説明

治療用及び美容用エレクトロルミネセント組成物

本発明は、特に、イオン種及びエレクトロルミネセント化合物を含有する組成物、それを含有する調製物、及びデバイスに関するものであり、また、治療的疾患及び/又は美容的症状を治療及び/又は予防するためのその使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には、治療的疾患及び/又は美容的症状の治療及び/又は予防に使用し得る少なくとも一つのエレクトロルミネセント化合物を含有する組成物に関するものである。本発明は、また、上記組成物を含有するデバイス、治療的及び美容的適用におけるその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線療法(光治療ともいう)は、治療的疾患及び/又は美容的(美的ともいう)症状の広範囲において使用され得る。LED又はレーザーを使用した治療は、既に、例えば、損傷、けが、脛痛、変形性関節症、化学療法又は放射線療法の副作用の治療に使用されている。
【0003】
治療的適用及び美容的適用との間の境界はしばしば不明瞭であり、個人の環境や医師の判断に依存している。治療条件が美容的判断に関連することは多い。例えば、ニキビの治療又は予防は、症状の程度に応じて治療及び美容の双方の要素を有し得る。乾癬、アトピー性皮膚炎、及び他の疾患及び/又は症状に同じことが当てはまる。多くの疾患及び症状は、明確に密接な関連性をもって関連しており、これは、例えば、対象の皮膚の目に見える変化によりしばしば説明される。これらの美容的又は美的変化は、重度の疾患において、少なくともある程度は、精神的改善をもたらし得る。
【0004】
症状及び疾患の中には、治療的要素も関与しているとしても、美容的要素に重点をおいているものがある。これらのいくつかは、例えば、アンチエージング、皺取り、ニキビの予防及び/又は治療、及び、白斑から選択される。
【0005】
多くの診断用道具又は装置もまた、例えば、ビリルビン、酸素又はCO等の血液の特徴を決定するために光源を必要とし得る。化粧品及び医薬品の双方において、皮膚は照射する主たる標的であるが、ヒト又は動物の体の他の標的もまた光線治療により対処され得る。これらの標的には、限定するものではないが、眼、外傷、爪、体の内部が含まれる。光は、例えば、外傷、飲料、食物の殺菌及び/又は消毒を促進又は支援するためにも使用され得る。
【0006】
光線治療の主たる効果の一つは、ミトコンドリアにおける代謝の刺激である。光の特定波長は、シトクロムc酸化酵素、アデノシン三リン酸(ATP)の形成において欠くことのできない細胞エネルギーの生産に関与する酵素を刺激する。ATPは、好まれない生化学反応を熱力学的に駆動するための細胞エネルギー転移に必要とされ、且つ、細胞エネルギー貯蔵として必要とされる。ATPは、エージング及び細胞死(酸化的ストレス)に導く他の生化学的分子(例えば、活性酸素種及び酸化窒素)を調節するために単一分子としても作用する。光線療法後、細胞は代謝が増加してより良好に伝達し、ストレスの多い状態を改善された態様で存続する。
【0007】
そのような作用原理は、薬物治療的及び美容的適用、例えば、創傷治癒、結合組織修復、組織修復、細胞死の阻止、炎症の軽減、疼痛、急性損傷、慢性疾患、代謝異常、神経原性疼痛、季節性の疾患などに適用され得る。
【0008】
光の適用の他の領域は、種々の癌治療である。癌治療において、光線力学的療法(PDT)は重要な役割を果たす。PDTにおいて、光は医薬化合物と組み合わせて用いられ得る。これらの治療は、様々な皮膚及び内科疾患の治療に使用され得る。PDTにおいて、光薬剤として公知の感光性治療薬は、治療される身体の領域に外部から又は内服的に供給される。当該領域は、適切な周波数及び強度の光に晒され、光薬剤が活性化される。現在様々な光薬剤が入手可能であり、例えば、局所薬としては5−アミノレブリン酸塩酸塩(Crawford Pharmaceuticals)、メチルアミノレブリン酸(Metfix(登録商標)、Photocure)などが挙げられる。また、内臓の悪性腫瘍に最初に用いられる注射剤としては、Photofin(登録商標)(Axcan製)及びFoscan(登録商標)(Biolitech Ltd.製)が挙げられる。薬剤が、代謝されて感光性の光薬剤となる、非活性形態に適用されることも多い。
【0009】
光線力学的療法において、光薬剤に光を供給する基本的技術は、レーザー又はフィルター処理したアークランプ等の単独光源から適切な波長の光を照射することである。これらの光源は煩雑且つ高価であり、ゆえに病院での使用においてのみ適している。患者にとって不便であり、治療費の治療費が高額となる。一日当たりに受理できる多数の患者を治療し(コスト効果をよくする)、且つ、患者にとって過度に不便となることを避けるために、高い光照射が必要とされる。
【0010】
特許文献1及び2には、光線力学的療法において使用されるLEDの配列が開示されている。当該文献で教示されている小さなLED源は、患者に対し不均一な光入射をもたらす。配列の製造は、必要とされる多数の接続のため複雑化される。そこに示されるデバイスは病院治療のために設計される。
【0011】
特許文献3は、その後光ファイバーを通って伝達される光を生じさせるために従来の光線力学的療法の光源を使用する柔軟性のある衣類を開示している。そのような光源は重いため、装置は移動可能ではなく、病院での使用に限定される。
【0012】
特許文献4は、過度に稼働する無機LEDを使用する光源を開示している。生ずる光出力は均一ではない。熱を減退させる機能が要求され、装置は病院での治療にのみ適している。
【0013】
特許文献5は、無機LEDを使用する光源を開示している。装置は移動可能であるが、患者による移動に適しておらず、臨床治療が予想される。
【0014】
既存の技術における更なる問題は、そのような光源において均一照射、特に曲面を有する身体部分における均一照射は困難であり得るという点である。
【0015】
上述した分野における光の適用における本質的な前提条件は装置である。現今において商業的に入手可能なシステムは、大部分がレーザに基づいている。しかしながら、これらのシステムは病院ベース、すなわち、固定式装置である。費用を削減し、利便性と適合性を増大させるために、携帯できる家庭用技術が要求される。実際、所定の研究はこの方向に向けられている。
【0016】
特許文献6においてRochester等は、フレキシブル基板上にフレキシブルな発光ダイオード形態を備えるフレキシブルな医療用光源、および、それによりもたらされる血液の特性(例えば、CO、酸素又はビリルビン値)を測定する診断用装置及び病気治療のための光治療用装置を開示した。
【0017】
特許文献7においてVogle Klaus及びKallert Heikoは皮膚の治療用装置を開示した。
【0018】
その装置は、光源として潜在的にフレキシブルな有機発光ダイオード(OLED)を備える。その装置は衣類又はプラスター中に一体化され得る。
【0019】
Attili等は、非メラノーマ皮膚癌の治療における身に着けられる低放射照度OLEDを使用する歩行可能な光線力学療法(PDT)の臨床の一般的な試験的研究を公表し(非特許文献1を参照)、そこには、OLED−PDTは従来のPDTより痛みを伴わず、また軽量であるという追加の利点を有するため、家庭での利便性がより高い可能性を有することが示唆されている。
【0020】
Samuel等は、特許文献9に、治療的及び/又は美容的処置において使用される歩行可能な装置を開示した。その装置は、OLED及び一例として使用される及びポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)を含む。
【0021】
特許文献8は、OLEDを含む光線力学療法の治療用装置を開示している。
【0022】
有機発光ダイオードは、本質的にフレキシブルであり、例えば、インクジェット印刷及びスクリーン印刷等の印刷技術により大面積に塗布され得る点において、無機体(発光ダイオード:LED)に優る多くの利点を有する。
【0023】
しかしながら、OLEDでは、カソードとしてBa及びCa等の活性金属が使用されるため、保管中及び作動中の双方において長期間の寿命を確実なものとすべく優れた封止が要求される。全体的にOLED(多層構造)の製造は、いまだ複雑でコストが集中する作業である。
【0024】
デバイスの封止はいまだ困難な作業である。酸素及び湿気はOLEDの機能を妨げたり破壊し得る。したがって、上述したような欠点のない新規な薄い光源の開発が必要とされる。
【0025】
更に、柔軟性のある三次元表面の構築はいまだ未解決の課題であり、技術的に複雑でコストが集中する作業である。OLEDが使用される場合には高度に均質な層が必要とされ、デバイス表面が曲線を描いている場合には複雑な課題となる。
【0026】
驚くべきことに、有機発光電気化学電池(OLEC)は、医学的及び/又は美容的疾患及び症状を治療及び予防するための光源として使用し得る。OLECは構造が非常に単純であり、容易に製造することができる。OLECの場合、曲線状あるいは三次元表面を有するデバイスの製造は、OLEDにおける同様の表面の製造と比較して複雑ではない。これは、層の均質性に関する要求が厳しくないという事実のためである。このため、特に大量生産に要する製造コストがOLEDの場合と比べてかなり低く抑えられる。
【0027】
また、OLECは、感空気性(air-sensitive)電荷注入層又は電子注入のためのBa又はCs等の金属に依存しないため、更に製造が単純化され、OLEDと比較してコスト効率がより向上する。
【0028】
OLECの基礎的な技術はOLED又はLEDのそれとは異なる。OLED及びLEDはいずれも順方向バイアスと逆バイアスを有するダイオードである。OLECとは対照的に、OLED及びLEDのI−V(電流−電圧)曲線は非対称である。それらは半導体技術を表すが、OLECは基本的には電気化学であり、より正確には電解槽である。OLEDにおける電荷輸送は、正孔と電子がいわゆる励起子、すなわち、電子正孔対を形成するまで正孔及び電子の分子から分子への移動を介して生じる。電子と正孔が再結合する際に発光する。OLECにおいて、電圧をかけた際、電解質はアノードにおいて酸化され、カソードにおいて還元される。
【0029】
分子カチオン及びアニオンは、電界下において、有機発光材料をドーピングする間に、いわゆるpn接合を一緒に形成するまで拡散する。更に、pn接合における有機発光化合物に励起子が形成される。励起子の放射性崩壊が発光に導く。OLECの原書及び原理がQibing Pei 等により非特許文献2に開示されている。OLECは対称的なI−V曲線を示し、駆動電圧が低く、カソードとして活性金属を必要としない。
【0030】
しかし、pn接合を形成するのに必要な時間は長く、それ故電源の作動が瞬時になされない。このように、現時点において、OLECはディスプレイ用途において適切とは言えない。しかしながら、治療的及び美容的用途は、ディスプレイ用途のような電源作動又は応答時間を必要としない。
【0031】
イオン性物質を含む発光デバイスの他の可能なタイプは、Daniel A.Bernards等により非特許文献3に報告されているイオンpn接合を有するデバイスであり、2層が一緒に積層されている。その中の1層は可動性アニオンを有し、他方の層は可動性カチオンを有し、イオン交換によりイオン性pn接合が二層の間の界面に形成される。ここで、イオン性pn接合は電圧がかけられる前に形成される。次いで発光がpn接合において生じ得る。同様の発光装置が特許文献9にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】WO98/46130
【特許文献2】US6096066
【特許文献3】GB2360461
【特許文献4】US5698866
【特許文献5】WO93/21842
【特許文献6】GB24082092
【特許文献7】EP018180773
【特許文献8】EP1444008B15
【特許文献9】US2007/0157662A1
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Attili等、Br.J.Dermatol.161(1)、170−173、2009
【非特許文献2】Qibing Pei等、サイエンス, 1995,269,1086−1088
【非特許文献3】Daniel A.Bernards等、Science 2008,313,1416
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】サンドイッチ構造のOLECを示す図である。
【図2】a)及びb)は各々サンドイッチ構造のOLECを示す図である。
【図3】OLEC用基板及び構成を説明するための図である。
【図4】OLEC用基板及び構成を説明するための図である。
【図5】OLEC用基板及び構成を説明するための図である。
【図6】OLECのエレクトロルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図7】OLECのエレクトロルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図8】OLECのエレクトロルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図9】印刷薄膜電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、治療的疾患又は美容的症状の処置および/または予防のための組成物に関するものであり、当該組成物は、少なくとも1つのイオン種及び少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有することを特徴とする。上記イオン種は、有機イオンまたは無機イオンであり得る。好ましくは、上記イオン種は可動性イオンである。
【0036】
好ましくは、本発明の組成物は3つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有し、より好ましくは2つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有し、更に好ましくは1つの有機ルミネセント化合物を含有する。
【0037】
好ましくは、本発明の組成物は3つのイオン種を含有し、より好ましくは2つのイオン種を含有し、更に好ましくは1つのイオン種を含有する。
【0038】
好ましくは、上記組成物は電圧がかけられることにより治療的および/または美容的に活動状態に移行する。
【0039】
本発明の組成物は、電圧がかけられた時に、特定波長を有する光または特定の波長範囲を有する光を放射する。
【0040】
このためいかなる治療方針も含まれる。即ち、光を用いた対象の治療が、他の治療手段との組み合わせを用いても用いなくても実施することができる。処置は、例えば、本発明の組成物を含む1又は2以上のデバイスにおける1又は2以上の波長を用いて行われ得る。また、上記組成物を含むデバイスに加えて、異なる技術を用いた更なる光源(LED、OLED、レーザー等)が使用され得る。加えて、上記組成物及び当該組成物を含むデバイスを用いた処置が薬物及び化粧品を使用した公知の処置法と組み合わされ得る。
【0041】
光線療法が薬物および/または化粧品等の化学化合物治療と組み合わされる場合、光は化学化合物の(光)化学反応または活性化を開始するために使用され得、光線力学療法(PDT)と呼ばれる。本発明に係る光線療法はまた、光化学反応または活性化を開始することなく、化学化合物と共に使用され得る。有効性のための相乗効果及び治療的疾患の治療の安全性は、光線療法と薬物及び/又は化粧品の双方の順次的、並行的及び重複的処置から生じ得る。例えば、薬物または化粧用化合物が最初に特定の期間に投与され、次いで本発明に係る組成物又は当該組成物を含むデバイスを使用した光線療法が適用され得る。二つの処置の間の時間差は、薬物、光反応性、対象の個々の状況、及び、特定の病気又は症状に応じて変化し得る。双方の処置はまた、時間的に一部が、もしくは完全に重複し得る。正確な治療法は、個人の状況及び病気又は症状の重症度に依存し得る。
【0042】
組み合わせ療法は、相乗効果を発揮し得、従来の治療法の副作用(例えば、テトラサイクリンの副作用)を軽減し得る。これは、ここで説明される組み合わせ技術が追随する時、より少ない薬物の一回分の投与量が要求されるという事実のためである。
【0043】
多くの診断用装置が、照明のみとしてか、あるいは診断自体の機能要素(例えば、酸素等の血液パラメータの決定)として光源を具備する。したがって、本発明は、診断目的の組成物であって、少なくとも1つのイオン種と、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有することを特徴とする組成物にも関する。診断目的の上記組成物を含む光源の使用もまた、本発明の課題である。本発明の開示に基づき、当業者は、上記組成物を含む、光源が必要とされる診断用装置を問題なく開発し得る。
【0044】
処置は、組成物の放射線を対象に照射するいずれであってもよい。処置は、対象と組成物を含むデバイスとの直接接触により、もしくは、直接接触なしで施され得る。処置は、対象の内部又は外部であり得る。対象の外部処置は、例えば、皮膚、傷、眼、歯肉、粘膜、舌、毛髪、爪床及び爪の処置であり得る。対象の内部処置は、例えば、血管、心臓、胸部、肺、又は対象のその他の臓器の治療であり得る。大部分の対象の内部適用のために特定のデバイスが必要とされる。その一例として、本発明に係る組成物を含むステントが挙げられる。上述した対象は好ましくはヒト又は動物であり得る。美容的という用語は美的適用も包含する。
【0045】
どのような種類の電子デバイスもそれに組み込まれるときに組成物により放射される光の波長は、組成物の適切な成分の選択により正確に調整され得、また組成物の所定の混合物やカラーフィルター及びカラーコンバーターの利用の選択も含まれる。組成物の適用に依存して、治療的又は美容的処置はそれぞれ、放射される所定の波長又は波長のスペクトルを多かれ少なかれ必要とする。
【0046】
組成物は、200〜1000nm、好ましくは300〜1000nm、より好ましくは300〜950nm、特に好ましくは400〜900nmの範囲において光を放射する、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有することが好ましい。
【0047】
上述したように、光線治療の主たる効果の一つは、ミトコンドリアにおける代謝の刺激である。光線治療後において細胞は代謝が増大して伝達がより向上し、よりよい態様でストレスの多い状況を耐え抜く。
【0048】
本発明に係る組成物は、細胞刺激のために使用することができる。細胞刺激のための好ましい波長又は波長の範囲は600〜900nmであり、より好ましくは620〜880nmであり、特に好ましくは650〜870nmである。細胞刺激のための特に好ましい波長の例は、683.7nm、667.5nm、772.3nm、750.7nm、846nm、及び812.5nmである。
【0049】
光線治療による処置に適合し得るいずれの治療的疾患及び/又は美容的症状も、本発明に係る組成物、及び、当該組成物を含む光電子デバイス(特にOLEC)を用いて処理することができる。これらの疾患及び/又は症状には、例えば、皮膚疾患、並びに、皮膚の老化及びセルライトを含む皮膚に関連する症状、肥大した毛穴、油性肌、毛嚢炎、前癌状態の日光性角化症、皮膚損傷、老化、皺の多い皮膚及び太陽で傷んだ皮膚、目じりの皺、皮膚潰瘍(糖尿病性、褥瘡、静脈うっ滞)、酒さ性座瘡、セルライト;脂腺及び周辺組織の光調整、皺とり、ニキビの痕及びニキビの細菌、炎症、痛み、外傷、精神的及び神経系に関連する疾患及び症状、浮腫、パジェット病、原発腫瘍及び転移性腫瘍、結合組織病、コラーゲン処置、線維芽細胞、及び哺乳類の組織における線維芽細胞由来の細胞レベル、網膜照射、腫瘍性疾患、新生血管疾患及び肥大性疾患、炎症反応及びアレルギー反応、汗、エクリン汗腺(汗腺)又はアポクリン腺からの汗かき及び過剰な発汗(hyper-hydrosis)、黄疸、白斑、眼球新生血管疾患、神経性大食症、疱疹、季節性情動障害、憂うつ、睡眠障害、皮膚癌、クリーグラー・ナジャー病、アトピー性皮膚炎、糖尿病性皮膚潰瘍、褥瘡、膀胱感染症、筋肉痛の軽減、痛み、関節のこわばり、細菌の低減、歯肉炎、歯のホワイトニング、歯及び口中の組織の治療、創傷治癒が含まれる。
【0050】
美容的症状は、好ましくは、ニキビ、肌の若返り並びに皮膚の皺、セルライト、及び、白斑から選択される。多くの治療的処置は美容的要素も有する。例えば乾癬は、軽度、軽度から中程度、中程度、中程度から重度、及び、重度であり得、これらのカテゴリーのいずれにも美容的要素が含まれ、その美容的要素は侵された患者の深刻な心理学的問題に関与し得る。
【0051】
好ましくは、上記組成物はヒト及び/又は動物の治療及び/又は予防に使用される。好ましくは、本発明にいかかる組成物はヒトの治療及び/又は予防に使用される。
【0052】
本発明に係る組成物を用いた照射による治療に適した更なる対象は、植物、微生物、細菌、菌類及び液体である。微生物には、限定されるものではないが、細菌及び古細菌等の原核生物、原生生物、動物、菌類及び植物等の真核生物が含まれる。好ましい液体は飲物であり、特に好ましくは水である。
【0053】
上記有機エレクトロルミネセント化合物は、小分子、ポリマー、オリゴマー、デンドリマー、それらのブレンド又は混合物から選択され得る。
【0054】
イオン種は、小分子、ポリマー、オリゴマー、デンドリマー、それらのブレンド又は混合物から選択され得る。
【0055】
ここで用いられる小分子という用語は、ポリマーでもオリゴマーでもデンドリマーでも、またそれらのブレンドでもない分子と定義される。特に小分子においては繰り返し構造は存在しない。小分子の分子量は、典型的には、少数の繰り返し単位を有するポリマーの範囲であり、オリゴマー以下である。
【0056】
小分子の分子量は、好ましくは4000g/molより少なく、より好ましくは3000g/molより少なく、更に好ましくは2000g/molより少ない。
【0057】
本発明のポリマーは、好ましくは10〜10000の繰り返し単位を有し、より好ましくは20〜5000の繰り返し単位を有し、更に好ましくは50〜2000の繰り返し単位を有する。本発明に係るオリゴマーは、好ましくは2〜9の繰り返し単位を有する。ポリマー及びオリゴマーの分岐度は0(分岐していない直鎖ポリマー)〜1(完全に分岐したデンドリマー)の範囲である。ここで用いられるデンドリマーという用語は、M.Fischer等、Angew.Chem.,Int.Ed.1999年、38、885に従い定義される。
【0058】
本発明のポリマーの分子量(MW)は、好ましくは10000〜2000000g/molの範囲であり、より好ましくは100000〜1500000g/molの範囲であり、更に好ましくは200000〜1000000g/molの範囲である。MWは、例えば、内部標準としてポリスチレンを使用したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により当業者に公知の標準技術に従い決定される。
【0059】
ブレンドは、少なくとも1つのポリマー成分、デンドリマー成分又はオリゴマー成分を含有する混合物である。
【0060】
本発明の組成物は更なる化合物を含有してもよい。
好ましい更なる化合物の一つは、正孔輸送材料(HTM)から選択される。HTMは、正孔(すなわち、正電荷)を輸送できる材料又はユニットであることを特徴とする。
【0061】
原則として、当業者に公知のいかなるHTMも本発明に係る組成物に使用することができる。HTMは、好ましくは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン、それらの異性体及び誘導体から選択される。HTMは、より好ましくは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン及びポルフィリンから選択される。
【0062】
好適な材料は、フェニレンジアミン誘導体(US3615404)、アリールアミン誘導体(US3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP−A−56−46234)、多環式芳香族化合物(EP1009041)、ポリアリールアルカン誘導体(US3615402)、フルオレノン誘導体(JP−A−54−110837)、ヒドラゾン誘導体(US3717462)、スチルベン誘導体(JP−A−61−210363)、シラザン誘導体(US4950950)、ポリシラン(JP−A−2−204996)、アニリン共重合体(JP−A−2−282263)、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、PVK、ポリピロール、ポリアニリン並びに更に共重合体、ポルフィリン化合物(JP−A−63−2956965)、芳香族ジメチリデン系化合物、カルバゾール化合物(例えばCDBP、CBP、mCP、芳香族第三級アミン及びスチリルアミン化合物等)(US4127412)、及び、トリアリールアミン単量体(US3180730)である。ましてやトリアリールアミノ基が分子中に存在してもよい。
【0063】
少なくとも2つの第三級アミン単位を含む芳香族第三級アミン(US4720432及びUS5061569)が好ましく、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)(US5061569)又はMTDATA(JP−A−4−308688)、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニル)ジアミノビフェニレン(TBDB)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン(TAPPP)、1,4−ビス[2−[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4'−ジアミノビフェニル(TTB)、TPD、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’,1’ ’:4’’,1’’’−クオーターフェニル等が挙げられる。同様に、カルバゾール単位を含む第三級アミンが好ましく、例えば、4(9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ベンゼンアミン(TCTA)等が挙げられる。同様に、US2007/0092755A1に記載のヘキサアザトリフェニレン化合物が好ましい。
【0064】
特に好ましくは、以下に示す式(1)〜(6)により表されるトリアリールアミンであり、これらは置換されていてもよく、例えば、EP1162193A1、EP650955A1、Synth.Metals1997、91(1−3)、209、DE19646119A1、WO2006/122630A1、EP1860097A1、EP1834945A1、JP08053397A、US6251531B1及びWO2009/041635に準拠する。
【化1】

【0065】
好ましい更なる化合物の一つは、電子輸送材料(ETM)から選択される。ETMは、電子を輸送することができる材料(すなわち、負電荷)をいう。基本的に、当業者に公知のETMはすべて本発明に係る組成物に使用することができる。好適なETMは、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボラン、これらの異性体及び誘導体からなる群から選択される。
【0066】
好適なETMは、8−ヒドロキシキノリン(例えば、Liq、Alq、Gaq、Mgq、Znq、Inq及びZrq)の金属キレート、Balq、4−アザフェナントレン−5−オル/Be錯体(US5529853A;例えば、式(7))、ブタジエン誘導体(US4356429)、ヘテロ環蛍光増白剤(US4539507)、ベンズアゾール(例えば、1,3,5−トリス(2−N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)等、US5766779;式(8))、1,3,5−トリアジン、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロビフルオレン、デンドリマー、テトラセン、例えばルブレン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体(JP2003−115387、JP2004−311184、JP2001−267080、WO2002/043449)、シルアシル-シクロペンタジエン誘導体(EP1480280、EP1478032、EP1469533)、ピリジン誘導体(JP2004−200162Kodak)、フェナントロリン、例えばBCP及びBphen、また、ビフェニルもしくは他の芳香族基を介して結合した多くのフェナントロリン(US2007/0252517A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US2007/0122656A1;例えば式(9)及び(10))、1,3,4−オキサジアゾール、例えば式(11)、トリアゾール、例えば式(12)、トリアリールボラン、ベンズイミダゾール誘導体と他のNヘテロ環化合物(たとえば、US2007/0273272A1)、シルアシルシクロペンタジエン誘導体、ボラン誘導体、Gaオキシノイド錯体である。
【0067】
好ましくは、2,9,10−置換アントラセン(1−又は2−ナフチル及び4−又は3−ビフェニルを有する)または2つのアントラセン単位を含む分子である(US2008/0193796A1)。
【化2】

【0068】
好ましいものは、同様に、たとえば、式(13)〜(15)の化合物、および、例えばUS6878469B2、US2006/147747AおよびEP1551206A1に記載されたとおりのアントラセン−ベンズイミダゾール誘導体である。
【化3】

【0069】
好ましい態様において、上記組成物は更にイオン導電体を含有し、このイオン導電体は、好ましくは、例えば、ペルフルオロスルホン酸系調製物、ポリベンズイミダゾール、スルホン酸化ポリエーテルケトン、スルホン酸化ナフタレンポリイミド、及びポリエチレンオキシド(PEO)系調製物等の高分子材料から選択される。更に、好適な高分子は、燃料電池のための膜に用いられる高分子から選択され得る。この高分子は、例えば、Hickner等、「Alternative Polymer Systems for Proton Exchange Membranes (PEMs)」、Chemical Reviews、2004、104、4587-4612に開示されている。本発明において特に好ましいイオン導電体は、ポリエチレンオキシド(PEO)である。
【0070】
組成物は、HTMを、該組成物に対して0〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%含有する。
【0071】
組成物は、ETMを、該組成物に対して0〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%含有する。
【0072】
組成物が1つの有機エレクトロルミネセント化合物と、イオン性物質を含有する場合、イオン種を、該組成物に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは5〜10質量%含有し、有機エレクトロルミネセント化合物を、該組成物に対して20〜99.9質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは20〜50質量%含有する。
【0073】
組成物は、任意に、少なくとも1つのイオン導電体化合物を更に含有し、その濃度は、該組成物に対して0〜60質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%、特に好ましくは30〜50質量%であり得る。
【0074】
組成物は、Kの形態におけるイオン有機エレクトロルミネセント化合物を少なくとも1つ含有し得、K及びAの一方は有機発光材料である。組成物は、式Kで表される3つの化合物を含有することが好ましく、2つの化合物を含有することがより好ましく、1つの化合物を含有することが特に好ましい。
【0075】
一つの典型的な材料の種類は、例えば、Rudmann等、J.Am.Chem.Soc.2002、124、4918−4921、及び、Rothe等、Adv.Func.Mater.2009、19、2038−2044、に報告されているようないわゆるイオン性遷移金属錯体(iTMC)である。組成物は、好ましくは、更にイオン導電体材料又は中性マトリクス材料を含有し、その濃度は、組成物に対して0〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜30質量%であり得る。
【0076】
好ましいものとして、有機エレクトロルミネセント化合物の少なくとも1つが蛍光性エミッター材料、リン光性エミッター材料、及び、発光有機金属錯体から選択されることを特徴とする組成物が挙げられる。
【0077】
エレクトロルミネセント化合物という用語は、電圧の印加によりエネルギーを受ける際に、発光のために放射減衰を被る材料をいう。蛍光エミッターという用語は、励起一重項状態からその基底への放射遷移を被る材料又は化合物をいう。ここで用いられるリン光エミッターという用語は、繊維金属を含有する発光材料又は化合物に関する。これは、典型的に、スピン禁制遷移(例えば、励起三重項状態及び/又は五重項状態からの遷移)に起因して発光する材料を含む。
【0078】
量子力学によると、高スピン多重度を有する励起状態(例えば、励起三重項重体)から基底状態への遷移は禁止されている。しかしながら、重原子(例えば、イリジウム、オスミウム、白金及びユーロピウム)の存在は、強力なスピン軌道結合をもたらす。すなわち、励起一重項及び三重項は混合され、三重項は一重項の特性を獲得し、一重項―三重項混合により無放射状態よりも早い放射減退定数がもたらされる場合には、輝度が効率的となり得る。この種の発光は、Baldo等、Nature395、151−154(1998)に報告されているような金属錯体を用いて達成され得る。
【0079】
ここで使用されるドーパントという用語は、エミッター、エミッター材料又は電子放出物質という用語にも用いられる。
【0080】
特に好ましいものとしては、蛍光エミッターから選択される有機エレクトロルミネセント化合物が挙げられる。
【0081】
エミッター化合物は、拡張した共役π電子系を有する傾向にある。多くの例が発表されており、例えば、JP2913116B及びWO2001/021729A1に開示されているようなスチリルアミン誘導体、並びに、WO2008/006449及びWO2007/140847に開示されているようなインデノフルオレン誘導体が挙げられる。
【0082】
青色蛍光エミッターは、好ましくはポリ芳香族化合物であり、例えば、9,10−ジ(2−ナフチルアントラセン)及び他のアントラセン誘導体、テトラセン誘導体、キサンテン誘導体、ペリレン誘導体(例えば2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン等)、フェニレン誘導体(例えば4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1'−ビフェニル)、フルオレン誘導体、アリールピレン誘導体(US2006/0222886)、アリーレンビニレン誘導体(US5121029、US130603)、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ローダミン誘導体、キナクドリン誘導体(例えばN,N’−ジメチルキナクドリン(DMQA)等)、ジシアノメチレンピラン(例えば4(ジシアノエチレン)−6−(4−ジメチレアミノスチリル−2−メチル)−4H−ピラン(DCM))、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム及びチアピリリウム塩、ペリフランテン、インデノペリレン、ビス(アジニル)メタン化合物、及び、カルボスチリル化合物などが挙げられる。
【0083】
更に好ましい青色蛍光エミッターが、C.H.Chen等、” Recent developments in organic electroluminescent materials” Macromol. Symp. 125, (1997), 1-48及び“Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices” Mat. Sci. and Eng. R, 39 (2002), 143-222に記載されている。
【0084】
本発明に係る好ましい蛍光ドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル及びアリールアミンから選択される。
【0085】
モノスチリルアミンは、1つの置換又は非置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族性のアミンを含有する化合物を意味する。ジスチリルアミンは、2つの置換又は非置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族性のアミンを含有する化合物を意味する。トリスチリルアミンは、3つの置換又は非置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族性のアミンを含有する化合物を意味する。テトラスチリルアミンは、4つの置換又は非置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族性のアミンを含有する化合物を意味する。スチリル基は、スチルベンが特に好ましく、更に置換されていてもよい。対応するホスフィン及びエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の目的において、アリールアミン又は芳香族アミンは、窒素と直接結合した3つの置換又は非置換芳香族環又は複素芳香族環系を含有する化合物を意味する。これらの芳香族環又は複素芳香族環系の少なくとも1つは、好ましくは縮合環系であり、好ましくは少なくとも14の芳香族環原子を有する。その好まし例としては、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン、及び芳香族クリセンジアミンが挙げられる。芳香族アントラセンアミンは、1つのジアリールアミノ基がアントラセン基に直接結合している化合物を意味し、好ましくは9位に結合している。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基がアントラセン基に直接結合している化合物を意味し、好ましくは9位と10位に結合している。芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン、及び芳香族クリセンジアミンはそれらと同様に定義され、ピレンにおけるジアリールアミノ基は1位、あるいは1位と6位に結合している。
【0086】
更に好ましい蛍光ドーパントは、例えばWO2006/122640に記載のインデノフルオレンアミン及びインデノフルオレンジアミン、例えばWO2008/006449に記載のベンゾインデノフルオレンアミン及びベンゾインデノフルオレンジアミン、例えばWO2007/140847に記載のジベンゾインデノフルオレンアミン及びジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。
【0087】
スチリルアミンの分類から選択されるドーパントの例としては、置換又は非置換のトリスチルベンアミン又はドーパントが挙げられ、WO2006/000388、WO2006/058737、WO2006/000389、WO2007/065549及びWO2007/115610に記載されている。ジスチリルベンゼン及びジスチリルビフェニル誘導体は、US5121029に記載されている。更にスチリルアミンはUS2007/0122656A1に見出される。
【0088】
特に好ましいスチルアミンドーパント及びトリアリールアミンドーパントとしては、式(16)〜(21)により表される化合物、並びに、US7250532B2、DE102005058557A1、CN1583691A、JP08053397A、US6251531B1及びUS2006/210830Aに記載されている化合物が挙げられる。
【化4】

【0089】
更に好ましい蛍光ドーパントは、EP1957606A1及びUS2008/0113101A1に記載されているトリアリールアミンである。
【0090】
更に好ましい蛍光ドーパントは、以下の誘導体:ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、ペリフランテン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(US2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US4769292、US6020078、US2007/0252517A1)、ピラン、オキサゾン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、桂皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドン、及び、キナクリドン(US2007/0252517A1)から選択される。
【0091】
アントラセン化合物の中で特に好ましいものとしては、9,10−置換アントラセン、例えば、9,10−ジフェニルアントラセン及び9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン等が挙げられる。1,4−ビス(9'−エチニルアントラセニル)ベンゼンもまた好ましいドーパントである。
【0092】
特に好ましいものとしては、リン光エミッターから選択される有機エレクトロルミネセント化合物が挙げられる。
【0093】
リン光エミッターの例が、WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614及びWO2005/033244の出願に記載されている。一般に、先行技術において用いられ、有機エレクトロルミネセンスの分野における当業者に公知のすべてのリン光錯体は好適に用いることができ、当業者は困難な工程を経ることなく更なるリン光錯体を使用することができる。
【0094】
リン光エミッターは金属錯体であり得、好ましくはM(L)で表される。式中、Mは金属原子であり、Lは、各々互いに独立して、1、2又はそれ以上の位置においてMと結合又は配位する有機配位子であり、zは1以上の整数であり、好ましくは1、2、3、4、5又は6である。任意に、これらの基は1又はそれ以上の位置、好ましくは1、2又は3つの位置において、好ましくは配位子Lを介して、ポリマーに連結している。
【0095】
Mは、具体的には、遷移金属から選択される金属原子であり、好ましくはVIII族の遷移金属、またはランタノイド又はアクチニドから選択され、より好ましくはRh、Os、Ir、Pt、Pd、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、Zn、W、Mo、Pd、Ag又はRuから選択され、特に好ましくはOs、Ir、Ru、Rh、Re、Pd又はPtから選択される。MはZnであってもよい。
【0096】
好ましい配位子は、2フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2(2−チエニル)ピリジン誘導体、2(1−ナフチル)ピリジン誘導体、又は2フェニルキノリン誘導体である。これらすべての化合物は置換されていてもよく、例えば、青色についてはフルオロ又はトリフルオロメチル置換基が挙げられる。補助配位子としてはアセチルアセトネート又はピクリン酸が好ましい。
【0097】
具体的には、US2007/0087219A1に記載の式(22)で表されるテトラデンデート配位子を有するPt又はPd錯体(式中のR〜R14及びZ〜Zの定義は当該文献に従う)、拡大した環系を有するPtポルフィリン錯体(US2009/0061681A1)及びIr錯体は好適であり、例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H、23H−ポルフィリン−Pt(II)、テトラフェニル−Pt(II)−テトラベンゾポルフィリン(US2009/0061681A1)、シス−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)Pt(II)、シス−ビス(2−2’−チエニル)ピリジナト−N,C3’)Pt(II)、シス−ビス(2−2’−チエニル)キノリナト−N,C5’)Pt(II)、(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)Pt(II)アセチルアセトネート、又はトリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)Ir(III)(Ir(ppy)、緑)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)Ir(III)アセチルアセトネート(Ir(ppy)アセチルアセトネート、緑、US2001/0053462A1、Baldo, Thompson等、Nature 403, (2000), 750-753)、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルピリジナト−N,C2’)(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)アセチルアセトネート、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)ピコリネート(Firpic、青)、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート、トリス(2−ビフェニル−3−イル)−4−tert−ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、(45ooppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、2−フェニルピリジン−Ir錯体の誘導体、例えば、イリジウム(III)ビス(2−フェニルピリ
ジンキノリル−N,C2’)アセチルアセトネート(PQIr)、トリス(2−フェニルイソキノリナト−N,C)Ir(III)(赤)、ビス2−(2’−ベンゾ[4,5−a]チエニル)ピリジナト−N,C3)Irアセチルアセトネート([Btp2Ir(acac)]、赤、Adachi等、Appl. Phys. Lett. 78 (2001), 1622-1624)である。
【化5】

【0098】
三価のランタニド錯体、例えば、Tb3+及びEu3+ (J. Kido等、Appl. Phys. Lett. 65 (1994), 2124、Kido等、Chem. Lett. 657, 1990, US2007/0252517 A1)等、又は、マレオニトリルジチオレートを有するPt(II)、Ir(I)、Rh(I)のリン光錯体(Johnson等、JACS 105, 1983, 1795)、Re(I)トリカルボニルジイミン錯体(特にWrighton, JACS 96, 1974, 998)、シアノ配位子及びビピリジル又はフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Ma等、Synth. Metals 94, 1998, 245)又はAlqもまた好適である。
【0099】
更に、トリデンテート配位子を有するリン光エミッターが、US6824895及びUS7029766に記載されている。赤色発光のリン光錯体がUS6835469及びUS6830828に開示されている。
【0100】
特に好ましいリン光ドーパントは、式(23)の化合物、及び、更には例えばUS2001/0053462A1に記載されている化合物である。
【0101】
特に好ましいリン光ドーパントは、式(24)の化合物、及び、更には例えばUS2007/095118A1に記載されている化合物である。
【化6】

【0102】
更なる誘導体が、US7378162B2、US6835469B2及びJP2003/253145Aに記載されている。
【0103】
特に好ましいものとしては、有機金属錯体から選択される有機エレクトロルミネセント化合物が挙げられる。
【0104】
本明細書のいずれかで言及した金属錯体に加えて、本発明に係る好適な金属錯体は、遷移金属、希土類元素、ランタニド及びアクチニドから選択され得、これらはまた本発明の対象である。金属は、好ましくは、Ir、Ru、Os、Eu、Au、Pt、 Cu、Zn、Mo、W、Rh、Pd又はAgから選択される。
【0105】
好ましい態様において、有機エレクトロルミネセント化合物は、紫外(UV)領域において放射する。好適なUVエミッター材料は、小さなπ−共役系を有する最高占有分子軌道(HOMO)及び最低空分子軌道(LUMO)の間の広いギャップを含む有機化合物から選択され得る。このようなUVエミッターは、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、シラン、フルオレン、トリアジン、チオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ジベンゾフラン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、アミン、トリアリールアミン及びこれらの誘導体を含む小分子化合物から選択され得る。
【0106】
他の好ましい態様において、好適なUVエミッターは、制限された共役長を有するポリマー材料から選択され、例えば、Wong、Ken Tsung等(Org. Lett. 2005, 7, 5131)により報告されているスピロ−ビフルオレンポリマー、及び、Chao、Teng Chih等(Adv. Mater. (Weinheim, Ger.) 2005, 17, 992)により報告されているフルオレンポリマーから選択され得る。好ましくは、ポリマーUVエミッター材料は、非共役ポリマーから選択され、当該ポリマーは、上述した小分子UVエミッターを含む。好適な非共役ポリマーは、側鎖にエミッター及び他の機能性基を有する側鎖ポリマーであり得、例えば、JP2005/108556、JP2005/285661、JP2003/338375に記載されている。あるいは、好適な非共役ポリマーは、例えば、US7279702、DE102009023154.4及びDE102009023156.0に記載されている非共役主鎖ポリマーであり得る。
【0107】
有機エレクトロルミネセント化合物は、ポリマー、オリゴマー、デンドリマー及びブレンドであり得る。
【0108】
ポリマーは、電荷移動輸送機能などの羅らなる機能を有してもよい。従って、本発明は、更にポリマー分子を含有する組成物にも関する。
【0109】
上記ポリマーは単位を含有することが好ましく、該単位は、好ましくはリン光エミッター、特に上述した発光金属錯体を含有する基から選択される。特に好ましいものとしては、8〜10族からの元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含む対応する構造単位が挙げられる。
【0110】
ポリマーは、異なる機能が、1つの大分子又は大分子のブレンドに組み込まれ得ることを特徴とする。機能は、特に、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、電子注入材料及び電子輸送材料の機能である。ポリマー中に組み込まれる機能は、異なる群に分類され得る。所望される機能性基及びそれらの間の比率を選択することにより、ポリマーは、所望される機能を有するように調整される。
【0111】
ポリマー、オリゴマー及びデンドリマー間の相違は、上述した分子全体の大きさ、サイズ分布及び分岐度に基づいている。
【0112】
異なる構造は、とりわけ、WO2002/077060A1及びDE10337346A1に記載され、広範にリストされているものである。構造単位は、例えば、以下の群に由来し得る。
【0113】
群1:ポリマーの正孔注入及び/又は輸送特性を増大させる単位。上述したHIM又はHTMに対応する。
【0114】
群2:ポリマーの電子注入及び/又は輸送特性を増大させる単位。上述したEIM又はETMに対応する。
【0115】
群3:群1及び群2からの各単位の組み合わせを有する単位。
【0116】
群4:発光特性を、電子蛍光に替えて電子リン光が得られ得るような範囲まで変更する単位。典型的には、リン光エミッターに対応し、より好ましくは上述した発光金属錯体に対応する。
【0117】
群5:いわゆる一重項状態からより高いスピン状態、例えば、三重項状態へ遷移を改善する単位。
【0118】
群6:得られるポリマーのモルホロジーおよび/または発光色に影響する単位。
【0119】
群7:典型的には、骨格として使用され、電子輸送機能、正孔輸送機能または両者を有し得る単位。
【0120】
好ましくは、ポリマーは、群1の単位を含む正孔輸送もしくは注入ポリマーであり、好ましくは、上記記載のとおりの低分子量HTMまたはHIMを含む単位から選ばれる。
【0121】
群1からのさらに好ましい単位は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール−パラ−フェニレンジアミン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフラン誘導体と更なるO、SもしくはN含有へテロ環である。
【0122】
好ましいポリマーHTMまたはHIMは、少なくとも一つの以下の式(25)で表される繰り返し単位を含むポリマーである。
【化7】

【0123】
式中、
Arは、同一でも異なっていてもよく、異なる繰り返し単位においては独立して、単結合または任意に置換された単核もしくは多核アリール基である。
Arは、同一でも異なっていてもよく、異なる繰り返し単位においては独立して、単結合または任意に置換された単核もしくは多核アリール基である。
Arは、同一でも異なっていてもよく、異なる繰り返し単位においては独立して、単結合または任意に置換された単核もしくは多核アリール基である。
mは、1、2または3である。
【0124】
式(25)により表される特に好ましい単位は、式(26)〜(28)からなる群から選択される。
【化8】

【0125】
式中、
Rは、出現毎に同一でも異なっていてもよく、H、置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリル、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基から選択される。
rは、1、2、3または4である。
sは、0、1、2、3、4または5である。
【0126】
さらに好ましいポリマーHTMまたはHIMは、少なくとも一つの以下の式(29)により表される繰り返し単位を含むポリマーである。
【化9】

【0127】
式中、
およびTは、互いに独立して、チオフェン、セレノフェン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、アニリンから選択され、これらはいずれも任意にRで置換される。
【0128】
は、出現毎に互いに独立して、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、SCN、C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、SH、SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、随意に置換されたシリル、または、任意に一以上のヘテロ原子を含み且つ任意に置換された1〜40個のC原子を含むカルビルもしくはヒドロカルビルから選択される。
【0129】
ArおよびArは、互いに独立して、単核もしくは多核アリール又はヘテロアリールであり、任意に置換され、任意に、隣接するチオフェンもしくはセレノフェン基の一方あるいは両方に2,3−位で縮合している。
cとeは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、1<c+e≦6を満たす。
dとfは、互いに独立して、0、1、2、3または4である。
【0130】
ポリマーHTMの例は、WO2007131582A1およびWO2008/009343A1に開示されるとおりである。
【0131】
好ましくは、上記ポリマーは群2の単位を含み、好ましくは、上述した通りの低分子量ETM又はEIMを含む群から選択される。
【0132】
電子注入又は電子輸送特性を有する2群からの更に好ましい単位は、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリンおよびフェナジン誘導体であり、更には、トリアリールボラン及び更なるO、SもしくはN含有ヘテロ環である。
【0133】
好ましくは、上記ポリマーは、正孔移動性と電子移動性を増加する構造(すなわち、群1と群2からの単位)が、互いに直接結合した群3からの単位を含む。これらの単位のいくつかは、エミッターとして機能し、発光色を、緑色、黄色あるいは赤色にシフトする。したがって、それらの使用は、たとえば、他の発光色または元々は青色の発光ポリマーからの広帯域発光の製造に適している。
【0134】
好ましくは、上記ポリマーは、群4からの単位を含むポリマーであり、好ましくは燐光エミッター、特に、上記記載のとおりの発光金属錯体を含む群から選ばれる。ここで、特に好ましいのは、8〜10族(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)からの元素を含む対応する構造単位である。
【0135】
好ましくは、上記ポリマーは、群5の単位を含むポリマーであり、一重項状態から三重項状態への遷移を改善し得るものであり、群4からの構造要素のサポートに使用され、これら構造要素のリン光特性を改善する。この目的のために適するものは、特に、カルバゾールおよび架橋カルバゾール2量体単位であり、たとえば、DE10304819A1およびDE10328627A1に記載されている。また、この目的のために適するものは、DE10349033A1に記載されている通りのケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似化合物である。さらに好ましい構造単位は、上記記載のとおりの低分子量リン光マトリックスを含む群から選択され得る。
【0136】
好ましくは、上記ポリマーは、群6の単位を含む。当該単位は、ポリマーのモルホロジーおよび/または発光色に影響し、上述したものに加えて、上述した群に入らない少なくとも一つのさらなる芳香族もしくは別の共役構造を有する、すなわち、電荷担持移動性にほんの少ししか影響しないものであり、有機金属錯体ではなく、あるいは一重項−三重項遷移に影響しない。この型の構造要素は、得られるポリマーのモルホロジーおよび/または発光色に影響し得る。したがって、それらは、単位に応じて、エミッターとして使用することもできる。ここで、好ましいのは、6〜40個のC原子を有する芳香族構造であり、また、トラン、スチルベンもしくはビススチリルアリーレン誘導体であり、夫々は、一以上のラジカルRにより置換されていてもよい。ここで、特に、好ましいのは、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−あるいは9,10−アントリレン、1,6−、2,7−あるいは4,9−ピレニレン、3,9−あるいは3,10−ペリレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4”−ターフェニリレン、4,4’ビ1,1’−ナフチリレン、4,4’−トラニレン、4,4’−スチルベニレンまたは4,4”−ビスチリルアリーレン誘導体である。
【0137】
好ましくは、上記ポリマーは、群7の単位を含む。当該単位は、6〜40個のC原子を有する芳香族構造を含み、典型的には、ポリマーの骨格として使用される。これらは、たとえば、4,5−ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10−テトラヒドロピレン誘導体、たとえば、US5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に記載されたフルオレン誘導体、たとえば、WO2003/020790A1に記載された9,9’−スピロビフルオレン誘導体、たとえば、WO2005/104264A1に記載された9,10−フェナントレン誘導体、たとえば、WO2005/014689A2に記載された9,10−ジヒドロフェナントレン誘導体、たとえば、WO2004041901A1、WO2004113412A2に記載された5,7−ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体およびシス−,トランス−インデノフルオレン誘導体、たとえば、WO2006/063852A1に記載されたビナフチレン誘導体、更に、たとえば、WO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1、WO2005/033174A1、WO2003/099901A1およびDE102006003710.3に記載された単位である。
【0138】
群7からのさらに好ましい構造要素は、たとえば、US5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に記載されたフルオレン誘導体、たとえば、WO2003/020790A1に記載されたスピロビフルオレン誘導体、たとえば、WO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1に記載されたベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフルオレンおよびそれらの誘導体から選択される。
【0139】
非常に好ましい群7の構造要素は、式(30)で表される。
【化10】

【0140】
式中、
A、BおよびB’は、互いに独立して、また、複数存在する場合には互いに独立して、二価の基であり、好ましくは、−CR−、−NR−、−PR−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CS−、−CSe−、−P(=O)R−、−P(=S)R−および−SiR−から選ばれる。
【0141】
およびRは、互いに独立して、同一であるか異なり、H、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、-SH、-SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、任意に置換されたシリル、または、随意に置換され、且つ、任意に一以上のヘテロ原子を含む1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビルから選ばれる。RとR基は、それらが連結するフルオレン部位と共にスピロ基を任意に形成し得る。
Xは、ハロゲンである。
【0142】
とR00は、互いに独立して、Hまたは、任意に一以上のヘテロ原子を含む、任意に置換されたカルビルもしくはヒドロカルビル基である。
各gは、独立して、0または1であり、同じ副単位中の夫々対応するhは、0または1の他方である。
mは、≧1の整数である。
【0143】
ArとArは、互いに独立して、単核あるいは多核アリールもしくはヘテロアリール基であり、置換されていてもよく、インデノフルオレン基の7,8−位あるいは8,9−位で縮合していてもよい。
aとbは、互いに独立して、0または1である。
基とR基が、それらが連結するフルオレン基と共にスピロ基を形成する場合、スピロビフルオレンであることが好ましい。
【0144】
式(30)により表される基は、好ましくは、以下の式(31)〜(35)から選択される。
【化11】

【0145】
式中、
は、式(30)で定義される通りであり、rは、0、1、2、3または4であり、Rは、Rの意味の一つを有する。
【0146】
Rは、好ましくは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NR00、任意に置換されたシリル、4〜40個、好ましくは、6〜20個のC原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基、または、1〜20個、好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖、分岐あるいは環状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシである。ここで、一以上のH原子は、任意に、FまたはClで置き代えられ、また、R、R00およびXは、上記定義のとおりである。
【0147】
特に、好ましい式(30)で表される基は、以下の式(36)〜(39)から選択される。
【化12】

【0148】
式中、
Lは、H、ハロゲンまたは任意にフッ素化された1〜12個のC原子を有する直鎖あるいは分岐アルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくは、H、F、メチル、i−プロピル、t−ブチル、n−ペントキシまたはトリフルオロメチルである。
【0149】
L’は、任意にフッ素化された1〜12個のC原子を有する直鎖あるいは分岐アルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくは、n−オクチルまたはn−オクチルオキシである。
【0150】
本発明における使用のために好適なポリマーは、群1〜8から選ばれる一以上の単位を同時に含むものである。同様に、ある群からの二以上の構造単位が同時に存在することも好ましいかもしれない。
【0151】
本発明における使用のために好適なポリマーは、エミッターの構造単位に加えて、上述した群からの少なくとも一つの構造単位をも含む。少なくとも二つの構造単位は、特に、好ましくは、上述したものの異なる分類からのものである。
【0152】
異なる分類の群の割合は、ポリマー中に存在する場合には、好ましくは、各場合において少なくとも5モル%、特に好ましくは、各場合において少なくとも10モル%である。特に、これらの構造単位の一つは、正孔伝導単位の群から選ばれ、その他の群は発光単位であり、これら二つの機能(正孔伝導と発光)は、同じ単位により担われてもよい。
【0153】
しかしながら、より少ない割合の発光単位(特に緑色および赤色発光単位)もまた、たとえば、白色発光コポリマーの合成のためには好ましいかもしれない。白色発光コポリマーを合成することができる方法は、DE10343606A1に詳細に記載されている。
【0154】
適切な溶解度を確保することを目的として、平均して少なくとも二つの非芳香族C原子が、繰り返し単位毎の置換基中に存在することが好ましい。ここで、好ましいのは、少なくとも四つのC原子であり、特に好ましくは、少なくとも八つのC原子である。さらに、これらの個々のC原子は、OまたはSにより置き代えられてもよい。しかしながら、ある割合の繰り返し単位は、さらなる非芳香族置換基を有さないことも、完全に可能である。
【0155】
フィルムのモルホロジーを損なわないことを目的として、直鎖中に12個を超えるC原子を有する長鎖置換基を有さないことが好ましく、8個を超えるC原子を有する長鎖置換基を有さないことがより好ましく、特に、6個を超えるC原子を有する長鎖置換基を有さないことが好ましい。
【0156】
上記ポリマーは、統計的またはランダムコポリマー、交互もしくはレジオレギュラーコポリマー、ブロックコポリマーまたはこれらの組み合わせであってよい。
【0157】
他の好ましい態様において、上記ポリマーは、側鎖非共役ポリマーであって、ポリマーを基礎とするリン光発光のために特に重要である。一般的に、このようなリン光発光ポリマーは、US7250226B2に開示されるとおり、ビニル化合物のラジカル共重合により得ることができ、少なくとも一つのリン光エミッターと少なくとも一つの電荷輸送単位を側鎖に含む。このようなリン光発光ポリマーのさらなる例は、たとえば、JP2007/211243A2、JP2007/197574A2、US7250226B2、JP2007/059939Aに開示されている。
【0158】
さらに好ましい態様において、上記ポリマーは、主鎖非共役ポリマーであって、骨格単位は、主鎖上のスペーサーにより連結されている。側鎖非共役ポリマーと同様に、主鎖非共役ポリマーはまた、高い三重項準位をももたらす。主鎖非共役ポリマー系の三重項OLEDの例は、DE102009023154.4に開示されている。
【0159】
さらなる態様において、上記ポリマーは、蛍光発光のための非共役ポリマーでもあり得る。好ましい一重項非共役ポリマーは、たとえば、JP2005/108556、JP2005/285661、JP2003/338375等に開示されるとおりの、側鎖中にアントラセン、ベンズアントラセンおよびその誘導体をもつ側鎖ポリマーである。
【0160】
上記ポリマーは、ETMまたはHTMとしても機能することができ、好ましくは、ポリマーは、非共役ポリマーである。
【0161】
本発明に係る組成物及びデバイスに好適な典型的なイオン種(イオン性物質ともいう)は、一般式Kを有し、ここで、K及びAは各々、カチオン及びアニオンを表す。
【0162】
イオン性物質は、有機発光材料と同じ溶剤に対し溶解性であることが好ましい。これにより上記エミッター材料とイオン性物質を含有する混合物の調製が容易となる。典型的な有機発光材料は、トルエン、アニソール、クロロホルム等の一般的な有機溶剤に対し可溶性である。
【0163】
好ましくは、上記イオン性物質は室温において固体であり、より好ましくは、上記イオン性物質は室温において固体であり、30〜37℃の範囲で軟化する。
【0164】
上記イオン種は、カチオンであることが好ましい。好適な無機カチオンKは、例えば、K(カリウム)及びNaから選択され得る。好適な有機カチオンKは、式(40)〜(44)に示されるアンモニウム−、ホスホニウム−、チオウロニウム−、グアニジニウムカチオンから選択され得る。
【化13】

【0165】
式中、
〜Rは、互いに独立して、1〜20個のC原子を有する直鎖又はハイパーブランチアルキル基、2〜20個のC原子と1個以上の非共役二重結合を有する直鎖又はハイパーブランチアルケニル基、2〜20個のC原子と1個以上の非共役三重結合を有する直鎖又はハイパーブランチアルキニル基、3〜7個のC原子を有する飽和、部分飽和もしくは完全飽和のシクロアルキルであって、1〜6個のC原子を有するアルキル基で更に置換されていてもよいシクロアルキル基から選択され得る。ここで、1以上の置換基Rは、部分的に又は完全にハロゲン原子(特に−F及び/又は−Cl)で置換されていてもよく、あるいは、部分的に−OR'、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR'、−SONR'、−SOOH、−SOX、−NOで置換されていてもよい。また、R〜Rの1個又は2個の非隣接、非α−炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR'−、−C(O)NR'−、−SO2NR'−、及び−P(O)R'−から選択される基で置換されていてもよい。なお、R'は、H、非置換もしくは部分的又は完全に−Fで置換されたC1〜C6−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、非置換又は置換フェニルであり、Xはハロゲンである。
【0166】
式(40)において、R〜RはHであってもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはHではない。式(41)において、R〜Rは、H及びNR'であってもよい。ここで、R'は、上記に定義される通りのものである。式(42)において、R〜RはHであってもよい。式(43)において、R〜Rは、H、CN及びNR'であってもよい。ここで、R'は、上記に定義される通りのものである。
【化14】

【化15】

【0167】
式中、R'〜R'は、互いに独立して、H、CN、1〜20個のC原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、2〜20個のC原子と1個以上の非共役二重結合を有する直鎖又は分岐アルケニル基、2〜20個のC原子と1個以上の非共役三重結合を有する直鎖又は分岐アルキニル基、3〜7個のC原子を有する部分的又は完全不飽和シクロアルキル基であって、1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、飽和及び部分的もしくは完全不飽和ヘテロアリール、ヘテロアリール−C−C−アルキル、又は、アルキル−C−C−アルキルから選択される。ここで、置換基R'、R'、R'及び/又はR'は一緒に環を形成してもよい。1又は2以上の置換基R'〜R'は、部分的又は完全に、ハロゲン(特に−F及び/又は−Cl)、及び、−OR'、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR'、−SONR'、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−NOで置換されていてもよい。置換基R'及びR'の1又は2個の炭素原子(非隣接であるか、ヘテロ原子に結合している)は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR'−、−C(O)NR'−、−SO2NR'−、及び−P(O)R'−から選択される基により置換されていてもよい。ここで、R'は、H、非置換もしくは部分的又は完全に−Fで置換された1〜6個のC原子を有するアルキル、3〜7個のC原子を有するシクロアルキル、非置換又は置換フェニルであり、Xはハロゲンである。
【0168】
'は、好ましくは、−OR'、−NR'、−C(O)OH、−C(O)NR'、−SONR'、−SOOH、−SOX及び−NOから選択される。
【0169】
更に好ましいイオン性物質は、例えば、US2007/0262694A1に開示されている。
【0170】
更に、特に好ましいイオン性物質は、式(73)により表される構造を有するカチオンを含む。これには、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチル−プロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,−ジメチル−N−プロピルブチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルエチルアンモニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチ−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルイミダゾリウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−sec−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−sec−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン及びN−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオンが含まれる。
【化16】

【0171】
N−メチル−N−プロピルピペリジニウムが特により好ましい。
【0172】
特に好ましいイオン性物質は、トルエン、アニソール及びクロロホルム等の一般的な有機溶剤に可溶性の、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(MATS)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムオクチルスルフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムオクチルスルフェート、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1,1−ジプロピルピロリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ボレート及びN,N,N‘,N’,N‘,N’−ペンタメチル−N‘−プロピルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネートからなるイオン性化合物の群から選択される化合物である。
【0173】
更に好ましいカチオンは、一般式(74)〜(79)のいずれかにより表される化合物から選択される。
【化17】

【0174】
式中、R〜Rは、式(40)、(41)及び(44)に定義される通りであり、R'及びR'は、式(45)、(60)及び(55)に定義される通りである。
【0175】
本発明に係る組成物及びデバイスに好適な更に好ましいイオン性物質は、K又はAの一つがポリマー骨格に共有結合的に結合している化合物である。
【0176】
本発明に係る組成物及びデバイスに好適な更に好ましいイオン性物質は、K又はAの一つが有機発光材料である化合物から選択され、本発明の範囲内におけるいずれかに記載の小分子及びポリマー発光材料から選択され得る。
【0177】
上記イオン種は、好ましくはアニオンである。好適なアニオンAは、[HSO、[SO2−、[NO、[BF、[(R)BF、[(RBF、[(RBF]、[(RB]、[B(CN)、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[アルキル−OPO2−、[(アルキル−O)PO、[アルキル−PO2−、[RPO2−、[(アルキル)PO、[(RPO、[RSO、[HOSO(CFSOO]、[OSO(CFSOO]2−、[アルキル−SO、[HOSO(CHSOO]、[OSO(CHSOO]2−、[アルキル−OSO、[アルキル−C(O)O]、[HO(O)C(CHC(O)O]、[RC(O)O]、[HO(O)C(CFC(O)O]、[O(O)C(CFC(O)O]2−、[(RSO)2N]、[(FSON]、[((RP(O))N]、[(RSOC]、[(FSOC]、Cl及び/又はBrから選択される。
【0178】
式中、n=1〜8であり、
は、式:C2m−X+1(ここで、m=1〜12、x=0〜7であり、例えばm=1、x=0〜2である)で表されるフッ素化アルキル、及び/又は、フッ素化(例えばパーフルオロ)アリール又はアルキルアリールである。
【0179】
上述したアルキル基は、1〜20個のC原子を有する直鎖又はハイパーブランチアルキル基であってもよく、好ましくは1〜14個のC原子を有し、より好ましくは1〜4個のC原子を有する。
【0180】
好ましいアニオンは、PF6-、[PF3(C2F5)3]-、[PF3(CF3)3]-、BF4-、[BF2(CF3)2]-、[BF2(C2F5)2]-、[BF3(CF3)]-、[BF3(C2F5)]-、[B(COOCOO)2- (BOB-)、CF3SO3- (Tf-)、C4F9SO3 (Nf-)、[(CF3SO2)2N]- (TFSI-)、[(C2F5SO2)2N]- (BETI-)、[(CF3SO2)(C4F9SO2)N]-、[(CN)2N]- (DCA-)、[CF3SO2]3C]-及び[(CN)3C]-から選択される。
【0181】
本発明に係る組成物及びデバイスに好適な更に好ましいイオン性物質は、(Kn+)a(Am-)bで表される化合物から選択される。ここで、n、m、a及びbは、1〜3の整数であり、n×a−m×b=0を満たす。Kn+又はAm-の一方は、有機発光材料であり、本発明の範囲内におけるいずれかに記載の小分子及びポリマーエミッターの群を含む化合物から選択され得る。好ましくは、n、m、a、bは1である。
【0182】
この組成物の特別な効果の一つは、追加のイオン化合物が必要ない点である。
【0183】
好ましい態様において、式(Kn+)a(Am-)bで表される上記化合物におけるKn+又はAm-の一方は発光金属錯体であり、Kn+が発光金属錯体であることがより好ましい。ここで、金属は、遷移金属から選択され得、VIII族元素の金属、ランタノイド及びアクチニドから選択されることが好ましく、Rh、Os、Ir、Pt、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、W、Mo、Pd、Ag、Ruから選択されることがより好ましく、Ru、Os、Ir、Reから選択されることが特に好ましい。Kn+は、限定されるものではないが、例えば、[Ir(ppy)2(bpy)]+、[Ir(ppy)2(dpp)]+、[Ir(ppy)2(phen)]+、[Ru(bpy)32+、[Os(bpy)2L]2+(L=シス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン)である。
【0184】
本発明の更なる態様において、上記組成物は、式(Kn+)a(Am-)bで表される化合物を含有する。ここで、Kn+又はAm-の一方は発光一重項エミッターであり、Kn+が発光一重項エミッターであることが特に好ましい。この種の化合物は、荷電色素レーザーから選択され得、例えば、p−クオーターフェニル−4,4’’’−ジスルホン酸ジナトリウム塩(ポリフェニル1)、p−クオーターフェニル−−4,4’’’−ジスルホン酸ジカリウム塩(ポリフェニル2)、2−(4−ビフェニルイル)−6−フェニルベンズオキサゾテトラスルホン酸ジカリウム塩(フラン2)、[1,1’−ビフェニル]−4−スルホン酸、4,4’’−1,2−エテン−ジイルビス−、ジカリウム塩(スチルベン1)、2,2’−([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルジ−2,1−エテンジイル)−ビス−ベンゼンスルホン酸ジナトリウム塩(スチルベン3)、ベンゾフラン、2,2’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル−ビス−テトラスルホン酸(テトラナトリウム塩)(フラン1)、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ピリジルメチルヨウ化物(DASPI)、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ベンゾチアゾリルエチルヨウ化物(DASBTI)、3,3’−ジエチルオキサカルボシアニンヨウ化物(DOCI)、4,4’−ジフルオロ−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体(pyrromethene 546)3,3’−ジメチル−9−エチルチアカルボシアニンヨウ化物(DMETCI)、ジナトリウム−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテン−2,6−ジスルホネート−ジフルオロボレート錯体(pyrromethene 556)、4,4’−ジフルオロ−2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体(pyrromethene 567)、o−(6−アミノ−3−イミノ−3H−キサンテン−9−イル)−安息香酸(rhodamine 110)、安息香酸、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2,7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]、過塩素酸
塩(rhodamine 19)、4,4’−ジフルオロ−2,6−ジ−n−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン2,6−ジ−n−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体(pyrromethene 580)、安息香酸、及び、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2,7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]エチルエステル、モノヒドロクロライド(rhodamine 6G)が挙げられる。これらは、Lambda Physik AG, Goettingen(ドイツ)から商業的に入手可能である。
【0185】
本発明の他の主題は、式(Kn+)a(Am-)bで表され、Kn+又はAm-の一方は発光一重項エミッターであることを特徴とする、少なくとも一つの化合物を含有する組成物を含む発光デバイスである。
【0186】
n+が発光一重項エミッターであることが特に好ましい。Kn+は、上記に規定した群から選択されることが好ましい。
【0187】
好ましくは、発光デバイスはエレクトロルミネセントデバイスである。上述した式(Kn+)a(Am-)bで表される3つの化合物を、より好ましくは2つの化合物を、さらに好ましくは1つの化合物を含有する上記組成物を含有するデバイスが好ましい。
【0188】
上記デバイスは、少なくとも2つの電極を備える。好ましくは、上記デバイスは、2つの電極、カソード及びアノードを備える。好ましい態様において、双方の電極は上記組成物により連結されている。
好ましくは、デバイスは、式(Kn+)a(Am-)bで表される化合物を含有する組成物を含む。
【0189】
さらに、本発明の組成物はまた、少なくとも1つのホスト材料を含んでもよい。ホスト材料は、通常、エミッターと組み合わせて使用され、一般的に、エミッター材料と比べてより大きなHOMOおよびLUMO間のエネルギーギャップを有する。さらに、ホスト材料は、電子または正孔輸送材料の何れかとして機能する。ホスト材料はまた、電子または正孔輸送特性の両方を有し得る。一重項遷移がOLECにおける発光に主に関与している場合には、エミッターの吸収スペクトルとホスト材料のフォトルミネセンススペクトルとの間の最大重複が、極めて望ましい。これは、ホスト材料からエミッターへのエネルギー移送を確保する。
【0190】
ホスト材料は、特に、ホストがリン光エミッターと組み合わせて使用されることを意味するのであれば、マトリックスまたはマトリックス材料とも呼ばれる。エミッター単位を含有するコポリマーの場合には、ポリマー骨格は、ホストとして作用する。
【0191】
原則として、当業者に公知のホスト材料はいずれも、本発明において使用することができる。使用されるエミッターの種類に応じて、ホスト材料は二つのカテゴリー、蛍光エミッターのためのホストとリン光のためのホスト(マトリックス材料ともいわれる)に分類され得る。
【0192】
好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンズアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール、ケトン、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、トリアリールアミンおよびこれらの誘導体から選ばれる。
【0193】
ホスト材料として特に好ましいものは、アントラセン、ベンズアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール、ケトン、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール及びトリアリールアミンである。
【0194】
本発明の組成物及び/又はデバイスは、二以上のホスト材料を含んでもよく、好ましくは3個のホスト材料を、より好ましくは2個のホスト材料を、特に好ましくは1個のホスト材料を含む。本発明の組成物が、少なくとも二個のホスト材料を含む場合には、ホスト材料は、コ−ホストまたはコ−ホスト材料とも呼ばれる。
【0195】
蛍光エミッターに好適なホスト材料は、アントラセン、ベンズアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、およびこれらの誘導体から選ばれる。
【0196】
蛍光エミッターに好適なホスト材料は、アントラセン、ベンズアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール、インドロカルバゾール、及びインデノカルバゾールから選ばれる。
【0197】
蛍光エミッターのための特に好ましいホスト材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP676461に記載されるとおりの2,2’,7,7’−テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、例えばフェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタルペリレン、デカシクレン、ルブレン等の縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)もしくはEP676461に記載の4,4−ビス−2,2−ジフェニルビニル−1,1−スピロビフェニル(スピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(例えば、WO2004/081017に記載されている)、特に、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえば、アルミニウム(III)トリス(8−ヒドロキシキノリン)(アルミニウムキノラート、Alq)もしくはビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(フェニルフェノリノラート)アルミニウム(イミダゾールキレート (US2007/0092753A1)を有してもよい)及びキノリン−金属錯体、アミノキノリン−金属錯体、ベンゾキノリン−金属錯体、正孔伝導化合物(例えば、WO2004/058911に記載されている)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(例えば、WO2005/084081およびWO2005/084082に記載されている)、アトロプ異性体(例えば、WO2006/048268に記載されている)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO2006/177052に記載されている)またはベンズアントラセン(例えば、DE102007024850)の分類から選択される。より好ましいホスト材料は、ナフタレンン、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、ケトン、ホスフィンオキシド及びスルホキシドの分類から選ばれる。特に好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体の分類から選ばれる。本発明の目的のためにオリゴアリーレンは、少なくとも三個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解される。
【0198】
蛍光エミッターにさらに好ましいホスト材料は、具体的には、式(80)により表される化合物から選ばれる。
【化18】

【0199】
式中、
Ar、Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、5〜30個の芳香族環原子を含むアリールもしくはヘテロアリール基であり、一以上の基により置換されていてもよい。
【0200】
pは、1、2または3である。
【0201】
Ar、ArおよびAr中のπ電子の合計は、p=1の場合は少なくとも30であり、p=2の場合は少なくとも36であり、p=3の場合は少なくとも42である。
【0202】
式80で表されるホスト材料において、Ar基は、アントラセンであることがより好ましく、一以上のR基により置換されてよい。ArおよびAr基は、9−および10−位で結合することがより好ましい。特に好ましいものは、少なくとも一つのArおよび/またはAr基が、1−あるいは2−ナフチル、2−,3−あるいは9−フェナントレニルもしくは2−,3−,4−,5−,6−あるいは7−ベンズアントラセニリルから選ばれる縮合アリール基であり、これらは一以上のR基により置換されていてもよい。アントラセン系化合物は、US 2007/0092753A1およびUS2007/0252517A1に記載されており、たとえば、2−(4−メチルフェニル)−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9−(2−ナフチル)−10−(1,1’−ビフェニル)−アントラセンおよび9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセンおよび1,4−ビス(9’−エチニルアントラセニル)ベンゼンである。二個のアントラセン単位を含むホスト材料(US2008/0193796A1)、たとえば、10,10’−ビス[1,1’,4’,1’’]ターフェニル−2−イル−9,9’−ビスアントラセニルもまた好ましい。
【0203】
さらに好ましいホスト材料は、以下の各誘導体:アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾン、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール(US 2007/0092753A1)、
たとえば、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、たとえば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンおよびジスチリルアリーレン誘導体(US5121029)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、ポリメチン、メロシアニン、アクリドン、キナクリドン、桂皮酸エステルおよび蛍光染料である。
【0204】
特に好ましいものは、アリールアミンおよびスチリルアミン誘導体、たとえば、4,4`−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル)(TNB)である。
【0205】
蛍光エミッターのためのホスト材料としてオリゴアリーレンを有する好ましい化合物は、例えば、US2003/0027016A1、US7326371B2、US2006/043858A、US7326371B2、US2003/0027016A1、WO2007/114358、WO2008/145239、JP3148176B2、EP1009044、US2004/018383、WO2005/061656A1、EP0681019B1、WO2004/013073A1、US5077142、WO2007/065678およびUS2007/0205412A1に記載される化合物である。特に好ましいオリゴアリーレン系化合物は、式(81)〜(87)を有する化合物である。
【化19】

【0206】
蛍光エミッターのためのさらなるホスト材料は、スピロビフルオレンおよびその誘導体から選ぶことができ、たとえば、EP0676461に開示されたスピロ-DPVBiおよびUS6562485に開示されたインデノフルオレンである。
【0207】
リン光エミッターのための好ましいホスト材料は、すなわち、マトリックス材料は、ケトン、カルバゾール、トリアリールアミン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾールおよびこれらの誘導体から選ばれる。いくつかの好ましい誘導体が、以下でより詳細に説明される。
【0208】
リン光エミッターが、例えばエレクトロルミネセンス化合物として使用される場合に場には、ホスト材料は、蛍光エミッターに使用されるホスト材料と比べてむしろ異なる特性を満足しなければならない。リン光エミッターに使用されるホスト材料は、エミッターの三重項準位と比べてエネルギー的により高い三重項準位を有することが要求される。ホスト材料は、電子または正孔の何れかまたはそれら双方を輸送し得る。さらに、エミッターは、一重項−三重項混合を十分に促進するために、大きなスピン-軌道カップリング定数を有することが推定される。これは、金属錯体を使用することで可能とされ得る。
【0209】
好ましいマトリックス材料は、N.N−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、カルバゾール誘導体(たとえば、WO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527もしくはDE102007002714)、アザカルバゾール(たとえば、EP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160)、ケトン(たとえば、WO2004/093207に記載されている)、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン(たとえば、WO2005/003253に記載されている)、オリゴフェニレン、芳香族アミン(たとえば、US2005/0069729)、バイポーラーマトリックス材料(たとえば、WO2007/137725に記載されている)、シラン(たとえば、WO2005/111172に記載されている)、9,9−ジアリールフルオレン誘導体(たとえば、DE102008017591に記載されている)、アザボロールもしくはボロン酸エステル(たとえば、WO2006/117052に記載されている)、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、芳香族三級アミン、スチリルアミン、インドール、アントロン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、カルボジイミド誘導体、ジフェニルキノン誘導体、フタロシアニン誘導体、例えばAlq等の8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体(8−ヒドロキシキノリン錯体は、US2007/0134514に記載されているトリアリールアミノフェノール配位子を含んでもよい)、配位子として金属フタロシアニン、ベンズオキサゾールもしくはベンゾチアゾールを有する種々の金属錯体−ポリシラン化合物、たとえば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等の正孔伝導ポリマー、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体およびオリフルオン誘導体である。
【0210】
さらに特に好ましいマトリックス材料は、例えばDE102009023155.2、EP0906947B1、EP0908787B1、EP906948B1、WO2008/056746A1、WO2007/063754A1、WO2008/146839A1、およびWO2008/149691A1に開示されている、インドロカルバゾールおよびその誘導体(たとえば、式(88)〜(94))を含む化合物から選ばれる。
【化20】

【0211】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、1,3-N,N-ジカルバゾールベンゼン(=9,9’-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール)(mCP)、9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP)、1,3-ビス(N,N’-ジカルバゾル)ベンゼン(=1,3-ビス(カルバゾル-9-イル)ベンゼン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニルおよび式(95)〜(99)の化合物である。
【化21】

【0212】
好ましいSiテトラアリール化合物は、たとえば、(US2004/0209115、US2004/0209116、US2007/0087219A1およびUS2007/0087219 A1)式(100)〜(105)の化合物である。
【化22】

【0213】
リン光ドーパントに特に好ましいマトリックスは、式(106)で表される化合物である(EP652273B1)。
【化23】

【0214】
リン光ドーパントにより好ましいマトリックス材料は、一般式(107)で表される化合物から選ばれる(EP1923448A1)。
【化24】

【0215】
ここで、M、Lおよびnは、文献に定義される通りである。好ましくは、MはZnであり、Lはキノリナートであり、nは2、3または4である。特に好ましいのは、[Znq、[Znqおよび[Znqである。
【0216】
好ましいものは、金属オキシノイド錯体から選ばれるコ-ホストであり、リチウムキノレート(Liq)およびAlqが、特に好ましい。
【0217】
皮膚疾患及び/又は皮膚関連症状の治療及び/又は予防に用いられる本発明に係る組成物もまた、本発明の主題である。
【0218】
好ましい態様において、本発明の組成物は皮膚疾患及び/又は皮膚関連症状の治療及び/又は予防に用いられる。
【0219】
ここで使用される皮膚は、毛髪、鱗屑、羽毛及び爪を含む外皮系の最大組織として定義される。皮膚という用語には、舌、粘膜及び歯肉も含まれる。
【0220】
原則として、光線療法により処置されるすべての治療的及び美容的症状に本発明が適用される。治療的と美容的という用語の間の区別は、上掲で概説したように、個人の状態、状態の重症度、及び医師の判断に依存する。本発明に概説されるように、多くの治療条件は、美容効果に関連し、治療的症状の重要度には無関係である。
【0221】
皮膚疾患及び/又は皮膚関連症状には、限定されるものではないが、座瘡状発疹、自己免疫皮膚疾患又は症状、慢性水疱形成、粘膜の症状、皮膚付属器の症状、皮下脂肪の症状、結合組織の疾患、真皮線維組織及び弾性組織の異常、真皮及び皮下成長、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、膿疱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び湿疹、色素沈着の異常、薬疹、内分泌系疾患及び症状、表皮母斑疾患及び症状、腫瘍、嚢胞、紅斑、遺伝性皮膚症、感染関連疾患及び症状、細菌関連疾患及び症状、ミコバクテリウム関連疾患及び症状、真菌症関連疾患及び病状、寄生虫の繁殖、刺すこと及び噛むこと、ウイルス関連疾患及び症状、苔癬様発疹、リンパ関連疾患及び症状、色素細胞性母斑及び腫瘍、単球及びマクロファージ関連疾患及び症状、ムチン(沈着)症、神経皮膚、非伝染性免疫不全関連疾患及び病状、栄養関連疾患及び病状、丘疹落屑性角化性関連疾患及び病状、掻痒関連疾患及び病状、乾癬(軽度、軽度から重度、及び、重度)、反応性好中球疾患及び病状、難治性掌蹠発疹、代謝エラーに由来する疾患及び病状、身体的要因に由来する疾患及び病状、じんましん及び血管性浮腫、血管関連疾患及び病状、歯周炎もしくは歯肉の他の疾患及び症状が含まれる。
【0222】
皮膚関連疾患及び症状には、皮膚腫瘍、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、細胞癌、二次転移、放射線皮膚障害及び角化症も含まれる。
【0223】
創傷の治療は、皮膚疾患及び皮膚関連症状にも割り当てられ得る。これにより創傷治療は、治療される対象の外面、内部、皮膚、眼、爪又は爪床、対象の口中の表面、粘膜、歯肉、血管系の上皮表面、または対象の身体の他の部分において生じ得る。
【0224】
本発明に係る組成物は、スキンケア及び皮膚修復のために、例えば小さなプラスターとして、化粧品中に使用され得る。上記組成物により発行される波長又は波長の範囲は400〜800nmの範囲であり、好ましくは450〜750nmの範囲であり、より好ましくは500〜700nmの範囲であり、特に好ましくは580〜640nmの範囲である。
【0225】
好ましい皮膚疾患及び皮膚関連症状は、ニキビ、乾癬、湿疹、浮腫、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、白斑、ボーエン病、腫瘍、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、基底細胞癌、扁平上皮(細胞)癌、二次移転、皮膚T細胞リンパ腫、日光性角化症、ヒ素角化症、放射線皮膚障害、及びセルライトから選択される。
【0226】
更に好ましい皮膚疾患及び皮膚関連症状は、乾癬、多型(性)光線疹、日光じんましん、光線性類細網症アトピー性湿疹、白斑、掻痒(症)、扁平苔癬、早期皮膚T細胞性リンパ腫、皮膚描記症、苔癬状粃糠疹から選択される。
【0227】
好ましくは、これらの疾患及び症状が、200〜500nm、より好ましくは250〜400nm、特に好ましくは270〜350nmの波長又は波長範囲を有する光で治療される。
【0228】
本発明の組成物は、PUVA治療に使用され得る。PUVA治療は、UV−A光と共に、ソラレン(7H−フロ[3,2−g]クロメン−7−オン)及びその誘導体の治療への応用から生じている。PUVAは、過剰増殖性症状に特徴を有する皮膚疾患の治療に使用され得る。ソラレンは、天然物の科の親化合物であり、構造的にクマリンに関連しており、乾癬、湿疹、白斑、菌状息肉腫、皮膚T細胞性リンパ腫、及びその他の自己免疫疾患の治療に好ましくは用いられ得る。PUVAを用いて、アトピー性湿疹、扁平苔癬、色素性じんましん、多型(性)光線疹、円形脱毛(症)の治療にも用いられ得る。
【0229】
ソラレンは、経口により、あるいは皮膚に局所的に投与され得る。好ましい化合物は、ソラレン、8−メトキシソラレン(8−MOP)、5−メトキシソラレン(50MOP)、及び4,5’,8−トリメチルソラレン(TMP)である。8−MOPの経口投与後、患者は徐々にUV−Aに対して敏感となり、光化学療法の治療に反応しやすくなる。患者は薬物の摂取後2〜3時間に最も反応的となりこの間に放射線治療が実施される。白斑の場合には、ソラレンの替りにケリン(khellin)が使用され得る。光とケリンを組み合わせた治療は、KUVAと呼ばれることがある。
【0230】
それらを含有する本発明の組成物及びデバイスはまた、フォトフェレーシスにも使用され得る。フォトフェレーシスは、対外フロー系における末梢血が光活性化する5−MOPに晒される方法であり、異常なTリンパ球が原因である疾患の治療を表す。それは進行した皮膚T細胞性リンパ腫、尋常性天疱瘡及び全身性進行性硬化症(強皮症)の治療である。自己免疫疾患を治療するために使用され得る。治療され得る更なる疾患には、多発性硬化症、移植臓器拒絶、関節リウマチ、及びAIDSが含まれる。
【0231】
本発明は特に、座瘡状発疹の治療のための本発明に係る組成物に関するものである。座瘡状発疹という用語は、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、毛嚢炎及び口囲皮膚炎を含む皮膚病の群を意味する。座瘡状発疹は、一般に、毛嚢脂腺単位における変化が原因であり、ニキビ夏期(マヨルカニキビ)、集簇性座瘡、化粧ニキビ、座瘡劇症(acne fulminans)(急性発熱潰瘍座瘡)、ケロイド座瘡(ケロイド座瘡項部(acne keloidalis nuchae)、頭部乳頭性皮膚炎、項部乳頭状皮膚炎、項部ケロイド座瘡(nuchal keloid acne))、アクネメカニカ(acne mecanica)、薬物性座瘡、痘瘡状座瘡(acne miliaris necrotica)、尋常性座瘡、顔面浮腫を有する座瘡(solid facial edema)、座瘡状発疹、眼瞼瘤腫、赤血球毛細血管拡張性酒さ(erthemaotelangiectatic rosacea)、皮膚剥離座瘡(excoriated acne)(acne excoriee des jeunes filles, Picker's acne)、腺酒さ(glandular rosacea)、顎瘤腫(gnathophyma)、グラム陰性酒さ、肉芽腫性顔面皮膚炎、肉芽腫性口囲皮膚炎、ハロゲン座瘡、汗腺膿瘍(acne inversa, Verneuil's disease)、突発性顔面無菌性肉芽腫、小児座瘡、狼瘡酒さ(肉芽腫性酒さ、微丘疹結核疹(micropapular tuberculid)、Lewandowskyの酒さ様結核診)、顔面播種状粟粒性狼瘡、瘤腫、新生児座瘡(幼児座瘡、新生児座瘡)、職業性座瘡、眼酒さ(眼球酒さ、眼底酒さ)、耳瘤腫症、酒さの持続的な浮腫(慢性顔上部紅斑性浮腫、Morbihan疾患、Rosaceousリンパ水腫)、ポマード座瘡、膿疱性丘疹酒さ、膿瘍性穿掘性毛包周囲炎(頭皮の解離性蜂巣炎、解離性毛包炎、Hoffmanの膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎)、口囲皮膚炎、眼窩周囲皮膚炎(眼周囲皮膚炎)、顔面膿皮症(酒さ性劇症)、鼻瘤、酒さ(酒さ性座瘡)、酒さ性コングロベート(rosacea conglobata)、酒さ性劇症(rosacea fulminans)、SAPHO症候群、ステロイド酒さ性座瘡、熱帯座瘡から選択される。
【0232】
尋常性座瘡(一般にニキビ(座瘡)と呼ばれる)は、よく見られる皮膚の症状であり、アンドロゲン刺激を介して、毛嚢脂腺単位、毛嚢から構成される皮膚構造及び関連した脂腺における変化に起因する。非炎症性の毛孔性丘疹若しくは面皰(comedone)を特徴とし、また、より重度な態様における炎症性丘疹、小膿疱及び小節を特徴とする。尋常性座瘡は、皮脂腺毛包の密度が高い皮膚領域に影響し、これらの領域には顔、胸郭上部及び背中が含まれる。重度のニキビは炎症性であるが、非炎症性の態様においても現れ得る。ニキビ損傷は、一般に、吹き出物、シミ、斑点、ニキビ、腫物、もしくは単にニキビと言われる。
【0233】
ニキビは、最も一般的には思春期に発生し、十代の89%以上に影響を及ぼしており、成人期まで続くことがよくある。思春期において、ニキビは通常男性ホルモンの増加により生じ、両方の性別において思春期の間に生じる。多くの人々において、ニキビは時間の経過により減少し、20代前半に到達すると消滅するか、殆どなくなる。しかしながら、完全に消えるのにどのくらいの期間を要するかを予測する手段はなく、人によっては30代、40代、それ以上までこの症状が続く。
【0234】
顔と頸上部は特に一般的に影響されやすいが、胸部、背中及び肩も同様にニキビを有し得る。上腕もまたニキビを有し得るが、認められる損傷には、しばしば毛孔性角化症がある。典型的なニキビ損傷は、面皰、炎症性丘疹、小膿疱、小節である。大きな小節の中には、嚢胞とも呼ばれるものがあり、小節嚢胞という用語は、重度の炎症性ニキビを表す場合に使用される。
【0235】
傷とは別に、その主たる影響は、自尊心の減少のような心理的なものであり、症例によっては憂鬱または自殺である。ニキビは、通常、思春期の間、人々が既に社会的に特に不安定となる傾向にある時に現れる。したがって、個人への全体的な影響を低減するために、早期且つ積極的な治療が推奨される。
【0236】
ニキビの治療に光照射が使用され得る。一週間に2回の使用により、約64%までニキビ損傷の数が減少することが示されており、毎日使用した場合には更に大きな効果が示されている。メカニズムは、Pアクネ内に製造されるポルフィリン(コプロポルフィリンIII)が、420nm及びそれより短い波長の光が照射されるとき、フリーラジカルを生じさせることであると推測される。特に数日間照射されたときに、これらフリーラジカルが細菌を究極的に殺す。ポルフィリンはさもなければ皮膚には存在せず、またUV光は使用されないので、安全であると思われる。
【0237】
治療は、紫/青色光と赤色可視光(例えば、660nm)の混合が使用されるとき、明らかにより良く作用し、患者の80%に毎日治療を3か月施した場合、損傷の76%が減少する結果がもたらされ、全体的なクリアランスは過酸化ベンゾイルと同等又はより良かった。他の多くの治療とは異なり、マイナスの副作用があったとしても典型的にはごくわずかであり、治療に対する耐菌性の発達は殆どないように思われる。治療後、クリアランスは、典型的な局所的又は経口による抗生物質治療と比べてより長く存続し得、数か月は珍しくない。加えて、皮膚科医による基礎科学及び臨床業務は、特にPアクネが、ポルフィリンの製造を増加させるデルタ−アミノレブリン酸(ALA)を用いて前処理される場合、強い青色/紫色光(405〜425nm)による4週間の治療後において座瘡損傷数の60〜70%が減少し得ることを証明した。
【0238】
したがって、本発明は、治療的疾患及び/又は美容的症状の処置のための上記組成物及び活性薬物の組み合わせに関するものでもある。具体的には、本発明は、ニキビの治療のために用いられる上記組成物及び薬物の組み合わせ使用い関する。薬物は、ニキビを治療するために典型的に使用されるすべての薬物、例えば、抗生物質(局所用又は経口用)、ホルモン療法、局所用レチノイド、局所用殺菌薬、硫黄などから選択され得る。好適な局所用殺菌薬は、例えば、過酸化ベンゾイル、トリクロサン、及びグルコン酸クロルヘキシジンである。好適な局所用抗生物質は、例えば、エリスロマイシン、クリンダマイシン、及びテトラサイクリンである。好適な経口用抗生物質は、例えば、エリスロマイシン、テトラサイクリン抗生物質(例えば、オキシテトラサイクリン、)、ドキシサイクリン、ミノサイクリン又はライムサイクリン(lymecycline))、トリメトプリム、及びミノサイクリンである。
【0239】
好適なホルモンは、例えば、エストロゲン、プロゲストゲン、エストロゲンとプロゲストゲンの組み合わせ、シプロテロン、女性ホルモン物質(oestrogen)、シプロテロンと女性ホルモン物質の組み合わせ、ドロスピレノン(drospirenone)、スピロノラクトン及びコルチゾンから選択される。好適な経口用レチノイドは、例えば、イソトレチノインなどのビタミンA誘導体(例えば、Accutane、Amnesteem、Sotret、Claravis、Clarus)である。好適な局所用レチノイドは、例えば、トレチノイン(例えば、Retin-A)、アダパレン(adapalene)(例えば、Differin)、タザロテン(tazarotene)(例えば、Tazorac)、イソトレチノイン及びレチノールである。更に好適な薬物は、例えば、抗炎症薬である。
【0240】
本発明に係る組成物及びこれを含むデバイスは、ニキビを治療又は予防するための皮膚剥離術と組み合わせて使用されてもよい。皮膚剥離術は美容医療術であり、皮膚の表面を掻爬(サンディング)するものである。
【0241】
ここですべての治療方針が含まれる。例えば、特定の期間に最初に薬物が投与され、次いで、本発明に係る組成物を用いた光線療法が適用される。この二つの処置の間の時間差は、薬物、その光反応性、対象の個々の状態、及び特定の疾患又は症状に応じて変化してもよい。二つの処置はまた時間的に一部が、もしくは完全に重複してもよい。正確な治療方針は、個人の状態及び疾患もしくは症状の重度に起因し得る。
【0242】
併用療法は相乗効果を奏し得、従来の治療方針の副作用(例えば、テトラサイクリンの副作用)を低減し得る。これは、ここで説明される以下の組み合わせ手段においてより少ない投与量が要求されるという事実のためである。
【0243】
面皰(ブラックヘッド(毛穴の黒ずみ)とも言われる)はまた、本発明に係る組成物を用いた光線療法により治療され得る。面皰は、皮膚の黄色または黒っぽい隆起又は栓である。実際には一種の尋常性座瘡である。面皰は、脂腺管中に蓄積した過剰な油により引き起こされる。これらの隆起に見出される物質の大部分はケラチンと修飾された皮脂からなり、これらは酸化されると黒化する。毛穴の黒ずみがよく生ずる詰まった毛嚢は、不規則に光を反射して面皰を生成する。このため、閉塞は孔から抽出されるとき必ずしも黒く見えないが、メラニン含有量の結果としてより黄褐色を有し得る。
【0244】
それに対して、いわゆるホワイト・ヘッドは、閉鎖性の面皰とも呼ばれ、同じ物質の皮脂が詰まった毛包であるが、皮膚表面に対する微細な開口を有する。空気は毛包に到達し得ないため、物質は酸化されず、白色のままである。
【0245】
ニキビの治療に用いられる本発明に係る組成物は、好ましくは、350〜900nmの範囲、より好ましくは380〜850nmの範囲、更に好ましくは400〜850nmの範囲、特に好ましくは400〜800nmの範囲において発光する少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有する。
【0246】
ニキビの治療に特に好ましい光は青色光である。ニキビの治療に好ましい青色光が有する発光波長は、390、391、392、393、394, 395,396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429及び430nmである。例えば、414nm及び415nmは、Pアクネ最近を殺し、存在する傷の治療を助け、更なる発生を抑制するのに特に好適である。
【0247】
ニキビの治療に対する光線療法の適用に関する研究により、異なる波長又は波長範囲の組み合わせは、ニキビを効果的に治療するのに特に好適であることが明らかにされた。その結果、ニキビを治療するために赤色光と青色光の組み合わせが特に好ましい。上記赤色光は、好ましくは590〜750nm、より好ましくは600〜720nm、更に好ましくは620〜700nmの範囲から選択される。ニキビの治療に好ましい2つの更なる波長は、633nm及び660nmである。青色光は上述した波長から選択され得る。
【0248】
面皰の場合には、500nmの波長、又は500〜700nmの範囲の波長を有する光を放射する有機発光化合物を含有する組成物が特に好ましい。
【0249】
セルライトは、多くの女性に生じることが主張される症状を表現する。セルライトの原因は不明なところが多く、一方の性に特定したような二形成皮膚構造、結合組織構造の変更、血管変化、及び、炎症過程などの代謝及び生理機能における変化を包含し得る。2つの治療がセルライトの抑制又は治療のために適用される。熱及び血流の増加は2つの一般的な技術である。したがって、光治療はセルライトに悩んでいる個人のためになると考えられる。本発明に係る組成物及びそれを含有するデバイスは、セルライトの治療及び/又は予防に好適である。PDTもまた、セルライトの治療及び/又は予防に好適である。
【0250】
本発明に係る組成物により発光される、セルライトの治療及び/又は予防のための波長は、400〜1000nmの範囲であり、好ましくは400〜900nmの範囲であり、より好ましくは450〜900nmであり、特に好ましくは500〜850nmである。
【0251】
より一般的な用語である皮膚の老化は、しわ及び色素沈着過度の形成の双方を意味する。
【0252】
固有及び外因性の要因の皮膚における影響に起因する人の皮膚の老化の兆候は、しわ及び細い線の出現により、また、色素沈着欠陥の出現と共にしわくちゃの外観を発現させる皮膚の黄変により、また、一般に角質層及び表皮を厚くし、真皮を薄くする皮膚の厚さの変化により、また、弾力性、柔軟性及び堅さの損失をもたらすエラスチン及びコラーゲン繊維の破壊により、また、拡張症(telnagiectasia)の出現により定義される。
【0253】
これらの兆候のいくつかは、固有もしくは生理的老化に特に関連性を有し、いわば年齢に関連する「正常な」老化である。一方、その他は外因性の老化に特有のものであり、いわば原則として環境に起因する老化であり、このような老化は特に太陽に晒されるための光老化である。皮膚の老化の他の要因は、大気汚染、外傷、感染、外傷性傷害、酸素欠乏症、たばこの煙、ホルモン状態、神経ペプチド、電磁場、重力、生活様式(例えば、アルコール過剰摂取)、反復的な表情、寝るときの体勢、及び心理的ストレス因子である。
【0254】
固有の老化のために生じる皮膚の変化は、内生要因を包含する、遺伝子にプログラムされている配列の結果である。特にこの固有の老化は、皮膚細胞の再生を減速させる原因となり、皮下脂肪組織の減少などの臨床的ダメージの出現、及び、細い線やしわの出現に、また、弾性繊維の数や厚さにおける増加、弾性組織膜からの縦繊維の損失、および、弾性組織の細胞における大きな不規則の線維芽細胞の存在などの組織病理学的変化において本質的に反映される。
【0255】
これに対し、外因性の老化は、濃いしわ、及び、たるみや日焼けした皮膚の形成などの臨床ダメージに帰着し、また、真皮上層における弾性物質の過剰蓄積、及び、コラーゲン繊維の変質などの組織病理学的変化に帰着する。
【0256】
皮膚の老化に関与する異なった生物学的及び分子機構があり、プロセスは現時点において十分には理解されていない。しかしながら、皮膚の老化の固有及び外因性の要因の双方は、共通するメカニズムを共有している(P. U. Giacomoni et al., Biogerontology 2004, 2, 219-229)。これらの要因は、細胞接着分子の発現が循環する免疫細胞の補充及び漏出を引き起こし、分泌コラゲナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ及び活性酸素種により細胞外マトリックス(ECM)を消化するため、皮膚の老化をもたらす皮膚の損傷の蓄積を誘発する。
【0257】
これらの細胞を溶解するプロセスの活性化が、これら常在細胞の無作為な損傷を誘発し、次にプロスタグラジン及びロイコトリエンを分泌する。これらのシグナル分子は、常在マスト細胞の脱顆粒を誘導する。この常在マスト細胞は、オータコイドヒスタミン及びサイトカインTNFアルファを開放し、それにより毛細血管に隣接する、P−セレクチンを開放する内皮細胞を活性化し、E−セレクチン及びICAM−1などの細胞接着分子の合成を活性化する。これは、自己保持された微小炎症サイクルを終了させ、ECM損傷(すなわち、皮膚老化)の蓄積をもたらす。
【0258】
皮膚老化の治療又は予防のための新規な戦略及び組成物に対する強い美容的及び治療的必要性が存在する。特に皮膚の老化の予防又は治療に向けられた種々の美容的及び治療的組成物(スキンケアを含む)が知られている。レチノイン酸及びその誘導体が、スキンケア、化粧用若しくは皮膚用組成物におけるアンチエージング剤として記載されている(具体的にはUS4603146)。乳酸、グリコール酸、あるいはクエン酸等のヒドロキシ酸も同様の適用において知られており、これらの酸は多数の特許及び文献(例えば、EP−A−413528)に記載され、市場において多数のスキンケア、化粧用あるいは皮膚用組成物に導入されている。サリチル酸等の芳香族オルトヒドロキシ酸も提案されている(例えば、WO93/10756及びWO93/10755)。
【0259】
これらすべての化合物は、落屑による皮膚のアンチエージングとして作用し、換言すると、角質層表面における死細胞を除去する。この落屑は、角質溶解特性ともいわれる。しかしながら、これらの化合物は、刺すこと及び赤みを含む副作用も有するものであり、これを利用者は不快に感じる。したがって、公知の化合物と少なくとも同程度の効果を有するが、欠点のないアンチエージング剤の必要性がなお存在する。皮膚の老化を治療又は予防するための確立された方法とは異なり、セレクチン機能を変化させることは、極めて初期の段階において微小炎症カスケードに介入する新しい概念であり、本発明に係る固有及び外因性の皮膚老化を治療し予防することは、他の方法から公知の欠点のない方策である。
【0260】
光線療法は、皮膚の老化を治療する新しい方法を提供する。したがって、本発明の他の主題は、皮膚の老化を治療及び/又は予防するための本発明に係る組成物の使用である。これは、特に皮膚の若返りのため、及び、しわの形成を減少又は予防するための解決策を本発明が提供することを意味する。
【0261】
本発明に係る組成物により放出されることが考えられる皮膚老化の治療のための波長は、400〜950nmの範囲である。この波長は、好ましくは550〜900nmの範囲であり、より好ましくは550〜860nmの範囲である。
【0262】
本発明の組成物は、異なる波長若しくは波長範囲の光をも放出し得、それは他の態様の本発明にも適用され得る。
【0263】
本発明の他の好ましい態様において、皮膚老化の治療のために使用される組成物は、600〜650nmの範囲、より好ましくは620〜650nmの範囲の光を放出する。
【0264】
皮膚老化の治療および/または予防に使用される本発明に係る組成物は、好ましくは、350〜950nmの範囲、好ましくは380〜900nmの範囲、特に好ましくは400〜900nmの範囲の光を放出する少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有する。
【0265】
皮膚の老化の治療及び/又は予防に更に好ましい光は、青色光である。好ましい青色光は、皮膚老化の治療及び/又は予防のための発光波長を有し、それは、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429及び430nmである。
【0266】
皮膚の老化の治療及び/又は予防に更に好ましい光は、400〜900nmの範囲の波長を有する。
【0267】
皮膚の若返りは、830nmの波長の光、又は、これよりわずかに低いか高い値の波長の光によっても達成され得る。したがって、700〜1000nmの範囲、好ましくは750〜900nmの範囲、より好ましくは750〜860nmの範囲、特に好ましくは800〜850nmの範囲の光を放出する本発明に係る組成物もまた、本発明の主題である。
【0268】
対象の皮膚の赤みは、本発明に係る組成物により治療され得る。本発明に係る組成物により放出され得る、赤みの治療及び/又は予防のための波長は、460〜660nmの範囲である。波長は、好ましくは500〜620nmの範囲であり、より好ましくは540〜580nmの範囲である。この目的のための1つの特に好ましい波長は、560nmである。
【0269】
対象の皮膚炎は、本発明に係る組成物により治療され得る。本発明に係る組成物により放出され得る、皮膚炎の治療及び/又は予防のための波長は、470〜670nmの範囲である。波長は、好ましくは490〜650nmの範囲であり、より好ましくは530〜610nmの範囲である。この目的のための2つの特に好ましい波長は、550nmと590nmである。
【0270】
対象のアトピー性湿疹は、本発明に係る組成物により治療され得る。本発明に係る組成物により放出され得る、アトピー性湿疹の治療及び/又は予防のための波長は、470〜670nmの範囲である。波長は、好ましくは490〜650nmの範囲であり、より好ましくは530〜610nmの範囲である。この目的のための1つの特に好ましい波長は、320nmである。
【0271】
乾癬は、本発明に係る組成物により治療され得る。本発明に係る組成物により放出され得る、乾癬の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲である。波長は、好ましくは290〜400nmの範囲であり、より好ましくは300〜330nmの範囲である。この目的のための2つの特に好ましい波長は、311nmと320nmである。
【0272】
白斑は、本発明に係る組成物により治療され得る。本発明に係る組成物により放出され得る、白斑の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲である。波長は、好ましくは290〜400nmの範囲であり、より好ましくは300〜330nmの範囲である。この目的のための1つの特に好ましい波長は、311nmである。
【0273】
目的とする光線療法は、特定の皮膚病に対して紫外線を治療的投与し、一方、健康な皮膚への照射を最小限とすることを可能とする。具体的には、紫外線Bの範囲内の光の波長308nmは、傷跡、線条アルバ(striae alba)及びCOレーザー後の復活に関連する、白斑(vitiligo、leukoderma)及び乾癬を含む多くの皮膚病に特に効果的であることが示された。
【0274】
本発明の組成物は、浮腫の治療にも使用され得る。浮腫は、以前は水腫又は水症として知られ、皮膚の下、又は、1以上の体腔内における流体の異常貯留である。一般に、間質液の量は体液の恒常性のバランスにより決定され、間質への流体の増加する分泌、もしくは、この流体の弱められた除去が浮腫の原因かもしれない。5つの要因が浮腫の形成に寄与し得る。すなわち、(1)血管内の増大した静水圧、あるいは減少したコロイド浸透圧により、あるいは、(2)炎症にあるような増大する血管壁浸透性により、あるいは、(4)リンパ管を介しての流体排出の障害により、あるいは、(5)組織自体の水分保持特性における変化により、促進され得る。上昇した静水圧は、腎臓による水及びナトリウムの保持を反映することがよくある。
【0275】
浮腫の治療に使用される本発明に係る組成物は、好ましくは、760〜940nmの範囲、より好ましくは780〜920nmの範囲、更に好ましくは800〜900nmの範囲、特に好ましくは820〜880nmの範囲の光を放出する少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有する。
【0276】
浮腫の治療のための特に好ましい1つの発光波長は、850nmである。
【0277】
本発明の他の主題は、感染症及び炎症、神経学的及び心理学的疾患及び/又は症状の治療及び/又は予防のための本発明に係る組成物に関するものである。
【0278】
多くの炎症性疾患、病気及び症状が、光線療法を用いて治療され得る。炎症性疾患の治療及び/又は予防のための本発明に係る組成物もまた、本発明の主題である。炎症性疾患及び症状は、幅広い適応症を対象とする。一見したところは炎症と無関係である多くの疾患又は症状が、本発明に係る組成物を用いて治療され得る炎症性の要素を有している。本発明で言及する皮膚疾患及び症状はすべて、ニキビ、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹などの炎症性要素を有する。本発明に係る組成物を用いて治療され得る更なる炎症性疾患及び症状は、限定するものではないが、関節炎、炎症性大腸炎、歯肉炎、粘膜の炎症、爪床の炎症、動脈硬化、及び脈管系の炎症から選ばれる。
【0279】
炎症の治療及び/又は予防に好ましい波長は、350〜900nmの範囲であり、より好ましくは380〜900nmの範囲であり、特に好ましくは400〜860nmの範囲である。炎症の治療及び/又は予防に更に好ましい波長は、405、420、850nmである。
【0280】
上記組成物は、感染症の治療及び/又は予防に使用され得る。感染症は、細菌及びウイルスにより生じ得る。光は、感染症に対し好ましい効果をいくつか有する。光は、例えば、本発明の範囲内におけるいずれかで説明したように、組織の刺激を介して抗炎症作用を有する。
【0281】
本発明に係る組成物を用いた光線療法は、創傷を治療するための使用に有益である。創傷治癒は、炎症と関係することがよくある。したがって、炎症の治療及び/又は予防のために説明したのと同じ波長及び波長の範囲が適用され得る。光線療法による創傷の治療は、恐怖の形成をも妨げる。創傷及び/又は恐怖の治療及び/又は予防のために特に好ましい波長は、600〜950nmの範囲であり、より好ましくは650〜900nmの範囲である。創傷及び/又は恐怖の治療及び/又は予防に更に好ましい波長は、660、720、880nmである。
【0282】
本発明に係る組成物を用いて効果的に治療され得る他の感染症は、細菌により引き起こされるものである。
【0283】
本発明に係る組成物を用いて効果的に治療され得る更なる感染症は、ウイルスにより引き起こされるものである。本発明の好ましい態様は、ウイルス感染の治療及び/又は予防のための上記組成物及びこれを含むOLECの使用であり、このウイルス感染は、特には、サイトメガロウイルス(CMV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、ポリオウイルス、インフルエンスウイルス、パラインフルエンザ呼吸器系インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、F型肝炎ウイルス(HFV)、G型肝炎ウイルス(HGV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、水疱瘡ウイルス、単純疱疹ウイルス(特に、単純疱疹ウイルス1型(HSV−I)、単純疱疹ウイルス2型(HSV−2)、又はヒト疱疹ウイルス1、2、3、4、7もしくは8)、カポジ肉腫関連ヘルペス・ウイルス(KSHV)、ロタウイルス、乳頭腫ウイルス、及び、ヒト乳頭腫ウイル(HPV)(特に、1、2、3、4、5、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19−29、31、32、34、36−38、46−50、56又は58型)により引き起こされるものである。
【0284】
特に、ウイルス性皮膚疾患及び/又は腫瘍疾患は、本発明に係る組成物を用いて治療され得る。ウイルス性皮膚疾患及び/又は腫瘍疾患としては、例えば、陰部疣贅、乳頭腫ウイルスにより引き起こされる皮膚及び/又は粘膜の良性腫瘍などであり、特に足底疣贅、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、尖圭コンジローム、扁平コンジローム、ボーエン様丘疹症、喉頭及び口腔粘膜における乳頭腫、局所上皮過形成、口唇ヘルペス、水痘及び帯状疱疹である。
【0285】
本発明の特に好ましい態様において、本発明の組成物は、疣の治療及び/又は予防に使用され得る。パルス光治療は、本発明に係る組成物を用いた治療の一つの方法であり得る。
【0286】
神経系又は精神的疾患及び/又は症状の治療及び/又は予防のための本発明に係る組成物もまた、本発明の主題である。
【0287】
本発明に係る好ましい神経系の疾患は、パーキンソン病である。パーキンソン病(MB)である。光が所定の強度値に達すると、次にドーパミンの生成を制限するメラトニンを抑制する。メラトニンの制限により、脳におけるドーパミンの良好な生成及び使用が導かれる。明るい光線療法を含むパーキンソン病患者に対する最近の光線療法の事例研究は、90分だけ照射されながら、殆どの患者において運動緩慢及び堅さに顕著な改善を有する肯定的な結果が出ている。
【0288】
本発明に係る更に好ましい神経系又は精神的疾患及び/又は症状は、心理状態及び睡眠関連である。様々な環境において光が心理状態に有益であることは公知である。光線療法はまた、うつ病、季節性情動障害(SAD)、非季節性情動障害、概日リズム睡眠障害(慢性的概日リズム睡眠障害(CRSD)、状況的CRSD)を治療するために使用され得る。
【0289】
米国国立医学図書館は、季節の変わり目には深刻な情緒の変化を経験する人がいることを指摘する。彼らは過剰に睡眠をとり、活力がほとんどなく、甘い物とでんぷん質の多い食べ物を強く欲する場合がある。彼らはまた、精神的な落ち込みを感じ得る。症状は重度になり得るが、彼らは通常病気を治さない。夏の症状は、しばしば逆季節性情動障害(SAD)と呼ばれ、不安の高まりも含まれ得る。USにおける成人の1.5〜9%がSAD経験者であると推測されている。
【0290】
典型的な(冬の)季節性情動障害のための異なった治療があり、明るい光を用いた光線療法、抗うつ剤の投与、認知的行動療法、イオン化空気投与、厳格に時間調節されたホルモンメラトニンの補給が含まれる。
【0291】
本発明に係る組成物により発光される、神経系及び精神的疾患及び/又は症状の治療及び/又は予防のための波長は、350〜600nmの範囲である。波長は、好ましくは400〜550nmの範囲であり、より好ましくは440〜500nmの範囲である。この目的のための好ましい2つの波長は460nmと480nmである。
【0292】
本発明に係る組成物は、痛みの治療及び/又は予防のためにも使用され得る。光線療法による痛みの軽減は、周知である。以下に示す症状は、光線療法を用いて良好に治療され得る痛みを生ずる。すなわち、手根管症候群、慢性的な創傷、上顆炎、頭痛、偏頭痛、足裏の筋膜炎、腱炎並びに滑液包炎、頚痛、背痛、筋肉痛、三叉神経痛、むち打ち関連症である。
【0293】
好ましくは、筋肉痛は、赤色又は赤外光を放出する組成物を用いて治療される。
【0294】
円形脱毛症は人を侵す症状であり、身体の一部又は全身から毛が失われるが、通常は頭皮から失われる。円形脱毛症は、頭皮に頭髪のない部分を形成するため、特に初期段階においてスポット禿げ頭と言われることがある。その1〜2%において、症状が頭皮全体(全頭性脱毛症)又は表皮全体(全身性脱毛症)に広がる。円形脱毛症と似た症状及び同様の原因を有する症状は他の種においても生じる。
【0295】
円形脱毛症(自己免疫脱毛症)は、本発明に係る組成物によって治療され得る。本発明に係る組成物により発光される、円形脱毛症の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲である。波長は、好ましくは290〜400nmの範囲であり、より好ましくは300〜330nmの範囲である。この目的のための特に好ましい一つの波長は、311nmである。
【0296】
飲料及び食物の殺菌のために使用される本発明に係る組成物もまた、本発明の主題である。
【0297】
殺菌剤としての光の使用は周知である。本発明に係る組成物は、殺菌のために使用され得る。ここではあらゆる種類の殺菌が意図され、限定するものではないが、創傷、食物、化粧品などの固形物及び液状物、医療機器、手術に用いられるデバイス、及び飲料が含まれる。
【0298】
好ましいものは、飲料の殺菌に用いられる組成物であり、より好ましくは水の殺菌に用いられ、特に好ましくは飲料水の殺菌に用いられる。汚染水は、世界中に広まる多くの伝染病をもたらし、しばしば個人を重病又は死に至らしめる。本発明に係る組成物及びこれを含むOLECは、商業的プロバイダーのイオン効果技術を巧みに利用した浄水フィルターシステム(例えば、BRITA浄水フィルターシステム)に対し、単純な手段を提供する。このフィルターは微生物汚染されやすく、次いで水が微生物で汚染されることになる。一つの解決策は、問題のある毒物学的観点から、銀塩を添加することである。本発明の組成物によりこの問題は解決される。本発明の組成物は、安全、効率的、且つ低コストで、微生物汚染の程度が低い水を提供するために、浄水フィルターに取り込まれるOLEC中に使用され得る。光源は、ろ過前又はろ過後の水、もしくはフィルターカートリッジ自体の双方に照射することができる。本発明の組成物を含む光源は、フィルターカートリッジと既に濾過された水の双方を照射することが好ましい。
【0299】
容器に説明した水の殺菌手順は、同様に、他の液体、特に飲料に同様に適用され得る。
【0300】
したがって、本発明に係る組成物は、人及び動物のための飲料及び食物の殺菌に使用され得る。
【0301】
本発明に係る殺菌のための波長は、200〜600nmの範囲であり、好ましくは250〜500nmの範囲であり、より好ましくは280〜450nmの範囲である。
【0302】
他の態様において、本発明は、光線力学療法(PDT)における使用のための上記組成物に関するものである。
【0303】
本発明に係るPDTに要求される波長は、300〜700nmの範囲であり、好ましくは400〜700nmの範囲であり、より好ましくは500〜700nmの範囲である。更に好ましい4つの波長は、595、600、630及び660nmである。
【0304】
PDTとして知られるいずれの治療も、本発明に係る組成物及びこれを含むデバイスで処理され得る。特に、本発明の範囲内において説明したPDTは、本発明に係る組成物及びこれを含むデバイスで処理され得る。正常組織よりも腫瘍組織において大量に蓄積するために多環式炭化水素型化学構造を有する色素の特性が周知である。この色素には、アクリジン、キサンテン、ソラレン及びポルフィリンが含まれる。後者の色素、特にヘマトポルフィリ(Hp)及びその化学誘導体(例えば、HpD、式中のHpDはHp誘導体の混合物である)は、優れた腫瘍特定特性を有し、薬物の全身投与後の所定時間における、赤色光照射を用いた腫瘍の光線療法治療の基礎である。
【0305】
PDTに用いられる薬物は、好ましくは、アミノレブリン酸/アミノレブリン酸メチル、エファプロキシラルポルフィリン誘導体(ポルフィリンナトリウム、タラポルフィリン、テモポルフィリン、ベルテポルフィリン)から選択される。
【0306】
更なる態様において、本発明は、黄疸及びクリーグラー・ナジャーの治療及び/又は予防、好ましくは黄疸の治療及び/又は予防のための上記組成物に関するものである。
【0307】
黄疸(黄化病としても知られている)は、皮膚、強膜(白眼)に対する結膜粘膜、及び他の粘膜の帯黄変色である。変色は、高ビリルビン血症(血中のビリルビン値の上昇)が原因で生じる。この高ビリルビン血症は、その後、細胞外液中のビリルビン値の上昇を引き起こす。黄疸は、肝前性(溶血性)黄疸、肝性(肝細胞性)黄疸及び肝後性(閉塞性)黄疸の3つに分類される。
【0308】
肝前性黄疸は、溶血速度の増大、すなわち、血球の破壊を原因とする何かにより生じる。熱帯諸国では、マラリアがこのような態様の黄疸の原因となり得る。鎌状赤血球貧血、球状赤血球症及びグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症などの所定の遺伝的疾患は、赤血球溶解を増大させ、そのため溶血を増大させ得る。一般に、溶血性尿毒症症候群などの腎臓疾患は、着色をももたらし得る。ビリルビン代謝における異常もまた黄疸として現れる。黄疸は通常高熱を伴う。鼠咬症(レプトスピラ症)もまた黄疸を引き起こし得る。
【0309】
肝性黄疸の原因には、急性肝炎、肝毒性及びアルコール性肝臓疾患が含まれ、それによって細胞壊死が、ビリルビンを代謝させて排出する肝臓の機能を減衰させ、血中におけるビリルビンの蓄積を導く。あまり一般的ではない原因には、原発性胆汁性肝硬変、ジルベール症候群(軽度の黄疸に終わり得る、ビリルビン代謝の遺伝性疾患であり、人口の約5%に認められる。)、クリーグラー・ナジャー症候群、転移癌、及び、ニーマン・ピック病C型が含まれる。新生児に見られる黄疸は、新生児黄疸として知られよく見られるものであり、抱合のための肝臓の仕組みとして殆どすべての新生児に生じ、ビリルビンの排泄は約12週間まで未熟である。
【0310】
肝後性黄疸は、閉塞性黄疸とも呼ばれ、胆管系における胆汁の排泄に対する障害により引き起こされる。最も一般的な原因は、総胆管内胆石、及び、膵臓頭部における膵癌である。また、「肝吸虫」として知られる寄生虫の群は、総胆管に生息し、閉塞性黄疸の原因となり得る。他の原因には、総胆管の狭窄、胆道閉鎖症、腺管癌、膵炎及び膵臓偽性嚢胞が含まれる。閉塞性黄疸の稀な原因は、ミリッチー症候群である。
【0311】
黄疸、特に新生児黄疸は、治療しなかったり治療が適切に行われなかった場合には、重度の医学的影響をもたらし得る。ビリルビン濃度が増大すると、核黄疸として知られる脳に障害を与える病気を引き起こし得、深刻な生涯残る身体障害をもたらす。この状況は、不十分な発見と新生児高ビリルビン血症の治療のために近年増加していることが懸念される。早期治療はしばしば、多くは単離された保育器において、乳児に強度の光線療法を施すことからなる。治療は、乳児及び両親の双方に感情的又は心理的困難を突きつける。本発明の組成物は、ブランケットのようにしなやかで動き回れるデバイスを提供するために使用され得る。したがって、乳児は両親の腕の中で横たわっている間に治療され得る。乳児の過熱をもたらしていた従来の治療もまた、本発明の組成物及びこれを含むデバイスで有意に低減され得る。
【0312】
好ましくは、本発明は、新生児黄疸の治療に使用される組成物に関するものである。
【0313】
対象の黄疸は、本発明に係る組成物によって治療され得る。本発明に係る組成物により放射されることが予定される黄疸の治療及び/又は予防のための波長は、300〜700nmである。この波長は、好ましくは350〜600nmであり、より好ましくは370〜580nmである。更に好ましい波長は400〜550nmである。特に好ましい波長は410〜470nmである。この目的のための2つの特に好ましい波長は、450nmと466nmである。
【0314】
本発明はまた、上記組成物と少なくとも1つの更なる溶剤を含有する調製物に関するものである。この調製物は、好ましくは3つの溶剤を含有し、より好ましくは2つの溶剤を含有し、特に好ましくは1つの溶剤を含有する。溶剤は有機溶剤であることが好ましい。特に好ましくは、溶剤は、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、o−ジクロロベゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダン及びこれらの混合物から選択される。
【0315】
他の態様において、本発明は、治療的疾患及び/又は美容的症状の治療及び/又は予防のためのデバイスの調製のための本発明に係る組成物の使用に関するものである。治療的疾患及び症状は、本発明においていずれかに記載したものと同様である。このデバイスは、エレクトロルミネセントデバイスであることが好ましい。
【0316】
本発明の組成物は、機能するために、デバイスに取り込まれる必要がある。本発明はまた、治療的疾患及び/又は美容的症状の治療及び/又は予防における使用のためのデバイスであって、上記組成物を含むことを特徴とするデバイス関するものである。
【0317】
組成物並びに治療的及び美容的症状の双方については既に上掲で詳細に記載している。デバイスはどのような形であってもよく、硬くても柔らかくてもよい。デバイスはどのような形態でもエネルギー供給を必要とする。エネルギー供給はデバイスに直接連結されていてもよいし、例えばケーブルにより分離されていてもよい。電池、特に印刷可能電池は、治療される患者に快適な、完全な内蔵型携帯装置を形成するデバイスを提供するために、デバイスに取り付けられ得る。このように、治療される対象の習慣又は日常生活を乱すことなく、照射は何時でも何処でも行われ得る。本発明に係るデバイスの家での使用は特に好ましい。デバイスは粘着性であり取り外し可能であり得る。デバイスは身体の平面又は非平面部にぴったり合わせることができ、あるいは埋め込み型プローブであり得る。
【0318】
デバイスは、相互ステアリングユニットを具備していてもよい。ステアリングユニットは、連続証明からパルス証明への切り替えを可能とし得、また、放射される光の照射強度及び/又は波長の正確な適合を可能とし得る。ステアリングユニットは、デバイスに直接取り付けられてもよいし、常設の、あるいは一時的なリンケージを介して分離されていてもよい。デバイスは使い捨であってもよく、病院又は病院外での使用に適している。
【0319】
いかなる場合でも、本発明に係るデバイスは、携帯使用される光波長デバイスとして適している。しかしながら、固定式装置としても用意され得る。デバイスは、外来治療、すなわち、対象が自由に動き回れる治療を可能とするのに十分なほど携帯性に優れる。デバイスは、その後、ヒト対象の独自の時間に取り除かれ得るため、治療は殆ど何処でも行われ得る。これは、(外来患者又は入院患者のいずれも回避することから)利便性の向上及びコスト削減をもたらす。
【0320】
PDTの場合、治療はしばしば痛みを伴う。本発明に係る歩行可能なデバイスは、照射がより長い期間生じ得るため、より低い光源値で使用され得る。これにより、病院で使用されている従来の光源からの高照射量によりある患者に引き起こしていた痛みの問題が克服される。さらに、照射量の減少は、光製剤の光退色の低減のため、PDTにおいてより効果的である。
【0321】
デバイスは、光化学的及び/又は光薬学的調製物を具備し得る。これはゲル、軟膏又はクリームの形態であってよい。あるいは、もしくは更に、デバイスは光薬剤が含浸された薄膜を具備し得る。典型的に、光薬学的調製物は、光源に接触した層として提供される。ただし、光薬学的調製物は、刺激光の周波数に対して透明又は十分透過性であり、得られるデバイスは、患者への光製剤の適用の分離した工程なしに容易に適用され得る。光を散乱し得るクリームであっても、光源が電源を入れる前に吸収される場合には使用され得る。光製剤層は、貼り直せる取り外し媒体(例えば、シリコーン支持シート等)によりカバーされていてもよい。光薬学的調製物は、活性化合物に対しインビボで代謝される不活性化合物を含有していてもよい。光製剤の輸送は、イオントフォレーゼにより補助され得る。
【0322】
有機発光半導体からの光のアウトプットは、パルスを発せられ得、電子制御回路又はマイクロプロセッサが、このパルシング、及び/又は、治療される領域の照射時間及び発光強度などのデバイス機能の他の側面を調節するために提供され得る。パルスデバイスは、光退色性の、もしくは、インビボで代謝されて光退色性の化学種になる、光化学及び/又は光薬学的物質の調製物を備え得る。
【0323】
デバイスのアウトプットは、パルス列の形態をとり得、パルス持続時間は、連続パルスのインターバルと実質的に同じであることが好ましい。パルス列の周期は、例えば20ms〜2000sの範囲であり得、上記物質の退色特性に依存する。
【0324】
好ましくは、取り付け手段は、デバイスが患者に取り付けられることを可能とするために、粘着性の表面を含む。更に好ましい特徴は上記の第一の側面に対応する。
【0325】
好ましくは、歩行可能なデバイスは、光化学的及び/又は光薬学的調製物を具備し得る。調製物の更に好ましい特性及びその輸送は上記のとおりである。特に、光化学的及び/又は光製剤は、光退色性であってもよく、または、インビボで代謝されて光退色性の化学種になってもよい。
【0326】
ソースを活性化及び非活性化する手段は、治療される領域の照射時間及び発光強度などのデバイス機能の他の側面を調節し得る。調節手段は、本発明の第一側面に従うデバイスにより生ぜられるパルス列の好ましい1以上の特性を有するパルス列を放出するソースを有利にカバーすることができる
本発明に係る好適なデバイスは、スリーブ、包帯、パッド、プラスター、埋め込みプローブ、鼻腔栄養チューブ、胸部ドレーン、ステント、クロウズ様デバイス(clothe like devices)、ブランケット、寝袋、口中の1以上の歯に適合するデバイス、およびパッチから選択される。
【0327】
デバイスは、ステントとして、例えば、食道の内側に使用される半径1.25〜2.25cm、長さ10〜12cmのチューブとして使用され得る。
【0328】
デバイスは、例えば乳児の黄疸を治療するために、ブランケット又は寝袋であってもよい。現在黄疸を罹患する乳児は、両親と別れて目隠しされた保育器内で光をあてられる。これは両親と乳児の双方にとって不快な状況である。更に、乳児は成人のようぬ容易に身体温度を調節できず、保育器内での過熱が重大な問題となっている。柔軟性のあるブランケット及び寝袋は、このような問題なく乳児を治療する方法を提供する。ブランケット又は寝袋で覆われた乳児は、両親の腕の中で横になっている間に照射されることができ、乳児の身体の過熱の問題は従来の療法と比べて低減されている。これは、本発明に係るデバイスが発するパワーが低く、熱が低いという事実のためである。
【0329】
乾癬患者において、プラークがしばしば身体のしわに認められる。従来の光線療法は、光源により放射される光が身体のしわのプラークに到達しない事実による問題を有している。OLEDは、理論的に、身体のしわの乾癬皮膚に直接接触した光源を設計する有利な条件を提供する。上掲で説明したように、曲面はOLEDの製造において技術的困難性を意味する。しかしながら、この問題はOLECにより解決され得る。OLECは、乾癬並びに身体のしわに見いだされる他の疾患及び/又は症状を治療するために、身体のしわに適合するよう設計することができる。
【0330】
デバイスは治療に要求されるすべての態様に個々に適合するようにされ得る。
【0331】
デバイス自体に治療中に調節された態様で放出される治療薬を含ませてもよい。好ましくは、上記デバイスは、上述したプラスチックイオン材料を含み、そのガラス転移温度Tg又は融点は25〜45℃の範囲である。このためデバイスは、皮膚への良好な接触を得るために皮膚に取り付けられたときに軟化する。
【0332】
本発明に係るデバイスは、有機発光電気化学セル(OLEC)を含むことが好ましい。上掲で説明したように、OLECは光線療法及びPDTの適用に特に適している。OLECは、構造及び製造の観点からかなり簡単であり、製造コストを低減させる。OLECの更なる利点は、本発明の範囲内ですでに記載している。OLECは少なくとも2つの電極を有することが好ましく、2つの電極、カソードとアノードを有することが特に好ましい。双方の電極は本発明に係る組成物を介して連結される。
【0333】
OLECで使用される電極として好ましい材料は、金属から選択され、Al、Cu、Au、Ag、Mg、Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Cr、V、Pd、Pt、Ga、In、及びこれらの合金、導電性酸化物、例えば、ITO、AZO、ZnO、導電性有機薄膜、例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSSH)、ポリアニリン(PANI)から選択されることが特に好ましい。更に好適な導電性ポリマーは、たとえは、Michael S. Freund & Bhavana Deore編集、“Self-Doped Conducting Polymers”, John Willey & Sons, Ltd., 2007、に見いだされる。
【0334】
好ましくは、OLECは柔軟性のある基体上に製造される。好適な基体は、ポリマー系又はプラスチック系フィルム又は金属箔から選択されることが好ましい。ポリマー又はプラスチックの主たる選択基準は、1)衛生特性、及び、2)ガラス転移温度である。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、一般的なハンドブック、例えば、“Polymer Handbook”, 編者J. Brandrup, E. H. Immergut、及び、E. A. Grulke, John Willey & Sons, Inc., 1999, VI/193-VI/276、に見いだされる。好ましくは、ポリマーのTgは100℃超であり、より好ましくは150℃超であり、特に好ましくは180℃超である。特に好ましい基体は、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0335】
酸素及び湿気による劣化を避け、また、デバイス中の活性材料(例えば、イオン化合物及び有機エレクトロルミネセント化合物)が治療される対象と接触することを回避するために、上記デバイスの適切な封止が医療的治療及び美容的症状における適用に必要である。
【0336】
本発明に係るデバイスの封止に好適な種々の技術がある。一般に、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、色素増感太陽電池、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜電池、微小電気機械システム(MEMS)及び電子ペーパーのために開発されたすべての封止技術が、本発明に係るデバイスの封止のために適用することができる。
【0337】
好ましい態様において、本発明のデバイスは、薄膜封止を用いて封止される。典型的に、薄膜封止は無機/有機堆積の複数の交代層からなり、無機層は好適なバリア性能を獲得するために使用され、有機層は無機層の不可避的な欠陥を除去するために使用される。無機層に使用される材料は、金属、金属酸化物、又は混合酸化物から選択することができ、例えば、Ag、SiOx、SiNx、AlOx、ZrOx、ZnOx、HfOx、TiOx及びインジウムスズ酸化物等から選択される。複数の交代層の具体例としては、Graff,G.L.等(J. Appl. Phys. 2004, 96, 1840)により報告された真空蒸着アクリレートポリマー/AlOx、Young Gu Lee等(Org. Electron. 2009, 10, 1352 及び Dig. Tech. Pap.-Soc. Inf. Disp. Int. Symp. 2008, 39, 2011)により報告されたAl/ポリ尿素層、Han,Jin Woo等(Jpn. J. Appl. Phys., Part 1 2006, 45, 9203)により報告されたPET基体上のSiON/SiO/パリレン、及び、Wang,Li Duo等(Chin. Phys. Lett. 2005, 22, 2684)により報告されたポリアクリレート(20μm)−Ag(200nm)が挙げられる。
【0338】
進化した蒸着技術、例えば、原子層蒸着(ALD)、プラズマ支援パルスレーザー蒸着(PAPLD)、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)を使用することにより、無機層における欠陥は有意に削減することができ、すべての無機層、例えば、Chang,Chih Yu等(Org. Electron. 2009, 10, 1300)により報告されたALDによるAl/HfOナノ積層膜、Li,C.Y.等(IEEE Electron. Compon. Technol. Conf. 2008, 58th, 1819)により報告されたSiNx/SiO層、及び、Shimooka,Y.等(IEEE Electron. Compon. Technol. Conf. 2008, 58th, 824)、により報告された(PECVD SiO)ポリ−ベンゾ−オキサゾール(PBO)、Meyer,J.等(Appl. Phys. Lett. 2009, 94, 233305/1)により報告されたAl/ZrOのナノ積層交代層、及び、Gorrn,Patrick等(J. Phys. Chem. 2009, 113, 11126)により報告されたPAPLDによるAl/ZrOのナノ積層、及び、Weidner,W.K.等(Annu. Tech. Conf. Proc - Soc. Vac. Coaters 2005, 48th, 158)により報告されたPECVDによるSiC層、Lifka,H.等(Dig. Tech. Pap.- Soc. Inf. Disp. Int. Symp. 2004, 35, 1384)により報告されたPECVDによる窒化ケイ素−酸化ケイ素−窒化ケイ素−酸化ケイ素−窒化ケイ素(NONON)の多層堆積、Park,Sang−Hee Ko(ETRI Journal 2005, 545)により報告されたポリエーテルスルホン(PES)/ALD AlOxを使用することができる。CVD及びALDにより封止された薄膜のレビューがStoldt, Conrad R(J. Phys. D: Appl. Phys. 2006, 39, 163)により提供されている。
【0339】
更に、単層の封止もまた開発された。単一のバリア層の例としては、Granstrom,J.等(Appl. Phys. Lett. 2008, 93, 193304/1)により報告された、OLEDに容易にスピンコーティングされ得るペルフルオロポリマー(Cytop)、及び、Huang,L.T.等(Thin Solif Films 2009, 517, 4207)により報告された、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを使用することによりアルミニウムオキシナイトライドからなる単一層、Rusu,Cristina等(J. Microelectromech. Syst. 2003, 12, 816)により報告されたPECVDによる単一ポリ−SiGe層が挙げられる。
【0340】
封止に関する材料及び方法の更なる詳細は、例えば、WO2009/089417、WO2009/089417、WO2009/042154、WO2009/042052、US2009/081356、US2009/079328、WO2008/140313、WO2008/012460、EP1868256、KR2006/084743、KR2005/023685、US2005/179379、US2005/023974、KR2003/089749、US2004/170927、WO2004/0024105、WO2003/0070625、及びWO2001/0082390に開示されている。
【0341】
他の好ましい態様において、本発明のデバイスは、キャップと硬化性樹脂により封止される。キャップは少なくとも照射領域を覆い、基材とキャップの間に硬化性樹脂が施される。キャップの材料は、プレート又はホイルの形態の金属及びプラスチック、並びにガラスキャップから選択され得る。キャップは柔軟性を有することが好ましく、金属箔、プラスチック箔又は金属化されたプラスチック箔から選択されることが好ましい。金属は、Al、Cu、Fe、Ag、Au、Niから選択することができ、Alが特に好ましい。プラスチックの選択基準は、1)衛生面、2)ガラス転移温度(Tg)であり、Tgは十分高いことが推測される。ポリマーのTgは好適なハンドブックに見出され、例えば、“Polymer Handbook”、編者J. Brandrup, E. H. Immergut、及び、E. A. Grulke, John Willey & Sons, Inc., 1999, VI/193-VI/276である。キャップ材に好適なポリマーは、Tgが60℃超であることが好ましく、70℃超であることがより好ましく、100℃超であることが更に好ましく、120℃超であることが特に好ましい。本発明に使用されるキャップは、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0342】
好適な樹脂は熱硬化性であるか、またはUV硬化性であり得る。好ましくは、樹脂はUV硬化性であり、任意に加熱により支援又は促進される。典型的な樹脂は、エポキシ系樹脂であり、例えば、Nagase & Co.,LTD.及びDELO Industrie Klebstoffeから商業的に入手可能である。樹脂は照射領域の全面積に施されてもよいし、端部にのみ施されてもよく、非照射領域がその下になる。
【0343】
好ましい電極材料は金属から選択され得、好ましくはAl、Cu、Au、Ag、Mg、Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Cr、V、Pd、Pt、及びこれらの合金、導電性酸化物、例えば、ITO、AZO、ZnO等、及び、導電性有機薄膜、例えば、PEDOT:PSSH、PANI等から選択される。
【0344】
OLECは柔軟性のある基体上に製造されることが好ましい。好適な基体は、ポリマー又はプラスチック系のフィルム又はホイルから選択されることが好ましい。ポリマー又はプラスチックの選択基準は、1)衛生特性、2)ガラス転移温度である。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好適なハンドブックに見出すことができ、例えば、“Polymer Handbook”, 編者J. Brandrup, E. H. Immergut、及び、E. A. Grulke, John Willey & Sons, Inc., 1999, VI/193-VI/276、である。ポリマーのTgは、100℃超であることが好ましく、150℃超であることがより好ましく、180℃超であることが特に好ましい。特に好ましい基体は、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0345】
好ましい態様において、上記組成物はイオン導電体を更に含有している。イオン導電体は、ポリマー材料、例えば、ペルフルオロスルホン酸系調製物、ポリベンズイミダゾール、スルホン酸化ポリエーテルケトン、スルホン酸化ナフタレンポリイミド、及び、ポリエチレンオキシド(PEO)系調製物から選択されることが好ましい。更に好適なポリマーは、燃料電池用のプロトン交換膜のためのポリマーから選択され得る。このポリマーは、例えば、Hickner等、“Alternative Polymer Systems for Proton Exchange Membranes (PEMs)” ;Chemical Reviews, 2004, 104, 4587-4612、に開示されている。本発明に特に好ましいイオン導電体は、ポリエチレンオキシド(PEO)である。
【0346】
本発明に係るデバイスは、OLECが少なくとも0.5cmの大きさを有し、領域の治療及び/又は予防のために、電磁放射線を放射する。OLECは連続的又は非連続的であり得る。OLEC及びその照射領域は、治療に好適ないかなる形にも適合することができる。これは、特に治療的症状において、対象の治療が必要とされない部分の照射を介する副作用を抑制し得る。
【0347】
更に好ましい態様において、本発明のデバイスは、0.5〜100000cmの大きさを有し、0.5〜50000cmの大きさを有することがより好ましい。
【0348】
更に好ましい態様において、本発明に係るデバイスは歩行可能なデバイスである。
【0349】
本発明はまた、患者にデバイスを取り付けるための取り付け手段を備えることを特徴とするデバイスに関するものである。
【0350】
デバイスは粘着性であってもよいし、作用面に接着剤性のストリップなどの補助材料を用いて一時的に固定されてもよい。
【0351】
上記デバイスは、プラスター、包帯、ブランケット、寝袋、スリーブ、埋め込みプローブ、鼻腔栄養チューブ、胸部ドレーン、ステント及びパッチであり得ることを特徴とする。デバイスの形態及び形は、治療における個々の必要性や、治療される対象の体格に従い調整され得る。
【0352】
本発明はまた、電源ユニットを含むことを特徴とする、本発明に係るデバイスに関するものである。上掲に説明したように、電源は装置に直接取り付けられてもよい。これにより、極薄デバイスの設計が可能となり、例えば、治療される対象に不自由させることなく、衣類の下に使用することができる。電源はまた、分離されたユニットでもよく、電源を供給するための何らかの可能な方法で装置に接続される。
【0353】
本発明に係るデバイスは、対象の部分を照射することが意図される。デバイスは、動物又はヒトにおける治療的及び/又は美容的疾患及び症状の治療及び/又は予防に使用されることを特徴とする。
【0354】
本発明の他の主題は、治療的疾患の治療及び/又は予防のための本発明に係る組成物又はデバイスの使用である。
【0355】
ヒト対象が治療される場合、美容的適用は重要な機能を有する。美容的症状の治療及び/又は予防のための本発明に係る組成物又はデバイスの使用もまた、本発明の主題である。美容的症状は上述したものと同様である。
【0356】
更に、本発明は、本発明に係る組成物を使用してヒト及び/又は動物の疾患を治療及び/又は予防するための方法に関するものである。
【0357】
本発明はまた、本発明に係る組成物を使用してヒト及び/又は動物の美容的症状を治療及び/又は予防するための方法に関するものである。
【0358】
上記方法は、上述したように、ヒト又は動物の皮膚又は体の他の部分を治療するために使用され得る。
【0359】
他の態様において、本発明は、ヒト及び/又は動物の体の部分、好ましくは皮膚を照射するための上記組成物を含むデバイスを用いた、ヒト及び/又は動物の疾患を治療及び/又は予防するための方法に関するものである。
【0360】
他の態様において、本発明は、ヒト及び/又は動物の体の部分、好ましくは皮膚を照射するための上記組成物を含むデバイスを用いた、ヒト及び/又は動物の美容的症状を治療及び/又は予防するための方法に関するものである。
【0361】
使用される用語としての組成物、デバイス、(治療的)疾患、美容的症状等は、本発明の範囲内におけるいずれかで定義したものと同じである。
【0362】
当然のことながら、上述した本発明の種々の態様は、本発明の範囲内に包含され得る。本明細書に開示した各特徴は、記述がない限り、同様に作用し、同等又は類似の目的の選択的特徴と置換され得る。このように、記述がない限り、開示された各特徴は、同じ又は類似の総括的な一連の特徴の一例に過ぎない。
【0363】
本明細書に開示されたすべての特徴は、少なくともこのような特徴及び/又は工程のいくつかが相互排他的である組成物を除き、どのような組み合わせにおいても組み合わされ得る。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての側面に適用可能であり、どのような組み合わせにおいても使用され得る。同様に、非本質的な組み合わせにおいて開示された特徴は、分離されることができる(すなわち、組み合わされなくてもよい)。
【0364】
当然のことながら、上掲に記載した多くの特徴(特に好ましい態様)は、各々の権利において進歩性を有するものであり、本発明の態様の単なる一部ではない。独立した保護は、現在特許請求の範囲に記載されている発明に加えて、もしくは替えて、これらの特徴について考えられ得る。
【0365】
ここで開示した教示は、開示された他の実施例に取り込まれ、組み合わされ得る。
本発明の他の特徴は、本発明を詳細に説明するために記載され、制限するものではない以下に記載の典型的な態様を通じて明らかになるであろう。
【実施例】
【0366】
例1
材料
下記ポリマーIL1、BE1及びRE2を、スズキカップリングを用いて合成する。この反応は当業者に周知の合成方法により行うことができ、例えば、WO2003/048225に記載されている。
【0367】
中間層として使用されるポリマーIL1は、下記モノマーを下記に示すモル%で含有する共重合体である。
【化25】

【0368】
得られるポリマーポリマーIL1の分子量(MW)は、200000〜300000g/molの範囲で分布する。
【0369】
下記に示すBE1は、50%フェナントレンと50%スピロ−ビフルオレンの共重合体であり、380〜500nmの深青領域で発光し、420nm近辺に最大波長を有する。
【化26】

【0370】
得られるポリマーポリマーBE1の分子量(MW)は、200000〜300000g/molの範囲で分布する。
【0371】
YE1(スーパーイエロー、PDY−132、Merk KGaA(ドイツ)から市販されている)は、500〜700nmの幅広い範囲で発光を示す、黄色光を発光するPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン)ポリマーである。YE1はギルヒ(Gilch)重合を用いて合成される。この反応は、当業者に周知の合成法により行うことができ、例えば、EP1029019B1に記載されている。
【0372】
RE1は、対イオンとしてPF6−を有する、下記に示すイオン遷移金属錯体Ru(bpy)2+(PFである。RE1は、560〜800nmの幅広い発光を有し、ピーク波長が630nm近辺にある。RE1は下記の通り合成される。
【0373】
アルファ(Alfa)から購入されるRu(bpy)Clが、そのまま使用される。RE1はメタセシス(metathesis)反応を介してPFへの対イオン交換により得られる。この反応においてRE1は対応するCl塩と過剰のNHPFの水溶液から沈殿し、水で洗浄され乾燥される。
【化27】

【0374】
RE2は、主鎖にイリジウム金属錯体を有する共役共重合体であり、分子量(MW)が約300000〜500000g/molである。
【化28】

【0375】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)が、イオン遷移金属錯体RE1として使用される。
【0376】
ポリ(エチレンオキシド)(PEO)が、イオン導電性材料として使用される。分子量MW=5×10のPEOがAldrichから購入され、そのまま使用される。塩KCFSO(IM1)及びテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(IM2)が2種のイオン材料(IM)である。IM1はAlfa Aesarから購入され、そのまま使用される。IM2の合成は、Z.Anorg.Allg.Chem、2000、626、560〜568を参照することができる。
【0377】
例2
調製物1〜4
以下において、本発明に係る組成物を含有する4つの異なる調製物が、当業者に公知の標準技術を用いて調製される。
【0378】
a)調製物1の調製
− BE1をクロロホルムに溶解させてBE1の濃度が10mg/mlの溶液1aを調製し、
− PEOとIM2を20:1の質量比でシクロヘキサノン中に溶解させて濃度が20mg/mlの溶液1bを調製し、
− 次いで、溶液1aと溶液1bを所望の割合で混合してBE1:PEO:IM2の質量比が1:1:0.2である調製物1を調製する。
【0379】
b)調製物2の調製
− YEをクロロホルム中に溶解させてYEの濃度が10mg/mlの溶液2aを調製し、
− PEOとIM1を1:0.12の質量比でクロロヘキサノン中に溶解させて濃度が20mg/mlの溶液2bを調製し、
− 次いで、溶液2aと溶液2bを所望の割合で混合してYE1:PEO:IM1の質量比が1:1:0.12の調製物2を調製する。
【0380】
c)調製物3の調製
RE1とPMMAを質量比1:1でアセトニトリル中に溶解させ濃度が80mg/mlの調製物3を調製する。
【0381】
d)調製物4の調製
− RE2をクロロホルム中に溶解させて濃度が10mg/mlの溶液4aを調製し、
− PEOとIM1を1:0.2の質量比でシクロヘキサノン中に溶解させて濃度が20mg/mlの溶液4bを調製し、
− 次いで、溶液4aと溶液4bを所望の割合で混合してRE2:PEO:IM1の質量比が1:1:0.2の調製物4を調製する。
【0382】
上掲の調製物は、本発明に係るデバイスに求められる薄膜を製造するのに使用することができる。また組成物の固形粉末は、上掲で調製した溶液の溶媒を蒸発させることにより得ることができる。
【0383】
例3
OLEC用基板及び構成
可塑性ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)がOLEC用基板として使用される。
【0384】
図1及び図2に描かれたサンドイッチ構造のOLECにおいて、図3に示されるように、150nmのITOがPEN基板上にマスクを用いてスパッタ形成される。以下においてSUB1という。SUB1は、3×3cmの大きさと、2×2cmのOLEC画素を有する
図4に示されるような平面インターデジタル電極構造を備えるOLECにおいて、図5に概略的に示されるように、PEN基板上に100nmAgがシャドウマスクを用いて真空蒸着される。インターデジタル電極は、指幅が2mm、指間隔が200μmである。以下においてSUB2という。
【0385】
例4
BE1を用いる青色OLEC
図2aに示されるサンドイッチ構造において、発光層にBE1を使用するOLEC1は下記工程に従い製造される。
【0386】
1.)PDEOT(Baytron P Al 4083)がスピンコーティングによりSub1上に80nmの厚さに蒸着され、次いで10分間120℃で加熱される。
2.)調製物1のスピンコーティングにより発光層が蒸着され、グローブボックス中に厚さ300nmの層が形成される。
3.)残留溶剤を除去するためにデバイスが120℃で30分間加熱される。
4.)Alカソード(150nm)が発光層上にエバポレーションにより蒸着される。
5.)デバイスが例8に記載の方法に従い密閉される。
【0387】
図2bに示されるサンドイッチ構造において、中間層にIL1を使用し、発光層にBE1を使用するOLEC2は下記工程に従い製造される。
【0388】
1.)OLEC1の製造における工程1.)を参照。
2.)OLEC1の製造における工程2.)を参照。
3.)濃度0.5質量%のトルエン溶液からスピンコーティングによりグローブボックス中に20nmのIL1が蒸着される。
4.)OLEC1の製造における工程3.)を参照。
5.)OLEC1の製造における工程4.)を参照。
6.)OLEC1の製造における工程5.)を参照。
OLEC1及びOLEC2が当業者に周知の方法により分析される。電圧6Vにおいて、OLECの双方に明青色のエレクトロルミネッセンス発光が見られる。6Vの電圧を5分間かけた後のOLEC1のエレクトロルミネッセンススペクトルを図6に示す。同図では、400nmと500nmの間に幅広い青色発光が見られる。OLEC2はOLEC1と同様のエレクトロルミネセンス発光を示している。一定電圧下において安定性が評価される。OLEC2の中間層はデバイスの作動時間を有意に改善する。OLEC2は少なくとも6時間作動する。
【0389】
例5
RE1を用いる赤色OLEC
図2aに示されるサンドウィッチ構造において、RE1を用いるOLEC3は、OLEC1の製造と同様に製造されるが、OLEC3の製造手順の工程2において、調製物1に替えて調製物3が使用される。
【0390】
図4に示す平面構造において、発光層にRE1を使用するOLEC4は、以下の工程に従い製造される。
【0391】
1.)スピンコーティングにより調製物3の発光層を基板Sub2上に堆積させ、グローブボックス中に厚さ200−300nmの層を形成する。
2.)グローブボックス中でデバイスを120℃で30分間加熱し、残留溶剤を除去する。
【0392】
3.)デバイスを例8に記載の方法に従い封止する。
【0393】
OLEC3及びOLEC4を、当業者に周知の方法に従い分析する。4Vにおいて、OLEC3は鮮赤色のエレクトロルミネッセンス発光を示す。OLEC4において、10Vを2分間かけた後、発光は陰極フィンガーに近い領域から放射される。安定性は一定電圧下において評価される。OLEC3は4Vにおいて7時間を超えて作動する。OLEC4はさらに12Vにおいて少なくとも1日作動する。
【0394】
例6
RE2を用いる赤色OLEC
図2aに示されるサンドウィッチ構造において、RE2を用いるOLEC5は、OLEC1の製造と同様に製造されるが、OLEC5の製造手順の工程2において、調製物1に替えて調製物4が使用される。
【0395】
図4に示される平面構造において、RE2を用いるOLEC6は、OLEC4の製造と同様に製造されるが、OLEC6の製造手順の工程1において、調製物3に替えて調製物4が使用される。
【0396】
OLEC5及びOLEC6を、当業者に周知の方法に従い分析する。エレクトロルミネッセンススペクトルが記録される。3.5Vにおいて、OLEC5は鮮赤色のエレクトロルミネッセンス発光を示す。図7は、4Vを5分かけた後におけるOLEC5のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。図7は、580〜750nmにおいて幅広い赤色発光を示している。OLEC6において、9Vを2分間かけた後の発光は陰極フィンガーに近い領域から放射される。安定性は一定電圧下において評価される。OLEC5は4Vにおいて4日を超えて作動する。OLEC6は9Vにおいて少なくとも4日作動する。
【0397】
例7
YE1を用いる黄色OLEC
図2aに示されるサンドウィッチ構造において、YE1を用いるOLEC7は、OLEC1の製造と同様に製造されるが、OLEC7の製造手順の工程2において、調製物1に替えて調製物2が使用される。
【0398】
図4に示される平面構造において、YE1を用いるOLEC8は、OLEC4の製造と同様に製造されるが、OLEC8の製造手順の工程1において、調製物3に替えて調製物2が使用される。
【0399】
OLEC7及びOLEC8を、当業者に周知の方法に従い分析する。エレクトロルミネッセンススペクトルが記録される。3.5Vにおいて、OLEC7は鮮赤色のエレクトロルミネッセンス発光を示す。図8は、3.5Vを5分かけた後におけるOLEC7のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。図8は、590nm近辺に最大波長を有する、500〜700nmの幅広い色発光を示している。
【0400】
する。OLEC8において、8Vを2分間かけた後の発光は陰極フィンガーに近い領域から放射される。安定性は一定電圧下において評価される。OLEC7は4Vにおいて少なくとも5日間作動する。OLEC8は8Vにおいて少なくとも5日間作動する。
【0401】
例8
封止
OLEC1〜OLEC8の封止は、UV硬化樹脂、UV樹脂T−470/UR7114(ナガセケムテックス株式会社)及びPENキャップを用いて実行され、PENキャップは、図3の工程4に示すように、導体パッドを残すために基板より小さい。最初にUV樹脂が画素の端に塗布され、次いでキャップがその上に配置される。次いで、デバイスを30秒間UV露光する。これらはすべてグローブボックス中でなされる。
【0402】
例9
治療的及び/又は美容的適用のためのデバイス
治療的及び/又は美容的適用において使用する最終デバイスが、例えば、図3に示すように、OLECデバイスをプラスターに取り付けることにより実現され得る。外部電源が導体パッドを介して作動され得る。
【0403】
電池はデバイスの電源として好ましく、軽量のために印刷薄膜電池が特に好ましい。図9に示される印刷薄膜電池は、例えば、フラウンホーファー・インスティテュートから取得され得る。
【0404】
ある治療では、デバイスはパルスモードにおいて駆動する。
【0405】
さらに、OLECの安定性はパルス電圧スキームにおいて操作されるときに増大し得ることも報告されている。したがって、パルス駆動のための制御装置(特にポケット携帯型制御装置)が所望される。これは、商業的に入手可能な自動点滅ユニット又はブリンカーユニットを使うことにより実現し得る。さらに、そのような自動点滅ユニットは、例えば、Fachkunde Elektrotechnik,Verlag Europa−Lehrmittel,Nourney,Vollmer GmbH&Co.,5657 Haan−Gruiten,227に示されているように、一般的なトリガー回路の作動原理に従い、電源装置と一体化され得る。
【0406】
例10
目尻の皺の治療
発光層中にYE1を含有するOLEC7は、皺の治療及び/又は予防に使用することができる。デバイスは例8に記載の手順に従い封止される。電源として印刷電池を有する例9に従いプラスターが用意される。各プラスターの電池は30分の照射時間の間、エネルギーを供給する。
【0407】
30歳から40歳の年齢の18人の女性被験者による20週間の試験的研究が、当業者に周知の標準方法に従い実施される。研究に含まれる主要な選択基準の一つは、顔の両側に、すなわち、左目と右目に近接してほぼ等しい兆候で発現する目尻の皺である。被験者は、20週間一日おきに30分間、OLEC7を有するプラスターで右側を治療される。左目と右目に近接する皮膚の比較において、治療した側の皮膚が有意に改善されていることが明らかになる。目尻の皺が短く、深さも浅くなる。OLECデバイスにより放射される光で治療される皮膚は治療されていない皮膚と比較して滑らかになっている。
【0408】
例11
尋常性座瘡の治療
ここに説明した手順に従い2つのプラスターを用意する。第一プラスターは青色光を放射するOLEC1を有し、第二プラスターは赤色光を放射するOLEC5を有する。OLECを有するプラスターは9cmの方形であるが、カスタマイズされたいずれの形でもよい。被験者26人による3週間の試験的研究が当業者に周知の標準方法に従い実施される。被験者は、軽度から重度の対称の顔面尋常性座瘡を有するフィッツパトリックスキンタイプII〜IVである。額の右半分が交互方法において二つの異なるプラスターを用いて治療される。全部で8回の治療がなされる。1回目の治療は青色光を放射する第一プラスター(OLEC1)を使用して20分間実施される。3日後、同じ皮膚が、赤色光を放射する第二プラスター(OLEC5)を使用して30分間実施される。さらに3日後、同じ皮膚が第一プラスターなどを用いて治療される。治療された被験者の額の左側と右側を比較すると、治療されていない皮膚と比べて治療された皮膚には有意な改善が明らかに現れる。皮膚の赤みが有意に減少する。さらに、平均病変総数減少もまた有意である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的疾患及び/又は美容的症状を治療及び/又は予防するための組成物であり、少なくとも1つのイオン種及び少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物が、蛍光エミッター材料、リン光エミッター材料、発光有機金属錯体から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イオン種がカチオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン種がアニオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
皮膚疾患及び/又は皮膚関連症状の治療及び/又は予防に用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ニキビ、乾癬、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、浮腫、白斑、ボーエン病、腫瘍、前悪性癌、悪性癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、二次転移癌、皮膚T細胞性リンパ腫、日光性角化症、ヒ素角化症、放射線皮膚障害、及びセルライトから選択される皮膚疾患及び/又は皮膚関連症状の治療及び/又は予防に用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
感染症及び炎症、神経及び精神の疾患及び/又は症状を治療及び/又は予防するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
飲料及び食物の殺菌に用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
光線力学的療法(PDT)において使用される請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
黄疸及びクリーグラー・ナジャー病の治療及び/又は予防に使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物及び少なくとも1つの溶剤を含有する調製物。
【請求項12】
治療的疾患及び/又は美容的症状を治療及び/又は予防するためのデバイスの製造のための請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物又は請求項11に記載の調製物の使用。
【請求項13】
治療的疾患及び/又は美容的症状の治療及び/又は予防に使用するデバイスであって、前記デバイスが請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
有機発光電気化学電池(OLEC)を備えることを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスが治療される領域を覆い、電磁波放射線を放射して該領域を治療及び/又は予防するデバイスであって、OLECが少なくとも0.5cmの大きさを有することを特徴とする請求項13又は14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスが携帯型デバイスであり、患者にデバイスを取り付けるための取り付け手段を備えることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスがプラスター、包帯、ブランケット、寝袋、スリーブ、埋め込み型プローブ、鼻腔栄養チューブ、胸部ドレーン、パッド、ステント又はパッチである請求項13〜16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスが電源装置を備えることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
治療的疾患の治療及び/又は予防のための請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物又は請求項13〜18のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【請求項20】
美容的症状の治療及び/又は予防のための請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物又は請求項13〜18のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【請求項21】
式(Kn+(Am−で表される少なくとも1種の化合物を含有する組成物を含む発光デバイスであって、Kn+又はAm−の一方が放射性一重項エミッターであることを特徴とする発光デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−513555(P2013−513555A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542381(P2012−542381)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006874
【国際公開番号】WO2011/069590
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】