治療剤の送達のための自己支持型フィルムを形成する方法
【課題】医療デバイスの支持を必要とせず、増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびにフィルムを形成する工程、を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
【解決手段】少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびにフィルムを形成する工程、を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年10月19日に出願された米国仮特許出願番号61/394,393の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを記載し、そしてより特定すると、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを記載する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
移植可能な医療デバイスの使用による治療剤の送達は、広範な種々の様式で記載されている。このような治療剤の送達の既存の方法は、主として、水溶性薬物およびポリマーを使用して、医療デバイスの表面上に配置される薄い表面コーティングを形成することに焦点を当てる。これらの方法は、制限された治療剤含有量(therapeutic payload)を提供する。
【0004】
さらに、水溶性が高い薬物は、疎水性または水に不溶性の薬物キャリア(すなわち、疎水性ポリマー)を用いると特に有用である有機系において、限られた溶解度を与え得る点で、制御放出のために処方することが困難であり得る。水溶性が高い薬物の制限された溶解度は、さらに、移植可能なデバイスへの薬物の乏しいカプセル化効率および制限された治療剤含有量をもたらし得る。このような親水性薬物は、徐放のために充分な水障壁を必要とする。現行の系は、薬物含有量および徐放の観点(治療的利益を与えることを含む)から、正当性を疑われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療デバイスの支持を必要とせず、増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびに
フィルムを形成する工程、
を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
(項目2)
上記第一の溶液が、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記脂肪族ポリエステルが、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバラクトン、α,α−ジメチルプロピオラクトン、エチルカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記第一の溶液が、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目5)
上記第一の溶液が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩素化溶媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目6)
上記第二の溶液が、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、線維症剤、抗有糸分裂薬、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性の銀塩、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、サイトカイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目7)
上記第二の溶液が、塩酸ブピバカイン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、カプサイシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記第二の溶液が、メタノール、エタノール、水、生理食塩水、イソプロパノール、酢酸およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記スプレーノズルが、少なくとも1つの超音波スプレーノズルを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記第一の溶液および上記第二の溶液をスプレーノズルに通す工程が、約0.5mL/分〜約2mL/分の範囲の流量をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記スプレーノズルが、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12)
上記スプレーノズルが、約48kHzの周波数で振動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目13)
上記スプレーノズルが、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目14)
上記スプレーノズルが、約6ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15)
上記スプレーノズルが、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目16)
上記スプレーノズルが、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
本開示は、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の治療剤を含有する、治療剤の送達のための自己支持型フィルムに関する。自己支持型フィルムを形成する方法もまた開示される。
【0008】
(要旨)
従って、本開示は、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを形成する方法を記載する。例えば、自己支持型フィルムを形成するための1つの方法は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程、ならびにこの第一の溶液およびこの第二の溶液をスプレーノズルに通して、第一の溶液の第一の液滴および第二の溶液の第二の液滴を生成する工程を包含し得る。この第一の溶液およびこの第二の溶液は、不活性基材に堆積させられ得、そして乾燥させられて、単層状または多層状の自己支持型フィルムを形成し得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される自己支持型フィルムを形成する方法は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程、ならびにこの第一の溶液を第一のスプレーノズルに通して第一の溶液の第一の液滴を生成する工程を包含し得る。これらの第一の液滴は、不活性基材に堆積させられて、第一の層を形成し得る。次いで、この第二の溶液が第二のスプレーノズルに通されて第二の溶液の第二の液滴を生成し得、そしてこれらの第二の液滴をこの第一の層に堆積させて、第二の層を形成し得る。この第一の層およびこの第二の層は、乾燥させられて、多層状の自己支持型フィルムを形成し得る。
【0010】
なお他の実施形態において、任意の数のさらなる層が互いの上部に配置されて、本明細書中に記載される自己支持型多層フィルムを形成し得る。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、医療デバイスの支持を必要とせず、増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のための自己支持型フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本開示に記載される1つの実施形態による、自己支持型フィルムとして実現された障壁層の模式図である。
【図2】図2A、図2B、および図2Cは、本開示に記載される実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。
【図3】図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、および図3Fは、本開示に記載される他の実施形態に従う自己支持型フィルムの模式図である。
【図4】図4Aは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。図4Bは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。図4Cは、本開示のなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。
【図5】図5は、本開示に従う自己支持型フィルムの断面図であり、このフィルムは、不連続層を有する。
【図6】図6は、本開示に従う自己支持型フィルム複合材の断面図である。
【図7】図7は、本開示による自己支持型フィルムがどのように形成されるかの1つの例を図示する断面図である。
【図8】図8は、浸漬コーティングによる医療デバイスへの治療剤含有量に対する比較を図示するグラフである。
【図9】図9は、浸漬コーティングおよびスプレーコーティングによる医療デバイスへの治療剤含有量に対する比較を図示するグラフである。
【図10】図10は、多層型構成の医療デバイスおよびポーチ構成の医療デバイスからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図11】図11は、様々な厚さのフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図12】図12は、噴霧器の様々な液だめ(oasis)から形成されたフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図13】図13は、実施例1に記載されるように形成されたフィルムの強度を試験するために使用されたパラメータを図示するグラフである。
【図14】図14は、実施例1に記載されるように形成され、実施例8に記載されるように試験されたフィルムの強度の結果を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本開示は、治療剤の送達のために適切な自己支持型フィルムを記載する。この移植可能なフィルムは、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。これらのフィルムは、高い治療剤含有量の治療剤を含有し、そして単層状であっても多層状であってもよい。
【0015】
自己支持型であることにより、本明細書中に記載されるフィルムは、予め決定された構成を維持するために充分な引張り強度を示す。例えば、ある実施形態において、これらのフィルムは、移植前、移植中、または移植後に、このフィルムがほぼ平坦な構成を維持するために充分な機械的強度を示す、ほぼ平坦な構成を形成し得る。これらの自己支持型フィルムは、支持のためにも、所定の構成を維持するためにも、さらなる基材を必要としないが、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるフィルムはまた、任意の移植可能な医療デバイスと組み合わせられ得ることが想定される。
【0016】
いくつかの実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約500kPa〜約100MPaの範囲のヤング率を示し得る。他の実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約1MPa〜約50MPaの範囲のヤング率を示し得る。特定の実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約10MPa〜約15MPaの範囲のヤング率を示し得る。
【0017】
これらのフィルムの厚さは、このフィルム中の層の数、および/またはスプレープロセス中の「パス」の数(以下に記載される)に依存して変動し得る。しかし、本明細書中に記載されるフィルムの厚さは、平均して約0.1μm〜約3000μmであり得る。いくつかの実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約1.0μm〜約1000μmであり得る。なお他の実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約10μm〜約500μmであり得る。フィルムの厚さは、多層フィルムの機械的強度などのパラメータに影響を与え得る。
【0018】
このフィルムの厚さは、第一の溶液および第二の溶液の塗布の回数、第一の溶液および第二の溶液をスプレーする時間の長さ/速度、ポリマー溶液の組成、薬物溶液の組成、流量、ならびに粘度改質剤などの添加剤の使用などの要因によって、制御され得る。
【0019】
本明細書中に記載されるフィルムはまた、特に、等しい厚さの公知の他のフィルムと比較して高い、少なくとも1種の治療剤からなる治療剤含有量を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、この治療剤は、約800μg/cm2〜約50mg/cm2で存在し得る。なお他の実施形態において、この治療剤は、約1mg/cm2〜約25mg/cm2で存在し得る。より具体的には、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシン、および塩酸ブピバカインの治療剤含有量は、少なくとも約800μg/cm2であり、約50mg/cm2までである。他の実施形態において、異なる治療剤が、異なる量で存在し得る。
【0020】
溶媒キャスティングにより形成されたフィルムとは異なり、本明細書中に記載される自己支持型フィルムは、共通の溶媒中での、水溶性の剤および/または疎水性ポリマーの溶解度によって制限されない。むしろ、これらの自己支持型フィルムのポリマーおよび剤は、共通の溶媒を共有しないかもしれず、従って、この水溶性治療剤は、疎水性ポリマーによる溶解度に制限されない。例えば、これらの自己支持型フィルムは、少なくとも2つの溶媒を使用して形成され得、ここでこの疎水性ポリマーは、第一の溶媒中で第一の溶液を形成し、そしてこの水溶性治療剤は、第二の溶媒中で第二の溶液を形成する。
【0021】
さらに、医療デバイス(例えば、メッシュ)上にフィルムをスプレーすることは、他の従来の方法(例えば、浸漬コーティング)と比較して、治療剤の増加された含有量を提供すると考えられる。図8に実証されるように、溶液中(水中)の塩酸ブピバカイン(ブピバカインHCl)を浸漬コーティングする際の飽和限界および含有量限界は、5%w/v(重量/体積)であるのに対して、ブピバカインHCl溶液(MeOH中)の浸漬コーティングでは、12%w/vである。
【0022】
より具体的には、図8は、ポリマーフィルムなしのポリエステルメッシュ(ParietexTMモノフィラメントメッシュ)についての含有量限界を図示する。
【0023】
図9は、メッシュをブピバカインHClで浸漬コーティング方法を利用してコーティングすることを、実施例5に記載されるように超音波スプレーされたフィルム(PS35−1、PS30−4)と比較して、図8に提示されるデータを図示する。浸漬コーティングされたメッシュAQ(水性、例えば水)およびALC(アルコール、例えばMeOH)についての含有量限界は、1mg/cm2を超えない。逆に、本明細書中に記載されるように超音波スプレーを使用して作製されたフィルムは、少なくとも約25mg/cm2までの含有量に構成され得る。メッシュ上にフィルムを超音波スプレーすることにより生じる薬物含有量は、メッシュを浸漬コーティングすることによる薬物含有量とは異なり、300mgを超える臨床目標含有量に達する。
【0024】
フィルムが高い治療剤含有量の治療剤を含有する能力は、これらの自己支持型フィルムが形成され得る独特の様式の結果であり得る。例えば、本明細書中に記載されるような自己支持型フィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および治療剤を含有する第二の溶液を、超音波スプレーノズルに通して液滴を形成することにより、製造され得る。これらの液滴は、不活性基材(例えば、シリコーンシート)に向かって落下する間、または基材上に堆積する間に混合し得る。乾燥後、そのフィルムは、この不活性基材から分離され得る。
【0025】
本開示のフィルムは、連続フィルムまたは不連続フィルムを備え得る。例えば、図2および図4Aに示されるような連続フィルムは、単一の分断されない層を備える。別の実施形態において、フィルム、またはフィルムの層は、図5に図示されるように、不連続であり得る(後述)。多層フィルムの個々の層は、連続であっても不連続であってもよい。
【0026】
さらに、このフィルムの構築は、薬物の放出および拡散などのパラメータを制御し得る。いくつかの実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部まで広がる(図4Aを参照のこと)。なお代替の実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部までは広がらず、本明細書中で、ポーチ構成と称される(図4Bを参照のこと)。放出速度は、その治療剤が多層フィルムの縁部に存在するか否かに依存して、変動し得る。図10は、ブピバカインHCl放出がポーチ構成を利用して遅くされている、1つの例示的実施形態を図示する。多層型の構成は、約17.7mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されており、そしてこのポーチ構成は、約17.8mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されている。本明細書中に記載される実施例7は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。以下のデータがより長い期間にわたって抽出されるならば、これらの2つの構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0027】
フィルムの厚さはまた、薬物の放出および拡散において、役割を果たし得る。例えば、フィルムの厚さが増加するにつれて、治療剤の放出速度が低下するか、または経時的に遅くなることが示されている。
【0028】
図11において作製されたフィルムが、実施例5により詳細に記載されている。より厚いフィルム(例えば、パスの回数が増加している)は、より薄いフィルムと比較して、遅い放出速度を有する。上記の両方のフィルムは、約24mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されている。上記データがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0029】
同様に、縁部が閉じたサンプルについては、フィルムの厚さを増加させ、そして/または1つの層あたりのパスの回数を変化させることによって、治療剤の放出速度が変化する。以下の図12は、各外側層におけるパスの回数を増加させることによって、放出プロフィールおよび放出速度がどのように変化するかを図示する。この放出速度は、外側層のパスの回数が増加するにつれて、遅くなる。以下に示されるサンプルは、例示的な実施形態であり、そして放出速度および望まれる全放出量に依存して、これらのパラメータは、全放出量および放出速度を変化させるために変更され得る。以下のデータがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。本明細書中に記載される実施例6は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、これらのフィルムは、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有する1つの層を備える。多層状フィルムは、親水性ポリマーおよび治療剤を含有するフィルムの数個の層を積み重ねるかまたは合わせることによって、作製され得る。他の実施形態において、これらの多層状フィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の層、および治療剤を含有する第二の層を備える。一方向薬物送達を提供するために、治療剤の露出した層を有することが有用であり得る。
【0031】
他の実施形態において、これらのフィルムは、三層構造体を備え、ここで治療剤を含有する第三の層が、ある疎水性ポリマーを含有する第一の層と、同じかまたは異なる疎水性ポリマーを含有する第二の層との間に配置される。この第三の層は、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有し得、一方で、この第一の層およびこの第二の層は、疎水性ポリマーのみを含有し得る。例えば、この第一の層およびこの第二の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有し得、一方で、この第三の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、塩酸ブピバカインと組み合わせて含有し得る。
【0032】
この三層構造体は、サンドイッチ型構造体と同様に、他の一層構造体、二層構造体、および/または三層構造体を備える他のフィルムと組み合わせられ得る。先に議論されたように、本明細書中に開示される多層フィルムのうちの任意のものが、メッシュと組み合わせられ得る。複数の層は、意図される用途および薬物放出プロフィールに依存して、類似のポリマーを利用しても異なるポリマーを利用してもよいことが留意されるべきである。さらに、より厚い層およびより薄い層が、プロセス変動によって作製され得る。
【0033】
これらのフィルムは、移植に適しており、そして考慮されるのに充分な機械的強度を示し得る、任意の疎水性ポリマーを含有し得る。特定の層はまた、親水性ポリマーを含有し得る。本開示に従って利用され得る適切な吸収性ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、以下の材料が挙げられるか、または以下の材料のうちの少なくとも1つから誘導され得る:脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミン基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(フマル酸プロピレン);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0034】
より具体的には、本発明の目的で、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明に従って利用され得る他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0036】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0037】
特定の実施形態において、これらの親水性ポリマーは、第一の層、第二の層、および第三の層を含み得る。10重量%のグリコリドと90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが、第一の層、第二の層、および第三の層を形成するために利用され得る。
【0038】
ある実施形態において、これらの疎水性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、およびε−カプロラクトンを含む、ホモポリマーまたはコポリマーを含有し得る。例えば、本明細書中に記載される治療剤は、ラクチドとグリコリド、またはグリコリドとε−カプロラクトンのコポリマー(すなわち、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー)と組み合わせられ得る。グリコリドの量を増加させると、フィルムの分解速度が増加し得る。一方で、ラクチドおよび/またはカプロラクトンの量を増加させると、フィルムの分解/吸収プロフィールが延長され得る。例えば、ラクチドに富むコポリマー(すなわち、約50%より多いラクチド)は、特定のポリマー(例えば、グリコリド)の溶解度を増強するために、特に有用であり得る。特定の実施形態において、10重量%のグリコリドと90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが利用され得る。
【0039】
疎水性ポリマーは、ポリマー溶液(懸濁物、エマルジョン、および分散物などが挙げられる)を形成し得、その後、超音波噴霧器に通され得る。ポリマー溶液を形成するために適切な溶媒のいくつかの非限定的な例としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。このポリマーは、溶液中に約1.0%〜約25%(w/w)で存在し得る。
【0040】
特定の実施形態において、ポリマー溶液のために使用される溶媒は、治療剤溶液を形成するために使用される溶媒と同じではないかもしれない。この治療剤は、ポリマー溶液を形成するために使用される溶媒と混和性でなくてもよい。さらに、ポリマー溶液および/または治療剤溶液は、少なくとも1種の任意の成分(例えば、乳化剤、粘度増強剤、色素、顔料、香料、pH改変剤、湿潤剤、可塑剤、酸化防止剤、発泡剤、および両親媒性化合物)を含有し得る。例えば、これらの溶液は、フィルムの多孔度を誘導するために、発泡剤を含有し得る。別の例において、これらの溶液は、フィルムの水拡散を増加させるために、両親媒性化合物を含有し得る。これらの任意の成分は、ポリマー溶液の約10%(w/w)までを占め得る。
【0041】
組織反応性化学物質もまた、本開示の多層状フィルムに添加され得る。適切な組織反応性化学物質としては、例えば、反応性シリコーン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセロアルデヒド、およびジアルデヒド)、ならびにゲニピンが挙げられる。本明細書中で使用される場合、スクシンイミドはまた、スルホスクシンイミド、スクシンイミドエステルおよびスルホスクシンイミドエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(「SNHS」)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド(「ENHS」)、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレートが挙げられる)、およびこれらの組み合わせなどを包含する。
【0042】
用語「治療剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして有利な効果、治療効果、薬理効果、および/または予防効果を提供する、任意の物質または物質混合物を包含する。この剤は、薬理学的効果を提供する薬物であり得る。
【0043】
用語「薬物」とは、治療効果を与え得る任意の剤(例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬(例えば、局所および全身)、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、および酵素が挙げられる。剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0044】
薬物として含有され得る他の治療剤としては、避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0045】
本明細書中に記載されるフィルムに含有され得る適切な剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、ならびに活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0046】
本発明の自己支持型フィルムにおいて使用され得る水溶性薬物のいくつかの特定の非限定的な例としては、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、ジブカイン、シロリムス(sirolimus)、タキソール、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレン、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム、ケタミン、フルラゼパム、アモバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、ブロムワレリル尿素、抱水クロラール、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、プリミドン、エトスクシミド、カルバマゼピン、バルプロエート、アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アミノピリン、アンチピリン、スルピリン、メピリゾール(mepirizole)、チアラミド、ペリキサゾール(perixazole)、ジクロフェナク、アンフェナク(anfenac)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、エプタゾシン、ジメンヒドリネート、ジフェニドール、dl−イソプレナリン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、チオチキセン、フルペンチキソール、フロロピパミド、モペロン、カルピプラミン、クロカプラミン、イミプラミン、デシプラミン、マプロチリン、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、メプロバメート、ヒドロキシジン、サフラジン(saflazine)、アミノ安息香酸エチル、カルバミン酸クロルフェネシン、メトカルバモール、アセチルコリン、ネオスチグミン、アトロピン、スコポラミン、パパベリン、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、ピロヘプチン、プロフェナミン、レボドパ、マザチコール、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、アミノフィリン、コリン、テオフィリン、カフェイン、安息香酸ナトリウム、イソプロテレノール、ドパミン、ドブタミン、プロプラノロール、アルプレノロール、ブプラノロール、チモロール、メトプロロール、プロカインアミド、キニジン、アジマリン、ベラパミル、アプリンジン、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、イソソルビド、エタクリン酸、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、アラセプリル、ヒドララジン、ヘキサメトニウム、クロニジン、ブニトロロール、グアネチジン、ベタニジン、フェニレフリン、メトキサミン、ジルチアゼム、ニコランジル、ニカメタート、ニコチンアルコールタートレート、トラゾリン、ニカルジピン、イフェンプロジル、ピペリジノカルバメート、シネパジド、チアプリド(thiapride)、ジモルホラミン、レバロルファン、ナロキソン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ノルエチステロン、クロミフェン、テトラサイクリン、サリチル酸メチル、イソチペンジル、クロタミトン、サリチル酸、ナイスタチン、エコナゾール、クロコナゾール(cloconazole)、ビタミンB1、シコチアミン、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ニコチン酸、葉酸、ニコチンアミド、パントテン酸カルシウム、パントテノール(pantothenol)、パンテチン、ビオチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、エタンシレート、プロタミン、コルヒチン、アロプリノール、トラザミド、グリミジン、グリブゾール、メトホルミン(metoformin)、ブホルミン、オロチン酸、アザチオプリン、ラクツロース、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、チオ−TEPA、ニムスチン、チオイノシン、フルオロウラシル、テガフール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アクラルビシン、プロカルバジン、シスプラチン、メトトレキサート、ベンジルペニシリン、アモキシシリン、ペニシリン、オキシシリン(oxycillin)、メチシリン、カルベニシリン、アンピシリン、セファレキシン、セファゾリン、エリスロマイシン、キタサマイシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、ミノサイクリン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、フラジオマイシン、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、ネオマイシン、バンコマイシン(vanomycin)、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、スルファニル酸(sulfanilic acid)、シクロセリン、スルフィソミジン、イソニアジド、エタンブトール、アシクロビル、ガンシクロビル(gancyclovir)、ビダバリン(vidabarine)、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、コカイン、ペチジン、フェンタニール、上記薬物のポリマー形態のいずれかおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
この水溶性薬物は、必ずしも、塩形態(すなわち、塩酸テトラサイクリン)に変換される必要はないかもしれない。いくつかの実施形態において、この治療剤は、麻酔薬(例えば、ブピバカイン、リドカイン、およびベンゾカインなど)を含み得る。
【0048】
本明細書中に記載される多層フィルムは、がん(例えば、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんなどのがんであるが、これらに限定されない)を処置する際に使用され得る。がんを処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、シスプラチン、ダウノルビシン、ミトザントロン、およびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中に記載される多層フィルムはまた、術後疼痛を処置する際に使用され得る。術後疼痛は、一般に、鼡径部および腹壁のヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、ならびに関節の修復/交換などの手順に関連し得る。術後疼痛を処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、塩酸リドカイン、塩酸メピバカイン、塩酸ブピバカイン、およびカプサイシンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性薬物についての治療剤含有量は、本明細書中に記載される。
【0050】
特定の実施形態において、多層フィルムは、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、治療剤(例えば、塩酸ブピバカイン、カプサイシン、または5−フルオロウラシル)と組み合わせて備え得る。
【0051】
これらの水溶性治療剤は、任意の適切な溶媒と組み合わせられて、治療剤溶液を形成し得る。いくつかの有用な非限定的な例としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、水、およびこれらの組み合わせなどの有機溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、治療剤のための溶媒は、疎水性ポリマーとの共溶媒ではない。いくつかの実施形態において、この疎水性ポリマーは、治療剤のための溶媒とは非混和性である。
【0052】
この水溶性治療剤は、約1マイクログラム/mL〜約1グラム/mLの範囲の濃度で、溶液を形成し得る。特定の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約1mg/mL〜約500mg/mLの範囲であり得る。なお他の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約10mg/mL〜約300mg/mLの範囲であり得る。溶液によって、この治療用調製物は、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを包含することが意図される。
【0053】
治療剤溶液およびポリマー溶液は、超音波スプレーノズルに通されて、本明細書中に記載される自己支持型フィルムを形成し得る。超音波噴霧器は、溶液の噴霧化をもたらす振動を発生させるために使用され得る、超音波スプレーノズルを備える。この噴霧器の本体は、3つの主要なセクション、すなわち、フロントホーン(噴霧化セクション)、リアホーン(リアセクション)、および1対の円板状の圧電変換器を備えるセクションを備える。これらの3つの要素は、一緒に働いて、ノズル表面に送達される溶液の噴霧化のために必要とされる振動を発生させるための手段を提供する。これらの溶液は、リアホーンの取付具を通って入り、管を通過し、次いで、フロントホーンの中心軸を通る。最後に、これらの溶液は、このノズルの噴霧化表面に達し、ここで噴霧化が起こる。圧電変換器は、外部電源により提供された電気エネルギーを、高周波数の機械的運動、すなわち振動に変換する。この溶液は、基礎となる振動エネルギーを吸収し、そして表面張力波を発生させる。これらの表面張力波の振幅が臨界値を超えると、これらの波がつぶれて、これらの溶液の小さい液滴を排出する。
【0054】
この超音波噴霧器ノズルは、種々の制御器を備え得、これらの制御器は、本明細書中に記載される自己支持型フィルムの特徴を変更するように調節され得る。いくつかの非限定的な例としては、振動周波数、作動電力、溶液流量、ノズル速度、およびノズルの移動距離が挙げられる。本明細書中に記載されるフィルムを形成する際に、この噴霧器ノズルは、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動し得、そして約2ワット〜10ワットの範囲の電力で作動し得る。いくつかの実施形態において、この噴霧器ノズルは、約48kHzの周波数で振動し得、そして約6ワットの電力で作動し得る。
【0055】
特定の実施形態において、これらの超音波スプレーノズルは、移動可能であり得る。このノズルは、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で移動し得る。他の実施形態において、このノズルの速度は、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲であり得る。さらに、これらの可動ノズルの高さは、不活性基材から約30mm〜約60mmの範囲であり得る。
【0056】
また、噴霧器ノズルを通される溶液の流量は、約0.1mL/分〜約5mL/分の範囲内で変動し得る。ある実施形態において、これらの溶液の流量は、約0.5mL/分〜2.0mL/分の範囲内であり得る。この流量は、ポリマー溶液ごとに、そして治療剤溶液ごとに、異なり得る。噴霧器制御器の各々が、通過する異なる溶液の各々について個々に調節され得ることが想定される。
【0057】
本開示の多層フィルムは、不活性基材上にスプレーされ得、この不活性基材は、製造のみのために利用される剥離ライナー基材を備え得る。この不活性基材は、包装前にフィルムから分離され得るか、または逆に、この基材は、フィルムと一緒に包装され得、そして移植前に除去され得る。他の実施形態において、メッシュが不活性基材上に配置され得、そして多層フィルムがメッシュ上に直接スプレーされて、多層複合フィルムを作製し得る。他の実施形態において、この不活性基材は、移植可能な治療用多層複合フィルムの一部である。
【0058】
なお代替の実施形態において、このメッシュは、フィルムの裏打ち(例えば、コラーゲン)を備え得る。多層フィルムは、コラーゲンフィルムの裏打ち上に直接スプレーされ得、これは次いで、メッシュと合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。例えば、多層フィルムを含むポリマーフィルムは、本明細書中以下で議論される方法を使用して、メッシュと合わせられ得る。
【0059】
フィルムは、周囲温度(25℃)または高温で、周囲湿度または高湿度で、乾燥され得る。フィルムの厚さ/層の数に依存して、これらのフィルムは、約1分間〜約24時間乾燥され得る。
【0060】
本開示の多層フィルムは、本明細書中に記載されるメッシュと、接着剤、膠、溶媒溶接、スポット溶接、溶媒キャスティング、溶融プレス、および熱ステーキングなどが挙げられるがこれらに限定されない方法を使用して、合わせられ得る。他の実施形態において、この多層フィルムは、メッシュ上に直接形成され得る。
【0061】
ここで図1を参照すると、図1は、疎水性ポリマーと治療剤とが1つの層に含まれている、自己支持型フィルム10を図示する。フィルム10は自己支持型であるが、フィルム10は、移植前に断裂することなく取り扱われ得、そして移植されると種々の量の力に調節され得る程度まで、可撓性を維持する。
【0062】
図2A、図2B、図および2Cは、自己支持型多層フィルムの側面図を図示する。例えば、図2Aにおいて、第一の層20および第二の層22を備えるフィルム10Aが示されている。第一の層20は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し、そして第二の層22は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。いくつかの実施形態において、この治療剤および/またはこの疎水性ポリマーは、第一の層20または第二の層22のいずれかにおいて合わせられ得る。
【0063】
図2Bは、第一の層24、第二の層26、および第三の層28を備える三層構造体12を示し、治療剤が2つのポリマー層の間に配置されている、多層フィルム10Bを示す。第一の層24は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し得、そして第二の層26は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有し得る。第三の層28は、第一の層24に含有されるものと同じ疎水性ポリマーを含有しても、異なる疎水性ポリマーを含有してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、第二の層26は、治療剤(例えば、ブピバカイン)を含有し得、そして第一の層および第三の層は、同じ疎水性ポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得る。別の例において、3つ全ての層が同じポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得、そして第二の層26は、水溶性が高い治療剤(すなわち、ブピバカイン)も含有し得る。
【0064】
図2Cは、互いに重ねられて多層フィルム10Cを形成している、2つの三層構造体12Aおよび12B(図2Bに示されるような)を図示する。第一の三層構造体12Aは、第一の層24A、第二の層26A、および第三の層28Aを備え、治療剤が、2つのポリマー層(第一の層24Aおよび第三の層28A)の間の第二の層26A内に配置されている。第二の三層構造体12Bは、第四の層24B、第五の層26B、および第六の層28Bを備え、治療剤が、2つのポリマー層(第四の層24Aおよび第六の層28A)の間の第五の層26B内に配置されている。図2Bにおいては、サンドイッチ様の構造として示されているが、三層構造体12Aおよび12Bは、本明細書中に記載されるポリマー材料と治療剤との任意の考えられる組み合わせを備え得る。
【0065】
積み重ねられる際に、フィルム10Cは、機械的特性を損なうことなく、増加した治療剤の含有量を含み得る。2つより多い三層構造体12が互いに積み重ねられて、自己支持型フィルムを形成し得ることが想定される。ある実施形態において、2〜約25の三層構造体が互いに積み重ねられて、自己支持型フィルムを形成し得る。
【0066】
また、多層フィルムにおける個々の層の各々の厚さは、このフィルムからの治療剤の放出を制御し得る。例えば、ポリマー層のみの厚さを増加させると、移植後に治療剤が周囲組織内に放出され得る速度が低下し得る。逆に、ポリマー層のみの厚さを減少させると、治療剤が放出され得る速度が増大し得る。
【0067】
図3A〜図3Fは、自己支持型フィルム10のさらなる実施形態または構成を示す。これらの実施形態は、円形の構成の自己支持型フィルム10D、楕円形の構成の自己支持型フィルム10E、U字型に屈曲した構成の自己支持型フィルム10F、円形開口部分を有する正方形の構成の自己支持型フィルム10G、波型の構成の自己支持型フィルム10H、および不規則な形状の構成の自己支持型フィルム10Iを含む。自己支持型フィルム10D〜10Iの構成の各々は、異なる型の構成を表わす。図示される構成は、自己支持型フィルム10について可能な構成を網羅するわけではない。自己支持型フィルム10の具体的な形状または構成は、望ましい場合に変更され得ること、および図1および図3A〜図3Fに図示される形状および構成は、可能な形状および構成のうちの少数のみの例示であることを、当業者は理解する。
【0068】
図4A〜図4Bに示されるように、多層フィルム100は、第一の層40、第三の層44、およびこの第一の層とこの第三の層との間に配置された第二の層42を備える三層構造体14を示す。この第二の層は、水溶性治療剤および疎水性ポリマーを含有し、一方で、第一の層および第三の層の各々は、疎水性ポリマーを含有する。これらの疎水性ポリマーは、各層において同じであっても異なっていてもよい。しかし、図2A〜図2Cに示される複数の層とは異なり、これらの3つの層40、42、および44の各々の輪郭(topography)は、このフィルムの長さにわたって異なり得る。これらのフィルムは、1つの超音波噴霧器ノズルを使用して形成され得るので、これらのフィルム層は、複数の液滴から形成され得、これらの液滴は、いくつかの実施形態において、不活性基材上に、任意の無作為な量で堆積させられ得る。
【0069】
図4Bおよび図4Cは、図4Aと類似の実施形態であることが理解されるので、同じである全ての数字および説明は、プライム印を用いて表わされ、そしてその違いが以下に記載される。この多層フィルムは、三層構造体14’を備えるが、第二の中間層42’は、このフィルムの外縁部120’までは広がらない。むしろ、第一の層40’および第三の層44’のうちの少なくとも一方が、外縁部120’に沿って位置して第二の層42’を覆う。第二の層(治療剤を含有する)から外縁部120’までの距離を制御することによって、治療剤の放出が変更/制御され得る。
【0070】
特定の実施形態において、図4Bに示されるように、第一の層40’および第三の層44’のうちの少なくとも一方が、外縁部120’の全長に沿って第二の層42’を覆い得る。他の実施形態において、図4Cに示されるように、第一の層40”および第三の層44”のうちの少なくとも一方が、外縁部120”の長さの断続的な部分のみに沿って第二の層42”を覆って、外縁部120”に沿って、第二の層42”が覆われていない断続的な部分を作製し得る。
【0071】
1つの不連続層を有する三層フィルムの代替の実施形態が、図5に図示されている。多層フィルム200は、第一の連続層210、第三の連続層230、およびこれらの間に配置された第二の不連続層220を備える。不連続層は、スクリーンまたはテンプレートを使用することによって、あるいは予めプログラムされたスプレーパターンを使用することによって、作製され得る。この不連続層は第二の層として図示されているが、この不連続層は、この多層フィルムのいずれの層を構成してもよいことが理解されるべきである。不連続層220は、同じかまたは異なるポリマーおよび/または治療剤を含有し得る。例えば、不連続層220は、220Aを構成する第一のコポリマーおよび第一の治療剤を含み得、同時に第二のコポリマーおよび第二の異なる治療剤が、220Bを構成し得る。
【0072】
特定の実施形態において、メッシュが、本開示の多層フィルムと組み合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。このメッシュは、第一の表面および第二の表面を備える。このメッシュの第一の表面または第二の表面のうちの少なくとも一方は、この多層フィルムの第一の層または第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置され得る。代替の実施形態において、このメッシュは、この多層フィルムの様々な層の間に配置され得る。例えば、このメッシュは、この多層フィルムの第一の層と第二の層との間に配置され得る。
【0073】
図6は、本開示に従う多層フィルム複合材を図示する。多層複合材300は、本開示による多層フィルムを有する、コラーゲンで裏打ちされたメッシュ310(例えば、ParietexTM複合メッシュ(PCO))を備える。メッシュ構造体310Bは、その第一の表面上に、コラーゲンフィルム310Aを備える。PCOメッシュ上に配置された多層フィルムは、第一の不連続層320、第二の連続層330および第三の連続層340を備える。図示されるように、第一の層320は、コラーゲンフィルム上に直接、メッシュ310Bの繊維の間に配置される。不連続層320は、上記方法を使用して作製され得る。第二の層330は、メッシュ310Bおよび第一の層320の上に堆積させられる。引き続いて、第三の層340が、第二の層330上に堆積させられる。
【0074】
図7は、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ400をスプレーコーティングするプロセスを概略的に図示する。メッシュ400は、メッシュ400の第一の表面から突出するグリップ部材410を備える。これらのグリップ部材は、メッシュ400の長手方向軸A−Aに対してほぼ垂直に延びる。メッシュ400はまた、メッシュ400の第二の表面上に配置された、コラーゲンの裏打ち420を備える。図示されるように、噴霧器600は、溶液500をコラーゲンの裏打ちの表面上に分配する。噴霧器600は、多層フィルムが作製されるまで、溶液500を分配し続け得る。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mlのブピバカインを含有する。
【0076】
両方の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして少なくとも1つの超音波スプレーノズルに通する。このノズルの先端で噴霧化されるまで、これらの2つの溶液を互いから離して維持する。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通す。
【0077】
これらの噴霧化された溶液は液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から不活性なシリコーンのシート上に落下する際に、混合される。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0078】
このシリコーンシート上に堆積させた液滴を乾燥させ、次いで、このシリコーンシートから分離する。次いで、これらの自己支持型フィルムを滅菌して包装する。
【0079】
(実施例2)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%のポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有する。
【0080】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通す。これらのノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0081】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴をシリコーンシート上に堆積させて、第一のポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御し得る。
【0082】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合される。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。
【0083】
次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させながら、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通す。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてシリコーンシート上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成する。
【0084】
次いで、この三層構造体を高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体を接合させる。引き続いて、このフィルムを、接着剤を使用してメッシュと合わせて、多層複合材を作製する。次いで、この多層複合材を滅菌して包装する。
【0085】
(実施例3)
ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する第一のポリマーフィルムおよび第二のポリマーフィルムを形成する。この第一のポリマーフィルムを、超音波噴霧器ノズルの下で、シリコーンシート上に配置する。
【0086】
エタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有する治療剤溶液を形成する。これらの治療剤溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波噴霧器ノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、予め形成された第一のポリマーフィルム上に堆積させて、中間治療剤層を形成する。
【0087】
この第二のポリマーフィルムをこの中間治療剤層上に配置して、三層構造体を形成する。この三層構造体に結合剤を噴霧して、これらの3つの層を一緒に結合させる。次いで、この三層構造体を熱および/または圧力に曝露して、この結合プロセスを完了する。
【0088】
(実施例4)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%w/vのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、エタノールに溶解した50mg/mLのブピバカインを含有する。
【0089】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1ml/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0090】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、コラーゲンフィルム上に堆積させて、第一のポリマー層を作製する。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御し得る。
【0091】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から、コラーゲンフィルム上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合される。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。
【0092】
次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通す。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンフィルム上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成する。
【0093】
次いで、この三層構造体をメッシュと合わせ、引き続いて、高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体をこのメッシュと接合させる。次いで、この多層複合材を滅菌して包装する。
【0094】
(実施例5)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(7:3の比)に溶解した30mg/mLのブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0095】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0096】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、コラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、20回または30回のいずれかのパスを、第一の外側ポリマー層として含む。
【0097】
次いで、第二の治療剤溶液をスプレーノズルに通して、液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。この第二の層は、約125回のパスを含んだ。
【0098】
次いで、第一のポリマー溶液をスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、20回または30回のパスを含んだ。この三層構造体は、第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有するように作製され、約24mg/mLの治療薬物含有量を有する。
【0099】
次いで、これらのフィルムをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図11に示す。
【0100】
(実施例6)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、50mg/mLの塩酸ブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0101】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0102】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として、10回、20回、30回、または60回のパスを含む。
【0103】
マスキングテンプレートを第一の外側ポリマー層を覆うように配置する。次いで、第二の治療剤およびポリマーの溶液を、スプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成する。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0104】
このマスキングテンプレートを除去する。次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、10回、20回、30回、または60回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製する。
【0105】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図12に示す。
【0106】
(実施例7)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、30mg/mLのブピバカインおよび50mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0107】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0108】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として30回のパスを含んだ。
【0109】
次いで、この第二の治療剤溶液をこれらのスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成する。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0110】
次いで、第一のポリマー溶液をこのスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成して、コラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、30回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の中間層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製する。図10に図示されるフィルム(PS33−4およびPS 36−5)は、それぞれ17.8mg/cm2および17.7mg/cm2の塩酸ブピバカインを含有するように処方されている。
【0111】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図10に示す。
【0112】
(実施例8)
実施例1に記載されるように作製したフィルムのシートをイヌの骨の形状の構造に切断した。次いで、このイヌの骨型の構造体を個々に、図13のデータに従って、TA XT−Plus Analyzerの張力負荷クランプに固定した。このクランプは、このイヌの骨型の構造体に一定の力を加え、そしてこのイヌの骨型の構造体の破壊点まで、この力を記録した。次いで、そのヤング率を、このイヌの骨型の構造体の寸法に基づいて、応力とひずみとの関係を使用することによって計算した。結果を図14に示す。
【0113】
種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内での例示であると解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年10月19日に出願された米国仮特許出願番号61/394,393の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを記載し、そしてより特定すると、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを記載する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
移植可能な医療デバイスの使用による治療剤の送達は、広範な種々の様式で記載されている。このような治療剤の送達の既存の方法は、主として、水溶性薬物およびポリマーを使用して、医療デバイスの表面上に配置される薄い表面コーティングを形成することに焦点を当てる。これらの方法は、制限された治療剤含有量(therapeutic payload)を提供する。
【0004】
さらに、水溶性が高い薬物は、疎水性または水に不溶性の薬物キャリア(すなわち、疎水性ポリマー)を用いると特に有用である有機系において、限られた溶解度を与え得る点で、制御放出のために処方することが困難であり得る。水溶性が高い薬物の制限された溶解度は、さらに、移植可能なデバイスへの薬物の乏しいカプセル化効率および制限された治療剤含有量をもたらし得る。このような親水性薬物は、徐放のために充分な水障壁を必要とする。現行の系は、薬物含有量および徐放の観点(治療的利益を与えることを含む)から、正当性を疑われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療デバイスの支持を必要とせず、増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびに
フィルムを形成する工程、
を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
(項目2)
上記第一の溶液が、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記脂肪族ポリエステルが、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバラクトン、α,α−ジメチルプロピオラクトン、エチルカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記第一の溶液が、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目5)
上記第一の溶液が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩素化溶媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目6)
上記第二の溶液が、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、線維症剤、抗有糸分裂薬、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性の銀塩、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、サイトカイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目7)
上記第二の溶液が、塩酸ブピバカイン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、カプサイシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記第二の溶液が、メタノール、エタノール、水、生理食塩水、イソプロパノール、酢酸およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記スプレーノズルが、少なくとも1つの超音波スプレーノズルを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記第一の溶液および上記第二の溶液をスプレーノズルに通す工程が、約0.5mL/分〜約2mL/分の範囲の流量をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記スプレーノズルが、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12)
上記スプレーノズルが、約48kHzの周波数で振動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目13)
上記スプレーノズルが、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目14)
上記スプレーノズルが、約6ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15)
上記スプレーノズルが、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目16)
上記スプレーノズルが、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
本開示は、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の治療剤を含有する、治療剤の送達のための自己支持型フィルムに関する。自己支持型フィルムを形成する方法もまた開示される。
【0008】
(要旨)
従って、本開示は、治療剤の送達のための自己支持型フィルムを形成する方法を記載する。例えば、自己支持型フィルムを形成するための1つの方法は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程、ならびにこの第一の溶液およびこの第二の溶液をスプレーノズルに通して、第一の溶液の第一の液滴および第二の溶液の第二の液滴を生成する工程を包含し得る。この第一の溶液およびこの第二の溶液は、不活性基材に堆積させられ得、そして乾燥させられて、単層状または多層状の自己支持型フィルムを形成し得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される自己支持型フィルムを形成する方法は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程、ならびにこの第一の溶液を第一のスプレーノズルに通して第一の溶液の第一の液滴を生成する工程を包含し得る。これらの第一の液滴は、不活性基材に堆積させられて、第一の層を形成し得る。次いで、この第二の溶液が第二のスプレーノズルに通されて第二の溶液の第二の液滴を生成し得、そしてこれらの第二の液滴をこの第一の層に堆積させて、第二の層を形成し得る。この第一の層およびこの第二の層は、乾燥させられて、多層状の自己支持型フィルムを形成し得る。
【0010】
なお他の実施形態において、任意の数のさらなる層が互いの上部に配置されて、本明細書中に記載される自己支持型多層フィルムを形成し得る。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、医療デバイスの支持を必要とせず、増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のための自己支持型フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本開示に記載される1つの実施形態による、自己支持型フィルムとして実現された障壁層の模式図である。
【図2】図2A、図2B、および図2Cは、本開示に記載される実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。
【図3】図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、および図3Fは、本開示に記載される他の実施形態に従う自己支持型フィルムの模式図である。
【図4】図4Aは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。図4Bは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。図4Cは、本開示のなお別の実施形態に従う自己支持型フィルムの断面図である。
【図5】図5は、本開示に従う自己支持型フィルムの断面図であり、このフィルムは、不連続層を有する。
【図6】図6は、本開示に従う自己支持型フィルム複合材の断面図である。
【図7】図7は、本開示による自己支持型フィルムがどのように形成されるかの1つの例を図示する断面図である。
【図8】図8は、浸漬コーティングによる医療デバイスへの治療剤含有量に対する比較を図示するグラフである。
【図9】図9は、浸漬コーティングおよびスプレーコーティングによる医療デバイスへの治療剤含有量に対する比較を図示するグラフである。
【図10】図10は、多層型構成の医療デバイスおよびポーチ構成の医療デバイスからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図11】図11は、様々な厚さのフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図12】図12は、噴霧器の様々な液だめ(oasis)から形成されたフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図13】図13は、実施例1に記載されるように形成されたフィルムの強度を試験するために使用されたパラメータを図示するグラフである。
【図14】図14は、実施例1に記載されるように形成され、実施例8に記載されるように試験されたフィルムの強度の結果を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本開示は、治療剤の送達のために適切な自己支持型フィルムを記載する。この移植可能なフィルムは、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。これらのフィルムは、高い治療剤含有量の治療剤を含有し、そして単層状であっても多層状であってもよい。
【0015】
自己支持型であることにより、本明細書中に記載されるフィルムは、予め決定された構成を維持するために充分な引張り強度を示す。例えば、ある実施形態において、これらのフィルムは、移植前、移植中、または移植後に、このフィルムがほぼ平坦な構成を維持するために充分な機械的強度を示す、ほぼ平坦な構成を形成し得る。これらの自己支持型フィルムは、支持のためにも、所定の構成を維持するためにも、さらなる基材を必要としないが、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるフィルムはまた、任意の移植可能な医療デバイスと組み合わせられ得ることが想定される。
【0016】
いくつかの実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約500kPa〜約100MPaの範囲のヤング率を示し得る。他の実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約1MPa〜約50MPaの範囲のヤング率を示し得る。特定の実施形態において、これらの自己支持型フィルムは、約10MPa〜約15MPaの範囲のヤング率を示し得る。
【0017】
これらのフィルムの厚さは、このフィルム中の層の数、および/またはスプレープロセス中の「パス」の数(以下に記載される)に依存して変動し得る。しかし、本明細書中に記載されるフィルムの厚さは、平均して約0.1μm〜約3000μmであり得る。いくつかの実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約1.0μm〜約1000μmであり得る。なお他の実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約10μm〜約500μmであり得る。フィルムの厚さは、多層フィルムの機械的強度などのパラメータに影響を与え得る。
【0018】
このフィルムの厚さは、第一の溶液および第二の溶液の塗布の回数、第一の溶液および第二の溶液をスプレーする時間の長さ/速度、ポリマー溶液の組成、薬物溶液の組成、流量、ならびに粘度改質剤などの添加剤の使用などの要因によって、制御され得る。
【0019】
本明細書中に記載されるフィルムはまた、特に、等しい厚さの公知の他のフィルムと比較して高い、少なくとも1種の治療剤からなる治療剤含有量を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、この治療剤は、約800μg/cm2〜約50mg/cm2で存在し得る。なお他の実施形態において、この治療剤は、約1mg/cm2〜約25mg/cm2で存在し得る。より具体的には、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシン、および塩酸ブピバカインの治療剤含有量は、少なくとも約800μg/cm2であり、約50mg/cm2までである。他の実施形態において、異なる治療剤が、異なる量で存在し得る。
【0020】
溶媒キャスティングにより形成されたフィルムとは異なり、本明細書中に記載される自己支持型フィルムは、共通の溶媒中での、水溶性の剤および/または疎水性ポリマーの溶解度によって制限されない。むしろ、これらの自己支持型フィルムのポリマーおよび剤は、共通の溶媒を共有しないかもしれず、従って、この水溶性治療剤は、疎水性ポリマーによる溶解度に制限されない。例えば、これらの自己支持型フィルムは、少なくとも2つの溶媒を使用して形成され得、ここでこの疎水性ポリマーは、第一の溶媒中で第一の溶液を形成し、そしてこの水溶性治療剤は、第二の溶媒中で第二の溶液を形成する。
【0021】
さらに、医療デバイス(例えば、メッシュ)上にフィルムをスプレーすることは、他の従来の方法(例えば、浸漬コーティング)と比較して、治療剤の増加された含有量を提供すると考えられる。図8に実証されるように、溶液中(水中)の塩酸ブピバカイン(ブピバカインHCl)を浸漬コーティングする際の飽和限界および含有量限界は、5%w/v(重量/体積)であるのに対して、ブピバカインHCl溶液(MeOH中)の浸漬コーティングでは、12%w/vである。
【0022】
より具体的には、図8は、ポリマーフィルムなしのポリエステルメッシュ(ParietexTMモノフィラメントメッシュ)についての含有量限界を図示する。
【0023】
図9は、メッシュをブピバカインHClで浸漬コーティング方法を利用してコーティングすることを、実施例5に記載されるように超音波スプレーされたフィルム(PS35−1、PS30−4)と比較して、図8に提示されるデータを図示する。浸漬コーティングされたメッシュAQ(水性、例えば水)およびALC(アルコール、例えばMeOH)についての含有量限界は、1mg/cm2を超えない。逆に、本明細書中に記載されるように超音波スプレーを使用して作製されたフィルムは、少なくとも約25mg/cm2までの含有量に構成され得る。メッシュ上にフィルムを超音波スプレーすることにより生じる薬物含有量は、メッシュを浸漬コーティングすることによる薬物含有量とは異なり、300mgを超える臨床目標含有量に達する。
【0024】
フィルムが高い治療剤含有量の治療剤を含有する能力は、これらの自己支持型フィルムが形成され得る独特の様式の結果であり得る。例えば、本明細書中に記載されるような自己支持型フィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および治療剤を含有する第二の溶液を、超音波スプレーノズルに通して液滴を形成することにより、製造され得る。これらの液滴は、不活性基材(例えば、シリコーンシート)に向かって落下する間、または基材上に堆積する間に混合し得る。乾燥後、そのフィルムは、この不活性基材から分離され得る。
【0025】
本開示のフィルムは、連続フィルムまたは不連続フィルムを備え得る。例えば、図2および図4Aに示されるような連続フィルムは、単一の分断されない層を備える。別の実施形態において、フィルム、またはフィルムの層は、図5に図示されるように、不連続であり得る(後述)。多層フィルムの個々の層は、連続であっても不連続であってもよい。
【0026】
さらに、このフィルムの構築は、薬物の放出および拡散などのパラメータを制御し得る。いくつかの実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部まで広がる(図4Aを参照のこと)。なお代替の実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部までは広がらず、本明細書中で、ポーチ構成と称される(図4Bを参照のこと)。放出速度は、その治療剤が多層フィルムの縁部に存在するか否かに依存して、変動し得る。図10は、ブピバカインHCl放出がポーチ構成を利用して遅くされている、1つの例示的実施形態を図示する。多層型の構成は、約17.7mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されており、そしてこのポーチ構成は、約17.8mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されている。本明細書中に記載される実施例7は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。以下のデータがより長い期間にわたって抽出されるならば、これらの2つの構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0027】
フィルムの厚さはまた、薬物の放出および拡散において、役割を果たし得る。例えば、フィルムの厚さが増加するにつれて、治療剤の放出速度が低下するか、または経時的に遅くなることが示されている。
【0028】
図11において作製されたフィルムが、実施例5により詳細に記載されている。より厚いフィルム(例えば、パスの回数が増加している)は、より薄いフィルムと比較して、遅い放出速度を有する。上記の両方のフィルムは、約24mg/cm2のブピバカインHClを含有するように処方されている。上記データがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0029】
同様に、縁部が閉じたサンプルについては、フィルムの厚さを増加させ、そして/または1つの層あたりのパスの回数を変化させることによって、治療剤の放出速度が変化する。以下の図12は、各外側層におけるパスの回数を増加させることによって、放出プロフィールおよび放出速度がどのように変化するかを図示する。この放出速度は、外側層のパスの回数が増加するにつれて、遅くなる。以下に示されるサンプルは、例示的な実施形態であり、そして放出速度および望まれる全放出量に依存して、これらのパラメータは、全放出量および放出速度を変化させるために変更され得る。以下のデータがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。本明細書中に記載される実施例6は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、これらのフィルムは、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有する1つの層を備える。多層状フィルムは、親水性ポリマーおよび治療剤を含有するフィルムの数個の層を積み重ねるかまたは合わせることによって、作製され得る。他の実施形態において、これらの多層状フィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の層、および治療剤を含有する第二の層を備える。一方向薬物送達を提供するために、治療剤の露出した層を有することが有用であり得る。
【0031】
他の実施形態において、これらのフィルムは、三層構造体を備え、ここで治療剤を含有する第三の層が、ある疎水性ポリマーを含有する第一の層と、同じかまたは異なる疎水性ポリマーを含有する第二の層との間に配置される。この第三の層は、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有し得、一方で、この第一の層およびこの第二の層は、疎水性ポリマーのみを含有し得る。例えば、この第一の層およびこの第二の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有し得、一方で、この第三の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、塩酸ブピバカインと組み合わせて含有し得る。
【0032】
この三層構造体は、サンドイッチ型構造体と同様に、他の一層構造体、二層構造体、および/または三層構造体を備える他のフィルムと組み合わせられ得る。先に議論されたように、本明細書中に開示される多層フィルムのうちの任意のものが、メッシュと組み合わせられ得る。複数の層は、意図される用途および薬物放出プロフィールに依存して、類似のポリマーを利用しても異なるポリマーを利用してもよいことが留意されるべきである。さらに、より厚い層およびより薄い層が、プロセス変動によって作製され得る。
【0033】
これらのフィルムは、移植に適しており、そして考慮されるのに充分な機械的強度を示し得る、任意の疎水性ポリマーを含有し得る。特定の層はまた、親水性ポリマーを含有し得る。本開示に従って利用され得る適切な吸収性ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、以下の材料が挙げられるか、または以下の材料のうちの少なくとも1つから誘導され得る:脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミン基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(フマル酸プロピレン);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0034】
より具体的には、本発明の目的で、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明に従って利用され得る他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0036】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0037】
特定の実施形態において、これらの親水性ポリマーは、第一の層、第二の層、および第三の層を含み得る。10重量%のグリコリドと90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが、第一の層、第二の層、および第三の層を形成するために利用され得る。
【0038】
ある実施形態において、これらの疎水性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、およびε−カプロラクトンを含む、ホモポリマーまたはコポリマーを含有し得る。例えば、本明細書中に記載される治療剤は、ラクチドとグリコリド、またはグリコリドとε−カプロラクトンのコポリマー(すなわち、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー)と組み合わせられ得る。グリコリドの量を増加させると、フィルムの分解速度が増加し得る。一方で、ラクチドおよび/またはカプロラクトンの量を増加させると、フィルムの分解/吸収プロフィールが延長され得る。例えば、ラクチドに富むコポリマー(すなわち、約50%より多いラクチド)は、特定のポリマー(例えば、グリコリド)の溶解度を増強するために、特に有用であり得る。特定の実施形態において、10重量%のグリコリドと90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが利用され得る。
【0039】
疎水性ポリマーは、ポリマー溶液(懸濁物、エマルジョン、および分散物などが挙げられる)を形成し得、その後、超音波噴霧器に通され得る。ポリマー溶液を形成するために適切な溶媒のいくつかの非限定的な例としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。このポリマーは、溶液中に約1.0%〜約25%(w/w)で存在し得る。
【0040】
特定の実施形態において、ポリマー溶液のために使用される溶媒は、治療剤溶液を形成するために使用される溶媒と同じではないかもしれない。この治療剤は、ポリマー溶液を形成するために使用される溶媒と混和性でなくてもよい。さらに、ポリマー溶液および/または治療剤溶液は、少なくとも1種の任意の成分(例えば、乳化剤、粘度増強剤、色素、顔料、香料、pH改変剤、湿潤剤、可塑剤、酸化防止剤、発泡剤、および両親媒性化合物)を含有し得る。例えば、これらの溶液は、フィルムの多孔度を誘導するために、発泡剤を含有し得る。別の例において、これらの溶液は、フィルムの水拡散を増加させるために、両親媒性化合物を含有し得る。これらの任意の成分は、ポリマー溶液の約10%(w/w)までを占め得る。
【0041】
組織反応性化学物質もまた、本開示の多層状フィルムに添加され得る。適切な組織反応性化学物質としては、例えば、反応性シリコーン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセロアルデヒド、およびジアルデヒド)、ならびにゲニピンが挙げられる。本明細書中で使用される場合、スクシンイミドはまた、スルホスクシンイミド、スクシンイミドエステルおよびスルホスクシンイミドエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(「SNHS」)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド(「ENHS」)、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレートが挙げられる)、およびこれらの組み合わせなどを包含する。
【0042】
用語「治療剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして有利な効果、治療効果、薬理効果、および/または予防効果を提供する、任意の物質または物質混合物を包含する。この剤は、薬理学的効果を提供する薬物であり得る。
【0043】
用語「薬物」とは、治療効果を与え得る任意の剤(例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬(例えば、局所および全身)、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、および酵素が挙げられる。剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0044】
薬物として含有され得る他の治療剤としては、避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0045】
本明細書中に記載されるフィルムに含有され得る適切な剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、ならびに活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0046】
本発明の自己支持型フィルムにおいて使用され得る水溶性薬物のいくつかの特定の非限定的な例としては、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、ジブカイン、シロリムス(sirolimus)、タキソール、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレン、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム、ケタミン、フルラゼパム、アモバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、ブロムワレリル尿素、抱水クロラール、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、プリミドン、エトスクシミド、カルバマゼピン、バルプロエート、アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アミノピリン、アンチピリン、スルピリン、メピリゾール(mepirizole)、チアラミド、ペリキサゾール(perixazole)、ジクロフェナク、アンフェナク(anfenac)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、エプタゾシン、ジメンヒドリネート、ジフェニドール、dl−イソプレナリン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、チオチキセン、フルペンチキソール、フロロピパミド、モペロン、カルピプラミン、クロカプラミン、イミプラミン、デシプラミン、マプロチリン、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、メプロバメート、ヒドロキシジン、サフラジン(saflazine)、アミノ安息香酸エチル、カルバミン酸クロルフェネシン、メトカルバモール、アセチルコリン、ネオスチグミン、アトロピン、スコポラミン、パパベリン、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、ピロヘプチン、プロフェナミン、レボドパ、マザチコール、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、アミノフィリン、コリン、テオフィリン、カフェイン、安息香酸ナトリウム、イソプロテレノール、ドパミン、ドブタミン、プロプラノロール、アルプレノロール、ブプラノロール、チモロール、メトプロロール、プロカインアミド、キニジン、アジマリン、ベラパミル、アプリンジン、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、イソソルビド、エタクリン酸、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、アラセプリル、ヒドララジン、ヘキサメトニウム、クロニジン、ブニトロロール、グアネチジン、ベタニジン、フェニレフリン、メトキサミン、ジルチアゼム、ニコランジル、ニカメタート、ニコチンアルコールタートレート、トラゾリン、ニカルジピン、イフェンプロジル、ピペリジノカルバメート、シネパジド、チアプリド(thiapride)、ジモルホラミン、レバロルファン、ナロキソン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ノルエチステロン、クロミフェン、テトラサイクリン、サリチル酸メチル、イソチペンジル、クロタミトン、サリチル酸、ナイスタチン、エコナゾール、クロコナゾール(cloconazole)、ビタミンB1、シコチアミン、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ニコチン酸、葉酸、ニコチンアミド、パントテン酸カルシウム、パントテノール(pantothenol)、パンテチン、ビオチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、エタンシレート、プロタミン、コルヒチン、アロプリノール、トラザミド、グリミジン、グリブゾール、メトホルミン(metoformin)、ブホルミン、オロチン酸、アザチオプリン、ラクツロース、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、チオ−TEPA、ニムスチン、チオイノシン、フルオロウラシル、テガフール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アクラルビシン、プロカルバジン、シスプラチン、メトトレキサート、ベンジルペニシリン、アモキシシリン、ペニシリン、オキシシリン(oxycillin)、メチシリン、カルベニシリン、アンピシリン、セファレキシン、セファゾリン、エリスロマイシン、キタサマイシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、ミノサイクリン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、フラジオマイシン、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、ネオマイシン、バンコマイシン(vanomycin)、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、スルファニル酸(sulfanilic acid)、シクロセリン、スルフィソミジン、イソニアジド、エタンブトール、アシクロビル、ガンシクロビル(gancyclovir)、ビダバリン(vidabarine)、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、コカイン、ペチジン、フェンタニール、上記薬物のポリマー形態のいずれかおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
この水溶性薬物は、必ずしも、塩形態(すなわち、塩酸テトラサイクリン)に変換される必要はないかもしれない。いくつかの実施形態において、この治療剤は、麻酔薬(例えば、ブピバカイン、リドカイン、およびベンゾカインなど)を含み得る。
【0048】
本明細書中に記載される多層フィルムは、がん(例えば、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんなどのがんであるが、これらに限定されない)を処置する際に使用され得る。がんを処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、シスプラチン、ダウノルビシン、ミトザントロン、およびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中に記載される多層フィルムはまた、術後疼痛を処置する際に使用され得る。術後疼痛は、一般に、鼡径部および腹壁のヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、ならびに関節の修復/交換などの手順に関連し得る。術後疼痛を処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、塩酸リドカイン、塩酸メピバカイン、塩酸ブピバカイン、およびカプサイシンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性薬物についての治療剤含有量は、本明細書中に記載される。
【0050】
特定の実施形態において、多層フィルムは、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、治療剤(例えば、塩酸ブピバカイン、カプサイシン、または5−フルオロウラシル)と組み合わせて備え得る。
【0051】
これらの水溶性治療剤は、任意の適切な溶媒と組み合わせられて、治療剤溶液を形成し得る。いくつかの有用な非限定的な例としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、水、およびこれらの組み合わせなどの有機溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、治療剤のための溶媒は、疎水性ポリマーとの共溶媒ではない。いくつかの実施形態において、この疎水性ポリマーは、治療剤のための溶媒とは非混和性である。
【0052】
この水溶性治療剤は、約1マイクログラム/mL〜約1グラム/mLの範囲の濃度で、溶液を形成し得る。特定の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約1mg/mL〜約500mg/mLの範囲であり得る。なお他の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約10mg/mL〜約300mg/mLの範囲であり得る。溶液によって、この治療用調製物は、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを包含することが意図される。
【0053】
治療剤溶液およびポリマー溶液は、超音波スプレーノズルに通されて、本明細書中に記載される自己支持型フィルムを形成し得る。超音波噴霧器は、溶液の噴霧化をもたらす振動を発生させるために使用され得る、超音波スプレーノズルを備える。この噴霧器の本体は、3つの主要なセクション、すなわち、フロントホーン(噴霧化セクション)、リアホーン(リアセクション)、および1対の円板状の圧電変換器を備えるセクションを備える。これらの3つの要素は、一緒に働いて、ノズル表面に送達される溶液の噴霧化のために必要とされる振動を発生させるための手段を提供する。これらの溶液は、リアホーンの取付具を通って入り、管を通過し、次いで、フロントホーンの中心軸を通る。最後に、これらの溶液は、このノズルの噴霧化表面に達し、ここで噴霧化が起こる。圧電変換器は、外部電源により提供された電気エネルギーを、高周波数の機械的運動、すなわち振動に変換する。この溶液は、基礎となる振動エネルギーを吸収し、そして表面張力波を発生させる。これらの表面張力波の振幅が臨界値を超えると、これらの波がつぶれて、これらの溶液の小さい液滴を排出する。
【0054】
この超音波噴霧器ノズルは、種々の制御器を備え得、これらの制御器は、本明細書中に記載される自己支持型フィルムの特徴を変更するように調節され得る。いくつかの非限定的な例としては、振動周波数、作動電力、溶液流量、ノズル速度、およびノズルの移動距離が挙げられる。本明細書中に記載されるフィルムを形成する際に、この噴霧器ノズルは、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動し得、そして約2ワット〜10ワットの範囲の電力で作動し得る。いくつかの実施形態において、この噴霧器ノズルは、約48kHzの周波数で振動し得、そして約6ワットの電力で作動し得る。
【0055】
特定の実施形態において、これらの超音波スプレーノズルは、移動可能であり得る。このノズルは、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で移動し得る。他の実施形態において、このノズルの速度は、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲であり得る。さらに、これらの可動ノズルの高さは、不活性基材から約30mm〜約60mmの範囲であり得る。
【0056】
また、噴霧器ノズルを通される溶液の流量は、約0.1mL/分〜約5mL/分の範囲内で変動し得る。ある実施形態において、これらの溶液の流量は、約0.5mL/分〜2.0mL/分の範囲内であり得る。この流量は、ポリマー溶液ごとに、そして治療剤溶液ごとに、異なり得る。噴霧器制御器の各々が、通過する異なる溶液の各々について個々に調節され得ることが想定される。
【0057】
本開示の多層フィルムは、不活性基材上にスプレーされ得、この不活性基材は、製造のみのために利用される剥離ライナー基材を備え得る。この不活性基材は、包装前にフィルムから分離され得るか、または逆に、この基材は、フィルムと一緒に包装され得、そして移植前に除去され得る。他の実施形態において、メッシュが不活性基材上に配置され得、そして多層フィルムがメッシュ上に直接スプレーされて、多層複合フィルムを作製し得る。他の実施形態において、この不活性基材は、移植可能な治療用多層複合フィルムの一部である。
【0058】
なお代替の実施形態において、このメッシュは、フィルムの裏打ち(例えば、コラーゲン)を備え得る。多層フィルムは、コラーゲンフィルムの裏打ち上に直接スプレーされ得、これは次いで、メッシュと合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。例えば、多層フィルムを含むポリマーフィルムは、本明細書中以下で議論される方法を使用して、メッシュと合わせられ得る。
【0059】
フィルムは、周囲温度(25℃)または高温で、周囲湿度または高湿度で、乾燥され得る。フィルムの厚さ/層の数に依存して、これらのフィルムは、約1分間〜約24時間乾燥され得る。
【0060】
本開示の多層フィルムは、本明細書中に記載されるメッシュと、接着剤、膠、溶媒溶接、スポット溶接、溶媒キャスティング、溶融プレス、および熱ステーキングなどが挙げられるがこれらに限定されない方法を使用して、合わせられ得る。他の実施形態において、この多層フィルムは、メッシュ上に直接形成され得る。
【0061】
ここで図1を参照すると、図1は、疎水性ポリマーと治療剤とが1つの層に含まれている、自己支持型フィルム10を図示する。フィルム10は自己支持型であるが、フィルム10は、移植前に断裂することなく取り扱われ得、そして移植されると種々の量の力に調節され得る程度まで、可撓性を維持する。
【0062】
図2A、図2B、図および2Cは、自己支持型多層フィルムの側面図を図示する。例えば、図2Aにおいて、第一の層20および第二の層22を備えるフィルム10Aが示されている。第一の層20は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し、そして第二の層22は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。いくつかの実施形態において、この治療剤および/またはこの疎水性ポリマーは、第一の層20または第二の層22のいずれかにおいて合わせられ得る。
【0063】
図2Bは、第一の層24、第二の層26、および第三の層28を備える三層構造体12を示し、治療剤が2つのポリマー層の間に配置されている、多層フィルム10Bを示す。第一の層24は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し得、そして第二の層26は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有し得る。第三の層28は、第一の層24に含有されるものと同じ疎水性ポリマーを含有しても、異なる疎水性ポリマーを含有してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、第二の層26は、治療剤(例えば、ブピバカイン)を含有し得、そして第一の層および第三の層は、同じ疎水性ポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得る。別の例において、3つ全ての層が同じポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得、そして第二の層26は、水溶性が高い治療剤(すなわち、ブピバカイン)も含有し得る。
【0064】
図2Cは、互いに重ねられて多層フィルム10Cを形成している、2つの三層構造体12Aおよび12B(図2Bに示されるような)を図示する。第一の三層構造体12Aは、第一の層24A、第二の層26A、および第三の層28Aを備え、治療剤が、2つのポリマー層(第一の層24Aおよび第三の層28A)の間の第二の層26A内に配置されている。第二の三層構造体12Bは、第四の層24B、第五の層26B、および第六の層28Bを備え、治療剤が、2つのポリマー層(第四の層24Aおよび第六の層28A)の間の第五の層26B内に配置されている。図2Bにおいては、サンドイッチ様の構造として示されているが、三層構造体12Aおよび12Bは、本明細書中に記載されるポリマー材料と治療剤との任意の考えられる組み合わせを備え得る。
【0065】
積み重ねられる際に、フィルム10Cは、機械的特性を損なうことなく、増加した治療剤の含有量を含み得る。2つより多い三層構造体12が互いに積み重ねられて、自己支持型フィルムを形成し得ることが想定される。ある実施形態において、2〜約25の三層構造体が互いに積み重ねられて、自己支持型フィルムを形成し得る。
【0066】
また、多層フィルムにおける個々の層の各々の厚さは、このフィルムからの治療剤の放出を制御し得る。例えば、ポリマー層のみの厚さを増加させると、移植後に治療剤が周囲組織内に放出され得る速度が低下し得る。逆に、ポリマー層のみの厚さを減少させると、治療剤が放出され得る速度が増大し得る。
【0067】
図3A〜図3Fは、自己支持型フィルム10のさらなる実施形態または構成を示す。これらの実施形態は、円形の構成の自己支持型フィルム10D、楕円形の構成の自己支持型フィルム10E、U字型に屈曲した構成の自己支持型フィルム10F、円形開口部分を有する正方形の構成の自己支持型フィルム10G、波型の構成の自己支持型フィルム10H、および不規則な形状の構成の自己支持型フィルム10Iを含む。自己支持型フィルム10D〜10Iの構成の各々は、異なる型の構成を表わす。図示される構成は、自己支持型フィルム10について可能な構成を網羅するわけではない。自己支持型フィルム10の具体的な形状または構成は、望ましい場合に変更され得ること、および図1および図3A〜図3Fに図示される形状および構成は、可能な形状および構成のうちの少数のみの例示であることを、当業者は理解する。
【0068】
図4A〜図4Bに示されるように、多層フィルム100は、第一の層40、第三の層44、およびこの第一の層とこの第三の層との間に配置された第二の層42を備える三層構造体14を示す。この第二の層は、水溶性治療剤および疎水性ポリマーを含有し、一方で、第一の層および第三の層の各々は、疎水性ポリマーを含有する。これらの疎水性ポリマーは、各層において同じであっても異なっていてもよい。しかし、図2A〜図2Cに示される複数の層とは異なり、これらの3つの層40、42、および44の各々の輪郭(topography)は、このフィルムの長さにわたって異なり得る。これらのフィルムは、1つの超音波噴霧器ノズルを使用して形成され得るので、これらのフィルム層は、複数の液滴から形成され得、これらの液滴は、いくつかの実施形態において、不活性基材上に、任意の無作為な量で堆積させられ得る。
【0069】
図4Bおよび図4Cは、図4Aと類似の実施形態であることが理解されるので、同じである全ての数字および説明は、プライム印を用いて表わされ、そしてその違いが以下に記載される。この多層フィルムは、三層構造体14’を備えるが、第二の中間層42’は、このフィルムの外縁部120’までは広がらない。むしろ、第一の層40’および第三の層44’のうちの少なくとも一方が、外縁部120’に沿って位置して第二の層42’を覆う。第二の層(治療剤を含有する)から外縁部120’までの距離を制御することによって、治療剤の放出が変更/制御され得る。
【0070】
特定の実施形態において、図4Bに示されるように、第一の層40’および第三の層44’のうちの少なくとも一方が、外縁部120’の全長に沿って第二の層42’を覆い得る。他の実施形態において、図4Cに示されるように、第一の層40”および第三の層44”のうちの少なくとも一方が、外縁部120”の長さの断続的な部分のみに沿って第二の層42”を覆って、外縁部120”に沿って、第二の層42”が覆われていない断続的な部分を作製し得る。
【0071】
1つの不連続層を有する三層フィルムの代替の実施形態が、図5に図示されている。多層フィルム200は、第一の連続層210、第三の連続層230、およびこれらの間に配置された第二の不連続層220を備える。不連続層は、スクリーンまたはテンプレートを使用することによって、あるいは予めプログラムされたスプレーパターンを使用することによって、作製され得る。この不連続層は第二の層として図示されているが、この不連続層は、この多層フィルムのいずれの層を構成してもよいことが理解されるべきである。不連続層220は、同じかまたは異なるポリマーおよび/または治療剤を含有し得る。例えば、不連続層220は、220Aを構成する第一のコポリマーおよび第一の治療剤を含み得、同時に第二のコポリマーおよび第二の異なる治療剤が、220Bを構成し得る。
【0072】
特定の実施形態において、メッシュが、本開示の多層フィルムと組み合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。このメッシュは、第一の表面および第二の表面を備える。このメッシュの第一の表面または第二の表面のうちの少なくとも一方は、この多層フィルムの第一の層または第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置され得る。代替の実施形態において、このメッシュは、この多層フィルムの様々な層の間に配置され得る。例えば、このメッシュは、この多層フィルムの第一の層と第二の層との間に配置され得る。
【0073】
図6は、本開示に従う多層フィルム複合材を図示する。多層複合材300は、本開示による多層フィルムを有する、コラーゲンで裏打ちされたメッシュ310(例えば、ParietexTM複合メッシュ(PCO))を備える。メッシュ構造体310Bは、その第一の表面上に、コラーゲンフィルム310Aを備える。PCOメッシュ上に配置された多層フィルムは、第一の不連続層320、第二の連続層330および第三の連続層340を備える。図示されるように、第一の層320は、コラーゲンフィルム上に直接、メッシュ310Bの繊維の間に配置される。不連続層320は、上記方法を使用して作製され得る。第二の層330は、メッシュ310Bおよび第一の層320の上に堆積させられる。引き続いて、第三の層340が、第二の層330上に堆積させられる。
【0074】
図7は、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ400をスプレーコーティングするプロセスを概略的に図示する。メッシュ400は、メッシュ400の第一の表面から突出するグリップ部材410を備える。これらのグリップ部材は、メッシュ400の長手方向軸A−Aに対してほぼ垂直に延びる。メッシュ400はまた、メッシュ400の第二の表面上に配置された、コラーゲンの裏打ち420を備える。図示されるように、噴霧器600は、溶液500をコラーゲンの裏打ちの表面上に分配する。噴霧器600は、多層フィルムが作製されるまで、溶液500を分配し続け得る。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mlのブピバカインを含有する。
【0076】
両方の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして少なくとも1つの超音波スプレーノズルに通する。このノズルの先端で噴霧化されるまで、これらの2つの溶液を互いから離して維持する。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通す。
【0077】
これらの噴霧化された溶液は液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から不活性なシリコーンのシート上に落下する際に、混合される。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0078】
このシリコーンシート上に堆積させた液滴を乾燥させ、次いで、このシリコーンシートから分離する。次いで、これらの自己支持型フィルムを滅菌して包装する。
【0079】
(実施例2)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%のポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有する。
【0080】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通す。これらのノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0081】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴をシリコーンシート上に堆積させて、第一のポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御し得る。
【0082】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合される。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。
【0083】
次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させながら、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通す。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてシリコーンシート上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成する。
【0084】
次いで、この三層構造体を高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体を接合させる。引き続いて、このフィルムを、接着剤を使用してメッシュと合わせて、多層複合材を作製する。次いで、この多層複合材を滅菌して包装する。
【0085】
(実施例3)
ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する第一のポリマーフィルムおよび第二のポリマーフィルムを形成する。この第一のポリマーフィルムを、超音波噴霧器ノズルの下で、シリコーンシート上に配置する。
【0086】
エタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有する治療剤溶液を形成する。これらの治療剤溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波噴霧器ノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、予め形成された第一のポリマーフィルム上に堆積させて、中間治療剤層を形成する。
【0087】
この第二のポリマーフィルムをこの中間治療剤層上に配置して、三層構造体を形成する。この三層構造体に結合剤を噴霧して、これらの3つの層を一緒に結合させる。次いで、この三層構造体を熱および/または圧力に曝露して、この結合プロセスを完了する。
【0088】
(実施例4)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%w/vのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二の治療剤溶液は、エタノールに溶解した50mg/mLのブピバカインを含有する。
【0089】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1ml/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲む。
【0090】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、コラーゲンフィルム上に堆積させて、第一のポリマー層を作製する。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御し得る。
【0091】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から、コラーゲンフィルム上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合される。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。
【0092】
次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通す。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンフィルム上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成する。
【0093】
次いで、この三層構造体をメッシュと合わせ、引き続いて、高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体をこのメッシュと接合させる。次いで、この多層複合材を滅菌して包装する。
【0094】
(実施例5)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(7:3の比)に溶解した30mg/mLのブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0095】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0096】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、コラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、20回または30回のいずれかのパスを、第一の外側ポリマー層として含む。
【0097】
次いで、第二の治療剤溶液をスプレーノズルに通して、液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層が形成される。この第二の層は、約125回のパスを含んだ。
【0098】
次いで、第一のポリマー溶液をスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、20回または30回のパスを含んだ。この三層構造体は、第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有するように作製され、約24mg/mLの治療薬物含有量を有する。
【0099】
次いで、これらのフィルムをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図11に示す。
【0100】
(実施例6)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、50mg/mLの塩酸ブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0101】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0102】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として、10回、20回、30回、または60回のパスを含む。
【0103】
マスキングテンプレートを第一の外側ポリマー層を覆うように配置する。次いで、第二の治療剤およびポリマーの溶液を、スプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成する。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0104】
このマスキングテンプレートを除去する。次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、10回、20回、30回、または60回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製する。
【0105】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図12に示す。
【0106】
(実施例7)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供する。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、30mg/mLのブピバカインおよび50mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する。
【0107】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通す。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させる。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通す。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲む。
【0108】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成する。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御し得る。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として30回のパスを含んだ。
【0109】
次いで、この第二の治療剤溶液をこれらのスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させる。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成する。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0110】
次いで、第一のポリマー溶液をこのスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製する。第一のポリマー溶液の液滴を形成して、コラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させる。この第三の外側層もまた、30回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の中間層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製する。図10に図示されるフィルム(PS33−4およびPS 36−5)は、それぞれ17.8mg/cm2および17.7mg/cm2の塩酸ブピバカインを含有するように処方されている。
【0111】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図10に示す。
【0112】
(実施例8)
実施例1に記載されるように作製したフィルムのシートをイヌの骨の形状の構造に切断した。次いで、このイヌの骨型の構造体を個々に、図13のデータに従って、TA XT−Plus Analyzerの張力負荷クランプに固定した。このクランプは、このイヌの骨型の構造体に一定の力を加え、そしてこのイヌの骨型の構造体の破壊点まで、この力を記録した。次いで、そのヤング率を、このイヌの骨型の構造体の寸法に基づいて、応力とひずみとの関係を使用することによって計算した。結果を図14に示す。
【0113】
種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内での例示であると解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびに
フィルムを形成する工程、
を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
【請求項2】
前記第一の溶液が、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルが、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバラクトン、α,α−ジメチルプロピオラクトン、エチルカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の溶液が、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の溶液が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩素化溶媒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の溶液が、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、線維症剤、抗有糸分裂薬、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性の銀塩、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、サイトカイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の溶液が、塩酸ブピバカイン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、カプサイシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の溶液が、メタノール、エタノール、水、生理食塩水、イソプロパノール、酢酸およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スプレーノズルが、少なくとも1つの超音波スプレーノズルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の溶液および前記第二の溶液をスプレーノズルに通す工程が、約0.5mL/分〜約2mL/分の範囲の流量をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スプレーノズルが、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スプレーノズルが、約48kHzの周波数で振動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スプレーノズルが、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記スプレーノズルが、約6ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記スプレーノズルが、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記スプレーノズルが、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
該第一の溶液および該第二の溶液をスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴および該第二の溶液の第二の液滴を生成する工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を不活性基材に堆積させる工程;
該第一の液滴および該第二の液滴を乾燥させて、1つの層を形成する工程;ならびに
フィルムを形成する工程、
を包含する、治療剤の送達のためのフィルムを形成する方法。
【請求項2】
前記第一の溶液が、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルが、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバラクトン、α,α−ジメチルプロピオラクトン、エチルカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の溶液が、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の溶液が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩素化溶媒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の溶液が、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、線維症剤、抗有糸分裂薬、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性の銀塩、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、サイトカイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の溶液が、塩酸ブピバカイン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、カプサイシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の溶液が、メタノール、エタノール、水、生理食塩水、イソプロパノール、酢酸およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スプレーノズルが、少なくとも1つの超音波スプレーノズルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の溶液および前記第二の溶液をスプレーノズルに通す工程が、約0.5mL/分〜約2mL/分の範囲の流量をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スプレーノズルが、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スプレーノズルが、約48kHzの周波数で振動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スプレーノズルが、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記スプレーノズルが、約6ワットの範囲の電力で作動させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記スプレーノズルが、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記スプレーノズルが、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲の速度で動かすことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−87121(P2012−87121A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225000(P2011−225000)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
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