説明

治療上有効な成分の長期放出/持続放出のための医薬組成物

治療上有効な成分の用いる環境への持続/長期放出に有用な医薬組成物であって、該組成物は、本質的に弱酸性であり、水性環境中で制限された溶解度を有する治療上有効な成分からなる錠剤コア組成物を含んでなり、該治療上有効な成分は、例えば、コアの微細環境のpHを変えることによって、コア内部の物質の溶解度を改良することのできる物質と直接接触しており、該錠剤コアは、半透膜形成ポリマー、透過膜形成ポリマー、およびポリマーのフィルム形成特性を調節できる少なくとも1種の可塑剤からなる放出速度制御膜に取り囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上有効な部分の持続放出/長期放出のための医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、治療上有効な成分を、用いる環境へ持続放出するための有用かつ新規な医薬組成物に関する。より詳しくは、本発明は、浸透圧、拡散、またはその双方の組み合わせの原理で働く、経口使用のための医薬組成物に関する。本発明において、医薬組成物は、治療上有効な成分、溶解度改良剤、浸透圧剤、およびその他の従来の賦形剤からなる錠剤コアを含んでなる。錠剤コアは、半透膜および透過膜形成ポリマーからなる速度制御膜壁でコーティングされる。本発明において、治療上有効な成分は、本質的に弱酸性であり、水性環境中で制限された溶解度を有する。溶解度改良剤は、錠剤コア中に存在し、治療上有効な成分と直接接触しているが、コア内で前記薬剤の溶解度を、例えば微細環境pHを変えることによって改良することができる。これらの物質は、微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることによって医薬組成物内での治療上有効な成分の溶解度を改良し、従って、医薬組成物からの放出特性を改良する。その結果、その微細環境のpHを変化させる能力に基いて溶解度改良剤を適切に選択することにより、治療上有効な成分の放出特性を調節および制御することができる。従って、治療上有効な成分の医薬組成物からの放出は、その固有の水溶性および用いる周囲環境とは無関係となる。本発明において、本質的に弱酸性の治療上有効な成分の溶解度の調節は、治療上有効な成分と直接接触し、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができ、従ってその溶解度を改良することのできるアルカリ化剤および/または緩衝剤を用いることによって達せられる。
【背景技術】
【0003】
用いる環境へ薬剤を長期送達するための医薬組成物は、従来技術で周知である。参考として、半透性の壁が浸透圧上有効な薬剤コアを取り囲む、米国特許第3,845,770号および同第3,916,889号が挙げられる。この壁は水に対しては浸透性であるが、コアの成分に対しては実質的に不透性である。このような錠剤は、胃液または腸液などの流体を膜に透過させ、膜内の経路を通って放出されるよう有効成分を溶解させることにより機能する。一般に、このような医薬組成物は、水性液体に可溶性であり、壁を超えて流体に対して浸透圧勾配を示す薬剤の送達に非常に有効である。しかし、液体中で制限された溶解度を有する薬剤を、有意義かつ有用な速度で送達するのは困難である。参考として、液体に不溶性のものをはじめとする薬物の送達動態が、2つのコンパートメントを有する医薬組成物の製造により改良された米国特許第4,111,202号も挙げられる。休止状態から膨張状態へと移動可能な内部のフィルムが、薬剤のコンパートメントと浸透性のコンパートメントを分離していた。半透性の壁を通じた下部浸透性コンパートメントへの水性液体の吸収によって、下部コンパートメントの容積が増え、フィルムに対して適用される推進力として働く溶液が生じる。この推進力によりシステム内でフィルムが薬剤コンパートメントに向かって膨張し、相応して、薬剤コンパートメントの容積が小さくなく、その結果膜内の経路から薬剤が送達される。この組成物は、意図する使用のために首尾よく作用し、溶解度を変化させる物質を送達できるが、浸透システムのコンパートメント内で可動性フィルムを形成、配置するのに必要な製造工程およびコストのために、その使用は制限され得る。米国特許第4,327,725号は、極めて溶解性の高い水性液体および体液、ならびに膨張可能なヒドロゲルに不溶性の薬剤を含むコンパートメントを半透壁が取り囲む、浸透性の医薬組成物を記載している。実際の作用では、システム内に吸収された外部の流体の存在下でヒドロゲルが膨張し、薬剤が壁の経路を通って分配される。このシステムは意図する使用に対し首尾よく作用するが、ヒドロゲルがシステムから全ての薬剤を分配するために必要な最大自己膨張に十分な流体を吸収する能力を欠くことがあり得るため、その使用は制限され得る。米国特許第4,612,008号は、薬剤および浸透圧剤を含んでなる第1の浸透性組成物ならびに異なる浸透性物質および浸透性ポリマーを含んでなる第2の組成物を含んでなるコンパートメントを半透壁が取り囲む、浸透性の医薬組成物を記載している。実際の作用では、浸透性ポリマーを含む下部コンパートメントが水と接触した後に膨張し、薬剤が壁内の経路を通って薬剤のコンパートメントから分配される。この組成物は、溶解度の変化する薬剤の送達に申し分なく作用するが、システム内に2つのコンパートメントを形成するために必要な製造工程およびコストのため、その使用は制限され得る。上記に論じた全ての医薬組成物は、薬剤の分配される場所から半透壁を横切る開口部または出口孔を作り出すための別の製造工程が必要である。
【0004】
米国特許第4,326,525号には緩衝剤を用いる浸透性医薬組成物が開示され、これは薬剤と反応して親薬剤とは異なる熱力学的特性を有する新規な化合物を生じる。この組成物も、薬剤の出口の役割を果たす穿孔を有する半透膜技術に基づいている。米国特許第5,284,662号には、わずかに可溶性の薬剤の送達のための浸透性組成物が記載されている。この組成物は水に不溶な薬剤と膨潤剤からなる。この組成物もまた、薬剤の出口の役割を果たす穿孔を有する膜壁技術に基づいている。米国特許第4,755,180号には、浸透性医薬組成物が記載され、ここでは薬剤の溶解度を、ポリマーでコーティングした緩衝成分および浸透圧剤によって調節する。薬剤および放出調整剤は、速度制御フィルムで個別にコーティングし、次に混合して、錠剤の形態へ打錠する。この錠剤コアを、穿孔を有する半透壁でさらにコーティングする。この剤形は水に対する溶解度の高いまたは低い薬剤のどちらでもうまく働くが、製造に伴う工程数は数個またはそれ以上であり、溶解度の制御、また従って薬剤の放出は主としてコーティングからの溶解度改良剤の放出によって決まり、これはそれ自体が多くの因子によって影響され得るため薬剤が有意義で有用な速度で放出されないことがある。米国特許第5,736,159号には、水に不溶な薬剤の制御放出のための組成物が記載されている。この組成物は水に不溶な薬剤コアと膨潤可能なポリマーからなる。このコアは薬剤放出のために予め形成された開口部を持たない膜壁でコーティングされる。この組成物が水と接触すると、コア中のポリマーが膨潤して部分的に水和したコアの膨張をもたらし、膜の最も弱い箇所に小さな開口部が生じる。薬剤放出は、錠剤の端部にあるこの開口部から起こる。この装置は水に不溶な薬剤の送達に使用できるが、放出は膜上の最も弱い箇所での開口部の形成にかかっているが、これは膜の質に応じて極めて変動的である。さらに、開口部の大きさも制御し難く、このため薬剤放出が変動する可能性がある。
【0005】
微多孔膜を用いて、使用環境への制御された薬剤送達をする医薬組成物もまた、従来技術で公知である。米国特許第3,957,523号は、pH感受性の孔形成剤を壁に有する医薬組成物を開示している。この組成物が消化管内にある場合、孔形成剤は胃液・腸液によって部分的にまたは完全にフィルムから溶解されて多孔性膜を形成する。孔形成剤の選択は、消化管の未知の酸およびアルカリ状態に基づいており、これは孔の形成および薬剤の流体への暴露に付随して影響を与えるるため、このようなシステムからの放出を制御することは困難である。塩化ポリビニルなどの実質的に水に不溶なポリマーでの孔形成剤の使用は、J. Pharm. Sci., vol. 72, pp 772-775および米国特許第4,244,941号に開示されている。この組成物は、コーティング中の孔を通じての単純な拡散によってコア含有物を放出し、環境の乱れに制約されると思われる。同様の種類の医薬組成物が米国特許第2,928,770号に開示され、ここでは、薬剤を取り囲む外層が、消化管中で流体によって取り除かれると推定される孔を軟ワックスで満たした多孔性材料で作られている。これも無秩序な外部条件に支配され、組成物に支配されないin situでの孔形成を必要とするため、この組成物に制御放出を頼ることはできない。米国特許第4,256,108号、同第4,160,452号、ならびに同第4,200,098号は少なくとも2種の壁層のうちの1種だけに孔形成剤を有する医薬組成物を開示している。これらの組成物は、コア含有物の放出のため半透性のコーティングを貫く穿孔を1個含む。米国特許第4,880,631号および同第4,968,507号は、制御された多孔性壁でコーティングされた浸透性組成物を開示している。上記特許中に記載の組成物は、pH非感受性の水溶性添加物を含む壁からなり、これは液体と接触した後、周囲環境に濾過されて微多孔性膜が後に残る。この種の組成物は、溶解度の高い薬剤の送達に非常に適するが、水溶性の低い薬剤の送達には有用性が制限される。水溶性の高いまたは低い薬剤の送達のための、制御された多孔により溶解度調節された医薬組成物が、米国特許第4,946,686号および同第4,994,273号に記載されている。記載の組成物は、制御された放出溶解度調節物質からなり、これは界面活性剤または錯化剤であって、速度制御膜によって取り囲まれているかまたはマトリックス中に分散している。しかし、溶解度の制御、また従ってこれらの組成物からの薬剤の放出は、主にコーティングまたはマトリックスからの溶解度改良剤の放出によって決まり、これはそれ自体が多くの因子によって影響され得るので薬剤が有意義で有用な速度で放出されないことがある。さらに、このような組成物は、感知できるほどの酸塩基の特徴を持たない薬剤の送達に非常に適している。
【0006】
浸透性の薬剤送達における非対称膜の使用は、既に米国特許第5,612,059号および同第5,698,220号に開示されている。これらの特許では組成物は、非対称膜に取り囲まれた錠剤コアからなる。このような非対称膜は、それよりも厚く多孔質な部分構造層に支持される非常に薄く緻密な皮膚構造からなる。米国特許第5,697,922号は非対称膜でコーティングされたカプセル装置を記載している。このようなカプセル装置は、水溶性の低い薬剤と溶解度改良剤からなる。この溶解度改良剤は、小型の錠剤の形態で、それを速度制御膜がコーティングしそこから溶解度改良剤の放出が起こる。従って、上記装置の製造工程は、溶解度改良剤の圧縮および速度制御膜でのそのコーティングをはじめとする、多数の複雑な製造工程を含む。また、溶解度、また従って薬剤の放出は、コーティングされた錠剤からの溶解度改良剤の放出により影響され得る。
【0007】
当業者ならば、水溶性薬剤の送達のための医薬組成物の使用の報告はあるが、制限された水溶性を有する薬剤の送達のための報告はほとんどないことが容易に理解されよう。組成物が制限された水溶性を有する薬剤の送達のために使用される場合、個別にコーティングすることまたはマトリックス中で溶解度改良剤を分散させることに伴う製造工程の数のために、このような組成物の使用は限定的でありうる。さらに、溶解度の制御、また従ってこれらの組成物からの薬剤の放出は、主に溶解度改良剤のコーティングまたはマトリックスからの放出によって決まり、これはそれ自体が極めて変動的であり、多くの因子によって影響され得るので、薬剤が有意義で有用な速度で放出されないことがある。さらに、当業者ならば、従来技術で述べられている医薬組成物の大多数において、医薬組成物内に2つのコンパートメントを作るため、および/または薬剤を放出する場所から膜壁を横切る送達孔を作るために複雑な製造工程を伴うことが容易に理解されるであろう。
【0008】
上記の考察を踏まえて、当業者ならば、液体または体液中で制限される溶解度を示す治療上有効な成分の長期放出に有用な医薬組成物に対する重大な要求が存在することが容易に理解されよう。同様に、当業者ならばさらに、デザインが単純で、少ない工程数で製造でき、量産への対応の容易な医薬組成物に対する重大な要求があることも理解されよう。このような組成物からの治療上有効な成分の送達が、その固有の溶解度および溶解度改良剤の放出特性に影響されないならば、この組成物の有用性はさらに増加するであろう。
【0009】
発明の目的
本発明の主たる目的は、上記で詳しく述べた欠点を未然に防ぐ、治療上有効な成分の持続/長期放出のための医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、治療上有効な成分の持続放出のための医薬組成物を提供することであり、該成分は本質的に弱酸性で、2.5〜7.5の間のpKaを有し、水性液体および体液中で制限された溶解度を有する。
【0011】
本発明のさらにもう一つの目的は、治療上有効な成分と直接接触し、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができ、従って、その溶解度および医薬組成物からの放出特性を改良するアルカリ化剤および/または緩衝剤を含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0012】
本発明のまたもう一つの目的は、水溶性で、壁を越えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示し得る浸透圧上有効な溶質または浸透圧剤をさらに含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、溶解度が低く弱酸性の治療上有効な成分と微細環境のpHを調節可能なアルカリ化剤および/または緩衝剤、ならびに浸透圧剤からなる錠剤コアコンパートメントを取り囲む半透膜および透過膜ポリマーからなる速度制御膜を含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0014】
本発明のまた別の目的は、コアコンパートメントを取り囲む速度制御膜を含んでなる医薬組成物を提供することであり、この速度制御膜は、水に不溶であるが水性液体に対しては浸透性であり、コア成分に対しては実質的に不透性である半透膜ポリマー、ならびに水溶性で、水性液体および少なくとも1種のコア成分に対しては浸透性である透過膜ポリマーを含んでなる。
【0015】
さらにもう一つの本発明の目的は、コアコンパートメントを取り囲む速度制御膜を含んでなる医薬組成物を提供することであり、ここで速度制御膜は、半透膜ポリマー、透過膜ポリマー、およびポリマーのフィルム形成特性を調節できる少なくとも1種の可塑剤を含んでなる。
【0016】
さらにもう一つの本発明の目的は、そこからの浸透圧ポンプ作用、拡散、またはその双方の組み合わせの機構を通じて薬剤放出が起こり、デザインが単純で、量産への対応の容易な医薬組成物を提供することである。
【0017】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、図表および添付の請求項と併せて本明細書の詳細な説明を読めば調剤技術分野の業者にはさらに明らかとなる。
【0018】
発明の概要
従って、本発明は、治療上有効な成分の長期放出のための、錠剤コアおよびポリマー膜で取り囲まれた該錠剤コアを含んでなる医薬製剤を提供する。
【0019】
本発明はまた、用いる環境への、治療上有効な成分の持続放出のための医薬組成物を提供する。より詳しくは、本発明は経口使用のための医薬組成物に関し、それは浸透圧、拡散、またはその双方の組み合わせの原理によって作用する。本発明において、医薬組成物は、治療上有効な成分からなる錠剤コア、溶解度改良剤、浸透圧剤、およびその他の従来型の賦形剤を含んでなる。錠剤コアは、半透膜および透過膜ポリマーからなる速度制御膜壁でコーティングされる。
【0020】
発明の新規性
本発明における新規性は、水性液体および体液中で制限された溶解度を有する弱酸性の治療上有効な成分;治療上有効な成分と直接接触し、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることのできるアルカリ化剤および/または緩衝剤;浸透圧剤;およびその他の錠剤用賦形剤を含んでなる医薬組成物を調製し、水に不溶な半透膜形成ポリマー、水溶性ポリマー、および可塑剤を含んでなる膜壁でコーティングすることである。従来技術とは違い、本発明では溶解度改良剤が治療上有効な成分と密接に接触している。液体との接触後、それは容易に溶解し、錠剤コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高め、従って治療上有効な成分の溶解度を増加させる。従って、治療上有効な成分の溶解度調節および放出は、溶解度改良剤の放出に依存しない。さらに、水に不溶な半透膜形成ポリマーと水溶性ポリマーの比を調節して組成物からの薬剤放出を調整でき、その結果個別の製造工程を用いて送達用開口部を作り出す必要がない。従って、本発明における医薬組成物は、従来技術と比較してデザインが単純で、製造しやすく、量産への対応が容易であり、さらに薬剤の長期放出にも有効である。
【0021】
発明の詳細な説明
従って、本発明は、治療上有効な部分の持続放出のための医薬組成物を提供し、該組成物は、放出速度制御膜に取り囲まれた錠剤コアを含んでなり、該錠剤コアは、
(i)本質的に弱酸性であり、pKa2.5〜7.5の間の、液体中で制限された溶解度を有する、治療上有効な部分、
(ii)上記の該治療上有効な部分と直接接触するアルカリ化剤または緩衝化合物、
(iii)水溶性で、放出速度制御膜を越えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示し得る、浸透圧上有効な溶質、
からなり、さらに
(iv)所望により1以上の医薬上許容される賦形剤およびポリマーを含み、
該放出速度制御膜は、
(i)水に不溶であるが液体に部分的に透過性であり、実質的にはコア組成物へ不透過性である半透膜形成ポリマー、
(ii)水溶性であって、液体および少なくともコア組成物の一部分に透過性である、透過膜形成ポリマー;ならびに
(iii)乾燥ポリマーの総重量を基に2〜60重量%の範囲の、少なくとも1種の可塑剤
からなる。
【0022】
本発明の一実施形態は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、神経系、骨格筋、心血管、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経エフェクター結合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、抑制系またはオータコイド系およびヒスタミン系で作用する薬剤、ならびに睡眠薬および鎮静剤などの中枢神経系に作用する物質に関する。
【0023】
本発明のもう一つの実施形態では、治療上有効な部分は、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、p−アミノサリチル酸、カプトロピル、カルベニシリン、カルベノキソロン、クロルプロパミド、クロフィブラート、ジクロフェナク、ジフルニサル、エタクリン酸、エトドラク、フェノプロフェン、フロセミド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トラザミド、トルブタミド、トルメチンおよびゾメピラクからなる群から選択され、好ましくは血糖降下薬および抗炎症剤から選択される。
【0024】
また別の実施形態では、用いる血糖降下薬は、グリピジド、グリクラジド、グリメピリド、およびグリブリドからなるスルホニル尿素のカテゴリーから選択される。
【0025】
さらに別の実施形態では、抗炎症剤は、アスピリン、パラセタモル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トルメチンおよびゾメピラクからなる群から選択され、好ましくはアスピリンから選択される。
【0026】
また別の実施形態では、治療上有効な部分の用量は、錠剤あたり0.1mg〜600mgの間の範囲である。
【0027】
さらにまた別の実施形態では、用いるアルカリ化剤または緩衝剤は水溶性で、コアの微細環境のpHを治療上有効な部分のpKaよりも増加させることによって液体中の治療上有効な部分の溶解度を改良する。
【0028】
さらにまた別の実施形態では、用いるアルカリ化剤は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、メグルミン、および/またはその混合物からなる群から選択され、用いる緩衝剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、および/またはその混合物からなる群から選択される。
【0029】
さらに別の実施形態では、治療上有効な成分とアルカリ化剤との比は、0.1:9.9〜7:3の間である。
【0030】
さらに別の実施形態では、治療上有効な成分と緩衝剤との比は、0.1:9.9〜7:3の間である。
【0031】
さらに別の実施形態では、用いる浸透圧上有効な溶質は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ならびに、スクロース、グルコース、フルクトース、デキストロース、ラクトース、およびその混合物からなる群から選択される炭水化物からなる群から選択され、 好ましくは塩化ナトリウム、マンニトール、およびラクトースからなる群から選択される。
【0032】
またさらに別の実施形態では、用いるコア成分は、放出速度制御膜の壁を越えて外部の流体に対して浸透勾配を発揮する。
【0033】
またさらに別の実施形態では、半透膜形成ポリマーは水に不溶であり、水を透過させ、錠剤コアの組成物の透過性を実質的に抑制する。
【0034】
またさらに別の実施形態では、半透膜形成ポリマーは、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、エチルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルからなる群から選択され、好ましくは酢酸セルロースおよびエチルセルロースから選択される。
【0035】
またさらに別の実施形態では、透過膜形成ポリマーは水溶性であり、水を少なくとも1種のコア成分とともに透過させる。
【0036】
またさらに別の実施形態では、透過膜形成ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルからなる群から選択され、好ましくはポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される。
【0037】
またさらに別の実施形態では、半透性の水に不溶なポリマー膜と浸透性の水溶性ポリマー膜との比は、9:1〜1:9、好ましくは9:1〜3:7の間である。
【0038】
またさらに別の実施形態では、用いる可塑剤は、水溶性および部分的に水溶性の可塑剤の混合物である。
【0039】
またさらに別の実施形態では、用いる部分的に水溶性の可塑剤は、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ヒマシ油からなる群から選択される。
【0040】
またさらに別の実施形態では、用いる水溶性可塑剤は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、液体ソルビトール、および/またはその混合物からなる群から選択される。
【0041】
またさらに別の実施形態では、膜壁の厚さは、1〜1000ミクロンの間の範囲、好ましくは50〜500ミクロンの間の範囲である。
【0042】
またさらに別の実施形態では、前記組成物は所望により1以上の医薬上許容される賦形剤からなる。
【0043】
またさらに別の実施形態は、浸透圧ポンプ作用および拡散の組み合わせに基づく、治療上有効な成分を放出する機構に関する。
【0044】
本発明のもう一つの実施形態は、治療上有効な部分の持続放出のための医薬組成物の製造方法に関し、該方法は、
a.治療上有効な部分、アルカリ化剤または緩衝化合物、浸透圧上有効な溶質、ならびに所望により1以上の医薬上許容される賦形剤およびポリマーを乾式混合することによりコア組成物を調製すること、または
b.湿潤顆粒を得るための造粒用流体として水、アルコール、または80/20(V/V)の比率のイソプロピルアルコール/塩化メチレンなどの補助有機溶媒を用い、薬剤を、アルカリ化剤/緩衝剤および浸透圧剤を含むその他の賦形剤と混合することによるスラッグ法または湿式造粒技術によって、コア組成物を調製すること、または
c.薬剤および溶解度改良剤を一般的な水性または有機性溶媒に溶解し、蒸発乾固後、残渣と浸透圧剤およびコア組成物を得るために必要なその他の賦形剤を混合すること、
d.工程(a)、(b)および(c)で得られた上記コア組成物を、通常の錠剤製造機を用い打錠して錠剤コアを得ること、
e.必要量の半透膜形成ポリマーを塩化メチレン、メタノール、エタノールまたはその混合物から選択される溶媒中に溶解してコーティング液を製造すること、
f.攪拌を続けながら透過膜形成ポリマーおよび1以上の可塑剤を工程(e)の液に加えること、
g.プレスコーティング、スプレー、ディッピング、またはエアサスペンション技術から選択される技術を用いて工程(f)のコーティング液を用いて工程(d)の圧縮錠剤をコーティングすること、ならびに
h.工程(g)で得られたコーティングされた錠剤コアを45〜60℃で約16時間乾燥して持続放出のための組成物を得ること、および常法で錠剤を包装すること
を含んでなる。
【0045】
本発明のもう一つの実施形態は、工程(a)で、乾式混合によって得た混合物を、標準篩にかけて均一な粒径を得、コア組成物を形成する方法に関する。
【0046】
さらに別の本発明の実施形態は、工程(b)で得た湿潤顆粒を40〜60℃の間の温度範囲で約10分間乾燥させ、顆粒を20〜22の標準篩にかけて塊を壊して均一な粒径にし、コア組成物を得る。
【0047】
本発明のもう一つの実施形態は、水に不溶な半透膜形成ポリマーと水溶性ポリマーとの混合物を用いる錠剤コアを取り囲むコーティング液の製造に関し、半透膜および透過膜形成ポリマーの比を変化させることにより、膜の透過性を制御することが可能である。
【0048】
一般に、水に不溶な半透膜形成ポリマーの濃度を増加させると、膜透過性および薬剤放出は低下する。一方、水溶性ポリマーの濃度を増加させると、膜透過性および薬剤放出は増加する。実際の作用では、コアコンパートメントが、速度制御膜を越えて周囲環境から水性液体を吸収する。
【0049】
治療上有効な成分と直接接触しているアルカリ化剤/緩衝剤が溶解すると、結果として治療上有効な部分のpKaを越えるコアの微細環境のpHの上昇をもたらす。治療上有効な成分の溶解度、また従って、医薬組成物からのその放出は、微細環境のpHの変化によって改良される。アルカリ化剤/緩衝剤の量および/または種類を、微細環境のpHを調節する能力に基づいて調整することによって、薬剤の放出特性を所望の薬物動態プロフィールに適合させることができる。
【0050】
本発明のもう一つの実施形態では、治療上の有効成分の長期放出のための医薬組成物が提供され、この組成物は、
A.
(i)水性液体中で制限された溶解度を有する治療上の有効成分、該成分は本質的に弱酸性であり、2.5〜7.5の間のpKaを有する、および
(ii)上記の該治療上の有効成分と直接接触しているアルカリ化剤または緩衝化合物、および
(iii)水溶性で、壁を越えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示し得る、浸透圧上有効な溶質、
を含んでなる錠剤コア、ならびに
B.
(i)水に不溶であるが、少なくとも水に対しては部分的浸透性であり、コア組成物に対しては実質的に不透性である半透膜形成ポリマー、および水溶性であり水およびまた少なくとも1種のコア成分に対して浸透性であるポリマー材料であって、水に不溶なポリマーと水溶性ポリマーとの比が9:1〜1:9の範囲である、
(ii)乾燥ポリマーの総重量に対して2〜60重量%の範囲の、少なくとも1種の可塑剤、
を含んでなるコーティング組成物により形成される膜壁に取り囲まれる該錠剤コア
を含んでなる。
【0051】
本発明の実施形態では、医薬組成物は、速度制御膜に取り囲まれる錠剤コアからなる。この錠剤コアは、本質的に弱酸性であり、2.5〜7.5の間のpKaを有する治療上有効な成分からなる。この治療上有効な成分は、水性液体および体液中で制限された溶解度を有する。溶解度の低い治療上有効な成分を、直接接触しているアルカリ化剤/緩衝剤の使用によって改良する。このようなアルカリ化剤/緩衝剤は水溶性であり、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaより高めることができ、その結果その溶解度が改良される。コアコンパートメントもまた、水溶性で、壁を越えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示しうる浸透圧上有効な物質または浸透圧剤からなる。
【0052】
治療上有効な成分、アルカリ化剤/緩衝剤、および浸透圧剤は、送達系のコアコンパートメントからの放出に必要とされるその他の従来型の賦形剤と組み合わせてもよい。コアコンパートメントは、水に不溶な半透膜形成ポリマー、水溶性の透過膜形成ポリマー、およびポリマーのフィルム形成特性を改良させることのできる少なくとも1種の可塑剤からなる速度制御膜に取り囲まれる。半透膜形成ポリマーは水に不溶であるが、水性液体に対しては少なくとも部分的浸透性であり、コア成分に対しては実質的に不透性である。透過膜形成ポリマーは水溶性で水性液体および少なくとも1種のコア成分に対して浸透性である。所望により、透過膜形成ポリマーを水に溶解させると、膜内にチャネルを形成し、これにより水性環境中でコアから薬剤およびその他の賦形剤の放出を可能にする。実際の作用では、コアコンパートメントが、速度制御膜を越えて周囲環境から液体を吸収する。治療上有効な成分と直接接触しているアルカリ化剤/緩衝剤の溶解の結果、治療上有効な部分のpKaを越えるコアの微細環境のpHの上昇をもたらす。治療上有効な成分の溶解度、また従って医薬組成物からのその放出は、微細環境のpHの変化によって改良される。
【0053】
用いるアルカリ化剤または緩衝剤は、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができる能力に基づいて選択でき、従って、その溶解度および医薬組成物からの放出を改良する。アルカリ化剤/緩衝剤の量および/または種類を、錠剤コアの微細環境のpHを調節する能力に基づいて調整することによって、治療上有効な成分の放出特性を所望の薬物動態プロフィールに適合させることができる。溶解した治療上有効な成分は、速度制御膜を越えて放出され、その透過性は、ポリマーおよび可塑剤の適切な選択によって、また水に不溶な半透膜形成ポリマーと水溶性ポリマーとの比を変化させることによって調節できる。速度制御膜壁の厚さは、錠剤コアのコーティング液の重量増加に直接比例する。錠剤コアの膜壁の重量増加を調節することによって、膜壁の厚さを制御することができる。
【0054】
本明細書および添付のクレームにおいて、治療上有効な成分または薬剤とは、動物において局所性または全身性の作用をもたらす生理的にまたは薬理的に有効な物質をさし、この動物としては哺乳類、ヒト、および霊長類が挙げられる。これには、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、およびブタなどの家庭用、狩猟用または家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;ならびに魚、鳥、爬虫類および動物園の動物が挙げられる。送達され得る薬剤としては、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、神経系、骨格筋、心血管、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経エフェクター結合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、抑制系またはオータコイド系およびヒスタミン系で作用する薬剤、ならびに睡眠薬および鎮静剤などの中枢神経系に作用する物質が挙げられる。薬剤の例は、Remington : The Science and Practice of Pharmacy, vol. 1 and 2, 19th Ed., 1995, published by Mack Publishing Co., Easton, PA;およびThe Pharmacological Basis of Therapeutics, by Goodman and Gilman, 9th Ed., 1996, published by McGraw Hill Company, N. Y.;およびThe Merck Index, 12th Ed., 1996, published by Merck & Co., N. J.に開示されている。本発明での使用に採用できる治療上有効な成分の具体的な例としては、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、p−アミノサリチル酸、カプトロピル、カルベニシリン、カルベノキソロン、クロルプロパミド、クロフィブラート、ジクロフェナク、ジフルニサル、エタクリン酸、エトドラク、フェノプロフェン、フロセミド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トラザミド、トルブタミド、トルメチンおよびゾメピラクが挙げられる。
【0055】
本発明で溶解度改良剤は本質的にアルカリ性であるか、またはコアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができ、従ってその溶解度を増加させることのできる緩衝剤であってよい。選択された物質は双方とも、pHを高め維持するその特性に応じたアルカリ化剤または緩衝剤として作用し得る。アルカリ化剤または緩衝剤を選択する基準は、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることのできる能力に基づく。本明細書および添付の請求項において、アルカリ化剤とは、錠剤コアの微細環境のpHをアルカリ性側に高めることのできる物質をさす。アルカリ化剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、第二リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、アルギニン、および上記の混合物が挙げられる。本明細書および添付のクレームにおいて、緩衝剤とは、溶液中に存在することによって、少量の酸またはアルカリの添加に対しpHの変化に抵抗する物質をさす。該緩衝剤は、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができる。緩衝化合物の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、および上記の混合物が挙げられる。
【0056】
浸透圧上有効な溶質をこの装置のコア中に組み込んだ医薬組成物は多様にある。このような物質は、装置の壁を越えて浸透圧勾配を生じ、流体を装置内に吸収することができる。浸透圧上有効な化合物は、本発明において使用できる浸透圧剤としても公知であり、これには、水性環境に置かれた場合、膜を超えて浸透圧勾配を提示する、有機および無機化合物または溶質が挙げられる。本目的に有用な浸透圧上有効な化合物としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、重炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カリウム、乳酸カルシウム、マンニトール、尿素、イノシトール、ソルビトール、コハク酸マグネシウム、酒石酸、ラフィノース、スクロース、グルコース、フルクトース、デキストロース、ラクトースなどの炭水化物、および上記該浸透圧剤の混合物が挙げられる。
【0057】
本発明において、半透膜形成ポリマーは、水に不溶であるが、水性液体に対しては少なくとも部分的浸透性であり、コア組成物に対しては実質的に不透性である。半透膜を形成するために使用できる材料としては、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースエステル;エチルセルロースなどのセルロースエーテル;ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、エチレンビニル、アルコール共重合体、ポリプロピレン、塩化ポリビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびそのエステル、ならびに上記該ポリマーの混合物が挙げられる。
【0058】
本発明において、透過膜形成ポリマーは、水溶性であって、水性液体および少なくともコア組成物の一部に対して浸透性である。所望により、透過膜形成ポリマーを水に溶解させると、膜内にチャネルを形成し、これにより水性環境中でコアから薬剤およびその他の賦形剤の放出を可能にする。透過膜を形成するために使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのアルキルおよびヒドロキシアルキルセルロース;酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリエチレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびそのエステル、ならびに上記該ポリマーの混合物が挙げられる。
【0059】
本発明に好適な可塑剤の例としては、壁の二次転移相の温度またはその弾性率を下げる、また壁の実行可能性および柔軟性を増加させる可塑剤が挙げられる。可塑剤は、水および水性溶液をはじめとする流体に対する壁の浸透性を増加または低下させてよい。本発明に好適な可塑剤としては、環状および非環状双方の可塑剤が挙げられる。典型的な可塑剤は、フタル酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、アジピン酸エステル、酒石酸エステル、セバシン酸エステル、コハク酸エステル、グリコール酸エステル、グリセロールエステル、安息香酸エステル、ミリスチル酸エステル、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0060】
特定の可塑剤に応じて、ポリマーの総重量に対して0.1〜約60%の範囲の量の可塑剤が使用できる。本発明の可塑剤の例としては、フタル酸ジアルキル、フタル酸ジシクロアルキル、フタル酸ジアリール、ならびにフタル酸ジメチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソプロピル;トリエチルホスフェートおよびトリブチルホスフェートなどのリン酸アルキルおよびリン酸アリール;クエン酸アルキルエステルおよびクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、およびアセチルクエン酸トリエチルなどのクエン酸エステル;アジピン酸ジオクチルおよびアジピン酸ジエチルなどのアジピン酸アルキル;酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジブチルなどの酒石酸ジアルキル;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジプロピルなどのセバシン酸に代表される混合アルキルアリールが挙げられる。その他の可塑剤としては、ポリエチレングリコール、カンフル、液体ソルビトール、トリアセチン、ヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、置換エポキシドおよび上記の混合物が挙げられる。
【0061】
一般的に、製剤という観点から、溶媒中でポリマーを混合するのが望ましい。即時送達系の壁の製造に好適な溶媒の例としては、コア、壁、および最終的な壁形成材料に悪影響を与えない無機および有機溶媒が挙げられる。溶媒は、水性溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、脂環式、芳香族、複素環式溶媒およびその混合物からなる群から広く選択されるものが挙げられる。水をベースにしたラテックス形態の好適なポリマーも、本発明の範囲内にある。典型的な溶媒としては、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、n−ヘキサン、乳酸エチル、n−ヘプタン、エチレングリコールモノエチルアセテート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、四塩化炭素、ニトロエタン、ニトロプロパン、テトラクロロエタン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルブロムアミド、ベンゼン、トルエン、水、およびアセトンと水、アセトンとメタノール、二塩化メチレンとメタノールなどのその混合物が挙げられる。
【0062】
本発明において、医薬組成物は、造粒およびコーティングの標準技術によって製造される。例えば、一つの方法では、治療上有効な成分、アルカリ化剤/緩衝剤、および浸透圧剤が乾燥混合される。本発明で、溶解度改良剤は、本質的にアルカリ性であるかまたは緩衝剤であってよく、治療上有効な成分と直接接触していて、微細環境のpH、また従って治療上有効な成分の溶解度を変更することができる。このような成分を次に核錠を形成するために従来の賦形剤と混合する。所望により、コア組成物はスラッグ法または湿式造粒法の技術によって製造してよい。湿式造粒法では、湿潤顆粒を得るための造粒流体として水、アルコール、またはイソプロピルアルコール/塩化メチレン、80/20(V/V)などの補助有機溶媒を用い、薬剤を、アルカリ化剤/緩衝剤および浸透圧剤をはじめとするその他の賦形剤と混合する。湿潤顆粒を乾燥させ、20または22のメッシュスクリーンに通し、ミキサー中で滑沢剤およびグリダントと混合する。次に混合物を錠剤の形態に打錠する。所望により、薬剤および溶解度改良剤を一般的な水性または有機性溶媒に溶解し、蒸発乾固させた後、残渣を浸透圧剤および、核錠を形成するために必要なその他の賦形剤と混合してよい。打錠した錠剤を次に膜壁でコーティングする。壁形成組成物を、プレスコーティング、スプレー、ディッピング、またはエアサスペンション技術からなる技術を用いて塗布する。錠剤コアを取り囲む壁は、水に不溶な半透膜形成ポリマーおよび水溶性ポリマーの混合物を用いて調製され、半透膜および透過膜形成ポリマーの比を変化させることにより、膜の透過性を制御することが可能である。一般に、水に不溶な半透膜形成ポリマーの濃度を増加させると、膜透過性および薬剤放出は低下する。一方、水溶性ポリマーの濃度を増加させると、膜透過性および薬剤放出は増加する。実際の作用では、コアコンパートメントが、速度制御膜を越えて周囲環境から液体を吸収する。治療上有効な成分と直接接触しているアルカリ化剤/緩衝剤が溶解すると、結果としてコアの微細環境のpHが、治療上有効な部分のpKaを越えて上昇する。治療上有効な成分の溶解度、また従って、医薬組成物からのその放出は、微細環境のpHの変化によって改良される。アルカリ化剤/緩衝剤の量および/または種類を、微細環境のpHを調節する能力に基づいて調整することによって、薬剤の放出特性を所望の薬物動態プロフィールに適合させることができる。
【0063】
本発明における新規性は、本質的に弱酸性の治療上有効な成分、治療上有効な成分と直接接触している溶解度改良剤、および浸透圧剤からなる錠剤コアからなる新規な医薬組成物を調製し、半透膜形成ポリマー、透過膜形成ポリマー、および可塑剤からなる膜壁形成組成物でコーティングすることである。従って、本発明の医薬組成物は、従来技術と比較して少ない工程を用いて製造され、さらに液体及び体液中で制限された溶解度を有する治療上有効な成分の長期放出に効果的である。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は説明の目的で示されるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1、5、7、および8は本発明を説明する。実施例2〜4および6は単に比較目的で示すものである。
【0065】
実施例1〜6では、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の治療用に処方された経口スルホニル尿素薬である、グリピジドをモデル薬として使用している。グリピジドは、pKa5.9の弱酸性の薬剤で、実際には水に不溶である。グリピジドの制限された溶解度は、従来の浸透性の医薬組成物への組み込みを不可能にしていた。以下の実施例で、グリピジドの低い水溶性を、アルカリ化剤のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(一般にトリスバッファーとして有名)を組み込むことによって改良する。これにより液体および体液中で制限された溶解度を有する弱酸性の薬剤の首尾よい処方が可能となる。
【0066】
実施例1
弱酸性薬剤、グリピジドの長期放出のための医薬組成物を次の通り製造する。
グリピジドの核錠を次の通り調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
トリスバッファー(Loba Chemie, India)を、圧縮可能なマンニトール(Pearlitol SD 200, Roquette, France)および塩化ナトリウム(Loba Chemie, India)と直接混合し、次に30メッシュの篩(British Standard Sieves, BSS)に通した。グリピジドを上記で得られた部分の一部と混合し、混合後、30メッシュ篩(BSS)に通した。混合物を10分間混合し、ポリビニルピロリドン(Plasdone K 29/32, ISP, USA)を混合物に加えた。混合物をエタノールで粒状にし、得られた湿潤軟塊を18メッシュ篩(BSS)に通した。このようにして得た湿潤顆粒を、50℃で10分間乾燥させ、乾燥顆粒を22メッシュ篩(BSS)に通して塊を壊した。これらの同じ大きさの顆粒を次にステアリン酸マグネシウム、タルク、およびアエロジル(全て60メッシュに通したもの)と混合し、10.00mmラウンドの標準の凹型の穿孔装置を取り付けた一工程の打錠機(Cadmach CMS-25, India)を用いて平均重量360mgの両凸型錠剤の形態に打錠した。
【0069】
これらの錠剤約500錠を、200グラムの増量錠剤(7.00mmラウンドの深い凹型穿孔装置を用いて製造した錠剤で、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびアエロジルを含有)とともに、実験室規模の穿孔塗布装置(Ganscoater-GAC 250, Gansons, India)に入れて、下表からなるコーティング液でコーティングした。
【0070】
【表2】

【0071】
コーティング液を、分子量約37,000およびアセチル値40%の酢酸セルロース(Fluka, Switzerland)を塩化メチレンおよびメタノールの混合物へ添加することにより調製した。全てのポリマーを溶解した後、攪拌を続けながらポリビニルピロリドン(Plasdone K 29/32, ISP, USA)を添加した。最後に、トリアセチン(Acros Organics, USA)およびPEG−400(S. D. Fine-Chem Ltd., India)を加え、完全に混合して最終のコーティング液を得た。全ての例でコーティング液は約4%(w/w)の総固形分を含んでいた。増量剤および有効な錠剤をコーティングパンに入れ、錠剤床に熱風を通した。パンを18〜20rpmで回転させた。排気温度が28℃に達した時、コーティング液を、1Kg/Cmで噴霧しながら7〜8ml/分の速度で噴霧口から塗布した。有効な錠剤の増加重量%が12.65%に達するまで、十分にコーティング液を塗布した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。これらの錠剤および市販の長期放出製剤のグリピジド(Glucotrol XL 10mg, Pfizer Inc., USA)の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、酵素を含まないpH6.8の腸液を模した液1000ml中で実施した。時間に対する、放出された薬剤パーセントのプロットを図2に示す。
【0072】
上記で調製した組成物の放出プロフィールを、Pharmaceutical Technology, vol. 20, pp 64-74に記載の類似の因数、f2を用いて、市販の長期放出製剤(Glucotrol XL)のものと比較した。この類似の因数は、2種類のin vitroの溶解プロフィール間の類似性の評価基準として、医薬品評価センター(米国食品医薬品局)に採用されている。2種類の溶解プロフィールが類似であるとみなすためには、f2値は50〜100の間でなければならない。上記で製造した組成物のin vitroでの放出データおよび市販の長期放出製剤のそれとを分析し、f2値を算出しすると59であった。従って、双方の溶解特性は、互いに類似していると結論付けられる。
【0073】
上記で調製した医薬組成物を、PVCを積層した厚さ0.04mmのアルミニウム箔で包装し、40℃および75%RHで維持される安定チャンバーで3ヶ月間保存した。上記条件で3ヶ月保存した後の錠剤の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、酵素を含まないpH6.8の腸液を模した液1000ml中で実施した。得られた放出特性を図2に示す。溶解度改良剤(トリスバッファー)の効果を調べるため、グリピジドの錠剤組成物を調製し(トリスバッファーを用いずに、等量のマンニトールで代用した)、上記で概説した方法によってコーティングした。有効な錠剤の増加重量%が13.18%に達するまで、十分にコーティング液を塗布した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。これらの錠剤の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、酵素を含まないpH6.8の腸液を模した液1000ml中で実施した。時間に対する、放出された薬剤パーセントのプロットを図2に示す。
【0074】
図2に示す結果は、溶解度改良剤を含まない医薬組成物からは薬剤の放出がなかったことを表している。これに対して、溶解度改良剤を含み、本発明に従って調製された医薬組成物は、液体中で制限された溶解度を有する弱酸性の薬剤の長期放出を示した。アルカリ化剤の使用によって弱酸性の薬剤の溶解度を改良することが可能であることは、先行する例ですでに示されている。また、アルカリ化剤を適切に選択することによって、液体中で制限された溶解度を有する薬剤のために有意義な放出速度を得ることができることも示されている。さらに、この処方は、初期サンプルのものと類似の放出特性を証明する、3ヶ月間加速された安定性データに示されるように、妥当な保存期間を有するものと予測できる。
【0075】
実施例2
次の組成物からなるグリピジドの核錠を、実施例1に概説した方法によって調製した。
【0076】
【表3】

【0077】
これらの錠剤100錠を、350グラムの増量錠剤(7.00mmラウンドの深い凹型穿孔機を用いて製造した錠剤で、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびアエロジルを含有)とともに、実験室規模の10”有孔塗布装置に入れて、下表からなるコーティング液でコーティングした。
【0078】
【表4】

【0079】
コーティング液を、実施例1で概説した方法によって調製した。増量剤および有効な錠剤をコーティングパンに入れ、錠剤床に熱風を通した。パンを18〜20rpmで回転させた。排気温度が28℃に達した時、コーティング液を、1Kg/Cmで噴霧しながら7〜8ml/分の速度で噴霧口から塗布した。有効な錠剤での増加重量%が11.92%に達するまで、十分にコーティング液を塗布した。有効な錠剤30錠を回収し、有効な錠剤での増加重量%が13.05%に達するまで、コーティングを継続した。錠剤30錠を取り出し、有効な錠剤での増加重量%が14.82%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。これらの錠剤の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、酵素を含まないpH6.8の腸液を模した液1000ml中で実施した。時間に対する、放出された薬剤パーセントのプロットを図3に示す。
【0080】
図3に示す結果は、本発明に従って調製された医薬組成物が長期間にわたってグリピジドの長期放出を示したことを表している。この例では、酢酸セルロースが半透膜形成ポリマーで、ポリビニルピロリドンが透過膜形成ポリマーである。薬剤放出が、有効な錠剤でのポリマー液の増加重量パーセントに左右されることは図から明白であり、この膜パラメータを変化させることによって要件のとおり放出を調節することが可能である。
【0081】
実施例3
水溶性の可塑剤(PEG−400)および水中で制限された溶解度を有する可塑剤(トリアセチン)の濃度を変化させることの可能性を探るため、次のコーティング組成物を用いたことを除いて、実施例2を繰り返した。
【0082】
【表5】

【0083】
コーティング液を実施例1で概説した方法によって調製し、実施例1に記載のように錠剤をコーティングした。有効な錠剤での重量増加が約12.75%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。有効な錠剤からのグリピジドの放出特性を図4に示す。PEG−400のような比較的水溶性の可塑剤の濃度の増加が薬剤放出を増加させることは、図から明白である。これに対して、トリアセチンのような比較的水に不溶な可塑剤の濃度の増加、またはPEG−400のような比較的水溶性の可塑剤の濃度の低下は薬剤放出を低下させる。PEG−400は水に完全に混和できるが、1のトリアセチンは、20℃で14の水に溶解する。そのため、可塑剤を適切に選択し、その濃度を変化させることによって要件のとおり薬剤放出を調節することが可能である。
【0084】
実施例4
水溶性透過膜形成ポリマー(PVP)のレベルによる薬剤放出への影響を調べるため、下記のコーティング組成物を用いたことを除いて、実施例2を繰り返した。
【0085】
【表6】

【0086】
コーティング液を実施例1で概説した方法によって調製し、実施例1に記載のように錠剤をコーティングした。有効な錠剤での重量増加が約12.50%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。有効な錠剤からのグリピジドの放出特性を図5に示す。透過膜形成ポリマーのレベルが増加するにつれて薬剤放出が増加することは図から明白であり、従って透過膜形成ポリマーのレベルを変化させることによって薬剤の放出特性を制御することが可能である。
【0087】
実施例5
半透膜形成ポリマーとしてエチルセルロースを使用する可能性を探るため、次のコーティング組成物(コーティング組成物G)を用いたことを除いて、実施例2を繰り返した。
【0088】
【表7】

【0089】
コーティング液を、エチルセルロース(Ethocel標準10cpプレミアム、Colorcon Asia Pvt. Lt., Mumbai)を塩化メチレンおよびエタノールの混合物へ添加することによって調製した。全てのポリマーが溶解した後、攪拌を続けながらPVPを加えた。最後に、プロピレングリコールを加え、完全に混合して最終のコーティング液を得た。有効な錠剤での最終の重量増加が12.09%に達するまで、錠剤を実施例1で概説した条件によってコーティングした。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。有効な錠剤からのグリピジドの放出特性を図6に示す。長期にわたり薬剤放出が制御されていることは図から明白である。
【0090】
実施例6
直接打錠
次の処方によるグリピジドの核錠
【0091】
【表8】

【0092】
トリスバッファーを、圧縮可能なマンニトールおよび塩化ナトリウムと直接混合し、30メッシュ篩(BSS)に通した。グリピジドを、上記で得られた一部分と混合し、混合後、30メッシュ篩(BSS)に通した。10分間混合した後、混合物をステアリン酸マグネシウムおよびアエロジル(ともに60メッシュに通したもの)と混合し、10.00mmラウンドの標準の凹型の穿孔装置を取り付けた一工程の打錠機を用いて、平均重量375mgの両凸型錠剤の形態に打錠した。透過膜形成ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用する可能性を探るため、次のコーティング組成物を用いたことを除いて、錠剤を実施例1で概説した方法によってコーティングした。
【0093】
【表9】

【0094】
コーティング液を、分子量約37,000およびアセチル値40%の酢酸セルロースを塩化メチレンおよびメタノールの混合物へ添加することにより調製した。全てのポリマーを溶解した後、攪拌を続けながらHPMC(Pharmacoat 606、Shin-Etsu, Japan)を添加した。最後に、トリアセチンおよびPEG−400(またはコーティング組成物Jの場合はポリビニルピロリドン)を加え、完全に混合して最終のコーティング液を得た。実施例1で概説した方法によってコーティングした。有効な錠剤での重量増加が約12.00%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。有効な錠剤からのグリピジドの放出特性を図7に示す。グリピジドの放出が制御され、HPMCも透過膜形成ポリマーとして利用できることは図から明白である。
【0095】
次の表は、溶解試験から6、12、および24時間後の薬剤放出をパーセントで表した、上記実施例で製造した選択された組成物での重要な処方変数を変化させることの効果を示す。
【0096】
【表10】

【0097】
薬剤放出が起こるためには、医薬組成物中の溶解度改良剤(アルカリ化剤または緩衝剤)の存在が必要であることは表から明白である。水溶性可塑剤(PEG−400)の濃度の増加が、各時点での薬剤放出および4時間後の最大限度の薬剤放出を増加させる。これに対して、制限された水溶性を有する可塑剤(トリアセチン)の濃度の増加は薬剤放出を低下させる。また、膜中の水溶性ポリマー(PVP)の濃度の増加が薬剤放出を増加させることも表から明白である。従って、先行する実施例で、重要な処方変数をを調節することによって治療上有効な成分の放出を制御することが可能であることが示されている。
【0098】
実施例7
次の実施例では、解熱剤、鎮痛剤、および抗炎症剤として使用され、低用量で血小板薬として有効なアスピリンをモデル薬として使用する。アスピリンはpKaが3.5の弱酸性の薬剤であり、わずかに水溶性である。アスピリンの核錠を次の通り調製した。
【0099】
【表11】

【0100】
アスピリン、噴霧乾燥したラクトース(Flowlac−100、Meggle, Germany)、およびトリスバッファー(核Iを除く)を混合し、30メッシュ篩(BSS)に通した。混合物を10分間混合し、ポリビニルピロリドンを混合物に加えた。混合物をエタノールで粒状にし、生じる湿潤軟塊を20メッシュ篩(BSS)に通した。このようにして得た湿潤顆粒を、50℃で10分間乾燥させ、乾燥顆粒を20メッシュ篩(BSS)に通して塊を壊した。これらの同じ大きさの顆粒を次にステアリン酸マグネシウム、タルク(核Iを除く)、およびアエロジル(全て60メッシュに通したもの)と混合し、8.5mmラウンドの標準の凹型の穿孔装置を取り付けた一工程の打錠機を用いて両凸型錠剤の形態に打錠した。各錠剤の平均重量は250mgで、アスピリン75mgを含んでいた。この錠剤を、次のコーティング組成物を用いて、実施例1で概説した方法によってコーティングした。
【0101】
【表12】

【0102】
有効な錠剤での重量増加が約11.00%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。これらの錠剤の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、pH4.5の酢酸緩衝溶液900ml中で実施した。時間に対する、放出された薬剤パーセントのプロットを図8に示す。
【0103】
図8に示す結果は、溶解度改良剤を含まない医薬組成物からの薬剤放出が極めて低かったことをを表している。これに対して、溶解度改良剤を含み、本発明に従って調製された医薬組成物は、液体中で制限された溶解度を有する弱酸性の薬剤の長期放出を示した。溶解度改良剤の濃度を増加させることによって弱酸性の薬剤の溶解度を改良し、従ってその放出を改良することが可能であることは、先行する実施例ですでに示されている。また、アルカリ化剤を適切に選択することによって、液体中で制限された溶解度を有する薬剤のために有意義な放出速度を得ることができることも示されている。
【0104】
次の表は、溶解試験から2、6、および12時間後の薬剤放出をパーセントで表した、上記実施例で製造した選択された組成物中で溶解度改良剤(トリスバッファー)の濃度を変化させることの効果を示す。
【0105】
【表13】

【0106】
治療上有効な成分の放出が溶解度改良剤(トリスバッファー)の濃度に依存していることは表から明白である。トリスバッファーの濃度の増加が、各時点での薬剤放出および12時間後の最大限度の薬剤放出を増加させる。
【0107】
実施例8
次の例では、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の治療用に処方された経口スルホニル尿素薬である、グリクラジドをモデル薬として使用している。グリクラジドはpKa5.98の弱酸性の薬剤で、実際には水に不溶である。
グリクラジドの核錠を次の通り調製した。
【0108】
【表14】

【0109】
トリスバッファー(核ivを除く)および圧縮可能なマンニトールを直接混合し、30メッシュ篩(BSS)に通した。グリクラジドを、上記で得られた一部分と混合し、混合後、30メッシュ篩(BSS)に通した。混合物を10分間混合し、ポリビニルピロリドンを混合物に加えた。混合物を水で粒状にし、生じる湿潤軟塊を18メッシュ篩(BSS)に通した。このようにして得た湿潤顆粒を、50℃で10分間乾燥させ、乾燥顆粒を22メッシュ篩(BSS)に通して塊を壊した。これらの同じ大きさの顆粒を次にステアリン酸マグネシウムおよびアエロジル(60メッシュに通したもの)と混合し、9.5mmラウンドの深い凹型の穿孔装置を取り付けた一工程の打錠機を用いて両凸型錠剤の形態に打錠した。各錠剤の平均重量は300mgで、グリクラジド40mgを含んでいた。この錠剤を、次のコーティング組成物を用いて、実施例1で概説した方法によってコーティングした。
【0110】
【表15】

【0111】
コーティングを実施例1で概説した方法によって塗布した。有効な錠剤での重量増加が約12.00%に達するまで、コーティングを継続した。有効な錠剤をオーブンで50℃で16時間乾燥させた。これらの錠剤の放出研究を、USP1型(basket)装置を100rpmで用いて、pH7.4のリン酸緩衝溶液1000ml中で実施した。時間に対する、放出された薬剤パーセントのプロットを図9に示す。
【0112】
図9に示す結果は、溶解度改良剤を含まない医薬組成物からの薬剤放出が極めて低かったことをを表している。これに対して、溶解度改良剤を含み、本発明に従って調製された医薬組成物は、液体中で制限された溶解度を有する弱酸性の薬剤の長期放出を示した。溶解度改良剤の濃度を増加させることによって、弱酸性の薬剤の溶解度を改良し、従ってその放出を改良することが可能であることは、先行する実施例ですでに示されている。また、アルカリ化剤を適切に選択することによって、液体中で制限された溶解度を有する薬剤のために有意義な放出速度を得ることができることも示されている。
【0113】
次の表は、溶解試験から6、12、および24時間後の薬剤放出をパーセントで表した、上記実施例で製造した組成物中で溶解度改良剤(トリスバッファー)の濃度を変化させることの効果を示す。
【0114】
【表16】

【0115】
治療上有効な成分の放出が溶解度改良剤(トリスバッファー)の濃度に依存していることは表から明白である。トリスバッファーの濃度の増加が、各時点での薬剤放出および24時間後の最大限度の薬剤放出を増加させる。
【0116】
このように、治療上有効な成分と直接接触していて、液体と接触すると、上記コアの微細環境のpHを治療上有効な部分のpKa値よりも高めるアルカリ化剤、ならびにまた本質的により単純で、半透膜および透過膜ポリマーを含んでなり、追加の工程を経て送達用開口部を作り出す必要のないコアに塗布される速度制御膜壁の選択によって、本質的に弱酸性であり、液体および体液中で制限された溶解度を有する治療上有効な成分のための、新規な医薬組成物が開発された。
【0117】
本発明の主要な利点
1.本医薬組成物は、その制限された溶解度から従来の浸透性組成物への組み込みが不可能であった治療上有効な成分の長期送達に使用できる。
2.本医薬組成物は製造が簡単で、微細環境のpHを調節することのできる能力に基づいてアルカリ化剤/緩衝剤を適切に選択することによって治療上有効な成分の溶解度を容易に改良できる。
3.本医薬組成物は 薬剤の放出のための経路を形成するために膜壁のレーザー穿孔などの高度な技術を必要とせず、半透膜および透過膜ポリマーを適切に選択することによって薬剤の放出を制御できる。
4.本医薬組成物は最低限の製造工程数しか必要とせず、デザインが単純で、量産への対応が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を表す。ここで、医薬組成物(1)は、治療上有効な成分(3)、アルカリ化剤/緩衝剤(4)、浸透圧剤(5)、および、半透膜および透過膜形成ポリマーを含んでなる速度制御膜(2)の適用に好適な錠剤を形成するために必要なその他の賦形剤(6)を含んでなるコアコンパートメントを有する。アルカリ化剤/緩衝剤(4)は、治療上有効な成分(3)と直接接触し、水性液体との接触後、コアの微細環境のpHを治療上有効な成分のpKaよりも高めることができる。実際の作用では、水性液体は、壁の透過性により制御される速度でコアの濃度および浸透勾配に応答して壁(2)に浸透し、治療上有効な成分および賦形剤が溶解するコアコンパートメントへ進入する。アルカリ化剤/緩衝剤の溶解によって、コアの微細環境のpHが治療上有効な成分のpKaより上昇し、その結果その溶解度が増加する。溶解した治療上有効な成分およびその他の賦形剤はその後浸透性勾配および濃度勾配に応答して膜壁を通って出て行く。
【図2】図2は市販の長期放出製剤と比較した溶解度改良剤(アルカリ化剤)の効果を示す、実施例1で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。40℃および相対湿度75%で3ヶ月保存した後の組成物からの放出特性も示す。
【図3】図3は膜壁の重量増加を変化させることの効果を示す、実施例2で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。
【図4】図4は水溶性可塑剤(PEG−400)および水中で制限された溶解度を有する可塑剤(トリアセチン)の濃度を変化させることの効果を示す、実施例3で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。
【図5】図5は水溶性ポリマー(PVP)の濃度を変化させることの効果を示す、実施例4で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。
【図6】図6は半透膜形成ポリマーとしてエチルセルロースの使用を示す、実施例5で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。
【図7】図7は水溶性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用を示す、実施例6で製造した組成物からのグリピジドの放出特性を表す。
【図8】図8は異なる濃度の溶解度改良剤(アルカリ化剤)の効果を示す、実施例7で製造した組成物からのアスピリンの放出特性を表す。
【図9】図9は異なる濃度の溶解度改良剤(アルカリ化剤)の効果を示す、実施例8で製造した組成物からのグリクラジドの放出特性を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な部分の持続放出のための医薬組成物であって、
放出速度制御膜で取り囲まれた錠剤コアを含んでなり、
前記錠剤コアが、
(i)本質的に弱酸性であり、pKa2.5〜7.5の間の、水性液体中で制限された溶解度を有する治療上有効な部分と、
(ii)上記の該治療上有効な部分と直接接触するアルカリ化剤または緩衝化合物と、
(iii)水溶性で、放出速度制御膜を超えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示し得る、浸透圧上有効な溶質とからなり、
(iv)所望により1以上の医薬上許容される賦形剤およびポリマーを含有してなり、
前記放出速度制御膜が、
(i)水に不溶であるが、水性液体に対しては部分的浸透性であり、コア組成物に対しては実質的に不透性である半透膜形成ポリマーと、
(ii)水に不溶性であり、水性液体に対して、またコア組成物の少なくとも一部分に対して浸透性である透過膜形成ポリマーと、
(iii)乾燥ポリマーの総重量に対して2〜60重量%の範囲の、少なくとも1種の可塑剤とからなる、組成物。
【請求項2】
可塑剤とともに半透膜形成ポリマーおよび透過膜形成ポリマーで錠剤コアをコーティングし、乾燥させて放出速度制御ポリマー膜を得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
治療上有効な部分が、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、神経系、骨格筋、心血管、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経エフェクター結合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、抑制またはオータコイドおよびヒスタミン系に作用する薬剤、ならびに睡眠薬および鎮静剤などの中枢神経系に作用する物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
治療上有効な部分が、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、p−アミノサリチル酸、カプトロピル、カルベニシリン、カルベノキソロン、クロルプロパミド、クロフィブラート、ジクロフェナク、ジフルニサル、エタクリン酸、エトドラク、フェノプロフェン、フロセミド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トラザミド、トルブタミド、トルメンチンおよびゾメピラクからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
治療上有効な部分が、好ましくは血糖降下薬および抗炎症剤から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
用いる血糖降下薬がスルホニル尿素のカテゴリーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
用いるスルホニル尿素がグリピジド、グリクラジド、グリメピリド、およびグリブリドからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
抗炎症剤が、アスピリン、パラセタモル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トルメンチンおよびゾメピラクからなる群から選択される、好ましくはアスピリンから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
治療上有効な部分の用量が、錠剤あたり0.1mg〜600mgの間の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
用いるアルカリ化剤または緩衝剤が水溶性であり、上記コアの微細環境のpHを治療上有効な部分のpKa値よりも高めることによって水性液体中の治療上有効な部分の溶解度を高める、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
用いるアルカリ化剤が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、メグルミン、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
用いる緩衝溶液が、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
治療上有効な成分とアルカリ化剤との比が、0.1:9.9〜7:3の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
治療上有効な成分と緩衝溶液との比が、0.1:9.9〜7:3の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
用いる浸透圧上有効な溶質が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ならびに、スクロース、グルコース、フルクトース、デキストロース、ラクトース、および上記浸透圧剤の混合物からなる群から選択される炭水化物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
用いる浸透圧上有効な溶質が、好ましくは塩化ナトリウム、マンニトール、およびラクトースからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
コア成分が、放出速度制御膜の壁を超えて外部の流体に対して浸透圧勾配を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
半透膜形成ポリマーが水に不溶性であり、このため水を浸透させ、錠剤コアの組成物の浸透を実質的に抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
半透膜形成ポリマーが、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、エチルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
好ましい半透膜形成ポリマーが、酢酸セルロースおよびエチルセルロースから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
透過膜形成ポリマーが水溶性であり、このため少なくとも1種のコア成分とともに水を浸透させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
透過膜形成ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
好ましい透過膜形成ポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
半透性の水不溶性ポリマー膜と浸透性の水溶性ポリマー膜との比が、9:1〜1:9、好ましくは9:1〜3:7の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
用いる可塑剤が、水中で制御された溶解度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
用いる可塑剤が、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ヒマシ油、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、液体ソルビトール、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
錠剤コアをコーティングするポリマー形成膜重量を調節することによって、膜壁の厚さを調節する、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
膜壁の厚さが1〜1000ミクロンの間の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
好ましい膜壁の厚さが50〜500ミクロンの間の範囲である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
用いる医薬上許容される賦形剤が、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよびアエロジルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
治療上有効な成分を放出する機構が、浸透圧ポンプ作用および拡散の組み合わせに基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
治療上有効な部分の持続放出のための、請求項1に記載の医薬組成物の製造方法であって、
a.治療上有効な部分と、アルカリ化剤または緩衝化合物と、浸透圧上有効な溶質と、ならびに所望により1以上の医薬上許容される賦形剤およびポリマーとを乾式混合することによりコア組成物を調製すること、または
b.湿潤顆粒を得るための造粒用流体として水、アルコール、または80/20(V/V)の比率のイソプロピルアルコール/塩化メチレンなどの補助有機溶媒を用い、薬剤を、アルカリ化剤/緩衝剤および浸透圧剤を含むその他の賦形剤と混合することによるスラッグ法または湿式造粒技術によって、コア組成物を調製すること、または
c.薬剤および溶解度改良剤を一般的な水性または有機溶媒に溶解し、蒸発乾固後、残渣と浸透圧剤およびコア組成物を得るために必要なその他の賦形剤を混合すること、
d.工程(a)、(b)および(c)で得られた上記コア組成物を、通常の錠剤製造機を用いて打錠して錠剤コアを得ること、
e.必要量の半透膜形成ポリマーを塩化メチレン、メタノール、エタノールまたはその混合物から選択される溶媒に溶解することによりコーティング液を製造すること、
f.攪拌を続けながら透過膜形成ポリマーおよび1以上の可塑剤を工程(e)の液に加えること、
g.プレスコーティング、スプレー、ディッピング、またはエアサスペンション技術から選択される技術を用いて工程(f)のコーティング液で工程(d)の打錠錠剤をコーティングすること、ならびに
h.工程(g)で得られたコーティング錠剤コアを45〜60℃で約16時間乾燥させて持続放出のための組成物を得ること、および常法で錠剤を包装することを含んでなる、方法。
【請求項33】
工程(a)で、乾式混合によって得た混合物を、コア組成物を形成できるように標準篩にかけて均一な粒径を得る、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(b)で、湿潤顆粒を40〜60℃の間の温度範囲で約10分間乾燥させ、顆粒を20〜22の標準ふるいにかけて塊を壊して均一な粒径にし、コア組成物を得る、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
治療上有効な部分が、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、p−アミノサリチル酸、カプトロピル、カルベニシリン、カルベノキソロン、クロルプロパミド、クロフィブラート、ジクロフェナク、ジフルニサル、エタクリン酸、エトドラク、フェノプロフェン、フロセミド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トラザミド、トルブタミド、トルメンチンおよびゾメピラクからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
治療上有効な部分が、好ましくは血糖降下薬および抗炎症剤から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
用いる血糖降下薬がスルホニル尿素のカテゴリーから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
用いるスルホニル尿素がグリピジド、グリクラジド、グリメピリド、およびグリブリドからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗炎症剤が、アスピリン、パラセタモル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ニメスリド、トルメンチンおよびゾメピラクからなる群から選択される、好ましくはアスピリンから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
治療上有効な部分の用量が、錠剤あたり0.1mg〜600mgの間の範囲である、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
用いるアルカリ化剤が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、メグルミン、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
用いる緩衝溶液が、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
治療上有効な成分とアルカリ化剤との比が、0.1:9.9〜7:3の間である、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
治療上有効な成分と緩衝溶液との比が、0.1:9.9〜7:3の間である、
請求項32に記載の方法。
【請求項45】
用いる浸透圧上有効な溶質が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ならびに、スクロース、グルコース、フルクトース、デキストロース、ラクトース、およびその混合物からなる群から選択される炭水化物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
用いる浸透圧上有効な溶質が、好ましくは塩化ナトリウム、マンニトール、およびラクトースからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
用いる賦形剤が、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよびアエロジルからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項48】
用いるポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、アクリル酸およびメタクリル酸のエチルセルロースポリマーならびにそのエステルから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
半透膜形成ポリマーが、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、エチルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項50】
好ましい半透膜形成ポリマーが、酢酸セルロースおよびエチルセルロースから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
透過膜形成ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーならびにそのエステルから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
好ましい透過膜形成ポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
半透性の水に不溶なポリマー膜と浸透性の水溶性ポリマー膜との比が、9:1〜1:9、好ましくは9:1〜3:7の間である、請求項32に記載の方法。
【請求項54】
錠剤コアをコーティングするポリマー形成膜重量を調節することによって、膜壁の厚さを調節する、請求項32に記載の方法。
【請求項55】
錠剤コアのコーティング液の重量が、錠剤コアの重量の20%までである、請求項32に記載の方法。
【請求項56】
膜壁の厚さが、1〜1000ミクロン、好ましくは50〜500ミクロンの間の範囲である、請求項32に記載の方法。
【請求項57】
用いる可塑剤が、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ヒマシ油、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、液体ソルビトール、および/またはその混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−508891(P2006−508891A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−563519(P2003−563519)
【出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【国際出願番号】PCT/IN2002/000062
【国際公開番号】WO2003/063825
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】