説明

治療用ポリペプチドの投与法およびそのためのポリペプチド

【課題】タンパク質治療分子を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内、または吸入投与するにあたり、不活性化を回避する方法の提供。
【解決手段】少なくとも1つの標的分子に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物。好ましくは、組成物はジェル、クリーム、坐薬、フィルム状、スポンジ状、又は膣リングの形態で、炎症過程の治療、特にクローン病、慢性大腸炎又はIBD等の疾患治療に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景技術)
ポリペプチド治療剤および特に抗体系治療剤には、薬剤としての多大な可能性がある。その理由は、標的に対して顕著な特異性があり、固有の毒性が低いからである。しかし、重大な欠点が1点ある:これらは、複雑な大型分子であり、そのために比較的不安定で、プロテアーゼによる分解に弱い。従来の抗体およびそれに由来する断片または一本鎖構成体(例、scFv)の投与は、例えば消化管通過中に分解されるため、それほど有効でない。これは、従来の抗体薬剤は、経口、舌下、局所、鼻内、膣内、直腸内で、または吸入によって投与できないことを意味する。その理由は、それらがこれらの部位の低pHおよびこれらの部位および血中のプロテアーゼの作用に抵抗性がなく、および/またはそれらが大型であるからである。該薬剤は、これらの問題を一部でも克服するために、注射(静脈内、皮下など)で投与しなければならない。そのため、注射投与は、多くの短所を備えながらも最も頻繁に使用されている投与方法である。その短所とは、例えば次の通りである:(a)特に慢性疾患を治療する場合に患者の耐容性が低い;(b)薬剤が「救命手段」でない場合には、結果的には投与量による充足感が低くなる危険がある;(c)患者による自己投与の実施が困難である;(d)処置の無菌的実施に適した状況を得るのが難しい;(e)注射筒または針を正しく安全に使用するための専門的訓練が必要である。注射を必要としない治療用ポリペプチドの送達法は、費用/時間の節約となるだけでなく、対象にとってより便利でより快適でもある。
【背景技術】
【0002】
大半の動物細胞には、細胞外液から特定の巨大分子を取り込むための特殊な経路が存在する。巨大分子は特異的な細胞-表面レセプターに結合して内部移行されるので、この過程をレセプター介在エンドサイトーシスと呼ぶ。レセプターによる内部移行は、隔離(sequestration)と呼ばれる過程によってシグナル伝達が調節される原理に基づいており、隔離によって、結合していたアゴニスト(即ち、レセプター活性化)リガンドは、レセプターと複合している細胞表面から回収される。多くの用途には、エフェクター分子を細胞膜を通過してサイトゾルに送達することが必要である。前記の内部移行レセプターを利用すればこれを達成できる。内部移行レセプターに結合すると内部移行する抗体が記載されている。しかし、それらには、重大な欠点がある:これらの抗体は複雑な大型分子であり、このため比較的不安定であり、プロテアーゼによる分解に弱い、という欠点である。さらに、前記抗体のドメインはジスルフィド結合によって一体化されているが、この結合は細胞質の還元的環境において解離し、結合活性の実質的な喪失に至る。そのため、それらを使用して細胞内タンパク質を標的とすることはできない。
【0003】
内部移行に依存する別の過程は、免疫応答の有効な誘導である。特に、T-細胞の応答は、抗原提示細胞(APC)によって特定のエピトープがT-細胞に有効に提示されるか否かに大きく依存する。この意味をタンパク質抗原の場合で言えば、APCがタンパク質を取り込み、内部で該タンパク質を処理し(タンパク質を切断し)、MHC(主要組織適合複合体)またはHLA分子に関連した形で特定のペプチド断片を細胞表面に発現することが必要である。この過程における主要かつ重要な事象は、APCによるタンパク質抗原の効率的な取り込みである。APCによる抗原取り込みを増強できる技術があれば、本来微弱かまたは全く免疫応答を誘発しない抗原に対しても免疫応答を誘発することが可能である。そのため、抗原性抗原、すなわち本来は免疫原性が微弱かまたは全くない抗原に対しても免疫応答を惹起できる技術がワクチン接種計画では重要な意味を持つ。
【0004】
アレルギー性疾患におけるIgEの重要な役割は、肥満細胞からのヒスタミンや他の炎症メディエーターの遊離を惹起することである。喘息を含むアレルギー性疾患治療の主力は、アレルゲン回避と症状の治療である。現在、アレルギー性疾患の最も有効な治療は、コルチコステロイドによる炎症過程の調節へと向かっている。コルチコステロイドの負の効果を伴わないより直接的な方法は、アレルギー性炎症の開始因子であるIgEのレベルで抗-IgEによりアレルギー過程を調節することにある。
【0005】
アレルギーの治療法として抗-IgE抗体を使用する概念は、科学文献に広く開示されている。いくつかの代表的な例は、次の通りである。BaniyashとEshhar(European Journal of Immunology 14: 799-807 (1984)(非特許文献1))は、抗-IgEモノクロナール抗体が、抗原での誘発前に皮内注射すると、受動的皮膚アナフィラキシー反応を特異的に阻止できることを証明した;U.S.4,714,759(特許文献1)は、IgEに特異的な抗体を使ったアレルギー治療用の製品および方法を開示している;RupとKahn(International Archives Allergy and Applied Immunology, 89: 387-393 (1989)(非特許文献2))は、肥満細胞-IgE感作を遮断するモノクロナール抗体によるアレルギー応答発生の予防を論じている。
【0006】
好塩基球のレセプターへのIgE結合を遮断し、該レセプターに結合したIgEには結合せず、それによって、ヒスタミン放出が回避される抗-IgE抗体は、例えば、RupとKahn(同上)(非特許文献2)、Baniyashら(Molecular Immunology 25: 705-711, 1988)(非特許文献3)、Hookら(Federation of American Societies for Experimental Biology, 71st Annual Meeting Abstract #6008, 1987(非特許文献4))によって開示されている。
【0007】
レセプター状のIgEの拮抗体、抗-IgE抗体、結合因子またはそれらの断片が、従来技術に開示されている。例えば、U.S.4,962,035(特許文献2)には、肥満細胞IgEレセプターのα-サブユニットまたはそのIgE結合断片をコードするDNAが開示されている。Hookら(FederationProceedings Vol. 40, No. 3, Abstract #4177)(非特許文献5) が開示しているモノクロナール抗体は、その一つのタイプが抗-イディオタイプであり、第2のタイプが共通のIgE決定基に結合し、第3のタイプは、IgEが好塩基球表面にある場合に隠れている決定基を指向する。
【0008】
U.S.4,940,782(特許文献3)に開示されているモノクロナール抗体は、遊離IgEと反応し、それによって肥満細胞へのIgE結合を阻害し、B-細胞FcEレセプターに結合する場合にはIgEと反応するが、肥満細胞FcEレセプターに結合する場合にはIgEと結合せず、またB-細胞レセプターへのIgEの結合も遮断しない。
【0009】
U.S.4,946,788(特許文献4)には、精製IgE結合因子とその断片、IgE結合因子と反応するモノクロナール抗体およびIgEに対するリンパ球細胞レセプターとその誘導体が開示されている。
【0010】
U.S.5,091,313(特許文献5)には、免疫グロブリンをB細胞膜に固定するドメインの細胞外セグメントに結合した抗原エピトープが開示されている。認識されるエピトープは、IgEを担持するB細胞上に存在するが、好塩基球や分泌された可溶形態のIgE中には存在しない。U.S.5,252,467(特許文献6)は、前記抗原エピトープに特異的な抗体の産生法を開示している。U.S.5,231,026(特許文献7)は、前記抗原エピトープに特異的なマウス-ヒト抗体をコードするDNAを開示している。
【0011】
U.S.4,714,759(特許文献8)は、毒素に結合してアレルギーを治療する抗体または抗体断片の形での免疫毒素を開示している。
【0012】
Prestaら(J.Immunol. 151: 2623-2632 (1993))(非特許文献6)は、遊離IgEのFceRIへの結合を阻止するが、FcεRIに結合したIgEには結合しないヒト化抗-IgE抗体を開示している。現在係属中のWO93/04173(特許文献9)は、親和性の高いおよび低いIgEレセプターに差別的に結合するポリペプチドを開示している。
【0013】
U.S.5,428,133(特許文献10)は、アレルギー治療法として抗-IgE抗体、特にB細胞上のIgEには結合するが、好塩基球上のIgEには結合しない抗体を開示している。この公報は、前記抗体による喘息治療の可能性に言及している。U.S.5,422,258(特許文献11)は、前記抗体の製造法を開示している。
【0014】
EP0841946(特許文献12)は、IgE拮抗剤を使ったアレルギー性喘息の治療法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】U.S.4,714,759
【特許文献2】U.S.4,962,035
【特許文献3】U.S.4,940,782
【特許文献4】U.S.4,946,788
【特許文献5】U.S.5,091,313
【特許文献6】U.S.5,252,467
【特許文献7】U.S.5,231,026
【特許文献8】U.S.4,714,759
【特許文献9】WO 93/04173
【特許文献10】U.S.5,428,133
【特許文献11】U.S.5,422,258
【特許文献12】EP0841946
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】European Journal of Immunology 14: 799-807 (1984)
【非特許文献2】International Archives Allergy and Applied Immunology, 89: 387-393 (1989)
【非特許文献3】Molecular Immunology 25: 705-711, 1988
【非特許文献4】Federation of American Societies for Experimental Biology, 71st Annual Meeting Abstract #6008, 1987
【非特許文献5】Federation Proceedings Vol. 40, No. 3, Abstract #4177
【非特許文献6】J.Immunol. 151: 2623-2632 (1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
(発明の目的)
本発明の目的は、先行技術の問題を克服した、タンパク質治療分子の経口、舌下、局所、鼻内、膣内、直腸内、静脈内、皮下投与法または吸入による投与法を提供することである。前記治療分子を提供するのが、さらなる目的である。
【0018】
本発明の別の目的は、レセプターを活性化させずに、内部移行レセプターを経て、治療物質を細胞内に送達する方法を提供することである。
【0019】
アレルギー治療のための治療剤を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0020】
本発明のさらなる目的は、治療目的のナノボディ(nanobody)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の概要)
本発明のある実施態様は、IgEに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0022】
本発明の別の実施態様は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体がラクダ科(Camelidae)VHHである、上記のポリペプチド構築物である。
【0023】
本発明の別の実施態様は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が配列番号1〜11のいずれかで表される配列に相当する、上記のポリペプチド構築物である。
【0024】
本発明の別の実施態様は、抗-IgE単一ドメイン抗体数が少なくとも2個である、上記のポリペプチド構築物である。
【0025】
本発明の別の実施態様は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体がヒト化ラクダ科 VHHである、上記のポリペプチド構築物である。
【0026】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が、全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分または相同配列の機能部分である、上記のポリペプチド構築物である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、ポリペプチド構築物が、全長ポリプチド構築物の相同配列、機能部分または相同配列の機能部分である、上記のポリペプチド構築物である。
【0028】
本発明の別の実施態様は、上記のとおりのポリペプチド構築物をコードする核酸である。
【0029】
本発明の別の実施態様は、炎症過程に関連する疾患を治療および/または予防および/または緩和するための、上記のポリペプチド構築物である。
【0030】
本発明の別の実施態様は、炎症反応に関連する疾患を治療および/または予防および/または緩和する医薬品を調製するための上記のポリペプチド構築物の使用である。
【0031】
本発明の別の実施態様は、疾患の治療のために対象に抗-標的化合物を送達する方法であって、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物をこの対象に投与することによって不活性化されずに送達する方法である。
【0032】
本発明の別の実施態様は、前記標的が消化器系に位置し、前記ポリペプチド構築物を経口で送達する、上記の方法である。
【0033】
本発明の別の実施態様は、前記標的が膣および/または直腸に位置し、前記ポリペプチド構築物を膣および/または直腸に送達する、上記の方法である。
【0034】
本発明の別の実施態様は、前記標的が鼻、上気道および/または肺に位置し、前記ポリペプチド構築物を鼻、上気道および/または肺に送達する、上記の方法である。
【0035】
本発明の別の実施態様は、前記標的が腸粘膜に位置し、前記ポリペプチド構築物を経口で送達する、上記の方法である。
【0036】
本発明の別の実施態様は、前記標的が舌下組織に位置し、前記ポリペプチド構築物を舌下組織に送達する、上記の方法である。
【0037】
本発明の別の実施態様は、前記標的が皮膚内に位置し、前記ポリペプチド構築物を局所的に送達する、上記の方法である。
【0038】
本発明の別の実施態様は、前記標的が血液内に存在するかまたは血液を介して到達可能であり、前記ポリペプチド構築物の送達が、膣および/または直腸への経口、舌下組織への経鼻、口や鼻を経由する吸入、もしくは局所である上記の方法である。
【0039】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するペプチド構築物である。
【0040】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに腸粘膜壁を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。
【0041】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに鼻、上気道および/または肺の壁を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。
【0042】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに膣および/または直腸壁を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。
【0043】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに舌下組織を通過できる治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。
【0044】
本発明の別の実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに皮膚を通過できる治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。
【0045】
本発明の別の実施態様は、前記標的がTNF-αで、疾患が炎症である上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0046】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が配列番号12〜14のいずれかで表される配列に相当する上記の方法またはポリペプチドである。
【0047】
本発明の別の実施態様は、前記標的がCEAで、疾患が結腸癌である上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0048】
本発明の別の実施態様は、前記標的がEGFRで、疾患が頭部、頚部、肺および結腸の癌のいずれかである上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0049】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が配列番号23〜44のいずれかで表される配列に相当する上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0050】
本発明の別の実施態様は、前記標的がピロリ菌の抗原で、疾患が消化不良、胃炎のいずれかである上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0051】
本発明の別の実施態様は、前記標的が結核菌の抗原で、疾患が結核である上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0052】
本発明の別の実施態様は、前記標的がインフルエンザウイルスの抗原で、疾患がインフルエンザである上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0053】
本発明の別の実施態様は、前記標的がIgEの抗原で、疾患がアレルギー反応である上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0054】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が配列番号1〜11のいずれかで表される配列に相当する上記の方法またはポリペプチド構築物である。
【0055】
本発明の別の実施態様は、前記標的がMMPの抗原で、疾患が癌である上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0056】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が配列番号15〜22のいずれかで表される配列に相当する上記の方法またはポリペプチド構築物である。
【0057】
本発明の別の実施態様は、前記標的がIFN-γの抗原で、疾患が癌、移植の拒絶反応、自己免疫疾患のいずれかである上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0058】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体が配列番号45〜70のいずれかで表される配列に相当する上記の方法またはポリペプチド構築物である。
【0059】
本発明の別の実施態様は、前記標的がピロリ菌の抗原、結核菌の抗原、インフルエンザウイルスの抗原のいずれかである上記の方法または上記のポリペプチド構築物である。
【0060】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体および治療標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0061】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体および少なくとも1個の治療ポリペプチドまたは作用物質を含むポリペプチド構築物である。
【0062】
本発明の別の実施態様は、前記細胞内部移行レセプターが上皮細胞増殖因子レセプターである上記のポリペプチド構築物である。
【0063】
本発明の別の実施態様は、前記細胞内部移行レセプターに対する単一ドメイン抗体が配列番号23〜44のいずれかで表される配列に相当するポリペプチド構築物である。
【0064】
本発明の別の実施態様は、前記細胞内部移行レセプターがLDLレセプター、FGF2r、ErbB2r、転移レセプター、PDGr、VEGrまたはPsmArのいずれかである上記のポリペプチド構築物である。
【0065】
本発明の別の実施態様は、治療標的に対する単一ドメイン抗体がPDK1に対するものである上記のポリペプチド構築物である。
【0066】
本発明の別の実施態様は、癌の治療に使用する上記のポリペプチド構築物である。
【0067】
本発明の別の実施態様は、治療標的に対する単一ドメイン抗体がGSK1、Bad、カスパーゼおよびフォークヘッドのいずれかに対するものである上記のポリペプチド構築物である。
【0068】
本発明の別の実施態様は、癌の治療に使用する上記のポリペプチド構築物である。
【0069】
本発明の別の実施態様は、上記のポリペプチド構築物の対象への投与を含む、細胞内部へ抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0070】
本発明の別の実施態様は、上記のポリペプチド構築物の対象への投与を含む、不活性化されずに細胞内部に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0071】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が消化器系に位置し、前記ポリペプチド構築物を経口で送達する上記の方法である。
【0072】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が膣および/または直腸に位置し、前記ポリペプチド構築物を膣および/または直腸に送達する上記の方法である。
【0073】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が鼻、上気道および/または肺に位置し、前記ポリペプチド構築物を鼻、上気道および/または肺に送達する上記の方法である。
【0074】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が腸粘膜に位置し、前記ポリペプチド構築物を経口で送達する上記の方法である。
【0075】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が舌下組織に位置し、前記ポリペプチド構築物を舌下組織に送達する上記の方法である。
【0076】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が皮膚に位置し、前記ポリペプチド構築物を局所的に送達する上記の方法である。
【0077】
本発明の別の実施態様は、前記細胞が血液内に存在するかまたは血液を介して到達可能であり、前記ポリペプチド構築物の送達が、膣および/または直腸への経口、舌下組織への経鼻、口や鼻を経由する吸入、もしくは局所である上記の方法である。
【0078】
本発明の別の実施態様は、単一ドメイン抗体がヒト化ラクダ科VHHである上記のポリペプチド構築物または上記の方法である。
【0079】
本発明の別の実施態様は、前記単一ドメイン抗体が、全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分または相同配列の機能部分である、上記のポリペプチド構築物または上記の方法である。
【0080】
本発明の別の実施態様は、ポリペプチド構築物が、全長ポリペプチド構築物の相同配列、機能部分または相同配列の機能部分である、上記のポリペプチド構築物または上記の方法である。
【0081】
本発明の別の実施態様は、前記単一ドメイン抗体がラクダ科VHHである上記のポリペプチド構築物または上記の方法である。
【0082】
本発明の別の実施態様は、上記のポリペプチド構築物をコードできる核酸である。
【0083】
本発明の別の実施態様は、上記のポリペプチド構築物を薬学的キャリアと合わせて含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】IgE領域を示す図である。
【図2】pH2.2、pH3.2、pH4.2における基準およびペプシン処理TNF3EのELISAを示す図である。
【図3】実験の設定を示す図である。
【図4】ヒトのMMP12の触媒ドメインのタンパク質分解活性へのVHHクローンの阻害能を示す図である。
【図5】ラマの血清におけるA431特異的抗体力価を検出するELISAを示す図である。
【図6−1】ラマの血清におけるEGFR特異的抗体力価の検出を示す図である。
【図6−2】ラマの血清におけるEGFR特異的抗体力価の検出を示す図である。
【図7】ラマ024および025およびラマ026および027の血清におけるEGFR特異的抗体力価の検出を示す図である。
【図8】EGFRに対するファージの応答を示す図である。
【図9−1】エピトープ特異的溶出選択手法によって同定されたクローン31個のアミノ酸のアラインメントを示す図である。
【図9−2】エピトープ特異的溶出選択手法によって同定されたクローン31個のアミノ酸のアラインメントを示す図である。
【図10】エピトープ特異的溶出選択手順によって同定されたユニークなEGFR特異的クローン20個の細胞上(パネルA)または固相固定EGFR(パネルB)上のファージELISAを示す図である。
【図11−1】レセプターの内部移行作用およびシグナリングに対するナノボディEGFR-lla42の作用を示す図である。
【図11−2】レセプターの内部移行作用およびシグナリングに対するナノボディEGFR-lla42の作用を示す図である。
【図12】治療タンパク質、毒性化合物、薬剤またはポリヌクレオチドを送達するための内部移行レセプターに対するVHHの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1個以上の標的分子に対する1個以上の単一ドメイン抗体を、それぞれ適切な剤型で、直接、あるいは送達を促進する成分を含有する組成物の一部として含むポリペプチド構築物に関する。
【0086】
本発明は、さらに、経口で、舌下、局所、鼻内、膣内、直腸内に、または、吸入によるなど非侵襲的方法によって対象に投与するための、1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物に関する。前記の非侵襲的送達経路は、予想外にも、治療化合物を簡便に送達する有効手段を提供する。
【0087】
本発明は、静脈内および皮下などの普通の侵襲的方法によって対象に投与するための、1個以上の単一ドメイン抗体を含む構築物にも関する。
【0088】
本発明は、さらに、1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内に、または、吸入によって対象に投与する段階を含む治療ペプチド送達法に関する。
【0089】
本発明は、さらに、抗-IgE単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物に関する。
【0090】
単一ドメイン抗体は、その相補決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例として、重鎖抗体、天然で軽鎖を欠いた抗体、通常の4-鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、抗体由来のもの以外の遺伝子工学による抗体および単一ドメインスカホールドがあるが、それらに限定されない。単一ドメイン抗体は、従来技術のものでも、今後得られる単一ドメイン抗体でもよい。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含めたいずれかの種から由来してもよいが、それらに限定されない。本発明のある態様によれば、単一ドメイン抗体は、本明細書で使用する場合、軽鎖欠如重鎖抗体として既知の天然に産する単一ドメイン抗体である。前記単一ドメイン抗体は、例えばWO 9404678に開示されている。本明細書では、明瞭にするために、天然で軽鎖が欠如した重鎖抗体に由来するこの可変ドメインを、VHHまたはナノボディとし、通常の4-鎖免疫グロブリンVHと区別する。前記のVHH分子は、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコなどのラクダ科の種に産する抗体から誘導できる。ラクダ科以外の他種は、天然で軽鎖が欠如した重鎖抗体を産生できる;そのようなVHHは、本発明の範囲内である。
【0091】
本発明による、また、当業者に既知のVHHは、WO 94/04678に記載のラクダ科由来のものなど、天然で軽鎖が欠如した免疫グロブリンから誘導される重鎖可変ドメインである(以後、VHHドメインまたはナノボディと称する)。VHH分子は、IgG分子の約1/10の大きさである。該分子は、単一ポリペプチドで、非常に安定であり、極端なpHおよび温度条件に耐性を示す。さらに、それらは通常の抗体の場合にはないプロテアーゼの作用に耐性がある。さらに、VHHのインビトロでの発現は、高収量の、適当に折りたたまれた機能性VHHを生じる。さらに、ラクダ科が生成する抗体は、抗体ライブラリーの使用によって、あるいは、ラクダ科以外の哺乳類(WO 9749805)の免疫化を経て、インビトロで生成される抗体に認識されるもの以外のエピトープを認識する。抗-アルブミンVHH'sは、それ自体、キャリアタンパク質として既知の血清アルブミンと、より効率的な方法で相互作用できる。キャリアタンパク質としての血清アルブミンエピトープには、結合タンパク質、ペプチドおよび小型化学物質が到達できないものがある。VHH'sは、空洞などの「異常な」または非従来型エピトープに結合することが既知であるので(WO97/49805)、前記VHH'sの循環アルブミンへの親和性が増加する可能性がある。
【0092】
本発明は、さらに、単一ドメイン抗体が標的に対するVHHであり、該VHHがヒト類似配列を有するクラスに属するポリペプチド構築物に関する。該クラスは、VHHが、例えば、KabatナンバリングによるL45など、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギンまたはグルタミンからなる群から選択されたアミノ酸を45位に保持する点を特徴とする。MMP-12に結合し、配列番号15で表されるVHH配列は、VHHポリペプチドのこのヒト類似クラスに属する。このクラスに属するペプチド自体は、ヒトVHフレームワーク領域に高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ペプチドは、ヒトに直接投与でき、それによる望ましくない免疫反応は予想されず、ヒト化操作を加える負担がない。
【0093】
IFNγに結合する配列68で表される別のヒト類似クラスのラクダ科単一ドメイン抗体が、WO 03035694に記載されており、疎水性FR2残基を含有している。これは、ヒト由来または他種由来の通常の抗体に典型的に認められるが、この場合、通常の抗体からのVHに存在する保存トリプトファンを103位の荷電アルギニン残基で置換することでこの親水性の喪失を補っている。これらの2つのクラスに属するペプチドは、それ自体、ヒトVHフレームワーク領域に高いアミノ酸配列相同性を示すので、前記ペプチドは、ヒトに直接投与でき、それによる望ましくない免疫反応は予想されず、ヒト化操作をさらに進める負担がない。
【0094】
本発明で使用する場合のVHHは、いずれも、従来のクラスのものであっても、あるいは、ヒト類似ラクダ科抗体クラスであってもよい。前記抗体は、標的全体またはその断片、またはその相同配列の断片に対するものであってもよい。これらのポリペプチドは、全長ラクダ科抗体、即ち、FcおよびVHHドメイン、ヒトFcドメインを持つ重鎖ラクダ科抗体のキメラ型を含む。
【0095】
医薬的に興味深いものはどれも本発明の標的である。本明細書に数種の標的の例を提示するが、本発明をそれらに限定することを意図するものではない。標的の例は、TNF-α、IgE、IFN-γ、MMP-12、EGFR、CEA、H. pylori、TB、インフルエンザを含む。標的に対する単一ドメイン抗体は、10-6Mよりも高い親和性で前記標的に結合できる単一ドメイン抗体を意味する。
【0096】
標的は、前記標的の断片であることもできる。従って、標的は、免疫応答を誘発できる前記標的の断片でもある。標的は、全長標的に対する単一ドメイン抗体に結合できる前記標的の断片でもある。
【0097】
本明細書で使用の断片は、100%未満(例、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%など)の配列を指すが、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個またはそれ以上のアミノ酸を含む。断片は、当該相互作用が1×10-6M以上の親和性で維持されるのに十分な長さである。
【0098】
本明細書で使用の断片は、野生型標的に対して惹起される単一ドメイン抗体に結合する標的の能力を実質的に改変しない、1個以上のアミノ酸の任意の挿入物、欠失物および置換物も指す。挿入、欠失または置換アミノ酸数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70個のアミノ酸までであるのが好ましい。
【0099】
本発明のある実施態様は、本明細書に開示のポリペプチド構築物で、この場合、標的に対する単一ドメイン抗体数は2個以上である。前記の多価ポリペプチド構築物は、該標的に対する著しく高い機能的親和性があり、一価ポリペプチド対応物に比較して、予想よりもはるかに高い阻害性を示すという長所を有する。
【0100】
多価ポリペプチド構築物は、一価ポリペプチド構築物よりも数桁高い機能的親和性を有する。本発明者は、これらの多価ポリペプチド構築物の機能的親和性が二価および多価抗体について先行技術で報告されたものよりもはるかに高いことを認めた。驚くべきことに、互いに直接、あるいは、短リンカー配列によって結合されている本発明の多価ポリペプチド構築物は、通常の多価4-鎖抗体に理論的に予想された高い機能的親和性を示す。
【0101】
本発明者は、前記の機能的活性の大幅な増加を、直線的結合アッセイか機能アッセイ、例えば慢性結腸炎などの動物モデルにおいて、好ましくは多重ドメインと多量体タンパク質から成る抗原で検出できることを認めた。
【0102】
本明細書で使用の多価抗-標的ポリペプチドは、共有結合した2個以上の抗-標的ポリペプチドを含むポリペプチドを指す。該抗-標的ポリペプチドは、同一配列であることも、あるいは、異なる配列であることもできるが、同一の標的または抗原に対するものである。多価抗標的ポリペプチドは、結合する抗-標的ポリペプチド数に応じて、二価(2個の抗-標的ポリペプチド)、三価(3個の抗標的ポリペプチド)、四価(4個の抗-標的ポリペプチド)であることも、あるいは、さらに高い原子価分子を有することもできる。
【0103】
1個以上の抗-TNF-α VHHを含む本発明の多価ポリペプチド構築物の一例を実施例7で説明する。
【0104】
従来技術の方法または何らかの今後の方法を使って、単一ドメイン抗体は結合させ、1個以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のいずれかのポリペプチド構築物を形成できる。該抗体は、非共有的に(例、ストレプトアビジン/ビオチン併用法、抗体/タグ併用法使用)もしくは、共有的に結合することができる。Blattler et al, Biochemistry 24, 1517-1524 ; EP294703に記載されるものなどの有機誘導化剤とアミノ酸残基を反応させることによる化学架橋によって該抗体を融合できる。別法として、単一ドメイン抗体は、DNAレベルで遺伝子融合できる。即ち、1個以上の抗-標的単一ドメイン抗体を含む完全ポリペプチド構築物をコードするポリヌクレオチド構築物が生じる。二価または多価VHHポリペプチド構築物の製造法は、PCT特許出願WO 96/34103に開示されている。VHH抗体を結合する方法は、VHH抗体コード配列を直接、あるいは、ペプチドリンカーを経由して結合する遺伝子経路による。例えば、VHH抗体のC-末端は、隣の単一ドメイン抗体のN-末端に結合できる。
【0105】
この結合形態を拡大して、トリ、テトラ他の機能的構築物の構築および産生のために単一ドメイン抗体を追加結合することができる。
【0106】
本発明のある態様によれば、単一ドメイン抗体は、ぺプチドリンカー配列を経て互いに結合される。前記リンカー配列は、天然に存在する配列でも、非天然に現れる配列でもよい。該リンカー配列は、多価抗-標的ポリペプチドを投与される対象において非免疫原性であると予想される。該リンカー配列は、多価抗-標的ポリペプチドに十分な柔軟性を与え、同時に、タンパク質分解に耐性を示すことができる。リンカー配列の非限定的な一例は、WO 96/34103に述べられているVHHのヒンジ領域から誘導できるものである。
【0107】
本明細書に開示のポリペプチド構築物は、従来技術の方法または今後の方法に従って当業者が製造できる。例えば、ラクダの免疫化とそれからのハイブリドーマの入手、または、従来技術の分子生物学技術による単一ドメイン抗体ライブラリーのクローン化とその後のファージディスプレイを使った選択によるなど、従来技術の方法を使って、VHHを入手できる。
【0108】
本発明のある態様によれば、ポリペプチド構築物は、全長ポリペプチド構築物の相同配列であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物は、全長ポリペプチド構築物の機能部分であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物は、全長ポリペプチド構築物の相同配列であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物は、全長ポリペプチド構築物の相同配列の機能部分であることができる。本発明のある態様によれば、ポリペプチド構築物は、ポリペプチド構築物の配列を含むことができる。
【0109】
本発明のある態様によれば、ポリペプチド構築物の形成に使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体(例、VHH)またはその相同配列であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物の形成に使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の機能部分であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物の形成に使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列であることができる。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築物の形成に使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列の機能部分であることができる。
【0110】
本発明の相同配列は、本明細書で使用する場合、本発明のポリペプチドの機能的特性を実質的に改変しない1個以上のアミノ酸の付加、欠失または置換を含むことができる。アミノ酸欠失または置換の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70個のアミノ酸までであるのが好ましい。
【0111】
本発明に記載の相同配列は、アミノ酸の付加、欠失または置換によって改変される抗-標的ポリペプチドの配列であることができ、前記改変は、非改変ポリペプチドと比較して、機能的特性を実質的に改変しない。
【0112】
本発明に記載の相同配列は、ヒト化されたポリペプチドであることができる。新規クラスのVHHの抗体のヒト化は、さらに、投与時にヒト個体への望ましくない免疫反応の可能性を減少させると思われる。
【0113】
本発明に記載の相同配列は、例えばラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコなど、他のラクダ科の種に存在する配列であることができる。
【0114】
相同配列が配列同一性を示す場合、それは、親配列と高い配列相同性を呈し(70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%以上の配列同一性)、好ましくは、親配列と同様の性質、即ち親和性を特徴とし、前記同一性を既知の方法により算出することを意味する。
【0115】
別法として、相同配列は、以下の式に従った親配列のいずれかの位置番号で許容された置換から得られるいずれかのアミノ酸配列であることもできる:
SerをSer、Thr、GlyおよびAsnで置換;
ArgをArg、His、Gln、LysおよびGluの1種類で置換;
LeuをLeu、Ile、Phe、Tyr、MetおよびValの1種類で置換;
ProをPro、Gly、AlaおよびThrの1種類で置換;
ThrをThr、Pro、Ser、Ala、Gly、HisおよびGlnの1種類で置換;
AlaをAla、Gly、ThrおよびProの1種類で置換;
ValをVal、Met、Tyr、Phe、IleおよびLeuの1種類で置換;
GlyをGly、Ala、Thr、ProおよびSerの1種類で置換;
IleをIle、Met、Tyr、Phe、ValおよびLeuの1種類で置換;
PheをPhe、Trp、Met、Tyr、Ile、ValおよびLeuの1種類で置換;
TyrをTyr、Trp、Met、Phe、Ile、ValおよびLeuの1種類で置換;
HisをHis、Glu、Lys、Gln、ThrおよびArgの1種類で置換;
GlnをGln、Glu、Lys、Asn、His、ThrおよびArgの1種類で置換;
AsnをAsn、Glu、Asp、GlnおよびSerの1種類で置換;
LysをLys、Glu、Gln、HisおよびArgの1種類で置換;
AspをAsp、GluおよびAsnの1種類で置換;
GluをGlu、Asp、Lys、Asn、Gln、HisおよびArgの1種類で置換;
MetをMet、Phe、Ile、Val、LeuおよびTyrの1種類で置換。
【0116】
本発明に記載の相同ヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で親配列をコードできるヌクレオチド配列の逆相補体に(Somebrook et al., Molecular Cloning, Laboratory Manuel, Cold Spring, Harbor Laboratory press, New Yorkによって記載されたものなど)ハイブリダイズできる50、100、200、300、400、500、600、800または1000ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列を指すことができる。
【0117】
機能部分は、本明細書で使用する場合、1×10-6M以上の親和性で当該相互作用を維持するのに十分な大きさの単一ドメイン抗体配列を指す。
【0118】
別法として、機能部分は、完全アミノ酸配列の部分欠失を含み、なおも、標的の結合およびそれとの相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持する。
【0119】
機能性タンパク質は、本明細書で使用する場合、完全配列の100%未満(例、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%など)を指すが、5個以上のアミノ酸または15個以上のヌクレオチドを含む。
【0120】
抗-IgE単一ドメイン抗体
本発明のある態様は、アレルギーの症状緩和、治療および予防に適した治療化合物に関する。前記治療化合物は、IgEと相互作用し、アレルギー反応の原因である免疫応答カスケードを調節する。
【0121】
本発明の別の態様は、眼内アレルギー疾患治療のための局所用眼科組成物の調製における抗-IgE単一ドメイン抗体(例、VHH)の使用に関する(実施例2)。本発明のVHHを使った前記組成物調製の経済性は、例えば哺乳類細胞での通常の抗体の産生と比較して細菌または酵母VHH発現系を使った産生が容易で、低コストであるとすると、通常の抗体よりもはるかに好ましい。
【0122】
眼内浸透とその結果の眼内効果は、通常の抗体および大きなサイズの誘導断片では、ほとんど期待されない。しかし、本発明のポリペプチド構築物は、非常に効率が良く、高力価で、低分子量と組み合わせた安定性を示すと予想される。そのため、本発明のポリペプチド構築物で、局所以外の前記適応症への応用が想定される。
【0123】
本発明のある実施態様は、IgEに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0124】
本発明の別の実施態様は、IgEに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、単一ドメイン抗体が配列番号1〜11のいずれかで表される配列に相当するポリペプチド構築物である。前記配列は、ラクダ科 VHHから由来する。
【0125】
本発明は、IgEに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、対象の1個以上の血清タンパク質に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物が、驚くべきことに、前記構築物の一部でない場合、抗-IgE単一ドメイン抗体の半減期に比較して、前記対象の循環系内では有意に長い半減期を有する、とした所見にも関する。さらに、前記ポリペプチド構築物が、マウスで無傷のままである高安定性、極端なpH耐性、高温安定性および高標的親和性などの同様に好ましいVHHの性質を呈することが認められた。
【0126】
本発明の別の実施態様は、IgEに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、1個以上の血清タンパク質に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0127】
血清タンパク質は、対象の血清中に認められるいずれかの適切なタンパク質またはその断片であることができる。本発明のある態様では、血清タンパク質は、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン-結合タンパク質、トランスフェリンまたはフィブリノーゲンである。VHHパートナーは、有効治療に必要な半減期および/または標的抗原の区画化などの使用目的に応じて、上記血清タンパク質のいずれかに向けることができる。
【0128】
本発明のある態様は、IgEに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、配列番号71〜84のいずれかで表される配列に相当する抗-血清アルブミン単一ドメイン抗体1個を含むポリペプチド構築物である。
【0129】
ポリペプチド構築物の送達
本発明のポリペプチド構築物の送達に関する本発明の態様は、本明細書に開示の抗-IgE単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物に限定されず、以下に示すように、どの標的にも適用できる。ポリペプチド構築物は、任意に上述の変形物を伴う1個以上の標的に対する単一ドメイン抗体を含むことができる。
【0130】
本発明のある実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する際に使用するポリペプチド構築物である。
【0131】
当業者に既知のとおり、いったん、前記ポリペプチド構築物を得ると、正しい位置(胃内、結腸内など)で最大量のVHHを放出するように、配合技術を適用できる。消化器系に標的が位置する疾患を治療、予防および/または症状緩和する上でこの送達法が重要である。
【0132】
本発明のある態様は、不活性化されずに胃内環境を通過できる治療化合物による調節に感応する疾患を、該疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0133】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0134】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに消化器系に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0135】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0136】
本発明の別の実施態様は、膣および/または直腸への抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、該部位の標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0137】
非限定的な例では、本発明に記載の製剤は、ジェル、クリーム、坐薬、フィルム状で、あるいは、スポンジ状で、または、経時間的に活性成分をゆっくりと放出する膣リングとして(前記製剤は、EP 707473、EP 684814、US 5629001に開示)、1個以上の標的に対する1個以上のVHHを含む、本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む。
【0138】
本発明のある態様は、疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に膣および/または直腸投与することによって、膣および/または直腸に対する治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0139】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに膣および/または直腸に対する抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0140】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の膣および/または直腸に投与することによって、不活性化されずに膣および/または直腸に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0141】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の膣および/または直腸に投与することによって、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0142】
本発明の別の実施態様は、鼻、上気道および/または肺に対する抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む標的に対する1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0143】
非限定的な例では、本発明に記載の製剤は、鼻内スプレー(例、エアゾル)または吸入器として1個以上の標的に対する、本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む。該構築物は小型であるので、治療用IgG分子よりもはるかに有効にその標的に到達できる。
【0144】
本発明のある態様は、口または鼻から吸入より、1個以上の単一ドメイン抗体が疾患に関連する抗原に特異的な本明細書に開示のポリペプチド構築物を対象に投与することによって、上気道および肺に達する治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0145】
本発明の別の態様は、分散性VHH組成物で、特にUS 6514496に記載されているもののような乾燥粉末分散性VHH組成物である。これらの乾燥粉末は、平均粒度が0.4〜10μmの範囲の離散乾燥粒子を大量に含んでいる。前記粉末は、吸入器内で容易に分散させることができる。VHH'sは、溶解度が高いために、(吸入後、肺で)容易に溶解できる凍結乾燥剤などの組成物に特に適している(Muyldermens, S., Reviews in Molecular Biotechnology, 74, 277-303, (2001))。別法として、前記凍結乾燥VHH製剤は、希釈剤で再溶解し、皮下投与に適した安定な再溶解製剤とすることができる。例えば、抗-IgE抗体製剤(実施例1;US 6267958、EP 841946)が調製されており、アレルギー性喘息の治療に有用である。
【0146】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに鼻、上気道および/または肺に対する抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0147】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによる抗-標的治療化合物の鼻、上気道および/または肺への送達方法である。
【0148】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を鼻、上気道および/または肺に送達する方法である。
【0149】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を対象の血流に送達する方法である。
【0150】
本発明のある実施態様は、腸粘膜透過性が高まった疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。本明細書に開示のポリペプチド構築物は、小型であるため、例えばクローン病など、腸粘膜透過性の増加を引き起こす疾患の患者において、腸粘膜を通過し、より効率的に血流に達することができる。
【0151】
本発明のある態様は、疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、腸粘膜透過性が高まった疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0152】
この方法は、本発明のさらなる態様-能動輸送キャリアの使用-によって一層強化できる。本発明のこの態様では、腸壁から血流への移行を増強するキャリアにVHHを融合させる。非限定的な例として、この「キャリア」は、治療用VHHに融合される第二VHHである。前記の融合構築物は、従来技術の方法を使って生成する。「キャリア」VHHは腸壁のレセプターに特異的に結合し、腸壁からの能動移行を誘発する。
【0153】
本発明の別の実施態様は、腸粘膜の透過性を高める疾患で、腸粘膜に到る抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製への、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0154】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を腸粘膜に送達する方法である。
【0155】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を対象の血流に送達する方法である。
【0156】
本発明のある実施態様は、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であって、舌下組織を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するポリペプチド構築物である。本明細書に開示の前記ポリペプチド構築物の製剤、例えば錠剤、スプレー、ドロップを舌下に置き、粘膜から舌下の毛細血管網に吸収させる。
【0157】
本発明のある態様は、舌下組織を有効に通過できる治療化合物による調節に感応する疾患を、疾患に関連する抗原に特異的なVHHを対象に舌下投与することによって、治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0158】
本発明の別の実施態様は、舌下組織を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0159】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を舌下組織に送達する方法である。
【0160】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに抗-標的治療化合物を対象の血流に送達する方法である。
【0161】
本発明のある実施態様は、皮膚を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和するのに使用するための、少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。前記ポリペプチド構築物の製剤として、例えばクリーム、フィルム、スプレー、ドロップ、パッチを皮膚上に置き、通過させるものがあげられる。
【0162】
本発明のある態様は、疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のポリペプチド構築物を対象に局所投与することによって、皮膚を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0163】
本発明の別の態様は、アレルギー性疾患などの眼病の治療のための局所眼科用組成物としての、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用であり、この方法は、本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む眼科用組成物の局所投与を含み、前記構築物は1個以上の抗-IgE VHHを含む(実施例1、実施例2)。
【0164】
本発明の別の実施態様は、皮膚を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0165】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に局所投与することによって、不活性化されずに皮膚に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0166】
本発明のある態様は、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に局所投与することによって、対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0167】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的の非限定的な例は、炎症過程に関与するTNFである。TNF作用の遮断は、例えばクローン病などの特定の病態に非常に望ましい抗炎症効果を発揮できる。現在の治療法は、抗-TNF抗体の静脈内投与から成る。我々の実施例(実施例4)は、TNFを結合し、さらに、そのTNFレセプターへの結合を遮断する本発明に記載のVHHを実証している。これらの抗-TNFポリペプチド構築物の経口送達は、結腸内の罹患部位に前記分子を活性型として送達することとなる。これらの部位は、重度の炎症をきたしており、TNF-産生細胞を含有する。これらの抗-TNFポリペプチド構築物は、局所的にTNFを中和し、全身への分布を回避し、それによって、負の副作用を限定することができる。Micrococcus lactisなどの遺伝子組換え微生物は、抗体断片を分泌できる(US 6190662、WO 0023471)。前記組換え微生物は、腸内での抗体断片の限局産生および送達媒体として使用できる。TNF中和抗体断片を産生する系統(菌株)を使用することによって、炎症性腸疾患を治療できるはずである。本発明の別の実施態様は、炎症過程に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、TNF-αに特異的な少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、この場合、前記ポリペプチド構築物は、経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、もしくは、吸入によって投与する。本発明の別の態様は、炎症過程に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、例えばTNF-αに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与または吸入による投与を含む。
【0168】
本発明のある態様によれば、本発明のポリペプチド構築物は、TNF-αに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体で、前記単一ドメイン抗体が配列番号12〜14のいずれかで表される配列に相当する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む。前記配列は、抗-TNF-αラクダ科 VHHである。
【0169】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的のさらなる非限定的な例は、特定の結腸癌特異的抗原で、例えばCEAまたはEGFレセプターである。本発明のある態様では、結腸癌抗原に対する治療用VHHは、例えば化合物または放射性化合物などの1個以上の腫瘍破壊試薬に結合または該試薬を備える。
【0170】
上述のように、本発明に記載の結腸癌特異的抗原は、上皮増殖因子レセプター(EGFR)で、これは、哺乳類の細胞分裂の必須メディエーターであり、認識細胞癌遺伝子である。EGFのそのレセプター(EGFR)への結合後、シグナリングカスケードが開始され、細胞発達を生じる。EGFRは、頭部、頚部、肺、結腸などの部位に位置する上皮悪性腫瘍を伴う細胞上に過剰発現しながら、ヒト腫瘍形成にも関与する。本発明の別の態様は、EGFRに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む、EGFR-介在癌に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するためのポリペプチド構築物であり、この場合、前記VHHを経口、舌下、局所、鼻内、静脈内、皮下、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する(実施例25〜31)。本発明の別の態様は、EGFR-介在癌に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、EGFRに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与または吸入による投与を含む。
【0171】
本発明のある態様によれば、本発明のポリペプチド構築物は、EGFRに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は、配列番号23〜44のいずれかで表される配列に相当する。前記配列は抗-EGRF ラクダ科 VHHである。
【0172】
上述のように、本発明に記載の別の結腸癌特異的抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、認識腫瘍マーカーである。本発明の別の態様は、CEA-介在癌に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、CEAに特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記ポリペプチドを経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、CEAに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入による投与を含む、CEA-介在癌に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。この糖タンパク質に特異的な数種のVHHは、ヒトコブラクダの免疫化後に得られた専用ライブラリーからCEAコートされた固相上で選択することによって単離されている。2個の断片のみが、細胞結合抗原を認識することが、FACS分析を使用することによって、明らかであった。未変性構造を認識したVHHの1つを、β-ラクタマーゼとの融合タンパク質の構築に使用した。精製融合タンパク質の機能性をインビトロにおいて、プロドラッグ転換細胞傷害性アッセイで検討した。さらに、インビボにおいて、免疫複合体を腫瘍-標的生体内分布試験で検討した。
【0173】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的の非限定的な例は、ピロリ菌で、これは、ヒトの胃および十二指腸の内層を覆う粘液に棲息する細菌である。正常なヒトの胃には、内表全体を覆う極薄の粘液層がある。この粘液は、防御的役割を果たし、胃酸と敏感な胃壁の間のバリアとして作用する。ピロリ菌は、胃の内層に刺激因子として作用し、これが、胃の炎症(胃炎)を引き起こす。本発明のある実施態様は、ピロリ菌に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、ウレアーゼの酵素機能を阻害する。単一ドメイン抗体、特にVHHは、酵素部位を占有する特異的な特性を有するので、選択されたVHHは、酵素活性を阻害し、ピロリ菌感染の毒力を中和すると思われる。本発明の別の態様は、ピロリ菌に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記構築物が胃壁への細菌の付着を阻害し、それによって胃壁の刺激および胃炎を防止する。本発明のある実施態様は、胃壁の刺激および胃炎に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、ピロリ菌に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与するが、経口投与が好ましい。本発明の別の態様は、胃壁の刺激および胃炎に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、ピロリ菌に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含むが、経口投与が好ましい。
【0174】
本発明のVHHを使用できる治療標的の非限定的な例は、糞便/経口経路を経て伝染するウイルス性疾患のE型肝炎である。症状は、年齢と共に増加し、腹痛、食欲不振、褐色尿、発熱、肝肥大、黄疸、倦怠、悪心および嘔吐がある。総致死率は、1〜3%であるが、妊婦では15〜25%である。いったん投与を受けると、大半の患者は生涯に亘って防御をもたらす中和化IgG反応を発達させる。中和化VHH分子は、経口投与ができるために、通常のIgG分子よりも有利である。ほとんどのE型肝炎感染は、北アフリカ、中央アフリカ、アジア、中央アメリカに発生するので、それらの国では、医療支援体制が未発達であることから、経口投与が非常に有利である。本発明のある態様は、E型肝炎に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するためのHEVカプシドタンパク質(56 kDa)に特異的な1個以上のVHHであり、前記VHHを経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、E型肝炎に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、前記VHHの対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。
【0175】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的の非限定的な例は、TB菌およびインフルエンザウイルスなど、呼吸器疾患を誘発する微生物である。TB即ち結核は、結核菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる疾患である。該細菌は、身体のどんな部位をも攻撃できるが、通常は、肺を攻撃する。インフルエンザは、「流感」を引き起こすウイルス性疾患である。インフルエンザウイルスは、肺にも存在する。本発明のある態様は、TBに関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、結核菌エピトープに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、TBに関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、前記VHHの対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。本発明の別の態様は、流感に関連する疾患を治療、予防、および/または緩和するのに使用するための、インフルエンザウイルスに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、流感に関連する疾患を治療、予防および/または緩和する方法で、前記ポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。
【0176】
本発明のポリペプチドを使用できる治療標的の非限定的な例は、アレルギーに関連するIgEである。一生の間に、対象は、無害な寄生虫(例、Dermatophagoides pteronyssinus、ハウスダストのダニ)や物質(凝塊、プラスチック、金属)へのアレルギー反応をきたす場合がある。これは、IgE分子を誘導し、免疫反応カスケードをもたらす。本発明のある態様は、IgEに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチドが、肥満細胞および好塩基球上のレセプターとのIgEの相互作用を防止する。それら自体が、免疫カスケード、アレルギー反応の開始を防御する。IgE分子は、血流中に存在するので、それらの標的に到達するために、VHHを1個以上の能動輸送キャリアに融合させるのは、本発明の範囲内である。本発明の別の態様は、アレルギーに関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、IgEエピトープに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、アレルギーに関連する疾患を治療、予防および/または緩和する方法で、前記ポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。
【0177】
本発明のある態様によれば、本発明のポリペプチド構築物は、IgEに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は、配列番号1〜11のいずれかで表される配列に相当する。前記配列は抗-IgE ラクダ科 VHHである。
【0178】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的の非限定的な例は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリーの構成酵素であるヒトマクロファージエラスターゼ(MMP-12)である。これらの酵素は、正常過程および炎症過程に重要な役割を果たし、組織の再構築に寄与する。さらに、MMPは、正しい細胞外マトリックス再構築および破壊の他に、癌や炎症などの多様な病態に重要な役割を果たす。マクロファージエラスターゼ、即ちMMP-12は、大きな特異性ポケットと幅広い基質特異性を有する。それは、細胞外タンパク質の過剰なタンパク質分解(例、煙誘発気腫における肺損傷、Churgら、A. 2003)、あるいは、マトリックス分解の増加(例、肥満におけるMMP-12酵素活性の上昇、Chaveyら、2003)を原因とする数種の疾患に役割を果たす。他の臨床適応症には、小児脂肪便症および表皮水疱症(Salmelaら、2001)、子宮体腎炎(Kanekoら、2003)、食道扁平上皮癌(Dingら、2002)および皮膚癌(Kerkelaら、2000)がある。
【0179】
MMP-12は、肺胞マクロファージによって細胞外腔に分泌され、MMP-12の調節障害が肺気腫に到る肺胞膜の分解に対して考えられる理由である。MMP-12の標的基質には、エラスチン、フィブロネクチンおよびラミニンなどの細胞外マトリックスタンパク質があり、α1-アンチトリプシンおよび組織因子プロテアーゼ阻害剤もある。本発明の別の態様は、炎症過程に関連する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、MMP-12に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、炎症過程に関連する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、前記ポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。
【0180】
本発明の別の態様は、(1)メタロプロテイナーゼに特異的に結合し、メタロプロテイナーゼによって分解されないVHH's、(2)1個以上のメタロプロテイナーゼのタンパク質分解活性を阻害するVHH's、(3)非特異的化学阻害剤(例、バチマスタット、メリマスタット....)と異なり、あるMMPに著しく特異的な阻害性VHH's (例、MMP-12特異的拮抗剤)から成る。
【0181】
本発明のある態様によれば、本発明のポリペプチド構築物は、ヒトMMP-12に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は、配列番号15〜22のいずれかで表される配列に相当する。前記配列は抗-MMP-12 ラクダ科 VHHである。
【0182】
本発明のポリペプチド構築物を使用できる治療標的の非限定的な例は、一部のT細胞によって分泌されるIFN-γである。IFN-γは、その抗-ウイルス活性に加えて、ナチュラルキラー(NK)細胞およびTヘルパー1(Th1)細胞を刺激し、マクロファージを活性化し、細胞表面のMHC分子の発現を刺激する。そのため、IFN-γは、一般に、免疫機能の多くの側面を強化する働きをし、免疫系が過剰活動している病態(例、クローン病)、例えば自己免疫疾患および臓器移植拒絶反応、の治療の候補物質となっている。本発明のある態様は、免疫反応に関連する疾患の治療、予防および/または緩和に使用するための、IFN-γに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記ポリペプチド構築物を経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与し、あるいは、吸入で投与する。本発明の別の態様は、免疫反応に関連する疾患を治療、予防および/または緩和する方法で、前記ポリペプチド構築物の対象への経口、舌下、局所、静脈内、皮下、鼻内、膣内、直腸内投与、あるいは、吸入での投与を含む。本発明の他の実施態様では、IFN-γを中和するポリペプチド構築物が、乾癬患者の治療に使用されている。
【0183】
本発明のある態様によれば、本発明のポリペプチド構築物は、IFN-γに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は、配列番号45〜70のいずれかで表される配列に相当する。前記配列は、抗-IFN-γ ラクダ科 VHHである。
【0184】
本発明は、特異的配列を固定する単一ドメイン抗体(例、VHH)の同定法にも関するもので、これは、(US 6361938に記載されるとおり)ヒトまたは動物の組織を通過する抗-標的単一ドメイン抗体の送達または輸送を促進し、それらはGIT(消化管)上皮層、肺胞細胞、血液-脳関門の内皮、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、腎臓上皮細胞、パイヤー板M細胞および肝細胞を含むが、これらに限定されない。さらに、本発明のVHHと合わせて、ナノ粒子、ミクロ粒子、リポソーム、ミセル、シクロデキストリンを含む送達系を使用できる。観血的脳神経外科手術を利用せずに使用できる新規脳内薬剤の開発を著しく限定している血液-脳関門を、小型(<600ダルトン)および疎水性(Partridge et al, Adv. Drug Delivery Reviews, 15, 5-36 (1995))分子のみが容易に通過できる。
【0185】
細胞内部へのポリペプチド構築物の送達
本発明の別の態様は、細胞内部に治療ポリペプチドおよび/または作用物質を送達する方法および分子である。本発明のさらなる態様は、抗原提示細胞内部に抗原を送達し、それによって、該抗原への強力な免疫反応を誘発する方法および分子である。本発明のなおもさらなる態様は、血液-脳関門、肺-血液バリアなどの天然のバリアを通過する治療ポリペプチドおよび/または作用物質を送達する方法および分子を提供することである。
【0186】
本発明のある態様は、標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、細胞内部移行レセプターに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記ポリペプチド構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行する。
【0187】
細胞内部の標的は、前記細胞の働きに影響を与え、それへの結合は、単独で、細胞自体の表現型の変化を招く可能性がある。これは、例えば、細胞死、細胞周期または細胞増殖への作用、あるいは、細胞内シグナリング経路の妨害である場合がある (例えば、Poul MA et al, J Mol Biol, 2000, 301, 1149-1161参照)。
【0188】
本発明のある実施態様は、細胞内部移行レセプターに特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、該ポリペプチド構築物は、それに共有的にまたは非共有的に結合する治療ポリペプチドまたは作用物質を含む。前記治療ポリペプチドまたは作用物質は、細胞内で作用する1個以上の標的を有する。例えば、図12参照。前記治療ポリペプチドは、小胞、小器官および他の細胞質構造、膜結合構造、核を含む細胞内の特異的コンパートメントに該ポリペプチドを狙わせる特異的配列を保有してよい。
【0189】
本発明に記載の内部移行レセプターは、細胞表面に示されるレセプターで、リガンドへの結合時、細胞の細胞質への前記リガンドの細胞内部移行を仲介する。本発明に記載の内部移行レセプターには、LDLレセプター、EGFr、FGF2r、ErbB2r、トランスフェリンレセプター、PDGFr、VEGFr、PsmArまたは抗原提示細胞内部移行レセプターがあるが、これらに限定されない。
【0190】
本発明のある実施態様は、本明細書に開示の細胞内部移行レセプターに特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、抗原を含むポリペプチド構築物である。
【0191】
本発明のある実施態様は、本明細書に開示の細胞内部移行レセプターに特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記レセプターは、抗原提示細胞(APC)上の内部移行レセプターである。該レセプターは、APCに著しく特異的で、他の細胞タイプ上で、発現せず、少量存在するのが好ましい。
【0192】
本発明の別の実施態様は、1個以上の抗-レセプター単一ドメイン抗体と抗原を含むポリペプチド構築物である。従って、APC上の内部移行レセプターに対するVHHに抗原を結合させることによって、APCによる抗原取り込みは、APCと抗原の間の受動的相互作用によっては決定されず、VHHと前記レセプターの間の「能動」結合によって決定される。これは、該過程をさらに効率化するだけでなく、再現性を高め、抗原ごとにT-細胞活性化が大きく変動する原因となる抗原構造には左右されない。
【0193】
内部移行後、複合体は、APCによって消化され、抗原小片がMHC/HLAと結合して表面に露出され、強力な免疫反応を誘発する。
【0194】
本発明の別の実施態様は、抗原に対して対象を免疫化する方法であって、APC上に存在する抗原に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の、それを必要とする対象への投与を含み、前記単一ドメイン抗体は、さらに当該抗原を含む。
【0195】
本発明のある実施態様は、本明細書に開示の細胞内部移行レセプターに特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、この場合、前記レセプターはEGFRである。一般に、レセプターの内部移行作用は、封鎖(sequestration)と呼ばれる過程でアゴニストリガンドの結合時に起こる。細胞外シグナルを適切な規模および特異性の細胞内シグナルに確実に翻訳するために、シグナリングカスケードが封鎖過程を経由して緻密に調節され、その際、レセプターが、サイトゾル区画への内部移行作用によって細胞表面から物理的に除去される(Carman, C.V.およびBenovic, J.L. Current Opinion in Neurobiology 1998, 8: 335-344)。これは、実際には、アゴニストリガンドまたは抗体だけが前記レセプターを経て細胞内部移行すると予想されることを意味する。治療での使用に関しては、その細胞内部に毒殺量を送達する前に、該抗体が最初に腫瘍細胞の増殖を誘発するというのは効果として望ましくない。
【0196】
内部移行レセプターの一部は、腫瘍細胞上の上皮増殖因子レセプター(EGFR)またはErBb2レセプターなど、特定の細胞上に過剰発現する。上皮増殖因子(EGF)は、哺乳類細胞の細胞分裂に必須のメディエーターで、被認識細胞癌遺伝子であり、そのため、抗-レセプター療法に適した標的である。EGFのそのレセプター(EGFR)への結合後、シグナリングカスケードが開始され、細胞発達が起こる。EGFRは、頭部、頚部、肺、結腸などの多くの上皮悪性腫瘍細胞に過剰発現されるように、ヒトの腫瘍形成に関与する。これらのレセプターの1つに結合する際に細胞内部移行するVHHを、細胞内部への分子送達に使用できる。
【0197】
本発明のある実施態様は、EGFRに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、単一ドメイン抗体が配列番号23〜44のいずれかで表される配列に相当するポリペプチド構築物である。驚くべきことに、単一ドメイン抗体の1つは、効率的に細胞内部移行した事実があるにもかかわらず、EGFRを活性化しなかった。前記タイプの抗体は、増殖を刺激せずに毒殺量を細胞に送達できるので、治療応用に好ましい。
【0198】
本発明の別の実施態様は、EGFRに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記抗-EGFR単一ドメイン抗体はEGFRを活性化しない。前記ポリペプチド構築物は、本明細書で言及するとおり、EGFRを刺激せずに、細胞への治療剤および/またはポリペプチドの送達に使用できる。
【0199】
本発明の別の実施態様は、EGFRに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物で、前記抗-EGFR単一ドメイン抗体はEGFRを活性化せず、配列番号31で表される配列に相当する。
【0200】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、さらに細胞内標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は共有結合または非共有結合されている。この多重特異的ポリペプチド構築物は、非レセプター特異的単一ドメイン抗体の標的に応じて疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用できる。この標的は、例えば、PDK1などのキナーゼであることができる。PDK1は、乳癌細胞中に過剰発現される。活性化ループ中でT308をリン酸化してAktを活性化する。Aktの多数の下流基質が細胞生存の促進に直接的役割を果たす。これらには、GSK3、Bad、カスパーゼ-9およびフォークヘッドがある。
【0201】
本発明のある実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、さらに、PDK1、GSK1、Bad、カスパーゼ-9およびフォークヘッドに対する1個以上の単一ドメイン抗体を含む。本発明の別の態様は、癌治療のための前記構築物の使用である。本発明の別の態様は、癌治療用医薬品の調製のための前記構築物である。
【0202】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、さらに、該構築物は、それに共有結合または非共有結合する薬剤または毒性化合物を含む。毒性化合物の一例は、還元環境のために細胞内だけで活性を示す化合物である(例、追加的にシステインで遺伝子組み換え修飾し、不活性酵素となるが、還元環境では活性型となる酵素)。毒性化合物の別の例は、特定の細胞型だけに特異的に毒性を発揮する化合物である。毒性化合物または薬剤の例は、細胞内部に存在するリガンドで活性化され、当該表現型となる化合物である。他の例には、プロドラッグ、小有機分子がある。本発明のある態様は、前記構築物の投与を要する疾患の治療への前記構築物の使用である。本発明の別の態様は、前記構築物の投与を要する疾患の治療のための医薬品の調製への前記構築物の使用である。
【0203】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、さらに、繊維状ファージがその表面に前記構築物を発現する。前記構築物は、ファージ先端に付着できる。本発明のある態様では、遺伝子療法ベクターとしての使用に、DNAを封入し、細胞に送達するために構築物-ファージ集合体を使用できる。本発明に従って、ファージは、治療で使用するために、前記構築物をコードするものに加えて、DNAを保持できる。本発明に従って、ファージは治療ポリペプチドコード遺伝子を保持してもよく、それは細胞内部の前記遺伝子の発現用プロモーターによって制御される。前記プロモーターの例は、CMVプロモーターがある(Kassner et al, Biochem Biophys Res Commun, 1999, 264: 921-928)が、それに限定されない。ファージは既存の遺伝子療法用ベクターに勝る際立った長所を有する。理由は、高力価での産生が簡単で、経済的であり、哺乳類細胞に対する固有の向性を持たず、遺伝子組換えおよび進化が比較的簡単である(Larocca D et al, Curr. Pharm. Biotechnol, 2002: 3: 45-57) からである。
【0204】
本発明の別の実施態様は、本明細書に開示のポリペプチド構築物で、この場合、前記単一ドメイン抗体は、細胞内部移行レセプターに特異的なVHHから誘導したペプチドである。前記VHHペプチドは、ほぼペプチドによってのみ、その抗原と結合できる。細胞内部移行VHHは、細胞内部移行性についてスクリーンしたペプチドライブラリーから調製できる。細胞内取り込み用に、これらのVHHペプチドを治療ポリペプチドまたは作用物質にタグとして付加させることができる点は、本発明の一態様である。VHHペプチドは、例えば、治療用VHHの細胞への輸送に使用できる。本発明のある実施態様では、VHHペプチドは、CDR3である。本発明の別の実施態様では、VHHペプチドは、いずれか他のCDRである。
【0205】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに特異的で、このレセプターへの結合時に細胞内部移行するVHHの選択法であり、この方法は、VHHのファージライブラリー(未処理または免疫)をもってレセプター-提示細胞を選別すること(panning)、ならびに、細胞に内部移行されたファージを細胞内から回収することによって細胞内部移行VHHを選択することを含む。本発明は、レセプターを過剰発現する細胞系またはレセプター遺伝子を形質導入した細胞系を使用する選択法を含み、レセプターに結合するファージ抗体の容易な選択が可能である。これによって、タンパク質発現および精製が不要で、細胞内部移行VHHの生成が著しくスピードアップする。
【0206】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに特異的な少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を該レセプターに共有または非共有結合させることによる細胞の内部移行作用によって取り込むための、治療ポリペプチド、作用物質または抗原の送達法であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行する。
【0207】
本発明に記載のVHHは、VHHの投与を必要とする疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用できる。
【0208】
本発明の別の実施態様は、細胞内標的分子と相互作用する治療ポリペプチドまたは作用物質を送達する方法で、それらを必要とする対象への細胞内部移行レセプターに特異的な1個以上のVHHの投与を含み、前記VHHが、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、前記VHHは前記ポリペプチドまたは作用物質に融合する。
【0209】
本発明の別の実施態様は、治療ポリペプチド、作用物質または抗原の送達法で、細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物をそれらに共有または非共有結合させて天然バリアを通過させて送達する方法であり、前記構築物は、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行する。本発明によれば、天然バリアには、血液-脳、肺-血液、消化器-血液、膣-血液、直腸-血液および鼻-血液の各バリアがあるが、これらに限定されない。
【0210】
例えば、上気道および肺を経由して送達されるペプチド構築物は、治療ポリペプチドまたは作用物質の肺腔から血液への輸送に使用できる。該構築物は、粘膜表面(気管支上皮細胞)上に存在するレセプターに特異的に結合し、血流標的に特異的な治療ポリペプチドまたは作用物質を肺腔から血液に輸送する。別の例では、治療ポリペプチドまたは作用物質は、腸壁上に存在する細胞内部移行レセプターに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物に結合し、血流に送り込まれる。前記構築物は、治療ポリペプチドまたは作用物質が細胞の内部移行作用を経由して壁を通過する輸送を誘発する。
【0211】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに特異的なVHHであり、前記VHHは、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行し、前記VHHは治療ポリペプチドまたは作用物質に共有または非共有結合し、前記VHHは、天然バリアを通過する。
【0212】
本発明の別の実施態様は、細胞内部移行レセプターに特異的なVHHに該レセプターを共有または非共有結合させることによる局所での取り込みのために、治療ポリペプチド、作用物質または抗原を送達する方法であり、前記VHHは、前記レセプターへの結合時に細胞内部移行する。本発明によれば、局所領域には、脳、肺、消化器、膣、直腸および鼻の各領域があるが、それに限定されない。
【0213】
本発明のある実施態様は、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0214】
当業者に既知のとおり、いったんポリペプチド構築物が手に入ると、正しい位置(胃内、結腸内など)で最大量のVHHを放出する配合技術を応用できる。この送達法は、標的が消化器系に位置する疾患の治療、予防および/または症状緩和にとって重要である。
【0215】
本発明のある態様は、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、該疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法である。
【0216】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに胃内環境を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0217】
本発明のある態様は、不活性化されずに消化器系に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法である。
【0218】
本発明のある態様は、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法である。
【0219】
本発明の別の実施態様は、膣および/または直腸に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0220】
非限定的な例では、本発明に記載の製剤は、経時的に活性成分をゆっくりと放出するジェル、クリーム、坐薬、フィルム状で、あるいは、スポンジ、または、膣リングとして、1個以上の標的に対する1個以上のVHHを含む、本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む(前記製剤は、EP 707473、EP 684814、US 5629001に開示)。
【0221】
本発明のある態様は、膣および/または直腸に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に膣および/または直腸投与することによる方法である。
【0222】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに膣および/または直腸に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0223】
本発明のある態様は、不活性化されずに膣および/または直腸に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の膣および/または直腸に投与することによる方法である。
【0224】
本発明のある態様は、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の膣および/または直腸に投与することによる方法である。
【0225】
本発明の別の実施態様は、鼻、上気道および/または肺に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。
【0226】
非限定的な例では、本発明に記載の製剤は、鼻内スプレー(例、エアゾル)または吸入器の形態で、1個以上の標的に対する本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む。該構築物は、小型であるため、治療用IgG分子よりもはるかに効率的に、その標的に到達できる。
【0227】
本発明のある態様は、1個以上の単一ドメイン抗体が該疾患関連抗原に特異的である本明細書に開示のポリペプチド構築物を対象に口や鼻から吸入することによって、鼻、上気道および肺に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法である。
【0228】
本発明の別の実施態様は、US 6514496に記載されているものなど、分散性VHH組成物、特に乾燥粉末分散性VHH組成物である。これらの乾燥粉末組成物は、平均粒度が0.4〜10mmの範囲の離散乾燥粒子を多数を含む。前記粉末は、吸入器中で容易に分散することができる。VHH'sは、高可溶化能により、(吸入された後に肺で)容易に溶解できる凍結乾燥剤などの組成物に特に適している(Muyldermans, S., Reviews in Molecular Biotechnology, 74, 277-303, (2001))。別法として、前記凍結乾燥VHH製剤は、希釈剤で再溶解し、皮下投与に適した安定な再溶解製剤とすることができる。例えば、抗-IgE抗体製剤(実施例1;US 6267958、EP 841946)が調製されており、アレルギー性喘息に有用である。
【0229】
本発明の別の実施態様は、不活性化されずに鼻、上気道および/または肺に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0230】
本発明のある態様は、鼻、上気道および/または肺に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによる方法である。
【0231】
本発明のある態様は、不活性化されずに鼻、上気道および/または肺に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによる方法である。
【0232】
本発明のある態様は、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象の鼻、上気道および/または肺に投与することによる方法である。
【0233】
本発明のある実施態様は、腸粘膜に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、本明細書に開示のポリペプチド構築物で、この場合、前記疾患は腸粘膜の透過性を高めるものである。本明細書に開示のポリペプチド構築物は、小型であるため、腸粘膜透過性の増加を引き起こす疾患、例えばクローン病を発症した対象において、腸粘膜を通過し、より効率的に血流に到達することができる。
【0234】
本発明のある態様は、腸粘膜に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、本明細書に開示のポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法であり、前記疾患は腸粘膜の透過性を高めるものである。
【0235】
本発明の別の実施態様は、腸粘膜に送達される抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製への、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用であり、前記疾患は腸粘膜の透過性を高めるものである。
【0236】
本発明のある態様は、本発明のポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに腸粘膜に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0237】
本発明のある態様は、本発明のポリペプチド構築物を対象に経口投与することによって、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法である。
【0238】
この工程は、本発明の追加態様-能動輸送キャリアの使用によって一層強化できる。本発明のこの態様では、本明細書に記載のポリペプチド構築物は、腸壁から血流への移行を増強するキャリアに融合される。非限定的な例では、この「キャリア」は、前記ポリペプチドに融合されたVHHである。前記融合構築物は、従来技術の方法を使って製造される。「キャリア」VHHは腸壁上のレセプターに特異的に結合し、該壁からの能動輸送を誘発する。
【0239】
本発明のある実施態様は、舌下組織を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、標的に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。本明細書に開示の前記ポリペプチド構築物の製剤、例えば錠剤、スプレー、ドロップを舌下に置き、粘膜から舌下の毛細血管網に吸着させる。
【0240】
本発明のある態様は、舌下組織を有効に通過できる治療化合物による調節に感応する疾患を、治療、予防および/または症状緩和する方法であり、該疾患に関連する抗原に特異的なVHHを対象に舌下投与することによる方法である。
【0241】
本発明の別の実施態様は、舌下組織を通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための、本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0242】
本発明のある態様は、不活性化されずに舌下組織に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法である。
【0243】
本発明のある態様は、不活性化されずに対象の血流に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に経口投与することによる方法である。
【0244】
本発明のある実施態様は、皮膚を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患の治療、予防および/または症状緩和に使用するための、少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物である。前記ポリペプチド構築物の製剤、例えばクリーム、フィルム、スプレー、ドロップ、パッチを皮膚上に置き、通過させる。
【0245】
本発明のある態様は、皮膚を有効に通過できる治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する方法で、該疾患に関連する抗原に特異的な1個以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のポリペプチド構築物の対象への局所投与による方法である。
【0246】
本発明の別の態様は、アレルギー性疾患など眼病の治療のための局所眼科用組成物としての本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用であり、その方法は、本明細書に開示のポリペプチド構築物を含む眼科用組成物の局所投与を含み、前記構築物は1個以上の抗-IgE VHHを含む(実施例1、実施例2)。
【0247】
本発明の別の実施態様は、皮膚を有効に通過できる抗-標的治療化合物による調節に感応する疾患を治療、予防および/または症状緩和する医薬品の調製のための本明細書に開示のポリペプチド構築物の使用である。
【0248】
本発明のある態様は、不活性化されずに皮膚に抗-標的治療化合物を送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に局所投与することによる方法である。
【0249】
本発明のある態様は、抗-標的治療化合物を対象の血流に送達する方法で、前記標的に対する1個以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物を対象に局所投与することによる方法である。
【0250】
本発明の別の態様は、どの単一ドメイン抗体(例、VHH)分子が、例えば口、鼻、肺、皮膚を利用した投与時に、天然バリアを通過して血流に入るかを決定する方法である。非限定的な例では、本方法は、未処理、合成または免疫単一ドメイン抗体ファージライブラリーのマウスなどの小動物への投与を含む。投与後、様々な時点で、血液を採取し、血流に能動的に移行したファージをレスキューする。さらに、投与後、器官を単離し、結合ファージを剥離させることができる。肺腔から血流への能動輸送のためのレセプターの非限定的な例は、FcレセプターN(FcRn)である。従って、本発明の方法は、血液に能動輸送されるだけでなく、特定器官を狙うことができる単一ドメイン抗体を特定する。本方法は、どのVHHが消化器を通過して血液中に;舌(または舌下)を通過して血液中に;皮膚他を通過して血液中に輸送されるかを特定できる。
【0251】
本発明のある態様は、前記方法を使って得られる単一ドメイン抗体である。本発明に従って、前記単一ドメイン抗体を、本発明のポリペプチド構築物中の単一ドメイン抗体として使用できる。別の単一ドメイン抗体、治療剤、あるいは、血液を経て到達可能な標的または血液中の標的に対するポリペプチドキャリアをさらに含む前記構築物を、前記単一ドメイン抗体にとって最も効率な経路で投与できる。
【0252】
一般に、「治療有効量」、「治療有効投与量」および「有効量」は、望みの結果(例えば、IFN-γ結合の調節;炎症の治療または予防)を達成するのに必要な量を意味する。当業者であれば、例えば本発明で使用されるIFN-γ結合などのリガンド-標的結合を調節する各種化合物の力価および「有効量」は変動し得るものであることを認識する。当業者は、該化合物の力価を容易に検定できる。
【0253】
用語「化合物」は、本明細書で使用する場合、本発明のポリペプチド構築物、または前記ポリペプチド構築物をコードすることのできる核酸を指す。
【0254】
「薬学的に許容される」とは、生物学的にもしくはその他の点で望ましくないというわけではない材料を意味し、即ち、その材料を上記化合物と合わせて個体に投与した場合に、望ましくない生物学的作用やそれを含む医薬組成物の他の成分のいずれかと消去する様式で相互作用を引き起こすことはないものである。
【0255】
本発明のポリペプチド構築物は、対象の病態の治療または予防に有効で、薬学的有効量の化合物または組成物の投与を含む。
【0256】
本発明に開示のポリペプチド構築物は、対象の病態の治療または予防に有効で、例えばドキソルビシンなどの別のものとの薬学的有効量の複合薬の投与を含む。
【0257】
本発明は、本発明の単一化合物を含む製剤の投与に限定されない。本発明の1個以上の化合物を含む製剤を、それを必要とする患者に投与する併用療法を提供するのは、本発明の範囲内である。
【0258】
本発明の有用な化合物は、医薬組成物として配合し、ヒト患者や家畜などの哺乳類宿主に、選択した投与経路、即ち、非経口的、静脈内、筋肉内、皮下経路に適応する様々な剤型で、膣および/または直腸、鼻内、口または鼻からの吸入、舌下、局所投与できる。
【0259】
本発明の化合物は、遺伝子療法的送達法を使っても投与できる。例えば、U.S.No.5,399,346参照。これは参照によって、そのまま組み入れられる。遺伝子療法的送達法を使って、本発明の化合物について遺伝子を形質導入した一次細胞をさらに組織特異的プロモーターで形質導入し、特定の器官、組織、移植片、腫瘍または細胞を標的とすることができる。
【0260】
従って、本化合物は、不活性希釈剤や同化可能な食用キャリアなどの薬学的に許容される媒体と併用して投与してもよい。それらは、ゼラチン硬または軟カプセルに封入し、圧縮して錠剤化し、あるいは、患者の治療食の食品に直接混入してもよい。治療での経口投与に関しては、活性化合物を、1種類以上の賦形剤と混合し、摂取可能な錠剤、口腔内貼付錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハスなどの剤型として使用できる。前記組成物および調製品は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有する必要がある。組成物および調製品の含有率は、当然、変動させることができ、所定の単位剤型の重量の約2〜60%であるのが便利であると思われる。前記の治療上有用な組成物中の活性化合物量は、有効投与量レベルが得られる量とする。
【0261】
錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものも含有することができる:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸ジカルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウィンターグリーンオイルなどの香料。また、チェリーフレーバーを添加してもよい。単位剤型がカプセルの場合、上記タイプの材料に加えて、植物油やポリエチレングリコールなどの液体キャリアを含有できる。コーティング剤として、あるいは、その他、固体単位剤型の物理的形状を変更するために、様々な他の材料を含むことができる。例えば、錠剤、ピルまたはカプセルは、ゼラチン、ロウ、セラックまたは砂糖などでコートできる。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、スクロース、フルクトースを甘味料として、メチルおよびプロピルパラベンを防腐剤として、染料およびチェリーまたはオレンジフレーバーなどの香料を含有してもよい。当然、どの単位剤型の調製でも、それに使用する材料は、薬学的に許容可能で、使用量で実質的に無毒でなければならない。さらに、活性化合物は、徐放性調製品および器具に混入してもよい。
【0262】
活性化合物は、注入や注射により静脈内または腹腔内投与もできる。活性化合物またはその塩の溶液を水で調製し、任意に無毒な界面活性剤と混合することができる。分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合液、および油でも調製できる。これらの調製品は、通常の保存および使用条件下で、微生物の増殖を防ぐために、防腐剤を含有する。
【0263】
注射または注入に適した医薬剤型は、滅菌注射または注入液または分散剤の即時的調製に適応させた滅菌水溶液または分散液または滅菌粉末であることができ、任意にリポソームに封入することができる。いずれの場合も、最終剤型は、製造および保存条件下で、無菌、流動性、安定でなければならない。液体キャリアまたは媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステルおよび適切なそれらの混合液を含む溶媒または液体分散媒であることができる。例えば、リポソームの配合によって、分散剤の場合、必要な粒度の維持によって、あるいは、界面活性剤の使用によって、適正な流動性を維持できる。各種抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって微生物の作用を防止できる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸収を遅くする作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によって、注射組成物の遅延吸収を引き起こすことができる。
【0264】
滅菌注射液は、適当な溶媒中の必要量の活性化合物を必要に応じて種々の上記の他の成分と混合した後、フィルター滅菌することによって調製する。滅菌注射液調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これらは、活性成分と、先に滅菌濾過した溶液中に存在するいずれかの望みの追加成分の粉末を生じる。
【0265】
局所投与に関しては、本化合物を、液体の場合、純粋形で適用できる。しかし、一般に、皮膚科で許容可能なキャリアと併用して、組成物または製剤として皮膚に投与するのが望ましく、該キャリアは固体であることも、液体であることもできる。
【0266】
有用な固体キャリアには、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉砕固体がある。有用な液体キャリアには、水、ヒドロキシアルキルまたはグリコールまたは水-アルコール/グリコール混合液があり、その中に、本化合物を、任意に非毒性界面活性剤を使って有効レベルで溶解または分散できる。香料や別の抗菌剤などのアジュバントを添加し、特定使用のための性質を最適化できる。得られた液体組成物を、吸収性パッドから適用し、包帯や他のドレッシングを使って浸透させ、あるいは、ポンプ式またはエアゾルスプレーヤーを使って離患部に噴霧できる。
【0267】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、修飾セルロース、変性ミネラル材料などの増粘剤も、液体キャリアと共に使用し、使用者の皮膚に直接塗る塗布ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成できる。
【0268】
皮膚への本化合物の送達に使用できる有用な皮膚科用組成物の例は、従来技術である;例えば、Jacquet ら(U.S.No. 4,608392)、Geria(U.S.No. 4,992,478)、Smithら(U.S.No.4,559,157)およびWortzman(U.S.No.4,820,508)参照。
【0269】
本化合物の有用な投与量は、インビトロ活性と動物モデルのインビボ活性を比較して決定できる。マウスおよび他の動物の有効投与量のヒトへの外挿法は、従来技術である;例えば、U.S.No.4,938,949参照。
【0270】
一般に、ローションなどの液体組成物中の本化合物の濃度は、約0.1〜25重量%、好ましくは約0.5〜10重量%になる。ゲルまたは粉末などの半固体または固体組成物の濃度は、約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜2.5重量%になる。
【0271】
治療での使用に必要な本化合物、またはその活性塩または誘導体の量は、選択した特定の塩だけでなく、投与経路、治療する病態の性質および患者の年齢および状態に応じて変動させ、最終的に、主治医または臨床医の裁量にまかせる。また、本化合物の投与量は、標的細胞、腫瘍、組織、移植片または器官に応じて変動させる。
【0272】
望ましい投与量は、単回量または適当な間隔で、例えば1日当たり2回、3回、4回またはそれ以上の小分け量で投与する分割量として提示できるのが便利である。小分け量自体は、さらに、何回も不定期間隔の投与に分割できる。インサフレーターからの頻回吸入、眼球への何回もの点眼などがある。
投与計画は、長期、毎日投与であることができる。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数ヶ月または数年間であることを意味する。必要なこの投与量範囲の変更は、本明細書の内容に示される通常の実験によってのみ、当業者が決定できる。RemingtonのPharmaceutical Science(Martin, E. W., ed. 4)、Mack Publishing Co., Easton, PA参照。合併症の場合にも、個々の医師が投与量を調整できる。
【0273】
(図面の簡単な説明)
図1:IgE領域を示す図
図2:pH2.2、pH3.2、pH4.2における基準およびペプシン処理TNF3EのELISA(100%は、1/100希釈で測定されたシグナルである)
図3:実験の設定
図4:ヒトのMMP12の触媒ドメインのタンパク質分解活性へのVHHクローンの阻害能
図5:ラマの血清におけるA431特異的抗体力価を検出するELISA
図6:ラマの血清におけるEGFR特異的抗体力価の検出
図7:ラマ024および025、ならびに、ラマ026および027の血清におけるEGFR特異的抗体力価の検出
図8:EGFRに対するファージの応答
図9:エピトープ特異的溶出選択手法によって同定されたクローン31個のアミノ酸のアラインメント
図10:エピトープ特異的溶出選択手順によって同定されたユニークなEGFR特異的クローン20個の細胞上(パネルA)または固相固定EGFR上(パネルB)のファージELISA
図11:レセプターの内部移行作用およびシグナリングに対するナノボディEGFR-lla42の作用。Her-14(パネルA)または3T3(パネルB)による、内部移行作用が可能な条件下でのEGFR-IIIa42の蛍光顕微鏡可視化。レセプターチロシンキナーゼ活性に対するEGFR-IIIa42の作用を示すウェスタンブロットをパネルCに示す。
図12:治療タンパク質、毒性化合物、薬剤またはポリヌクレオチドを送達するための内部移行レセプターに対するVHHの使用を示す図
(表の簡単な説明)
表1:実施例1に記載の免疫化スキーム
表2:実施例1に記載のベクター特異的プライマーを用いたPCRによる挿入の存在
表3:実施例1に記載の一次選択
表4:実施例1に記載の一次選択からレスキューされたファージを用いた二次選択
表5:実施例1に記載のニュートラアビジンコーティング管を用いた2回目の選択
表6:実施例1に記載のELISAにおいて試験されるクローンの数に対するヒトIgEおよびキメラIgEの両方への結合について陽性を記録するクローンの数
表7:処置スケジュール
表8:実施例7および8に記載の異なるラマおよび組織由来のライブラリー、それらの多様性および挿入%の概要
表9:免疫化スケジュールおよび組織採集物
表10:構築されたライブラリーの概要
表11:エピトープ特異的溶出選択手順の概要
表12:内部移行作用選択手順の概要
表13:プライマー配列
表14:配列リスト
【実施例】
【0274】
実施例の表題
IgE
実施例1:IgEに対するVHH
実施例2:抗-IgEのVHH製剤
実施例3:抗IgE製剤
【0275】
TNF-α
実施例4:抗TNF-αの選択
実施例5:ヒトTNFαに特異的な抗体断片の安定性試験
実施例6:マウスにおける抗-ヒトTNFα特異的VHHの経口投与
実施例7:IBDの動物モデルにおける効力
【0276】
MMP12
実施例8:免疫化
実施例9:レパートリークローニング
実施例10:ライブラリーのレスキューおよびファージ調製
実施例11:ヒトMMP-12特異的VHHの選択
実施例12:選択されたVHHの特異性
実施例13:選択されたVHHの多様性
実施例14:VHHの発現および精製
実施例15:選択されたVHHの機能的特徴づけ:比色法におけるVHHによるMMP-12のタンパク質分解活性の阻害
実施例16:肺送達のための抗-MMP12 VHHの製剤
【0277】
インターフェロンγ
実施例17:免疫化
実施例18:レパートリークローニング
実施例19:ライブラリーのレスキューおよびファージ調製
実施例20:ヒト-IFNγ VHHの選択
実施例21:選択されたVHHの多様性
実施例22:VHHの発現および精製
実施例23:抗-IFNγ VHHの局所適用
【0278】
治療的VHH断片
実施例24:抗-TNFα VHH#3EのVHH-CDR3の発現
【0279】
EGFR
実施例25:免疫化
実施例26:免疫応答の評価
実施例27:重鎖抗体断片(VHH)レパートリーのクローニング
実施例28:クローン化レパートリーの評価
実施例29:EGFR特異的ナノボディの同定のための複数選択ストラテジー
実施例30:EGFR特異的ナノボディの特徴づけ
実施例31:EGFレセプターが媒介するナノボディの細胞内部移行
【0280】
PDK1
実施例32:ラマの免疫化
実施例33:レパートリークローニング
実施例34:ライブラリーのレスキュー、ファージ調製
実施例35:選択
実施例36:スクリーニング
実施例37:細胞内部移行VHHについてのスクリーニング
実施例38:VHHが阻害するPDK1-Akt相互作用についてのスクリーニング
実施例39:二重特異性構築物の作製
実施例40:腫瘍細胞のエンドサイトーシスおよび溶解
実施例41:本発明の抗-標的-単一ドメイン抗体間の相同性の計算
実施例42:抗血清アルブミンVHHに融合したVHH-CDR3断片を含む二重特異性構築物の構築
【0281】
実施例:
IgE
実施例1:IgEに対するVHH
2匹のラマを、ヒトIgE、Scripps laboratories, Cat nr. I0224、で免疫化した。以下の免疫化スキームを、表1に従って使用した。
【0282】
RNAを抽出には異なる供給源を使用した:
- 最後の抗原注射4日後と10日後との間の免疫血液150ml
- 最後の抗原注射4日後のリンパ節生検
密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque Plus Amersham Biosciences)によって、末梢血液リンパ球(PBL)を単離した。PBLおよびリンパ節を使用して総RNAを抽出(ChomczynskiおよびSacchi 1987)した。オリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用するMMLV逆転写酵素(Gibco BRL)を用いて、200μgの総RNAについてのcDNAを調製した(de Haardら、1999)。cDNAを、フェノール/クロロホルム抽出で精製し、続いてエタノール沈殿を行い、その後、鋳型として使用してVHHレパートリーを増幅した。
第1のPCRにおいて、従来の抗体遺伝子セグメント(1.6kb)および重鎖抗体遺伝子セグメント(1.3kb)の両方のレパートリーを、リーダー特異的プライマー(5'-GGCTGAGCTCGGTGGTCCTGGCT-3'(配列番号85))およびオリゴd(T)プライマー(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3'(配列番号86))を用いて増幅させた。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、重鎖抗体セグメントをコードする1.3kb断片をアガロースゲルから精製した。FR1逆方向プライマー(国際特許出願公開WO03/054016、配列ABL037〜ABL043)および同一のオリゴd(T)順方向プライマーの混合物を用いて、第2のPCRを行った。
PCR産物を、(FR1プライマーに導入された)SfiIおよび(フレームワーク4に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動に続いて、約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、ファージミドpAX004の対応する制限酵素部位に連結して、Escherichia coli TG1にエレクトロポレーションした後に、クローン化VHHのライブラリーを得た。pAX004により、c-mycタグ、ヘキサヒスチジンタグおよびgeneIII産物との融合タンパク質として個々のVHHを発現しているファージ粒子の産生が可能になる。挿入率を、ベクターベースのプライマーの組合せを用いたPCRにおいて決定した。
結果を表2に要約する。
【0283】
IgEの定常領域に対するVHH分子を選択するために、免疫化に用いられたヒトIgEの代わりにキメラIgEを用いて選択を行った。Fcεレセプターと相互作用する領域は、IgEの定常部分に位置し、さらにとりわけ図1に示すように、Cε2〜Cε3に及ぶ領域に位置している。
【0284】
PBL 4日目ライブラリー、PBL10日目ライブラリーおよびリンパ節4日目ライブラリーのプールを用いて、各々2匹のラマについて一次選択を行った。キメラIgEを5μg/mlおよび0.5μg/mlで固相にコーティングし、特定のファージを0.1Mグリシン(pH2.5)によって溶出した。
得られた結果を表3に示す。
【0285】
5μg/mlを用いた一次選択からレスキューされたファージを用いて、二次選択を行った。キメラIgEを1μg/mlで固相コーティングし、特定のファージをバフィーコート細胞またはリゾチームを用いて1時間溶出した。バフィーコート細胞はFcεレセプターを発現している細胞を含み、一方、リゾチームは無関係のタンパク質であり、コントロールとして供す。得られた結果を表4に示す。
【0286】
ニュートラアビジンコーティング管および2nMビオチン化IgEを用いて、別の2回目の選択を行った。特定のファージをバフィーコート細胞またはリゾチームを用いて1時間溶出した。バフィーコート細胞はFcεレセプターを発現している細胞を含み、一方、リゾチームは無関係のタンパク質であり、コントロールとしての役割である。得られた結果を表5に示す。
【0287】
1回目の選択から得られた個々のクローンを、固相コーティングヒトIgEまたはキメラIgEを用い、ELISAでスクリーニングした。ELISAにおいて試験されるクローンの数に対するヒトIgEおよびキメラIgEの両方への結合について陽性を記録するクローンの数を、表6にまとめる。
【0288】
ヒトおよびキメラIgE結合について陽性であるクローンを採取し、PCRによって増幅させ、HinfIで消化した。アガロースゲルでHinfIプロフィールを決定し、異なるプロフィールについて代表的なクローンを配列決定した。得られた配列を表14の配列番号1〜11に示す。
【0289】
実施例2:抗-IgE VHHの局所適用
眼の局所適用のための抗アレルギー性医薬組成物を得るために、抗-IgE VHHの溶液を以下のように調製した:
- 0.9gの塩化ナトリウム、0.02gのクエン酸ナトリウム、0.02gのパラオキシ安息香酸メチル、0.1gのクロロブタノールおよびpH6.5とするのに適切な量の酢酸を含む100mlの滅菌水に溶解した治療用量の抗IgE VHHを含む点眼液
- 治療用量の抗-IgE VHHを含む眼軟膏を、1.0gの流動パラフィンおよび100gの総混合物を得るのに適切な量のソフトパラフィンを含むように、従来法に従って調製した。
【0290】
実施例3:抗-IgE製剤
IgEのその高親和性レセプターへの結合を阻害する抗-IgE VHHは、アレルギーの処置において潜在的な治療的価値を有する。
高度に精製されたVHH#2H11を製剤用緩衝液中に透析し、続いて凍結乾燥用分散保護剤(lyoprotectant)を等張濃度で添加した。等張性処方を以下のように作成した:25mg/mlのVHH#2H11を、抗体1モル当たり500モルの糖を含む5mMヒスチジン緩衝液(pH6)中に処方した。この処方物をBWFI(0.9%ベンジルアルコール)により再構築し、等張性糖濃度340nM、pH6で20mMヒスチジン中に抗体が100mg/mlとなる体積にした。等張性処方物中の抗IgE VHHの結合活性を、IgEレセプター阻害アッセイで測定した。その後の4℃で3ヶ月までの間の貯蔵において、結合活性は本質的に不変であることを見出した。
【0291】
TNF-α
実施例4:抗TNF-αの選択
2匹のラマを、実施例1に記載したスケジュールに従い、注射1回当たり100μgのヒトTNF-αで免疫化した。ライブラリー(短期および長期免疫化手順)を構築し、インビトロでビオチン化したTNF-αを用いて選択した。ビオチン化をMagniら(Anal Biochem 2001、298、181-188)に記載されるように行った。
【0292】
TNF中のビオチンの取り込みを、SDS-PAGE分析およびエクストラアビジン-アルカリホスファターゼ抱合体(Sigma)を用いた検出によって評価した。
【0293】
修飾タンパク質の機能性を、固相コーティングされた組換体p75レセプターに結合する能力について評価した。{ビオチン化}1回目の選択において、400ngおよび50ngのビオチン化TNF-αを、マイクロタイタープレート(NUNC maxisorb)のウェルにコーティングされたニュートラアビジン(Pierce;PBS中に10μg/ml)上に捕捉した。これらのウェルにファージ(1.2×1010 TU-s)を添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄(PBS-tweenで20回およびPBSで2回)の後、拘束されたファージを、過剰のレセプター(CD120bまたはp75の細胞外ドメイン;10μM)を添加して溶出するか、またはインタクトなTNFレセプターを発現している細胞を用いて溶出した。30,000と100,000との間のファージクローンを、急速スキームを用いて免疫化したラマ由来のライブラリーからTNFで溶出し、一方、BSA(3μM;陰性コントロール)で溶出した場合にこれらの数の約10%を得た。
【0294】
他のライブラリー(長期免疫化スキーム)から、10倍多い数をレセプターおよびBSAで溶出し、以前に観察されたのと同じ濃縮係数(10)を得た。新しいファージを、50ng TNF(急速免疫化スキーム)および400ng TNF(緩慢なスキーム)の溶出液から調製し、400ng、50ngおよび10ngの捕捉されたTNF(投入量:1.2×1010ファージ/ウェル)についての別の回の選択に使用した。約2.5×107のファージを、400ngおよび50ngの捕捉されたTNFを含むウェルからレセプター(10μM)で溶出し、そして約2×106のファージを、10ngのTNFでウェルから溶出した。一方、陰性コントロール(10μMのBSAで溶出)は、これらの数の5〜10%のみを得た。得られた溶出ファージの数により、レセプターでの溶出は特異的であり、TNFのレセプター結合部位に結合するVHH断片を溶出すべきであることが示唆される。
【0295】
培養上清中へのVHHの産生のために、個々のクローンを採取し、マイクロタイタープレート中で増殖させた。エクストラアビジンコーティングプレート上に捕捉されたTNFを用いたELISAスクリーニングにより、約50%の陽性クローンが示された。HinFIフィンガープリント分析により、14個の異なるクローンが選択されたことが示され、これらのクローンを増殖させ、50mlスケールに誘導した。
【0296】
ペリプラズム画分を調製し、VHH断片をIMACで精製し、アッセイに使用して、それらの拮抗特性、すなわちTNFのそのレセプターとの相互作用を防止する特性を分析した。この目的のために、VHH(1μMおよび0.3μM)を、TNF-α(3nMおよび0.7nM)と共に室温で1.5時間インキュベートした(0.2%カゼイン/PBS中で)。この混合物100μlを、レセプターの細胞外ドメインを固定化したマイクロタイタープレートのウェルに移した。1時間のインキュベーションの後、このプレートを洗浄し、拘束されたTNFを、アルカリホスファターゼ抱合ストレプトアビジンを用いて検出した。三量体TNF分子の結合をおそらく支持するmABが二量体の外観であるのに対し、VHHは真の単量体であるという事実にもかかわらず、2つのVHH断片により、3μMおよび0.3μMのインタクトmAB Remicade(Infliximab;Centercor)を用いて得られたものと同様の拮抗プロフィールを得た。TNFレセプターを発現しているヒト細胞株およびマウス肉腫細胞株WEHIを用いて、VHHの効力を示す同様の実験を行った。得られた配列を表14の配列番号12〜13に示す。
【0297】
実施例5:ヒトTNFαに特異的な抗体断片の安定性試験
経口投与されたタンパク質は、胃の酸性pHで変性され、同様にペプシンによって分解される。我々らは、ペプシンに対するVHHTNF3Eの耐性を研究するために胃の環境を模倣すると予想される条件を選択した。ヒトTNFαに特異的なVHHであるTNF3Eを、E.coliにおいて組換えタンパク質として産生させ、IMACおよびゲル濾過クロマトグラフィーによって均質に精製した。精製後のタンパク質濃度を、280nmで計算されたモル吸光係数を用いて分光光度的に決定した。それぞれpH2、pH3およびpH4のMcIlvaine緩衝液(J.Biol.Chem.49、1921、183)で100μg/mlに希釈した溶液を調製した。これらの溶液を37℃で15分間インキュベートし、その後にブタ胃粘膜ペプシンを1/30の体積比で添加した。プロテアーゼ添加の60分後に試料を収集し、直ちに0.1%カゼインを含むPBS(pH7.4)で100倍に希釈して、ペプシンを不活性化した。この試料から、7つのさらなる3倍希釈物を調製し、ELISAによって機能的抗体断片の存在を評価した。プロテアーゼ添加前に収集したアリコートから調製した同一の希釈物を、基準として供した。ELISAアッセイにおいて、ビオチン化TNFαを、ニュートラアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートのウェル中に捕捉した。ペプシン処理試料および基準試料の両方について、同様の試料段階希釈物を調製し、これらの希釈物100μlをウェルに添加した。1時間のインキュベーションの後、これらのプレートを洗浄した。捕捉されたTNFαに結合しているVHHの検出のために、ポリクローナルウサギ抗VHH抗血清(R42)および抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ抱合体を用いた。洗浄の後、これらのプレートをリン酸パラニトロフェニルで発色させた。図2にプロットされたこれらのデータは、消化条件に曝露された全ての試料ならびに基準試料について、同様の曲線を示す。このことは、VHH 3Eが、選択された全ての条件下でその機能的活性を本質的に保持していることを示す。
【0298】
実施例6:マウスにおける抗ヒトTNFα特異的VHHの経口投与
抗ヒトTNFα特異的VHH#TNF3E(100倍希釈PBS中100μg/ml)を含む抗体溶液を調製した。3匹のマウスに、初めに12時間飲料水を与えず、続いて次の2時間の間、抗体溶液を自由に摂取させた。その後、これらのマウスを屠殺し、それらの胃を切開した。1%BSAを含む500μlのPBSでこれらの胃を洗い流すことによって、直ちに胃の内容物を採集した。続いて、洗い流された物質を用いて、1/5希釈から始まる段階的な3倍希釈物を非希釈液の物質から調製した。これらの試料100μlを、ヒトTNFαでコーティングされたマイクロタイタープレートの個々のウェルに移した。1時間のインキュベーションおよびその後の大規模な洗浄の後、免疫反応性物質の存在をポリクローナルウサギ抗VHH抗血清(R42)により評価し、次いで抗ウサギアルカリホスファターゼ抱合体と共にインキュベーションした。ELISAはリン酸パラニトロフェニルを用いて発色させた。10分後に得られたELISAシグナルは、これらのマウスの胃洗浄物中の機能性VHH TNF3Eの存在を明らかに示した。標準曲線と比較することにより、我々らは、試験した3匹のマウスについて、胃洗浄液中の機能性抗体断片の濃度が1.5μg/ml、12.6μg/mlおよび8.6μg/mlであることを決定した。
【0299】
実施例7: IBDの動物モデルにおける効力
1)慢性大腸炎の動物モデル
種々の投与経路によって適用される二価のVHH構築物の効力を、BALB/cマウスにおけるDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)で誘導された慢性大腸炎のモデルにおいて評価した。このモデルは、Okayasuら[Okayasuら、Gastroenterology 1990; 98:694-702]によって最初に記載され、Kojouharoffら[G. Kojouharoffら、Clin. Exp. Immunol. 1997;107: 353-8]によって改変された。これらの動物を、11週齢でCharles River Laboratories、ドイツから入手し、体重が21gと22gとの間に達するまで動物施設で飼育した。4回のDSS処置サイクルによって、これらの動物において慢性大腸炎を誘発した。各サイクルは、DSSを5%(w/v)の濃度で飲料水と共に供したDSS処置間隔(7日間)および飲料水中にDSSが存在しない回復間隔(12日間)から構成された。最後の回復期間を12日間から21日間に延長して、処置時に急性炎症よりもむしろ慢性炎症を示す炎症状態を提供した。最後の回復間隔の後で、マウスを8匹のマウスの群に無作為に割り当て、VHH-構築物で処置を開始した。処置間隔は2週間であった。処置間隔の終了から一週間後に動物を屠殺し、腸を切開して組織学的に検査した。実験の設定を図3に概略的に示す。
【0300】
2)VHH処置スケジュール
VHH処置期間の間、マウス(1群あたり8匹)を二価VHH#3F(VHH#3F-VHH#3F;配列番号14)で、100μgの二価VHH 3Fの胃内適用または静脈内適用によって、連続14日間毎日処置した。さらなる動物の群を、二価VHH#3Fで14日間の間、1日置きに直腸処置した。全ての処置群において、二価VHH#3Fの100μgの用量を、緩衝溶液中1mg/mlの濃度で適用した。陰性コントロール群は、他の点では同一の条件下で100μlのPBSを受けた。処置スケジュールを表7に示す。
【0301】
3)結果
マウスを屠殺した後、体重を測定し、結腸を切開した。切開した結腸の長さを測定し、結腸の組織学的分析をヘマトキシリン-エオシン(HE)染色(標準条件)によって評価した。陰性コントロール(PBS処置)と比較して、二価ナノボディ3Fで処置した群は、延長した結腸長さならびに改善された組織学的スコアを示し[G.Kojouharoffら、Clin. Exp. Immunol. 1997;107: 353-8]、したがって処置の効力を実証した。
【0302】
MMP12
実施例8:免疫化
1匹のラマ(ラマ5)を、MMP12の組換えヒト触媒ドメインで、適切な動物に優しいアジュバントであるStimune(Cedi Diagnostics BV、オランダ)を用いて筋肉注射で免疫化した。この組換え触媒ドメインを、H.Tschesche教授、Universitaet Bielefeldから入手し、5mM Tris/HCl pH=7.5、100mM NaCl、5mM CaCl2中の56μg/mlの溶液として加えた(Lang, Rら、(2001))。ラマは、一週間間隔で6回の注射、最初の2回の注射は各々10μgのMMP-12を含み、最後の4回の注射は各々5μgのMMP-12を含む、を受けた。最後の免疫化から4日後、リンパ節生検(LN)および血液試料(PBL1)150mlを動物から採集し、血清を調製した。最後の免疫化から10日後、第2の血液試料(PBL2)150mlを採取し、血清を調製した。ラマ重鎖免疫グロブリン(HcAb)の遺伝子供給源として末梢血液リンパ球(PBL)を、Ficoll-Paque勾配(Amersham Biosciences)を用いて血液試料から単離し、5×108個のPBLを得た。抗体の最大多様性は、採取したBリンパ球の数、すなわちPBLの数の約10%に等しいことが予想される(5×107個)。ラマにおける重鎖抗体の画分は、Bリンパ球の数の20%までである。従って、血液試料150ml中のHcAbの最大多様性を、107個の異なる分子として計算する。総RNAを、ChomczynskiおよびSacchi(1987)の方法に従って、PBLおよびリンパ節から単離した。
【0303】
実施例9:レパートリークローニング
オリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用し、MMLV逆転写酵素(Gibco BRL)を用いて、200μgの総RNAについてcDNAを調製した(de Haardら、1999)。cDNAを、フェノール/クロロホルム抽出で精製し、続いてエタノール沈殿を行い、その後、VHHレパートリーを増幅させるための鋳型として使用した。
第1のPCRにおいて、従来の抗体遺伝子セグメント(1.6kb)および重鎖抗体遺伝子セグメント(1.3kb)の両方のレパートリーを、リーダー特異的プライマー(5'-GGCTGAGCTCGGTGGTCCTGGCT-3'(配列番号87))およびオリゴd(T)プライマー(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3'(配列番号88))を用いて増幅させた。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、重鎖抗体セグメントをコードする1.3kb断片をアガロースゲルから精製した。FR1逆方向プライマー(国際特許出願公開WO03/054016、配列ABL037〜ABL043)および同一のオリゴd(T)順方向プライマーの混合物を用いて、第2のPCRを行った。
PCR産物を、(FR1プライマーに導入された)SfiIおよび(フレームワーク4に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動に続いて、約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、ファージミドpAX004の対応する制限酵素部位に連結して、Escherichia coli TG1にエレクトロポレーションの後に、クローン化VHHのライブラリーを得た。pAX004により、c-mycタグ、ヘキサヒスチジンタグおよびgeneIII産物を含む融合タンパク質として個々のVHHを発現しているファージ粒子の産生が可能になる。TG1細胞のエレクトロポレーションの後に得られた多様性を表8に示す。挿入率を、ベクターベースのプライマーの組合せを用いたPCRにおいて決定した。
【0304】
実施例10:ライブラリーのレスキューおよびファージ調製
ライブラリーを、2%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む10mlの2×TY培地中で37℃にてOD600nmが0.5に到達するまで増殖させた。M13KO7ファージ(1012個)を添加し、混合物を37℃で2回×30分間、最初は振盪せず、次に100 rpmで振盪してインキュベートした。細胞を、室温にて4,500 rpmで5分間遠心分離した。細菌のペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む50mlの2×TY培地に再懸濁し、250 rpmで活発に振盪させながら37℃で一晩インキュベートした。一晩の培養物を4℃にて4,500 rpmで15分間遠心分離した。ファージを氷上で30分間PEG沈殿させ(20%ポリエチレングリコールおよび1.5M NaCl)、4,500 rpmで20分間遠心分離した。このペレットを1mlのPBSに再懸濁した。ファージを再び氷上で10分間PEG沈殿させ、4℃にて14,000rpmで10分間遠心分離した。このペレットを1mlの0.5%スキムミルクまたはPBS-BSA[1mg/ml](Sigma, Cat NrA3059)に溶解した。
【0305】
実施例11:ヒトMMP-12特異的VHHの選択
ファージを、実施例10に上述したようにレスキューおよび調製した。
MMP-12特異的結合剤を得るために、2つのアプローチを進めた:
【0306】
a.PVDF膜上にコーティングされた不活性MMP-12
100ngのヒトMMP-12触媒ドメイン(33μlのPBS中に希釈)を、製造元のガイドラインに従ってPVDF(Immobilon-P, Millipore, Cat Nr IPVH 15150)の小片(1cm2)上にスポットし、MeOH固定化により不活性MMPを得た。コントロールとして、等量のリゾチーム(Sigma, Cat Nr L-6876)および33μlのPBSもまたスポットし、固定化した。これらの膜片を、4℃にて5%スキムミルク中で一晩ブロッキングし、PBSで3回洗浄した後、ファージ調製物を加えた(5%スキムミルク1ml中に4×109個のファージ)。ファージおよび膜片(1,5ml管中)を室温にて3時間回転させながらインキュベートした。次いで、これらの膜を15ml管に移し、10mlの[PBS+0.05% Tween-20]で6回洗浄した。これらの膜を500μlのTEA[5mlのH2O中に70μl]に10分間回転させながら曝露することにより、ファージを溶出させた。溶出したファージを含む溶液を除去し、pHを1Mトリス(pH=7.5)で中和した。
対数増殖期のTG1細胞を、溶出したファージで感染させ、段階希釈物を選択培地にプレートした。MMP-12コーティングされた膜から得られた選択後の形質導入されたTG1コロニーの数を、リゾチームを固定化した陰性コントロールと比較することによって、濃縮度を決定した。濃縮を示すMMP選択由来の細菌を擦り落とし、2回目の選択に使用した。
これらの細菌をヘルパーファージで重感染させて組換えファージを産生し、MMP-12に対する二次選択を行った(実施例9に記載のように)。MMP-12を上記のように固定化し、この膜を5%スキムミルク中で4℃にて一晩ブロッキングした。ファージ(1ml中に2.5×109個)を調製してこれらの膜に曝露し、1回目の選択時と同様にMMP結合性についてさらに選択した。対数増殖期のTG1細胞を、溶出させてpHを中和したファージで感染させ、選択培地にプレートした。MMP-12コーティングされた膜由来の形質導入されたTG1コロニーの数を陰性コントロール(固定化リゾチーム)と比較することによって、濃縮度を決定した。
【0307】
b.ニトロセルロース膜上にコーティングされた活性MMP-12
250ngのヒトMMP-12触媒ドメイン(Biomol Research laboratories Inc, SE 138-9090)を、納入業者のガイドラインに従って、Hybond-C extra(Amersham Biosciences, Cat Nr RPN 303E)の小片上に直接スポットした。コントロールとして、等容量のPBSをスポットした。スポット領域を含む直径5mmの円板をそれぞれの膜から切り抜き、1.5ml管に移して、1mlのBSA-PBS[1mg/ml]中で4℃にて一晩ブロッキングした。これらの円板を15mlのPBS中で3回洗浄し、続いて、マイクロタイタープレートウェル中の200μlのファージ調製物に移して曝露した。これらのファージは、室温にて15分間BSA-PBS中でプレインキュベートしたことを除いて、実施例9のように調製した。これらの円板をPBS/0.05%Tween-20で5回洗浄し、PBS-BSAを用いて室温にて2時間ブロッキングした。これらの膜を100μlのTEA[5mlのH2O中に70μl]に10分間回転させながら曝露することによって、ファージを溶出させた。溶出したファージを含む溶液を除去し、pHを1Mトリス(pH=7.5)で中和した。
対数増殖期のTG1細胞を、溶出したファージで感染させ、選択培地にプレートした。MMP-12膜円板上における選択後に形質導入されたTG1コロニーの数を陰性コントロール(PBS)と比較することによって濃縮度を決定した。MMP-12選択由来の細菌を擦り落とし、2回目の選択に使用した。
これらの細菌をヘルパーファージで重感染させて組換えファージを産生し、MMP-12に対する二次選択を行った(実施例9に記載のように)。MMP-12を上記のように固定化し、この膜をPBS-BSA[1mg/ml]中で4℃にて一晩ブロッキングした。ファージ(1ml中に2.5×109個)を調製してこれらの膜に曝露し、1回目の選択時と同様にMMP結合性についてさらに選択した。対数増殖期のTG1細胞を、溶出させて中和したファージで感染させ、選択培地にプレートした。MMP-12コーティングされた膜由来の形質導入されたTG1コロニーの数を、陰性コントロールと比較することによって濃縮度を決定した。
【0308】
実施例12:選択されたVHH'sの特異性
個々のクローンを採取し、マイクロタイタープレート中の0.1%グルコースおよび100mg/mlのアンピシリンを含む150mlの2×TY中で、37℃にてOD600nmが0.6になるまで増殖させた。次いで、1mM IPTGおよび5mM MgSO4を添加し、この培養物を37℃にて4時間インキュベートした。これらの細胞のペリプラズム抽出物(PE、調製法は実施例13を参照)についてELISAを行い、選択されたクローンの特異性を試験した。
固相コーティングされたヒトMMP-12を用いて選択されたクローンを試験するために、プレートを1μg/mlの濃度のヒトMMP-12触媒ドメインで4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05%Tween-20で5回洗浄した。ウェルを1%スキムミルクで室温にて2時間ブロッキングした。ペリプラズム抽出物(100μl)をこれらのウェルに加え、室温にて1時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。抗c-myc抗体の次に抗マウス-HRPおよびABTS/H2O2を基質として使用して、検出を行った。プレートを室温にて30分間のインキュベーションの後に405nmで読み取った。
膜固定化ヒトMMP-12を使用して選択されたクローンを試験するために、50ngのヒトMMP-12触媒ドメイン試料を、製造元のガイドラインに記載されるようにPVDF膜上にスポットした。50ngのリゾチームを陰性コントロールとしてスポットした。これらの膜を、4℃にて一晩スキムミルクでブロッキングし、PBSで5回洗浄して1,5ml管に移した。ペリプラズム抽出物(100μl)を1%スキムミルク中で10倍希釈し、膜(2cm2)当たり1mlを加えて室温にて1時間回転させた。膜をPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。抗c-myc抗体の次に抗マウス-HRPおよびDAPを基質として使用して、検出を行った。明瞭なスポットが現れるまで、膜を基質と共に室温でインキュベートした。MMP-12特異的結合剤であると判定された7つのクローンを、表14の配列番号15〜21に示す。
他のMMPに対する非特異的結合についてチェックするために、同様のアプローチを続いて行い、そのアプローチにおいて、50ngのMMP1、MMP2、MMP3、MMP7、MMP9およびMMP13の活性触媒ドメイン(全て、Biomol Research laboratories Incより)をHybond C-extra上に固定化した。これらの膜を4℃にて一晩スキムミルクでブロッキングし、PBSで5回洗浄し、1,5ml管に移した。ペリプラズム抽出物(100μl)を1%スキムミルク中で10倍希釈し、膜(2cm2)当たり1mlを加えて室温にて1時間回転させた。膜をPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。抗c-myc抗体の次に抗マウス-HRPおよびDAPを基質として使用して、検出を行った。明瞭なスポットが現れるまで、膜を基質とともに室温でインキュベートした。MMP-12以外のいずれのMMPにおいても、7つの選択されたVHHクローンの有意な検出は観察されなかった。
【0309】
PVDF膜固定化ヒトMMP-12触媒ドメインに対して選択された結合剤に関する結果を表14の配列番号15〜21に示す。
Hybond膜固定化によって選択されたMMP-12阻害剤に関する結果を表14の配列番号22に示す。
【0310】
実施例13:選択されたVHH'sの多様性
M13逆方向プライマーおよびgenIII順方向プライマーを使用してPCRを行った。Hinf1フィンガープリント法を使用してこれらのクローンを分析し、代表的なクローンを配列決定した。配列決定分析を行った結果、Immobilon-P選択について表14の配列番号15〜21に示す配列を得、Hybond-Cについて表14の配列番号22に示す配列を得た。
【0311】
実施例14:VHHの発現および精製
クローンを、振盪フラスコ中の0.1%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む50mlの2×TY中で、37℃にてOD600nmが2になるまで増殖させた。1mM IPTGおよび5mM MgSO4を添加して、培養物を37℃にてさらに3時間インキュベートした。培養物を4℃にて4,500 rpmで10分間遠心分離した。このペレットを-20℃で一晩凍結させた。次に、このペレットを室温で40分間解凍し、1mlのPBS/1mM EDTA/1M NaCl中に再懸濁し、1時間氷上で振盪した。4,500 rpmで4℃にて10分間遠心分離することによってペリプラズム画分を単離した。VHHを含む上清をNi-NTA(Qiagen)に負荷し、Aekta FPLCクロマトグラフィーシステム(Amersham Biosciences)において均質に精製した。VHHを、25mMクエン酸pH=4,0を用いてNi-NTAから溶出し、25mMクエン酸pH=4,0中で平衡化した陽イオン交換カラムに直接加えた(HR5/5カラム中のSource 30S, Amersham Biosciences)。VHHを、PBS中の1M NaClで溶出し、さらにMMP-12アッセイ緩衝液[50mM HEPES、100mM NaCl、0,05% Brij-35]で平衡化したサイズ排除カラム(Superdex 75 HR10/30、Amersham Biosciences)で精製した。VHHの収率を吸光係数およびピーク表面積によって計算した。
【0312】
実施例15:選択されたVHHの機能的特徴づけ:比色アッセイにおけるVHHによるMMP-12のタンパク質分解活性の阻害
VHHを発現させ、実施例13に記載されるように精製した。精製されたVHHを、BIOMOL Research Laboratories社からの創薬のためのMMP-12比色アッセイキット(MMP-12 Colorimetric Assay Kit for Drug Discovery)(AK-402)を使用して、ヒトMMP-12触媒ドメインを阻害する能力について分析した。キットに記載された実験方法条件に従った。
このキットと共に提供された阻害剤(PI115-9090)を陽性コントロールとして推奨濃度で使用した。VHHを7μMの濃度で加えた。BIOMOLキットと共に提供されたマイクロタイタープレート中でアッセイを行い、MMP-12タンパク質分解活性を37℃にてプレートリーダー(405nm)中で追跡した。
1つの阻害性VHHおよび1つの不活性VHHの結果を、陽性コントロールと共に図4に示す。
ニトロセルロース上にコーティングされた活性MMP-12を使用した選択(実施例12)由来の唯一のVHH分子(クローンP5-29)が、ヒトMMP-12触媒ドメインの阻害を示した。他のMMP-12結合剤は全て(クローンP5-5のみ図示する)、MMP-12に結合するにもかかわらず、MMP-12を阻害しなかった。
【0313】
実施例16:肺送達のための抗-MMP12 VHHの製剤
抗体の100%製剤を、1.0mlの脱イオン水中に5mgのVHHを溶解させることによって調製した。溶液のpHは6.5であった。抗体の90%製剤を、1.0mlの2mMクエン酸緩衝液中に4.5mgのVHHを溶解させることによって調製した。抗体の70%製剤を、1mlのpH6.5クエン酸緩衝液中の1mg/mlの賦形剤に3.5mgのVHHを溶解させることによって調製した。使用した様々な種類の賦形剤は以下のごとくであった:糖賦形剤:ショ糖、ラクトース、マンニトール、ラフィノースおよびトレハロース。高分子賦形剤:フィコールおよびPVP。タンパク質賦形剤:HSA。
上記製剤の乾燥粉末を、Buchi Spray Dryerを使用した噴霧乾燥によって生成した。
粒子サイズ分布を遠心沈降によって測定した。
【0314】
インターフェロンγ
実施例17:免疫化
4匹のラマ(ラマ5、ラマ6、ラマ22およびラマ23)を、ヒトIFN-γ(PeproTech Inc, USA, Cat Nr: 300-02)で、適切な動物に優しいアジュバントであるStimune(Cedi Diagnostics BV、オランダ)を用いて筋肉注射で免疫化した。2匹のラマ(ラマ29およびラマ31)を、マウスIFN-γ(Protein Expression & Purification core facility, VIB-RUG、ベルギー)で、適切な動物に優しいアジュバントであるStimune(Cedi Diagnostics BV、オランダ)を用いて筋肉注射で免疫化した。これらのラマは、一週間間隔で6回の注射を受け、初めの2回の注射はそれぞれ100μgのIFN-γを含み、最後の4回の注射はそれぞれ50μgのIFN-γを含んでいた。最後の免疫化から4日後に、150mlの血液試料(PBL1)およびリンパ節生検(LN)を各動物から採集し、血清を調製した。最後の免疫化の10日後、第2の血液試料(PBL2)150mlを各動物から採取し、血清を調製した。ラマ重鎖免疫グロブリン(HcAb)の遺伝子供給源として末梢血液リンパ球(PBL)をFicoll-Paque 勾配(Amersham Biosciences)を用いて血液試料から単離し、5×108個のPBLを得た。抗体の最大多様性は、サンプリングしたBリンパ球の数、すなわちPBLの数の約10%に等しいことが予想される(5×107個)。ラマにおける重鎖抗体の画分は、Bリンパ球の数の20%までである。従って、血液試料150ml中のHcAbの最大多様性を、107個の異なる分子として計算する。総RNAを、ChomczynskiおよびSacchi(1987)の方法に従って、PBLおよびリンパ節から単離した。
【0315】
実施例18:レパートリークローニング
オリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用し、MMLV逆転写酵素(Gibco BRL)を用いて、200μgの総RNAについてcDNAを調製した(de Haardら、1999)。cDNAを、フェノール/クロロホルム抽出で精製し、続いてエタノール沈殿を行い、その後、VHHレパートリーを増幅させるための鋳型として使用した。
第1のPCRにおいて、従来の抗体遺伝子セグメント(1.6kb)および重鎖抗体遺伝子セグメント(1.3kb)の両方のレパートリーを、リーダー特異的プライマー(5'-GGCTGAGCTCGGTGGTCCTGGCT-3'(配列番号89))およびオリゴd(T)プライマー(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3'(配列番号90))を用いて増幅させた。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、重鎖抗体セグメントをコードする1.3kb断片をアガロースゲルから精製した。FR1逆方向プライマー(国際特許出願公開WO03/054016、配列ABL037〜ABL043)および同一のオリゴd(T)順方向プライマーの混合物を用いて、第2のPCRを行った。
PCR産物を、(FR1プライマーに導入された)SfiIおよび(フレームワーク4に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動に続いて、約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、ファージミドpAX004の対応する制限酵素部位に連結して、Escherichia coli TG1のエレクトロポレーションの後に、クローン化VHHのライブラリーを得た。pAX004により、c-mycタグ、ヘキサヒスチジンタグおよびgeneIII産物を含む融合タンパク質として個々のVHHを発現しているファージ粒子の産生が可能になる。TG1細胞のエレクトロポレーションの後に得られた多様性を表1に示す。挿入率を、ベクターベースのプライマーの組合せを用いたPCRにおいて決定した。
【0316】
実施例19:ライブラリーのレスキューおよびファージ調製
ライブラリーを、OD600nmが0.5に到達するまで、2%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む10mlの2×TY培地中で37℃にて増殖させた。M13KO7ファージ(1012)を添加し、混合物を37℃で2回×30分間、最初は振盪せず、次に100 rpmで振盪してインキュベートした。細胞を、室温にて4,500 rpmで5分間遠心分離した。細菌のペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む50mlの2×TY培地に再懸濁し、250 rpmで活発に振盪させながら37℃で一晩インキュベートした。一晩の培養物を4℃にて4,500 rpmで15分間遠心分離した。ファージを氷上で30分間PEG沈殿(20%ポリエチレングリコールおよび1.5M NaCl)させ、4,500 rpmで20分間遠心分離した。このペレットを1mlのPBSに再懸濁した。ファージを再び氷上で10分間PEG沈殿させ、4℃にて14,000 rpmで10分間遠心分離した。このペレットを1mlのPBS-0.1%カゼインに溶解した。
【0317】
実施例20:ヒトIFNγ特異的VHHの選択
ファージを、実施例17に上述したようにレスキューおよび調製した。
IFN-γ特異的結合剤を得るために、以下の2つのアプローチを進めた:
【0318】
a.固相コーティングされたIFN-γ
マイクロタイターウェルを10〜0.4μg/ウェルの異なる濃度でのヒトIFN-γで、4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。ウェルをPBS+1%カゼインで室温にて2時間ブロッキングした。ファージを室温で2時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.05% Tween-20で20回洗浄した。最後の2回の洗浄はPBSを用いて行った。特定のファージを1〜2μgのIFN-γ R1(R&D Systems, Cat Nr: 673-IR/CF)を用いて1時間溶出した。陰性コントロールとして10μg卵アルブミン(Ovalbumine)(Sigma,A2512)を無関係なタンパク質として用いて溶出を行った。対数増殖期のTG1細胞を、溶出したファージで感染させ、選択培地にプレートした。溶出のためにレセプターを用いた選択後に形質導入されたTG1コロニーの数を、溶出のために卵アルブミンを用いた陰性コントロールと比較することによって濃縮度を決定した。濃縮を示す選択由来の細菌を擦り落とし、2回目の選択に使用した。
これらの細菌を実施例3に記載のようにヘルパーファージで重感染させて組換えファージを産生した。マイクロタイターウェルを2〜0.1μg/ウェルの異なる濃度でのIFN-γで、4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05%Tween-20で5回洗浄した。ウェルをPBS+1%カゼインで室温にて2時間ブロッキングした。ファージを室温で2時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.05%Tween-20で20回洗浄した。最後の2回の洗浄はPBSを用いて行った。特定のファージを、1〜2μgのIFN-γ R1または無関係なタンパク質として10μg卵アルブミンを用いて1時間、引き続いて4℃にて一晩溶出し、引き続いてファージを0.1MグリシンpH2.5を用いて室温にて15分間溶出し、1M Tris-HCl pH=7.5で中和した。対数増殖期のTG1細胞を、溶出させて中和したファージで感染させ、選択培地にプレートした。溶出のためにレセプターを用いた選択後に形質導入されたTG1コロニーの数を、溶出のために卵アルブミンを用いた陰性コントロールと比較することによって濃縮度を決定した。
【0319】
b.ビオチン化IFN-γ
マイクロタイターウェルを2μg/mlの濃度のニュートラアビジンで、4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。ウェルをPBS+1%カゼインで室温にて2時間ブロッキングした。ビオチン化ヒトIFN-γを100〜10ng/ウェルの濃度で4℃にて一晩捕捉した。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。ファージを室温で2時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.05% Tween-20で洗浄した。最後の2回の洗浄はPBSを用いて行った。特定のファージを1〜2μgのIFN-γ R1(R&D Systems, Cat Nr: 673-IR/CF)を用いて1時間溶出した。陰性コントロールとして10μg卵アルブミン(Sigma, A2512)を無関係なタンパク質として用いて溶出を行った。対数増殖期のTG1細胞を、溶出したファージで感染させ、選択培地にプレートした。溶出のためにレセプターを用いた選択後に形質導入されたTG1コロニーの数を、溶出のために卵アルブミンを用いた陰性コントロールと比較することによって濃縮度を決定した。濃縮を示す選択由来の細菌を擦り落とし、2回目の選択に使用した。
細菌をヘルパーファージで重感染させて組換えファージを産生した。マイクロタイターウェルを、2μg/mlの濃度でのニュートラビジンで4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。ウェルをPBS+1%カゼインで室温にて2時間ブロッキングした。ビオチン化ヒトIFN-γを20〜2.5ng/100μlの濃度で4℃にて一晩捕捉した。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄した。ファージを室温で2時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.05%Tween-20で20回洗浄した。最後の2回の洗浄はPBSを用いて行った。特定のファージを、1〜2μgのIFN-γ R1または無関係なタンパク質として10μg卵アルブミンを用いて1時間、引き続いて4℃にて一晩溶出し、引き続いてファージを0.1MグリシンpH2.5を用いて室温にて15分間溶出し、1M Tris-HCl pH=7.5で中和した。対数増殖期のTG1細胞を、溶出させて中和したファージで感染させ、選択培地にプレートした。溶出のためにレセプターを用いた選択後に形質導入されたTG1コロニーの数を、溶出のために卵アルブミンを用いた陰性コントロールと比較することによって濃縮度を決定した。
【0320】
実施例21:選択されたVHH'sの多様性
M13逆方向プライマーおよびgenIII順方向プライマーを使用してPCRを行った。Hinf1フィンガープリント法を使用してこれらのクローンを分析し、代表的なクローンを配列決定した。配列決定分析を行った結果、ヒトIFN-γについて表4に示す配列を得た(配列番号45〜70)。
【0321】
実施例22:VHHの発現および精製
WK6 Escherichia coli細胞へのDNAの形質転換後に、小規模発現を開始した。
クローンを、振盪フラスコ中の0.1%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む50mlの2×TY中で、37℃にてOD600nmが2になるまで増殖させた。1mM IPTGおよび5mM MgSO4を添加して、培養物を37℃にてさらに3時間インキュベートした。培養物を4℃にて4,500 rpmで10分間遠心分離した。このペレットを-20℃で一晩凍結させた。次に、このペレットを室温で40分間解凍し、1mlのPBS/1mM EDTA/1M NaCl中に再懸濁し、1時間氷上で振盪した。4,500 rpmで4℃にて10分間遠心分離することによってペリプラズム画分を単離した。VHHを含む上清をTALON(Clontech)に負荷し、均質に精製した。VHHの収率を吸光係数によって計算した。
【0322】
実施例23:抗IFNγ VHH'sの局所適用
1:眼の局所適用のための抗アレルギー性医薬組成物を得るために、少なくとも1つの抗IFN-γ VHHの溶液を以下のように調製した:
- 0.9gの塩化ナトリウム、0.02gのクエン酸ナトリウム、0.02gのパラヒドロキシ安息香酸メチル、0.1gのクロロブタノールおよびpH6.5とするのに適切な量の酢酸を含む100mlの滅菌水に、治療用量の抗IFNγ VHHを溶解して含む点眼液
- 治療用量の抗IFNγ VHHを含む眼軟膏を、1.0gの流動パラフィンおよび100gの総混合物を得るのに適切な量のソフトパラフィンを含むように、従来法に従って調製した。
2:抗炎症性医薬塗布物を得るために、本発明の局所用の調製品は、少なくとも1つの抗IFNγ VHHおよび薬学的に許容されるキャリアを含んだ。これらを以下のように調製した:
- 基礎クリームの調製
基礎クリーム調製用の試薬は、以下のとおりである(100kgの基礎クリームに対する含量):ジメチルシリコンオイル(17kg)、流動パラフィン(9kg)、ステアリン酸(7.5kg)、セチルアルコール(1kg)、ステアリルアルコール(3kg)、グリセロール(20kg)、エチルパラベン(0.1kg)、Peregal A-20(0.45kg)、柔軟剤SG(0.85kg)、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)(41.1kg)。
ステンレス鋼タンクを恒温水浴中に設置し、約10分間かけて80℃に加熱した。この液体を徹底的に混合した。次いで、乳化および均質化装置を開口したステンレス鋼タンク中に設置し、この混合物を完全に乳化するまで3500rpmで20分間攪拌した。この混合物が半固形クリームになるまで、恒温水浴の温度を室温まで自然に冷却した。この混合物は、絶えず攪拌されていた。
- 液状の抗体混合物の調製
VHH#MP3B1SRAを実施例22にしたがって調製した。凍結乾燥した抗体を、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)で2mg/mlの濃度に再構成した。1000gの基礎クリームに対して45mgのVHH#MP3B1SRA抗体を添加した。
【0323】
治療用VHH断片
実施例24:抗-TNFα VHH#3EのVHH-CDR3断片の発現
VHH#3EのCDR3領域を、フレームワーク4領域に位置するセンスプライマー(順方向:CCCCTGGCCCCAGTAGTTATACG(配列番号91))およびフレームワーク3領域に位置するアンチセンスプライマー(逆方向:TGTGCAGCAAGAGACGG(配列番号92))を用いて増幅した。
pAX10中のCDR-3断片をクローン化するために、2回目のPCR増幅を、必要な制限酵素部位を導入する以下のプライマーを用いて行った:
逆方向プライマーSfi1:
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCTGTGCAGCAAGAGACGG(配列番号93)
順方向プライマーNot1:
GTCCTCGCAACTGCGCGGCCGCCCCCTGGCCCCAGTAGTTATACG(配列番号94)
【0324】
PCR反応を、50μlの反応容量において50pmolの各プライマーを用いて行った。一次PCRの反応条件は、94℃で11分間、次いで94/55/72℃で30/60/120秒間を30サイクル、そして72℃で5分間であった。全ての反応を2.5mM MgCl2、200mM dNTPおよび1.25U AmpliTaq God DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、ブリュッセル、ベルギー)を用いて行った。
Sfi1およびNot1での切断の後、PCR産物をpAX10中にクローン化した。
【0325】
EGFR
実施例25:免疫化
獣医学部の倫理委員会(Ethical Committee of the Faculty of Veterinary Medicine)(ヘント大学、ベルギー)の承認後、4匹のラマ(024、025、026および027)を、全ての現行の動物福祉規制(animal welfare regulation)にしたがい腫瘍抗原上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)で免疫化した。抗体依存性の免疫応答(表9)を引き起こすために、2匹の動物に、細胞表面にEGFRを発現しているインタクトなヒト外陰扁平上皮癌細胞(A431, ATCC CRL1555)を注射し、一方で、A431由来の膜抽出物を他の2匹のラマ(026および027)に投与した。各動物は、一週間間隔で7回用量の皮下投与による抗原を受けた(表9)。インタクトな細胞を用いた免疫化の場合、各用量は108個の新しく採集されたA431細胞からなる。膜抽出物を用いた免疫化のための用量は、108個のA431細胞から調製された小胞からなる。小胞は、Cohenら(Cohen S, Ushiro H, Stoscheck C, Chinkers M, 1982年,「A native 170,000 epidermal growth factor receptor-kinase complex from shed plasmamembrane vesicles」, J. Biol. Chem. 257:1523-31)にしたがって調製した。小胞を投与前に-80℃で保存した。アジュバントStimune(CEDI Diagnostics B. V., Lelystad, オランダ)を含む乳濁液中の8μgの精製EGFR(Sigma)の2回の余分の注射を、ラマ025に筋肉内投与した(表9)。
【0326】
実施例26:免疫応答の評価
0日目、28日目および42日目に10mlの免疫(プレ免疫)血液を採集し、血清を用いて4匹の動物における免疫応答の誘導を評価した。これらの動物がA431エピトープを認識する抗体を産生したか否かを検証するために、第1のELISAを行った。組織培養用処理した96ウェルプレートをゼラチンでコーティングした後(PBS中0.5%で10分間)、過剰のゼラチンを除去し、A431細胞をマイクロウェル中でコンフルエントになるまで一晩増殖させた。細胞をPBS中の4%パラホルムアルデヒドで室温にて30分間固定した。その後、固定剤をPBS中の100mMグリシンで10分間ブロッキングし、続いてウェルを4%スキムミルク-PBS溶液で再度10分間ブロッキングした。免疫された動物の血清希釈物を加え、ウサギにおいて生起させたポリクローナル抗ラマ抗血清、続いて二次的のヤギ抗ウサギセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合体(Dako、デンマーク)を用いて、A431特異的抗体を検出した。4匹の動物すべてについて、インタクトな細胞または膜小胞で免疫化した結果、有意なA431特異的抗体力価の誘導がもたらされた(図5)。
これらの誘導されたラマ抗体がEGFR特異的であるか否かを検証するために、上記と同様に行って、血清中の抗体力価をヒトEGFR(Her-14)を発現しているマウス線維芽細胞において評価し、親株のマウス線維芽細胞株であるNIH3T3クローン2.2(3T3)と比較した(図6)。この場合もやはり、Her-14に結合している抗体の血清力価は、親株の3T3細胞についての力価と比較して高く、このことは、循環血清抗体がEGFR特異的であることを示している。
最後に、免疫された動物における血清応答を、固相コーティングした精製EGFRについて評価した。精製されたEGFR(Sigma)および無関係の癌胚性抗原(CEA, Scripps)(両方とも1μg/ml)を96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)中で4℃にて一晩固定化した。ウェルをカゼイン溶液(PBS中の1%)でブロッキングした。血清希釈物の添加後、特異的に結合した免疫グロブリンを、ウサギ抗ラマ抗血清、続いてヤギ抗ウサギアルカリホスファターゼ抱合体(Sigma)を用いて検出し、全ての動物についてEGFRに対する有意な抗体依存性の免疫応答が誘導されたことを示した(図7)。
【0327】
実施例27:重鎖抗体断片(VHH)レパートリーのクローニング
ラクダ科の免疫グロブリン個体発生についてほとんど知られていないので、別個の器官および異なる時点の組織を含むB細胞を、それぞれの動物について採集した(表9)。組織採集の後、総RNAをChomczynskiおよびSacchiによって記載された手順にしたがって単離した(Chomczynski PおよびSacchi N. 1987年,「Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroformextraction」, Anal Biochem 162:156-159)。VHHレパートリーをクローン化する手順は、国際特許出願公開WO 03/054016に記載された方法に基づく。cDNAを、オリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用し、MMLV逆転写酵素(Invitrogen)を用いて総RNAについて調製した(de Haard HJ, van Neer N, ReursA, Hufton SE, Roovers RC, Henderikx P, de Bruine AP, Arends JW, Hoogenboom HR. 1999年,「A large non-immunized human Fab fragment phage library that permitsrapid isolation and kinetic analysis of high affinity antibodies」, J. Biol. Chem. 274:18218-30)。cDNA合成に用いた別個の組織のRNAの量を、表10に記載する。cDNAをフェノール/クロロホルム抽出、続いてエタノール沈殿で精製し、その後VHHレパートリーを増幅させるための鋳型として使用した。
第1のPCRにおいて、従来の抗体遺伝子セグメント(1.6kb)および重鎖抗体遺伝子セグメント(1.3kb)の両方のレパートリーを、リーダー特異的プライマー(ABL002)およびオリゴd(T)プライマーであるABL010を用いて増幅させた(プライマーのリストについて、表13を参照)。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離した。重鎖抗体セグメントをコードしている増幅された1.3kb断片をアガロースゲルから精製し、FR1プライマー(ABL037〜ABL043)およびABL010の混合物を用いたネステッドPCRにおける鋳型として使用した。PCR産物を、(FR1プライマーに導入された)SfiIおよび(FR4に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動に続いて約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、330ngの増幅させたVHHレパートリーを1μgのファージミドpAX004の対応する制限酵素部位に連結して、Escherichia coli TG1にエレクトロポレーションの後に、ライブラリーを得た。pAX004により、geneIII産物を含む融合タンパク質として個々のVHHを発現しているファージ粒子の産生が可能になる。免疫化されたラマから採集した別個の組織から得られたライブラリーのサイズを、表10に記載する。品質管理として、M13逆方向プライマーおよびgeneIIIプライマーを用いたコロニーPCRを、各ライブラリーの24個の無作為に採取したコロニーについて行い、正しいサイズの挿入部を含むクローンの割合を計算した(表10)。
【0328】
実施例28:クローン化レパートリーの評価
ポリクローナルファージELISAにおいて、クローン化されたファージレパートリーの特異性をEGFRおよび無関係の抗原(TNFα)について評価した。geneIII産物を含む融合タンパク質としてVHHレパートリーを発現している組換えビリオンを産生するために、ライブラリーを、2%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む10mlの2×TY培地中で37℃にてOD600nmが0.5に到達するまで増殖させた。M13KO7ファージ(1012個)を添加し、混合物を37℃で2回×30分間、最初は振盪せず、次に100 rpmで振盪してインキュベートした。細胞を、室温にて4,500 rpmで5分間遠心分離した。細菌のペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む50mlの2×TY培地に再懸濁し、250 rpmで活発に振盪させながら37℃で一晩インキュベートした。一晩の培養物を4℃にて4,500 rpmで15分間遠心分離し、上清を用いてファージを濃縮した。ファージを氷上で30分間PEG沈殿させ(20%ポリエチレングリコールおよび1.5M NaCl)、4,500 rpmで20分間遠心分離した。このペレットを1mlのPBSに再懸濁した。ファージを再び氷上で10分間PEG沈殿させ、4℃にて14,000rpmで10分間遠心分離した。このペレットを1mlのPBSに溶解した。1μg/mlのEGFRまたはTNFαを96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)中で固定化し、4℃にて一晩インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween-20で5回洗浄し、ウェルをカゼイン溶液(PBS中1%)でブロッキングし、そしてファージ希釈物を室温で2時間添加した。結合したファージを、抗M13 gpVIII-HRP抱合型モノクローナル抗体(Amersham Biosciences)およびABTS/H2O2を基質として用いて検出した。プレートを室温で15分間のインキュベーションの後に405nmで読み取った。動物024および動物025のPBL1ライブラリーからレスキューされたファージのプールからのファージ応答の例を、図8に示す。
【0329】
実施例29:EGFR特異的ナノボディの同定のための複数選択ストラテジー
ライブラリーを、細菌を対数期(OD600=0.5)まで増殖させることによってレスキューし、続いてヘルパーファージで感染させて、クローン化VHHのレパートリーをgpIII融合タンパク質としてファージの先端に発現している組換えファージを得た(実施例18に記載されるように)。EGFR特異的抗体について選択する場合、2つの別個の選択ストラテジーに従った。
【0330】
エピトープ特異的溶出による選択
第1の選択ストラテジーは、EGFRがリガンド溶出によってアフィニティークロマトグラフィーで精製され得るという事実に基づいた。リガンド結合部位または重複エピトープを競合する過剰の分子を加える、4つの異なる溶出条件を実行した(表11)。選択がA431細胞またはHer-14細胞において行われた場合、非選択性の組換えファージを、それぞれ6×106個の血液細胞(主に単球、T細胞およびB細胞)または2×107個の3T3細胞と共に4℃で20分間混合し、一般的なEGFR非特異的エピトープを認識する組換えファージについて枯渇させた。次いで、非結合性ファージをEGFR+の選択細胞と共に2時間インキュベートし、氷冷PBSで6回洗浄した。その後、ファージを過剰のEGFリガンドであるマウスモノクローナル2e9(Defize LH,Moolenaar WH, van der Saag PT, de Laat SW 1986年,「Dissociation of cellular responses to epidermal growth factor usinganti-receptor monoclonal antibodies」, EMBO J. 5: 1187-92)または EGFR拮抗抗体225および528(Sato JD, Kawamoto T, Le AD, Mendelsohn J, Polikoff J, Sato GH 1983年,「Biological effects invitro of monoclonal antibodies to human epidermal growth factor receptors」, Mol. Biol. Med. 1: 511-529)で溶出させた。レセプター媒介性のファージの細胞内部移行を回避するために、全ての選択工程を4℃で行った。対数的に増殖したE. coli TG1を、溶出させたファージで感染させ、選択培地2×TY Ap100および2%グルコースで37℃にて一晩増殖させた。細胞を擦り落とし、必要があればいつでも次回のパニング(panning)に使用した。EGFR特異的組換えファージ(表11)を濃縮するために、2回または3回のパニングを行った。精製抗原を選択に用いる場合はいつでも(表11)、EGFRをMaxisorpマイクロタイタープレート上に1μg/mlで固定化した。
【0331】
細胞内部移行VHH断片についての選択
第2の選択ストラテジーは、リガンドのレセプターへの結合後、EGFR媒介性の細胞シグナル伝達がレセプターの内部移行作用の機構によって下方制御され得るという観察に基づいた。細胞表面分子を介して細胞内部移行され得る組換えファージを同定するために、Poulら(Poul MA, Becerril B, Nielsen UB, Morisson P, Marks JD. 2000年,「Selection of tumor-specific internalizing human antibodies from phage libraries」, J. Mol. Biol. 301: 1149-61.)によって記載されたプロトコルに従った。非選択性組換えファージを、2%スキムミルクを補充した氷冷結合培地(重炭酸塩緩衝化DMEM;10%FCS(ウシ胎児血清);25mM Hepes)中で4℃にて30分間、約2×107個のマウス線維芽細胞3T3に添加して、非特異的VHHについて枯渇させた。その後、非結合性ファージを、結合培地中で予冷却したEGFR+の選択細胞(Her-14またはA431)と共に4℃で1.5時間インキュベートし、続いて氷冷PBSで6回洗浄して非結合性のファージを除去した。細胞を予熱した結合培地で覆い、直ちに37℃に20分間移行し、内部移行作用を可能にした。その後、細胞を4℃に冷却させ、弱酸(500mM NaCl;100mMグリシンpH2.5)とともに10分間インキュベーションして剥ぎ取り、表面結合性の組換えファージを除去した。細胞をトリプシン処理によって細胞外基質から遊離させた。次いで、再懸濁した細胞を4℃にて100mM TEAで4分間溶解し、内部移行されたファージを遊離させた。対数的に増殖したE. coli TG1を溶出したファージで感染させ、選択培地(2%グルコースを含む2×TY Ap100)で37℃にて一晩増殖させた。A431についておよび平行してHer-14についての単回の選択に使用されるライブラリーを、表12にまとめる。
【0332】
実施例30:EGFR特異的ナノボディの特徴づけ
パニングのエピトープ特異的溶出手順後の個々のクローンのEGFR特異性を検証するために、ファージELISAを各クローンについて行った。各選択手順(1、2、3、4、IaおよびIIIa;表11)について無作為に採取した47個のクローンを対数期(OD600=0.5)まで増殖させ、続いてヘルパーファージで感染させて、実施例18に記載のように組換えファージを得た。ファージELISAを、固相コーティングEGFR(非コーティングウェルと比較する)およびゼラチンコーティングHer-14細胞(3T3と比較する)の両方について行った。EGFR特異的VHHの存在を、各クローンの約109個の組換えファージ粒子を使用して検証した後、抗M13gpVIII-HRP抱合型モノクローナル抗体を用いて検出した。細胞および/または固相固定化EGFRについてのファージELISAにおいて陽性と評価されたクローンを用いて(表11)、HinfIフィンガープリント分析を行った(データは示さず)。各々別個のフィンガープリントの代表的なクローンについてヌクレオチド配列を決定した結果、条件1、Ia、2、IIIa、3および4について、それぞれ5個、8個、3個、4個、7個および4個の異なる配列を得た。これらの31個の結合剤のアミノ酸配列アラインメント(図9)により、それらのうちの20個がユニークであることが示された(表14の配列番号23〜42に記載される)。ファージELISA(細胞および固相コーティングEGFRの両方について)における20個のユニークなクローンのEGFR特異性を図10に示す。
内部移行作用プロトコルによる選択のために、合計84個の個々のクローンを用いた細胞についてのファージELISAを、エピトープ特異的溶出選択手順によって同定されたクローンについてと同様に行った。HinfIフィンガープリント分析の後、20個のユニークな結合剤(データは示さず)、2個の新規の抗EGFRクローン、EGFR-B11およびクローンEGFR-F11の上記パネルに対するヌクレオチド配列決定およびアミノ酸配列アラインメントを同定した(表14の配列番号43〜44)。細胞についてのファージELISAにおける両方のクローンのEGFR特異性を、図10のパネルAに示す。
【0333】
実施例31:EGFレセプター媒介性のナノボディの細胞内部移行
Her-14細胞および3T3細胞をカバーガラス片上で一晩増殖させ、結合培地(実施例19を参照)で洗浄し、4℃で20分間冷却した。ファージを実施例18に記載のようにナノボディEGFR-IIIa42から調製し、2%スキムミルクを補充した結合培地で希釈した約1012個の組換えビリオンを、氷冷細胞に4℃で1時間添加した。細胞を氷冷PBSで1回洗浄して非結合性のファージを除去した。その後、これらの細胞を20分間37℃に移行してファージの内部移行を可能にし、再度4℃に冷却させた。細胞をPBSで2回洗浄した。次いで、室温で7分間のストリッピング緩衝液(150mM NaCl、125mM HAc)を用いた2回の酸洗浄により、細胞表面結合性のファージを除去した。PBSで2回洗浄した後、細胞を室温で30分間4%パラホルムアルデヒドのPBS中で固定し、再度PBSで2回洗浄した。次いで、固定した細胞を0.2% Triton X-100のPBS中で室温にて5分間透過させ、続いてPBSで2回洗浄し、残存する固定剤を100mMグリシンのPBS中で室温にて10分間ブロッキングした。細胞をPBS-0.5%(w/v)ゼラチンで洗浄し、抗M13gpVIII-FITC(Amersham Biosciences)、続いて抗マウスFITC標識化モノクローナル抗体を用いた染色によって内部移行されたファージを可視化し、その後、蛍光顕微鏡によって可視化した。図11により、EGFRIIIa42はHer-14細胞(パネルA)に細胞内部移行できるが、3T3細胞(パネルB)に細胞内部移行できないことを示す。その後、FACS分析により、ナノボディEGFR-IIIa42はA431およびHer-14の両方に結合できるが、3T3には結合できないことを実証した(データは示さず)。
レセプターシグナル伝達に対するEGFレセプター特異的ナノボディの影響を実証するために、細胞を12ウェル組織培養プレート中の1ウェル当たり100,000細胞で10%(v/v)血清を含む培地(DMEM)中に播種した。8時間後、細胞を低濃度(0.5% v/v)の血清を含む培地(DMEM)で1回洗浄し、同培地中で一晩血清欠乏にした。アッセイ当日、培地を結合培地(DMEM/0.5% FCS/25mM Hepesおよび2%スキムミルク)に交換し、適切な場合、リガンドまたはナノボディ(一価または二価)を37℃で添加した。15分後、細胞を氷上で急速に冷却し、氷冷PBS(10mM Na-リン酸;150mM NaCl、pH7.4)で2回洗浄した。50μlのタンパク質試料緩衝液中でプレートから細胞を擦り落として、全細胞溶解物を調製した。タンパク質を6%(w/v)ポリアクリルアミドゲル上でサイズ分画し(2つの平行なゲル上に1ゲル当たり20μlを負荷した)、PVDF膜(Roche)にブロットした。ブロットを、EGFRの総量についてレセプターに対するウサギポリクローナル抗血清(Santa Cruz)を用いて染色し、リン酸化レセプターについてモノクローナル抗ホスホチロシン抗体(PY-20;Transduction Labs)を用いて、続いて適切にロバで発生させたペルオキシダーゼ抱合型二次抗体(抗ウサギまたは抗マウス)を用いて染色した。Western Lightning(商標)基質(Perkin Elmer Life Sciences)を使用し、増強された化学蛍光によって検出を行った。驚いたことに、抗EGFR-IIIa42ナノボディは、EGFを枯渇させたEGFR+細胞を活性化しなかった。これは、レセプターTyrキナーゼリン酸化の欠失によって示された(図11、パネルC)。EGFが細胞に2種類の濃度で添加された陽性コントロールは、レセプターのリン酸化を明らかに誘導し、従ってこれらの細胞の活性化を誘導した。
【0334】
PDK1
実施例32(1):ラマの免疫化
2匹のラマを組換えEGFレセプターの反応混液およびPDK1で免疫化する。これらのラマを、EGFレセプターを過剰発現している細胞株で追加免疫する。これらの免疫化スキームを表15にまとめる。
【0335】
実施例33:レパートリークローニング
RNA抽出について以下の異なる供給源を使用する:
- 最後の抗原注射4日後と10日後との間の免疫血液150ml
- 最後の抗原注射4日後のリンパ節生検
密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque Plus Amersham Biosciences)によって、末梢血液リンパ球(PBL)を単離する。PBLおよびリンパ節を、全RNAの抽出(ChomczynskiおよびSacchi 1987)に使用し、次いでヘキサヌクレオチドランダムプライマーを用いてcDNAの合成を行う。2つのヒンジ特異的プライマーである:AACAGTTAAGCTTCCGCTTGCGGCCGCGGAGCTGGGGTCTTCGCTGTGGTGCG(配列番号95)およびAACAGTTAAGCTTCCGCTTGCGGCCGCTGGTTGTGGTTTTGGTGTCTTGGGTT(配列番号125)、ならびにフレームワーク1特異的プライマーである:GAGGTBCARCTGCAGGASTCYGG(配列番号96)を使用して、レパートリーを増幅する。断片を、PstIおよびNotIを用いて消化し、ファージミドベクター中にクローン化する。このレパートリーをTG1エレクトロコンピテント細胞中に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%グルコースを含むLB寒天プレート上にプレートする。ベクター特異的プライマーを用いたPCRによって、挿入の存在についてコロニーをスクリーニングする。
【0336】
実施例34:ライブラリーのレスキュー、ファージ調製
ライブラリーを、2%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む60mlの2×TY培地中で37℃にてOD600nmが0.5に到達するまで増殖させる。M13KO7ファージ(1012)を添加し、混合物を37℃で2回×30分間、最初は振盪せず、次に100 rpmで振盪してインキュベートする。細胞を、室温にて4,500 rpmで10分間遠心分離する。細菌のペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む300mlの2×TY培地に再懸濁し、250 rpmで活発に振盪させながら30℃で一晩インキュベートする。一晩の培養物を4℃にて10.000 rpmで15分間遠心分離する。ファージをPEG沈殿させ(20%ポリエチレングリコールおよび1.5M NaCl)、10.000 rpmで30分間遠心分離する。このペレットを20mlのPBSに再懸濁する。ファージを再びPEG沈殿させ、4℃にて20,000 rpmで30分間遠心分離する。このペレットを5mlのPBSに溶解する。ファージを、OD600nm=0.5でのTG1細胞の感染、ならびに100μg/mlのアンピシリンおよび2%グルコースを含むLB寒天プレート上へのプレーティングによって、滴定する。形質転換体の数は、ファージの数(pfu)を示す。これらのファージを15%グリセロールと共に-80℃で保存する。
【0337】
実施例35:選択
免疫管を、2μg/mlのEGFR、2μg/mlのPDK1または1%カゼインを含むPBSでコーティングする。4℃で一晩インキュベーションの後、これらの管を、1%カゼインを含むPBSで室温にて3時間ブロッキングする。ラマ005の3つのライブラリーおよびラマ006の3つのライブラリーの200μlのファージをプールし、EGFRについては、PDK1については50mMTris/HCl(pH7.4)、150mM KCl、1.0mM DTT、1mM MgCl2および0.3mg/mlのBSA中に、2mlの最終容量で免疫管に添加する。
【0338】
室温で2時間インキュベーションの後、これらの免疫管を、PBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄する。結合性のファージを2mlの0.2Mグリシン緩衝液pH=2.4で溶出させる。溶出したファージで指数関数的な増殖期のTG1細胞を感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%グルコースを含むLB寒天プレート上にプレートする。パニングから得られる結果の例を、表16および17に示す。
【0339】
実施例36:スクリーニング
マイクロタイタープレートを、4℃にて一晩、2μg/mlのEGFRまたは2μg/mlのPDK1でコーティングする。これらのプレートを、300μlのPBS中の1%カゼインで室温にて2時間ブロッキングする。これらのプレートを、PBS-Tweenで3回洗浄する。ペリプラズム抽出物を単一のコロニーから調製し、このマイクロタイタープレートのウェルに加える。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、マウス抗ヒスチジンmABのPBS中の1/1000倍希釈物と共に室温で1時間インキュベーションし、続いてまた室温で1時間、抗マウス-アルカリホスファターゼ抱合体のPBS中の1/2000倍希釈物と共にインキュベーションすることによって、VHHの結合を検出する。基質PNPP(1Mジエタノールアミン、1mM Mg2SO4中の2mg/mlのリン酸p-ニトロフェニル、pH9.8)を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定する。各選択についてELISAで試験されるクローンの数に対する陽性クローンの期待数の例を、表18に示す。
【0340】
実施例37:細胞内部移行VHHについてのスクリーニング
EGFRに特異的な個々のクローンをPCRによって増幅し、CMVプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質レポーター遺伝子をパッケージ化するように操作されたファージ中にクローン化する(Poul MAら、J Mol Biol, 1999, 288: 203-211)。ファージを調製し、EGFRを過剰発現している腫瘍細胞(A431)と共にインキュベートする。EGFR媒介性のエンドサイトーシスを受けるファージを、GFP発現によって測定する。1 VHH(EGFR-21)は、極めて高いGFP発現を示すことが期待され、さらなる分析に使用される。別のアプローチにおいて、Laroccaら(Laroccoら, Molecular Therapy, 2001, 3: 476-484)およびPoulら(Poul MAら, J Mol Biol, 1999, 288: 203-211)に記載されるように、冷メタノールでの処理による細胞の透過化処理の後、細胞内部移行ファージを抗ファージ抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)で染色する。
【0341】
実施例38:VHH阻害性PDK1-Akt相互作用についてのスクリーニング
PDK1を、上記のようにマイクロタイタープレート中にコーティングし、これらのプレートをブロッキングの後、ウェルを100μg/mlのAktと共に室温にて1時間インキュベートする。次いで(洗浄せずに)、これらのウェルに100μlのペリプラズム抽出物を添加し、VHH結合を上記のように測定する。PDK1に結合できないVHHを、PDK1とAktの間の相互作用に対する阻害剤として評価する。阻害ELISAにおいて試験されるVHHの数に対する阻害性VHHの期待数を、表19にまとめる。
【0342】
実施例39:二重特異性構築物の作製
EGFR-21、およびPDK1に対する5つの異なる強い阻害性VHH(PD-1、PD-7、PD-32、PD-33およびPD-72)の、二重特異性構築物を調製する(Conrathら, J Biol Chem, 2001, 276: 7346-7350)。これらの5つの二重特異性構築物についてタンパク質を調製および均質に精製して、ウエスタンブロット分析により安定であることを示す。
【0343】
実施例40:腫瘍細胞のエンドサイトーシスおよび溶解
二重特異性構築物を、EGFRを過剰発現している腫瘍細胞(A431)と共にインキュベートする。うまくエンドサイトーシスによって取り込まれた全ての構築物を共焦点顕微鏡法によって示す。これらの構築物の1つであるEGFR-21-PD-32は、細胞増殖を阻害し、最終的に細胞死を引き起こすことができると期待される。
【0344】
実施例41:本発明の抗-標的-単一ドメイン抗体間の相同性の計算
本発明の抗-標的単一ドメイン抗体間のアミノ酸配列相同性の程度を、Bioedit Sequence Alignment Editorを用いて算出した。これらの計算結果は、ClustalWによって位置あわせされるように、全ての配列間で一致する残基の比率を示す(Thompson, J. D., Higgins, D. G.およびGibson, T. J. (1994) CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research, submitted, June 1994)。表20は、本発明の抗TNF-α VHH間の相同性割合(fraction homology)を示す。表21は、本発明の抗IFN-γ VHH間の相同性百分率を示す。
【0345】
実施例42:抗血清アルブミンVHHに融合したVHH-CDR3断片を含む二重特異性構築物の構築
機能的部分であるMP2F6SRのCDR3領域を、フレームワーク4領域に位置するセンスプライマー(F6 CRD3順方向プライマー:CTGGCCCCAGAAGTCATACC(配列番号97))およびフレームワーク3領域に位置するアンチセンスプライマー(F6 CDR3逆方向プライマー:TGTGCATGTGCAGCAAACC(配列番号98))を用いて増幅させた。
CDR-3断片を抗血清アルブミンVHH MSA-21と融合させるために、2回目のPCR増幅を以下のプライマーを用いて行った:
F6 CDR3順方向プライマー Sfi1:
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCTGTGCATGTGCAGCAAACC(配列番号99)
F6 CDR3逆方向プライマー Not1:
GTCCTCGCAACTGCGCGGCCGCCTGGCCCCAGAAGTCATACC(配列番号100)
【0346】
PCR反応を、50mlの反応容量において50pmolの各プライマーを用いて行った。一次PCRの反応条件は、94℃で11分間、次いで94/55/72℃で30/60/120秒間を30サイクル、そして72℃で5分間であった。全ての反応を2.5mM MgCl2、200mM dNTPおよび1.25U AmpliTaq God DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、ブリュッセル、ベルギー)を用いて行った。
【0347】
MSAクローンのVHH遺伝子を制限酵素Pst1/BstEIIで切断後、これらの消化産物をpAX11中にクローン化し、マルチクローニング部位のC末端にVHHを有するクローンを得た。これらのクローンを、ベクターベースのプライマーを用いるPCRによって試験した。MSA VHHとの融合におけるCDR3のN末端発現を可能にするためにPCR産物を制限酵素Sfi1/Not1で切断した後、650bpの産物を生じるクローンからDNAを調製し、これをアクセプターベクターとして使用してMP2F6SRのCDR3をクローン化した。
【0348】
【表1】

【0349】
【表2】

【0350】
【表3】

【0351】
【表4】

【0352】
【表5】

【0353】
【表6】

【0354】
【表7】

【0355】
【表8】

【0356】
【表9】

【0357】
【表10】

【0358】
【表11】

【0359】
【表12】

【0360】
【表13】

【0361】
【表14−1】

【0362】
【表14−2】

【0363】
【表14−3】

【0364】
【表14−4】

【0365】
【表14−5】

【0366】
【表14−6】

【0367】
【表15】

【0368】
【表16】

【0369】
【表17】

【0370】
【表18】

【0371】
【表19】

【0372】
【表20】

【0373】
【表21】

【0374】
(参考文献)
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Expression of human macrophage metalloelastase (MMP-12) by tumor cells in skin cancer.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの標的分子に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築物の治療有効量および薬学的に許容される成分を含む膣及び/又は直腸投与用組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される成分が、ポリペプチド構築物を血流又は膣及び/若しくは直腸への送達を促進する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、ジェル、クリーム、坐薬、フィルム状、スポンジ状、又は膣リングである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
対象の膣及び/又は直腸への組成物の投与に関して、ポリペプチド構築物が不活性化されずに膣及び/又は直腸へ送達される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
対象の膣及び/又は直腸への組成物の投与に関して、ポリペプチド構築物が不活性化されずに血流へ送達される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
使用されるポリペプチド構築物の標的分子がTNFである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリペプチド構築物が、配列番号12〜14に記載の配列で表わされ、かつ、TNF−αに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
炎症過程の治療、予防及び/又は症状緩和用医薬品の調製のための、請求項6又は7に記載の組成物の使用。
【請求項9】
炎症過程がクローン病、慢性大腸炎又はIBDである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ポリペプチド構築物が、EGFRに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
EGFRに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、配列番号23〜44のいずれかに記載の配列で表わされる、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
EGFR−介在癌に関連する疾患の治療、予防及び/又は症状緩和用医薬品の調製のための、請求項10又は11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
EGFR−介在癌が、結腸癌、頭部癌、頚部癌、肺癌である、請求項12に記載の試料。
【請求項14】
ポリペプチド構築物が、IgEに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
IgEに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、配列番号1〜11のいずれかに記載の配列で表わされる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
アレルギー又は炎症反応に関連する疾患の治療、予防及び/又は症状緩和用医薬品の調製のための、請求項14又は15に記載の組成物の使用。
【請求項17】
ポリペプチド構築物が、MMP−12に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
MMP−12に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、配列番号15〜22のいずれかに記載の配列で表わされる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
アレルギーに関連する疾患の治療、予防及び/又は症状緩和用医薬品の調製のための、請求項17又は18に記載の組成物の使用。
【請求項20】
ポリペプチド構築物が、IFN−γに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
IFN−γに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、配列番号45〜70のいずれかに記載の配列で表わされる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
免疫反応又は乾癬に関連する疾患の治療、予防及び/又は症状緩和用医薬品の調製のための、請求項20又は21に記載の組成物の使用。
【請求項23】
少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、天然で軽鎖を欠いた重鎖抗体に由来する、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18又は20〜21に記載の組成物。
【請求項24】
天然で軽鎖を欠いた重鎖抗体がラクダ科の動物から産生される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、ヒト類似配列を有するクラスに属する天然で軽鎖を欠いた重鎖抗体に由来する、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、通常の4−鎖抗体に由来する、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18又は20〜21に記載の組成物。
【請求項27】
標的に対する単一ドメイン抗体の数が2つ以上である、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18、20〜21又は23〜26に記載の組成物。
【請求項28】
単一ドメイン抗体が、完全長の単一ドメイン抗体の、相同配列、機能的部分又は相同配列の機能的部分である、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18、20〜21又は23〜27に記載の組成物。
【請求項29】
ポリペプチド構築物が、完全長のポリペプチド構築物の、相同配列、機能的部分又は相同配列の機能的部分である、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18、20〜21又は23〜28に記載の組成物。
【請求項30】
ポリペプチド構築物が、ヒト化されている、請求項1〜7、10〜11、14〜15、17〜18、20〜21又は23〜29に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図12】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【公開番号】特開2011−256169(P2011−256169A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134819(P2011−134819)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【分割の表示】特願2005−502084(P2005−502084)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(505166225)アブリンクス エン.ヴェー. (28)
【Fターム(参考)】