説明

治療学的処方物

本発明は、一般的に薬学的組成物と関連しており、特に、液体の薬学的処方物、およびこの処方物の調製および使用の方法に関連している。本発明は、哺乳動物の細胞のアポトーシスを誘発する疎水性の薬学的因子のバイオアベイラビリティを向上させる薬学的組成物を特徴づける。また、特徴づけられたものは、このような疎水性の薬学的因子をこのような処置が必要な患者に非経口的に投与するための注入可能な処方物、および細胞の増殖性または過剰増殖性の疾患および障害の処置のための方法を包含する、組成物および処方物両方の調製および使用の方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連優先出願)
本願は、2004年11月30日に出願された米国仮特許出願番号60/632,335に優先権を主張し、この全ての内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、一般的に薬学的組成物と関連しており、特に、液体の薬学的処方物、およびこの処方物の調製および使用の方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
以下に述べる本発明の背景は、本発明を理解する目的で提供されているのであって、本発明に対する先行技術を述べるまたは構成することを承認する目的ではない。
【0004】
患者に治療学的化合物を投与するのに、多種の方法が利用可能である。このような方法としては、例として、非経口投与、経口投与、および直腸投与が挙げられる。これらの異なるタイプの投与が多種存在する。例えば、非経口投与としては、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋内注射、鞘内注射、骨髄内注射、および腫瘍内注射が挙げられる。投与の選定方法は、治療学的化合物および処置される病気の性質を考慮すべきである。
【0005】
治療学的化合物の処方物の潜在的有用性の1つの基準は、この処方物を非経口で投与した後に観測されるこの治療学的化合物のバイオアベイラビリティである。いくつかの要因がこの治療学的化合物のバイオアベイラビリティに影響をおよぼし得る。これらの要因としては、水性溶解度、安定性、吸収性、および代謝が挙げられる。水性溶解度は、バイオアベイラビリティに影響を与える最も重要な要因の一つである。一般的に、水溶液中の治療学的化合物のバイオアベイラビリティは、他の処方物が測定される基準として使用される。治療学的化合物の相対的バイオアベイラビリティを向上させる処方物は、水溶液と比較して望ましく、いくつかのケースでは、疎水性の治療学的化合物の送達において重要である。
【0006】
特定の潜在的な治療学的化合物は、疎水性で、水性溶解度が非常に低く、ゆえに、低いバイオアベイラビリティを示す。疎水性の治療学的化合物を可溶化させるための異なった技術が開発されてきており、それらは例えば、Schwartz et al.、特許文献1および特許文献2、Hausheer et al.、特許文献3、Chung et al.、特許文献4、Owens et al.、特許文献5、およびShenoy et al.、特許文献6および特許文献7によって述べられており、これらの全ては、本明細書中に参考として完全に援用される。
【特許文献1】米国特許第5,783,592号明細書
【特許文献2】米国特許第6,335,356号明細書
【特許文献3】米国特許第6,040,330号明細書
【特許文献4】米国特許第6,046,230号明細書
【特許文献5】米国特許第6,071,952号明細書
【特許文献6】米国特許第6,248,771号明細書
【特許文献7】米国特許第6,696,482号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に特定の疎水性のアポトーシス誘発の治療学的化合物のバイオアベイラビリティを向上させるように設計された薬学的組成物および処方物を供給する。これらの薬学的組成物および処方物は、これらの治療学的な化合物を使用して、動物細胞の過剰増殖性に関連する特定の疾患および障害を処置することを可能にさせる。
【0008】
(本発明の概略)
本発明は、哺乳動物に対する、式Iの化合物(下記に示す)の非経口投与のための薬学的組成物および処方物を供給する。式Iの化合物は、強力なアポトーシス誘発因子であり、特に癌および細胞の過剰増殖性に関連するその他の腫瘍性の疾患の処置に有効である。本発明に従って、一般的に式Iの化合物は特に疎水性であり、本質的に水またはその他の水溶液(例えば、標準食塩水)に不溶解であると、発見されている。したがって、式Iの化合物は、哺乳動物に直接投与した場合、受容不可能なほどの低いバイオアベイラビリティを有する。
【0009】
本発明は、バイオアベイラビリティを改善した下記の式Iの治療学的化合物を含む薬学的組成物および処方物を供給する。特に、本発明は、これらの化合物の非経口の送達、特に静脈注射に適した液体の薬学的組成物を供給する。この薬学的組成物は、1つ以上の半固体または液体可溶化剤、望ましくは非イオン性可溶化剤(例えば、界面活性剤、望ましくは非イオン性界面活性剤)中に、有効な量の1つ以上の式Iの化合物の溶液または分散液を含む。任意に、この薬学的組成物は粘性低減剤、および/または水性希釈剤との混合をさらに含む。一つの特定の実施形態において、この薬学的組成物は、1つ以上の非イオン性界面活性剤、および任意に粘性低減剤、および1つ以上の薬学的に受容可能な水性希釈剤中に有効な量の1つ以上の式Iの化合物の溶液または分散液を含み、注入可能な処方物を形成する。
【0010】
本発明の組成物および処方物は、薬学的試験および治療の両方に対して式Iの疎水性の薬学的因子の投与を可能にする有益な特性を有する。本発明において、これらの特性は、これらの疎水性の治療学的因子の非経口投与、特に静脈注射を可能にする。これらの処方物は、開示された治療学的因子と共有する溶解性の問題を解決するだけでなく、これらはまた試験動物における因子のバイオアベイラビリティを大幅に上げる。
【0011】
ゆえに、本発明の第一の局面は、(a)1つ以上の疎水性のプロアポトーシスの治療学的因子(すなわち、式Iの化合物);(b)1つ以上の非イオン性可溶化剤、特に界面活性剤、およびとりわけ非イオン性界面活性剤;および任意に(c)1つ以上の粘性低減剤を含む第一の処方物の調製を必要とする。本発明の別の局面は、第一の処方物と薬学的に受容可能な水性希釈剤(例えば、WFI(注射用の水)、D5W(水中5%ブドウ糖)、標準食塩水、または乳酸化リンガー溶液)とを合わせることで、式Iの疎水性のプロアポトーシスの因子の注入可能な処方物を調製することを必要とする。本発明の別の局面もなお、式Iの疎水性のプロアポトーシスの因子の注入可能な処方物を調製するためのキットを供給する。最後に、本発明の別の局面もなお、このような治療を必要とする患者の処置、特に癌および個人の体内の細胞の過剰増殖性に関連するその他の腫瘍性疾患のような疾患および障害を有する患者の処置のために、式Iの疎水性のプロアポトーシスの因子の注入可能な処方物の使用の方法を必要とする。このような疾患および障害を、本明細書中では「過剰増殖性の」疾患および障害として表す。
【0012】
第一の処方物および注入可能な処方物の両方の代わりの実施形態は記載されている。全ての実施形態において、これらの処方物中で使用される1つ以上の疎水性のプロアポトーシスの因子は、上記で述べた1つ以上の式Iの化合物を含むと予想される。式Iの化合物と他の生物活性分子、および特に他の癌の化学療法因子とを合わせた処方物を包含するさらなる実施形態が見込まれ、述べられる。このような処方物は、異常または望ましくない細胞の増殖に関連した疾患および障害(例えば、癌および腫瘍性疾患)、および他の過剰増殖性疾患および障害の処置において、有利に使用され得る。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、下記に述べる本発明の代わりの局面および実施形態、および下記に載せる特許請求の範囲から、明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、式Iの治療学的化合物の薬学的組成物の特徴を述べる。
【0015】
本発明の第一の局面において、薬学的組成物、およびこのような薬学的組成物の調製の方法が提供される。このような組成物は、少なくとも1つの疎水性の式Iの治療学的化合物を、半固体または液体非イオン性界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤中の溶液または分散液で含む。このような組成物は、任意に他の成分(例えば、粘性低減剤、防腐剤、抗酸化剤、pH調整化合物、容量オスモル濃度調整化合物、安定剤、およびその他の成分)を、これらの成分が、最終組成物の薬学的受容性または可溶化された治療学的化合物のバイオアベイラビリティに不利な影響を及ぼさない限り、含み得る。
【0016】
本発明のこの局面の望ましい実施形態において、式Iの治療学的化合物は、薬学的に受容可能な界面活性剤、および任意で粘性低減剤を含む溶液によって完全に可溶化される。粘性低減剤が含まれている場合、この粘性低減剤は、薬学的組成物の粘性を十分に低下させ、注射器の扱いやすさ(注射可能性)、および/またはろ過による滅菌(ろ過能力)を十分可能にする。
【0017】
一つの実施形態において、本発明の薬学的組成物は濃縮形態で、本明細書中では、「第一処方物」として表し、これは、水性希釈剤を十分に含まないか、または直接哺乳動物に静脈注射し得るには不十分な量の水性希釈剤を有するかのどちらかである。
【0018】
別の実施形態において、薬学的組成物は十分な量の薬学的に受容可能な水性希釈剤を含み、その結果、この薬学的組成物は哺乳動物に対して、特に静脈によって、直接注入可能である。薬学的組成物のこの形態は、本明細書中では、「注入可能な処方物」として表す。ゆえに、本発明の滅菌した注入可能な処方物(このような処置が必要な患者に対して、非経口的、特に静脈注射で投与される処方物)の調製のための方法が提供される。本発明のこの局面において、その後患者に投与される注入可能な処方物を調製するために、濃縮した第一処方物を薬学的に受容可能な水性希釈剤(例えば、WFI(注射用の水)、D5W(水中5%ブドウ糖)、標準食塩水、または乳酸化リンガー溶液など)と合わせる。
【0019】
その後患者に投与され得る注入可能な処方物中の治療学的に有効な投与量の式Iの治療学的化合物を供給するために、注入可能な処方物の調製において使用される第一処方物の量は、都合よく調整され得る。有効な投与量は、このような処置が必要な患者の質量および相対的な健康状態といった不確定要素を考慮して、調整され得る。上記で述べたように、注入可能な処方物の調製の際に使用される第一処方物は、滅菌ろ過し得るほどに十分に低い粘性であるから、患者に投与するための滅菌の注入可能な処方物を形成するために、それを滅菌の薬学的に受容可能な水性希釈剤と合わせる前、または合わせる際に、都合よく滅菌ろ過され得る。
【0020】
本発明の別の局面において、患者に投与するための注入可能な処方物の調製、またはこの注入可能な処方物に加えて第一処方物を調製する際に使用するキットが提供される。
【0021】
別の局面でもなお、本発明は、このような処置が必要な患者の細胞の増殖または過剰増殖に関連する異常な状態の症状兆候を処置または遅らせる方法を提供する。この方法は、以下:(a)このような処置が必要な患者を見極める、工程;および(b)この患者に注入可能な処方物を非経口的に投与する、工程を包含する。任意に、この患者は、本発明の注入可能な処方物で処置される前に、過敏反応症を減少または除去する薬剤を前投薬される。
【0022】
(プロアポトーシスの治療学的化合物)
ゆえに、本発明にしたがって、薬学的組成物は、治療学的に有効な量の式I:
【0023】
【化10】

の化合物を半固体または液体非イオン性可溶化剤中の溶液または分散液中に含んで供給され、ここで、
は、結合、または直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜6個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニル基、または任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたナフチル基であり;
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、nは、0〜4の整数である。望ましいのは、非経口送達に必要であるように、この可溶化剤が、薬学的に受容可能な水溶液(すなわち、希釈剤)と混合した際に前述の化合物を溶解し、この化合物を溶液または分散液中に保持するのに十分な量の薬学的に受容可能な非イオン性界面活性剤である。
【0024】
式Iの化合物は、強力なアポトーシス誘発因子であり、特に異常または望ましくない細胞の増殖に関連した疾患および障害(例えば、癌および腫瘍性疾患)、および他の過剰増殖性疾患および障害の処置において有効である。しかしながら、動物に経口で投与した場合、この化合物は有意義な程度まで吸収されないことが認められている。さらに、この化合物は水溶液に十分に不溶解で、それゆえに、それ自体は水性のキャリアをとおしての注射に適切でない。言い替えれば、式Iの化合物は、効果的に直接投与され得ない。
【0025】
本発明の組成物および処方物は、それ自体では水溶液にほんの少ししか溶解しないが、非イオン性界面活性剤および多種の有機溶媒には容易に溶解する式Iの疎水性の薬学的因子の可溶化および投与を容易にする。
【0026】
一つの実施形態の集合において、本発明の組成物中の治療学的化合物は、式(II):
【0027】
【化11】

にしたがって、ここで、
は、独立してハロ(望ましいのは、ClまたはF)またはC1−6ハロアルキル(望ましいのは、トリフルオロメチル)であり、qは、0〜4の整数である。
【0028】
は、独立して直鎖状または分枝したC1−4アルキルであり、m=0〜2であり、および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、p=0〜5である。
【0029】
別の実施形態の集合において、本発明の組成物中の治療学的化合物は、式(III):
【0030】
【化12】

にしたがって、ここで、
は、独立してハロ(望ましいのは、ClまたはF)またはC1−6ハロアルキル(望ましいのは、トリフルオロメチル)であり、nは、0〜4の整数であり;
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4であり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜3である。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の組成物中の治療学的化合物は:
5−クロロ−N−{2−[2−(4−クロロ−フェニル)−3−メチル−ブトキシ]−5−トリフルオロメチル−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0032】
【化13】


5−クロロ−N−{5−クロロ−2−[2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−エトキシ]−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0033】
【化14】


5−クロロ−N−{4−クロロ−2−[2−(4−クロロ−フェニル)−エトキシ]−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0034】
【化15】


5−クロロ−N−{2−[2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−エトキシ]−5−トリフルオロメチル−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0035】
【化16】


5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0036】
【化17】

、および
5−クロロ−N−[5−クロロ−2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド:
【0037】
【化18】

から選択される。
【0038】
さらに、本発明の薬学的組成物は、式Iの治療学的化合物と一緒に同時投与される別の治療学的化合物または因子を含み得る。これらの別の治療学的化合物は、どんな薬学的部類の因子でも、それらの含有が式Iの化合物の治療学的価値を激しく損ねない、または逆効果をおよぼさない限り、含み得る。それゆえに、本発明の薬学的組成物中に存在する1つ以上の疎水性の薬学的因子が、1つ以上の別の抗癌因子(すなわち細胞の増殖または過剰増殖の疾患または障害の処置において有効な別の化合物)と一緒になった式Iの化合物(単数または複数)の組み合わせを含み得ると予想される。特に、式Iから供給される1つ以上の疎水性の薬学的因子は、少なくとも1つの公知の癌の化学療法因子または前述の因子の薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグとの組み合わせで調剤され得る。組み合わせの治療で使用される得る公知の癌の化学療法的因子の例としては、アルキル化薬、有糸分裂阻害薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、RNA/DNA代謝拮抗薬、DNA代謝拮抗薬、EGFR阻害薬、プロテオソーム阻害薬、新脈管形成阻害薬、エストロゲン受容体拮抗薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
(薬学的組成物)
本発明の発明者らは、式Iの化合物が十分に高い濃度において十分に可溶である(溶液または分散液中に)新たな薬学的組成物を発見している。特に、濃縮した薬学的組成物、すなわち、標準の取り扱いまたは保存の状態下で、第一処方物が、溶液または分散液として十分に安定している。式Iの化合物を含むこのようなこれらの組成物は、哺乳動物に非経口的に投与され得る本発明の注入可能な処方物を調製するために使用され得るので、バイオアベイラビリティおよび/または吸収作用の大幅な向上を見せる。ゆえに、本発明は、より低い投与量のレベルで効果的な治療に到達する式Iの治療学的化合物の非経口投与を可能にする。
【0040】
(1.第一処方物)
ゆえに、本発明の第一の局面は、(a)有効な量の1つ以上の疎水性の治療学的因子(この因子は式Iの化合物である)、および(b)1つ以上の薬学的に受容可能な半固体または液体非イオン性可溶化剤、望ましくは非イオン性界面活性剤、および任意に(c)1つ以上の薬学的に受容可能な粘性低減剤を含む濃縮した薬学的組成物;すなわち第一処方物、を供給する。この化合物(単数または複数)は、この界面活性剤(単数または複数)および/または粘性低減剤(単数または複数)中では溶液または分散液の状態である。
【0041】
あるいは、本発明のこの局面は、(a)治療学的に有効な量の少なくとも1つの式Iの治療学的化合物;および(b)薬学的に受容可能な界面活性剤、および任意に粘性低減剤を約10:1〜約1:10(v/v)の割合でさらに含む溶液または「液体ビヒクル」を含む濃縮した薬学的組成物、すなわち第一処方物、の特徴を述べる。本発明のこの別の第一の局面において、式Iの治療学的化合物は、この液体ビヒクルによって可溶化され、その後、薬学的組成物である安定した溶液または分散液を形成すると、言われている。
【0042】
用語「液体ビヒクル」は、本明細書中で使用されるように、約室温〜約37℃で液体で、一つ以上の薬学的な使用を承認された成分をさらに含み、式Iの治療学的化合物を溶解し得て真正の溶液またはエマルジョンを形成する薬学的に受容可能な物質を意味する。本発明の薬学的に受容可能な液体ビヒクルは、界面活性剤のみか、または別の成分(例えば、粘性低減剤、水性希釈剤、防腐剤、抗酸化剤、pH調整薬、容量オスモル濃度調整薬、および安定剤)の組み合わせと界面活性剤を含み得る。本発明の薬学的に受容可能な液体ビヒクルは、十分に安定した溶液または分散液を形成する式Iの治療学的化合物を都合よく可溶化させ得るか、または溶解させ得、これらは水性希釈剤と混合した場合、患者への静脈注射に適切な溶液または分散液を形成する。つまり、本発明の薬学的に受容可能な液体ビヒクルは、患者への投与の前または投与中の水溶液のような溶液中に式Iの治療学的化合物を保持し得る。
【0043】
第一処方物の単位容積あたりの式Iの治療学的化合物の量は、それで形成されている注入可能な処方物中の量よりも多くなり得る。本発明の特定の実施形態において、濃縮した薬学的組成物中での式Iの治療学的化合物、すなわち第一処方物、の濃度は、約1mg/ml〜約50mg/mlである。特定の実施形態において、化合物の濃度は、約5mg/ml〜約10mg/mlである。特に、本発明の第一処方物において、治療的化合物(単数または複数)と界面活性剤(単数または複数)との割合(重量/容積、すなわちw/v)は、望ましいのは約1mg/L〜約500g/Lであり、さらに望ましいのは、約1g/L〜約300g/Lである。
【0044】
任意に、式Iの化合物の取り扱いにおける特性、組成物の安定性、またはバイオアベイラビリティを強化するために、必要の際には本発明の第一処方物は別の成分を含み得る。これらの他の成分としては、特に粘性低減剤が挙げられるが、同様に防腐剤、抗酸化剤、pH調整化合物、容量オスモル濃度調整化合物、および安定剤が挙げられる。
【0045】
当該分野において公知の可溶化剤なら、非経口送達に必要なように、十分な量で式Iの治療学的化合物との混合中に存在する場合、この可溶化剤が式Iの治療学的化合物を溶解または分散させ得るかぎり、薬学的に受容可能な水溶液(すなわち、希釈剤)と混合された際にそれを溶液または分散液中に保持するために、どれでも使用され得る。当業者には明白であるように、可溶化剤は界面活性剤、共溶媒、および錯化剤を含む。
【0046】
望ましい実施形態において、可溶化剤は界面活性剤である。当該分野において公知であるように、界面活性剤は、疎水性の部分および親水性の部分を含む両親媒性分子で、陰イオン性、陽イオン性、両性、または非イオン性の界面活性剤であり得る。望ましい実施形態において、「薬学的に受容可能な非イオン性界面活性剤」が使用されており、これは、(a)式Iの治療学的化合物を溶解し得、(b)薬学的に受容可能な水性希釈剤に導入された場合ミセルを形成し得、および(c)この治療学的化合物を、患者への投与前および投与中、このような水溶液中に可溶化または溶解した状態に維持し得る。
【0047】
一般的に、界面活性剤は、本、D.AttwoodおよびA.T.FlorenceによるSurfactants Systems, Their Chemistry,Pharmacy and Biology(Chapman and Hall Pub. Co.、1983)中で詳細に検討されており、この内容は、本明細書中に参考として全て援用される。界面活性剤の比較的一般的な例としては、ラウリン酸カリウム、硫酸アルキルナトリウム(例えば、硫酸ドデシルナトリウム、スルホン酸ヘキサデシル、およびスルホコハク酸ジオクチルナトリウム)、臭化ヘキサデシル(セチル)トリメチルアンモニウム、塩化ドデシルピリジニウム、ドデシルアミン塩酸塩、N−ドデシル−N,N−ジメチルベタイン、胆汁酸および塩、アカシア、トラガカント、Igepal(ポリオキシエチル化ノニルフェノール)、ソルビタンエステル(Spans)、ポリソルベート(Tweens)、Triton−Xの類似物(ポリオキシエチル化t−オクチルフェノール)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、およびポリオキシエチレンオレイルエーテルからなる群から選択されるBrijの類似物、Myrjの類似物(ステアリン酸ポリオキシエチレン)、ポロキサマーおよびポリキサミンタイプのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン誘導体からなる群から選択されるプルロニックおよびテトロニック、界面活性剤因子(例えば、フェノチアジン、三環系抗うつ剤)などが挙げられる。界面活性剤は、上記のリストから選択され得る。望ましいのは、半固体または液体非イオン性界面活性剤因子、すなわち、界面活性剤が使用され、特に、ポリオキシアルケングリコールのエステルまたはエーテル、多価アルコールのエステルまたはエーテル、またはフェノールのエステルまたはエーテルである。ポロキサマーおよびポロキサミンもまた有用である。半固体または液体非イオン性界面活性剤は、ポリエトキシ化脂肪酸、水酸化脂肪酸または脂肪アルコールから好んで選ばれる。特に望ましい例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油の誘導体が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリエトキシ化水素添加ヒマシ油、ヒマシ油からのポリエトキシ化脂肪酸、または水素添加ヒマシ油からのポリエトキシ化脂肪酸である。特定の実施形態において、ポリエトキシ化ひまし油はCremophorである。特定の実施形態において、ポリエトキシ化ヒマシ油は、Cremophor EL(商標登録)(BASF、Ludwigshafen、Germany)である。別の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、Incordas30、ポリオキシエチレン5ヒマシ油、ポリエチレン9ヒマシ油、ポリエチレン15ヒマシ油、12−ヒドロキシステアリン酸−ポリエチレングリコール共重合体(Solutol HS−15)としても知られているポリオキシル−15−ヒドロキシステアリン酸塩、d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸塩(TPGS)またはモノグリセリド(例えば、マイベロール)または非イオン性界面活性剤を基にした脂肪族アルコール(例えば、オレス−3、オレス−5、ポリオキシル10オレイルエーテル、オレス−20、ステアレス−2、ステアレス−10、ステアレス−20、セテアレス−20、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、PPG−5セテス−20、およびPEG−6カプリル/カプリントリグリセリド)、Pluronic(商標登録)共重合体の非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic(商標登録)L10、L31、L35、L42、L43,L44,L62、L61、L63、L72、L81、L101、L121、およびL122)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween65、Tween80、Tween81、およびTween85)、または最後に、エトキシ化グリセリド(例えば、PEG20アーモンドグリセリド、PEG−60アーモンドグリセリド、PEG−20とうもろこしグリセリド、およびPEG−60とうもろこしグリセリド)である。
【0048】
上記に提案されたように、本発明において、界面活性剤は、一部ではそれらの式Iの化合物を可溶化する能力によって、および一部では薬学的に受容可能な水性希釈剤に導入された際に、式Iの化合物が溶解または溶解化または分散した状態にしておき、ミセルを形成する能力によって、選ばれる。ミセルは、水溶液中で形成される両親媒性の有機分子の一団の微視的な球状の配列(例えば、界面活性剤)であり、一団の個々の両親媒性分子の疎水性の部分が球体中に埋もれることで水が除外され、そして親水性の部分が球体の表面上に残り、そこで水と接触した状態で残る性質によって形成される。ミセルを形成する界面活性剤の性質は、個々の界面活性剤分子の構造およびそれらの疎水性および親水性の部分の性質によって定義される。
【0049】
重要なことには、界面活性剤は、しばしば臨界ミセル濃度またはCMCとして知られている物理的な特性によって特性を表す。このCMCは、水溶液中に導入された場合に、界面活性剤がミセルを形成する能力の基準である。特に、このCMCは、界面活性剤分子自体が互に自己会合してミセルを形成する界面活性剤の最も低い濃度である。CMCよりも高い界面活性剤の濃度にはまた、界面活性剤の濃度がさらに上昇するのでより複雑な自己会合の構造形成するミセル化が随行する。このCMC値は、それ未満ではミセルが形成され得ない閾値を表すので、限界値としても表される。一般的にCMCの値は、パーセントで表され、水溶液中の両親媒性分子(すなわち、界面活性剤)の濃度の率を表し、これより高いとミセルは形成され得る。さらに、両親媒性の界面活性剤分子の親水性と疎水性との相互作用およびこの溶液の温度によって変るが、このCMCは、ミセルが一度形成されると安定するのに必要な最低の濃度(パーセント率)である。
【0050】
本発明において、望ましい非イオン性界面活性剤は、約0.005%〜約0.50%の範囲のCMC数を有し、望ましいのは、約0.01%〜約0.10%であり、さらに望ましいのは、約0.01%〜約0.05%である。望ましいのは、式Iの化合物を溶解するために使用される非イオン性界面活性剤が、約0.01%〜約0.10%の範囲のCMC数を有し、望ましいのは、約0.01%〜約0.05%である。この範囲のCMC数を有する非イオン性界面活性剤は、薬学的組成物が多量の薬学的に受容可能な水性希釈剤に導入した際に式Iの化合物を可溶化し、ミセルを形成するという両方の見地から、物理的特性の望ましい組み合わせを提供することが分かっている。
【0051】
界面活性剤はまた、それらの親水性親油性比数または「HLB数」で分類され特性づけられる。Griffinにより導入されたHLBシステム(D.AttwoodおよびA.T.FlorenceによるSurfactants Systems,Their Chemistry,Pharmacy and Biology、(Chapman and Hall Pub. Co.、1983)を参照し、これは、本明細書中に参考として援用される。)によると、HLB数は、1〜40の尺度の数である。HLBシステムは、特定の分子構造がどのようなタイプの界面活性剤の特性を提供するかを予想するために使用される準実験的方法である。HLBシステムは、親水性の基を有する分子もあれば、親油性の基を有する分子もあり、その両方を有する分子もあるというコンセプトに基づいている。分子中または混合物中におけるそれぞれのタイプの基の重量比率は、その分子構造または組成物がどのような運動を示すかを予想する。したがって、界面活性剤を考慮して、HLB数は、界面活性剤分子上の親水性の基と親油性の基との比率に対応する、界面活性剤の乳化力の準実験的基準である。
【0052】
実際の使用において、HLB数は、界面活性剤の「水を好む」または「脂肪を好む」性質、および有機分子を可溶化するその能力を考慮して、界面活性剤の挙動を予想する。特に、その数が高ければ高いほど、界面活性剤はより親水性になり、その数が低ければ低いほど、界面活性剤はより親油性になる。特定の有機化合物または薬剤を可溶化するのに必要なHLB数は、既知のHLB数を有する界面活性剤を選択し、それを化合物または薬剤と混合させ、可溶化の結果を観測することにより、実験的に決定される。化合物または薬剤の真正の溶液は、適切なHLB数を有する界面活性剤が使用された場合に形成されるが、一方では、不均一混合物は、化合物または薬剤を適切に可溶化するために異なるHLB数を有する界面活性剤が必要であることを示す。
【0053】
特定の化合物を可溶化するために適切な界面活性剤を選択する際の指針として、異なる界面活性剤のHLB数が使用され得る。多くの界面活性剤に対するHLB数は、一般的に当該分野において公知であり、また実験的に決定され得る。さらに、HLB数は、代数学的に相加的である。ゆえに、低いHLB数を有する界面活性剤と高いHLB数を有する界面活性剤とを合わせることで、始めの界面活性剤の2つのHLB数の間の中間に位置するHLB数を示す界面活性剤の混合物が、調製され得る。HLB数のコンセプトは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、16th Ed.、Mack Pub.Co.、(1980)、ページ316−319中に詳説されている。
【0054】
望ましい実施形態において、約10〜約16の範囲のHLB数を有する非イオン性界面活性剤が使用される。望ましいのは、式Iの化合物を溶解または分散するために使用された非イオン性界面活性剤が、約12〜約14の範囲のHLB数を有する。この範囲のHLB数を有する非イオン性界面活性剤は、薬学的に受容可能な水性希釈剤中に加えられた際に式Iの化合物を可溶化し、ミセルを形成するという両方の見地から、物理的特性の望ましい組み合わせを提供することが分かっている。
【0055】
本発明の処方物を調製する際に使用され得る非イオン性界面活性剤の例としては、特にポリエトキシ化ヒマシ油を含む。用語「エトキシ化ヒマシ油」は、上記および本明細書中で使用されているとおり、少なくとも1つの酸素含有機能部分で修正されたヒマシ油を表す。特に、この用語は、少なくとも1つのエトキシル基を含むヒマシ油を表す。さらに、本明細書中で使用されているとおり、用語ポリオキシル35ヒマシ油(PEG−35ヒマシ油、Macrogoglycerol ricinoleateおよびMacrogoglyceroli ricinoleas、あるいはCAS登録番号61791−12−6としても知られている)は、疎水性物質の水性処方物中で使用される非イオン性界面活性剤、可溶化剤および乳化剤である。ポリオキシル35ヒマシ油は、ヒマシ油とエチレンオキシドとを1:35のモル比率で反応させることで調製される。「Cremophor EL(商標登録)」(BASF、Ludwigshafen、Germany)は、12〜14のHLB数および大体0.02%の臨界ミセル濃度(CMC)を有するポリオキシル35ヒマシ油である。Cremophor EL(商標登録)は、25℃で1.05〜1.06g/mlの密度、および700〜800mPa・sの粘性を有する(BASFからのCremophor EL(商標登録)に関するProduct Literatureを参照せよ)。
【0056】
本発明の組成物および処方物を調製するために使用され得る別の非イオン性界面活性剤としては、多種の形態のポリソルベート(例えば、Tween−80)、ソルビタンエステル(例えば、Spans)、Brij類似物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、およびポリオキシエチレンオレイルエーテル)、およびMyrj類似物(ステアリン酸ポリオキシエチレン)、ポロキサマーおよびポリキサミンタイプのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン誘導体からなる群から選択されるプルロニックおよびテトロニックが挙げられる。適切な界面活性剤の別の例としては、12−ヒドロキシステアリン酸−ポリエチレングリコール共重合体(Solutol HS−15)としても知られているポリオキシ−15−ヒドロキシステアリン酸塩、POLYSORBATE 80(商標登録)および、その他のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸グリセリル、ポリビニルアルコール、エチレンオキシド共重合体(例えば、PLURONIC(商標登録)(ポリエーテル))、ポリオル部分、およびソルビタンエステルが挙げられる。望ましい実施形態において、エトキシ化ヒマシ油(例えば、Cremophor EL(商標登録))は、式Iのプロアポトーシスの治療学的因子の製剤で使用される。
【0057】
有益的に、本発明の組成物を調製する際に使用される界面活性剤は、式Iの治療学的化合物を水性希釈剤中に可溶化または分散、および水性希釈剤をとおしての送達を可能にする。このような処方物は、非経口的ルート、特に静脈注射をとおしての送達のためにデザインされている。
【0058】
(粘性低減剤)
本発明にさらにしたがって、提供される薬学的組成物は、1つ以上の粘性低減剤をさらに含み得る。本明細書中で使用されているように、用語「粘性低減剤」は、界面活性剤と混合または液体ビヒクル中に含まれた際に、その界面活性剤および液体ビヒクルの粘性を、生じた溶液が容易に注射器によって扱われ得、容易に滅菌ろ過し得るほどに低減する適切な化合物を意味する。都合がよいことに、本発明の粘性低減剤は、可溶化剤、特に界面活性剤または液体ビヒクルの粘性を、生じた溶液が0.22マイクロメートル(μm)の穴を有する滅菌フィルターをとおして、または室温よりも低い温度でろ過し得るほどにまで低減する。このような粘性低減剤は、それら自体では本発明の組成物および処方物中での粘性が高すぎて容易には注射器による扱いまたは滅菌ろ過し得ない半固体または液体界面活性剤の使用を可能にする。ゆえに、それらはまた式Iの治療学的化合物を再構成するために使用される液体ビヒクルの扱いにおける特性を向上させる。
【0059】
本明細書中で使用されているように、用語「注射可能性」または「注射可能」は、室温で15ゲージ針よりも大きくない直径の皮下針を装備した注射器によって便利におよび正確に扱われる、溶液または分散液の能力を意味する。さらに、「注射可能な溶液」は、皮下注射によって容易に扱われ得、容積的に測定され得る。
【0060】
用語「ろ過性」または「ろ過可能」は、本明細書中で使用されているように、溶液または分散液がろ過媒体を通過する能力を意味し、本発明の状況では溶液が容易に0.22マイクロメートル(μm)よりも大きくない穴を有するフィルターを通し、室温でのろ過のプロセスによってこの溶液の滅菌を可能にする能力を意味する。特に、本発明の組成物および処方物の滅菌ろ過は、組成物および処方物を0.22マイクロメートル(μm)またはそれより小さい大きさの穴を有する「滅菌フィルター」にとおすことにより完了され得る。例えば、本発明の組成物および処方物の滅菌ろ過は、これらの溶液を、0.22マイクロメートル(μm)の大きさの穴を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(例えば、「Durapore」TMフィルター(Millipore、Billerica、MA、USA))をとおすことで完了され得る。
【0061】
本発明の特定の実施形態において(例えば、第一処方物において使用される非イオン性界面活性剤がポリエトキシ化ヒマシ油であるような実施形態)、粘性低減剤が望ましくは濃縮した組成物中に含まれ、可溶化または分散された式Iの治療学的化合物を都合よく扱うことを可能にする。特定の実施形態において、使用されている非イオン性界面活性剤が室温で液体ではなく半固体またはペーストであるので、これは望ましい。これらの実施形態において、式Iの治療学的化合物の添加の前に、粘性低減剤および非イオン性界面活性剤は好んで事前に混合される。室温で液体の混合物を調製するために、非イオン性界面活性剤と粘性低減剤との容積/容積比率は、調整され得る。望ましいのは、この液体混合物が十分に低い粘性を有し、したがって注射可能またはろ過可能である。これらの実施形態において、式Iの治療学的化合物は、非イオン性界面活性剤と粘性低減剤との液体混合物中で可溶化される。このような液体混合物を「液体ビヒクル」として表す。
【0062】
粘性低減剤が本発明の薬学的組成物中に含まれているような本発明の実施形態において、組成物中に存在する粘性低減剤の容積は、界面活性剤の容積に対して、特に非イオン性界面活性剤は約1:10〜約10:1であり得る。特定の実施形態において、相対体積は約1:2〜2:1である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、相対体積は約1:1である。しかしながら、当業者が認識するように、使用される界面活性剤および粘性低減剤によって、粘性低減剤と界面活性剤との比率は変わり得る。それでもなお、粘性低減剤および界面活性剤は、第一処方物が注射可能またはろ過可能になるような粘性に達する比率で使用される。
【0063】
本発明の処方物を調製する際に使用され得る粘性低減剤の例としては、C1−5アルカノール(例えば、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール)、グリセロールのモノエステル(例えば、モノカプリル酸グリセリンおよびモノオレイン酸グリセリン)、および室温以上で液体の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。本発明の薬学的組成物中で使用され得る粘性低減剤の例としては、アルコール(エタノールまたはイソプロパノール)、n−プロピルアルコール、ポリオキシエチレン5ヒマシ油、ポリオキシエチレン9ヒマシ油、ラブラフィル(labrafil)、ラブラソル(labrasol)、カプマルGMO(capmul GMO)(モノオレイン酸グリセリル)、カプマルMCM(capmul MCM)(中位鎖モノ−およびジグリセリド)、カプマルMCM C8(capmul MCM C8)(モノカプリル酸グリセリル)、カプマルMCM C10(capmul MCM C10)(モノカプリン酸グリセリル)、カプマルGMS−50(capmul GMS−50)(モノステアリン酸グリセリル)、カプレックス100(caplex 100)(ジデカン酸プロピレングリコール)、カプレックス200(caplex 200)(ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール)、カプレックス800(caplex 800)(ジ2−エチルカプロン酸プロピレングリコール)、カプテックス300(captex 300)(トリカプリル/カプリン酸グリセリル)、カプテックス1000(captex 1000)(トリカプリン酸グリセリル)、カプテックス822(captex 822)(トリアンデカン酸グリセリル)、カプテックス350(captex 350)(トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル)、カプレックス810(caplex 810)(トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル)、カプマルPG8(capmul PG8)(モノカプリル酸プロピレン)、プロピレングリコール、およびラウリン酸プロピレングリコール(PGL)が挙げられるが、これらに限定しない。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、任意に別の成分(例えば、防腐剤、抗酸化剤、pH調整化合物、容量オスモル濃度調整化合物、安定剤、およびその他の成分)を、これらの成分が、最終組成物の薬学的受容性または可溶化された治療学的化合物のバイオアベイラビリティに不利な影響を及ぼさない限り、含み得る。
【0065】
特に、本発明の組成物は、薬学的に受容可能な防腐剤を含み得る。
【0066】
一般的に防腐剤は、処方物中での微生物の成長抑制の予防をする因子とみなされている。一般的な防腐剤としては、パラベン(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルパラベン)、エタノールおよびイソプロパノール、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0067】
さらに、本発明の組成物は、薬学的に受容可能な抗酸化剤を含み得る。このような抗酸化剤は、分子状酸素または反応性酸素の種によって起こされる酸化ダメージから組成物の成分を保護する働きをする。本発明の組成物中に含まれ得る薬学的に受容可能な抗酸化剤の例として、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビルパルミテート、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、ビタミンE、ビタミンE PEG 1000、TPGSなどが挙げられる。また、本発明の組成物は、薬学的に受容可能なpH調整化合物および/または容量オスモル濃度調整化合物を含み得る。このような化合物は、薬学的組成物の特性を向上させるために使用され、その結果、非経口的投与、特に静脈注射において効果的に活用される処方物を調製するためにそれが使用され得る。適切なpH調整化合物の例としては、薬学的に受容可能な緩衝システムならどれでも(例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、トロメタミン、クエン酸塩、乳酸塩)、または受容可能な酸性化剤ならどれでも(例えば、塩酸、酒石酸、酢酸、クエン酸)またはアルカリ化剤(水酸化ナトリウムまたはカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)が挙げられる。適切な容量オスモル濃度調整化合物の例としては、本来イオン性または非イオン性のどちらかで薬学的に受容可能な水に可溶な化合物ならどれでも(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリエチレングリコール400〜4000)、および薬学的に受容可能な緩衝塩の全てが挙げられる。
【0068】
(薬学的組成物の調製の方法)
式Iの化合物を可溶化剤中に可溶化または分散させることは、当業者には公知の多種の技術によって行われ得る。これらの技術としては、攪拌技術(手動または磁器攪拌システム使用)、渦巻技術、振動技術、および音波破砕技術が挙げられる。特定の実施形態において、式Iの化合物は、非イオン性界面活性剤と一緒にする前に共存溶媒に溶解し得る。便利なことに、この共存溶媒は粘性低減剤としての働きもする。特定の実施形態において、共存溶媒はC1−5アルカノール(例えば、エタノール)である。別の実施形態において、式Iの化合物は非イオン性界面活性剤および任意に粘性低減剤を含む液体ビヒクル中に直接溶解または可溶化される。本発明の薬学的組成物中の式Iの治療的化合物の濃度は、この組成物の調製中に必要であれば、固定された容積の液体ビヒクルに加えられた化合物の質量を変更することで都合よく調整され得る。そうでなければ、この濃度は、固定された質量の化合物を可溶化するために使用される液体ビヒクルの容積を変更することで調整され得る。どちらのケースにおいても、均一になるまでこの組み合わせが混合される。
【0069】
必要であれば、混合物の粘性は、粘性低減剤を加えることで調整され得、またはさらに調整され得る。一旦所望する組成物(および粘性)を得ると、この組成物は滅菌ろ過され得、必要であればアリコートされ得る。
【0070】
本発明の薬学的組成物は、このような処置が必要な患者にこの組成物を投与するのことを任う診療所に運ぶ前に大量に調製され得ることは注意するに値する。あるいは、本発明の薬学的組成物は、患者に投与する直前にこのような診療所で調製され得る。どちらの場合でも、患者に投与される式Iの治療学的化合物の量は、注入可能な処方物を調製するために使用される薬学的組成物の量を調整することで都合よくコントロールされ得る。
【0071】
(2.注入可能な処方物)
本発明の別の局面は、注入可能な処方物であり、これは溶液または分散液中に、水性希釈剤と混合して半固体または液体可溶化剤中の有効な量の式Iの治療学的化合物を含む。注入可能な処方物は、上記で説明した第一処方物と水性希釈剤とを混合させて調製され得る。
【0072】
望ましい実施形態において、注入可能な処方物は1つ以上の疎水性の薬学的因子を含み、ここでこの因子は、薬学的に受容可能な水性希釈剤と混合された、式Iの化合物、および1つ以上の薬学的に受容可能な界面活性剤、および任意に1つ以上の薬学的に受容可能な粘性低減剤である。どの理論にも結びつけることを望まないが、本発明の注入可能な処方物中では、式Iの治療学的化合物は、ミセルを含む自己会合する界面活性剤構造の内部に集中し、これは水との接触が作られた場合、本発明の薬学的組成物を調製する際に使用される界面活性剤によって形成されると、考えられている。その結果、式Iの治療学的化合物は、処置の必要な患者に対して、処方剤の非経口投与、特に静脈注射または注入をとおして送達され得る。
【0073】
当該分野において公知の適切な水性希釈剤ならどれでも使用され得る。薬学的に受容可能な水性希釈剤の例としては、静脈注射の溶液を調製するのに一般的に使用される溶液を含み、とりわけ、「注射用の水」(WFI)、水中5%デキストロース(ブドウ糖)(D5W)、標準食塩水、1/2標準食塩水中5%デキストロース(D5W1/2N食塩水)、および乳酸化リンガー溶液が挙げられる。有利なことに、非イオン性界面活性剤を有する本発明の濃縮した組成物または第一処方物と薬学的に受容可能な水性希釈剤と混合させた場合、組成物はミセルを含む自己会合構造を形成し、それは、患者への生じた注入可能な処方物の投与前および投与間に式Iの治療学的化合物を溶液中に保持する。
【0074】
典型的に、本発明の注入可能な処方物中では、可溶化剤、望ましくは非イオン性界面活性剤と水性希釈剤との比率(容積対容積)が、約0.01:500〜約1:1(v/v)で、さらに望ましいのは約1:500〜約1:2(v/v)で、最も望ましいのは約1:200〜1:5(v/v)である。当業者は、最終的な注入可能な処方物が「準安定」および「注入可能」である限り、使用される可溶化剤または界面活性剤および水性希釈剤によってこの比率は変わり得ると認識する。
【0075】
用語「注入可能」は、本明細書中で使用されているように、15ゲージ針を有する注射器をとおして、特に患者の静脈中での非経口的送達によって患者の中へ注入するのに適切であることを意味する。
【0076】
用語「準安定」は、本明細書中で使用されているように、その性質が変わり始める前の間、物理的および化学的に安定した状態を保つ真正の溶液、またはエマルジョンまたはマイクロエマルジョンまたは分散液のどれかを意味する。本ケースにおいて、患者に投与されるためにその溶液、またはエマルジョンあるいはマイクロエマルジョンまたは分散液中に可溶化された治療学的に有効な量の式Iの化合物の送達を可能にするために、濃縮した薬学的組成物を薬学的に受容可能な水性の希釈剤に加えた際に形成される準安定の溶液は、約20℃〜約37℃の温度で充分に長い時間安定な状態を保たなけらばならない。望ましいのは、それが安定しているのが、約20℃〜約37℃で少なくとも約1時間、少なくとも約4時間、さらに望ましいのは約8時間、もっとさらに望ましいのは約16時間、なおもっと望ましいのは約24時間以上である。
【0077】
典型的に、本発明の注入可能な処方物は、薬学的に受容可能な水性希釈剤中に濃縮した薬学的組成物のアリコートを希釈することで、調製される。有利なことに、濃縮した薬学的組成物または第一処方物は、容積測定的に測定され注射器によって移動され得、この移動は、薬学的組成物が適切な0.22μmまたはそれより小さい大きさのろ過穴を有する滅菌ろ過装置をとおされる滅菌工程を含み得る。本発明の特定の実施形態において、薬学的組成物は、それが注入可能な処方物を調製するために薬学的に受容可能な水性の希釈剤に導入されるので、滅菌ろ過装置を通される。上記で述べたように、薬学的に受容可能な水性の希釈剤は、独立してWFI(注射用の水)、D5W(水中5%デキストロース)、および標準食塩水、およびとりわけ乳酸化リンガー溶液、からなる群から選択され得る。薬学的に受容可能な水性希釈剤は、患者に非経口的に投与した際の患者によるその耐薬力、および本発明の薬学的組成物の希釈でのその安定性の両方によって、選ばれる。
【0078】
さらに、本発明の注入可能な処方物は、式Iの治療学的化合物の化学的安定性を強化するために、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)および防腐剤(すなわち、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン))、ビタミンE、TPGSなど)も含み得る。
【0079】
重要なことに、本発明の組成物および処方物は、式Iの治療学的化合物に、非処方物の化合物に比べて向上したバイオアベイラビリティを提供する。これは一部では、水溶液に導入する際に、薬学的組成物中の界面活性剤がミセルを含む自己会合構造を形成し、ここで少なくともこのような処置が必要な患者に対して注入可能な処方物の投与を可能にする程に充分に長い時間、式Iの治療学的化合物は可溶化され続ける、という事実のためである。ゆえに、一つの望ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物が調製され(a)式Iの治療学的化合物を可溶化し得、(b)水溶液中に導入された際にミセルを形成し得、および(c)これらの組成物が薬学的に受容可能な水性希釈剤と一緒になった際に、溶液中の式Iの治療学的化合物を注入可能な処方物中に保持し続け得る。
【0080】
ゆえに、本発明の別の実施形態においてもなお、そのような処置が必要な患者へ非経口的投与される注入可能な処方物を調製するための方法が提供される。一つの実施形態において、この方法は以下:(a)有効な量の1つ以上の式Iの疎水性の治療学的因子を可溶化剤中に可溶化または分散させて、安定した溶液または分散液を形成し、生じた溶液または分散液と充分な量の薬学的に受容可能な希釈剤を混合して準安定した溶液を形成する、工程を包含する。望ましい実施形態において、可溶化剤は、任意に粘性低減剤との混合物中にある非イオン性界面活性剤である。
【0081】
重要なことに、本発明の組成物および処方物を調製する方法は、所望する容量に応じて決定され得る。ゆえに、たとえ方法が溶液の全容量を100mLと指定したとしても、組成物または処方物は、処方物のそれぞれの成分を比例して100倍に減らすことで、1mLサンプルとして調製され得る。例えば、濃縮した薬学的組成物を調製するために、10グラムの式Iの化合物が、非イオン性界面活性剤および任意に粘性低減剤を含む100mL容量の溶液に溶解される場合、0.1グラムの化合物は1mLのこれと同じ溶液のサンプルに溶解し得る。同様に、注入可能な処方物を調製するために、通常10mLの濃縮した薬学的組成物が100mLのD5Wに加えられる場合、注入可能な処方物のサンプルは、0.1mLの薬学的組成物を1mLのD5Wに加えることで、調製され得る。
【0082】
望ましくは、この2つの溶液の混合は、封をした容器中に合わせた溶液を、均一な溶液を得るまで単純に逆さにするおよび/または攪拌することで、行われる。理想的には、この混合プロセスは手動で行われる。しかしながら、均一な溶液を得るためにさらなる混合攪拌が必要な場合、この合わせた液体は、適切な機械的方法によって混合され得、その方法としては、機械的攪拌、振とうまたはボルテックス、もしくは超音波をとおしてまたはその他の振動が挙げられる。
【0083】
有利なことに、本発明の注入可能な処方物は、第一処方物と、静脈注射による投与に適した容器にすでに入っている薬学的に受容可能な水性希釈剤とを合わせて、調製され得る。特に、薬学的組成物は、静脈注射バッグ(i.v.バッグ)内に含まれる適切な薬学的に受容可能な希釈剤に直接導入され得、その結果、この2つの溶液は混合され、均一な注入可能な処方物を形成する。望ましいのは、希釈剤溶液を含むi.v.バッグが充分な不活性物質(例えば、ポリオレフィン)で構成されているか、または充分な不活性物質で裏打ちされている。理想的には、i.v.バッグ内の化学成分はバッグ自体からバッグ内に入っている注入可能な処方物中に浸出して、その注入可能な処方物を汚染するようなことはあってはならない。このような浸出は、ポリ塩化ビニル(PVC)でできたi.v.バッグで、溶液と表面とが接触した際に問題になり得る。さらに、使用されるi.v.バッグは、式Iの化合物を可溶化するのに使用される非イオン性界面活性剤、および粘性低減剤(もしあれば)からの攻撃に抵抗しなくてはならない。さらに、使用されるi.v.バッグの内壁は、式Iの化合物と実質的に親和する物質を有してはならなくて、その結果、i.v.バッグ内に含まれている注入可能な処方物内での治療学的因子の濃度が一定である。
【0084】
本発明の注入可能な処方物を調製するのに使用され得る適切なi.v.バッグの例としては、Bethlehem、PA、U.S.A.のBraun Medical,Inc.から製造されているポリオレフィン裏打ちのi.v.バッグが挙げられる。これらのi.v.バッグは、トレードマークPAB(商標登録)として知られており、あらかじめ計測された量のD5Wまたは0.9%食塩水(標準食塩水)が、本発明の濃縮した薬学的組成物を加える余地を残してi.v.バッグを部分的に占めた状態で市販されている。
【0085】
(注入可能な処方物を調製するためのキット)
本発明の別の局面においてもなお、本発明の注入可能な処方物の調製のために特別に設計されたキットが提供される。本発明のキットは、仕切りのついた容器内に、式Iの化合物、半固体または液体可溶化剤、および任意に粘性低減剤を含み、および哺乳動物への静脈注射に適した本発明の注入可能な処方物を調製するためのキットを使用するための説明書も任意に含む。本発明のキットの中には、多種の成分が同じまたは別の仕切り内に入り得る。例えば、一つの実施形態において、本発明のキットは、仕切りのついた容器内に1つの小瓶または瓶、およびその使用のための説明書を含む。この実施形態において、この小瓶または瓶は、上記で述べた本発明の計測された容量の滅菌「薬剤生成物」または濃縮した薬学的組成物もしくは第一処方物を含み、これは溶液または分散液中に、可溶化剤(例えば、界面活性剤、望ましくは非イオン性界面活性剤)中または非イオン性界面活性剤および任意に粘性低減剤を含む液体ビヒクル中で有効な量の式Iの薬学的化合物を含む。説明書は、この薬剤生成物(すなわち、濃縮した薬学的組成物)を使用して式Iの治療学的組成物の注入可能な処方物を調製する仕方の詳細なプロトコルまたは手順を提供する。説明書はそのように調製された注入可能な処方物の投与の仕方の詳細なプロトコルまたは手順も任意に提供する。
【0086】
本発明のキットの別の実施形態において、有効な量の式Iの治療学的化合物が半固体または液体可溶化剤(例えば、界面活性剤、望ましくは非イオン界面活性剤)とは別の仕切りの中にはいっており、任意に粘性低減剤とは別の仕切りに入っている。ゆえに、例えば、このキットは、仕切りのついた容器内に設置されている2つの小瓶または瓶、およびそれらの使用に関する説明書を含み得る。この実施形態において、1つの小瓶または瓶は乾燥した粉末状の式I治療学的化合物を含み、もう1つの小瓶または瓶は非イオン性界面活性剤および任意に粘性低減剤を含む計測された量の液体ビヒクルを含む。説明書は、液体ビヒクルを使用してこの粉末状の化合物を可溶化させ、「再構成された薬剤生成物」を調製する仕方の詳細なプロトコルまたは手順を提供する。説明書は、この再構成された薬剤生成物(すなわち、薬学的組成物)を使用して、式Iの治療学的化合物の注入可能な処方物を調製する仕方の詳細なプロトコルまたは手順も提供する。説明書は、そのように調製された注入可能な処方物の投与の仕方の詳細なプロトコルまたは手順も任意に提供する。
【0087】
本発明のキットは、任意に追加的な物(例えば、滅菌フィルター装置、および薬学的に受容可能な希釈剤(例えば、D5Wまたは標準食塩水)を含むポリオレフィン裏打ちのi.v.バッグ)も含み得、これらは式Iの治療学的化合物の注入可能な処方物を調製する際に使用されるように意図される。
【0088】
(処置の方法)
本発明の別の局面においてもなお、このような処置が必要な患者の異常な状態の初期症状を処置または遅らせる際に、記述された注入可能な処方物が使用される。本発明の特定の実施形態において、患者は哺乳動物である。本発明の特定の実施形態において、患者はヒトである。本発明のほとんどの実施形態において、上記で述べたように、薬学的組成物は、注入可能な処方物を調製するために使用され、また上記で述べたように、この注入可能な処方物は、患者の異常な状態の症状兆候を処置または遅らせるために使用される。全ての実施形態において、注入可能な処方物は、このような処置が必要な患者に非経口的に、一般的には静脈内で投与される。これらの処方物によって処置され得る異常な状態としては、細胞の増殖性障害および疾患、および過剰増殖性疾患(例えば、癌および新形成)が挙げられる。
【0089】
本明細書中で使用されているとおり、用語「処置する」は、治療学的効果を有し、少なくとも部分的に生体内の異常な状態を軽減するまたは取り除く、もしくはこの異常な状態の症状兆候の発生を遅らせる本発明の方法を示す。
【0090】
用語「治療学的効果」は、本明細書中で使用されているとおり、異常な状態を引き起こすまたはその一因である細胞の成長または増殖の抑制を示す。用語「治療学的効果」は、異常な状態を引き起こすまたはその一因である因子の阻害も示す。治療学的効果は、ある程度1つ以上の異常な状態の症状を和らげる。
【0091】
本明細書中で使用されているとおり、用語「哺乳動物」は、本明細書中で使用されているとおり、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、羊、馬、および牛のような生体であり;さらに望ましいのは犬、猫、サル、および尾なしざるで;最も望ましいのはヒトである。
【0092】
用語「細胞増殖性の障害または疾患」またあるいは「過剰増殖性の障害または疾患」は、本明細書中で使用されているとおり、多細胞生体内の細胞の1つ以上の小さな集合体が過剰な細胞の増殖を起こし、結果、多細胞生体に害を与える(例えば、苦痛または寿命の減少)障害または疾患を示す。過剰な細胞の増殖は、一般総数を参照、および/または特定の患者(例えば、この患者の寿命中の初期において)を参照して、測定され得る。過剰増殖性の障害は、異なるタイプの動物およびヒトにおいて起こり得て、影響を受ける細胞によって、異なる身体的発現を生じる。過剰増殖性の障害としては、癌、血管の増殖性障害、線維性障害、および自己免疫障害が挙げられる。
【0093】
異常な細胞増殖の状態の処置に関して、治療学的効果は、以下の(a)腫瘍の大きさを縮小;(b)腫瘍転移の抑制(すなわち、減速させるまたは停止させる);(c)腫瘍成長の抑制;および(d)異常な状態に関連する1つ以上の症状の軽減、の一つ以上に寄与している。白血病に対して効能を表す化合物は、転移を抑制するよりむしろこの化合物が代わりに細胞増殖または細胞の成長を減速または減少させること以外は、本明細書中に記述したように定義され得る。
【0094】
本明細書中で使用されているとおり、用語「異常な状態」は、患者自身の正常な機能から逸脱した患者の細胞または組織中の機能を示す。本明細書で述べたように、異常な状態は細胞増殖に関連し得る。
【0095】
式Iの疎水性の治療学的因子の薬学的組成物および処方物は、抗転移または抗癌因子として、使用され得る。薬学的組成物および処方物は、他の過剰増殖性の疾患および障害の治療においても、使用され得る。
【0096】
疾患および障害の治療の際に使用される治療的化合物の適切な投与量は、多種の要因(例えば、処置される疾患のタイプ、使用される特定の処方物、治療学的化合物の投与される経路、および患者の大きさおよび生理的な状態)によって決定される。本明細書中で述べている化合物の治療学的に有効な投与量は、細胞培養および動物モデルからまず見積もられ得る。例えば、投与量は、細胞培養アッセイで定義されたIC50をまず考慮した血中濃度範囲を得るために、動物モデル内で公式化され得る。その後、動物モデルのデータは、ヒトに対してより正確に有効な投与量を決定するために、使用され得る。
【0097】
癌およびその他の腫瘍性の疾患および障害の処置のために、式Iの治療学的化合物の予想される1日あたりの投与量は、1日あたり0.05〜500mg/kgであり、望ましいのは、1日あたり0.05〜100mg/kgである。式Iの治療学的化合物は、もし活性成分の血漿レベルが治療学的効果を維持するのに充分に足りるなら、より少ない頻度で投与され得る。
【0098】
本発明の注入可能な処方物は、そのような治療が必要な患者に、非経口的に投与され得る。投与の正確な経路は、患者によって示される異常な状態の性質によって決定されるが、一つの実施形態においては、投与は静脈注射経由である。
【0099】
過敏反応症はポリオキシル35ヒマシ油の投与によって起こり得るから、患者は任意に過敏反応症を減少または除去する薬剤を前投薬される。ゆえに、本発明は、患者の処置の:過敏反応症を減少または除去する薬剤の前投薬、および有効な量の本発明の注入可能な処方物の患者への投与を包含する方法を供給する。この目的のために、標準的な医学のプロトコル(例えば、癌患者へのパクリタクセル(TAXOL)の投与のために開発されたプロトコル)が、当業者には明白な多少の調整をして、使用され得る。例えば、前投薬の工程は、(1)本発明の注入可能な処方物を非経口的に投与する12〜6時間前に、有効な量のデキサメサゾンを経口的に投与する工程;および(2)デキサメサゾンの投与の後に、非経口的に(i)有効な量の抗ヒスタミン、および(ii)有効な量のシメチジンまたはラニチジンを、式Iの治療学的化合物を含む注入可能な処方物を非経口的に投与する前に、静脈的に投与する工程を包含する。
【0100】
投与される注入可能な処方物の量は、治療学的に受容可能な量の式Iの治療学的化合物(すなわち、異常な細胞のアポトーシスを促進、および/または増殖を減少させるのに充分な量)を投与するために、調整される。
【0101】
一般的に、治療学的因子の毒性の分析および治療学的効果は、適切な細胞モデルまたは動物モデル内での標準的な薬学的方法によって、決定され得る。当該分野には公知であるように、LD50は、約50%の被験集団にとって致命的である投薬量である。ED50は、約50%の被験集団において治療学的に効果的である用量を示すパラメーターである。LD50およびED50両方とも、細胞モデルおよび動物モデルで決定され得る。さらにIC50は、細胞モデルおよび動物モデルから得られ得、これは、疾患および障害の症状の最大抑制の約50%に達するために有効な血中血漿濃度を表す。このようなデータは、ヒトに対する臨床試験のための投薬量の範囲をデザインする際に使用され得る。典型的に、当業者が理解するように、ヒトへの使用に対する投薬量の範囲は、細胞または動物モデルによって決定されるように、この範囲はED50および/またはIC50周辺に集中するが、LD50の投薬レベルよりもかなり低く維持するようにデザインされるべきである。
【0102】
典型的に、注入可能な処方物をとおして送達される式Iの治療学的化合物は、1日当たり約0.05mg〜約4000mgの量で有効であり得、望ましいのは、1日当たり約0.1mg〜約2000mgである。しかしながら、この量は、処置される患者の体重および疾患の状態で変わり得る。注入可能な処方物は、一度に投与され得るか、またはあらかじめ決めた間隔でより少ない投与量に分割され投薬され得る。
【0103】
少なくとも1つの式Iの治療学的化合物を含む本発明の薬学的組成物および処方物は、別の治療学的処置(腫瘍を除去する通常手術、放射線および/または化学療法(ある程度微小転移を休止させ、残りの原発腫瘍の増殖を安定および抑制させるために本発明の化合物または組成物が投与され得る))との組み合わせで、望ましく投与され得る。
【0104】
組み合わせの処置のケースでは、治療学的に有効な量の別の治療学的化合物が、別の薬学的な組成物として、または本発明に応じて薬学的組成物に含まれて、投与され得る。その他の治療学的組成物の薬理学および毒物学は、当該分野において公知である。例えば、Physicians Desk Reference、Medical Economics、Montvale、NJ;およびThe Merck&Co.、Rahway、NJを参照せよ。当該分野において使用されるこのような化合物の治療学的に有効な量および適切な単位投与量の範囲は、本発明に同等に適応され得る。
【0105】
上記で説明した投与量の範囲は、ほんの一例であり、本発明の範囲に限定する意図はないことを理解すべきである。当業者に明白になるように、それぞれの活性化合物に対する治療学的に有効な量は、使用される化合物の活動、患者の体内での活性化合物の安定性、軽減されるべき状態のひどさ、処置される患者の全重量、投与の経路、吸収のしやすさ、分布および身体による活性化合物の排泄、処置される患者の年齢および感度などを含む要因によって変わり得るが、これらに限定されない。投与の量は、長い間をかけて多種の要因が変化するにつれても、調整され得る。
【実施例】
【0106】
(実施例)
以下の実施例は、限定でなく、本発明の多種の局面および特徴の単なる見本である。実施例は、疎水性の薬学的因子の処方物中への溶解度をテストする方法を証明する。さらに、実施例は、本発明の処方物を調製する方法を説明する。
【0107】
(実施例1:5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの多種の溶媒に対する溶解度)
純粋な乾燥した粉末状の5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドを量り分け、溶媒溶液に加えた。溶液を室温(約25℃)で混合した。溶媒溶液に溶解した5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの量を測定した。
【0108】
溶解した5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの量を、以下の表に示す。
【0109】
【化19】

(実施例2:D5Wに加えた上に、多種の界面活性剤中でまたは錯化剤によって可溶化された5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの相溶解度)
純粋な粉末状の5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドを量り分け、(1)Cremophor EL:エタノール(50:50)、(2)ニコチンアミド、(3)TPGS、または(4)Tween−80とを室温で混合した。可溶化された化合物のアリコートを増量したD5Wと合わせた。溶解した最終処方物としての5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド濃度を測定し、その結果を図1に示す。
【0110】
(実施例3:薬学的組成物の提案された調製)
本発明の薬学的組成物を調製するのに使用される方法例のためのプロトコルを以下に示す。
薬学的組成物の一般的な調製:
1.可溶化させる適切な量の式Iの化合物を量る。
【0111】
2.薬剤を溶解するために、適切な量のCremophor ELとエタノールとの1:1混合物を加える。
【0112】
3.完全に混合し、0.2μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)滅菌ろ過単位(例えば、Millipore Duraporeフィルター、Billerica、MA、USA)をとおしてろ過する。
【0113】
4.適切な容量を滅菌した小瓶にアリコートする。
【0114】
5.小瓶を無菌状態で封をする。
【0115】
6.詰めた小瓶を、暗室に25℃以下の温度で保存する。
【0116】
(実施例4:Cremophor EL:EtOH中で可溶化された5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの安定性)
330.3mgの5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドを、15.03グラムのCremophor ELと15.03グラムの95%エタノール(USP Grade)とを混合して、Cremophor EL:エタノール(1:1)1mLにつき10mgの5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの溶液を調製した。生じた混合物を、60℃で8日間インキュベートした。周期的なサンプルを採取し、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの量を測定した。図2に示す結果は、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの濃度は全周期にわたって安定していたことを表す。60℃でのこの期間の安定性によって、室温(すなわち、25℃)では、1年以上のような長期安定性を予想する。
【0117】
(実施例5:注入可能な処方物の調製)
非経口的投与のための本発明の注入可能な処方物を調製するのに使用される一般的方法のためのプロトコルを以下に示す。
一般的な注入可能な処方物の調製方法:
1.特定な容量の溶解した薬剤(薬学的組成物)を、封をした小瓶から滅菌注射器および無菌技術を使用して取り除く。
【0118】
2.500mlのD5Wを含むポリオレフィンで裏打ちされたi.v.バッグに溶解した薬剤を加える。
【0119】
3.3時間よく攪拌する。
【0120】
4.望ましくは攪拌直後に注入可能な処方物を投与する。
【0121】
5.投与するまで、暗室、室温で処方物を保存する。
【0122】
6.12時間以内にこの処方物が投与されない場合、捨てる。
【0123】
(実施例6:Cremophor EL:EtOH中で可溶化され、D5W中で希釈された5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの安定性)
330.3mgの5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドを、15.03グラムのCremophor ELと15.03グラムの95%エタノール(USP Grade)とを混合して、Cremophor EL:エタノール(1:1)1mLにつき10mgの5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの溶液を調製した。10mlのこの溶液を、90mlのD5Wを加えることで1:9に希釈し、生じた処方物を、溶液が均一に透明になるまで転倒混和した。生じた混合物−注入可能な処方物−を室温(大体25℃)で38日間インキュベートした。周期的なサンプルを採取し、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの量を測定した。図3に示す結果は、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドは、注入可能な処方物中で全周期にわたって安定していたことを表す。
【0124】
(実施例7:注入可能な処方物の例)
【0125】
【化20】

当業者は、本発明は、本発明の目的を遂行し、言及した結果および利点、およびこれらに関する固有性を得るために、適切に適応されていることを容易に理解する。本明細書中で述べた方法、手順、処置、分子、特定の化合物は現時点では適切な実施形態の例で、それらは例であって、本発明の範囲を限定するような意図はない。これらの中での変更およびその他の使用が、本発明の意図内に含まれて当業者内で起こり得て、これらは特許請求の範囲内で定義される。
【0126】
本明細書中に開示した発明に対して、本発明の範囲および意図に逸脱することなく多種の代用案および変更がなされ得ることは、当業者にはきわめて明白である。
【0127】
本開示の多種の要素において、特定の発刊物または特許が検討または引用されている。このような発刊物および特許に関する単なる検討または引用は、これらが本発明に対する先行技術であることを承認するものとして意図されてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、界面活性剤または錯化剤で可溶化され、水中5%ブドウ糖(D5W)に加えられた、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドの相溶解度を示す。
【図2】図2は、高められた温度(60℃)での、Cremophor EL:エタノール(1:1)で可溶化された、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド[本発明の薬学的組成物]の安定性を示す。
【図3】図3は、室温での、Cremophor EL:エタノール(1:1)で可溶化され、D5Wで9倍に希釈された、5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド[本発明の注入可能な処方物]の安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療学的に有効な量の式I:
【化1】

の化合物を半固体または液体可溶化剤中の溶液または分散液で含む薬学的組成物であって、ここで、
は、結合、または直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニル、またはナフチルであり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4である、薬学的組成物。
【請求項2】
混合中にさらに水性の希釈剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記可溶化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的に受容可能な非イオン性界面活性剤が:
ポリエトキシ化ヒマシ油、
ポリソルベート(Tween)、
ソルビタンエステル(Span)、
ヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレン
ステアリン酸ポリオキシエチレン(Myrj)、および
ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル(Brij)からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、該組成物を容易に注射可能またはろ過可能な状態にするために十分な量の1つ以上の薬学的に受容可能な粘性低減剤をさらに含む、組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の薬学的に受容可能な粘性低減剤が:
1−5アルカノール、
グリセロールのモノエステル、および
脂肪族モノカルボン酸
からなる群から選択される、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記薬学的に受容可能な粘性低減剤がエタノールである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤と粘性低減剤との割合が、約10:1〜約1:10(v/v)である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
約4〜約9のpHを供給するために薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
薬学的に受容可能な水性希釈剤中に希釈した請求項1に記載の薬学的組成物を含む、注入可能な処方物。
【請求項11】
前記薬学的組成物と前記薬学的に受容可能な水性希釈剤との割合が、少なくとも約1:10(v/v)である、請求項10に記載の注入可能な処方物。
【請求項12】
前記薬学的組成物と前記薬学的に受容可能な水性希釈剤との前記割合が、約1:10〜約1:500(v/v)である、請求項11に記載の注入可能な処方物。
【請求項13】
前記薬学的に受容可能な水性希釈剤が、注射用の水(WFI)、注射用の滅菌水(SWFI)、水中5%ブドウ糖(D5W)、標準食塩水、および1/2標準食塩水中5%ブドウ糖(D5W1/2N)からなる群から選択される、請求項10に記載の注入可能な処方物。
【請求項14】
は、直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜5個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
は、結合であり;
は、任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたナフチルである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記式Iの化合物が:
【化2】

【化3】

【化4】

からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記式Iの化合物が:
5−クロロ−N−{2−[2−(4−クロロ−フェニル)−3−メチル−ブトキシ]−5−トリフルオロメチル−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド、
5−クロロ−N−{5−クロロ−2−[2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−エトキシ]−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド、
5−クロロ−N−{4−クロロ−2−[2−(4−クロロ−フェニル)−エトキシ]−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド、
5−クロロ−N−{2−[2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−エトキシ]−5−トリフルオロメチル−フェニル}−2−ヒドロキシ−ベンズアミド
5−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミド、および
5−クロロ−N−[5−クロロ−2−(4−クロロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−ベンズアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
式I:
【化5】

の化合物の薬学的処方物であって、該化合物が、該組成物を薬学的に受容可能な水性の希釈剤と混合した際に、該化合物を溶解しミセルを形成するのに十分な量の非イオン性界面活性剤および粘性低減剤を含む薬学的に受容可能な液体ビヒクル中に溶解されており、ここで、
は、結合、または直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニル、またはナフチルであり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4である、薬学的処方物。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤がポリエトキシ化ヒマシ油であり、前記粘性低減剤がエタノールである、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
薬学的に受容可能な水性希釈剤に加えた際に、非経口の投与を、このような処置の必要な患者に行うのに適切な安定または準安定性のミセル性溶液を形成する、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
薬学的に受容可能な水性希釈剤中に希釈した請求項19に記載の薬学的処方物を含む、注入可能な処方物。
【請求項22】
治療学的に有効な量の式II:
【化6】

の化合物、および組成物を薬学的に受容可能な水性の希釈剤と混合した際に、該化合物を溶解しミセルを形成するのに十分な量の薬学的に受容可能な非イオン性界面活性剤を含む薬学的組成物であって、ここで、Rは:
【化7】

であり;
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4であり;
は、独立して直鎖状または分枝したC1−4アルキルであり、m=0〜2であり;
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、p=0〜5であり;
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4であり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜3である、薬学的組成物。
【請求項23】
粘性低減剤をさらに含む、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記非イオン性界面活性剤がポリオキシル35ヒマシ油であり、前記粘性低減剤がエタノールである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
キットであり、該キットは、区切りのついたキャリア内に、非イオン性界面活性剤および粘性低減剤を含む液体ビヒクル中に式I:
【化8】

の化合物を含む容器;および該キットの使用のための説明書を含み、ここで、
は、結合、または直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニル、またはナフチルであり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4である、キット。
【請求項26】
キットであり、該キットは、区切りのついたキャリア内に、式I:
【化9】

の化合物を第一の容器に、非イオン性界面活性剤および粘性低減剤を含む液体ビヒクルを第二の容器に含み、
該第一および第二の容器は該仕切りのついた容器内に位置し、
該キットは、任意にその使用のための説明書を含み;
ここで、
は、結合、または直鎖状または分枝したC1−6アルキルであり;
は、任意に1〜7個のハロまたはC1−6ハロアルキル置換基で置換されたフェニル、またはナフチルであり;および
は、独立してハロまたはC1−6ハロアルキルであり、n=0〜4である、キット。
【請求項27】
前記非イオン性界面活性剤がポリエトキシ化ヒマシ油であり、前記粘性低減剤がアルコールである、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記ポリエトキシ化ヒマシ油がポリオキシル35ヒマシ油であり、前記アルコールがエタノールである、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第二の容器内の前記非イオン性界面活性剤と前記粘性低減剤との割合が、約1:10〜約10:1である、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
約4〜約9のpHを供給するために前記第二の容器内に薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、請求項26に記載のキット。
【請求項31】
前記第一および第二の容器を、注射器によって溶液を都合よく該容器内に挿入し、または該容器内から取り除け得る様式の頂部で封をした、請求項26に記載のキット。
【請求項32】
前記頂部が、注射針によって刺され得る、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
式Iの化合物の薬学的に受容可能な注入可能な処方物の調製の方法であって、該方法は:
a. 式Iの化合物を、非イオン性界面活性剤および粘性低減剤を含む薬学的に受容可能なビヒクルに溶解し、再構成された薬剤の混合物を形成する、工程;および
b. 該再構成された薬剤の混合物を薬学的に受容可能な水性希釈剤中に希釈する、工程を包含する、方法。
【請求項34】
前記水溶液が、注射用の水(WFI)、注射用の滅菌水(SWFI)、水中5%ブドウ糖(D5W)、または標準食塩水からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
特定の容積の前記再構成された薬剤の混合物を、前記水溶液中に希釈し、特定の量(投与量)の式Iの化合物を含む薬学的に受容可能な注入可能な処方物を産出する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記注入可能な処方物を作るために使用される前記再構成された薬剤の混合物の容積が、該注入可能な処方物を受けるような処置の必要な患者の質量に比例する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
癌を処置する方法であって、該方法は:
a. 式Iの化合物を、非イオン性界面活性剤および粘性低減剤を含む薬学的に受容可能なビヒクルに溶解し、再構成された薬剤の混合物を形成する、工程;
b. 該再構成された薬剤の混合物を薬学的に受容可能な水性希釈剤中に希釈し、注入可能な処方物を産出する、工程;および
c. 該注入可能な処方物を、非経口的に処置の必要な患者に投与する、工程を包含する、癌の処置の方法。
【請求項38】
前記薬学的に受容可能な水性希釈剤が、注射用の水(WFI)、注射用の滅菌水(SWFI)、水中5%ブドウ糖(D5W)、または標準食塩水からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記投与工程を静脈注射によって行う、請求項37に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−521834(P2008−521834A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543621(P2007−543621)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043481
【国際公開番号】WO2006/060580
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(304057634)ミリアド ジェネティクス, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】