説明

治療法に対するトリプルネガティブ乳癌の反応を予測するための方法

本発明は、トリプルネガティブ転移性乳腺腫瘍細胞等、腫瘍細胞におけるシグナル伝達経路の構成成分の発現及び/又は活性化レベルを検出するための組成物及び方法を提供する。本発明の使用により得られるシグナル伝達経路の構成成分の発現及び/又は活性化レベルに関する情報は、癌診断、予後及び癌治療計画に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0002]細胞におけるシグナル伝達過程は、ほんの数例として、細胞分裂及び細胞死、代謝、免疫細胞活性化、神経伝達並びに知覚等が挙げられる様々な生物機能に関与する。従って、細胞における正常なシグナル伝達の撹乱は、糖尿病、心疾患、自己免疫及び癌等、多くの病状をもたらし得る。
【0002】
[0003]十分に特徴づけられたシグナル伝達経路の一つに、細胞における上皮増殖因子(EGF)から細胞増殖の促進へのシグナルの伝達に関与するMAPキナーゼ経路がある(その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれている、PCT国際公開第2009/108637号の図1を参照)。EGFは、上皮増殖因子受容体(EGFR)である膜貫通受容体連結型チロシンキナーゼと結合し、EGFRはEGFの結合によって活性化される。EGFとEGFRとの結合は、受容体細胞質ドメインのチロシンキナーゼ活性を活性化させる。このキナーゼの活性化の結果の一つに、EGFRのチロシン残基における自己リン酸化がある。活性化されたEGFRにおけるリン酸化チロシン残基は、GRB2等のSH2ドメインを含有するアダプタータンパク質の結合のためのドッキング部位を提供する。GRB2は、そのアダプターとしての機能において、GRB2におけるSH3ドメインを介してグアニンヌクレオチド交換因子であるSOSと更に結合する。EGFR−GRB2−SOS複合体の形成は、RasからGDPの除去を促進するグアニンヌクレオチド交換因子のSOS活性化をもたらす。GDPの除去により、RasはGTPと結合して活性化される。
【0003】
[0004]活性化に続いて、Rasは、セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼであるRAFキナーゼと結合し、RAFキナーゼのタンパク質キナーゼ活性を活性化させる。その後、細胞増殖をもたらすタンパク質キナーゼカスケードの活性化が続く。概略として、次に、RAFキナーゼが、別のセリン/スレオニンキナーゼであるMEKをリン酸化及び活性化させる。活性化されたMEKは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)をリン酸化及び活性化させる。MAPKによる更なるリン酸化の標的の中でも特に、40Sリボソームタンパク質S6キナーゼ(RSK)が挙げられる。MAPKによるRSKのリン酸化は、RSKの活性化を生じ、これは次にリボソームタンパク質S6をリン酸化させる。別の公知のMAPK標的は、細胞増殖に重要な遺伝子である癌原遺伝子c−Mycであり、この遺伝子は様々な癌において変異している。MAPKはまた、別のタンパク質キナーゼMNKもリン酸化及び活性化させ、これは次に転写因子CREBをリン酸化させる。間接的には、MAPKは、細胞増殖に関与する更に別の転写因子をコードするFos遺伝子の転写も調節する。このような転写因子のレベル及び活性を変化させることにより、MAPKは、EGFから発した元々の細胞外シグナルを細胞周期進行に重要な遺伝子の転写変化へと伝達する。
【0004】
[0005]細胞増殖においてシグナル伝達経路が果たす中心的役割を考慮すると、多くの癌が、細胞増殖経路の異常活性化をもたらすシグナル伝達の構成成分の変異その他の変化の結果起こることは不思議ではない。例えば、EGFRの過剰発現又は過剰活性(hyperactivity)は、多形神経膠芽腫、結腸癌及び肺癌等、多くの癌と関連付けられてきた。この結果は、肺癌のためのゲフィチニブ及びエルロチニブ並びに結腸癌のためのセツキシマブ等、EGFRに対する抗癌療法の開発を促した。
【0005】
[0006]セツキシマブは、EGFRの細胞外リガンド結合ドメインと結合し、これによりEGFRチロシンキナーゼを活性化するリガンドの結合を妨げるモノクローナル抗体阻害剤の一例である。対照的に、ゲフィチニブ及びエルロチニブは、細胞内に局在するEGFRチロシンキナーゼを阻害する小分子である。キナーゼ活性なしでは、EGFRは、GRB2等、下流のアダプタータンパク質の結合に必須のチロシン残基を自己リン酸化することができない。この増殖のための経路に依存する細胞におけるシグナリングカスケードを停止させることにより、腫瘍増殖及び遊走が減少する。
【0006】
[0007]更に、他の研究は、約70%のヒトメラノーマ及びより少ない割合の他の腫瘍が、MAPK経路の持続的な活性化をもたらすRaf遺伝子に点変異(V599E)を有することを示した(例えば、Daviesら、Nature、417:949〜954(2002)を参照)。このような結果は、特定のシグナル伝達経路における変異が、特定の種類の腫瘍に特徴的となり得ること、そしてこのような特異的な変化したシグナル伝達経路が、化学療法による治療介入の有望な標的となり得ることを示唆する。
【0007】
[0008]異なる癌治療、特に癌化学療法が、直接的、或いはそれぞれ細胞増殖又は細胞死に関与する細胞シグナル伝達経路の遮断又は活性化のいずれかによる間接的のいずれかで機能し得ると仮定すると、特定の形態の癌における所定のシグナル伝達経路の活性は、様々な癌治療の有効性の優れた指標として役立つ可能性がある。従って、本発明は、個々の患者に対する潜在的な抗癌療法の有効性を予測及び評価するための方法を、他のニーズを満たすと共に提供する。従って、本発明は、患者毎の適正な用量及び適正な時間の適切な癌治療法の選択において医師を支援するための方法を提供する。
【発明の簡単な概要】
【0008】
[0009]本発明は、腫瘍細胞(例えば、トリプルネガティブ(triple−negative)乳腺腫瘍細胞)におけるシグナル伝達経路の構成成分の状態(例えば、発現及び/又は活性化レベル)を検出するための組成物及び方法を提供する。本発明の実施により得られるシグナル伝達経路の構成成分の発現及び/又は活性化状態に関する情報は、癌診断、予後及び癌治療計画に用いることができる。
【0009】
[0010]特定の態様において、本発明は、特定の癌が、例えば、ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセル(例えば、アブラキサン(Abraxane)(登録商標)又はnabP)の組み合わせ(「トリプレット(triplet)療法」)等、1つ又は複数の抗癌剤に対し有利に反応できる、或いは反応する可能性があるか否かの決定又は予測を可能にする分子マーカー(バイオマーカー)を提供する。本明細書に記載されている通り、驚くべきことに、VEGFR2、c−KIT、HER1及びIGF−1R等、バイオマーカーが、トリプレット療法等の抗癌療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍細胞等、腫瘍細胞の感受性、有効性又は反応の決定又は予測に特に有用であることが判明した。
【0010】
[0011]一態様において、本発明は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性を決定するための方法であって、
(a)腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、腫瘍細胞が抗癌剤に対し感受性であることを示す方法を提供する。
【0011】
[0012]一部の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性の決定又は予測の補助又は支援に有用となり得る。他の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性の決定又は予測の改善に有用となり得る。
【0012】
[0013]別の一態様において、本発明は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応を予測するための方法であって、
(a)トリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、抗癌剤による治療法に対する反応を予測する方法を提供する。
【0013】
[0014]一部の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応の決定又は予測の補助又は支援に有用となり得る。他の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応の決定又は予測の改善に有用となり得る。
【0014】
[0015]更にまた別の一態様において、本発明は、トリプルネガティブ乳腺腫瘍を有し抗癌剤投与を受けている対象において、抗癌剤による治療法に対する反応をモニタリングするための方法であって、
(a)トリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと、或いは治療のより初期の時点におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルと比較するステップと、
(d)ステップ(c)における比較に基づき、抗癌剤による治療法を継続又は調整するべきか決定するステップとを含む方法を提供する。
【0015】
[0016]一部の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応のモニタリングの補助又は支援に有用となり得る。他の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応のモニタリングの改善に有用となり得る。ある特定の実施形態において、ステップ(d)における治療法の調整は、抗癌剤のその後の用量を変更するステップ又は代替的な抗癌剤を選択するステップを含む。
【0016】
[0017]当業者であれば、本発明の他の目的、特色及び利点は、次の詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[0018] 全及びリン酸化HER1及びHER2レベルを解析するための例示的なスライド形式のアレイ設計を示す図である。
【図2】[0019] リン酸化HER1を検出するための例示的な近接アッセイ(proximity assay)の模式図を示す図である。GO、グルコース酸化酵素;HRP、西洋わさびペルオキシダーゼ。
【図3】[0020] 協調的近接免疫測定法(COllaborative roximity mmunossay;COPIA)としても知られている協調的酵素増強反応免疫測定法(ollaborative nzyme nhanced eactive ImmunoAssay;CEER)の模式図を示す図である。細胞ライセートとインキュベートした後、ニトロセルロース表面上にプリントされた特異的捕捉抗体と標的タンパク質が結合すると、スライドから非結合非標的タンパク質は除去される。捕捉された標的タンパク質における別のエピトープに対する一方の検出用抗体は、GOとコンジュゲートしている。HRPとコンジュゲートした標的タンパク質のリン酸化部位(P)又は別の非重複エピトープ(p)に特異的な別の検出用抗体が結合すると、グルコース存在下におけるGO−HRP酵素チャネリングによるシグナル生成及びその後のチラミド(tyramide)を介したシグナル増幅に必要な免疫複合体形成が完成する。捕捉及び検出抗体は、両者の間の競合を最小に抑えるよう選択した(即ち、全抗体が、シグナル伝達タンパク質におけるそれぞれ対応するエピトープと同時に結合することができる)。
【図4】[0021] ERBB2−T及びERBB2−PのCEERから作成された滴定曲線を示す図である。これらの値は、臨床試料のための定量値を得るための標準として用いられる。
【図5】[0022] BT474細胞におけるt−ERBB2の決定を示す図である。BT474細胞から調製した細胞ライセートを用いてERBB2−CEERアッセイを行った。ほぼ25個のBT474細胞を含有するライセートから全長p185−ERBB2アッセイを決定し、p185−ERBB2を免疫磁気除去した後のほぼ250個のBT474細胞から調製した細胞ライセートを解析することによりt−ERBB2のレベルを決定した。
【図6】[0023] 患者腫瘍におけるt−ERBB2の発現及びリン酸化を示す図である。ERBB2、t−ERBB2、リン酸化t−ERBB2。アレイ配置を示す。CEERは、臨床試料における全長対切断型ERBB2発現を区別できるだけではなく、定量様式でのリン酸化レベルに関する有用な情報をもたらす。
【図7】[0024] 臨床試料のERBB2の例示的なIP−ウエスタンを示す図である。抗ICD−ERBB2抗体を用いてERBB2受容体を免疫沈降し、その後第二の抗ICD−ERBB2抗体を用いてウエスタンブロット解析を行い、全長t−ERBB2を全長p185−ERBB2から区別した。
【図8】[0025] 174種のBCA試料において広範囲の経路タンパク質発現及び活性化が観察されたことを示す図である。
【図9】[0026] 対照T47D乳癌細胞及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と比較したトリプルネガティブ乳癌コア生検試料におけるCEERによる機能経路プロファイリングの一例を示す図である。
【図10】[0027] 各マーカーの低及び高試料群の無進行生存(PFS)間の比較の結果を示す図である。
【図11】[0028] 各マーカーの低及び高試料群のPFS間の別の比較の結果を示す図である。
【図12】[0029] c−KIT及びVEGFR2両方の発現レベルの測定が、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応の決定の適中率を増加させることを示す図である。
【図13】[0030] VEGFR2及びHER1両方の発現レベルの測定が、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応の決定の適中率を増加させることを示す図である。
【図14】[0031] (A)全VEGFR2、(B)全c−KIT及び(C)全HER1の増加レベルと、トリプレット療法に対する反応との間の相関を示す図である。
【0018】
[0032]PCT国際公開第2010/132723号の図表は、全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【発明の詳細な説明】
【0019】
I.序文
[0033]上述の通り、細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の活性化及び細胞死に関与する経路の非活性化は、多くの異なる種類の癌を特徴づける分子的な特色の非限定的な例である。多くの場合、特定のシグナル伝達経路及びその構成成分の活性は、所定の種類の癌の分子シグネチャーとして機能し得る。このような活性化された構成成分は、治療介入の有用な標的を更に提供することができる。従って、治療前、治療中及び治療後の癌細胞内における特定のシグナル伝達系の活性レベルの知識は、採用するべき適切な治療過程の選択に用いることのできる高度関連情報を医師に提供する。更に、治療進行における癌細胞で活性を有するシグナル伝達経路のモニタリングの継続は、治療有効性に関する更なる情報を医師に提供することができ、例えば、癌細胞が、同一又は別のシグナル伝達経路のいずれかを活性化する更なる異常により治療に対し抵抗性となった場合、特定の治療過程の継続か、別の治療方針への切り換えのいずれかを医師に促す。
【0020】
[0034]従って、本発明は、特異的マルチプレックスハイスループットアッセイにおいて、腫瘍組織又は固形腫瘍の稀少な循環細胞等の腫瘍外(extratumoral)細胞における1又は複数の調節解除されたシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を検出するための方法及び組成物を提供する。本発明はまた、調節解除されたシグナリング経路を下方制御又はシャットダウンするための適切な治療法(単剤又は薬剤の組み合わせ)を選択するための方法及び組成物も提供する。よって、本発明は、癌患者のための個別化療法の計画を容易にするために用いることができる。
【0021】
[0035]ある特定の実施形態において、単細胞レベルのシグナル伝達経路の活性の決定により循環中の腫瘍細胞を検出及び同定する能力は、本発明の重要な利点である。腫瘍細胞は、多くの場合、「微小転移」(播種性腫瘍細胞)として様々な初期癌患者の血液中で発見され、転移性癌においても発見される。血液中の腫瘍細胞数は、腫瘍のステージ及び種類に依存するであろう。生検は通常、原発性腫瘍において得られるが、多くの転移性腫瘍は生検に付されず、この事実は、このような腫瘍試料の分子解析を非常に困難なものとしている。腫瘍転移において、最も高悪性度の腫瘍細胞は、原発性腫瘍を後に残して血液及びリンパ系中を移動し、離れた部位へと到達する。よって、血液から得られた循環腫瘍細胞は、腫瘍細胞の最も高悪性度の同種集団を表す。しかし、血液中の転移性腫瘍細胞数は、多くの場合非常に少なく、血液1ミリリットル当り1〜数千個の細胞と変動する。このように稀少な細胞におけるシグナル伝達経路を単離及びアッセイし、この情報をより有効な癌治療へと適用する能力は、本発明の一目的である。
【0022】
[0036]特定の実施形態において,本発明のマルチプレックスハイスループットイムノアッセイ(例えば、協調的近接免疫測定法(COPIA)としても知られる協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER))は、腫瘍組織から得られた細胞(例えば、FNA試料)又は固形腫瘍の循環細胞における1つ又は複数のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化レベルを単細胞レベルで検出することができる。実際には、EGFR等、シグナル伝達分子は、約100ゼプトモル及び約100ゼプトモルから約100フェムトモルの線形ダイナミックレンジの感受性で検出することができる。従って、腫瘍細胞における1又は複数種のシグナル伝達因子の発現及び/又は活性化レベルの単細胞検出は、癌の予後及び診断並びに個別化標的化療法の計画を容易にする。
【0023】
[0037]乳癌に関して、乳癌患者における原発性及び転移性腫瘍どちらの治療も、疾病初期に採取された生検試料の1回限りの(one−time)診断に基づいているため、現在の試験オプションは満足のいくものではない。特に、乳癌初期及び転移期両方の治療介入は、転移性癌患者から生検試料を得ることの非実用性のため、疾病初期に採取された生検試料の初期診断単独に基づく。しかし、乳腺腫瘍の経時的モニタリングが乳癌患者の最適管理に決定的なように、乳腺腫瘍は時間及び治療の関数として発展している。例えば、受容体チロシンキナーゼのErbB(HER)ファミリーのうち1つ又は複数の活性化状態の変化は、再発に際しての治療法の選択に影響を及ぼし得る。実際に、全乳癌患者の最大37%は、HER−2陰性原発性腫瘍からHER−2陽性転移性癌へと変化するため、原発性及び転移性癌の間のHER−2状態における不一致は一般的である。その上、患者は、HER−1及び/又はHER−2活性化のために、ホルモン療法に対し新規に抵抗性となり得る、或いは獲得抵抗性を発達し得る。ある事例において、患者は、p95HER−2を発現する腫瘍細胞の存在のために、ErbB標的療法に対し新規に抵抗性となり得る、或いは獲得抵抗性を発達し得る。その結果、現在の技術は感受性及び特異性を欠き、治療中の患者のモニタリングに用いることができず、個別化治療決定を導くための経路プロファイリングを利用しないため、臨床医が適切な時間に適切な癌治療法を処方するのを支援するためのアッセイの臨床ニーズは未だ満たされていない。
【0024】
[0038]現在利用できる乳癌試験オプションとは対照的に、本発明の方法は、腫瘍から得られた穿刺吸引液(FNA)及び/又は血液由来の循環腫瘍細胞(CTC)等、試料を用いた固形乳腺腫瘍の「リアルタイム生検」を実現することにより、乳癌患者の疾病全ステージを通じたモニタリングを可能にする。非限定的な例として、本明細書に記載されている乳癌アッセイは、疾病初期の患者における乳癌の初期診断に用いることができる。適切な癌治療法の選択は、抗癌剤有り又は無しで、本明細書に記載されている単検出(single detection)及び近接二重検出(proximity dual detection)アッセイ(例えば、CEER)を用いた1つ又は複数の特異的シグナリング経路の発現及び/又は活性化レベルのプロファイリングによって導かれる。有利には、治療介入は、疾病の任意のステージで採取されて本明細書に記載されている単検出及び近接二重検出アッセイ(例えば、CEER)を用いて解析された試料に基づき得るため、本発明の方法はまた、疾病の進行及び/又は退行のモニタリングに用いることもできる。従って、乳癌初期及び転移期のための適切な癌治療法の予測、同定及び/又は選択は、特異的シグナリング経路分子の発現及び/又は活性化状態のリアルタイム診断及び解析によって導かれる。
【0025】
[0039]本発明の方法は、(1)感受性増加をもたらし(例えば、全及び/又はリン酸化されたHER1(EGFR)、VEGFR2及び/又はc−KIT等、シグナル伝達分子を検出するための単細胞検出を達成することができる)、(2)特異性増加をもたらし(例えば、三抗体近接アッセイは、全及び/又はリン酸化シグナル伝達分子検出に対する特異性を増強する)、(3)経路プロファイリングを可能にし(例えば、患者由来のFNA又はCTCにおける1つ又は複数の特異的シグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を検出することができる)、(4)患者試料獲得に関するあらゆる問題を排除する(例えば、少量の腫瘍細胞でアッセイを行うことができる)ため、癌管理における主要問題に取り組むよう目的に応じて好ましく適合されて、より高度なケア標準を乳癌患者(例えば、トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)患者)に提供する。本明細書に記載されている新規アッセイにいかなる試料を用いてもよいが、CTCは最も高悪性度の腫瘍細胞を表すこと、あらゆる腫瘍はCTCを排出することが知られていること、CTCは残存腫瘍又はアクセス困難な転移性腫瘍の唯一の供給源となり得ること、また血液中に存在することから、CTCが特に有用である。従って、ある特定の実施形態において、本発明の方法は、乳腺腫瘍組織の連続的サンプリングを可能にし、時間及び治療法の関数として腫瘍細胞に生じる変化に関する有用な情報をもたらし、急速に発展する癌経路シグネチャーをモニタリングするための手段を臨床医に提供する。
【0026】
[0040]即ち、本発明の方法は、有利には、マルチプレックス抗体ベース単検出又は近接アッセイを用いた腫瘍細胞における経路プロファイリングを行うことによって、標的治療法の恩恵を最も受け易い癌患者(例えば、TNMBC患者)の正確な選択及びモニタリングを提供する。
【0027】
II.定義
[0041]本明細書において、他に特別の定めがない限り、次の用語はその帰属する意義を有する。
【0028】
[0042]用語「癌」は、異常細胞の制御されない増殖によって特徴づけられた疾病クラスのいずれかのメンバーを包含することを目的とする。この用語は、悪性、良性、軟部組織又は固形のいずれとして特徴づけられているかにかかわない、あらゆる公知の癌及び腫瘍性(neoplastic)状態並びに転移前及び後の癌等、あらゆるステージ及びグレードの癌を包含する。異なる種類の癌の例として、乳癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌);結腸直腸癌、胃腸ストローマ腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌及び胃(stomach/gastric)癌等の消化器及び胃腸癌;食道癌;胆嚢癌;肝癌;膵癌;虫垂癌;卵巣癌;腎癌(例えば、腎細胞癌);中枢神経系の癌;皮膚癌;リンパ腫;絨毛癌;頭頸部癌;骨肉腫並びに血液の癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書において、「腫瘍」は、1又は数個の癌性細胞を含む。好ましい一実施形態において、乳腺腫瘍は、浸潤性又はin situ型の腺管癌又は小葉癌の対象に由来する。別の好ましい一実施形態において、乳腺腫瘍は、再発性又は転移性乳癌の対象に由来する。
【0029】
[0043]用語「分析物」は、その存在、量(発現レベル)、活性化状態及び/又は同一性が決定される任意の対象分子、通常は、ポリペプチド等の高分子を包含する。特定の事例において、分析物は、例えば、HER1(EGFR)、VEGFR2又はc−KIT等、シグナル伝達分子である。
【0030】
[0044]用語「シグナル伝達分子」又は「シグナル伝達因子」は通常、細胞内部の生化学的反応の順序立った流れに関する、細胞が細胞外シグナル又は刺激を応答へと変換するプロセスを実行するタンパク質その他の分子を包含する。シグナル伝達分子の例として、EGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、VEGFR1/FLT1、VEGFR2/FLK1/KDR、VEGFR3/FLT4、FLT3/FLK2、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c−KIT/SCFR、INSR(インスリン受容体)、IGF−IR、IGF−IIR、IRR(インスリン受容体関連受容体)、CSF−1R、FGFR1−4、HGFR1−2、CCK4、TRK A−C、c−MET、RON、EPHA1−8、EPHB1−6、AXL、MER、TYRO3、TIE1−2、TEK、RYK、DDR1−2、RET、c−ROS、V−カドヘリン、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR1−2、MUSK、AATYK1−3及びRTK106等の受容体チロシンキナーゼ;アミノ末端細胞外ドメインを欠いた切断型HER2受容体(例えば、p95ErbB2(p95m)、p110、p95c、p95n等)等の切断型の受容体チロシンキナーゼ;受容体チロシンキナーゼ二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4等);BCR−ABL、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack及びLIMK等の非受容体チロシンキナーゼ;AKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、ホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、p70S6キナーゼスプライスバリアントアルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1等)、RAF、PLA2、MEKK、JNKK、JNK、p38、Shc(p66)、Ras(例えば、K−Ras、N−Ras、H−Ras)、Rho、Rac1、Cdc42、PLC、PKC、p53、サイクリンD1、STAT1、STAT3、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸(PIP2)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸(PIP3)、mTOR、BAD、p21、p27、ROCK、IP3、TSP−1、NOS、GSK−3β、RSK1−3、JNK、c−Jun、Rb、CREB、Ki67及びパキシリン等のチロシンキナーゼシグナリングカスケード構成成分;エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、ミネラルコルチコイド受容体、ビタミンA受容体、ビタミンD受容体、レチノイド受容体、甲状腺ホルモン受容体及びオーファン受容体等の核内ホルモン受容体;それぞれamplified in breast cancer−1(AIB1)及び核内受容体コリプレッサー1(NCOR)等の核内受容体活性化補助因子及びリプレッサー;並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
[0045]用語「活性化状態」は、特定のシグナル伝達分子が活性化されているか否かを意味する。同様に、用語「活性化レベル」は、特定のシグナル伝達分子がどの程度活性化されているかを意味する。活性化状態又はレベルは通常、1つ又は複数の(例えば、複数の)シグナル伝達分子のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体形成状態又はレベルに相当する。活性化状態(括弧内に記載)の非限定的な例として、HER1/EGFR(EGFRvIII、リン酸化(p−)EGFR、EGFR:Shc、ユビキチン化(u−)EGFR、p−EGFRvIII);ErbB2(p−ErbB2、p95HER2(切断型ErbB2)、p−p95HER2、ErbB2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:ErbB3、ErbB2:ErbB4);ErbB3(p−ErbB3、ErbB3:PI3K、p−ErbB3:PI3K、ErbB3:Shc);ErbB4(p−ErbB4、ErbB4:Shc);c−MET(p−c−MET、c−Met:HGF複合体);AKT1(p−AKT1);AKT2(p−AKT2);AKT3(p−AKT3);PTEN(p−PTEN);P70S6K(p−P70S6K);MEK(p−MEK);ERK1(p−ERK1);ERK2(p−ERK2);PDK1(p−PDK1);PDK2(p−PDK2);SGK3(p−SGK3);4E−BP1(p−4E−BP1);PIK3R1(p−PIK3R1);c−KIT(p−c−KIT);ER(p−ER);IGF−1R(p−IGF−1R、IGF−1R:IRS、IRS:PI3K、p−IRS、IGF−1R:PI3K);INSR(p−INSR);FLT3(p−FLT3);HGFR1(p−HGFR1);HGFR2(p−HGFR2);RET(p−RET);PDGFRA(p−PDGFRA);PDGFRB(p−PDGFRB);VEGFR1(p−VEGFR1、VEGFR1:PLCγ、VEGFR1:Src);VEGFR2(p−VEGFR2、VEGFR2:PLCγ、VEGFR2:Src、VEGFR2:ヘパリン硫酸、VEGFR2:VE−カドヘリン);VEGFR3(p−VEGFR3);FGFR1(p−FGFR1);FGFR2(p−FGFR2);FGFR3(p−FGFR3);FGFR4(p−FGFR4);TIEl(p−TIEl);TIE2(p−TIE2);EPHA(p−EPHA);EPHB(p−EPHB);GSK−3β(p−GSK−3β);NFKB(p−NFKB)、IKB(p−IKB、p−P65:IKB);BAD(p−BAD、BAD:14−3−3);mTOR(p−mTOR);Rsk−1(p−Rsk−1);Jnk(p−Jnk);P38(p−P38);STAT1(p−STAT1);STAT3(p−STAT3);FAK(p−FAK);RB(p−RB);Ki67;p53(p−p53);CREB(p−CREB);c−Jun(p−c−Jun);c−Src(p−c−Src);パキシリン(p−パキシリン);GRB2(p−GRB2)、Shc(p−Shc)、Ras(p−Ras)、GAB1(p−GAB1)、SHP2(p−SHP2)、GRB2(p−GRB2)、CRKL(p−CRKL)、PLCγ(p−PLCγ)、PKC(例えば、p−PKCα、p−PKCβ、p−PKCδ)、アデュシン(p−アデュシン)、RB1(p−RB1)及びPYK2(p−PYK2)が挙げられる。
【0032】
[0046]本明細書において、用語「希釈系列」は、特定の試料(例えば、細胞ライセート)又は試薬(例えば、抗体)の降順濃度の系列を包含することを目的とする。希釈系列は通常、測定量の出発濃度の試料又は試薬を希釈液(例えば、希釈バッファー)と混合して、より低濃度の試料又は試薬を作製し、このプロセスを十分な回数繰り返して所望の数の系列希釈を得るプロセスによって作製される。試料又は試薬は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500又は1000倍に系列的に希釈して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45又は50種の降順濃度の試料又は試薬を含む希釈系列を作製することができる。例えば、1mg/ml出発濃度の捕捉抗体試薬の2倍系列希釈を含む希釈系列は、ある所定量の出発濃度の捕捉抗体を等量の希釈バッファーと混合して、0.5mg/ml濃度の捕捉抗体を作製し、このプロセスを繰り返して、0.25mg/ml、0.125mg/ml、0.0625mg/ml、0.0325mg/ml等の捕捉抗体濃度を得ることによって作製することができる。
【0033】
[0047]本明細書における用語「優れたダイナミックレンジ」は、1個もの少なさの数の細胞、或いは数千個もの多さの数の細胞における特異的分析物を検出するアッセイの能力を意味する。例えば、本明細書に記載されているイムノアッセイは、捕捉抗体濃度の希釈系列を用いて約1〜10000細胞(例えば、約1、5、10、25、50、75、100、250、500、750、1000、2500、5000、7500又は10000細胞)における特定の対象シグナル伝達分子を有利に検出するため、優れたダイナミックレンジを保有する。
【0034】
[0048]本明細書における用語「試料」は、患者から得たいかなる生物検体も包含する。試料は、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば、末梢血単核球)、腺管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄穿刺液、唾液、尿、便(即ち、糞便)、痰、気管支洗浄液、涙液、穿刺吸引液(例えば、無作為傍乳輪(periareolar)穿刺吸引によって収集)その他の体液、腫瘍(例えば、針生検)又はリンパ節(例えば、センチネルリンパ節生検)生検等の組織試料(例えば、腫瘍組織)、腫瘍の外科的切除等の組織試料(例えば、腫瘍組織)並びにそれらの細胞抽出物を限定することなく包含する。一部の実施形態において、試料は、全血又は血漿、血清若しくは細胞ペレット等その分画構成成分である。特定の事例において、試料は、本技術分野で公知の任意の技法を用いて全血又はその細胞画分から固形腫瘍の循環細胞を単離することによって得られる。他の実施形態において、試料は、例えば、乳房の固形腫瘍から得られたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料である。
【0035】
[0049]「生検」は、診断又は予後評価のために組織試料を取り分けるプロセス及び組織検体そのものを意味する。本技術分野で公知の任意の生検技法は、本発明の方法及び組成物に適用することができる。適用される生検技法は一般に、他の要因の中でも特に、評価する組織の種類並びに腫瘍のサイズ及び種類(即ち、固形又は懸濁されている(即ち、血液又は腹水))に依存する。代表的な生検技法として、切除生検、切開生検、針生検(例えば、コアニードル(core needle)生検、穿刺吸引生検等)、外科生検及び骨髄生検が挙げられる。生検技法については、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、Kasperら編、第16版、2005年、第70章及び第V部全体に亘って記されている。当業者であれば、所定の組織試料における癌性及び/又は前癌性細胞を同定するために生検技法を行ってよいことを理解するであろう。
【0036】
[0050]本明細書において、用語「循環細胞」は、固形腫瘍から転移或いは微小転移した腫瘍外細胞を含む。循環細胞の例として、循環腫瘍細胞、癌幹細胞及び/又は腫瘍へと遊走している細胞(例えば、循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環血管新生促進骨髄系細胞、循環樹状細胞等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。循環細胞を含有する患者試料は、任意の入手可能な生体液(例えば、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、穿刺吸引液等)から得ることができる。特定の事例において、全血試料は、血漿又は血清画分及び細胞画分(即ち、細胞ペレット)へと分離される。細胞画分は通常、赤血球、白血球、並びに/又は、循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、循環内皮前駆細胞(CEPC)、癌幹細胞(CSC)、リンパ節の播種性腫瘍細胞及びそれらの組み合わせ等の固形腫瘍の循環細胞を含有する。血漿又は血清画分は通例、固形腫瘍の循環細胞によって放出される核酸(例えば、DNA、RNA)及びタンパク質をとりわけ含有する。
【0037】
[0051]循環細胞は通常、例えば、免疫磁気分離(例えば、Racilaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:4589〜4594(1998);Bilkenrothら、Int.J.Cancer、92:577〜582(2001)を参照)、Immunicon(ペンシルベニア州ハンティンドンバレー)製のCellTracks(登録商標)System、マイクロ流体分離(例えば、Mohamedら、IEEE Trans.Nanobiosci.、3:251〜256(2004);Linら、要旨番号5147、第97回AACR年会、ワシントンD.C.(2006)を参照)、FACS(例えば、Mancusoら、Blood、97:3658〜3661(2001)を参照)、密度勾配遠心分離(例えば、Bakerら、Clin.Cancer Res.、13:4865〜4871(2003)を参照)及び枯渇除去(depletion)方法(例えば、Meyeら、Int.J.Oncol.、21:521〜530(2002)を参照)等の1つ又は複数の分離方法を用いて患者試料から単離される。
【0038】
[0052]対象シグナル伝達分子は通常、そのin situ活性化状態を維持するため、循環細胞の単離直後、好ましくは約24、6又は1時間以内、より好ましくは約30、15又は5分間以内に抽出される。単離された細胞は、シグナル伝達分子の活性化を回復又は刺激するため、通例ナノモルからマイクロモル濃度の1つ又は複数の増殖因子と約1〜30分間インキュベートしてもよい(例えば、Irishら、Cell、118:217〜228(2004)を参照)。例えば、個々の患者に対する潜在的な抗癌療法を評価するため、単離された細胞は、様々な用量の1つ又は複数の抗癌剤とインキュベートすることができる。次に、増殖因子による刺激は、数分間(例えば、約1〜5分間)又は数時間(例えば、約1〜6時間)行うことができる。抗癌剤有り又は無しでのシグナリング経路の差次的な活性化は、適正用量で個々の患者(patent)それぞれに対し適切な癌治療法の選択を補助することができる。治療法の変更を行うべきか決定するため、抗癌剤治療中の患者試料から循環細胞を単離して、1つ又は複数の増殖因子で刺激することもできる。
【0039】
[0053]用語「対象」又は「患者」又は「個体」は通常、ヒトを包含するが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタその他等、他の動物を包含することもできる。
【0040】
[0054]「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、例えば、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ等)、紙、メンブレン(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン(PVDF)等)、繊維束又はその他の適切な基質等の固体担体上に固定化又は拘束された捕捉抗体の個別化されたセット及び/又は希釈系列を含む。捕捉抗体は一般に、共有結合又は非共有結合性相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子結合(dipole−dipole bond))を介して固体担体上に固定化又は拘束される。特定の事例において、捕捉抗体は、固体担体と結合した捕捉剤と相互作用する捕捉タグを含む。本明細書に記載されているアッセイに用いるアレイは通常、異なる公知の/アドレス可能な位置における固体担体表面と結合する複数の異なる捕捉抗体及び/又は捕捉抗体濃度を含む。
【0041】
[0055]用語「捕捉抗体」は、細胞抽出物等の試料中の1つ又は複数の対象分析物に特異的な(即ち、それと結合する、それに結合される又はそれと複合体を形成する)固定化された抗体を包含することを目的とする。特定の実施形態において、捕捉抗体は、アレイにおける固体担体上に拘束される。様々なシグナル伝達分子のいずれかを固体担体上に固定化するために適切な捕捉抗体は、Upstate(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource(カリフォルニア州キャマリロ)、Cell Signaling Technologies(マサチューセッツ州ダンバース)、R&D Systems(ニューメキシコ州ミネアポリス)、Lab Vision(カリフォルニア州フリーモント)、Santa Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma(ミズーリ州セントルイス)及びBD Biosciences(カリフォルニア州サンノゼ)から入手できる。
【0042】
[0056]本明細書における用語「検出抗体」は、試料中の1つ又は複数の対象分析物に特異的な(即ち、それと結合する、それに結合される又はそれと複合体を形成する)検出可能な標識を含む抗体を包含する。この用語は、検出可能な標識を含む別の化学種と結合できる、1つ又は複数の対象分析物に特異的な抗体も網羅する。検出可能な標識の例として、ビオチン/ストレプトアビジン標識、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)標識、化学反応標識、蛍光標識、酵素標識、放射性標識及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。様々なシグナル伝達分子のいずれかの活性化状態及び/又は総量を検出するための適切な検出抗体は、Upstate(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource(カリフォルニア州キャマリロ)、Cell Signaling Technologies(マサチューセッツ州ダンバース)、R&D Systems(ニューメキシコ州ミネアポリス)、Lab Vision(カリフォルニア州フリーモント)、Santa Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma(ミズーリ州セントルイス)及びBD Biosciences(カリフォルニア州サンノゼ)から入手できる。非限定的な例として、様々なリン酸化型の、EGFR、c−KIT、c−Src、FLK−1、PDGFRA、PDGFRB、AKT、MAPK、PTEN、Raf及びMEK等のシグナル伝達分子に対するリン酸特異的抗体は、Santa Cruz Biotechnologyから入手できる。
【0043】
[0057]用語「活性化状態依存性抗体」は、試料中の1つ又は複数の対象分析物の特定の活性化状態に特異的な(即ち、それと結合する、それに結合される又はそれと複合体を形成する)検出抗体を包含する。好ましい実施形態において、活性化状態依存性抗体は、1つ又は複数のシグナル伝達分子等の1つ又は複数の分析物のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体形成状態を検出する。一部の実施形態において、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーメンバーのリン酸化及び/又はEGFRファミリーメンバー間のヘテロ二量体複合体形成は、活性化状態依存性抗体を用いて検出される。特定の実施形態において、活性化状態依存性抗体は、次のシグナル伝達分子のうち1つ又は複数における1つ又は複数のリン酸化部位の検出に有用である(リン酸化部位は、ヒトタンパク質配列におけるアミノ酸ポジションに対応する):EGFR/HER1/ErbB1(例えば、チロシン(Y)1068);ErbB2/HER2(例えば、Y1248);ErbB3/HER3(例えば、Y1289);ErbB4/HER4(例えば、Y1284);c−Met(例えば、Y1003、Y1230、Y1234、Y1235及び/又はY1349);SGK3(例えば、スレオニン(T)256及び/又はセリン(S)422);4E−BP1(例えば、T70);ERK1(例えば、T185、Y187、T202及び/又はY204);ERK2(例えば、T185、Y187、T202及び/又はY204);MEK(例えば、S217及び/又はS221);PIK3R1(例えば、Y688);PDK1(例えば、S241);P70S6K(例えば、T229、T389及び/又はS421);PTEN(例えば、S380);AKT1(例えば、S473及び/又はT308);AKT2(例えば、S474及び/又はT309);AKT3(例えば、S472及び/又はT305);GSK−3β(例えば、S9);NFKB(例えば、S536);IKB(例えば、S32);BAD(例えば、S112及び/又はS136);mTOR(例えば、S2448);Rsk−1(例えば、T357及び/又はS363);Jnk(例えば、T183及び/又はY185);P38(例えば、T180及び/又はY182);STAT3(例えば、Y705及び/又はS727);FAK(例えば、Y397、Y576、S722、Y861及び/又はS910);RB(例えば、S249、T252、S612及び/又はS780);RB1(例えば、S780);アデュシン(例えば、S662及び/又はS724);PYK2(例えば、Y402及び/又はY881);PKCα(例えば、S657);PKCα/β(例えば、T368及び/又はT641);PKCδ(例えば、T505);p53(例えば、S392及び/又はS20);CREB(例えば、S133);c−Jun(例えば、S63);c−Src(例えば、Y416);並びにパキシリン(例えば、Y31及び/又はY118)。
【0044】
[0058]用語「活性化状態非依存性抗体」は、その活性化状態に関係なく試料中の1つ又は複数の対象分析物に特異的な(即ち、それと結合する、それに結合される又はそれと複合体を形成する)検出抗体を包含する。例えば、活性化状態非依存性抗体は、1つ又は複数のシグナル伝達分子等の1つ又は複数の分析物のリン酸化型及び非リン酸化型両方を検出することができる。
【0045】
[0059]用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、例えば、DNAやRNA等の一本鎖又は二本鎖いずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを包含する。核酸は、合成、自然起源及び非自然起源であり、基準核酸と同様の結合特性を有する公知のヌクレオチドアナログ又は修飾骨格残基若しくは結合を含有する核酸を包含する。このようなアナログの例は、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2’−O−メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNA)を限定することなく包含する。特に制限がなければ、この用語は、基準核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を網羅する。他に断りがなければ、特定の核酸配列は、明示されている配列と共にその保存的修飾変種及び相補的配列も潜在的に網羅する。
【0046】
[0060]用語「オリゴヌクレオチド」は、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド及び/又はそれらの模倣の一本鎖オリゴマー又はポリマーを包含する。特定の事例において、オリゴヌクレオチドは、自然起源(即ち、非修飾)の核酸塩基、糖及びヌクレオシド間(骨格)結合から構成される。ある特定の他の事例において、オリゴヌクレオチドは、修飾された核酸塩基、糖及び/又はヌクレオシド間結合を含む。
【0047】
[0061]本明細書において、用語「ミスマッチモチーフ」又は「ミスマッチ領域」は、その相補的配列に対し100%相補性を持たないオリゴヌクレオチド部分を意味する。オリゴヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6以上のミスマッチ領域を有することができる。ミスマッチ領域は、近接していても、或いは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヌクレオチド以上離れていてもよい。ミスマッチモチーフ又は領域は、単一のヌクレオチドを含んでいても、或いは2、3、4、5以上のヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0048】
[0062]語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、オリゴヌクレオチドが、その相補的配列とハイブリダイズするが、それ以外の配列とはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境毎に異なる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの詳細なガイドは、Tijssen、Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probes、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に記されている。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにおける特異的配列の融解温度(thermal melting point)(T)よりも約5〜10℃低温が選択される。Tは、標的に相補的なプローブの50%が標的配列と平衡状態でハイブリダイズする(標的配列は過剰に存在するため、Tにおいてプローブの50%は平衡状態を満たす)温度(規定のイオン強度、pH及び核酸(nucleic)濃度下の)である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのため、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。
【0049】
[0063]2以上の核酸との関連における用語「実質的に同一」又は「実質的同一性」は、配列比較アルゴリズムを用いて、或いは手作業の整列化及び目視検査により測定して比較ウィンドウ又は指定領域に亘って最大一致に関して比較及び整列した場合に同一である、或いは特定のパーセンテージの同一ヌクレオチド(即ち、特定の領域に亘って少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一性)を有する2以上の配列又はサブ配列を意味する。文脈によって示される場合、この定義は、配列の相補体も類似的に意味する。好ましくは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75又は100ヌクレオチドの長さの領域に亘って実質的同一性が存在する。
【0050】
[0064]用語「インキュベートする」は、「接触する」及び「曝露する」と同義的に用いられ、他に断りがなければいかなる特定の時間又は温度要件も暗示しない。
【0051】
[0065]「受容体チロシンキナーゼ」又は「RTK」は、膜貫通ドメイン及びチロシンキナーゼモチーフによって特徴づけられた56種のタンパク質のファミリーを包含する。RTKは、細胞シグナリングにおいて機能し、増殖、分化、接着、遊走及びアポトーシスを調節するシグナルを伝達する。受容体チロシンキナーゼの変異による活性化及び/又は過剰発現は、細胞を形質転換(癌化)し、多くの場合、癌発生における決定的な役割を果たす。RTKは、トラスツズマブ、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、イマチニブ、ニロチニブその他等の様々な分子標的薬剤の標的となっている。十分に特徴づけられたシグナル伝達経路の一つに、細胞における細胞増殖を促進するための上皮増殖因子(EGF)からのシグナル伝達に関与するMAPキナーゼ経路がある。
【0052】
[0066]用語「無進行生存」又は「PFS」は、患者が疾病の追加的な症状なく疾病を抱えて生きる、疾病(例えば、癌)治療の間及びその後の時間の長さを包含する。
【0053】
[0067]本発明との関連において用語「トリプルネガティブ」は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)又はヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の検出可能な発現のないトリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)等の腫瘍細胞(例えば、循環腫瘍細胞)、腫瘍又は癌を包含する。
【0054】
III.実施形態の説明
[0068]本発明は、本明細書に記載されている特異的マルチプレックスハイスループット近接アッセイ等のアッセイにより、腫瘍組織、又は固形腫瘍の循環細胞に由来する腫瘍細胞におけるシグナル伝達経路の構成成分の状態(例えば、発現及び/又は活性化レベル)を検出するための方法を提供する。本発明はまた、1つ又は複数の調節解除されたシグナル伝達経路の下方制御に適切な治療法を選択するための方法も提供する。よって、本発明の特定の実施形態は、所定の患者の腫瘍(例えば、トリプルネガティブ乳腺腫瘍)における全シグナル伝達タンパク質及び/又は活性化シグナル伝達タンパク質の採取により提供された特定の分子シグネチャーに基づく個別化療法の計画を容易にするために用いることができる。
【0055】
[0069]特定の態様において、本発明は、特定の癌が、例えば、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセル(例えば、アブラキサン(登録商標)又はnabP)の組み合わせ(「トリプレット療法」)等の1つ又は複数の抗癌剤に対し有利に反応できる、或いは反応する可能性があるか決定又は予測を可能にする分子マーカー(バイオマーカー)を提供する。具体的な実施形態において、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rのうち少なくとも1、又は2種以上(例えば、全て)の発現及び/又は活性化レベルの測定は、トリプルネガティブ腫瘍細胞等の細胞における適切な抗癌剤の選択及び/又は有効性若しくはそれに対する反応の同定若しくは予測に特に有用である。
【0056】
[0070]一態様において、本発明は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性を決定するための方法であって、
(a)腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rからなる群から選択される1つ又は複数の分析物の発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、腫瘍細胞が抗癌剤に対し感受性であることを示す方法を提供する。
【0057】
[0071]一部の実施形態において、細胞抽出物における参照発現レベルと比較して中〜高レベルのVEGFR2発現、中〜高レベルのc−KIT発現、低〜中レベルのHER1発現及び/又は中〜高レベルのIGF−1R発現の存在は、腫瘍細胞が抗癌剤に対し抵抗性であることを示す。特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2及びc−KITを含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。別の特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2及びHER1を含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。更にまた別の特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT及びHER1を含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。更に特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及びIGF−1Rを含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。特定の事例において、本発明の方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1、IGF−1R及び/又はAKTのうち少なくとも1、又は2種以上(例えば、全て)の活性化レベルを決定するステップを更に含む。別の事例において、本方法は、ステップ(a)の前に腫瘍細胞を抗癌剤と接触させるステップを更に含む。
【0058】
[0072]他の実施形態において、腫瘍細胞は乳癌細胞である。特定の事例において、腫瘍細胞は、トリプルネガティブ乳腺腫瘍等の腫瘍から得られた穿刺吸引(FNA)細胞、又は体液試料から得られた循環腫瘍細胞(CTC)である。腫瘍細胞は通常、全血、血清、血漿又は腫瘍組織等を含む試料から単離される。特定の実施形態において、試料は、トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)の対象から得られる。
【0059】
[0073]別の一態様において、本発明は、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応を予測するための方法であって、
(a)トリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、抗癌剤による治療法に対する反応を予測する方法を提供する。
【0060】
[0074]一部の実施形態において、細胞抽出物における中〜高レベルのVEGFR2発現、中〜高レベルのc−KIT発現、低〜中レベルのHER1発現及び/又は中〜高レベルのIGF−1R発現の存在が、抗癌剤による治療法に対する反応の欠如を予測する。特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2及びc−KITを含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。別の特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2及びHER1を含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。更にまた別の特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT及びHER1を含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。更に特定の一実施形態において、本方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及びIGF−1Rを含む、それらから実質的になる又はそれらからなる分析物の組み合わせの発現レベルを決定するステップを含む。特定の事例において、本発明の方法は、細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1、IGF−1R及び/又はAKTのうち少なくとも1、又は2種以上(例えば、全て)の活性化レベルを決定するステップを更に含む。別の事例において、本方法は、ステップ(a)の前にトリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を抗癌剤とインキュベートするステップを更に含む。
【0061】
[0075]他の実施形態において、腫瘍細胞は、トリプルネガティブ乳腺腫瘍等の腫瘍から得られた穿刺吸引(FNA)細胞又は体液試料から得られた循環腫瘍細胞(CTC)である。腫瘍細胞は通常、全血、血清、血漿又は腫瘍組織等を含む試料から単離される。特定の実施形態において、試料は、トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)の対象から得られる。
【0062】
[0076]ある事例において、低レベルのVEGFR2発現の存在は、より長期の無進行生存(PFS)持続期間を予測する。別の事例において、低レベルのc−KIT発現の存在は、より長期のPFS持続期間を予測する。更に別の事例において、高レベルのHER1発現の存在は、より長期のPFS持続期間を予測する。更にまた別の事例において、低レベルのIGF−1R発現の存在は、より長期のPFS持続期間を予測する。特定の事例において、VEGFR2、c−KIT又はHER1単独の発現レベルと比較して、低レベルのc−KIT発現及び/又は高レベルのHER1発現の存在と組み合わせた低レベルのVEGFR2発現の存在は、より長期のPFS持続期間を予測する。
【0063】
[0077]ある特定の実施形態において、本発明の方法(例えば、抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性を決定するため及び抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応を予測するための方法)は、ステップ(c)において得られた比較の結果を、利用者(例えば、腫瘍学者又は一般医等の臨床医)に可読形式で提供するステップ(d)を更に含むことができる。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、ステップ(c)において得られた比較の結果を臨床医、例えば、腫瘍学者又は一般医に送付又は報告するステップを更に含むことができる。別の事例において、本発明の方法は、ステップ(c)において得られた比較の結果をコンピュータデータベース又は例えば研究室における情報保存に適した機械若しくは装置に記録又は保存するステップを更に含むことができる。
【0064】
[0078]特定の実施形態において、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルは、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの全タンパク質レベルを検出すること、例えば、分析物特異的抗体によるイムノアッセイを用いることによって決定される。全発現レベル及び/又は状態は、様々な技法のいずれかを用いて決定することができる。非限定的な例として、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルは、本明細書に記載されている通り単検出アッセイ又は近接二重検出アッセイにより決定することができる。好ましい実施形態において、近接二重検出アッセイは、協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)である。
【0065】
[0079]一部の実施形態において、1つ又は複数の分析物の発現(例えば、全て)レベル及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルは、例えば、CEERを用いて決定される特定の対象分析物のシグナル強度に相当する相対蛍光単位(relative fluorescence unit;RFU)値として表示される。他の実施形態において、1つ又は複数の分析物の発現レベル及び/又は活性化レベルは、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定されたRFU値を、特定の対象分析物に対し作成された検量線に対してキャリブレーション又は正規化することにより定量化される。特定の事例において、RFU値は、検量線に基づき算出することができる。
【0066】
[0080]更に別の実施形態において、1つ又は複数の分析物の発現レベル及び/又は活性化レベルは、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の増加シグナル強度に対応して「低」、「中」又は「高」として表示される。ある事例において、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の発現又は活性化の検出不能又は最小検出可能レベルは、「検出不能」として表示することができる。別の事例において、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の低レベルの発現又は活性化は、「低」として表示することができる。更にまた別の事例において、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の中程度レベルの発現又は活性化は、「中」として表示することができる。更にまた別の事例において、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の発現又は活性化の中程度〜高レベルは、「中〜高」として表示することができる。更に別の事例において、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定される特定の対象分析物の発現又は活性化の非常に高レベルは、「高」として表示することができる。
【0067】
[0081]特定の実施形態において、特定の対象分析物の参照発現レベル及び/又は活性化レベルは、例えば、癌細胞株等の試料から作成された1つ又は複数の検量線から算出される。非限定的な例として、特定の対象分析物の発現レベル又は活性化レベルの決定に用いられるアッセイ毎に、癌細胞株から調製された1又は複数種(例えば、2、3、4、5、6、7等)の濃度の系列的に希釈された細胞ライセートからS字形検量線を作成することができる。好ましい実施形態において、癌細胞株は、1つ又は複数の対象分析物、例えば、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rを発現する。各曲線は、シグナル強度対log濃度由来単位(log concentration derived unit)の関数としてプロットすることができ、CU(コンピュータ処理単位(Computed Unit))は、検量線に基づき算出することができる。実施例7は、特定の対象分析物に対し作成された検量線に対する特定の対象分析物の発現及び/又は活性化レベルの定量化のより詳細な説明を提示する。
【0068】
[0082]ある特定の実施形態において、特定の対象分析物の発現レベル又は活性化レベルが「低」、「中」又は「高」として表示されると、これは例えば、陰性対照(例えば、IgG対照)における、対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)における、pan−CK対照等の陽性対照における、抗癌剤の存在下における及び/又は抗癌剤の不在下における、該特定の対象分析物の参照発現レベル及び/又は活性化レベルと比較した場合、少なくとも約0、5000、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000、60000、70000、80000、90000、100000RFU以上の発現又は活性化のレベルに相当し得る。ある事例において、相関は分析物特異的である。非限定的な例として、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定された「低」レベルの発現又は活性化は、参照発現又は活性化レベルと比較した場合、ある分析物の発現又は活性化における10000RFU及び別の分析物の50000RFUに相当し得る。
【0069】
[0083]ある特定の実施形態において、特定の対象分析物の発現又は活性化レベルは、該特定の対象分析物の参照発現レベル又は活性化レベルと相対的に、例えば、IgG対照等の陰性対照と比較した場合、対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)と比較した場合、pan−CK対照等の陽性対照と比較した場合、抗癌剤存在下で決定した発現又は活性化レベルと比較した場合、及び/又は抗癌剤不在下で決定した発現又は活性化レベルと比較した場合、「低」、「中」又は「高」と称される発現又は活性化のレベルに相当し得る。ある事例において、相関は分析物特異的である。非限定的な例として、例えば、CEER等の近接アッセイを用いて決定された「低」レベルの発現又は活性化は、参照発現又は活性化レベルと比較した場合、ある分析物の発現又は活性化の2倍増加及び別の分析物の5倍増加に相当し得る。
【0070】
[0084]ある特定の実施形態において、特定の対象分析物の発現又は活性化レベルは、陰性対照(例えば、IgG対照)における、対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)における、pan−CK対照等の陽性対照における、抗癌剤存在下における及び/又は抗癌剤不在下における、該特定の対象分析物の参照発現レベル及び/又は活性化レベルと比較した発現又は活性化のレベルに相当し得る。
【0071】
[0085]ある特定の実施形態において、発現又は活性化レベルが、陰性対照(例えば、IgG対照)における、対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)における、陽性対照(例えば、pan−CK対照)における、抗癌剤存在下における及び/又は抗癌剤不在下における、該特定の対象分析物の参照発現又は活性化レベルよりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍高い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20又は5〜50倍高い)場合、特定の対象分析物のより高レベルの発現又は活性化が試料(例えば、細胞抽出物)中に存在すると考えられる。
【0072】
[0086]他の実施形態において、発現又は活性化レベルが、陰性対照(例えば、IgG対照)、対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)、陽性対照(例えば、pan−CK対照)、抗癌剤存在下及び/又は抗癌剤不在下における、該特定の対象分析物の参照発現又は活性化レベルよりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍低い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20又は5〜50倍低い)場合、特定の対象分析物のより低レベルの発現又は活性化が試料(例えば、細胞抽出物)中に存在すると考えられる。
【0073】
[0087]更に別の実施形態において、特定の対象分析物の参照発現又は活性化レベルは、カットオフ値である。ある事例において、カットオフ値は、細胞抽出物における該分析物の発現又は活性化レベルとの比較に用いた特定の対象分析物の集団解析に基づいて選択された数値を包含する。非限定的な例として、カットオフ値は、個体集団の特定の対象分析物の発現又は活性化レベルを「高」及び「低」群に分けることにより得られ、集団における分析物の中央値の発現又は活性化レベル又はその近似値と選択することができる。細胞抽出物における対象分析物の発現又は活性化レベルは、カットオフ値と比較して、細胞抽出物における分析物の発現又は活性化レベルがカットオフ値を上回る(例えば、「高」)か下回る(例えば、「低」)かに基づき、「高」及び「低」レベルの発現又は活性化であると決定することができる。実施例5は、本発明の方法に従ってカットオフ値の算出、選択及び使用の例示的な一実施形態を提示する。他の実施形態において、カットオフ値は、特定の対象分析物に対し作成された検量線(例えば、癌細胞株から作成された検量線)から得られ、細胞抽出物における該分析物の発現又は活性化レベルと比較することができる。当業者であれば、カットオフ値を、利用者のニーズ及び解析される集団の特徴に応じて決定することができることを認識するであろう。
【0074】
[0088]一部の実施形態において、抗癌剤は、癌細胞において異常発現及び/又は活性化されたシグナル伝達経路の構成成分の機能に干渉する1つ又は複数の薬剤を含む。このような薬剤の非限定的な例として、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2010/132723号の表1に列挙されているものが挙げられる。
【0075】
[0089]ある特定の実施形態において、抗癌剤は、モノクローナル抗体又はチロシンキナーゼ阻害剤等の抗シグナリング剤(即ち、細胞分裂阻害薬);抗増殖剤;化学療法剤(即ち、細胞傷害性薬物);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞等の異常細胞の制御されない増殖を低減又は抑止する能力を有するその他の化合物を含む。一部の実施形態において、単離された細胞は、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせた1つ又は複数の抗シグナリング剤、抗増殖剤及び/又はホルモン療法剤で処理される。
【0076】
[0090]本発明における使用に適切な抗シグナリング剤の例は、これらに限定されないが、トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))、ペルツズマブ(2C4)、アレムツズマブ(キャンパス(Campath)(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、セツキシマブ(アービタックス(Erbitux)(登録商標))、ゲムツズマブ(マイロターグ(Mylotarg)(登録商標))、パニツムマブ(ベクティビックス(Vectibix)(商標))、リツキシマブ(リツキサン(Rituxan)(登録商標))及びトシツモマブ(ベキサール(BEXXAR)(登録商標))等のモノクローナル抗体;ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)(登録商標))、スニチニブ(スーテント(Sutent)(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(Tarceva)(登録商標))、ラパチニブ(GW−572016;タイケルブ(Tykerb)(登録商標))、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006;ネクサバール(Nexavar)(登録商標))、メシル酸イマチニブ(グリベック(Gleevec)(登録商標))、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ZACTIMA(商標);ZD6474)、ペリチニブ、CP−654577、CP−724714、HKI−272、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW2992、ARRY−334543、JNJ−26483327及びJNJ−26483327等のチロシンキナーゼ阻害剤並びにそれらの組み合わせを包含する。
【0077】
[0091]例示的な抗増殖剤として、シロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD001)、BEZ235及びXL765等のmTOR阻害剤;1L6−ヒドロキシメチル−キロ−イノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカーボネート、9−メトキシ−2−メチルエリプチシニウム酢酸塩、1,3−ジヒドロ−1−(1−((4−(6−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−g]キノキサリン−7−イル)フェニル)メチル)−4−ピペリジニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン、10−(4’−(N−ジエチルアミノ)ブチル)−2−クロロフェノキサジン、3−ホルミルクロモンチオセミカルバゾン(Cu(II)Cl錯体)、API−2、癌原遺伝子TCL1のアミノ酸10〜24に由来する15アミノ酸長のペプチド(Hiromuraら、J.Biol.Chem.、279:53407〜53418(2004))、KP372−1並びにKozikowskiら、J.Am.Chem.Soc.、125:1144〜1145(2003)及びKauら、Cancer Cell、4:463〜476(2003)に記載されている化合物等のAKT阻害剤;PX−866、ウォルトマンニン、LY294002、ケルセチン、テトロドトキシンクエン酸塩、チオペラミドマレイン酸塩、GDC−0941(957054−30−7)、IC87114、PI−103、PIK93、BEZ235(NVP−BEZ235)、TGX−115、ZSTK474、(−)−デグエリン、NU7026、ミリセチン、タンヅチニブ、GDC−0941ビスメシラート、GSK690693、KU−55933、MK−2206、OSU−03012、ペリホシン、トリシリビン、XL−147、PIK75、TGX−221、NU7441、PI828、XL−765及びWHI−P154等のPI3K阻害剤;PD98059、ARRY−162、RDEA119、U0126、GDC−0973、PD184161、AZD6244、AZD8330、PD0325901及びARRY−142886等のMEK阻害剤;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
[0092]pan−HER阻害剤の非限定的な例として、PF−00299804、ネラチニブ(HKI−272)、AC480(BMS−599626)、BMS−690154、PF−02341066、HM781−36B、CI−1033、BIBW−2992及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
[0093]化学療法剤の非限定的な例として、白金ベースの薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチン等)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレア等)、代謝産物拮抗剤(anti−metabolite)(例えば、5−フルオロウラシル、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール(Gemzar)(登録商標))、ペメトレキセド(アリムタ(ALIMTA)(登録商標))、ラルチトレキセド等)、植物性アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(タクソール(Taxol)(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(登録商標))等)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、エトポシドリン酸塩、テニポシド等)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン等)、それらの医薬的に許容される塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
[0094]ホルモン療法剤の例は、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール(アリミデックス(Arimidex)(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(Femara)(登録商標))、ボロゾール、エキセメスタン(アロマシン(Aromasin)(登録商標))、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(6−OXO)、1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD)、フォルメスタン(レンタロン(Lentaron)(登録商標))等)、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(例えば、バゼドキシフェン、クロミフェン、フルベストラント、ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン等)、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステライド、及びゴセレリン等のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)並びにそれらの医薬的に許容される塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
[0095]本発明において有用な癌ワクチンの非限定的な例として、Active Biotech製のANYARA、Northwest Biotherapeutics製のDCVax−LB、IDM Pharma製のEP−2101、Pharmexa製のGV1001、Idera Pharmaceuticals製のIO−2055、Introgen Therapeutics製のINGN 225及びBiomira/Merck製のStimuvaxが挙げられる。
【0082】
[0096]放射線療法剤の例として、腫瘍抗原に対し作製された抗体とコンジュゲートしてもよい、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At及び212Bi等の放射性核種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
[0097]好ましい実施形態において、抗癌剤は、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセルの組み合わせ(「トリプレット療法」)である。ある事例において、パクリタキセルは、ナノ粒子アルブミン結合(nanoparticle albumin−bound;nab)パクリタキセル(アブラキサン(登録商標)又はnabP)である。他の実施形態において、抗癌剤は、次のうち1つ又は複数を含む。ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン、パクリタキセル(例えば、nabP)、イニパリブ(BSI201;4−ヨード−3−ニトロベンズアミド)、NK012(SN−38を遮断共重合体PEG−PGluに共有結合させ、続いて水媒体において両親媒性遮断共重合体を自己集合させることにより構築したSN−38放出ナノデバイス)、グレンバツムマブ・ベドチン(glembatumumab vedotin)、(CDX−011又はCR011−vcMMAEとしても知られる;膜貫通糖タンパク質NMBを発現する癌細胞を標的にするモノメチルオーリスタチンE(MMAE)と結合したヒトモノクローナル抗体グレンバツムマブ(CR011))又はそれらの組み合わせ。特定の一実施形態において、抗癌剤は、イニパリブ(PARP阻害剤)、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))及びカルボプラチンの組み合わせである。
【0084】
[0098]一部の実施形態において、本方法は、細胞抽出物における1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化レベルを決定するステップを更に含む。細胞抽出物等、試料における発現(例えば、総量)レベル及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを調査することのできる追加的なシグナル伝達分子の非限定的な例として、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼシグナリングカスケード構成成分、核内ホルモン受容体、核内受容体活性化補助因子、核内受容体リプレッサー及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明を用いて調査することのできるシグナル伝達分子及び経路の特定の例として、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2010/132723号の表2に示されているものが挙げられる。特定の実施形態において、1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子は、HER2、p95HER2、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、Shc、c−MET、VEGFR1、VEGFR3、受容体二量体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0085】
[0099]ある特定の実施形態において、本発明は、細胞抽出物における1つ又は複数(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50以上)の追加的な分析物の発現(例えば、全て)レベル及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定するステップを更に含む。一部の実施形態において、1つ又は複数(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50以上)の追加的な分析物は、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼシグナリングカスケード構成成分、核内ホルモン受容体、核内受容体活性化補助因子、核内受容体リプレッサー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のシグナル伝達分子を含む。
【0086】
[0100]特定の実施形態において、本発明は、細胞抽出物における次の追加的な分析物のうち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50以上の1又はいずれかの組み合わせの発現(例えば、全て)レベル及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定するステップを更に含む。HER2、p95HER2、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、Shc、c−MET、VEGFR1、VEGFR3、PDK2、Raf、SRC、NFkB−IkB、mTOR、EPH−A、EPH−B、EPH−C、EPH−D、FLT−3、TIE−1、TIE−2、c−FMS、Abl、FTL3、RET、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ER、PR、NCOR、AIB1、RON、PIP2、PIP3、p27、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1等)、受容体二量体及びそれらの組み合わせ。
【0087】
IV.抗体アレイの構築
[0101]ある特定の態様において、乳癌細胞等の腫瘍細胞の細胞抽出物における1つ又は複数の(例えば、複数の)分析物(例えば、シグナル伝達分子)の発現レベル及び/又は活性化状態は、固体担体上に拘束された捕捉抗体の希釈系列を含む抗体に基づくアレイを用いて検出される。アレイは通常、異なるアドレス可能な位置における固体担体の表面と結合した、様々な捕捉抗体濃度の、複数の異なる捕捉抗体を含む。一実施形態において、アレイは、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rのうち少なくとも1つ又は複数、並びに例えば、陰性対照(例えば、IgG対照)、対象分析物に対し作成された検量線、及び/又は陽性対照(例えば、pan−CK対照)等の1つ又は複数の対照の発現及び/又は活性化を検出及び/又は定量化するための捕捉抗体を含む。
【0088】
[0102]特定の一実施形態において、本発明は、各希釈系列の捕捉抗体がシグナル伝達経路の構成成分及び他の標的タンパク質に対応する1つ又は複数の分析物に特異的である、固体担体上に拘束された捕捉抗体の複数の希釈系列を含む、優れたダイナミックレンジを有するアドレス可能なアレイを提供する。様々な態様において、本実施形態は、特定の腫瘍の特徴を示すシグナル伝達経路、例えば、乳癌細胞において活性があるシグナル伝達経路の構成成分を含むアレイを包含する。よって、本発明は、乳癌の原因となる可能性のある発現又は活性化欠陥を有する各対象シグナル伝達分子その他のタンパク質が単一のアレイ又はチップ上に提示されるよう、有利に実施することができる。一部の態様において、特定の腫瘍細胞において活性を有する所定のシグナル伝達経路の構成成分は、細胞内のシグナル伝達経路を通じて情報が中継される流れと対応する直線配置に整列される。このようなアレイの例は本明細書に記載されており、また、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2009/108637号の図5〜9に示されている。特定の腫瘍細胞において活性を有する所定のシグナル伝達経路の1つ又は複数の構成成分に特異的な捕捉抗体は、あらゆる表面関連アーチファクトを最小化するために無作為化様式でプリントすることもできる。
【0089】
[0103]固体担体は、タンパク質を固定化するための任意の適切な基質を含むことができる。固体担体の例として、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、メンブレン、繊維束、ゲル、金属、セラミックその他が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ナイロン(バイオトランス(Biotrans)(商標)、ICN Biomedicals、Inc.(カリフォルニア州コスタメサ);ゼータプローブ(Zeta−Probe)(登録商標)、Bio−Rad Laboratories(カリフォルニア州ハーキュリーズ))、ニトロセルロース(プロトラン(Protran)(登録商標)、Whatman Inc.(ニュージャージー州フローラムパーク))及びPVDF(イモビロン(Immobilon)(商標)、Millipore Corp.(マサチューセッツ州ビルリカ))等のメンブレンは、本発明のアレイにおける固体担体としての使用に適している。好ましくは、捕捉抗体は、ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド、例えば、Whatman Inc.(ニュージャージー州フローラムパーク)から市販されているFAST(登録商標)スライド上に拘束される。
【0090】
[0104]望ましい固体担体の特定の態様は、大量の捕捉抗体と結合する能力及び捕捉抗体と最小限の変性で結合する能力を包含する。別の適切な一態様は、捕捉抗体を含有する抗体溶液が担体に塗布されると、固体担体が最小の「ウィッキング(wicking)」を提示することである。最小ウィッキングの固体担体は、少量の捕捉抗体溶液アリコートの担体への塗布を可能にし、固定化捕捉抗体の小型の画定されたスポットを可能にする。
【0091】
[0105]捕捉抗体は通常、共有結合又は非共有結合的相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子結合)により固体担体上に直接的又は間接的に(例えば、捕捉タグを介して)拘束される。一部の実施形態において、捕捉抗体は、標準架橋方法及び条件を用いたホモ二官能性又はヘテロ二官能性架橋剤を用いて固体担体と共有結合される。適切な架橋剤は、例えば、Pierce Biotechnology(イリノイ州ロックフォード)等のベンダーから市販されている。
【0092】
[0106]本発明における使用に適切なアレイを作製するための方法として、タンパク質又は核酸アレイの構築に用いるための任意の技法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態において、捕捉抗体は、スプリットピン(split pin)、ブラントピン(blunt pin)又はインクジェットプリントを備える通常はロボットプリンタであるマイクロスポッター(microspotter)を用いてアレイ上にスポット配置される。本明細書に記載されている抗体アレイをプリントするための適切なロボットシステムは、ChipMaker2スプリットピン(TeleChem Internatioal;カリフォルニア州サニーベール)を有するPixSys5000ロボット(Cartesian Technologies;カリフォルニア州アーバイン)並びにBioRobics(マサチューセッツ州ウォバーン)及びPackard Instrument Co.(コネティカット州メリデン)から入手できる他のロボットプリンタを包含する。好ましくは、各捕捉抗体希釈液の少なくとも2、3、4、5又は6回反復がアレイ上にスポット配置される。
【0093】
[0107]本発明における使用に適切なアレイを作製するための別の方法は、規定の容量の液体を担体上に取り出すのに有効な条件下でキャピラリー分注器を固体担体上に接触させることにより、各選択されたアレイポジションにおいて捕捉抗体希釈液の既知の容量を分注するステップを含み、本プロセスは、各選択されたアレイポジションにおいて選択された捕捉抗体希釈液を用いて繰り返され、完全なアレイを作製する。本方法は複数のこのようなアレイの形成において実施することができ、溶液配置ステップは各繰り返しサイクルの複数の固体担体のそれぞれにおける選択されたポジションに適用される。このような方法の更なる記述は、例えば、米国特許第5,807,522号に見出すことができる。
【0094】
[0108]特定の事例において、紙にプリントするための装置を用いて、抗体アレイを作製することができる。例えば、所望の捕捉抗体希釈液は、卓上ジェットプリンタのプリントヘッドに充填し、適切な固体担体上にプリントすることができる(例えば、Silzelら、Clin.Chem.、44:2036〜2043(1998)を参照)。
【0095】
[0109]一部の実施形態において、固体担体上に作製されたアレイは、少なくとも約5スポット/cm、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000若しくは9000又は10000スポット/cmの密度を有する。
【0096】
[0110]特定の事例において、固体担体上のスポットはそれぞれ異なる捕捉抗体を表す。ある特定の他の事例において、固体担体上の複数のスポットは、同一捕捉抗体を、例えば、降順捕捉抗体濃度系列を含む希釈系列として表す。
【0097】
[0111]抗体アレイを固体担体上に調製及び構築するための方法の更なる具体例は、米国特許第6,197,599号、第6,777,239号、第6,780,582号、第6,897,073号、第7,179,638号及び第7,192,720号;米国特許出願公開第20060115810号、第20060263837号、第20060292680号及び第20070054326号;並びにVarnumら、Methods Mol.Biol.、264:161〜172(2004)に記載されている。
【0098】
[0112]抗体アレイを走査するための方法は、本技術分野で公知のものであり、タンパク質又は核酸アレイの走査に用いられる任意の技法を限定することなく包含する。本発明における使用に適したマイクロアレイスキャナーは、PerkinElmer(マサチューセッツ州ボストン)、Agilent Technologies(カリフォルニア州パロアルト)、Applied Precision(ワシントン州イサクアー)、GSI Lumonics Inc.(マサチューセッツ州ビルリカ)及びAxon Instruments(カリフォルニア州ユニオンシティー)から入手できる。非限定的な例として、蛍光検出のためのGSI ScanArray3000は、定量化のためのImaGeneソフトウェアと併せて用いることができる。
【0099】
V.単検出アッセイ
[0113]一部の実施形態において、腫瘍細胞等、細胞の細胞抽出物における1つ又は複数の対象分析物(例えば、1つ又は複数のシグナル伝達分子)の発現及び/又は活性化レベルを検出するためのアッセイは、優れたダイナミックレンジを有するマルチプレックスハイスループット二抗体アッセイである。非限定的な例として、アッセイにおいて用いられる2種の抗体は、(1)特定の対象分析物に特異的な捕捉抗体及び(2)分析物の活性型に特異的な検出抗体(即ち、活性化状態依存性抗体)を含むことができる。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体形成状態を検出することができる。或いは、検出抗体は、細胞抽出物における分析物総量を検出する活性化状態非依存性抗体を含む。活性化状態非依存性抗体は一般に、分析物の活性化型及び非活性型の両方を検出することができる。
【0100】
[0114]特定の一実施形態において,対象分析物の発現又は活性化レベルを検出するための二抗体アッセイは、
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1又は複数の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成するステップと、
(ii)複数の捕捉された分析物を対応する分析物に特異的な検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成するステップであって、検出抗体が、分析物の活性化(例えば、リン酸化)レベルを検出するための活性化状態依存性抗体又は分析物の発現レベル(例えば、総量)を検出するための活性化状態非依存性抗体を含むステップと、
(iii)複数の検出可能な捕捉された分析物をシグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(iv)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む。
【0101】
[0115]本明細書に記載されている二抗体アッセイは通常、異なるアドレス可能な位置における固体担体表面と結合した様々な捕捉抗体濃度の複数の異なる捕捉抗体を含む抗体に基づくアレイである。本発明における使用に適切な固体担体の例は、上に記載されている。
【0102】
[0116]捕捉抗体及び検出抗体は、好ましくは、分析物結合に関する両者の間の競合を最小化する(即ち、捕捉及び検出抗体の両方が、その対応するシグナル伝達分子と同時に結合できる)ように選択される。
【0103】
[0117]一実施形態において、検出抗体は、結合ペアの第一のメンバー(例えば、ビオチン)を含み、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは、結合ペアの第二のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)を含む。結合ペアメンバーは、本技術分野でよく知られた方法を用いて検出抗体又はシグナル増幅ペアの第一のメンバーと直接的又は間接的に結合することができる。特定の事例において、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、デヨードナーゼ等)であり、シグナル増幅ペアの第二のメンバーは、チラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)である。これらの事例において、増幅シグナルは、チラミド試薬のペルオキシダーゼ酸化により生成され、過酸化水素(H)存在下で活性化チラミドを産生する。
【0104】
[0118]活性化されたチラミドは、直接的に検出されるか、或いは例えば、ストレプトアビジン標識フルオロフォア又はストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ及び発色性試薬の組み合わせ等のシグナル検出試薬の添加により検出される。本発明における使用に適切なフルオロフォアの例として、アレクサフルオル(Alexa Fluor)(登録商標)色素(例えば、アレクサフルオル(登録商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(Oregon Green)(商標);ローダミン、テキサスレッド(Texas red)、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商標)蛍光(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)その他が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ストレプトアビジン標識は、本技術分野でよく知られた方法を用いてフルオロフォア又はペルオキシダーゼと直接的又は間接的に結合することができる。本発明における使用に適切な発色性試薬の非限定的な例として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)及び/又はポルフィリノゲンが挙げられる。
【0105】
[0119]本明細書に記載されている二抗体アッセイを行うための例示的なプロトコルは、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2009/108637号の実施例3に提示されている。
【0106】
[0120]二抗体アプローチの別の実施形態において、本発明は、切断型受容体の発現又は活性化レベルを検出するための方法であって、
(i)細胞抽出物を全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートするステップと、
(ii)複数のビーズを細胞抽出物から除去して、これにより全長受容体を除去して、全長受容体を欠く細胞抽出物を形成するステップと、
(iii)全長受容体を欠く細胞抽出物を、全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な1又は複数の捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された切断型受容体を形成するステップと、
(iv)複数の捕捉された切断型受容体を全長受容体のICD結合領域に特異的な検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断型受容体を形成するステップであって、検出抗体が、切断型受容体の活性化(例えば、リン酸化)レベルを検出するための活性化状態依存性抗体又は切断型受容体の発現レベル(例えば、総量)を検出するための活性化状態非依存性抗体を含むステップと、
(v)複数の検出可能な捕捉された切断型受容体をシグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(vi)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む方法を提供する。
【0107】
[0121]ある特定の実施形態において、切断型受容体はp95HER2であり、全長受容体はHER2である。ある特定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズは、ビオチンがビーズと結合し、ビオチンが抗体と結合した(例えば、抗体が全長受容体のECD結合領域に特異的である)ストレプトアビジン−ビオチンペアを含む。
【0108】
[0122]その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2009/108637号の図14Aは、あらゆる全長受容体をアッセイから除去するため、対象受容体の細胞外ドメイン(ECD)に対して作製された抗体でコーティングされたビーズが、全長受容体(例えば、HER2)と結合するが、切断型受容体(例えば、p95HER2)と結合しないことを示す。PCT国際公開第2009/108637号の図14Bは、切断型受容体(例えば、p95HER2)が、捕捉抗体と結合すると、続いて全長受容体(例えば、HER2)の細胞内ドメイン(ICD)に特異的な検出抗体により検出することができることを示す。検出抗体は、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と直接的にコンジュゲートすることができる。続いて、チラミドシグナル増幅(TSA)を行って、検出されるシグナルを生成することができる。切断型受容体(例えば、p95HER2)の発現レベル又は活性化状態は、例えば、その全濃度又はそのリン酸化状態、ユビキチン化状態及び/又は複合体形成状態を決定するために調査することができる。
【0109】
[0123]別の一実施形態において、本発明は、(a)固体担体上に拘束された1又は複数の捕捉抗体の希釈系列と、(b)1又は複数の検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体及び/又は活性化状態依存性抗体)とを含む、上述の二抗体アッセイを行うためのキットを提供する。ある事例において、キットは、腫瘍細胞等の細胞の1又は複数のシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化状態を検出するキットの使用方法のための説明書を更に含有することができる。キットは、例えば、シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバー、チラミドシグナル増幅試薬、洗浄バッファー等、本発明の特定の方法の実施に関する上述の追加的な試薬のいずれかを含有することもできる。
【0110】
VI.近接二重検出アッセイ
[0124]一部の実施形態において、腫瘍細胞等、細胞の細胞抽出物における1つ又は複数の対象分析物(例えば、1つ又は複数のシグナル伝達分子)の発現及び/又は活性化レベルを検出するためのアッセイは、優れたダイナミックレンジを有するマルチプレックスハイスループット近接(即ち、三抗体)アッセイである。非限定的な例として、近接アッセイにおいて用いられる3種の抗体は、(1)特定の対象分析物に特異的な捕捉抗体と、(2)分析物の活性型に特異的な検出抗体(即ち、活性化状態依存性抗体)と、(3)分析物の総量を検出する検出抗体(即ち、活性化状態非依存性抗体)を含むことができる。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体形成状態を検出することができるが、活性化状態非依存性抗体は、分析物の総量(即ち、活性化型及び非活性型の両方)を検出することができる。
【0111】
[0125]特定の一実施形態において、対象分析物の活性化レベル又は状態を検出するための近接アッセイは、
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1又は複数の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成するステップと、
(ii)複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な1又は複数の活性化状態非依存性抗体及び1又は複数の活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成するステップであって、
活性化状態非依存性抗体が円滑化成分で標識されており、活性化状態依存性抗体がシグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識されており、円滑化成分が、シグナル増幅ペアの第一のメンバーへと導きそれと反応する酸化剤を生成するステップと、
(iii)複数の検出可能な捕捉された分析物をシグナル増幅ペアの第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(iv)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む。
【0112】
[0126]別の特定の一実施形態において、切断型受容体である対象分析物の活性化レベル又は状態を検出するための近接アッセイは、
(i)細胞抽出物を、全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートするステップと、
(ii)複数のビーズを細胞抽出物から除去して、これにより全長受容体を除去して、全長受容体を欠く細胞抽出物を形成するステップと、
(iii)全長受容体を欠く細胞抽出物を、全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な1又は複数の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された切断型受容体を形成するステップと、
(iv)複数の捕捉された切断型受容体を、全長受容体のICD結合領域に特異的な1又は複数の活性化状態非依存性抗体及び1又は複数の活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断型受容体を形成するステップであって、
活性化状態非依存性抗体が円滑化成分で標識されており、活性化状態依存性抗体がシグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識されており、円滑化成分が、シグナル増幅ペアの第一のメンバーへと導きそれと反応する酸化剤を生成するステップと、
(v)複数の検出可能な捕捉された切断型受容体をシグナル増幅ペアの第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(vi)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む。
【0113】
[0127]ある特定の実施形態において、切断型受容体はp95HER2であり、全長受容体はHER2である。ある特定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズは、ビオチンがビーズと結合し、ビオチンが抗体と結合した(例えば、抗体が、全長受容体のECD結合領域に特異的である)ストレプトアビジン−ビオチンペアを含む。
【0114】
[0128]代替的な実施形態において、活性化状態依存性抗体は、円滑化成分で標識することができ、活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識することができる。
【0115】
[0129]別の非限定的な一例として、近接アッセイにおいて用いる3種の抗体は、(1)特定の対象分析物に特異的な捕捉抗体と、(2)分析物の総量を検出する第一の検出抗体(即ち、第一の活性化状態非依存性抗体)と、(3)分析物の総量を検出する第二の検出抗体(即ち、第二の活性化状態非依存性抗体)を含むことができる。好ましい実施形態において、第一及び第二の活性化状態非依存性抗体は、分析物における異なる(例えば、別個の)エピトープを認識する。
【0116】
[0130]特定の一実施形態において、対象分析物の発現レベルを検出するための近接アッセイは、
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1又は複数の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成するステップと、
(ii)複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な1又は複数の第一及び第二の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成するステップであって、
第一の活性化状態非依存性抗体が円滑化成分で標識されており、第二の活性化状態非依存性抗体がシグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識されており、円滑化成分が、シグナル増幅ペアの第一のメンバーへと導きそれと反応する酸化剤を生成するステップと、
(iii)複数の検出可能な捕捉された分析物をシグナル増幅ペアの第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(iv)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む。
【0117】
[0131]別の特定の一実施形態において、切断型受容体である対象分析物の発現レベルを検出するための近接アッセイは、
(i)細胞抽出物を、全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートするステップと、
(ii)複数のビーズを細胞抽出物から除去して、これにより全長受容体を除去して、全長受容体を欠く細胞抽出物を形成するステップと、
(iii)全長受容体を欠く細胞抽出物を、全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な1又は複数の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された切断型受容体を形成するステップと、
(iv)複数の捕捉された切断型受容体を、全長受容体のICD結合領域に特異的な1又は複数の第一及び第二の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断型受容体を形成するステップであって、
第一の活性化状態非依存性抗体が円滑化成分で標識されており、第二の活性化状態非依存性抗体がシグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識されており、円滑化成分が、シグナル増幅ペアの第一のメンバーへと導きこれと反応する酸化剤を生成するステップと、
(v)複数の検出可能な捕捉された切断型受容体をシグナル増幅ペアの第二のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成するステップと、
(vi)シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバーから生成された増幅シグナルを検出するステップとを含む。
【0118】
[0132]ある特定の実施形態において、切断型受容体はp95HER2であり、全長受容体はHER2である。ある特定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズは、ビオチンがビーズと結合し、ビオチンが抗体と結合した(例えば、抗体が全長受容体のECD結合領域に特異的である)ストレプトアビジン−ビオチンペアを含む。
【0119】
[0133]代替的な実施形態において、第一の活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅ペアの第一のメンバーで標識することができ、第二の活性化状態非依存性抗体は、円滑化成分で標識することができる。
【0120】
[0134]本明細書に記載されている近接アッセイは通常、異なるアドレス可能な位置における固体担体表面と結合している、様々な捕捉抗体濃度の1又は複数の異なる捕捉抗体を含む抗体に基づくアレイである。本発明における使用のための適切な固体担体の例は、上に記載されている。
【0121】
[0135]捕捉抗体、活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体は、好ましくは、分析物結合に関してそれらの間の競合を最小化する(即ち、全抗体が、それらの対応するシグナル伝達分子と同時に結合できる)よう選択される。
【0122】
[0136]一部の実施形態において、1つ又は複数の分析物の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、或いは1つ又は複数の分析物の発現レベルを検出するための第一の活性化状態非依存性抗体は、検出可能成分を更に含む。このような事例において、検出可能成分の量は、細胞抽出物における1つ又は複数の分析物の量と相関する。検出可能成分の例として、蛍光標識、化学反応標識、酵素標識、放射性標識等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、検出可能成分は、アレクサフルオル(登録商標)色素(例えば、アレクサフルオル(登録商標)647)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(商標);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商標)蛍光(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)等のフルオロフォアである。検出可能成分は、本技術分野でよく知られた方法を用いて活性化状態非依存性抗体と直接的又は間接的に結合することができる。
【0123】
[0137]特定の事例において、1つ又は複数の分析物の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、或いは1つ又は複数の分析物の発現レベルを検出するための第一の活性化状態非依存性抗体は、円滑化成分で直接的に標識される。円滑化成分は、本技術分野でよく知られた方法を用いて活性化状態非依存性抗体と結合することができる。本発明における使用のための適切な円滑化成分は、円滑化成分と近接した(即ち、空間的に近い又は隣接した)別の分子へと導き(即ち、指向する)それと反応する(即ち、それと結合する、それに結合される又はそれと複合体を形成する)酸化剤を生成することのできるいずれかの分子を包含する。円滑化成分の例は、グルコース酸化酵素又は電子受容体としての酸素分子(O)に関与する酸化/還元反応を触媒するその他の酵素等の酵素及びメチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、スクアラート(squarate)色素、フタロシアニン等の光線感作物質が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤の非限定的な例として、過酸化水素(H)、一重項酸素、及び酸化/還元反応において酸素原子を転移する、或いは電子を得るその他の化合物が挙げられる。好ましくは、2種の成分が互いに近接している場合、適切な基質(例えば、グルコース、光等)の存在下で、円滑化成分(例えば、グルコース酸化酵素、光線感作物質等)は、シグナル増幅ペアの第一のメンバー(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、保護基により保護されたハプテン、酵素阻害剤とのチオエーテル結合により不活性化された酵素等)へと導きそれと反応する酸化剤(例えば、過酸化水素(H)、一重項酸素等)を生成する。
【0124】
[0138]ある特定の他の事例において、1つ又は複数の分析物の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、或いは1つ又は複数の分析物の発現レベルを検出するための第一の活性化状態非依存性抗体は、活性化状態非依存性抗体とコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドリンカーと、円滑化成分とコンジュゲートした相補的オリゴヌクレオチドリンカーとの間のハイブリダイゼーションを介して円滑化成分で間接的に標識される。オリゴヌクレオチドリンカーは、本技術分野でよく知られた方法を用いて円滑化成分又は活性化状態非依存性抗体と結合することができる。一部の実施形態において、円滑化成分とコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドリンカーは、活性化状態非依存性抗体とコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドリンカーに対し100%の相補性を有する。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカーペアは、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下のハイブリダイゼーションにおいて、少なくとも1、2、3、4、5、6以上のミスマッチ領域を有する。当業者であれば、異なる分析物に特異的な活性化状態非依存性抗体同士が、同一オリゴヌクレオチドリンカーとコンジュゲートしていても、異なるオリゴヌクレオチドリンカーとコンジュゲートしていてもよいことを理解するであろう。
【0125】
[0139]円滑化成分又は活性化状態非依存性抗体とコンジュゲートするオリゴヌクレオチドリンカーの長さは変動し得る。一般に、リンカー配列は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75又は100ヌクレオチドの長さとなることができる。通常、カップリングのために無作為核酸配列が生成される。非限定的な例として、オリゴヌクレオチドリンカーのライブラリーは、3個の別個の近接ドメインである、スペーサードメイン、シグネチャードメイン及びコンジュゲーションドメインを有するよう設計することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドリンカーは、コンジュゲートする円滑化成分又は活性化状態非依存性抗体の機能を損なうことのない効率的なカップリングのために設計される。
【0126】
[0140]オリゴヌクレオチドリンカー配列は、様々なアッセイ条件下におけるあらゆる二次構造形成を妨げる又は最小化するように設計することができる。融解温度は通常、アッセイ手順全体においてそれらが関与できるようリンカー内のセグメント毎に慎重にモニタリングされる。一般に、リンカー配列のセグメントの融解温度範囲は、1〜10℃の間である。規定のイオン濃度下における融解温度、二次構造及びヘアピン構造を決定するためのコンピュータアルゴリズム(例えば、OLIGO 6.0)を用いて、各リンカー内の3種の異なるドメインそれぞれを解析することができる。その構造特性評価及び他のコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドリンカー配列との比較性に関して、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において相補的オリゴヌクレオチドリンカーとハイブリダイズするか否かに関して、組み合わせ配列全体を解析することもできる。
【0127】
[0141]オリゴヌクレオチドリンカーのスペーサー領域は、コンジュゲーションドメインのオリゴヌクレオチド架橋部位からの適切な分離を可能にする。コンジュゲーションドメインは、相補的オリゴヌクレオチドリンカー配列で標識された分子をコンジュゲーションドメインに核酸ハイブリダイゼーションを介して連結するために機能する。核酸介在性ハイブリダイゼーションは、抗体−分析物(即ち、抗原)複合体形成の前又は後のいずれかで行うことができ、この構成はより柔軟なアッセイ形式を可能にする。多くの直接的な抗体コンジュゲーション方法とは異なり、相対的に短いオリゴヌクレオチドと抗体又は他の分子との連結は、その標的分析物に対する抗体の特異的親和性における、或いはコンジュゲート分子の機能における影響が最小である。
【0128】
[0142]一部の実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカーのシグネチャー配列ドメインは、複合体マルチプレックスタンパク質アッセイに用いることができる。複数の抗体は、異なるシグネチャー配列を有するオリゴヌクレオチドリンカーとコンジュゲートすることができる。マルチプレックスイムノアッセイにおいて、適切なプローブで標識したレポーターオリゴヌクレオチド配列を用いて、マルチプレックスアッセイ形式における抗体及びその抗原の間の交差反応性を検出することができる。
【0129】
[0143]オリゴヌクレオチドリンカーは、数種類の異なる方法を用いて抗体又は他の分子とコンジュゲートすることができる。例えば、オリゴヌクレオチドリンカーは、5’又は3’末端のいずれかにチオール基を備えるよう合成することができる。チオール基は、還元剤(例えば、TCEP−HCl)を用いて脱保護することができ、その結果得られるリンカーは、脱塩スピンカラムを用いることによって精製することができる。その結果得られる脱保護されたオリゴヌクレオチドリンカーは、SMCC等のヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体又は他の種類のタンパク質の一級アミンとコンジュゲートすることができる。或いは、オリゴヌクレオチドにおける5’−リン酸基を水溶性カルボジイミドEDCで処理してリン酸エステルを生成し、その後、アミン含有分子と結合することができる。特定の事例において、3’−リボース残基におけるジオールは、アルデヒド基へと酸化され、次に還元的アミノ化を用いて抗体又は他の種類のタンパク質のアミン基とコンジュゲートすることができる。ある特定の他の事例において、オリゴヌクレオチドリンカーは、3’又は5’末端をビオチン修飾して合成し、ストレプトアビジン標識分子とコンジュゲートすることができる。
【0130】
[0144]オリゴヌクレオチドリンカーは、Usmanら、J.Am.Chem.Soc.、109:7845(1987);Scaringeら、Nucl.Acids Res.、18:5433(1990);Wincottら、Nucl.Acids Res.、23:2677〜2684(1995);及びWincottら、Methods Mol.Bio.、74:59(1997)に記載されている技法等の本技術分野で公知の様々な技法のいずれかを用いて合成することができる。一般に、オリゴヌクレオチドの合成は、5’末端におけるジメトキシトリチル及び3’末端におけるホスホラミダイト等の通常の核酸保護及びカップリング基を利用する。オリゴヌクレオチド合成のための適切な試薬、核酸脱保護のための方法及び核酸精製のための方法は、当業者にとって公知のものである。
【0131】
[0145]特定の事例において、1つ又は複数の分析物の活性化レベルを検出するための活性化状態依存性抗体、或いは1つ又は複数の分析物の発現レベルを検出するための第二の活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅ペアの第一のメンバーで直接的に標識される。シグナル増幅ペアメンバーは、本技術分野でよく知られた方法を用いて、活性化状態依存性抗体と結合して活性化レベルを検出することができる、或いは第二の活性化状態非依存性抗体と結合して発現レベルを検出することができる。ある特定の他の事例において、活性化状態依存性抗体又は第二の活性化状態非依存性抗体は、活性化状態依存性抗体又は第二の活性化状態非依存性抗体とコンジュゲートした結合ペアの第一のメンバーと、シグナル増幅ペアの第一のメンバーとコンジュゲートした結合ペアの第二のメンバーとの間の結合を介して、シグナル増幅ペアの第一のメンバーで間接的に標識される。結合ペアメンバー(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)は、本技術分野でよく知られた方法を用いて、シグナル増幅ペアメンバーと又は活性化状態依存性抗体若しくは第二の活性化状態非依存性抗体と結合することができる。シグナル増幅ペアメンバーの例として、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、デヨードナーゼ等のペルオキシダーゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シグナル増幅ペアメンバーの他の例としては、保護基により保護されたハプテン及び酵素阻害剤とのチオエーテル結合により不活性化された酵素が挙げられる。
【0132】
[0146]近接チャネリングの一例において、円滑化成分はグルコース酸化酵素(GO)であり、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)である。GOは、グルコース等の基質と接触すると、酸化剤(即ち、過酸化水素(H))を生成する。HRPが、GOと近接したチャネリング内にある場合、GOにより生成されたHは、HRPへと導かれてそれと複合体を形成し、シグナル増幅ペアの第二のメンバー(例えば、ルミノール若しくはイソルミノール等の化学発光基質、又は、チラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸若しくは4−ヒドロキシフェニル酢酸等の蛍光発生基質)の存在下で増幅シグナルを生成する、HRP−H複合体を形成する。近接アッセイにおいてGO及びHRPを用いる方法は、例えば、Langryら、U.S. Dept. of Energy Report No. UCRL−ID−136797(1999)に記載されている。ビオチン−チラミドが、シグナル増幅ペアの第二のメンバーとして用いられる場合、HRP−H複合体は、チラミドを酸化して求核残基付近で共有結合する反応性チラミドラジカルを生成する。活性化されたチラミドは、直接的に検出されるか、或いは例えば、ストレプトアビジン標識されたフルオロフォア、又は、ストレプトアビジン標識されたペルオキシダーゼ及び発色性試薬の組み合わせ等のシグナル検出試薬の添加により検出される。本発明における使用に適切なフルオロフォアの例として、アレクサフルオル(登録商標)色素(例えば、アレクサフルオル(登録商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(商標);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商標)蛍光(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ストレプトアビジン標識は、本技術分野でよく知られた方法を用いてフルオロフォア又はペルオキシダーゼと直接的又は間接的に結合することができる。本発明における使用に適切な発色性試薬の非限定的な例として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)及び/又はポルフィリノゲンが挙げられる。
【0133】
[0147]近接チャネリングの別の一例において、円滑化成分は光線感作物質であり、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは、ハプテンと特異的結合パートナー(例えば、リガンド、抗体等)との結合を妨げる保護基で保護された複数のハプテンで標識された大分子である。例えば、シグナル増幅ペアメンバーは、保護されたビオチン、クマリン及び/又はフルオレセイン分子で標識されたデキストラン分子となることができる。適切な保護基として、フェノキシ−、アニリノ(analino)−、オレフィン−、チオエーテル−及びセレノエーテル−保護基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の近接アッセイにおける使用に適切な追加的な光線感作物質及び保護されたハプテン分子は、米国特許第5,807,675号に記載されている。光線感作物質は、光により励起されると、酸化剤(即ち、一重項酸素)を生成する。ハプテン分子が、光線感作物質と近接したチャネリング内にある場合、光線感作物質により生成された一重項酸素は、ハプテンの保護基におけるチオエーテルへと導かれてこれと反応し、保護基をハプテンから遊離させつつカルボニル基(ケトン又はアルデヒド)及びスルフィン酸を生じる。次に、無保護ハプテンは、シグナル増幅ペアの第二のメンバー(例えば、検出可能シグナルを生成することのできる特異的結合パートナー)との特異的な結合に利用できる。例えば、ハプテンがビオチンである場合、特異的結合パートナーは、酵素標識されたストレプトアビジンとなることができる。例示的な酵素は、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、HRP等が挙げられる。洗浄して非結合試薬を除去した後、酵素の検出可能(例えば、蛍光、化学発光、発色性等)基質を添加することによって検出可能シグナルを生成して、本技術分野で公知の適切な方法及び器具使用を用いて検出することができる。或いは、検出可能シグナルは、チラミドシグナル増幅及び活性化チラミドを用いて増幅することができ、直接的に検出されるか、上述の通りシグナル検出試薬の添加により検出される。
【0134】
[0148]近接チャネリングの更にまた別の一例において、円滑化成分は光線感作物質であり、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは酵素−阻害剤複合体である。酵素及び阻害剤(例えば、ホスホン酸標識したデキストラン)は、切断可能なリンカー(例えば、チオエーテル)により一体に連結される。光線感作物質は、光により励起されると、酸化剤(即ち、一重項酸素)を生成する。酵素−阻害剤複合体が、光線感作物質と近接したチャネリング内にある場合、光線感作物質により生成された一重項酸素は、切断可能なリンカーへと導かれてそれと反応し、阻害剤を酵素から放出してこれにより酵素を活性化する。酵素基質が添加されて検出可能シグナルを生成する、或いは増幅試薬が添加されて増幅シグナルを生成する。
【0135】
[0149]近接チャネリングの更に別の一例において、円滑化成分はHRPであり、シグナル増幅ペアの第一のメンバーは保護されたハプテン又は上述の通り酵素−阻害剤複合体であり、保護基は、p−アルコキシフェノールを含む。フェニレンジアミン及びHの添加は、反応性フェニレンジイミンを生成し、これは保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体へと導き、p−アルコキシフェノール保護基と反応して、曝露されたハプテン又は反応性酵素を生じる。増幅シグナルは、上述の通り生成され、検出される(例えば、米国特許第5,532,138号及び第5,445,944号を参照)。
【0136】
[0150]本明細書に記載されている近接アッセイを行うための例示的なプロトコルは、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2009/108637号の実施例4に提示されている。
【0137】
[0151]別の一実施形態において、本発明は、(a)固体担体上に拘束された1又は複数の捕捉抗体の希釈系列と、(b)1又は複数の検出抗体(例えば、活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体の組み合わせ及び/又は発現レベルを検出するための第一及び第二の活性化状態非依存性抗体の組み合わせ)を含む、上述の近接アッセイを行うためのキットを提供する。ある事例において、キットは、腫瘍細胞等、細胞の1又は複数のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を検出するキットの使用方法のための説明書を更に含有することができる。キットは、例えば、シグナル増幅ペアの第一及び第二のメンバー、チラミドシグナル増幅試薬、円滑化成分のための基質、洗浄バッファー等の本発明の特定の方法の実施に関する上述の追加的な試薬のいずれかを含有することもできる。
【0138】
VII.抗体作製
[0152]本発明のイムノアッセイに従った、腫瘍細胞におけるシグナル伝達分子の発現及び活性化レベルの解析のための未だ市販されていない抗体の生成及び選択は、数通りの仕方で達成することができる。例えばある仕方において、本技術分野で公知のタンパク質発現及び精製方法を用いた対象ポリペプチド(即ち、抗原)の発現及び/又は精製が行われるが、別の仕方では、本技術分野で公知の固相ペプチド合成方法を用いた対象ポリペプチドの合成が行われる。例えば、Guide to Protein Purification、Murray P.Deutcher編、Meth.Enzymol.、182巻(1990); Solid Phase Peptide Synthesis、Greg B.Fields編、Meth.Enzymol.、289巻(1997);Kisoら、Chem.Pharm.Bull.、38:1192〜99(1990);Mostafaviら、Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids、1:255〜60(1995);及びFujiwaraら、Chem.Pharm.Bull.、44:1326〜31(1996)を参照されたし。続いて、精製又は合成されたポリペプチドは、例えば、マウス又はウサギに注射して、ポリクローナル又はモノクローナル抗体を作製することができる。当業者であれば、例えば、Antibodies, A Laboratory Manual、Harlow and Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)に記載されている通り、多くの手順を抗体作製に利用できることを認識するであろう。当業者であれば、抗体を模倣する(例えば、その機能的結合領域を保持する)結合フラグメント又はFabフラグメントを遺伝情報から様々な手順により調製もできることも理解するであろう。例えば、Antibody Engineering:A Practical Approach、Borrebaeck編、Oxford University Press、Oxford(1995);及びHuseら、J.Immunol.、149:3914〜3920(1992)を参照されたし。
【0139】
[0153]当業者であれば、抗体又は結合フラグメントの作製並びに様々な対象ポリペプチドの親和性及び特異性のスクリーニング及び選択において多くのアプローチを採用できるが、これらのアプローチは、本発明の範囲を変化させないことを認識するであろう。
【0140】
[0154]ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体及びそれらのフラグメントのより詳細な説明並びに抗体精製方法は、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれているPCT国際公開第2010/132723号に記されている。
【0141】
VIII.投与方法
[0155]本発明の方法において、本明細書に記載されている抗癌剤は、本技術分野で公知の任意の簡便な手段により対象に投与される。本発明の方法は、対象における腫瘍、例えばトリプルネガティブ転移性乳腺腫瘍等の乳腺腫瘍の治療のための適切な抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせの選択に用いることができる。本発明の方法は、抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせによる治療に対する腫瘍、例えばトリプルネガティブ転移性乳腺腫瘍等の乳腺腫瘍の反応の予測に用いることもできる。その上、本発明の方法は、抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせによる治療に対する、例えばトリプルネガティブ転移性乳腺腫瘍から得られたトリプルネガティブ腫瘍細胞等の腫瘍細胞の感受性の決定に用いることができる。当業者であれば、本明細書に記載されている抗癌剤が、単独で、或いは従来の化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法及び/又は外科手術との併用療法的アプローチの一部として投与できることを理解するであろう。
【0142】
[0156]ある特定の実施形態において、抗癌剤は、モノクローナル抗体又はチロシンキナーゼ阻害剤等の抗シグナリング剤(即ち、細胞分裂阻害薬);抗増殖剤;化学療法剤(即ち、細胞傷害性薬物);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞等の異常細胞の制御されない増殖を低減又は抑止する能力を有するその他の化合物を含む。一部の実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせた1つ又は複数の抗シグナリング剤、抗増殖剤及び/又はホルモン療法剤により治療される。例示的なモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤及びワクチンは、上に記載されている。
【0143】
[0157]好ましい実施形態において、抗癌剤は、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセルの組み合わせ(「トリプレット療法」)である。ある事例において、パクリタキセルは、ナノ粒子アルブミン結合(nab)パクリタキセル(アブラキサン(登録商標)又はnabP)である。他の実施形態において、抗癌剤は、イニパリブ(BSI201;4−ヨード−3−ニトロベンズアミド)、NK012(SN−38と遮断共重合体PEG−PGluとの共有結合により構築され、続いて水媒体において両親媒性遮断共重合体が自己集合したSN−38放出ナノデバイス)、グレンバツムマブ・ベドチン(CDX−011又はCR011−vcMMAEとしても知られている;膜貫通糖タンパク質NMBを発現する癌細胞を標的とするモノメチルオーリスタチンE(MMAE)と連結したヒトモノクローナル抗体グレンバツムマブ(CR011))、又はそれらの組み合わせを含む。特定の一実施形態において、抗癌剤は、イニパリブ(PARP阻害剤)、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))及びカルボプラチンの組み合わせである。
【0144】
[0158]一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗癌剤は、従来の免疫療法剤と併せて同時投与することができ、免疫療法剤としては、免疫賦活薬(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette−Guerin)(BCG)、レバミソール、インターロイキン−2、アルファ−インターフェロン等)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体−カリチアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体−シュードモナス外毒素コンジュゲート等)及び放射免疫療法(例えば、111In、90Y又は131Iとコンジュゲートした抗CD20モノクローナル抗体等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
[0159]抗癌剤は、必要に応じて適切な医薬的賦形剤と併せて投与することができ、許容できる投与様式のいずれかを介して実施することができる。よって、投与は、例えば、経口、口腔、舌下、歯肉、口蓋、静脈内、局所的、皮下、経皮的(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内(intra−arteriole)、皮内、脳室内又は心室内(intraventricular)、頭蓋内、腹腔内、膀胱内、くも膜下腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、腟内又は吸入によるものとなることができる。「同時投与」とは、抗癌剤が、第二の薬物(例えば、別の抗癌剤、抗癌剤療法に関連する副作用の低減に有用な薬物、放射線療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤等)の投与と同時、直前又は直後に投与されることを意味する。
【0146】
[0160]治療上有効量の抗癌剤は、繰り返し、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8以上の回数で投与することができる、或いは治療上有効量の抗癌剤は、持続点滴により投与することができる。治療上有効量の抗癌剤は、例えば、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルジョン、坐剤、停留浣腸、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、エアロゾル、泡等の固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体剤形の形態を取ることができ、好ましくは、正確な投薬量の単純投与に適切な単位剤形である。
【0147】
[0161]本明細書において、用語「単位剤形」は、各単位が、適切な医薬的賦形剤との関連において所望の作用発現(onset)、耐容性及び/又は治療効果を生じるよう計算された所定量の抗癌剤を含有する、ヒト対象その他の哺乳類のための単位投薬量として適切な物理的に個別の単位(例えば、アンプル)を意味する。その上、より濃縮された剤形を調製し、続いてより希釈された単位剤形をそれから作製することができる。よって、より濃縮された剤形は、実質的に例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍以上を超える抗癌剤の量を含有するであろう。
【0148】
[0162]このような剤形を調製するための方法は、当業者にとって公知のものである(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン(1990)を参照)。剤形は通常、従来の医薬担体又は賦形剤を包含し、他の医薬品、担体、アジュバント、希釈剤、組織浸透賦活薬、溶解剤等を更に包含することができる。適切な賦形剤は、本技術分野でよく知られた方法により特定の剤形及び投与経路の目的に合わせることができる(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、上述を参照)。
【0149】
[0163]適切な賦形剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカーボポール(Carbopol)等のポリアクリル酸、例えば、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。剤形は、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油等の潤滑剤;湿潤剤;乳化剤;懸濁剤;メチル−、エチル−及びプロピル−ヒドロキシ−安息香酸塩(即ち、パラベン)等の保存剤;無機及び有機酸及び塩基等のpH調整剤;甘味剤;並びに香味料を更に包含することができる。剤形は、生物分解性ポリマービーズ、デキストラン及びシクロデキストリン包接錯体を含むこともできる。
【0150】
[0164]経口投与のため、治療上有効用量の薬剤は、錠剤、カプセル、エマルジョン、懸濁液、溶液、シロップ、噴霧剤、トローチ剤、粉末及び徐放製剤の形態となることができる。経口投与のための適切な賦形剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム等を包含する。
【0151】
[0165]一部の実施形態において、治療上有効用量の薬剤は、丸薬、錠剤又はカプセルの形態を取り、よって、剤形は、抗癌剤と共に、次のうちいずれかを含有することができる。ラクトース、スクロース、第二リン酸カルシウム等の希釈液;澱粉又はその誘導体等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;並びに澱粉、アカシアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びそれらの誘導体等の結合剤。抗癌剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体において処理された坐剤に製剤することもできる。
【0152】
[0166]液体剤形は、抗癌剤及び必要に応じて1つ又は複数の医薬的に許容されるアジュバントを、例えば、生理食塩水溶液(例えば、0.9%w/v塩化ナトリウム)、水溶性デキストロース、グリセロール、エタノール等の担体中に溶解又は分散して、例えば、経口、局所的又は静脈内投与のための溶液又は懸濁液を生成することにより調製することができる。抗癌剤は、停留浣腸に製剤することもできる。
【0153】
[0167]局所的投与のため、治療上有効用量の薬剤は、エマルジョン、ローション、ゲル、泡、クリーム、ゼリー、溶液、懸濁液、軟膏及び経皮パッチの形態となることができる。吸入による投与のため、抗癌剤は、乾燥粉末として、或いはネブライザーを介した液状で送達することができる。非経口投与のため、治療上有効用量の薬剤は、無菌注射用溶液及び無菌包装された粉末の形態となることができる。好ましくは、注射用溶液は、約4.5〜約7.5のpHで製剤される。
【0154】
[0168]治療上有効用量の薬剤は、凍結乾燥形態で提供することもできる。このような剤形は、投与前に再構成するためのバッファー、例えば、重炭酸塩バッファーを含むことができる、或いはバッファーは、例えば、水により再構成するために凍結乾燥剤形に包含され得る。凍結乾燥剤形は、適切な血管収縮薬、例えば、エピネフリンを更に含むことができる。凍結乾燥剤形は、再構成された剤形を対象に直ちに投与できるように、必要に応じて再構成のためのバッファーと組み合わせて包装されたシリンジ内に提供することができる。
【0155】
[0169]対象は、定期的な時間間隔でモニタリングして、特定の治療計画の有効性を評価することもできる。例えば、特定のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化レベルは、本明細書に記載されている1つ又は複数の抗癌剤による治療の治療効果に基づき変化し得る。対象は、個別化アプローチにおける特定の薬物又は治療の反応を評価し、効果を理解するためにモニタリングすることができる。更に、当初は特定の抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせに反応していた対象は、これら対象が、獲得薬物抵抗性を発達したことを示しつつ、薬物又は薬物の組み合わせに対し不応性となるであろう。これらの対象は現在の治療法を中断し、本発明の方法に従って代替的な治療法を処方することができる。
【0156】
[0170]ある特定の態様において、本明細書に記載されている方法は、様々な集団における乳癌の予後及び/又は再発の尤度を予測する遺伝子発現マーカーのパネルと併せて用いることができる。これらの遺伝子パネルは、再発を経験しそうにない、従ってアジュバント化学療法から利益を得そうにない個体の同定に有用となり得る。発現パネルは、無病及び全体の生存率成績に悪影響を与えることなくアジュバント化学療法を安全に回避できる個体の同定に用いることができる。適切なシステムとして、Genomic Health,Inc.製の21遺伝子パネルであるオンコタイプ(Oncotype)DX(商標)、;Agendia製の70遺伝子パネルであるママプリント(MammaPrint)(登録商標);及びVeridex製の76遺伝子パネルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
[0171]その上、ある特定の他の態様において、本明細書に記載されている方法は、原発不明癌(CUP)の元来の腫瘍を同定する遺伝子発現マーカーのパネルと併せて用いることができる。これらの遺伝子パネルは、当初乳癌と診断された患者に与えられた治療法と一致する治療法から利益を得るであろう転移性癌患者の同定において有用となり得る。適切なシステムとして、92遺伝子を測定して39種の腫瘍型の起源の原発部位を同定するRT−PCRに基づく発現アッセイであるAviara CancerTYPE IDアッセイ及びマイクロアレイにおいて1600を超える遺伝子の発現を測定し、腫瘍の遺伝子発現「シグネチャー」を15種の公知の組織型の遺伝子発現「シグネチャー」に対し比較するパスワーク(Pathwork)(登録商標)Tissue of Origin Testが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0158】
[0172]次の実施例は、請求されている本発明の説明のために提示されているが、それを限定するためのものではない。
【0159】
[0173]PCT国際公開第2010/132723号の実施例は、全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0160】
実施例1.例示的な近接アッセイスライド形式
[0174]本実施例は、協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)としても知られている本発明の近接アッセイの好ましい一実施形態を説明する。本実施形態の近接アッセイは、循環腫瘍細胞(CTC)及び/又は組織試料(例えば、FNA)における標的タンパク質の発現及び活性化を測定する抗体マイクロアレイに基づくプラットフォームを用いる。非限定的な例として、本実施形態の近接アッセイは、CTC又は腫瘍組織におけるHER1等の1つ又は複数の標的タンパク質のタンパク質発現レベル及び/又は活性化状態の解析に用いることができる。ある事例において、本実施形態の近接アッセイは、CTC−Profiler(Veridex)を用いて、約7.5mlの全血から抗Ep−CAM抗体でコーティングされた磁気粒子により単離されたCTCを利用する。続いて、単離されたCTCは、その後のErbB経路発現及び/又は活性化の免疫解析前に増殖因子(例えば、EGF+ヘレグリン)で刺激することができる。別の事例において、本実施形態の近接アッセイは、例えば、トリプルネガティブ乳癌試料等、新鮮凍結転移性生検を包含する腫瘍組織試料を利用する。
【0161】
[0175]特定の事例において、本実施形態の近接アッセイは、スライド形式を用い、複数の検量物質及び対照を包含する。図1は、全及びリン酸化HER1及びHER2レベルを解析するための例示的なスライド形式のアレイ設計を示す。各スライドに16パッドが存在し、各パッドは300スポットを収容できる。16パッドのニトロセルローススライド上にプリントするために接触マイクロアレイプリンタを用いた。各スポットは、系列希釈で3回反復してプリントされた追跡用色素及び特異的捕捉抗体(Ab)又は対照のいずれかを包含する。1mg/ml、0.5mg/ml及び0.25mg/mlの捕捉Abをプリントする。全及びリン酸アッセイの両方において、配向参照として精製IgGをプリントした。BSA−リン酸を試薬対照としてプリントした。分析的キャリブレーション反応を8パッドにおいて行い、内部品質管理反応を2パッドにおいて行う。各スライドは、最大4種の未知患者試料の処理を可能にする。全標的タンパク質又はリン酸化された活性化タンパク質の発現は、対象タンパク質を発現する陽性細胞株から得られた希釈ライセートの検量線の計算に基づく単位である、コンピュータ処理単位(CU)で報告することができる。試料毎に2種の別個のスライドを用いる。一方のスライドは、全血から単離された細胞における標的タンパク質の発現を検出するためのものであり(「全アッセイスライド」)、もう一方は、標的タンパク質活性化の程度を検出するためのリン酸化検出用である(「リン酸アッセイスライド」)。
【0162】
[0176]一実施形態において、患者及び健常対照個体から得られた全血は、EDTAチューブ内に採取される。採血の際の皮膚細胞の混入を妨げるため、本出願人らの手順は、最初に採取された3mLの血液を廃棄する(或いはCTC計数及びCellSearchキットを用いた視覚的な免疫染色のためにCellSaveチューブ内に採取する)ことを規定する。次に、2本の追加的なEDTAチューブを用いて、各チューブ7.5mLの全血を採取する。次に、自動磁気細胞分離装置(Veridex AutoPrep)を用いて各チューブからCTCを単離する。濃縮された試料を組み合わせ、続いて増殖因子で刺激する。次に、活性化された細胞を溶解し、直ちに処理するか、或いはその後の免疫解析のために−80℃で保存する。別の一実施形態において、新鮮凍結転移性生検等の腫瘍組織の細胞を得て、溶解して、細胞抽出物を作製し、続いて直ちに処理するか、或いはその後の免疫解析のために−80℃保存する。
【0163】
[0177]本実施形態の近接アッセイは、細胞ライセートにおけるタンパク質標的を免疫マイクロアレイ表面上の捕捉抗体とインキュベートすることにより開始される。細胞ライセートにおける任意のHER1又は他のRTK若しくはシグナル伝達経路タンパク質は、その対応する捕捉抗体と結合し、その後、2種の追加的な検出用抗体により独自の免疫複合体が形成される。検出用抗体の一方は、グルコース酸化酵素(GO)とコンジュゲートして、グルコース存在下でHを生成する。第二のHRPコンジュゲート検出用抗体が免疫複合体内で近接して結合すると、陽性シグナルが生成される。その後、チラミド介在性のシグナル増幅プロセスが、アッセイの感受性を増強する。タンパク質検出の特異性は、異なるエピトープと3種の特異的なAbとの同時発生的な結合により増強され、感受性の高さは、増幅により単細胞となることができる。図2は、リン酸化HER1を検出するための例示的な近接アッセイの模式図を示す。
【0164】
[0178]本明細書に記載されているマイクロアレイプラットフォームは、マルチプレックス化の利益をもたらす。アッセイを拡大する能力は、利用可能性が限定的な試料における複数の受容体及びシグナリング分子の測定によるハイコンテンツ解析を可能にする。マイクロアレイは、スケーラブル(scalable)であり、臨床上有用な診断アッセイに必要なスループットを達成する可能性を有する。
【0165】
実施例2.トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)におけるEGFR及びVEGFR2発現は、Nab−パクリタキセル(nabP)/カルボプラチン(C)/ベバシズマブ(B)化学療法に対する反応を予測する。
背景
[0179]エストロゲン、プロゲステロン又はヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)受容体の発現を立証しないトリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)の患者は、予後不良に直面する(Dent、R.ら、Clin Cancer Res.13(15Pt1):4429〜4434(2007))。この状態には、治療法及び予測マーカーの改善が必要とされる。
【0166】
[0180]B(ベバシズマブ;アバスチン(登録商標))及びC(カルボプラチン)の組み合わせは、TNMBC等、多くの固形腫瘍において有効である。Nab−パクリタキセル(nabP;アブラキサン(登録商標))は、腫瘍により分泌されるアルブミン結合タンパク質であるSPARCを潜在的に標的とする。
【0167】
[0181]タキサン及び白金に基づく化学療法は、転移性乳癌の第一選択治療において有意な活性を有し、組み合わせて投与した場合特に有効である(Perez、E.A.、Oncologist 9(5):518〜527(2004);Perez、E.A.ら、Oncology 69(2):117〜121(2005);O’Shaughnessy J.、Oncologist 10(Suppl 3):20〜29(2005))。
【0168】
[0182]ナノ粒子アルブミン結合(nab)−パクリタキセルは、標準パクリタキセルと比較して有効性及び耐容性を改善した(Gradishar、W.J.ら、J Clin Oncol.23(31):7794〜7803(2005))。
【0169】
[0183]白金剤の中でも、カルボプラチンは、タキサンと組み合わせると、シスプラチンと同様の有効性でより優れた耐容性を示すと考えられており、非血液毒性リスクはより低いが、血液毒性リスクはやや高い(Gainford、C.ら、Proc Am Soc Clin Oncol.19:113、Abstract 439(2000);Perez、E.A.ら、Cancer 88(1):124〜131(2000);Perez、E.A.ら、Oncology 69(2):117〜121(2005))。カルボプラチンをドセタキセルではなくパクリタキセルと組み合わせると、好中球減少症の発生率は低下する(Perez、E.A.ら、Cancer 88(1):124〜131(2000);Perez、E.A.ら、Oncology 69(2):117〜121(2005))。
【0170】
[0184]ベバシズマブは、血管内皮増殖因子(VEGF)を標的として血管新生を阻害するモノクローナル抗体である。タキサンに基づく化学療法にベバシズマブを加えると、転移性乳癌の女性における治療奏効率及び無進行生存(PFS)を有意に改善する(Miller、K.D.ら、N Engl J Med.357(26):2666〜2676(2007);Miles、D.W.ら、Cancer Res.69(24S):495s、Abstract 41(2009);Robert、N.J.ら、J Clin Oncol.27(15 suppl):42s、Abstract 1005(2009))。
【0171】
目的
[0185]本試験は、無処置TNMBCの登録転移性生検(bxs)を用いて、(1)TNMBCにおけるシグナリング経路の発現/活性化を説明し、(2)TNMBCにおけるこれらの発現パターンを反応と相関させた。
【0172】
方法
[0186]治験開始時に得られた新鮮凍結転移性生検を用いて、シグナリング経路タンパク質(例えば、HER1(EGFR)、HER2、HER3、インスリン様増殖因子受容体1(IGF1−R)、c−KIT、c−MET、PI3K、AKT、MAPK及び/又はVEGFR2)の発現及び活性化を評価した。CEER等、近接アッセイプラットフォームを用いて、網羅的経路タンパク質発現及び活性化を決定した。log順位検定を用いて、無進行生存(PFS)と、経路タンパク質のタンパク質発現又は活性化との間の関連性を検査した。本試験に用いた腫瘍組織試料は、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれている、次のClinicalTrials.gov識別子:NCT00479674の進行中の臨床試験、表題「「トリプルネガティブ」(エストロゲン、プロゲステロン又はHer2受容体の発現を立証しない)転移性乳癌におけるアブラキサン(登録商標)、カルボプラチン及びベバシズマブ[トリプレット療法]の第II相試験」から得た。
【0173】
結果
[0187]11/18(61%)生検において全EGFRが発現したが、3/18(17%)において活性化した。PI3K及びAKTは、それぞれ11/18(61%)及び8/18(44%)患者において過剰発現し、6/18(33%)生検において同時発現した。17種の転移性生検において、より高い全EGFR発現(33wks対22wks、p=0.14)及びより低いVEGFR2発現(33wks対18wks、p=0.16)が見られた。CEERにより全測定を行った。
【0174】
結論
[0188]Nab−パクリタキセル/カルボプラチン/ベバシズマブは、優れた耐容性及びTNMBCの有効な治療法をもたらす。全EGFRの過剰発現及びより低いVEGFR2レベルは、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応の適中率もたらす。リアルタイム転移性生検は、原発性及び転移性腫瘍の間で重要な変化が生じることを示し、これらの変化は、TNMBCの反応の予測マーカーの定義に非常に影響力がある。
【0175】
実施例3.トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)におけるカルボプラチン(C)/ベバシズマブ(B)を含有する治療法に対する反応を予測するための網羅的経路プロファイリング
[0189]背景:TNMBCにおける治療法及び予測マーカーの改善が必要とされる。B(アバスチン)及びC(カルボプラチン)の組み合わせは、TNBC等の多くの固形腫瘍において活性を有する。本試験は、無処置TNMBCのアーカイブ的な原発性及び転移性生検(bxs)を用いて、(1)原発性及びTNMBCにおけるVEGFR2の発現レベルを決定し、(2)TNMBCにおける様々なシグナリング経路タンパク質の発現/活性化を説明し、(3)TNMBCにおけるこれら発現パターンを反応と相関させた。
【0176】
[0190]方法:トリプルネガティブ乳癌コア生検検体を採取し、−80℃で適切に凍結させた。新規イムノアッセイ方法を適用して、1000ng〜5000ngの凍結組織におけるシグナリングタンパク質の発現及び活性化レベルを調査した。CEERプラットフォーム(aka COPIA)は、マルチプレックス型免疫マイクロアレイプラットフォームであり、これは非常に高い分析感度及び特異性をもたらすシグナル生成/増幅のチャネリング現象のための2種の検出用抗体の共局在を必要とする独自の免疫複合体の形成を利用するものである。
【0177】
[0191]結果:本試験は、各検体(およそ3〜1000腫瘍細胞/1000ng〜5000ng細胞ライセート)においてCK値の変動する度合いを同定した。これらのTNMBCにおいて、HER2発現レベルは、低から中程度(0〜2+、IHC当量)の範囲に及び、18試料中17試料において認められたことが判明した。18試料中1試料は、実質的に高レベルのHER2発現(IHC 3+レベル)を有していた。検体の50%はHER2リン酸化を示さなかったが、残りの50%は変動レベルの活性化HER2を示した。これらの試料におけるHER1、HER3、IGF1−R、c−KIT、c−MET、PI3K、Shc、VEGFR2及びAKTの発現/活性化の有病率も解析した。
【0178】
[0192]結論:リアルタイム転移性生検は、原発性及び転移性腫瘍の間で重要な変化が生じ、これらの変化が反応予測マーカーの定義において非常に影響力があることを示す。全及び活性化EGFRの過剰発現並びにより低いVEGFR2レベルは、TNMBCにおけるトリプレット療法(B+C+Nab−パクリタキセル)に対する反応の適中率をもたらす。疾病プロファイルは変動することが多いため、伝達経路タンパク質の変化のモニタリングは、治療法調整に有用となるであろう。
【0179】
実施例4.乳癌患者における複数のシグナル経路タンパク質の機能プロファイリング
要約
[0193]新規又は獲得抵抗性の機構の一つに、アミノ末端細胞外ドメインを欠いた様々な形態の切断型HER2/ERBB2受容体(「t−ERBB2」)の発現がある。t−ERBB2アイソフォームの非限定的な例として、p110、p95HER2(p95m)、p95c及びp95nが挙げられる。原発性及び転移性腫瘍におけるトランス活性化潜在能力を有する様々な形態のHER2受容体及び他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)をプロファイリングするための方法は、変化する疾病発生における有用な洞察をもたらし得る。本実施例は、様々なER/PR/HER2状態の230乳癌におけるその発現及び活性化に関するシグナル伝達経路タンパク質パネルのプロファイリングの成功を説明する。特に、本明細書に記載されている新規近接介在性免疫マイクロアレイ方法を用いて、ヒト乳腺腫瘍試料における全及びリン酸化t−ERBB2の化学種のレベルを調査した。本実施例は、t−ERBB2アイソフォームが、強いERBB2陽性腫瘍(31試料のうち16試料、52%)において検出され、38試料中10試料において(32%)リン酸化されたことを示す。
【0180】
序文
[0194]トラスツズマブ抵抗性に関する数種の機構が報告されている。第一に、他の機構の中でも特に、他のRTK(IGF1−R等)の活性化及び切断型HER2の蓄積は頻繁に報告されている。特に、p95HER2として集合的に知られているHER2のアミノ末端切断型のカルボキシル末端フラグメントは、HER2発現乳癌細胞株及び腫瘍において頻繁に発見される。様々なシグナル伝達経路及びフィードバックループ間のクロストークは、特定の治療圧力又は経路耽溺下で腫瘍のエスケープ機構をもたらし、「経路ネットワーク解析」を行うための網羅的診断ツールを必要とする。数個の選択されたバイオマーカーに対し行われた現在のIHC/FISHに基づく技術により得られた臨床情報に基づく治療決定は、異種疾病を急速に発展している患者の治療において有効ではないであろう。本実施例は、検出用抗体の異なる配置が、切断型標的(例えば、p95HER2)のその全長対応物(例えば、HER2)からの差次的な検出を可能にすることを立証する。特に、本実施例は、転移性腫瘍の急速凍結組織及び穿刺吸引液両方のヒト試料における全及びリン酸化t−ERBB2化学種のレベルを定量化するための、新規の高度感受性及び特異的抗体マイクロアレイ形式の協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)の使用を説明する。本実施例は、HER2、p95HER2、HER1、HER3及びIGF1R並びに下流シグナル伝達タンパク質のPI3K、Shc及びc−METの機能状態(発現及び活性化)の解析を更に立証する。
【0181】
方法
[0195]マルチプレックス型マイクロアレイプリント:非接触プリンタ(Nanoplotter、GeSiM)を用いて、捕捉抗体(Ab)をニトロセルロースコーティングガラススライド(ONCYTE(登録商標)、Grace Bio−Labs)上にプリントした。スポット直径はおよそ175μmであり、プリントしたスライドを乾燥チャンバー内にて4℃で維持した。各スポットは、追跡用色素及び特異的捕捉Abを包含した。およそ500pLの捕捉Abを、1mg/mL、0.5mg/mL及び0.25mg/mLの系列希釈濃度で3回反復してプリントした。陰性対照として精製マウスIgGをプリントした。各スライドは、各スライド実験実施における試料の正確な定量化のための検量線作成のための細胞株対照を含有する。各アレイスライドから得られたデータの品質を保証するため、各スライドにおいて内部品質管理試料の実験を実施した。
【0182】
[0196]抗体コンジュゲーション及び精製:標的特異的Ab及び対応する検出用酵素を二官能性架橋剤、サクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(SMCC)により活性化し、デキストランと結合して、抗体−デキストラン−酵素ポリマーコンジュゲートを作製した。分子ふるいカラムを用いたHPLCによりコンジュゲートを精製した。競合ELISAにより精製コンジュゲートにおけるAb活性を検出し、各検出用酵素に特異的な機能アッセイにより酵素活性を検出した。
【0183】
[0197]協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER):図3に表す通り、組織ライセート中に存在する標的タンパク質は、ニトロセルロース表面上にプリントされた特異的捕捉抗体と結合し、非結合非標的タンパク質をスライドから除去する。捕捉された標的タンパク質における別のエピトープに対するグルコース酸化酵素(GO)とコンジュゲートした一方の検出用抗体と、標的タンパク質におけるリン酸化部位又は別の非重複エピトープに特異的なHRPとコンジュゲートした他方の検出用抗体との間の酵素による相互作用は、シグナル生成及びその後のチラミド介在性シグナル増幅を生じる。特に、免疫マイクロアレイスライドをTBST(50mM Tris/150mM NaCl/0.1%Tween−20、pH7.2〜7.4)で2回リンスし、80μLのWhatmanブロッキングバッファーで1時間RTにてブロッキングし、次に、TBSTで2回洗浄した。80μLの希釈バッファー(2%BSA/0.1%TritonX−100/TBS、pH7.2〜7.4)に系列的に希釈した細胞ライセート対照及び試料をサブアレイに添加し、スライド上の標準を指定し、次に1時間RTにてインキュベートした。インキュベーション後、スライドを4回、各回3分間洗浄した。検出用Abを80μLの反応バッファーに添加し、2時間RTにてインキュベートした。TBSTで洗浄することによって非結合二次検出用Abを除去した後に、50mMグルコース/PBS中の5μg/mlのビオチン−チラミド(400μg/mLエタノール、Perkin Elmer Life Science)を80μL添加し、15分間暗所でインキュベートした。TBSTで4回、各回3分間洗浄することにより、GO−HRPの導くチラミド介在性シグナル増幅プロセスを終了した。2%BSA/0.1%Triton/TBS中の0.5μg/ml(1:4000希釈)ストレプトアビジン(SA)−Alexa647(PBSに溶解、Invitrogen)を40分間添加することにより、ビオチン−チラミドの局所堆積を検出した。インキュベーションを終了したらスライドをTBSTで4回洗浄し、乾燥し、マイクロアレイスキャナーで走査するまで暗所で維持した。
【0184】
[0198]tErbB2(例えば、p95HER2)濃縮:ErbB2の細胞外ドメイン(ECD)に特異的な磁気標識抗体を用いて全長p185−ErbB2受容体を細胞ライセートから除去した。その結果得られたp185−ErbB2除去細胞ライセートは、ECDを欠くt−ERBB2受容体タンパク質を含有し、その後に解析を行ってt−ERBB2発現及び活性化レベルを定量化した。
【0185】
[0199]臨床試料:ILSBioから急速凍結乳癌組織を購入した。全患者は、第II又はIII期腺管癌のコーカサス人種であった。ErbB2−IHC状態は全試料に利用できる。急速凍結組織試料を100μLの溶解バッファーに溶解した。溶解した試料を氷上で30分間維持し、遠心分離した。上清のタンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)により決定し、その後の解析の前にその結果得られたライセートを−80℃で保存した。全身性治療法を開始しようとしている進行性の測定可能な転移第IIIB期又は第IV期乳癌患者からFNA試料を採取した。患者は、組織学的又は細胞学的に確認された浸潤性乳癌であった。G23ゲージ針を用いてFNA試料を採取した。溶解バッファーを含有する採取バイアル内にFNA試料を直ちに注射し、その後の解析のために一晩輸送した。
【0186】
[0200]IP−ウエスタンブロッティング:細胞ライセートを、ERBB2のICDに対する抗体とコンジュゲートした磁気ビーズと共に一晩振盪器にて4℃でインキュベートした。免疫磁気により濃縮したライセートをβ−メルカプトエタノールを含有する試料バッファー中に再懸濁し、5分間煮沸し、RTへと冷却し、NuPage(Invitrogen)4〜12%ゲルにローディングした。泳動が終了したら、分離したタンパク質をニトロセルロースメンブレンへと転写し、続いて洗浄し、5%ミルクブロット(blotto)でブロッキングし、1次Ab、続いて2次Abとインキュベートし、その後、NBT/BCIPを用いて検出プロセスを行った。
【0187】
[0201]CEERデータ解析:各スライドを3種の光電子増倍管(PMT)ゲイン(gain)設定で走査して、有効ダイナミックレンジを増加させた。3回反復してプリントした反復スポットのバックグラウンド補正したシグナル強度を平均化した。各試薬ブランクの相対蛍光値を各試料から差し引いた。数種の品質基準を用いて、スポットフットプリントの制限、スポット反復の変動係数、パッド全体のバックグラウンド及び試薬ブランクの強度を包含する更なる解析から得られたデータにフィルターをかけた。アッセイ毎に、BT474細胞から調製された系列的に希釈した細胞ライセートから検量線を作成した。捕捉抗体濃度及びPMTの関数として生じる5種のパラメータ方程式にデータを適合させた。各曲線をlogシグナル強度の関数としてプロットし、相対蛍光単位(RFU)対log濃度として測定し、標準細胞株BT474と参照した。各希釈液及びゲインから得られた個々の予測を単一の最終予測に平均化した。
【0188】
結果
[0202]ヒト細胞及び腫瘍におけるt−ERBB2の発現。ヒト細胞及び腫瘍試料におけるERBB2アイソフォームのレベル及び活性化を評価するため、新規抗体捕捉及び近接ベースの免疫マイクロアレイプラットフォームであるCEERを用いた(図3)。CEERは、標的特異的捕捉抗体及び2種の追加的な検出用抗体の間の免疫複合体形成を必要とする。検出用抗体の一方はグルコース酸化酵素(GO)とコンジュゲートし、他方は西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートする。検出用抗体は、捕捉されたタンパク質における2種の異なるエピトープ(標的発現レベルを決定する)、或いはリン酸化ドメイン及び1種の代替的なエピトープ(標的活性化レベルを決定する)と結合することができる。免疫複合体におけるGOは、グルコース等の基質が供給されると、共局在するHRPへと導かれる過酸化水素(H)を生成し、これにより分析感度を増強する。アッセイ配置は、複数の捕捉/検出用抗体間の免疫複合体形成の成功を必要とするため、プラットフォームは、複数の標的タンパク質における同時解析に必要な特異性を生じる。図4に示す通り、本方法は、BT474細胞株における全及びリン酸化ERBB2を一桁の分析感度で検出することができる。全長p185−ERBB2の除去あり又はなしの、BT474細胞の差次的なERBB2プロファイリング(ERBB2−ECD及びERBB2−ICD捕捉)の比較は、およそ1.2×10ERBB2受容体/細胞のこのERBB2増幅細胞株におよそ4.4%のt−ERBB2(又はほぼ52800tERBB2受容体/細胞)が存在することを示した(図5)。
【0189】
[0203]74名の患者から得られた凍結乳腺腫瘍試料を、免疫組織化学的解析を用いてERBB2レベルに関して点数化し、次にCEERを用いて解析した(表3)。74種の試料のうち、24種はERBB2低/陰性(IHCによるスコア=0〜1)であり、19種は中程度のERBB2発現(スコア=2)を有し、残りの31種は、高発現のERBB2(スコア=3)を有していた。CEER解析により、予想通り、ERBB2低又は陰性腫瘍で、有意なレベルの切断型ERBB2を発現したものはなかった。各試料におけるERBB2及びt−ERBB2並びにリン酸化t−ERBB2のレベル(BT474細胞を参照として、RTK分子/細胞で示す)を表2にまとめる。しかし、10%(19種のうち2種)の中程度ERBB2陽性腫瘍はt−ERBB2を発現し、52%(31種のうち16種)の高度ERBB2陽性腫瘍はt−ERBB2を発現した。更に、t−ERBB2アイソフォームは、中程度ERBB2陽性腫瘍(10%、19試料のうち2種)及び高ERBB2腫瘍(32%、31種のうち10種)の両方においてリン酸化されていた。有意なレベルのtERBB2リン酸化及び中程度レベルのt−ERBB2(20330及び24913)のみを有する試料が存在しており、これは、t−ERBB2が、他のRTKとの相互作用により活性化され得るため可能となり得る。腫瘍CEER−ERBB2プロファイリング及びERBB2のIP−ウエスタン解析の例をそれぞれ図6(表2における下線を引いた試料)及び図7(表2における四角で囲んだ試料)に提示する。その上、8名の乳癌患者の転移性部位から得られたFNAを解析した。ERBB2陽性疾病の3種の試料は、t−ERBB2及びリン酸化t−ERBB2の変動の度合いを示したが(表3)、ERBB2陰性癌から得られた試料は、t−ERBB2発現を示さなかった。拡大したRTKプロファイリングにおいて、8C3−005−006においてIGF1R及びc−MET発現が検出されたが、これは、ERBB2陽性FNA試料におけるより低レベルのt−ERBB2だがより高レベルのpt−ERBB2の原因となり得る。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【0192】
【表3】

【0193】
[0204]図8に示す通り、174種のBCA試料における広範囲の経路タンパク質発現及び活性化を観察した。各マーカーの最も強いシグナルを有する試料を最も暗い色で示す。CEER−HER2は、IHC−HER2状態と高い相関を示した。CEER及びIHC間で不調和なHER2状態は、IP−ウエスタンにより解決し、>98%相関を示した。HER3−Pレベルは、HER3−T及びPI3K活性化と高度の相関を示した。cMETプロファイルもPI3K活性化と強い相関を示した。HER2の非過剰発現だが有意なレベルを有するBCA組織の27%(IHCによる2+のうち12/45)及び21%(IHCによる0/1+のうち11/53)は、発現したHER2受容体の5%を超えるリン酸化を示した。
【0194】
結論
[0205]HER2及びその変種型並びに他のRTKの状態は、一次又は獲得抵抗性のいずれかによりトラスツズマブに反応しないHER2陽性BCA患者の潜在的な機構に関する決定的な情報を提供する。本明細書に記載されているCEER解析を利用して、有効な標的治療法を選択するために、BCA患者をそのシグナル伝達タンパク質に関してプロファイルすることができる。
【0195】
実施例5.トリプルネガティブ転移性乳癌(TNMBC)における治療法に対する反応を予測するための網羅的経路プロファイリング
[0206]TNBCにおける治療法及び予測マーカーの改善が必要とされる。本試験は、B(アバスチン(登録商標)[ベバシズマブ])、C(カルボプラチン)及びnabP(アブラキサン(登録商標))で治療(「トリプレット療法」)しているトリプルネガティブ乳癌患者から得られたコア生検検体を用いて、(1)TNMBCにおける様々なシグナリング経路タンパク質(例えば、VEGFR2、c−KIT、HER1等)の発現及び活性化のレベルを決定し、(2)TNMBCにおけるこれらの発現及び活性化パターンを反応と相関させた。
【0196】
[0207]B(アバスチン(登録商標)[ベバシズマブ])、C(カルボプラチン)及びnabP(アブラキサン(登録商標))による治療の開始前の患者から得られたトリプルネガティブ乳癌コア生検試料(n=17)を採取し、−80℃で適切に凍結した。新規イムノアッセイ方法を適用して、1000ng〜5000ngの凍結組織におけるシグナリングタンパク質の発現及び活性化レベルを調査した。本明細書に記載されている通り、協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)(協調的近接免疫測定法(COPIA)としても知られている)は、チャネリング現象のために2種の検出用抗体の共局在を必要とする独自の免疫複合体の形成を利用して非常に高い分析感度及び特異性を生じるシグナル生成/増幅を達成する、マルチプレックス型免疫マイクロアレイプラットフォームである。図9は、対照T47D乳癌細胞及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と比較したトリプルネガティブ乳癌コア生検試料における、CEERによる機能的経路プロファイリングの一例を提示する。特に、TNMBCにおける次のシグナリング経路タンパク質の発現及び活性化をCEERにより評価した。EGFR(HER1)、HER2、HER3、c−Met、IGF−1R、c−KIT、PI3K、SHC、AKT及びVEGFR2。
【0197】
[0208]無進行生存(PFS)も決定した。マーカー毎に、カットオフ値に基づき試料を「高」及び「低」群に分割した。例えば、カットオフ値は、群サイズを同等化するため中央値又はその近似値を選択することができる(例えば、8=低、9=高)。パラメトリックt検定を用いて、タンパク質発現及び活性化をPFSと相関させる。低(例えば、中央値を下回る)対高(例えば、中央値を上回る)群のPFSを比較した。図10は、マーカー毎の低及び高試料群のPFS間のこのような比較の結果を説明する。特に、図10における表は、低c−KIT又は低VEGFR2発現が、より高レベルの該マーカーと比較して有意により長期のPFS持続期間と関連することを示す(低全c−KITレベルの42.1週間PFS対、高全c−KITレベルの20.7週間PFS;低全VEGFR2レベルの39.9週間PFS対、高全VEGFR2レベルの20.9週間PFS)。図10における表は、低IGF−1R活性化、低c−KIT活性化、低IGF−1R発現及び低HER1活性化がそれぞれ、より高レベルの該マーカーと比較してより長期のPFS持続期間と関連することも示す。その上、図10における表は、高HER1発現が、より低レベルの該マーカーと比較してより長期のPFS持続期間と関連することを示す(高全HER1レベルの36.8週間PFS対、低全HER1レベルの23.4週間PFS)。図11における表は、タンパク質発現及び活性化をPFSと相関させるためのノンパラメトリックウィルコクソン順位和検定を用いた類似の解析を説明する。低c−KIT又はVEGFR2発現は、より高レベルの該マーカーと比較して有意により長期のPFS持続期間と関連することを再度示す。
【0198】
[0209]図12は、c−KIT及びVEGFR2両方の発現レベルの測定が、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応の決定の適中率を増加させることを示す。特に、低c−KIT及びVEGFR2発現レベルの組み合わせ(「どちらも高くない」)が、一方又は両方のマーカーが高い試料(「一方が高い」又は「両方とも高い」)と比較して有意により長期のPFS持続期間と関連することが判明した。
【0199】
[0210]図13は、VEGFR2及びHER1両方の発現レベルの測定が、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応の決定の適中率を増加させることを示す。特に、高HER1及び低VEGFR2発現レベルの組み合わせ(「どちらも悪くない」)は、HER1発現が低い及び/又はVEGFR2発現が高い(「一方が悪い」又は「両方とも悪い」)試料と比較して有意により長期のPFS持続期間と関連することが判明した。
【0200】
[0211]図14は、(A)全VEGFR2、(B)全c−KIT及び(C)全HER1の増加レベルと、PFSの長さにより示されるトリプレット療法に対する反応との間の相関を説明する。特に、より低い全VEGFR2又はc−KITレベルは、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応と関連し、一方、より高い全HER1レベルは、TNMBCにおけるトリプレット療法に対する反応と関連した。
【0201】
[0212]結論として、本実施例は、(1)c−KIT及びIGF−1R両方の活性化(リン酸化)及び全レベルの間に相関が存在し、(2)低VEGFR2又はc−KIT発現レベルが反応を予測し、(3)高EGFR(例えば、白金に基づく治療法に対し反応する筈の)発現レベルは反応と相関するが、高P−EGFRレベルは相関せず、(4)一般に、経路活性化(例えば、P−c−KIT、p−IGF−1R、p−EGFR、p−AKTその他)が低い場合(例えば、高度増殖腫瘍ではない)、患者は、カルボプラチン、Nab−パクリタキセル(Pactitaxel)及びアバスチンのトリプレット療法に対しより高いPFSを有し、(5)併用療法のため、全VEGFR2発現を全c−KIT又はEGFR発現へと加えると、より優れた適中率をもたらすことを立証する。
【0202】
実施例6.腫瘍組織採取及び処理
[0213]腫瘍組織又はFNA試料は、本明細書に記載されている近接アッセイ(例えば、CEER)を用いてシグナル伝達経路を調べるために、癌患者から得ることができる。例えば、経路解析のための試料は、切片を作製し又は凍結FNA手順を行うことにより凍結組織から得ることができる。特定の事例において、その後のプロファイル解析のために凍結検体の組織切片作製を行う。ある特定の他の事例において、臨床環境において患者(及び異種移植片)から試料を得るために、相対的非浸潤性FNA手順を行う。
【0203】
[0214]凍結組織試料は、次の方法により採取することができる。
オプション#1.組織切片採取:
1.試料切断を行うプラスチック秤量ボートをドライアイス上に維持する。
a.材料を冷却するため、かみそりの刃又はミクロトームの刃、細型ピンセット及び予めラベルした試料採取バイアルをドライアイス上に維持すること。
2.凍結ヒト癌組織を−80℃フリーザーから取り出し、試料を直ちにドライアイス上に移す。
3.凍結組織をドライアイス上の秤量(weighting)ボートに置き、かみそりの刃又はミクロトームの刃を用いて凍結組織の小片を切断し(10μm切片×3)、予冷したピンセットを用いて組織を、予冷し予めラベルした試料採取バイアルに移す。
4.蓋を閉め、ドライアイス上に維持する。
5.採取した検体を、先ず二重のビニール袋、次に発泡スチロール(Styrofoam)容器(一次容器)内に適量のドライアイスと共に置く。
a.少なくとも6〜8ポンドのドライアイスを用いること。夏季にはより多量を用いること。
注:適正な量のドライアイスは、輸送会社と協議した後に決定されるであろう。
b.必要な認可及び文書に関して国際輸送プロセスのための輸送会社と協議すること。
c.湿氷(wet ice)又は冷却剤(即ち、Cool Packs)を用いないこと。
6.要求書及び試料リストが箱の中、二重袋の外側に置かれていることを確認する。
7.容器をしっかりと密封し、「凍結組織−解凍不可」のラベルを貼る。
【0204】
オプション#2.凍結組織からのFNA調製:
1.−80℃フリーザーから凍結ヒト癌組織を取り出し、試料バイアルを直ちにドライアイス上に移す。
2.FNA手順の準備が整った試料は、湿氷上に10分間置いて組織を軟化させる必要がある。
3.FNA試料採取は、軟化した凍結組織に23又は25ゲージ針を5〜10回通すことにより行うと良い。残った試料バイアルをドライアイスに戻す。
4.FNA試料採取バイアル蓋をアルコールで拭く。
5.凍結FNA組織は、100μlの「タンパク質後期溶液(protein later solution)」(Prometheus Laboratories;カリフォルニア州サンディエゴ)を含有する採取バイアルへと直接注射することにより採取すると良い。内容物を穏やかに混合することにより、採取した組織材料を分散する。
6.FNA採取バイアルを片手で堅く保持し、高速指タッピング(ほぼ15回)を行って、完全な細胞溶解を確実にする(可能であればボルテックス攪拌10秒間)。
7.採取した検体を、先ず二重のビニール袋、次に発泡スチロール容器(一次容器)にCool Packと共に置く。
a.必要な認可及び文書に関して国際輸送プロセスのための輸送会社と協議すること。
8.要求書及び試料リストが箱の中、二重袋の外側に置かれていることを確認する。
9.容器をしっかりと密封し、「生物検体」のラベルを貼る。
【0205】
実施例7.癌細胞におけるシグナル伝達経路タンパク質の定量化のためのデータ解析
[0215]本実施例は、特定の対象分析物に対し作成された検量線に対する、生物試料(例えば、血液又は腫瘍組織)における1つ又は複数のシグナル伝達タンパク質等の1つ又は複数の分析物の発現及び/又は活性化レベルの定量化を説明する。
【0206】
[0216]一部の実施形態において、各CEERスライドは、3種の光電子増倍管(PMT)ゲイン設定で走査されて、感度を改善し、サチュレーションの影響を低減する。Perkin Elmer ScanArray発現ソフトウェアは、スポット発見及びシグナル定量化に用いられる。各スポットの識別子をGenePix Array List(.gal)ファイルからインポートする。その結果得られたデータセットにスライドにおける各臨床試料の非特定(de−identified)試験特異的な数値を取り込む。
【0207】
[0217]他の実施形態において、3回反復してプリントした反復スポットのバックグラウンド補正したシグナル強度を平均化する。各試薬ブランクの相対蛍光値を各試料から差し引く。数種の品質基準を用いて、スポットフットプリントの制限、スポット反復の変動係数、パッド全体のバックグラウンド及び試薬ブランクの強度等の更なる解析から得られたデータにフィルターをかける。
【0208】
[0218]アッセイ毎に、MD−468(HER1陽性)、SKBr3(HER2陽性)、BT474(HER2及びp95HER2陽性)、HCC827(c−MET及びHER1陽性)、IGFで刺激したT47D(IGF1R陽性)及び/又はHRGで刺激したT47D(HER3陽性)等の細胞株から調製した系列的に希釈した細胞ライセートの複数(例えば、2、3、4、5、6、7種等)の濃度からS字形検量線を作製することができる。各曲線は、シグナル強度対log濃度由来単位、CU(コンピュータ処理単位)の関数としてプロットすることができる。データは、非線形回帰により5種のパラメータ方程式(5PL)と適合させることができ(Ritz、C.及びStreibig、J.C.、J.Statistical Software、12、1〜22(2005))、捕捉抗体の全3種の希釈を同時に適合させることができる。適合は、オープンソースの統計ソフトウェアパッケージであるRを用いて行うことができる(Development Core Team,R:A language and environment for statistical computing.R Foundation for Statistical Computing、オーストリア、ウィーン、ISBN3−900051−07−0、URL http://www.R−project.org.R(2008))。数理モデルのオーバーパラメータ化を回避し、それにより精度を改善するため、4種のパラメータを制約することができる一方、各希釈を個々の屈曲点に対し解くことができる。45、50及び60の各PMTゲイン設定に対しこのプロセスを繰り返すことができる。これは、捕捉抗体の3種の希釈及び3種のPMT走査からアッセイ毎に作成された9種の検量線を生じる。検量線の適合が、0.95未満のRを有し、よってその後予測を改善する場合、アッセイに本来備わる重複性は、1つ又は複数の希釈/走査組み合わせを排除させる。
【0209】
[0219]CU算出(検量線に基づく) − それぞれの検量線(例えば、3種の捕捉抗体希釈及び3種のPMTゲインセット走査)から得られた個々の予測は、単一の最終予測と組み合わせることができる。予測毎に、検量線における点の傾きを算出する。この傾きはx軸におけるlog単位で得られる、即ち、傾きの分母における単位は、logコンピュータ処理単位(CU)である。第二に、予測の加重平均を算出するが、加重は傾きから決定される。特に、加重を合計し、各点は、全傾きで割ったその傾きに等しい加重をなされる。各アッセイは、公知の対照の予測に対し検証することができる。
【0210】
[0220]本明細書に引用されているあらゆる刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照により組み込まれていると特にまた個々に示されているかの如く、参照により本明細書に組み込まれている。理解を明確にするために上述の発明を例示及び実施例により詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正を行ってよいことは、当業者であれば、本発明が教示するところを踏まえつつ容易に理解できるであろう。
【関連出願の相互参照】
【0211】
[0001]本願は、その開示全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれている、2010年1月12日に出願された米国特許仮出願第61/294,433号、2010年4月19日に出願された米国特許仮出願第61/325,624号、2010年4月27日に出願された米国特許仮出願第61/328,602号及び2010年6月4日に出願された米国特許仮出願第61/351,838号に対する優先権を主張するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ腫瘍細胞の感受性を決定するための方法であって、
(a)腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、腫瘍細胞が抗癌剤に対し感受性であることを示す方法。
【請求項2】
抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗癌剤が、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセルの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パクリタキセルが、ナノ粒子アルブミン結合(nab)パクリタキセルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
参照発現レベルが、癌細胞株から作成された検量線から算出される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
検量線が、癌細胞株から調製された複数濃度の系列的に希釈された細胞抽出物から作成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
癌細胞株が、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rを発現する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して中〜高レベルのVEGFR2発現、中〜高レベルのc−KIT発現、低〜中レベルのHER1発現及び/又は中〜高レベルのIGF−1R発現の存在が、腫瘍細胞が抗癌剤に対し抵抗性であることを示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞抽出物におけるVEGFR2及びc−KIT及び/又はHER1の発現レベルを決定するステップを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1、IGF−1R及び/又はAKTの活性化レベルを決定するステップを更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞抽出物における1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化レベルを決定するステップを更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子が、HER2、p95HER2、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、Shc、c−MET、VEGFR1、VEGFR3、受容体二量体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍細胞が乳癌細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍細胞が、腫瘍から得られた循環腫瘍細胞又は穿刺吸引(FNA)細胞である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍細胞が試料から単離される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
試料が、トリプルネガティブ転移性乳癌の対象から得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
試料が、全血、血清、血漿又は腫瘍組織試料である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)の前に腫瘍細胞を抗癌剤と接触させるステップを更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(c)において得られた比較の結果を、利用者に可読形式で提供するステップ(d)を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルが、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの全タンパク質レベルを検出することにより決定される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルが、近接二重検出アッセイにより決定される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
近接二重検出アッセイが、協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗癌剤による治療法に対するトリプルネガティブ乳腺腫瘍の反応を予測するための方法であって、
(a)トリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を溶解して、細胞抽出物を作製するステップと、
(b)細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを決定するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルを、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの参照発現レベルと比較するステップとを含み、
細胞抽出物における参照発現レベルと比較して低レベルのVEGFR2発現、低レベルのc−KIT発現、高レベルのHER1発現及び/又は低レベルのIGF−1R発現の存在が、抗癌剤による治療法に対する反応を予測する方法。
【請求項24】
抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗癌剤が、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、カルボプラチン及びパクリタキセルの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
パクリタキセルが、ナノ粒子アルブミン結合(nab)パクリタキセルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
参照発現レベルが、癌細胞株から作成された検量線から算出される、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
検量線が、癌細胞株から調製された複数濃度の系列的に希釈された細胞抽出物から作成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
癌細胞株が、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rを発現する、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
細胞抽出物における中〜高レベルのVEGFR2発現、中〜高レベルのc−KIT発現、低〜中レベルのHER1及び/又は中〜高レベルのIGF−1R発現の存在が、抗癌剤による治療法に対する反応の欠如を予測する、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
細胞抽出物におけるVEGFR2及びc−KIT及び/又はHER1の発現レベルを決定するステップを含む、請求項23〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
細胞抽出物におけるVEGFR2、c−KIT、HER1、IGF−1R及び/又はAKTの活性化レベルを決定するステップを更に含む、請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
細胞抽出物における1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化レベルを決定するステップを更に含む、請求項23〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つ又は複数の追加的なシグナル伝達分子が、HER2、p95HER2、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、Shc、c−MET、VEGFR1、VEGFR3、受容体二量体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腫瘍細胞が、トリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた循環腫瘍細胞又は穿刺吸引(FNA)細胞である、請求項23〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
腫瘍細胞が試料から単離される、請求項23〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
試料が、トリプルネガティブ転移性乳癌の対象から得られる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
試料が、全血、血清、血漿又は腫瘍組織試料である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
低レベルのVEGFR2発現の存在が、より長期の無進行生存(PFS)持続期間を予測する、請求項23〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
低レベルのc−KIT発現の存在が、より長期のPFS持続期間を予測する、請求項23〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
高レベルのHER1発現の存在が、より長期のPFS持続期間を予測する、請求項23〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
VEGFR2、c−KIT又はHER1単独の発現レベルと比較して、低レベルのc−KIT発現及び/又は高レベルのHER1発現の存在と組み合わせた低レベルのVEGFR2発現の存在が、より長期のPFS持続期間を予測する、請求項23〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(a)の前にトリプルネガティブ乳腺腫瘍から得られた腫瘍細胞を抗癌剤とインキュベートするステップを更に含む、請求項23〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(c)において得られた比較の結果を、利用者に可読形式で提供するステップ(d)を更に含む、請求項23〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルが、VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの全タンパク質レベルを検出することにより決定される、請求項23〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
VEGFR2、c−KIT、HER1及び/又はIGF−1Rの発現レベルが、近接二重検出アッセイにより決定される、請求項23〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
近接二重検出アッセイが、協調的酵素増強反応免疫測定法(CEER)である、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−517461(P2013−517461A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548241(P2012−548241)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2011/021026
【国際公開番号】WO2011/088149
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】