つ以上が含まれる:(a)患者における再発の回数、重篤度又は割合を低下させる治療剤の効果の喪失、或いはこのような効果の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%又はそれ以上の低下;(b)総合障害度評価尺度(EDSS)又は多発性硬化症機能複合(MSFC)尺度において身体障害の進行を遅らせる治療剤の効果の喪失、或いはこのような効果の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%又はそれ以上の低下;(c)脳MRIでの新しい若しくは新しく拡大したT2超強度病変部の数若しくは体積を減少させる、又は脳MRIでのT2超強度病変部体積の増加を減衰する効果の喪失、或いはこのような効果の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%又はそれ以上の低下;(e)視覚機能を改善する効果の喪失、或いはこのような効果の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%又はそれ以上の低下;(f)重篤な有害事象(例えば、過敏性反応(例えば、アナフィラキシー))の存在。(f)を除いて、このような反応は、薬剤投与後の所定期間内、例えば、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月又は少なくとも1年以内に評価される。
【0008】
一態様において、本発明は、治療剤(例えば、治療タンパク質(例えば、治療抗体))に対する抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルを同定する方法を提供する。この方法には、(a)障害を有する患者の対照集団における抗薬剤抗体のレベルを評価する(例えば、障害を有するが、少なくとも3ヶ月、6ヶ月又はそれ以上の期間にわたって被験体治療剤により処置されていない、少なくとも2名、3名、5名、10名、20名、30名、50名、100名又はそれ以上の患者の集団における抗薬剤抗体の平均又は中央レベルを求めること);及び(b)対照集団における抗薬剤抗体のレベルを少なくとも2倍(例えば、2.5倍、3倍、4倍、5倍又は6倍)上回る標準偏差の閾値レベルを選択することが含まれる。治療剤が投与されている患者(処置患者)における抗薬剤抗体の少なくとも閾値レベルの存在は、処置患者における臨床的に有意な反応と相関する。好ましくは、対照集団における抗薬剤抗体のレベルの特定に使用されるのと同じ検出試薬(例えば、標識抗薬剤抗体)が、処置患者の評価に使用される。一実施形態において、治療剤は、治療抗体、例えば、ヒト化21.6抗VLA−4抗体(例えば、ナタリズマブ)である。一実施形態において、障害は多発性硬化症である。幾つかの実施形態において、障害は、中枢神経系の炎症(例えば、多発性硬化症に加えて又はこれの代わりに、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS脈管炎、脳炎又は横断脊髄炎)、組織若しくは臓器の移植片拒絶又は移植片対宿主病、急性CNS傷害(例えば、脳卒中又は脊髄傷害);慢性腎臓疾患;アレルギー(例えば、アレルギー性喘息);1型糖尿病;炎症性腸障害(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎);重症筋無力症;線維筋痛;関節炎障害(例えば、関節リウマチ又は乾癬性関節炎);炎症性/免疫性皮膚障害(例えば、乾癬、白斑、皮膚炎又は扁平苔癬);全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;血液癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病又はリンパ腫);固形癌、例えば、(例えば、肺、乳房、前立腺又は脳の)肉腫又は癌腫;又は線維性障害(例えば、肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症又は腎臓間質性線維症)である。幾つかの実施形態において、障害は、α4β1及び/又はα4β7サブユニットの調節を伴う疾患である。
【0009】
別の態様において、本発明は、治療タンパク質(例えば、治療抗体)に対する臨床的に有意な抗体反応を有する患者を同定する方法を提供する。この方法には、疾患を有し、治療タンパク質が投与されている被験体から得た生物学的試料において、治療タンパク質に特異的に結合する1つ以上の抗体の閾値レベルの存在を特定することが含まれ、この閾値レベルは、対照集団(例えば、障害を有するが、直前の3ヶ月、6ヶ月又はそれ以上の期間内に治療タンパク質が投与されていない患者の集団)における、治療タンパク質に特異的に結合する抗体のレベルを少なくとも2倍(例えば、2.5倍、3倍、4倍、5倍又は6倍)上回る標準偏差である。一実施形態において、治療タンパク質は、治療抗体、例えば、ヒト化21.6(AN100226とも称する)抗VLA−4抗体(例えば、ナタリズマブ)である。一実施形態において、障害は多発性硬化症である。幾つかの実施形態において、障害は関節リウマチである。特定の実施形態において、障害はクローン病である。一実施形態において、この方法には更に、治療タンパク質に対する臨床的に有意な抗体反応を有するものとしてこのように特定される患者の処置
レジメンを変更することが含まれる。
【0010】
一態様において、本発明は、被験体から得る生物学的試料において、被験体に投与されたVLA−4結合治療抗体に特異的に結合する1つ以上の抗体の臨床的に有意なレベルの存在を特定するための方法及び組成物を提供する。本発明の種々の態様には、VLA−4結合治療抗体の投与に対する被験体の臨床的に有意な免疫反応を示す、誘導抗体のレベルの検出にELISAアッセイを使用することが含まれる。一実施形態において、本発明は、ナタリズマブを少なくとも1回服用している被験体のナタリズマブに対する免疫反応を示す、抗ナタリズマブ抗体の臨床的に有意なレベルを特定するための方法及びキットを提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、VLA−4結合抗体に対する被験体の免疫反応に基づいて治療レジメンを評価及び/又は変更するための方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様によれば、VLA−4結合抗体に対する被験体の臨床的に有意な免疫反応を検出する方法が提供される。これらの方法には、VLA−4結合抗体が投与されている被験体の生物学的試料が、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の臨床的に有意な閾値レベルを含むかどうかを決定することが含まれ、この場合、可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在により、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が示される。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応は、異なる時点に被験体から採取される少なくとも2つの生物学的試料における、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在によって示される。特定の実施形態において、このような時点は、少なくとも1ヶ月の間隔が空いている。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルは、2つの連続する時点に被験体から採取する2つの生物学的試料に存在する。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、VLA−4結合抗体に対する可溶性結合活性のレベルを生物学的試料の第1アリコートで決定する;及び可溶性結合活性がVLA−4結合抗体に対して特異的であるかどうかを決定することによって求められる。特定の実施形態において、可溶性結合活性の特異性は、生物学的試料の第2アリコートで求められる。幾つかの実施形態において、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、2種類以上の異なる量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって求められる(例えば、非標識VLA−4結合抗体の非存在下で測定したレベルは、競合量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定したレベルと比較される場合がある)。特定の実施形態において、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、2種類以上の異なる量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定した固定化VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって求められる(例えば、可溶性VLA−4結合抗体の非存在下で測定したレベルは、競合量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定したレベルと比較される場合がある)。幾つかの実施形態において、第1の量の非標識VLA−4の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルは、第2の量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルと比較される。幾つかの実施形態において、結合活性の第1及び第2レベルは、生物学的試料の第1及び第2アリコートで求められる。特定の実施形態において、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の量は、架橋ELISAアッセイを使用して求められる。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルは、生物学的試料の第1アリコートの第1イムノアッセイで決定され、VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルは、生物学的試料の第2アリコートの第2イムノアッセイで決定され、この場合、第2イムノアッセイには、第1イムノアッセイよりも多い量の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられ、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在は、結合活性の第1レベルが基準レベルよりも高く、結合活性の第2レベルが結合活性の第1レベルの所定の割合よりも低い場合に示される。特定の実施形態において、基準レベルは、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の基準量について測定した結合活性のレベルである。幾つかの実施形態において、基準量は、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の(例えば、血清試料における)約500ng/mlである。例えば、基準量は、約400ng/ml〜約600ng/ml(例えば、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、又は約600ng/ml)である場合がある。基準量に対応する結合活性の基準レベルは、希釈試料(例えば、10倍希釈に対応し、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の約40ng/ml〜約60ng/ml(例えば、約50ng/ml)を含有する試料)で測定される場合があることを理解するはずである。アッセイにおける結合活性の基準レベルは、基準量の適切な希釈に対応する、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の所定量により提供される場合がある。特定の実施形態において、VLA−4結合抗体は、VLA−4に対するヒト化マウスモノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体は、マウス抗体mAb 21.6(例えば、AN100226)のヒト化形態である。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体はナタリズマブである。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体は、ナタリズマブに高親和的に結合する基準抗体である。幾つかの実施形態において、基準抗体は、ナタリズマブとVLA−4の間の相互作用を遮断する。特定の実施形態において、第1及び第2イムノアッセイは架橋ELISAアッセイである。幾つかの実施形態において、第1及び第2アッセイは、固定化した非標識VLA−4結合抗体、及び可溶性標識VLA−4結合抗体を含み、この場合、この可溶性標識VLA−4結合抗体は、酵素、蛍光マーカー、ビオチンマーカー(例えば、VLA−4結合抗体はビオチン化される場合がある)、又は放射性マーカーにより標識される。幾つかの実施形態において、第1及び第2イムノアッセイは、単一の反応基質における並列反応体積部で行われる。幾つかの実施形態において、生物学的試料は血清試料である。特定の実施形態において、被験体はヒト患者である。幾つかの実施形態において、患者は多発性硬化症を有する。幾つかの実施形態において、患者は関節リウマチを有する。特定の実施形態において、患者はクローン病を有する。幾つかの実施形態において、被験体から少なくとも2つ以上の生物学的試料を得る時点は、少なくとも15日、30日、45日、60日、90日又はそれ以上の間隔が空いている。特定の実施形態において、この方法には又、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の臨床的に有意な閾値レベルが、被験体から得る少なくとも2つの生物学的試料に検出される場合に、被験体の治療レジメンを選択することが含まれる。幾つかの実施形態において、治療レジメンを選択することには、被験体の現在の治療を評価する、被験体のための新しい治療を決定する、被験体の現在の治療を変更する、又は被験体の現在の治療を中断することが含まれる。幾つかの実施形態において、現在の治療には、VLA−4結合抗体を被験体に投与することが含まれる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、被験体のための治療レジメンを選択する方法が提供される。これらの方法には、第1及び第2の時点に、VLA−4結合抗体に対する陽性免疫反応の存在について、VLA−4結合抗体が投与されている被験体をアッセイし、第1及び第2の時点におけるアッセイ結果に基づいて被験体のための治療レジメンを選択することが含まれ、この場合、ある時点における陽性免疫反応の存在は、その時点に被験体から得る生物学的試料における少なくとも臨床的に有意な閾値量の結合活性の存在によって示される。幾つかの実施形態において、第1及び第2の時点は、臨床的に有意な期間が空いている。特定の実施形態において、臨床的に有意な期間は少なくとも30日である。幾つかの実施形態において、第2の時点で陰性免疫反応が検出される場合は、VLA−4結合抗体治療が継続される。幾つかの実施形態において、第1及び第2の両方の時点で陽性免疫反応が検出される場合は、VLA−4結合抗体治療以外の治療が選択される。幾つかの実施形態において、被験体は多発性硬化症を有する。特定の実施形態において、被験体はクローン病を有する。幾つかの実施形態において、被験体は関節リウマチを有する。
【0014】
本発明の更に別の態様によれば、被験体のための治療レジメンを選択する方法が提供される。これらの方法には、被験体から得る少なくとも2つの生物学的試料における、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の存在を検出し(この場合、被験体にはVLA−4結合抗体が投与されており、少なくとも2つの生物学的試料は、少なくとも臨床的に有意な時間を空けた時点に被験体から採取される)、少なくとも2つの生物学的試料が被験体から得られる各時点に行われた、被験体におけるVLA−4抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の検出に基づいて、治療レジメンを選択することが含まれる。幾つかの実施形態において、試料を被験体から得る時点の間に空ける臨床的に有意な間隔は、少なくとも15日、30日、45日、60日、90日又はそれ以上である。特定の実施形態において、治療レジメンを選択することには、被験体の現在の治療を評価する、被験体のための新しい治療を決定する、被験体の現在の治療を変更する、又は被験体の現在の治療を中断することが含まれる。幾つかの実施形態において、現在の治療には、被験体にVLA−4抗体を投与することが含まれる。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を検出することは、VLA−4結合抗体が投与されている被験体から得る生物学的試料が、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の閾値レベルを含むかどうかを決定することを含み、この場合、可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在により、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が示される。特定の実施形態において、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルは、2つの連続する時点に被験体から採取される2つの生物学的試料に存在する。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、VLA−4結合抗体に対する可溶性結合活性のレベルを生物学的試料の第1アリコートで決定する;及び可溶性結合活性がVLA−4結合抗体に対して特異的であるかどうかを決定することによって求められる。幾つかの実施形態において、可溶性結合活性の特異性は、同じ生物学的試料の第2アリコートで求められる。特定の実施形態において、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、2種類以上の異なる量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって求められる(例えば、非標識VLA−4結合抗体の非存在下で測定したレベルは、競合量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定したレベルと比較される場合がある)。幾つかの実施形態において、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルは、2種類以上の異なる量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定した固定化VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって求められる(例えば、可溶性VLA−4結合抗体の非存在下で測定したレベルは、競合量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定したレベルと比較される場合がある)。幾つかの実施形態において、第1の量の非標識VLA−4の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルは、第2の量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルと比較される。特定の実施形態において、結合活性の第1及び第2レベルは、同じ生物学的試料の第1及び第2アリコートで求められる。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の量は、架橋ELISAアッセイを使用して求められる。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルは、生物学的試料の第1アリコートの第1イムノアッセイで決定され、VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルは、生物学的試料の第2アリコートの第2イムノアッセイで決定され、この場合、第2イムノアッセイには、第1イムノアッセイよりも多い量の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられ、生物学的試料における、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在は、結合活性の第1レベルが基準レベルよりも高く、結合活性の第2レベルが結合活性の第1レベルの所定の割合よりも低い場合に示される。幾つかの実施形態において、基準レベルは、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の基準量のための測定した結合活性のレベルである。特定の実施形態において、基準量は約500ngである。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体は、VLA−4に対するヒト化マウスモノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体はマウス抗体mAb 21.6のヒト化形態である。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体はナタリズマブである。特定の実施形態において、第1及び第2イムノアッセイは架橋ELISAアッセイである。幾つかの実施形態において、第1及び第2のアッセイは、固定化した非標識VLA−4結合抗体及び可溶性標識VLA−4結合抗体を含み、この場合、この可溶性標識VLA−4結合抗体は、酵素、蛍光マーカー、ビオチンマーカー(例えば、VLA−4結合抗体はビオチン化される場合がある)、又は放射性マーカーにより標識される。幾つかの実施形態において、第1及び第2イムノアッセイは、単一の反応基質における並列反応体積部で(例えば、マルチウェルプレートの個別のウェルにて)行われる。特定の実施形態において、生物学的試料は血清試料である。幾つかの実施形態において、被験体はヒト患者である。幾つかの実施形態において、患者は多発性硬化症を有する。幾つかの実施形態において、患者は関節リウマチを有する。特定の実施形態において、患者はクローン病を有する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、障害を有する患者についてタンパク質治療剤に対する抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルを同定する方法が提供される。これらの方法には、(a)障害を有するが、薬剤により処置されていない患者の対照集団における抗薬剤抗体のレベルを評価する、及び(b)対照集団における、抗薬剤抗体のレベルを少なくとも2倍上回る標準偏差のレベルを、障害を有し、薬剤により処置されている患者の抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルとして選択することが含まれる。幾つかの実施形態において、タンパク質治療剤は、治療抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0016】
本発明の更に別の態様によれば、治療タンパク質に対する臨床的に有意な抗体反応を有する患者を同定する方法が提供される。これらの方法は、障害を有し、治療タンパク質が投与されている患者から得る生物学的試料における、治療タンパク質に特異的に結合する抗体の閾値レベルの存在をアッセイすることが含まれ、この場合、この閾値レベルは、障害を有する患者の対照非処置集団における、治療タンパク質に特異的に結合する抗体のレベルを少なくとも2倍上回る標準偏差である。幾つかの実施形態において、治療タンパク質は、治療抗体又はその抗原結合フラグメントである。従って、本発明の態様は、VLA−4結合抗体が投与されている被験体の生物学的試料が、VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の閾値レベルを含むかどうかを決定することによって、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を検出する方法を提供し、この場合、可溶性抗体の少なくとも閾値レベルの存在により、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が示される。
本発明の各制限事項は本発明の種々の実施形態を包含する可能性がある。従って、何れか1つの要素又は要素の組み合わせを伴う本発明の各制限事項が本発明の各態様に含まれる可能性があることが予想される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体におけるVLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を検出する方法であって、VLA−4結合抗体が投与されている被験体の生物学的試料が、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の臨床的に有意な閾値レベルを含むかどうかを決定することを含み、前記可溶性抗体の少なくとも前記閾値レベルの存在により、前記VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が示される、方法。
(項目2)
前記VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が、異なる時点に前記被験体から採取される少なくとも2つの生物学的試料における前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも前記閾値レベルの存在によって示される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記時点が、少なくとも1ヶ月の間隔が空いている、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の少なくとも前記閾値レベルが、2つの連続する時点に前記被験体から採取される2つの生物学的試料に存在する、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、
前記VLA−4結合抗体に対する可溶性結合活性のレベルを前記生物学的試料の第1アリコートで決定すること;及び
前記可溶性結合活性が前記VLA−4結合抗体に対して特異的であるかどうかを決定すること
によって決定される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記可溶性結合活性の特異性が前記生物学的試料の第2アリコートで決定される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記生物学的試料における、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、2種類以上の異なる量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって決定される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記生物学的試料における、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、2種類以上の異なる量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定した固定化VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって決定される、項目1に記載の方法。
(項目9)
第1の量の非標識VLA−4の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルが、第2の量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルと比較される、項目7に記載の方法。
(項目10)
結合活性の前記第1及び第2レベルが、前記生物学的試料の第1及び第2アリコートで決定される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の量が、架橋ELISAアッセイを使用して決定される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルが、前記生物学的試料の第1アリコートの第1イムノアッセイで決定され、前記VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルが、前記生物学的試料の第2アリコートの第2イムノアッセイで決定され、ここで前記第2イムノアッセイには、前記第1イムノアッセイよりも多い量の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられ、前記結合活性の第1レベルが基準レベルよりも高く、結合活性の前記第2レベルが前記結合活性の第1レベルの所定の割合よりも低い場合に、前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルが前記生物学的試料に存在することが示される、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記基準レベルが、前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の基準量について測定した結合活性のレベルである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記基準量が約500ng/mlである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記VLA−4結合抗体が、VLA−4に対するヒト化マウスモノクローナル抗体である、項目1又は12に記載の方法。
(項目16)
前記VLA−4結合抗体が、マウス抗体mAb 21.6のヒト化形態である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記VLA−4結合抗体がナタリズマブである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1及び第2イムノアッセイが架橋ELISAアッセイである、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記第1及び第2アッセイが、固定化した非標識VLA−4結合抗体及び可溶性標識VLA−4結合抗体を含み、前記可溶性標識VLA−4結合抗体が酵素、蛍光マーカー又は放射性マーカーにより標識される、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記第1及び第2イムノアッセイが単一の反応基質における並列反応体積部で行われる、項目18又は19に記載の方法。
(項目21)
前記生物学的試料が血清試料である、項目1又は12に記載の方法。
(項目22)
前記被験体がヒト患者である、項目1又は12に記載の方法。
(項目23)
前記患者が多発性硬化症を有する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記患者が関節リウマチを有する、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記患者がクローン病を有する、項目22に記載の方法。
(項目26)
少なくとも2つ以上の生物学的試料を前記被験体から得る時点が、少なくとも15日、30日、45日又は60日の間隔が空いている、項目2に記載の方法。
(項目27)
前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の閾値レベルが前記被験体の少なくとも2つの前記生物学的試料で決定される場合に、前記被験体のための治療レジメンを選択することを更に含む、項目2に記載の方法。
(項目28)
治療レジメンを選択することが、前記被験体の現在の治療を評価すること、前記被験体のための新しい治療を決定すること、前記被験体の現在の治療を変更すること、又は前記被験体の現在の治療を中断することを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
現在の治療が、前記VLA−4結合抗体を前記患者に投与することを含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
被験体のための治療レジメンを選択する方法であって、
第1及び第2の時点に、前記VLA−4結合抗体に対する陽性免疫反応の存在について、VLA−4結合抗体が投与されている患者をアッセイし、前記第1及び第2の時点におけるアッセイ結果に基づいて前記患者のための治療レジメンを選択することを含み、
ある時点における陽性免疫反応の存在が、前記時点に前記被験体から得る生物学的試料における少なくとも臨床的に有意な閾値量の結合活性の存在によって示される、
方法。
(項目31)
前記第1及び第2の時点が、臨床的に有意な期間が空いている、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記臨床的に有意な期間が少なくとも30日である、項目31に記載の方法。
(項目33)
陰性免疫反応が前記第2の時点で検出される場合に、VLA−4結合抗体治療が継続される、項目30に記載の方法。
(項目34)
陽性免疫反応が前記第1及び第2の両方の時点で検出される場合に、VLA−4結合抗体治療以外の治療が選択される、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が多発性硬化症を有する、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記被験体がクローン病を有する、項目30に記載の方法。
(項目37)
前記被験体が関節リウマチを有する、項目30に記載の方法。
(項目38)
被験体のための治療レジメンを選択する方法であって、被験体から得た少なくとも2つの生物学的試料における、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の存在を検出する工程であって、ここで、前記被験体にはVLA−4結合抗体が投与されており、少なくとも2つの前記生物学的試料は、少なくとも臨床的に有意な時間を空けた時点に前記被験体から得られる、工程、および少なくとも2つの前記生物学的試料の前記時点に行われた、前記被験体における前記VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の検出に基づいて、治療レジメンを選択することを含む、方法。
(項目39)
前記試料を前記被験体から得る前記時点の間に空ける前記臨床的に有意な間隔が、少なくとも15日、30日、45日又は60日である、項目38に記載の方法。
(項目40)
治療レジメンを選択することが、前記被験体の現在の治療を評価すること、前記被験体のための新しい治療を決定すること、前記被験体の現在の治療を変更すること、又は前記被験体の現在の治療を中断することを含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
現在の治療が、前記VLA−4結合抗体を前記患者に投与することを含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の存在を検出することが、
VLA−4結合抗体が投与されている被験体の生物学的試料が、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の閾値レベルを含むかどうかを決定することを含み、前記可溶性抗体の少なくとも前記閾値レベルの存在により、前記VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応が示される、
項目38に記載の方法。
(項目43)
前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体の少なくとも前記閾値レベルが、2つの連続する時点に前記被験体から採取される2つの生物学的試料に存在する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、
前記VLA−4結合抗体に対する可溶性結合活性のレベルを前記生物学的試料の第1アリコートで決定すること;及び
前記可溶性結合活性が前記VLA−4結合抗体に対して特異的であるかどうかを決定すること
によって決定される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記可溶性結合活性の特異性が前記生物学的試料の第2アリコートで決定される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記生物学的試料における、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、2種類以上の異なる量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって決定される、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記生物学的試料における、前記VLA−4結合抗体に結合する可溶性抗体のレベルが、2種類以上の異なる量の可溶性VLA−4結合抗体の存在下で測定した固定化VLA−4結合抗体に対する結合活性のレベルを比較することによって決定される、項目42に記載の方法。
(項目48)
第1の量の非標識VLA−4の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルが、第2の量の非標識VLA−4結合抗体の存在下で測定した標識VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルと比較される、項目47に記載の方法。
(項目49)
結合活性の前記第1及び第2レベルが、前記生物学的試料の前記第1及び第2アリコートで決定される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の量が、架橋ELISAアッセイを使用して決定される、項目42に記載の方法。
(項目51)
前記VLA−4結合抗体に対する結合活性の第1レベルが、前記生物学的試料の第1アリコートの第1イムノアッセイで決定され、前記VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルが、前記生物学的試料の第2アリコートの第2イムノアッセイで決定され、ここで前記第2イムノアッセイには、前記第1イムノアッセイよりも多い量の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられ、結合活性の前記第1レベルが基準レベルよりも高く、結合活性の前記第2レベルが結合活性の前記第1レベルの所定の割合よりも低い場合に、前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルが前記生物学的試料に存在することが示される、項目42に記載の方法。
(項目52)
前記基準レベルが、前記VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の基準量について測定した結合活性のレベルである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記基準量が約500ngである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記VLA−4結合抗体が、VLA−4に対するヒト化マウスモノクローナル抗体である、項目38に記載の方法。
(項目55)
前記VLA−4結合抗体が、マウス抗体mAb 21.6のヒト化形態である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記VLA−4結合抗体がナタリズマブである、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記第1及び第2イムノアッセイが架橋ELISAアッセイである、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記第1及び第2アッセイが、固定化した未標識VLA−4結合抗体及び可溶性標識VLA−4結合抗体を含み、前記可溶性標識VLA−4結合抗体が酵素、蛍光マーカー又は放射性マーカーにより標識される、項目51に記載の方法。
(項目59)
前記第1及び第2イムノアッセイが単一の反応基質における並列反応体積部で行われる、項目57又は58に記載の方法。
(項目60)
前記生物学的試料が血清試料である、項目38に記載の方法。
(項目61)
前記被験体がヒト患者である、項目38に記載の方法。
(項目62)
前記患者が多発性硬化症を有する、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記患者が関節リウマチを有する、項目61に記載の方法。
(項目64)
前記患者がクローン病を有する、項目61に記載の方法。
(項目65)
障害を有する患者についてタンパク質治療剤に対する抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルを同定する方法であって、
前記障害を有するが、前記薬剤により処置されていない患者の対照集団における抗薬剤抗体のレベルを評価すること;及び
前記対照集団における、抗薬剤抗体の前記レベルを少なくとも2倍上回る標準偏差のレベルを、前記障害を有し、前記薬剤により処置されている患者の抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルとして選択すること
を含む、方法。
(項目66)
前記タンパク質治療剤が、治療抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目65に記載の方法。
(項目67)
治療タンパク質に対する臨床的に有意な抗体反応を有する患者を同定する方法であって、障害を有し、前記治療タンパク質が投与されている患者から得る生物学的試料における、前記治療タンパク質に特異的に結合する抗体の閾値レベルの存在をアッセイすることを含み、前記閾値レベルは、前記障害を有する患者の対照非処置集団における、前記治療タンパク質に特異的に結合する抗体のレベルを少なくとも2倍上回る標準偏差である、方法。
(項目68)
前記タンパク質治療剤が、治療抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目67に記載の方法。
(項目69)
アッセイウェルをナタリズマブにより被覆する工程;
対照試料、スクリーニング試料及び競合試料を個別のアッセイウェルでインキュベートする工程;
ビオチン化されたナタリズマブを前記アッセイウェル内の前記試料に加える工程;及び
前記ビオチン化されたナタリズマブを、西洋ワサビペルオキシダーゼアッセイを使用して検出する工程
を含む、項目1に記載の方法。
(項目70)
0.25μg/mlの濃度のナタリズマブが、前記アッセイウェルを被覆するために使用される、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記競合試料が、可溶性非標識ナタリズマブを約100μg/mlの最終濃度で含有する、項目69に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、イムノアッセイにおける遊離ナタリズマブの妨害を図示する。
【図2】図2は、遮断アッセイにおける遊離ナタリズマブの妨害を図示する。
【図3】図3は、ナタリズマブの最初の投与後における時間を関数とした、臨床的に有意な免疫反応の確率を示す。
【図4】図4は、再発率に対する陽性免疫反応の全体的な影響を図示する。P=プラセボ、n=315。AN=抗体陰性、n=569。TP=一時的陽性、n=19。PP=持続的陽性、n=37。
【図5A】図5は、ナタリズマブの最初の投与後における特定の時間間隔にわたる、再発率に対する陽性免疫反応の影響を図示する(A:0〜3ヶ月、B:3〜6ヶ月、C:6〜9ヶ月、及びD:9〜12ヶ月)。P=プラセボ、n=315。AN=抗体陰性、n=569。TP=一時的陽性、n=19。PP=持続的陽性、n=37。
【図5B】図5は、ナタリズマブの最初の投与後における特定の時間間隔にわたる、再発率に対する陽性免疫反応の影響を図示する(A:0〜3ヶ月、B:3〜6ヶ月、C:6〜9ヶ月、及びD:9〜12ヶ月)。P=プラセボ、n=315。AN=抗体陰性、n=569。TP=一時的陽性、n=19。PP=持続的陽性、n=37。
【図5C】図5は、ナタリズマブの最初の投与後における特定の時間間隔にわたる、再発率に対する陽性免疫反応の影響を図示する(A:0〜3ヶ月、B:3〜6ヶ月、C:6〜9ヶ月、及びD:9〜12ヶ月)。P=プラセボ、n=315。AN=抗体陰性、n=569。TP=一時的陽性、n=19。PP=持続的陽性、n=37。
【図5D】図5は、ナタリズマブの最初の投与後における特定の時間間隔にわたる、再発率に対する陽性免疫反応の影響を図示する(A:0〜3ヶ月、B:3〜6ヶ月、C:6〜9ヶ月、及びD:9〜12ヶ月)。P=プラセボ、n=315。AN=抗体陰性、n=569。TP=一時的陽性、n=19。PP=持続的陽性、n=37。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、被験体に投与される治療タンパク質(例えば、治療抗体)に対する免疫反応を検出及び監視するための方法、組成物及びキットに一部関する。一態様において、本発明は、治療抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を有する患者を同定する方法を提供する。本発明によれば、検出可能な免疫反応の存在は、免疫反応が臨床的に有意な閾値レベルに達しない限り、臨床的に有意でない。例えば、ナタリズマブの臨床研究において、免疫反応の臨床的に有意な閾値レベルは、驚いたことに、治療剤が投与されていない被験体で測定される免疫反応の対照レベルを1.645倍上回る標準偏差(例えば、約2倍を超える標準偏差)であった。
【0019】
本発明の特定の態様は、被験体に投与されるVLA−4結合治療抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を検出する方法に関する。本発明の態様は、VLA−4結合抗体を少なくとも1回(例えば、1回の治療量)服用している被験体における免疫反応を検出及び監視するのに特に有用である。本発明の態様には、VLA−4結合治療抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を有する被験体を特定及び/又は監視する、免疫反応を評価する、並びに/或いは適切な臨床処置(例えば、特定の治療レジメン)を免疫反応の性質及び/又は程度に基づいて決定することが含まれる。VLA−4結合抗体の投与に対する被験体の反応に関する情報は、被験体のための治療レジメンを調節、設計及び/又は最適化するのに使用される場合がある。従って、本発明の一態様は、VLA−4結合治療抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を有する被験体を特定することに関する。本発明の別の態様は、VLA−4結合治療抗体に対する被験体の免疫反応を監視することに関する。本発明の更なる態様は、特定の疾患(例えば、多発性硬化症、クローン病又は関節リウマチ等)の処置に適切な治療方針を、VLA−4結合治療抗体に対する被験体の免疫反応に基づいて決定することに関する。
【0020】
VLA−4結合抗体は、炎症を伴う幾つかの疾患及び障害の処置に使用される場合がある。このような障害には、例えば、中枢神経系の炎症(例えば、多発性硬化症に加えて、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS脈管炎、脳炎、及び横断脊髄炎)、組織若しくは臓器の移植片拒絶又は移植片対宿主病、急性CNS傷害(例えば、脳卒中又は脊髄傷害);慢性腎臓疾患;アレルギー(例えば、アレルギー性喘息);1型糖尿病;炎症性腸障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎);重症筋無力症;線維筋痛;関節炎障害(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎);炎症性/免疫性皮膚障害(例えば、乾癬、白斑、皮膚炎、扁平苔癬);全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;血液癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫);固形癌、例えば、(例えば、肺、乳房、前立腺又は脳の)肉腫又は癌腫;及び線維性障害(例えば、肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症及び腎臓間質性線維症)が含まれる。幾つかの実施形態において、障害は、α4β1及び/又はα4β7サブユニットの調節によってもたらされる疾患である。
【0021】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、マウスmAb 21.6のヒト化型(例えば、ナタリズマブ)である。従って、本発明の種々の態様は、ナタリズマブに対する被験体の反応を評価すること、並びにナタリズマブによる処置が可能な多発性硬化症及びその他の炎症性病態又は疾患に適切な処置を決定することに関する。
【0022】
本発明は、被験体におけるVLA−4結合抗体(例えば、マウスmAb 21.6のヒト化型(例えば、ナタリズマブ)、即ちAN100226)に対する免疫反応を特定する、及び反応が臨床的に有意であるかどうかを決定することに一部関する。
【0023】
本明細書で使用される、「(免疫反応を有する被験体を)特定する」とは、被験体における免疫反応の存在を検出又は診断することを意味する。従って、臨床的に有意な免疫反応を有する被験体を特定することは、被験体における臨床的に有意な免疫反応の存在を検出又は診断することを意味する。
【0024】
本明細書で使用される、「(治療タンパク質に対する抗体反応の」臨床的に有意な閾値」とは、対照基準レベルを少なくとも2倍上回る標準偏差である。一実施形態において、治療タンパク質に対する臨床的に有意な免疫反応の閾値レベルは、対照レベルを3倍〜6倍(例えば、約4倍又は5倍)上回る標準偏差である場合がある。対照レベルは、治療タンパク質にさらされる前の患者集団(例えば、疾患又は病態(例えば、多発性硬化症、クローン病又は関節リウマチ)を有する被験体の集団)に存在する結合活性の平均又は中央レベルである場合がある。一実施形態において、抗ナタリズマブ抗体の臨床的に有意な閾値は、500ng/mlの患者血清である(例えば、10倍希釈血清のアッセイにおける50ng/mlの閾値)。
【0025】
本明細書で使用される免疫反応とは、治療タンパク質を結合する1つ以上の抗体の被験体におけるレベルの増大によって特徴付けられる、治療タンパク質に対する免疫原性反応である。従って、免疫反応は、治療タンパク質、例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を認識し(例えば、特異的に認識し)、それに結合する可溶性抗体のレベル増大の誘導によって特徴付けられる場合がある。一般的な免疫反応はポリクローナルであり、これには、治療タンパク質に対する異なる親和性(従って、異なる程度の特異性)を有する抗体が含まれる場合がある。従って、本発明の種々の方法は、被験体に投与された治療タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体)に結合する1つ以上の誘導抗体の被験体における存在を検出することを伴う場合がある。幾つかの実施形態において、誘導抗体は、生物学的試料(例えば、血清試料)に存在する可溶性抗体として検出される場合がある。
【0026】
本発明の種々の態様は、患者から得る生物的試料における結合活性の臨床的に有意な閾値レベルを検出するためのアッセイに関する。この閾値レベルとは、それよりも低い場合に検出可能な結合活性が臨床的に有意でないと見なされるレベルを表す。本明細書で使用される「結合活性」とは、生物学的試料で検出される、治療タンパク質への結合量を示す。本明細書に記載の通り、生物学的試料における結合活性の存在は、治療タンパク質の投与に対するポリクローナル反応を反映する場合がある。従って、結合量は、タンパク質に対する異なる親和性を有する異なる抗体による結合の凝集を反映する場合がある。特定の実施形態においては、結合のレベルが、治療タンパク質に対する特異的な抗体の存在のためであるか、又はその他の因子(例えば、リウマチ因子)のためであるかを、より強い自身をもって決定するために、結合活性が更に分析される。結合活性の特異性は、本明細書に記載の通り競合アッセイで評価される場合がある。
【0027】
本発明の一態様において、被験体から得る1つ以上の試料が本発明のアッセイで陽性であると試験される場合にのみ、被験体は陽性として(即ち、治療タンパク質に対する臨床的に有意な免疫反応を有するものとして)特定される。陽性試験結果は、被験体から得る試料が、治療タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体)に対する少なくとも臨床的に有意な閾値レベルの結合活性を含有する時に、求められる。驚いたことに、治療抗体に対する任意の検出可能な免疫反応の存在は、臨床的に有意でない。本発明によれば、治療抗体に対する免疫反応のレベルを検出するために患者をスクリーニングする方法では、多くの偽陽性患者が特定されることから、臨床的に有意な免疫反応を有さない患者の不必要な追加の臨床モニタリング及び潜在的な懸念事項を生じることになる。例えば、治療抗体が投与されていない被験体に存在する結合活性の平均レベルを1.645倍上回る標準偏差よりも高い、治療抗体に対する免疫反応に基づいて、患者が陽性であると特定される場合には、極めて多くの偽陽性者が検出される。本発明によれば、1.645倍の標準偏差のカットオフを使用した理論上の5%の偽陽性率は、偽陽性者数の過小評価となる。何故なら、この5%は、任意の免疫反応の偽検出率を表すものであり、臨床的に有意な免疫反応の偽陽性率を表していないためである。驚いたことに、カットオフレベル(それよりも低い場合に反応が陰性であると見なされるレベル)を、対照基準レベルを1.645倍上回る標準偏差にまで上げることによって、臨床的に有意な免疫反応を有する被験体の特定に影響を及ぼすことなく、偽陽性者数は減少する。この閾値は、臨床的に有意な免疫反応を有する患者の許容される検出率をもたらすレベルで設定されなければならないことが理解されるはずである。従って、たとえ、臨床的に有意な閾値が、免疫前の基準レベルを1.645倍上回る標準偏差のレベルよりも高く設定されなければならないとしても、閾値は、実際の陽性者の検出効率を低下させるほど高く設定してはならない。
【0028】
本発明の一態様において、被験体から得る試料が本発明のアッセイで陽性であると試験されない場合、例えば、被験体から得る試料が抗体反応の臨床的に有意な閾値レベルに達しない場合は、被験体の免疫反応が陰性として分類される場合がある。対照的に、単一のアッセイにおける結合活性の陽性レベル(臨床的に有意な閾値レベルの、又はこのレベルを超えるレベル)に基づき被験体が陽性として特定される場合、患者は「一時的な」又は「永続的な」陽性者の何れとなる場合がある。一時的な陽性者とは、指定期間の間に治療抗体に対する陽性免疫反応を有し、その期間の後に陰性になる患者である。対照的に、永続的な陽性者とは、指定期間よりも長い期間にわたって免疫反応の臨床的に有意なレベルが陽性である患者である。「一時的」及び「永続的」とは相対的な用語であることが理解されるはずである。従って、患者が、臨床的に有意な時間を隔てた2つ以上の時点で(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の時点で)免疫反応が陽性であると試験された場合、患者は永続的として最初に分類される場合がある。しかしながら、患者がその後のアッセイで免疫反応が陰性であると試験された場合、患者はその後一時的として再分類される場合がある。臨床的に有意な時間間隔は、少なくとも1週間、1ヶ月、1年又はそれ以上である場合がある。例えば、閾値の時間間隔は、30日〜180日、約60日、約42日等である場合がある。一時的な免疫反応の存在により、治療効果の一時的な低下が示される場合がある。永続的な免疫反応の存在により、永続的に低下した治療効果が示される場合がある。従って、一時的又は永続的な免疫反応の存在が臨床的に関係する場合があり、一時的な陽性又は永続的な陽性として特定される被験体における治療レジメンの性質に影響を及ぼす場合がある。永続的な免疫反応では、被験体の治療レジメンの変更が必要となる場合がある。
【0029】
本明細書で使用される「治療レジメン」という用語は、被験体の1クールの処置を意味する。治療レジメンには、医薬品の投与及び/又は治療の適用が含まれる場合がある。レジメンの選択には、服用量、服用時期、服用頻度、処置期間、1つ以上の医薬品又は治療との併用治療、並びに医学及び治療の業者によって使用される処置決定のその他何れかの態様の選択が含まれる場合がある。治療レジメンには又、疾患又は障害の防止又は処置のために被験体に施される、又は被験体に使用される治療(例えば、手技又はデバイス)の使用が含まれる場合もある。治療手技の例には、限定することを意図するわけではないが、医療デバイス又は手術の使用が含まれる。従って、VLA−4結合抗体による治療レジメンを決定又は変更することには、被験体に投与されるVLA−4結合治療抗体の服用量、投与頻度、投与経路、処置期間(例えば、施される服用回数);VLA−4結合抗体処置を1つ以上の追加の処置と組み合わせるか否か;VLA−4結合抗体処置を中断するか否か;異なるVLA−4結合抗体を使用するか否か、及び/又はVLA−4結合抗体の組み合わせを使用するか否か等を伴う場合がある。一実施形態において、本発明は、VLA−4結合抗体に代わる治療薬を使用するかどうか、例えば、β−インターフェロンを使用するか否かを決定することを伴う場合がある。
【0030】
本発明の種々の態様は、ヒト(例えば、ヒト患者)におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応を検出及び/又は監視することに関する。従って、本明細書で使用される被験体とは、ヒト被験体である場合がある。被験体は、炎症性疾患又は病態を有するヒト患者である場合がある。被験体は、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を少なくとも1回服用している患者である場合がある。被験体は、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)により長期間処置されている(又は長期間処置された)患者である場合がある。被験体は、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)により繰り返し処置されている(又は繰り返し処置された)患者である場合がある。本明細書で使用される「長期間の処置」は、(例えば、炎症性疾患又は病態の症状を長期間にわたって抑制又は管理するために)VLA−4結合抗体を長期間にわたって投与することを伴う場合がある。対照的に、反復処置は、(例えば、炎症性疾患の症状が悪化又は「突発」した時にそれらの症状を処置するために)必要に応じてVLA−4結合抗体による1クールの処置(例えば、一定期間の投与)を繰り返すことを伴う場合がある。一実施形態において、患者は、被験体が初めてVLA−4結合治療抗体により再処置される時、反復処置を受けていると見なされる。被験体は又、VLA−4結合抗体による処置との組み合わせた、又はVLA−4結合抗体による処置とは別個の治療又は手技による処置を受ける又は受けている場合もあることが当業者によって理解されるであろう。本発明の態様はヒト被験体に限定されないことが理解されるはずである。従って、被験体は、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、齧歯類又は他の非ヒト被験体である場合がある。
【0031】
免疫反応の特定及び/又は監視
一態様において、本発明は、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応を特定及び/又は監視することを伴う。特定の実施形態において、特定及び/又は監視することが、被験体から得る生物学的試料(好ましくは、血液)を、本明細書に記載の通り、投与されたVLA−4結合抗体に結合する誘導抗体の存在についてアッセイすることによって行われる。
【0032】
本発明の一態様においては、被験体から得る生物学的試料で定性アッセイが行われ、生物学的試料が、閾値量よりも多い量でVLA−4結合抗体に対する抗体を含有する場合に、免疫反応の存在が特定される。一実施形態において、閾値量は、それを超える場合に免疫反応が臨床的に関連するものとして特定される量であり、例えば、閾値レベルは本明細書に記載の通り決定される。臨床的に関連する免疫反応が臨床的意義を有する場合があり、例えば、投与されたVLA−4結合抗体の投薬量が変更されなければならないかどうかを決定するために、又は患者の他の生理学的パラメータが監視されなければならないかどうかを決定するために、又は免疫反応についての更なるアッセイが行われなければならないかどうかを決定するために、又は何らかの代替的工程若しくは更なる工程が、被験体を処置若しくは監視するために取られなければならないかどうかを決定するために、又はその他のために、被験体が評価されなければならないことを示す。臨床的に関連する免疫反応は、1つ以上のその他の要因と共に評価される場合がある。臨床的に関連する免疫反応の特定は、それ自体、患者の治療又は処置療法の変更を必要としないことが理解されるはずである。
【0033】
本発明の別の態様において、被験体に投与されたVLA−4結合抗体に対する抗体の量(例えば、抗体力価)を定量するために、生物学的試料で定量アッセイが行われる場合がある。定量結果は又、免疫反応が臨床的に有意な閾値レベルを超えているかどうかを決定するために分析される場合もある。
【0034】
本発明によれば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)に対する免疫反応は、異なる時点に被験体から得る試料でアッセイを行うことにより、被験体にて経時的に評価される場合がある。このような多角的評価法では、VLA−4結合抗体に対する被験体の免疫反応の監視が可能であり、VLA−4結合治療抗体による療法を被験体の治療上の要求に合わせて個別に調節できる場合がある。例えば、被験体から試料を得て、被験体に投与されているVLA−4結合抗体に対する免疫反応を試験する場合があり、その後第2の時点で、別の試料をその被験体から得て、同様に試験する場合がある。所定の時間間隔での逐次的な測定による経時的な被験体の試料における抗体反応の存在の検出及び確認は、VLA−4結合治療抗体の処置に対する免疫反応の監視を可能にする。投与されたVLA−4結合抗体に対する免疫反応の検出及び監視は又、被験体の全体的な処置における調節を、例えば、VLA−4結合抗体の処置を調節すること(例えば、変更又は一時中断すること)によって、及び/又は更なる治療(例えば、被験体の免疫反応を調節する治療)を調節することによって可能にする。
【0035】
治療レジメンの選択又は調節は、VLA−4結合抗体が投与されている被験体から異なる時点に得られる少なくとも2つの試料におけるVLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を明らかにすることに基づく場合がある。VLA−4結合抗体に対する被験体の臨床的に有意な免疫反応を明らかにすることにより、特定の医薬用薬剤及び/又は治療を被験体に施すことを開始、継続、調節又は停止することが有益であることを示す場合がある。例えば、被験体から得る少なくとも2つの生物学的試料におけるVLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を明らかにすることは、現在の治療レジメンの一部として被験体に投与される医薬用薬剤の服用量を変更するための基礎となる場合がある。処置は、更なる医薬用薬剤又は治療を含める、或いは現在施されている薬剤又は治療の服用を増減させるために変化させる場合がある。例えば、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応を特定することにより、免疫抑制的な医薬用薬剤等による処置を開始又は継続することが示唆される場合がある。幾つかの実施形態において、最初の治療レジメンは、VLA−4結合抗体により処置されている被験体から得る1つの生物学的試料におけるVLA−4結合抗体に対する最初の免疫反応を明らかにすることに基づいて選択される場合がある。選択を行い、選択した治療レジメンを施した後、被験体から得る1つ以上のその後の生物学的試料におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応をその後明らかにする場合があり、これにより治療レジメンを調節するための基礎を得る場合がある。
【0036】
異なる時点に被験体から得る2つ以上の生物学的試料におけるVLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の決定は、VLA−4結合抗体治療に対する被験体における免疫反応の開始、進行又は退行を評価又は測定するために比較されてもよい。被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応の開始は、VLA−4結合抗体に結合する少なくとも1つの抗体のレベルの増大によって特徴付けられる場合があり、被験体における1つ以上の生理学的変化又は症状の開始を伴う場合がある。VLA−4結合治療抗体に対する免疫反応の進行は、VLA−4結合治療抗体に結合する少なくとも1つの抗体のレベルにおける更なる増大によって特徴付けられる場合がある。しかしながら、免疫反応の進行には、少なくとも1つの更なる抗体のレベルにおける増大、及び/又は免疫反応の開始と共に増大した抗体の少なくとも1つのレベルにおける減少を伴う場合がある。例えば、最初の免疫反応が主としてIgM反応である場合がある。免疫反応が進行するに従い、優勢な抗体がIgM抗体からIgG抗体に切り替わる場合がある。免疫反応の進行には又、最初の生理学的変化又は症状の1つ以上の進行(例えば、増大、低下又は変更)、或いは1つ以上の更なる生理学的変化又は症状の開始が付随する場合もある。VLA−4結合治療抗体に対する被験体における免疫反応の退行は、VLA−4結合治療抗体に結合する1つ以上の抗体のレベルの低下によって特徴付けられる場合がある。免疫反応の退行には又、幾つかの生理学的変化又は症状の低下が付随する場合がある。しかしながら、VLA−4結合治療抗体に対する免疫反応の開始、進行及び/又は退行は、抗体レベルにおける検出可能なレベルとは異なって、臨床的に無症候性である場合があることが理解されるはずである。
【0037】
VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応の進行及び退行は一般的に、経時的な被験体の試料における、VLA−4結合抗体と結合する抗体のレベルの増大又は低下によってそれぞれ示される場合がある。例えば、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体又は抗体の臨床的に有意なレベルが、被験体の第1試料に存在することが明らかにされず、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体の臨床的に有意な閾値が、被験体の第2又はその後の試料に存在することが明らかにされる場合は、それによって、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応の開始が示される場合がある。被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応の進行は、被験体の最初又は前回の試料に存在するレベルに比べて、被験体の第2又はその後の試料における、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体がより高レベルで存在することにより示される場合がある。VLA−4結合抗体に対する免疫反応の退行は、被験体の最初又は前回の試料に存在するレベルに比べて、被験体の第2又はその後の試料における、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体がより低レベルで存在することによって示される場合がある。
【0038】
本発明の一態様において、免疫反応は、VLA−4結合治療抗体に対する抗体のレベルが所定の臨床的に有意な閾値を超えているかどうかに基づいて、陽性又は陰性の何れかとして分類される場合がある。幾つかの実施形態において、臨床的に有意な閾値は、免疫前の被験体(即ち、VLA−4結合治療抗体の服用を何ら受けていない被験体)において測定された結合活性の平均レベルを1.645倍(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍又は6倍)上回る標準偏差を超える。幾つかの実施形態において、被験体は健康な被験体であり、特定の実施形態において、被験体は疾患患者(例えば、多発性硬化症、クローン病又は関節リウマチの患者)である。一実施形態において、閾値レベルは1mlの血清当たり0.5マイクログラムを超える。幾つかの実施形態において、閾値レベルは1mlの血清当たり約0.5マイクログラムに等しい。
【0039】
一実施形態において、VLA−4結合抗体が投与されている被験体は、少なくとも3つのカテゴリーの1つに含まれるものとして分類される場合がある。1つのカテゴリーは本明細書で「陰性」と称され、これには、結合活性が臨床的に有意な閾値レベルであるか、又はそれよりも低い被験体(例えば、VLA−4結合抗体に対する抗体が、被験体から得る生物学的試料(例えば、血清)において少なくとも約500ng/mlの濃度で検出されない被験体)が含まれる。第2のカテゴリーは本明細書で「一時的な陽性」と称され、これには、結合活性が、限られた回数でのみ、例えば、1回、2回、3回、4回、5回の時点で閾値レベルを上回って検出される被験体(例えば、VLA−4結合抗体に対する抗体が、最後の時点から少なくとも30日間隔てたその後の時点では検出されない被験体)が含まれる。第3のカテゴリーは本明細書で「永続的な陽性」と称され、これには、結合活性が、所定の回数で、例えば、最小限の閾値時間の間隔を空けた2回、3回、4回、5回、6回、7回又はそれ以上の時点で閾値レベルを上回って検出される被験体(例えば、VLA−4結合抗体に対する抗体が、少なくとも閾値間隔を空けた時点に被験体から得る2個、3個、4個、5個、6個、7個又はそれ以上の生物学的試料において少なくとも約500ng/mlの濃度で検出される被験体)が含まれる。幾つかの実施形態において、閾値間隔は、少なくとも約10日、20日、30日、40日、50日、60日、70日、80日、90日又はそれ以上の日数である。「永続的な陽性」である患者は、VLA−4抗体治療から効果が喪失する場合がある一方で、「一時的な陽性」の患者は、効果がごく一時的に低下した後に効果が完全に回復する。
【0040】
陰性被験体は一時的な陽性者になる場合があることが理解されるはずである。又、陽性免疫反応が発達し、指定された数の時点(例えば、少なくとも2つの時点)にわたり持続する場合には、何れかが永続的な陽性者になる場合がある。
【0041】
一実施形態においては、単一の陽性結果の決定に基づいて治療を変更する場合があり、別の実施形態においては、被験体が一時的な陽性被験体であることの決定に基づいて治療を変更する場合。更に別の実施形態においては、被験体が永続的な陽性被験体であることの決定に基づいて治療を変更する場合がある。
【0042】
上で考察した通り、一時的及び永続的という用語は相対的な用語であり、永続的な陽性であると思われる患者が後の時点で陰性になる場合があることが、理解されるはずである。従って、陽性反応を有する患者は、陽性反応の持続、治療の有効性、及び/又は陽性免疫反応の他の臨床的発現の存在を評価するために定期的に監視されなければならない。
【0043】
本発明によれば、治療効果における低下の危険性(例えば、再発の危険性)が、陽性免疫反応が持続する時間の長さと共に増大する。従って、本発明の一態様において、患者が陽性と試験される回数は、その患者が陽性のままである期間の長さよりも重要でない。一実施形態において、陽性結果がVLA−4結合治療抗体の最初の3ヶ月以内に検出される場合に、患者は治療効果が低下する危険性(例えば、再発の危険性)があるものとして特定される場合がある。一実施形態において、この危険性は、陽性免疫反応が3ヶ月〜6ヶ月にわたって持続する場合に増大し、陽性免疫反応が6ヶ月〜9ヶ月にわたって持続する場合に更に増大し、この持続がVLA−4結合治療抗体の最初の投与から9ヶ月〜12ヶ月にわたる場合に尚更に増大する。1年間を超える持続は、再発の可能性を尚更に増大させることが理解されるはずである。従って、異なる治療レジメンが、永続的に陽性免疫反応を有する患者については適切となる場合がある。しかしながら、永続的に陽性免疫反応が存在する場合でさえ、治療抗体の治療は、その治療が無効になるまで(例えば、実質的に全ての効果の喪失)、又は他の好ましくない臨床的発現を引き起こすまで、中断される必要がないことが理解されるはずである。
【0044】
幾つかの実施形態において、VLA−4結合治療抗体による処置が、閾値レベル未満の免疫反応を有する患者において無効であるか、又は効果を失いつつある場合に、この処置は中断される場合がある。臨床的に有意な免疫反応の非存在下での効果の欠如(又は効果における低下)により、処置が効果的でないことが、治療剤に対する患者の免疫反応以外の1つ以上の要因のためであることを示す場合がある。陽性反応が検出されなければ、患者は一時的な陽性者でない。従って、代わりの処置が検討される場合がある。
【0045】
結合活性又は抗体レベルは、免疫前の活性又はレベル(即ち、VLA−4結合抗体の初回投与前に測定する活性又はレベル)と比較される場合があることが理解されるはずである。しかしながら、免疫前の量との比較は、本明細書で考察される通り必ずしも必要なわけではない。何故なら、臨床的に有意な閾値量(又は閾値を超える量)の結合活性又は抗体レベルが患者の試料に存在する時に、陽性免疫反応が特定される場合があるためである。
【0046】
アッセイ及び検出方法
本発明の態様によれば、抗体反応の閾値量がアッセイされる。本明細書で考察される通り、定性アッセイが行われる場合がある。或いは、定量アッセイが行われる場合があり、一実施形態において、定量データは定性出力(例えば、抗体の量が閾値量よりも多いかどうか)に変換してもよい。
【0047】
抗体量又は結合活性が少なくとも閾値量又は閾値の活性であるかどうかの決定には、抗体量又は結合活性を明らかにする任意の好適な方法が使用される場合がある。検出アッセイには、指定の治療タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体)又はそのフラグメントに特異的に結合する抗体を検出、確認、結合、精製、除去、定量化及び/又はその他の方法で一般的に検出する、何れかの既知の免疫検出方法が含まれる場合がある。例えば、免疫検出法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(標準サンドイッチELISA又は架橋ELISAを含むがこれらに限定されない)、放射イムノアッセイ(RIA)、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光測定、生物発光アッセイ、放射免疫沈殿アッセイ(RIPA)及びウエスタンブロットが含まれ得るが、これらに限定されない。加えて、免疫検出法には、光学センサーに基づく方法(例えば、表面プラズモン共鳴(SPR))、又は導波モード共鳴フィルター(BIND)が含まれ得る。本明細書に示される特定の例は、表面に結合させた固定化VLA−4結合抗体を利用するアッセイ(例えば、ELISA)に関連するが、当業者は、幾つかの態様における本発明では、VLA−4結合抗体の表面結合を伴わないアッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ等)が含まれ得ることを認識する。その他の免疫検出法には、免疫放射測定アッセイ(IRMA)、時間分解蛍光測定法(TRF)又は電気化学発光測定法(ECL)が含まれ得る。数多くの有用な免疫検出方法が科学的文献(例えば、それぞれが参考として本明細書に組み入れられている、Doolittle M H and Ben−Zeev 0,1999;Gulbis B and Galand P,1993;De Jager R,et.al.,1993;及びNakamura,et.al.,1987)に記載されている。
【0048】
一態様において、アッセイが、生物学的試料におけるVLA−4結合抗体についての結合活性の存在を検出するために行われる。一実施形態において、結合活性の特異性は、測定された結合活性がVLA−4結合抗体に対して特異的であるかどうか、又は測定された結合活性が、生物学的試料に存在する場合がある妨害因子(例えば、リウマチ因子又はその他の結合性因子)によるものであるかどうかを決定することによって評価される場合がある。
【0049】
本発明の態様には、生物学的試料を、生物学的試料に存在する何らかの結合活性を固定化するための固定化成分と接触させることを伴うアッセイが含まれる場合がある。固定化した結合活性は、検出成分を使用して検出される場合がある。固定化成分及び検出成分はそれぞれ、本明細書に記載の通り、固定化した非標識VLA−4結合抗体及び固定化していない標識VLA−4結合抗体である場合がある。一実施形態において、固定化成分は、固体基質又は表面(例えば、マルチウェルプレートのウェル、ELISAプレートの表面等)に結合する場合がある。別の実施形態において、固定化成分は、共有結合性の連結又はその他の連結を介してビーズ(例えば、磁石ビーズ)に結合する場合がある(例えば、固定化成分はビオチン分子にコンジュゲートし、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用を介してストレプトアビジンで被覆されたビーズに結合する場合がある)。幾つかの実施形態において、このビーズは、表面又はマトリックスに結合する場合がある。例えば、磁石ビーズは磁石表面に固定化される場合がある。同様に、荷電ビーズは荷電表面(例えば、電極)に固定化される場合がある。
【0050】
陽性結果は、結合活性の検出された量(例えば、固定化成分によって捕獲される結合活性の量)が所定の閾値を上回っている場合に決定される場合がある。検出された結合活性の特異性は、競合成分をアッセイに含めることによって評価される場合がある。競合成分は、アッセイの固定化及び/又は検出工程と競合させるために含められる場合がある固定化していない非標識VLA−4結合抗体である場合がある。競合成分の存在が結合活性を少なくとも所定の割合又はカットオフの分低下させる場合は、その結合活性が特異的であると決定され、陽性結果が確認される。競合成分の存在が結合活性を少なくとも所定の割合又はカットオフの分低下させない場合は、その結合活性が非特異的であると決定され、最初の陽性結果が、この場合、免疫反応の陰性結果であると決定される。
【0051】
本発明の態様によれば、所定量の固定化成分、検出成分及び/又は競合成分が使用される場合がある。同様に、結合活性の最初の閾値レベルは、VLA−4結合抗体に結合することが知られている抗体の所定量を含有する試料を使用して確立される場合がある。例えば、閾値レベルは、1mlのアッセイ当たり10ng〜1,000ng(例えば、約50ng又は約500ng)の対照抗体を使用して確立される場合がある。閾値レベルの決定に使用される抗体の量により、アッセイの感度が決定される。一般的に、アッセイの感度は、最初の閾値を決定するために使用される抗体量に類似すると見なされる場合がある。対照における結合の量は、閾値を決定するために使用される基準として役立ち得ることが理解されるはずである(例えば、閾値量は、対照において得られるシグナルの倍数値又は分数値である場合がある)。しかしながら、一実施形態において、対照アッセイで得られたシグナルが閾値量として使用される。アッセイ感度は、対照抗体の親和性及び特異性を含めて、数多くの要因によって影響を受け得ることも又理解しなければならない。
【0052】
一実施形態において、結合活性の特異性は、結合の閾値レベルを決定するために使用した対照抗体の量と類似する量の競合成分をアッセイに加えることによって評価される場合がある。例えば、アッセイには、1mlのアッセイ当たり約10ng〜1,000ng(例えば、約50ng又は約500ng)の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられる場合がある。しかしながら、その他の量の競合成分が使用される場合もある。
【0053】
従って、本発明の幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に対する生物学的試料における結合活性の第1レベルは、生物学的試料の第1アリコートの第1イムノアッセイで決定され、VLA−4結合抗体に対する結合活性の第2レベルは、生物学的試料の第2アリコートの第2イムノアッセイで決定され;この場合、第2イムノアッセイには、第1イムノアッセイよりも多い量の可溶性非標識VLA−4結合抗体が加えられ;この場合、結合活性の第1レベルが基準レベルよりも高く、結合活性の第2レベルが結合活性の第1レベルの所定の割合よりも低い場合に、VLA−4結合抗体に対する可溶性抗体の少なくとも閾値レベルが存在することが示される。
【0054】
当業者は、種々の方法が、治療抗体(例えば、VLA−4結合抗体)により処置されている被験体における免疫反応を評価及び/又は監視するために使用できることを認識する。例えば、上述の通り、単一レベルの「カットオフ」を使用してVLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体の量を決定することによって、評価及び/又は監視が行われる場合がある。本明細書で使用される「(結合の)カットオフレベル」は、そのようなレベルに又はレベルを超えて増大した検出が有意及び/又は陽性と評価されるレベルであり、生物学的試料における可溶性結合活性のレベルの検出が、試料におけるVLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体のレベルを反映する確認のための決定である。他の実施形態においては、被験体の生物学的試料における、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体の力価を決定するために、VLA−4結合治療抗体に対する免疫反応の特定が定量的に行われる場合がある。
【0055】
本発明の一態様において、免疫検出アッセイはELISAである場合がある。当業者によって理解されるように、用語「ELISA」は免疫検出のための数多くのプロトコルを包含する。例えば、ELISA法には、サンドイッチELISA、架橋ELISA等が含まれる。本発明の幾つかの実施形態において、ELISAイムノアッセイは手作業によるアッセイである。しかしながら、本発明の幾つかの実施形態において、ELISAの全て又は一部はロボットにより行われる場合がある。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態において、ELISAアッセイでは、VLA−4結合抗体を、ELISAプレートが被覆される固定化した標的成分として使用することが含まれる。被覆されたELISAプレートはその後、VLA−4結合抗体と特異的に結合する被験体抗体のレベルを決定するために、生物学的試料と接触させる場合がある。本発明の幾つかの実施形態において、生物学的試料の第1アリコートが、固定化した標的VLA−4結合抗体に対する結合の閾値量の存在又は非存在を明らかにするために、ELISAアッセイを使用してアッセイされ、同じ生物学的試料の第2アリコートも又、固定化した標的VLA−4結合抗体に対する結合の閾値レベル(又は閾値を超えるレベル)により、VLA−4結合抗体に特異的な抗体が示されるか否かを確認するために、ELISAを使用してアッセイされる。本発明の一態様において、アリコートにおける可溶性結合活性の閾値レベルは、VLA−4結合抗体に結合する基準抗体の少なくとも約50ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng又は1,000ngを1ml当たり含有する対照試料又は基準試料に存在する結合活性のレベルにほぼ等しい。一実施形態において、閾値レベルは、VLA−4結合抗体に結合する基準抗体を約500ng/mlで含有する対照試料又は基準試料における結合活性のレベルにほぼ等しいとして決定される。基準抗体はポリクローナル又はモノクローナルの何れかである場合がある。基準抗体はマウスの抗ナタリズマブ抗体(例えば、参考として本明細書に組み入れられている、Sheremata,et.al.,1999,Neurology,52,pages 1072−1074に記載される12C4)である場合がある。本明細書に記載の通り、固定化した標的VLA−4結合抗体に対する結合のレベルが少なくとも閾値レベルであり、可溶性結合活性が、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体の結合活性であると決定される場合に、それによって、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応が特定される。
【0057】
一般的に、本発明の方法において有用なELISA方法には、生物学的試料を、治療抗体(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ等))が投与されている被験体から得ること、及び試料のアリコートを固定化抗体と接触させることが含まれる場合がある。幾つかの実施形態において、固定化抗体は、被験体に投与された同じVLA−4結合抗体である場合がある。固定化抗体により、抗体に結合する試料中の分子又は化合物が捕獲され、試料は、捕獲される分子又は化合物と特異的に結合できる、或いは捕獲される分子又は化合物を特異的に検出できる第2の検出成分(例えば、第2標識抗体)と接触させる。複合体と特異的に結合できる、又は複合体を特異的に検出できる成分の例には、種々のマーカーを使用して標識することができる抗体又はその他のリガンド(例えば、当該技術分野で既知の通りビオチン/アビジンのリガンド結合配置)が含まれるが、これらに限定されない。当業者は又、第3標識抗体を使用する場合がある。好ましい実施形態において、第2成分は固定化抗体の標識形態である。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態において、ELISAアッセイでは、VLA−4結合治療抗体を、ELISAプレートが被覆される固定化した標的成分として使用することが含まれる。被覆されたELISAプレートはその後、VLA−4結合治療抗体と特異的に結合する被験体抗体のレベルを決定するために、生物学的試料と接触させる場合がある。本発明の幾つかの実施形態において、生物学的試料の第1アリコートが、固定化した標的VLA−4結合抗体についての結合活性の閾値量の存在又は非存在を明らかにするために、ELISAアッセイを使用してアッセイされ、同じ生物学的試料の第2アリコートが、固定化した標的VLA−4結合抗体に対する結合の閾値レベル(又は閾値を超えるレベル)により、VLA−4結合抗体に特異的な抗体が示されるか否かを確認するために、ELISAを使用してアッセイされる。本発明の一態様において、アリコートにおける可溶性結合活性の閾値レベルは、VLA−4結合抗体に結合する基準抗体の少なくとも約50ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng又は1,000ngを1ml当たり含有する対照試料又は基準試料に存在する結合活性のレベルにほぼ等しい。一実施形態において、閾値レベルは、VLA−4結合抗体に結合する基準抗体を約500ng/mlで含有する対照試料又は基準試料における結合活性のレベルにほぼ等しいとして決定される。基準抗体はポリクローナル又はモノクローナルの何れかである場合がある。基準抗体はマウスの抗ナタリズマブ抗体(例えば、Sheremata,et.al.,1999,Neurology 52,page 1072に記載される12C4)である場合がある。
【0059】
VLA−4結合抗体に結合する基準抗体は、ナタリズマブに結合する基準抗体(例えば、ナタリズマブに高親和的に(例えば、ナノモル親和性で)結合する抗体)である場合がある。幾つかの実施形態において、ナタリズマブに結合する基準抗体は、VLA−4結合抗体に対するナタリズマブの結合を阻止する場合がある(例えば、VLA−4結合抗体に対するナタリズマブの結合を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上阻害する場合がある)。基準抗体をマウスのモノクローナル抗体である場合がある。基準抗体は、ナタリズマブに対して特異的な抗イディオタイプ抗体である場合がある。幾つかの実施形態において、基準抗体は12C4抗体である(Maine Biotechnology Services,Inc.[米国メイン州ポートランド]から入手可能;例えば、Sheremata,et.al.,1999,Neurology 52,page 1072を参照)。12C4は、ナタリズマブがVLA−4に結合することを阻止する阻止抗体である。幾つかの実施形態において、基準抗体は、ナタリズマブに対する結合について12C4と競合する。抗体結合の競合は、VLA−4に対するナタリズマブの結合を阻止する12C4抗体の能力を競合的に阻害する抗体の能力を評価する標準的な方法を使用して実証される場合がある。幾つかの実施形態において、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体の存在が、架橋ELISAを使用して明らかにされる。架橋ELISAにおいて、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体(例えば、生物学的試料に由来する抗体)が、ELISAプレートに被覆されたVLA−4結合抗体と、溶液中の検出可能に標識されたVLA−4結合抗体(例えば、非固定化)との間における架橋として作用する。従って、標準的な処理の後でのELISAシグナルにより、検出可能な標識が固相に連結されていること、及び可溶性結合活性が生物学的試料に存在することが示される。
【0060】
生物学的試料のアリコートを、効果的な条件で、且つ免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするために十分な期間にわたって固定化抗体と接触させることは一般的に、生物学的試料のアリコートを固定化抗体(例えば、ELISAプレートに固定化したVLA−4結合抗体)に加え、混合物を、固定化抗体が、生物学的試料のアリコートに存在する可溶性結合活性を有する分子又は化合物との免疫複合体を形成するために(例えば、このような分子又は化合物に結合するために)十分に長い期間にわたってインキュベートすることが重要である。可溶性結合活性を有する分子又は化合物は、VLA−4結合抗体に特異的に結合する誘導抗体である場合があるか、又はVLA−4結合抗体に結合する誘導されない内因性抗体又は受容体(例えば、リウマチ因子[RF]又は抗Fab抗体)である場合がある。この後、試料−抗体混合物(例えば、ELISAプレート、ドットブロット又はウエスタンブロット)は一般的に、結合していない抗体種及び/又は物質をアッセイ混合物から除くために洗浄される。
【0061】
閾値レベルの結合活性が検出される場合、更なる工程は、結合活性により、VLA−4結合治療抗体に特異的に結合する誘導抗体が示されるか否かを確認することを伴う場合がある。このような確認工程のため、生物学的試料の第2アリコートを、第1アリコートについて記載された通りに(但し、所定量の非固定化非標識競合VLA−4結合抗体もアッセイ(例えば、ELISAアッセイ)に加えられることを除く)、調製及び評価される場合がある。例えば、競合抗体の所定量は、特異的なシグナルを対照アッセイにおいて約50%以上減少させる非標識量である場合がある。非標識VLA−4結合抗体の存在がシグナルを予想割合量よりも大きく減少させる場合、閾値の結合活性(又は閾値を超える結合活性)は、VLA−4結合治療抗体に特異的に結合する抗体の存在についての陽性指標として判断される。対照的に、非標識VLA−4結合抗体の存在がシグナルを予想割合量よりも小さく減少させる場合、閾値結合活性(又は閾値を超える結合活性)は、VLA−4結合治療抗体に特異的に結合する抗体について陰性として判断される。非特異的なシグナルは、VLA−4結合抗体に結合する抗体以外の血清因子に起因し得ることが理解されるはずである。本明細書で使用される「加える」又は「加えられた」という用語は、標識されていない(又は異なって標識された)可溶性競合VLA−4結合抗体を試料又はアッセイに添加することを示す。
【0062】
本明細書で使用される「減少割合」とは、第1アリコートで求められた結合レベルの割合を示す。従って、例えば、結合活性を有する分子又は化合物の約500ng/ml当量が第1アリコートに示され、非標識VLA−4結合抗体が第2アリコートに含まれることにより、シグナルの量が40%〜90%よりも多く(例えば、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上)減少する場合、生物学的試料における結合活性は、VLA−4結合治療抗体に特異的に結合する誘導抗体の存在を示すと見なされる。しかし、非標識VLA−4結合抗体が第2アリコートに含まれることにより、シグナルの量が20%〜40%よりも小さく減少する場合、生物学的試料における結合活性は、VLA−4結合治療抗体に特異的に結合する誘導抗体の存在を示すとは見なされない。幾つかの実施形態において、競合抗体は、可溶性非標識ナタリズマブである場合がある。幾つかの実施形態において、可溶性非標識ナタリズマブは、約100μg/mlの最終濃度で使用される場合がある。しかしながら、対照量の基準抗体を含有する対照試料の得られたシグナルの所定の減少(例えば、約40%、約50%又はそれ以上)をもたらす場合に、遊離の非標識ナタリズマブの任意の濃度が使用される場合がある。例えば、対照試料は、約500ng/ml、約3μg/ml又は任意の他の好適な量の基準抗体(例えば、12C4)を含有する場合がある。本明細書に示す通り、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体が患者由来の生物学的試料に存在することにより、その被験体が、VLA−4結合抗体に対する臨床的に有意な免疫反応を有することが示される。
【0063】
例示的な「サンドイッチ」ELISAにおいて、VLA−4結合治療抗体(例えば、ナタリズマブ)は標的抗体として使用される場合があり、タンパク質親和性を示す選択された表面(例えば、ポリスチレン製マイクロタイタープレートにおけるウェル)に固定化される場合がある。その後、VLA−4結合治療抗体(例えば、ナタリズマブ)を少なくとも1回服用している被験体の試料がウェルに添加される。結合及び/又は非結合物質を除去するための洗浄の後、標的抗体に結合する結合分子又は化合物が検出される場合がある。検出は、検出可能な標識に連結される第2抗体を添加するによって達成される場合がある。加えて、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体としての、結合分子又は化合物の同一性は、本明細書において上に記載する通り確認される場合がある。
【0064】
当業者によって理解される通り、個々の特徴(例えば、本明細書に記載の確認工程)にもかかわらず、一般的に、ELISAは幾つかの特徴を共通して有する(例えば、被覆、インキュベート及び結合する、非特異的に結合した化学種を除くために洗浄する、並びに結合免疫複合体を検出する)。
【0065】
プレートを抗体又は抗体の何れかで被覆することにおいて、プレートのウェルは一般的に、一晩又は指定期間の何れかで標的抗体の溶液とインキュベートされる。被覆用緩衝液は、リン酸ナトリウム/BSAの被覆用緩衝液、又はこの分野で知られている別の好適な被覆用緩衝液である場合がある。その後、プレートのウェルは、完全に吸着していない物質を除くために洗浄される。その後、ウェルの何らかの残存する利用可能な表面が、試験試料に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質により「被覆」される。このようなタンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、又は粉ミルクの溶液等である場合がある。被覆により、固定化用表面における非特異的な吸着部位を阻止することが可能になり、従って、表面への抗血清の非特異的な結合によって引き起こされるバックグラウンドが減少する。
【0066】
ELISAにおいては、二次又は三次検出手段が使用される場合もあれば、直接検出手段が使用される場合もある。二次又は三次検出方法を使用する時には、タンパク質又は抗体をウェルに結合させ、バックグランドを減少させるために非反応性の物質(例えば、ブロッキング緩衝液、例えば、Tris−スクロースのブロッキング緩衝液、又はこの分野で認識されているその他のブロッキング緩衝液)により被覆し、非結合物質を除去するために洗浄した後で、固定化用表面は、免疫複合体(抗原/抗体)の形成を可能にするのに効果的な条件で試験される生物学的試料と接触させる。その後、免疫複合体の検出では、標識二次結合性リガンド又は抗体、及び標識三次抗体又は第3結合性リガンドと一緒での二次結合性リガンド又は抗体が必要となる。本発明の好ましい実施形態において、第2結合性リガンドはVLA−4結合抗体である(例えば、標的抗体に使用されたのと同じVLA−4結合抗体)。
【0067】
本明細書で使用される「免疫複合体の形成を可能にするために効果的な条件のもと」という用語は、その条件が、好ましくは、抗原及び/又は抗体を溶液(BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)/Tween、カゼイン及びTween20を伴うPBS、又はTween20を伴うPBS/BSA緩衝液)により希釈することを含むことを意味する。アッセイ希釈剤は、当該技術分野で既知のその他種々のものを本発明の方法で使用してもよい。これらの添加する薬剤は又、非特異的なバックグラウンドの減少を助ける傾向があり、最高0.5MのNaClを含む場合がある。
【0068】
本明細書で使用される「好適な」条件は又、インキュベーションが、効果的な結合を可能にするために十分な温度又は期間であることを意味する。インキュベーション工程は一般的に、好ましくは25℃〜27℃の程度での温度で、約1時間〜2時間〜4時間等であるか、又は約4℃で一晩である場合がある。アッセイ温度及び時間パラメータは、当該技術分野で既知のその他種々のものを本発明の方法で使用してもよい。
【0069】
ELISAにおけるインキュベーション工程の後、接触させられた表面は、非結合物質を除去するために洗浄される。好ましい洗浄法には、例えば、PBS/Tween、TBS/Tween又はホウ酸塩緩衝液等の溶液(最高0.5MのNaClも含まれる場合がある)により洗浄することが含まれる場合がある。試験試料と標的抗体の間の特異的な免疫複合体の形成、並びにその後の洗浄の後、更に微少量の免疫複合体の存在を明らかにされる場合がある。洗浄緩衝液配合物は、当該技術分野で既知の更に他のものを本発明の方法で使用してもよいことが理解される。
【0070】
検出手段を提供するために、第2又は第3の抗体は、結合させられた検出可能な標識を有する。特定の実施形態において、検出可能な標識は、適切な発色性基質とのインキュベーションの時に色の発生を生じさせる酵素である。従って、例えば、第1及び第2の免疫複合体を、更なる免疫複合体の形成の発達を有利にする期間及び条件(例えば、PBS含有溶液(例えば、PBS−Tween)における室温での2時間のインキュベーション)のもと、ウレアーゼコンジュゲート抗体、グルコースオキシダーゼコンジュゲート抗体、アルカルホスファターゼコンジュゲート抗体、ハイドロジェンペルオキシダーゼコンジュゲート抗体、又はその他のコンジュゲート抗体と接触させる又はインキュベートする場合がある。
【0071】
1つ以上の陽性及び陰性品質対照が本発明の方法において利用され得ることも又当業者によって理解される。陽性品質管理試料は、VLA−4結合抗体に結合することが知られている抗体の所定量を含有する正常血清試料である場合がある。品質管理試料は、アッセイの生物学的試料及び対照試料と同じ条件で、アッセイの生物学的試料及び対照試料と並行して反応させ、アッセイの機能の指標となる場合がある。陰性品質対照試料は、VLA−4結合抗体に結合することが知られている抗体を含まないことが知られている血清試料である場合がある。当業者は、陽性及び陰性対照反応及び試料を、アッセイで使用される溶液及び/又は基質及び/又はプロトコルの機能性を確認及び妥当性評価するためにELISAでどのように利用するかを理解するであろう。例えば、陽性対照は、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体の既知量を含む場合があり、従って、試験試料(例えば、生物学的試料)と同じ条件で処理された時、アッセイが予想のパラメータの範囲内で機能することを示す。陰性対照の一例には、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体を含まないことが知られている試料を挙げられる場合がある。このような陰性対照は、試験試料(例えば、生物学的試料)と同じ条件で処理された時、生物学的試料で検出された結合が生物学的試料から生じ、生物学的試料に関連しないアッセイ成分又は他の因子の混入のためでないことを明らかにする。本発明の方法により包含されるアッセイの非限定的な例は、以下の工程を伴う場合がある。ELISAプレートのウェルを緩衝液における約0.25μg/mLのナタリズマブ基準標準物の溶液により被覆し、被覆されたプレートを周囲温度で一晩インキュベートする;プレートのウェルを洗浄緩衝液により少なくとも1回洗浄し、プレートのウェルをブロッキング緩衝液と周囲温度で少なくとも1時間インキュベートする;対照試料及びスクリーニング試料をアッセイ希釈剤にて約1:10で希釈する;競合試料及びナタリズマブ(約1mg/mlでの)を一緒にアッセイ希釈剤で約100μg/mLのナタリズマブの最終濃度及び競合試料の約1:10の最終希釈度に希釈する;対照試料、スクリーニング試料及び競合試料を周囲温度で約1時間インキュベートし、プレートのウェルを洗浄緩衝液により少なくとも1回洗浄する;プレートのウェル内の試料を周囲温度で約60分〜150分の間インキュベートし、プレートのウェルを洗浄緩衝液により少なくとも3回洗浄すること;アッセイ希釈剤で約1:1000に希釈された約100μL/ウェルのビオチン化ナタリズマブを添加し、プレートを周囲温度で約60分間〜90分間インキュベートし、次いで、プレートのウェルを洗浄緩衝液により少なくとも3回洗浄する;アッセイ希釈剤で約1:5000で希釈されたストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼをプレートのウェル内の試料に添加し、プレートを周囲温度で約60分間〜90分間インキュベートし、次いで、プレートのウェルを洗浄緩衝液により少なくとも3回洗浄する;十分な量の発色性基質を、抗体の結合を可視化するためにプレートのウェルに添加し、プレートを周囲温度で数分間にわたって発色させ、1N HSOをプレートのウェルに添加することによって発色を停止させる;及びプレートのウェルを読み取り、結果を得る。
【0072】
本明細書に記載のELISA試薬は、本明細書に記載のような生物学的試料における、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体の存在を検出する、及び/又はこのような抗体を測定するために商業生産される場合があるキットにパッケージ化される場合がある。
【0073】
本発明で使用される対照は、所定値(例えば、特定の治療タンパク質について本明細書に記載の通り特定された臨床的に有意な閾値レベル)に加えて、実験材料と並行して試験される物質の試料を含む場合があることも又考慮される。例には、実験材料と並行して試験する陰性対照試料(例えば、製造を通して作製された陰性対照試料)が含まれる。
【0074】
本明細書で使用される生物学的試料は以下の何れかである場合があるが、これらに限定されない:被験体の体液、例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、胸水、便、滑液、脳脊髄液、粘液及び組織浸潤物。好ましい体液には、血液、血清及び血清が含まれる。本明細書で使用される「生物学的試料」は、関連する医療技術分野の当業者に周知の方法を使用して得られる場合がある。生物学的試料は被験体から直接得る場合もあれば、細胞、組織又はその他の培養物から得る場合もある。生物学的試料は新鮮な場合もあれば、本発明の方法での使用前に好適な条件(例えば、凍結、冷凍等)で保存されている場合もある。
【0075】
生物学的試料は治療剤投与後の種々の時間間隔で被験体から得られる場合があることが理解されるはずである。しかしながら、治療剤は特徴的なin vivo半減期を有する場合があるため、生物学的試料に存在する遊離治療剤の量は一般的に、薬剤が被験体に投与された後の時間の関数として減少する。生物学的試料における(非標識及び非固定化)遊離治療剤の存在により、本発明の結合反応及び検出反応が妨害される場合がある。従って、生物学的試料は、治療剤投与からできる限り後に、例えば、処置サイクルの「谷」の時に得なければならない。「谷」は、処置サイクルの期間中において被験体に存在する遊離治療剤の最も低い量を表す。谷は、例えば、1回の治療剤投与のかなり後、及びその後の治療剤投与の直前に生じる場合がある。谷の時期は、投与される薬剤の量、薬剤の半減期、投与頻度等を含めた多くの要因によって影響を受ける場合があることが理解されるはずである。例えば、VLA−4結合抗体(例えば、300mgのナタリズマブ)の毎月の投与は、1回の投与の約30日後、及びその後の投与の直前に谷を生じる。しかしながら、本発明のアッセイは、そのアッセイが生物学的試料における治療剤の存在に対して比較的感受性が低いか、或いはこの存在を明らかにする限り、処置投与後の種々の時点に採取される試料で行われる場合があることが理解されるはずである。異なる時点に採取される異なる試料の結合活性のレベルが比較される時には、それぞれの試料を処置サイクルの類似する段階(例えば、治療的投与後の類似する期間)から得て、生物学的試料における遊離治療剤のレベルの差を補正する必要なく、結果を解釈できるようにすることが特に重要となる場合がある。
【0076】
生物学的試料は、アッセイの前に希釈される(例えば、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、及びより高い倍数値若しくはより低い倍数値、又はこれらの間の任意の倍数値)場合があることが理解されるはずである。一実施形態において、臨床的に有意な閾値量の基準抗体を含有する基準試料は、試験中の生物学的試料と同じ量で希釈され、生物学的試料の得られたシグナルを基準試料の得られたシグナルと直接比較できるようにする場合がある。
【0077】
本発明の幾つかの実施形態においては、生物学的試料の1つ以上のアリコートが使用される。本明細書で使用される「アリコート」という用語は、生物学的試料の一定割合又は一部を意味する。幾つかの実施形態においては、2つ以上のアリコートが、被験体から得る生物学的試料から採取される場合があり、それらのアリコートを、被験体におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応の存在を明らかにするために、本発明の方法を使用して試験してもよい。例えば、2つの実質的に等しいアリコートが、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)が投与されている被験体から得る生物学的試料から採取されてもよく、可溶性結合活性のレベルが1つのアリコート(例えば、「第1」のアリコート)で検出されてもよい。加えて、他方のアリコート(例えば、「第2」のアリコート)を本発明の方法を使用して評価し、第1アリコートで検出された(それらの試料起源が共通することから第2アリコートにも又存在すると考えられる)可溶性結合活性が、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体であるかどうかを決定する場合がある。幾つかの実施形態において、少なくとも閾値レベルの結合が第1アリコートに存在し、可溶性結合活性が、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体の活性であると決定される場合は、それによって、VLA−4結合抗体に対する免疫反応が被験体に存在することが特定される。
【0078】
VLA−4結合抗体
本発明の態様は、被験体に投与される1つ以上のVLA−4結合治療抗体に対する免疫反応を特定及び/又は監視するための検出アッセイに関する。本発明の特定の態様において、検出アッセイは固定化成分及び検出成分の両方を伴う。幾つかの実施形態において、検出アッセイは又競合成分を含む場合もある。本明細書に記載の通り、固定化成分は、VLA−4結合抗体に結合する誘導抗体(例えば、血清抗体)を固定化するために使用される場合がある。検出成分は、固定化した抗体を検出するために使用される場合がある。競合成分は、誘導抗体に対する結合の特異性を明らかにする目的で、誘導抗体に結合するための固定化成分及び/又は検出成分の何れかと競合させるために使用される場合がある。固定化成分及び検出成分は、VLA−4結合抗体に対する免疫反応に特徴的である1つ以上の抗体に独立して結合させることができる。従って、固定化成分及び検出成分は、被験体に投与された同じVLA−4結合抗体である場合がある(例えば、固定化成分は、被験体に投与されたVLA−4結合治療抗体の固定化形態である場合があり、検出成分は、被験体に投与されたVLA−4結合治療抗体の標識形態である場合がある)。しかしながら、他の実施形態において、固定化成分及び検出成分が、VLA−4結合治療抗体に対する1つ以上の誘導抗体(例えば、血清抗体)を検出するのに好適な親和性で結合する場合、固定化成分及び検出成分はそれぞれ独立して、被験体に投与されたVLA−4結合治療抗体の変異体である場合がある。競合成分とは一般的に、固定化成分又は検出成分の可溶性の標識されていない(又は異なって標識された)形態である。しかしながら、競合成分が、アッセイで検出された結合活性の特異性を明らかにするためにVLA−4結合治療抗体に対する結合について十分に競合する場合に、競合成分が固定化成分又は検出成分の変異体である場合がある。
【0079】
本発明の態様によれば、何れか1つ以上のVLA−4結合抗体(ナタリズマブ及び/又は関連するVLA−4結合抗体を含む)が治療的に使用される場合がある。従って、VLA−4結合抗体の何れか1つ以上を、固定化成分、検出成分及び/又は競合成分として本発明の検出アッセイで使用される場合がある。一実施形態において、VLA−4結合抗体は、IgG抗体(例えば、IgG4抗体)である場合がある。別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルである場合がある。更に別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、マウス抗体のヒト化型である場合がある。
【0080】
ナタリズマブ及び関連するVLA−4結合抗体が、例えば、米国特許第5,840,299号に記載される。mAb 21.6及びHP1/2が、VLA−4と結合する例示的なマウスモノクローナル抗体である。ナタリズマブはマウスmAb 21.6のヒト化型である(例えば、米国特許第5,840,299号を参照)。HP1/2のヒト化型も又記載されている(例えば、米国特許第6,602,503号を参照)。幾つかの更なるVLA−4結合性モノクローナル抗体(例えば、HP2/1、HP2/4、L25及びP4C2)が記載される(例えば、米国特許第6,602,503号;Sanchez−Madrid,et.al.,1986,Eur.J.Immunol.,16:1343−1349;Helmer,et.al.,1987,J.Biol.Chem.2:11478−11485;Issekutz and Wykretowicz,1991,J.Immmunol.,147:109 (TA−2 mab);Pulido,et.al.,1991,J.Biol.Chem.,266(16):10241−10245;及び米国特許第5,888,507号)。多くの有用なVLA−4結合抗体は細胞(例えば、リンパ球)上のVLA−4と相互作用するが、細胞凝集を引き起こさない。しかしながら、他の抗VLA−4結合抗体は、このような凝集を引き起こすことが見出されている。HP1/2は細胞凝集を引き起こさない。HP1/2 MAb(Sanchez−Madrid,et.al.,1986,Eur.J.Immunol.,16:1343−1349)は極めて大きい効果を有し、VCAM1及びフィブロネクチンの両方とのVLA−4の相互作用を遮断し、VLA−4におけるエピトープBについての特異性を有する。この抗体及び他のBエピトープ特異的抗体(例えば、B1エピトープ結合抗体又はB2エピトープ結合抗体;Pulido,et.al.,1991,J.Biol.Chem.,266(16):10241−10245)は有用なVLA−4結合抗体の1つのクラスを表す。
【0081】
例示的なVLA−4結合抗体は、1つ以上のCDRを有する(例えば、本明細書に開示される特定の抗体の3つ全てのHC CDR及び/又は3つ全てのLC CDR、或いは要約するとこのような抗体(例えば、ナタリズマブ)との少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するCDR)。一実施形態において、H1及びH2の超可変ループは、本明細書で開示される抗体のこのような超可変領域と同じ極限構造を有する。一実施形態において、L1及びL2の超可変ループは、本明細書で開示される抗体のこのような超可変領域と同じ極限構造を有する。
【0082】
一実施形態において、HC可変ドメイン配列及び/又はLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体(例えば、ナタリズマブ)のHC可変ドメイン及び/又はLC可変ドメインのアミノ酸配列に対する少なくとも70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。HC可変ドメイン配列及び/又はLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体(例えば、ナタリズマブ)の対応する配列の少なくとも1個のアミノ酸、但し多くても10個、8個、6個、5個、4個、3個又は2個のアミノ酸が異なってもよい。例えば、このような違いは、主に又は専らフレームワーク領域に存在する場合がある。
【0083】
HC可変ドメイン配列及びLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の核酸配列、又は可変ドメインをコードする核酸配列、又は本明細書に記載のアミノ酸配列をコードする核酸に高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする配列によってコードされてもよい。一実施形態において、HC可変ドメイン及び/又はLC可変ドメインの1つ以上のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4)のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体のHC可変ドメイン及びLC可変ドメインの対応するフレームワーク領域に対する少なくとも70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。一実施形態において、1つ以上の重鎖フレームワーク領域又は軽鎖フレームワーク領域(例えば、HCのFR1、FR2及びFR3)は、ヒト生殖系列の抗体に由来する対応するフレームワーク領域の配列に対する少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は100%の同一性を有する。
【0084】
2つの配列の間での「相同性」又は「配列同一性」(これらの用語は本明細書で交換可能に使用される)の計算は以下のように行われる。配列が最適な比較目的のためにアラインメントされる(例えば、ギャップを最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方に導入してもよく、非相同的な配列を比較のために無視してもよい)。最適なアラインメントが、Blossum62スコア化行列を、12のギャップペナルティー、4のギャップ伸張ペナルティー及び5のフレームシフトギャップペナルティーと共に用いてGCGソフトウエアパッケージにおけるGAPプログラムを使用して最も良いスコアとして決定される。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められる時、これらの分子はその位置において同一である(本明細書で使用されるアミノ酸又は核酸の「同一性」はアミノ酸又は核酸の「相同性」と等価である)。これら2つの配列の間における同一率は、これらの配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0085】
当業者であれば、VLA−4結合抗体の機能的に等価な変異体をもたらすために、保存的アミノ酸置換がVLA−4結合抗体でなされる場合がある、即ち、このような変異体がVLA−4ポリペプチドの機能的能力を保持することを認識するであろう。本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷特徴又はサイズ特徴を変化させないアミノ酸置換を指す。種々の変異体は、当業者に既知のポリペプチド配列を改変する方法(例えば、このような方法についてまとめた参考文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,J.Sambrook,et.al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、又はCurrent Protocols in Molecular Bilogy,F.M.Ausubel,et.al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New York)に記載の方法)に従って調製してもよい。VLA−4結合抗体の例示的な機能的に等価な変異体は、本明細書で開示されるタンパク質のアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸の間でなされる置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
【0086】
本明細書で使用される「高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を説明したものである。ハイブリダイゼーション反応を行うための指針は、参考として本明細書に組み入れられている、Current Protocols in Molecular Bilogy,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。水性及び非水性の方法がこの参考文献には記載されており、何れを使用してもよい。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、約45℃での6X SSCにおけるハイブリダイゼーションの後、65℃での0.2X SSC、0.1%SDS、又は実質的に類似する条件における1回以上の洗浄が含まれる。
【0087】
抗体は、例えば、米国特許第6,602,503号に記載の通り、機能的性質(例えば、VLA−4の結合)について試験を行ってもよい。
【0088】
抗体の作製
VLA−4に結合する抗体は、例えば、動物を使用して、免疫化により作製してもよい。VLA−4の全て又は一部は免疫原として使用してもよい。例えば、アルファ−4サブユニットの細胞外領域は免疫原として使用してもよい。一実施形態において、免疫化された動物は、天然の、ヒトの免疫グロブリン遺伝子座又は部分的にヒトの免疫グロブリン遺伝子座を有する免疫グロブリン産生細胞を含有する。一実施形態において、非ヒト動物はヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体の産生において欠陥があるマウス系統をヒトIg遺伝子座の大きいフラグメントにより操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子由来の抗原特異的なモノクローナル抗体が産生及び選択される場合がある。例えば、XenoMouseTM、Green,et.al.,Nature Genetics 7:13−21 (1994)、米国特許出願公開第2003−0070185号、米国特許第5,789,650号、及び国際特許出願公開WO96/34096を参照されたい。VLA−4に対する非ヒト抗体も又、例えば、齧歯類で産生してもよい。非ヒト抗体は、例えば、米国特許第6,602,503号、欧州特許EP239400、米国特許第5,693,761号及び米国特許第6,407,213号に記載の通りヒト化してもよい。
【0089】
欧州特許EP239400(Winter,et.al.)は、抗体を、1つの種のその相補性決定領域(CDR)を別の種の相補性決定領域で(所与の可変領域の内部で)置換することによって変化させることを記載する。CDR置換された抗体は、真のキメラ抗体と比較して、ヒトにおいて免疫反応を誘発する可能性がほとんどないことが予測される。これは、CDR置換された抗体は相当により少ない非ヒト成分を含有するからである(Riechmann,et.al.,1988,Nature 332,323−327;Verhoeyen,et.al.,1988,Science 239,1534−1536)。一般的に、マウス抗体のCDRが、所望する置換された抗体をコードする配列を作製するために組換え核酸技術を使用することによってヒト抗体における対応する領域の中に置換される。所望のイソタイプのヒト定常領域遺伝子セグメント(通常、CHの場合γI、CLの場合κ)が付加されてもよく、可溶性のヒト化抗体を産生させるためにヒト化重鎖及び軽鎖遺伝子が哺乳動物細胞で同時発現させられる。
【0090】
Queen,et.al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Dec;86(24):10029−33、及び国際特許出願公開WO90/07861は、ヒトVフレームワーク領域を、元のマウス抗体のV領域フレームワークに対する最適なタンパク質配列相同性についてのコンピューター分析によって選ぶこと、及びマウスのCDRと相互作用すると考えられるフレームワークアミノ酸残基を可視化するためにマウスV領域の三次構造をモデル化することを含むプロセスを記載している。これらのマウスアミノ酸残基は、その後、相同的なヒトフレームワークに重ねられる。米国特許第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号及び同第5,530,101号も又参照されたい。Tempest,et.al.,1991,Biotechnology 9,266−271)は、基準として、マウス残基の徹底的な導入を伴わないCDRグラフト化のためにNEWM及びREIの重鎖及び軽鎖にそれぞれ由来するV領域フレームワークを利用する。NEWM及びREIに基づくヒト化抗体を構築するためにTempest等の手法を使用する利点は、NEWM及びREIの可変領域の三次元構造がx線結晶学から知られており、従って、CDRとV領域フレームワーク残基の間の特異的な相互作用をモデル化してもよいという点である。
【0091】
非ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列、例えば、コンセンサスなヒトアミノ酸残基を特定の位置、例えば、以下の位置の1つ以上(好ましくは、少なくとも5、10、12又は全て)において挿入する置換を含むように改変してもよい:(軽鎖の可変領域のFRでは)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、並びに/或いは(重鎖の可変領域のFRでは)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H及び/又は103H(Kabatの番号付けに順ずる)。例えば、米国特許第6,407,213号を参照されたい。
【0092】
当業者に明らかであるように、本発明は又、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント及びFdフラグメント;Fc領域及び/又はFR領域及び/又はCDR1領域及び/又はCDR2領域及び/又は軽鎖CDR3領域が相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置換されているキメラ抗体;FR領域及び/又はCDR1領域及び/又はCDR2領域及び/又は軽鎖CDR3領域が相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置換されているキメラなF(ab’)2フラグメント抗体;FR領域及び/又はCDR1領域及び/又はCDR2領域及び/又は軽鎖CDR3領域が相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置換されているキメラなFabフラグメント抗体;及びFR領域及び/又はCDR1領域及び/又はCDR2領域が相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置換されているキメラなFdフラグメント抗体を提供する。
【0093】
特定の実施形態において、VLA−4結合抗体は、VLA−4の単鎖抗体、単一ドメイン抗体又はNanobodyTMである場合がある。これらの抗体タイプのそれぞれの特徴、及びそれらの使用についての方法は、当該技術分野で周知である。NanobodyTMは抗体の最小の機能的フラグメントであり、天然に存在する単鎖抗体に由来する(Ablynx(ベルギー);ablynx.comを参照)。NanobodyTM技術は、ラクダ科(ラクダ及びラマ)が、軽鎖を有さない完全に機能的な抗体の特有のレパートリーを有するという発見に続いて開発された。NanobodyTM)の構造は、1つの可変ドメイン(VHH)と、ヒンジ領域と、2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)とからなる。クローン化及び単離されたVHHドメインは、元の重鎖の完全な抗原結合能を有する安定なポリペプチドである。NanobodyTMでは、従来の抗体の特徴が小さい分子薬物の特徴と組み合わされる。NanobodyTMは大きい標的特異性及び低い固有的毒性を示す。加えて、NanobodyTMは非常に安定しており、注射以外の手段によって投与されてもよく、製造が容易である。特定の実施形態において、VLA−4結合治療抗体、固定化成分及び/又は検出成分は、ヒト化NanobodyTMである場合がある。
【0094】
抗体の産生
VLA−4に結合する完全にヒトのモノクローナル抗体は、例えば、Boerner,et.al.,1991,J.Immunol.,147,86−95)に記載の通り、in vitroプライム処理されたヒト脾臓細胞を使用して産生させてもよい。このようなモノクローナル抗体は、Persson,et.al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:2432−3436、又はHuang and
Stoller,1991,J.Immunol.Methods 141,227〜236に記載の通り、レパートリークローニングによって調製される場合がある(米国特許第5,798,230号)。大きな非免疫化ヒトファージディスプレーライブラリーも又、標準的なファージ技術を使用してヒト治療剤として開発することができる高親和性抗体を単離するために使用される場合がある(例えば、Vanghan,et.al.,1996,Nat Biotechnol.,Mar;14(3):309−14;Hoogenboom,et.al.,(1998) Immunotechnology 4:1−20;及びHoogenboom,et.al.,(2000),Immunol Today 2:371−8;米国特許出願公開第2003−0232333号を参照)。抗体は原核生物細胞及び真核生物細胞で産生させてもよい。一実施形態において、抗体(例えば、scFv)は、酵母細胞において、例えば、ピキア属(例えば、Powers,et.al.,(2001),J Immunol Methods,251:123−35を参照)、ハンセヌラ属又はサッカロミセス属等において発現させられる。
一実施形態において、抗体、具体的には、完全長の抗体(例えば、様々なIgG)が哺乳動物細胞において産生される。組換え発現のための例示的な哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin (1980),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220に記載されるdhfrCHO細胞を含む;これは、例えば、Kaufman and Sharp (1982),Mol.Biol.159:601−621に記載の通り、DHFR選択マーカーと共に使用される)、リンパ球系細胞株(例えば、NS0ミエローマ細胞及びSP2細胞)、COS細胞、K562、及びトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニック哺乳動物)由来の細胞が含まれる。例えば、このような細胞は哺乳動物の上皮細胞である。
【0095】
免疫グロブリンのドメインをコードする核酸配列に加えて、組換え発現ベクターは、更なる配列(例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)、及び選択マーカー遺伝子)を有する場合がある。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選抜を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照)。例示的な選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選抜/増幅と共にdhfrの宿主細胞における使用のために)、及びneo遺伝子(G418選抜のために)が含まれる。
【0096】
抗体(例えば、完全長の抗体又はその抗原結合フラグメント)の組換え発現のための例示的なシステムにおいて、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターがリン酸カルシウム媒介のトランスフェクションによってdhfrCHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内において、抗体の重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子はそれぞれが、遺伝子の高レベルの転写を行わせるために、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV及びアデノウイルス等に由来する;例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント、又はSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント)に機能的に連結される。組換え発現ベクターは又、ベクターによりトランスフェクションされているCHO細胞の選抜を、メトトレキサート選抜/増幅を使用して可能にするDHFR遺伝子を有する。選抜された形質転換体宿主細胞は、抗体の重鎖及び軽鎖の発現を行わせるために培養され、無傷の抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学技法が、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクションし、形質転換体について選抜し、宿主細胞を培養し、抗体を培養培地から回収するために使用される。例えば、プロテインA又はプロテインGによるアフィニティークロマトグラフィーによって幾つかの抗体を単離してもよい。米国特許第6,602,503号は又、VLA−4結合抗体を発現及び精製するための例示的な方法を記載する。
【0097】
抗体は又、様々な修飾、例えば、Fc受容体又はC1q又はその両方との相互作用を低下又は除去するようにFc機能を改変する修飾を含む場合もある。例えば、ヒトIgG1の定常領域を、1つ以上の残基で、例えば、米国特許第5,648,260号の番号付けに従った残基234及び残基237の1つ以上で変異させてもよい。その他の例示的な修飾には、米国特許第5,648,260号に記載の修飾が含まれる。
【0098】
Fcドメインを含む幾つかの抗体の場合、Fc領域がグリコシル化される抗体を合成するように抗体産生システムが設計される場合がある。例えば、IgG分子のFcドメインはCH2ドメイン内のアスパラギン297でグリコシル化される。このアスパラギンが、二分岐型のオリゴ糖による修飾のための部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体及び補体C1qによって媒介されるエフェクター機能に関係する(Burton and
Woof (1992),Adv.Immunol.51:1−84;Jefferis,et.al.,(1998),Immunol.Rev.163:59−76)。Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現システムで産生させてもよい。Fcドメインは又、真核生物のその他の翻訳後修飾を含んでもよい。
【0099】
抗体は又、トランスジェニック動物によって産生させてもよい。例えば、米国特許第5,849,992号は、抗体をトランスジェニック哺乳動物の乳腺において発現させるための方法を記載する。乳汁特異的なプロモーターと、目的とする抗体及び分泌のためのシグナル配列をコードする核酸と含む導入遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物のメスによって産生される乳汁には、目的とする抗体が、その中に分泌されて含まれる。抗体は乳汁から精製してもよければ、幾つかの用途では直接使用してもよい。
【0100】
本明細書で使用される、本発明のVLA−4結合抗体は実質的に完全長のVLA−4結合抗体又はその機能的なフラグメントである場合がある。例えば、VLA−4結合抗体のフラグメントが、VLA−4結合抗体と特異的に結合する抗体による特異的な結合を可能するのに十分な場合、これは機能的なVLA−4結合抗体であり、本発明の方法及びキットで使用される場合がある。当業者であればVLA−4結合抗体のフラグメントを特定することができ、VLA−4結合抗体フラグメントが機能的なVLA−4結合抗体フラグメントであるかどうかを、日常的な手法及び結合アッセイのみを使用して決定することができるであろう。従って、本明細書で示される固定化VLA−4結合抗体及び未固定化VLA−4結合抗体を使用する方法の記載及び例は又、機能的な固定化VLA−4結合抗体フラグメント及び未固定化VLA−4結合抗体フラグメントの使用にも適用される。
【0101】
標識及び検出
本発明の態様には、非固定化抗治療タンパク質抗体(例えば、VLA−4結合抗体)を、治療タンパク質(例えば、標的VLA−4結合抗体)に対する固定化抗体に結合する可溶性結合活性の存在及び/又はレベルを評価するための検出成分として使用することが含まれる。可溶性結合活性の存在及び/又はレベルを評価する方法には、1つ以上の標識検出成分(例えば、検出可能な標識を含有するVLA−4結合抗体、又は検出可能な標識に結合したVLA−4結合抗体)の使用が含まれる場合がある。検出可能な標識は、アッセイを使用して検出することができる任意の成分として定義される。本発明の抗体及び機能的な抗体フラグメントは、標準的なカップリング手法に従って、結合を検出するための特異的な標識剤にカップリングされてもよい。検出可能な標識は、例えば、直接的な検出をもたらす検出可能な標識(例えば、放射性標識、蛍光団[例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)等]、発色団、光学的標識又は高電子密度標識等)、又は間接的な検出をもたらす検出可能な標識(例えば、酵素タグ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ等)等、広範なものを使用してもよい。抗体に結合させられているか、又は抗体に組み込まれている検出可能な標識の限定されない例には、酵素、放射性標識、蛍光性標識、リン光性分子、化学発光性分子、発色団、発光性分子、光親和性分子、及び着色された粒子、又はリガンド(例えば、ビオチン等)等が含まれる。加えて、本発明の検出方法には電気化学発光測定法(ECL)が含まれる場合がある。
【0102】
標識の検出には、標識の性質及びその他のアッセイ要素に応じて、様々な方法が使用される場合がある。標識は、光学的又は電子密度、放射性の放出体、非放射性のエネルギー移動体によって直接検出される場合もあれば、抗体コンジュゲート体、ストレプトアビジン−ビオチンコンジュゲート体等によって間接的に検出される場合もある。追加の検出可能な標識は、抗体へのそれらの結合方法と同じく、数多くのものが当該技術分野で既知である。
【0103】
本発明の標識抗体は、in vitroで、例えば、イムノアッセイ(例えば、ELISA)で使用される抗体である場合がある。このような検出可能に標識された抗体は、抗体に組み込まれた検出可能な標識を有する抗体である場合もあれば、二次結合性リガンドに、及び/又は発色性基質と接触した時に有色生成物を生じさせる酵素(酵素タグ)に連結される抗体である場合もある。好適な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)ハイドロジェンペルオキシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼが含まれる。好ましい二次結合性リガンドがビオチン化合物及び/又はアビジン化合物及びストレプトアビジン化合物である。このような標識の使用は当業者には広く知られており、例えば、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号に記載される(それぞれが参考として本明細書に組み入れられている)。
【0104】
抗体をその検出可能な標識に結合又はコンジュゲートする方法は、数多くが当該技術分野で既知である。結合方法には、例えば、抗体に結合させた有機キレート化剤(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)、エチレントリアミン四酢酸、N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド、及び/又はテトラクロロ−3α−6α−ジフェニルグリコウリル−3)を使用する金属キレート錯体の使用が含まれる場合がある(それぞれ参考として本明細書に組み入れられている、米国特許第4,472,509号及び同第4,938,948号)。モノクローナル抗体は又、カップリング剤(例えば、グルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩)の存在下で酵素と反応させる場合もある。抗体は、これらのカプリング剤の存在下で、又はイソチオシナート化合物との反応によって、フルオレセインマーカーにより標識される場合がある。他の実施形態において、抗体は、誘導体化によって、例えば、抗体認識部位を変化させない反応条件を使用してスルフヒドリル基を抗体のFc領域に選択的に導入することによって、標識される場合がある。
【0105】
本発明のアッセイにおける検出可能な標識の検出は又、本明細書において「シグナル」検出とも呼ばれる。イムノアッセイでシグナルを検出する種々の方法が、当該技術分野で周知である。本発明の幾つかの重要な実施形態において、アッセイシグナルは、シグナルの量及び/又は存在場所を評価するためにマルチウェルプレートリーダー(例えば、マイクロプレートリーダー)と共に使用して検出してもよい。シグナル検出は、本発明で利用される検出可能な標識を検出するのに好適な光学的検出又はその他の検出手段であってもよい。標識を検出する更なる方法が当該技術分野分野で公知であり、本発明の方法で使用されてもよい。本発明の方法では、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体を検出するための感度を有するELISAが含まれ、この場合、感度は、少なくとも約1000ng、500ng又は50ngである。好ましい実施形態において、VLA−4結合抗体に特異的に結合する抗体を検出するためのELISA感度は少なくとも500ngである。
【0106】
一般的に、免疫複合体形成の検出は、数多くの手法の適用によって達成される場合がある。これらの方法は一般的に、標識又はマーカー(例えば、このような放射性タグ、蛍光性タグ、生物学的タグ及び酵素的タグの何れか)の検出に基づいている。このような標識の使用に関する米国特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号が含まれる(それぞれが参考として本明細書に組み入れられている)。当然のことではあるが、当該技術分野で既知の通り、二次結合性リガンド(例えば、第2抗体及び/又はビオチン/アビジンリガンド結合配置)を使用することで、更なる利点が見出される場合がある。
【0107】
VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を得る及び産生する本明細書に記載の技法は又、VLA−4結合抗体に高親和的に結合する基準抗体(例えば、高親和性ナタリズマブ結合抗体(例えば、12C4))を得る及び産生するために使用される場合があることが理解されるはずである。
【0108】
キット
本発明は又、試料におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応の存在をアッセイするためにキットにも一部関する。このようなキットの例には、上記抗体(ナタリズマブ又は他のVLA−4結合抗体(これらに限定されない)を含む)又はそのフラグメントが含まれる場合がある。キットは、検出可能に標識された抗体及び/又は非標識抗体を含む場合があり、又、抗体を検出可能に標識するための溶液及び化合物を含む場合がある。本発明のキットは又、以下の構成要素の1つ以上を含む場合がある:プレート、ピペット、バイアル、検出可能な標識、溶液(例えば、ブロッキング緩衝液、洗浄緩衝液、結合用溶液、希釈液等)、陽性及び/又は陰性対照試料及び溶液。本発明のキットは又、生物学的試料におけるVLA−4結合抗体に対する免疫反応を特定するために本キットを使用するための文書による説明書を含む場合がある。本発明のキットは又、陽性及び/又は陰性ELISA対照アッセイを行うことにおいて有用な更なる構成要素を含む場合もある。本発明のキットは又、本発明の方法で使用される装置(例えば、プレートリーダー)及び/又はロボット計装化を含む場合もある。
【実施例】
【0109】
実施例1 ナタリズマブの免疫原性アッセイ
アッセイの形式及び設計は架橋酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づいていた。架橋アッセイのために好適な標準的な試薬及び工程を使用した。簡単に記載すると、標準的な工程を使用して、ナタリズマブをマイクロタイタープレートの表面に吸着させ、その後、血清抗体の非特異的な結合を最小限に抑えるための遮断工程を行った。対照及び試料を希釈し、ウェルに加えた。標準的な工程を使用して、結合した抗ナタリズマブ抗体の検出を、プレートをビオチン−ナタリズマブとインキュベートし、続いて、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(SA−AP)とインキュベートすることによって達成した。発色は、結合した抗ナタリズマブ抗体の量に比例していた。
【0110】
ナタリズマブをプレート被覆緩衝液において特定の濃度に希釈し、96ウェルマイクロタイターELISAプレートにおいて周囲温度で一晩インキュベートした。推奨される体積は100μl/ウェルであった。プレートを洗浄緩衝液により洗浄し、その後、ブロッキング緩衝液と周囲温度で1時間以上インキュベートした。ブロッキング緩衝液の体積は200μl/ウェルであった。プレートを洗浄緩衝液により洗浄し、その後、添加されたナタリズマブ(100μg/mlの最終濃度)を有するアッセイ希釈液又は有さないアッセイ希釈液において1:10で希釈された品質管理及び被験体(患者)試料と周囲温度で2時間±15分にわたってインキュベートした。添加されたナタリズマブを含有するアッセイ希釈液は確認工程を表した。アッセイ希釈液についての体積は100μl/ウェルであった。その後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、次いで、SA−APと周囲温度で30分間〜35分間インキュベートした。SA−APとのインキュベーションのための体積は100μl/ウェルであった。その後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、次いで、AP基質のp−ニトロフェニルホスファート(PNPP)と周囲温度で45分間〜50分間インキュベートした。AP基質でのインキュベーションのための体積は100μl/ウェルであった。その後、停止溶液(例えば、H2SO4等)を基質反応混合物に直接加え、光学濃度(OC)を405nmで読み取った。
【0111】
アッセイ許容性については、陽性対照及び陰性対照は結果を所定の値及び精度の範囲内でもたらさなければならなかった。被験体(患者)試料の結果の評価のために、試料は、そのOD値が規定の陰性カットオフ品質管理試料よりも低くなれば、陰性と判断された。試料は又、そのOD値が規定の陰性カットオフ品質管理試料を超え、確認工程でナタリズマブを添加することによる被験体(患者)試料のシグナルの阻害が所定の割合よりも小さかった場合に、陰性と判断された。試料は、そのOD値が規定の陰性カットオフ品質管理試料を超え、確認工程でナタリズマブを添加することによる被験体(患者)試料のシグナルの阻害が所定の割合よりも大きかった又は等しかった場合に、陽性と判断された。
【0112】
実施例2 VLA−4抗体に対する免疫反応についてのスクリーニングアッセイ
(上述の)スクリーニングアッセイを、ナタリズマブが投与されている被験体から得る試料で行った。VLA−4抗体に対する免疫反応の存在を、ナタリズマブの投与を受けている患者で調べた。
【0113】
ナタリズマブが投与されている被験体から得る生物学的試料を、実施例1に記載される方法を使用して、ナタリズマブと特異的に結合する可溶性抗体の存在について試験した。
【0114】
試験では、陽性対照としての高親和性mAbの使用が含まれた。この高親和性mAbは、被験体から得る生物学的試料に存在する結合抗体(例えば、ナタリズマブと結合した抗体)を検出した。陰性カットオフレベルが、許容される正確性/精度(25%/25%)をもたらした最も低い濃度(10%血清での50ng/mL)に決定された。このmAbの感度は正味(非希釈)血清において500ng/mLであった。感度については、このmAbが、様々な抗ナタリズマブAbを検出するが、関連性のないヒトモノクローナル抗体に対する感度がないことが明らかにされた。試料の他の分子又は成分によるmAbへの妨害は、1:2を超えるmAb:薬物比での遊離薬物による妨害が含まれることが明らかにされた。図1は、抗ナタリズマブ抗体のイムノアッセイに対する遊離ナタリズマブによる妨害の影響を例示する。リウマチ因子も又、アッセイを妨害することが見出された。
【0115】
実施例1及び実施例2に記載されるスクリーニングアッセイに加えて、このようなスクリーニングアッセイにおける結合を評価するための特徴付けアッセイも又行った。ナタリズマブが投与されている被験体から得る生物学的試料を、フローサイトメトリー遮断アッセイを使用して、ナタリズマブと特異的に結合する可溶性抗体の存在について試験した。高親和性mAbを陽性対照として使用した。本アッセイでは、阻止抗体が検出された。使用されたmAbについての陰性カットオフレベルは、非服用患者から得る血清における測定レベルの平均値を3倍〜4倍上回る標準偏差のレベルで決定された。5%の偽陽性率が存在し、本アッセイの感度は1mlの正味血清当たり500ngであった。mAbの特異性を試験し、このmAbは、抗ナタリズマブ抗体を検出することが明らかにされ、しかし、関連性のないヒトモノクローナル抗体に対する感度がないことが見出された。アッセイに対する遊離薬物の妨害も又調べた。本アッセイでは、遊離薬物による妨害の存在が示された。図2には、遊離薬物による遮断アッセイ妨害の評価の結果が示されている。
【0116】
ナタリズマブの遮断アッセイ
結果
スクリーニングアッセイ及び遮断アッセイの陽性結果を比較した。217個の遮断アッセイ陽性及び222個のスクリーニングアッセイ陽性が存在した。従って、5%の差が存在し、98%の一致率であった。従って、スクリーニングアッセイにより、VLA−4結合治療抗体に対する被験体の免疫反応の正確な測定がもたらされる。
【0117】
実施例3
(実施例1及び実施例2に記載の)スクリーニングアッセイを、ナタリズマブが投与されている625名の被験体から得る試料で行った。VLA−4抗体に対する免疫反応の存在を、ナタリズマブの投与を受けている患者で調べた。調査した患者におけるナタリズマブに対する抗体の発生率は、任意の時点で、91%(569例)が抗体陰性であり、9%(56例)が「結合抗体」陽性であり、この場合、3%(19例)が「一時的に」陽性であり、6%(37例)が「永続的に」陽性であった。一時的な陽性患者は、(0.5μg/mlを超える濃度の)検出可能な抗体を1回の時点で有したが、全ての他の時点では抗体について陰性であった。永続的な陽性患者は、検出可能な抗体を、少なくとも42日の間隔が空いた2つ以上の時点に、又は追跡調査試料が試験されていない単一の時点で有した。
【0118】
図3は、何らかの抗体を発達させた患者における最初の陽性結果の時間を示す。6%の患者がナタリズマブに対する「永続的な」抗体を発達させた。90%を超える永続的な陽性患者は最初、検出可能な抗体を第12週で有した。どの被験体も、第36週の後では、永続的な抗体について陽性とならなかった。一時的陽性患者は検出可能な抗体を第12週で有したが、その後は抗体陰性であった。
【0119】
結果は、処置患者の最初の障害の再発率における抗体の効果の存在を明らかにするために分析した。図4は、再発率に対する抗体の全体的な影響を例示する。再発率は又、ナタリズマブの投与から経過した時間に関して被験体について評価された。図5A〜図5Dは、0ヶ月〜3ヶ月、3ヶ月〜6ヶ月、6ヶ月〜9ヶ月、及び9ヶ月〜12ヶ月での再発率をそれぞれ示す。
【0120】
結果
結果は、抗体の明らかな影響が最初の3ヶ月の処置の期間中にはないことを示した。3ヶ月〜6ヶ月まで、「一時的な」抗体陽性患者はナタリズマブ処置の効果における減少を示した。「永続的な」抗体陽性患者はナタリズマブ処置の効果の喪失を示した。6ヶ月〜12ヶ月まで、完全な効果が「一時的な」抗体陽性患者において回復したが、「永続的な」抗体陽性患者では回復しなかった。従って、一時的な抗体陽性患者を、継続したVLA−4結合抗体治療のための標的集団として特定することは重要である。
【0121】
等価物
当業者は、ごく日常的な実験を使用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識するか、又は確認できるであろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとして意図される。
【0122】
本明細書で開示される全ての参考文献は、特許文書を含め、それらの全体が参考として組み入れられている。矛盾する場合には、本明細書の何れの定義も含め、本出願が優先される。
【0123】
以上で使用された用語及び表現は、限定する用語ではなく、説明する用語として使用され、このような用語及び表現の使用においては、示した及び説明した特徴又はそれらの一部の何れかの等価物を除外するものとして意図されず、従って、様々な改変が本発明の適用範囲内で可能であることが認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2012−8146(P2012−8146A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−213503(P2011−213503)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2008−505451(P2008−505451)の分割
【原出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(504370427)バイオジェン アイデック エムエイ インコーポレイテッド (2)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】