説明

治療用リン酸カルシウム粒子、ならびにその作製および使用方法

本発明は、生物学的に活性な分子の効率的な被包に適した、新規なリン酸カルシウムナノ粒子を提供する。本発明はさらに、これらナノ粒子を含む薬学的組成物、ならびにこのようなナノ粒子を作製するための方法、および生物学的に活性な高分子の治療的送達のためのキャリアとしてこれらを使用する方法を提供する。一局面において、本発明は、複数の粒子を提供し、上記粒子は、a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;b)上記コアナノ粒子中に被包されたGLP−1アゴニスト;およびc)上記コアナノ粒子中に被包されて、胆汁酸塩を含まない対応するリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して上記コアナノ粒子への上記GLP−1アゴニストの被包効率を高める共沈降剤を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年5月1日に出願された米国出願第61/049,627号の利益を主張し、この出願は、その全体を本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、薬物送達の分野に関する。より具体的には、本発明は、生物学的に活性な分子の効率的な被包に適した、新規なリン酸カルシウム粒子に関する。本発明はまた、これら粒子を含む薬学的組成物、ならびにこのような粒子を作製するための方法、および生物学的に活性な高分子の治療的送達のためのキャリアとしてこれらを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
高分子医薬(タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質もしくは組み合わせを含む)は、種々の医療的状態を処置するために、ますます重要な薬物のクラスである。高分子医薬を投与するための主な経路は、皮下注射であり、皮下注射は、不愉快であり、高価であり、かつしばしば、不十分なコンプライアンスを生じる。経口送達は、医薬を投与するには好ましい経路である。しかし、高分子薬物は、腸を介して十分に吸収されるわけでもなく、胃によって、特に、胃腸管における分解酵素によって、容易に破壊され得る。経口高分子送達の障壁を克服する有望なアプローチは、ナノ粒子を使用することであり、ナノ粒子は、分解に対する保護を提供し、腸吸収を増強する。
【0004】
インスリンを付加した(load)したナノ粒子が、生体活性インスリンを動物に送達するために使用され得ることが報告された。例えば、無水フマル酸オリゴマーおよび酸化鉄付加物を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子中に捕捉されたインスリンによる血漿グルコース上昇の予防は、Carinoら(J.Controlled Release 65:261,2000)によって観察された。キトサンナノ粒子でのインスリンの経口送達の別の例が、Panら(Intl.J.Pharmaceutics,249:139,2002)によって提供される。さらに、ポリアルキルシアノアクリレートナノカプセルはまた、糖尿病動物におけるインスリンの経口送達に有効なキャリアであると報告された(Damgeら,Diabetes,37:246,1988)。胃腸経路による粒状物質の取り込みが証明されており、リンパパイエル板(lymphatic Peyer’s patches)が関わっている(Hussainら,Adv.Drug Delivery Rev.50:107,2001)。
【0005】
粒径は、吸収効率に影響を及ぼす重要な因子のうちの1つであるようである。例えば、Janiら(J.Pharm.Pharmacol.42:821,1990)は、ラットにおけるポリスチレン粒子の腸吸収を研究し、吸収効率と粒径との間の関係を証明した。同様に、腸吸収におけるサイズ依存性はまた、Desaiら(Pharm.Res.13:1838,1996)によって、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)粒子において観察された。
【0006】
ナノメートルスケールの粒子は、生物学的高分子(例えば、タンパク質および核酸)のためのキャリア粒子としての使用が提唱されてきた。米国特許第5,178,882号;同第5,219,577号;同第5,306,508号;同第5,334,394号;同第5,460,830号;同第5,460,831号;同第5,462,750号;同第5,464,634号、同第6,355,271号を参照のこと。
【0007】
リン酸カルシウム粒子は、生体接着性/生体適合性であり、インビトロで細胞内区画へと核酸を送達するためのキャリアとして慣用的に使用されてきた(Chenら,Mol.Cell.Biol.7:2745−52,1987)。さらに、リン酸カルシウムはまた、インビボで大きな核酸を送達するための遺伝子療法用キャリアとして試験されてきた(Royら,Intl.J.Pharmaceutics 250:25,2003)。
【0008】
治療用リン酸カルシウム粒子が、記載されてきた。米国特許第6,355,271号;同第6,183,803号;米国特許出願公開第2005/0234114号;同第2004/0258763号;同第2002/0054914号;同第2002/0068090号;同第2003/0185892号;同第2001/0048925号;WO 02/064112;WO 03/051394;WO 00/46147;WO 2004/050065を参照のこと。インスリン付加リン酸カルシウム粒子の経口処方物の効果は、糖尿病マウスにおいて試験され、血糖のコントロールが示された(Morcolら,Intl.J.Pharmaceutics 277:91,2004)。しかし、この研究における粒径は、2〜4μmの範囲内であった。この粒径は、明らかに最適ではない。
【0009】
所望のサイズを有するリン酸カルシウム粒子を作製するために、徹底的な超音波処理が必要とされる(非特許文献1;非特許文献2)が、このことは、被包される繊細な高分子薬物に損傷を与え得る。
【0010】
さらに、リン酸カルシウム粒子への高分子の被包効率は、しばしば低い。例えば、特許文献1は、インスリンが予め形成されたリン酸カルシウム粒子に添加される場合には、約40%;およびインスリンが粒子形成の間に混合される場合には、約89%の吸収効率を開示している。
【0011】
これら報告された方法は、それほど最適ではないサイズを有する粒子を生じるか、または高分子処方に適合しない過酷な条件(例えば、長期の超音波処理)を要するかのいずれかである。従って、低コストで非常に効率的にかつ容易に生成される経口高分子送達系の必要性が未だにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,355,271号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cherianら,Drug Dev.Ind.Pharmacy,26:459,2000
【非特許文献2】Royら,Intl.J.Pharmaceutics 250:25,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(発明の要旨)
一局面において、本発明は、複数の粒子を提供し、上記粒子は、a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;b)上記コアナノ粒子中に被包されたGLP−1アゴニスト;およびc)上記コアナノ粒子中に被包されて、胆汁酸塩を含まない対応するリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して上記コアナノ粒子への上記GLP−1アゴニストの被包効率を高める共沈降剤を包含する。いくつかの実施形態において、上記GLP−1アゴニストは、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体である。いくつかの実施形態において、上記共沈降剤は、コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、タウロウルソデオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される胆汁酸塩を含む。
【0015】
別の局面において、本発明は、複数の粒子を提供し、上記粒子は、a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;b)上記コアナノ粒子中に被包された生物学的に活性な高分子;およびc)上記コアナノ粒子中に被包されて、上記脂肪酸塩を含まない対応するリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して上記コアナノ粒子への上記生物学的に活性な高分子の被包効率を高める共沈降剤を包含する。いくつかの実施形態において、上記共沈降剤は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリル酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪酸塩を含む。
【0016】
さらに別の局面において、本発明は、リン酸カルシウム粒子を作製するための方法を提供し、上記方法は、a)カルシウム塩の水溶液と、リン酸塩の水溶液とを、共沈降剤の存在下で接触させる工程;b)工程a)において生じた溶液を、所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで混合する工程;およびc)上記リン酸カルシウム粒子を回収する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記カルシウム塩の水溶液と、上記リン酸塩の水溶液とを、上記共沈降剤の存在下で接触させる工程の前に、生物学的に活性な高分子を、上記リン酸塩の水溶液もしくは上記カルシウム塩の水溶液に添加するさらなる工程を包含し、それによって、上記リン酸カルシウム粒子は、上記生物学的に活性な高分子と共結晶化される。いくつかの実施形態において、上記共沈降剤は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪酸塩を含む。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、本発明のリン酸カルシウム粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、球体、もしくは散剤の形態である。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、腸溶性コーティングおよび/もしくは吸収増強剤をさらに含む。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、生物学的に活性な高分子の処置を必要とする被験体を処置するための方法を提供し、上記方法は、上記被験体に、治療上有効な量の、本発明のリン酸カルシウム粒子を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、経口経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、GLP−1アゴニスト(例えば、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
別段定義されなければ、技術、表記法、および他の科学用語の全ての用語もしくは本明細書で使用される用語法は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有すると意図される。いくつかの場合において、一般に理解される意味を有する用語は、明確さおよび/もしくは迅速な参照のために本明細書で定義され、本明細書にこのような定義を含めることは、必ずしも、当該分野で一般に理解されていることに対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。記載されるか、もしくは本明細書で言及される技術および手順の多くは、十分に理解されており、かつ当業者によって、従来の方法論を使用して一般に使用される。適切な場合、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順が、別段示されなければ、一般には、製造業者が規定したプロトコルおよび/もしくはパラメーターに従って行われる。
【0020】
本明細書で与えられる一般的方法の議論は、例示目的に過ぎないことが意図される。他の代替法および実施形態は、本開示を精査すれば、当業者に明らかである。
【0021】
本明細書で使用される場合、「1つの、ある(a)」もしくは「1つの、ある(an)」は、「少なくとも1」もしくは「1以上」を意味する。
【0022】
接続詞「または、もしくは(or)」と連結される用語群は、その群の中で実質的に排他的であることを要するとして読まれるのではなく、むしろ明示的にそうでないことを示されていなければ、「および/または、および/もしくは(and/or)」とも読まれるべきである。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「処置(treatment)」もしくは「処置する(treating)」とは、ある状態、障害もしくは疾患の症状が、改善されているかもしくはそうでなければ有益なように変化している様式に言及する。血液悪性腫瘍を処置する状況において、上記血液悪性腫瘍は、疾患の始まり(onset)、再発の(relapsed)もしくは不応性(refractory)のものであり得る。上記状態、障害もしくは疾患の根治は、要求されない。特定の障害の症状の改善とは、恒久的であろうと、一時的であろうと、本発明の治療用組成物もしくはその対応する方法および併用療法を施すことに帰し得るかもしくはそのことと関連し得る症状の任意の軽減に言及する。処置はまた、本明細書で開示される方法に従う、上記組成物の薬学的使用を包含する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」とは、特定の種もしくはサンプルタイプに限定されない。例えば、用語「被験体」は、患者、および頻繁には、ヒトの患者に言及し得る。しかし、この用語は、ヒトに限定されず、従って、種々の哺乳動物種を包含する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「投与」もしくは「投与する(工程)(administering)」とは、本発明の組成物を被験体に提供するための任意の適切な方法に言及する。本発明が、何らかの特定の投与様式に限定されるとは意図されない。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口経路を介して投与される。他の実施形態において、本発明の化合物および薬学的組成物は、非経口経路を介して(例えば、筋肉内の、腹腔内の、静脈内の、槽内の、もしくは皮下の注射もしくは注入を介して)投与される。上記薬学的組成物はまた、各投与経路に適切な投与単位処方物において処方され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語化合物の「有効な量」もしくは「治療上有効な量」とは、大部分の患者もしくは個体にとって非毒性であるが、所望の治療効果もしくは予防効果を提供するに十分な量の化合物をいう。血液悪性腫瘍を処置する状況において、非毒性の量は、毒性薬剤が使用されることを必ずしも意味するのではなく、むしろ患者もしくは個体にとって望ましい治療効果もしくは予防効果を提供するに許容可能かつ十分な量の投与を意味する。薬理学的に活性な化合物の有効な量は、投与経路、ならびに上記薬物もしくは薬理学的に活性な薬剤が投与される個体の年齢、体重および性別に依存して変動し得る。本開示の利益を与えられた当業者は、代謝、バイオアベイラビリティー、および異なる投与経路のために本明細書でさらに開示される単位用量範囲内の投与後の化合物の血漿レベルに影響を及ぼす他の要因を考慮することによって、適切な有効量を容易に決定し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「被包される(encapsulated)」、「埋め込まれる(embedded)」もしくは「組み込まれる(incorporated)」とは、ある物質と複合体化されたか、包まれたか、結合されたか、関連づけられたか、覆われたか、層化されたか、またはこれに囲まれたことを意味する。従って、粒子中に被包された物質は、上記物質が、上記粒子構造に組み込まれたか、上記粒子の表面にコーティングされたかもしくは結合された、またはその両方であることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」とは、特定された量の特定された成分、および直接的にもしくは間接的に、特定された量の特定された成分の組み合わせから生じる任意の生成物を含む生成物に言及する。
【0029】
本開示全体を通じて、本発明の種々の局面は、範囲の形式で示される。範囲の形式での記載は、便宜および簡潔さのために過ぎず、本発明の範囲に対する不変の限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。よって、範囲の記載は、考えられる部分範囲、およびその範囲内の個々の数値の具体的に開示されるもの全てを有するとみなされるべきである。例えば、1〜6のような範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのような具体的に開示される部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字(例えば、1、2、3、4、5、および6)を有するとみなされるべきである。このことは、上記範囲の幅に拘わらず当てはまる。
【0030】
上記のように、本発明は、複数の粒子を提供し、上記粒子は、a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;b)上記コアナノ粒子中に被包されたGLP−1アゴニスト;およびc)上記コアナノ粒子中に被包されて、胆汁酸塩を含まない対応するリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して、上記コアナノ粒子への上記GLP−1アゴニストの被包効率を高める共沈降剤を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「GLP−1アゴニスト」とは、ヒトGLP−1レセプターを完全にもしくは部分的に活性化する化合物をいう。グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)は、腸におけるL細胞から放出され、グルコースもしくは脂肪の経口摂取後のインスリン応答を増大するように働く。この用語は、GLP−1ペプチド、ならびにその改変体、アナログ、および誘導体を含む。例えば、GLP−1ペプチドは、野生型グルカゴン様ペプチド、その短縮、伸長、変異、もしくは他のバリエーションを含む。上記用語は、ZP10AもしくはBIM−51077のようなアナログ、ポリエチレングリコールに結合体化されたGLP−1もしくはそのアナログ、アルブミンと融合された(例えば、アルブゴン(albugon)、または上記アルブミンに化学的に結合体化された(例えば、リラグルチドもしくはCJC−1131)GLP−1もしくはそのアナログを包含する。同様に、エクステンジン(extendin)−4(エクセナチドともいわれる)は、GLP−1アゴニストであり、用語「GLP−1アゴニスト」中に、そのアナログおよび誘導体とともに含まれる。エクセナチドは、米国特許第5,424,286号に開示され、商標BYETTA(登録商標)の下で販売されている。よって、エクセナチド、エクセナチドアナログ(例えば、米国特許第7,329,646号で開示されるもの、および長時間作用性結合体(例えば、CJC−1134)は、本発明の範囲内で全て企図される。
【0032】
GLP−1アゴニストは、糖尿病を処置するために、インスリン放出を刺激するために、高血糖症を処置するために、脂質異常症を処置するために、心血管疾患を処置および予防するために、脳卒中(stroke)後の罹患率(morbidity)および死亡率を低下させるために、尿の流れを増大させるために、血漿グルカゴンを低下させるために、胃の運動を低下させるために、ならびに/または胃が空になるのを遅らせるために、肥満、II型糖尿病、摂食障害およびインスリン抵抗性症候群を処置するために、有用である。上記方法はまた、血漿グルコースレベルを低下させるために、血漿脂質レベルを低下させるために、心臓リスクを低下させるために、食欲を低下させるために、および被験体の体重を減らすために、有用である。血漿グルカゴンを低下させる場合、このような方法は、高グルカゴン血症(例えば、壊死融解性移動性紅斑を有する患者、グルカゴノーマを有する患者、糖尿病関連障害(II型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない)を有する患者におけるもの)を処置するために使用され得る。心血管疾患を処置することに関して、GLP−1アゴニストは、心筋梗塞、急性冠症候群(ACS)、不安定性狭心症(UA)、非Q波心臓壊死(NQCN)、左室肥大、冠動脈疾患、本態性高血圧症、高血圧性緊急症(acute hypertensive emergency)、心筋症、心不全、運動負荷、慢性心不全、不整脈、心不整脈、失神(syncopy)、アテローム性動脈硬化、軽度慢性心不全、狭心症、心臓バイパス再閉塞、間欠性跛行症(閉塞性動脈硬化症(atheroschlerosis oblitterens))、拡張不全(diastolic dysfunction)および収縮不全(systolic dysfunction)を処置するために有用である。
【0033】
上記のように、本明細書で記載される組成物は、上記共沈降剤を含まないリン酸カルシウムナノ粒子と比較して、上記生物学的に活性な高分子の被包効率の増大を提供する。上記共沈降剤の存在下での被包効率は、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%より高いか、またはこれらに等しくあり得る。
【0034】
本発明の粒子の小さなサイズは、薬物送達ビヒクルとしての上記粒子の有効性に顕著に影響を及ぼす重要な因子である。よって、いくつかの実施形態において、上記コアナノ粒子の平均直径は、約1000nm未満であり、好ましくは、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、もしくは約50nm未満である。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記共沈降剤は、上記カルシウム塩が低い水溶解度を有し、生物学的に活性な高分子を実質的に吸収し得る化学物質を含み得る。いくつかの実施形態において、上記共沈降剤は、胆汁酸塩を含み得る;胆汁酸塩は、結合体化胆汁酸もしくは非結合体化胆汁酸を含み、例えば、コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、タウロウルソデオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ならびにこれらの誘導体および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、上記共沈降剤は、脂肪酸塩を含み得る。例としては、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキドン酸塩、ならびにこれらの誘導体および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、粘膜表面へ上記生物学的に活性な高分子を送達するために適合させられる。いくつかの実施形態において、上記粒子は、必要な被験体に経口経路を介して上記生物学的に活性な高分子を送達するために適合させられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、生体接着性コーティングをさらに含み得、これは、粘膜へのそれらの接着を高める。上記生体接着性コーティングは、カルボマー(carbomer)、ポリカルボフィル、キトサン、アルギネート、チオマー(thiomer)、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、無水フマル酸オリゴマー、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリサッカリド、改変デキストラン、ペクチン、キサンタンガム、ならびにこれらの塩、誘導体および組み合わせのような物質を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、腸溶性コーティングをさらに含み得る。上記腸溶性コーティングは、上記粒子が胃腸管の特定の領域に選択的に接着することを可能にするpH感受性ポリマーを含む。上記腸溶性コーティング物質としては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、種々のEUDRAGIT(登録商標)ポリマー、ならびにそれらの塩およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、部位選択的コーティングをさらに含み得る。上記部位選択的コーティングは、上記粒子が、胃腸管の特定の領域に選択的に接着することを可能にするポリマーを含む。例えば、上記コーティングは、結腸特異的送達のための上記粒子に適用され得、上記コーティング物質としては、アゾポリマー、結腸分解性ポリサッカリド(例えば、ペクチン、アミロース、グアールガム、キシラン、シクロデキストリン、デキストラン)、これらの塩、誘導体、および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明は、複数の粒子をさらに包含し、上記粒子は、a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;b)上記コアナノ粒子中に被包された生物学的に活性な高分子;およびc)上記コアナノ粒子中に被包されて、上記脂肪酸塩を含まない対応するリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して、上記コアナノ粒子への上記生物学的に活性な高分子の被包効率を高める共沈降剤を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記タンパク質は、アンチトロンビン、アルブミン、α−1−プロテイナーゼインヒビター、抗血友病因子、凝固因子、抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗CD33イムノトキシン、DNase、エリスロポエチン、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、卵胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、peg化G−CSF、ガラクトシダーゼαもしくはガラクトシダーゼβ、グルカゴン、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、絨毛性ゴナドトロピン、B型肝炎抗原、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、B型肝炎エンベロープ抗原(envelopment antigen)、C型肝炎抗原、ヒルジン、抗HER−2抗体、抗IgE抗体、抗IL−2レセプター抗体、インスリン、インスリングラルギン、インスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インターフェロン、peg化インターフェロン、インターフェロンαもしくはインターフェロンα2aもしくはインターフェロンα2bまたはコンセンサス、インターフェロンβもしくはインターフェロンβ−1aもしくはインターフェロンβ−1bまたはベタサー(betaser)、インターフェロンγ、インターロイキン−2、インターロイキン−11、インターロイキン−12、黄体形成ホルモン、ネシリチド(nesiritide)、骨形成タンパク質−1、骨形成タンパク質−2、ライム病ワクチン(lyme vaccine)、血小板由来増殖因子、抗血小板抗体、抗RSV抗体、ソマトトロピン、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、TNFレセプター−Fc融合タンパク質、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、TNK−tPA、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、線維素溶解酵素、血栓溶解酵素、アデノシンデアミナーゼ、peg化アデノシンデアミナーゼ、アニストレプラーゼ、アスパラギナーゼ、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、ウロキナーゼ、アプロチニン、ボツリヌス毒素、線維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子および毒液から成る群より選択される。上記タンパク質は、組換え技術、化学合成によって生成され得るか、もしくは生物学的供給源から抽出され得る。上記タンパク質はまた、変異体および改変アナログもしくは誘導体を含む。上記タンパク質の起源は、ヒトもしくは他の種に由来し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、以下からなる群より選択される:ACTH、抗血管新生ペプチド、アダムトスタチン(adamtsostatin)、アディポネクチン、脂質動員ホルモン、デイポニュートリン(deiponutrin)、脂肪デスニュートリン(adipose desnutrin)、アドレノメデュリン、アグーチ(agouti)関連タンパク質、アラリン(alarin)、アラトスタチン、アメロゲニン、カルシトニン、アミリン、アミロイド、アジオポエチン(agiopoietin)、アンジオテンシン、食欲減退ペプチド(anorexigenic peptide)、抗炎症性ペプチド、抗利尿因子(anti−diuretic factor)、抗微生物ペプチド、アペリン(apelin)、アピデシン(apidaecin)、RGDペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アトリオペプチン、オーリクリン(auriculin)、オータキシン(autotaxin)、ボンベシン、ボンビナキニン(bombinakinin)、ブラジキニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、脳由来神経栄養因子(brain−derived neutrophic factor)、ブレビニン(brevinin)、C−ペプチド、カスパーゼインヒビター、膵臓ペプチド、ブッカリン、ブルシン(bursin)、C−タイプナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン関連ペプチド、カルシトニンレセプター刺激ペプチド、カルモジュリン、CART、カルチロスタチン(cartilostatin)、カソモキニン、カソモルフィン、カテスタチン、カテプシン、セクロピン、セレベリン(cerebellin)、ケマリン(chemerin)、コレシストキニン(chelocystokinin)、クロモグラニン、毛様体神経栄養因子、コナントキン、コノプレシン(conopressin)、コノトキシン、コペプチン(copeptin)、皮質アンドロゲン刺激ホルモン(cortical androgen stimulating hormone)、コルチコトロピン放出因子、コルチスタチン、共役因子(coupling factor)、ディフェンシン、Δ睡眠誘発ペプチド(delta sleep inducing peptide)、デルモルフィン、バソプレッシン、デスアミノ−バソプレッシン、利尿ホルモン、ダイノルフィン、エンドキニン、エンドモルフィン、エンドルフィン、エンドスタチン、エンドセリン、エンケファリン、エンテロスタチン、エキセンジン、エキセンジン−4、エリスロポエチン様ペプチド(erythropoietic peptide)、上皮増殖因子、脂肪標的化ペプチド、ガラニン、胃抑制ペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、グルタチオン誘導体、グルテンエキソルフィン、成長ホルモン放出因子、GM−CSF阻害性ペプチド、成長ホルモンペプチド、グアニリン(guanylin)、HIVペプチド、ヘロデミン(helodemine)、ヘモキニン、HCVペプチド、HBVペプチド、HSVペプチド、ヘルペスウイルスペプチド、ヒルジン、ヒドラペプチド、インスリン様増殖因子、ヒドリン、インテルメジン、カッシニン(kassinin)、ケラチノサイト増殖因子、キネテンシン、キニノゲン、キスペプチン、キョウトルフィン、ラミニンペプチド、レプチンペプチド、ロイコキニン、ロイコピロキニン(leucopyrokinin)、ロイペプチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、リンホカイン、メラニン凝集ホルモンおよびそのインヒビター、メラノサイト刺激ホルモン放出インヒビター、メラノトロピン増強因子、モルフィン調節神経ペプチド、MSH、ネオエンドルフィン、ネスファチン、ニューロキニン、ニューロメジン、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、神経栄養因子(neutrotrophic factor)、ノシセプチン、オベスタチン、オピオイドレセプターアンタゴニスト、オレキシン、オステオカルシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、ペプチドYY、フィザレミン様ペプチド、セクレチン、ソマトスタチン、精子活性化ペプチド、サブスタンスP、シンジファリン、トロンボスポンジン、サイモポエチン、サイモシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トランスフォーミング増殖因子、タフトシン、腫瘍壊死因子アンタゴニストもしくは腫瘍壊死因子関連ペプチド、ウスレキスタチキニン(usrechistachykinin)、ウロコルチン、ウロテンシンアンタゴニスト、バロルフィン(valorphin)、バソトシン、VIP、ゼノプシンもしくはゼノプシン関連ペプチド。上記ペプチドは、組換え技術、化学合成によって生成され得るか、または生物学的供給源から抽出され得る。上記ペプチドは、変異体もしくは改変アナログもしくは誘導体を含む。上記ペプチドの起源は、ヒトもしくは他の種に由来し得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、アデノウイルス、炭疽、BCG、ボツリヌス、コレラ、ジフテリアトキソイド、ジフテリアおよび破傷風トキソイド、ジフテリア・破傷風および百日咳、B型インフルエンザ(haemophilus B)、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、脳炎、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、髄膜炎菌、ペスト(plague)、百日咳、肺炎双球菌、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、痘瘡、破傷風トキソイド、腸チフス、水痘、黄熱、細菌抗原および任意のコレラの組み合わせからなる群より選択されるワクチンである。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、チリダニ(house dust mice)、動物の鱗屑、カビ、花粉、ブタクサ、ラテックス、すずめばち毒および昆虫由来アレルゲン、ならびに任意のこれらの組み合わせからなる群より選択されるアレルゲンである。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、GLP−1アゴニスト、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、PTH、カルシトニン、ロイプロリド、およびこれらの誘導体からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記GLP−1アゴニストは、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体である。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、元の構造を有する野生型分子、改変された構造もしくは配列を有するアナログ、および化学的にもしくは生物学的に改変されたアナログを含む、関連分子のファミリーを含み得る。
【0048】
本発明は、本発明のリン酸カルシウム粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物をさらに含む。
【0049】
適切なキャリアおよびそれらの処方は、当該分野で公知であり、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 第20版. Mack Publishing,2000に記載されている。上記薬学的組成物は、液剤、カプセル剤、錠剤、散剤およびエアロゾルの形態に処方され得る;そして経口送達、粘膜送達、もしくは眼の表面への送達に適した形態に処方され得る。上記組成物は、他の成分(例えば、緩衝化剤、保存剤、非イオン性界面活性剤、可溶化剤、吸収増強剤、安定化剤、皮膚軟化剤(emollient)、滑沢剤および等張化剤(tonicity agent))を含み得る。上記組成物は、上記高分子の制御された放出を達成するために処方され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、カプセル剤、錠剤、粒子、液体、ゲル、ペースト、および/もしくはクリーム剤の形態において薬学的に受容可能なキャリア中に処方される。上記薬学的組成物は、任意の適切な手段(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒もしくは散剤の形態において経口的に;舌下に;口内に;非経口的に(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、皮内(経皮)、もしくは槽内の注射もしくは注入の技術(例えば、滅菌注射用の水溶液もしくは非水溶液または懸濁物として)によって);鼻内に(例えば、吸入スプレーもしくは通気法によって);局所的に(例えば、クリーム剤もしくは軟膏剤の形態において)、眼に(液剤もしくは懸濁物の形態において);膣に(ペッサリー、タンポンもしくはクリーム剤の形態において);または直腸に(例えば、坐剤の形態において);非毒性の薬学的に受容可能なビヒクルもしくは希釈剤を含む投与単位処方物において、投与され得る。上記ナノ粒子は、例えば、即時放出もしくは長期放出に適した形態において投与され得る。即時放出もしくは長期放出は、本発明の化合物を含む適切な薬学的組成物の使用によって、または特に、長期放出の場合には、皮下インプラントもしくは浸透性ポンプのようなデバイスを使用することによって、達成され得る。
【0051】
本発明の化合物の投与のための上記薬学的組成物は、投与単位形態において提示され得、そして薬学の分野において周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。これら方法は、一般に、非粒子を、1種以上の補助成分を構成する上記キャリアと会合させる工程を包含する。一般に、上記薬学的組成物は、上記ナノ粒子を、液体キャリアもしくは微細に分割した固体キャリアもしくはその両方と均一にかつ密に会合させ、次いで、必要であれば、上記生成物を所望の処方物に成形することによって、調製される。上記薬学的組成物において、上記活性な目的化合物は、疾患のプロセスもしくは状態に対して所望の効果を生成するに十分な量で含まれる。
【0052】
上記ナノ粒子を含む上記薬学的組成物は、経口用途(例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁物、分散性の散剤もしくは顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質のカプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として)に適した形態であり得る。経口用途が意図された組成物は、薬学的組成物の製造のための分野に公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、例えば、薬学的に安定かつ口に合う調製物を提供するために、1種以上の薬剤(例えば、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤)を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合された状態で、上記ナノ粒子を含む。これら賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチ、もしくはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンもしくはアカシアガム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク);および脂質二重層膜を乱しかつ上記薬物の腸を横断する腸吸収を補助する吸収増強剤(例えば、界面活性剤もしくは表面調節剤(EDTA、胆汁酸塩、および中鎖脂肪酸塩(例えば、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、およびミリスチン酸塩)を含む)であり得る。上記錠剤はコーティングされていなくてもよいし、胃腸管中での崩壊および吸収を遅らせ、それによって、長期間にわたる持続作用を提供するために公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、グリセリルモノステアレートもしくはグリセリルジステアレート)が、使用され得る。これらはまた、制御放出のための浸透性治療用錠剤を形成するためにコーティングされ得る。
【0053】
水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合された状態で、上記ナノ粒子を含む。このような賦形剤は、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム)であり;分散剤もしくは湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン、もしくはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、もしくはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、もしくはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。上記水性懸濁物はまた、1種以上の保存剤(例えば、エチルベンゾエート、もしくはn−プロピルベンゾエート、p−ヒドロキシベンゾエート)、1種以上の着色剤、1種以上の矯味矯臭剤、および1種以上の甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン)を含み得る。
【0054】
油性懸濁物は、上記ナノ粒子を、植物性油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ごま油もしくはココナツ油)中、または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁することによって、処方され得る。上記油性懸濁物は、濃化剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンもしくはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、上記のもの)および矯味矯臭剤は、口に合う経口調製物を提供するために添加され得る。これら組成物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって、保護され得る。
【0055】
水の添加によって水性懸濁物の調製に適切な分散剤および顆粒は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1種以上の保存剤と混合した状態で上記ナノ粒子を提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤は、既に上記で言及したものによって例示される。さらなる賦形剤(例えば、甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤)もまた、存在し得る。
【0056】
本発明の薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。その油相は、植物性油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)もしくは鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムもしくはトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、大豆、レシチン)、ならびに脂肪酸および無水ヘキシトールに由来するエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、ならびに上記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。
【0057】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールもしくはスクロース)とともに処方され得る。このような処方物はまた、粘滑剤(demulcent)、保存剤ならびに矯味矯臭剤および着色剤を含み得る。
【0058】
上記薬学的組成物は、滅菌注射用水性懸濁物もしくは滅菌注射用油性懸濁物の形態であり得る。この懸濁物は、上記で言及した適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を使用して、上記公知の技術に従って、処方され得る。上記滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射用溶液もしくは懸濁物(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中でも、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液が使用され得る。さらに、滅菌した固定油が、溶媒もしくは懸濁媒体として従来から使用されている。この目的で、任意の刺激の強くない固定が使用され得、これらとしては、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリドが挙げられる。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射用処方物の調製において用途が見いだされる。
【0059】
気道への投与(鼻内投与を含む)のために、上記活性化合物は、気道への投与のために当該分野で使用される方法および処方物のうちのいずれかによって、投与され得る。
【0060】
従って、一般に、上記ナノ粒子は、溶液もしくは懸濁物の形態で、または乾燥散剤として投与され得る。
【0061】
溶液および懸濁物は、一般に、水性であり、例えば、水単独(例えば、滅菌水もしくは発熱物質を含まない水)または水と生理学的に受容可能な共溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール(例えば、PEG 400))から調製される。
【0062】
このような溶液もしくは懸濁物は、他の賦形剤(例えば、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、溶解剤/界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、Tween 80、Span 80、塩化ベンザルコニウム))、緩衝化剤、等張性調節剤(例えば、塩化ナトリウム)、吸収増強剤および粘性増強剤)をさらに含み得る。懸濁物は、懸濁剤(例えば、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム)をさらに含み得る。
【0063】
溶液もしくは懸濁物は、従来の手段によって(例えば、ドロッパー、ピペットもしくはスプレーで)鼻腔に直接適用される。上記処方物は、単一用量の形態もしくは複数用量の形態で提供され得る。後者の場合、用量計測の手段が、望ましくは提供される。ドロッパーもしくはピペットの場合において、これは、上記溶液もしくは懸濁物の適切な予め決定された容積を投与することが、被験体によって達成され得る。スプレーの場合において、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプによって達成され得る。
【0064】
上記気道への投与はまた、上記化合物が適切なプロペラント(例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素もしくは他の適切なガス)で加圧パック中に提供されるエアロゾル処方物によって、達成され得る。上記エアロゾルはまた、便宜的には、界面活性剤(例えば、レシチン)を含み得る。活性化合物の用量は、計量バルブの準備によって、制御され得る。
【0065】
あるいは、上記活性化合物は、乾燥散剤(例えば、適切な粉末基剤(例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP))中の上記ナノ粒子の粉末ミックス)の形態で提供され得る。便宜上、上記粉末キャリアは、鼻腔中にゲルを形成する。上記粉末組成物は、単位用量形態において(例えば、例えば、ゼラチンのカプセル剤もしくはカートリッジ、またはブリスターパック(そこから、上記散剤が吸入器によって投与され得る)において)提示され得る。
【0066】
上記気道への投与が意図された処方物(鼻内処方物を含む)において、上記ナノ粒子は、一般に、小さな粒径(例えば、5ミクロン未満の大きさの)を有する。このような粒径は、当該分野で公知の手段によって(必要であれば、例えば、微粉化によって)、得られ得る。
【0067】
所望される場合、上記活性化合物の持続性放出を与えるように適合させた処方物が、使用され得る。
【0068】
本発明のナノ粒子はまた、上記薬物の直腸投与のために坐剤の形態で投与され得る。これら組成物は、上記ナノ粒子と、通常の温度で固体であるが、直腸温においては液体であるので、上記薬物を放出するように直腸で溶ける適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって、調製され得る。このような物質は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0069】
膣投与に適切な組成物は、上記活性成分に加えて、当該分野で適切であることが公知であるようなキャリアを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル、ペースト、泡沫物もしくはスプレーとして提示され得る。
【0070】
局所的使用のために、本発明のナノ粒子を含むクリーム剤、軟膏、ゼリー、液剤もしくは懸濁物などが使用される(本願のために、局所適用は、洗口液およびうがい薬を含むものとする)。
【0071】
上記ナノ粒子はまた、獣医学用組成物の形態での使用のために提示され、上記組成物は、例えば、当該分野で従来からある方法によって調製され得る。このような獣医学用組成物の例としては、(a)経口投与、外用(例えば、飲薬(例えば、水性もしくは非水性の液剤もしくは懸濁物);錠剤もしくはボーラス;飼料と混合するための散剤、顆粒もしくはペレット;舌に適用するためのペースト;(b)非経口投与(例えば、皮下注射、筋肉内注射もしくは静脈内注射(例えば、滅菌液剤もしくは懸濁物として)による;または(適切な場合)懸濁物もしくは液剤が乳頭を介して乳房中に導入される乳腺内注射による);(c)局所適用(例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏、もしくはスプレーとして);あるいは(d)直腸もしくは膣内に(例えば、ペッサリー、クリーム剤もしくは泡沫物として)、のために適合されたものが挙げられる。
【0072】
本発明は、リン酸カルシウム粒子を作製するための方法をさらに包含し、上記方法は、a)カルシウム塩の水溶液と、リン酸塩の水溶液とを、共沈降剤の存在下で接触させる工程;b)工程a)において得られた溶液を、所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで混合する工程;およびc)上記リン酸カルシウム粒子を回収する工程、を包含する。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記水溶液中の上記カルシウム塩の濃度は、約5mM〜約200mMの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、上記水溶液中の上記リン酸塩の濃度は、約5mM〜約200mMの範囲である。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記カルシウム塩の水溶液と、上記リン酸塩の水溶液とを、上記共沈降剤の存在下で接触させる工程の前に、生物学的に活性な高分子を上記リン酸塩の水溶液もしくは上記カルシウム塩の水溶液に添加する工程をさらに包含し、それによって、上記リン酸カルシウム粒子は、上記生物学的に活性な高分子と共結晶化される。
【0075】
本明細書で記載される場合、上記共沈降剤は、胆汁酸塩、脂肪酸塩、もしくはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、上記胆汁酸塩は、コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、タウロウルソデオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、上記脂肪酸塩は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせから成る群より選択され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記共沈降剤の濃度は、約0.01%〜約5%、約0.2%〜約3%、もしくは約0.5%〜約1.5%の範囲に及ぶ。
【0077】
本発明の粒子は、表面改変剤でさらにコーティングされてもよいし、これに含浸されてもよいし、またはその両方であってもよい。本発明における使用に適切なこのような表面改変剤としては、上記高分子を変性させることなく、上記粒子への生物学的に活性な高分子の結合もしくは捕捉を促進する物質が挙げられる。適切な表面改変剤の例は、米国特許第5,460,830号、同第5,462,751号、同第5,460,831号および同第5,219,577号に記載されている。適切な表面改変剤の他の例としては、塩基性の糖もしくは改変された糖(例えば、セロビオース)、または米国特許第5,219,577号に記載されるオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。適切な表面改変剤としてはまた、炭水化物、炭水化物誘導体、および例えば、米国特許第5,460,830号に記載されるように、−OH側基の存在量によって特徴付けられる炭水化物様成分を有する他の高分子が挙げられる。ポリエチレングリコール(PEG)は、特に適切な表面改変剤である。
【0078】
リン酸カルシウム粒子のコーティングは、表面改変剤のストック溶液(例えば、セロビオースもしくはPEG(例えば、約292mM))を、リン酸カルシウムコア粒子の懸濁物に、ストック溶液約1ml 対 粒子懸濁物約20mlの比で添加することによって、調製され得る。上記混合物は、渦を巻かせて、少なくとも部分的にコーティングされたコア粒子を形成するように、一晩放置させられ得る。一般に、この手順は、上記粒子の実質的に完全なコーティングを生じるが、いくらかの部分的にコーティングされたもしくはコーティングされていない粒子が存在し得る。
【0079】
さらなる局面において、本発明は、生物学的に活性な高分子での処置の必要な被験体を処置するための方法を提供し、上記方法は、上記被験体に、治療上有効な量の、本発明のリン酸カルシウム粒子を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。1つの好ましい実施形態において、上記生物学的に活性な高分子は、GLP−1アゴニスト(例えば、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体)である。
【0080】
本発明の組成物の投与は、当該分野で公知の任意の手段によるものであり得る。これら手段としては、以下が挙げられる:経口、静脈内、皮下、吸入を介して、動脈内、筋肉内、心臓内、心室内、非経口、鞘内、および腹腔内。投与は、全身性(例えば、静脈内に)であってもよいし、局所的であってもよい。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、粘膜表面に投与され得る。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、経口経路を介して投与される。
【0081】
以下の実施例は、例示目的で含まれ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0082】
(実施例1:リン酸カルシウムナノ粒子へのエクセナチドの被包効率に対するウルソデオキシコール酸塩の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子へのエクセナチドの被包効率に対する胆汁酸塩の効果を評価するために、2本の50ml遠心チューブをとり、以下の表に列挙した成分を添加する。200mgのポリエチレングリコール(PEG,MW6000)、0mgもしくは70mgのいずれかのデオキシコール酸塩(エタノール中に溶解し、等モル量のNaOHで中和した)、20mM HEPES緩衝液(pH6.9)、0.4ml 2.5M Na2HPO4を添加し、その最終容積を、蒸留水で10mlに調節した。上記溶液を、A1およびA2とラベルをつけた。それらの組成を、表1にまとめる。
【0083】
【表1】

2本の別個の50ml 遠心チューブ中に、60mM CaCl2および1.5mg/ml エクセナチドを、10ml溶液において添加し、B1およびB2とラベルをつけた。280nmでの光学密度を、両方のB溶液に対して測定した。リン酸カルシウムナノ粒子を、対応するA溶液およびB溶液をゆっくりと混合することによって形成した。沈殿がすぐに認められ、室温に置いて5分間、穏やかな混合を継続した。上記混合物を、8000rpmにおいて10分間、遠沈させた。その上清の280nmでの光学密度を測定し、以下の式を使用して、被包効率を計算した:
効率(%)=[1−(上清のOD280×20)/(溶液BのOD280×10)]×100%
得られたナノ粒子の被包効率を、表2にまとめる。
【0084】
【表2】

上記結果は、エクセナチドが、UDCAの非存在下ではリン酸カルシウムナノ粒子へ不十分にしか被包されず、UDCAの存在が、エクセナチドの被包効率を顕著に高める(10倍)ことを示す。
【0085】
(実施例2:リン酸カルシウムナノ粒子へのエクセナチドの被包効率に対するカプリン酸塩の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子へのエクセナチドの被包効率に対するカプリン酸塩の効果を評価するために、3本の50ml遠心チューブをとり、以下の表に列挙した成分を添加する。200mgのポリエチレングリコール(PEG,MW 6000)、0mg、50mgもしくは100mgいずれかのカプリン酸ナトリウム(エタノール中に溶解)、20mM HEPES緩衝液(pH6.9)、および20mM Na2HPO4を添加し、その最終容積を、蒸留水で10mlに調節した。上記溶液を、A1〜A3とラベルをつけた。それらの組成を、表3にまとめる。
【0086】
【表3】

3本の別個の50ml遠心チューブ中に、60mM CaCl2および1.5mg/ml エクセナチドを、10ml溶液において添加し、B1〜B3とラベルをつけた。280nmでの光学密度を、全てのB溶液に対して測定した。リン酸カルシウムナノ粒子を、対応するA溶液およびB溶液をゆっくりと混合することによって形成した。沈殿がすぐに認められ、室温に置いて5分間、穏やかな混合を継続した。上記混合物を、8000rpmにおいて10分間、遠沈させた。その上清の280nmでの光学密度を測定し、被包効率を実施例1のように計算した。得られたナノ粒子の被包効率を、表4にまとめる。
【0087】
【表4】

上記結果は、エクセナチドが、カプリン酸塩の非存在下ではリン酸カルシウムナノ粒子へ不十分にしか被包されず、カプリン酸塩の存在は、エクセナチドの被包効率を用量依存性様式において顕著に高めることを示す。
【0088】
(実施例3:リン酸カルシウムナノ粒子へのインスリンの被包効率に対するカプリン酸塩の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子へのインスリンの被包効率に対するカプリン酸塩の効果を評価するために、3本の50ml遠心チューブをとり、以下の表に列挙した成分を添加する。200mgのポリエチレングリコール(PEG,MW 6000)、0mg、39mgもしくは117mgいずれかのカプリン酸ナトリウム、20mM HEPES緩衝液(pH6.9)、および20mM Na2HPO4を添加し、最終容積を、蒸留水で10mlに調節した。上記溶液を、A1〜A3とラベルをつけた。それらの組成を、表5にまとめる。
【0089】
【表5】

3本の別個の50ml遠心チューブ中に、60mM CaCl2および1mg/ml インスリンを、10ml溶液において添加し、B1〜B3とラベルをつけた。280nmでの光学密度を、全てのB溶液に対して測定した。リン酸カルシウムナノ粒子を、対応するA溶液およびB溶液をゆっくりと混合することによって形成した。沈殿がすぐに認められ、室温に置いて5分間、穏やかな混合を継続した。上記混合物を、8000rpmにおいて10分間、遠沈させた。その上清の280nmでの光学密度を測定し、被包効率を実施例1のように計算した。得られたナノ粒子の被包効率を、表6にまとめる。
【0090】
【表6】

上記結果は、カプリン酸塩の存在下では、リン酸カルシウムナノ粒子へのインスリンの被包効率は、用量依存性様式において顕著に改善されたことを示す。
【0091】
(実施例4:エクセナチド被包リン酸カルシウムナノ粒子のインビボ活性)
エクセナチド被包リン酸カルシウムナノ粒子の活性を、ob/ob糖尿病マウスモデルにおいて評価した。
【0092】
(動物)
32匹の8〜10週齢ob/obマウス(Jackson Labs)を、換気した部屋において飼育した。飼料および水は、自由給餌とした。明サイクルを、12時間毎に設定した。
【0093】
(処置)
マウスに2時間絶食させ、絶食時血糖を測定し、マウスを無作為に、各群8匹ずつの4群に分けた:
a.ブランク、1個のブランクカプセル剤で処置した、
b.SC、BYETTA(登録商標)皮下注射、0.5μg/マウス、
c.PO1、経口エクセナチド、1カプセルもしくは1μg 処方エクセナチド/マウス(実施例1に従って処方)、および
d.PO5、経口エクセナチド、1カプセルもしくは5μg 処方エクセナチド/マウス(実施例1に従って処方)。
【0094】
カプセル剤を、胃管栄養ニードルによって投与し、BYETTA(登録商標)を皮下投与した。血液サンプルを、0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、および10時間において、尾静脈から採血し、その血糖レベルを、血糖計(ReliOn Ultima)で決定した。2匹の動物が、カプセル剤投与後に死亡したので、分析から排除した。
【0095】
絶食時血糖に対する経口エクセナチドの効果を、表7に示す。1μgの経口エクセナチドを用いると、上記血糖レベルは、ブランクコントロールと比較すると低下したが、そのレベルは、統計学的有意には達しなかった。5μg 経口エクセナチドを用いると、上記血糖レベルの低下は、大部分の時点で統計学的有意を達成した。
【0096】
【表7】

上記結果は、経口送達したエクセナチドが、用量依存性様式において上記絶食時血糖レベルを有意に低下させたことを示す。
【0097】
(実施例5:糖尿病患者における経口エクセナチドによる絶食時血糖の低下)
リン酸カルシウムナノ粒子中に被包された経口エクセナチドの可能性を、糖尿病患者で評価した。19名のII型糖尿病患者が、上記研究に志願した。上記研究設計は、オープンラベルであり、無作為化され、クロスオーバーであった。3サイクルの評価を、各患者に対して行った。
【0098】
第1のサイクルにおいて、各患者を、12時間より長く絶食させた。その血糖レベルを、翌朝にモニターした。ReliOn Ultimaを使用して、指穿刺サンプリングで血糖レベルを決定した。このサイクルでは処置を行わず、ベースラインを確立した。
【0099】
第2のサイクルにおいて、各患者を、12時間より長く絶食させた。その血糖レベルを、翌朝に測定した。各患者に、時間0において、5μgのBYETTA(登録商標)を皮下注射によって与え、その絶食時血糖レベルを、処置の6時間後にモニターした。
【0100】
第3のサイクルにおいて、各患者を、12時間より長く絶食させ、その絶食時血糖レベルを、翌朝測定した。各患者に、25μg、50μg、75μg、もしくは100μgいずれかの経口エクセナチド処方物(実施例1に記載されるように処方した)を与え、その絶食時血糖レベルを、処置の6時間後にモニターした。各患者に、経口エクセナチドを1回与えた。
【0101】
各患者についての測定値の順序は自由裁量に依り、各サイクル後に2日間の洗い出し期間があった。上記研究の後に、上記ベースラインサイクルにおいて18名の患者のデータ、BYETTA(登録商標)注射サイクルにおいて18名の患者のデータ、25μgおよび50μgの経口エクセナチド処置において5名の患者のデータ、ならびに75μgおよび100μgの経口エクセナチド処置において4名の患者のデータがあった。
【0102】
各サイクルにおける処置前の血糖レベルと比較した%血糖変化を、表8に示す。BYETTA(登録商標)の皮下注射は、ベースラインサイクルと比較して、血糖の有意な低下を生じた。上記経口エクセナチド処置の各々は、BYETTA(登録商標)の皮下注射と比較して、処置の2時間後に血糖のよりゆっくりとした低下、および処置の6時間後に類似の血糖低下レベルを示した。
【0103】
【表8】

この研究は、リン酸カルシウムナノ粒子中に被包されたエクセナチドの経口投与が、糖尿病患者における血糖レベルの有意な低下を達成し得ることを実証する。
【0104】
(実施例6:UDCAの存在下での被包効率に対するインスリン濃度の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子への被包効率に対するインスリン濃度の効果を評価するために、20mg/ml ポリエチレングリコール(PEG,MW 10000,Fluka)、20mM HEPES(pH6.964)、7.5mg/ml ウルソデオキシコール酸ナトリウム、10mM Na2HPO4を含む溶液を、調製した。60mM CaCl2と、1mg/mlもしくは4mg/mlいずれかのインスリンとを含む第2の溶液もまた、調製した。両方の溶液の最終容積を、20mlに調節し、インスリンを含むサンプルからアリコートを採取して、280nmでの光学密度を決定した。攪拌しながら、上記2つの溶液を混合したところ、沈殿がすぐに認められた。室温において5分間、攪拌を継続し、溶液を、10000rpmにおいて15分間、遠心分離した。280nmにおいてその上清の光学密度を測定して、実施例1におけるように被包効率を概算した。各成分の最終濃度および得られた被包効率を、表9に列挙する。
【0105】
【表9】

上記結果は、ウルソデオキシコール酸塩(UDCA)の存在下でのリン酸カルシウムナノ粒子中のインスリンの被包効率が、インスリン濃度に関わらず高かったことを明らかに実証する。
【0106】
(実施例7:カプリン酸ナトリウムの存在下での被包効率に対するインスリン濃度の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子への被包効率に対するインスリン濃度の効果を評価するために、20mg/ml ポリエチレングリコール(PEG,MW 10000,Fluka)、20mM HEPES(pH6.964)、11.7mg/ml カプリン酸ナトリウム、10mM Na2HPO4を含む溶液を、調製した。60mM CaCl2と、0.2mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/mlもしくは4mg/mlのインスリンを含む、5つの塩化カルシウム溶液を調製した。各溶液の最終容積を、20mlに調節し、各インスリン含有サンプルからアリコートを採取して、280nmでの光学濃度を決定した。攪拌しながら、上記2つの溶液を混合したところ、沈殿がすぐに認められた。室温において5分間、攪拌を継続し、10000rpmにおいて15分間、溶液を遠心分離した。280nmにおいて、その上清の光学密度を測定して、実施例1におけるように被包効率を概算した。各成分の最終濃度および対応する被包効率を、表10にまとめる。
【0107】
【表10】

この結果は、カプリン酸ナトリウムによるリン酸カルシウムナノ粒子中のインスリン被包が、インスリン濃度に依存し、最適インスリン濃度が、0.25〜0.5mg/mlの間に入ることを実証する。より低いインスリン濃度もしくはより高いインスリン濃度(それぞれ、0.1mg/mlもしくは≧1.0mg/ml)において得られた被包効率は、0.25mg/mlもしくは0.5mg/mlのインスリンにおいて得られたものより低かった。この知見は、ウルソデオキシコール酸塩(UDCA)の存在下でのインスリンの被包効率が、インスリン濃度とは無関係であったという実施例6における観察に鑑みて、驚くべきことである。
【0108】
(実施例8:カプリン酸ナトリウムの存在下での被包効率に対するエクセナチド濃度の効果)
リン酸カルシウムナノ粒子への被包効率に対するエクセナチド濃度の効果を評価するために、20mg/ml ポリエチレングリコール(PEG,MW 10000,Fluka)、20mM HEPES(pH6.964)、11.7mg/ml カプリン酸ナトリウム、10mM Na2HPO4を含む溶液を調製した。60mM CaCl2と、0.2mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/mlもしくは4mg/mlのエクセナチドとを含む、5つの塩化カルシウム溶液を、調製した。各溶液の最終容積を、20mlに調節し、各エクセナチド含有サンプルからアリコートを採取して、280nmでの光学密度を決定した。撹拌しながら、上記2つの溶液を混合したところ、沈殿がすぐに認められた。室温において5分間、攪拌を継続し、10000rpmにおいて15分間、溶液を遠心分離した。各成分の最終濃度を、以下の表に列挙する。280nmにおいて、その上清の光学密度を測定して、実施例1におけるように被包効率を概算した。各成分の最終濃度および対応する被包効率を、表11にまとめる。
【0109】
【表11】

実施例7の結果と同様に、この実験は、カプリン酸ナトリウムによるリン酸カルシウムナノ粒子中のエクセナチド被包の増強が、エクセナチド濃度に依存することを実証する。その被包効率は、より高い濃度のエクセナチド(≧1.0mg/ml)において有意に低く、最適エクセナチド濃度は、0.1〜0.5mg/mlの間に入った。もう一度繰り返すと、これは、驚くべき発見である。なぜなら、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の存在下でのエクセナチドの被包効率は、エクセナチド濃度に無関係であったからである(データは示さず)。
【0110】
従って、たとえ、リン酸カルシウムナノ粒子への生物学的に活性な高分子(例えば、インスリン、もしくはエクセナチド)の被包効率が、胆汁酸塩(例えば、UDCA)および中鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸塩)によって類似の程度にまで高められ得るとしても、本発明者らは、これら化合物の被包増強プロフィールが、極めて異なることを予測外にも発見した。上記UDCA誘導性増強は、薬物濃度に無関係であるのに対して、上記カプリン酸塩誘導性増強は、有意な濃度依存性を示す。今日までに得られた結果に基づいて、カプリン酸塩誘導性増強のための最適高分子濃度は、0.2〜1.0mg/mlの間であるようである。
【0111】
(実施例9:UDCA含有ナノ粒子によるインスリン放出)
実施例6において作った上記リン酸カルシウムナノ粒子によるインスリン放出を評価するために、上記ナノ粒子を、0.2M リン酸ナトリウム緩衝液(pH9.1)、もしくは0.01N HCl溶液(pH2.0)のいずれかの中に懸濁した。上記ナノ粒子濃度は、1.5mg/mlであり、上記混合物を、37℃において60分間振盪した。次いで、10000rpmにおいて10分間、上記サンプルを遠沈して、上記ナノ粒子を取り出した。上清を、0.45μmフィルタを使用して透明にし、インスリン含有量を、HPLCによって測定した。UDCA含有リン酸カルシウムナノ粒子から放出されたインスリン含有量を、表12に示す。
【0112】
【表12】

上記UDCA含有ナノ粒子は、0.2M リン酸ナトリウム緩衝液中でほとんど透明であり、インスリン放出は、本質的に完全であるようであった。しかし、0.01N HCl溶液中では、上記粒子は、完全には溶解せず、インスリン放出は完全ではなかった。
【0113】
(実施例10:カプリン酸塩含有ナノ粒子によるインスリン放出)
実施例7において作ったリン酸カルシウムナノ粒子によるインスリン放出を評価するために、上記ナノ粒子を、0.2M リン酸ナトリウム緩衝液(pH9.1)、もしくは0.01N HCl溶液(pH2.0)のいずれかの中で懸濁した。上記ナノ粒子濃度は、1.5mg/mlであり、上記混合物を、37℃において60分間振盪した。次いで、上記サンプルを、10000rpmにおいて10分間遠沈して、上記粒子を取り出した。上記上清を、0.45μmを使用して透明にし、インスリン含有量を、HPLCによって測定した。上記カプリン酸塩含有リン酸カルシウム粒子から放出されたインスリン含有量を、表13に示す。
【0114】
【表13】

上記カプリン酸塩含有ナノ粒子は、上記0.01N HCl溶液中でほとんど透明であり、インスリン放出は完全であるようであった。しかし、上記0.2M リン酸ナトリウム緩衝液中では、上記粒子は、完全には溶解されなかったが、インスリン含有量は、上記0.01N HCl溶液中のカプリン酸塩含有ナノ粒子から放出されたものに近かった。
【0115】
実施例9および実施例10に示される結果は、UDCA含有リン酸カルシウムナノ粒子およびカプリン酸塩含有リン酸カルシウムナノ粒子が、異なるインスリン放出挙動を示すことを示す。上記UDCA含有ナノ粒子は、高いpH(0.2M リン酸ナトリウム(pH9.1))においてより効率的な粒子溶解およびより完全なインスリン放出を示すのに対して、上記カプリン酸塩含有ナノ粒子は、低pH(0.01N HCl(pH2.0))においてより効率的な粒子溶解を示す。驚くべきことに、上記カプリン酸塩含有ナノ粒子により放出されたインスリンは、この研究においてpHとは無関係であるようであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子であって、該粒子は、
a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;
b)該コアナノ粒子中に被包されたGLP−1アゴニスト;および
c)該コアナノ粒子中に被包された胆汁酸塩を含む共沈降剤;
を含み、ここで該胆汁酸塩の存在は、該胆汁酸塩を含まないリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して、該コアナノ粒子への該GLP−1アゴニストの被包効率を高める、
複数の粒子。
【請求項2】
前記GLP−1アゴニストは、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記コアナノ粒子は、300nmより小さい平均直径を有する、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記胆汁酸塩は、コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、タウロウルソデオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物は、カプセル剤、錠剤、球体、もしくは散剤の形態である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物は、腸溶性コーティングをさらに含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
吸収増強剤をさらに含む、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記吸収増強剤は、中鎖脂肪酸塩である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記中鎖脂肪酸塩は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
GLP−1アゴニスト処置の必要がある被験体を処置するための方法であって、該方法は、該被験体に、治療上有効な量の、請求項5〜10のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
前記薬学的組成物は、経口経路を介して投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬学的組成物は、粘膜表面に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
複数の粒子であって、
a)複数のリン酸カルシウムコアナノ粒子;
b)該コアナノ粒子中に被包された生物学的に活性な高分子;および
c)該コアナノ粒子中に被包された脂肪酸塩を含む共沈降剤;
を含み、ここで該脂肪酸塩の存在は、該脂肪酸塩を含まないリン酸カルシウムコアナノ粒子と比較して、該コアナノ粒子への該生物学的に活性な高分子の被包効率を高める、
複数の粒子。
【請求項15】
前記コアナノ粒子は、300nmより小さい平均直径を有する、請求項14に記載の粒子。
【請求項16】
前記脂肪酸塩は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の粒子。
【請求項17】
前記生物学的に活性な高分子は、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、および炭水化物からなる群より選択される、請求項14に記載の粒子。
【請求項18】
前記生物学的に活性な高分子は、GLP−1アゴニスト、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、PTH、カルシトニン、ロイプロリド、およびこれらの誘導体からなる群より選択される、請求項17に記載の粒子。
【請求項19】
前記GLPアゴニストは、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体である、請求項18に記載の粒子。
【請求項20】
請求項14に記載の粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項21】
前記組成物は、カプセル剤、錠剤、球体、もしくは散剤の形態である、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記組成物は、腸溶性コーティングをさらに含む、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
吸収増強剤をさらに含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記吸収増強剤は、中鎖脂肪酸塩である、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記中鎖脂肪酸塩は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
生物学的に活性な高分子の処置を必要とする被験体を処置するための方法であって、該方法は、該被験体に、治療上有効な量の、請求項20〜25のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項27】
前記薬学的組成物は、経口経路を介して投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記薬学的組成物は、粘膜表面に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
複数のリン酸カルシウム粒子を作製するための方法であって、該方法は、
a)カルシウム塩の水溶液と、リン酸塩の水溶液とを、脂肪酸塩を含む共沈降剤の存在下で接触させる工程;
b)工程a)において得られた溶液を、所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで混合する工程;および
c)該リン酸カルシウム粒子を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項30】
前記脂肪酸塩は、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記カルシウム塩は、約5mM〜約200mMの範囲に及ぶ濃度を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記リン酸塩は、約5mM〜約200mMの範囲に及ぶ濃度を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記カルシウム塩の水溶液と、前記リン酸塩の水溶液とを、前記脂肪酸塩を含む共沈降剤の存在下で接触させる工程の前に、生物学的に活性な高分子を、該リン酸塩の水溶液もしくは該カルシウム塩の水溶液に添加する工程をさらに包含し、それによって、前記リン酸カルシウム粒子は、該生物学的に活性な高分子と共結晶化される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記生物学的に活性な高分子は、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、および炭水化物からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的に活性な高分子は、GLP−1アゴニスト、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、PTH、カルシトニン、ロイプロリド、およびこれらの誘導体からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記GLPアゴニストは、エクセナチドまたはその生理学的に受容可能な塩もしくは誘導体である、請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519867(P2011−519867A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507701(P2011−507701)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042627
【国際公開番号】WO2009/135190
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(506274305)ノッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】