説明

治療用ペプチド

【課題】反復投与において生物有効性の改善を示す化合物を提供する。
【解決手段】抗体Fc領域および一つまたはそれ以上の水溶性ポリマーを含むように修飾されたポリペプチドまたはペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月8日に出願した米国特許仮出願第60/586,419号の優先権を主張し、また、そのすべての内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0002】
本願発明は、一般に、反復投与で生物有効性の改善を示す化合物に関する。 具体的には、本願発明は、抗体Fc領域および一つまたはそれ以上の水溶性ポリマーを含むように修飾されたポリペプチドまたはペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
組換えタンパク質は、治療薬の新分類に属する。 このような組換え治療薬は、タンパク質製剤および化学修飾に進歩をもたらした。 修飾によって、主として、治療用タンパク質が、タンパク質分解酵素に曝露されることを阻止することで、これら治療用タンパク質を保護できることが確認されている。 また、タンパク質の修飾によって、治療用タンパク質の安定性、循環時間、および生物活性を増大させることもできる。 タンパク質修飾および融合タンパク質を記載している文献として、Francis (1992), Focus on Growth Factors 3:4-10(Mediscript, ロンドン)があり、その開示は、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0004】
有用な修飾として、ポリペプチドと抗体の「Fc」ドメインとの組み合わせがある。 抗体は、二つの機能的に独立した部分(「Fab」として知られている可変ドメイン(抗原に結合する)および「Fc」として知られている定常ドメイン(食細胞による攻撃および補体活性化のようなエフェクター機能に関係する)を含む。 Fcの血中半減期が長いのに対して、Fabの半減期は短い。 Capon et al., (1989), Nature 337:525-31。 Fcドメインは、治療用タンパク質と共に構築される場合、半減期の長期化を実現するか、あるいは、Fcレセプター結合、プロテインA結合、補体結合、および、おそらくは胎盤通過のような機能を組み込むことができる(同書)。 表1に、当該技術分野で周知のFc融合物の利用形態をまとめている。
【0005】
【表1】

【0006】
ポリエチレングリコール(「PEG」)融合タンパク質およびペプチドは、医薬品、人工移植物、それに、生体適合性が重要なその他の用途への利用に関連して研究がなされてきた。 医薬品および移植物、そして、通常は、分子およびその表面にPEGが付着する活性部分を有する種々のPEG誘導体が提案されている。 例えば、PEG誘導体は、表面にPEGをカップリングすることにより、湿潤、帯電、および、この表面へのタンパク質またはタンパク質残基などのその他のタイプの分子の付着を制御するとされている。
【0007】
その他の研究において、PEGのカップリング(「PEG化」)は、生物活性分子の臨床用途で遭遇する障害の克服に望ましいことが示されている。 例えば、公開されたPCT公開公報第WO92/16221号には、多くの潜在的な治療用タンパク質は、血清中での半減期が短いことが明らかになった、と記載されている。
【0008】
PEG化は、分子の見かけの分子量を増加させることによって、血流からの浄化率を低下させる。 一定サイズまでは、タンパク質の糸球体濾過率は、タンパク質のサイズに反比例する。 従って、PEG化が浄化率を低下させる能力は、一般に、タンパク質に付着されるPEG基の数の関数ではなく、改変されたタンパク質全体の分子量の関数として表現される。 浄化率の低下により、非PEG化材料よりも高い効力がもたらされる。 例えば、Conforti et al., Pharm. Research Commun. vol.19, p.287 (1987)およびKatre et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. vol.84, p.1487 (1987)を参照のこと。
【0009】
さらに、PEG化は、タンパク質の凝集を減少させ(Suzuki et al., Biochem. Biophys. Acta vol. 788, p.248 (1984))、タンパク質の免疫原性を改変し(Abuchowski et al., J. Biol. Chem. vol.252, p.3582 (1977))、そして、例えば、PCT公開公報第WO92/16221号に記載されているように、タンパク質の可溶性を増大させ得る。
【0010】
タンパク質のPEG化は、表面および分子にPEGを付着させる際に認められる現象の一部に関与する。 PEG化試薬の大部分は、ポリペプチドの遊離1級アミノ基と反応する。 これらの遊離アミンのほとんどは、リジンアミノ酸残基のイプシロンアミノ基である。 一般的なタンパク質は、多数のリジンを有する。 従って、複数のPEG分子のランダムな付着によって、しばしばタンパク質活性が喪失する。
【0011】
さらに、PEG化タンパク質の治療用途での利用を意図する場合、非特異的PEG化を用いて複数の物質の混合物が生成すると、再現可能かつ特性決定可能な性質を有する生成物を調製することが困難になる。 この非特異的PEG化によって、治療薬を評価すること、ならびに効力および投薬情報を規定することが困難になる。 しかし、このようなタンパク質の部位選択的なPEG化によって、活性損失を招かない所望のPEG化特性の獲得が可能で、かつ再現可能に修飾された材料が得られる。
【0012】
ポリエチレングリコール分子をタンパク質に付着するために、種々の手段が用いられている。 アミノ基、例えば、リジン残基上のアミノ基、またはN末端のアミノ基は、このような付着に便利である。 例えば、Royer(そのすべての内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する米国特許第4,002,531号)は、ポリエチレングリコール分子を酵素に付着するために、還元アルキル化を用いている。 1993年4月28日に公開されたWrightによるEP 0 539 167(そのすべての内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する)、「Peg Imidates and Protein Derivates Thereof」は、遊離アミノ基を有する有機化合物およびペプチドが、PEGまたは関連する水溶性有機ポリマーの誘導体を用いて修飾されることを記載している。 1990年2月27日に発行されたShawによる米国特許第4,904,584号(そのすべての内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する)は、反応性アミン基を介してポリエチレングリコール分子を付着させるための、タンパク質中のリジン残基の修飾に関する。 上記した方法でPEGを含むように修飾された治療用タンパク質が増加しつつあることは、以前から記載されている。 例えば、本明細書の一部を構成するものとして、その各々の内容を援用する欧州特許出願公開EP 0401 384;EP 0 473 268;EP 0 335 423;EP 0 442 724;EP 0 154 316も参照のこと。
【0013】
タンパク質にポリマーを付着させるためのその他の方法は、連結基の役割を果たす部分を用いる工程を含む。 しかし、このような部分は、抗原性である場合もある。 連結基が関与しないトレシルクロリド法が利用可能であるが、この方法は、トレシルクロリドの使用により有毒な副産物が生成するため、治療薬の製造に用いるのは困難な場合がある。
【0014】
本明細書の一部を構成するものとして、その各々の内容を援用するFrancis et al., (Stability of protein pharmaceuticals:in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization(Ahern.,T. and Manning,M.C. eds.) Plenum, N.Y., 1991)およびDelgado et al., 「Coupling of PEG to Protein By Activation With Tresyl Chloride,Applications In Immunoaffinity Cell Preparation」(Fisher et al., eds., Separations Using Aqueous Phase Systems,Applications In Cell Biology and Biotechnology,Plenum Press,N.Y.N.Y.,1989,pp.211-213)を参照のこと。
【0015】
一般に、タンパク質リガンドとそのレセプターとの相互作用は、比較的大きな界面でしばしば生じる。 しかし、レセプターに結合したヒト成長ホルモンにおいて実証されているように、実際には、関係する少数の残基のみが、界面における結合エネルギーの大部分に寄与する。 Clackson,T. et al., Science 267:383-386(1995)。 この知見と、残存するタンパク質リガンドの大部分が、単に結合エピトープを正しいトポロジーに提示する役割しか果たさないという事実から、はるかに小さなサイズの活性リガンドを見出すことが可能になる。 従って、「ペプチド」の長さ(2個〜40個のアミノ酸)しか有さない分子でも、所定の大きなタンパク質リガンドのレセプタータンパク質と結合する。 このようなペプチドは、大きなタンパク質リガンドの生物活性を模倣する(「ペプチドアゴニスト」)か、または、競合的結合によって、大きなタンパク質リガンドの生物活性を阻害する(「ペプチドアンタゴニスト」)。
【0016】
ファージディスプレイペプチドライブラリーは、このようなペプチドアゴニストおよびアンタゴニストを同定する際に強力な方法として出現した。 例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それらの内容の各々を援用するScott et al., (1990), Science 249:386;Devlin et al., (1990), Science 249:404;米国特許第5,223,409号(1993年6月29日発行);米国特許第5,733,731号(1998年3月31日発行);米国特許第5,498,530号(1996年3月12日発行);米国特許第5,432,018号(1995年7月11日発行);米国特許第5,338,665号(1994年8月16日発行);米国特許第5,922,545号(1999年7月13日発行);WO96/40987(1996年12月19日公開);および、WO98/15833(1998年4月16日公開)を参照のこと。 このようなライブラリーにおいて、ランダムペプチド配列は、繊維状ファージのコートタンパク質と融合することによって出現する。 一般的には、出現したペプチドは、抗体を固定化したレセプターの細胞外ドメインに対して親和的に溶出される。 保持されたファージは、アフィニティー精製および再増殖により漸次濃縮され、そして、最もよく結合しているペプチドが、一つまたはそれ以上の構造上関連するペプチドのファミリー内の関与する残基を同定するために配列決定される。 例えば、二つの異なるファミリーを同定しているCwirla et al., (1997), Science 276:1696-9の文献を参照のこと。 また、ペプチド配列は、アラニンスキャンによるかまたはDNAベルでの変異によって、どの残基が安全に置換されるかを示唆される。 変異ライブラリーは、最良のバインダーの配列をさらに最適化するために作製され、かつ、スクリーニングされる。 Lowman(1997)、Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:401-24。
【0017】
その他の方法は、ペプチド研究におけるファージディスプレイに匹敵する。 ペプチドライブラリーは、lacリプレッサーのカルボキシル末端に融合され、そして、大腸菌において発現される。 大腸菌ベースのその他の方法では、ペプチドグリカンに関連するリポタンパク質(PAL)との融合によって細胞外膜上での出現が可能になる。 これら方法および関連する方法は、「大腸菌ディスプレイ」と総称されている。 可溶性ペプチド混合物をスクリーニングするためのその他の生物学的手法は、発現および分泌のために酵母を用いる。 Smith et al., (1993), Mol. Pharmacol. 43:741-8を参照のこと。 Smith et al.,の方法および関連する方法は、「酵母ベースのスクリーニング」と称されている。 その他の方法において、ランダムRNAの翻訳は、リボソーム放出の前に停止され、その結果、関連するRNAが依然として付着しているポリペプチドのライブラリーを生じる。 この方法および関連する方法は、「リボソームディスプレイ」と総称されている。
【0018】
その他の方法は、RNAへのペプチドの化学結合を用いる;例えば、Roberts & Szostak (1997), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:12297-303を参照のこと。 この方法および関連する方法は、「RNAペプチドスクリーニング」と総称されている。 ポリエチレンロッドまたは溶媒浸透性樹脂のような安定な非生体物質上にペプチドを固定して、化学的に得られるペプチドライブラリーが開発されている。 その他の化学的に得られるペプチドライブラリーは、フォトリソグラフィーを用いてスライドガラス上に固定されたペプチドをスキャンする。 これら方法および関連する方法は、「化学ペプチドスクリーニング」と総称されている。 化学的ペプチドスクリーニングによって、非ペプチド成分のみならず、D-アミノ酸およびその他の非天然類似体の使用も可能になるという点で有利である。 生物学的方法および化学的方法のいずれもが、Wells & Lowman (1992), Curr. Opin. Biotechnol. 3:355-62に概説されている。
【0019】
既知の生物活性ペプチドの場合、有利な治療特性を有するペプチドリガンドの合理的な設計が行われる。 このような手法では、ペプチド配列に段階的な変更がなされ、ペプチドの生物活性または予測される生物物理学的特性(例えば、溶液構造)に対する置換の影響が決定される。 これらの技術は、「合理的設計」と総称されている。 ある技術によれば、一連のペプチドが調製され、1回に一つの残基がアラニンで置換される。 この技術は、一般には、「アラニンウォーク」または「アラニンスキャン」と呼ばれている。 二つの残基(連続的または離間した)が置換される場合は、「ダブルアラニンウォーク」と呼ばれている。 生じたアミノ酸置換を、それ単独で、または組み合わせて用いることで、有利な治療特性を有する新しいペプチドが得られる。
【0020】
タンパク質の間の相互作用の構造解析もまた、大きなタンパク質リガンドの結合活性を模倣するペプチドを示唆する上で用いられる。 このような解析において、結晶構造は、ペプチドを設計する際の大きなタンパク質リガンドの重要な残基の同一性および相対配向を示唆する。 例えば、Takasaki et al., (1997), Nature Biotech. 15:1266-70を参照のこと。 これら方法および関連する方法は、「タンパク質構造解析」と呼ばれている。 また、これらの分析方法は、ファージディスプレイによって選択されるペプチドとレセプタータンパク質との間の相互作用を調べるために用いることができ、結合親和性を高めるためにペプチドのさらなる修飾を示唆する。
【0021】
概念的には、任意のタンパク質のペプチド模倣物は、ファージディスプレイ法および前述したその他の方法を用いて同定される。 また、これらの方法は、エピトープマッピングのために、タンパク質の間の相互作用に不可欠なアミノ酸の同定のために、および新しい治療薬の発見のための手掛かりとして用いられてきた。 例えば、Cortese et al., (1996), Curr. Opin. Biotech. 7:616-21。 ペプチドライブラリーは、現在ではほとんどの場合、エピトープマッピングのような免疫学的研究で用いられている。 Kreeger (1996), The Scientist 10(13):19-20。
【0022】
特に興味深いものは、薬理学的に活性なペプチドの発見におけるペプチドライブラリーおよびその他の技術の利用である。 当該技術分野で同定された多数のこのようなペプチドを、表2にまとめてある。 これらのペプチドは、そこに列挙した刊行物に記載されており、これらの刊行物の各々のすべての内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。 ペプチドの薬理学的活性が記載されており、そして多くの場合、続いて括弧の中にその略語を記載している。 これらのペプチドの幾つつかは、修飾されている(例えば、C末端架橋二量体を形成するために)。 ペプチドライブラリーは、一般的には、薬理学的に活性なタンパク質のレセプター(例えば、EPOレセプター)への結合に関してスクリーニングされている。 少なくとも一つ(CTLA4)の事例に関して、ペプチドライブラリーは、モノクローナル抗体への結合に関してスクリーニングされた。
【0023】
【表2−1】

【0024】
【表2−2】

【0025】
【表2−3】

【0026】
【表2−4】

【0027】
【表2−5】

【0028】
ペプチドライブラリースクリーニングによって同定されたペプチドは、治療薬として用いられるよりもむしろ、治療薬の開発における「手掛かり」とみなされてきた。 これらのペプチドは、その他のタンパク質およびペプチドと同様に、腎臓濾過、細網内皮系における細胞の浄化機構、またはタンパク質分解のいずれかによってin vivoで迅速に除去される。 Francis (1992), Focus on Growth factors 3:4-11。 結果的に、当該技術分野では、現在のところ、薬物標的を確認するために、あるいは化学的ライブラリースクリーニングによって容易にまたは迅速には同定されない有機化合物の設計のための足場として、同定されたペプチドを用いている。 Lowman (1997), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:401-24;Kay et al., (1998), Drug Disc. Today 3:370-8。
【0029】
従って、組換え治療用タンパク質、以前に同定されたペプチド模倣物、およびその修飾物の有効性にもかかわらず、当該技術分野において、特に、反復投与計画に従って投与される場合に、生物有効性が改善された化合物を提供する必要性が依然として残されているのである。
【発明の開示】
【0030】
本願発明は、抗体Fc領域および一つまたはそれ以上の水溶性ポリマーを含むように修飾されたポリペプチドまたはペプチドに関する。
【0031】
ある実施態様によれば、以下の式I、すなわち;
【0032】
【化1】

【0033】
式中、F1はビヒクルであり;
1は、
【0034】
【化2】

【0035】
から選択され、
2は、
【0036】
【化3】

【0037】
から選択され、式中、P1、P2、P3およびP4は、それぞれ独立して、薬理学的に活性なペプチドの配列であり;
1、L2、L3、L4およびL5は、それぞれ独立して、リンカーであり;
a、b、c、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して、0または1であるが、
ただし、aおよびbの少なくとも一つは1であり;
dは、少なくとも1であり;そして、
WSPは、F1の任意の反応性部分に付着する水溶性ポリマーである、式Iで表現される構造を含む実質的に均質な化合物であって、反復投与計画に従って投与した場合に、改善された生物有効性を示す化合物が提供される。 ある実施態様によれば、この化合物は、多量体であり、また、別の実施態様によれば、この化合物は、二量体である。
【0038】
ある実施態様によれば、以下の式II、すなわち;
【0039】
【化4】

【0040】
式中、F1はX1のC末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIで表現される構造を含む式Iの化合物が提供される。 ある実施態様によれば、この化合物は、多量体で提供され、また、別の実施態様によれば、この化合物は、二量体で提供される。
【0041】
ある実施態様によれば、以下の式III、すなわち;
【0042】
【化5】

【0043】
式中、F1はX2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIIで表現される構造を含む式Iの化合物が提供される。 この構造を有する化合物の多量体と二量体も提供される。
【0044】
ある実施態様によれば、以下の式IV、すなわち;
【0045】
【化6】

【0046】
式中、F1は-(L1)c-P1のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IVで表現される構造を含む式Iの化合物も提供される。 この構造を有する化合物の多量体と二量体も提供される。
【0047】
以下の式V、すなわち;
【0048】
【化7】

【0049】
式中、F1は-L1-P1-L2-P2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式Vで表現される構造を含む式Iの化合物も本願発明は提供する。 この構造を有する化合物の多量体と二量体も提供される。
【0050】
ある実施態様において、前述したように、P1および/またはP2が、独立して表4〜表20のいずれかに示されるペプチドから選択される本願発明の化合物が提供される。 ある実施態様において、P1および/またはP2は、同じアミノ酸配列を有する。
【0051】
その他の実施態様において、前述したように、F1がFcドメインである本願発明の化合物が提供される。 その他の実施態様において、前述したように、WSPがPEGである本願発明の化合物が提供される。 さらにその他の実施態様において、前述したように、F1がFcドメインであり、かつ、WSPがPEGである化合物が提供される。
【0052】
その他の実施態様において、以下の構造、すなわち:
【0053】
【化8】

【0054】
式中、WSPは水溶性ポリマーである構造を含む実質的に均質な化合物が提供され、この化合物は、c-Mplに結合して血小板産生を刺激する性質を有し、この化合物は、反復投与で生物有効性を改善する性質を有する。 この構造を有する化合物の多量体および二量体も意図している。
【0055】
その他の実施態様において、以下の構造、すなわち:
【0056】
【化9】

【0057】
を含む実質的に均質な化合物が提供され、この化合物は、c-Mplに結合して血小板産生を刺激する性質を有し、この化合物は、反復投与で生物有効性を改善する性質を有する。 この構造を有する化合物の多量体および二量体も意図している。
【0058】
ある実施態様において、本願発明の化合物のPEG成分は、約2kDaと100kDaの間の分子量を有する。 その他の実施態様において、本願発明の化合物のPEG成分は、約6kDaと25kDaの間の分子量を有する。
【0059】
本願発明は、本願発明の化合物を含む組成物をさらに提供し、この組成物は、少なくとも50%のPEG化した化合物を含む。 その他の態様において、本願発明の組成物は、少なくとも75%のPEG化した化合物、少なくとも85%のPEG化した化合物、少なくとも90%のPEG化した化合物、少なくとも95%のPEG化した化合物、および少なくとも99%のPEG化した化合物を含む。
【0060】
ある実施態様において、本願発明は、以下の構造:
【0061】
【化10】

【0062】
式中、PEGは約20kDの分子量を有する構造式で表される実質的に均質な化合物を提供し、この配列番号:2に記載の化合物は、二量体であって、c-Mplに結合して血小板産生を刺激する性質を有し、そして、この化合物は、反復投与で生物有効性を改善する性質を有する。
【0063】
本願発明は、(a)以下の構造:
【0064】
【化11】

【0065】
式中、PEGは約20kDの分子量を有する構造式で表される実質的に均質な化合物;(b)少なくとも95%のジPEG化した化合物;および(c)薬学的に許容可能な希釈剤、補助剤または担体を含む薬学的組成物をさらに提供し、この組成物は、反復投与で生物有効性を改善する性質を有する。
【0066】
ある実施態様において、(a)以下の構造:
【0067】
【化12】

【0068】
式中、PEGは約20kDの分子量を有する構造式で表される実質的に均質な化合物であって、配列番号:2に記載の化合物が二量体である化合物;(b)少なくとも95%のジPEG化した化合物;および(c)薬学的に許容可能な希釈剤、補助剤または担体を含む薬学的組成物が提供され、この組成物は、反復投与で生物有効性を改善する性質を有する。
【0069】
また、本願発明は、造血障害を処置する方法も提供し、この方法は、造血障害を処置する上で有効な治療計画において、本願発明の化合物または組成物を投与する工程を含む。
【0070】
従って、本願発明のこれら実施態様とその他の実施態様は、図面を参照しつつ、本願発明の好適な実施態様について詳述した以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本願発明のPEG-Fc-TMPを用いた反復投与におけるin vivoでの血小板産生の増大を示す図であって、図中、PEG-Fc-TMPを用いた結果は、三角印(▲)で示し、Fc-TMPを用いた結果は、丸印(●)で示してある。 四角印(■)は、コントロールを表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
用語の定義
「含む」の用語は、化合物が、所定の配列のN末端またはC末端の一方または双方に、さらなるアミノ酸を含むことを意味する。 当然ながら、このようなアミノ酸は、この化合物の活性を著しく阻害するものであってはならない。
【0073】
本願発明の調製手順を参照すると、本明細書に記載の「実質的に均質な」とは、全治療分子における特定の百分率について断りが無い限りは、この調製物が、調製物に含まれる全治療分子において検出可能な単一の治療化合物を含むことを意味する。 一般に、実質的に均質な調製物とは、均質な調製物の利点、例えば、臨床現場でのロット間の薬物動態の予測の容易さを示す上で十分に均質である。
【0074】
「生物有効性」とは、所望の生物学的作用を生じる能力を指す。 異なる化合物、または同じ化合物の異なる用量、または同じ化合物の異なる投与の生物有効性は、一般に、化合物の量に対して正規化することにより、適切な比較が可能になる。
【0075】
「反復投与」とは、二回量以上の化合物をある期間にわたって投与することを含む、治療的または予防的処置計画をいう。
【0076】
「ビヒクル」の用語は、治療用タンパク質の分解を阻止しかつ/または半減期を延長させるか、毒性を低下させるか、免疫原性を低下させるか、あるいは生物活性を増大させる分子をさす。 ビヒクルの例として、Fcドメインおよび直鎖状ポリマー;分岐鎖ポリマー(例えば、Denkenwalter et al.,の米国特許第4,289,872号(1981年9月15日発行);Tamの米国特許第5,229,490号(1993年7月20日発行);Frechet et al., によるWO93/21259(1993年10月28日公開)を参照のこと);脂質;コレステロール群;炭水化物またはオリゴ糖;サルベージレセプターに結合する任意の天然または合成のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドなどがある。 その他のビヒクルについても、後述している。
【0077】
「ネイティブFc」の用語は、単量体の形態または多量体の形態のいずれかにかかわらず、抗体全体の消化により生じる非抗原結合性断片の配列を含む分子または配列を指す。
【0078】
ネイティブFcの起源となる免疫グロブリン供給源は、ある実施態様では、ヒト起源のものであり、任意の免疫グロブリンでもよい。 ネイティブFcは、共有結合性の会合(すなわち、ジスルフィド結合)、非共有結合性の会合または両方の組み合わせによって、二量体または多量体の形態に連結する単量体のポリペプチドである。 ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)によって、1〜4の範囲に及ぶ。 ネイティブFcの例として、IgGのパパイン分解によって生じるジスルフィド結合二量体がある。 Ellison et al., (1982), Nucleic Acids Res. 10:4071-9。 「ネイティブFc」の用語は、本明細書で用いる場合、単量体の形態、二量体の形態、および多量体の形態について総称的に用いる。
【0079】
「Fc変異体」の用語は、ネイティブFcから修飾されているが、依然としてサルベージレセプターに対する結合部位を含む分子または配列(FcRn)を指す。 国際出願WO97/34631(1997年9月25日公開)およびWO96/32478には、例示的なFc変異体、およびサルベージレセプターとの相互作用が記載されており、これら国際出願の内容は、本明細書の一部を構成するものとして援用する。 ある実施態様において、「Fc変異体」の用語は、非ヒトネイティブFcからヒト化された分子または配列を含む。 その他の実施態様において、ネイティブFcは、除去される部位を含む。 なぜなら、これら部位は、本願発明の融合分子に必要のない構造的特徴または生物活性をもたらすからである。 従って、「Fc変異体」の用語は、以下の(1)〜(7)、すなわち、(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞での発現の際のN末端の不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージレセプター以外のFcレセプターへの結合、または(7)抗体依存性の細胞障害活性(ADCC)に影響を及ぼすか、またはこれらに関与する、一つまたはそれ以上のネイティブFc部位もしくは残基を欠く分子または配列を含む。 Fc変異体については、さらに後述することとする。
【0080】
「Fcドメイン」の用語は、前述したように、ネイティブFcの分子および配列ならびにFc変異体の分子および配列を含む。 Fc変異体およびネイティブFcと同様に、「Fcドメイン」の用語は、抗体全体の消化によって得られるか、またはその他の手段によって生成されるかにかかわらず、単量体の形態または多量体の形態の分子を含む。 ある実施態様において、例えば、このFc領域は、
【0081】
【化13】

【0082】
とすることができる。
【0083】
「多量体」の用語は、FcドメインまたはFcドメインを含む分子に適用される場合、共有結合的に会合するか、非共有結合的に会合するか、または共有結合性相互作用と非共有結合性相互作用の両方によって会合する、二つまたはそれ以上のポリペプチド鎖を有する分子を指す。 一般的には、IgG分子は、二量体を形成し;IgM分子は、五量体を形成し;IgD分子は、二量体を形成し;そして、IgA分子は、単量体、二量体、三量体、または四量体を形成する。 多量体は、FcのネイティブIg供給源の配列および生じた活性を利用することによって、または、このようなネイティブFcを誘導することによって(後述するようにして)形成される。
【0084】
「誘導すること」、「誘導体」または「誘導した」の用語は、例えば、(1)環状部分、例えば、化合物内のシステイニル残基間の架橋結合を有する化合物;(2)架橋結合されるか、または架橋結合部位を有する、例えば、システイニル残基を有し、従って、培養下またはin vivoで架橋二量体を形成する化合物;(3)一つまたはそれ以上のペプチジル連結が、非ペプチジル連結で置換されていること;(4)N末端を、-NRR1、NRC(O)R1、-NRC(O)OR1、-NRS(O)21、-NHC(O)NHR、スクシンイミド基、または置換もしくは非置換のベンジルオキシカルボニル-NH-、すなわち、式中、RおよびR1および環置換基が、後述する通りのもので置換されていること;(5)C末端が、-C(O)R2または-NR34、すなわち、式中、R2、R3およびR4が、後述する通りのもので置換されていること;および(6)化合物の個々のアミノ酸部分が、選択された側鎖または末端残基と反応し得る薬剤を用いた処置によって修飾されていること、などのプロセスおよびそれによって得られた化合物を指すが、これらに限定されない。 誘導体については、さらに後述することとする。
【0085】
「ペプチド」の用語は、2個〜40個のアミノ酸の分子、3個〜20個のアミノ酸の分子、および6個〜15個のアミノ酸の分子を指す。 例えば、35個以下、30個以下、25個以下、20個以下のアミノ酸および/または15個以下のアミノ酸から選択されるサイズを有するペプチドが、本明細書において企図されている。 ペプチドとしては、本明細書において引用した任意の方法によって無作為に生成されたもの、ペプチドライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)内に保有されているもの、タンパク質の消化によって誘導されたもの、または化学的に合成したものなどがある。 ペプチドは、精製されたD型およびL型か、またはこれらの二つの型の混合物のいずれかを含む。
【0086】
「無作為化した」の用語は、ペプチド配列に関して用いる場合、十分に無作為な配列(例えば、ファージディスプレイ法によって選択される配列)および天然に存在する分子の一つまたはそれ以上の残基が、天然に存在する分子中のその位置には出現しないアミノ酸残基で置換されている配列を指す。 ペプチド配列を同定するための方法として、ファージディスプレイ、大腸菌ディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母ベースのスクリーニング、RNA-ペプチドスクリーニング、化学的スクリーニング、合理的設計、タンパク質構造解析などがある。
【0087】
「薬理学的に活性な」の用語は、この用語で表現される物質が、医学パラメータ(例えば、血圧、血球数、コレステロールレベル)または疾患状態(例えば、癌、自己免疫疾患)に影響を及ぼす活性を有している、ことが決定されることを意味する。 従って、薬理学的に活性なペプチドは、後述するアゴニストペプチドまたは模倣ペプチドおよびアンタゴニストペプチドを含む。
【0088】
「-模倣ペプチド」および「-アゴニストペプチド」の用語は、目的のタンパク質と相互作用するタンパク質(例えば、EPO、TPO、G-CSF)に匹敵する生物活性を有するペプチドを指す。 これらの用語は、例えば、目的のタンパク質の天然リガンドの作用を増強することによって、目的のタンパク質の活性を間接的に模倣するペプチドをさらに含み、例えば、表2および表7に記載のG-CSF模倣ペプチドを参照のこと。 一例として、「EPO模倣ペプチド」の用語は、Wrighton et al., (1996), Science 273:458-63、Naranda et al., (1999), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7569-74、またはEPO模倣性に関する表2に記載の任意のその他の参考文献の記載に従って同定または誘導される任意のペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて、開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0089】
その他の例として、「TPO模倣ペプチド」または「TMP」の用語は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するCwirla et al., (1997), Science 276:1696-9、米国特許第5,869,451号および第5,932,946号およびTPO模倣性に関する表2に記載の任意のその他の参考文献の記載、そして、2000年5月4日に公開された国際出願WO00/24770の記載に従って同定または誘導されるペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0090】
その他の例として、「G-CSF模倣ペプチド」の用語は、Paukovits et al., (1984), Hoppe-Seylers Z. Physiol. Chem. 365:303-11またはG-CSF模倣性に関する表2に記載の任意のその他の参考文献に記載の方法に従って同定または記載される任意のペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献での開示を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0091】
「CTLA4模倣ペプチド」の用語は、Fukumoto et al., (1998), Nature Biotech. 16:267-70の記載に従って同定または誘導される任意のペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0092】
「-アンタゴニストペプチド」または「インヒビターペプチド」の用語は、目的の関連タンパク質の生物活性を阻害するか、または何らかの方法で妨害するペプチド、あるいは目的の関連タンパク質の既知のアンタゴニストまたは阻害剤に匹敵する生物活性を有するペプチドを指す。 従って、「TNF-アンタゴニストペプチド」の用語は、Takasaki et al., (1997), Nature Biotech. 15:1266-70またはTNF-アンタゴニストに関する表2に記載の任意のその他の参考文献に記載の方法に従って同定または誘導されるペプチドを含む。
【0093】
当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0094】
「IL-1アンタゴニスト」および「IL-1ra模倣ペプチド」の用語は、IL-1によるIL-1レセプターの活性化を阻害するかまたはダウンレギュレートするペプチドを含む。 IL-1レセプターの活性化は、IL-1、IL-1レセプター、およびIL-1レセプターアクセサリータンパク質間の複合体の形成によって生じる。 IL-1アンタゴニストまたはIL-1ra模倣ペプチドは、IL-1、IL-1レセプター、またはIL-1レセプターアクセサリータンパク質に結合して、この複合体の任意の二つまたは三つの成分間の複合体形成を妨げる。 IL-1アンタゴニストまたはIL-1ra模倣ペプチドの例として、米国特許第5,608,035号、第5,786,331号、第5,880,096号、またはIL-1ra模倣もしくはIL-1アンタゴニストに関する表2に記載の任意の参考文献に記載の方法に従って同定または誘導される。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0095】
「VEGF-アンタゴニストペプチド」の用語は、Fairbrother (1998), Biochem. 37:17754-64に、およびVEGF-アンタゴニストに関する表2に記載の任意の参考文献に記載の方法に従って同定または誘導されるペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0096】
「MMPインヒビターペプチド」の用語は、Koivunen (1999), Nature Biotech. 17:768-74、およびMMP抑制に関する表2に記載の任意の参考文献に記載の方法に従って同定または誘導されるペプチドを含む。 当業者であれば、これら各参考文献を踏まえて、異なるペプチドライブラリーを用いて開示された手順に従うことで、これらの参考文献に実際に開示されたペプチドとは異なるペプチドを選択することが可能であることを理解するであろう。
【0097】
「ミオスタチンインヒビターペプチド」の用語は、in vitroアッセイ(例えば、pMARE C2C12細胞ベースのミオスタチン活性アッセイ)において実証されたような、ミオスタチン活性またはシグナル伝達を低下または阻害する能力、あるいは、米国特許出願公開番号US20040181033A1およびPCT出願公開番号WO2004/058988に記載のin vivo動物試験によって同定されるペプチドを含む。 ミオスタチンインヒビターペプチドの例を、表21〜表24に記載している。
【0098】
「インテグリン/接着アンタゴニスト」の用語は、インテグリン、セレクチン、細胞接着分子、インテグリンレセプター、セレクチンレセプター、または細胞接着分子レセプターの活性を阻害するかまたはダウンレギュレートするペプチドを含む。 インテグリン/接着アンタゴニストの例を、ラミニン、エキスタチン、表25〜表28に記載のペプチドがある。
【0099】
「骨吸収インヒビター」の用語は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するWO97/23614の実施例4および実施例11に記載のアッセイによって決定されるような分子を指す。 骨吸収インヒビターの例として、OPGおよびOPG-L抗体を挙げることができ、それらは、それぞれ、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するWO97/23614およびWO98/46751に記載のものである。
【0100】
「神経成長因子インヒビター」または「神経成長因子アゴニスト」の用語は、神経成長因子(NGF)に結合してその活性またはシグナル伝達を阻害するペプチドを含む。 このタイプのペプチドの例を、表29に記載している。
【0101】
「TALL-1調節ドメイン」の用語は、TALL-1に結合する任意のアミノ酸配列を指し、天然に存在する配列または無作為化した配列を含む。 TALL-1調節ドメインは、ファージディスプレイ法または本明細書に記載のその他の方法によって同定または誘導される。 このタイプのペプチドの例を、表30および表31に記載している。
【0102】
「TALL-1アンタゴニスト」の用語は、TALL-1に結合して、一つまたはそれ以上のアッセイパラメータを、完全長の天然TALL-1がこれらパラメータに及ぼす作用とは反対に、増加または減少させる分子を指す。 このような活性は、例えば、2000年8月17日に公開された「TNF-RELATED PROTEINS」という発明の名称を開示した特許出願WO00/47740の材料および方法の節の「Biological activity of AGP-3」と題する小節に記載のアッセイによって決定される。
【0103】
「Ang 2-アンタゴニストペプチド」の用語は、Ang-2-アンタゴニスト特性を有することが確認されるか、またはこの特性を有するように誘導されるペプチドを含む。 このタイプのペプチドの例を、表32〜表38に記載している。
【0104】
さらに、本願発明の化合物の生理学的に許容可能な塩も企図している。 「生理学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容可能であることが知られているか、または後に発見される任意の塩を意味する。 その例として、酢酸塩;トリフルオロ酢酸塩;ハロゲン化水素酸塩、例えば、塩化水素酸塩および臭化水素酸塩;硫酸塩;クエン酸塩;酒石酸塩;グリコール酸塩;およびシュウ酸塩などがある。
【0105】
「WSP」の用語は、これが付着したペプチド、タンパク質またはその他の化合物が、水性環境、例えば、生理的環境下で沈殿することを妨げる水溶性ポリマーを指す。 本願発明によって企図される種々のWSPの実施態様の詳細は、後述する通りである。
【0106】
化合物の構造
概 説
本願発明に従った調製法において、ペプチドは、ペプチドのN末端またはC末端を介してビヒクルに付着され、得られた構造体は、このビヒクル-ペプチド生成物でのビヒクル部分にWSPを共有結合で付着させることで、さらに修飾される。 従って、本発明のWSP-ビヒクル-ペプチド分子は、以下の式I、すなわち;
【0107】
【化14】

【0108】
式中、F1はビヒクルであり;
1は、
【0109】
【化15】

【0110】
から選択され、
2は、
【0111】
【化16】

【0112】
から選択され、式中、P1、P2、P3およびP4は、それぞれ独立して、薬理学的に活性なペプチドの配列であり;
1、L2、L3、L4およびL5は、それぞれ独立して、リンカーであり;
a、b、c、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して、0または1であるが、
ただし、aおよびbの少なくとも一つは1であり;
dは、少なくとも1であり;そして、
WSPは、F1の任意の反応性部分に付着する水溶性ポリマーである、式Iで表現される。
【0113】
従って、化合物Iは、以下の式II、すなわち;
【0114】
【化17】

【0115】
式中、F1はX1のC末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIで表現される構造を含む化合物およびその多量体;
以下の式III、すなわち;
【0116】
【化18】

【0117】
式中、F1はX2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIIで表現される構造を含む化合物およびその多量体;
以下の式IV、すなわち;
【0118】
【化19】

【0119】
式中、F1は-(L1)c-P1のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IVで表現される構造の化合物およびその多量体;および
以下の式V、すなわち;
【0120】
【化20】

【0121】
式中、F1は-L1-P1-L2-P2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式Vで表現される構造の化合物およびその多量体を含む。
【0122】
ペプチド
多数のペプチドが、本願発明において共同的に用いることができる。 特に興味深いペプチドは、EPO、TPO、成長ホルモン、G-CSF、GM-CSF、IL-1ra、レプチン、CTLA4、TRAIL、TGF-α、およびTGF-βの活性を模倣するペプチドである。 ペプチドアンタゴニスト、特に、TNF、レプチン、インターロイキン(IL-1、2、3、...)のいずれか、および補体活性化に関与するタンパク質(例えば、C3b)の活性に拮抗するペプチドアンタゴニストも興味深い。 腫瘍形成ペプチド、膜輸送ペプチドなどを含む、標的化ペプチドも興味深い。 これらのクラスのペプチドはすべて、本明細書で引用した参考文献およびそれ以外の参考文献に記載される方法によって得ることができる。
【0123】
特に、ファージディスプレイは、本願発明において用いるペプチドを生成する上で有用である。 親和性的選択法を用いて、ランダムペプチドのライブラリーから任意の遺伝子産物の任意の部位に対するペプチドリガンドを同定することが記載されている。 Dedman et al., (1993), J. Biol. Chem. 268:23025-30。 ファージディスプレイは、細胞表面レセプターのような目的のタンパク質または線状エピトープを有する任意のタンパク質に結合するペプチドを同定する上で特に適している。 Wilson et al., (1998), Can. J. Microbiol. 44:313-29;Kay et al., (1998), Drug Disc. Today 3:370-8。 このようなタンパク質は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するHerz et al., (1997), J. Receptor & Signal Transduction Res. 17 (5):671-776に概説されている。このような目的のタンパク質は、本発明で使用する上で好ましい。
【0124】
例えば、サイトカインレセプターに結合するペプチドのグループが提供されるが、これらに限定されない。 サイトカインは、最近、そのレセプターコードに従って分類されている。 本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するInglot (1997), Archivum Immunologiae et Therapiae Experimentalis 45:353-7を参照のこと。 これらのレセプターには、CKR(表3に記載のファミリーI)が含まれる。 レセプターの分類を、表3に記載している。
【0125】
【表3−1】

【0126】
【表3−2】

【0127】
本願発明においてペプチド生成用の標的として興味深いその他のタンパク質としては、以下のものがある。
【0128】
αvβ3
αVβl
Ang-2
B7
B7RP1
CRP1
カルシトニン
CD28
CETP
cMet
補体因子B
C4b
CTLA4
グルカゴン
グルカゴンレセプター
LEPG
MPL
腫瘍細胞上に優先的に発現される分子のスプライス変異体、例えば、CD44、CD30
ムチンおよびルイスY表面糖タンパク質の非グリコシル化変異体、CD19、CD20、CD33、CD45
前立腺特異的膜抗原および前立腺特異的細胞抗原
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、分泌型と膜結合型の両方(例えば、MMP-9)
カテプシン
TIE-2レセプター
ヘパラナーゼ
ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(UPA)、UPAレセプター
副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、PTH-RI、PTH-RII
Her2
Her3
インスリン
ミオスタチン
TALL-1
神経成長因子
インテグリンおよびレセプター
セレクチンおよびそのレセプター
細胞接着分子およびそのレセプター
ペプチドの例を、以下の表4〜表38に記載している。 これらペプチドは、当該技術分野で周知の任意の方法、すなわち、その多くが本明細書に記載されている方法でもってして調製される。 以下の表の大半において、アミノ酸の一文字表記を用いている。 これら配列(および、特に断りのない限り、本明細書全体において)Xは、天然に存在する20種類のアミノ酸残基のいずれかが存在していることを意味する。 これらのペプチドのいずれかは、リンカーと共に、または、リンカー無しにタンデムに(すなわち、連続的に)連結されており、タンデム連結した数例が、この表に記載されている。 リンカーは、「Λ」と記載されており、本明細書に記載されたリンカーのいずれかである。 タンデムリピートおよびリンカーは、明確にするために、点線で区切って示されている。 システイニル残基を含む任意のペプチドは、別のCys含有ペプチドと架橋することができ、これらのペプチドの一方または双方がビヒクルに連結される。 架橋した数例を、この表に記載している。 一つ以上のCys残基を有する任意のペプチドも、同様に、ペプチド内ジスルフィド結合を形成する。 例えば、表5のEPO模倣ペプチドを参照のこと。 ペプチド内ジスルフィド結合した数例のペプチドも、この表に記載している。 本明細書に記載されているように、これらのペプチドのいずれかが誘導されてもよく、そして数種の誘導例が、この表に記載されている。 表に記載されている誘導ペプチドは、関連する非誘導ペプチドが本発明に用いられる場合も同様に、例示の目的のためのものでしかなく、これらに限定されない。 カルボキシル末端がアミノ基でキャップされる誘導体については、キャップしているアミノ基を、-NH2として示している。 アミノ酸残基が、アミノ酸残基以外の部分によって置換される誘導体については、この置換はσで示されており、これは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するBhatnagar et al., (1996), J. Med. Chem. 39:3814-9およびCuthbertson et al., (1997), J. Med. Chem. 40:2876-82に記載されているいずれかの反応箇所を指すものである。 J置換基およびZ置換基(Z5、Z6、...Z40)は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第5,608,035号、第5,786,331号および第5,880,096号に定義されている通りのものである。 EPO模倣配列(表5)に関して、置換基X2〜X11および整数「n」は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するWO96/40772に定義されている通りのものである。 また、EPO模倣配列については、置換基Xna、X1a、X2a、X3a、X4a、X5aおよびXcaは、それぞれ、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するWO99/47151のXn、X1、X2、X3、X4、X5およびXcの定義に従う。 置換基「Ψ」、「Θ」および「+」は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するSparks et al., (1996), Proc. Natl. Acad. Sci. 93:1540-4で定義されている通りのものである。 X4、X5、X6およびX7は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第5,773,569号で定義されている通りのものであるが、インテグリン結合ペプチドについては、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7およびX8は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する1995年6月1日公開の国際出願WO95/14714および1997年3月6日公開のWO97/08203に定義される通りのものであり;そして、VIP模倣ペプチドについては、X1、X1'、X1''、X2、X3、X4、X5、X6およびZならびに整数mおよびnは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する1997年10月30日公開のWO97/40070に定義されている通りのものである。 以下のXaaおよびYaaは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する1998年3月12日公開のWO98/09985に定義されている通りのものである。 AA1、AA2、AB1、AB2およびACは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する1998年12月3日公開の国際出願WO98/53842に定義されている通りのものである。 X1、X2、X3、およびX4は、表17に関してのみ、1999年4月28日公開の欧州出願EP 0 911 393に定義されている通りのものである。 太字体で表示している残基は、D-アミノ酸である。 ペプチドはすべて、特に断りのない限り、ペプチド結合によって連結されている。 略語は、本明細書の末尾に列挙している。 「配列番号」欄の「NR」は、配列表が、所定の配列を必要としていないことを意味するものである。
【0129】
【表4−1】

【0130】
【表4−2】

【0131】
【表4−3】

【0132】
【表4−4】

【0133】
【表4−5】

【0134】
【表4−6】

【0135】
【表4−7】

【0136】
【表4−8】

【0137】
【表5−1】

【0138】
【表5−2】

【0139】
【表6−1】

【0140】
【表6−2】

【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9−1】

【0144】
【表9−2】

【0145】
【表10】

【0146】
【表11−1】

【0147】
【表11−2】

【0148】
【表12−1】

【0149】
【表12−2】

【0150】
【表12−3】

【0151】
【表13】

【0152】
【表14−1】

【0153】
【表14−2】

【0154】
【表15】

【0155】
【表16−1】

【0156】
【表16−2】

【0157】
【表17】

【0158】
【表18】

【0159】
【表19−1】

【0160】
【表19−2】

【0161】
【表19−3】

【0162】
【表20−1】

【0163】
【表20−2】

【0164】
【表21−1】

【0165】
【表21−2】

【0166】
【表21−3】

【0167】
【表22−1】

【0168】
【表22−2】

【0169】
【表23−1】

【0170】
【表23−2】

【0171】
【表23−3】

【0172】
【表24−1】

【0173】
【表24−2】

【0174】
【表24−3】

【0175】
【表25】

【0176】
【表26】

【0177】
【表27】

【0178】
【表28】

【0179】
【表29】

【0180】
【表30】

【0181】
【表31−1】

【0182】
【表31−2】

【0183】
【表31−3】

【0184】
【表32−1】

【0185】
【表32−2】

【0186】
【表33−1】

【0187】
【表33−2】

【0188】
【表34】

【0189】
【表35】

【0190】
【表36】

【0191】
【表37−1】

【0192】
【表37−2】

【0193】
【表38−1】

【0194】
【表38−2】

【0195】
【表38−3】

【0196】
【表38−4】

【0197】
【表38−5】

【0198】
表6に記載のTMP化合物に加えて、本願発明は、その他の多数のTMP化合物をも提供する。 ある実施態様において、TMP化合物は、以下の一般構造:
【0199】
【化21】

【0200】
式中、TMP1およびTMP2は、それぞれ独立して、以下のコア構造:
【0201】
【化22】

【0202】
式中、X2は、Glu、Asp、Lys、およびValからなるグループから選択され;
3は、GlyおよびAlaからなるグループから選択され;
4は、Proであり;
5は、ThrおよびSerからなるグループから選択され;
6は、Leu、Ile、Val、Ala、およびPheからなるグループから選択され;
7は、ArgおよびLysからなるグループから選択され;
8は、Gln、Asn、およびGluからなるグループから選択され;
9は、Trp、Tyr、およびPheからなるグループから選択され;
10は、Leu、Ile、Val、Ala、Phe、Met、およびLysからなるグループから選択され;
1は、本明細書に記載されているようなリンカーであり;そして、
nは、0または1である
構造式の化合物およびその生理学的に許容可能な塩のグループから選択される、ものを含む。
【0203】
ある実施態様において、L1は(Gly)nを含み、ここで、nは1〜20であり、nが1よりも大きい場合、Gly残基の最大半分までが、残りの19個の天然アミノ酸またはその立体異性体から選択されるその他のアミノ酸で置換されてもよい。
【0204】
TMP1およびTMP2に関しては、前述したコア構造X2〜X10に加えて、その他の関連構造も可能であり、以下の一つまたはそれ以上がTMP1および/またはTMP2コア構造に加えられる。 すなわち、X1がN末端に付着され、および/またはX11、X12、X13、および/またはX14がC末端に付着され、当該X1、X12、X13、およびX14が:
1は、Ile、Ala、Val、Leu、Ser、およびArgからなるグループから選択され;
11は、Ala、Ile、Val、Leu、Phe、Ser、Thr、Lys、His、およびGluからなるグループから選択され;
12は、Ala、Ile、Val、Leu、Phe、Gly、Ser、およびGlnからなるグループから選択され;
13は、Arg、Lys、Thr、Val、Asn、Gln、およびGlyからなるグループから選択され;ならびに
14は、Ala、Ile、Val、Leu、Phe、Thr、Arg、Glu、およびGlyからなるグループから選択される。
【0205】
本願発明のTMP化合物は、少なくとも9個のサブユニット(X2〜X10)で構成されており、すなわち、これらのサブユニットを含み、ここで、X2〜X10は、コア構造を含む。 X2〜X14サブユニットは、独立して、20個の天然に存在するアミノ酸の中から選択されるアミノ酸であるが、本願発明は、X2〜X14が、当該技術分野で周知の天然に存在しない異型アミノ酸のグループから独立して選択される化合物を含む。 具体的なアミノ酸は、各位置に関して同定される。 例えば、X2は、Glu、Asp、Lys、またはValであってもよい。 アミノ酸の三文字表記および一文字表記のいずれもが、本明細書において用いられている。 いずれの場合にも、これら表記は、20個の天然に存在するアミノ酸、またはそれらの周知の変異体に関して用いられる標準的な表記である。 これらのアミノ酸は、L型またはD型の立体配置のいずれかを有しており(L型またはD型のいずれでもないGlyを除く)、そしてTMP(および本願発明のその他のすべての化合物)は、立体配置の組み合わせを含むこともある。 また、本願発明は、アミノ酸のアミノ末端からカルボキシ末端への配列が逆になっている、リバースTMP分子(および本明細書に開示するその他のすべてのペプチドについて)も提供する。 例えば、正常配列X1-X2-X3を有する分子の逆は、X3-X2-X1である。 また、本願発明は、レトロリバースTMP分子(および本明細書に記載の本願発明のその他のすべての分子について)も提供し、このものは、リバースTMPと同様に、アミノ酸のアミノ末端からカルボキシ末端への配列が逆になっており、TMPで本来「L」鏡像異性体である残基は、「D」立体異性体型に変わる。
【0206】
従って、本願発明のTMP化合物の例として、以下の化合物があるが、これらに限定されない。
【0207】
【化23】

【0208】
【化24】

【0209】
また、活性を有するペプチドを、以下の病態の処置に用いた場合、本願発明は特に有用である。
【0210】
・癌:VEGF模倣物またはVEGFレセプターアンタゴニスト、HER2アゴニストまたはアンタゴニスト、CD20アンタゴニストなどをペプチドとして用いる場合。
【0211】
・喘息:CKR3アンタゴニスト、IL-5レセプターアンタゴニストなどを目的のタンパク質として用いる場合。
【0212】
・血栓症:GPIIbアンタゴニスト、GPIIIaアンタゴニストなどを目的のタンパク質として用いる場合。
【0213】
・自己免疫疾患および免疫修飾に関連するその他の病態:IL-2レセプターアンタゴニスト、CD40アゴニストまたはアンタゴニスト、CD40Lアゴニストまたはアンタゴニスト、サイモポエチン模倣物などを目的のタンパク質として用いる場合。
【0214】
誘導体
本願発明は、化合物のペプチドおよび/またはビヒクル部分を(以下に述べるようにして)誘導することも企図している。 このような誘導体は、化合物の溶解性、吸収性、生物学的半減期などを改善する。 あるいは、これらの部分は、化合物の任意の望ましくない副作用などを排除するか、あるいは緩和する。 誘導体の例として、以下の化合物がある。
【0215】
1.化合物またはその一部が環状である。 例えば、ペプチド部分が修飾されて二つまたはそれ以上のCys残基を含み(例えば、リンカー中に)、これらの残基がジスルフィド結合形成によって環化される。 環化誘導体の調製に関する参考文献の引用については、表2を参照のこと。
【0216】
2.化合物が架橋されているか、または分子間の架橋が可能になっている。 例えば、ペプチド部分が修飾されて一つのCys残基を含み、それによって、類似分子と分子間ジスルフィド結合を形成することが可能である。 この化合物はまた、以下に示す分子と同様に、そのC末端を介して架橋される。
【0217】
【化25】

【0218】
3.一つまたはそれ以上のペプチジル[-C(O)NR-]連結(結合)が、非ペプチジル連結によって置換される。 非ペプチジル連結の例として、-CH2-カルバメート[-CH2-OC(O)NR-]、ホスホネート、-CH2-スルホンアミド[-CH2-S(O)2NR-]、尿素[-NHC(O)NH-]、-CH2-二級アミン、およびアルキル化ペプチド[-C(O)NR6-(式中、R6は低級アルキル基である)]がある。
【0219】
4.N末端が誘導される。 典型的には、N末端はアシル化されるか、または修飾されて置換アミンになる。 N末端誘導基の例として、-NRR1(-NH2以外)、-NRC(O)R1、-NRC(O)OR1、-NRS(O)2R1、-NHC(O)NHR1、スクシンイミド、またはベンジルオキシカルボニル-NH-(CBZ-NH-)(式中、RおよびR1は、それぞれ独立して、水素または低級アルキル基であり、そしてフェニル環は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、クロロ、およびブロモからなるグループから選択される1個〜3個の置換基で置換される)がある。
【0220】
5.遊離C末端が誘導される。 典型的には、C末端はエステル化されるか、またはアミド化される。 例えば、当該技術分野で周知の方法を用いて、本願発明の化合物に(NH-CH2-CH2-NH2)2を付加する。 同様に、当該技術分野で周知の方法を用いて、本願発明の化合物に-NH2を付加する。 末端誘導基の例として、例えば、-C(O)R2(式中、R2は低級アルコキシ基または-NR3R4であり、R3およびR4は、独立して、水素またはC1〜C8アルキル(好ましくは、C1〜C4アルキル)である)がある。
【0221】
6.ジスルフィド結合が、別のもの(好ましくは、より安定な架橋部分(例えば、アルキレン))で置換される。 例えば、Bhatnagar et al., (1996), J. Med. Chem. 39:3814〜9;Alberts et al., (1993) Thirteenth Am. Pep. Symp., 357〜9を参照のこと。
【0222】
7.一つまたはそれ以上の個々のアミノ酸残基が修飾される。 詳細に後述するように、選択された側鎖または末端残基と特異的に反応する種々の誘導化剤が公知である。
【0223】
リシニル残基およびアミノ末端残基は、リシニル残基の電荷を逆にするコハク酸またはその他のカルボン酸の無水物と反応する。 α-アミノ含有残基を誘導するためのその他の適切な試薬として、イミドエステル(例えば、メチルピコリンイミダート;ピリドキサールホスファート;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンアスルホン酸;O-メチルイソ尿素;2,4ペンタンジオン)、およびトランスアミダーゼに触媒されるグリオキシラートとの反応がある。
【0224】
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンを含む、数種類の従来の試薬のいずれか一つまたはこれらの試薬の組み合わせとの反応によって修飾される。 アルギニル残基の誘導は、グアニジン官能基のpKaが高いため、アルカリ性条件下で反応が行われる必要がある。 さらに、これらの試薬は、アルギニンのε-アミノ基と同様に、リジンの基と反応する。
【0225】
チロシル残基の特異的な修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によってチロシル残基にスペクトル標識を導入することに関心が集まっており、広範囲にわたって研究されてきた。 通常、N-アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンは、それぞれ、O-アセチルチロシル類および3-ニトロ誘導体を生成するために用いられる。
【0226】
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカルボジイミド(R'-N=C=N-R')との反応によって、選択的に修飾される。 さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基も、アンモニウムイオンとの反応によって、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
【0227】
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に対して脱アミドする。 あるいは、これらの残基は、弱酸性の条件下で脱アミドされる。 これらの残基のいずれの形態も、本願発明の範囲内にある。
【0228】
システイニル残基は、ジスルフィド結合を排除するか、あるいは、逆に架橋を安定させるために、アミノ酸残基またはその他の部分で置換される。 例えば、Bhatnagar et al., (1996), J. Med. Chem. 39:3814〜9を参照のこと。
【0229】
二官能性薬剤を用いる誘導は、ペプチドまたはその機能的誘導体を、非水溶性の支持マトリックスと、またはその他の高分子ビヒクルと架橋する上で有用である。 一般に用いられる架橋剤としては、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル)、3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、およびビス-N-マレイミド-1,8-オクタンのような二官能性マレイミドがある。 メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような誘導剤は、光の存在下で架橋を形成する光活性化中間体を生成する。 あるいは、臭化シアンで活性化した炭水化物のような反応性の非水溶性マトリックスならびに米国特許第3,969,287号;第3,691,016号;第4,195,128号;第4,247,642号;第4,229,537号;および第4,330,440号に記載の反応性基質が、タンパク質の固定化のために用いられる。
【0230】
炭水化物(オリゴ糖)類は、タンパク質でのグリコシル化部位であることが分かっている部位に適宜付着される。 一般に、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)およびアスパラギン(Asn)残基が、配列Asn-X-Ser/Thr(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)の一部である場合、O-結合型オリゴ糖はSer残基またはThr残基に付着され、一方で、N-結合型オリゴ糖はAsn残基に付着される。 Xは、プロリン以外の19個の天然に存在するアミノ酸の一つであることが好ましい。 N-結合型およびO-結合型オリゴ糖ならびに各々の型に認められる糖残基の構造は異なる。 両方の型に共通して認められる糖の一つの型は、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸とも呼ばれている)である。 シアル酸は、通常、N-結合型およびO-結合型オリゴ糖の両方の末端残基があり、その負電荷によって、グリコシル化化合物を酸性化する。 このような部位は、本願発明の化合物のリンカーに組み込まれ、そして、ポリペプチド化合物の組換え生産の間、細胞内で(例えば、CHO、BHK、COSのような哺乳動物細胞内で)好適にグリコシル化される。 しかし、このような部位は、当該技術分野で周知の合成手順または半合成手順によってグリコシル化されてもよい。
【0231】
その他の可能な修飾として、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、Cys中の硫黄原子の酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化がある。 Creighton、Proteins:Structure and Molecule Properties(W. H. Freeman & Co., サンフランシスコ), pp.79〜86(1983)。
【0232】
本願発明の化合物は、DNAレベルでも変更される。 本願発明の化合物の任意の部分のDNA配列は、選択された宿主細胞に対して好適なコドンに変更される。 好ましい宿主細胞である大腸菌に関する至適コドンは当該技術分野で周知である。 コドンは、制限酵素認識部位を除去するか、または潜在的制限酵素認識部位を含むように置換されてもよく、これは、選択された宿主細胞におけるDNAのプロセシングを補助する。 ビヒクル、リンカーおよびペプチドのDNA配列は、前述の配列変更のいずれかを含むように修飾される。
【0233】
アイソトープ共役誘導体および毒素共役誘導体
有用な誘導体のその他のクラスとして、毒素、トレーサー、または放射性同位体と共役した標記分子がある。 このような共役は、腫瘍細胞または病原体に結合するペプチド配列を含む分子において特に有用である。 このような分子は、治療薬として、または手術(例えば、放射免疫ガイド下手術、すなわちRIGS)の補助のために、または診断用薬(例えば、放射性免疫診断法、すなわちRID)として用いられる。
【0234】
これらの共役誘導体は、治療薬として、多くの利点を有する。 これらの誘導体は、ペプチド配列がもたらす特異的結合が無いままに投与されれば、毒素および有毒な放射性同位体の使用を容易にする。 また、これら誘導体は、共役パートナーの有効量を低下させることにより、放射線および化学療法の使用に伴う副作用を低減する。
【0235】
有用な共役パートナーとしては、以下のものがある:
・放射性同位体、例えば、90イットリウム、131ヨウ素、225アクチニウム、および213ビスマス;
・リシンA毒素、シュードモナス内毒素(例えば、PE38、PE40)のような微生物由来毒素など;
・捕捉系におけるパートナー分子(下記参照);
・ビオチン、ストレプトアビジン(捕捉系におけるパートナー分子、または、特に診断用途のためのトレーサーのいずれかとして有用なもの);および
・細胞傷害性薬剤(例えば、ドキソルビシン)。
【0236】
これらの共役誘導体の有用な適応例として、捕捉系における使用がある。 このような系において、本願発明の分子とは、害のない捕捉分子を含む。 この捕捉分子は、例えば、毒素または放射性同位体を含む別個のエフェクター分子と特異的に結合することができる。 ビヒクル共役分子およびエフェクター分子のいずれも、患者に投与される。 このような系において、エフェクター分子は、ビヒクル共役捕捉分子と結合する場合を除いて短い半減期を有するため、任意の有毒な副作用も最小限に抑える。 ビヒクル共役分子は、比較的長い半減期を有するが、無害かつ無毒である。 両分子の特異的結合部分は、公知の特異的結合対(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)の一部になるか、または本明細書に記載のペプチド生成方法によってもたらされる。
【0237】
このような共役誘導体は、当該技術分野で周知の方法によって調製される。 タンパク質エフェクター分子(例えば、シュードモナス内毒素)の場合、このような分子は、関連するDNA構築物から融合タンパク質として発現される。 放射性同位体共役誘導体は、例えば、BEXA抗体(Coulter)に関する記載に従って調製される。 細胞傷害性薬剤または微生物毒素を含む誘導体は、例えば、BR96抗体(Bristol-Myers Squibb)に関する記載に従って調製される。 捕捉系に用いられる分子は、例えば、NeoRxから出された特許、特許出願、および刊行物での記載に従って調製される。 RIGSおよびRIDに用いられる分子は、例えば、NeoProbeから出された特許、特許出願、および刊行物での記載に従って調製される。
【0238】
ビヒクル
本願発明は、アミノ酸残基の一つのN末端、C末端または側鎖を介してペプチドに付着される少なくとも一つのビヒクルの存在を必要とする。 複数のビヒクルが用いられてもよい。 ある実施態様において、Fcドメインは、ビヒクルである。 Fcドメインは、ペプチドのN末端またはC末端と、あるいはN末端とC末端の双方に融合される。
【0239】
本願発明の種々の実施態様において、Fc成分は、ネイティブFcまたはFc変異体のいずれかである。 ネイティブFcの免疫グロブリン供給源は、ある実施態様では、ヒト起源のものであり、そしてその他の実施態様では、任意のクラスの免疫グロブリンのものであってもよい。 ネイティブFcドメインは、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)および/または非共有結合によって二量体形態または多量体形態に連結される単量体ポリペプチドで構成されている。 ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)によって1から4まで変動する。 ネイティブFcの例として、IgGのパパイン消化によって生じるジスルフィド結合二量体がある(Ellison et al., (1982), Nucleic Acids Res. 10:4071〜9を参照のこと)。
【0240】
ジスルフィド結合形成による二量体化を防ぐ特定の条件が存在する場合を除いて、Fc単量体は、適切なシステイン残基が存在する場合、自発的に二量体化することを留意すべきである。 Fc二量体においてジスルフィド結合を通常形成するシステイン残基がその他の残基によって除去または置換されても、単量体鎖は一般に、非共有結合性相互作用によって二量体を形成する。 本明細書において「Fc」の用語は、以下の形態、すなわち:ネイティブ単量体、ネイティブ二量体(ジスルフィド結合で連結)、修飾二量体(ジスルフィド結合および/または非共有結合で連結)、および修飾単量体(すなわち、誘導体)のいずれかを意味する際に用いられる。
【0241】
上述したように、Fc変異体は、本願発明の範囲に属する適切なビヒクルである。 ネイティブFcは、サルベージレセプターへの結合が維持されるならば、広範に修飾されてFc変異体を形成する;例えば、WO97/34631およびWO96/32478を参照のこと。 このようなFc変異体において、本願発明の融合分子に必要のない構造的特徴または機能活性をもたらすネイティブFcの一つまたはそれ以上の部位を除去することができる。 これらの部位は、例えば、残基を置換または除去したり、残基をこの部位へ挿入したり、あるいはこの部位を含む部分を切断することで除去される。 また、挿入または置換される残基は、ペプチド模倣物またはD-アミノ酸のような改変アミノ酸であってもよい。 Fc変異体は、多くの理由で所望される。 これらの理由のいくつかを、以下に示す。 Fc変異体の例として、以下のような分子および配列がある。
【0242】
1.ジスルフィド結合形成に関与する部位が除去される。 このような除去により、本願発明の分子を生成するために用いられる宿主細胞内に存在するその他のシステイン含有タンパク質との反応を回避できる。 この目的のために、システイン含有セグメントがN末端で切断されるか、またはシステイン残基がその他のアミノ酸(例えば、アラニル、セリル)によって欠失または置換される。 システイン残基が除去される場合でも、一本鎖Fcドメインは依然として、非共有結合で結合される二量体Fcドメインを形成することができる。
【0243】
2.ネイティブFcが、選択された宿主細胞との適合性を高めるように修飾される。 例えば、プロリンイミノペプチダーゼのような大腸菌の消化酵素によって認識される代表的なネイティブFcのN末端の近くのPA配列を除去できる。 特に、分子を大腸菌のような細菌細胞内で組換え発現させる場合、N末端のメチオニン残基を付加してもよい。
【0244】
3.選択された宿主細胞内で発現される場合、N末端の不均一性を防ぐためにネイティブFcのN末端の一部が除去される。 この目的のために、N末端の最初の20個のアミノ酸残基(特に、1位、2位、3位、4位および5位のアミノ酸残基)のいずれかを除去できる。
【0245】
4.一つまたはそれ以上のグリコシル化部位が除去される。 グリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)は、通常、細胞溶解反応を起こす。 このような残基は、非グリコシル化残基(例えば、アラニン)によって欠失または置換される。
【0246】
5.補体との相互作用に関与する部位(例えば、C1q結合部位)が除去される。 例えば、ヒトIgG1のEKK配列を欠失または置換できる。 補体の補充は、本願発明の分子にとって有利ではない場合があるため、このようなFc変異体を用いて回避する。
【0247】
6.サルベージレセプター以外のFcレセプターへの結合に影響する部位が除去される。 ネイティブFcは、本願発明の融合分子に必要のない特定の白血球との相互作用のための部位を持つ場合があるので、除去される。
【0248】
7.ADCC部位が除去される。 ADCC部位は、当該技術分野で周知である;例えば、IgG1のADCC部位に関して、Molec. Immunol. 29(5):633-9 (1992)を参照のこと。 これらの部位も、本願発明の融合分子に必要がないため、除去される。
【0249】
8.ネイティブFcが非ヒト抗体に由来する場合、このネイティブFcはヒト化される。 一般的には、ネイティブFcをヒト化するために、非ヒトネイティブFcの選択された残基を、ヒトネイティブFc中に通常見出される残基で置換する。 抗体をヒト化する技術は、当該技術分野で周知である。
【0250】
代替用のビヒクルとして、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、またはサルベージレセプターに結合し得る小分子(例えば、ペプチド模倣化合物)などがある。 例えば、1998年4月14日に発行されたPresta et al.,の米国特許第5,739,277号に記載されているように、ビヒクルとしてポリペプチドを用いることができる。 ペプチドも、FcRnサルベージレセプターに結合するためにファージディスプレイによって選択される。 このようなサルベージレセプターに結合する化合物もまた、「ビヒクル」に含まれ、本願発明の範囲内に属する。 このようなビヒクルは、半減期を(例えば、プロテアーゼによって認識される配列を回避することによって)延長させ、免疫原性を(例えば、抗体のヒト化において認められるように、非免疫原性配列を支持することによって)低下させるようにして選択される。
【0251】
Fc部分の変異体、類似体または誘導体は、例えば、残基または配列の種々の置換を行うことで構築される。
【0252】
変異体(または類似体)ポリペプチドとしては、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基がFcアミノ酸配列を補完する挿入変異体がある。 挿入は、タンパク質の末端の一方または双方に位置するか、あるいはFcアミノ酸配列の内部領域内に位置する。 末端の一方または双方に残基をさらに有する挿入変異体として、例えば、融合タンパク質およびアミノ酸タグもしくは標識を含むタンパク質がある。 例えば、Fc分子は、特に、この分子を大腸菌のような細菌細胞内で組換え発現させる場合、必要に応じてN末端のMetを含む。
【0253】
Fc欠失変異体においては、Fcポリペプチド内の一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が除去される。 欠失は、Fcポリペプチドの一方または双方の末端で生じるものであり、また、Fcアミノ酸配列内の一つまたはそれ以上の残基の除去によっても生じる。 従って、欠失変異体は、Fcポリペプチド配列のすべての断片を含む。
【0254】
Fc置換変異体においては、Fcポリペプチドの一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が除去され、代替残基で置換される。 ある実施態様において、置換は、天然では保存的であり、このタイプの保存的置換は当該技術分野で周知である。 あるいは、本願発明は、非保存的な置換も含む。
【0255】
例えば、システイン残基は、Fc配列のジスルフィド架橋の一部またはすべての形成を防ぐために、その他のアミノ酸によって欠失または置換される。 システイン残基の各々が、AlaまたはSerなどのその他のアミノ酸によって除去および/または置換される。 その他の例として、(1)Fcレセプター結合部位を除去するために;(2)補体(C1q)結合部位を除去するために;および/または(3)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)部位を除去するために、修飾を行ってアミノ酸置換を導入してもよい。 このような部位は当該技術分野で周知であり、任意の公知の置換が、本明細書に記載のFcの範囲内のものである。 例えば、IgG1のADCC部位に関して、Molecular Immunology、第29巻、No.5、633〜639(1992)を参照のこと。
【0256】
同様に、一つまたはそれ以上のチロシン残基がフェニルアラニン残基で置換される。 さらに、その他の変異体アミノ酸挿入、欠失および/または置換も企図されており、これらは本願発明の範囲内である。 一般的には、保存的なアミノ酸置換が好ましい。 さらに、改変は、ペプチド模倣物またはD-アミノ酸のような改変アミノ酸の形態であってもよい。
【0257】
また、化合物のFc配列は、ペプチドについて本明細書に記載されたような誘導、すなわち、アミノ酸残基の挿入、欠失、または置換以外の修飾が施される。 修飾は、天然には共有結合であることが好ましく、例えば、ポリマー、脂質、その他の有機部分および無機部分との化学結合が含まれる。 本願発明の誘導体は、循環半減期を延長するように調製されてもよく、あるいは、所望の細胞、組織、または器官へのポリペプチドの標的化作用を改善するように設計されてもよい。
【0258】
例えば、WO96/32478(発明の名称「Altered Polypeptides with Increased Half-Life」)に記載のようにして、本願発明の化合物のFc部分として、無傷のFc分子のサルベージレセプター結合ドメインを用いることも可能である。 本明細書でFcと称する分子のクラスのさらなるメンバーとして、WO97/34631(発明の名称「Immunoglobulin-Like Domains with Increased Half-Lives」)に記載されているものがある。 本段落において引用する公開された双方のPCT出願の内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0259】
WSP成分
本願発明の化合物はさらに、少なくとも一つのWSPを含む。 分子のWSP部分は、分枝していても、分岐していなくてもよい。 最終調製物の治療的使用のために、このポリマーは薬学的に許容可能である。 一般に、所望のポリマーは、ポリマー共役体が治療的に用いられるか否かの考察に基づいて選択され、そして治療的に用いられる場合には、所望の用量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、およびその他の考察に基づいて選択される。 種々の態様において、各水溶性ポリマーの平均分子量は、約2kDaと約100kDaの間、約5kDaと約50kDaの間、約12kDaと約40kDaの間、および約20kDaと約35kDaの間である。 さらにその他の実施態様において、各ポリマーの分子量は、約6kDaと約25kDaの間である。 本明細書において頻繁に用いられている「約」の用語は、水溶性ポリマーの調製の際に、いくつかの分子が、記載された分子量よりも大きいか、幾分小さい重量を有することを示す。 一般に、分子量が大きいか、または分岐が多いほど、ポリマー/タンパク質比も高くなる。 例えば、徐放の期間;もしあれば、生物活性に対する影響;取り扱いの容易さ;抗原性の程度または欠如、および治療用タンパク質に対する水溶性ポリマーのその他の既知の作用を含む、所望の治療プロフィールに応じて、その他の大きさで用いらる。
【0260】
WSPは、ペプチドまたはタンパク質の機能的ドメインまたは抗原性ドメインに対する影響を考慮して、ペプチドまたはタンパク質に付着されるべきである。 一般に、化学的誘導は、活性化したポリマー分子とタンパク質とを反応させるために使用される任意の適切な条件下で実施される。 水溶性ポリマーを一つまたはそれ以上のタンパク質に連結するために用いる活性化基として、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジジリン、オキシランおよび5-ピリジルなどがあるが、これらに限定されない。 還元アルキル化によってペプチドに付着させる場合に選択されるポリマーは、重合度の制御を目的として、単一の反応性アルデヒドを有するものにすべきである。
【0261】
臨床的に許容可能な適切な水溶性ポリマーとして、PEG、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、モノメトキシポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリ(β-アミノ酸)(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー(PPG)およびその他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)およびその他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、またはポリオキシエチル化グルコース、結腸酸またはその他の炭水化物ポリマー、フィコールまたはデキストランならびにそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0262】
多糖ポリマーは、タンパク質修飾に用いられるその他のタイプの水溶性ポリマーである。 デキストランは、主にα1-6結合によって連結するグルコースの個々のサブユニットから構成される多糖ポリマーである。 デキストラン自体は、多様な分子量のものが入手可能であり、約1kD〜約70kDの分子量のものが容易に入手できる。 デキストランは、それ単独でも、またはその他のビヒクル(例えば、Fc)と組み合わせても、本願発明でビヒクルとして使用するのに適した水溶性ポリマーとなる。 例えば、WO96/11953およびWO96/05309を参照のこと。 治療用免疫グロブリンまたは診断用免疫グロブリンと共役したデキストランの使用が報告されている;例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する欧州特許公報第0 315 456号を参照のこと。 デキストランが本願発明に従ってビヒクルとして用いられる場合、約1kD〜約20kDのデキストランが好ましい。
【0263】
ある実施態様において、WSPはPEGであり、そして本願発明は、化合物がその他のタンパク質を誘導するために用いるPEGの形態のいずれかを含むように修飾することも企図しており、例えば、モノ-(C1〜C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールなどの調製を企図しているが、これらに限定されない。 ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定性を保つため、製造の際に有利である。 PEG基は、任意の好都合な分子量のものであってもよく、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。 本願発明での使用が企図されるPEGの平均分子量は、約2kDaから約100kDaまで、約5kDaから約50kDaまで、約5kDaから約10kDaまでの範囲である。 その他の実施態様において、PEG部分は、約6kDaから約25kDaまでの分子量を有する。 一般に、PEG基は、PEG部分上の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)を介して標的ペプチドまたはタンパク質上の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)へ、アシル化または還元アルキル化によってペプチドまたはタンパク質に付着される。 本明細書に記載の方法を用いてポリマー/ペプチド共役分子の混合物が調製され、そして、本明細書に記載の方法での利点は、ポリマー/ペプチド共役の比率を選択して混合物中に含ませることが可能なことである。 従って、所望であれば、ペプチドと、付着させる種々の数(すなわち、0個、1個または2個)のポリマー部分との混合物が、所定のポリマー/タンパク質共役比率で調製される。
【0264】
合成ペプチドのPEG化のための有用な手法(その他の方法の詳細は、本明細書に記載の通りである)は、ペプチドとPEG部分とを、溶液中で共役結合を形成することによって組み合わせる工程からなり、このペプチドとPEG部分の各々は、その他のものに対して相互に反応性を示すという特殊な機能性を有する。 このペプチドは、従来の固相合成で容易に調製される。 このペプチドは、特定の部位で適切な官能基を用いて「事前に活性化」される。 この前駆体は、PEG部分と反応させる前に精製され、かつ十分に特性決定される。 ペプチドとPEGのライゲーションは、通常は水相で起こり、逆相分析HPLCにより容易にモニターされる。 このPEG化ペプチドは、分取HPLCによって容易に精製され、そして、分析HPLC、アミノ酸分析およびレーザー脱離質量分析によって特性決定される。
【0265】
リンカー
ペプチド間、ペプチドとビヒクルとの間またはビヒクルとWSPとの間に位置するか否かにかかわらず、任意の「リンカー」基が随意に選択される。 リンカーが存在する場合、主にスペーサーとしての役割を果たすため、その化学構造は重要ではない。 リンカーは、ペプチド結合で互いに連結されたアミノ酸で構成されていることが好ましい。 従って、好ましい実施態様において、リンカーは、ペプチド結合で連結された1個〜20個のアミノ酸で構成されており、これらのアミノ酸は、20個の天然に存在するアミノ酸から選択される。 当業者に周知の通り、これらのアミノ酸のいくつかは、グリコシル化される。 より好ましい実施態様において、この1個〜20個のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。 さらに好ましくは、リンカーを構成する過半数のアミノ酸が、立体障害のないアミノ酸(例えば、グリシンおよびアラニン)である。 従って、好ましいリンカーは、ポリグリシン(特に、(Gly)4、(Gly)5)、ポリ(Gly-Ala)、およびポリアラニンである。 その他の具体的なリンカーの例は、以下の通りである。
【0266】
【化26】

【0267】
上記の命名法を説明すると、例えば、(Gly)3Lys(Gly)4は、Gly-Gly-Gly-Lys-Gly-Gly-Gly-Glyを意味する。 GlyとAlaの組み合わせも好ましい。 本明細書に示したリンカーは例示的なものであって、本願発明の範囲内のリンカーは、はるかに長くてもよく、また、その他の残基を含んでいてもよい。
【0268】
非ペプチドリンカーも可能である。 例えば、-NH-(CH2)s-C(O)-(式中、s=2〜20)のようなアルキルリンカーを用いることもできる。 これらのアルキルリンカーは、低級アルキル基(例えば、C1〜C6)、低級アシル基、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2、フェニルなどのような、立体障害のない任意の基でさらに置換される。 非ペプチドリンカーの例として、以下の式、すなわち;
【0269】
【化27】

【0270】
式中、nは、このリンカーの分子量が100〜5000kD、好ましくは100〜500kDであるような値である式で表されるPEGリンカーがある。 このペプチドリンカーは、前述した方法と同じ方法で、誘導体を形成するために改変される。
【0271】
ペプチド生成
同定されているペプチドは、組換えDNA技術を用いて形質転換された宿主細胞内で調製される。 ビヒクル成分がポリペプチドである場合、ペプチド-ビヒクル融合産物は、一つのものとして発現される。 そうするために、まず、ペプチドをコードしている組換えDNA分子が、当該技術分野で周知の方法を用いて調製される。 例えば、ペプチドをコードする配列が、適切な制限酵素を用いてDNAから切り取られる。 あるいは、ホスホラミデート法のような化学合成技術を用いて、DNA分子を合成することもできる。 また、これらの技術の組み合わせを用いることもできる。 従って、本願発明は、本願発明の化合物をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0272】
また、本願発明は、適切な宿主において本願発明の化合物をコードするベクターを提供する。 ベクターは、適切な発現制御配列に作動可能に連結された化合物をコードするポリヌクレオチドを含む。 ポリヌクレオチドがベクターへ挿入される前後のいずれかに、この作動可能な連結を達成する方法は、周知である。 発現制御配列として、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関連するその他のシグナルがある。
【0273】
こうして得られたポリヌクレオチドを含むベクターは、適切な宿主を形質転換するために用いられる。 この形質転換は、当該技術分野で周知の方法を用いて行われる。
【0274】
多数の入手可能な周知の宿主細胞のいずれかが、本願発明の実施の際に用いられる。 特定の宿主の選択は、当該技術分野で認識されている多くの因子に依存する。 これらの因子として、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換の割合、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、バイオセーフティおよび経費などがある。 これらの因子のバランスは、すべての宿主が特定のDNA配列の発現に対して等しく有効であるとは限らないという理解の下で決定されなければならない。 これらの一般的ガイドラインに準拠して、有用な微生物宿主としては、細菌(例えば、大腸菌)、酵母(例えば、Saccharomyces)およびその他の菌類、昆虫、植物、哺乳動物(ヒトを含む)培養細胞、または当該技術分野で周知のその他の宿主がある。
【0275】
次に、形質転換した宿主が培養され、そして、精製される。 宿主細胞は、所望の化合物が発現されるように、従来の発酵条件下で培養される。 このような発酵条件は、当該技術分野で周知である。 最終的に、ペプチドが、当該技術分野で周知の方法によって培養物から精製される。
【0276】
本願発明の化合物を発現するために利用される宿主細胞に基づいて、炭水化物(オリゴ糖)類は、タンパク質のグリコシル化部位であることが分かっている部位に適宜付着される。 一般に、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)およびアスパラギン(Asn)残基が配列Asn−X-Ser/Thr(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)の一部である場合、O-結合型オリゴ糖は、SerまたはThr残基に付着され、一方で、N-結合型オリゴ糖は、Asn残基に付着する。 Xは、プロリンを除く19個の天然に存在するアミノ酸の一つであることが好ましい。 N-結合型およびO-結合型オリゴ糖ならびに各々の型に認められる糖残基の構造は異なる。 両方の型で共通して認められる糖の型は、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸とも呼ばれている)である。 シアル酸は、通常、N-結合型およびO-結合型オリゴ糖の双方の末端残基を有し、その負電荷によって、グリコシル化化合物を酸性化する。 このような部位は、本願発明の化合物のリンカーに組み込まれ、そして、ポリペプチド化合物の組換え生産の間、細胞内(例えば、CHO、BHK、COSのような哺乳動物細胞内)で好適にグリコシル化される。 しかし、このような部位も、当該技術分野で周知の合成手順または半合成手順によってグリコシル化されてもよい。
【0277】
あるいは、化合物は、合成法によって調製されてもよい。 例えば、固相合成技術が用いられる。 適切な技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Merrifield (1973), Chem. Polypeptides, pp.335〜61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield (1963), J. Am. Chem. Soc. 85:2149;Davis et al., (1985), Biochem. Intl. 10:394〜414;Stewart and Young (1969), Solid Phase Peptide Synthesis;米国特許第3,941,763号;Finn et al., (1976), The Proteins (第3版)2:105〜253;ならびにErickson et al., (1976), The Proteins(第3版)2:257〜527に記載の技術がある。 固相合成は、少量のペプチドを作製する最も対費用効果の高い方法であるため、個々のペプチドを作製する好適な技術である。
【0278】
誘導ペプチドを含む化合物または非ペプチド基を含む化合物は、特に、周知の有機化学技術による合成で修正可能である。
【0279】
WSP修飾
WSPに共有結合で付着した化合物を得るために、本明細書に記載の方法、あるいは当該技術分野で周知の任意の方法が使用される。 ポリペプチドの化学的誘導体を調製する方法は、一般に、(a)ポリペプチドが一つまたはそれ以上のポリマー分子に付着する条件下で、ポリペプチドと活性化ポリマー分子(例えば、高分子の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とを反応させる工程、および(b)反応生成物を得る工程を含む。 最適な反応条件は、既知のパラメータおよび所望の結果に基づいて決定される。 例えば、ポリマー分子:タンパク質の比率が大きくなるほど、付着されるポリマー分子の割合も大きくなる。
【0280】
生物学的に活性な分子は、当該技術分野で周知の方法を用いて、利用可能な任意の官能基を介してポリマーに連結される。 このような連結を形成するために用いられるポリマーまたは生物学的に活性な分子のいずれかに存在する官能基の例として、アミンおよびカルボキシ基、チオール基(例えば、システイン残基中に認められるチオール基)、アルデヒド類およびケトン類、ならびに水酸基(例えば、セリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリシン残基中に認められる水酸基)がある。
【0281】
ポリマーは、生物学的に活性な分子のアミン官能基と反応するために、トリクロロ-s-トリアジン[本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するAbuchowski et al., (1977), J. Biol. Chem. 252:3582〜3586]、カルボニルイミダゾール[本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するBeauchamp et al., (1983), Anal. Biochem. 131:25〜33]、またはスクシンイミジルスクシネート[本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するAbuchowski et al., (1984), Cancer Biochem. Biophys. 7:175〜186]のような反応基をカップリングすることによって活性化される。 その他のカップリング方法は、ある分子のグリオキシリル基と、共役されるその他の分子のアミノオキシ基、ヒドラジド基またはセミカルバジド基の形成に関与している[FieldsおよびDixon, (1968), Biochem. J. 108:883〜887;Gaertner et al., (1992), Bioconjugate Chem. 3:262〜268;Geoghegan and Stroh, (1992), Bioconjugate Chem. 3:138〜146;Gaertner et al., (1994), J. Biol. Chem. 269:7224〜7230;これら各文献の内容は、本明細書の一部を構成するものとして援用する]。 その他の方法は、クロロホルメートまたはジスクシンイミジルカーボネートを用いることで、共役される一番目の分子の遊離アルコール基での活性エステルの形成に関与し、次いで、カップリングされるその他の分子のアミン基に共役される[Veronese et al., (1985), Biochem. and Biotech. 11:141〜152;Nitecki et al., 米国特許第5,089,261号;Nitecki、米国特許第5,281,698号;これら各文献の内容は、本明細書の一部を構成するものとして援用する]。 遊離アルコール基を介して付着されるその他の反応基は、Wright、EP0539167A2(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)に記載されている。 また、EP0539167A2は、遊離アミン基を介するカップリングのためのイミダートの使用についても記載している。
【0282】
その他の化学反応は、メトキシ-PEG(O-[(N-スクシンイミジルオキシカルボニル)-メチル]-O'-メチルポリエチレングリコール)のNHS-エステルを用いることで、標的の1級アミンのアシル化に関与している。 メトキシ-PEG-NHSを用いたアシル化により、もとの1級アミンから電荷を除去するアミド連結が生じる。 その他の方法は、アルデヒドへ酸化させるために、最後から2番目のグリコシル単位であるシアル酸のジオール側基を標的化するべく、選択された条件下での標的の穏やかな酸化を利用する。 得られたグリコアルデヒドは、次いで、メトキシ-PEG-ヒドラジド(O-(ヒドラジノカルボニルメチル)-O'-メチルポリエチレングリコール)と反応して、PEGと標的との間に半安定性のヒドラゾンを形成する。 次いで、このヒドラゾンは、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによって還元されて、安定なPEG共役体を生成する。 例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第6,586,398号(Kinstler et al., 2003年7月1日)を参照のこと。
【0283】
化学的修飾のための技術に関する出願、例えば、米国特許第4,002,531号(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)には、還元アルキル化を、酵素へのポリエチレングリコール分子の付着のために用いられたことが記載されている。 米国特許第4,179,337号(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)には、PEG:タンパク質共役体、例えば、酵素およびインスリンを含む共役体が開示されている。 米国特許第4,904,584号(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)には、反応性アミン基によってポリエチレングリコール分子を付着させるために、タンパク質でのリジン残基数を変更することが開示されている。 米国特許第5,834,594号(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)には、実質的に非免疫原性の水溶性PEG:タンパク質共役体、例えば、タンパク質IL-2、インターフェロンα、およびIL-1raを含む共役体が開示されている。 Hakimi et al.,の方法は、ユニークなリンカーを利用して、タンパク質内の種々の遊離アミノ基をPEGに結合させる方法である。 米国特許第5,824,784号および第5,985,265号(本明細書の一部を構成するものとしてこれら各文献の内容を援用する)は、選択的にN末端を化学修飾したタンパク質およびその類似体、すなわち、G-CSFおよびコンセンサスインターフェロンを含む類似体を生成させる方法を教示してい。 このような修飾されたタンパク質は、タンパク質の安定性に関する利点を有するのみならず、加工上の利点ももたらすことは重要である。
【0284】
WSP修飾は、Francis et al.,「Stability of protein pharmaceuticals」での「in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization」(Ahern., T. and Manning, M.C. eds.) Plenum, N.Y., 1991(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)にも記載されており、これを用いることができる。 さらに別の実施態様として、Delgado et al.,「Coupling of PEG to Protein By Activation With Tresyl Chloride,Applications In Immunoaffinity Cell Preparation」:(Fisher et al., eds., 「Separations Using Aqueous Phase Systems,Applications In Cell Biology and Biotechnology」、Plenum Press、N.Y. N.Y, 1989 pp.211〜213)(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)に記載の方法は、トレシルクロリドの使用に関するものであって、WSP部分とポリペプチド部分の間に連結基をもたらさない。 その他の実施態様において、WSPの付着は、当該技術分野で周知のように、カルボキシメチルメトキシポリエチレングリコールのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルの使用によって達成される。
【0285】
WSPを用いた標的の修飾のその他の記載に関しては、例えば、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの各内容を援用する米国特許出願第20030096400号;EP 0 442724A2;EP 0154316;EP 0401384;WO94/13322;米国特許第5,362,852号;第5,089,261号;第5,281,698号;第6,423,685号;第6,635,646号;第6,433,135号;国際出願WO90/07938;Gaertner and Offord, (1996), Bioconjugate Chem. 7:38〜44;Greenwald et al., Crit Rev Therap Drug Carrier Syst. 2000;17:101〜161;Kopecek et al., J Controlled Release., 74:147〜158, 2001;Harris et al., Clin Pharmacokinet. 2001;40(7):539〜51;Zalipsky et al., Bioconjug Chem. 1997;8:111〜118;Nathan et al., Macromolecules. 1992;25:4476〜4484;Nathan et al., Bioconj Chem. 1993;4:54〜62;ならびにFrancis et al., Focus on Growth Factors, 3:4〜10(1992)を参照のこと。
【0286】
還元アルキル化
ある実施態様において、WSPの共有結合的付着は、N末端のα-アミノ基を選択的に修飾するために、本明細書に記載の還元アルキル化化学修飾手順によって行われ、そして、得られた生成物を、本明細書に記載の生物活性アッセイのような所望の生物学的特性について試験する。
【0287】
タンパク質またはペプチドへのWSPの付着のための還元アルキル化は、特定のタンパク質における誘導のために利用可能な種々のタイプの1級アミノ基(例えば、リジンとN末端と)の反応性の差を利用する。 適切な反応条件下で、カルボニル基含有ポリマーを用いて、タンパク質のN末端での実質的に選択的な誘導が達成される。
【0288】
還元アルキル化に関して選択されるポリマーは、単一の反応性アルデヒド基を有する。
【0289】
反応性アルデヒドは、例えば、耐水性のポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノC1-C10アルコキシもしくはアリールオキシ誘導体である(本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第5,252,714号を参照のこと)。
【0290】
ある方法にあっては、還元アルキル化を、PEGアルデヒド(O-(3-オキソプロピル)-O'-メチルポリエチレングリコール)を1級アミンに共役させるために使用する。 この方法は、適切な条件下では、主にタンパク質のN末端でα-アミンにより修飾されたPEG共役体を生成することが知られている。
【0291】
生物学的に活性な分子を共役させる上で有用なアルデヒド官能基は、隣接したアミノ基およびアルコール基を有する官能基から生成される。 ポリペプチドにおいて、例えば、N末端のセリン、トレオニンまたはヒドロキシリシンは、過ヨウ素酸塩を用いた穏和な条件下での酸化的開裂により、アルデヒド官能基を生成するために用いられる。 これらの残基、またはそれらの等価物は、例えば、ポリペプチドのN末端に正常に存在してもよく、化学的消化または酵素消化によって露出されてもよく、あるいは、組換えまたは化学的方法によって導入されてもよい。 アルデヒドを生成するための反応条件は、通常は、1モル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの付加を伴い、そして、タンパク質内でのその他の位置での酸化を回避するための穏和な条件とする。 pHは、約7.0が好ましい。 典型的な反応では、1.5倍モル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加後に、暗所にて室温で、10分間インキュベーションすることを含む。
【0292】
アルデヒド官能基は、ヒドラジドまたはセミカルバジド官能基を含む活性化ポリマーにカップリングされて、ヒドラゾンまたはセミカルバゾン結合を形成する。 ヒドラジド含有ポリマーは市販されており、必要に応じて、標準技術を用いて合成することもできる。
【0293】
本願発明で用いられるPEGヒドラジドは、Shearwater Polymers, Inc., 2307 Spring Branch Road, Huntsville, Ala. 35801(現在のNektar Therapeutics, 150 Industrial Road, San Carlos, CA 94070-6256の一部分)から入手できる。 アルデヒドとポリマーの二つの成分の溶液を一緒に混合し、反応が実質的に完了するまで約37℃に加熱することによって、アルデヒドがポリマーにカップリングされる。 過剰のポリマーヒドラジドは、一般的には、得られた共役体の量を増加させるために用いられる。 一般的な反応時間は、26時間である。 反応物の熱安定性によって、反応温度および反応時間を、適切な結果を得るために変更する。 酸化とカップリングの双方のための反応条件の詳細は、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの各内容を援用するGeoghegan and Stroh, (1992), Bioconjugate Chem. 3:138〜146およびGeogheganの米国特許第5,362,852号に記載されている。
【0294】
還元剤は、還元アルキル化を用いて、水溶液中で安定にさせておくべきであり、好ましくは、還元アルキル化の初期過程において形成されるシッフ塩基のみを還元するようにすべきである。 還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボレート、トリメチルアミンボレートおよびピリジンボレートから選択されるが、これらに限定されない。
【0295】
反応pHは、用いるタンパク質に対するポリマーの比率の影響を受ける。 一般に、反応pHが標的反応基のpKaよりも低いほど、タンパク質に対して過剰のポリマーが必要とされる。 pHが、標的pKaよりも高い場合、ポリマー:タンパク質の比率は、それほど大きくする必要はない(すなわち、より多くの反応基が利用可能であるため、必要なポリマー分子は少なくてすむ)。
【0296】
従って、反応は、ある実施態様において、タンパク質のリジン残基のε-アミノ基とN末端残基のα-アミノ基との間のpKaの差を利用することが可能なpH条件下で行われる。 このような選択的な誘導によって、タンパク質への水溶性ポリマーの付着が制御され、ポリマーとの共役は、主にタンパク質のN末端で起こり、その他の反応基、例えば、リジン側鎖アミノ基の著しい修飾は起こらない。
【0297】
従って、ある実施態様において、標的化合物へのWSPの共有結合的付着のための方法が提供され、この方法は、その他の化学修飾化学を用いた場合に必要とされるようなさらに大規模な精製を行うことなく、WSP/タンパク質共役分子の実質的に均質な調製物を提供する。 より詳細には、ポリエチレングリコールが用いられる場合、周知の方法は、抗原性の連結基を欠いたN末端PEG化タンパク質の生成を可能にするであろう。 すなわち、ポリエチレングリコール部分は、潜在的に有毒な副産物を生じることなくタンパク質部分に直接カップリングされる。
【0298】
標的ペプチドまたはタンパク質分子に付着したWSP分子の比率は、反応混合物でのそれらの濃度と同様に、選択されたWSPの付着方法によって異なる。 一般に、(過剰の未反応タンパク質またはポリマーが存在しない反応の効率に換算して得た)至適比率は、選択したWSPの分子量によって決定される。 さらに、非特異的付着およびその後の所望の種類の物質の精製に関与する方法を用いる場合、この比率は、利用可能な反応基(通常はアミノ基)の数に応じて変化する。
【0299】
精 製
実質的に均質なWSP修飾調製物を得る方法は、ある実施態様において、数種類の物質の混合物から主に単一の種類の修飾化合物を精製することに関する。 その例として、実質的に均質な物質は、まず、(たとえ見かけが同じ電荷を有するその他の種類の物質が存在していても)単一の電荷特性を有する物質を得るためにイオン交換クロマトグラフィーによって分離され、次いで、所望の種類の物質がサイズ排除クロマトグラフィーを用いて分離される。 本願発明によって報告および企図されているその他の方法として、例えば、PEG含有水性二相系においてPEG/タンパク質付加物を分配する工程を含む、PEG-タンパク質付加物の混合物を分画するためのプロセスを記載している、1990年5月3日に公開のWO90/04606がある。
【0300】
従って、本願発明のある実施態様は、以下の工程、すなわち:(a)二つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物と水溶性ポリマー部分とを、当該水溶性ポリマーが当該α-アミノ基に選択的に付着されるようにタンパク質部分のアミノ末端のα-アミノ基を選択的に活性化するのに適したpHで、還元アルキル化条件下で反応させる工程;および(b)反応生成物を得る工程を含む、WSP修飾化合物共役体を調製する方法である。 必要に応じて、特に治療薬にあっては、反応生成物は、未反応部分から分離される。
【0301】
ペプチドマッピングおよびN末端配列決定によって確認されるように、PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも50%のPEG化ペプチドを含む調製物が提供される。 その他の実施態様において、PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも75%のPEG化ペプチドを含む調製物;PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも85%のPEG化ペプチドを含む調製物;PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも90%のPEG化ペプチドを含む調製物;PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも95%のPEG化ペプチドを含む調製物;および、PEG化ペプチドと未反応ペプチドとの混合物に少なくとも99%のPEG化ペプチドを含む調製物が提供される。
【0302】
薬学的組成物
本願発明は、本願発明の調製物を含む薬学的組成物をさらに提供する。 このような薬学的組成物は、注射での投与用、あるいは経口、経鼻、経皮またはその他の投与形態、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、乳腺内、腹腔内、髄腔内、眼内、眼球後、肺内(例えば、エアロゾル化薬剤)または皮下注射(持続的放出のためのデポー投与を含む)による投与形態;舌下、肛門、または膣による投与形態、あるいは外科移植、例えば、脾膜下、脳、または角膜中の包埋による投与形態に適した組成物を含む。 処置は、単回投与、または、長期間にわたる反復投与から構成されていてもよい。 一般に、有効量の本願発明の化合物を、薬学的に許容可能な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、補助剤および/または担体と共に含む薬学的組成物を、本願発明は含む。 これら組成物に対して、種々の緩衝液内容物(例えば、トリス-塩酸、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および可溶化剤(例えば、ツイーン80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロゾール、ベンジルアルコール)および充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)のような添加物;ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのような高分子化合物の粒子状調製物またはリポソームを取り込むこともできる。 ヒアルロン酸もまた使用でき、ヒアルロン酸は、循環血液中での持続時間を延長する効果を有する。 薬学的組成物は、薬学的なビヒクル、賦形剤または媒体としての役割を果たす薬学的に許容可能なその他の液体、半固体、または固体の希釈剤を必要に応じて含むことができ、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ステアリン酸マグネシウム、メチル−およびプロピルヒドロキシベンゾアート、デンプン、スクロース、デキストロース、アラビアゴム、リン酸カルシウム、鉱油、カカオバター、およびカカオ脂などがあるが、これらに限定されない。 このような組成物は、タンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、およびin vivoでの浄化速度に影響を及ぼす。 例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版 (1990, Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042) 1435〜1712頁を参照のこと。 組成物は、液体形態でも、または凍結乾燥された形態のような乾燥粉末でも調製することができる。 経皮製剤と同様に、移植可能な徐放性製剤も企図している。
【0303】
経口投与製剤
本明細書では経口固体剤形の使用も意図しており、このものは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences (1990), 第18版(Mack Publishing Co. Easton Pa.18042)の第89章に概説されている。 固体剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸薬、トローチもしくはロゼンジ、カシェ剤またはペレットがある。 あるいは、プロテイノイドカプセル化(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されたプロテイノイドミクロスフェア)や、リポソームカプセル化が用いることもでき、このリポソームは、必要に応じて種々のポリマーで誘導される(例えば、米国特許第5,013,556号)。 治療薬のための固体剤形の説明は、一般に、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するMarshall,K.,Modern Pharmaceutics (1979) G. S. Banker and C. T. Rhodes eds.の第10章に示されている。 一般に、この製剤は、本願発明の調製物と、胃内環境に対する保護効果があり、かつ、腸内での生物活性材料の放出を可能にする不活性成分とを含む。
【0304】
必要であれば、化合物は、経口送達が有効となるように化学的に修飾される。 一般に、企図している化学的修飾は、少なくとも一つの反応性部分が、化合物分子自体への付着を可能にする修飾であり、この部分が、(a)タンパク質分解の阻害、および(b)胃または腸管からの血流中への取り込みを可能にする。 化合物の全体的な安定性の増加および体内での循環時間の増加も、所望されている。 このような反応性部分の例として、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロリンがある(Abuchowski and Davis, Soluble Polymer-Enzyme Adducts, Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts eds., Wiley-Interscience, New York, NY, (1981), pp367〜383;Newmark et al., J. Appl. Biochem. 4:185〜189 (1982))。 利用可能なその他のポリマーとして、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカンがある。
【0305】
経口送達剤形について、治療化合物の吸収を増強する担体として、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)のような修飾された脂肪族アミノ酸の塩を用いることも可能である。 SNACを用いるヘパリン製剤の臨床上の有用性は、Emisphere Technologiesによって実施された第二相試験において実証されている。 米国特許第5,792,451号、「Oral drug delivery composition and methods」を参照のこと。
【0306】
本願発明の調製物は、例えば、約1mmの粒径の粒子またはペレットの形態で、微細なマルチ粒子として製剤に含めることができる。 また、散剤と同様に、カプセル投与のための材料の製剤は、軽く圧縮した板状剤または錠剤でもよい。 組成物は、必要に応じて圧縮して調製される。
【0307】
着色剤および香料を含んでいてもよい。 例えば、調製物が処方され(例えば、リポソームまたはミクロスフェアカプセル化によって)、次いで、着色剤および香料を含む冷蔵飲料のような食品に加えることもできる。
【0308】
本願発明の調製物は、ある実施態様において、不活性材料で希釈または増量される。 希釈剤の例として、炭水化物、特にマンニトール、α-ラクトース、無水乳糖、セルロース、スクロース、修飾デキストランおよびデンプンがある。 三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む特定の無機塩類も、賦形剤として用いることができる。 Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellなどの市販の希釈剤も利用可能である。
【0309】
固体剤形組成物において、崩壊剤を含む調製物をさらに企図している。 崩壊剤として用いられる材料として、デンプン(デンプンを主成分とする市販の崩壊剤、Explotabを含む)、デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトなどがあるが、これらに限定されない。 崩壊剤のその他の形態として、不溶性の陽イオン交換樹脂がある。 粉末ゴムも、崩壊剤および結合剤として用いることができ、このようなものとして、寒天、カラヤまたはトラガカントゴムのような粉末ゴムがある。 アルギン酸およびそのナトリウム塩も、崩壊剤として有用である。
【0310】
結合剤を含む薬学的組成物に、治療薬をさらに結合させて硬質の錠剤を形成することも企図しており、結合剤の例として、アラビアゴム、トラガカントゴム、デンプンおよびゼラチンのような天然物からの材料がある。 その他の結合剤として、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などがある。 ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、そのいずれもが、治療剤を顆粒化するためにアルコール溶液中で用いられる。
【0311】
薬学的組成物に減摩剤を用いることで、調製中の固着を防ぐことを、さらに企図している。 潤滑剤として、ステアリン酸とそのマグネシウム塩およびカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスがあるが、これらに限定されない。 ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000および6000のような可溶性潤滑剤も利用可能である。
【0312】
調製作業時の薬学的組成物の流動性を改善し、圧縮時の再構成を補助する流動促進剤も提供される。 流動促進剤の例として、デンプン、滑石、焼成シリカおよび水酸化ケイアルミン酸塩がある。
【0313】
水性環境中への組成物の溶解を補助するために、湿潤剤として界面活性剤を組み込むことも企図される。 界面活性剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムのような陰イオン洗剤がある。 陽イオン性洗剤の例として、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含むものがあるが、これらに限定されない。 その他の実施態様において、界面活性剤として用いられる組成物として、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65および80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロースならびにカルボキシメチルセルロースなどがある。 従って、これらの界面活性剤を、単独で、または種々の割合の混合物として取り込んでなる組成物も提供される。
【0314】
必要に応じて、化合物の取り込みを促すために、薬学的組成物に添加物を含ませることができ、このような添加物として、脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸があるが、これらに限定されない。
【0315】
徐放性組成物
その他の実施態様において、徐放性製剤が提供される。 本願発明の調製物は、拡散機構または浸出機構のいずれかに従った放出を可能にする不活性マトリックス、例えば、ゴム内に取り込まれる。 緩慢に変性するマトリックス、例えば、アルギン酸塩、多糖類もまた、製剤に取り入れることができる。 徐放性のその他の形態として、Oros治療システム(Alza Corp.)による方法がある。 すなわち、浸透圧効果により水を侵入させ、次いで、単一の小開口部を介して押し出すことが可能な半透膜内に薬物は封入される。 いくつかの腸溶性コーティング層も、徐放効果を有する。
【0316】
例えば、コーティングパンに適用される様々な糖類を含むその他のコーティング剤も、本願発明の組成物において利用可能である。 また、組成物は、フィルムコーティングされた錠剤も含んでおり、その際に用いられる材料は、二つのグループに分類される。 第一のグループは、非腸溶性材料を含むものであり、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プロビドンおよびポリエチレングリコールなどがあるが、これらに限定されない。 第二のグループは、一般に、フタル酸のエステルである腸溶性材料からなるものである。
【0317】
また、最適なフィルムコーティングを提供するために、これら材料の混合物も企図している。 フィルムコーティングは、パンコーターまたは流動床の内部で行われるか、あるいは圧縮コーティングによって行われる。
【0318】
肺送達
本願発明の調製物の肺送達も、本明細書において企図している。 化合物は、吸入の間に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮層を横断して血流に到達する。 肺送達は、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの各々の内容を援用するAdjei et al., Pharma. Res. (1990) 7:565-9;Adjei et al., (1990), Internatl. J. Pharmaceutics 63:135-44;Braquet et al., (1989), J. Cardiovasc. Pharmacol. 13 (補遺5):s.143-146;Hubbard et al., (1989), Annals Int. Med. 3:206-12;Smith et al., (1989), J. Clin. Invest. 84:1145-6;Oswein et al., (1990年3月)、「Aerosolization of Proteins」,Proc. Symp. Resp. Drug Delivery II, Keystone,Colo.;Debs et al., (1988), J. Immunol. 140:3482-8およびPlatz et al., 米国特許第5,284,656号に記載されている。
【0319】
機械装置
治療薬の肺送達のために設計された様々な機械装置(噴霧器、計量式吸入器、および、粉末吸入器などがあるが、これらに限定されず、また、これらのいずれもが当業者に周知のものである)もまた、本願発明の実施のために企図している。 本願発明の実施に適した市販の装置の例として、ミズーリー州セントルイスに所在のMallinckrodt, Inc.製のウルトラベント噴霧器;コロラド州エングルウッドに所在のMarquest Medical Products製のAcorn II噴霧器;ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークに所在のGlaxo Inc.製のVentolin定量吸入器;およびマサチューセッツ州ベッドフォードに所在のFisons Corp.製のSpinhaler粉末吸入器がある。
【0320】
このような装置はいずれも、本願発明の調製物を投薬するのに適した製剤の使用を必要とする。 各製剤は、通常は、使用される装置の規格に適しており、治療に有用な希釈剤、補助剤および/または担体に加えて、適切な噴霧剤材料も使用できる。
【0321】
遠位にある肺への有効な送達のために、組成物は、その平均粒径が、ある実施態様では、10μm(ミクロン)未満とし、また、その他の実施態様では、0.5〜5μmである微粒子形態に調製される。
【0322】
ジェット噴霧器または超音波噴霧器のいずれかでの使用に適した製剤は、通常は、溶液1ml当たり約0.1mg〜25mgの生物活性タンパク質の濃度で水中に溶解された本願発明の化合物を含む。 また、この製剤は、(例えば、タンパク質安定化および浸透圧の調節のために)緩衝液および単糖を含むことができる。 また、噴霧器用製剤は、エアロゾルを形成する際に溶液の微粒化によって引き起こされるタンパク質の表面誘起凝集を減少させるか、あるいは防ぐために、界面活性剤を含ませることができる。
【0323】
定量吸入器装置で使用する製剤は、通常は、界面活性剤を用いて噴霧剤に懸濁された本願発明の化合物を含む細粉を含む。 噴霧剤には、この目的のために使用される任意の従来の材料、例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む炭化水素、あるいはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。 適切な界面活性剤として、ソルビタントリオレエートおよび大豆レシチンがある。 また、オレイン酸は、界面活性剤として有用である。
【0324】
粉末吸入器装置から投薬するための製剤は、本願発明の化合物を含む乾燥微粉を含み、そして、ラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはキシリトールのような充填剤を、装置からの粉末の散布を促進する量、例えば、製剤の50〜90重量%で含んでいてもよい。
【0325】
経鼻送達
本願発明の調製物を、経鼻送達することも企図している。 経鼻送達により、治療薬を鼻に投与した後、この治療薬を、肺の中に沈着させずに、タンパク質が血流に直接移行することが可能になる。 経鼻送達のための製剤として、デキストランまたはシクロデキストランを含む製剤がある。 その他の粘膜を介した輸送による送達も企図している。
【0326】
口腔送達形態
本願発明の化合物を、口腔送達することも企図している。 ペプチドとともに使用される口腔送達製剤は、当該技術分野で周知である。
【0327】
担 体
薬学的に許容可能な担体として、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース、およびソルビトールのような炭水化物がある。 製剤に用いられるその他の成分として、DPPC、DOPE、DSPCおよびDOPCがある。 天然または合成の界面活性剤を用いてもよい。 PEGを、(本願発明の化合物の誘導体での用途とは別に)用いてもよい。 シクロデキストランのようなデキストランを用いてもよい。 胆汁酸塩およびその他の関連するエンハンサーを用いてもよい。 セルロースおよびセルロース誘導体を用いてもよい。 アミノ酸を、緩衝液製剤での使用態様のようして用いてもよい。
【0328】
その他の製剤
リポソーム、マイクロカプセルもしくはミクロスフェア、包接複合体、またはその他のタイプの担体の使用も企図している。
【0329】
投与用量
本明細書に記載の病態を処置する方法に関する投与計画は、薬物の作用を修飾する種々の因子、例えば、患者の年齢、状態、体重、性別、食事、任意の感染の重症度、投与の時間およびその他の臨床学的因子を考慮して、主治医によって決定される。 種々の態様において、日々の投与計画は、体重1キログラム当たりの調製物を、0.1μg〜1000μg(化学的修飾が無い状態で、タンパク質単独の質量を計算して得た数値)または0.1〜150μg/kgの範囲内で投与する。
【0330】
本願発明の調製物は、まず丸薬として投与され、次いで、治療時の製剤の血中濃度を維持するために持続的注入によって投与される。 その他の例として、本願発明の化合物は、一回限りの用量だけを投与してもよい。 適正な医療行為および個々の患者の臨床症状に基づいて決定される有効な用量および投与計画は、当業者であれば、容易に最適化できる。 投与頻度は、薬剤の薬物動態パラメータおよび投与経路による。 最適な薬学的製剤は、投与経路および所望の用量に応じて、当業者によって決定される。 例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990, Mack Publishing Co., Easton, PA 18042)第1435〜1712頁を参照のこと。 このような製剤は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、およびin vivoでの浄化速度に影響を及ぼす。 投与経路に応じて、適切な用量は、体重、体表面積または器官の大きさに基づいて決定される。 上記した各製剤を用いて処置する際の好適な用量を決定するための計算法は、とりわけ、本明細書に開示した投薬情報およびアッセイ、ならびに上記したヒト臨床試験において認められる薬物動態データを考慮することで、当業者であれば、過度の実験を経ずに改良することができる。 適切な用量は、薬剤の血中濃度を決定するために確立されたアッセイを、適切な用量反応データと併せて使用することで確認される。 最終的な投与計画は、薬物の作用を修飾する種々の因子、例えば、薬物の比活性、患者の損傷の重症度および応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の感染の重症度、投与の時間ならびにその他の臨床学的因子を考慮して、主治医によって決定される。 研究が進むにつれて、種々の疾患および病態に適した用量レベルおよび処置時間に関する新たな情報が明らかになる。
【0331】
また、本願発明の治療方法、組成物および化合物は、血小板欠乏症およびその他の症状を特徴とする疾患状態の処置において、単独で、またはその他のサイトカイン、可溶性c-Mplレセプター、造血因子、インターロイキン、成長因子もしくは抗体と組み合わせて使用してもよい。 本願発明の調製物は、IL-3またはGM-CSFのような一般的な造血刺激因子と併用すると、血小板減少症のいくつかの症状を処置する上で有用である、と考えられる。 その他の巨核球刺激因子、すなわち、meg-CSF、幹細胞刺激因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、または巨核球刺激活性を有するその他の分子もまた、Mplリガンドと共に用いることができる。 このような同時投与のためのサイトカインまたは造血因子として、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-11、コロニー刺激因子-1(CSF-1)、M-CSF、SCF、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、EPO、インターフェロン-α(IFN-α)、コンセンサスインターフェロン、IFN-β、IFN-γ、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、トロンボポチエン(TPO)、アンジオポイエチン、例えば、Ang-1、Ang-2、Ang-4、Ang-Y、ヒトアンジオポイエチン様ポリペプチド、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アンジオゲニン、骨形態形成タンパク質-1、骨形態形成タンパク質-2、骨形態形成タンパク質-3、骨形態形成タンパク質-4、骨形態形成タンパク質-5、骨形態形成タンパク質-6、骨形態形成タンパク質-7、骨形態形成タンパク質-8、骨形態形成タンパク質-9、骨形態形成タンパク質-10、骨形態形成タンパク質-11、骨形態形成タンパク質-12、骨形態形成タンパク質-13、骨形態形成タンパク質-14、骨形態形成タンパク質-15、骨形態形成タンパク質レセプターIA、骨形態形成タンパク質レセプターIB、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子レセプター、サイトカイン誘導性好中球走化因子1、サイトカイン誘導性好中球、化学走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化因子2β、β内皮細胞増殖因子、エンドセリン1、上皮細胞増殖因子、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞増殖因子4、線維芽細胞増殖因子5、線維芽細胞増殖因子6、線維芽細胞増殖因子7、線維芽細胞増殖因子8、線維芽細胞増殖因子8b、線維芽細胞増殖因子8c、線維芽細胞増殖因子9、線維芽細胞増殖因子10、酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、グリア細胞株由来神経栄養因子レセプターα1、グリア細胞株由来神経栄養因子レセプターα2、増殖関連タンパク質、増殖関連タンパク質α、増殖関連タンパク質β、増殖関連タンパク質γ、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子レセプター、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子レセプター、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子レセプターα、神経成長因子、神経成長因子レセプター、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子A鎖、血小板由来増殖因子AA、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子B鎖、血小板由来増殖因子BB、血小板由来増殖因子レセプターα、血小板由来増殖因子レセプターβ、プレB細胞増殖刺激因子、幹細胞刺激因子レセプター、TNF0、TNF1、TNF2を含むTNF、トランスフォーミング成長因子α、トランスフォーミング成長因子β、トランスフォーミング成長因子β1、トランスフォーミング成長因子β1.2、トランスフォーミング成長因子β2、トランスフォーミング成長因子β3、トランスフォーミング成長因子β5、潜在的トランスフォーミング成長因子β1、トランスフォーミング成長因子β結合タンパク質I、トランスフォーミング成長因子β結合タンパク質II、トランスフォーミング成長因子β結合タンパク質III、腫瘍壊死因子レセプターI型、腫瘍壊死因子レセプターII型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターレセプター、血管内皮細胞増殖因子、ならびにそれらのキメラタンパク質および生物学的または免疫学的に活性な断片などがある。 巨核球が一旦成熟形態に達すると、巨核球を血小板へと断片化させる作用を奏すると考えられる可溶性哺乳類c-Mplの有効量を、同時にまたは連続的に投与することは、有益であると考えられる。 従って、(成熟巨核球の数を増加させるために)本願発明の調製物を投与した後に、(リガンドを不活性化して、成熟巨核球が血小板を産生することを可能にするために)可溶性c-Mplを投与することが、血小板産生を刺激する上で、特に有効な手段であると考えられる。 上記した用量に調整して、これら成分をさらに治療用組成物に取り込む。 処置された患者の病状の経過は、従来の方法によってモニターされる。
【0332】
一般的な条件
本願発明の化合物は、目的のタンパク質のネイティブリガンドのアゴニスト、模倣物またはアンタゴニストとして、このような目的のタンパク質に結合する能力に起因する薬理学的活性を有する。 特定の化合物の有用性を、表2に示している。 これらの化合物の活性は、当該技術分野で周知のアッセイによって測定される。 TPO模倣化合物についてのin vivoでのアッセイは、本明細書の実施例でも記載されている。
【0333】
治療用途に加えて、本願発明の化合物は、目的とする疾患関連タンパク質の機能障害を特徴とする疾患を診断する上でも有用である。 ある実施態様において、活性化可能な目的とするタンパク質(例えば、レセプター)を生物学的試料で検出する方法は、以下の工程、すなわち、(a)試料と本願発明の化合物とを接触させる工程;および、(b)この化合物によって目的のタンパク質の活性化を検出する工程を含む。 生物学的試料としては、組織標本、無傷細胞、またはその抽出物がある。 本願発明の化合物は、生物学的試料での目的とする関連タンパク質の存在を検出するための診断キットの一部として用いることもできる。 このようなキットは、検出を可能にするために、標識を付せた本願発明の化合物を使用する。 これらの化合物は、目的とする正常タンパク質または異常タンパク質を同定する上で有用である。 EPO模倣化合物に関して、例えば、生物学的試料に目的とする異常タンパク質が存在は、EPOレセプターが機能していないと考えられているダイアモンド・ブラックファン貧血のような障害での指標となる。
【0334】
EPO模倣化合物の治療的使用
本願発明のEPO模倣化合物は、低レベルの赤血球を特徴とする障害を処置する上で有用である。 本願発明は、哺乳動物におけるEPOレセプターの内因性活性を調節する方法、好ましくは、EPOレセプターの活性を増加させる方法を含む。 一般に、貧血のような、エリトロポイエチンによって処置可能な任意の病態も、本願発明のEPO模倣化合物によって処置される。 これらの化合物は、当業者によって確認される、処置される病態の性質および重症度に適した送達量および送達経路で投与される。 投与は、好ましくは、皮下、筋肉内、または静脈内のいずれかの注射による。
【0335】
TPO模倣化合物の治療的使用
TPO模倣化合物については、発明の名称が「Compositions and Methods for Stimulating Megakaryocyte Growth and Differentiation」であるWO95/26746に記載されているような標準アッセイを利用することができる。 In vivoアッセイは、以下の実施例にも記載している。
【0336】
処置される病態は、一般に、現存する巨核球/血小板欠乏または(例えば、予定された手術または血小板成分献血において)予期される巨核球/血小板欠乏に関与する状態である。
【0337】
このような状態は、通常、in vivoでの活性Mplリガンドの(一時的かまたは恒常的な)欠乏の結果である。 血小板欠乏を表現する総称は、血小板減少症である。 従って、本願発明の方法および組成物は一般に、これらを必要とする患者における血小板減少症を処置するために利用できる。
【0338】
血小板減少症は、化学療法および種々の薬物を用いるその他の治療、放射線療法、手術、事故による失血、およびその他の特定の疾患状態を含む、種々の原因で出現する。 血小板減少症に関与し、かつ、本願発明によって処置される特定の疾患状態の例として、再生不良性貧血、乳癌での合併症である特発性血小板減少性紫斑病を含む特発性または免疫性血小板減少(ITP);HIV合併型ITPおよびHIV関連血栓性血小板減少性紫斑病;血小板減少症の起因となる転移性腫瘍、新生児エリテマトーデス症候群を含む全身性エリテマトーデス、巨脾腫症、ファンコーニ症候群、ビタミンB12欠損、葉酸欠乏症、メイ-ヘグリン異常、ヴィスコット-オールドリッチ症候群、慢性肝疾患;血小板減少症に関連する骨髄異形成症候群;発作性夜間血色素尿症、C7E3 Fab(アブシキシマブ)治療後の急性深在性血小板減少症;先天性同種免疫性血小板減少症を含む同種免疫性血小板減少症;抗リン脂質抗体に関連する血小板減少症および血栓症;自己免疫性血小板減少症;カルボプラチン誘導性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症を含む薬物誘導性免疫性血小板減少症;胎児血小板減少症;妊娠性血小板減少症;ヒューズ症候群;ルポイド血小板減少症;不慮および/または大量の失血;骨髄増殖性障害;悪性腫瘍の患者における血小板減少症;癌患者において血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群として発現する血栓性微小血管症を含む血栓性血小板減少性紫斑病;自己免疫性溶血性貧血;潜在性空腸憩室穿孔;赤芽球形成不全;自己免疫性血小板減少症;流行性腎症;リファンピシン関連急性腎不全;パリス-トルソー血小板減少症;新生児同種免疫性血小板減少;発作性夜間血色素尿症;胃癌における血液学的変化;小児溶血性尿毒症症候群;A型肝炎ウイルスおよびCMVに関連する血小板減少症を含む、ウイルス感染に関連する血液学的徴候などがある。 また、AIDSに対する特定の処置(例えば、AZT)は、血小板減少症を引き起こす。 また、特定の創傷治癒障害に関しては、血小板数の増加が有効である。
【0339】
本願発明のTPO模倣化合物は、血小板または血小板前駆体細胞の産生、あるいは、c-Mplレセプターの刺激が所望される任意の状況下で用いられる。 従って、例えば、本願発明の化合物は、血小板や巨核球などが必要な哺乳動物における任意の病態を処置するために用いられる。 このような病態の例が、本明細書の一部を構成するものとして、その各々の内容を援用するWO95/26746;WO95/21919;WO95/18858;WO95/21920に記載されている。
【0340】
また、本願発明のTPO模倣化合物は、血小板および/または巨核球ならびに関連する細胞の生存性または保存性を維持する上で有用な場合がある。 従って、このような細胞を含む組成物に、有効量の一つまたはそれ以上のこのような化合物を用いることは有用である。
【0341】
また、本願発明の治療方法、組成物および化合物は、血小板欠乏のみならず、その他の症状を特徴とする疾患状態の処置において、単独でも、あるいはその他のサイトカイン、可溶性Mplレセプター、造血因子、インターロイキン、成長因子または抗体と組み合わせて用いてもよい。 本願発明の化合物を、IL-3またはGM-CSFのような一般的な造血刺激因子と併用することは、血小板減少症の幾つかの症状を処置する上で有用であると考えられる。 また、その他の巨核球刺激因子、すなわち、meg-CSF、幹細胞刺激因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、または巨核球刺激活性を有するその他の分子も、Mplリガンドと共に用いることができる。 このような同時投与のためのサイトカインまたは造血因子として、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-11、コロニー刺激因子-1(CSF-1)、SCF、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、EPO、インターフェロン-α(IFN-α)、コンセンサスインターフェロン、IFN-β、またはIFN-γなどがある。 有効量の可溶性哺乳類Mplレセプター、すなわち、巨核球が一旦成熟段階に達すると巨核球を血小板へと断片化させる作用を有すると考えられているレセプターを、同時または連続して投与することは、さらに有効であると考えられる。 従って、(成熟巨核球の数を増加させるために)本願発明の化合物の投与した後に、(リガンドを不活性化して、成熟巨核球による血小板の産生を可能にするために)可溶性Mplレセプターを投与することが、血小板産生を刺激する上で特に有効な手段であると予想される。 上記した用量を調整して、これら成分を治療組成物内に組み込む。 処置された患者の病状の経過は、従来の方法によってモニターすることができる。
【0342】
本願発明の化合物を、血小板および/または巨核球ならびに関連する細胞の組成物に添加する場合、そこに含まれる本願発明の化合物の量は、一般に、当該技術分野で周知の技術およびアッセイによって実験的に確認される。 本願発明の化合物の量は、例えば、細胞106個当たり0.1μg〜1mgの範囲である。
【0343】
処置される病態は、一般に、現存する巨核球/血小板の欠乏または(例えば、予定された手術または血小板成分献血において)予期される巨核球/血小板の欠乏関与する状態である。 このような状態は、通常、in vivoでの活性トロンボポチエンの(一時的または恒常的な)欠乏の結果である。 血小板欠乏を表現する総称は、血小板減少症であり、本願発明の方法および組成物は一般に、これらを必要とする患者における血小板減少症を処置するために利用できる。
【0344】
予想される血小板欠乏(例えば、予定された手術において予想される血小板欠乏)については、本願発明の化合物を、血小板が必要とされる数日前から数時間前に投与することも可能である。 緊急の状況、例えば、不慮の大量失血などの場合には、本願発明の調製物または組成物は、必要に応じて、血液または精製血小板とともに投与される。
【0345】
本願発明のTPO模倣化合物は、巨核球以外の特定の細胞型がc-Mplを発現することが明らかな場合に、このような細胞を刺激する上で有用である。 c-Mplを発現するこれら細胞に関連する病態は、本明細書に記載されている調製物または組成物が奏する刺激に対して応答性を示すものであり、本願発明の範囲内のものである。
【0346】
以下の実施例は、本願発明の限定を意図するものではなく、本願発明の特定の実施態様の単なる例示にすぎない。
【実施例】
【0347】
実施例1:発現構築物の調製
マウスFc領域を含むTMP融合タンパク質(mFc-TMP)をコードするポリヌクレオチドを、(EP01124961A2の記載に従って)マウスFcおよびTMPをコードする個別のヌクレオチド配列を組み合わせることによって構築した。 1回目のPCRでは、マウスFcをコードする部分を、PCRプライマー3155-58(配列番号:1022)および1388-00(配列番号:1023)を用いて増幅した。
【0348】
【化28】

【0349】
別の反応において、TMPをコードするポリヌクレオチドを、プライマー1209-85(配列番号:1026)および3155-59(配列番号:1027)を用いて増幅した。
【0350】
【化29】

【0351】
得られたPCR断片をゲル精製し、プライマー1209-85(配列番号:1030)および1388-00(配列番号:1031)を利用する2回目のPCR用の1本のチューブ内で合わせた。 この2回目の増幅によるPCR産物をゲル精製し、制限酵素NdeIおよびXhoIで消化した。 この消化断片を精製し、同じ酵素で予め消化されたベクターpAMG21に連結した。 この連結混合物を、エレクトロポレーションによって大腸菌Amgen 393株に形質転換し、LB+カナマイシン培地上に平板培養した。 コロニーを、PCRおよびDNA配列決定によって、スクリーニングした。 mFc-TMP融合タンパク質(配列番号:1033)をコードするヌクレオチド配列(配列番号:1032)を有する陽性クローンを同定し、6397と命名した。
【0352】
マウスFc-TMP融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号:1034)
1 GATTTGATTC TAGATTTGTT TTAACTAATT AAAGGAGGAA TAACAT
オープンリーディングフレーム:
【0353】
【化30】

【0354】
3'配列:
【0355】
【化31】

【0356】
マウスFc-TMPタンパク質配列(配列番号:1035)
【0357】
【化32】

【0358】
実施例2:6397株の発酵
振盪フラスコに、6397株の種培養物と共に500mlの滅菌ルリア培地を接種して、6397株の発酵を開始した。 600nmでの細胞密度が、0.9になり次第に、この内容物を、10リットルの複合系成長培地(800gのグリセロール、500gのトリプチケース、3gのクエン酸ナトリウム、40gのKH2PO4、20gの(NH4)2SO4、5mlのFluka P-2000消泡剤、10mlの微量金属(塩化第二鉄27.0g/L、塩化亜鉛2.00g/L、塩化コバルト2.00g/L、モリブデン酸ナトリウム2.00g/L、塩化カルシウム1.00g/L、硫酸銅1.90g/L、ホウ酸0.50g/L、塩化マンガン1.60g/L、クエン酸ナトリウム二水和物73.5g/L)、10mlのビタミン(ビオチン0.060g/L、葉酸0.040g/L、リボフラビン0.42g/L、ピリドキシンHCl 1.40g/L、ナイアシン6.10g/L、パントテン酸5.40g/L、水酸化ナトリウム5.30ml/L)に、水を添加して10リットルにしたもの)を入れた15リットルの発酵槽に接種した。
【0359】
発酵槽は、溶存酸素レベルを最低限30%飽和に維持しつつ、37℃およびpH7に維持した。 600nmでの細胞密度が、OD単位で13.1になり次第に、0.5mg/mlのN-(3-オキソ-ヘキサノイル)ホモセリンラクトンの10mlを添加して、培養物を誘導した。
【0360】
誘導して6時間後に、培地を10℃にまで冷却し、5℃で、4550gで、60分間遠心分離して細胞を収集した。 次いで、細胞ペーストを、−80℃で保存した。
【0361】
実施例3:タンパク質のリフォールディング
mFc-TMPを発現する6397株由来の大腸菌ペースト(300g)を、2250mlの溶解緩衝液(50mMトリス塩酸、5mM EDTA、pH8.0)に溶解し、冷却マイクロフルイダイザーに2回、13,000PSIで通した。 次いで、ホモジェネートを、4℃で、11,300gで、60分間遠心分離した。 上清を捨て、ペレットを、組織グラインダーを用いて、2400mlの水に再懸濁した。 次いで、ホモジェネートを、4℃で、11,300gで、60分間遠心分離した。 上清を捨て、ペレットを、組織グラインダーを用いて200ml容量の水に再懸濁した。 ホモジェネートを、27,200gで、30分間、4℃で、遠心分離し、上清を捨てた。 ペレットの約12.5%を、35mgのニワトリ卵白リゾチーム(Sigma、セントルイス、ミズーリー州)を含む28mlの20mMトリス塩酸(pH8.0)に、組織グラインダーを用いて再懸濁し、37℃で、20分間インキュベートした。 インキュベーションの後、懸濁液を、22℃で、27,200gで、30分間遠心分離し、上清を捨てた。 ペレットを、35mlの8Mグアニジン塩酸、50mMトリス塩酸(pH8.0)に再懸濁し、その後、350μlの1M DTT(Sigma、セントルイス、ミズーリー州)を添加して、物質を、37℃で、30分間インキュベートした。 次いで、溶液を、22℃で、27,200gで、30分間遠心分離した。 次いで、上清を、3.5リットルのリフォールディング緩衝液(50mMトリス塩基、160mMアルギニン塩酸、3M尿素、20%グリセロール(pH9.5)、1mMシステイン、1mMシスタミン塩酸)に、4℃で、穏やかに攪拌しながら1ml/分で移した。
【0362】
実施例4:構築物の精製
穏やかに攪拌しながら、4℃で、約40時間インキュベーションした後、実施例3に記載のリフォールディング溶液を、30kDaカートリッジ(Satorius、ゲッティンゲン、ドイツ)を用いたタンジェンシャルフロー限外濾過装置を使用して500μlに濃縮し、続いて、3リットルのQ-緩衝液A(20mMトリス塩酸、pH8.0)に対してダイアフィルトレーションを行った。 濃縮物を、ワットマン GF/Aフィルターに通して濾過し、86mLのQ-セファロールファストフロウカラム(直径2.6cm)(Amersham Biosciences、ピスカタウエイ、ニュージャージー州)に、15ml/分で加えた。 樹脂を数カラム容量のQ-緩衝液Aで洗浄した後、タンパク質を、Q-緩衝液B(20mMトリス塩酸、1M NaCl、pH8.0)の60%に対する20カラム容量の直線勾配を用いて、10ml/分で溶出した。 ピーク画分をプールし、このプールを、1ml/分でムスタングEシリンジフィルター(Pall Corporation、イーストヒルズ、ニューヨーク州)に通した。 この濾過物を、2回目は、0.22μmの酢酸セルロースフィルターに通して濾過し、−80℃で保存した。
【0363】
実施例5:タンパク質のPEG化
20mM NaCNBH3を含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)でのmFc-TMP(3.5ml、0.8mg/ml)を冷却し(4℃)、攪拌した溶液に、3.8倍モル過剰のメトキシポリエチレングリコールアルデヒド(MPEG)(平均分子量、20kDa)(Nektar)を添加した。 反応混合物の撹拌を、同じ温度下で、継続した。 反応時のタンパク質修飾の程度を、Superose 6 HR 10/30カラム(Amersham Biosciences)を用いて、0.15M NaClを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)で0.4ml/分で溶出したSEC HPLCによってモニターした。 16時間後、SEC HPLC分析によって、大部分のタンパク質がMPEGに共役していたことが示された。 この時、反応混合物を、20mMトリス/塩酸緩衝液(pH8.12)に緩衝液交換した。 MPEG-mFc-AMP2共役体を、20mMトリス/塩酸緩衝液(pH8.12)で平衡化した1mlのハイトラップHP Qカラム(Amersham Biosciences)を用いたイオン交換クロマトグラフィーで単離した。 反応混合物を流速0.5ml/分でカラムに加えて、未反応のMPEGアルデヒドを、3カラム容量の開始緩衝液で溶出した。 0.5M NaClを含む20mMトリス/塩酸緩衝液(pH8.12)の0%〜100%の20カラム容量の直線勾配を用いて、タンパク質-ポリマー共役体を溶出した。 イオン交換クロマトグラフィー分離を行っている間に回収した画分(2ml)を、上記のようにHPLC SECで分析した。 モノ-およびジ-MPEG-mFc-TMP共役体を、(SEC HPLCで決定された)2.3〜1の近似比率で含む画分を濃縮し、滅菌濾過した。
【0364】
実施例6:In vivo試験
BDF(登録商標)1マウス(Charles River Laboratories、ウィルミントン、マサチューセッツ州)を10グループに分け、次いで、0日目、21日目、および42日目に、希釈剤(ダルベッコの0.1%ウシ血清アルブミンを含むPBS)または動物1kg当たり50μgの(上記した)試験用モノ-およびジ-MPEG-mFc-TMP共役タンパク質を含む希釈剤のいずれかを注射した。 各グループをさらに半分に分割して、一連の測定時点(0、3、5、7、10、12、14、19、24、26、28、31、33、40、45、47、49、52および59日目)に関して、互い違いの時点に、眼窩洞から採血(140μl)をした。 59日目に、採血前に、マウスをイソフルランで麻酔した。 採取した血液を、マウスソフトウェアを内蔵したADVIA 120自動血液分析装置(Bayer Diagnostics、ニューヨーク、ニューヨーク州)を用いて、全数および百分率数について分析した。
【0365】
その結果、0、21および41日目に、モノ-およびジ-MMPEG-mFc-TMP共役体を投与することで、その後の血小板レベルが、投与ごとに本質的に同程度で増大していたことが示された。 図1を参照のこと。 これに対して、同じ日(すなわち、0、21および41日目)にmFc-TMP(PEG部分を欠いている)を投与しても、血小板のレベルは増大するものの、21日目の投与後の増加は、0日目の投与後の増加よりも有意に低く(すなわち、減衰しており)、41日目の投与後の増加は、21日目の投与後に観察された増加よりも低かった(すなわち、さらに減衰していた)。 全体として、これらの結果は、WSP(例えば、PEG)部分を含むように修飾されたFc-TMPは、反復投与された場合に、血小板産生の減退を招かないことを示すものにほかならない。
【0366】
本願発明を実施する上で好ましい形態を含むことが明白で、または、そうすることを提案している特定の実施態様に沿って本願発明の説明を行ってきた。 本明細書での開示を考慮すれば、当業者であれば、本願発明の趣旨を逸脱せずに、これまでに説明してきた実施態様に対して、多くの修正や変更を加えることが可能であることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I、すなわち;
【化1】

式中、F1はビヒクルであり;
1は、
【化2】

から選択され、
2は、
【化3】

から選択され、式中、P1、P2、P3およびP4は、それぞれ独立して、薬理学的に活性なペプチドの配列であり;
1、L2、L3、L4およびL5は、それぞれ独立して、リンカーであり;
a、b、c、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して、0または1であるが、
ただし、aおよびbの少なくとも一つは1であり;
dは、少なくとも1であり;そして、
WSPは、F1の任意の反応性部分に付着する水溶性ポリマーである、式Iで表現される構造を含む実質的に均質な化合物であって、反復投与レジメンい従って投与した場合に、改善された生物有効性を示す化合物。
【請求項2】
多量体である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
二量体である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の式II、すなわち;
【化4】

式中、F1はX1のC末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIで表現される構造を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
多量体である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
二量体である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
以下の式III、すなわち;
【化5】

式中、F1はX2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IIIで表現される構造を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
多量体である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
二量体である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
以下の式IV、すなわち;
【化6】

式中、F1は-(L1)c-P1のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式IVで表現される構造を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
多量体である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
二量体である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
以下の式V、すなわち;
【化7】

式中、F1は-L1-P1-L2-P2のN末端に付着するFcドメインであって、また、一つまたはそれ以上のWSPが、必要に応じてリンカーL1を介して当該Fcドメインに付着する、式Vで表現される構造を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
多量体である請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
二量体である請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
1および/またはP2が、独立して、表4〜表20のいずれかに記載のペプチドから選択される請求項1乃至15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
1および/またはP2が、同じアミノ酸配列を有する請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
1が、Fcドメインである請求項1乃至15のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
WSPが、PEGである請求項1乃至15のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
1が、Fcドメインであり、かつWSPが、PEGである請求項1乃至15のいずれかに記載の化合物。
【請求項21】
PEGが、約2kDaと100kDaの間の分子量を有する請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
前記PEGが、約6kDaと25kDaの間の分子量を有する請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
その少なくとも50%がPEG化した化合物である、請求項19に記載の化合物を含む組成物。
【請求項24】
その少なくとも75%がPEG化した化合物である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
その少なくとも85%がPEG化した化合物である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
その少なくとも90%がPEG化した化合物である、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
その少なくとも95%がPEG化した化合物である、請求項23に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149069(P2012−149069A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45009(P2012−45009)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−520563(P2007−520563)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】