説明

治療化合物

本発明は、タンパク質結合相互作用/結合化合物、並びにそれを識別及び使用する方法に関する。本発明は、さらに、GPCRによって媒介される疾患及び障害を含む5‐HT2C障害を治療するための医薬組成物及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月15日出願の米国特許仮出願第60/934,743号、及び2008年3月21日出願の第61/070,386号の利益を主張するものである。これらの出願の内容は、それら全体で参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
米国連邦政府協賛による研究の下で行われた発明に対する権利に関する記載
本研究は、部分的に、米国公衆衛生局の助成金MH068655による援助を受けた。政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
セロトニン(5‐ヒドロキシトリプタミン、5HT)は、5HT乃至5HTファミリーに分類される14種類の哺乳類5HT受容体サブタイプを通して、多種多様な中枢及び末梢の精神的並びに生理的影響を媒介する(Sanders‐Bush and Mayer, 2006)。5HTファミリーは、主にGαを通してシグナル伝達を行い、ホスホリパーゼ(PL)C、並びにイノシトールリン酸(IP)及びジアシルグリセロール(DAG)二次メッセンジャーの形成を活性化する5HT2A、5HT2B、及び5HT2C膜結合型Gタンパク質共役受容体(GPCR)から構成される(Raymond et al., 2001)。ヒト5HT2C受容体(Saltzman et al., 1991)は、明らかに主として脳内に見られ、そこで広く発現され、食物摂取の挙動(Tecott et al., 1995)、コカイン耽溺(Fletcher et al., 2002; Rocha et al., 2002; Muller and Huston, 2006)、睡眠恒常性(Frank et al., 2002)、不安症(Kennett et al., 1994; Sard et al., 2005; Heisler et al., 2007)、うつ病(Tohda et al., 1989; Palvimaki et al., 1996)、癲癇(Heisler et al., 1998)、アルツハイマー病(Arjona et al., 2002; Stein et al., 2004)、運動機能(Heisler and Tecott, 2000; Segman et al., 2000)、精神病(Marquis et al., 2007; Siuciak et al., 2007)、及び抗精神病薬に対する反応(Veenstra‐VanderWeele et al., 2000; Reynolds et al., 2005)、を含むいくつかの(病態)生理的及び精神的プロセスに関与していると考えられている。従って、5HT2C受容体の薬物療法的標的としての重要性は約10年前から明らかであるが、しかし、5HT2Cに特異的な薬剤は開発されていない。
【0004】
5HT2C受容体を標的とする創薬に関する一つの課題は、このGPCRが、5HT2A受容体とは約80%、及び5HT2B受容体とは約70%の膜貫通型ドメイン(TMD)配列の同一性を共有していることである(Julius et al., 1988; 1990)。高度に保存されたTMD及び類似の二次メッセンジャー結合により、5HT2C受容体に選択的であるアゴニストリガンドの開発が特に困難となっている。しかしながら、5HT2C受容体の活性化が、食物摂取を減少させ、抗肥満効果をもたらすという説得力のある証拠が存在する。例えば、5‐HT2Cノックアウトマウスは、摂食の増加と肥満を示し、d‐フェンフルラミンの食欲低下効果に対する耐性を有する(Tecott et al., 1995; Vickers et al., 1999; 2001; Heisler et al., 2002)。フェンフルラミンは、この薬剤の使用者が脳内5HT2C受容体の活性化に起因する体重の減少を示したものの、精神医学的な(幻覚発現性)悪影響を引き起こす可能性がある5HT2A受容体(Nichols, 2004)、並びに心臓弁膜症(Connolly et al., 1997; Fitzgerald et al., 2000; Rothman et al., 2000; Roth, 2007)及び肺高血圧症(Pouwels et al., 1990; Launay et al., 2002)を引き起こす5HT2B受容体も活性化し、5HT2Bが媒介する影響による死亡例があったことから、現在は使用が禁止されている。
【0005】
5HT2A及び/又は5HT2B受容体に対抗して5HT2Cへの十分な選択性を有するアゴニストリガンドは、本出願まで報告されていないが、ラットのコカイン自己投与パラダイムにおいて非常に選択性の高い(すなわち、少なくとも100倍)5HT2A及び5HT2Cアンタゴニストを用いることにより、脳内5HT2C受容体のコカイン使用及び依存性を減退させる役割を部分的に解明することは可能であった。例えば、選択的5HT2Aアンタゴニスト、M100907(Kehne et al., 1996)は、コカイン自己投与に対する応答速度を変化させないが、選択的5HT2Cアンタゴニスト、SB242084(Bromidge et al., 1997)は、用量依存的にコカイン自己投与の速度を増加させる(Fletcher et al., 2002)。覚せい剤耽溺に対して5HT2Cアゴニスト薬物療法が極めて大きな可能性を有することは、現在広く認識されている(Bubar and Cunningham, 2006)。
【0006】
肥満及び覚せい剤耽溺等の精神神経障害における5HT2C受容体の薬物療法的妥当性は、選択的5HT2Cアゴニストの開発に対する医薬品企業の強い関心を引き起こしたが、しかし、現在までに報告されている5HT2Cアゴニストはすべて、やはり5HT2A及び/又は5HT2B受容体も活性化させる (Nilsson, 2006)。しかしながら、5HTアゴニスト、ロルカセリン(lorcaserin)(APD356)は、5HT2A受容体に対抗する5HT2C受容体の活性化への選択性はあまり大きくなくわずかに15倍ではあるものの、最近、肥満治療に対する臨床試験のフェーズIIIへ進んだ(Jensen, 2006; Smith et al., 2006)。しかし、本明細書で報告された結果は、発明者らの研究室で合成された新規な化合物、(1R,3S)‐(−)‐トランス‐1‐フェニル‐3‐ジメチルアミノ‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン(PAT;図1)が、ヒト5HT2C受容体に対して十分に効力のあるアゴニストであり、さらに、5HT2A及び5HT2B受容体に対するアンタゴニストであることを示している。
【0007】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、薬物療法的効果及び不適当な副作用の両方である複数の生理学的/薬理学的効果をもたらすより多くの種類のGタンパク質を活性化することができる(Moniri et al., Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 311 :274‐281 (2004))。単一のGPCRに関連する複数のシグナル伝達経路の現象は、GPCR活性化の3状態モデルの枠内で説明することができ、ここで、GPCRは、不活性状態及び構成的活性化状態の間で異性化する。GPCRの活性化は、ヘテロ三量体(α、β、γ)Gタンパク質サブユニットの解離を引き起こし、Gαサブユニットは、次に、トランスデューサータンパク質(例:PLC、AC)を活性化して、二次メッセンジャー濃度を変化させることができる。現在では、同一のGPCRが異なるGαタンパク質と結合し、「多機能シグナル伝達」をもたらすことができることが認識されている。GPCR多機能シグナル伝達理論の極めて重要な前提は、活性受容体コンフォメーションの不均一性が存在すること、及び、「刺激輸送(stimulus trafficking)」の仮説で説明されるように、アゴニストリガンドが、受容体コンフォメーションを誘発し、安定化させ、又はその中から選択する能力に違いを有することである。従って、結合すると、アゴニストリガンドの化学構造パラメータは、活性化されるGαタンパク質の種類及びシグナル伝達経路に影響を与えるGPCRコンフォメーションの最も重要な決定因子の一つということになる。
【0008】
73の生物学的Gタンパク質共役受容体標的に対する380のアンタゴニストの活性に関する105の論文の調査から、このサンプルデータセット中、322がインバースアゴニストであり、58(15%)がニュートラルアンタゴニストであることが示される。インバースアゴニズムが支配的であることは、ニュートラルアンタゴニストが薬理学的空間(pharmacological space)において少数の種であることを示す理論的な推測と合致している(Kenakin, Mol Pharmacol. (2004);65:2‐11)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様では、本発明は、精神神経障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供し、その方法は、5‐HT2結合相互作用を調節する能力を有する化合物の治療効果量を、それを必要とする対象へ投与することを含む。一つの実施形態では、この化合物は、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する。別の実施形態では、この化合物は、5‐HT2a及び/又は5‐HT2bをアンタゴナイズする一方、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する。
【0010】
一つの態様では、本発明は、精神神経障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。この方法は、5‐HT2cをアゴナイズする化合物の治療効果量を、それを必要とする対象へ投与することを含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、精神神経障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。この方法は、好ましくは5‐HT2a及び/又は5‐HT2bと比較して選択的に、直接5‐HT2cを調節することによって5‐HT2結合相互作用を調節する能力を有する化合物の治療効果量を、それを必要とする対象へ投与することを含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、精神神経障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。この方法は、5‐HT2cをアゴナイズする化合物又は5‐HT2cに選択的な化合物の治療効果量を、それが必要であると識別された対象へ投与することを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、肥満、耽溺、コカイン耽溺、精神病、不安症、睡眠恒常性を含む精神神経障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。この方法は、5‐HT2cをアゴナイズする対象へ投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、肥満、耽溺、コカイン耽溺、精神病、不安症に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供し、この方法は、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する(5‐HT2a及び/又は5‐HT2bと比較して選択的にそうであることを含む)化合物の効果量を対象へ投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0015】
一つの態様では、本発明は、GPCR障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供し、この方法は、GPCR結合相互作用を調節する能力を有する化合物の治療効果量を、それを必要とする対象へ投与することを含む。一つの実施形態では、この化合物は、GPCRをアゴナイズする能力を有する。別の実施形態では、この化合物は、GPCRをアンタゴナイズする能力を有する。
【0016】
別の態様では、本発明の化合物は、セロトニンヒスタミンH、5HT2A、2B、2C、及びアセチルコリンムスカリン性M乃至MGPCRを標的とする機能的に選択的である化合物である。態様では、本発明は、対象中のセロトニンヒスタミンH、5HT2A、2B、2C、及びアセチルコリンムスカリン性M乃至MGPCRを選択的に標的とする方法を提供し、この方法は、本発明の化合物を対象へ投与することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象中のGPCRの媒介による障害を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、それが必要であると識別された対象に対してPAT化合物を投与することを含む。特定の実施形態では、PAT化合物は、表1の化合物である(後述)。特定の実施形態では、PAT化合物は、式(I)で表され:
【化1】

ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1若しくは2であり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、若しくはハロであり;
は、独立して、H若しくはアルキルであり;及び、
は、独立して、H若しくはN(アルキル)である、
化合物、又は、その塩、水和物、若しくは溶媒和物である。
【0018】
特定の実施形態では、PAT化合物のRは‐NMeである。特定の実施形態では、PAT化合物は、(1R,3S)‐(−)‐トランス‐1‐フェニル‐3‐N,N‐ジメチルアミノ‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレンである。
【0019】
特定の実施形態では、障害は、精神神経障害(例:肥満、耽溺、不安症、うつ病、統合失調症、及び睡眠障害)、神経変性障害(例:パーキンソン病、アルツハイマー病)、神経障害(例:癲癇)、心血管障害(例:高血圧症)、胃腸障害(例:過敏性腸症候群)、又は泌尿生殖器障害(例:膀胱制御)である。特定の実施形態では、障害はコカイン耽溺である。特定の実施形態では、障害は肥満である。
【0020】
別の態様では、本発明は、5‐HT2Cの阻害を、そのような治療が必要であると識別された対象に施す方法を提供し、この方法は、PAT化合物を投与することを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、対象の肥満を治療する方法を提供し、この方法は、5‐HT2a又は5‐HT2bと比較して5‐HT2cを選択的に阻害する能力を有するPAT化合物を、それを必要とすると識別された対象へ投与することを含む。特定の実施形態では、5‐HT2cの阻害に対する結合相互作用は、5‐HT2a又は5‐HT2bと比較して、少なくとも5倍(別の選択肢として、少なくとも10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍)大きい。特定の実施形態では、5‐HT2cの阻害に対する結合相互作用は、5‐HT2a又は5‐HT2bと比較して、少なくとも100倍大きい。
【0022】
別の態様では、本発明は、5‐HT2c活性を調節する能力を有する化合物を識別するための方法を提供し、この方法は;(i)分子又は分子複合体の三次元画像であって、ここで、該分子又は分子複合体は、5‐HT2cの構造座標によって決定される結合ポケットを含む、画像;又は、b)該分子又は分子複合体のホモログの三次元画像であって、ここで、該ホモログは、該アミノ酸のバックボーン原子からの二乗平均偏差が約2.0オングストローム以下である結合ポケットを含む、画像、を作製すること;(ii)試験化合物の三次元画像を作製すること;(iii)この試験化合物の標的との結合相互作用を評価すること、を含む。特定の実施形態では、この方法は、試験化合物を5‐HT2cと接触させること、及びその化合物の結合活性を測定することをさらに含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、式(I):
【化2】

で表される化合物であって、
ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1若しくは2であり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、若しくはハロであり;
は、独立して、H若しくはアルキルであり;及び、
は、独立して、H若しくはN(アルキル)である、
化合物、又は、その塩、水和物、若しくは溶媒和物を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、この化合物の1位及び3位における置換基は、互いにトランス配置の関係である。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書で述べる化合物(例:式(I)の化合物)、及び薬理学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、本明細書で述べる化合物(例:式(I)の化合物)、及び薬理学的に許容される担体を組み合わせることを含む、組成物を作製する方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、式:
【化3】

の化合物であって、
ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1若しくは2であり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、若しくはハロであり;
は、独立して、H若しくはアルキルであり;
は、独立して、H、N(アルキル)であり;及び、
は、独立して、各々が任意に1乃至4個の独立したRで置換されていてもよいアリール若しくはヘテロアリールである、
化合物、又は、その塩、水和物、若しくは溶媒和物を提供する。
【0028】
構造活性相関(SAR)の結果は、H対5HT2A対5HT2B対5HT2C、対、M対M対M対M対MGPCRについての本発明の化合物の親和性選択性が、C1(ペンダントフェニル基又はその他の芳香族基)及びC3(アミン)位における置換基の立体化学、並びにC1及びC3置換基の化学的性質、さらには、テトラヒドロナフタレン環系のC6及びC7位における化学置換基に応じて異なることを示している(炭素のナンバリングは式I、表1の通り)。同様に、H対5HT2A対5HT2B対5HT2C、対、M対M対M対M対MGPCRにおけるアゴニスト対インバースアゴニスト対アンタゴニスト活性は、C1、C3、C6、及びC7における置換基の化学的性質及び立体化学によって決定される。例えば、Bucholtz, E.C., Wyrick, S.D., Owens, C.E., and Booth, R.G. 1‐Phenyl‐3‐dimethylaminotetralins(PATs): Effect of stereochemistry on binding and function at brain histamine receptors. Medicinal Chemistry Research 8:322‐332 (1998).; Bucholtz, E.C.
, Brown., R.L., Tropsha, A., Booth, R.G, and Wyrick, S.D. Synthesis, Evaluation and Comparative Molecular Field Analysis of 1‐Phenyl‐3‐amino‐1,2,3,4‐tetrahydronaphthalenes as Ligands for Histamine H Receptors. Journal of Medicinal Chemsitry.42:3041‐3054(1999); Choksi, N.Y., Nix, William B., Wyrick, S.D., and Booth, R.G. A novel phenylaminotetralin recognizes histamine H receptors and stimulates dopamine synthesis in vivo in rat brain. Brain Research 852: 151‐160 (2000); Booth RG, Moniri NH, Bakker RA, Choksi NY, Timmerman H, and Leurs R. A novel phenylaminotetralin radioligand reveals a sub‐population of histamine H receptors. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 302:328‐336 (2002); Moniri NH, Covington‐Strachan D, Booth RG. Ligand‐directed functional heterogeneity of histamine H receptors: Novel dual‐function ligands selectively activate and block H‐meditated phospholipas C and adenylyl cyclase signaling. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 311 :274‐281 (2004); Booth RG, Moniri NH. Ligand‐directed multifunctional signaling of histamine Hreceptors Inflammation Research 54: S44‐45 (2005); Ghoneim OM, Legere JA, Glbraikh A, Tropsha A, Booth RG. Novel ligands for the human histamine H receptor: Synthesis, pharmacology, and comparative molecular field analysis studies of 2‐dimethylamino‐5‐(6)‐phenyl‐1,2,3,4‐tetrahydronaphthalenes. Bioorganic and Medicinal Chemistry, 14:6640‐6658 (2006); Booth RG, Moniri NH. Novel Ligands Stabilize Stereo‐Selective Conformations of the Histamine H Receptor to Activate Catecholamine Synthesis. Inflammation Research 56:1‐12 (2007)、を参照されたい。
【0029】
別の実施形態では、本発明の化合物は、ホスホリパーゼC(PLC)/イノシトールリン酸(IP)細胞内シグナル伝達経路に対抗してアデニリルシクラーゼ(AC)/cAMPと結合する脳内H受容体を識別して、選択的に活性化し、脳内カテコラミン(ドーパミン、ノルエピネフリン)神経伝達物質合成を調節することができる。態様では、本発明は、ホスホリパーゼC(PLC)/イノシトールリン酸(IP)細胞内シグナル伝達経路に対抗してアデニリルシクラーゼ(AC)/cAMPと結合する脳内H受容体を選択的に活性化して、対象中の脳内カテコラミン(ドーパミン、ノルエピネフリン)神経伝達物質合成の調節を例とする、H/AC/cAMPシグナル伝達に対する感受性を有するプロセスに生理学的に影響を与える方法を提供し、この方法は、本発明の化合物を対象へ投与することを含む。
【0030】
別の態様では、本発明の化合物は、Hが媒介するAC/cAMPシグナル伝達を選択的に促進して、カテコラミン神経伝達の変化が関与する特定の精神神経疾患に罹患する患者を治療する化合物である。態様では、本発明は、Hが媒介するAC/cAMPシグナル伝達を選択的に促進して、カテコラミン神経伝達の変化が関与する特定の精神神経疾患に罹患する対象を治療する方法を提供し、この方法は、本発明の化合物を対象へ投与することを含む。
【0031】
別の実施形態では、本発明の化合物は、呼吸促迫症(気管支収縮)、下痢症(GI収縮)、並びに浮腫及び低血圧症(血管透過性の増加)、特に末梢アレルギー反応と関連するものを例とする、H/PLC/IPシグナル伝達を介して進行するHの媒介による不適当な影響のアンタゴニスト及びインバースアゴニストである化合物である。態様では、本発明は、対象中のPLC/IP経路を介して進行するHの媒介による不適当な影響をアンタゴナイズする(例:遮断する)方法を提供し、この方法は、本発明の化合物を対象へ投与することを含む。
【0032】
別の態様では、PATは、セロトニン5HT2A及び5HT2B受容体におけるアンタゴニストであり、並びにインバースアゴニストである。
【0033】
別の実施形態では、PATは、PLC/IPシグナル伝達と連結されたヒスタミンH受容体におけるアンタゴニストであり、並びにインバースアゴニストである。
【0034】
別の態様では、PATは、アセチルコリンムスカリン性M乃至M受容体におけるアンタゴニストであり、並びにインバースアゴニストである。
【0035】
別の態様では、PATは、アセチルコリンムスカリン性M乃至M受容体におけるアンタゴニストであり、並びにインバースアゴニスト及びアゴニストである。別の態様では、PATは、同時に、セロトニン5HT2A及び5HT2B受容体におけるインバースアゴニストであり、5HT2C受容体におけるアゴニストでもある。態様では、本発明は、同時に、セロトニン5HT2A及び5HT2B受容体におけるインバースアゴニストであり、5HT2C受容体におけるアゴニストでもある化合物を対象へ投与することを含む、対象における疾患若しくは障害(例:精神障害;肥満)を治療又は予防する方法を提供する。別の実施形態では、この方法は、対象が精神障害及び肥満の両方の治療を必要とする場合の方法である。
【0036】
一つの実施形態では、化合物は、対象におけるアセチルコリンムスカリン性受容体系の障害に起因する疾患又は障害を薬理学的に治療するための方法を提供し、この方法は、本発明のいずれかの式の化合物を対象へ投与することを含む。本発明のいずれかの式の化合物は、ムスカリン性M、M、M、M、及び/又はM受容体に対する薬理学的に適切である親和性を有し、これらのムスカリン性受容体の1若しくは2種類以上において、アゴニスト、インバースアゴニスト、及び/又はアンタゴニストとして機能的に挙動する。
【0037】
ムスカリン性M、M、M、M、及び/又はM受容体の薬理学的な調節に反応する典型的な疾患又は障害(Brown and Taylor, 2006, Muscarinic Agonists and Antagonists. In: Brunton L.L., Lazo, J.S., Parker, K.L. (Eds.), Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 11th Edition. McGranw‐Hill, New York, NY, pp.183‐200)としては、これらに限定されないが、胃腸管の障害(便秘症、下痢症、酸過多、痙縮)、尿路の障害(頻尿、尿の不足、尿の過剰)、緑内障、喘息、パーキンソン病、アルツハイマー病、外分泌腺が関与する種々の障害(発汗、涙の形成、唾液の形成、粘膜の形成の問題)、並びに特定のキノコ類(例:天然のムスカリン誘導体を含有するもの)による中毒の治療、が挙げられる。
【0038】
別の態様では、本発明は、5‐HT2cを調節する化合物を識別するための方法を提供し、この方法は、5‐HT2cタンパク質の結晶構造を入手すること、又は5‐HT2cタンパク質の結晶構造に関連する情報を入手すること、及び、その5‐HT2cタンパク質構造中への又は構造上への試験化合物のモデリングを行って、この化合物が5‐HT2cタンパク質の相互作用を調節するかどうかを判定すること、を含む。特定の実施形態では、モデリングの工程は、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1つ以上の構造座標によって決定される結合ポケットに対するこの化合物の結合若しくは会合能力のモデリング又は判定を行うことを含む。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、肥満、耽溺、コカイン耽溺、精神障害、不安症の治療又は予防に有用である化合物を識別するための方法である。この方法は、5‐HT2c複合体を試験化合物と接触させること、及び試験化合物の5‐HT2cを調節する(例:アゴナイズする、又はアンタゴナイズする)能力を評価すること、を含む。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、5‐HT2cの活性を調節する化合物を識別するための方法であり、この方法は、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上の原子座標を用いて、結合ポケットを有する分子の三次元構造を作製すること(例:コンピュータを用いて)、及び、この三次元構造を用いて、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上の活性を調節する化合物を識別すること、を含む、
【0041】
別の態様では、治療効果量の5‐HT2cアゴニスト化合物、及び薬理学的に許容される担体又は希釈剤を含むパッケージされた組成物を提供する。この組成物は、精神神経障害(例:肥満)に罹患している又は罹患しやすい対象を治療するために製剤することができ、精神神経障害に罹患している又は罹患しやすい対象を治療するための説明書と共にパッケージすることができる。
【0042】
一つの態様では、本発明は、対象における精神神経障害を治療するためのキットを提供し、キットには、本発明の化合物、その薬理学的に許容されるエステル、塩、及びプロドラッグ、並びに使用説明書が含まれる。さらなる態様では、本発明は、5‐HT2cのアゴナイズ、対象における抗肥満治療の効果の評価、5‐HT2cアゴニストで治療中の対象の進行状況のモニタリング、5‐HT2cアゴニストで治療するための精神神経障害を有する患者の選別、及び/又は精神神経障害(例:肥満)に罹患している若しくは罹患しやすい対象の治療、のためのキットを提供する。特定の実施形態では、本発明は、対象における精神神経障害の治療のためのキットを提供し、このキットは、5‐HT2cアゴニスト活性を調節する(例:アゴナイズする)能力を有する化合物を含む。他の態様では、この化合物は、5‐HT2a及び/又は5‐HT2bと比較して5‐HT2cを選択的にアゴナイズする。他の態様では、この化合物は、5‐HT2a及び/又は5‐HT2bを選択的にアンタゴナイズする。
【0043】
別の態様では、本発明は、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上の、それぞれ単独又はこれらの組み合わせの、三次元構造に関する。
【0044】
従って、本発明は、これらの結合ポケットのいずれか一方若しくは両方を含む分子又は分子複合体、又は類似の三次元形状を有するいずれかの結合ポケットのホモログ、を提供する。
【0045】
本発明は、さらに、本明細書で述べる化合物の医薬組成物も提供し、この組成物は、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する化合物;5‐HT2a及び/又は5‐HT2bと比較して5‐HT2cを選択的にアゴナイズする能力を有する化合物;5‐HT2cをアゴナイズし、5‐HT2a及び/又は5‐HT2bをアンタゴナイズする能力を有する化合物;又は、これらの薬理学的に許容されるエステル、塩、若しくはプロドラッグを、薬理学的に許容される担体と合わせて含む。
【0046】
別の態様では、本発明は、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上を決定する結合ポケットの構造座標を含む、機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、分子又は分子複合体の三次元画像であって、ここで、該分子又は分子複合体は、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上の、構造座標によって決定される結合ポケットを含む、画像;又は、b)該分子又は分子複合体のホモログの三次元画像であって、ここで、該ホモログは、該アミノ酸のバックボーン原子からの二乗平均偏差が約2.0オングストローム以下である結合ポケットを含む、画像、を作製するためのコンピュータを提供する。このコンピュータは:(i)機械読み取り可能なデータでコード化されたデータ保存物質を含む機械読み取り可能なデータ記憶媒体であって、ここで、該データは、5‐HT2cの膜貫通型ドメイン1乃至7の1若しくは2つ以上の構造座標を含む、データ記憶媒体;(ii)該機械読み取り可能なデータを処理するための命令を保存するための動作メモリ;(iii)該動作メモリ及び該機械読み取り可能なデータ記憶媒体と連結され、該機械読み取り可能なデータを該三次元画像へ処理するための中央処理装置;並びに、(iv)該中央処理装置と連結され、該三次元画像を表示するためのディスプレイ、を含む。
【0048】
本発明は、さらに、前述の結合ポケットと結合する化合物の設計、評価、及び識別を行うための方法も提供する。本発明のその他の実施形態は、以下に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明を、以下の限定されない例を参照し、及び以下の図面を参照して、以下でさらに説明する。
【0050】
【図1】シス‐及びトランス‐1‐フェニル‐3‐ジメチルアミノ‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン(PAT)化合物の立体化学的関係を示す図である。
【図2】[H]‐ケタンセリン標識5HT2A受容体、並びに[H]‐メスレルギン標識5‐HT2B受容体及び5‐HT2C受容体に対する代表的な結合曲線(2A乃至2C)を示す図である。
【図3】(−)‐トランス‐PATに対する、代表的な5‐HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C放射性リガンド置換曲線を示す図である。
【図4】5HT‐サブタイプ受容体における(−)‐トランス‐PATアゴニスト活性の評価を示す図である。
【図5】5‐HTが媒介するPLC/[H]‐IP形成の刺激に関して、5HT2A及び5HT2B受容体のアンタゴニストとして作用する(−)‐トランス‐PATの能力の評価を示す図である。
【図6】5‐HT2A結合に対する曲線を示す図である。
【図7】5‐HT2B結合に対する曲線を示す図である。
【図8】5‐HT2C結合に対する曲線を示す図である。
【図9】5‐HT2C結合に対する曲線を示す図である。
【図10】5‐HT2A結合に対する曲線を示す図である。
【図11】5‐HT2C結合に対する曲線を示す図である。
【図12】ホスホリパーゼC(PLC)活性に対する曲線を示す図である。
【図13】イノシトールリン酸(IP)活性に対する曲線を示す図である。
【図14】PLC活性に対する曲線を示す図である。
【図15】PLC活性に対する評価を示す図である。
【図16】PLC活性に対する評価を示す図である。
【図17】固定されたペンダントフェニル環を有するPATを示す図である。
【図18】5‐HT2A受容体の5‐HT活性の(−)‐トランス‐PATによる競合的アンタゴニズムを示す図である。
【図19】セロトニン5‐HT2受容体における(−)‐トランス‐PATのインバースアゴニスト活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
本発明者らはここで、選択的に5‐HT2cを標的とすることにより、選択的な疾患の治療及び予防を行う(すなわち、有害な副作用が低減又は最小化された)治療計画を見出した。そのような相互作用は、5‐HT2cの媒介による障害、特に、5‐HT2のメカニズムが大きな役割を担う特定の種類の精神神経障害の調節にとって適切である。
【0052】
本発明は、少なくとも部分的には、5‐HT2c相互作用が精神神経障害の治療に対する標的(例:選択的な)として有用であるという発見に関する。
【0053】
1.定義
本発明のさらなる説明の前に、そして本発明をより容易に理解することができるように、便宜上、特定の用語をまずここで定義してまとめる。
【0054】
「投与」又は「投与する」という用語は、本発明の化合物を、その意図する機能を実行させるために対象へ導入する経路を含む。使用可能である投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、くも膜下腔内)、経口、吸入、直腸内、及び経皮が挙げられる。医薬製剤は、各投与経路に適する形で与えることができる。例えば、これらの製剤は、錠剤又はカプセル剤の形、注射、吸入、目薬、軟膏、坐薬等で投与され、注射、注入、若しくは吸入による投与;ローション若しくは軟膏による局所投与;並びに座薬による直腸内投与、によって投与される。好ましいのは経口投与である。注射はボーラスであってよく、又は連続注入であってもよい。投与経路に応じて、本発明の化合物は、選択された物質でコーティング又はその中に配置し、その意図する機能を実行する能力に有害な結果をもたらす可能性のある自然条件から保護してもよい。本発明の化合物は、単独で投与してよく、又は上述の別の薬剤若しくは薬理学的に許容される担体若しくはこれらの両方と組み合わせて投与してもよい。本発明の化合物は、その他の薬剤の投与の前に、その薬剤と同時に、又はその薬剤の投与の後に投与してもよい。さらに、本発明の化合物は、活性な代謝物又はより活性な代謝物へインビボにて変換されるプロドラッグの形で投与してもよい。
【0055】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基のラジカルを意味し、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む。アルキルの用語は、炭化水素バックボーンの1若しくは2個以上の炭素に代えて、酸素、窒素、硫黄、又はリン原子をさらに有していてよいアルキル基をさらに含み、例えば、酸素、窒素、硫黄、又はリン原子である。好ましい実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、30若しくは29個以下の炭素原子をそのバックボーンに有し(例:直鎖に対してはC1‐C30、分岐鎖に対してはC‐C30)、好ましくは26若しくは25個以下、より好ましくは20若しくは19個以下、さらにより好ましくは4若しくは3個以下である。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造内に3乃至10個の炭素原子を有し、より好ましくは3、4、5、6、又は7個の炭素を環構造内に有する。
【0056】
さらに、本明細書及び本文を通して用いるアルキルの用語は、「無置換アルキル」及び「置換アルキル」のいずれをも含むことを意図しており、このうちの後者は、炭化水素バックボーンの1若しくは2個以上の炭素上の水素に代えて置換基を有するアルキル部分を意味する。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分、を挙げることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換された部分は、必要に応じてそれ自体が置換されてよいことは理解されるであろう。シクロアルキルは、例えば上述の置換基によってさらに置換されてよい。「アルキルアリール」部分は、アリールで置換されたアルキルである(例:フェニルメチル(ベンジル))。「アルキル」の用語は、長さ及び考えられる置換が上述のアルキルと類似であるが、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を個々に有する不飽和脂肪族基も含む。
【0057】
炭素数が特に示されていない限りにおいて、本明細書で用いる「低級アルキル」は、上記の定義に従うが、1乃至10個炭素を、より好ましくは1乃至6個、及びさらにより好ましくは1乃至4個の炭素原子をそのバックボーン構造に有するアルキル基を意味し、直鎖でも分岐鎖でもよい。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、tert‐ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。好ましい実施形態では、「低級アルキル」の用語は、4若しくは3個以下の炭素原子をそのバックボーンに有する直鎖アルキルを含み、例えばC1‐C4アルキルである。
【0058】
「アルコキシアルキル」、「ポリアミノアルキル」、及び「チオアルコキシアルキル」の用語は、炭化水素バックボーンの1若しくは2個以上の炭素に代えて、酸素、窒素、又は硫黄原子をさらに含む上述のアルキル基を意味し、例えば酸素、窒素、又は硫黄原子である。
【0059】
「アルケニル」及び「アルキニル」の用語は、長さ及び考えられる置換が上述のアルキルと類似であるが、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を個々に有する不飽和脂肪族基を意味する。例えば、本発明は、シアノ及びプロパルギル基を意図している。
【0060】
本明細書で用いる「アリール」の用語は、アリール基のラジカルを意味し、0乃至4個のヘテロ原子を含んでよい5及び6員環の単環式芳香族基を含み、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等である。アリール基は、多環式縮合芳香族基も含み、ナフチル、キノリル、インドリル等である。環構造中にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリールへテロ環」、「ヘテロアリール」、又は「ヘテロ芳香族」と称することもできる。芳香環は、環の1若しくは2ヶ所以上の位置にて、上述のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分、によって置換されていてよい。アリール基はさらに、芳香族でない脂環式又はヘテロ環式環と縮合又は架橋して多環(例:テトラリン)を形成してもよい。
【0061】
「会合する」という用語は、化学的実体若しくは化合物、又はその一部分と、タンパク質上の結合ポケット若しくは結合部位との間の近接する状況を意味する。会合は、非共有結合(近位がエネルギー的に、水素結合又はファンデルワールス又は静電相互作用に有利である)であっても、又は共有結合であってもよい。
【0062】
本明細書で用いる「結合ポケット」の用語は、その形状の結果として別の化学的実体又は化合物と有利に会合する、分子又は分子複合体の領域を意味する。
【0063】
本発明の化合物の「生物学的活性」という言葉は、感受性を有する細胞内において本発明の化合物によって引き起こされるすべての活性を含む。それには、これらの化合物によって引き起こされるゲノム活性及び非ゲノム活性が含まれる。
【0064】
「生物学的組成物」又は「生物学的サンプル」とは、細胞若しくはバイオポリマーを含有するか又はこれら由来の組成物を意味する。細胞を含有する組成物としては、例えば、哺乳類血液、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血液細胞タンパク質、血漿、多血小板血漿、血漿濃縮物、血漿のいずれかの分画からの沈殿物、血漿のいずれかの分画からの上清、血漿タンパク質画分、精製若しくは部分精製血液タンパク質又はその他の成分、血清、精液、哺乳類初乳、乳、唾液、胎盤抽出物、寒冷沈降物、寒冷上清(cryosupernatant)、細胞ライセート、哺乳類細胞培養物又は培地、発酵生成物、腹水、血液細胞中で誘発されたタンパク質、及び正常細胞又は形質転換細胞による細胞培養で産生された産物(例:組換えDNA若しくはモノクローナル抗体技術による)、が挙げられる。生物学的組成物は、細胞を含有していなくてもよい。好ましい実施形態では、適切な生物学的組成物又は生物学的サンプルは、赤血球懸濁液である。ある実施形態では、血液細胞懸濁液は、哺乳類の血液細胞を含む。好ましくは、血液細胞は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、又はブタから得られる。好ましい実施形態では、血液細胞懸濁液は、赤血球、及び/又は血小板、及び/又は白血球、及び/又は骨髄細胞を含む。
【0065】
「キラル」という用語は、鏡像関係にある相手側と重ね合わせることができない性質を有する分子を意味し、一方、「アキラル」という用語は、鏡像関係にある相手側と重ね合わせることができる分子を意味する。
【0066】
「ジアステレオマー」という用語は、2若しくは3個以上の不斉中心を有し、その分子が互いに鏡像関係ではない立体異性体を意味する。
【0067】
「効果量」という用語は、用量及び必要な期間において、所望する結果を達成するのに効果的である量、例えば、本明細書で示す障害を治療するのに十分な量、を含む。本発明の化合物の効果量は、対象の疾患状態、年齢、及び体重等の因子、並びに本発明の化合物が対象にて所望の反応を引き起こす能力に応じて様々であり得る。投与計画は、最適な治療反応を得るために調整することができる。効果量は、本発明の化合物のいかなる有毒又は有害な影響(例:副作用)よりも治療上の有益な効果が勝っている量でもある。
【0068】
本発明の化合物の治療効果量(すなわち、効果用量)は、体重に対して約0.001乃至30mg/kgの範囲であってよく、好ましくは体重に対して約0.01乃至25mg/kg、より好ましくは体重に対して約0.1乃至20mg/kg、さらにより好ましくは体重に対して約1乃至10mg/kg、2乃至9mg/kg、3乃至8mg/kg、4乃至7mg/kg、5乃至6mg/kgである。当業者であれば、特定の因子が対象を効果的に治療するために必要である用量に影響を与え得ることは理解され、それらは、これらに限定されないが、疾患又は障害の重症度、過去の治療、対象の一般的健康状態及び/又は年齢、並びにその他の存在する疾患を含む。さらに、本発明の化合物の治療効果量による対象の治療は、単一の治療を含むことができ、又は、好ましくは、一連の治療を含むことができる。一つの例では、対象の治療は、体重に対して約0.1乃至20mg/kgの範囲の本発明の化合物により、週1回、約1乃至10週間の間、好ましくは2乃至8週間の間、より好ましくは約3乃至7週間の間、さらにより好ましくは約4、5、又は6週間の間、行われる。治療に用いられる本発明の化合物の効果用量が、特定の治療の期間中に増加又は減少され得ることも理解されるであろう。
【0069】
「エナンチオマー」という用語は、化合物の、互いに重なり合わない鏡像関係にある2つの立体異性体を意味する。2つのエナンチオマーの等モル混合物は、「ラセミ混合物」又は「ラセミ体」と称される。
【0070】
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲンによってモノ置換、ジ置換、又はポリ置換された、上記で定義するアルキル基を含むことを意図しており、例えば、フルオロメチル及びトリフルオロメチルである。
【0071】
「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、‐F、‐Cl、‐Br、又は‐Iを示す。
【0072】
「ヒドロキシル」という用語は、‐OHを意味する。
【0073】
本明細書で用いる「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、及びリンである。
【0074】
「恒常性」という用語は、体内環境において静的な又は一定の状態が維持されることを意味すると本技術分野にて認識されている。
【0075】
「改善された生物学的特性」という言葉は、インビボにおけるその効果を高める本発明の化合物に固有のいかなる活性をも意味する。好ましい実施形態では、この用語は、毒性の低減等、本発明の化合物の定性的又は定量的な改善されたいかなる治療特性をも意味する。
【0076】
「GPCR障害」という用語は、Gタンパク質共役受容体(例:5‐HT2a、5‐HT2b、5‐HT2c、ムスカリン性M1乃至M5)によって媒介されるそのいかなる疾患、障害、又は症状をも含む。そのようなGPCRによって媒介される疾患及び障害は、例えば、精神神経障害(例:肥満、耽溺、コカイン耽溺、精神不安症、うつ病、統合失調症、精神病、及び睡眠障害)、神経変性障害(例:パーキンソン病、アルツハイマー病)、神経障害(例:癲癇)、心血管障害(例:高血圧症)、胃腸障害(例:過敏性腸症候群)、及び泌尿生殖器障害(例:膀胱制御)、が挙げられる。
【0077】
「M1乃至M5 GPCR」という言葉は、コリン作動性ムスカリン性M1乃至M5神経伝達物質Gタンパク質共役受容体を意味する(本明細書で示すものを含む)。
【0078】
「5‐HT2」という言葉は、5‐HT2a、5‐HT2b、及び5‐HT2cサブタイプ等のセロトニン受容体(本明細書で示すものを含む)を意味する。
【0079】
「任意に置換される」という用語は、無置換の基、又は1若しくは2ヶ所以上の置換可能な位置、通常は1、2、3、4、若しくは5ヶ所の位置にて、水素以外により、1若しくは2個以上の適切な基(同一であっても異なっていてもよい)によって置換された基を包含することを意図している。そのような任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C‐Cアルキル、C‐Cアルケニル、C‐Cアルキニル、C‐Cアルコキシ、C‐Cアルキルエーテル、C‐Cアルカノン、C‐Cアルキルチオ、アミノ、モノ‐若しくはジ‐(C‐Cアルキル)アミノ、ハロC‐Cアルキル、ハロC‐Cアルコキシ、C‐Cアルカノイル、C‐Cアルカノイルオキシ、C‐Cアルコキシカルボニル、‐COOH、‐CONH、モノ‐若しくはジ‐(C‐Cアルキル)アミノカルボニル、‐SONH、及び/又はモノ若しくはジ(C‐Cアルキル)スルホンアミド、並びに炭素環基及びヘテロ環基が挙げられる。任意の置換は、「0乃至X個の置換基によって置換される」という表現によっても示され、ここで、Xは、考えられる置換基の最大数である。特定の任意に置換された基は、0乃至2、3、又は4個の独立して選択された置換基によって置換される(すなわち、無置換か、又は列挙された最大数までの置換基で置換される)。
【0080】
「異性体」又は「立体異性体」という用語は、同一の化学的構成を有するが、原子又は基の空間上の配置に関して異なっている化合物を意味する。
【0081】
「調節する」という用語は、例えば、対象中(例:動物、ヒト)の例を含めて、本発明の化合物への曝露に反応して標的の活性を阻害する化合物の能力を上昇又は低下させ、それによって、治療結果を例とする所望の最終結果を達成することを意味する。
【0082】
「本明細書で示す標的を調節する(アゴナイズする、アンタゴナイズする)能力を有する化合物を得る」における「得る」の用語は、購入、合成、又はその他の方法でのその化合物の入手を含むことを意図している。
【0083】
本明細書で用いる「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という表現は、腸内及び局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内の注射並びに注入が挙げられる。
【0084】
「ポリシクリル」又は「多環式ラジカル」という用語は、隣接する2個の環に対して2若しくは3個以上の炭素が共通である2若しくは3個以上の環(例:シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/又はヘテロシクリル)のラジカルを意味し、例えば、環は「縮合環」である。隣接しない原子を通して連結された環は、「架橋」環と称される。多環の各々の環は、上述のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分、で置換されていてよい。
【0085】
「プロドラッグ」又は「プロ‐ドラッグ」という用語は、インビボで代謝され得る部分を有する化合物を含む。一般に、プロドラッグは、エステラーゼ又はその他の機構により、インビボで活性な薬剤へと代謝される。プロドラッグの例及びその使用は本技術分野で公知である(例えば、Berge et al. (1977) ”Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66: 1‐19、を参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離及び精製段階の間にin situにて、又は精製された化合物の遊離酸の形又はヒドロキシルを別個に適切なエステル化剤と反応させることによって、作製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処理を介してエステルへ転換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換及び無置換、分岐鎖又は非分岐鎖の低級アルキルエステル部分(例:プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ‐低級アルキル‐アミノ低級‐アルキルエステル(例:ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例:アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例:ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール‐低級アルキルエステル(例:ベンジルエステル)、置換(例:メチル、ハロ、又はメトキシ置換基による)アリール及びアリール‐低級アルキルエステル、アミド、低級‐アルキルアミド、ジ‐低級アルキルアミド、及びヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステル及びアシルエステルである。その他の機構によってインビボにて活性形態へと転換されるプロドラッグも含まれる。
【0086】
化合物の「予防的効果量」という言葉は、本明細書のいずれかの式の又は本明細書にてその他の方法で述べられる本発明の化合物の、患者へ単一用量又は複数用量の投与を行った際に本明細書の障害の予防又は治療に効果的である量を意味する。
【0087】
「低減された毒性」という言葉は、インビボで投与された場合に本発明の化合物によって引き起こされる望ましくないいかなる副作用の低減をも含むことを意図している。
【0088】
「スルフヒドリル」又は「チオール」という用語は、‐SHを意味する。
【0089】
「対象」という用語は、本明細書の障害を罹患する可能性のある生物、又は、そうでなければ、本発明の化合物の投与によって恩恵を受ける可能性のある生物を含み、ヒト及び非ヒト動物等である。好ましいヒトは、本明細書で述べる精神神経障害若しくは関連する状態に罹患しているか又は罹患しやすいヒト患者を含む。本発明の「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物を含み、例えば哺乳類、例えばげっ歯類、例えばマウス、及び非哺乳類であり、非ヒト霊長類等であり、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等である。
【0090】
「精神神経障害に罹患しやすい」という用語は、例えば本明細書で示すものを含む精神神経障害を発症するリスクを有する対象、すなわち、精神神経障害若しくはその症状に罹患している対象、精神神経障害若しくはその症状の家族歴又は病歴を有する対象等、を含むことを意図している
【0091】
本明細書で用いる「全身投与」、「全身投与する」、「末梢投与」、及び「末梢投与する」という表現は、患者の系内へ進入し、従って、代謝及びその他の類似のプロセスを受けるように、本発明の化合物、薬剤、又はその他の物質を投与することを意味し、例えば、皮下投与である。
【0092】
本発明の化合物の「治療効果量」という言葉は、患者へ単一用量又は複数用量の投与を行った際に、精神神経障害及び/若しくは精神神経障害の症状を治療又は予防することに、又は、そのような精神神経障害を有する患者の生存を、このような治療を行わない場合に予想されるものよりも延長することに、効果的である薬剤の量を意味する。
【0093】
キラル中心の命名法に関して、立体配置「d」及び「l」という用語は、IUPAC勧告によって定義されている通りである。用語の使用に関しては、ジアステレオマー、ラセミ体、エピマー、及びエナンチオマーは、製剤の立体化学を説明するためにそれらの通常の文脈に従って用いられる。
【0094】
2.本発明の化合物
一つの態様では、本発明は、5‐HT結合活性を(直接又は間接的に)調節する(例:阻害又は刺激する)能力を有する化合物を提供する。
【0095】
一つの実施形態では、本発明は、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する化合物;並びに、その薬理学的に許容されるエステル、塩、及びプロドラッグを提供する。特定の実施形態では、この化合物は、式(I)の化合物である。
【0096】
特定の好ましい化合物は、本明細書で具体的に示す化合物を含む:
【化4】

【表1】

【0097】
C(1)ペンダントフェニル置換基が異なる新規なPAT類似体の合成
予備データにおける結合、機能、3D QSAR、及び分子モデリングの結果に基づいて、発明者らは、(−)‐トランス‐PATのC(1)ペンダントフェニル部分が、5HT2A及び5HT2B受容体を活性化することなく十分な効力を有する5HT2Cアゴニスト活性を提供するのに極めて重要であることを示す。PATペンダントフェニル環の置換及び配向を試験することは、より高い親和性、効力、及び/又は選択性を有する5HT2Cアゴニスト及び/又は5HT2A/5HT2Bアンタゴニストを得るための、5HTの活性部位アミノ酸との最適な立体化学的及び静電気的結合相互作用を見出す手助けとなる。
【表2】

【0098】
本発明は、上述の化合物の薬理学的に許容される塩及びエステルにも関する。
【0099】
天然又は合成異性体は、本技術分野で公知のいくつかの方法によって分離することができる。2種類のエナンチオマーのラセミ混合物を分離するための方法としては、キラル固定相を用いたクロマトグラフィ(例えば、”Chiral Liquid Chromatography,” W.J. Lough, Ed. Chapman and Hall, New York (1989)を参照)が挙げられる。エナンチオマーは、従来の分割技術によって分離することもできる。例えば、ジアステレオマー塩の形成及び分別結晶を用いてエナンチオマーを分離することができる。カルボン酸のエナンチオマーの分離では、ブルシン、キニン、エフェドリン、及びストリキニーネ等のエナンチオマー的に純粋であるキラル塩基を添加することによってジアステレオマー塩を形成することができる。別の選択肢として、メントール等のエナンチオマー的に純粋であるキラルアルコールによってジアステレオマーエステルを形成し、続いてそのジアステレオマーエステルの分離及び加水分解によって、エナンチオマー的に濃縮された遊離のカルボン酸を得ることができる。アミノ化合物の光学異性体の分離では、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸、若しくは乳酸等のキラルカルボン酸又はスルホン酸を添加することにより、ジアステレオマー塩を形成することができる。
【0100】
別の実施形態によると、本発明は、本明細書で述べる方法によって作製又は識別された、GPCR若しくはその結合ポケットと会合又は結合する化合物を提供する。
【0101】
3.本発明の化合物の使用
一つの実施形態では、本発明は、GPCR標的を調節する(アゴナイズする、アンタゴナイズする)能力を有する化合物の効果量を対象へ投与することにより、GPCRが媒介する障害について対象を治療するための方法を提供する。GPCR障害は、そのようなGPCRによって媒介される疾患及び障害を含む。本明細書で示す化合物、組成物、及び方法は、例えば、精神神経障害(例:肥満、耽溺、不安症、うつ病、統合失調症、及び睡眠障害)、神経変性障害(例:パーキンソン病、アルツハイマー病)、神経障害(例:癲癇)、心血管障害(例:5‐HT2bの媒介による疾患、高血圧症)、胃腸障害(例:過敏性腸症候群)、及び泌尿生殖器障害(例:膀胱制御)、を含む障害の治療又は予防に有用である。特定の実施形態では、対象は哺乳類であり、例えば霊長類、例えばヒトである。
【0102】
一つの実施形態では、本発明は、ヒスタミン標的を調節する(アゴナイズする、アンタゴナイズする)能力を有する化合物の効果量を対象へ投与することにより、ヒスタミン(例:H1、H2、H3、H4)が媒介する障害について対象を治療するための方法を提供する。ヒスタミン障害は、そのようなヒスタミン(例:H1)によって媒介される疾患及び障害を含む。本明細書で示す化合物、組成物、及び方法は、例えば、本明細書の、呼吸促迫症(例:気管支収縮)、下痢症(GI収縮)、浮腫及び低血圧症(jypotension)(例:血管透過性の増加)、アレルギー反応、並びに精神神経、神経変性、及び神経障害を含む障害の治療又は予防に有用である。
【0103】
本実施形態では、本発明の化合物は、5‐HT2c又はその特定のドメインの活性を直接又は間接的に調節する(例:アゴナイズする、刺激する)ことができる。細胞を本発明の化合物と接触させて、5‐HT2cをアゴナイズし、5‐HT2cが媒介する活性を調節することができる。細胞との接触又は対象への本発明の化合物の投与は、不要な若しくは望ましくない5‐HT2Cが媒介する活性又は5‐HT2cが媒介する障害の影響を受けているか、又はその影響を受けやすい細胞の処理、又は対象の治療の一つの方法である。
【0104】
一つの実施形態において、5‐HT2c障害に罹患している又は罹患しやすい対象の治療方法は、5‐HT2cの活性を直接又は間接的に調節する能力を有する化合物の治療効果量を、それを必要とする対象へ投与し、それによって対象を治療することを含む。代表的な化合物は、本明細書で述べる化合物を含む(例:PAT等)。
【0105】
従って、一つの実施形態では、本発明は、5‐HT2cをアゴナイズする能力を有する化合物の効果量を対象へ投与することにより、5‐HT2C障害について対象を治療するための方法を提供する。
【0106】
特定の実施形態では、本発明の方法は、本発明の化合物の治療効果量を、別の薬理学的に活性である化合物と組み合わせて対象へ投与することを含む。使用することができる他の薬理学的に活性である化合物は、その全内容が明確に参照することで本明細書に組み入れられる、Harrison’s Principles of Internal Medicine, Thirteenth Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw‐Hill N.Y., NY; 及び、the Physicians Desk Reference 50th Edition 1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.、に記載されている。本発明の化合物及び薬理学的に活性である化合物は、同一の医薬組成物として、又は異なる医薬組成物として(同時に、若しくは別々の時に)対象へ投与してよい。
【0107】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、従来の抗肥満(例:脂肪吸収阻害剤)との併用療法に用いることができる。特定の5‐HT薬剤(例:5‐HTa又は5‐HTbアンタゴニスト)は、望ましくない副作用プロファイルを有するため、特定の患者に対して最適とは言えないか、又は適切ではない傾向にあり、すなわち、これらの薬剤は、心血管的な(例:心臓弁膜症、肺高血圧症、心毒性)若しくは精神的な望ましくない及び 又は生命に関わる副作用プロファイルを示す。
【0108】
本発明の化合物の治療効果量又は予防効果量の決定は、医師又は獣医(「主治医である臨床医」)が、当業者として、公知の技術の使用及び類似の状況下で得られた結果の観察によって容易に行うことができる。用量は、治療中の状態の重症度及び使用される特定の化合物といった、主治医である臨床医の判断による患者の要求事項に応じて様々となり得る。治療効果量又は用量、及び予防効果量又は用量の決定に際しては、主治医である臨床医によって数多くの因子が考慮され、これらに限定されないが:関与する具体的な5‐HT2c障害;特定の薬剤の薬力学的特性、並びにその投与方法及び経路;治療の所望される経過;哺乳類の種;その大きさ、年齢、及び一般的健康状態;関与する具体的な疾患;疾患の関与の度合い若しくは重症度;個々の患者の反応;投与された特定の化合物;投与方法;投与された製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択された投与計画;併用治療の種類(すなわち、本発明の化合物と他の共投与された治療薬との相互作用);並びに、その他の該当する状況、が挙げられる。
【0109】
治療は、化合物の最適用量未満である少ない用量から開始してよい。その後、その状況下での最適の効果に達するまで、少ない増加量で用量を増加させてよい。便宜上、所望される場合は、1日の全用量を分割し、1日の間に一部分ずつ投与してよい。本発明の化合物の治療効果量及び予防効果量は、1日あたり体重1キログラムに対して約0.1ミリグラム(mg/kg/日)から約100mg/kg/日までの範囲で変わると考えられる。
【0110】
イヌ、ニワトリ、及びげっ歯類を例とする動物における5‐HT2c障害の予防又は治療に効果的であると判断された化合物は、ヒトにおける5‐HT2c障害の治療にも有用であり得る。ヒトにおける5‐HT2c疾患治療の当業者であれば、動物実験で得られたデータに基づいて、ヒトに対するこの化合物の用量及び投与経路が分かるであろう。一般に、ヒトにおける用量及び投与経路は、動物におけるものと類似である考えられる。
【0111】
5‐HT2C障害に対する予防的治療を必要とする患者の識別は、十分に当業者の能力及び知識の範囲内である。本主題の方法によって治療可能である5‐HT2C障害を発症するリスクを有する患者を識別するための方法のうちのいくつかは、医療の分野で認識されており、家族歴、及び対象である患者におけるその疾患状態の発症に関連するリスク因子の存在等である。当業者である臨床医であれば、例えば、臨床試験、身体検査、及び病歴/家族歴を用いることにより、そのような候補患者を容易に識別することができる。
【0112】
対象における治療の効果を評価する方法は、本技術分野で公知の方法によって5‐HT2C障害の治療前の程度を測定し(例:5‐HT2C障害に対するマーカーのレベルの測定)、次に本発明に従う本明細書で示す化合物の治療効果量をその対象へ投与することを含む。その化合物を投与してから適切な期間の後(例:1日、1週間、2週間、1ヶ月、6ヶ月)、5‐HT2C障害の程度を再度測定する。5‐HT2C障害の程度又は侵襲性の調節(例:低減)が、治療の効果を示す。5‐HT2C障害の程度又は侵襲性は、治療期間を通して定期的に測定してよい。例えば、5‐HT2C障害の程度又は侵襲性を、数時間毎、数日毎、又は数週間毎にチェックして、治療のさらなる効果を評価してよい。5‐HT2C障害の程度又は侵襲性の低減は、この治療が効果的であることを示している。説明した方法を用いて、5‐HT2C障害の調節化合物による治療から恩恵を受ける可能性のある患者のスクリーニング又は選別を行うことができる。
【0113】
本明細書で用いる「対象から生物学的サンプルを得る」とは、本明細書で述べる方法に使用するためのサンプルを得ることを含む。生物学的サンプルについては上記で述べている。
【0114】
さらに別の態様は、5‐HT2C又はその特定のドメインの相互作用を調節する化合物を識別する方法を提供する。この方法は、試験化合物の存在下及び/又は非存在下にて、5‐HT2C若しくはその特定のドメインの結晶構造(任意にアポ型又は複合体)を得ること、又は5‐HT2C若しくはその特定のドメインの結晶構造(任意にアポ型又は複合体)に関連する情報を得ること、を含むことができる。化合物は、次に、5‐HT2Cの構造若しくはその特定のドメイン(例:結晶構造の結合部位)の中又はその上でコンピュータによるモデリングを行い、5‐HT2C若しくはその特定のドメインと試験化合物との間の相互作用の安定化を予測することができる。可能性のある調節化合物が識別されると、化合物は、本明細書で識別されるもの及び本技術分野で公知の競合アッセイ等の細胞アッセイを用いてスクリーニングすることができる。この方法で識別された化合物は、治療薬として有用である。
【0115】
別の態様では、本発明の化合物は、薬理学的に許容される担体又は希釈剤と共に、治療効果量でパッケージされる。この組成物は、5‐HT2C障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療するために製剤し、5‐HT2C障害に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療するための説明書と共にパッケージすることができる。
【0116】
別の態様では、本発明は、5‐HT2C疾患を調節するための方法を提供する。一つの実施形態では、本発明に従う5‐HT2C(又は5‐HT2C障害)を調節する方法は、5‐HT2C(又は5‐HT2C障害)を調節する能力を有する化合物、若しくはその特定のドメインと細胞を接触させることを含む。いずれかの実施形態では、この接触は、例えば、細胞が生存若しくは存在している成長培地を例とする細胞の周囲の流体へ化合物を添加することにより、インビトロにて行うことができる。接触は、化合物を細胞へ直接接触させることによって行うこともできる。別の選択肢として、接触は、例えば対象を通って化合物が通過することにより、インビボで行なうことができ;例えば、投与後、投与経路に応じて、化合物は消化管若しくは血液流を通って移動することができ、又は治療を必要とする細胞へ直接適用若しくは投与することができる。
【0117】
別の態様では、対象における5‐HT2C障害を阻害する方法は、本発明の化合物(すなわち、本明細書で述べる化合物)の効果量を対象へ投与することを含む。投与は、薬学の分野で公知であるいかなる投与経路で行ってもよい。対象は、5‐HT2C障害を有していても、5‐HT2C障害を発症するリスクを有していても、又は5‐HT2C障害への感受性を増加させる可能性のある状況への予想される若しくは予想されない曝露の前の予防治療を必要としていてもよい。
【0118】
一つの態様では、本発明の化合物で治療中の対象の進行をモニタリングする方法は、5‐HT2C障害の治療前の状態(例:進行、標的プロファイル、マーカープロファイル)を測定し、本発明の化合物の治療効果量をその対象へ投与し、その化合物による治療の開始期間後の5‐HT2C障害の状態(例:進行、標的プロファイル、マーカープロファイル)を測定することを含み、ここで、状態の調節が治療の効果を示す。
【0119】
対象は、5‐HT2C障害のリスクを有していても、5‐HT2C障害の症状を示していても、5‐HT2C障害に罹患しやすい状態であっても、及び/又は5‐HT2C障害を有すると診断されていてもよい。
【0120】
状態の調節により、対象がこの治療に対する良好な臨床反応を有し得ることが示される場合、この対象は、この化合物で治療することができる。例えば、この対象には、この化合物の1若しくは複数回の治療効果用量を投与することができる。
【0121】
別の態様では、試験化合物を評価するための方法は、5‐HT2C若しくはその特定のドメインを試験化合物と接触させること(複合体)、及び接触に続いて結合相互作用を評価することを含み、ここで、基準値と比較した複合体の安定性の変化が、試験化合物が複合体の安定性を調節することの証拠である。
【0122】
5‐HT2C若しくはその特定のドメインの複合体は、コンピュータによってモデリングされたものであってよく、又は、細胞内の複合体、細胞から単離されたもの、組換えによって発現されたもの、細胞若しくは組換え発現系から精製又は単離されたもの、又は細胞若しくは組換え発現系から部分的に精製又は単離されたもの、であってもよい。
【0123】
本発明のキットは、対象の5‐HT2C障害を治療するためのキットを含む。キットは、本明細書で述べる化合物を例とする本発明の化合物、その薬理学的に許容されるエステル、塩、及びプロドラッグ、並びに使用説明書を含んでよい。使用説明書は、用量、送達の方法、キットの保存等に関する情報を含んでよい。キットは、試験化合物を例とする試薬、緩衝剤、培地(例:細胞成長培地)、細胞等をさらに含んでよい。試験化合物は、既知の化合物又は新たに発見された化合物を含んでよく、例えば化合物のコンビナトリアルライブラリーである。本発明の1若しくは2個以上のキットを合わせてパッケージしてよく、例えば、5‐HT2C障害に対する治療の効力を評価するためのキットを、本発明に従って5‐HT2C障害に対する治療を受けている対象の進行をモニタリングするためのキットと共にパッケージしてよい。
【0124】
本方法は、例えばインビトロ若しくはエキソビボにて、培養中の細胞に対して実施してよく、又は、例えばインビボにて、動物の対象中に存在する細胞に対して実施してもよい。本発明の化合物は、例えば形質転換細胞等の細胞の初代培養物を用いて、最初にインビトロで試験を行ってよい。
【0125】
本方法は、例えばインビトロ若しくはエキソビボにて、培養中の細胞に対して実施してよく、又は、例えばインビボにて、動物の対象中に存在する細胞に対して実施してもよい。本発明の化合物は、げっ歯類胎仔(例えば、米国特許第5,179,109号‐ラット胎仔組織培養、参照)、又はその他の哺乳類(例えば、米国特許第5,089,517号‐マウス胎仔組織培養、参照)、又は非哺乳類動物モデルの気道からの細胞を用いて、最初にインビトロで試験を行ってよい。
【0126】
別の選択肢として、本発明の化合物の効果は、動物モデルを用いてインビボにて特性決定してもよい。
【0127】
4.医薬組成物
本発明は、効果量の化合物及び薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。さらなる実施形態では、効果量は、既述のように、5‐HT2C障害の治療に効果的である。
【0128】
実施形態では、本発明の化合物は、薬理学的に許容される製剤を用いて対象に投与され、例えば、薬理学的に許容される製剤の対象への投与後少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間、又は4週間、本発明の化合物を持続送達する薬理学的に許容される製剤である。
【0129】
特定の実施形態では、これらの医薬組成物は、対象への局所又は経口投与に適している。他の実施形態では、以下で詳細に述べるように、本発明の医薬組成物は、固体又は液体の形態で投与するために特に製剤することができ、以下に示すもの:(1)水薬(水性若しくは非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末剤、顆粒剤、ペースト剤を例とする経口投与;(2)例えば滅菌溶液若しくは懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内、若しくは静脈内注射による非経口投与;(3)例えばクリーム、軟膏、若しくは皮膚へ適用されるスプレーとしての局所投与;(4)例えばペッサリー、クリーム、若しくはフォームとしての膣内又は直腸内投与;又は(5)例えば本化合物を含有する水性エアロゾル、リポソーム製剤、若しくは固体粒子としてのエアロゾル、に適合されたものを含む。
【0130】
「薬理学的に許容される」という表現は、確かな医学的判断の範囲内にて、妥当なリスク対効果比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは困難を伴わない、ヒト及び動物の組織との接触に用いるのに適している本発明の化合物、そのような化合物を含有する組成物、及び/又は剤形を意味する。
【0131】
「薬理学的に許容される担体」という表現は、薬理学的に許容される物質、組成物、又は運搬体を含み、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化剤等であり、対象となる化学物質を一つの器官若しくは身体の一部分から別の器官若しくは身体の別の一部分へ運搬又は輸送することに関与するものである。各担体は、その製剤の他の成分と適合し、患者に対して有害ではないという意味で「許容される」ものである。薬理学的に許容される担体として作用することができる物質のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコール、及びスクロース等の糖類;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン等のデンプン;(3)セルロース、並びにカルボキシメチルセルロールナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース等のセルロース誘導体;(4)粉末トラガカントガム;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び坐薬ロウ等の賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油等の油類;(10)プロピレングリコール等のグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール等のポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;(13)カンテン;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)脱パイロジェン水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;並びに(21)医薬製剤に用いられるその他の無毒性の適合性物質、が挙げられる。
【0132】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等の湿潤剤、乳化剤、並びに滑沢剤、さらには着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び香料、保存剤、並びに酸化防止剤も組成物中に存在していてよい。
【0133】
薬理学的に許容される酸化防止剤の例としては:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム(sodium metabisulfite)、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ‐トコフェロール等の油溶性酸化防止剤;並びに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート化剤、が挙げられる。
【0134】
本発明の化合物を含有する組成物には、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内、エアロゾル、及び/又は非経口投与に適するものが含まれる。この組成物は、都合良く単位剤形として提供することができ、薬学の分野で公知のいかなる方法によっても作製することができる。担体物質と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分の量は、治療中のホスト、特定の投与方法、に応じて様々となる。担体物質と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分の量は、一般的には、治療効果をもたらす化合物量である。一般的に、全体を100パーセントとして、この量は約1パーセント乃至約99パーセントの範囲の活性成分であり、好ましくは約5パーセント乃至約70パーセントであり、より好ましくは約10パーセント乃至約30パーセントである。
【0135】
これらの組成物を作製する方法は、本発明の化合物を、担体、及び、任意に、1若しくは2種類以上の補助成分(accessory ingredients)と組み合わせる工程を含む。一般的に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体、又は細かく粉砕された固体担体、又はその両方と均一に及び密接に組み合わせ、次に、必要に応じてその生成物を成形することによって作製される。
【0136】
経口投与に適する本発明の組成物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味付けした基材を用い、通常は、スクロース及びアラビアガム又はトラガカントガム)、粉末剤、顆粒剤の形態で、又は、水性若しくは非水性液体中の溶液剤又は懸濁液剤として、又は水中油若しくは油中水型液体エマルジョン剤として、又はエリキシール剤若しくはシロップ剤として、又はパステル剤(ゼラチン及びグリセリン、若しくはスクロース及びアラビアガム等の不活性基材を用いる)として、及び/又は口腔洗浄剤として等であってよく、各々は、所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する。化合物は、巨丸剤、舐剤、又はペースト剤として投与してもよい。
【0137】
経口投与のための本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末剤、顆粒剤等)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム等の1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される担体、並びに/又は、以下に挙げるもののいずれか:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/若しくはケイ酸等の充填剤又は増量剤(extenders);(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/若しくはアラビアガム等のバインダー;(3)グリセロール等の湿潤剤(humectants);(4)カンテン、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤(disintegrating agents);(5)パラフィン等の溶解遅延剤(solution retarding agents);(6)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(7)例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤(wetting agents);(8)カオリン及びベントナイトクレイ等の吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物等の滑沢剤;並びに(10)着色剤、と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含んでいてよい。類似の種類の固体組成物は、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を用い、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として用いてもよい。
【0138】
錠剤は、任意に1若しくは2種類以上の補助成分と共に、圧縮又は成型することによって作製することができる。圧縮錠剤は、バインダー(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤若しくは分散剤、を用いて作製することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末活性成分の混合物を適切な機械で成型することによって作製することができる。
【0139】
本発明の医薬組成物の錠剤、並びに糖衣剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤等のその他の固体剤形は、任意に、腸溶コーティング及び医薬製剤の分野で公知のその他のコーティング等のコーティング及びシェルを用いて印字(scored)又は作製してよい。これらは、例えば、所望の放出プロファイルが得られる種々の割合のヒドロキシプロピルセルロース、その他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はミクロスフェアを用いて、その中の活性成分が緩やかな又は制御された放出となるように製剤することもできる。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過により、又は滅菌剤を組み合わせて、使用の直前に滅菌水若しくはその他のある種の滅菌注射用媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態とすることにより、滅菌することができる。これらの組成物は、任意に不透明化剤を含んでもよく、及び、胃腸管の特定の部分でのみ又はそこで優先的に、任意に遅延された形で、活性成分を放出するような組成物であってよい。使用することができる埋め込み組成物(embedding compositions)の例としては、ポリマー物質及びロウが挙げられる。活性成分は、適切な場合は、1若しくは2種類以上の上述の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0140】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形としては、薬理学的に許容されるエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、及びエリキシール剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、本技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含んでよく、例えば、水又はその他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル等の可溶化剤並びに乳化剤、並びにこれらの混合物等である。
【0141】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味料、香味料、着色料、香料、並びに保存剤等のアジュバントを含んでよい。
【0142】
懸濁液剤は、本発明の活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、カンテン、及びトラガカントガム、並びにこれらの混合物等の懸濁剤を含んでよい。
【0143】
直腸内又は膣内投与のための本発明の医薬組成物は、坐薬として提供することができ、これは、1若しくは2種類以上の本発明の化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ロウ、又はサリチレートを含み、室温では固体であるが体温では液体であり、従って直腸腔又は膣腔内で溶融して活性薬剤を放出する、1若しくは2種類以上の適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって作製することができる。
【0144】
膣内投与に適する本発明の組成物には、本技術分野で適切であることが公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤も含まれる。
【0145】
本発明の化合物の局所又は経皮投与のための剤形としては、粉末剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、溶液剤、パッチ剤、及び吸入剤が挙げられる。本発明の活性化合物は、滅菌条件下にて、薬理学的に許容される担体と、及び必要であり得る保存剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合してよい。
【0146】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、及びジェル剤は、本発明の化合物に加えて、動物性及び植物性油脂、油類、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物等の賦形剤を含んでよい。
【0147】
粉末剤及びスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミドパウダー、又はこれらの物質の混合物等の賦形剤を含んでよい。スプレー剤は、クロロフルオロ炭化水素、並びにブタン及びプロパン等の揮発性無置換炭化水素等の慣例的な噴射剤をさらに含んでよい。
【0148】
本発明の化合物は、別の選択肢として、エアロゾルによって投与することができる。これは、この化合物を含有する水性エアロゾル、リポソーム製剤、又は固体粒子を作製することによって達成される。非水性(例:フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を用いることも可能である。化合物の分解をもたらし得るせん断力への薬剤の曝露が最小限に抑えられることから、超音波噴霧器(sonic nebulizers)が好ましい。
【0149】
通常、水性エアロゾルは、薬剤の水性溶液又は懸濁液を従来の薬理学的に許容される担体及び安定化剤と共に製剤することによって作製される。担体及び安定化剤は、特定の化合物の要求事項によって様々であるが、通常は、非イオン性界面活性剤(ツイーン、プルロニック、又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシン等のアミノ酸、緩衝剤、塩、糖類、又は糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは、一般的に、等張溶液から作製される。
【0150】
経皮パッチ剤は、本発明の化合物を身体へ制御送達させるという追加の利点を有する。そのような剤形は、薬剤を適切な媒体へ溶解又は分散させることによって作製することができる。吸収促進剤を用いて、皮膚を通しての活性成分の流動を増加させることもできる。そのような流動の速度は、速度制御膜の提供、又はポリマーマトリックス若しくはジェルへの活性成分の分散によって制御することができる。
【0151】
点眼用製剤、眼用軟膏剤、粉末剤、溶液剤等も、本発明の範囲内であることを意図している。
【0152】
非経口投与に適する本発明の医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、制菌剤、製剤を意図するレシピエントの血液と等浸透圧にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含んでよい、1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される滅菌等張水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン、又は使用直前に滅菌注射溶液若しくは分散液へ再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて、1若しくは2種類以上の本発明の化合物を含む。
【0153】
本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油等の植物性油、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、分散液の場合は必要である粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる
【0154】
これらの組成物はさらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントを含んでもよい。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸等を含有させることによって確保することができる。糖類、塩化ナトリウム等の等張剤(isotonic agents)を組成物に含有させることが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅延させる剤を含有させることにより、注射用医薬剤形(injectable pharmaceutical form)の吸収時間を延長することができる。
【0155】
場合によっては、薬剤の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収を緩やかにすることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性又は非晶性物質の懸濁液を使用することによって達成することができる。この場合、薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、そして次に、それは結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。別の選択肢として、非経口投与された薬剤剤形の吸収の遅延は、薬剤を油系媒体中に溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0156】
注射用デポー剤形は、本発明の化合物のマイクロカプセルマトリックスを、ポリラクチド‐ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に形成することによって作製される。ポリマーに対する薬剤の割合、及び用いた特定のポリマーの性質に応じて、薬剤の放出速度を制御することができる。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルソエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、身体組織との適合性を有するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬剤を包括することによっても作製される。
【0157】
本発明の化合物を薬剤としてヒト及び動物へ投与する場合、それ自体を投与してよく、又は、例えば0.1乃至99.5%(より好ましくは0.5乃至90%)の活性成分を薬理学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として投与してもよい。
【0158】
選択された投与経路に関わらず、適切な水和された形態で用いてよい本発明の化合物、及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって、薬理学的に許容される剤形へ製剤される。
【0159】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベル及び投与の経過は、特定の患者、組成物、及び投与方法に対して、その患者にとって有毒とならずに所望の治療反応を達成するのに効果的である活性成分の量が得られるように、様々に変更してよい。典型的な用量範囲は、1日あたり0.1乃至10mgである。
【0160】
本発明の化合物の好ましい用量は、患者が許容することができ、重大な副作用を起こさない最大量である。好ましくは、本発明の化合物は、体重1kgあたり約0.001mg乃至約100mg、体重に対して約0.001乃至約10mg/kg、又は約0.001mg乃至約100mg/kgの濃度で投与される。上記で挙げた値に対する中間の範囲も本発明の一部であることを意図している。
【0161】
6.スクリーニングの方法及びシステム
別の態様では、本発明は、本明細書で明らかにされる一方若しくは両方の結合ポケット、又は類似の形状の相同的結合ポケットの構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。これらのデータでコード化されたそのような記憶媒体は、そのような結合ポケットを含む分子又は分子複合体の三次元画像を、コンピュータスクリーン又は類似の表示装置上で表示することができる。
【0162】
本発明は、前述の結合ポケットに結合する化合物を設計し、評価し、識別するための方法を提供する。従って、結合ポケットを含む分子又は分子複合体の三次元画像構造が、コンピュータによって作製される。
【0163】
別の実施形態では、本発明は、5‐HT2C若しくはそのドメインの構造座標によって決定される分子又は分子複合体の三次元画像、又は該分子若しくは分子複合体のホモログの三次元画像、を作製するためのコンピュータを提供し、ここで、該ホモログは、該アミノ酸のバックボーン原子からの二乗平均偏差が2.0(より好ましくは1.5)オングストローム以下である結合ポケットを含む。
【0164】
典型的な実施形態では、このコンピュータ又はコンピュータシステムは、本技術分野で従来からのものであるコンポーネントを含んでよく、例えば、米国特許第5,978,740号及び/又は第6,183,121号(参照することで本明細書に組み入れられる)に開示のものである。例えば、コンピュータシステムは、中央処理装置(「CPU」)、動作メモリ(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)、又は「コア」メモリであってよい)、大容量記憶メモリ(1若しくは2個以上のディスクドライブ又はCD‐ROMドライブ)、1若しくは2個以上のブラウン管(CRT)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ(LCD)端末、1若しくは2個以上のキーボード、1若しくは2個以上の入力ライン、及び1若しくは2個以上の出力ライン、を有するコンピュータを含んでよく、これらはすべて従来のシステムバスによって互いに連結されている。
【0165】
本発明の機械読み取り可能なデータは、データラインによって連結された1若しくは複数個のモデムの使用を介してコンピュータへ入力してよい。別の選択肢として又は追加的に、入力ハードウェアは、CD‐ROMドライブ、ディスクドライブ、又はフラッシュメモリを含んでよい。ディスプレイ端末と組み合わせて、キーボードも入力装置として用いてよい。
【0166】
出力ラインによってコンピュータと連結される出力ハードウェアは、従来の装置によって同様に実装してよい。例として、出力ハードウェアは、QUANTA又はPYMOL等のプログラムを用いて本発明の結合ポケットの画像を表示するために、CRT又はLCDディスプレイ端末を含んでよい。出力ハードウェアはさらに、プリンター、又はシステムの出力を後の使用のために保存するためのディスクドライブも含んでよい。
【0167】
実行中は、種々の入力及び出力装置の使用の調整、大容量記憶メモリからのデータアクセス並びに動作メモリへの及び動作メモリからのデータアクセスの調整、並びにデータ処理工程の順序の決定をCPUが行う。本発明の機械読み取り可能なデータの処理には、市販のソフトウェア等、数多くのプログラムを使用することができる。
【0168】
本発明による機械読み取り可能なデータの保存のための磁気記憶媒体は、従来のものであってよい。磁気データ記憶媒体は、上述のコンピュータシステム等のシステムによって実施可能である機械読み取り可能なデータでコード化することができる。この媒体は、従来のものであってよい適切な基材、及び一方若しくは両面に、これも従来のものであってよい適切なコーティングを有し、極性若しくは配向を磁気によって変化させることができる磁気ドメインを含む従来のフロッピー(登録商標)ディスク又はハードディスクであってよい。この媒体は、ディスクドライブ又はその他のデータ記憶装置の軸を受けるための開口部(示さず)を有していてもよい。
【0169】
媒体の磁気ドメインは、本明細書で述べるコンピュータシステム等のシステムによる実行のために、本明細書で述べるもの等の機械読み取り可能なデータを従来のものであってよい方法でコード化するように分極化又は配向化される。
【0170】
光読み取り可能なデータ記憶媒体も、機械読み取り可能なデータ又は命令一式によってコード化することができ、これはコンピュータシステムによって実行することができる。この媒体は、従来のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD‐ROM)、又は光読み取り及び磁気光書き込みが可能である磁気光ディスク等の書き換え可能媒体であってよい。
【0171】
CD‐ROMの場合、公知のように、ディスクコーティングは反射性であり、機械読み取り可能データをコード化するための複数のピットが刻まれている。ピットの配列は、コーティング表面から反射するレーザー光によって読み取られる。実質的に透明であることが好ましい保護コーティングが、反射性コーティングの上に施される。
【0172】
磁気光ディスクの場合、公知のように、データ記録コーティングにピットはなく、レーザーによってある温度を超えて加熱すると極性又は配向を磁気的に変化させることができる複数の磁気ドメインが存在する。ドメインの配向は、コーティングから反射したレーザー光の偏光を測定することによって読み取ることができる。ドメインの配列によって、上述のデータがコード化される。
【0173】
構造データは、結合ポケットを含む分子又は分子複合体の三次元構造へこれらの座標を翻訳するためのソフトウェアがプログラムされたコンピュータと合わせて用いられた場合、創薬等の種々の目的に用いることができる。
【0174】
例えば、データによってコード化された構造は、その化学的実体と会合する能力について、コンピュータ計算によって評価することができる。5‐HT2C又はその特定のドメインの結合ポケットと会合する化学的実体は、可能性のある薬剤候補である。別の選択肢として、このデータによってコード化された構造は、コンピュータスクリーン上に三次元画像として表示することができる。これにより、構造の視覚的な検査、並びにこの構造の化学的実体との会合についての視覚的な検査が可能となる。
【0175】
従って、別の実施形態によると、本発明は、a)5‐HT2C若しくはその特定のドメインの結合ポケットを含む分子又は分子複合体、又はb)該分子又は分子複合体のホモログと会合する化学的実体の能力を評価するための方法に関し、ここで、該ホモログは、該アミノ酸のバックボーン原子からの二乗平均偏差が2.0(より好ましくは1.5)オングストローム以下である結合ポケットを含む。
【0176】
この方法は:
i)コンピュータ計算による手段を用いて化学的実体と分子又は分子複合体の結合ポケットとの間のフィッティング作業(fitting operation)を行う工程と;
ii)このフィッティング作業の結果を分析して化学的実体と結合ポケットとの間の会合を定量する工程と、
を含む。本明細書で用いる「化学的実体」という用語は、化学化合物、少なくとも2個の化学化合物の複合体、及びそのような化合物又は複合体の断片を意味する。
【0177】
本発明に従う5‐HT2C又はその特定のドメインの結合ポケットと結合する化合物の設計では、一般にいくつかの因子が考慮される。第一に、この実体は、5‐HT2C若しくはその特定のドメインに関連する結合ポケットの一部又はすべてと物理的に及び構造的に会合する能力を有する必要がある。この会合において重要である非共有結合的な分子相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、及び静電相互作用が挙げられる。第二に、この実体は、5‐HT2C又はその特定のドメインの結合ポケットと直接会合することが可能となるコンフォメーションをとることが可能である必要がある。実体の特定の部分はこのような会合に直接関与しないが、実体のこのような部分は、それでも分子の全体としてのコンフォメーションに影響を与え得る。これは、さらに効力に対して大きな影響を与え得る。このようなコンフォメーションに関する要求事項としては、全体としての三次元構造及び結合ポケットのすべて若しくは一部に対する化学的実体の配向、又は、結合ポケットと直接相互作用するいくつかの化学的実体若しくはそのホモログを含む実体の官能基間の間隔が挙げられる。
【0178】
5‐HT2C又はその特定のドメインに対する化学的実体の結合による考えられる影響は、実際の合成の前に分析し、コンピュータモデリングの技術を用いて試験することができる。ある実体の理論構造により、それと標的結合ポケットとの間の相互作用及び会合が不十分であることが示唆される場合、この実体の試験は不要とされる。しかし、コンピュータモデリングによって強い相互作用が示される場合は、この分子を合成し、結合ポケットへの結合能について試験してよい。これは、例えば、本明細書で述べる又は本技術分野で公知のアッセイを例えば用いて、5‐HT2C又はその特定のドメインの結合活性を調節する分子の能力を試験することによって達成することができる。この方法により、効力のない化合物の合成を回避することができる。
【0179】
5‐HT2C又はその特定のドメインの(例:結合ポケット)の考えられる結合物は、化学的実体又はその断片を、5‐HT2C又はその特定のドメインに関連する結合ポケットと会合するその能力についてスクリーニングして選別する一連の工程から成る手段によって、コンピュータ計算による評価を行うことができる。
【0180】
当業者であれば、5‐HT2C又はその特定のドメインに関連する結合ポケットと会合するその能力について、化学的実体又は断片をスクリーニングするためのいくつかの方法のうちの1つを用いることができる。このプロセスは、例えば、5‐HT2C若しくはその特定のドメインに関連する結合ポケットを、本明細書で述べる5‐HT2C若しくはその特定のドメインの構造座標に基づいて、又は機械読み取り可能な記憶媒体から作製された類似の形状を決定するその他の座標に基づいて、コンピュータスクリーン上で視覚的に検査することから始めることができる。次に、上記で定めたその結合ポケット内にて、選択された断片又は化学的実体を種々の配向で配置したり又はドッキングしたりすることができる。ドッキングは、Quanta及びDOCK等のソフトウェアを用い、続いてCHARMM及びAMBER等の標準的な分子力学の力場によるエネルギー最小化並びに分子動力学によって実行することができる。
【0181】
専用のコンピュータプログラム(例:本技術分野で公知の、及び/又は市販の、及び/又は本明細書で述べる)も、断片又は化学的実体の選別プロセスの補助とすることができる。
【0182】
適切な相互作用/結合を起こす化合物の化学的実体又は断片が選別されると、これらは単一の化合物又は複合体へ組み立てることができる。組み立ては、コンピュータスクリーン上に表示される三次元画像上でのその断片同士の関係を、標的結合ポケットの構造座標と関連させて視覚的に検査することによって開始することができる。
【0183】
上述のように、各々の結合ポケットに対して、1回につき1つの断片又は化学的実体を段階的に構築していく代わりに、相互作用を起こす又はその他の結合する化合物は、全体として又は「新たに」、空の結合部位を用いて又は任意に相互作用を起こす/結合する既知化合物のある部分を含めて、設計してよい。本技術分野で公知の新たにリガンドを設計する方法が多く存在し、それらの一部は市販されている(例:Tripos Associates,セントルイス,ミズーリ州、より入手可能であるLeapFrog)。
【0184】
その他の分子モデリング技術も、本発明に従って用いることができる[例えば、N.C. Cohen et al., ”Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry, J. Med. Chem., 33, pp.883‐894 (1990)、参照; さらに、M.A. Navia and M.A. Murcko, ”The Use of Structural Information in Drug Design”, Current Opinions in Structural Biology, 2, pp.202‐210 (1992); L.M. Balbes et al., ”A Perspective of Modern Methods in Computer‐Aided Drug Design”, in Reviews in Computational Chemistry, Vol. 5, K.B. Lipkowitz and D.B. Boyd, Eds., VCH, New York, pp.337‐380 (1994)、参照; さらに、W.C. Guida, ”Software For Structure‐Based Drug Design”, Curr. Opin. Struct. Biology,, 4, pp.777‐781 (1994)、参照]。
【0185】
化合物が設計又は選別されると、その実体が結合ポケットへ結合することができる効率を試験し、コンピュータ計算による評価によって最適化することができる。
【0186】
化合物の変形エネルギー及び静電相互作用を評価するための特定のコンピュータソフトウェアが本技術分野にて利用可能である。そのような使用のために設計されたプログラムの例としては:AMBER;QUANTA/CHARMM(Accelrys, Inc.,マジソン,ウィスコンシン州)等が挙げられる。これらのプログラムは、例えば、市販のグラフィックワークステーションを用いて実行することができる。その他のハードウェアシステム及びソフトウェアパッケージは、当業者に公知であろう。
【0187】
別の技術は、例えば本明細書で述べるような、化合物の仮想ライブラリのコンピュータよるスクリーニングを含む。何千もの化合物を素早くスクリーニングすることができ、最適な仮想化合物をさらなるスクリーニングのために(例:合成及びインビトロでの試験による)選別することができる。GPCR、5‐HT2c、又はこれらの特定のドメインと全体として若しくは部分的に結合することができる化学的実体又は化合物について、低分子データベースをスクリーニングすることができる。このスクリーニングでは、そのような実体が結合部位へ適合する性質を、形状の相補性又は算出された相互作用エネルギーによって判断することができる。
【0188】
本発明の化合物のさらなる利点は、これまでに報告されている5‐HT2活性化合物と比較して構造の剛性がより高いレベルにあることである。この利点は、GPCR標的(例:ヒスタミン、セロトニン、ムスカリン性、等)及びそのサブファミリーに関する構造情報を調べるのに有用である。そのような情報は、結合ポケットの情報、相同性、配列等を解明するのに有用である。従って、態様では、本発明は、標的の構造情報を解明するためのプローブとしての本明細書で示す化合物の使用を含む。この使用は、本発明の化合物のGPCR標的との相互作用及び機能を研究するための方法を含む(いずれも、「ウェットラボ(wet lab)」実験アッセイ、プローブ、結晶化技術及びプロトコル、タンパク質研究、並びに化合物の画像を用いたコンピュータによる方法を用いる)。
【実施例】
【0189】
本発明を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0190】
実施例1
低分子のデータベース
NCI/DTPは、およそ240,000種類のサンプル(すなわち、プレートされた化合物セット(plated compound set))のリポジトリを維持しており、これらは使用が制限されておらず、癌、AIDS、又は癌若しくはAIDSを有する対象を苦しめる日和見感染症の治療のための新規な薬剤の発見及び開発のために、研究グループへ提供されている。NCI/DTPのプレートされた化合物セットに対する三次元座標は、MDL
SDフォーマットにて入手され(http://www.chm.tu‐dresden.de/edv/vamp65/REFERS/vr_03d.htm)、DOCKユーティリティプログラムSDF2MOL2によってmol2フォーマットへ変換される。リガンドに対する部分原子電荷、溶媒和エネルギー、及びファンデルワールスパラメータを、SYBDBを用いて計算し、プレートされた化合物セットのmol2ファイルへ追加する。
【0191】
実施例2
可能性のある低分子相互作用/結合化合物を識別するためのデータベーススクリーニング
高スループットのスクリーニングを実施する代わりに、コンピュータを用いた分子ドッキングを機能試験と組み合わせる、より迅速で経済的である構造に基づいた手法を用いる。三次元構造が既知である化合物の大きな化学ライブラリを、GPCRの結晶構造上の、SPHGEN(UCSF)によって選別された構造ポケット内に配置する。この手法により、NCI/DTPを通して利用可能であるリソース(原子座標及び低分子)が、DOCK5.1(UCSF)へ組み入れられた改良された分子ドッキング及びスコアリングのアルゴリズムと組み合わせられる。DOCK5.1を用いて、薬剤様の特性を持つ20,000種類の低分子化合物(リピンスキーの法則に従う)を、100種類の異なる配向を持つ5‐HT2c結晶構造へドッキングさせた。最もスコアの高い化合物について、NCI/DTPへ機能試験を依頼する。
【0192】
米国立癌研究所/開発治療プログラム(Developmental Therapeutics Program)(NCI/DTP)は、使用が制限されておらず、組織外の研究グループへ無償にて提供されているおよそ220,000種類のサンプル(プレートされた化合物セット)のリポジトリを維持している。NCI/DTPのプレートされた化合物セットに対する三次元座標は、MDL
SDフォーマットにて入手し、DOCKユーティリティプログラムSDF2MOL2によってmol2フォーマットへ変換した。リガンドに対する部分原子電荷、溶媒和エネルギー、及びファンデルワールスパラメータを、SYBDBを用いて計算し、プレートされた化合物セットのmol2ファイルへ追加した。
【0193】
可能性のある低分子相互作用/結合化合物のコンピュータを用いた分子ドッキング
ドッキングの計算はすべてDOCK v5.1.0を用いて実施する。DOCKの一般的な特徴としては、受容体スフェアに対するリガンドの厳密な配向、AMBERエネルギースコアリング、GB/SA溶媒和スコアリング、接触スコアリング、内部非結合エネルギースコアリング、リガンドフレキシビリティ、及びねじれ及び剛性の両方のシンプレクス最小化が挙げられる。これまでに配布されたバージョンとは異なり、このリリース版は自動マッチング、内部エネルギー(フレキシブルドッキングに使用)、スコアリング機能の階層、及び新たなミニマイザーターミネーション基準(minimizer termination criteria)が組み込まれている。5‐HT2cドメインの分子モデルに対する座標を分子ドッキング計算に用いる。ドッキング部位を作製するために、水分子はすべて除去する。受容体残基のプロトン化は、Sybyl(Tripos,セントルイス,ミズーリ州)を用いて実施する。スフェアのセットを用いて構造を探索し、可能性のある結合ポケットを描画する。分子あたりの配向数は100である。分子間AMBERエネルギースコアリング(vdw+クーロン力(columbic))、接触スコアリング、及びバンプフィルタリング(bump filtering)をDOCK5.1.0で実行する。SETOR及びGRASPを用いて、分子画像イメージを作製する。
【0194】
本明細書で示すように、本発明の代表的な化合物はGPCR調節活性を有する。
【0195】
実施例3
化学物質
(1R,3S)‐(−)‐トランス‐1‐フェニル‐3‐N,N‐ジメチルアミノ‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン(トランス‐PAT、図1)は、過去に報告された手順(Wyrick et al., 1993)を改良して合成した。簡単に述べると、(E)‐1,4‐ジフェニルブタ‐1‐エン‐3‐オンを、ポリリン酸を用い、トルエン中にて還流条件下で環化して(18時間)対応するテトラロン中間体とし、この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィで精製した。このテトラロンを水素化ほう素ナトリウムで還元して、再結晶によって分離可能である(±)‐シス‐及び(±)‐トランス‐テトラロールの混合物とした。(±)‐シス‐テトラロールを、p‐トルエンスルホニルクロリドと共にピリジン中室温にて2日間攪拌し、対応するトシレート中間体を得た。このトシレートを、ナトリウムアジドと共にN,N‐ジメチルホルムアミド中室温にて2日間攪拌することにより、(±)‐トランス‐アジド誘導体が得られ、これを接触水素化によって還元して遊離アミンとした。(±)‐トランス‐アミン化合物を、D‐(−)‐酒石酸を用いてジアステレオマー塩へ変換し、このジアステレオマーを分別再結晶によって分離した。純粋な(1R,3S)‐(−)‐トランス‐アミンをギ酸/ホルムアルデヒドを用いてジメチル化し、フラッシュカラムクロマトグラフィで精製して純粋な(1R,3S)‐(−)‐トランス‐PAT生成物を得た。
【0196】
H]‐ケタンセリン(比活性72.2Ci/mmol)及びミオ‐[2‐H(N)]‐イノシトール(比活性18.5Ci/mmol)は、Perkin‐Elmer Life Science(ボストン,マサチューセッツ州)から購入し、[N‐メチル‐H]‐メスレルギン(比活性72.0Ci/mmol)は、Amersham Biosciences(GE healthcare,ピスカタウェイ,ニュージャージー州)から購入した。その他の化合物は、最高純度のものをSigma‐Aldrich(セントルイス,ミズーリ州)から入手した。
【0197】
クローン細胞培養及びトランスフェクション
細胞株はすべてATCCの提案に従って維持し、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO‐K1、ATCC CCL‐61)は、10%ウシ胎仔血清、1%炭酸水素ナトリウム(Mediatech 25‐035‐CI)、10IU/mlペニシリン、及び10μg/mlストレプトマイシンを補足したHam’s F‐12培地中で、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293は、2mMのL‐グルタミンを含み、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、及び10%ウシ胎仔血清、10IU/mlペニシリン、及び10μg/mlストレプトマイシンを含む1.0mMピルビン酸ナトリウム(90%)を含むように調節された最小必須培地(イーグル)(MEM)中で維持した。細胞は、加湿したインキュベーター中、5%CO下37℃にて増殖させた。ヒト5‐HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C受容体(野生型)をコードするcDNAを、クローン細胞の一過性トランスフェクションのためにUMR(ローラ,ミズーリ州)より購入した。放射性受容体結合アッセイについては、5‐HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C受容体膜を、トランスフェクトされたCHO‐K1細胞から作製した。PLC/IP形成の活性を測定する機能アッセイについては、5‐HT2A及び5‐HT2C受容体に対してはトランスフェクトされたCHO‐K1細胞を用いた。しかし、5‐HT2B受容体に対しては、トランスフェクトされたHEK細胞を用いることで、PLC/IPアッセイにおいてより強固で一貫した結果が得られた(Setola et al., 2005)。トランスフェクションの24時間前に、放射性受容体結合アッセイについては100mmディッシュ中40%のコンフルエンスで、又は機能アッセイについては12‐ウェルプレート中ウェルあたりの細胞数10個にて、細胞を播種した。CHO‐K1細胞は、放射性受容体結合アッセイについては100mmディッシュあたり12μgのプラスミド及び32μlのリポフェクタミン(Invitrogen)で、機能アッセイについてはウェルあたり0.8μgのプラスミド及び4.0μlのリポフェクタミンで一過性にトランスフェクトした。HEK細胞を用いる5‐HT2B機能アッセイについては、24μgのプラスミドDNAを60μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)と混合し、10cmプレート中にて1‐2×10個の細胞をトランスフェクトした。細胞は、さらに24時間、トランスフェクトされた受容体を発現させた(Herrick, 1997)。
【0198】
放射性受容体アッセイ
放射性受容体飽和及び競合結合アッセイは、膜ホモジネートを用い、系統的に密接に関連するヒスタミンHGPCRに対して発明者らが過去に報告したものに類似の方法で実施した(Booth, 2002; Moniri et al., 2004)。[H]‐ケタンセリンを用いて5‐HT2A受容体を放射標識し、5‐HT2B及び5‐HT2C受容体に対しては[H]‐メスレルギンを用いた。簡単に述べると、CHO細胞のトランスフェクションの48時間後に細胞を回収し、0.1%アスコルビン酸及び4.0mM CaClを含むpH7.4の50mMトリス‐HCl(アッセイ緩衝液)中へホモジナイズした。このホモジネートを35,000gにて25分間遠心分離に掛け、得られた膜ペレットをアッセイ緩衝液中へ再懸濁させた。タンパク質濃度は、Lowry et al.の方法によって測定した(Lowry, 1951)。飽和結合アッセイについては、100μgのタンパク質を含む膜懸濁液を、0.1乃至5.0nM[H]‐ケタンセリンと共に(5‐HT2A受容体)、又は0.1乃至20nM[H]‐メスレルギンと共に(5‐HT2B及び5‐HT2C受容体)と共に、全アッセイ緩衝液容量250μlにてインキュベートした。非特異的結合は、10μMメチセルジド(5‐HT2A受容体)又は1.0μMミアンセリン(5‐HT2B及び5‐HT2C受容体)の存在下にて測定した。競合結合アッセイは、同様に、1.0nM[H]‐ケタンセリン又は[H]‐メスレルギンを用いて実施した。放射性受容体結合アッセイ混合物のインキュベーションは37℃で1時間とし、96‐ウェル細胞ハーベスター(Tomtec,ハムデン,コネチカット州)を用いたWhatman GF/Bフィルターを通しての急速ろ過によって終了した。フィルターディスク上に残った膜結合[H]‐放射性リガンドを、液体シンチレーション分光によって定量した。データ解析は、Prism4.03(GraphPad Software Inc., サンディエゴ,カリフォルニア州)のS字曲線フィッティングアルゴリズムを用いた非直線回帰によって行った。リガンドの親和性は、式K0.5=IC50/1+L/Kを用いてIC50のデータをK0.5値へ変換することによるK値の近似として表され、式中、Lは親和性Kを有する放射性リガンドの濃度である(Cheng, 1973)。各実験条件は3個の反復サンプルで実施し、各実験は少なくとも3回実施してSEMを決定した。
【0199】
PLCの活性化及び[H]‐IP形成についてのアッセイ
PLCの機能的活性化は、過去の報告にあるように(Moniri et al., 2004)、セロトニン5‐HT2C受容体を一過性に発現するCHO細胞内、又はセロトニン5‐HT2A若しくは5‐HT2B受容体を一過性に発現するHEK細胞内における[H]‐IP形成として測定した。簡単に述べると、トランスフェクションの32時間後に、イノシトールを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の細胞を、放射標識されたPLC‐β基質ホスファチジルイノシトールの前駆体であるミオ‐[2‐H]‐イノシトールの1.0μCi/mlと共に12時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、10mM塩化リチウム、10μMパージリン(HEK細胞に対しては、5%の透析ウシ胎仔血清を添加)、及び種々の濃度の試験リガンドを含むDMEM中にて、37℃で45乃至60分間インキュベートした。培地を吸引後、50mMのギ酸を用いたインキュベーション(15乃至60分間)によってウェルを細胞溶解に掛けた。水酸化アンモニウムでギ酸を中和し、各ウェルからの内容物を別個のAG1‐X8 200‐400ホルメート樹脂アニオン交換カラムに添加した。液体シンチレーション分光によるトリチウムの計数のために、ギ酸アンモニウム/ギ酸(1.2M/0.1M)を用いて[H]‐IPを直接シンチレーションバイアルへ溶離させた。得られたデータは、Prism4.03の非直線回帰アルゴリズムを用いて解析して、コントロール[H]‐IP形成の平均パーセントとして表し、効力は、最大の基底(構成的)[H]‐IP形成を50%刺激(EC50)又は阻害(IC50)するのに要する濃度±SEM(n≧3)として表す。
【0200】
CHO‐K1及びHEK細胞内での[H]‐IP形成の測定
PLCの機能的活性化は、発明者らの研究室による過去の報告にあるように(Booth, 2002; Moniri et al., 2004)、5‐HT2A若しくは5‐HT2C受容体を一過性に発現するCHO細胞内、及び5‐HT2B受容体を一過性に発現するHEK細胞内における[H]‐IP形成として測定した。簡単に述べると、トランスフェクションの32時間後に、イノシトールを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の細胞を、PLC‐β基質ホスファチジルイノシトールの前駆体であるミオ‐[2‐H]‐イノシトールの1μCi/mlで標識した。次に、細胞を洗浄し、25mM のHepes(pH7.4)、10mMのLiCl、10μMのパージリン(HEK細胞に対しては、5%の透析FBSを添加)、及び種々の濃度の試験リガンドを含むDMEM中にて、37℃で45乃至60分間インキュベートした。培地を吸引後、ウェルを氷上に配置し、50mMのギ酸を用いたインキュベーション(15乃至60分間)によって細胞溶解に掛けた。水酸化アンモニウムでギ酸を中和し、各ウェルからの全内容物を別個のAG1‐X8 200‐400ホルメート樹脂アニオン交換カラムに添加した。液体シンチレーション分光によるトリチウムの計数のために、ギ酸アンモニウム/ギ酸(1.2M/0.1M)を用いて[H]‐IPを直接シンチレーションバイアルへ溶離させた。得られたデータは、Prism4.03の非直線回帰アルゴリズムを用いて解析して、コントロール[H]‐IP形成の平均パーセントとして表し、効力は、最大[H]‐IP形成の50%を得るのに要する濃度(EC50)±SEM(n≧3)として表す。
【0201】
実施例4
放射性受容体アッセイ
5HT‐サブタイプ受容体の放射性リガンド飽和結合分析:トランスフェクトされていないCHO及びHEK細胞から作製された膜を用いた場合は、測定可能な特異的な放射性リガンドの結合は存在しなかった。しかし、5‐HT2A、5‐HT2B、若しくは5‐HT2CcDNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞から作製された膜を用いると、飽和可能な特異的放射性リガンド結合が発生した―[H]‐ケタンセリンで標識された5‐HT2A受容体及び[H]‐メスレルギンで標識された5‐HT2B受容体及び5‐HT2C受容体に対する代表的な結合曲線を図2A乃至2Cに示す。[H]‐ケタンセリンは、5HT2A受容体の見かけ上の単一の集団と結合し(Bmax=1.73±0.11pmol/mgタンパク質)、高い親和性示す(K=0.80±0.03nM)。同様に、[H]‐メスレルギンは、5HT2B受容体の単一の集団を標識し、Bmax=1.13±0.39pmol/mgタンパク質及びK=5.19±0.36nMである。[H]‐メスレルギンは、5HT2C受容体の見かけ上の単一の集団も標識し(Bmax=8.37±0.15pmol/mgタンパク質)、高い親和性示す(K=0.88±0.03nM)。
【0202】
実施例5
(−)‐トランス‐PATの5HT‐サブタイプ受容体親和性を測定するための競合結合分析
(−)‐トランス‐PATに対する代表的な5‐HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C放射性リガンドの置換曲線を図3に示す。曲線はS字型で、3乃至4の対数リガンド濃度単位分をかけて完全な放射性リガンドの置換が達成されており、GPCRの単一集団からのK近辺の放射性リガンド濃度の競合置換に特徴的である。5HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C受容体における(−)‐トランス‐PATに対するK±SEM値は、(それぞれ)410±38、130±28、及び37.6±3.02nMであり、対応するn値は、1.1±0.1、1.1±0.1、及び0.9±0.1である。
【0203】
実施例6
機能アッセイ
5HT‐サブタイプ受容体における(−)‐トランス‐PATアゴニスト活性の評価:5HTGPCRファミリーは、CHO及びHEK細胞中で発現された場合は構成的に活性であり、従って、ここでの機能活性は、PLC/[H]‐IP形成の基底活性と比較して図4に報告する。10μMまでの5‐HTと共に45分間インキュベートした後、トランスフェクトされていないCHO及びHEK細胞のライセートでは、PLC/[H]‐IP形成の基底活性の上昇は検出されなかった。しかし、図4の挿入図に示すように、ヒト5‐HT2CcDNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞では、5‐HTは、PLC/[H]‐IP形成の基底活性の濃度依存的な上昇を見せ、EC50=6.30±0.55nM(n=1.3±0.2)であり、Emaxは約0.1μM(基底コントロール活性の約475%)である。内在性アゴニストと比較して、(−)‐トランス‐PATは、PLC/[H]‐IP形成の基底活性の濃度依存的な上昇を見せる、十分な効力を有する5HT2Cアゴニストであり、EC50=21.4±2.22nM(n=0.66±0.11)であり、Emaxは約10μM(基底コントロール活性の約475%)である(図4)。しかし、ヒト5HT2AcDNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞では、(−)‐トランス‐PATは、10μMまでの濃度にてPLC/[H]‐IP形成を刺激することはなく;比較のため、5HT EC50=30±2nM、Emaxは約1.0μM(基底コントロール活性の約300%)であった(データ図示せず)。同様に、ヒト5HT2BcDNAで一過性にトランスフェクトされたHEK細胞では、(−)‐トランス‐PATは、30μMまでの濃度にてPLC/[H]‐IP形成を刺激することはなく;比較のため、5HT EC50=19.7±9.21nM、Emaxは約1.0μM(基底コントロール活性の約900%)であった(データ図示せず)。
【0204】
実施例7
5HT‐サブタイプ受容体における(−)‐トランス‐PATアンタゴニスト活性の評価:(−)‐トランス‐PATが、5HT2A及び5HT2B受容体と中程度の親和性で結合するが(図3)、これらの5‐HT2受容体サブタイプを活性化しない(図4)ことから、5‐HTが媒介するPLC/[H]‐IP形成の刺激に関する5HT2A及び5HT2B受容体アンタゴニストとして作用する(−)‐トランス‐PATの能力を評価し、結果を図5に示す。ヒト5HT2A受容体を発現するCHO細胞では、5‐HT(1.0μM)は、PLC/[H]‐IP形成を刺激し(基底コントロールの約250%)、この効果は、(−)‐トランス‐PAT(10μM)によって十分に遮断された(図5A)。ヒト5HT2B受容体を発現するHEK細胞では、5‐HT(0.01μM)は、PLC/[H]‐IP形成を刺激し(基底コントロールの約350%)、この効果は、(−)‐トランス‐PAT(3.0μM)によって十分に遮断された(図5B)。
【0205】
実施例8
考察
ここで報告したデータは、内在性アゴニストであるセロトニンと比較して、(−)‐トランス‐PATが、ヒトセロトニン5‐HT2C受容体における十分な効力を有する立体選択的アゴニストであることを示している。5‐HT2A及び5‐HT2B受容体に対抗する、5‐HT2C受容体の活性化に対する(−)‐トランス‐PATの選択性は、5‐HT2A及び5‐HT2B受容体のセロトニン活性化の競合アンタゴニズム、並びに5‐HT2A及び5‐HT2B受容体におけるその固有のインバースアゴニスト機能活性を考慮すると明白である。セロトニン5‐HT型受容体における(−)‐トランス‐PATの特有の多機能活性は、5‐HT2C受容体に基づく新規な薬剤療法の開発という点で有望である。結果が示すのは、(−)‐トランス‐PATが、ヒト5HT2C受容体の活性化、並びに5HT2A及び5HT2B受容体におけるインバースアゴニスト及び/又はアンタゴニスト活性について十分な効力を実証していることである。これらの結果は、5HT2Cに基づく新規な薬剤療法の開発に対する有望な意味合いを有する。例えば、脳内5HT2C受容体の活性化が肥満に対する効果的な薬剤療法であることは十分に確立されている(Tecott et al., 1995; Vickers et al., 1999; 2001; Heisler et al., 2002)。一方、コカイン耽溺に対する効果的な薬剤療法は今のところ存在しない。しかし、過食及び薬物の自己投与が関与する障害は、異なる対象物、食物及び薬物に向けられる強迫行動障害の同一の分類内の一種であると考えられている(Simansky, 2005)。従って、肥満及びコカイン耽溺の両方の薬剤療法における脳内5HT2C受容体活性化の役割は、論理的であると思われる。実際、信頼性の高い5HTサブタイプ選択的アンタゴニストを用いた研究の多くは、コカインの強化効果が5HT2Cの活性化によって軽減されること、並びに、コカインの特徴的な刺激効果及び元に戻ってしまう効果(reinstating effects)が、5HT2Cの活性化及び5HT2Aアンタゴニズムによる減衰に感受性を有することを示唆している(Bubar and Cunningham, 2006)。
【0206】
対照的に、5HT2Aアンタゴニスト活性を有する薬剤が、精神病及び関連する精神神経障害の治療に効果的であるという逆からの観察によって恐らくは最も良く実証されるように(Baldessarini and Tarazi, 2006)、5HT2A受容体の活性化は、向精神作用(psychomimetic activity)と密接に関連している(Nichols, 2004)。従って、ロルカセリン等のインビトロでの選択性がそれほど大きくなくわずかに15倍である薬剤については、時に捉えがたく複雑である精神障害の性質という観点から、5HT2C受容体の活性化に付随する5HT2A受容体の活性化の可能性を注意深く考慮すべきである。恐らく、フェンフルラミンと関連する生命の危険のある心弁膜症及び肺高血圧症により、5HT2C及び5HT2B受容体の両方を活性化する薬剤の開発に関して選択性の閾値がより高められてきた(例:インビトロにて100倍)。しかしながら、多くの場合長期間にわたる管理されない状態での、恐らくは3000万乃至5000万人によるダイエット薬剤の臨床的使用(Nilsson, 2006; Smith et al., 2006)は、その薬剤が5HT2A及び/又は5HT2B受容体の何らかの活性化を示す場合、問題を引き起こす可能性がある。発明者らは、HEK細胞へ転換することで、薬剤開発のために提案するいずれのリード化合物も明白な5HT2Bアンタゴニズムを確実に示すよう特に取り組んできたが、それは、このクローン細胞株が、5HT2B受容体に対して、CHOと比較してより強固で再現性のある機能上の結果をもたらすからである。従って、(−)‐トランス‐PAT等、明白な5HT2A及び5HT2Bインバースアゴニズム並びに/又はアンタゴニズムを示し、末梢投与の後に哺乳類の脳に進入する親油性低分子である5HT2Cアゴニストは、肥満、コカイン耽溺、精神病、不安症、及び恐らくはその他の精神神経障害に対する新規な薬剤療法として考慮するのに適切であると思われる。この点で、(−)‐トランス‐PATによって示される明白な5‐HT2Aインバースアゴニスト/アンタゴニスト活性(図17、18参照)により、5‐HT2A受容体活性化と関連する精神医学的副作用は、この化合物にとって問題とはなりそうにないことが示唆される。
【0207】
実施例9
1b.GPCRにおけるPAT類似体の活性
ヒスタミンHGPCRに対する表1のPAT類似体の親和性は公知であり、Kiの範囲は、0.5乃至5000nMである(Ghoneim et al., 2006; Booth et al., 2002; Bucholtz et al., 1999; 各々参照することで本明細書に組み入れられる)。既述のように、リガンド‐5HT2C受容体結合部位相互作用に関する発表された分子情報は実質的に存在しないが、発明者らの予備的なデータは、H受容体と比較して違いが存在することを示している。計算化学(QSAR)、及びリガンドH親和性の予想の補助となる受容体モデリング研究(例:Ghoneim et al., 2006; Jongejan and Leurs, 2005; Jongejan et al., 2005)からのH結合部位に関する情報は存在する。しかし、5HT2C受容体についての対応する研究が相対的に欠如していることにより、どのH‐活性リガンドが5HT2C受容体において親和性を有するかの予想ができない。
【0208】
数多くのPAT類似体がH機能活性について評価されてきた。明らかに複雑であり多くが未知であるGPCRのリガンド活性化を決定する分子決定因子を考慮すると、PATのほとんどがHアンタゴニストであることは恐らくは驚くに値しないが、1及び6が、それぞれ、H結合AC及びPCLシグナル伝達を活性化する(Moniri et al., 2004; Moniri and Booth, 2006)。H結合及び機能の両方について、立体化学が活性に大きく影響する。
【0209】
本明細書で報告する発明者らのH及び5HTに関する結果に加えて、表1のいくつかの類似体が、広範囲にわたるCNS受容体における親和性について評価された(PDSP, 2005; Novascreen, 1996)。発明者らのリード5HT2Cアゴニスト分子、(−)‐トランス‐PAT(1)は、神経伝達物質(アドレナリン作用性α2A、α、β、β;コリン作用性;GABA;グリシン;ヒスタミンH、H、H;セロトニン5HT1A、5HT1B)、神経調節物質(アデノシン、ベンゾジアゼピン、オピエート、NMDA/PCP、シグマ)、神経トランスポーター(neurotransporter)(DAT、NET、SERT)、イオンチャネル(Ca++、Cl、K)、及び二次メッセンジャー系(AC、PLC)を含む約35の放射標識CNS受容体系に対して、親和性が非常に低いか(K>0.5μM)又は実質的に親和性を持たない(K>5μM)。ラセミ体(±)‐トランス‐PATの5HT5A、5HT、及び5HT受容体に対する親和性(Ki)は、それぞれ、約100、200、及び0.5nMであり、アドレナリン作用性α2B及びα2C受容体における親和性は、それぞれ、150及び300nMである(PDSP, 2005)。
【0210】
1c.CHO細胞内で一過性に発現されたヒト5HT2A、5HT2B、及び5HT2C受容体に対する放射性リガンド飽和結合実験(図6乃至8)
発明者らの実験室にて、放射性受容体アッセイを5HT2A、5HT2B、及び5HT2C受容体に対して設定し、飽和結合分析を実施してそれぞれの放射性リガンドのK及びBmaxを発明者らの手で測定した。トランスフェクションの24時間前に、結合アッセイについては100mmディッシュ中40%のコンフルエンスで(又は、以下の[H]‐IPアッセイについては、12‐ウェルプレート中ウェルあたりの細胞数10個にて)、CHO‐K細胞を播種した。ヒト5‐HT2A、5‐HT2B、及び5‐HT2C受容体(野生型)をコードするcDNAは、UMRリソースセンター(ローラ,ミズーリ州)より購入した。細胞のトランスフェクションは、100mmディッシュあたり12μgのプラスミド及び32μlのリポフェクタミン(Invitrogen)で、又はウェルあたり0.8μgのプラスミド及び4.0μlのリポフェクタミン(Invitrogen)で、製造元のプロトコル、発明者らの過去の経験(Ghoneim et al., 2006; Moniri et al., 2004; Booth et al., 2002)、及び文献(Herrick‐Davis et al., 1997)に従って行った。受容体は、標準的な5HTアンタゴニスト放射性リガンド、5HT2A受容体に対しては[H]‐ケタンセリン、並びに5HT2B及び5HT2C受容体に対しては[H]‐メスレルギン、を用いて放射標識した(Knight et al., 2004)。代表的な曲線を図6乃至8に、K及びBmaxをまとめて表3に示し;数値は文献のものと一致している(Knight et al., 2004)。
【表3】

【0211】
発明者らの新規なリガンドのほとんどに対する機能活性が未知であることを考慮し、アゴニスト放射性リガンドは、「アゴニストを優先する(agonist‐preferring)」コンフォメーションである受容体のサブ集団のみを標識することから、ここでは用いなかった(Knight et al. 2004; Sleight et al. 1996; Roth et al. 1998; Lopez‐Gimenez et al. 2001; Quirk et al. 2001)。5HT GPCRファミリーに対するアゴニストを優先するコンフォメーションは、GPCR活性化の3状態モデルの枠内で説明され、ここで、GPCRは、不活性状態及び構成的活性化状態の間で異性化する(Kenakin, 2001)。修正されたGPCRシグナル伝達理論の極めて重要な前提は、活性受容体コンフォメーションの不均一性が存在すること、及び、アゴニストリガンドが、受容体コンフォメーションを誘発し、安定化させ、又はその中から選択する能力に違いを有することである。従って、アゴニストリガンドの化学構造パラメータは、GPCRコンフォメーションの最も重要な決定因子の一つである(Moniri et al., 2004)。現在のところ、入手可能な選択的5HT2Cアゴニスト放射性リガンドは存在せず、従って、N‐アルキル部分を有し、Ki<5nMである選択的PAT 5HT2Cアゴニストは、発明者らが発表した手順(Wyrick et al., 1992; 1994)を介して放射標識を行うことが考慮されるであろう。
【0212】
1d.競合結合実験:
5HT2C受容体におけるトランス‐(−)‐PAT立体異性体の親和性(図9、表4)
(−)‐トランス‐PAT及びその立体異性体、(+)‐トランス‐PAT、(−)‐シス‐PAT、及び(+)‐シス‐PAT、の5HT2C受容体親和性を、K近辺の濃度の放射性リガンド(上記で決定されたように)を用いた競合放射性リガンド置換アッセイにて評価した。曲線(図9)はS字型で、3乃至4の対数濃度単位にわたって完全な放射性リガンドの置換が達成されており、K近辺の放射性リガンド濃度の競合置換に特徴的である。(−)‐トランス‐PATに対する競合置換曲線の傾きに対するヒル係数(n)は0.9であり、利用可能なGタンパク質が限定された、アゴニストを優先するコンフォメーションである受容体のサブ集団による三元複合体モデル(ternary complex model)によると、これはGPCRにおけるアゴニストリガンド結合に特徴的である。その他のPAT立体異性体に対するn値は、0.8乃至1.0の範囲である(アンタゴニストの場合、理論的にはn=1のはずである)。(−)‐トランス‐PATを除いて、その他のPAT立体異性体はいずれも、10μMまでの濃度(すなわち、少なくともKiの10倍)で5HT2C受容体を活性化せず、Aim2の結果を参照されたい。5HT2C受容体のPAT異性体に対する立体選択性は、5HT2C活性部位及び受容体活性化に対する分子決定因子の三次元構造を表すために著しく適用される。
【表4】

【0213】
1e.5HT2A受容体におけるトランス‐(−)‐PAT立体異性体の親和性(図10)
5HT2A受容体における(−)‐トランス‐PAT及びその立体異性体の放射性リガンド置換に対する濃度‐反応曲線を図10に示す。(−)‐トランス‐PATの5HT2A親和性(約400nMのKi)は、5HT2C受容体におけるものよりも10倍低い。表5に、PATの4種類の立体異性体すべてに対するKi及びn値をまとめた。5HT2A受容体におけるPAT立体異性体の親和性の順番は、5HT2C受容体と異なり;5HT2Aにおける順番は、ヒスタミンH受容体とも異なる。5HT2Aにおける(−)‐トランス‐PATに対するn値は0.9であるが、これは、5HT2Aアンタゴニストである(図10、11)。機能アッセイは、インバースアゴニズムを検出するには感度が十分ではないが、そのような活性を有する可能性が高い。5HT2Aにおけるその他のPAT立体異性体の機能の評価(n=0.9乃至1.0)は完了していない。
【0214】
1f.5HT2B受容体におけるトランス‐(−)‐PAT立体異性体の親和性(図11)
5HT2B受容体における(−)‐トランス‐PAT及びその立体異性体の放射性リガンド置換に対する濃度‐反応曲線を図11に示す。(−)‐トランス‐PATの5HT2B親和性(約1μMのKi)は、5HT2C受容体におけるものよりも20倍低い。5HT2Aにおける(−)‐トランス‐PATに対するn値は1.0であり、その5HT2Bアンタゴニスト活性と一致している(図13、15)。表5に、PATの4種類の立体異性体すべてに対するKi及びn値をまとめる。5HT2B受容体におけるPAT立体異性体の結合性は、その順番が5HT2A及び5HT2C受容体とは異なり、全体としてこれらよりも非常に低い。従って、アミノ酸配列は5HTファミリーのメンバーにおいて非常に類似しているが、PATリガンド結合部位を形成するアミノ酸の三次元配置は異なると思われる(特に5HT2B受容体に対して)。従って、PAT立体化学の骨格を分子モデリング(構造)研究のテンプレートとして用い、最適化することにより、5HTサブタイプにおいて選択的作用を有する薬剤を提供することができる。
【表5】

【0215】
実施例10
5HT受容体サブタイプにおけるPAT機能活性のインビトロでの測定
2a.(−)‐トランス‐PATは5HT2C受容体における立体特異的で十分な効力を有するアゴニストである(図15乃至16)。
5HTGPCRは構成的に活性であり、主にGαタンパク質を活性化してホスホリパーゼ(PL)C及びイノシトールリン酸(IP)形成を哺乳類組織内にて刺激する(Raymond et al., 2001)。図12は、CHO‐5HT2C細胞内にて、(−)‐トランス‐PATが、PLC/[H]‐IP形成の刺激に対しての5HT(EC50=6.30±0.55nM、n=1.3)と比較して十分な効力を有する5HT2Cアゴニストである(EC50=21.4±2.22nM、n=0.66)ことを示している。図12は、APT類似体Cl‐6APT(約300nMの5HT2CKi)が、やはり十分な効力を有する5HT2Cアゴニストであるが、(−)‐トランス‐PAT及び5HTと比較して効力が非常に低い(EC50=4,630±312nM;n=0.63)ことを示している。
【0216】
(−)‐トランス‐PAT対Cl‐6APTの結果は、ペンダントフェニル環の位置が、恐らくは、受容体結合及び/又は活性化に関与する5HT2Cの芳香族アミノ酸とのπ‐πスタッキング相互作用にとって重要であることを示唆している。5‐HT2A受容体の変異分析は、重要なリガンド‐受容体π‐π結合相互作用がTMD5及び6で発生することを示唆しており(Shapiro et al., 2000)、この情報は、今後の5HT2Cの変異原性及び分子モデリング研究を方向付ける手助けとなる。
【0217】
(+)‐トランス‐、(−)‐シス‐、及び(+)‐シス‐PATも、5HT2C受容体を活性化する能力(PLC/[H]‐IP形成)について評価した。図13は、1.0μM及び10μM(すなわち、少なくともKiの10倍)にて、(+)‐トランス‐、(−)‐シス‐、及び(+)‐シス‐PATは5HT2Cアゴニストではないことを示している。従って、(−)‐トランス‐PATの機能的効果は立体特異的であり、5HT2C受容体における立体異性体間の結合親和性が>30倍の範囲であることと一致している。
【0218】
興味深いことに、5HT2C受容体を活性化する(−)‐トランス‐PATの効力は(約20nMのEC50)、アンタゴニスト放射性リガンド(約40nMのKi、図5)を用いて測定した場合、その5HT2C親和性よりも約2倍高い。これに関しては、アンタゴニスト放射性リガンドは受容体の「アゴニストを優先する」コンフォメーションを区別しないことに留意されたい(Roth et al. 1998; Lopez‐Gimenez et al. 2001; Quirk et al. 2001)。実際、5HT2C受容体のアゴニストを優先するコンフォメーションに対する(−)‐トランス‐PATのKiは、40nMよりも20nMに近い可能性がある。標準的な(しかし非選択的な)5HTアゴニスト放射性リガンド、[H]‐2,5‐ジメトキシ‐4‐ヨードアンフェタミンを用いた研究を行ってこの点を確認する予定である。
【0219】
2b.(−)‐トランス‐PATは5HT2A又は5HT2B受容体を活性化しない(図14)。
図14に示すように、ヒト5HT2A又は5HT2B受容体を発現するCHO細胞内にて、(−)‐トランス‐PATは、10μM(5HT2A及び5HT2B受容体のKi値のそれぞれ約25倍及び70倍)においてさえもPLC/IP形成を活性化しなかった。CHO‐5HT2C細胞を用いた平行アッセイにおいて、結果は上記と類似していた。発明者らの知る限りにおいて、5HT2C受容体を活性化し、さらに5HT2A及び/又は5HT2B受容体は活性化しない他のリガンドは報告されていない。従って、アンタゴニスト活性を評価するための薬理学的な研究を実施し、以下に報告する。
【0220】
2c.(−)‐トランス‐PATは5HT2A及び5HT2B受容体におけるアンタゴニストである(図15乃至16)。
5HT2A及び5HT2B受容体において、(−)‐トランス‐PATは、5HTが媒介するPLC/IP形成の刺激のアンタゴニストである(図15、16)。5HT2B受容体において、発明者らは、(−)‐トランス‐PATが1.0μMの濃度(およそKi、表5)にて十分な遮断をもたらさないことを観察し(示さず)、これは恐らく、5HT2B受容体に対する5HTの比較的高い親和性によるものであろう(約1.0nMのKi)。しかし、(−)‐トランス‐PATの濃度が10μMの場合、5HT(1.0μM)は遮断を乗り越えることはなく、このことは競合アンタゴニズムを示唆している。5HT2A及び5HT2B受容体における(−)‐トランス‐PATに対するpA値を測定するための完全な濃度‐反応曲線のための実験を発明者らの研究室で行う予定である。
【0221】
実施例11
メタ‐置換PAT類似体の合成及びエナンチオマーの分離(スキーム1乃至3)
全般的な合成方法:詳細は、発明者らの医薬品化学に関する刊行物(例:Ghoneim et al., 2006; Bucholtz et al., 1999; Wyrick et al., 1993; 1995)に記載されている。インビトロでの薬理学的研究では、最初は、ラセミ体であるシス及びトランス生成物を用いる。Ki<50nMであるラセミ体PATは、ジアステレオマー塩への誘導体化、及び続いての分別結晶によって(+)‐及び(−)‐エナンチオマーへ分割されるか、又はキラル還元工程を用いて新たに合成される(スキーム3)。絶対配置の付与は、単結晶X線結晶構造解析又は分光光度法(NMR、旋光度)により、合成済みの純粋エナンチオマーと比較することで行う。生成物(HCl塩として)の純度は、NMR、元素分析、質量分析、融点、及び薄層クロマトグラフィを用いて測定する。
【0222】
スキーム1:メタ置換PAT:方法は、上記で引用した発明者らの論文及びその他(Agarwal et al., 2005)からのものを改変する。メタ置換アルデヒド2を用いたクライゼンシュミット反応によってα,β‐不飽和ケトン3が得られ、これをケトン4へと環化して、NaBHを用いて還元する。(±)‐シス及び(±)‐トランスの遊離塩基7を(1R)‐(−)‐又は(1S)‐(+)‐カンファー‐10‐スルホン酸ジアステレオマー塩へ転換し、分別再結晶を行うことで(+)‐又は(−)‐エナンチオマーが得られ、これをアルキル化して生成物8を得る。
【0223】
スキーム2:メタ‐PATの別の合成法:PPA環化工程(スキーム1;3乃至4)は収率が悪い場合がある。別の選択肢としての経路は、C‐C結合の形成にスティルカップリングを用いる(Labadie et al., 1983)。この方法は、キラルボラン還元を用いることで、直鎖部分のC3位における立体化学(スキーム2;5)を環化の前に決定する(Brown et al., 1991; Rossi et al., 1999)。
【化5】

【化6】

【0224】
スキーム3:PAT類似体の立体異性体を得るためのキラル還元剤の使用:ジイソピノカンフェニルボラン(DIP)類似体が、スキーム3のPATケトン4に類似の構造を持つケトンに対する立体選択的還元剤として最近報告された(Cha et al., 2005)。
【0225】
2.固定されたフェニル環を有するPAT類似体の合成(図17)
PATペンダントフェニル環は、低エネルギーの直交コンフォメーションに最小化されてはいるが、テトラヒドロナフタレン骨格と比較して回転の自由度が高い。メスレルギン及びケタンセリン等の高親和性5HT2Cアンタゴニストリガンドに、類似の「ペンダント」フェニル環系が固定された配置で存在するが、報告されているアゴニストには存在しない。テトラヒドロナフタレンに対して直交コンフォメーションにPATフェニル環を固定することにより、5HT2C親和性を高め、PATリガンド‐5HT2C受容体芳香族(π‐π)結合相互作用に関する情報を得ることができる。発明者らが提案するのは、ベンゾ[de]アントラセン1及びベンゾ[c]フェナントレン2の僅かに湾曲したコンフォメーションを持つ剛直な四環式類似体の合成である。さらに、(−)‐トランス‐PATのX線結晶構造に類似する、フェニル環がねじれ角61°で保持されたスピロインダン類似体3の合成も提案し(Wyrick et al., 1993);テトラヒドロフルオランテン類似体4における関連する平面インダン四環系も合成されるであろう。
【0226】
i.4,11‐ジヒドロ‐5‐N,N‐ジメチルアミノ‐6H‐ベンゾ[de]アントラセン(図17;1):アントロンにウィティッヒ反応を施してアセテートを得る(Spinella, 1997)。NaBH及びPEGを用いてアルケン及びエステル基を還元した後(Santaniello et al., 1981)、得られたアルコールを臭化水素酸によって9‐ブロモエチル‐10‐ヒドロアントラセンへ転換する。臭化物をシアン化ナトリウムと反応させ、続いて加水分解することによって酸が得られ、フリーデルクラフツ閉環反応によってケトン、5,11‐ジヒドロ‐4‐ケト‐6H‐ベンゾ[de]アントラセンが生成し(Itoh et al., 1984)、これにスキーム3の対応するPATケトン4と同じ反応を施して1を得る(図17)。
【化7】

【0227】
ii.シス及びトランス(+)及び(−)‐6‐(ジアルキル)アミノ‐5,6,7,8,12b,6a‐ヘキサヒドロベンゾ[c]‐フェナントレン(図17;2):Laus(1984)の手順を用いて1‐フェニル‐2‐テトラロールを作製し、これを酸化してテトラロンとする。ウィティッヒ反応及び還元により、シス及びトランス‐1‐フェニル‐2‐カルベトキシメチルインダンを得る。けん化により対応する酸が得られ、これを環化してケトンとする。ケトンを亜硝酸イソアミルで処理することにより(Pandit and Huisman, 1966)、対応するα‐カルボニルオキシムが得られる。還元及びメチル化によって2を得る。
【0228】
iii.シス及びトランス(+)及び(−)‐3’(ジアルキル)‐アミノスピロ[インダン‐2,1(2’Η)‐3,4‐ジヒドロ‐ナフタレン](図17;3):Majerus(1967)の手順を用いて、ビス(1‐ヒドロキシインダニルから2‐オキソスピロ[インダン‐2,1(2’H)‐3,4‐ジヒドロナフタレンを作製する。このケトンを亜硝酸イソアミルで処理してα‐オキシムが得られ、続いて酸性条件下での還元によってシス及びトランス一級アミンとし、これをN,N‐ジアルキル化して生成物3を得る。
【0229】
iv.R‐及びS‐2‐ジメチルアミノ‐10b,1,2,3,テトラヒドロフルオランテン(図17;4):1‐(フルオレン‐9‐イル)‐プロパノエートを、カリウムメトキシド及びギ酸エチルを用いるフルオレンのホルミル化、続いてのウィティッヒ反応によるオレフィンの生成、及びVon and Wagner(1944)の手順に従ってのこのオレフィンの接触還元及びエステルのけん化によって作製する。この酸をPPAで閉環することで、3‐オキソ‐10b,1,2,3‐テトラヒドロフルオランテンが得られる。このケトンを亜硝酸イソアミルで処理することでα‐オキシムが得られ、続いて一級アミンへ接触還元し、N,N‐ジアルキル化によって生成物4を得る(図17)。
【0230】
C(1)ペンダントフェニル置換基が異なる新規なPAT類似体の合成
予備データにおける結合、機能、3D QSAR、及び分子モデリングの結果に基づいて、発明者らは、(−)‐トランス‐PATのC(1)ペンダントフェニル部分が、5HT2A及び5HT2B受容体を活性化することなく、十分な効力を有する5HT2Cアゴニスト活性を提供するのに極めて重要であるという仮説を立てた。PATペンダントフェニル環の置換及び配向を試験することは、より高い親和性、効力、及び/又は選択性を有する5HT2Cアゴニスト及び/又は5HT2A/5HT2Bアンタゴニストを得るための、5HTの活性部位アミノ酸との最適な立体化学的及び静電気結合相互作用を見出す手助けとなる。
【化8】

【0231】
スキーム1は、上記チャート内の新規なPATの合成法を示す。工程Aでは、β‐テトラロン(1)を、ベンゼンルテニウム(II)クロリドダイマー及びキラルリガンド(R,R)‐N‐(2‐アミノ‐1,2‐ジフェニルエチル)‐p‐トルエンスルホンアミド((R,R)‐NAPTS)と共に還流して、(R)‐β‐テトラロール(2)を得る(Mogi et al., 2004)。工程Bでは、(R)‐β‐テトラロール(2)を、tert‐ブチルジメチルシリル(TBDMS)誘導体(3)へ転換する(TBDMS保護基により隣接するベンジル位への臭素化を防ぐ)。工程Cでは、TBDMS保護化合物を、脱水CCl中、還流下にてN‐ブロモスクシンイミドで臭素化(Agarwal et al., 1990)することで臭素化された共通の中間体(4)が得られ、これをフラッシュカラムクロマトグラフィによってシス及びトランスブロモ化合物へ分離する。工程Dでは、各(シス及びトランス)臭素化中間体(4)を、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドと共にNiI/トランス‐2‐アミノシクロヘキサノールを用いたニッケル触媒鈴木反応(Gonzalez‐Bobes et al.)により、還流下、市販のボロン酸(RB(OH)、R=チャート1のa‐p)と反応させて、表2に示す種々のシス及びトランスPAT類似体50(a‐p)を得る。工程Eでは、TBDMS保護PAT類似体をテトラヒドロフラン中にてフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を用いて脱保護する。工程Fでは、シス及びトランスヒドロキシルPAT類似体を、亜鉛アジド/ビス‐ピリジン複合体、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、及びトリフェニルホスフェンによる光延反応を用いて、ワンポットにより対応するトランス及びシスアジドPAT中間体(7)へ転換する(Vorogushin et al., 2003)。工程Gでは、アジドPAT誘導体を、対応するPATアミン(8)へ還元する。工程Hでは、これらのエナンチオマーシス及びトランスアミンを、ギ酸/ホルムアルデヒドによるエシュバイラー‐クラークメチル化反応を用い、還流下にてジメチル化PAT類似体へ転換する。Ki<50nMであるラセミ体PATは、非メチル化遊離アミンのジアステレオマー塩への誘導体化、及び続いての分別結晶によって(+)‐及び(−)‐エナンチオマーへ分割されるか、又はキラル還元工程を用いて新たに合成される。絶対配置の付与は、単結晶X線結晶構造解析又は分光光度法(NMR、旋光度)により、合成済みの純粋エナンチオマーと比較することで行う。生成物(HCl塩として)の純度は、NMR、元素分析、質量分析、融点、及び薄層クロマトグラフィを用いて測定する。
【化9】

【0232】
実施例12
5‐HT2cに対する親和性:代表的化合物の結果
【表6】

【0233】
実施例13:本発明の化合物のムスカリン性受容体活性
ムスカリン性受容体活性は、実質的に、Novascreen, NIMH Psychotherapeutic Drug Discovery and Development Program, Oceanix Biosciences Corporation, 1996; 及び、PDSP, Psychoactive Drug Screening Program; BL Roth, Director. NIMH Contract NO2MH80002, Case Western Reserve University, Cleveland, OH, and University of North Carolina, Chapel Hill, NC, 2005、に記載のものを含む適切ないずれかのプロトコルを用いて評価する。
【表7】

【化10】

【0234】
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【0235】
本明細書内の変数のいずれの定義における要素の列挙の記載も、いずれかの単一の要素又は列挙された要素の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書における要素又は実施形態の記載は、いずれかの単一の要素若しくは実施形態としての、又はいずれかの他の要素、実施形態、若しくはこれらの一部との組み合わせとしての、その要素又は実施形態を含む。
【0236】
本明細書で引用した参考文献はすべて、印刷媒体、電子媒体、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、又はその他の形態であれ、その全体が明確に参照することで組み入れられ、これらに限定されないが、要約、記事、ジャーナル、刊行物、テキスト、論文、技術データシート、インターネットウェブサイト、データベース、特許、特許出願、及び公開特許を含む。
【0237】
本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明のその他の実施形態及び変形が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考え出されることが可能であることは明らかである。請求項は、そのようなすべての実施形態及び同等の変形を含むと解釈されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象中のGPCRが媒介する障害を治療又は予防する方法であって、PAT化合物を、それを必要とすると識別された該対象へ投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記のPAT化合物が、表1の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のPAT化合物が:
【化1】

であって、
ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1又は2であり;
は、独立して、H、OH、又はハロであり;
は、独立して、H、OH、又はハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、又はハロであり;
は、独立して、H又はアルキルであり;及び、
は、独立して、H、N(アルキル)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のPAT化合物において、Rが‐NMeである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記のPAT化合物が、(1R,3S)‐(−)‐トランス‐1‐フェニル‐3‐N,N‐ジメチルアミノ‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の障害が、精神神経障害(例:肥満、耽溺、不安症、うつ病、統合失調症、及び睡眠障害)、神経変性障害(例:パーキンソン病、アルツハイマー病)、神経障害(例:癲癇)、心血管障害(例:高血圧症)、胃腸障害(例:過敏性腸症候群)、又は泌尿生殖器障害(例:膀胱制御)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の障害が、コカイン耽溺である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の障害が、肥満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
5‐HT2Cの阻害を、そのような治療が必要であると識別された対象に施す方法であって、PAT化合物を投与することを含む、方法。
【請求項10】
対象の肥満を治療する方法であって、5‐HT2a又は5‐HT2bと比較して5‐HT2cを選択的に阻害する能力を有するPAT化合物を、それが必要であると識別された該対象へ投与することを含む、方法。
【請求項11】
5‐HT2cを阻害するための結合相互作用が、5‐HT2a又は5‐HT2bのいずれかと比較して少なくとも5倍(別の選択肢として、少なくとも10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍)大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
5‐HT2cを阻害するための結合相互作用が、5‐HT2a又は5‐HT2bのいずれかと比較して少なくとも100倍大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
5‐HT2c活性を調節する能力を有する化合物を識別するための方法であって;(i)分子又は分子複合体の三次元画像であって、ここで、該分子又は分子複合体は、5‐HT2cの構造座標によって決定される結合ポケットを含む、画像;又は、b)該分子又は分子複合体のホモログの三次元画像であって、ここで、該ホモログは、該アミノ酸のバックボーン原子からの二乗平均偏差が約2.0オングストローム以下である結合ポケットを含む、画像、を作製すること;(ii)試験化合物の三次元画像を作製すること;(iii)該試験化合物の標的との結合相互作用を評価すること、を含む、方法。
【請求項14】
前記の試験化合物を5‐HT2cと接触させること、及び該化合物の結合活性を測定すること、をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
【化2】

である化合物であって、
ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1若しくは2であり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、若しくはハロであり;
は、独立して、H若しくはアルキルであり;及び、
は、独立して、H、N(アルキル)である、
化合物、又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項16】
前記の化合物の1位及び3位における置換基が、互いにトランス配置の関係である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
請求項15に記載の化合物、及び薬理学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物を作製する方法であって、請求項15に記載の化合物と薬理学的に許容される担体とを組み合わせることを含む、方法。
【請求項19】
式:
【化3】

の化合物であって、
ここで、
は、独立して、H、NH、NH(アルキル)、N(アルキル)であり;
は、独立して、‐(CH‐であり;
nは、各々独立して、1若しくは2であり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、独立して、H、OH、若しくはハロであり;
は、各々独立して、H、アルキル、若しくはハロであり;
は、独立して、H若しくはアルキルであり;
は、独立して、H、N(アルキル)であり;及び、
は、独立して、各々が任意に1乃至4個の独立したRで置換されていてもよいアリール若しくはヘテロアリールである、
化合物、又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−529986(P2010−529986A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512211(P2010−512211)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/007458
【国際公開番号】WO2008/156707
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509017000)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】