説明

治療用または診断用試薬を送達するためのターゲティングタンパク質

本発明は、治療用物質または診断用物質に結合する血管新生阻害剤を含む組成物に関する。具体的態様において、この組成物は治療用または診断用物質に結合する血管新生阻害物質をコードする融合遺伝子または融合遺伝子産物である。特定の態様において、この組成物は癌などの血管新生関連性疾患を治療する方法として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年5月6日に出願されて全体が参照として本明細書に組み入れられる米国特許仮出願第60/383,063号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、細胞生物学、分子生物学、癌生物学および医学の分野を対象とする。特に、本発明は治療用または診断用物質に結合する血管新生阻害物質を含む組成物、ならびにこのような組成物の治療学および癌治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
証拠の蓄積により、加齢黄斑変性、アテローム性動脈硬化症、慢性関節リウマチから癌までの多くの疾患が血管新生、即ち、新しい血管の形成に関連することが示されている(Folkman, 2001)。これらの血管新生依存性疾患の中でも、癌は最も標的とされる疾患である(Brem, 1999;FerraraおよびAlitalo, 1999;KeshetおよびBen-Sasson、1999;CarmelietおよびJain、2000)。抗血管形成の原理に基づいて、数十の新しい治療試薬の開発が進められている。Folkmanによる独創的な出版物によると、原発部位および転移部位での腫瘍の増殖は腫瘍に栄養分および酸素を供給する血管新生に頼っている(Folkman、1971)。その後の30年間に、血管新生が悪性の表現型において極めて重要な役割を担うということが説得力を増してきている。新しい血管の形成は、多くの腫瘍において重要な診断要因であると同時に治療ターゲットであることが実証されている。
【0004】
腫瘍の増殖および転移は血管新生の程度と密接に関連するという理解に後押しされて、研究機関および製薬企業は血管新生を阻害することによって腫瘍への血液供給を遮断する方法を開発している(Brem, 1999;FerraraおよびAlitalo, 1999;KeshetおよびBen-Sasson, 1999;Kerbel, 2001;Risau, 1998;KlohsおよびHamby,1999;Rosen, 2000;BurkeおよびDeNardo, 2001;TarabolettiおよびMargosio, 2001;Glaspy, 2002)。臨床試験において検討中の実験薬の科学的な根拠およびスコアの裏付けにも関わらず、前臨床動物実験で示されたずば抜けた抗癌作用を考えると、研究者らは今後、これらの試験から極めて明確な結果を導かなければならない。
【0005】
最も追跡された二つの臨床試験は二種類の内因性血管新生阻害物質であるエンドスタチンおよびアンギオスタチンを用いた。これらのタンパク質は癌-血管新生特異的であり、正常な血管形成には影響を及ぼさないことが示されている。これらのタンパク質は、動物試験において癌の増殖を阻害して重大な副作用および薬剤耐性を惹起しないことが示されている(Boehmら、1997)。しかし、ヒトの癌臨床試験の結果は前臨床試験から得られた驚異的な結果とは一致しなかった(Thomasら、2003;Herbstら、2002;Ederら、2002)。これらの試験における腫瘍反応性は非常に低い。腫瘍反応性がある場合、腫瘍退行速度は極めて遅い。いくつかのケースでは、患者が25%を超える腫瘍退行を示すまでに1年を超える時間を要した。現在までのところ、これらの血管新生阻害物質を用いた臨床試験において速やかな腫瘍収縮は実証されていない。これらの臨床試験では腫瘍反応性は一般的には示されなかったが、これらの内因性血管新生阻害物質は極めて好ましい安全性プロフィールを示した。
【0006】
動物モデルに見られた腫瘍特異的な血管新生とは対照的に、腫瘍特異的な血管はかなりの長期間をかけて発達している。従って、ヒトの腫瘍における血管はマウス腫瘍の血管よりも成熟している。いくつかの態様において、これらの内因性阻害物質が癌細胞のアポトーシスを引き起こすほど腫瘍への血流を遮断するには長い時間が必要である。これらの血管新生阻害物質は、癌細胞を死滅させるのではなく癌細胞の増殖を阻害することによってその機能を示す。それらの作用のメカニズムは、いわゆる「細胞毒性」ではなく「細胞増殖抑制」である。化学療法薬などの細胞毒性試薬とは対照的に、これらの細胞増殖抑制性血管新生阻害物質は末期腫瘍にしばしば見られる十分に確立された腫瘍血管を効率的に攻撃することはできない。このように、現在までのところ、これらの試薬は登録された患者の大半が末期であり可能な治療法のほとんどが検討し尽くされている臨床試験では、劇的な抗癌作用を示さなかった。
【0007】
本明細書に述べられている相対的に無毒性で、かつ、効果の低い抗血管形成タンパク質とは対照的に、種々の強力な治療用タンパク質またはポリペプチドおよびそれらをコードする核酸を用いて癌を治療する試みが行われていて(必ずしも癌細胞を死滅させる必要はない)、またはそのような用途に関して提案がなされた。これらには、例えば自殺タンパク質、アポトーシス誘導タンパク質、サイトカイン、インターロイキン、TNFファミリータンパク質、およびそれらをコードする核酸が含まれる。具体的な例には、GM-CSF、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-10、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-16、インターロイキン-18、インターロイキン-23、インターロイキン-24、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー13B、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー12、細胞間接着分子-1、リンパ球機能関連抗原-3、共刺激分子B7-1、共刺激分子B7-2、FMS関連チロシンキナーゼ3リガンド、CD40リガンド、表面抗原CD70、T細胞活性化細胞表面糖タンパク質リガンド、共刺激分子OX-40リガンド、TNF関連活性化誘導サイトカイン、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー11、TNF関連活性化誘導サイトカイン、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー11、サイトカインデアミナーゼ、HSV、チミジンキナーゼ、Fasリガンド、カスパーゼ3、TGF-α1、TGF-α2、TRAIL、Bax、Bak、Bik、Bok、Noxa、aBcl-2ファミリータンパク質、グラヌリシン(NKG5)、グランザイムA、グランザイムB、およびパーフォリンが含まれる。
【0008】
例えば、IL2およびインターフェロン-α(Glaspy, 2002)は腎細胞癌および黒色腫の治療に用いられている。しかし、通常、癌患者に顕著な全身毒性が見られるため、用量の増加およびそれらの臨床効果は制限される。IL12には強力かつ幅広い抗癌作用が実証されている(Trinchieri, 2003)。しかし、いくつかの臨床試験において許容できない副作用が発現していて(Leonardら、1997)、それらが抗癌試薬としての将来性を妨げている。
【0009】
インターロイキンなどのサイトカイン、および表1に列記するそれらの治療用タンパク質の全身性の副作用を抑えるために、その他の点ではかなり毒性の強いこれらの治療用タンパク質を腫瘍特異的血管に対してターゲティングするために多くのタンパク質が用いられている。さらに、小分子を腫瘍血管原性血管のターゲティングに特異的なタンパク質に結合させて、腫瘍の画像化にも用いている。これらの方法のいくつかを表1にまとめる。
【0010】
【表1】

【0011】
さらなるターゲティング法は、腫瘍マーカー(B細胞リンパ腫のCD20、乳癌のHer-2/neu、結腸、頭部および頚部のEGFRなど)または腫瘍特異的血管のマーカー(フィブロネクチンのED-Bドメイン、インテグリンαvβ3、VEGFレセプターなど)に特異的な抗体をインターロイキン、サイトカイン、ゲロニン、ジフテリア毒素、ラジオアイソトープなどの治療用試薬に結合させることによってイムノトキシンの調製を行う(Kreitman, 1999)。しかし、ゼバリン(商標)(イブリツモマブチウキセタン)(IDEC Pharmaceuticals; San Diego, CA)およびBaxxar(Corixa; Seattle, Washington)などのごく少数が承認されていることを除いて、イムノトキシン法の大半はまだ臨床的に成功していない。
【0012】
国際公開公報第99/16889号は、異なる活性または相補的活性を持つ第二の分子に結合するアンギオスタチンアミノ酸配列を持つ融合タンパク質について述べている。特定の態様において、この第2の分子はエンドスタチン、ヒトI型インターフェロン、トロンボスポンジン、インターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)および血小板第4因子から選択される。その他の特定の態様において、この融合タンパク質は抗腫瘍治療のために使用される。
【0013】
上記を考慮して、当技術分野の問題を解決して血管新生依存性疾患の治療を念頭に置いた組成物および方法が必要である。
【発明の開示】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明は上記の問題点を解決して、結果として血管新生依存性疾患の診断および治療のための化合物および治療法を提供する。
【0015】
本発明の状況において、血管新生阻害物質は治療用物質または診断用物質と結合する。多くの態様において、血管新生阻害物質は抗血管形成タンパク質またはポリペプチドである。それらが新しい癌血管に親和性であり正常な血管に対しては親和性でないことを考えると、これらのタンパク質およびポリペプチドは疾患状態の細胞および/または組織の周辺に治療用または診断用試薬を送達するためのターゲティングタンパク質として使用することが可能である。
【0016】
血管新生阻害物質に結合する治療用タンパク質/試薬は、単独で使用される血管新生阻害物質または治療用タンパク質/試薬に比べて、著しく高い治療効果を持つ。血管新生阻害物質は血管新生特異的疾患に特異的な血管に会合および/または結合するため、血管新生阻害物質を送達(直接)タンパク質または送達物質として使用することによって治療用試薬が癌細胞および/または癌組織の周辺に運搬される。これらの治療用物質の治療効果は、局所濃度が増大すると亢進する。
【0017】
さらに、血管新生阻害物質は診断用試薬に結合する可能性もある。例えば、それらは緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、ラジオアイソトープ、またはそれらの組み合わせに結合させることができる。これらの血管新生阻害物質-診断用試薬複合体は、患者の診断を容易にする。
【0018】
幅広い態様において、本発明は治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を含む組成物に関連した。本発明のいくつかの好ましい局面は、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質、およびそのような融合タンパク質をコードする核酸に関連した。しかし、その他の態様において、血管新生阻害物質は治療用または診断用物質と化学的に架橋結合することができる。
【0019】
当業者は、本明細書に鑑みて、達成されるべき本発明の目的を斟酌する抗血管形成タンパク質で、現在知られているまたは今後発見される抗血管形成タンパク質が本発明の状況において有用であることを理解する。本発明の状況において用いられる具体的な抗血管形成タンパク質またはポリペプチドについては、本明細書の他の部分でより詳細に考察する。現在好ましいとされるいくつかの具体例として、エンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチン、およびVEGFレセプター2の可溶性部分が含まれる。
【0020】
本発明の状況において有用な治療用物質は、本明細書に鑑みて当業者により十分に理解される。いくつかの場合において、治療用物質は治療用のタンパク質またはポリペプチドである。但し、小分子、化学療法剤、トキシン、放射性化合物、および治療ベネフィットを達成するために本発明において用いることができるその他の任意の剤形の治療用物質も本発明の範囲内である。
【0021】
本明細書の他の部分でより詳細に述べられる通り、本発明の例示的な治療用タンパク質およびポリペプチドには、自殺タンパク質、アポトーシス誘導タンパク質、サイトカイン、インターロイキン、およびTNFファミリータンパク質の類が含まれるが、決してこれらに限定されるものではない。例示的な診断用タンパク質またはペプチドには、例えば緑色蛍光タンパク質およびルシフェラーゼが含まれる。上記は、抗血管形成配列と融合することのできる治療用タンパク質の例に過ぎない。当業者は、その他の治療用および診断用タンパク質が使用できることを認識する。
【0022】
本発明のいくつかの好ましい態様において、血管新生阻害物質は本明細書に述べるような抗血管形成ポリペプチドである。いくつかの好ましい態様は、抗血管形成ポリペプチドとして、エンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチン、または可溶性VEGFレセプター2を含む。本発明のいくつかの好ましい治療用態様は、治療用タンパク質またはポリペプチドとして、例えばインターロイキン-12のようなインターロイキンタンパク質またはポリペプチド、例えばシトシンデアミナーゼのような自殺タンパク質、または例えば天然型もしくは変異型bikタンパク質のようなアポトーシス誘導タンパク質を含む。本発明のいくつかの好ましい診断用態様は、診断用タンパク質またはポリペプチドとして緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼを含む。いくつかの特に好ましい治療用態様は、エンドスタチン/インターロイキン-12、アンギオスタチン/インターロイキン-12、タムスタチン/インターロイキン-12、可溶性VEGFレセプター-2/インターロイキン-12、エンドスタチン/シトシンデアミナーゼ、アンギオスタチン/シトシンデアミナーゼ、タムスタチン/シトシンデアミナーゼ、可溶性VEGFレセプター2/シトシンデアミナーゼ、エンドスタチン/変異型bik、アンギオスタチン/変異型bik、タムスタチン/変異型bik、および可溶性VEGFレセプター2/変異型bikを含む。一方、いくつかの特に好ましい診断用態様には、エンドスタチン/緑色蛍光タンパク質、アンギオスタチン/緑色蛍光タンパク質、タムスタチン/緑色蛍光タンパク質、可溶性VEGFレセプター2/緑色蛍光タンパク質、エンドスタチン/ルシフェラーゼ、アンギオスタチン/ルシフェラーゼ、タムスタチン/ルシフェラーゼ、および可溶性VEGFレセプター2/ルシフェラーゼが含まれる。
【0023】
本発明の最も単純な態様は、一種類の治療用または診断用物質に結合した一種類の血管新生阻害物質に関するが、勿論、より複雑な組成物も本発明に従って構築することができる。例えば、二種類またはそれ以上の血管新生阻害物質が一種類の治療用または診断用物質に結合することが可能であり、一種類の血管新生阻害物質が二種類またはそれ以上の治療用または診断用物質に結合することが可能であり、または二種類もしくはそれ以上の血管新生阻害物質が二種類またはそれ以上の治療用または診断用物質に結合することも可能である。いくつかの場合には、本発明の状況において結合する多数の血管新生阻害物質、治療用物質および/または診断用物質は、同一の、例えば一種類のインターロイキン-12ポリペプチドに結合する二種類のエンドスタチンポリペプチドである。または、本発明の状況において結合する多数の血管新生阻害物質、治療用物質および/または診断用物質は、同一の、例えばインターロイキン-12ポリペプチドおよびシトシンデアミナーゼポリペプチドに結合する一つのエンドスタチンポリペプチドである。当業者は、本明細書の開示に従って本発明のこのような態様を作ることができる。
【0024】
融合タンパク質に関する本発明の態様において、当業者は、一般に融合タンパク質が、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域をコードする核酸配列から発現することを認識するものと考えられる。このような核酸において、抗血管形成ポリペプチド領域をコードする核酸配列は治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域をコードする核酸配列の5'または3'末端のいずれかに位置することができる。さらに、本発明はこれらの融合タンパク質をコードする核酸が発現ベクター内にどのように構築されるかという点に関して制限されない。抗血管形成性核酸および治療用または診断用核酸は、異なる構築工程においてベクター内に構築される可能性がある。または、それらは最初に融合して、その後、発現ベクター内に構築される可能性がある。本発明は、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする核酸にも関する。このような核酸は、ベクターに含まれ、脂質と複合体を形成し、および/または薬学的に許容される賦形剤に含まれることができる。
【0025】
融合タンパク質およびこのような融合タンパク質をコードする核酸を作製する方法に関する本発明のいくつかの具体的な態様は、抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする第1の核酸またはその相補配列を得る工程;治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域をコードする第2の核酸またはその相補配列を得る工程;ならびに第1の核酸および第2の核酸を用いて治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする核酸を作製する工程を含む。これらの方法は、融合タンパク質をコードする核酸について、適切な条件下におけるその融合タンパク質を発現する能力および/または診断もしくは治療活性を調べる工程をさらに含むことができる。このような方法は、その融合タンパク質をコードする核酸を被験体に投与する工程をさらに含むこともできる。
【0026】
融合タンパク質方法の使用に加えて、治療用または診断用タンパク質または小分子試薬は化学的架橋結合試薬を用いて抗血管形成性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに架橋結合させることができる。当業者は、特定のアミノ側鎖に特異的な様々な架橋結合試薬が市販されていることを認識しているものと考えられる。特定の架橋結合試薬の選択は、使用されるタンパク質(または小分子の治療用もしくは診断用物質)に依存すると考えられる。
【0027】
化学的架橋結合方法を用いて、血管新生阻害物質を得る工程、治療用または診断用物質を得る工程、血管新生阻害物質を治療用または診断用物質に化学的に架橋結合させて治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を作製する工程を含む方法を実践することができる。このような方法は、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質の診断または治療活性を検査する工程、および/または治療用もしくは診断用物質に結合した血管新生阻害物質を被験体に投与する工程をさらに含むことができる。例示的態様において、抗血管形成遺伝子産物を発現させて、それを所望の分子(治療用または診断用)と架橋結合させ、架橋結合した産物を精製し、さらにその産物を患者(例えば、治療目的もしくは診断目的、または両者のため)または実験動物(研究目的のため)に投与することができる。
【0028】
本発明のいくつかの局面は、治療用または診断用物質に架橋結合した血管新生阻害物質を含む組成物を用いて細胞を処理する工程を含む方法に関する。細胞は被験体またはもう一つの選択肢として細胞培養物に含まれるものであってもよい。いくつかの態様において、細胞はマウスのような被験体に含まれる。その他の態様において、被験体はヒトである。
【0029】
本発明の好ましい局面は、例えば癌、加齢黄斑変性、アテローム性動脈硬化症、血管線維腫、血管新生緑内障、動静脈奇形、偽関節骨折、関節炎、慢性関節リウマチ、ループス、結合組織、障害、オースラー・ウェーバー症候群、乾癬、角膜移植片血管新生、化膿性肉芽腫、創傷治癒遅延、水晶体後線維増殖、糖尿病性網膜症、強皮症、肉芽増殖、血管腫、トラコーマ、血友病関節、血管癒着、肥厚性瘢痕、多発性硬化症、再狭窄、および肥満などの血管新生依存性疾患を治療または診断する方法に関するが、これらの限定されるものではない。当業者は、本発明の状況において、「血管新生依存性疾患」の定義を理解する。いくつかの特定の態様は、例えば癌が、頭部および頚部の癌、卵巣癌、甲状腺癌、口腔癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、血管腫、肉腫、肺癌、脳の癌、膵癌、肝癌、膀胱癌、消化器癌、白血病、リンパ腫およびミエローマである癌の治療に関するが、これらに限定されるものではない。これらの方法のいくつかの態様は、例えば融合タンパク質などの治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を薬学的に許容される賦形剤に混合して被験体に投与する工程を含む。その他の態様は、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする核酸を被験体に投与する工程を含む。このような場合において、核酸はプラスミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターに含まれる可能性があり、または脂質と会合する可能性がある。さらに、核酸を薬学的に許容される賦形剤に分散することができる。
【0030】
本発明の具体的局面は、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質、または治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする核酸を得る工程、およびその融合タンパク質またはその融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与する工程を含む癌の治療または診断の方法に関する。
【0031】
本発明のその他の具体的局面は、本発明の組成物、融合タンパク質または融合タンパク質をコードする核酸を適切な容器に収容する診断用および/または治療用キットに関する。
【0032】
上記は、以下に示す本発明の詳細な説明がより深く理解されるために本発明の特徴および技術的利点を大まかに概述している。本発明の特許請求の主題を構成する本発明のさらなる特徴および利点については、以下に説明する。当業者は、開示される概念および具体的態様は本発明の同一目的を実施する際のその他の構造物の修正または設計のための根拠として容易に利用できることを認識すべきである。当業者は、このような相当する構築物が添付される特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲を逸脱しないことも認識すべきである。その構成および操作方法の双方に関して本発明の特徴であると考えられる新規の特性ならびにさらなる目的および利点は、添付の図面と合わせて検討される場合、後述の説明からより深く理解されると思われる。但し、各々の図面は専ら例証および説明の目的のために提供されるものであって、本発明を制限するものとして意図されないことは明確に理解されるべきである。
【0033】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と共に扱われる次の説明に対して説明がなされる。
【0034】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いられるように、「一つ(a)」または「一つ(an)」は一つまたは複数を意味することができる。特許請求の範囲で用いられるように、「含む(comprising)」の語句と共に用いられる場合、「一つ(a)」または「一つ(an)」の語句は一つまたは一つよりも多いことを意味することができる。本明細書で用いられるように、「もう一つ(another)」は少なくとも二つまたはそれ以上を意味することができる。
【0035】
本明細書で用いられる「治療上有効」という用語は、疾患に関連するいくつかの症状の改善に必要な化合物の量を示す。例えば、癌の治療において、癌をある程度改善させるまたは癌の症状を緩和する化合物は治療上有効である。例えば、癌の改善は癌細胞および/または癌組織の血管新生の阻害、細胞増殖の阻害もしくは遅延、細胞死の促進、またはそれらの組み合わせである可能性がある。化合物の治療上有効な量は疾患の治癒には必須ではないが、疾患の治療を提供するものである。
【0036】
この出願では、国際公開公報第99/16889号の全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0037】
本発明
癌療法に関する技術分野での使用において有用な組成物および方法を提供するために、本発明者らは腫瘍血管特異的な内因性血管新生阻害物質を利用する。例示的態様において、本発明者らは治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を作製する。いくつかの例示的態様において、治療用または診断用物質に結合する血管新生阻害物質は抗血管形成成分および治療用(または診断用)成分の二成分の融合物である。具体的態様において、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質は二種類のタンパク質成分から構成される融合タンパク質をコードする融合遺伝子である。従って、この融合遺伝子は抗血管形成タンパク質および治療用(または診断用)タンパク質の両者のコード配列を結合することによって作製され、それによって細胞増殖抑制性抗血管形成タンパク質を細胞毒性融合タンパク質に形質転換することができる。さらに、抗血管形成タンパク質は緑色蛍光タンパク質およびルシフェラーゼのような診断用タンパク質と融合させることも可能であり、これらの診断用タンパク質は抗血管形成タンパク質によって腫瘍特有の血管に送達されることができる。代替的な態様において、抗血管形成タンパク質成分および治療用または診断用タンパク質成分は当技術分野において標準的な方法によって化学的に結合される。例示的態様において、融合遺伝子構築物は少なくとも一つの抗血管形成タンパク質をコードする核酸を少なくとも一つの治療用または診断用核酸と融合させることによって作製される。
【0038】
血管新生阻害物質は新たに形成される癌血管に対しては親和性であるが正常な血管に対しては親和性でないことを考えると、これらのタンパク質は毒性を拡大させることなく癌細胞の周辺に治療用試薬を送達するためのターゲティングタンパク質として使用される。これらの血管新生阻害物質に結合する治療用タンパク質/試薬は、単独で使用される血管新生阻害物質または治療用タンパク質/試薬に比べて著しく亢進された癌死滅作用および抗癌作用を持つ。
【0039】
抗血管形成タンパク質
本発明の例示的ターゲティング融合遺伝子産物のような、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質として任意の抗血管形成タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを利用することができる。血管新生阻害物質(抗血管形成化合物とも呼ばれる)は、血管新生を阻害、抑制、停止、遅延、妨害、阻止、抑止、鈍化、逆行、または妨げる物質である。具体的態様において、組織における血管新生は、腫瘍または網膜のように血管新生中の組織に対して有害な影響を与える。
【0040】
例示的態様には、アンギオポエチン-2、アンギオスタチン、アンチトロンビンIII(AT3)、ウロキナーゼのアミノ末端断片、カルレチキュリン、エンドスタチン、VEGFレセプター2(可溶性分画)(膜貫通部分の除去により調製)、VEGFレセプター1(可溶性分画)(膜貫通部分の除去により調製)、インターフェロン-α誘導タンパク質10、プラスミノーゲンの5つのクリングルドメイン、プラスミノーゲンのクリングル-5ドメイン、哺乳動物セリンプロテアーゼ阻害物質、インターフェロン-γ誘導性モノカイン、アンギオスタチンケモカイン融合遺伝子、色素上皮由来因子、MMP-2のC末端ヘモペキシンドメイン、血小板第4因子(CXCL4)、プロリフェリン関連タンパク質、内皮特異的レプセターチロシンキナーゼ、メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害物質、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害物質、メタロプロテイナーゼ-3の組織阻害物質、メタロプロテイナーゼ-4の組織阻害物質、トロポニンI-2(速筋性骨格筋)、トリプトファニル-tRNAシンセターゼのSer94-Gln471断片、トロンボスポンジン、タムスタチン、またはそれらの組み合わせが含まれる。当業者は、当技術分野において周知の方法を用いてNational Center for Biotechnology Informationより提供されるGenBankデータベースに公開されている配列を確認することによって、これらのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの配列、およびそれらをコードする核酸配列の入手方法を認識している。抗血管形成配列の例示的態様には(該当する場合は、それらのGenBank配列を併記)、エンドスタチン(AF333247;配列番号:37);アンギオスタチン(配列番号:38);タムスタチン(AF258351;配列番号:39)、およびトロンボスポンジン(M81339;配列番号:40)が含まれる。
【0041】
これらの任意の抗血管形成核酸、ならびに当技術分野におけるその他の物質または今後同定される物質で本明細書に列記されていない物質は、本明細書に列記されているような、または当技術分野において周知である、または今後同定される可能性のある、治療用および/または診断用タンパク質との融合体として癌または血管新生依存性疾患に対する遺伝子療法試薬の成分として送達することができる。または、癌およびその他の血管新生依存性疾患をターゲットとするタンパク質療法のために、これらの融合核酸によりコードされる融合タンパク質および本明細書に記載されない融合タンパク質を発現させて精製することができる。
【0042】
当業者は、いくつかの態様において、抗血管形成配列が疾患に対する治療法を提供し、および/または疾患に対する診断能を提供することを認識する。
【0043】
治療用/診断用タンパク質
本発明の多くの組成物は、治療用または診断用のタンパク質またはポリペプチド、またはそれらをコードする核酸を含む。このような任意の治療用もしくは診断用のタンパク質もしくはポリペプチド、またはそれらをコードする核酸は、現時点で当業者に既知であるかまたは本出願のファイリング後に発見されるかに関わらず、本発明において使用することができる。
【0044】
当業者は、癌療法を含めて、血管新生依存性疾患の治療に有用である様々な治療用タンパク質またはポリペプチド、およびそれらをコードする核酸を認識している。具体的態様において、このような治療用タンパク質またはポリペプチドは自殺タンパク質、トキシンタンパク質、プロアポトーシスタンパク質、サイトカインタンパク質、および/または抗血管形成タンパク質を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の具体的方法および組成物において、治療用ポリペプチドまたはタンパク質は単独または他の化合物の存在下において細胞死を惹起する「自殺タンパク質」である。このような自殺タンパク質の代表的な例は単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼである。さらなる例には、水疱瘡ウイルスのチミジンキナーゼ、細菌遺伝子のシトシンデアミナーゼ(5-フルオロシトシンを毒性の強い化合物である5-フルオロウラシルに転換する)、p450オキシドレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、β-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-クラタマーゼ、ニトロレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼA、リナマラーゼ(β-グルコシダーゼとも呼ばれる)、大腸菌gpt遺伝子、および大腸菌Deo遺伝子が含まれるが、その他も当技術分野において既知である。いくつかの態様において、自殺タンパク質はプロドラッグを有毒化合物に転換する。本明細書で用いられるように、「プロドラッグ」は本発明の方法において有用な化合物であって、有毒産物、即ち、毒性ないし腫瘍細胞に転換されることのできるあらゆる化合物を意味する。プロドラッグは自殺タンパク質によって有毒産物に転換される。このようなプロドラッグの典型例には、チミジンキナーゼに対するガンシクロビル、アシクロビル、およびFIAU(1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル;オキシドレダクターゼに対するイフォスファミド;VZV-TKに対する6-メトキシプリンアラビノシド;β-グルクロニダーゼに対するドキソルビシン;ニトロレダクターゼに対するCB1954およびニトロフラゾン;ならびにカルボキシペプチダーゼAに対するN-(シアノアセチル)-L-フェニルアラニンまたはN-(3-クロロプロピオニル)-L-フェニルアラニンが含まれる。プロドラッグは、当業者によって容易に投与されることができる。当業者はプロドラッグの投与のための最も適切な用量および経路を容易に決定することができる。具体的態様において、プロドラッグは約1〜20mg/日/kg体重、約1〜50mg/日/kg体重、または約1〜100mg/日/kg体重の用量で投与される。
【0046】
いくつかの態様において、治療用タンパク質またはポリペプチドは、例えばp53もしくはRb、またはこのようなタンパク質もしくはポリペプチドをコードする核酸などの癌抑制物質である。勿論、当業者は様々なこのような癌抑制物質、ならびにそれらおよび/またはそれらをコードする核酸の入手方法を認識している。
【0047】
治療用タンパク質またはポリペプチドのその他の例には、例えばp15、p16、またはp21WAF-1などのプロアポトーシスの治療用タンパク質およびポリペプチドが含まれる。一つの具体的態様には、野生型Bik、または野生型Bikに比べて同等またはより強い活性を持つ変異型Bikであるプロアポトーシスタンパク質またはポリペプチドが含まれる。いくつかの具体的態様のさらなる具体的態様において、Bik変異型は、Thr33、Ser35、またはThr33およびSer35の双方の位置における置換が含まれる。もう一つの具体的態様において、置換はAspによる。2003年4月2日に出願され、全体が参照として本明細書に組み入れられる米国特許仮出願第60/459,901号は、Bik、変異型Bikおよびそれらをコードする核酸配列について記載している。
【0048】
サイトカインおよびそれらをコードする核酸も治療用タンパク質およびポリペプチドとして使用することができる。例には、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子);TNFα(腫瘍壊死因子α);IFNαおよびIFNγなどのインターフェロン;ならびにインターロイキン-1(IL1)、インターロイキン-β(IL-β)、インターロイキン-2(IL2)、インターロイキン-4(IL4)、インターロイキン-5(IL5)、インターロイキン-6(IL6)、インターロイキン-8(IL8)、インターロイキン-10(IL10)、インターロイキン-12(IL12)、インターロイキン-13(IL13)、インターロイキン-14(IL14)、インターロイキン-15(IL15)、インターロイキン-16(IL16)、インターロイキン-18(IL18)、インターロイキン-23(IL23)、インターロイキン-24(IL24)などのインターロイキンが含まれるが、その他の態様は当技術分野において既知である。
【0049】
治療用タンパク質またはポリペプチドの限定的ではなく例示的または包括的なリストには次が含まれる(いくつかの場合には、それらをコードする核酸のGenBankアクセッション番号を併記する):1型単純疱疹ウイルス(変異型KG111)チミジンキナーゼ(配列番号:1;J04327);2型単純疱疹ウイルス(9637株)チミジンキナーゼ(tk)(配列番号:2;M29941);水疱瘡ウイルスチミジンキナーゼ(配列番号:3;M36160);大腸菌シトシンデアミナーゼ(配列番号:4;S56903);p450オキシドレダクターゼ(配列番号:5;D17571);カルボキシペプチダーゼG2(配列番号:6;M12599);β-グルクロニダーゼ(配列番号:7;M15182);ペニシリン-V-アミダーゼ(配列番号:8;M15660);ペニシリン-G-アミダーゼ(配列番号:9;AF161313);β-ラクタマーゼ(配列番号:10;AY029068);ニトロレダクターゼ(配列番号:11;A23284);カルボキシペプチダーゼA(配列番号:12;M27717);リナマラーゼ(配列番号:13;S35175);大腸菌gpt(配列番号:14;X00221);大腸菌Deo(配列番号:15;X03224);p53(配列番号:16;AF307851);Rb(配列番号:17;XM_053409);p15(配列番号:18;U19796);pl6[(配列番号:19;U12818)(配列番号:20;U12819)および(配列番号:21;U12820)];p21WAF-1(配列番号:22;AF497972);GM-CSF(配列番号:23;M10663);TNFα(配列番号:24;AY066019);IFNα(配列番号:25;M34913);IFNα(配列番号:26;J00219);インターフェロンγ;インターフェロンβ;IL1(配列番号:27;M28983);IL-β;IL2(配列番号:28;K02056);IL3(配列番号:29;M14743);IL4(配列番号:30;M23442);IL5;IL6(配列番号:31;M29150);IL7(配列番号:32;J04156);IL8;IL10(配列番号:33;U16720);IL12A(配列番号:34;NM_000882);IL12B(配列番号:35;NM_002187);IL13;IL14;IL15(配列番号:36;U14407);IL16;IL18;IL23;IL24;腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー13B(別名:BlyS、BAFF、THANK);可溶型;腫瘍壊死因子α;腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー12(別名:Apo3L);細胞間接着分子-1;リンパ球機能関連抗原-3;共刺激分子B7-1;共刺激分子B7-2;FMS関連チロシンキナーゼ3リガンド;CD40リガンド:表面抗原CD70;T細胞活性化細胞表面糖タンパクリガンド;共刺激分子OX-40リガンド(旧称:gp34);TNF関連活性化誘導サイトカイン;全体(イソ型1、ODF;RANKL)。腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー11;TNF関連活性化誘導サイトカイン;可溶型(イソ型2、sODF、sRANKL)。腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー11;グラヌリシン(NKG5);グランザイムA;グランザイムBおよびパーフォリン。
【0050】
診断用タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(M62653;配列番号:41)、ルシフェラーゼ(配列番号:42)、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
本発明の具体的態様において、治療用または診断用タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸セグメントは、非ウイルス性ベクター、ウイルス性ベクター、またはその組み合わせのようなベクターに含まれる。ウイルス性ベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはアデノ関連ウイルスベクターであることができる。非ウイルス性ベクターはプラスミドまたはリポソームであることができる。核酸セグメントは薬学的組成物に含まれることもできる。
【0052】
治療用または診断用融合核酸の任意の組み合わせは、本明細書に列記されるまたは当技術分野において既知の抗血管形成遺伝子産物と共に一つの成分として癌または血管新生依存性疾患に対して使用するために遺伝子療法試薬として投与することができる。または、癌およびその他の血管新生依存性疾患をターゲットとするタンパク質療法のために、これらの融合遺伝子にコードされる融合タンパク質を発現および精製することができる。
【0053】
当業者は、治療用配列は診断用配列として使用することができ、その逆も可能であることを認識している。その他の態様において、診断用物質に結合した血管新生阻害物質は治療用物質に結合した血管新生阻害物質に先立って使用される。
【0054】
一般的な態様
本発明は、ターゲティング抗血管形成融合ポリペプチドおよび/またはそれらをコードする核酸、ならびにそれらの使用に関する方法に関する。従って、例示的態様において、本発明者らはエンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチンなどのような内因性血管新生阻害物質は、癌を含む血管新生依存性疾患の特徴である新しい血管形成を特異的に標的とすることができる。任意の癌が本発明に従って治療または予防することが可能であるが、いくつかの例として、頭部および頚部の癌、卵巣癌、甲状腺癌、口腔癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、血管腫、肉腫、肺癌、脳の癌、膵癌、肝癌、膀胱癌、消化器癌、白血病、リンパ腫またはミエローマが含まれる。
【0055】
特に、これらの抗血管形成タンパク質は治療用または診断用タンパク質と融合させて、この融合タンパク質を病的血管新生部位周辺に送達するための案内ツールとして用いることができる。融合遺伝子構築物によってコードされるこれらの融合タンパク質は、抗血管形成タンパク質および治療用タンパク質の両者の機能を組み合わせることによって治療効果を高めた。さらに、抗血管形成タンパク質によって付与されるターゲティング特性は融合タンパク質を疾患部位にターゲティングすることによって治療用タンパク質の全身毒性作用を最小限とすることができる。
【0056】
具体的態様において、本発明は哺乳動物の癌を治療するための抗血管形成性ターゲティング融合タンパク質に関する。例えば、ヒトの卵巣癌、膵癌、乳癌、前立腺癌およびその他の癌は、本明細書に述べられる組成物または本明細書に述べられる類似の手順によって当業者に教示される組成物を用いて治療することができる。いくつかの態様において、その組成物は血管新生の阻害、腫瘍の増殖および発生の抑制、またはそれらの組み合わせのために、例えばウイルス性または非ウイルス性の送達系によって適切なレシピエント動物に送達される。
【0057】
例示的抗血管形成ターゲティング融合タンパク質が作製された。本発明の好ましい態様におけるこれらの融合物は血管新生を選択的に阻害して、細胞増殖を阻害し、癌細胞の増殖を阻害し、またはそれらの組み合わせを阻害する。本明細書の内容に従って当業者はその他の例示的抗血管形成ターゲティング融合タンパク質を作製することができる。
【0058】
本発明のいくつかの態様において、抗血管形成ターゲティング融合ポリペプチドを患者に投与する工程を含む、患者において細胞の増殖を阻止する方法がある。具体的態様において、このポリペプチドはリポソームとして投与され、しかも/またはこのポリペプチドはタンパク質形質導入ドメインをさらに含む(Schwarzeら、1999)。いくつかの態様において、抗血管形成ターゲティング融合タンパク質はポリヌクレオチドとして投与され、このポリヌクレオチドは特定部位の突然変異誘発によって作製可能であるなど、アミノ酸レベルでの修飾に影響を及ぼす変化を含む。修飾された抗血管形成ターゲティング融合ポリヌクレオチドは、プラスミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、リポソーム、またはそれらの組み合わせなどのベクターとして投与することができる。
【0059】
細胞を抗血管形成ターゲティング融合ポリペプチドと接触させる工程を含む細胞処理の方法も本発明の態様である。具体的態様において、細胞はヒト細胞であり、細胞は動物体内に含まれ、および/または動物はヒトである。
【0060】
ターゲティング融合物の作製
本発明のキメラタンパク質は化学的合成方法または二つの分子間の化学的架橋結合によって作製することができるが、それらは適切な宿主細胞内での融合ポリヌクレオチドの発現を司る調節塩基配列の制御下において抗血管形成分子のコード配列と治療用または診断用分子のコード配列の融合によって作製されることが好ましい。好ましい態様において、キメラタンパク質の各成分は抗血管形成分子および治療用または診断用分子であるそれぞれの部分に対して機能的活性を持つ。
【0061】
二つのコード配列全体の融合は、分子生物学に関する技術分野において周知の方法によって達成することができる。融合ポリヌクレオチドは第1のコード配列の5'末端のAUG翻訳開始コドンのみを持ち、二つの異なるコード産物の生成を避けるために第2のコード配列の開始コドンは持たないことが好ましい。さらに、発現産物を宿主細胞の特定の部位またはコンパートメントにターゲティングして遺伝子発現後の分泌またはその後の精製を容易にするために、リーダー配列はポリヌクレオチドの5'末端に位置させることができる。二つのコード配列はリンカーを使用せずに直接融合させることもできれば、リンカーを用いて融合させることもできる。具体的態様において、抗血管形成タンパク質と治療用/診断用タンパク質を接続させるためのリンカーはVPGVG(エラスチンVal-Pro-Gly-Val-Gly)またはGly-Gly-Gly-Ser-Glyのいずれかを含む。その他のリンカーは、本明細書に参照として全体が組み入れられる国際公開公報第99/16889号に述べられるように、当業者に既知である。
【0062】
本発明の目的に従って、融合タンパク質をコードするポリペプチドは、適切な細胞内において融合タンパク質、融合ペプチド断片、またはそれらの機能的同等物の発現を司る組換え型DNA分子を作製するために使用することができる。遺伝コード固有の縮重のために、融合タンパク質のクローニングおよび発現に関する本発明の実践に際して、実質的に同一または機能的に同等のアミノ酸配列をコードするその他のDNA配列を使用することができる。このようなDNA配列は、当業者に周知のストリンジェントな条件下において融合配列またはそれらの相補配列とハイブリダイズすることのできる配列を含む。
【0063】
本発明に従って使用することのできる変異DNA配列は異なるヌクレオチド残基の欠失、付加または置換を含み、同一または機能的に同等の融合遺伝子産物をコードする配列を生じる。遺伝子産物自体が融合配列内にアミノ酸残基の欠失、付加または置換を含み、その結果、サイレント変化が生じて機能的に同等の融合タンパク質を生じる可能性がある。このようなアミノ酸の置換は関連する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性に基づいて生じる可能性があり、この点は当業者に周知である。
【0064】
本発明のDNA配列は、別の部分でより詳細に述べられるように遺伝子産物の加工および発現を修飾する変化などを含めて、種々の末端における融合物コード配列を変化させるために工学的に操作することができる。例えば、特定部位の突然変異誘発、新規制限部位の挿入、糖鎖形成パターンの変化、リン酸化など、当技術分野において周知の手法を用いて突然変異を導入することができる。
【0065】
本発明の一つの態様において、融合タンパク質のコード配列は当技術分野において周知の化学的方法を用いて全体または一部を合成することができる(例えば、Caruthersら、1980;CreaおよびHorn, 1980;ならびにChowおよびKempe, 1981を参照されたい)。例えば、分子の活性ドメインは固相法による合成、レジンからの開裂、ならびに分離高速液体クロマトグラフィーによる精製およびこれに続く化学的架橋結合によるキメラタンパク質の形成によって合成することができる。(例えば、Creighton, 1983, Proteins Structures And Molecular Principles, W. H. Freeman and Co., N.Y. pp.50-60を参照されたい)。合成ペプチドの組成物はアミノ酸分析または配列決定により確認することができる(例えば、エドマン分解法;Creighton, 1983, Proteins, Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman and Co., N.Y. pp.34-49を参照されたい)。または、合成または遺伝子組換え法によって作製された融合タンパク質の二つの分子を、当技術分野において周知の方法に従って化学的リンカーにより複合させることができる(BrinkmannおよびPastan, 1994)。
【0066】
生物学的に活性な融合タンパク質を発現するために、キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列または機能的同等物を然るべき発現ベクター、即ち、別に詳細に述べられるように挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを持つベクターに挿入する。融合遺伝子産物、および組換え型融合発現ベクターを用いて形質導入または形質転換された宿主細胞または細胞系は様々な目的に使用することができる。これらには、それらの精製を促進するタンパク質のエピトープに結合する抗体(即ち、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)の作製が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0067】
別に詳細に述べられるように、当業者に周知の方法を用いて、融合タンパク質コード配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロにおける組換えDNA技術、合成技術、およびインビボにおける組換え/遺伝子組換えを含む。
【0068】
融合タンパク質コード配列の発現には、様々な宿主発現ベクター系を利用することが可能であり、これらについては当技術分野において周知である。
【0069】
挿入された融合タンパク質コード配列の効率的な翻訳には、特異的な開始シグナルが必要である可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含めて融合遺伝子全体が適切な発現ベクター内に挿入される場合は、その他の翻訳制御シグナルは必要でない可能性がある。但し、融合タンパク質コード配列が自身の開始コドンを含まない場合は、ATG開始コドンを含む外因性の翻訳制御シグナルが提供されなければならない。さらに、挿入物全体が確実に翻訳されるためには、開始コドンが融合タンパク質コード配列のリーディングフレームと同じフレームになければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンの起源は、天然および合成を含めて様々であることができる。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって高めることができる(Bittnerら、1987を参照されたい)。
【0070】
定義およびターゲティング融合遺伝子産物および遺伝子に影響を及ぼす技術
ターゲティング融合遺伝子産物および遺伝子
本明細書で用いられるように、「ターゲティング融合遺伝子産物」および「ターゲティング融合物」という用語は、該融合物内に少なくとも1つの抗血管形成成分および少なくとも1つの治療用および/または診断用成分を含み、それらが天然の成分の少なくとも1つと同等の活性を示すことが可能であり、かつ、いくつかの態様においては双方の成分が天然のそれぞれの成分と同様の活性を示すことができる生物学的に活性なアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドを指す。例えば、それらは好ましくは抗血管形成活性、プロアポトーシス活性、抗細胞増殖活性、抗腫瘍活性、および/またはターゲティング融合遺伝子産物の少なくとも1つの成分に対して生じる抗ターゲティング融合物抗体と交差反応抗体活性を持つ。「ターゲティング融合遺伝子産物」という用語は、天然のターゲティング融合物と共通の少なくともいくつかの生物学的活性を示すターゲティング融合分子の類似体を含む。さらに、突然変異に関する技術分野の業者は、まだ開示または発見されていないその他の類似物がターゲティング融合物類似体の構築に使用できることを認識すると思われる。
【0071】
「変異型ターゲティング融合物」という用語は、上記のターゲティング融合遺伝子産物の少なくとも一部をコードするDNA配列と実質的に同一であるDNA配列を意味する。この用語は、このようなDNA配列と対立しないRNAまたはアンチセンス配列も示す。「ターゲティング融合遺伝子」は、関連する制御配列の任意の組み合わせも含む。
【0072】
ターゲティング融合アミノ酸配列またはターゲティング融合核酸配列を定義するために用いられる「実質的に同一」という用語は、例えば変異型配列のような特定の対象配列が例えば一つまたは複数の置換、欠失、付加もしくはそれらの組み合わせによってそれぞれのコンポーネントの配列から変化して、その真の作用が少なくとも一部のそれぞれのコンポーネント部分の少なくとも一部の生物学的活性を保持することを意味する。または、DNA類似配列は次の場合、本明細書で開示される特異的DNA配列と「実質的に同一」である:(a)そのDNA類似配列がターゲティング融合遺伝子のコード領域の少なくとも一部に由来する;または(b)そのDNA類似配列が中等度にストリンジェントな条件下において生物学的に活性なターゲティング融合物をコードする(a)のDNA配列を少なくとも一部ハイブリダイズすることができる;または(c)(a)または(b)で定義されるDNA類似配列の少なくとも一部の遺伝コードの結果として変性するDNA配列。実質的に同一な類似タンパク質は、対応する天然のタンパク質コンポーネントの配列と約80%を超える類似性を有すると考えられる。類似性の程度は低いが同様の生物学的活性を持つ配列は、同等物と考えられる。核酸配列の決定において、実質的に類似するアミノ酸配列をコードすることのできるすべての対象核酸配列は、コドン配列の差に関わらず、参照核酸配列と実質的に類似すると考えられる。
【0073】
類似率
類似率は、例えば、University of Wisconsin Geneticist Computer Groupから入手可能なGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することによって求めることができる。GAPプログラムは、Smithら、1981年によって修正されたNeedlemanら、1970年のアラインメント法を利用している。簡潔に言うと、GAPプログラムは類似する整合させた記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を2つの配列の短い方の記号総数で割った値を類似率と定義する。GAPプログラムにおける好ましいデフォルトパラメータは、(1)ヌクレオチドのユニタリー比較行列(アイデンティティとして1を、非アイデンティティとして0を含む)およびSchwartzら、1979年によって述べられたGribskovら、1986年の加重比較行列;(2)各ギャップに対して3.0のペナルティーならびに各記号および各ギャップに対してさらに0.01のペナルティー;ならびに(3)エンドギャップに対してはペナルティーなしを含む。
【0074】
核酸配列
一部の態様において、本発明はターゲティング融合核酸、遺伝子および遺伝子産物、または対応するタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの使用に関する。「本質的にターゲティング融合物である配列」という用語は、その配列が実質的にターゲティング融合遺伝子の少なくとも一部に対応して、ターゲティング融合物(または、タンパク質を指す場合はそれらの生物学的な機能的同等物)のそれとは一致しない比較的少数の塩基またはアミノ酸(DNAまたはタンパク質に関わらず)を持つ配列を意味する。「生物学的な機能的同等物」という用語は当技術分野において十分に理解されていて、本明細書において詳細にさらに定義される。従って、アミノ酸の約70%〜約80%、より好ましくは約81%〜約90%;さらにより好ましくは約91%〜約99%がターゲティング融合物のアミノ酸の少なくとも一部と同一または機能的に同等である配列は「本質的に同一」の配列であると考えられる。
【0075】
配列の少なくとも一部が機能的に同等のコドンを含むターゲティング融合核酸が本発明に含まれる。「機能的に同等のコドン」という用語は、本明細書において、アルギニンまたはセリンの6つのコドンのように同一のアミノ酸をコードするコドンを示して、生物学的に同等のアミノ酸をコードするコドンを示すためにも使用される(表1)。

【0076】
アミノ酸および核酸配列は補足的なN末端もしくはC末端アミノ酸または5'もしくは3'配列のような補足的残基を含み、その配列がタンパク発現が関与する生物学的タンパク質活性の維持を含めて上記に示される基準を満たす限り、本明細書に開示される配列の一つに示されるように依然本質的である可能性があることも理解される。末端配列の付加は、特に、例えばコード領域の5'または3'部分の側面に位置する様々な非コード配列を含む可能性があり、または遺伝子内に生じることが知られている各種の内部配列、つまりイントロンを含む可能性のある核酸配列に当てはまる。
【0077】
本発明は、本明細書に示される配列に対して相補的である、または本質的に相補的であるDNAセグメントの使用も含む。「相補的」な核酸配列とは、標準的なWatson-Crick相補性規則に従って塩基対を形成することのできる配列である。本明細書で用いられるように「相補的配列」という用語は、上記に示される同一のヌクレオチド比較によって評価されることのできる、または本明細書で述べられるような相対的にストリンジェントな条件下において問題の核酸セグメントに対してハイブリダイズすることのできる配列として定義されるような実質的に相補的な核酸配列を意味する。
【0078】
生物学的な機能的同等物
上記のように、修飾および変更は、抗血管形成ターゲティング融合物のような治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質の構造の少なくとも一部において行われる可能性があり、依然、同様またはその他の所望の特徴を持つ分子が得られる。具体的態様において、当業者は、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質の範囲とは治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域、または治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むことを認識している。
【0079】
例えば、一部のアミノ酸は明白な活性消失を伴うことなくタンパク質構造内の他のアミノ酸に置換することができる。多くの態様において、それがタンパク質の生物学的機能活性を定義するタンパク質の相互作用活性および特徴であることから、一部のアミノ酸配列の置換はタンパク質配列(または、勿論、その基礎であるDNAコード配列)内で生じることが可能であり、それにも関わらず、同様または相殺的特徴(例えば、アゴニスト作用に対するアンタゴニスト作用)を持つタンパク質を得ることが可能である。このように、本発明者らは、ターゲティング融合タンパク質もしくはペプチド(または基礎となるDNA)の配列の少なくとも一部において、それらの所望の生物学的な有用性または活性の明白な喪失を伴うことなく様々な変化が生じる可能性があると考えている。
【0080】
生物学的な機能的同等物であるタンパク質またはペプチドの定義には、分子の一定部分内部に生じて、かつ、分子が依然、許容されるレベルの同等な生物学的活性を示すことのできる変化の数には限界があるという概念がつきものであることも、当業者らは十分に理解する。従って、生物学的な機能的同等のペプチドは、本明細書では大部分またはすべてのアミノ酸ではなく一部のアミノ酸が置換されることのできるペプチドとして定義される。勿論、異なる置換を持つ別個のほとんどのタンパク質/ペプチドは本発明に従って容易に作製および使用することができる。
【0081】
一部の残基が活性部位の残基のようにタンパク質またはペプチドの生物学的または構造的特性にとって特に重要であることが示される場合、このような残基は一般的には交換されない可能性があることも十分に理解される。
【0082】
ターゲティング融合物の修飾に用いられるようなアミノ酸の置換は、一般に、例えば疎水性、親水性、電荷、大きさなどのアミノ酸側鎖置換の相対的類似性に基づく。アミノ酸側鎖置換の大きさ、形状および種類の分析により、アルギニン、リシンおよびヒスチジンはすべて正に荷電した残基であり、アラニン、グリシンおよびセリンはいずれもほぼ同じ大きさであり、またフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンはいずれも概ね等しい形状を持つことが示されている。従って、これらの検討に基づいて、アルギニン、リシンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;ならびにフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは本明細書において生物学的な機能的同等物として定義される。
【0083】
このような変化を加えるにあたって、アミノ酸のハイドロパシー指標が考慮される可能性がある。各アミノ酸には、それぞれの疎水性および荷電特性に基づいて、次のようなハイドロパシー指標が割り付けられている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0084】
アミノ酸のハイドロパシー指標がタンパク質への相互作用的生物機能の付与に重要であることは、当技術分野では一般的に理解されている(KyteおよびDoolittle, 1982、参照として本明細書に組み入れられる)。一部のアミノ酸はほぼ等しいハイドロパシー指標またはスコアを持つ他のアミノ酸に置換可能であり、依然、同様の生物学的活性が維持されることが知られている。ハイドロパシー指標に基づいて変化を加える場合、ハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内である置換は特に好ましく、±0.5以内である置換はさらに特に好ましい。
【0085】
当技術分野では、類似のアミノ酸は親水性に基づいて効率的に置換されることも理解されている。本明細書に参照として組み入れられる米国特許第4,554,101号によると、隣接するアミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最も局所的な平均親水性はその免疫原性および抗原性、即ち、そのタンパク質の生物学的な特性と相関する。アミノ酸は同様の親水性を持つもう一つのアミノ酸と置換して、依然、生物学的に同等のタンパク質を得ることが可能であることが理解される。
【0086】
米国特許第4,554,101号に詳記されるように、アミノ酸残基に対して次の親水性が割り付けられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0.+-.1);グルタミン酸(+3.0.+-.1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5.+-.1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。
【0087】
親水性がほぼ等しいことに基づいて変化を加える場合、親水性が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内である置換は特に好ましく、±0.5以内である置換はさらに特に好ましい。
【0088】
議論がアミノ酸の変化に起因する機能的同等のポリペプチドに絞られているが、遺伝コードが変性することおよび二つまたはそれ以上のコドンが同一のアミノ酸をコードする可能性があることを考えると、これらの変化がコードDNAの変化の影響を受ける可能性があることも認識される。
【0089】
併用療法
抗血管形成ターゲティング融合タンパク質のような治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質の有効性、またはそれらをコードする構造物の発現を亢進させるため、例えば、癌に対する抗ガン剤のように、これらの組成物を血管新生に関連する疾患の治療に有効な他の物質と併用することが望ましい可能性がある。「抗癌」物質は、例えば癌細胞および/または癌組織における血管新生の阻害、癌細胞の死滅、癌細胞のアポトーシスの誘導、癌細胞の増殖率の抑制、転移の発生率または数の抑制、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の阻害、腫瘍または癌細胞に対する血液供給の抑制、癌細胞または腫瘍に対する免疫反応の促進、癌の進行の阻止もしくは阻害、または癌患者の寿命の延長によって、患者の癌に対してネガティブな影響を及ぼすことができる。より一般的には、これらのその他の組成物は細胞の死滅または増殖阻害に有効な配合剤として提供される。このプロセスは、細胞を発現構築物およびその物質または多くの因子と同時に接触させる工程を含むことができる。このことは、細胞を双方の物質を含む単一の組成物もしくは薬学的調製物と接触させる工程、または一方の組成物が発現構築物を含んで他方の組成物が第2の物質を含む2種類の異なる組成物または調製物に細胞を同時に接触させる工程によって達成することができる。
【0090】
化学療法および放射線療法物質に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における重要な問題である。現在の癌研究の一つの目標は、化学療法および放射線療法を遺伝子療法と組み合わせることによってその有効性を高める方法を見つけることである。例えば、単純疱疹-チミジンキナーゼ(HS-tK)遺伝子をレトロウイルスベクター系により脳腫瘍に送達すると、抗ウイルス物質であるガンシクロビールに対する感受性がうまく誘導された(Culverら、1992)。本発明の状況において、他のプロアポトーシスまたは細胞周期調節物質に加えて、ターゲティング融合遺伝子療法は化学療法、放射線療法または免疫療法的介入と連携して同様に使用できることが考えられる。
【0091】
または、併用療法は数分から数週間の期間をおいてその他の物質の投与前または投与後に行うことができる。その他の物質および発現構築物が細胞に別々に適用される態様においては、一般に、その物質および発現構築物が依然細胞に対して有利な併用作用を発揮できるように、各送達時期から次回送達時期までの経過時間が顕著とならないことが保証される。このような場合、細胞を双方の治療薬に互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に接触させることができると考えられる。しかし、いくつかの状況では、投与のための期間が著しく延長されて、各投与間に数日(2日、3日、4日、5日、6日または7日)ないし数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間)が経過することが望ましいことがある。
【0092】
例示的態様において、様々な組み合わせを用いることができる。遺伝子療法を「A」とし、放射線療法、化学療法、手術または免疫療法のような第2の物質を「B」とする:

【0093】
本発明の治療用発現構築物の患者への投与は化学療法剤の投与に関する一般的プロトコールに従い、ベクターに毒性があれば考慮に入れる。必要ならば治療サイクルを反復実施することが期待される。記載した増殖性細胞療法と併用して様々な標準的治療法および外科的介入を実施できることも考えられる。
【0094】
核酸に基づく発現系
ベクター
一つの態様において、ターゲティング融合核酸はベクターに含まれる。「ベクター」という用語は、複製可能な細胞内への導入に備えて核酸配列を挿入することのできるキャリアとなる核酸分子を示す。核酸配列は「外因性」であることが可能であり、これはベクターが導入されている細胞にとって核酸配列が異物である、またはその配列が細胞内の配列と相同であるが通常はその配列が見られない宿主細胞の核酸の位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えばYAC)が含まれる。当業者は、いずれも参照として本明細書に組み入れられるManiatisら、1988およびAusubelら、1994が述べるような標準的組換え技術によって十分にベクターを作製することができる。
【0095】
「発現ベクター」という用語は、転写可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含むベクターを示す。いくつかの場合において、RNA分子は続いてタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに翻訳される。その他の場合には、これらの配列は、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産生では翻訳されない。発現ベクターは様々な「制御配列」を含むことができ、これは特定の宿主体内において機能的に結合されたコード配列の転写およびおそらく翻訳に必要な核酸配列を示す。転写および翻訳を決定する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターはその他の機能を果たす後述の核酸配列も含むことができる。
【0096】
プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は制御配列であり、転写の開始および速度が制御される核酸配列の領域である。これは、RNAポリメラーゼおよびその他の転写因子のように調節タンパク質および分子が結合することのできる遺伝的エレメントを含むことができる。「機能的に位置づけられた」、「機能的に結合された」、「制御下」および「転写制御下」という表現は、プロモーターが核酸配列の転写の開始および/または発現を制御するためにその核酸配列に関して適正な機能的位置および/または配向にあることを意味する。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を示す「エンハンサー」と併用することもでき、または併用しないこともできる。
【0097】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5'非コード配列を単離することによって得られるように、元々、遺伝子または配列と結合していてもよい。このようなプロモーターは「内因性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、元々、その配列の下流または上流に位置する核酸配列と結合していてもよい。または、特定の利点は、自然環境では通常は核酸配列と結合しないプロモーターを示す組換え型または異種プロモーターの制御下においてコード核酸配列を位置決定することによって得られる。組換え型または異種エンハンサーも、自然環境下では通常は核酸配列と結合しないエンハンサーを示す。このようなプロモーターまたはエンハンサーは他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、およびその他の何らかの原核細胞、ウイルス細胞または真核細胞から単離されるプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然には発生」しない、即ち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変化させる突然変異を含むプロモーターまたはエンハンサーを含む可能性がある。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列の合成による作製に加えて、本明細書に開示される組成物と共にPCR(商標)を含む組換えクローニング技術および/または核酸増幅技術を用いて配列を作製することができる(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,683,202号;米国特許第5,928,906号を参照されたい)。さらに、ミトコンドリア、クロロプラストなどの核を持たない小器官内での配列の転写および/または発現を司る制御配列を同様に使用することができると考えられる。
【0098】
勿論、発現のために選択された細胞型、小器官および生物においてDNAセグメントの発現を効果的に司るプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いることが重要である。分子生物学に関する技術分野の業者は、一般に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組み合わせの使用を承知していて、例えば、参照として本明細書に組み入れられるSambrookら(1989)を参照されたい。用いられるプロモーターは、導入されるDNAセグメントの高レベルの発現を司るために適切な条件下において構成的、組織特異的、誘導的、および/または有用であり、組換え型タンパク質および/またはペプチドの大量生産に有利である可能性がある。プロモーターは異種性または内因性であることができる。
【0099】
具体的態様において、組織特異的および/または(腫瘍などの)疾患組織を取り巻く微環境に特異的であるプロモーター、細胞特異的もしくは細胞型特異的なプロモーターが利用される。具体的態様において、本発明では、いずれも参照として全体が本明細書に組み入れられる2002年5月5日に出願された米国特許仮出願第60/377,672号の「相互T細胞因子(TCF)反応性プロモーター(BIPARTITE T-CELL FACTOR (TCF)-RESPONSIVE PROMOTER)」、およびExpress Mail番号EU 110397859USにて2003年5月5日に出願された非仮出願である米国特許出願第___号に述べられたようなプロモーターが利用される。
【0100】
組織特異的プロモーターまたはエレメントの同定、およびそれらの活性を分析するアッセイは当業者に周知である。このような領域の例には、ヒトLIMK2遺伝子(Nomotoら、1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Krausら、1998)、マウス精巣上体レチン酸結合遺伝子(Lareyreら、1999)、ヒトCD4(Zhao-Emonetら、1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumakiら、1998)、D1Aドーパミンレセプター遺伝子(Leeら、1997)、インスリン様増殖因子II(Wuら、1997)、ヒト血小板内皮細胞接着分子-1(Almendroら、1996)が含まれる。
【0101】
開始シグナルおよびリボソーム内部結合部位
コード配列の効率的な翻訳にも、特異的な開始シグナルが必要である可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが提供される必要がある可能性がある。当業者は、容易にこれを解明して必要なシグナルを提供することができる。開始コドンは、挿入部位全体を確実に翻訳するために、所望のコード配列のリーディングフレームと同じ「フレーム内」になければならない。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは天然または合成のいずれかであることができる。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメントを加えることによって亢進することができる。
【0102】
本発明の一部の態様において、多重遺伝子またはポリシストロン性メッセージの作製にリボソーム内部侵入部位(internal ribosome entry site:IRES)エレメントの利用が用いられる。IRESエレメントは、リボソームの5'メチル化Cap依存翻訳のスキャニングモデルをバイパスして、内部部位にて翻訳を開始することができる(PelletierおよびSonenberg、1988)。哺乳動物メッセージに由来するIRES(MacejakおよびSarnow、1991)に加えて、ピコルナウイルスファミリーの2種類のウイルス(ポリオおよび脳心筋炎ウイルス)に由来するIRESエレメントが示されている(PelletierおよびSonenberg、1988)。IRESエレメントは異種性オープンリーディングフレームに結合することができる。多数のオープンリーディングフレームが同時に転写可能であり、それぞれはIRESによって分割されてポリシストロン性メッセージを作る。IRESエレメントのおかげで、それぞれのオープンリーディングフレームがリボソームと接触して効率的に翻訳されることができる。多重遺伝子は一つのプロモーター/エンハンサーを用いて一つのメッセージを転写して、効率的に発現することができる(本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5,925,565号および第5,935,819号を参照されたい)。
【0103】
マルチクローニング部位
ベクターはマルチクローニング部位(multiple cloning site:MCS)を含むことが可能であり、これは多重制限酵素部位を含む核酸領域であり、その中のいずれかを標準的な組換え技術と関連づけて使用してベクターを消化することができる。(参照として本明細書に組み入れられるCarbonelliら、1999、Levensonら、1998、およびCocea、1997を参照されたい)。「制限酵素消化」は、核酸分子の特定の位置においてのみ機能する酵素を用いての核酸分子の触媒開裂を示す。これらの制限酵素の多くは市販されている。このような酵素の利用は当業者によって広く理解されている。しばしば、外因性の配列をベクターに連結できるようにするために、MCS内で切断する制限酵素を用いてベクターを線状化または断片化する。「連結」は、互いに隣接してもよく、または隣接していなくてもよい2つの核酸断片間にホスホジエステル結合を形成する過程を示す。制限酵素および連結反応を含む手法は、組換え技術に関する技術分野の業者には周知である。
【0104】
スプライシング部位
転写される大部分の真核性RNA分子は、RNAスプライシングを受けて一次転写産物からイントロンが除去される。真核性ゲノム配列を含むベクターは、タンパク質発現のための適切な転写過程を確保するために、ドナーおよび/またはアクセプターのスプライシング部位を必要とする可能性がある。(参照として本明細書に組み入れられるChandlerら、1997を参照されたい)。
【0105】
ポリアデニレーションシグナル
発現に際して、転写産物を適切にポリアデニル化するために、一般にポリアデニレーションシグナルが加えられる。ポリアデニレーションシグナルの性状は、本発明の実践の成功にはそれほど重要ではないと考えられていて、しかも/またはこのような任意の配列を用いることができる。好ましい態様は、手頃でしかも/または各種標的細胞において十分に機能することが知られているSV40ポリアデニレーションシグナルおよび/またはウシ成長ホルモンポリアデニレーションシグナルを含む。転写終結部位も発現カセットのエレメントであると考えられる。これらのエレメントは、メッセージレベルを亢進させて、かつ/またはこのカセットからその他の配列へのリーディングの連続を最小限に抑える働きをする。
【0106】
複製起点
宿主細胞内でベクターを増殖させるために、複製が開始される特異的な核酸配列である複製起点(時に「オリ(ori)」と呼ばれる)を1つまたは複数含むことができる。または、宿主細胞が酵母であれば自律複製配列(autonomously replicating sequence:ARS)を用いることができる。
【0107】
選択およびスクリーニング可能マーカー
本発明の一部の態様において、細胞は本発明の核酸構築物を含み、細胞は発現ベクターにマーカーを含めることによってインビトロまたはインビボにおいて識別することができる。このようなマーカーは細胞に識別可能な変化を与えて、発現ベクターを含む細胞は容易に識別することができる。一般に、選択可能なマーカーは選択を考慮に入れた特性を付与するマーカーである。陽性選択可能マーカーとはマーカーの存在がその選択を考慮に入れているマーカーであり、陰性選択可能マーカーとはその存在が選択を阻止するマーカーである。陽性選択可能マーカーの一例は薬剤耐性マーカーである。
【0108】
一般に、薬剤選択マーカーを含むことは形質転換体のクローニングおよび識別に役立ち、例えば、ネオマイシン、プロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する抵抗性を付与する遺伝子は有効な選択可能マーカーである。条件の実施に基づいて形質転換体の識別を考慮した表現型を付与するマーカーに加えて、比色分析に基づくGFPのようなスクリーニング可能マーカーを含むその他の種類のマーカーも考えられる。または、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のようなスクリーニング可能酵素も利用することができる。当業者は、FACS解析と併用される可能性のある免疫学的マーカーの利用方法も認識しているものと思われる。遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現可能である限り、用いられるマーカーは重要ではないと考えられる。選択可能およびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は当業者に周知である。
【0109】
宿主細胞
本明細書で用いられるように、「細胞」、「細胞系」および「細胞培養物」という用語は互換的に用いることができる。これらの用語はすべてそれらの子孫も含み、子孫とは後続のあらゆる世代である。意図的または非意図的な突然変異のためにすべての子孫が一致しない可能性があることが理解される。異種性核酸配列発現の状況において、「宿主細胞」は原核細胞または真核細胞を示し、ベクターの複製および/またはベクターにコードされる異種遺伝子を発現することのできる形質転換可能なあらゆる生物を含む。宿主細胞はベクターのレシピエントとして使用することが可能であり、実際に使用されてきた。宿主細胞は「形質導入」または「形質転換」が可能であり、形質導入または形質転換とは宿主細胞に外因性核酸が伝達または導入される過程を示す。形質転換細胞は一次対象細胞およびその子孫を含む。
【0110】
宿主細胞は、所望の結果がベクターの複製であるのか、またはベクターがコードする核酸配列の一部もしくは全体の発現であるのかによって、原核生物または真核生物から派生させることができる。多くの細胞系および細胞培養物が宿主細胞として使用することができ、それらは生物培養物および遺伝物質の保存機関として機能する組織であるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手することができる(www.atcc.org)。当業者は、ベクターの骨格および所望する結果に基づいて適切な宿主を決定することができる。例えば、プラスミドまたはコスミドは多くのベクターの複製のために真核宿主細胞に導入することができる。ベクターの複製および/または発現のための宿主細胞として用いられる細菌細胞には、DH5α、JM109およびKC8、ならびにSURE(登録商標)Competent CellsおよびSOLOPACK(商標)Gold Cells(STRATAGENE(登録商標)、La Jolla)のような多くの市販の細菌宿主が含まれる。または、大腸菌LE392のような細菌細胞はファージウイルスの宿主細胞として使用することができる。
【0111】
ベクターの複製および/または発現のための真核宿主細胞の例には、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、SaosおよびPC12が含まれる。様々な細胞型および生物に由来する多くの宿主細胞が利用可能であり、これらは当業者に既知である。同様に、ウイルスベクターは真核または原核宿主細胞、特にベクターの複製または発現に許容性の宿主細胞と併用して用いることができる。
【0112】
いくつかのベクターは制御配列を用いて、原核および真核細胞の双方において複製および/または発現させることができる。当業者は、上記のすべての宿主細胞をインキュベートし、それらを維持してベクターを複製させる条件をさらに理解する。ベクターの大量生産、ならびにベクターにコードされる核酸およびそれらの同源のポリペプチド、タンパク質またはペプチドの産生を可能とする技術および条件も理解されていて、既知である。
【0113】
発現系
上記の組成物の少なくとも一部またはすべてを含む多くの発現系が存在する。核酸配列、またはそれらの同源のポリペプチド、タンパク質およびペプチドの産生には、原核性および/または真核性の系を本発明と併用して用いることができる。このような多くの系は市販されていて、広く利用することができる。
【0114】
いずれも参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,871,986号および第4,879,236号に示されるように、昆虫細胞/バキュロウイルスの系は異種核酸セグメントのタンパク質発現を大量に産生することが可能であり、これらは例えばINVITROGEDN(登録商標)のMAXBAC(登録商標)およびCLONTECH(登録商標)のBACPACK(商標)BACULOVIRUS EXPRESSION SYSTEMの名称で購入することができる。
【0115】
発現系のその他の例には、合成エクジソン誘導レセプターまたはそのpET発現系である大腸菌発現系が関与するSTRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)Inducible Mammalian Expression Systemが含まれる。誘導性発現系のもう一つの例は、完全CMVプロモーターを使用する誘導性哺乳動物発現系であるT-REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を販売しているINVITROGEN(登録商標)から入手することができる。INVITROGEN(登録商標)は、メトロトロフ酵母であるピチアメタノリカ(Pichia methanolica)を用いた組換えタンパク質の大量生産のために設計されたピチアメタノリカ発現系と呼ばれる酵母発現系も提供する。当業者は、核酸配列またはその同源ポリペプチド、タンパク質もしくはペプチドを産生するために発現構築物などのベクターの発現方法を認識しているものと思われる。
【0116】
核酸の送達
組成物および/または治療薬に関する本発明の局面に対する一般的方法は、特異的および/または所望のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドをコードする遺伝子構築物を細胞に提供して、それによってそのタンパク質の所望の活性を発揮させることである。本発明において、所望のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、血管新生阻害物質および治療用または診断用配列を含むターゲティング融合物である。遺伝子構築物および/またはタンパク質が直接送達できることが考えられるが、好ましい態様は細胞に特異的かつ所望のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドをコードする核酸を提供する工程を含む。この提供を受けて細胞の転写および翻訳機構によりこのタンパク質組成物が合成されて、加えて発現構築物によっても提供されることができる。アンチセンス、リボザイムおよびその他の阻害物質の提供に際して好ましいモードは細胞に対してその構築物をコードする核酸を提供することである。
【0117】
本発明の一部の態様において、遺伝子をコードする核酸は安定的に細胞のゲノムに組み込むことができる。さらなる態様において、核酸は、DNAの異なるエピソームセグメントとして細胞内で安定的に維持されることができる。このような核酸セグメントおよび「エピソーム」は、宿主細胞サイクルとは独立および同期化して十分に維持および複製できる配列をコードしている。発現構築物がどのように細胞に送達されて、かつ/またはその核酸が細胞のどこに存在するのかは、用いる発現構築物の種類に依存する。
【0118】
ウイルスベクターを用いたDNA送達
一部のウイルスの細胞に感染してレセプター介在性エンドサイトーシスを介して細胞に侵入する能力、ならびに宿主細胞のゲノムに組み込んで、しかも/またはウイルスゲノムを安定的かつ/または効率的に発現する能力から、これらのウイルスは哺乳動物細胞に外来遺伝子を導入するための有望な候補となっている。本発明の好ましい遺伝子治療ベクターは一般にウイルスベクターである。
【0119】
外来遺伝物質を受け入れることのできるいくつかのウイルスは、含まれることのできるヌクレオチドの数および/または感染する細胞の範囲に制限があるものの、これらのウイルスは遺伝子をうまく発現することが実証されている。しかし、アデノウイルスはその遺伝物質を宿主のゲノムに組み込まず、従って、遺伝子発現のために宿主の複製を必要としないことから、それらは迅速かつ効率的な異種遺伝子の発現に関して理想的に適している。複製欠損型感染性ウイルスの調製技術は当技術分野において周知である。
【0120】
勿論、ウイルスによる送達系の使用に際しては、ベクター構築物を受け入れる細胞、動物および/またはヒトに不都合な反応が惹起されることがないように、欠損干渉ウイルス粒子ならびにエンドトキシンおよびその他の発熱物質などの所望しない混入物質が本質的に含まれないようにビリオンを十分に精製することが望ましい。ベクター精製の好ましい方法は、塩化セシウムグラジエント遠心分離のような浮遊密度グラジエントの利用を含む。
【0121】
アデノウイルスベクター
発現構築物の送達に関する特定の方法は、アデノウイルス発現ベクターの利用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの組込み能が低いことが知られているが、この点はこれらのベクターによってもたらされる効率の高い遺伝子伝達によって相殺される。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを支持するため、ならびに/または(b)最終的にはそこでクローニングされている組織および/もしくは細胞特異的な構築物を発現するために十分なアデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。
【0122】
発現ベクターは遺伝子組換え型のアデノウイルスを含む。遺伝機構および36kbの直線性二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスに関する知識によって、アデノウイルスDNAの顕著な部分は最高7kbまで外来配列と置換することができ(GrunhausおよびHorwitz、1992)。レトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスDNAはエピソーム式に複製することができるので、宿主細胞にアデノウイルスが感染しても染色体の組込みは起こらず、遺伝子毒性の可能性がない。さらに、アデノウイルスは構造的に安定であり、しかも/または大量増幅後にゲノム再編成は検出されていない。
【0123】
アデノウイルスは、ゲノムの大きさが中等度であること、操作が容易であること、力価が高いこと、ターゲット細胞の範囲が広いこと、および/または感染性が高いことから、遺伝子トランスファーベクターとしての利用に特に適している。ウイルスゲノムの両端は100〜200塩基対の逆方向反復配列(inverted repeat:ITR)を含み、これはウイルスDNAの複製および/またはパッケージングに必要なシスエレメントである。ゲノムの初期(E)領域および/または後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分割される別々の転写ユニットを含む。E1領域(E1Aおよび/またはE1B)は、ウイルスゲノムおよび/または数個の細胞遺伝子の転写の調整を担うタンパク質をコードしている。E2領域(E2Aおよび/またはE2B)が発現すると、ウイルスDNA複製のためのタンパク質が合成される。これらのタンパク質は、DNAの複製、後期遺伝子発現、および/または宿主細胞のシャットオフに関与する(Renan、1990)。大部分のウイルスキャプシドタンパク質を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(major late promoter:MLP)によって作り出される単一の一次転写産物の顕著なプロセッシング後に初めて発現する。MLP(16.8m.u.に分布)は感染の後期段階に特に有効であり、しかも/またはこのプロモーターから作り出されるすべてのmRNA転写産物はそれらを翻訳に好ましいmRNA転写産物とする5'三連リーダー(tripartite leader:TPL)配列を持つ。
【0124】
本発明の系において、組換え型アデノウイルスはシャトルベクターとプロウイルスベクターの同種組換えから作製される。2種類のプロウイルスベクター間で組換えの可能性があるため、野生型のアデノウイルスがこのプロセスから作製される可能性がある。従って、個々のプラークからウイルスの単一のクローンを単離すること、および/またはそのゲノム構造を調べることが極めて重要である。
【0125】
複製欠損性の現在のアデノウイルスベクターの作製および/または増殖は、Ad5 DNA断片によってヒト胚腎細胞から形質転換されてE1タンパク質を構造的に発現する293と呼ばれる特有のヘルパー細胞系に依存する(E1Aおよび/またはE1B、Grahamら、1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムから可欠であるため(JonesおよびShenk、1978)、現在のアデノウイルスベクターは293細胞を利用してE1、D3および双方の領域に外来DNAを運搬する(GrahamおよびPrevec、1991)。近年、E4領域に欠失を含むアデノウイルスベクターが示されている(米国特許第5,670,488号、参照として本明細書に組み入れられる)。
【0126】
実際、DNAのキャパシティーが約2kb増であるとすると、アデノウイルスは野生型ゲノムを約105%パッケージングすることができる(Ghosh-Choudhuryら、1987)。E1および/またはE3領域において置換可能なDNAの約5.5kbを合わせると、現在のアデノウイルスベクターの最大キャパシティーは7.5kb未満であり、および/またはベクター全長の約15%である。80%を超えるアデノウイルスのウイルスゲノムがベクター骨格に留まっている。
【0127】
ヘルパー細胞系は、ヒト胚腎細胞、筋細胞、造血細胞、ならびにその他のヒト胚の間葉および上皮細胞のようなヒトの細胞から作製することができる。または、ヘルパー細胞はヒトアデノウイルスを許容するその他の哺乳動物の細胞から作製することができる。このような細胞には、例えばVero細胞ならびにその他のサル胚間葉および/または上皮細胞が含まれる。上記のように、好ましいヘルパー細胞系は293細胞である。
【0128】
近年、Racherら(1995)によって、293細胞の培養工程および/またはアデノウイルスの増殖工程に関する改善された方法が開示された。一つの形態において、自然細胞凝集物は、培地100〜200mlを分注したシリコン処理済みの1リットル容スピナーフラスコ(Techne, Cambridge, UK)に個々の細胞を接種して増殖させる。40rpmにて攪拌後、トリパンブルーを用いて細胞の生存性を評価する。もう一つの形態では、Fibra-Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin, Stone, UK)(5g/l)が次のように用いられる。培地5mlに再懸濁した細胞接種物を250ml容三角フラスコに分注したキャリア(50ml)に加えて、さらに/または、時々攪拌しながら1〜4時間、静置する。続いて、培地を新鮮培地50mlと交換して、さらに/または振盪を開始する。ウイルス産生のため、細胞を約80%の稠密性まで増殖させて、その後、培地交換し(最終液量の25%まで)、さらに/またはアデノウイルスを0.05 MOIにて加える。培養物を一晩静置した後、液量を100%まで増加させて、さらに/または72時間、振盪を開始した。
【0129】
アデノウイルスベクターが複製欠損性であること、および少なくとも条件によっては欠損性であるという要件以外のアデノウイルスベクターの性状は本発明の成功裏の実践に重要ではないと考えられる。アデノウイルスは把握されている42種類の異なる血清型およびA〜Fのサブグループのいずれでもよい。アデノウイルスC群の5型は、本発明において使用するためのコンディショナル複製欠損性アデノウイルスベクターを得る好ましい開始材料である。これはアデノウイルス5型が生化学的および遺伝学的に実に多くの情報が知られているヒトアデノウイルスであるためであり、歴史的にもアデノウイルスをベクターとして用いた大半の構築物において使用されてきた。
【0130】
上記のように、本発明記載の典型的ベクターは複製欠損性であり、アデノウイルスE1領域を持たない。よって、E1コード配列が除去された位置に形質転換構築物を導入するには非常に好都合である。但し、アデノウイルス配列内における構築物の挿入位置は本発明にとっては重要でない。対象となる遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、Karlssonら(1986)が述べる通りE3置換ベクターにおいて欠失したE3領域の代わりに、またヘルパー細胞系およびヘルパーウイルスがE4欠損を相補するE4領域に挿入することもできる。
【0131】
アデノウイルスの増殖および/または操作は当業者に既知であり、しかも/またはインビトロおよびインビボにおいて幅広い宿主域を示す。この群のウイルスは、例えば1ml当たり109〜1011プラーク形成単位の高い力価で得ることができ、強い感染性を示す。アデノウイルスの生活環に、宿主細胞ゲノムへの組込みは必要ではない。アデノウイルスベクターにより送達される外来遺伝子はエピソームであり、従って、宿主細胞に対する遺伝子毒性は低い。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種に関する試験では副作用の報告はなく(Couchら、1963;Topら、1971)、アデノウイルスのインビボにおける遺伝子トランスファーベクターとしての安全性および/または治療可能性を示している。
【0132】
アデノウイルスベクターは真核性遺伝子発現(Levreroら、1991;Gomez-Foixら、1992)およびワクチン開発(GrunhausおよびHorwitz、1992;GrahamおよびPrevec、1992)に使用されている。近年、動物試験より、組換え型アデノウイルスが遺伝子治療に使用できることが示唆された(Stratford-PerricaudetおよびPerricaudet、1991a;Stratford-Perricaudetら、1991b;Richら、1993)。組換え型アデノウイルスを異なる組織に投与した試験には、気管点滴(Rosenfeldら、1991;Rosenfeldら、1992)、筋肉注射(Ragotら、1993)、末梢静脈内注入(HerzおよびGerard、1993)、および/または脳内への定位接種(Le Gel La Salleら、1993)が含まれる。組換え型アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス(以下を参照されたい)はいずれも感染性であり、非分裂のヒト一次細胞に形質導入をもたらすことができる。
【0133】
AAVベクター
アデノ関連ウイルス(adeno-associated virus:AAV)は組込みの頻度が高く非分裂細胞に感染することが可能であり、従って、例えば組織培養(Muzyczka、1992)およびインビボにおける哺乳動物細胞への遺伝子送達に有用であることから、本発明の細胞形質導入での使用において有望なベクター系である。AAVは感染のための宿主域が広い(Tratschinら、1984;Laughlinら、1986;Lebkowskiら、1988;McLaughlinら、1988)。rAAVベクターの作製および使用に関する詳細は、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,139,941号および/または米国特許第4,797,368号に述べられている。
【0134】
遺伝子送達におけるAAVの利用を示す試験には、LaFaceら(1988);Zhouら(1993);Flotteら(1993);およびWalshら(1994)が含まれる。組換え型AAVベクターはインビトロおよび/またはインビボにおけるマーカー遺伝子(Kaplittら、1994;Lebkowskiら、1998;Samulskiら、1989;Yoderら、1994;Zhouら、1994;HermonatおよびMuzyczka、1984;Tratschinら、1985;McLaughlinら、1998)ならびにヒトの疾患に関与する遺伝子(Flotteら、1992;Luoら、1994;Ohiら、1990;Walshら、1994;Weiら、1994)の形質導入において成功裏に使用されている。近年、AAVベクターは嚢胞性線維症の治療に関して第I相ヒト試験が承認された。
【0135】
AAVは、培養細胞内で生産的感染を受けるためにもう一つのウイルス(アデノウイルスおよびヘルペスウイルスファミリーメンバーのいずれか)との同時感染を必要とする依存性パルボウイルスである(Muzyczka、1992)。ヘルパーウイルスとの同時感染がない場合、野生型AAVゲノムはヒト19番染色体に末端から組み込まれて、そこでプロウイルスとして潜伏状態で留まる(Kotinら、1990;Samulskiら、1991)。しかし、rAAVはAAV Repタンパク質も発現しない限り、組込みに関して19番染色体に限定されない(ShellingおよびSmith、1994)。AAVプロウイルスを持つ細胞にヘルパーウイルスが重複感染すると、AAVゲノムは染色体および組換え型プラスミドから「解放」されて、さらに/または通常の生産的感染が確立される(Samulskiら、1989;McLaughlinら、1988;Kotinら、1990;Muzyczka、1992)。
【0136】
典型的に、組換え型AAV(rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端反復配列によって側面に位置づけられた関心対象の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlinら、1988;Samulskiら、1989;それぞれ、参照として本明細書に組み入れられる)、および/または例えばpIM45のような末端反復配列を持たない配列を野生型AAVコード配列を含む発現プラスミド(McCartyら、1991;参照として本明細書に組み入れられる)を同時トランスフェクトすることによって作製される。これらの細胞も、アデノウイルスおよびAAVヘルパー機能に必要なアデノウイルス遺伝子を持つプラスミドを用いて感染およびトランスフェクトすることができる。このような方法で作製されたrAAVウイルス株にはアデノウイルスが混入していて、(例えば、塩化セシウム密度勾配遠心法によって)rAAV粒子から物理的に分離されなければならない。または、AAVコード領域を含むアデノウイルスベクター、ならびにAAVコード領域およびアデノウイルスヘルパー遺伝子の一部およびすべてを持つ細胞系を使用することができる(Yangら、1994;Clarkら、1995)。rAAVのDNAを組込みプロウイルスとして持つ細胞系を使用することもできる(Flotteら、1995)。
【0137】
レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、自己の遺伝子を宿主ゲノムに組み込む能力があること、多量の外来遺伝物質を運搬すること、幅広い種および細胞型に感染すること、ならびに特別な細胞系にパッケージングされることから、遺伝子送達ベクターとして有望視されている(Miller、1992)。
【0138】
レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって感染した細胞内で自己のRNAを二本鎖DNAに転換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスのグループである(Coffin、1990)。続いて、形成されるDNAはプロウイルスとして細胞性染色体に安定的に組み込まれて、かつ/またはウイルスタンパク質の合成を誘導する。組込みの結果、ウイルスの遺伝子配列がレシピエントの細胞および/またはその子孫細胞に維持される。レトロウイルスゲノムは、それぞれ、キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素およびエンベロープ成分をコードするgag、polおよび/またはenvの3つの遺伝子を持つ。gag遺伝子の上流に見出された配列は、ビリオンへのゲノムのパッケージングに関するシグナルを含む。ウイルスゲノムの5'および3'末端には、2つの長い末端反復配列(long terminal repeat:LTR)がある。これらは強いプロモーターおよびエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムへの組込みにも必須である(Coffin、1990)。
【0139】
レトロウイルスベクターを構築するには、ウイルスゲノム内の複製欠損性ウイルスを産生するための特定のウイルス配列部分に関心対象の遺伝子をコードする核酸を挿入する。ビリオンを産生するには、gag、polおよびenv遺伝子を含んでLTRおよびパッケージングコンポーネントを持たないパッケージング細胞系を構築する(Mannら、1983)。レトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列と共にcDNAを含む組換え型プラスミドを(例えばリン酸カルシウム沈殿法によって)この細胞系に導入する場合、パッケージング配列によって組換え型プラスミドのRNA転写産物をウイルス粒子内にパッケージングして、その後、このウイルス粒子が培養培地に放出される(NicolasおよびRubenstein、1988;Temin、1986;Mannら、1983)。次に、組換え型レトロウイルスを含む培地を回収して、選択的に濃縮し、遺伝子トランスファーのために使用する。レトロウイルスベクターは様々な細胞型に感染することができる。但し、組込みおよび/または安定な発現には宿主細胞の分裂が必須である(Paskindら、1975)。
【0140】
欠損性レトロウイルスベクターの使用に伴う問題点として、パッケージング細胞における野生型複製コンピテントウイルスが出現する可能性がある。これは、組換え型ウイルスに由来する未変化の配列が宿主細胞ゲノムに組み込まれたgag、pol、env配列の上流に挿入される組換え事象に起因する可能性がある。しかし、現在では組換えの可能性を大幅に減じる新しいパッケージング細胞系が提供されている(Markowitzら、1988;Hersdorfferら、1990)。
【0141】
第二世代のレトロウイルスベクターを用いた遺伝子送達が報告されている。Kasaharaら(1994)は、通常はマウス細胞にのみ感染するモロニーマウス白血病ウイルスの変異型を組換え技術により作製して、ウイルスがエリスロポエチン(EPO)レセプターを持つヒト細胞に特異的に結合して感染するようにエンベロープタンパク質を修飾した。これは、EPO配列の一部をエンベロープタンパク質に挿入して新しい結合特異性を持つキメラタンパク質を作製することによって達成された。
【0142】
本発明において有用な、具体的なレトロウイルスベクターには、レンチウイルスおよび水疱性口炎ウイルス-インディアナ(Indiana)が含まれる。
【0143】
その他のウイルスベクター
本発明の発現構築物として、その他のウイルスベクターを用いることができる。ワクシニアウイルス(Ridgeway、1988;BaichwalおよびSugden、1986;Couparら、1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルスおよび/または単純疱疹ウイルスなどのウイルスから派生するベクターを用いることができる。これらは、各種哺乳動物細胞に対していくつかの興味深い特徴を提供する(Friedmann、1989;Ridgeway、1988;BaichwalおよびSugden、1986;Couparら、1988;Horwichら、1990)。
【0144】
欠損B型肝炎ウイルスについての最近の認識により、異なるウイルス配列の構造−機能相関性に新たな洞察が得られた。インビトロ試験より、自身のゲノムが最大80%欠失しても、このウイルスはヘルパー依存性パッケージングおよび逆転写の能力を保持することができる(Horwichら、1990)。このことは、ゲノムの大部分が外来遺伝物質で置換可能であることを示唆した。Changらは、最近、B型アヒル肝炎ウイルスゲノムのポリメラーゼ、表面および/またはプレ-表面コード配列の位置にクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を導入した。これは、野生型ウイルスと共にトリ肝癌細胞系に同時トランスフェクトされた。一次アヒルひな肝細胞への感染には、高力価の組換え型ウイルスを含む培養培地が用いられた。安定的なCAT遺伝子発現はトランスフェクト後少なくとも24日間にわたって検出された(Changら、1991)。
【0145】
特定のさらなる態様において、遺伝子治療ベクターはHSVである。HSVを有望なベクターとする要因は、ゲノムのサイズおよび構築である。HSVは大型であるため、同義遺伝子および発現カセットの組込みは他の小さめのウイルス系ほど問題ではない。さらに、様々なパフォーマンス(時間的、強度など)を持つ異なるウイルス制御配列が利用可能であることは、その他の系よりも高度に発現を制御することが可能となる。ウイルスが持つスプライシングされたメッセージが比較的少ないことも有利であり、遺伝子操作がさらに容易である。HSVも操作が比較的容易であり、かつ/または高力価まで増殖させることができる。このように、十分なMOIに達するために必要な容量および反復投与の必要性が少ないという双方の観点から、送達にはほとんど問題はない。
【0146】
修飾ウイルス
本発明のさらなる態様において、送達されるべき核酸は特異的な結合リガンドを発現するように遺伝子操作されている感染性ウイルス内に収容される。従って、ウイルス粒子は標的細胞の同源レセプターに特異的に結合して細胞に内容物を送達する。近年、ウイルスエンベロープに対するラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学的修飾に基づいて、レトロウイルスベクターの特異的ターゲティングを可能とするように設計された新規の方法が開発された。この修飾は、シアロ糖タンパク質レセプターを介しての肝細胞の特異的感染を可能とする。
【0147】
組換え型レトロウイルスのターゲティングのもう一つの方法は、レトロウイルスエンベロープタンパク質および/または特異的細胞レセプターに対するビオチン化抗体を用いて設計された。これらの抗体はストレプタビジンを用いることによってビオチンコンポーネントを介して結合した(Rouxら、1989)。主な組織適合性複合体IおよびII型抗原に対する抗体を用いて、インビトロにおいて、これらの表面抗原を持つ様々なヒト細胞にエコトロピックウイルスが感染することが実証された(Rouxら、1989)。
【0148】
その他のDNA送達方法
本発明の様々な態様において、DNAは発現構築物として細胞に送達される。遺伝子構築物を発現させるためには、その発現構築物は細胞内に送達されなければならない。本明細書に述べられるように、好ましい送達メカニズムは、発現構築物が感染性ウイルス粒子に外殻で含まれるウイルス感染を介するものである。しかし、本発明では細胞への発現構築物のいくつかの非ウイルス性伝達方法も考えている。本発明の一つの態様において、発現構築物は裸の組換え型DNAおよび/またはプラスミドのみから構成される可能性がある。その構築物の伝達は、細胞膜を物理的および/または化学的に浸透可能とする既述の方法によって実施することができる。これらの手法のいくつかは、下記に述べる通り、インビボおよび/またはエキソビボでの使用にうまく応用することができる。
【0149】
リポソーム介在性トランスフェクション
本発明のさらなる態様において、発現構築物はリポソームにエントラップすることができる。リポソームは、リン酸脂質の二重膜および/または内部の水性媒質を特徴とする小胞構造物である。多重層リポソームは、水性媒質によって隔てられた多くの脂質層を持つ。それらは、リン脂質を過剰の水性溶液に懸濁した際に偶発的に形成される。脂質コンポーネントは閉鎖構築物を形成する前に自己再配列を起こし、さらに/または二重脂質層の間の水および/または溶存溶質にエントラップされる(GhoshおよびBachhawat、1991)。発現構築物がリポフェクトアミン(Gibco BRL)と複合体を形成することも考えられる。インビトロにおけるリポソームを介在とする核酸送達および外来DNAの発現は大きな成功を収めている(NicolauおよびSene、1982;Fraleyら、1979;Nicolauら、1987)。Wongら(1980)は、培養ニワトリ胚細胞、HeLa細胞および肝癌細胞におけるリポソーム介在性の外来DNAの送達および/または発現の実現可能性を実証した。
【0150】
本発明の一部の態様において、リポソームはセンダイウイルス(HVJ)と複合体を形成することができる。このことは、細胞膜との融合を促進して、さらに/またはリポソームに含まれるDNAの細胞侵入を促進することが示されている(Kanedaら、1989)。その他の態様において、リポソームは核染色体非ヒストンタンパク質(HMG-1)と複合体を形成する、および/またはこれと併用することができる(Katoら、1991)。さらなる態様において、リポソームはHVJおよびHMG-1の双方と複合体形成および/または併用することができる。その他の態様において、送達媒体はリガンドおよびリポソームを含むことができる。DNA構築物に細菌性プロモーターが用いられる場合は、さらにリポソーム内に適切な細菌性ポリメラーゼが含まれることが望ましい。
【0151】
本発明者らは、リポソーム介在性遺伝子トランスファーを用いてneuサプレッシング遺伝子産物を細胞に導入することができると予想している。このような構築物は、Nabelら(1990)が述べた通り、リポソームと結合して、またカテーテルを介して直接導入することが可能である。これらの方法を用いることによって、このneuサプレッシング遺伝子産物は、静脈内注射によって到達可能な肝細胞および脾細胞ではなく、インビボの特定の部位において効果的に発現させることができる。従って、本発明は、DNA/リポソーム複合体として調製されるneuサプレッシング遺伝子産物をコードするDNA構築物およびこのような構築物の利用方法も含む。
【0152】
米国特許第5,641,484号に述べられるように、リポソームはHER2/neu介在性の癌の治療に特に適している。
【0153】
リポソームの調製
動物細胞におけるターゲティング融合物の有効なトランスフェクション試薬である緊張性リポソームは、Gaoらの方法(1991)を用いて調製することができる。Gaoらは、単一工程で合成することのできる新規の緊張性コレステロール誘導体について述べている。報告によると、この脂質から作製されるリポソームは、試薬であるリポフェクチンを用いて作製されたリポソームよりもトランスフェクションに関してより有効であり、しかも処理細胞に対する毒性が低い。これらの脂質はDC-Chol(「3'(N-(N'N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイルコレステロール」)およびDOPE(「ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン」)の混合物である。これらのリポソームの生産工程は次の通りである。
【0154】
DC-Cholは、クロロギ酸コレステリルおよびN,N-ジメチルエチレンジアミンから単純な反応によって合成される。クロロギ酸コレステリル(2.25g、5ml無水クロロホルム中5mmol)の溶液を、0℃の過剰量のN,N-ジメチルエチレンジアミン(2ml、3ml無水クロロホルム中18.2mmol)の溶液に滴下して加える。溶媒を留去した後、残渣を4℃の無水エタノール中で再結晶化させて精製し、吸引下で乾燥させる。生成物は白色のDC-Chol粉末である。
【0155】
陽イオン性リポソームは、DC-Chol 1.2μmolおよびDOPE 8.0μmolをクロロホルム中で混合して調製する。続いて、この混合物を乾燥処理して、真空乾燥し、試験管を用いてステロール20mM Hepes緩衝液1ml(pH 7.8)に再懸濁する。4℃で24時間水和した後、分散物を超音波槽で5〜10分間超音波処理して、平均直径150〜200nmのリポソームを産生する。
【0156】
リポソーム/DNA複合体を調製するために、本発明は以下の工程を使用する。トランスフェクトすべきDNAをDMEM/F12培地に、DMEM/F12 50μlに対してDNA 15μgの割合で加える。続いて、DMEM/F12を用いて、DC-Chol/DOPEリポソーム混合液をリポソーム100μlに対してDMEM/F12 50μlの割合まで希釈する。次に、DNA希釈液およびリポソーム希釈液を静かに混合して、37℃にて10分間、インキュベートする。インキュベート後、DNA/リポソーム複合体はすぐに注射できる。
【0157】
リポソームトランスフェクションは、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、コレステロール(Chol)、N-[1-(2,3-ジオレイロキシ)プロピル]-N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、および/または3-β-[N-(N'N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイルコレステロール(DC-Chol)、ならびに当業者に既知であるその他の脂質から構成されるリポソームを介して行うことができる。当業者は、本発明において有用である様々なリポソームトランスフェクション技術があることを認識すると思われる。これらの技術には、Nicolauら、1987、Nabelら、1990、およびGaoら、1991の方法がある。具体的態様において、リポソームはDC-Cholを含む。より具体的には、本発明者らは好ましい態様の節に述べる方法で、リポソームはGaoら(1991)の方法に従って調製されたDC-CholおよびDOPEを含む。本発明者らは、San Diego, Calif.のVical,Inc.からリポフェクチン(商標)の商標で市販されているようなDOTMAを含むリポソームのための実用性も期待している。
【0158】
リポソームは、様々な方法によってトランスフェクトすべき細胞と接触させて導入することができる。細胞培養において、リポソーム-DNA複合体は細胞培養液に単に分散させることができる。インビボでの利用の場合、リポソーム-DNA複合体は典型的には注射される。静脈内注射は、DNA複合体を例えば肝臓および脾臓にリポソーム介在性にトランスファーすることができる。静脈内注射によって到達することのできない細胞にDNAをトランスフェクションするためには、リポソーム-DNA複合体を動物体内の特定部位に直接注入することが可能である。例えば、Nabelらの方法では、カテーテルを介して動脈壁に注射する。もう一つの例では、本発明者らは腹腔内注射を用いてマウスに遺伝子を伝達している。
【0159】
本発明は、リポソーム複合体を含む組成物についても検討している。このリポソーム複合体は、脂質コンポーネントおよび抗血管形成ターゲティング融合物をコードする核酸をコードするDNAセグメントを含む。リポソーム複合体に含まれるターゲティング融合物をコードする核酸は、例えば、本明細書で述べられるターゲティング融合物をコードする核酸であることができる。
【0160】
リポソーム複合体を作製するために用いられる脂質は、上記の任意の脂質とすることができる。特に、DOTMA、DOPEおよび/またはDC-Cholは、リポソーム複合体の全体または一部を形成することができる。本発明者らは、DC-Cholを含む複合体を用いて格段の成功を収めている。好ましい態様において、脂質はDC-CholおよびDOPEを含む。DOPEに対するDC-Cholの任意の割合が利用できると考えられるが、1:20から20:1の間のDC-Chol:DOPEの割合を持つ複合体が特に有利であると考えられる。本発明者らは、約1:10から約1:5の割合のDC-Chol:DOPEから調製されたリポソームが有用であることを見出している。
【0161】
具体的な態様において、ターゲティング融合遺伝子構築物を受け取る細胞内に不必要なDNAを導入しないように、細胞の核内におけるターゲティング融合物の保持促進に必要な最小領域が使用される。制限酵素の使用などの当業者に周知の技術は、ターゲティング融合物の小領域の産生を可能とする。これらの領域のneu阻害能は、実施例に記載するアッセイによって容易に測定することができる。
【0162】
本発明のある特定の態様において、リポソームはセンダイウイルス(HVJ)と複合体形成することができる。このことは、細胞膜との融合を促進して、リポソームに封入されたDNAの細胞侵入を促進することを示している(Kanedaら、1989)。その他の態様において、リポソームは核染色体非ヒストンタンパク質(HMG-1)と複合体を形成、またはこれと併用することができる(Katoら、1991)。さらなる態様において、リポソームはHVJおよびHMG-1の双方と複合体を形成または併用することができる。このような発現構築物はインビトロおよびインビボにおいて核酸のトランスファーおよび発現に成功裏に用いられているので、それらは本発明に応用可能である。DNA構築物に細菌性プロモーターが用いられる場合は、リポソーム内に適切な細菌性ポリメラーゼも含まれることが望ましい。
【0163】
ターゲティング融合物を用いたインビボにおけるリポソーム介在性の癌治療
本明細書に開示される内容に基づいて、当業者は細胞は少なくとも1種類のターゲティング融合物で治療することが可能であり、特定の態様においては任意の癌細胞がこのような融合物で治療可能であることを認識する。例えば、いくつかの態様において、治療される細胞の性状はHER2/neu陽性であるかHER2/neu陰性であるかを問わない。
【0164】
参照として本明細書に全体が組み入れられる米国特許第5,641,484号は、生存宿主においてHER2/neuを過剰発現しているヒト癌細胞を抑制するためにリポソームを介在とする直接遺伝子トランスファー技術が利用できることを示している。その中で記載されている例示的プロトコールは次の通りであった。雌性ヌードマウス(5〜6週齢)にSK-OV-3細胞(2×106/100μl)が腹腔内注射された。SK-OV-3細胞は、ヌードマウスの腹腔内で増殖することが示されているヒト卵巣癌細胞である。5日後、マウスに様々な化合物を腹腔内注射した。一部のマウスには治療用DNAを単独で注射して、一部には上記の方法で調製したリポソーム/治療用DNA複合体を注射して、また一部にはリポソーム/変異型治療用DNA複合体を注射した。所与の化合物の200μlを所与のマウスに注射した。初回注射の後、マウスの生存期間を通して7日毎に繰り返し注射を行った。
【0165】
そこに記載されている結果は、リポソーム介在性の遺伝子トランスファーがHER2/neuを過剰発現しているヒト卵巣癌細胞の増殖を抑制できることを示している。従って、リポソーム介在性ターゲティング融合遺伝子療法は、HER-2 neu-オンコジーンにおけるターゲティング融合物の直接ターゲティングによって、HER-2 neuを過剰発現しているヒト卵巣癌に対する強力な治療法として利用できると考えられる。
【0166】
ヒト治療のためのターゲティング融合物のリポソームによるトランスフェクション
米国特許第5,641,484号に述べられたインビボにおける動物試験の結果に基づいて、当業者はリポソームに複合した抗血管形成ターゲティング融合物を用いたヒトにおけるHER2/neu介在性癌の治療に関して大きな可能性を理解し予測する。これらの効果を実証するための臨床試験が検討されている。当業者は、癌を抑制するためのターゲティング融合物の使用に関する最良の投与計画が直ちに決定できることを認識する。これは実験の問題ではなく、むしろ医療分野で定型的に実施される至適化の問題である。ヌードマウスを用いたインビボ試験は、用量および送達計画を至適化するために開始する出発点を提供する。注射の頻度は、米国特許第5,641,484号に示されるマウス試験で行われたように、先ず週1回とする。但し、この頻度は、最初の臨床試験から得られる結果および特定の患者の必要性に応じて1日から2週間毎ないし月1回まで最も適切なように調節することができる。ヒトにおける投与量は、先ず、マウスで用いられたターゲティング融合物の量である体重50g当たりプラスミドDNA約15μgから外挿して求めることができる。これに基づいて、50kgの女性には投与1回当たり15mgのDNAの投与が必要である。勿論、この投与量は、このような治療プロトコールにおいて日常的に行われるように、初回臨床試験の結果および特定の患者の必要に応じて増量または減量して調整することが可能である。これらの臨床試験は、ヒトのHER2/neuを過剰発現している癌の治療におけるターゲティング融合物の有用性を示すことが期待される。投与量および投与頻度の計画は、当技術分野においてしばしば行われるように、先ずはインビボにおける動物試験から得られるデータに基づいて決定される。
【0167】
エレクトロポレーション法
本発明の一部の態様において、発現構築物はエレクトロポレーション法によって細胞に導入される。エレクトロポレーション法では、細胞および/またはDNA懸濁液の高電圧放電への暴露が行われる。
【0168】
エレクトロポレーション法を用いた真核細胞のトランスフェクションはかなりの成功を収めている。この方法で、マウス前Bリンパ球にはヒトκ免疫グロブリン遺伝子がトランスフェクトされ(Potterら、1984)、さらに/またはラット肝細胞にはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子がトランスフェクトされている(Tur-Kaspaら、1986)。
【0169】
リン酸カルシウム法および/またはDEAE-デキストラン法
本発明のその他の態様において、発現構築物はリン酸カルシウム沈殿法を用いて細胞に導入される。この技術を用いて、ヒトKB細胞にアデノウイルス5DNAがトランスフェクトされている(GrahamおよびVan Der Eb、1973)。さらに、この方法でマウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV-1、BHK、NIH3T3および/またはHeLa細胞にネオマイシンマーカー遺伝子がトランスフェクトされ(ChenおよびOkayama、1987)、さらに/またはラット肝細胞に種々のマーカー遺伝子がトランスフェクトされた(Rippeら、1990)。
【0170】
もう一つの態様において、発現構築物はDEAE-デキストランおよびポリエチレングリコールを順次用いて細胞に送達される。この方法で、レポータープラスミドがマウスミエローマおよび/または赤白血病細胞に導入された(Gopal、1985)。
【0171】
パーティクルボンバードメント法
裸のDNA発現構築物の細胞内へのトランスファーに関する本発明の一つの態様はパーティクルボンバードメント法を伴う。この方法は、DNAをコーティングした微粒子を高速に加速して細胞膜を貫通させて、さらに/または細胞を死滅させることなく細胞に侵入させる能力に依存する(Kleinら、1987)。小粒子加速のためのいくつかの装置が開発されている。このような一つの装置は高電圧を放電することによって電流を発生させて、それによって原動力を提供する(Yangら、1990)。使用される微粒子は、タングステンおよび/または金のビーズなどの生物学的に不活性な物質から構成されている。
【0172】
直接マイクロインジェクション法および/または超音波処理法
本発明のさらなる態様は、発現構築物の直接マイクロインジェクション法および/または超音波処理法による導入を含む。直接マイクロインジェクション法は核酸構築物のアフリカツメガエル卵母細胞への注入に用いられ(HarlandおよびWeintraub、1985)、さらに/または超音波処理法ではLTK-線維芽細胞にチミジンキナーゼ遺伝子がトランスフェクトされている(Fechheimerら、1987)。
【0173】
アデノウイルスによるトランスフェクション
本発明の一部の態様において、発現構築物はアデノウイルスによるトランスフェクションによって細胞に導入される。アデノウイルス結合系を用いた細胞系においてトランスフェクション効率の向上が報告されている(KelleherおよびVos、1994;Cottonら、1992;Curiel、1994)。
【0174】
薬学的調製物
本発明の薬学的組成物は、抗血管形成ターゲティング融合物のような治療用または診断用物質に結合した1種類または数種類の剤形の血管新生阻害剤の有効量、および/または薬学的に許容される担体もしくは賦形剤に溶解もしくは分散した補足物質を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という表現は、例えばヒトなどの動物に適宜投与した場合に副作用、アレルギー反応またはその他の不都合な反応を誘発しない分子単位および組成物を示す。少なくとも1種類のターゲティング融合剤または補足的有効成分を含む薬学的組成物の調製は、参照として本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990に例証されるように、本開示の見地から当業者に既知である。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合は、調製物がFDA Office of Biological Standardsより要求される無菌性、発熱性、一般安全性および純度に関する基準を満たさなければならないことが理解される。
【0175】
本明細書で用いられるように、「薬学的に許容される担体」には、当業者に既知であるすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収抑制剤、塩、保存剤、薬剤、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香料、色素、およびそれらの組み合わせなどを含む(例えば、参照として本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company, 1990, pp.1289-1329を参照されたい)。いずれかの通常の担体が有効成分と配合禁忌である場合を除いて、治療用または薬学的組成物に使用されることが考えられる。
【0176】
ターゲティング融合剤は、それが固形剤、液剤またはエアロゾル剤として投与されるか否か、およびそれが注射のような投与経路のために無菌である必要があるか否かによって、異なる種類の担体を含むことができる。本発明は、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、局所的、腫瘍内、筋内、腹腔内、皮下、小胞内、経粘膜、経心内膜、経口、局所的(topically)、局部的(locally)にエアロゾル、注射剤、注入剤、点滴剤、標的細胞を直接薬浴する局所灌注剤を用いて、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリームで、液体組成物(例えば、リポソーム)で、または当業者に既知であるその他の方法もしくは前記のいずれかの組み合わせによって投与することができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company, 1990を参照されたい)。
【0177】
患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、状態の程度、治療される疾患の種類、過去または現在の治療的介入、患者の特発症、および投与経路のような身体的および生理学的要因によって決定することができる。投与を担当する医師は、組成物中の有効成分の濃度および適切な用量を必ず各患者毎に決定する。
【0178】
一部の態様において、薬学的組成物は、例えば少なくとも約0.1%の有効化合物を含むことができる。その他の態様において、有効化合物は単位体の重量の約2%〜約75%、または例えば約25%〜約60%、およびそこから誘導可能な任意の範囲を含むことができる。その他の限定的でない例において、一回用量は投与当たり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から約1000mg/kg/体重またはそれよりも多い量、およびそこから誘導可能な任意の範囲を含むこともできる。本明細書に記載する数値から誘導可能な範囲の限定的でない例として、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500μg/kg/体重などの範囲が投与されることができる。
【0179】
いずれの場合も、組成物は一つまたは複数の成分の酸化を遅らせるために様々な抗酸化剤を含むことができる。さらに、微生物の作用は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの配合剤などを含む各種の抗細菌剤および抗真菌剤のような防腐剤によって防止することができる。
【0180】
ターゲティング融合剤は、遊離の塩基、中性または塩の形で組成物中に調製することができる。薬学的に許容される塩は、例えばタンパク性組成物の遊離アミノ基と共に形成される塩、または例えば塩酸またはリン酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸もしくはマンデル酸のような有機酸と共に形成される塩などの酸付加塩を含む。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインのような有機塩基から誘導することもできる。
【0181】
組成物が液剤である態様において、担体は水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびそれらの組み合わせなどからなる溶媒または分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用;例えば液体ポリオールまたは脂質のような担体に分散させることによる必要な粒子径の保持;例えばヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤の使用;またはこのような方法の組み合わせによって維持することができる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせのような等張物質を加えることが好ましい。
【0182】
その他の態様において、本発明では点眼薬、点鼻薬または鼻スプレー、エアロゾルもしくは吸入剤を使用することができる。このような組成物は一般に標的組織の種類に適合するように設計される。非限定的な例において、点鼻薬は通常、鼻道に滴下またはスプレーとして投与するように設計される水溶液である。点鼻薬は、鼻分泌物と多くの点で等しくなるように調製されるので、正常な毛様体活動は維持される。従って、好ましい態様において、水性点鼻薬は通常、等張であるか、あるいは約5.5〜6.5のpHを維持するように若干緩衝されている。さらに、必要ならば眼科用の製剤、薬剤または適切な薬物安定剤に用いられるものと同様の抗菌保存剤をこの調製物に加えることができる。例えば、各種の市販の鼻用製剤が知られていて、抗生物質または抗ヒスタミン剤のような薬剤が含まれている。
【0183】
特定の態様において、ターゲティング融合剤は経口摂取のような経路での投与用に調製される。これらの態様において、固形組成物は、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、タブレット、丸剤、カプセル(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル)、持効性調製物、口腔用組成物、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、カシェ剤、またはそれらの組み合わせを含むことができる。経口用組成物は、食事の食物と共にそのまま摂取することができる。経口投与における好ましい担体は、不活性の希釈剤、吸収性食用担体またはそれらの組み合わせを含む。本発明のその他の局面において、経口用組成物はシロップまたはエリキシル剤として調製することができる。シロップまたはエリキシル剤は、例えば、少なくとも一種類の活性物質、甘味料、保存料、香料、色素、防腐剤またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0184】
一部の好ましい態様において、経口組成物は1種類または数種類の結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、香料およびそれらの組み合わせを含むことができる。一部の態様において、組成物には次の1種類または数種類を加えることができる:例えば、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはそれらの組み合わせなどの結合剤;例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはそれらの組み合わせなどの賦形剤;例えば、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、アルギン酸またはそれらの組み合わせなどの崩壊剤;例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;例えば、ショ糖、ラクトース、サッカリンまたはそれらの組み合わせなどの甘味料;例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリーフレーバー、オレンジフレーバーなどのような香料;または前記の組み合わせ。投与単位剤形がカプセルである場合は、上記のタイプの材料に加えて、液体担体のような担体を加えることができる。その他に様々な物質がコーティング剤として、または投与単位の物理的形状を別な性状にに変化させるために加えることができる。例としては、タブレット、丸剤またはカプセルはシェラック、糖または双方でコーティングすることができる。
【0185】
その他の投与方法に適したその他の調製剤には坐剤が含まれる。坐剤は様々な重量および形状を持つ固形の投与剤であり、通常は直腸、膣または子宮に挿入するための医薬品である。挿入後、坐剤は体腔液内で軟化、融解または溶解する。一般に、坐薬の場合、通常の担体には、例えばポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはその組み合わせが含まれる。一部の態様において、坐剤は、例えば有効成分を約0.5%〜約10%、好ましくは約1%〜約2%の範囲で含む混合物から作製することができる。
【0186】
無菌注射液は、必要に応じて上記の各種のその他の成分を加えた適切な溶媒に必要な量の有効化合物を溶解した後、ろ過滅菌して、調製される。一般に、分散剤は、滅菌された様々な有効成分を基剤となる分散媒および/またはその他の成分を含む無菌溶媒に混合して調製される。無菌の注射液、懸濁液またはエマルジョン調製用の無菌粉剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥または凍結乾燥技術によって、予め滅菌ろ過したそれぞれの液体媒質から有効成分および所望の付加的成分の粉末を生成する方法である。液体媒質は必要に応じて適切に緩衝しなければならず、液体希釈剤は注射前に先ず十分な生理食塩液またはグルコースを用いて等張としなければならない。直接注射のための高度濃縮組成物の調製も検討されていて、その場合は、溶媒としてDMSOを使用することによって浸透性を著しく高めて高濃度の有効物質を局所に送達することが考えられている。
【0187】
組成物は、製造および貯蔵条件下において安定であり、しかも、細菌および真菌のような微生物の汚染作用から保護されて保存されなければならない。エンドトキシン汚染は例えば0.5ng/mgタンパク質未満のような安全レベルで最小限に維持されるべきことが十分に認識される。
【0188】
特定の態様において、注射可能組成物の長期の吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはそれらの組み合わせのような吸収を遅延させる物質を組成物中に使用することによって達成することができる。
【0189】
本発明の特定の態様において、組成物が抗血管形成ターゲティング融合物であり、いずれも参照として全体が本明細書に組み入れられる2002年5月5日に出願された米国特許仮出願第60/377,672号の「相互T細胞因子(TCF)反応性プロモーター」、およびExpress Mail番号EU 110397859USにて2003年5月5日に出願された米国特許出願第___号に述べられるようなものを含むプロモーターによってその発現の少なくとも一部が調節され、該融合物がDC-Chol、DOTMAなどのようなリポソームから構成される組成物が利用される。
【0190】
実施例
次の例は本発明の好ましい態様を示すために記載される。当業者は、後続の実施例に開示される技術が本発明の実践において十分に機能するように本発明者らによって発見された技術を示すものであり、従ってその実践における好ましい方法を構成すると考えることができることを認識すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示される具体的態様において多くの変更を行うことが可能であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく依然、類似または同様の結果が得られることを認識すべきである。
【0191】
実施例1
例示的な材料および方法
イムノブロッティング法:陽イオン性リポソーム法を用いた293T細胞へのトランスフェクトには、エンドスタチン、エンドスタチン-シトシンデアミナーゼ(endo-CD)、およびエンドスタチン-インターロイキン-12(endo-IL12)を含むプラスミドが用いられた。トランスフェクション後、培地を血清無添加培地と交換した。続いて、24時間インキュベート後に上清を回収して抗エンドスタチン抗体を用いてウェスタンブロットを行った。
【0192】
ELISA:陽イオン性リポソームを用いて、COS-7細胞にエンドスタチン-IL2またはエンドスタチン-GM-CSFをコードするプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクション後、血清無添加培地で培地交換して、上清を回収後、エンドスタチンタンパク質を検出するためにELISAに供した。
【0193】
実施例2
抗血管形成-治療用/診断用融合遺伝子の発現
図1は、融合タンパク質の産生後に治療用/診断用抗血管形成融合タンパク質が検出可能であったことを示す。図1Aは、293細胞から回収された上清の抗エンドスタチン抗体のウェスタンブロットである。18KDのエンドスタチン(□)、58KDのエンドスタチン-CD(黒三角矢印)、および93KDのendo-IL12(←)が検出できた。図1Bは、ELISAキット(エンドスタチン特異的)を使用することによって、エンドスタチン-IL2およびエンドスタチン-GM-CSF融合タンパク質も検出および定量可能であったことを示す。
【0194】
実施例3
融合タンパク質の抗血管形成機能および治療/診断機能の分析のための例示的材料および方法
内皮管アッセイ: マトリゲル(Collaborative Biomolecules, Bedford, MA)を96穴プレートの各ウェルに加えて(50μl)、重合させた。抗生物質無添加のEGM-2培地におけるヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)5000個の懸濁液を、マトリゲルでコーティングした各ウェルに通した。細胞を、異なるプラスミド(エンドスタチン、エンドスタチン-CD、およびCD)をトランスフェクトした293T細胞から回収した上清で処理した。アッセイはすべて、三連で実施した。細胞を37℃で12〜24時間インキュベートして、鏡検した。続いて、細胞を写真撮影した。5視野を鏡検して、管をカウントして平均を求めた。
【0195】
走化性試験:ボイデンチャンバーアッセイを用いてHUVECにおいて、VEGFに誘導される走化性に対するエンドスタチンの阻害作用を調べた。細胞をトリプシン処理、洗浄および0.5%FBS含有M199培地で希釈した後、細胞10000個を、異なるプラスミド(エンドスタチン、エンドスタチン-CD、およびCD)でトランスフェクトした293T細胞から回収した上清と共にチャンバーのアッパーウェルに播種した。2%FBS含有M199培地および10ng/ml VEGFを走化物質としてボトムチャンバーに入れた。細胞の入ったコンパートメントは、孔径8umのポリカーボネートフィルターで走化物質と隔離された。チャンバーを37℃で6〜8時間、インキュベートした。遊走しなかった細胞を廃棄してアッパーウェルをPBSで洗った後、フィルターをプラスチックのへらで掻き取って、4%ホルムアルデヒドのPBS溶液で固定して、DAPI蛍光色素で染色して、スライドガラスに載せた。蛍光強拡大視野を用いることによって、独立したいくつかの均質な画像を記録した。5視野を鏡検して、管をカウントして平均を求めた。アッセイはすべて、三連で実施した。
【0196】
MTTアッセイ:シトシンデアミナーゼ(CD)と反応させた5FCから転換された5FUの細胞毒性作用はMTTアッセイを用いた293T細胞であった。本発明者らは異なるプラスミド(エンドスタチン、エンドスタチン-CD、およびCD)を用いて293T細胞にトランスフェクトして、12〜24時間、インキュベートした。細胞をトリプシン処理、洗浄、ならびに2%FBSおよび異なる濃度の5FUまたは5FCを含むDMEM培地で希釈した後、細胞5000個を96穴プレートの各ウェルに播種した。次に、このプレートを37℃で3〜4日間、インキュベートした。本発明者らはMTT溶液の20μlを加えて、2時間インキュベートし、その後、溶解液100μlを各ウェルに加えて、一晩インキュベートした。翌日、570nmにて吸光度を測定した。
【0197】
緑色蛍光発現:エンドスタチン-GFPを含むプラスミドを用いて、同一の方法で293T細胞にトランスフェクトした。36時間インキュベート後、蛍光顕微鏡下でGFPの蛍光を観察した。
【0198】
NSF60(GM-CSF依存性)細胞増殖アッセイ:エンドスタチン-GM-CSFの生物活性の定量には、この因子依存性細胞系であるNSF60を使用した。NSF60細胞を、対照プラスミド、エンドスタチン-GM-CSFをコードするプラスミド、または組換え型GM-CSFの2段階の異なる濃度のいずれかをトランスフェクトされたCOS-7細胞から得られる馴化培地と共にインキュベートした。48時間インキュベート後、NSF60の増殖は、2mg/ml Cell Titer 96TM MTS Reagent Powder(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム分子内塩)(Promega, USA)および0.92mg/mlメトスルホン酸フェナジン(Sigma, USA)を用いて生物活性のマーカーであるデヒドロゲナーゼ酵素の活性を測定して、調べた。細胞数はOD405値に示された。
【0199】
実施例4
融合タンパク質は抗血管形成機能および治療/診断機能の双方を持つ。
図2は、エンドスタチンと比べて、endo-CD融合タンパク質が内皮管試験(図2A〜2D)および走化性試験(図2E〜2H)においてほぼ等しい抗血管形成作用を有することを示す。エンドスタチン遺伝子トランスフェクションから回収された上清と同じく、エンドスタチン-CD融合遺伝子から得られた上清もHUVEC細胞管の形成(図2A、2Bおよび2C)および細胞走化性(図2E、2Fおよび2G)に対して阻害作用を示した。図2Dおよび2Hでは5視野を調べて、管または遊走細胞を数えて平均を求めた。
【0200】
図3は、融合遺伝子の治療または診断機能が検出可能であったことを示す。図3Aおよび図3BにはMTTアッセイを示す。CD遺伝子がトランスフェクトされた異なる濃度の5FUまたは5FCが提供されたので、endo-CD遺伝子トランスフェクションは293T細胞に対して死滅効果を示した。図3Cでは、Endo-GFP融合遺伝子をトランスフェクトされた293T細胞における緑色蛍光タンパク質発現が蛍光顕微鏡により検出することができた。図3Dでは、NSF60の細胞増殖は、エンドスタチン-GM-CSFプラスミドによりトランスフェクトされたCOS-7から得られた馴化培地によって刺激することができた。エンドスタチン-GM-CSFプラスミドによりトランスフェクトされたCOS-7から得られた馴化培地と共にインキュベートしたNSF60のOD405値は15.6nMの組換え型GM-CSFタンパク質と共にインキュベートした細胞よりもやや優れていた。従って、GM-CSF依存性NSF60の増殖により証明される通り、エンドスタチン-GM-CSFプラスミドによってコードされるタンパク質がGM-CSF機能を発現した。
【0201】
実施例5
抗血管形成−治療/診断用融合タンパク質の腫瘍特異的ターゲティング作用に関する例示的な材料および方法
インビトロにおける内皮細胞ターゲティング
抗血管形成/治療用または抗血管形成/診断用融合遺伝子の特異的ターゲティング作用を実証するために、本発明者らは予め確立された293Tエンドスタチン-GFP安定クローンを10cmプレートに播種した。同時に、異なる細胞系(MDA-231乳癌細胞、マウス内皮細胞-SVEC、およびヒト内皮細胞-HUVEC)を4チャンバープレートに播種した。細胞が接着した後、本発明者らはこの4穴プレートをその10cmプレートに入れて、すべてのウェルが被覆されるように十分な培地を加えた。48時間インキュベート後、4穴プレートをPBSで洗って、蛍光顕微鏡下で緑色の蛍光を観察した。
【0202】
インビボにおける腫瘍ターゲティング
本発明者らは、親細胞系またはエンドスタチン-GFP安定クローンから得られた2×105個のB16細胞を7〜9週齢のB57マウスに皮下注射した。各マウスの注射部位は2カ所である。実験群では、本発明者らは一方の部位にB16親細胞を注射して、他方にB16エンドスタチン-GFP細胞を注射した。対照群では、双方の部位にB16親細胞に由来する腫瘍細胞を注射した。14日後、腫瘍を回収して固定した。本発明者らは、免疫組織化学染色として抗GFP抗体を使用する。
【0203】
実施例6
抗血管形成治療/診断用融合タンパク質の腫瘍特異的ターゲティング効果
図4は、エンドスタチン-GFPが内皮細胞に特異的にターゲティングすることを示す。293Tエンドスタチン-GFP安定クローンと共に48時間インキュベート後、SVECマウス内皮細胞(E)には多くの緑色蛍光シグナルが検出できたが、MDA-231乳癌細胞(B)では検出できなかった。
【0204】
図5では、B16親腫瘍の血管壁にGFPシグナルが検出された。図5Aは実験群を示す。B16エンドスタチン-GFP安定細胞系の腫瘍において、び漫性のGFPシグナルが検出された。図5Bは、A(B-16親細胞系由来)の反対側の腫瘍において、血管壁(黒三角矢印)にGFPが検出されたことを示す。図5Cでは、対照群の双方のB-16親細胞系に由来する腫瘍にGFPシグナルが検出できたことを示す。
【0205】
実施例7
領域性および遠位腫瘍増殖の双方を阻害するエンドスタチン-GFPの動物モデルに関する例示的な材料および方法
エンドスタチン-GFPプラスミドを用いて、B16黒色腫細胞にトランスフェクトした。安定クローンが確立した後、本発明者らは、親細胞系またはエンドスタチン-GFP安定クローンから得られた2×105個のB16細胞を7〜9週齢のB57マウスに皮下注射した。動物を2群に分割した。各群はマウス10匹として、各マウスの注射部位は2カ所とした。実験群では、本発明者らは一方の部位にB16親細胞を注射して、他方にB16エンドスタチン-GFP細胞を注射した。対照群では、双方の部位にB16親細胞に由来する腫瘍細胞を注射した。14日目に腫瘍を測定して算出した。体積±S.D.をプロットした。
【0206】
限局性腫瘍に対する融合タンパク質の優れた抗癌作用
B16F10黒色腫腫瘍モデル−B16F10の細胞の1×106個または2.5×105個のいずれかを、6〜7週齢のC57/BL6免疫応答性雌性マウスの右腹側部に皮下注射した。接種4日後に、腫瘍(直径 約5mm)に対して、ルシフェラーゼ、エンドスタチン、IL12、またはエンドスタチン-IL12をコードする異なるプラスミドDNAおよび陽イオン性リポソームの複合体(生理食塩液100μl中)を直接注入した。この投与を、4日毎に1日3回、反復実施した。腫瘍への接種後17日に各実験群の腫瘍サイズを測定した。
【0207】
CT-26結腸癌モデル−CT26結腸癌細胞(2×105個)を7〜9週齢のB57CL6マウスの右腹側部に皮下注射した。同時に、マウスの左腹側部に対してもう一セットのCT-26黒色腫細胞(2×105個)を皮下注射した。腫瘍の刺激後4日に、ルシフェラーゼ(Luc)、エンドスタチン(Endo)、インターロイキン-12(IL-12)、またはEndo-IL12融合遺伝子を含む異なるプラスミドを左腹側部のCT-26腫瘍に腫瘍内注射した。この手順を週2回反復実施して、2日毎に腫瘍サイズを測定した。右腹側部の遠位腫瘍のサイズを算出して、投与期間に対してプロットした。
【0208】
実施例8
抗血管形成−治療/診断用融合タンパク質の動物モデル
図6は、安定クローンが発現したエンドスタチン-GFPが対側性および局所の腫瘍増殖を阻害することを示す。対照群では、すべての腫瘍を測定して全体の平均値を求めた。実験群の腫瘍は、それぞれの細胞系(B16親黒色腫細胞系またはエンドスタチン-GFP安定クローン)毎に測定して平均値を求めた。
【0209】
図7は、endo-IL12が、独立した異なる動物試験でのIL12またはエンドスタチン単独に比べて、優れた抗癌作用を持つことを示す。図7Aは、B16F10腫瘍に対する腫瘍内遺伝子療法を示す。エンドスタチン-IL12は、エンドスタチンおよびIL12遺伝子の双方に比べて、皮下異種移植片であるB16-F10黒色腫の癌に対して最も顕著な抗癌作用を示す。図7Bは、遠位原発腫瘍を2×105個の細胞で刺激した点を除いて、B16F10腫瘍に対する図7Aと同様の腫瘍内遺伝子療法を示す。endo-IL12は、依然、図7Cに示す通り、IL12およびエンドスタチン単独よりも優れた治療効果を示した。
【0210】
実施例9
遠位腫瘍に対する融合タンパク質の抗癌作用に関する材料および方法
エクスビボトランスフェクション:0日目に、B16-F10黒色腫細胞(2×105個)を7〜9週齢のB57CL6マウスの右腹側部に皮下注射した。全群とも、マウス10匹とした。本発明者らは、ルシフェラーゼ(Luc)、エンドスタチン(Endo)、シトシンデアミナーゼ(CD)およびエンドスタチン-CD(endo-CD)、抗血管形成欠失変異型タムスタチン(tum5)、インターロイキン-12(IL-12)、またはTum5-IL12融合遺伝子を含む異なるプラスミドを用いて、B16F10黒色腫細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後、これらの黒色腫細胞を回収して、1日目に別の試験群のマウスの左腹側部に注射した。この手順を4日目、7日目、10日目にさらに3回、反復実施した。右腹側部の遠位腫瘍を測定して、体積を算出し、投与期間に対してプロットした。
【0211】
安定クローン:B16-F10黒色腫細胞(2×105個)を7〜9週齢のB57CL6マウスの右腹側部に皮下注射した。2日後、エンドスタチン、IL12またはendo-IL12を発現している2×105個のB16F10癌細胞安定クローンを左腹側部に皮下注射した。この安定クローン癌細胞を週2回、繰り返し注射した。右腹側部の遠位腫瘍のサイズを2日毎に測定した。
【0212】
実施例10
遠位腫瘍に対する融合タンパク質の優れた抗癌作用
図8は、安定クローンまたはエクスビボトランスフェクションによって発現した融合タンパク質の遠位腫瘍に対する優れた抗癌作用を示す。図8Aでは、抗血管化学療法であるエンドスタチン-CD融合遺伝子のエクソビボ投与が反対側の腫瘍増殖に対して優れた阻害作用を示した。(Endo:エンドスタチン;CD:シトシンデアミナーゼ;Endo-CD:融合遺伝子)。図8Bは、抗血管免疫療法のTum5-IL12融合遺伝子のエクスビボ投与が遠位腫瘍に対してより優れた腫瘍阻害効果を発揮したことを示す(Tum5:タムスタチン抗血管形成性欠失変異型、IL12:インターロイキン-12、Tum5-IL12:融合遺伝子)。図8Cは、遠位CT26結腸癌増殖がEndo-IL12遺伝子療法によって最も著しく阻害されたことを示す。遺伝子の直接注入投与を受けていない測定腫瘍から遠位にあるCT26腫瘍部位に対して、異なる遺伝子を注入した。図8Dは、遠位腫瘍に対するエンドスタチン-IL12の安定系の投与を示す。Endo-IL12は、他の治療タンパク質よりも優れた抗癌作用を示した。
【0213】
実施例11
結果の意義
上記の結果は、本明細書に記載された試験の結果に示される通り、抗血管形成融合遺伝子が遺伝子療法および診断用試薬として有用であることを実証した。図1では、融合遺伝子は融合タンパク質を発現させることが可能であり、この融合タンパク質はイムノブロッティングおよびELISAによって検出された。図2および図3に示す通り、この融合タンパク質は実用的であり、抗血管形成特性ならびに少なくとも一部は結合したタンパク質に起因する機能を持つ。これらの機能アッセイにおいて、例えば、融合タンパク質であるエンドスタチン-CDは、内皮管形成試験および走化性試験により示される通り、血管新生を野生型エンドスタチンと同程度に阻害することが可能であった。さらに、例示的エンドスタチンに結合した治療/診断用タンパク質は、それぞれの野生型のように、依然、機能を示す。エンドスタチン-GFPは緑色蛍光を発する。エンドスタチン-GM-CSFはNSF60細胞の増殖を誘導することが可能であり、この増殖はGM-CSF依存性である。エンドスタチン-CDは無毒性の5-FCを有毒な5-FUに転換し、それによって293T細胞およびHUVEC細胞(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞)の双方を死滅させることができた。
【0214】
インビトロ試験(図4)および病理学的試験(図5)の双方において、エンドスタチン-GFPは内皮細胞特異的であることが示されている。図4では、内皮細胞(SVEC)のみがエンドスタチン-GFPを含む馴化培地と共にインキュベートした際にGFPシグナルを発現している。図5では、エンドスタチン-GFPはエンドスタチン-GFP安定クローン腫瘍(図5A)から遠位親B16F10黒色腫細胞まで移動することができる。エンドスタチン-GFPは抗GFP抗体によって検出される(図5B)。一方、B16-F10腫瘍を持つマウスにエンドスタチン-GFP安定クローン腫瘍を接種しなかった場合、親細胞はGFPシグナルを示さなかった(図5C)。言い換えると、融合タンパク質であるエンドスタチン-GFPのエンドスタチンコンポーネントが遠位腫瘍血管部位にGFPタンパク質を誘導することができた。このように、抗血管形成タンパク質(この例示的ケースの場合はエンドスタチン)を用いることによって、それ以外の非腫瘍性血管に特異的なタンパク質(例えば、GFPなど)が腫瘍部位に送達されることが実証される。さらに、GFPによって発せられる蛍光シグナルが検出でき、また、エンドスタチンが腫瘍の新たな血管を標的とすることから、エンドスタチン-GFPはその他の態様において診断ツールとして役立つ。
【0215】
最後に、融合遺伝子ならびにコードされる融合タンパク質は、治療用試薬として有用である。本発明者らは、例えば、黒色腫(図7Aおよび図7B)ならびに結腸癌(図7C)を持つマウスの治療においてエンドスタチンまたはIL12単独よりも優れた抗癌作用を示すエンドスタチン-IL12の融合遺伝子を使用している。これらの遺伝子にコードされる融合タンパク質はもう一つの動物試験(図8)に示される通りタンパク質治療用試薬としても有効であり、融合遺伝子もしくは安定クローンをエクスビボにおいて投与された腫瘍細胞(図8Aおよび図8B)、または融合遺伝子(図8C)もしくは安定クローン(図8D)を注入された確立した腫瘍は「タンパク工場」として機能し、分泌されたタンパク質は遠位の腫瘍増殖を阻害することができた。
【0216】
実施例12
治療用または診断用物質に結合した血管形成阻害物質のエクスビボにおける試験
抗癌療法剤の一つの有効な生物学的特性は、インビボにおいて腫瘍原性を抑制する能力である。その可能性を調べるために、いくつかの態様において、本明細書に示された試験では使用されていない治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質の抗腫瘍活性を実証することができる。例えば、エクスビボにおける腫瘍原性試験はヌードマウス癌モデルを用いて実施することができる。例示的な癌細胞系として、ヒト乳癌細胞系であるMCF-7および前立腺癌細胞系であるPC-3に、培養プレート内でSNリポソームによって送達される融合遺伝子をトランスフェクトすることができる。24時間後、処理した細胞を慎重に回収して、ヌードマウスの乳腺脂肪パッド(mfp)(MCF-7の場合)または皮下結合組織(PC-3の場合)に接種した。例えば、MCF-7では400万個の細胞を接種して、PC-3では100万個の細胞を接種することができる。空のベクターであるpcDNA3をトランスフェクトした細胞を対照として使用することができる。接種した腫瘍のサイズを週1回測定することができる。
【0217】
この「エクスビボ試験」はインビボにおける遺伝子送達の問題点を無視して、至適な遺伝子送達条件下において抗血管形成特性を持つ融合遺伝子を含む腫瘍細胞は対照群よりも腫瘍増殖能が低い可能性があることを示している。
【0218】
実施例13
治療用または診断用物質に結合した血管形成阻害物質のエクスビボにおける試験
いくつかの態様において、本明細書に述べられるような、または本明細書に示される内容に基づいて当業者によって調製されるような抗血管形成融合遺伝子産物などの治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質は次のインビボ試験で使用される。確立された腫瘍を持つマウスに治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を注射などで投与すると、適切な対照と比べて、マスにおいて腫瘍増殖の阻害が得られることが示される。
【0219】
例えば非ウイルス性遺伝子送達系(SN)および融合遺伝子からなる、乳癌における全身性遺伝子療法を利用することができる。SN-融合遺伝子は全身性に投与することが可能であり、例えば、ヌードマウスに移植したヒト乳癌細胞の増殖および転移を阻害することが示されていて、いくつかの態様においては投与された動物の寿命を延長する。
【0220】
明らかに、本明細書に開示される方法は、本発明の状況において特定の融合遺伝子に対して有用であることが証明されている。本明細書に示される内容に従って、当業者は抗血管形成活性、抗細胞増殖活性、抗腫瘍活性、プロアポトーシス活性、またはそれらの組み合わせに関して、任意の数の融合遺伝子を調製および試験することができる。
【0221】
実施例14
治療用または診断用物質に結合した例示的血管形成阻害物質の試験
抗腫瘍活性に関する限り、治療用または診断用物質に結合する血管新生阻害物質は、前記の実施例に加えて、またはそれ以外に、細胞系、細胞培養物、および/またはモデルのような動物試験において試験が行われる。本発明の一般的態様において、例えば、融合遺伝子はリポソーム、アデノウイルスベクターまたはそれらの組み合わせなどのベクターによって抗腫瘍活性に関するヌードマウスモデルに送達される。抗腫瘍活性が実証されると、免疫適格マウスを用いて潜在的毒性がさらに調べられて、続いて臨床試験により検討が行われる。
【0222】
具体的態様において、抗血管形成融合遺伝子の優先的増殖阻害活性は少なくとも一種類の動物において検討される。つまり、例えば、癌細胞系がヌードマウスの乳腺脂肪パッドに投与されて乳癌異種移植モデルが作製される。遺伝子型または発現レベル(例えば、HER-2/neu陽性またはHER-2/neu陰性であるか否かなど)に関わらず、任意の癌細胞が本発明の範囲内である。具体的態様において、HER-2/neuを過剰発現している乳癌細胞系(例えば、SKBR3および/またはMDA-MB361など)が試験のためなどに利用される。腫瘍が一定のサイズに達した後、融合遺伝子およびいくつかの態様においては対照が、リポソームのような許容される担体との混合物として、例えば静脈内注射などでマウスに投与される。これらの投与から得られる腫瘍サイズおよび生存曲線を比較して、統計学的に解析する。
【0223】
本発明のいくつかの態様において、マウス動物モデルがターゲティング抗血管形成融合遺伝子産物の試験に用いられる。一つの具体的態様において、両側性の黒色腫または結腸腫瘍モデルが用いられる。もう一つの態様において、一側性の腫瘍内遺伝子療法プロトコールが用いられる。自殺治療遺伝子がターゲティング融合ポリペプチドとして用いられるもう一つの態様において、モデルにプロドラッグ(例えば、5FCなど)が腹腔内投与された後に自殺治療遺伝子が送達される。いくつかの態様において、腫瘍ターゲティング効果として反対側の腫瘍サイズが評価される。例えば、プロドラッグとして投与される5-FCと共にエンドスタチン-シトシンデアミナーゼを用いる自殺遺伝子療法に加えて、エンドスタチン-IL12に関しても同様の方法が用いられる。いくつかの態様においては、化学療法の効果に関して同側性の腫瘍サイズが評価される可能性もある。
【0224】
実施例15
治療用または診断用物質に結合した補足的血管形成阻害物質の調製
前記の実施例におけるデータおよび本明細書に別途記載される内容に基づいて、当技術分野の知識に加えて、当業者は、治療用または診断用物質に結合した補足的融合血管新生阻害物質を作製する意欲を持ち、かつ、作製する能力を持ち、さらに、本明細書に述べられる方法論を用いて本発明の状況における有用性を調べることができる。
【0225】
実施例16
治療用または診断用物質に結合した補足的血管形成阻害物質の試験
本明細書に開示された例示的態様以外の治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質が作製されると、本明細書に述べられるように、関連する細胞系における細胞培養物を用いた試験を実施することができる。さらに、例えばFACS分析の使用などにより抗血管形成融合遺伝子産物について試験を実施することができる。さらに、具体的態様において、本明細書に述べられるようなエクソビボの系またはインビボの系を用いた補足的抗血管形成融合遺伝子産物の試験を行うことができる。
【0226】
実施例17
臨床試験
この実施例は、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質を用いたヒト治療プロトコールの開発に関する。具体的態様において、治療用または診断用物質に結合した血管新生阻害物質は、単独またはその他の薬剤と併用される、タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドを含む抗血管形成融合遺伝子産物、または抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸である。具体的態様において、その他の薬剤も腫瘍阻害のように血管新生の治療に有用である。具体的態様において、その薬剤は癌の治療に有用である。抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、および抗癌剤の投与は、様々な癌の臨床治療に利用できる。このような治療は、例えば従来の化学療法計画に対して耐性である卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵癌、脳の癌、結腸癌および肺癌患者の治療における抗腫瘍療法の特に有用なツールである。
【0227】
患者の治療およびモニタリングを含む臨床試験実施の様々な要素は、本発明の開示の見地から当業者には既知である。次の情報は、臨床試験における抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸の使用に関する一般的目安を示すものである。
【0228】
臨床試験のために選択される進行した転移性の乳癌、卵巣上皮癌、膵癌、結腸癌、またはその他の癌の患者は一般に癌を発症するリスクが高いと考えられ、現時点では寛解期にある癌に対して過去に治療を受けたことがあり、または少なくとも1コースの従来の療法に対して応答しないと考えられる。例示的臨床プロトコールにおいて、患者は胸膜腔または腹腔にテンコフカテーテルまたはその他の適切な器具の留置を受ける可能性があり、胸水/腹水の連続採取を受ける可能性がある。一般に、胸膜腔または腹腔における既知の小房形成がないこと、クレアチニン値が2mg/dl未満であること、およびビリルビン値が2mg/dl未満であることが確認される。患者は正常な凝固特性を示さなければならない。抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、およびその他の抗癌剤の投与に関して、テンコフカテーテルまたは代替器具は、このような器具が事前の手術によって既に留置されていない限り、胸膜腔または腹腔に設置することができる。胸水または腹水の試料を採取して、ベースラインの細胞充実性、細胞学、LDH、ならびにその液体試料における適切なマーカー(CEA、CA15-3、CA125、PSA、p38(リン酸化型および非リン酸化型)、Akt(リン酸化型および非リン酸化型)および細胞における適切なマーカー(抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、またはそれらをコードする核酸)を評価して記録することができる。
【0229】
同一の手順において、抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸は単独またはその他の抗癌剤と併用して投与することができる。投与は、胸膜腔/腹腔、腫瘍内に直接、または全身性に行うことができる。開始用量は0.5mg/kg体重とすることができる。グレード>3の毒性がない各用量段階を、3名の患者に投与することができる。薬剤に関連するグレード2の毒性が検出されるまで、用量漸増は増加分100%にて実施することができる(0.5mg、1mg、2mg、4mg)。その後の用量漸増は増加分25%にて続行することができる。抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸のロットおよび抗癌剤のロットについて求められた全体のエンドトキシン量がいずれかの所与の患者において5EU/kgを超える場合は、投与量を2回の点滴に等分に分割して6時間間隔を空けることができる。
【0230】
抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、および/またはその他の抗ガン剤の併用は、短い注入時間で投与することもできれば、あるいは7〜21日の期間を通して一定の速度で注入することもできる。抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸の注入は、単独または抗癌剤および/もしくはエモジンのようなチロシンキナーゼ阻害物質と併用して投与することができる。いずれかの用量で行われる注入は、各注入後に達する毒性に依存する。従って、いずれかの単回注入後または安定速度での注入における一定期間にグレードIIの毒性に達した場合は、毒性が回復しない限り、さらなる投与を中止するか、安定速度での注入を停止しなければならない。抗血管形成融合タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、または抗血管形成タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を抗癌剤と併用する場合の増加用量は、患者の約60%がいずれかのカテゴリーにおいて許容されないグレードIIIまたはIVの毒性を示すまで、患者の群に対して投与される。この値の2/3の用量を安全用量と定義することができる。
【0231】
身体的検査、腫瘍の測定および臨床検査は、勿論、投与前および投与後約3〜4週毎に実施しなければならない。臨床検査には、CBC(完全血球算定)、鑑別および血小板数、尿検査、SMA-12-100(肝および腎機能検査)、凝固特性、および疾患の程度を調べるためまたは既存の症状の原因を調べるためのその他の適切なあらゆる化学的検査が含まれなければならない。血清中の適切な生物学的マーカー、例えば、CEA、CA15-3、p38(リン酸化型および非リン酸化型)およびAkt(リン酸化型および非リン酸化型)、p185などがモニターされなければならない。
【0232】
疾患の経過をモニターして抗腫瘍反応を評価するために、患者は4週毎に適切な腫瘍マーカーの検査を受けなければならず、1回目で異常が認められた場合はCBC、鑑別および血小板数を週2回、4週間にわたって検査し、その後、骨髄抑制が認められない場合は週1回検査を行うべきであると考えられる。いずれかの患者に長期の骨髄抑制が認められた場合は、汎白血球減少症の原因である腫瘍の骨髄浸潤の可能性を排除するために骨髄検査が勧められる。凝固特性は4週毎に調べなければならない。SMA-12-100は週1回、実施しなければならない。胸水/腹水は初回投与後72時間に試料採取して、続いて当初2回のコース中は週1回、その後はプログレッションまたは試験中止まで4週毎に試料を採取することができる。細胞充実性、細胞学、LDH、ならびに液体試料中の適切なマーカー(CEA、CA15-3、CA125、ki67、およびアポトーシスを測定するTunelアッセイ、Akt)および細胞中のマーカー(Akt)を調べることができる。測定可能な疾患が存在する場合は、腫瘍の測定値は4週毎に記録されなければならない。腫瘍反応の評価には、適切な放射線医学的検査を8週毎に反復実施しなければならない。肺活量測定およびDLCOは、療法開始後4および8週、ならびに試験参加終了時に反復実施することができる。尿検査は4週毎に実施することができる。
【0233】
臨床反応は許容される測定によって定義することができる。例えば、完全反応は測定可能なすべての疾患が少なくとも1ヵ月間消失することによって定めることができる。これに対して部分反応は、評価可能なすべての腫瘍結節の直交する径の積の和が50%もしくはこれを超える減少、または少なくとも1カ月にわたって腫瘍部位が拡大しないことによって定めることができる。同様に、混合反応は、1カ所または数カ所におけるプログレッションを伴う評価可能なすべての病変の直交する径の積が50%またはこれを超えて減少することによって定めることができる。
【0234】
参照
本明細書において言及されるすべての特許および出版物は、本発明が関連する技術分野の業者のレベルを示すものである。すべての特許および出版物は、個々の各出版物が参照として組み入れられることが具体的かつ個別に明記されるのと同様に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0235】
特許
米国特許第4,683,202号
米国特許第4,797,368号
米国特許第4,879,236号
米国特許第5,139,941号
米国特許第5,220,007号
米国特許第5,284,760号
米国特許第5,354,670号
米国特許第5,366,878号
米国特許第5,389,514号
米国特許第5,635,377号
米国特許第5,641,484号
米国特許第5,670,488号
米国特許第5,789,166号
米国特許第5,798,208号
米国特許第5,830,650号
米国特許第5,871,986号
米国特許第5,925,565号
米国特許第5,928,906号
米国特許第5,935,819号
国際公開公報第99/16889号
【0236】
出版物



【0237】
本発明およびその利点については詳細の述べられているが、添付される特許請求の範囲に規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に様々な変更、置換および修正を加えることができることが理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に述べられるプロセス、機械、製造、重要な組成物、手段、方法および工程に関する特定の態様に限定されることを意図するものではない。同様に、当業者は本発明の開示から、本明細書に述べられるそれぞれの態様と実質的に同一の機能を果たす、または実質的に同一の結果に至る既存または今後開発されるプロセス、機械、製造、重要な組成物、手段、方法または工程は本発明に従って利用することができることを容易に認識すると思われる。従って、添付される特許請求の範囲は、このようなプロセス、機械、製造、重要な組成物、手段、方法または工程をその範囲内に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】図1Aおよび1Bは、抗血管形成性治療/診断用融合タンパク質が検出可能であることを示す。図1Aは、239細胞から得られた上清の抗エンドスタチン抗体ウェスタンブロットを示す(18KDエンドスタチン(□)、58KDエンドスタチン-CD(黒三角矢印)、および93KD endo-IL12(←))。図1BではELISAキット(エンドスタチン特異的)が使用された。
【図2】図2A〜2Hは、エンドスタチンと比べて、endo-CD融合タンパク質が内皮管試験(2A〜2D)および走化性試験(2E〜2H)においてほぼ等しい抗血管形成作用を示したことを示す。図2A〜2Cでは、HUVEC細胞の管形成を調べて、図2E〜2Gでは細胞走化性について調べた。図2Dおよび図2Hでは5視野を調べて、それぞれの管または遊走細胞数を数えて平均を求めた。
【図3】図3A〜3Dは、融合遺伝子の治療または診断機能が検出できたことを示す。図3Aおよび図3BはMTTアッセイを示す。図3Cは、Endo-GFP融合遺伝子をトランスフェクトされた293T細胞における緑色蛍光タンパク質の発現を示す。図3Dでは、エンドスタチン-GM-CSFプラスミドによりトランスフェクトされたCOS-7から得られた馴化培地によるNSF60の細胞増殖の刺激について検討した。
【図4】図4A〜4Fは、エンドスタチン-GFPが内皮細胞に特異的にターゲティングすることを示す。
【図5】図5A〜5Cは、B-16親腫瘍の血管壁にGFPシグナルが検出されたことを示す。図5Aは、B-16エンドスタチン-GFP安定細胞系の腫瘍を用いた実験群におけるGFPの検出を示す。図5Bは、血管壁(黒三角矢印)におけるA(B-16親細胞系由来)の反対側の腫瘍におけるGFPの検出を示す。図5Cは、対照群における両側性のB-16親細胞系由来の腫瘍におけるGFPの検出を示す。
【図6】図6は、安定クローンが発現するエンドスタチン-GFPが対側性および局所の腫瘍増殖を阻害することを示す。対照群では、すべての腫瘍を測定して全体の平均値を求めた。実験群の腫瘍は、それらの細胞系(B16親黒色腫細胞系またはエンドスタチン-GFP安定クローン)毎に測定して平均値を求めた。
【図7】図7A〜7Cは、endo-IL12が、独立した異なる動物試験でのIL12またはエンドスタチン単独に比べて、優れた抗癌作用を持つことを示す。図7Aは、B16F10腫瘍に対する腫瘍内遺伝子療法を示す。図7Bは、遠位原発腫瘍を2×105個の細胞で刺激した点を除いて、B16F10腫瘍に対する図7Aと同等の腫瘍内遺伝子療法を示す。図7Cは、endo-IL12をIL12およびエンドスタチン単独と比較するグラフを示す。
【図8】図8A〜8Dは、安定クローンまたはエクスビボトランスフェクションによって発現した融合タンパク質の遠位腫瘍に対する優れた抗癌作用を示す。図8Aは、抗血管化学療法のエクスビボにおけるエンドスタチン-CD融合遺伝子の投与を示す(Endo:エンドスタチン;CD:シトシンデアミナーゼ;Endo-CD:融合遺伝子)。図8Bは、抗血管免疫療法のエクスビボにおけるTum5-IL12融合遺伝子の投与が遠位腫瘍に対してより優れた腫瘍阻害作用を発揮したことを示す(Tum5:タムスタチン抗血管形成性欠失変異型、IL12:インターロイキン-12、Tum5-IL12:融合遺伝子)。図8Cは、遠位CT26結腸癌が融合遺伝子の存在下において増殖することを示す。遺伝子の直接注入投与を受けていない測定腫瘍から遠位にあるCT26腫瘍部位に対して、様々な遺伝子を注入した。図8Dでは、遠位腫瘍に対するエンドスタチン-IL12の安定系の投与を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
抗血管形成ポリペプチド領域が、エンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチンまたは可溶性VEGFレセプター2の領域である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むものとしてさらに定義される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がインターロイキン領域としてさらに定義される、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がインターロイキン-12領域である、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域が自殺タンパク質領域としてさらに定義される、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項7】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がシトシンデアミナーゼ領域である、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項8】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がプロアポトーシス領域としてさらに定義される、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項9】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域が変異型Bik領域である、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
診断用タンパク質またはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドとしてさらに定義される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項11】
診断用タンパク質またはポリペプチド領域が緑色蛍光タンパク質領域である、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項12】
細胞を、治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドと接触させる工程を含む方法。
【請求項13】
血管新生ポリペプチド領域が、エンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチンまたは可溶性VEGFレセプター2の領域である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ポリペプチドが、治療用タンパク質またはポリペプチド領域に融合した抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドとしてさらに定義される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がインターロイキン領域としてさらに定義される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がインターロイキン-12領域である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域が自殺タンパク質領域としてさらに定義される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
治療用タンパク質またはポリペプチド領域がシトシンデアミナーゼ領域である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
診断用タンパク質またはポリペプチド領域に融合した抗血管形成ポリペプチド領域を含むものとしてさらに定義される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
診断用タンパク質またはポリペプチド領域が緑色蛍光タンパク質領域である、請求項15記載の方法。
【請求項21】
細胞が被験体に含まれるものとしてさらに定義される、請求項12記載の方法。
【請求項22】
被験体がマウスである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
被験体がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
血管新生依存性疾患を治療または診断する方法としてさらに定義される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
血管新生依存性疾患が癌としてさらに定義される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
癌が、頭部および頚部の癌、卵巣癌、甲状腺癌、口腔癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、血管腫、肉腫、肺癌、脳の癌、膵癌、肝癌、膀胱癌、消化器癌、白血病、リンパ腫またはミエローマである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドを薬学的に許容される賦形剤に加えて被験体に投与する工程を含むものとしてさらに定義される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドが脂質と複合体を形成する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドをコードする核酸を被験体に投与する工程を含むものとしてさらに定義される、請求項21記載の方法。
【請求項30】
核酸が、プラスミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターまたはリポソームに含まれる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
核酸が薬学的に許容される賦形剤に分散されている、請求項29記載の方法。
【請求項32】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチド、または治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドをコードする核酸を得る工程;および
該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を患者に投与する工程
を含む、癌の治療または診断方法。
【請求項33】
患者が癌を有する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
癌が、頭部および頚部の癌、卵巣癌、甲状腺癌、口腔癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、血管腫、肉腫、肺癌、脳の癌、膵癌、肝癌、膀胱癌、消化器癌、白血病、リンパ腫またはミエローマである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドが患者に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項36】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドをコードする核酸が患者に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
治療用タンパク質もしくはポリペプチド領域または診断用タンパク質もしくはポリペプチド領域に結合する抗血管形成ポリペプチド領域を含むポリペプチドをコードする核酸。
【請求項38】
ベクターに含まれるものとしてさらに定義される、請求項37記載の核酸。
【請求項39】
脂質と複合体を形成するものとしてさらに定義される、請求項37記載の核酸。
【請求項40】
薬学的に許容される賦形剤に含まれるものとしてさらに定義される、請求項37記載の核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−508635(P2006−508635A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−501442(P2004−501442)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/014243
【国際公開番号】WO2003/093303
【国際公開日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】