説明

治療用化合物のトシル酸塩およびその医薬組成物

【課題】ヒスタミン3(H3)受容体拮抗作用薬の提供。
【解決手段】下式(1)トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)−フェニル]−シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩、その溶媒和物(例えば水和物)、その多形体、その医薬組成物;ならびにその治療有効量を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書で記載するような式1の化合物のトシル酸塩、その好ましい塩を含む医薬組成物、ならびにそのような好ましい医薬組成物を使用して、ヒスタミン3(H)受容体に拮抗作用を及ぼすことにより治療することのできる障害または状態を治療する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは、通常はヒスタミンの拮抗薬または「抗ヒスタミン薬」で治療される過敏感反応(たとえば、アレルギー、枯草熱、および喘息)のよく知られたメディエーターである。また、ヒスタミン受容体は、HおよびH受容体と呼ばれる少なくとも2種の異なる型で存在することも確認されている。
【0003】
第3のヒスタミン受容体(H受容体)は、中枢神経系での神経伝達において役割を果たすと考えられており、中枢神経系では、H受容体が、ヒスタミン作動性神経終末上でシナプス前部に配置されていると考えられる(Nature、302、S32−S37(1983))。H受容体の存在は、選択的H受容体作動薬および拮抗薬の開発によって確認され(Nature、327、117−123(1987))、その後、中枢神経系と末梢器官の両方、特に肺、心臓血管系、および消化管で神経伝達物質の放出を調節することがわかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
いくつかの疾患または状態をヒスタミン3受容体リガンドで治療することができ、Hリガンドは、拮抗薬、作動薬、または部分作動薬となり得る。以下を参照されたい。(Imamura et al.、Circ.Res.、(1996)78、475−481);(Imamura et.al.、Circ.Res.、(1996)78、863−869);(Lin et al.、Brain Res.(1990)523、325−330);(Monti et al.、Neuropsychopharmacology(1996)15、31 35);(Sakai、et al.、Life Sci.(1991)48、2397−2404);(Mazurkiewicz−Kwilecki and Nsonwah、Can.J.Physiol.Pharmacol.(1989)67、75−78);(Panula、P.et al.、Neuroscience(1998)44、465−481);(Wada et al.、Trends in Neuroscience(1991)14、415);(Monti et al.、Eur.J.Pharmacol.(1991)205、283);(Haas et al.、Behav.Brain Res.(1995)66、41−44);(De Almeida and Izquierdo、Arch.Int.Pharmacodyn.(1986)283、193−198);(Kamei et al.、Psychopharmacology(1990)102、312−318);(Kamei and Sakata、Japan.J.Pharmacol.(1991)57、437−482);(Schwartz et al.、Psychopharmacology;The Fourth Generation of Progress、Bloom and Kupfer(eds.)、Raven Press、New York、(1995)397);(Shaywitz et al.、Psychopharmacology(1984)82、73−77);(Dumery and Blozovski、Exp.Brain Res.(1987)67、61−69);(Tedford et al.、J.Pharmacol.Exp.Ther.(1995)275、598−604);(Tedford et al.、Soc.Neurosci.Abstr.(1996)22、22);(Yokoyama et al.、Eur.J.Pharmacol.(1993)234、129);(Yokoyama and Iinuma、CNS Drugs(1996)5、321);(Onodera et al.、Prog.Neurobiol.(1994)42、685);(Leurs and Timmerman、Prog.Drug Res.(1992)39、127);(The Histamine H3 Receptor、Leurs and Timmerman(ed.)、Elsevier Science、Amsterdam(1998);(Leurs et al.、Trends in Pharm.Sci.(1998)19、177−183);(Phillips et al.、Annual Reports in Medicinal Chemistry(1998)33、31−40);(Matsubara et al.、Eur.J.Pharmacol.(1992)224、145);(Rouleau et al.、J.Pharmacol.Exp.Ther.(1997)281、1085);(A.Szelag、「Role of histamine H3−receptors in the proliferation of neoplastic cells in vitro」、Med.Sci.Monit.、4(5):747−755、(1998));(C.Fitzsimons、H.Duran、F.Labombarda、B.Molinari、E.Rivera、「Histamine receptors signalling in epidermal tumor cell lines with H−ras gene alterations」、Inflammation Res.、47(Suppl.1):S50−S51、(1998));(R.Leurs、R.C.Vollinga、H.Timmerman、「The medicinal chemistry and therapeutic potentials of ligand of the histamine H3 receptor」、Progress in Drug Research 45:170、(1995));(R.Levi and N.C.E.Smith、「Histamine H3−receptors:A new frontier in myocardial ischemia」、J.Pharm.Exp.Ther.、292:825−830、(2000));(Hatta,E.、K Yasuda、R.Levi、「Activation of histamine H3 receptors inhibits carrier−mediated norepinephrine release in a human model of protracted myocardial ischemia」、J.Pharm.Exp.Ther.、283:494−500、(1997));(H.Yokoyama and K.Iinuma、「Histamine and Seizures:Implications for the treatment of epilepsy」、CNS Drugs、5(5);321−330、(1995));(K.Hurukami、H.Yokoyama、K.Onodera、K.Iinuma、T.Watanabe、AQ−0 145、「A newly developed histamine H3 antagonist、decreased seizure susceptibility of electrically induced convulsions in mice」、Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.、17(C):70−73、(1995);(Delaunois A.、Gustin P.、Garbarg M.、Ansay M.、「Modulation of acetylcholine、capsaicin and substance P effects by histamine H3 receptors in isolated perfused rabbit lungs」、European Journal of Pharmacology 277(2−3):243−50、(1995));および(Dimitriadou et al.、「Functional relationship between mast cells and C−sensitive nerve fibres evidenced by histamine H3−receptor modulation in rat lung and spleen」、Clinical Science 87(2):151−63、(1994)。そのような疾患または状態には、急性心筋梗塞などの心臓血管障害;アルツハイマー病や注意欠陥多動性障害などの、記憶の経過、認知症、および認知障害;パーキンソン病、統合失調症、うつ病、てんかん、てんかん発作または痙攣などの神経障害;皮膚癌、甲状腺髄様癌、黒色腫などの癌;喘息などの呼吸器障害;ナルコレプシーなどの睡眠障害;メニエール病などの前庭機能不全;消化器疾患、炎症、偏頭痛、動揺病、肥満、疼痛、ならびに敗血症ショックが含まれる。
【特許文献】
【0005】
受容体拮抗薬は、たとえば、WO03/050099、WO02/0769252、WO02/12224、および米国特許公開第2005/0171181号A1にも以前から記載されている。ヒスタミンH受容体(H3R)は、ヒスタミン、ならびにセロトニンおよびアセチルコリンを含めた他の神経伝達物質の放出を調節する。H3Rは、比較的ニューロン特異的であり、ヒスタミンなどの特定のモノアミンの放出を抑制する。H3R受容体に対する選択的な拮抗作用は、脳ヒスタミンレベルを上昇させ、非特異的な末梢性の影響は最小限に抑えながら、食物摂取などの活動を抑制する。この受容体の拮抗薬は、脳ヒスタミンおよび他のモノアミンの合成および放出を増大させる。この機序によって、こうした拮抗薬は、覚醒の延長、認知機能の改善、食物摂取の減少、および前庭反射の正常化を誘発する。したがって(本明細書に記載の用途は、このような述べられた機序によって決して限定されないとしても)、この受容体は、アルツハイマー病;注意欠陥多動障害(ADHD)、認知の欠陥、肥満、めまい、統合失調症、てんかん、睡眠障害、ナルコレプシー、および動揺病を含めた気分および注意の調整、ならびに様々な形の不安において、新しい治療薬のための重要なターゲットである。
【0006】
これまでのヒスタミンH受容体拮抗薬の大多数は、たとえばWO96/38142に記載されているように、置換されていてもよいイミダゾール環を有する点でヒスタミンに似ている。βヒスタミンなどの非イミダゾール系向神経活性化合物(Arrang、Eur.J.Pharm.1985、111:72−84)は、若干のヒスタミンH受容体活性を示したが、効力が不十分である。EP978512およびEP0982300A2は、非イミダゾール系アルキルアミンをヒスタミンH3受容体拮抗薬として開示している。WO02/12224(Ortho McNeil Pharmaceuticals)は、非イミダゾール系二環式誘導体をヒスタミンH受容体リガンドとして記載している。他の受容体拮抗薬は、WO02/32893およびWO02/06233に記載されている。
【0007】
トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドおよびその塩酸塩ならびに他の同類の活性化合物を含めた、ヒスタミン3受容体の拮抗薬である化合物は、2006年10月13日出願の米国特許出願第11/549175号で言及されている。本出願と同じように所有され、その全体が参照により本明細書に援用される前述の出願は、その中で言及される化合物の薬学的に許容できる酸付加塩を総じて挙げている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次式1の化合物のトシル酸塩
【0009】
【化1】

、その溶媒和物(たとえば水和物)、その多形体、およびその医薬組成物を対象とする。式1の化合物は、本明細書では、トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドと呼ぶことができ、(トランス)3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボン酸イソブチルアミドと呼ぶこともある。
【0010】
式1の化合物は、ヒスタミン3(H)受容体の拮抗薬であり、中枢神経系のいくつかの障害、疾患、および状態の治療において有用である。この化合物は、特に、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病性障害、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、動揺病、呼吸器疾患、アレルギー、アレルギーによって誘発される気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心血管疾患、消化管疾患、消化管の運動性および酸分泌の過剰および低下からなる群から選択される障害または状態の治療において有用である。
【0011】
一実施形態では、本発明のトシル酸塩は、無水またはほぼ無水の多形体である。
【0012】
本発明のトシル酸塩は、固体状態安定性およびある種の製剤用賦形剤との適合性を含めた特性を示し、それによって、トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]−シクロブタンカルボキサミドの以前から知られている塩に優るものになっている。
【0013】
式1の化合物(トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミド)は、完全な非晶質から完全な結晶までに及ぶ一連の固体状態で存在し得る。用語「非晶質」とは、材料が分子レベルで長いきちんとした序列を欠き、温度に応じて、固体または液体の物理的特性を示し得る状態を指す。通常、そのような材料は、特有のX線回折パターンを示さず、固体の特性を示すが、より正式には液体であると記述される。加熱すると、固体の特性から液体の特性への変化が起こるが、これは通常、二次の状態変化を特徴とする(「ガラス転移」)。用語「結晶」とは、材料が分子レベルで規則的な整った内部構造を有し、明確なピークを伴う特有のX線回折パターンを与える固相を指す。そのような材料も、十分に加熱すると液体の特性を示すが、固体から液体への変化は、通常は一次の相転移を特徴とする(「融点」)。
【0014】
式1の化合物はまた、溶媒和していない形および溶媒和した形で存在する場合もある。用語「溶媒和物」は、本明細書では、本発明の化合物と1種または複数の薬学的に許容できる溶媒分子、たとえばエタノールとを含む分子複合体について述べるのに使用する。用語「水和物」は、前記溶媒が水であるときに用いる。
【0015】
現在受け入れられている有機水和物の分類系統は、隔離部位水和物、チャネル水和物、または金属イオン配位水和物を規定するものである。K.R.Morrisによる「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」(Ed.H.G.Brittain、Marcel Dekker、1995)を参照されたい。隔離部位水和物は、水分子が、介在する有機分子によって互いの直接の接触から隔離されている水和物である。チャネル水和物では、水分子は、格子チャネル中に存在し、そこで他の水分子と隣り合っている。金属イオン配位水和物では、水分子は、金属イオンに結合している。
【0016】
溶媒または水が堅く結合しているとき、複合体は、湿度に関係なく明確な化学量論性を有する。しかし、溶媒または水が、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物でのように弱く結合しているとき、水/溶媒の含有量は、湿度および乾燥条件に左右されることになる。そのような場合には、非化学量論性が標準となる。
【0017】
本発明の範囲内には、薬物および少なくとも1種の他の成分が化学量論量または非化学量論量で存在する(塩および溶媒和物以外の)多構成要素の複合体も含まれる。この種類の複合体には、クラスレート(薬物−宿主包接複合体)および共結晶が含まれる。後者は通常、非共有結合性の相互作用によって結合し合った中性分子成分の結晶性の複合体であると定義されるが、中性分子と塩の複合体になる場合もあるはずである。共結晶は、溶融結晶化によって、溶媒からの再結晶によって、または成分を物理的に擦り合わせて調製することができる。O.AlmarssonおよびM.J.ZaworotkoによるChem.Commun.、17、1889−1896(2004)を参照されたい。多構成要素複合体の一般の総説については、HaleblianによるJ Pharm.Sci.、64(8)、1269−1288(1975年8月)を参照されたい。
【0018】
式1の化合物は、適切な条件下に置かれたとき、中間状態(中間相または液晶)で存在することもある。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(融解物または溶液)の中間である。温度変化の結果として生じる中間状態は、「温度転移型」であると記述され、水や別の溶媒などの第二の成分を加えた結果として生じる中間状態は、「濃度転移型」であると記述される。濃度転移型の中間相を生成する可能性のある化合物は、「両親媒性」であると記述され、イオン性(−COONa、−COO、または−SONaなど)または非イオン性(−N(CHなど)極性頭部基を有する分子からなる。より多くの情報については、N.H.HartshorneおよびA.Stuartによる「Crystals and the Polarizing Microscope」、4th Edition(Edward Arnold、1970)を参照されたい。
【0019】
本発明のトシル酸塩はさらに、表Iならびに図1および図2A/2Bで示し、本明細書で論述するように、(示される誤差の範囲内で)銅放射線を用いて測定したとき、2θに関して示される主要なX線回折パターンピークを特徴とする。
【0020】
吸湿性は、正確に秤量したサンプルを段々に変化する水蒸気圧下に置き、その間重量変化を同時に記録する、動的な蒸気収着技術を使用して評価した。実験は、25℃の等温で行う。
【0021】
本発明の別の実施形態は、式1の化合物のトシル酸塩と、薬学的に許容できる担体または賦形剤とを含む医薬組成物、特に、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病性障害、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、動揺病、呼吸器疾患、アレルギー、アレルギーによって誘発される気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心血管疾患、消化管疾患、消化管の運動性および酸分泌の過剰および低下の治療での使用に向けた医薬組成物に関する。
【0022】
本発明はさらに、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病性障害、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、動揺病、呼吸器疾患、アレルギー、アレルギーによって誘発される気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心血管疾患、消化管疾患、消化管の運動性および酸分泌の過剰および低下の治療方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に式1の化合物の塩を投与することを含む方法に関する。
【0023】
本発明はまた、
(i)適切な溶媒に溶解させた式1の化合物をp−トルエンスルホン酸(一般にトシル酸と呼ばれる)と接触させるステップと、
(ii)生成した結晶を収集するステップと
を含む、式1の化合物のトシル酸塩の調製方法に関する。
【0024】
本発明はまた、本発明の方法に従って調製される、トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミド(1)のトシル酸塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩について観察されたX線粉末回折パターンで認められるピークの相対強度を示す完全な表である。
【図2A】2Th/Th固定、開始3.000度、終了40.000度、0.040度ステップ、ステップ時間1秒、室温(25℃)という実施条件で観察された、トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩についてのX線粉末回折パターン(y軸は毎秒の線形カウント;Xは度数2θ)を示すグラフである。
【図2B】やはり2Th/Th固定、開始3.000度、終了40.000度、0.040度ステップ、ステップ時間1秒、室温(25℃)という実施条件で測定した、図1で報告されるすべてのピーク(たとえば、d=14.04179、d=10.58016)を特定するグラフである。
【図3】トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩サンプル4.1230mgについて、5.00℃/分で30℃から300℃まで実施した示差走査熱量測定トレースを示すグラフであり、2つの主な事象が(A)積分−330.12mJ、正規化後−80.07Jg−1、開始169.42℃、ピーク170.24℃、および(B)積分487.67mJ、正規化後118.28Jg−1、開始176.17℃、ピーク189.93℃として描かれる。
【図4】トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩の水分収着等温線を、吸着を下方の曲線として、脱着を上方の曲線として示すグラフであり、重量のパーセント変化を相対湿度の関数として動力学のフロースルー法を使用してプロットしている(17.17mg、25℃)。
【図5】水を吸着物(absorbate)として使用する段階等温線測定について求めた、トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩のVTI水分収着を示すデータである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
式1の化合物は、ヒスタミン3(H)受容体の拮抗薬であり、いくつかのCNS疾患、障害、および状態の治療において有用である。化合物の遊離塩基およびその塩酸塩は、2006年10月13日出願の米国特許出願第11/549175号に記載されている方法に従って調製することができる(WO2007/049123「Histamine−3 Receptor Antagonists」も参照されたい)。トシル酸塩は、様々な異なる条件下で調製することができる。一実施形態の方法では、式1の化合物の遊離塩基は、適切な溶媒に完全に溶解するまで溶解させ、それによって調製された溶液に、p−トルエンスルホン酸を加えて、本発明のトシル酸付加塩を作製することが好ましい。適切な溶媒には、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、およびメチルt−ブチルエーテルが含まれ、酢酸エチルまたはメタノールが好ましい。別の実施形態の方法では、溶液相での式1の化合物の接触は、p−トルエンスルホン酸の溶液または固体形態のp−トルエンスルホン酸で完了させる。
【0027】
接触させるステップは、1〜24時間の間、より好ましくは10〜20時間の間の時間をかけて実施し、得られる混合物の撹拌または混合を含むことが好ましい。好ましい実施形態の方法では、方法のステップ(i)は、周囲温度と溶媒の還流温度の間、より好ましくは周囲温度と約80℃の間で実施し、方法を25℃〜60℃の間で実施することが最も好ましい。好ましい適切な溶媒は、酢酸エチルまたはメタノールである。p−トルエンスルホン酸の付加が完了したならば、反応混合物を周囲温度に冷まし、残りの反応時間の間は撹拌することが好ましい。好ましい実施形態では、実施例1のプロトコルを参照願いたい。
【0028】
物理的な特徴付け
I(a).結晶化度
サンプルをシリコーン油中に準備し、交差偏光の下で観察した。このロットは結晶性であり、高度に複屈折を生じる針状粒子を含んでいる。非晶質の粒子は、このサンプルでは認められなかった。
【0029】
I(b).粉末X線回折
粉末X線回折を使用して、本発明のトシル酸塩が結晶性であるかどうかを判定した。銅放射線源、固定スリット(ダイバージェンス1.0mm、散乱防止1.0mm、および受光0.6mm)、およびSolex固体状態検出器を備え付けたBruker D5000回折計(ウィスコンシン州マディソン)を使用して、本発明のトシル酸塩の粉末X線回折パターンを収集した。データは、シータ2(2θ)θゴニオメーター配置で、平らなプレートサンプル保持器から、銅波長をKα=1.54056およびKα=1.54439(相対強度0.5)とし、3.0度から40.0度の2θにおいてステップサイズ0.040度およびステップ時間1秒を使用して収集した。X線管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび30mAにセットした。
【0030】
データは、Bruker DIFFRAC Plusソフトウェアを使用して収集および分析した。サンプルは、石英保持器に入れて準備した(Bruker D5000回折計の操作は、SiemansモデルD5000と同様であることに留意されたい)。結果を表1に要約するが、表1では、反射幅0.30および閾値4.0を使用して相対強度が7%以上であるすべての反射(線)についての2θ値および相対強度を提供する。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明は、銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θに関して示される主要なX線回折パターンピークが、表Iに示し、図1に完全にまとめてあるピークの任意の組合せを含む、式1の化合物のトシル酸塩を包含する。図2Aは、測定された主要なピーク高さの定量化を示す。たとえば、本発明は、2θ(±0.2)に関して示される主要なX線回折パターンピークが、100、10.6、7.2、9.2、9.2、17.7、57.6、11.1、11.4など、またはこれらの任意の部分集合もしくはその個々のピーク、たとえば、集合または個々の、100、10.6、7.2、および他のすべてのものである、式1の化合物のトシル酸塩を包含する。図2Bは、検出されたすべてのピーク高さの定量化を示す。
【0033】
2.熱分析
示差走査熱量測定は、ふたにピン穴の開いたアルミニウム受皿において、5℃/分の加熱速度で30℃から300℃まで実施した。単一の吸熱事象がTonset約169℃で検出された。融解直後に発熱事象が起こる。プロフィールを図3に示す。(動力学のフロースルー法によって行った)吸着/脱着等温線のプロットを図4に示す。
【0034】
ホットステージ顕微鏡観察では、DSCトレースで認められた吸熱への移行が融解事象に一致することが確認された。サンプルをシリコーン油中に準備し、10℃/分で室温から160℃に、次いで5℃/分で160℃から200℃に加熱しながら、交差偏光の下で観察した。粒子は、T(約)164℃で融解し始め、融解は、T167℃までに完了した。融解物の褐変は認められず、冷却した融解物の結晶化は起こらなかった。
【0035】
3.吸湿性
最初の乾燥サイクル(25℃、1〜3%RH)の間、約0.8%の重量減少が認められたが、これは無水形態と一致した。サンプルは、25℃で0%〜90%の相対湿度にさらしたとき、そのもとの重量の0.5%増加した(90%RHでCQG≦2%の重量増加)。この動力学的な実験で作成された吸湿性データ(VTI)は、生成物がごくわずかに吸湿性であることを示唆している。図5(VTI水分収着データ)では、1℃/分の加熱速度での段階等温曲線測定で得られる結果を報告する。
【0036】
4.溶解性
以下の情報は、水への溶解性に関して求めた。本発明のトシル酸塩は、溶解性が、0.1Mのリン酸緩衝溶液(最終pH6.3)中に5.0mgA/mL、0.5重量パーセントのタウロコール酸ナトリウム/ホスファチジルコリン塩を含む、最終pH7.4の0.1Mリン酸緩衝溶液中に7.0mgA/mL、および緩衝剤処理していない水(最終pH4.7)中に8.4mgA/mLである。これらの値は、薬物媒質混合物を温度循環プログラム(40℃で8時間、15℃で5時間、および25℃で12時間)にかけた後、RP−HPLC分析によって測定した、結晶性化合物の溶解性を示す。本発明のトシル酸塩の酵素なしの模擬胃液への見かけ上の溶解性は、7.1mgA/mLと14.2mgA/mLの間であった。
【0037】
本発明のトシル酸塩は、たとえば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって、固体充填物、粉末、またはフィルムとして提供することができる。マイクロ波または高周波乾燥をこの目的のために使用することもできる。
【0038】
トシル酸塩は、単独で、または1種または複数の他の薬物と組み合わせて投与することができる。一般に、そのような組成物は、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に製剤として投与される。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明の化合物以外の任意の成分について述べるのに使用する。賦形剤の選択は、大部分は、特定の投与方式、賦形剤が溶解性および安定性に及ぼす影響、剤形の性質などの要素に応じて決まる。
【0039】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に明らかであろう。そのような組成物およびその調製方法は、たとえば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、19th Edition(Mack Publishing Company、1995)で見ることができる。
【0040】
本発明のトシル酸塩は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように飲み込むもの、および/または化合物が口から直接に血流に入る頬側、舌側、もしくは舌下投与を含むものでよい。
【0041】
経口投与に適する製剤には、錠剤;多粒子もしくはナノ粒子、液体、または粉末を含有する軟または硬カプセル剤;(液体充填型を含めた)トローチ剤;咀嚼剤;ゲル;急速分散型剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;頬側/粘膜付着性のパッチなどの、固体、半固体、および液体系が含まれる。
【0042】
液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。このような製剤は、(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製の)軟または硬カプセル中に充填剤として使用することができ、通常は、担体、たとえば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油と、1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤とを含む。液体製剤は、たとえば小袋から出した固体を再形成して調製することもできる。
【0043】
本発明のトシル酸塩は、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981−986(2001)に記載されているものなどの急速溶解急速崩壊型の剤形にして使用することもできる。
【0044】
錠剤剤形では、薬物は、用量に応じて、剤形の1重量%〜80重量%、より典型的な例では剤形の5重量%〜60重量%を占めてよい。薬物に加え、錠剤は一般に、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例には、ナトリウムデンプングリコラート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが含まれる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を占めることになる。
【0045】
結合剤は一般に、錠剤製剤に粘着性の特性を付与するのに使用する。適切な結合剤には、微結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤も含有してよい。
【0046】
錠剤は、場合により、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤を含んでもよい。存在するとき、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%を占め、滑剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を占めてよい。
【0047】
錠剤は一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は一般に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を占める。
【0048】
他の考えられる成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および矯味剤が挙げられる。
【0049】
代表的な錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0050】
錠剤ブレンドを直接にまたはローラーによって圧縮して、錠剤を形成することができる。別法として、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部分を、湿式、乾式、もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押出し成形の処理にかけた後、打錠してもよい。最終の製剤は、1重または複数の層を含み、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよく、カプセル封入される場合さえもある。
【0051】
錠剤の製剤については、H.LiebermanおよびL.Lachmanによる「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、1(Marcel Dekker、New York、1980)で論述されている。
【0052】
ヒトまたは獣医学での用途のための摂取可能な経口フィルムは通常、急速溶解性でも粘膜付着性でもよい可撓性の水溶性または水膨張性薄膜剤形であり、通常は、式Iの化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調整剤、ならびに溶媒を含む。製剤のある成分が複数の機能を果たす場合もある。
【0053】
フィルム形成ポリマーは、天然の多糖類、タンパク質、または合成の親水コロイドから選択されるものでよく、通常は0.01〜99重量%の範囲、より典型的な例では30〜80重量%の範囲で存在する。
【0054】
他の考えられる成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤および風味増強剤、保存剤、唾液腺刺激剤、冷却剤、(油を含めた)共溶媒、緩和剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤、ならびに矯味剤が挙げられる。
【0055】
本発明によるフィルムは通常、可剥性の支持担体または紙にコートされた薄い水溶性フィルムを蒸発乾燥することによって調製する。これは、乾燥オーブンまたは乾燥トンネル、通常は複合塗工乾燥機で、または凍結乾燥もしくは減圧によって行うことができる。
【0056】
経口投与用の固体製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0057】
本発明の目的に適する変更型放出製剤は、米国特許第6106864号に記載されている。高エネルギー分散や浸透性粒子および被覆粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、VermaらによるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1−14(2001)で見られる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用は、WO00/35298に記載されている。
【0058】
本発明のトシル酸塩は、血流、筋肉、または内臓に直接に投与することもできる。非経口投与に適する手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、側脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液包内、および皮下が含まれる。非経口投与に適する装置には、(微細針を含めた)針注射器、無針注射器、および注入技術が含まれる。
【0059】
非経口製剤は通常、塩類、炭水化物、(好ましくはpH3〜9にするための)緩衝剤などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、一部の適用例では、無菌の非水性溶液として、または発熱物質を含まない無菌水などの適切な媒体と共に使用する乾燥形態としてより適切に製剤することもできる。
【0060】
たとえば凍結乾燥による無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準の製薬技術を使用して、容易に実現することができる。
【0061】
非経口溶液の調製で使用する本発明のトシル酸塩の溶解性は、溶解性改善剤を混ぜるなどの適切な製剤技術を使用して増大させることができる。
【0062】
非経口投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の変更型放出をもたらす、懸濁液として、または固体、半固体、もしくは移植デポー剤として投与するための揺変性液体として製剤することもできる。そのような製剤の例としては、薬物でコーティングされたステント、ならびに薬物を載せたdl−乳酸−グリコール酸共重合体(PGLA)ミクロスフェアを含む半固体および懸濁液が挙げられる。
【0063】
本発明のトシル酸塩は、皮膚上(内)に局所的に、または皮膚または粘膜に経皮的に投与することもできる。この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散粉剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウェーハ、植込錠、スポンジ、繊維、絆創膏、およびマイクロエマルジョンが含まれる。リポソームを使用してもよい。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。浸透性改善剤を混ぜることもできる。たとえば、FinninおよびMorganによるJ.Pharm.Sci.、88(10)、955−958(1999年10月)を参照されたい。
【0064】
他の局所投与手段には、電気穿孔、イオン導入法、音波泳動法、超音波導入法、ならびに微細針または無針(たとえばPowderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が含まれる。
【0065】
局所投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0066】
本発明のトシル酸塩は、通常は(単独、またはたとえばラクトースとの乾燥ブレンドにした混合物として、またはたとえばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合型成分粒子としての)乾燥粉末の形で乾燥粉末吸入器から;1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用しまたは使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気水力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザー)、またはネブライザーからエアロゾルスプレーとして;または点鼻液として、鼻腔内にまたは吸入によって投与することもできる。鼻腔内の使用では、粉末は、生体接着剤、たとえばキトサンまたはシクロデキストリンを含んでもよい。
【0067】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、たとえば、エタノール;エタノール水溶液;または活性物を分散させ、可溶化し、もしくはその放出を延長するのに適する別の薬品;溶媒としての噴射剤;ならびにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸などの随意選択の界面活性剤を含む、本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0068】
乾燥粉末または懸濁液製剤に使用する前に、薬物製品は、吸入による送達に適するサイズ(通常は5ミクロン未満)に微粒子化する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動層ジェット粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、または噴霧乾燥などの任意の適切な微粉砕法によって実現することができる。
【0069】
吸入器または注入器に入れて使用するためのカプセル(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製のもの)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤、およびl−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウムなどの性能調節剤からなる粉末混合物を含有するように製剤することができる。ラクトースは、無水でも、一水和物の形でもよく、後者が好ましい。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが挙げられる。
【0070】
電気水力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザーに入れて使用するのに適する溶液製剤は、1作動当たり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、作動体積は1μl〜100μlと様々であり得る。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含んでよい。プロピレングリコールの代わりに使用することのできる別の溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0071】
メントールや(−)−メントールなどの適切な香味剤、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの甘味剤を、吸入投与/鼻腔内投与を目的とする本発明の製剤に加えることもできる。
【0072】
吸入投与/鼻腔内投与用の製剤は、たとえばPGLAを使用して、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0073】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合では、投与量単位は、計量された量を送達するバルブによって決定される。本発明による単位は通常、1μg〜20mgの式Iの化合物を含有する計量された用量または「ひと吹き」を投与するように整えられる。全体としての1日量は通常、1mg〜200mgの範囲にあり、この量を、1回で、またはより普通にはその日を通して数回分に分けて投与することができる。
【0074】
本発明のトシル酸塩は、たとえば坐剤、膣坐剤、または浣腸の形で直腸にまたは経膣的に投与することができる。カカオ脂が旧来の坐剤基剤であるが、適宜様々な代替品を使用することができる。
【0075】
直腸/経膣投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0076】
本発明のトシル酸塩は、通常はpH調整された等張性無菌食塩水中の微粒子化された懸濁液または溶液の液滴の形で、眼または耳に直接に投与することもできる。眼および耳への投与に適する他の製剤としては、軟膏、ゲル、生分解性(たとえば吸収性のゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(たとえばケイ素樹脂)の植込錠、ウェーハ、レンズ、ならびにニオソームやリポソームなどの微粒子系またはベシクル系が挙げられる。架橋ポリアクリル酸などのポリマー、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖体ポリマー、たとえばゲランガムを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と一緒に混ぜることもできる。このような製剤は、イオン導入法によって送達することもできる。
【0077】
眼/耳への投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、またはプログラム放出が挙げられる。
【0078】
本発明のトシル酸塩は、上述の投与方式のいずれかでの使用に向けてその溶解性、溶解速度、矯味、生体利用度、および/または安定性を向上させるために、シクロデキストリンおよび適切なその誘導体やポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性の高分子物質と組み合わせることもできる。
【0079】
たとえば、薬物シクロデキストリン複合体は、一般にほとんどの剤形および投与経路に有用であることがわかっている。包接複合体および非包接複合体の両方を使用することができる。薬物との直接の複合体形成に代わるものとして、シクロデキストリンを補助添加剤、すなわち、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用してもよい。このような目的のために最も一般的に使用されるのは、α、β、およびγシクロデキストリンであり、その例は、国際特許出願第WO91/11172号、第WO94/02518号、および第WO98/55148号で見ることができる。
【0080】
たとえば特定の疾患または状態を治療する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合もあるので、その少なくとも1種が本発明による化合物を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の共投与に適するキットの形で好都合に組み合わせてよいことは、本発明の範囲内である。
【0081】
したがって、本発明のキットは、その少なくとも1種が本発明による式Iの化合物のトシル酸塩を含有する2種以上の別々の医薬組成物と、容器、分割されたボトル、分割されたホイル製袋などの前記組成物を別々に保持する手段とを含む。そのようなキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装に使用される見慣れたブリスターパックである。
【0082】
本発明のキットは、たとえば経口および非経口の異なる剤形を投与する、別々の組成物を異なる投与間隔で投与する、または別々の組成物を互いに対して漸増するのに特に適する。服薬遵守を援助するために、キットは通常、投与の説明書を含み、いわゆるメモリーエイドを添えて提供される場合もある。
【0083】
本発明のトシル酸塩は、経口、(たとえばパッチの使用による)経皮、鼻腔内、舌下、直腸、非経口、または局所経路のいずれかで投与することができる。経皮投与および経口投与が好ましい。治療を受ける対象の体重および状態、ならびに選択された特定の投与経路に応じて必然的に差異が生じるが、活性のある塩は、最も望ましくは、1日当たり約0.001mg/kgから約50mg/kgまで、好ましくは1日当たり約0.01mg/kg〜約50mg/kgの範囲の投与量を、1回でまたは数回に分けて投与する。しかし、1日当たり体重1kg当たり約0.01mg〜約10mgの範囲の投与量レベルを用いることが最も望ましい。しかしながら、治療を受ける者の体重および状態、前記医薬に対するその個々の応答、ならびに選択した医薬製剤の型、その投与を実施する期間および間隔に応じて差異が生じる場合もある。一部の例では、前述の範囲の下限を下まわる投与量レベルで十分な場合もあり、他の場合では、有害な副作用を引き起こさずにさらに多い用量を使用することができるが、但し、そのようなより多い用量は、その日を通して投与するために、まずいくつかの小用量に分けられる。この説明および添付の特許請求の範囲に記載の投与量は、たとえば、体重が約60kg〜約70kgである平均的なヒト対象に使用することができる。熟練した医師ならば、対象の治療歴に基づき、小児や高齢者などの、体重が約60kg〜約70kgの範囲外の対象に必要となり得るいかなる投与量の差異も容易に決めることができよう。医薬の組合せは、1日6回まで、好ましくは1日2回や1日1回などの1日1〜3回の投与計画で投与することができる。
【0084】
疑義を避けるために、本明細書では、「治療」への言及は、治療的、姑息的、および予防的な治療への言及を包含する。
【0085】
以下の実施例は、本発明の方法および化合物を例示するものである。しかし、本発明が、その具体的な実施例に限定されないことは理解されよう。
【実施例1】
【0086】
トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]−シクロ−ブタンカルボキサミド(1)のトシル酸塩
3−フルオロ−3−(3−フルオロ−4−ピロリジン−1−イルメチル−フェニル)−シクロブタンカルボン酸イソブチル−アミド(13.8g、79.0mmol)をEtOAc(250mL)に溶解させ、EtOAc(150mL)中のp−トルエンスルホン酸(15.2g、79.9mmol)を加えた。得られる溶液を終夜撹拌し、白色の沈殿を収集し、窒素パージしながら乾燥させて、16.5gのモノトシル酸塩を得た。この塩をまず、20mLのMeOHと40mLのEtOAcの混合物に、加熱しながら溶解させた。ナイロンフィルターで濾過した後、EtOAc(250mL)を約40分間かけて加えた。さらに1時間撹拌した後、得られる白色固体を収集し、窒素パージしながら乾燥させた。この再結晶手順をもう2回繰り返して、12.19gの材料を得たが、HPLC分析によって測定したところ純度99.44%であった。C2028OのLRMS m/z計算値:350.2、実測値:351.2(M+H)APCI;H−NMR(CDCl)δ7.79〜7.24(m,3H)、7.32〜7.28(m,2H)、7.19(d,J=7.9Hz,2H)、5.78(br s,1H)、4.32(d,J=5.4Hz,2H)、3.79〜3.73(m,2H)、3.29(p,J=8.4Hz,1H)、3.10〜3.07(m,2H)、2.93〜2.66(m,6H)、2.36(s,3H)、2.24〜2.18(m,2H)、2.08〜2.02(m,2H)、1.76(7重線,6.7Hz,1H)、0.89(d,J=6.6Hz,6H);13C−NMR(CDCl)δ174.0、161.3(d,JC−F=248.7Hz)、147.4(dd,JC−F=24.0,7.5Hz)、142.5、140.3、133.6(d,JC−F=2.3Hz)、129.1、126.1、121.8(dd,JC−F=8.7,3.3Hz)、116.4(d,JC−F=14.3Hz)、112.6(dd,JC−F=23.7,9.4Hz)、96.7(d,JC−F=196.9Hz)、53.4、50.3、47.2、38.9(d,JC−F=24.8Hz)、32.8、28.7、23.0、21.5、20.3;C2028O.CSの成分分析計算値:C 62.05;H 6.94;N 5.36;F 7.27;S 6.14;実測値:C 61.85;H 7.03;N 5.32;F 7.21;S 6.34、分子量522.66。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−N−イソブチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)−フェニル]−シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩。
【請求項2】
式1の化合物のトシル酸塩。
【化1】

【請求項3】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ=100±0.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ=10.6±0.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ=7.2±0.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ=9.2±0.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1から2のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ=17.7±0.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1から2のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ(±0.2)=100、10.6、7.2、9.2、9.2、17.7、57.6、11.1、11.4、36.8、12.9、18.9、32.9、39.2、13.9、7.6、13.1、および7.8にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項9】
銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線を用いて測定したとき、2θ(±0.2)=100、17.7、57.6、36.8、12.9、18.9、32.9、および39.2にあるX線回折パターンピークによって実質的に特徴付けられるX線回折パターンを有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
無水またはほぼ無水の形である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の化合物と薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病性障害、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、動揺病、呼吸器疾患、アレルギー、アレルギーによって誘発される気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心血管疾患、消化管疾患、消化管の運動性および酸分泌の過剰および低下の哺乳動物における治療方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項2に記載の化合物を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−161517(P2009−161517A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−310400(P2008−310400)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】