治療用粒子の凍結乾燥に対する安定製剤
約100mL以下の水性媒体での凍結乾燥医薬組成物の溶解において、非経口投与に適した溶解組成物が、10ミクロン以上の微粒子を6000未満及び25ミクロン以上の微粒子を600未満含有するポリマーナノ粒子を含有する凍結乾燥医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の請求項は、2009年12月11日出願の米国仮出願第61/285,722の優先権を享有し、その全趣旨を参照することによりここに取り込む。
【0002】
患者(例えば、特定の組織又は細胞型が標的にされた、あるいは通常の組織ではなく、特定の罹患した組織が標的にされた)に特定の薬物を供給するか、あるいは、薬物を制御放出するシステムが長く有益であると認識されている。
【0003】
例えば、活性な薬物を含む、また、例えば、特定の組織又は細胞型が標的にされた、通常の組織でなく、特定の罹患した組織が標的にされた治療は、治療を必要としない体組織で、薬物の量を低減させることができる。薬物の細胞障害性用量が、周囲のガン組織でない組織に位置づけることなくガン細胞に供給されることが求められるガンのような症状を治療する場合には、これは特に重要である。さらに、そのような治療は、抗がん治療によく見られる望ましくなく、時に生命を脅かす副作用を低減させるかもしれない。加えて、そのような治療は、薬物が到達することができない特定の組織に、薬物を供給することができるかもしれない。
【0004】
治療用ナノ粒子の供給は、ナノ粒子の溶解した懸濁の非経口の注射によって達成することができる。溶解前の保存のために、オリジナルのナノ粒子懸濁液を凍結乾燥する。ナノ粒子懸濁液を凍結乾燥することは、その凍結懸濁物よりはるかに優れた貯蔵安定性を有し、再懸濁用の製品を与える。さらに、凍結乾燥は、一定の非常に低い温度を必要とせず、より簡便な保存を提供することができる。しかし、溶解した凍結乾燥品は、オリジナルの懸濁液に相当するか、それよりも優れた物理化学的特性を備えているに違いない。マイクロ凝集又は未分散粒子による粒子痕跡のない、同サイズの粒子への再分散は、ナノ粒子懸濁液凍結乾燥で最も魅力的な側面である。
【0005】
従って、ナノ粒子による治療と、がんのような疾病を治療するための薬物の治療レベルの供給が可能で、優れた保存能力を備えるそのようなナノ粒子を製造する方法が必要である。
【発明の開示】
【0006】
一面においては、本発明は、ポリマーナノ粒子を含む凍結乾燥医薬組成物を提供し、ここで、凍結乾燥医薬組成物の溶解において、約100mL以下の水性媒体で、非経口投与に適した溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を6000未満で、25ミクロン以上の微粒子を600未満含む。一実施形態では、溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を3000未満で、25ミクロン以上の微粒子を300未満含む。他の実施形態では、ナノ粒子の濃度は約50mg/mlである。
【0007】
ナノ粒子の数は、USP32<788>に準じた光掩蔽粒子計数試験による、USP32<788>に準じた顕微鏡粒子計数試験による、レーザー回折及び/又は単一粒子光学検出のような方法によって測定することができる。
【0008】
ナノ粒子は、活性剤又は治療剤、例えば、タキサンと、1つ、2つ又は3つの生物学的適合性のポリマーとを含んでいてもよい。例えば、ナノ粒子は、治療剤約0.2〜約35重量%、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体約10〜約99重量%及びポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%を含むものが挙げられる。典型的な治療剤としては、タキサン(例えば、ドセタキセル)のような抗悪性腫瘍薬が挙げられ、治療剤(例えば、タキサン剤)約10〜約30重量%を含んでいてもよい。
【0009】
例えば、共重合体のポリ(乳酸)部分は、約16kDaの重量平均分子量を有しており、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は約5kDaの重量平均分子量を有していてもよい。
【0010】
意図する凍結乾燥医薬組成物は、糖、例えば、二糖類、単糖類又は多糖類と、イオン性ハロゲン化物塩をさらに含んでいてもよい。二糖類は、例えば、蔗糖又はトレハロースあるいはそれらの混合物とすることができる。イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物から選択することができる。他の実施形態では、凍結乾燥医薬品組成物は、シクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。例えば、凍結乾燥医薬品組成物は、糖、例えば二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及びシクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。あるいは、凍結乾燥医薬品組成物は、イオン性ハロゲン化物塩を含まず、二糖類及びシクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物から選択することができる。
【0011】
溶解した組成物は、イオン性ハロゲン化物及び/又はシクロデキストリンを含有しない溶解組成物と比較して、最小限の凝集を有することができる。溶解組成物は、0.2未満の多分散インデックスを有するかもしれない。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10〜100mg/mL、例えば40〜60mg/mL又は約50mg/mLの濃度を有する。
【0012】
一面では、本発明は、疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体をそれぞれ含む複数の治療粒子;活性剤;二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩及び/又はβ−シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HPbCD))のようなβ−シクロデキストリンを含有し、溶解によって、非経口使用に適する医薬組成物を提供する。医薬組成物は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。他の一面では、本発明は、疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を夫々含む共重合体を含む複数の治療粒子;活性剤;二糖類及びシクロデキストリンを含有し、溶解によって、非経口使用に適する医薬品組成物を提供する。
【0013】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、共重合体は、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体とすることができる。溶解では、約100mLの水性媒体で、10ミクロン以上の微粒子を6000未満、25ミクロン以上の微粒子を600未満含んでいてもよい。
【0014】
他の面では、本発明は、
a)疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体をそれぞれ含む治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及び任意にシクロデキストリンを組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥し、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程によって製造される非経口投与用の医薬的に許容される製剤を提供する。製剤は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0015】
さらに他の面では、本発明は、
a)疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体を夫々含む治療用粒子及び活性剤を含む組成物を提供し、
b)二糖類及びシクロデキストリンを組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥し、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程によって製造される非経口投与用の医薬的に許容される製剤を提供する。
【0016】
凍結乾燥組成物は、約40mg/mLより高い治療用粒子濃度を有していてもよい。非経口投与に適する製剤は、10mL用量において10ミクロンより大きなサイズの粒子を約600以下有していてもよい。
【0017】
二糖類及び/又はイオン性ハロゲン化物塩を添加する工程は、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%(例えば、約10〜約20重量%)のトレハロースと、約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化物塩とを添加することを含んでいてもよい。この工程は、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを添加することをさらに含んでいてもよい。
【0018】
他の実施形態では、二糖類及びシクロデキストリンを添加する工程は、約5〜約15重量%の蔗糖又は約10〜約20重量%のトレハロースと、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを添加することを含んでいてもよい。
【0019】
凍結乾燥する工程は、約−40℃を超える温度又は−30℃未満の温度、例えば、約−40℃〜約−30℃、又は約−40℃〜約−25℃で組成物を凍結させて凍結組成物を形成し、例えば、昇華によって凍結組成物を乾燥させて凍結乾燥組成物を形成することを含んでいてもよい。
【0020】
他の面では、本発明は、溶解においてナノ粒子の凝集を防止するために、糖及び塩を凍結乾燥製剤に添加することを含む医薬ナノ粒子組成物において粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。一実施形態において、シクロデキストリンを凍結乾燥製剤に添加する。他の面では、本発明は、糖とシクロデキストリンとをナノ粒子を含む凍結乾燥製剤に添加し、凍結乾燥製剤を溶解することを含む溶解医薬ナノ粒子組成物で粒子の実質的な凝集を防止する方法であって、溶解組成物は、実質的にナノ粒子の実質的な凝集を含まない方法を提供する。また、溶解において、糖及びシクロデキストリンを凍結乾燥された製剤に添加することを含み、ナノ粒子の凝集を防止することを含む医薬ナノ粒子組成物において粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】開示のナノ粒子を形成するエマルション方法のフローチャートである。
【図2】開示のエマルジョン方法のフローチャートである。
【図3】溶解したナノ粒子懸濁液における塩濃度及び蔗糖の粒径に対する効果を示す。
【図4】種々の凍結乾燥製剤のための温度サイクルを示す。
【図5】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液のダイナミック光散乱(DLS)によるサイズを示す。
【図6】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図7】種々の凍結乾燥製剤のための温度サイクルを示す。
【図8】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液のナノ粒子サイズ(DLSを使って測定)を示す。
【図9】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図10】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図11】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図12】開示の種々のナノ粒子懸濁液のドセタキセルの試験管内の放出を示す。
【図13】5%のトレハロース及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液の示差走査熱量測定(DSC)測定を示す。
【図14】10%のトレハロース及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを有するナノ粒子懸濁液が有するDSC特性を示す。
【図15】20%のトレハロース及び15%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液のDSC特性を示す。
【図16】10%の蔗糖及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液のDSC特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、一般に、凍結乾燥されたポリマーナノ粒子組成物及びそのような治療用組成物を製造及び使用する方法に関する。そのような組成物は、凍結乾燥組成物から溶解されてもよいし、ナノ粒子及び/又は他の材料の最小限の大きな凝集体を含むかもしれない。従って、開示された組成物は、非経口使用に適しているかもしれない。
【0023】
ナノ粒子
一般に、組成物は活性剤を含むナノ粒子を含有していてもよい。ここに開示されるように、「ナノ粒子」は1000nm未満(例えば、約10nm〜約200nm)の直径を有する粒子である。開示された治療用ナノ粒子は、約60nmから約120nm、または約70nmから約130nm、または約60nmから約140nmの直径を有するナノ粒子を含んでいてもよい。
【0024】
開示されたナノ粒子は、約0.2〜約35重量%、約3〜約40重量%、約5〜約30重量%、約10〜約30重量%、15〜25重量%または約4〜約25重量%の抗悪性腫瘍薬(例えば、タキサン剤、例えば、ドセタキセル)のような活性剤を含んでいてもよい。
【0025】
開示されたナノ粒子は、1つ、2つ、3つの以上の生物学的適合性及び/又は生物分解可能なポリマーを含む。例えば、意図されるナノ粒子は、約10〜約99重量%の生分解性ポリマー及びポリエチレングリコールを含む1以上のブロックコポリマーと、約0〜約50重量%の生物分解可能なホモポリマーを含んでいてもよい。
【0026】
典型的な治療用なナノ粒子は、約40〜約90重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体又は約40〜約80重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含んでいてもよい。そのようなポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体は約15〜20kDa(又は例えば約15〜約100kDa、例えば、約15〜約80kDa)の数平均分子量を有するポリ(乳酸)を含んでいてもよく、ポリ(エチレン)グリコールは約2〜約10kDa(例えば、約4〜約6kDa)の数平均分子量を有していてもよい。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、約70〜約95重量%のPLA−PEG及び約5〜約25重量%のドセタキセルを含んでいてもよい。別の実施形態では、開示の治療用ナノ粒子は、約30〜約50重量%のPLA−PEG、約30〜約50重量%のPLA又はPLGA及び約5〜約25重量%のドセタキセルを含んでいてもよい。そのようなPLA((ポリ)乳酸)は、約5〜約10kDaの数平均分子量を有していてもよい。そのようなPLGA(ポリ乳酸−コ−グリコール酸)は、約8〜約12kDaの数平均分子量を有していてもよい。
【0027】
一実施形態では、開示の治療用ナノ粒子はターゲティング・リガンド、例えば、前立腺ガンのような疾患又は障害の治療に有効な低分子量のPSMAリガンドを、患者の必要に応じて含んでいてもよい。ある実施形態では、低分子量のリガンドは、ポリマーに結合し、ナノ粒子は、リガンド結合ポリマー(例えば、PLA−PEG−リガンド)対非官能ポリマー(例えば、PLA−PEG又はPLGA−PEG)の特定の比率を含む。ナノ粒子は、リガンドの有効量が、ガンのような疾病又は障害の治療用ナノ粒子に使われるように、これらの2つのポリマーの最適化された比率を含むことができる。
ある実施形態では、開示のナノ粒子は、約0.2〜約10重量%のターゲティング・リガンドで官能化されたPLA−PEGをさらに含んでいてもよく、及び/又は約0.2〜約10重量%のターゲティング・リガンドで官能化されたポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)ブロック−PEG−を含んでいてもよい。そのようなターゲティング・リガンドは、ある実施形態では、例えば、PEGに共有結合されていてもよく、例えば、PLA−PEG−アルキレン−GL2のようなアルキレン・リンカーを介してPEGに結合されていてもよい。例えば、開示のナノ粒子は、約0.2〜約10モルパーセントのPLA−PEG−GL2またはポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−PEG−GL2を含んでいてもよい。PLA−PEG−GL2又はPLGA−PEG−GL2は、PEGがGL2に結合するアルキレン・リンカー、例えば、C1−C20、例えば(CH2)5)を含むことができる部分をさすと理解される。
【0028】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、約0.2から約35重量%の治療剤、約30〜約99重量%のポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体、0〜約50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)及び約0.2〜約10重量%又は約0.2〜約30重量%のPLA−PEG−GL2又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−PEG−GL2を含んでいてもよい。例えば、PLA−PEG−GL2は、約10,000Da〜約20,000のDaの数平均分子量のポリ(乳酸)及び約4,000〜約8,000の数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールを含んでいてもよい。
【0029】
ポリマー
ある実施形態では、本発明のナノ粒子は、ポリマー及び治療剤のマトリクスを含む。いくつかの実施形態では、治療剤及び/又はターゲティング部分(すなわち、低分子量のPSMAリガンド)は、高分子マトリックスの少なくとも一部と結合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ターゲティング部分(例えば、リガンド)は、高分子マトリックスの表面と共有結合によって結合していることがある。ある実施形態では、共有結合は、リンカーによって仲介される。治療剤は、高分子マトリックスで封止され、取り囲まれ及び/又は全体にわたって分散して、その表面と結合することができる。
【0030】
多種多様なポリマー及びそれらから粒子を形成する方法は、薬物供給の分野で公知である。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも2つの巨大分子を有するナノ粒子に指向され、第1の巨大分子は低分子量のリガンド(例えば、ターゲティング部分)に結合する第1ポリマーを含み、第2の巨大分子は、ターゲティング部分に結合しない第2ポリマーを含む。ナノ粒子は、1以上の添加剤、非官能化ポリマーを任意に含むことができる。
【0031】
どのようなポリマーでも、本発明に使用することができる。ポリマーは、天然又は非天然(合成)ポリマーのいずれでもよい。ポリマーは、ホモポリマー又は2以上のモノマーからなる共重合体とすることができる。シーケンスに関しては、共重合体はランダム、ブロック又はランダム及びブロック・シーケンスの組合せとすることができる。一般に、本発明のポリマーは、有機ポリマーである。
【0032】
ここで用いられる用語「ポリマー」は、当該分野で使用されるような通常の意味、つまり、共有結合によって結合された、1以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造である。繰り返し単位は、すべてが同一でもよくあるいは、場合によっては、ポリマー内に複数種類の繰り返し単位が存在してもよい。ある実施形態では、ポリマーは、生物学的に誘導されてもよく、つまり、生物高分子であってもよい。非限定的な例としては、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。ある実施形態では、ポリマーはさらなる部分、例えば以下に示すもののような生物学的部分が存在してもよい。複数種類の繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、ポリマーは「共重合体」であると言われる。ポリマーを用いるどのような実施形態でも、使用されているポリマーは、場合によっては共重合体である場合があることを理解すべきである。共重合体を形成している繰り返し単位は、どのよう形式で配置されていてもよい。例えば、繰り返し単位は、ランダムの順序、交互の順序で配置されていてもよいし、あるいは、ブロック共重合体、つまり、各々第1の繰り返し単位(例えば、第1ブロック)を含む1以上の領域と、各々第2の繰り返し単位(例えば、第2のブロック)を含む1以上の領域とを含むものなどであってもよい。ブロック共重合体は、2つ(ジブロック共重合体)、3つ(三ブロック共重合体)又はより多くの数の異なったブロックを有していてもよい。
【0033】
開示のナノ粒子は、一実施形態では、互いに結合した2以上のポリマー(例えばここに記述されるそれら)であり、通常、2以上のポリマーがともに共有結合するコポリマーを含むことができる。このように、共重合体は、第1のポリマーと第2のポリマーとを有していてもよく、それらが一緒に結合して、第1のポリマーをブロック共重合体の第1のブロックとし、第2のポリマーをブロック共重合体の第2のブロックとするブロック共重合体を形成する。当然、ブロック共重合体は、ある実施形態では、ポリマーの複数のブロックを含んでいてもよく、「ブロック共重合体」(ここで用いられる)が一つの第1ブロックと一つの第2ブロックのみを有するブロック共重合体だけに限られないことは、当業者に理解されるであろう。例えば、ブロック共重合体は、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック及び第3のポリマー又は第1のポリマーを含む第3のブロックなどを含んでいてもよい。ある実施形態では、ブロック共重合体は、第1のポリマーの第1ブロック、第2のポリマーの第2ブロック(及び場合によっては、第3のブロック、第4のブロックなど)の多数を含むことができる。さらに、ブロック共重合体は、いくつかの例において、他のブロック共重合体から形成することができることも留意する必要がある。例えば、第1ブロック共重合体は、他のポリマー(ホモポリマー、生物高分子、他のブロック共重合体などである場合がある)に結合し、多種類のブロックを含む新たなブロック共重合体を形成してもよいし、他の部分(例えば、非重合部分)に結合してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、両親媒性、つまり、親水性部分と疎水性部分、あるいは比較的親水性部分と比較的疎水性部分とを有していてもよい。親水性ポリマーは通常、水を引きつけるものであり、疎水性ポリマーは、一般に水をはじくものである。親水性又は疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を準備し、水でその接触角を測定することによって確認することができる。一般的に、疎水ポリマーは約60°を超える接触角を有し、一方、親水性ポリマーは60°未満の接触角を有する。場合によっては、2以上のポリマーの親水性を互いと比較して確認してもよい。つまり、第1のポリマーは第2のポリマーより親水性であることがある。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーより小さい接触角を有していてもよい。
【0035】
一実施形態では、ここで意図されるポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、例えば、生物学的適合性のポリマー、つまり、生体に挿入されるか、注入された場合、通常有害反応を誘発しないポリマー、例えば、T細胞反応によって、免疫系によるポリマーの顕著な炎症及び/又は急性拒絶反応のないポリマーを含む。従って、ここで意図される治療用粒子は、非免疫原性とすることができる。ここで用いられる用語「非免疫原性」とは、通常、循環抗体、T細胞又は反応性免疫細胞を引き起こさないか、最小限しか引き起こさず、通常それ自体に対してヒトが免疫反応を誘発しない、その天然状態における内因性成長因子を指す。
【0036】
生体適合性は、少なくとも一部の免疫系によって材料の急性拒絶を指す。つまり、患者に移植された非生物学的適合性の材料は、免疫系による材料の拒絶を十分にコントロールすることができないほど重篤となり得、しばしば、材料を患者から除去しなければならないような程度で、患者における免疫反応を引き起こすことである。生体適合性を決定する一つの単純なテストは、試験管内でポリマーを細胞にさらすことであり、生物学的適合性ポリマーは、通常、適度な濃度(例えば、50マイクログラム/106細胞の濃度)で重篤な細胞死をもたらさないポリマーである。例えば、生物学的適合性ポリマーは、線維芽細胞又は上皮細胞のような細胞にさらした場合、そのような細胞に貧食又は摂取された場合であっても、約20%未満しか細胞死を引き起こさないかもしれない。本発明の種々の実施形態において有用となり得る生物学的適合性ポリマーの非限定的な例は、ポリドキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリ(グリセロールセバシン酸)、ポリエチレングリコール糖、ポリ乳酸、PLGA、ポリカプロラクトン、これら及び/又は他のポリマーを含む共重合体又は誘導体が挙げられる。
【0037】
ある実施形態では、意図する生物学的適合性ポリマーは、生物分解可能であってもよく、つまり、ポリマーは、化学的に及び/又は生物学的に、生理的環境内(例えば、体内)で分解することができる。ここで用いられるように、「生物分解可能な」ポリマーは、細胞に導入された場合、細胞機構によって及び/又は細胞がその細胞において重篤な毒性作用をもたらすことなく再利用又は廃棄することができる構成要素へ加水分解(化学的に分解可能な)のような化学プロセスによって分解されることである(生物学的に分解可能)。ある実施形態では、生分解性ポリマー及びそれらの分解副産物は、生物学的適合性とすることができる。
【0038】
例えば、意図されるポリマーは、水にさらすことにより(例えば、患者内で)、自発的に加水分解するものとすることができ、ポリマーは、熱(例えば、約37℃の温度)にさらすことにより分解するかもしれない。ポリマーの分解は、使われるポリマー又は共重合体によって、種々の速度で生じるかもしれない。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマー及び/又は他の非重合部分に分解することができる時間)は、ポリマーによって、日、週、月又は年のオーダーとすることができる。ポリマーは、例えば、酵素活性又は細胞機構によって、場合によって、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)にさらすことによって分解することができる。場合によっては、ポリマーは、細胞はその細胞に顕著な毒性作用なしに再利用又は破棄することができる、モノマー及び/又は他の非重合部分に、分解することができる(例えば、ポリ乳酸は、加水分解して乳酸を形成することができ、ポリグリコリドは、加水分解してグリコール酸等を形成することができる)。
【0039】
ある実施形態では、ポリマーは、総合的に「PLGA」とここで称される、ポリ(乳酸)−コ−グリコール酸及びポリ(乳酸−コ−グリコリド)のような有産及びグリコール酸単位を含む共重合体、及び総合的に「PGA」とここで称される、グリコール酸単位、総合的に「PLA」とここで称される、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−L,D−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ−L、D−ラクチドのような乳酸単位を含むホモポリマーを含むポリエステルとすることができる。ある実施形態では、ポリエステルの例としては、例えば、ポリヒドロキシ酸、PEG化ポリマー及びラクチド及びグリコリドの共重合体(例えば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA及びそれらの誘導体)が挙げられる。ある実施形態では、ポリエステルは、例えば、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、ポリリシン、PEG化ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコリック酸]及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、PLGAとすることができる。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生物学的適合性及び生物分解可能なコポリマーであり、PLGAの種々の形態は、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴づけることができる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸又はD,L−乳酸とすることができる。PLGAの分解速度は、乳酸−グリコール酸比率を変えることによって調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明において使われるPLGAは、乳酸:グリコール酸比率は約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、約15:85によって特徴づけることができる。いくつかの実施形態では、粒子のポリマー中の乳酸対グリコール酸モノマーの比率(例えば、PLGAブロック共重合体又はPLGA−PEGブロック共重合体)は、水の取り込み、治療剤放出及び/又はポリマー分解の動力学のような種々のパラメータを最適化するために選択することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、1以上のアクリル・ポリマーとすることができる。ある実施形態では、アクリル・ポリマーは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、エトキシエチル・メタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート共重合体、ポリシアノアクリレート及びこれらポリマーの1以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリル・ポリマーは、低含量の4級アンモニウム基のアクリル酸及びメタクリル酸エステルの完全に重合した共重合体を含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性ポリマーとすることができる。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(例えば、DNA、RNA又はそれらの誘導体)の負に荷電するストランドを縮合及び/又は保護することができる。ポリ(リジン)、ポリエチレン・イミン(PEI)及びポリ(アミドアミン)デンドリマーのようなアミン含有ポリマーが、本発明の粒子において、いくつかの実施形態での使用のため意図される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解可能なポリエステルとすることができる。これらのポリエステル類の例は、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)を含む。
【0044】
ここに開示される粒子は、PEGを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。さらに、ある実施形態は、ポリ(エステル−エーテル)、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R’結合)及びエーテル結合(例えば、R−O−R’結合)によって結合された繰り返し単位を有するポリマーを含む共重合体に指向することができる。本発明のいくつかの実施形態では、カルボン酸基を含む加水分解性ポリマーのような生分解性ポリマーは、ポリ(エステル−エーテル)を形成するために、ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位と結合していてもよい。ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位を含むポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、PEG化ポリマーと呼ぶことがある。
【0045】
PEGは、終端化され、例えば、PEGがリガンドに結合しない場合に、末端基を含むことが意図される。例えば、PEGは、ヒドロキシ、メトキシ又は他のアルコキシ、メチル又は他のアルキル、アリール基、カルボン酸、アミン、アミド、アセチル基、グアニジノ基又はイミダゾールで終端化することができる。他の意図される末端基は、アジド、アルキン、マレイミド、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、アルコキシアミン又はチオール部分を含む。
【0046】
例えば、開環重合法(ROMP)等によって、ポリマーを、アミンで終端化するPEG基に反応をさせるために、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びNHS(N−ヒドロキシサクシンイミド)を用いることによるポリマーのPEG化方法又は技術は、当業者に知られている。
【0047】
一実施形態では、ポリマーの分子量は、ここに開示されているような有効な処理のために最適化することができる。例えば、ポリマーの分子量は、粒子の分解速度(生分解性ポリマーの分子量を最適化した場合のように)、溶解度、水の取り込み及び薬物放出動力学に影響を与えるかもしれない。例えば、ポリマーの分子量は、2,3時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間など、妥当な時間内で治療される患者において、粒子が分解されるように調整することができる。開示の粒子は、例えば、PEG及びPL(G)Aのジブロック共重合体を含むことができ、例えば、PEG部分は約1000から20000、約2000から20000、約2から10000の数平均分子量を有していてもよく、PL(G)A部分は約5000から20000m約5000から100000、約20000から70000、約15000から50000の数平均分子量を有していてもよい。
【0048】
例えば、約10〜99重量%のポリ(乳酸)−コ−(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコール共重合体、約20〜約80重量%又は約40〜約80重量%、約30〜約50、約70〜約90重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含む典型的な治療用ナノ粒子が挙げられる。典型的なポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体は、約15〜約20kDa、約10〜約25kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)を含むことができ、約4〜約6kDa、約2〜約10kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。
【0049】
例えば、開示のナノ粒子は、約1〜約50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール)酸(それは、PEGを含まない)を任意に含んでいてもよく、約1〜約50重量%、約10〜約50重量%又は約30〜50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)を任意に含んでいてもよい。例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)は、約5〜約15kDaまたは約5〜約12kDaの数平均分子重量を有していてもよい。典型的なPLAは、約5〜約10kDaの数平均分子量を有するかもしれない。典型的なPLGAは、約8〜約12kDaの数平均分子量を有するかもしれない。
【0050】
特定の実施形態では、ナノ粒子のポリマーは、脂質に結合することができる。ポリマーは、例えば、脂質終端化PEGとすることができる。後述するように、ポリマーの脂質部分を他のポリマーと自己アセンブリのために用いることができ、ナノ粒子の形成を容易にする。例えば、親水性ポリマーは、疎水ポリマーと自己アセンブルするであろう脂質に結合することができた。
【0051】
ある実施形態では、脂質は油である。 一般に、当該分野で知られているいかなる油も、本発明において用いられるポリマーに結合させることができる。ある実施形態では、油は1以上の脂肪酸基又はその塩類を含むことができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、消化できる、置換又は非置換の長鎖炭水化物(例えば、C8−C50)を含むことができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、C10−C20の脂肪酸又はその塩とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、C15−C20の脂肪酸又はその塩とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸は不飽和とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基はモノ不飽和とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、ポリ不飽和とすることができる。ある実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合は、シス形とすることができる。ある実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合は、トランス形とすることができる。
【0052】
ある実施形態では、脂肪酸基は、1以上の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、1以上のパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α―リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸又はエルカ酸とすることができる。
【0053】
一実施形態では、ナノ粒子の脂質成分に、任意に、低分子量ターゲティング部分が、例えば、共有結合によって結合してもよい。例えば、治療剤、官能化された及び官能化されていないポリマーを含むポリマーマトリクス、脂質及び低分子量PSMAターゲティングリガンドを含むナノ粒子が挙げられ、ターゲティングリガンドは、例えば、共有結合によって、例えば、共有結合によって、ナノ粒子の脂質成分に結合されている。一実施形態では、低分子量ターゲティング部分に結合された脂質成分は、式V又はそれらの塩である。
式中、Rは、それぞれ独立にC1〜C30アルキルを表す。
式Vの一実施形態では、脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びそれらの塩、例えば、ナトリウム塩である。
他の実施形態では、本発明は治療剤、ポリマーマトリクス、DSPE及び低分子量PSMAターゲティングリガンドを含むターゲット特異性ナノ粒子を提供する。リガンドは、例えば、共有結合によって、DSPEに結合されている。例えば、本発明のナノ粒子は、PLGA−DSPE−PEG−リガンドを含むポリマーマトリックスを含むことができる。
【0054】
意図されるナノ粒子は、前立腺ガンの治療のために有効な、リガンド結合ポリマー対非官能化ポリマー比を含むかもしれず、親水性のリガンド結合ポリマーは、ナノ粒子を構成する疎水性及び親水性ポリマーが共有結合しないように、疎水ポリマーに自己アセンブルするであろう脂質に結合する。「自己アセンブリ」とは、互いにより高い順序構造(例えば、分子)の成分を自然の引きつける力に頼るより高い順序構造の自発的な組立てのプロセスを指す。これは、分子のランダムな挙動及びサイズ、形、組成又は化学的性質に基づく結合形成を通して一般的に起こる。
例えば、そのような方法は、脂質と反応する第1のポリマーを準備し、ポリマー/脂質複合体を形成することを含む。ポリマー/脂質複合は、次いで、低分子量リガンドと反応し、リガンド結合ポリマー/脂質複合体を形成し、ナノ粒子を形成するように、リガンド結合ポリマー/脂質複合体と第2の非官能化ポリマー及び治療剤と混合する。ある実施形態では、第1のポリマーは、PEGであり、脂質終端かPEGが形成される。一実施形態では、脂質は、式V、例えば、2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びその塩類(例えば、ナトリウム塩)である。続いて、脂質終端化PEGは、例えば、PLGAと混合して、ナノ粒子を形成する。
【0055】
ターゲティング部分
任意にターゲティング部分、つまり、生物学的構成要素(例えば、膜成分、細胞表面レセプター、前立腺特異的膜抗原等)と結合するか、さもなければそれと結びつくことができる部分を含んでいてもよいナノ粒子が提供される。粒子表面に存在するターゲティング部分は、粒子を、特定のターゲティング・サイト、例えば、腫瘍、疾病サイト、組織、器官、細胞型等に局所化させることを可能にするかもしれない。そのため、ナノ粒子は、「ターゲット特異性」となり得る。薬物又は他のペイロードは、場合によっては、粒子から放出し、特異的ターゲティング・サイトで局所的に相互作用させることを可能にする。
【0056】
特定の実施形態では、薬物又は他のペイロードは、粒子から徐放形式で放出されるかもしれず、局所的に特異的ターゲティング・サイト(例えば、腫瘍)で相互作用を可能にするかもしれない。「徐放」(及びその語の変形)というここで用いられる語(例えば、「徐放性のシステム」の前後関係で)は、通常、選択されたサイトで物質(例えば、薬物)を放出させるか、さもなければ速度、間隔及び/又は量を制御可能とする。徐放は、限定されないが、実質的に連続的に供給、パターン化された供給(例えば、定期的又は不定期的の時間間隔によって中断された時間にわたる断続的な供給)及び選択された物質のボーラス供給(例えば、一定、比較的短時間、例えば、数秒又は数分にわたる物質の断続的な供給)が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、開示のナノ粒子は、低分子量のリガンド(例えば、低分子量のPSMAリガンド)であるターゲティング部分を含む。ここで用いられる用語「結合」又は「結合」は、典型的には、限定されないが、生化学的、物理的及び/又は化学相互作用を含む、特異性又は非特異性の結合又は相互作用のために、その相互の親和性又は結合能を示すそれらの対応する一対の分子又は部分の間の相互作用を指す。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、グリコプロテイン、炭水化物、ホルモン類等を含む一対の分子間で起こる一種の相互作用と定義する。用語「結合パートナー」は、特定の分子と結合することができる分子を指す。「特異的な結合」とは、他の類似の生物学的構成要素に対するよりも実質的に高い程度で、結合パートナー(又は限られた数の結合パートナー)に結合することができるか又はを認識することができる、例えば、ポリヌクレオチドのような分子を指す。一実施形態では、ターゲティング部分は、約1マイクロモル未満の、少なくとも約10マイクロモル又は少なくとも約100マイクロモルの親和性(分離定数によって測定される)を有する。
【0058】
例えば、ターゲティング部分は、使用されたターゲティング部分によって、患者の体内で、腫瘍(例えば、固形腫瘍)、疾病サイト、組織、器官、細胞タイプ等に局所化するために粒子となるかもしれない。例えば、低分子量のPSMAリガンドは、固形腫瘍(例えば、胸又は前立腺腫瘍あるいはガン細胞)に局所化させることができる。対象は、人間又は人間以外の動物とすることができる。対象の例は、犬、猫、馬、ロバ、ウサギ、牛、ブタ、羊、ヤギ、ネズミ、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、人間等の哺乳類を含むが、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、ターゲティング部分は、小さなターゲット前立腺ガン腫瘍であってもよいし、例えば、ターゲット部分は、PSMAペプチド阻害剤であってもよい。これらの部分は、ここでは「低分子量のPSMAリガンド」とも称する。通常の組織における発現と比較する場合、前立腺の特異的膜抗原(PSMA)の発現は悪性の前立腺で少なくとも10倍過剰であり、疾病が転移の段階に進行するに従って、PSMA発現のレベルはさらに上方調節される(Silverら、1997, Clin. Cancer Res., 3:81)。
【0060】
例えば、低分子量PSMAリガンドは、
及び鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーの混合物又はそのラセミ化合物である。特に、ブチルアミン化合物が、ベンゼン環を有さないため、合成しやすいという長所がある。
【0061】
例えば、開示のナノ粒子は、以下で表される複合体を含む。
式中、yは約222であり、zは約114である。
【0062】
例えば、開示のナノ粒子は、以下から選択されたポリマー化合物を含む。
式中、R1は、H及びハロゲンで置換されていてもよいC1〜C20アルキル基からなる群から選択され、
R2は、結合手、エステル結合又はアミド結合、
R3は、C1〜C10アルキレン又は結合手、
xは、50から約1500、例えば、約170から約260、
yは0〜約50、例えば、yは0及び
zは約30から約456又は約30から約200、例えば、zは約80から約130である。
【0063】
治療剤
例えば、治療剤(例えば、抗がん剤)、診断薬(例えば、造影剤、放射性核種、蛍光体、発光体、磁気分子)、予防剤(例えば、ワクチン)及び/又は栄養補助食品(例えば、ビタミン、ミネラルなど)を含む剤が、本発明のナノ粒子の一部を構成する。本発明によって供給される典型的な剤は、限定されないが、小分子(例えば、細胞障害性剤)、核酸(例えば、siRNA、RNAi及びマイクロRNA剤)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン類、金属、放射性元素及び化合物、薬物、ワクチン、免疫学的剤など、及び/又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、供給される剤は、ガン(例えば、前立腺ガン)の治療に有用な剤である。
【0064】
活性剤又は薬物は、mTor抑制剤(例えば、シロリムス、テムシロリムス又はエベロリムス)、ビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン又はビンクリスチン)、ジテルペン誘導体、タキサン(例えば、パクリタキセル又はその誘導体、例えばDHA−パクリタキセル又はPG−パクリタキセル又はドセタキセル)等の治療剤(例えば、化学療法薬)、心血管剤(例えば、利尿剤、血管拡張薬、アンジオテンシン変換酵素、ベータ受容体遮断薬、アルドステロン拮抗剤又は抗凝固剤)、副腎皮質ステロイド、代謝拮抗物質又は葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート)、化学療法剤(例えば、エポティロンB)、アルキル化剤(例えば、ベンダムスチン)とすることができ、活性剤又は薬物は、siRNAとすることができる。
【0065】
ある実施形態では、活性剤又は治療剤は、例えば、開示のナノ粒子の一部を形成する開示のポリマーに結合してもよいし、しなくてもよく、例えば、活性剤は、PLA又はPGLAに結合されていもよいし(例えば、共有結合、例えば直接又は結合部位を介して)、例えばPLA−PEG又はPLGA−PEGのような共重合体のPLA又はPLGA部分に結合されていてもよい。
【0066】
ナノ粒子の製造
この発明の他の側面は開示のナノ粒子製造する方法及びシステムに指向する。いくつかの実施形態では、2以上の異なる比率で異なるポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)を使用し、ポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)から粒子を製造し、粒子の特性が制御される。例えば、1つのポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、低分子量PSMAリガンドを含んでいてもよく、他のポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、得られる粒子のその生体適合性及び/又は免疫の制御能のために選択することができる。
【0067】
一実施形態では、粒子は、1以上のポリマーを含む溶液を準備し、溶液をポリマー非溶媒に接触させ、粒子を形成することにより形成される。溶液は、ポリマー非溶媒と混和性かもしれないし、不混和性かもしれない。例えば、アセトニトリルのような水混和液は、ポリマーを含むことができ、アセトニトリルが、水、ポリマー非溶媒と接触するにつれて、例えば、制御された速度でアセトニトリルを水に注ぐことによって、粒子が形成される。溶液中に含まれるポリマーは、ポリマー非溶媒との接触によって、沈殿し、ナノ粒子のような粒子を形成する。
【0068】
2つの液体は、一方が周辺温度及び圧力で少なくとも10重量%のレベルで他に溶解しない場合、互いに他と「不混和」か、混和しないとすることができる。典型的には、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルフルホキシド等)及び水溶液(例えば、水又は溶解された塩又は他の種、細胞又は生物学的媒体、エタノール等を含む水)は、互いに混和しない。例えば、第1の溶液を、第2の溶液(適当な率または速度で)に注ぐことができる。場合によっては、第1の溶液が不混和な第2の液体と接触するにつれて、ナノ粒子のような粒子を形成することができ、例えば、第1の溶液が第2の液体に注がれている間、接触によるポリマーの沈殿が、ポリマーをナノ粒子に形成させ、場合によっては、例えば、導入の速度が慎重に制御され、比較的遅い速度に維持される場合、ナノ粒子を形成することができる。そのような粒子形成の制御は、単調な実験のみを用いて、当業者によって容易に最適化することができる。
【0069】
他の実施形態では、例えば、図1及び2において代表されるプロセスのようなナノエマルジョン・プロセスが提供される。例えば、有機溶媒とともに、治療剤、第1のポリマー(例えば、リガンド(例えば、GL2)に任意に結合することができるPLA−PEG又はPLGA−PEGのいずれかのようなジブロック・コポリマー)及び任意に第2のポリマー(PL(G)A−PEG又はPLA)は第1の有機相を形成する。そのような第1相は、約5から約50重量%の固形分、例えば、約5から40重量%の固形分又は約10〜30重量%の固形分を含んでいてもよい。第1の有機相は第1の水溶液と混合して第2相を形成することができる。有機溶液は、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、イソプロピル・アセテート、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、スパン80等及びそれらを組み合わせて含むことができる。一実施形態では、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル及びその組合せを含むことができる。第2相は、約1〜約50重量%、例えば、約5〜40重量%の固形分とすることができる。水溶液は、水と、任意に1以上のコール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニル及びベンジルアルコールとの混合物とすることができる。
【0070】
例えば、油又は有機相は、非溶媒(水)と部分的にのみ混和できる溶媒を使うことができる。従って、十分な低比率で混合する場合及び/又は有機溶剤で前飽和する水を用いる場合、油相は液体のままである。油相は水溶液に乳化させることができる、液滴として、例えば、高エネルギー分散システム(例えば、ホモジナイザー又はソニケーター)を使用して、ナノ粒子に剪断することができる。エマルジョン(別名「水相」)の水部分は、コール酸ナトリウムからなる界面活性剤溶液とすることができ、酢酸エチル及びベンジルアルコールで前飽和させることができる。
【0071】
エマルジョン相を形成するための第2相を乳状化は、1又は2の乳化ステップにおいて行うことができる。例えば、第1のエマルジョンを準備し、次いで、乳化してきめの細かいエマルジョンを形成する。第1のエマルジョンは、例えば、単純な混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケーター、攪拌バー又はローター固定子ホモジナイザー用いて形成することができる。第1のエマルジョンは、例えば、プローブソニケーター又は高圧ホモジナイザー(例えば、1、2、3以上のホモジナイザーを通す)を用いることにより、きめの細かいエマルジョンに形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーが使われるとき、使われる圧力は約1000〜約8000psi、約2000〜約4000psi、4000〜約8000psi又は約4000〜約5000psi(例えば、約2000、2500、4000又は5000psi)とすることができる。
【0072】
溶媒の蒸発又は希釈が、溶媒の抽出及び粒子の固体化を達成するために必要かもしれない。抽出の動力学及びよりスケーラブルなプロセスのより良好な制御のために、水性クエンチによる溶媒の希釈を用いることができる。例えば、エマルジョンを、冷水に希釈して、有機溶剤の全てを溶解するのに十分な濃度にして、クエンチされた相を形成することができる。クエンチングは、約5℃以下の温度で、少なくとも部分的に実行することができる。例えば、クエンチングに用いられる水は、室温(例えば、約0〜約10℃又は約0〜約5℃)より低温とすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、治療剤(例えば、ドセタキセル)の全てがこの段階で粒子中に封止されないが、薬物可溶化剤をクエンチされた相に添加し、可溶化相が形成される。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム又はコール酸ナトリウムとすることができる。例えば、Tween80を、クエンチされたナノ粒子懸濁液に添加して、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防止することができる。いくつかの実施形態では、薬物可溶化剤:治療剤(例えば、ドセタキセル)の比は、約100:1〜約10:1である。
【0074】
可溶化相をろ過して、ナノ粒子を回収することができる。例えば、限外濾過膜を用いて、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、実質的に有機溶媒、遊離薬物及び他のプロセス補助剤(界面活性剤)を排除することができる。典型的な濾過は、接線フロー濾過システムを使用して実行することができる。例えば、ナノ粒子を保持するために適当な孔サイズを有する膜を用いることにより、溶質、ミセル及び有機溶剤を通している間、ナノ粒子を選択的に分離することができる。約300〜500kDa(〜5−25nm)の分子量カットオフの典型的な膜を用いることができる。
【0075】
透析ろ過(ダイアフィルトレーション、Diafiltration)を、定量アプローチを用いて行うことができ、ろ液を懸濁液から除去するのと同じ速度で、透析ろ液(冷脱イオン水、例えば、約0〜約5℃又は0〜約10℃)を、供給懸濁液に添加してもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、ろ過は、約0〜約5℃又は約0〜約10℃の第1の温度、約20〜約30℃又は約15〜約35℃の第2の温度を用いる第1のろ過を含む。例えば、ろ過は、約0〜約5℃での約1〜約6の透析容量の処理、約20〜約30℃での少なくとも1の透析容量(例えば、約1〜約3又は約1〜2の透析容量)の処理を含むことができる。
【0076】
ナノ粒子懸濁液の精製及び濃縮の後、粒子を1、2以上の殺菌及び/又は、例えば、〜0.2μmの深層プレ・フィルタを用いた深層フィルタに通してもよい。
【0077】
ナノ粒子の製造の他の実施形態では、有機相を治療剤(例えば、ドセタキセル)及びポリマー(ホモポリマー、コポリマー、リガンドとのコポリマー)の混合物から構成してもよい。有機相は、約1:5の比率(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤及びいくらか溶解された溶媒からなる。第1のエマルジョンは、単純な混合で又はローター固定子ホモジナイザーを用いることにより、2相の混合によって形成される。次いで、第1のエマルジョンは、高圧ホモジナイザーを用いることによりきめの細かいエマルジョンに形成される。続いて、きめの細かいエマルジョンは、混合下、脱イオン水への添加によってクエンチされる。クエンチ:エマルジョン比は、約8.5:1である。次いで、Tween(例えば、Tween80)の溶液がクエンチに添加され、全体的に約2%のTweenを得る。これは、遊離、未封止薬物を溶解する役割を果たす。続いて、ナノ粒子を、遠心分離又は限外濾過/透析濾過によって分離する。
【0078】
製剤の製造に用いられるポリマー及び治療剤又は活性剤の量は、最終的な製剤と異なるかもしれないことはいうまでもない。例えば、いくらかの活性剤は、ナノ粒子に完全に取り込まれないことがあり、そのような遊離の治療剤は、例えば、ろ過されるかもしれない。例えば、一実施形態では、約20重量%の活性剤(例えば、ドセタキセル)及び約80重量%のポリマー(例えば、ポリマーは約2.5モル%のPLA−PEG−GL2及び約97.5モル%のPLA−PEGを含むことができる)を製剤の製造において用いることができ、約10重量%の活性剤(例えば、ドセタキセル)及び約90重量%のポリマー(ポリマーが、約1.25モル%のPLA−PEG−GL2及び約98.75モル%のPLA−PEGを含むことができる)からなる最終的なナノ粒子となるかもしれない。そのようなプロセスは、約2〜約20重量%の治療剤(例えば、重量あたり約5、約8、約10、約15%の治療剤)を含む、患者への投与に適する最終的なナノ粒子を提供するかもしれない。
【0079】
凍結乾燥医薬組成物
本発明の別の側面によれば、ここに開示のナノ粒子は、医薬組成物を形成するために、薬理学的に許容できるキャリアと組み合わることができる。当業者には、後述するような投与経路、標的組織の位置、供給薬物、薬物供給の時間的経過等に基づいて、キャリアを選択することができることはいうまでもない。
【0080】
本発明の医薬組成物は、経口及び非経口ルートを含む当該分野で公知のいかなる手段によっても患者に投与することができる。ここで用いられる「患者」という語は、ヒト及び、例えば、哺乳類、鳥、爬虫類、両生類及び魚を含むヒト以外のものを含む。例えば、ヒト以外のものは、哺乳類(例えば、齧歯動物、マウス、ネズミ、ウサギ、猿、犬、猫、霊長類又はブタ)が挙げられる。一実施形態では、それらが消化管にある消化酵素との接触を避けるという点で、非経口ルートが好ましい。そのような実施形態によれば、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈、皮下、筋肉内、腹腔内注射)、直腸、経膣、局所(粉末、クリーム、軟膏又は滴によって)又は吸入(スプレー)によって投与することができる。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、必要に応じて、全身的に、例えば、非経口的にあるいは静脈内点滴又は注射によって患者に投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、例えば、単、二又は多糖類(例えば、蔗糖、トレハロース)のような糖及び/又は塩及び/又はシクロデキストリン溶液がナノ粒子懸濁液に添加された、凍結に適する溶液と開示のナノ粒子とを含む、凍結に適する組成物が意図される。糖(例えば、蔗糖又はトレハロース)は、例えば、粒子が凍結によって凝集することを防止する凍結防止剤の働きをするかもしれない。例えば、複数の開示のナノ粒子、蔗糖、イオン性ハロゲン化物及び水を含むナノ粒子製剤がここに提供され、ナノ粒子/蔗糖/水/イオン性ハロゲン化物は、3〜40%/10〜40%/20〜95%/0.1〜10%(w/w/w/w)又は約5〜10%/10〜15%/80〜90%/l〜10%(w/w/w/w)である。例えば、そのような溶液は、10〜100mMの濃度で、ここに開示のナノ粒子、約5%〜約20重量%の蔗糖及び塩化ナトリウムのようなイオン性ハロゲン化物を含むことができる。他の実施形態では、複数の開示のナノ粒子、トレハロース、シクロデキストリン及び水を含むナノ粒子製剤がここに提供され、ナノ粒子/トレハロース/水/シクロデキストリンは、約3〜40%/1〜25%/20〜95%/1〜25%(w/w/w/w)又は約5〜10%/l〜25%/80〜90%/10〜15%(w/w/w/w)である。例えば、そのような溶液は、ここに開示のナノ粒子、約1%〜約25重量%のトレハロース又は蔗糖(例えば、約5%から約25%のトレハロース又は蔗糖、例えば約l0%トレハロース又は蔗糖、約15%のトレハロース又は蔗糖、例えば、約5%の蔗糖)及びβ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン(約1%〜約25重量%、例えば約5%から約20%、例えば10%又は約20重量%又は約15%〜約20重量%のシクロデキストリン濃度)を含むかもしれない。意図する製剤は、複数の開示のナノ粒子(例えば、PLA−PEG及び活性剤を含むナノ粒子)及び約2重量%から約15重量%(又は約4%〜約6重量%、例えば約5重量%)の蔗糖及び約5重量%〜約20%(例えば約7重量%から約12重量%、例えば約10重量%のHPbCD)を含むことができる。
【0083】
本発明は、一部には、溶解される際、最小限量の大きな凝集体を有する凍結乾燥医薬組成物に関する。そのような大きな凝集体は、約0.5μmより大、約1μmより大又は約10μmより大のサイズを有するかもしれず、溶解された溶液では好ましくない。凝集体のサイズは、米国薬局方の32<788>で示された種々の技術を用いて測定することができる(全趣旨を参照することによりここに取り込む)USP32<788>で概説される試験は、光掩蔽粒子計数試験、顕微鏡粒子計数試験、レーザー回折及び単一粒子光学検出を含む。一実施形態では、あるサンプルの粒子サイズは、レーザー回折及び/又は単一粒子光学検出を用いて測定される。
【0084】
USP32<788>での光掩蔽粒子計数試験は、懸濁液中のサンプリング粒子のためのガイドラインを示す。100mL以下の溶液に対して、≧10μmが1容器あたり6000、≧25μmが1容器あたり600を超えない平均数の粒子が存在する場合に、プレパレーションがこの試験が適用される。
【0085】
USP32<788>で概説されるように、顕微鏡粒子計数試験は、接眼ミクロメーターを有する100±10倍に調整された双眼顕微鏡を用いる粒子数計数のためのガイドラインを示す。接眼ミクロメーターは、100倍拡大で観察される場合、10μm及び25μmを意味する黒い参照円で1/4に分割される円からなる円径グラチクルである。線形スケールは、グラチクル下で与えられる。10μm及び25μmの粒子数は、視覚的に計数される。100mL以下の溶液に対して、≧10μmが1容器あたり3000、≧25μmが1容器あたり300を超えない平均数の粒子が存在する場合に、プレパレーションがこの試験が適用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、溶解で、開示の組成物の10mlの水溶液サンプルは、10ミクロン以上のサイズが1mlあたり600粒子未満及び/又は25ミクロン以上のサイズが1mlあたり60粒子未満で含む。
【0087】
動的光散乱(DLS)は粒径を計数するために用いることができるが、この技術はいくらかのより大きな粒子を検出しないブラウン運動に依存する。レーザー回折は、粒子と懸濁液メディアとの間の屈折率の違いに依存する。この技術は、ミリメートル範囲にミクロン以下で粒子を検出することができる。より大きな粒子の比較的少量(例えば、約1から5重量%)を、ナノ粒子懸濁液で測定することができる。単一粒子光学検出(SPOS)は、希釈懸濁液の光掩蔽を用いて、約0.5μmの個々の粒子を計数する。測定サンプルの粒子濃度を知ることにより、凝集体の重量%又は凝集体の濃度(粒子/ml)を算出することができる。
【0088】
粒子表面の脱水により、凍結乾燥の間、凝集体の形成を生じさせるかもしれない。この脱水は、凍結乾燥の前に、懸濁液において、例えば、二糖類のような凍結乾燥保護剤を用いて防止することができる。適当な二糖類は、蔗糖、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース又はセロビオース及び/又はそれらの混合物が挙げられる。他の意図される二糖類は、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β−トレアロース、α,β−トレハロース、ソホロース、カミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツオース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、ミリビオース、ミキビウオース、ルチノース、ルチヌロース及びキシロビオースが挙げられる。溶解物は、原料懸濁液に比較すると等価なDLSサイズ分布を示す。しかし、レーザー回折は、いくらかの溶解物において>10μmのサイズの粒子が検出されるかもしれない。さらに、SPOSは、FDAガイドライン(>10μm粒子について104〜105粒子/ml)のそれよりも高濃度で>10μmサイズの粒子を検出するかもしれない。
【0089】
本発明は、一部には、糖(例えば、蔗糖、トレハロース又はそれらの混合物)に対して、さらなる凍結乾燥保護剤として、1以上のイオン性ハロゲン化物塩類の使用に関する。糖は、二糖類、単糖類、三糖類及び/又は多糖類を含むことができ、他の賦形剤(例えば、グリセロール及び/又は界面活性剤)を含むことができる。任意に、シクロデキストリンを、さらなる凍結乾燥保護剤として含むことができる。シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩の代わりに加えられてもよい。あるいは、シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩に加えて、加えられてもよい。
【0090】
適当なイオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛又はそれらの混合物が挙げられる。さらなる適当なイオン性ハロゲン化物塩は、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化亜鉛、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化アンモニウム、沃化ナトリウム、沃化カルシウム、沃化亜鉛、沃化カリウム、ヨウ化マグネシウム又はヨウ化アンモニウム及び/又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、約1〜約15重量%の蔗糖を、イオン性ハロゲン化物塩とともに用いてもよい。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含んでいてもよい。他の実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約100〜約500mMの二価イオン塩化物、例えば、塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、凍結乾燥される懸濁液は、シクロデキストリンをさらに含んでいてもよく、例えば、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを用いることができる。
【0091】
適当なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物を含んでいてもよい。ここに開示の組成物における使用のために意図される典型的なシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン(HPbCD)、ヒドロキシエチル−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル・エチル−β−シクロデキストリン、ジエチル-β−シクロデキストリン、トリ−O−アルキル-β-シクロデキストリン、グロコシル−シクロデキストリン及びマルトシル−シクロデキストリンが挙げられる。一実施形態では、約1〜約25重量%のトレハロース(例えば、約10重量%〜約15重量%、例えば、5〜約20重量%)が、シクロデキストリンとともに使用されてもよい。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約1〜約25重量%のβ-シクロデキストリンを含んでいてもよい。典型的な組成物は、PLA−PEG、活性/治療剤、約4%〜約6%の(例えば、約5重量%)の蔗糖及び約8〜約12重量%(例えば、約10重量%)のHPbCDを含むナノ粒子を含有してもよい。
【0092】
一側面において、本発明は、100mL以下の水性媒体中、50mg/mLの濃度のナノ粒子を含有する凍結乾燥医薬組成物の溶解において、非経口投与に適する溶解組成物は、10ミクロン以上のマイクロ粒子を6000以下、例えば、3000以下で及び/又は25ミクロン以上のマイクロ粒子を600以下、例えば、300以下で含有する凍結乾燥医薬組成物を提供する。
【0093】
マイクロ粒子の数は、USP32<788>の光掩蔽粒子計数試験、USP32<788>の顕微鏡粒子計数試験、レーザー回折及び単一粒子光学検出によって測定することができる。
【0094】
ナノ粒子は、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ブロック-ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含んでいてもよい。例えば、共重合体のポリ(乳)酸部分は、約16kDaの重量平均分子量を有することができ、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は、約5kDaの重量平均分子量を有することができる。
【0095】
イオン性ハロゲン化物塩及び/又はシクロデキストリンを含まない溶解組成物と比較して、溶解組成物は、最小限の凝集体を含有することができる。溶解組成物は、0.2未満の多分散インデックスを有していてもよい。
【0096】
一側面では、本発明は、疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子、活性剤、糖及びイオン性ハロゲン化物塩を含有する。溶解において、非経口用途に適する医薬組成物を提供する。その組成物は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0097】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。一実施形態では、医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含有していてもよい。他の実施形態では、医薬組成物は、約100〜約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含有していてもよい。
【0098】
一側面では、本発明は、疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子、活性剤、糖及びシクロデキストリンを含有する溶解において、非経口用途に適する医薬組成物を提供する。
【0099】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物を含んでいてもよい。一実施形態では、医薬組成物は、約1〜約25重量%のβ−シクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0100】
例えば、共重合体は、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体とすることができる。溶解において、100mLの水性サンプルは、10ミクロン以上のサイズの粒子を6000未満しか含まず、25ミクロン以上のサイズの粒子を600未満しか含まない。
【0101】
他の側面において、本発明は、以下の工程によって製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤を提供する。
a)疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩をこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する。一実施形態では、シクロデキストリンがこの製剤に含まれる。いくつかの実施形態では、そのような溶解は、2、3分間の簡便な手動の混合によって有利に管理することができる。溶解物の特性(例えば、薬物純度及び放出プロフィール)は、凍結乾燥前の組成物(例えば、懸濁剤)から実質的に不変かもしれない。
【0102】
さらに他の側面において、本発明は、以下の工程によって製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤を提供する。
a)各々疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する。一実施形態では、シクロデキストリンがこの製剤に含まれる。いくつかの実施形態では、そのような溶解は、2、3分間の簡便な手動の混合によって有利に管理することができる。溶解物の特性(例えば、薬物純度及び放出プロフィール)は、凍結乾燥前の組成物(例えば、懸濁剤)から実質的に不変かもしれない。
【0103】
凍結乾燥組成物は、治療用粒子を約40mg/mLより高い濃度で有していてもよい。非経口投与に適した製剤は、10mLの用量において、10ミクロンより大きなサイズを有する粒子を約600未満で有していてもよい。
【0104】
二糖類及びイオン・ハロゲン化物塩を加えるステップは、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%のトレハロース(例えば、約10〜約20重量%のトレハロース)及び約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化物塩を加えることを含んでいてもよい。イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛又はそれらの混合物から選択することができる。一実施形態では、さらに、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを加えてもよい。
【0105】
一実施形態では、二糖類とシクロデキストリンを加えるステップは、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%のトレハロース(例えば、約10〜約20重量%のトレハロース)及び約1〜約25重量%のシクロデキストリンを加えることを含んでいてもよい。一実施形態では、約10〜約15重量%のシクロデキストリンが加えられる。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン又はそれらの混合物から選択することができる。
【0106】
凍結乾燥するステップは、約−40℃を超える温度又は、例えば、約−30℃未満の温度で組成物を凍結し、凍結組成物を形成し、凍結組成物を乾燥して凍結乾燥組成物を形成することを含んでいてもよい。乾燥ステップは、約−25〜約−34℃の温度又は約−30から約−34℃の温度にて、50mTorrで行うことができる。
【0107】
他の側面では、本発明は、溶解において、ナノ粒子の凝集を防止するために、糖及び塩を凍結乾燥製剤に加えることを含む医薬粒子組成物における実質的な粒子の凝集を防止する方法を提供する。一実施形態では、シクロデキストリンが、凍結乾燥製剤に加えられる。さらに他の実施形態では、本発明は、溶解において、ナノ粒子の凝集を防止するために、糖及びシクロデキストリンを凍結乾燥製剤に加えることを含む医薬ナノ粒子組成物における実質的な粒子の凝集を防止する方法を提供する。
【0108】
実施例
一般的に示す本発明は、以下の実施例を参照することにより、より理解しやすくなるであろうが、これらの実施例は、単に例示の目的で含まれるものであり、これらに限定されるものではない。
【0109】
実施例1:PLA-PEGの製造
以下に示すように、合成は、マクロ開始剤であるα−ヒドロキシ−コ−メトキシポリ(エチレングリコール)でのd,l−ラクチドの開環重合を、触媒として2−エチルヘキサン酸錫(II)を用いて高温で行うことにより行われる(PEG Mn:〜5,000Da、PLA Mn:〜16,000Da、PEG−PLA Mn:〜21,000Da)。
【0110】
ポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサン及びジエチルエーテルの混合物中で沈殿させることによりポリマーを精製する。この工程で回収されたポリマーを、オーブン中で乾燥する。
【0111】
実施例2:典型的なナノ粒子の製造−エマルジョン・プロセス
有機相を、ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマ、コポリマー及びリガンドとも共重合体)の混合物から構成するように形成する。有機相は、約1:2(油相:水相)の比率で水相と混合し、水相が界面活性剤(0.25%のナトリウム・コール酸塩)と多少溶解した溶媒(4%の酢酸エチル、2%のベンジルアルコール)から構成される。高い薬物充填を達成するために、有機相中約30%の固形分を用いる。
【0112】
第1の粗エマルジョンを、単純な混合又はローター固定子ホモジナイザーを用いることにより、2相の組合せによって形成する。ローター/固定子は均一な乳状の溶液を与え、一方、攪拌バーは視認できる大きなきめの粗いエマルジョンを生成する。攪拌バー法は、供給容器の側面に付着した著しい油相滴をもたらすことが観察され、粗エマルジョン・サイズは、品質にきわめて重大なプロセス・パラメータである一方、歩留まりの低下又は相分離を防止するために、適度に微細でなければならないことが示唆される。従って、高速ミキサーがより大きいスケールに適するかもしれないが、ローター固定子が粗エマルジョン形成の標準的な方法として用いる。
【0113】
次いで、第1のエマルジョンを、高圧ホモジナイザーを用いることによりきめの細かいエマルジョンに形成する。粗エマルジョンのサイズは、ホモジナイザーを通る連続したパス(103)後の粒径に顕著な影響を及ぼさない。
【0114】
2,3回のパスの後、粒径は顕著に低減せず、連続したパスは、粒径の増大を引き起こすこともある。有機相は、標準的な水相とともに、5:1(O:W)で乳化され、複数の慎重なパスを実行し、各々のパス後のエマルジョンの一部をクエンチングする。示されたスケールは、製剤の全固形分を表す。
【0115】
粒子のスケールの作用は、スケール依存を示す。その傾向は、2〜10gのバッチ・サイズ範囲では、より大きなバッチがより小さな粒子を生成する。このスケール依存性は、10gより大きいスケール・バッチを考慮すると消失することが証明された。油相中に用いられた固形分の量は、約30%である。
【0116】
表Aは、エマルション・プロセスのパラメータを要約する。
【表A】
【0117】
次いで、きめの細かいエマルジョンを、混合下、所定の温度で脱イオン水へ添加することによってクエンチする。クエンチ単位操作において、エマルジョンを、攪拌下冷水クエンチに添加する。これは、大量の油相溶媒のを抽出するのに役立ち、後のろ過のために効果的にナノ粒子を硬くする。クエンチのチリングは、薬物の封入を著しく改善する。クエンチ:エマルジョンの比は、約5:1である。
【0118】
Tween80の35%(重量%)の溶液を、クエンチに添加し、全体としてTween80約4%を達成する。エマルジョンをクエンチした後、Tween80の溶液を添加し、それは、薬物可溶化剤として機能し、ろ過中の封止されていない薬物の効果的な除去を可能にする。表Bは、各クエンチプロセス・パラメータを示す。
表B:クエンチ・プロセスのパラメータの要約
【表B】
【0119】
温度は、粒子のTgより下に維持するために、十分に希釈した懸濁剤(溶媒の十分低濃度)で、十分に冷たいままでなければならない。Q:E比が十分高くなければ、より高い濃度の溶媒が粒子を可塑化し、薬物もれをもたらす。これに対して、より低温度であれば、低いQ:E比(〜3:1)で高い薬物封止を可能にし、より効率的にプロセスを実行することが可能となる。
【0120】
次いで、ナノ粒子を、接線流ろ過プロセスによって分離し、名の粒子懸濁液を濃縮し、溶媒、遊離薬物及び薬物可溶化剤をクエンチング溶液から水への交換をやわらげる。再生セルロース膜を、300の分子量のカットオフ(MWCO)に用いる。
【0121】
定量透析ろ過(DF)を、クエンチ溶媒遊離薬物及びTween80を除去するために行う。定量DFを行うために、ろ液と除去する速度と同じ速度で、緩衝液を保留容器に添加する。TFF操作のプロセスパラメーターを表Cに要約する。この流れは、膜透過を汚染し得る分子を一掃するための力を与え、ろ過流を制限する。膜内外圧力は、膜に浸透性分子を通す力である。
【表C】
【0122】
続いて、ろ過したナノ粒子スラリーを、ワークアップの間、高温での熱サイクルに付す。カプセル化された薬物の小さな部分(一般的に5−10%)は、25℃でのその第1の暴露後、非常に迅速にナノ粒子から放出される。この現象のため、全ワークアップの間、冷たく保持されたバッチは、遊離薬物又は供給の間の薬物結晶形成又は未凍結保存のいずれかの部分に影響を受けやすい。精密検査の間、ナノ粒子スラリーを高熱にさらすことによって、この『弱く封止された』薬物を除去することができ、薬物充填におけるわずかな減少の代価で、製品安定性を改善することができる。表Dは、25℃プロセスの2つの例を要約する。大部分の封止された薬物を失うことなく、それを25℃にさらすために、製品が〜2−4の透析容量の後で十分に安定であることを、他の実験は示した。5つの透析容量を、25℃の処理前に冷却処理のために用いた。
【表D】
1 25℃のワークアップのサブロットを、種々の期間、少なくとも5透析容量で25℃に暴露した。25℃暴露した複数のサブロットがあったため、範囲を示した。
2 安定性のデータは、スラリーにおける結晶形成(顕微鏡検査によって視認)の前に、25℃で、10〜50mg/mlのナノ粒子濃度で最終製品を維持した時間を意味する。
3 インビトロバーストは、薬物が最初の時点(基本的にすぐに)で放出された薬物を示す。
【0123】
ろ過プロセスの後、ナノ粒子懸濁液を、殺菌するグレードのフィルタ(0.2μmの絶対値)に通す。プレフィルタを、プロセスのための合理的な濾過面積/時間を使うために用いて殺菌するグレードのフィルタを保護する。値を表Eに要約する。
【表E】
【0124】
プレフィルタは、Pall SUPRAcap又はStaxフィルターカートリッジ中の深層ろ過メディアを有する。0.2m2ろ過表面積/kgの深層フィルタ用粒子及び1.3m2ろ過表面積/kgの殺菌グレードのフィルタ用粒子を用いることができる。
【0125】
実施例3:糖及び塩による凍結乾燥組成物
図3で示すように、>40mg/mLのナノ粒子濃度のナノ粒子懸濁液(実施例として形成されたナノ粒子、ポリマーとして16/5のPLA−PEGで)を、10%の蔗糖及び添加剤:NaCl、CaCl2又はPBSの存在下で凍結乾燥する。この実験は、マイクロ凝集なしに溶解しることができる、高い(>40mg/ml)ナノ粒子濃度で、ナノ粒子懸濁液を処方する。3つの全てのCaCl2製剤は、崩壊した凍結乾燥品を生成した、中濃度(150mM)及び高濃度(200mM)の濃度範囲であっても、<100粒子/ml(10μ+)で溶解ケーキを生成する。
【0126】
低濃度の塩は、塩が存在しないものと同様の挙動を示す。高濃度の塩は、一般に、非常に高い粒子濃度を示す。
【0127】
実施例4:糖及び塩及び/又はシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、蔗糖又はトレハロース)、塩(例えば、NaCl又はCaCl2)及び/又はシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン:HPbCD)の存在下で凍結乾燥する。例えば、製剤は250mM又は500mMのNaCl又はCaCl2及び/又は15%、20%又は25重量%の蔗糖又はトレハロース(例えば、20重量%のトレハロース、500mMのCaCl2、5%のHPbCd)で製造される。代表的な製剤を、表Fに示す。
【0128】
表Fは、AccuSizerによって計数され、サイズ化された粒子を示し、製剤の中に存在した凝集体を見つけるために、粒子数の大きなサイズを計数した。表Fは、凍結乾燥ケーキに蒸留水を用いて溶解した溶液の後の粒子数を示す。表Fでは、F/Tサンプルは、乾燥がないだけの凍結及び解凍であり、一方、1〜4ならびにトールバイアル1及び2は、凍結乾燥サンプルである。15%のトレハロースを有するCaCl2 500mM以外の大部分の製剤は、わずかの数の粒子凝集を示し、続く試験を、製剤の最適化のために行った。
【0129】
【表F】
【0130】
実施例5:糖及び/又は塩及び/又はシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、トレハロース)、シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピルβシクロデキストリン:HPbCD)及び/又は塩(例えば、CaCl2)の存在下で、凍結乾燥する。Design of Experiment(DOE)を用いた製剤をスクリーンするための賦形剤及びレベルを以下の表Gに示す。トールバイアルを、5mLのフル容量にて、全製剤で用いる(n=5〜6バイアル/製剤)。第1の乾燥を−37℃の棚温度で行う。
【表G】
【0131】
凍結乾燥製剤の外観及びそれらの溶解特性を以下の表Hに示す。試験された製剤の全てにおいて、製剤の外観は少なくとも部分的な溶解であった。
【表H】
【0132】
サイクル・データ及び凍結乾燥プロセス・パラメータ(棚温度、製品温度、チャンバ圧及び時間)を図4に示す。製品の充填中、製品が除去されるまで、凍結乾燥機棚に最初に置かれた時から、これらのプロセス・パラメータをコントロールする。それぞれのチャートに反映された条件は、HPbCD濃度をスクリーンするために各凍結乾燥ランの1つに対するプロセスパラメータを示す。
【0133】
種々の凍結乾燥製剤での粒子サイズを、動的光散乱(DLS)で測定し、図5に示す。試験された製剤のすべてにおいて、ナノ粒子サイズは、凍結前サンプルに比較して凍結/解凍及び凍結乾燥後に増加した。
【0134】
種々の製剤における10μmより大のマイクロ粒子の数を、顕微鏡粒子計数試験によって測定し、図6に示した。一般に、シクロデキストリンのより高い濃度を含む製剤は、より良好な粒子計数を示す。
【0135】
実施例5:糖及びシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、トレハロース又は蔗糖)及びシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン:HPbCD)の存在下で凍結乾燥する。試験した製剤を表Hに示す。トールバイアルを、5mLのフル容量にて、全製剤で用いる(n=10バイアル/製剤)。
【表H】
【0136】
凍結乾燥製剤の外観とそれらの溶解特性を表Iに示す。トレハロース及びシクロデキストリンの濃度を増大させると、悪い溶解特性を示すようである。全ての試験された製剤において、DLSサイズは、凍結/解凍後に増大したが、凍結乾燥後は減少した。
【表I】
【0137】
サイクル・データを図7に示す。種々の凍結乾燥製剤の粒子サイズを動的光散乱(DLS)で測定し、図8に示す。
【0138】
種々の製剤における10μmより大の、1mlあたりのマイクロ粒子の数を、図9に示すように、顕微鏡粒子計数試験で測定する。試験されほとんどすべての製剤は、USP32<788>の限界より下回わる。種々の製剤における1μmより大の、1mlあたりのマイクロ粒子の数を、図10及び図11に示す。大部分の製剤において、凍結前サンプル、凍結解凍サンプルに比較して、凍結乾燥サンプルで、1μmより大のマイクロ粒子の数が増加する。
【0139】
糖及びシクロデキストリンの存在下で凍結乾燥したドセタキセルのナノ粒子において、インビトロ放出試験を行う。その結果を図12に示す。
【0140】
示差走査熱量測定を、図13〜16に示したように、種々のナノ粒子製剤で行う。
【0141】
等価物
当業者であれば、単なる慣例の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解されるであろう、あるいは確かめることができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0142】
参照による援用
本明細書に記載のすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明の請求項は、2009年12月11日出願の米国仮出願第61/285,722の優先権を享有し、その全趣旨を参照することによりここに取り込む。
【0002】
患者(例えば、特定の組織又は細胞型が標的にされた、あるいは通常の組織ではなく、特定の罹患した組織が標的にされた)に特定の薬物を供給するか、あるいは、薬物を制御放出するシステムが長く有益であると認識されている。
【0003】
例えば、活性な薬物を含む、また、例えば、特定の組織又は細胞型が標的にされた、通常の組織でなく、特定の罹患した組織が標的にされた治療は、治療を必要としない体組織で、薬物の量を低減させることができる。薬物の細胞障害性用量が、周囲のガン組織でない組織に位置づけることなくガン細胞に供給されることが求められるガンのような症状を治療する場合には、これは特に重要である。さらに、そのような治療は、抗がん治療によく見られる望ましくなく、時に生命を脅かす副作用を低減させるかもしれない。加えて、そのような治療は、薬物が到達することができない特定の組織に、薬物を供給することができるかもしれない。
【0004】
治療用ナノ粒子の供給は、ナノ粒子の溶解した懸濁の非経口の注射によって達成することができる。溶解前の保存のために、オリジナルのナノ粒子懸濁液を凍結乾燥する。ナノ粒子懸濁液を凍結乾燥することは、その凍結懸濁物よりはるかに優れた貯蔵安定性を有し、再懸濁用の製品を与える。さらに、凍結乾燥は、一定の非常に低い温度を必要とせず、より簡便な保存を提供することができる。しかし、溶解した凍結乾燥品は、オリジナルの懸濁液に相当するか、それよりも優れた物理化学的特性を備えているに違いない。マイクロ凝集又は未分散粒子による粒子痕跡のない、同サイズの粒子への再分散は、ナノ粒子懸濁液凍結乾燥で最も魅力的な側面である。
【0005】
従って、ナノ粒子による治療と、がんのような疾病を治療するための薬物の治療レベルの供給が可能で、優れた保存能力を備えるそのようなナノ粒子を製造する方法が必要である。
【発明の開示】
【0006】
一面においては、本発明は、ポリマーナノ粒子を含む凍結乾燥医薬組成物を提供し、ここで、凍結乾燥医薬組成物の溶解において、約100mL以下の水性媒体で、非経口投与に適した溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を6000未満で、25ミクロン以上の微粒子を600未満含む。一実施形態では、溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を3000未満で、25ミクロン以上の微粒子を300未満含む。他の実施形態では、ナノ粒子の濃度は約50mg/mlである。
【0007】
ナノ粒子の数は、USP32<788>に準じた光掩蔽粒子計数試験による、USP32<788>に準じた顕微鏡粒子計数試験による、レーザー回折及び/又は単一粒子光学検出のような方法によって測定することができる。
【0008】
ナノ粒子は、活性剤又は治療剤、例えば、タキサンと、1つ、2つ又は3つの生物学的適合性のポリマーとを含んでいてもよい。例えば、ナノ粒子は、治療剤約0.2〜約35重量%、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体約10〜約99重量%及びポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%を含むものが挙げられる。典型的な治療剤としては、タキサン(例えば、ドセタキセル)のような抗悪性腫瘍薬が挙げられ、治療剤(例えば、タキサン剤)約10〜約30重量%を含んでいてもよい。
【0009】
例えば、共重合体のポリ(乳酸)部分は、約16kDaの重量平均分子量を有しており、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は約5kDaの重量平均分子量を有していてもよい。
【0010】
意図する凍結乾燥医薬組成物は、糖、例えば、二糖類、単糖類又は多糖類と、イオン性ハロゲン化物塩をさらに含んでいてもよい。二糖類は、例えば、蔗糖又はトレハロースあるいはそれらの混合物とすることができる。イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物から選択することができる。他の実施形態では、凍結乾燥医薬品組成物は、シクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。例えば、凍結乾燥医薬品組成物は、糖、例えば二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及びシクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。あるいは、凍結乾燥医薬品組成物は、イオン性ハロゲン化物塩を含まず、二糖類及びシクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物から選択することができる。
【0011】
溶解した組成物は、イオン性ハロゲン化物及び/又はシクロデキストリンを含有しない溶解組成物と比較して、最小限の凝集を有することができる。溶解組成物は、0.2未満の多分散インデックスを有するかもしれない。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10〜100mg/mL、例えば40〜60mg/mL又は約50mg/mLの濃度を有する。
【0012】
一面では、本発明は、疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体をそれぞれ含む複数の治療粒子;活性剤;二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩及び/又はβ−シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HPbCD))のようなβ−シクロデキストリンを含有し、溶解によって、非経口使用に適する医薬組成物を提供する。医薬組成物は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。他の一面では、本発明は、疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を夫々含む共重合体を含む複数の治療粒子;活性剤;二糖類及びシクロデキストリンを含有し、溶解によって、非経口使用に適する医薬品組成物を提供する。
【0013】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、共重合体は、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体とすることができる。溶解では、約100mLの水性媒体で、10ミクロン以上の微粒子を6000未満、25ミクロン以上の微粒子を600未満含んでいてもよい。
【0014】
他の面では、本発明は、
a)疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体をそれぞれ含む治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及び任意にシクロデキストリンを組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥し、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程によって製造される非経口投与用の医薬的に許容される製剤を提供する。製剤は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0015】
さらに他の面では、本発明は、
a)疎水性ポリマー部分及び親水性ポリマー部分を有する共重合体を夫々含む治療用粒子及び活性剤を含む組成物を提供し、
b)二糖類及びシクロデキストリンを組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥し、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程によって製造される非経口投与用の医薬的に許容される製剤を提供する。
【0016】
凍結乾燥組成物は、約40mg/mLより高い治療用粒子濃度を有していてもよい。非経口投与に適する製剤は、10mL用量において10ミクロンより大きなサイズの粒子を約600以下有していてもよい。
【0017】
二糖類及び/又はイオン性ハロゲン化物塩を添加する工程は、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%(例えば、約10〜約20重量%)のトレハロースと、約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化物塩とを添加することを含んでいてもよい。この工程は、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを添加することをさらに含んでいてもよい。
【0018】
他の実施形態では、二糖類及びシクロデキストリンを添加する工程は、約5〜約15重量%の蔗糖又は約10〜約20重量%のトレハロースと、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを添加することを含んでいてもよい。
【0019】
凍結乾燥する工程は、約−40℃を超える温度又は−30℃未満の温度、例えば、約−40℃〜約−30℃、又は約−40℃〜約−25℃で組成物を凍結させて凍結組成物を形成し、例えば、昇華によって凍結組成物を乾燥させて凍結乾燥組成物を形成することを含んでいてもよい。
【0020】
他の面では、本発明は、溶解においてナノ粒子の凝集を防止するために、糖及び塩を凍結乾燥製剤に添加することを含む医薬ナノ粒子組成物において粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。一実施形態において、シクロデキストリンを凍結乾燥製剤に添加する。他の面では、本発明は、糖とシクロデキストリンとをナノ粒子を含む凍結乾燥製剤に添加し、凍結乾燥製剤を溶解することを含む溶解医薬ナノ粒子組成物で粒子の実質的な凝集を防止する方法であって、溶解組成物は、実質的にナノ粒子の実質的な凝集を含まない方法を提供する。また、溶解において、糖及びシクロデキストリンを凍結乾燥された製剤に添加することを含み、ナノ粒子の凝集を防止することを含む医薬ナノ粒子組成物において粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】開示のナノ粒子を形成するエマルション方法のフローチャートである。
【図2】開示のエマルジョン方法のフローチャートである。
【図3】溶解したナノ粒子懸濁液における塩濃度及び蔗糖の粒径に対する効果を示す。
【図4】種々の凍結乾燥製剤のための温度サイクルを示す。
【図5】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液のダイナミック光散乱(DLS)によるサイズを示す。
【図6】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図7】種々の凍結乾燥製剤のための温度サイクルを示す。
【図8】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液のナノ粒子サイズ(DLSを使って測定)を示す。
【図9】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図10】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図11】開示の種々の溶解ナノ粒子懸濁液の粒子の計数を示す。
【図12】開示の種々のナノ粒子懸濁液のドセタキセルの試験管内の放出を示す。
【図13】5%のトレハロース及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液の示差走査熱量測定(DSC)測定を示す。
【図14】10%のトレハロース及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを有するナノ粒子懸濁液が有するDSC特性を示す。
【図15】20%のトレハロース及び15%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液のDSC特性を示す。
【図16】10%の蔗糖及び10%のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むナノ粒子懸濁液のDSC特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、一般に、凍結乾燥されたポリマーナノ粒子組成物及びそのような治療用組成物を製造及び使用する方法に関する。そのような組成物は、凍結乾燥組成物から溶解されてもよいし、ナノ粒子及び/又は他の材料の最小限の大きな凝集体を含むかもしれない。従って、開示された組成物は、非経口使用に適しているかもしれない。
【0023】
ナノ粒子
一般に、組成物は活性剤を含むナノ粒子を含有していてもよい。ここに開示されるように、「ナノ粒子」は1000nm未満(例えば、約10nm〜約200nm)の直径を有する粒子である。開示された治療用ナノ粒子は、約60nmから約120nm、または約70nmから約130nm、または約60nmから約140nmの直径を有するナノ粒子を含んでいてもよい。
【0024】
開示されたナノ粒子は、約0.2〜約35重量%、約3〜約40重量%、約5〜約30重量%、約10〜約30重量%、15〜25重量%または約4〜約25重量%の抗悪性腫瘍薬(例えば、タキサン剤、例えば、ドセタキセル)のような活性剤を含んでいてもよい。
【0025】
開示されたナノ粒子は、1つ、2つ、3つの以上の生物学的適合性及び/又は生物分解可能なポリマーを含む。例えば、意図されるナノ粒子は、約10〜約99重量%の生分解性ポリマー及びポリエチレングリコールを含む1以上のブロックコポリマーと、約0〜約50重量%の生物分解可能なホモポリマーを含んでいてもよい。
【0026】
典型的な治療用なナノ粒子は、約40〜約90重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体又は約40〜約80重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含んでいてもよい。そのようなポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体は約15〜20kDa(又は例えば約15〜約100kDa、例えば、約15〜約80kDa)の数平均分子量を有するポリ(乳酸)を含んでいてもよく、ポリ(エチレン)グリコールは約2〜約10kDa(例えば、約4〜約6kDa)の数平均分子量を有していてもよい。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、約70〜約95重量%のPLA−PEG及び約5〜約25重量%のドセタキセルを含んでいてもよい。別の実施形態では、開示の治療用ナノ粒子は、約30〜約50重量%のPLA−PEG、約30〜約50重量%のPLA又はPLGA及び約5〜約25重量%のドセタキセルを含んでいてもよい。そのようなPLA((ポリ)乳酸)は、約5〜約10kDaの数平均分子量を有していてもよい。そのようなPLGA(ポリ乳酸−コ−グリコール酸)は、約8〜約12kDaの数平均分子量を有していてもよい。
【0027】
一実施形態では、開示の治療用ナノ粒子はターゲティング・リガンド、例えば、前立腺ガンのような疾患又は障害の治療に有効な低分子量のPSMAリガンドを、患者の必要に応じて含んでいてもよい。ある実施形態では、低分子量のリガンドは、ポリマーに結合し、ナノ粒子は、リガンド結合ポリマー(例えば、PLA−PEG−リガンド)対非官能ポリマー(例えば、PLA−PEG又はPLGA−PEG)の特定の比率を含む。ナノ粒子は、リガンドの有効量が、ガンのような疾病又は障害の治療用ナノ粒子に使われるように、これらの2つのポリマーの最適化された比率を含むことができる。
ある実施形態では、開示のナノ粒子は、約0.2〜約10重量%のターゲティング・リガンドで官能化されたPLA−PEGをさらに含んでいてもよく、及び/又は約0.2〜約10重量%のターゲティング・リガンドで官能化されたポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)ブロック−PEG−を含んでいてもよい。そのようなターゲティング・リガンドは、ある実施形態では、例えば、PEGに共有結合されていてもよく、例えば、PLA−PEG−アルキレン−GL2のようなアルキレン・リンカーを介してPEGに結合されていてもよい。例えば、開示のナノ粒子は、約0.2〜約10モルパーセントのPLA−PEG−GL2またはポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−PEG−GL2を含んでいてもよい。PLA−PEG−GL2又はPLGA−PEG−GL2は、PEGがGL2に結合するアルキレン・リンカー、例えば、C1−C20、例えば(CH2)5)を含むことができる部分をさすと理解される。
【0028】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、約0.2から約35重量%の治療剤、約30〜約99重量%のポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体、0〜約50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)及び約0.2〜約10重量%又は約0.2〜約30重量%のPLA−PEG−GL2又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−PEG−GL2を含んでいてもよい。例えば、PLA−PEG−GL2は、約10,000Da〜約20,000のDaの数平均分子量のポリ(乳酸)及び約4,000〜約8,000の数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールを含んでいてもよい。
【0029】
ポリマー
ある実施形態では、本発明のナノ粒子は、ポリマー及び治療剤のマトリクスを含む。いくつかの実施形態では、治療剤及び/又はターゲティング部分(すなわち、低分子量のPSMAリガンド)は、高分子マトリックスの少なくとも一部と結合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ターゲティング部分(例えば、リガンド)は、高分子マトリックスの表面と共有結合によって結合していることがある。ある実施形態では、共有結合は、リンカーによって仲介される。治療剤は、高分子マトリックスで封止され、取り囲まれ及び/又は全体にわたって分散して、その表面と結合することができる。
【0030】
多種多様なポリマー及びそれらから粒子を形成する方法は、薬物供給の分野で公知である。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも2つの巨大分子を有するナノ粒子に指向され、第1の巨大分子は低分子量のリガンド(例えば、ターゲティング部分)に結合する第1ポリマーを含み、第2の巨大分子は、ターゲティング部分に結合しない第2ポリマーを含む。ナノ粒子は、1以上の添加剤、非官能化ポリマーを任意に含むことができる。
【0031】
どのようなポリマーでも、本発明に使用することができる。ポリマーは、天然又は非天然(合成)ポリマーのいずれでもよい。ポリマーは、ホモポリマー又は2以上のモノマーからなる共重合体とすることができる。シーケンスに関しては、共重合体はランダム、ブロック又はランダム及びブロック・シーケンスの組合せとすることができる。一般に、本発明のポリマーは、有機ポリマーである。
【0032】
ここで用いられる用語「ポリマー」は、当該分野で使用されるような通常の意味、つまり、共有結合によって結合された、1以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造である。繰り返し単位は、すべてが同一でもよくあるいは、場合によっては、ポリマー内に複数種類の繰り返し単位が存在してもよい。ある実施形態では、ポリマーは、生物学的に誘導されてもよく、つまり、生物高分子であってもよい。非限定的な例としては、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。ある実施形態では、ポリマーはさらなる部分、例えば以下に示すもののような生物学的部分が存在してもよい。複数種類の繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、ポリマーは「共重合体」であると言われる。ポリマーを用いるどのような実施形態でも、使用されているポリマーは、場合によっては共重合体である場合があることを理解すべきである。共重合体を形成している繰り返し単位は、どのよう形式で配置されていてもよい。例えば、繰り返し単位は、ランダムの順序、交互の順序で配置されていてもよいし、あるいは、ブロック共重合体、つまり、各々第1の繰り返し単位(例えば、第1ブロック)を含む1以上の領域と、各々第2の繰り返し単位(例えば、第2のブロック)を含む1以上の領域とを含むものなどであってもよい。ブロック共重合体は、2つ(ジブロック共重合体)、3つ(三ブロック共重合体)又はより多くの数の異なったブロックを有していてもよい。
【0033】
開示のナノ粒子は、一実施形態では、互いに結合した2以上のポリマー(例えばここに記述されるそれら)であり、通常、2以上のポリマーがともに共有結合するコポリマーを含むことができる。このように、共重合体は、第1のポリマーと第2のポリマーとを有していてもよく、それらが一緒に結合して、第1のポリマーをブロック共重合体の第1のブロックとし、第2のポリマーをブロック共重合体の第2のブロックとするブロック共重合体を形成する。当然、ブロック共重合体は、ある実施形態では、ポリマーの複数のブロックを含んでいてもよく、「ブロック共重合体」(ここで用いられる)が一つの第1ブロックと一つの第2ブロックのみを有するブロック共重合体だけに限られないことは、当業者に理解されるであろう。例えば、ブロック共重合体は、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック及び第3のポリマー又は第1のポリマーを含む第3のブロックなどを含んでいてもよい。ある実施形態では、ブロック共重合体は、第1のポリマーの第1ブロック、第2のポリマーの第2ブロック(及び場合によっては、第3のブロック、第4のブロックなど)の多数を含むことができる。さらに、ブロック共重合体は、いくつかの例において、他のブロック共重合体から形成することができることも留意する必要がある。例えば、第1ブロック共重合体は、他のポリマー(ホモポリマー、生物高分子、他のブロック共重合体などである場合がある)に結合し、多種類のブロックを含む新たなブロック共重合体を形成してもよいし、他の部分(例えば、非重合部分)に結合してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、両親媒性、つまり、親水性部分と疎水性部分、あるいは比較的親水性部分と比較的疎水性部分とを有していてもよい。親水性ポリマーは通常、水を引きつけるものであり、疎水性ポリマーは、一般に水をはじくものである。親水性又は疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を準備し、水でその接触角を測定することによって確認することができる。一般的に、疎水ポリマーは約60°を超える接触角を有し、一方、親水性ポリマーは60°未満の接触角を有する。場合によっては、2以上のポリマーの親水性を互いと比較して確認してもよい。つまり、第1のポリマーは第2のポリマーより親水性であることがある。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーより小さい接触角を有していてもよい。
【0035】
一実施形態では、ここで意図されるポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、例えば、生物学的適合性のポリマー、つまり、生体に挿入されるか、注入された場合、通常有害反応を誘発しないポリマー、例えば、T細胞反応によって、免疫系によるポリマーの顕著な炎症及び/又は急性拒絶反応のないポリマーを含む。従って、ここで意図される治療用粒子は、非免疫原性とすることができる。ここで用いられる用語「非免疫原性」とは、通常、循環抗体、T細胞又は反応性免疫細胞を引き起こさないか、最小限しか引き起こさず、通常それ自体に対してヒトが免疫反応を誘発しない、その天然状態における内因性成長因子を指す。
【0036】
生体適合性は、少なくとも一部の免疫系によって材料の急性拒絶を指す。つまり、患者に移植された非生物学的適合性の材料は、免疫系による材料の拒絶を十分にコントロールすることができないほど重篤となり得、しばしば、材料を患者から除去しなければならないような程度で、患者における免疫反応を引き起こすことである。生体適合性を決定する一つの単純なテストは、試験管内でポリマーを細胞にさらすことであり、生物学的適合性ポリマーは、通常、適度な濃度(例えば、50マイクログラム/106細胞の濃度)で重篤な細胞死をもたらさないポリマーである。例えば、生物学的適合性ポリマーは、線維芽細胞又は上皮細胞のような細胞にさらした場合、そのような細胞に貧食又は摂取された場合であっても、約20%未満しか細胞死を引き起こさないかもしれない。本発明の種々の実施形態において有用となり得る生物学的適合性ポリマーの非限定的な例は、ポリドキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリ(グリセロールセバシン酸)、ポリエチレングリコール糖、ポリ乳酸、PLGA、ポリカプロラクトン、これら及び/又は他のポリマーを含む共重合体又は誘導体が挙げられる。
【0037】
ある実施形態では、意図する生物学的適合性ポリマーは、生物分解可能であってもよく、つまり、ポリマーは、化学的に及び/又は生物学的に、生理的環境内(例えば、体内)で分解することができる。ここで用いられるように、「生物分解可能な」ポリマーは、細胞に導入された場合、細胞機構によって及び/又は細胞がその細胞において重篤な毒性作用をもたらすことなく再利用又は廃棄することができる構成要素へ加水分解(化学的に分解可能な)のような化学プロセスによって分解されることである(生物学的に分解可能)。ある実施形態では、生分解性ポリマー及びそれらの分解副産物は、生物学的適合性とすることができる。
【0038】
例えば、意図されるポリマーは、水にさらすことにより(例えば、患者内で)、自発的に加水分解するものとすることができ、ポリマーは、熱(例えば、約37℃の温度)にさらすことにより分解するかもしれない。ポリマーの分解は、使われるポリマー又は共重合体によって、種々の速度で生じるかもしれない。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマー及び/又は他の非重合部分に分解することができる時間)は、ポリマーによって、日、週、月又は年のオーダーとすることができる。ポリマーは、例えば、酵素活性又は細胞機構によって、場合によって、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)にさらすことによって分解することができる。場合によっては、ポリマーは、細胞はその細胞に顕著な毒性作用なしに再利用又は破棄することができる、モノマー及び/又は他の非重合部分に、分解することができる(例えば、ポリ乳酸は、加水分解して乳酸を形成することができ、ポリグリコリドは、加水分解してグリコール酸等を形成することができる)。
【0039】
ある実施形態では、ポリマーは、総合的に「PLGA」とここで称される、ポリ(乳酸)−コ−グリコール酸及びポリ(乳酸−コ−グリコリド)のような有産及びグリコール酸単位を含む共重合体、及び総合的に「PGA」とここで称される、グリコール酸単位、総合的に「PLA」とここで称される、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−L,D−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ−L、D−ラクチドのような乳酸単位を含むホモポリマーを含むポリエステルとすることができる。ある実施形態では、ポリエステルの例としては、例えば、ポリヒドロキシ酸、PEG化ポリマー及びラクチド及びグリコリドの共重合体(例えば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA及びそれらの誘導体)が挙げられる。ある実施形態では、ポリエステルは、例えば、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、ポリリシン、PEG化ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコリック酸]及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、PLGAとすることができる。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生物学的適合性及び生物分解可能なコポリマーであり、PLGAの種々の形態は、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴づけることができる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸又はD,L−乳酸とすることができる。PLGAの分解速度は、乳酸−グリコール酸比率を変えることによって調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明において使われるPLGAは、乳酸:グリコール酸比率は約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、約15:85によって特徴づけることができる。いくつかの実施形態では、粒子のポリマー中の乳酸対グリコール酸モノマーの比率(例えば、PLGAブロック共重合体又はPLGA−PEGブロック共重合体)は、水の取り込み、治療剤放出及び/又はポリマー分解の動力学のような種々のパラメータを最適化するために選択することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、1以上のアクリル・ポリマーとすることができる。ある実施形態では、アクリル・ポリマーは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、エトキシエチル・メタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート共重合体、ポリシアノアクリレート及びこれらポリマーの1以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリル・ポリマーは、低含量の4級アンモニウム基のアクリル酸及びメタクリル酸エステルの完全に重合した共重合体を含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性ポリマーとすることができる。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(例えば、DNA、RNA又はそれらの誘導体)の負に荷電するストランドを縮合及び/又は保護することができる。ポリ(リジン)、ポリエチレン・イミン(PEI)及びポリ(アミドアミン)デンドリマーのようなアミン含有ポリマーが、本発明の粒子において、いくつかの実施形態での使用のため意図される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解可能なポリエステルとすることができる。これらのポリエステル類の例は、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)を含む。
【0044】
ここに開示される粒子は、PEGを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。さらに、ある実施形態は、ポリ(エステル−エーテル)、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R’結合)及びエーテル結合(例えば、R−O−R’結合)によって結合された繰り返し単位を有するポリマーを含む共重合体に指向することができる。本発明のいくつかの実施形態では、カルボン酸基を含む加水分解性ポリマーのような生分解性ポリマーは、ポリ(エステル−エーテル)を形成するために、ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位と結合していてもよい。ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位を含むポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、PEG化ポリマーと呼ぶことがある。
【0045】
PEGは、終端化され、例えば、PEGがリガンドに結合しない場合に、末端基を含むことが意図される。例えば、PEGは、ヒドロキシ、メトキシ又は他のアルコキシ、メチル又は他のアルキル、アリール基、カルボン酸、アミン、アミド、アセチル基、グアニジノ基又はイミダゾールで終端化することができる。他の意図される末端基は、アジド、アルキン、マレイミド、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、アルコキシアミン又はチオール部分を含む。
【0046】
例えば、開環重合法(ROMP)等によって、ポリマーを、アミンで終端化するPEG基に反応をさせるために、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びNHS(N−ヒドロキシサクシンイミド)を用いることによるポリマーのPEG化方法又は技術は、当業者に知られている。
【0047】
一実施形態では、ポリマーの分子量は、ここに開示されているような有効な処理のために最適化することができる。例えば、ポリマーの分子量は、粒子の分解速度(生分解性ポリマーの分子量を最適化した場合のように)、溶解度、水の取り込み及び薬物放出動力学に影響を与えるかもしれない。例えば、ポリマーの分子量は、2,3時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間など、妥当な時間内で治療される患者において、粒子が分解されるように調整することができる。開示の粒子は、例えば、PEG及びPL(G)Aのジブロック共重合体を含むことができ、例えば、PEG部分は約1000から20000、約2000から20000、約2から10000の数平均分子量を有していてもよく、PL(G)A部分は約5000から20000m約5000から100000、約20000から70000、約15000から50000の数平均分子量を有していてもよい。
【0048】
例えば、約10〜99重量%のポリ(乳酸)−コ−(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコール共重合体、約20〜約80重量%又は約40〜約80重量%、約30〜約50、約70〜約90重量%のポリ(乳酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含む典型的な治療用ナノ粒子が挙げられる。典型的なポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコール共重合体は、約15〜約20kDa、約10〜約25kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)を含むことができ、約4〜約6kDa、約2〜約10kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。
【0049】
例えば、開示のナノ粒子は、約1〜約50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール)酸(それは、PEGを含まない)を任意に含んでいてもよく、約1〜約50重量%、約10〜約50重量%又は約30〜50重量%のポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)を任意に含んでいてもよい。例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)は、約5〜約15kDaまたは約5〜約12kDaの数平均分子重量を有していてもよい。典型的なPLAは、約5〜約10kDaの数平均分子量を有するかもしれない。典型的なPLGAは、約8〜約12kDaの数平均分子量を有するかもしれない。
【0050】
特定の実施形態では、ナノ粒子のポリマーは、脂質に結合することができる。ポリマーは、例えば、脂質終端化PEGとすることができる。後述するように、ポリマーの脂質部分を他のポリマーと自己アセンブリのために用いることができ、ナノ粒子の形成を容易にする。例えば、親水性ポリマーは、疎水ポリマーと自己アセンブルするであろう脂質に結合することができた。
【0051】
ある実施形態では、脂質は油である。 一般に、当該分野で知られているいかなる油も、本発明において用いられるポリマーに結合させることができる。ある実施形態では、油は1以上の脂肪酸基又はその塩類を含むことができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、消化できる、置換又は非置換の長鎖炭水化物(例えば、C8−C50)を含むことができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、C10−C20の脂肪酸又はその塩とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、C15−C20の脂肪酸又はその塩とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸は不飽和とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基はモノ不飽和とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、ポリ不飽和とすることができる。ある実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合は、シス形とすることができる。ある実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合は、トランス形とすることができる。
【0052】
ある実施形態では、脂肪酸基は、1以上の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸とすることができる。ある実施形態では、脂肪酸基は、1以上のパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α―リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸又はエルカ酸とすることができる。
【0053】
一実施形態では、ナノ粒子の脂質成分に、任意に、低分子量ターゲティング部分が、例えば、共有結合によって結合してもよい。例えば、治療剤、官能化された及び官能化されていないポリマーを含むポリマーマトリクス、脂質及び低分子量PSMAターゲティングリガンドを含むナノ粒子が挙げられ、ターゲティングリガンドは、例えば、共有結合によって、例えば、共有結合によって、ナノ粒子の脂質成分に結合されている。一実施形態では、低分子量ターゲティング部分に結合された脂質成分は、式V又はそれらの塩である。
式中、Rは、それぞれ独立にC1〜C30アルキルを表す。
式Vの一実施形態では、脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びそれらの塩、例えば、ナトリウム塩である。
他の実施形態では、本発明は治療剤、ポリマーマトリクス、DSPE及び低分子量PSMAターゲティングリガンドを含むターゲット特異性ナノ粒子を提供する。リガンドは、例えば、共有結合によって、DSPEに結合されている。例えば、本発明のナノ粒子は、PLGA−DSPE−PEG−リガンドを含むポリマーマトリックスを含むことができる。
【0054】
意図されるナノ粒子は、前立腺ガンの治療のために有効な、リガンド結合ポリマー対非官能化ポリマー比を含むかもしれず、親水性のリガンド結合ポリマーは、ナノ粒子を構成する疎水性及び親水性ポリマーが共有結合しないように、疎水ポリマーに自己アセンブルするであろう脂質に結合する。「自己アセンブリ」とは、互いにより高い順序構造(例えば、分子)の成分を自然の引きつける力に頼るより高い順序構造の自発的な組立てのプロセスを指す。これは、分子のランダムな挙動及びサイズ、形、組成又は化学的性質に基づく結合形成を通して一般的に起こる。
例えば、そのような方法は、脂質と反応する第1のポリマーを準備し、ポリマー/脂質複合体を形成することを含む。ポリマー/脂質複合は、次いで、低分子量リガンドと反応し、リガンド結合ポリマー/脂質複合体を形成し、ナノ粒子を形成するように、リガンド結合ポリマー/脂質複合体と第2の非官能化ポリマー及び治療剤と混合する。ある実施形態では、第1のポリマーは、PEGであり、脂質終端かPEGが形成される。一実施形態では、脂質は、式V、例えば、2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びその塩類(例えば、ナトリウム塩)である。続いて、脂質終端化PEGは、例えば、PLGAと混合して、ナノ粒子を形成する。
【0055】
ターゲティング部分
任意にターゲティング部分、つまり、生物学的構成要素(例えば、膜成分、細胞表面レセプター、前立腺特異的膜抗原等)と結合するか、さもなければそれと結びつくことができる部分を含んでいてもよいナノ粒子が提供される。粒子表面に存在するターゲティング部分は、粒子を、特定のターゲティング・サイト、例えば、腫瘍、疾病サイト、組織、器官、細胞型等に局所化させることを可能にするかもしれない。そのため、ナノ粒子は、「ターゲット特異性」となり得る。薬物又は他のペイロードは、場合によっては、粒子から放出し、特異的ターゲティング・サイトで局所的に相互作用させることを可能にする。
【0056】
特定の実施形態では、薬物又は他のペイロードは、粒子から徐放形式で放出されるかもしれず、局所的に特異的ターゲティング・サイト(例えば、腫瘍)で相互作用を可能にするかもしれない。「徐放」(及びその語の変形)というここで用いられる語(例えば、「徐放性のシステム」の前後関係で)は、通常、選択されたサイトで物質(例えば、薬物)を放出させるか、さもなければ速度、間隔及び/又は量を制御可能とする。徐放は、限定されないが、実質的に連続的に供給、パターン化された供給(例えば、定期的又は不定期的の時間間隔によって中断された時間にわたる断続的な供給)及び選択された物質のボーラス供給(例えば、一定、比較的短時間、例えば、数秒又は数分にわたる物質の断続的な供給)が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、開示のナノ粒子は、低分子量のリガンド(例えば、低分子量のPSMAリガンド)であるターゲティング部分を含む。ここで用いられる用語「結合」又は「結合」は、典型的には、限定されないが、生化学的、物理的及び/又は化学相互作用を含む、特異性又は非特異性の結合又は相互作用のために、その相互の親和性又は結合能を示すそれらの対応する一対の分子又は部分の間の相互作用を指す。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、グリコプロテイン、炭水化物、ホルモン類等を含む一対の分子間で起こる一種の相互作用と定義する。用語「結合パートナー」は、特定の分子と結合することができる分子を指す。「特異的な結合」とは、他の類似の生物学的構成要素に対するよりも実質的に高い程度で、結合パートナー(又は限られた数の結合パートナー)に結合することができるか又はを認識することができる、例えば、ポリヌクレオチドのような分子を指す。一実施形態では、ターゲティング部分は、約1マイクロモル未満の、少なくとも約10マイクロモル又は少なくとも約100マイクロモルの親和性(分離定数によって測定される)を有する。
【0058】
例えば、ターゲティング部分は、使用されたターゲティング部分によって、患者の体内で、腫瘍(例えば、固形腫瘍)、疾病サイト、組織、器官、細胞タイプ等に局所化するために粒子となるかもしれない。例えば、低分子量のPSMAリガンドは、固形腫瘍(例えば、胸又は前立腺腫瘍あるいはガン細胞)に局所化させることができる。対象は、人間又は人間以外の動物とすることができる。対象の例は、犬、猫、馬、ロバ、ウサギ、牛、ブタ、羊、ヤギ、ネズミ、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、人間等の哺乳類を含むが、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、ターゲティング部分は、小さなターゲット前立腺ガン腫瘍であってもよいし、例えば、ターゲット部分は、PSMAペプチド阻害剤であってもよい。これらの部分は、ここでは「低分子量のPSMAリガンド」とも称する。通常の組織における発現と比較する場合、前立腺の特異的膜抗原(PSMA)の発現は悪性の前立腺で少なくとも10倍過剰であり、疾病が転移の段階に進行するに従って、PSMA発現のレベルはさらに上方調節される(Silverら、1997, Clin. Cancer Res., 3:81)。
【0060】
例えば、低分子量PSMAリガンドは、
及び鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーの混合物又はそのラセミ化合物である。特に、ブチルアミン化合物が、ベンゼン環を有さないため、合成しやすいという長所がある。
【0061】
例えば、開示のナノ粒子は、以下で表される複合体を含む。
式中、yは約222であり、zは約114である。
【0062】
例えば、開示のナノ粒子は、以下から選択されたポリマー化合物を含む。
式中、R1は、H及びハロゲンで置換されていてもよいC1〜C20アルキル基からなる群から選択され、
R2は、結合手、エステル結合又はアミド結合、
R3は、C1〜C10アルキレン又は結合手、
xは、50から約1500、例えば、約170から約260、
yは0〜約50、例えば、yは0及び
zは約30から約456又は約30から約200、例えば、zは約80から約130である。
【0063】
治療剤
例えば、治療剤(例えば、抗がん剤)、診断薬(例えば、造影剤、放射性核種、蛍光体、発光体、磁気分子)、予防剤(例えば、ワクチン)及び/又は栄養補助食品(例えば、ビタミン、ミネラルなど)を含む剤が、本発明のナノ粒子の一部を構成する。本発明によって供給される典型的な剤は、限定されないが、小分子(例えば、細胞障害性剤)、核酸(例えば、siRNA、RNAi及びマイクロRNA剤)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン類、金属、放射性元素及び化合物、薬物、ワクチン、免疫学的剤など、及び/又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、供給される剤は、ガン(例えば、前立腺ガン)の治療に有用な剤である。
【0064】
活性剤又は薬物は、mTor抑制剤(例えば、シロリムス、テムシロリムス又はエベロリムス)、ビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン又はビンクリスチン)、ジテルペン誘導体、タキサン(例えば、パクリタキセル又はその誘導体、例えばDHA−パクリタキセル又はPG−パクリタキセル又はドセタキセル)等の治療剤(例えば、化学療法薬)、心血管剤(例えば、利尿剤、血管拡張薬、アンジオテンシン変換酵素、ベータ受容体遮断薬、アルドステロン拮抗剤又は抗凝固剤)、副腎皮質ステロイド、代謝拮抗物質又は葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート)、化学療法剤(例えば、エポティロンB)、アルキル化剤(例えば、ベンダムスチン)とすることができ、活性剤又は薬物は、siRNAとすることができる。
【0065】
ある実施形態では、活性剤又は治療剤は、例えば、開示のナノ粒子の一部を形成する開示のポリマーに結合してもよいし、しなくてもよく、例えば、活性剤は、PLA又はPGLAに結合されていもよいし(例えば、共有結合、例えば直接又は結合部位を介して)、例えばPLA−PEG又はPLGA−PEGのような共重合体のPLA又はPLGA部分に結合されていてもよい。
【0066】
ナノ粒子の製造
この発明の他の側面は開示のナノ粒子製造する方法及びシステムに指向する。いくつかの実施形態では、2以上の異なる比率で異なるポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)を使用し、ポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)から粒子を製造し、粒子の特性が制御される。例えば、1つのポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、低分子量PSMAリガンドを含んでいてもよく、他のポリマー(例えば、共重合体、例えば、ブロック共重合体)は、得られる粒子のその生体適合性及び/又は免疫の制御能のために選択することができる。
【0067】
一実施形態では、粒子は、1以上のポリマーを含む溶液を準備し、溶液をポリマー非溶媒に接触させ、粒子を形成することにより形成される。溶液は、ポリマー非溶媒と混和性かもしれないし、不混和性かもしれない。例えば、アセトニトリルのような水混和液は、ポリマーを含むことができ、アセトニトリルが、水、ポリマー非溶媒と接触するにつれて、例えば、制御された速度でアセトニトリルを水に注ぐことによって、粒子が形成される。溶液中に含まれるポリマーは、ポリマー非溶媒との接触によって、沈殿し、ナノ粒子のような粒子を形成する。
【0068】
2つの液体は、一方が周辺温度及び圧力で少なくとも10重量%のレベルで他に溶解しない場合、互いに他と「不混和」か、混和しないとすることができる。典型的には、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルフルホキシド等)及び水溶液(例えば、水又は溶解された塩又は他の種、細胞又は生物学的媒体、エタノール等を含む水)は、互いに混和しない。例えば、第1の溶液を、第2の溶液(適当な率または速度で)に注ぐことができる。場合によっては、第1の溶液が不混和な第2の液体と接触するにつれて、ナノ粒子のような粒子を形成することができ、例えば、第1の溶液が第2の液体に注がれている間、接触によるポリマーの沈殿が、ポリマーをナノ粒子に形成させ、場合によっては、例えば、導入の速度が慎重に制御され、比較的遅い速度に維持される場合、ナノ粒子を形成することができる。そのような粒子形成の制御は、単調な実験のみを用いて、当業者によって容易に最適化することができる。
【0069】
他の実施形態では、例えば、図1及び2において代表されるプロセスのようなナノエマルジョン・プロセスが提供される。例えば、有機溶媒とともに、治療剤、第1のポリマー(例えば、リガンド(例えば、GL2)に任意に結合することができるPLA−PEG又はPLGA−PEGのいずれかのようなジブロック・コポリマー)及び任意に第2のポリマー(PL(G)A−PEG又はPLA)は第1の有機相を形成する。そのような第1相は、約5から約50重量%の固形分、例えば、約5から40重量%の固形分又は約10〜30重量%の固形分を含んでいてもよい。第1の有機相は第1の水溶液と混合して第2相を形成することができる。有機溶液は、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、イソプロピル・アセテート、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、スパン80等及びそれらを組み合わせて含むことができる。一実施形態では、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル及びその組合せを含むことができる。第2相は、約1〜約50重量%、例えば、約5〜40重量%の固形分とすることができる。水溶液は、水と、任意に1以上のコール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニル及びベンジルアルコールとの混合物とすることができる。
【0070】
例えば、油又は有機相は、非溶媒(水)と部分的にのみ混和できる溶媒を使うことができる。従って、十分な低比率で混合する場合及び/又は有機溶剤で前飽和する水を用いる場合、油相は液体のままである。油相は水溶液に乳化させることができる、液滴として、例えば、高エネルギー分散システム(例えば、ホモジナイザー又はソニケーター)を使用して、ナノ粒子に剪断することができる。エマルジョン(別名「水相」)の水部分は、コール酸ナトリウムからなる界面活性剤溶液とすることができ、酢酸エチル及びベンジルアルコールで前飽和させることができる。
【0071】
エマルジョン相を形成するための第2相を乳状化は、1又は2の乳化ステップにおいて行うことができる。例えば、第1のエマルジョンを準備し、次いで、乳化してきめの細かいエマルジョンを形成する。第1のエマルジョンは、例えば、単純な混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケーター、攪拌バー又はローター固定子ホモジナイザー用いて形成することができる。第1のエマルジョンは、例えば、プローブソニケーター又は高圧ホモジナイザー(例えば、1、2、3以上のホモジナイザーを通す)を用いることにより、きめの細かいエマルジョンに形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーが使われるとき、使われる圧力は約1000〜約8000psi、約2000〜約4000psi、4000〜約8000psi又は約4000〜約5000psi(例えば、約2000、2500、4000又は5000psi)とすることができる。
【0072】
溶媒の蒸発又は希釈が、溶媒の抽出及び粒子の固体化を達成するために必要かもしれない。抽出の動力学及びよりスケーラブルなプロセスのより良好な制御のために、水性クエンチによる溶媒の希釈を用いることができる。例えば、エマルジョンを、冷水に希釈して、有機溶剤の全てを溶解するのに十分な濃度にして、クエンチされた相を形成することができる。クエンチングは、約5℃以下の温度で、少なくとも部分的に実行することができる。例えば、クエンチングに用いられる水は、室温(例えば、約0〜約10℃又は約0〜約5℃)より低温とすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、治療剤(例えば、ドセタキセル)の全てがこの段階で粒子中に封止されないが、薬物可溶化剤をクエンチされた相に添加し、可溶化相が形成される。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム又はコール酸ナトリウムとすることができる。例えば、Tween80を、クエンチされたナノ粒子懸濁液に添加して、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防止することができる。いくつかの実施形態では、薬物可溶化剤:治療剤(例えば、ドセタキセル)の比は、約100:1〜約10:1である。
【0074】
可溶化相をろ過して、ナノ粒子を回収することができる。例えば、限外濾過膜を用いて、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、実質的に有機溶媒、遊離薬物及び他のプロセス補助剤(界面活性剤)を排除することができる。典型的な濾過は、接線フロー濾過システムを使用して実行することができる。例えば、ナノ粒子を保持するために適当な孔サイズを有する膜を用いることにより、溶質、ミセル及び有機溶剤を通している間、ナノ粒子を選択的に分離することができる。約300〜500kDa(〜5−25nm)の分子量カットオフの典型的な膜を用いることができる。
【0075】
透析ろ過(ダイアフィルトレーション、Diafiltration)を、定量アプローチを用いて行うことができ、ろ液を懸濁液から除去するのと同じ速度で、透析ろ液(冷脱イオン水、例えば、約0〜約5℃又は0〜約10℃)を、供給懸濁液に添加してもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、ろ過は、約0〜約5℃又は約0〜約10℃の第1の温度、約20〜約30℃又は約15〜約35℃の第2の温度を用いる第1のろ過を含む。例えば、ろ過は、約0〜約5℃での約1〜約6の透析容量の処理、約20〜約30℃での少なくとも1の透析容量(例えば、約1〜約3又は約1〜2の透析容量)の処理を含むことができる。
【0076】
ナノ粒子懸濁液の精製及び濃縮の後、粒子を1、2以上の殺菌及び/又は、例えば、〜0.2μmの深層プレ・フィルタを用いた深層フィルタに通してもよい。
【0077】
ナノ粒子の製造の他の実施形態では、有機相を治療剤(例えば、ドセタキセル)及びポリマー(ホモポリマー、コポリマー、リガンドとのコポリマー)の混合物から構成してもよい。有機相は、約1:5の比率(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤及びいくらか溶解された溶媒からなる。第1のエマルジョンは、単純な混合で又はローター固定子ホモジナイザーを用いることにより、2相の混合によって形成される。次いで、第1のエマルジョンは、高圧ホモジナイザーを用いることによりきめの細かいエマルジョンに形成される。続いて、きめの細かいエマルジョンは、混合下、脱イオン水への添加によってクエンチされる。クエンチ:エマルジョン比は、約8.5:1である。次いで、Tween(例えば、Tween80)の溶液がクエンチに添加され、全体的に約2%のTweenを得る。これは、遊離、未封止薬物を溶解する役割を果たす。続いて、ナノ粒子を、遠心分離又は限外濾過/透析濾過によって分離する。
【0078】
製剤の製造に用いられるポリマー及び治療剤又は活性剤の量は、最終的な製剤と異なるかもしれないことはいうまでもない。例えば、いくらかの活性剤は、ナノ粒子に完全に取り込まれないことがあり、そのような遊離の治療剤は、例えば、ろ過されるかもしれない。例えば、一実施形態では、約20重量%の活性剤(例えば、ドセタキセル)及び約80重量%のポリマー(例えば、ポリマーは約2.5モル%のPLA−PEG−GL2及び約97.5モル%のPLA−PEGを含むことができる)を製剤の製造において用いることができ、約10重量%の活性剤(例えば、ドセタキセル)及び約90重量%のポリマー(ポリマーが、約1.25モル%のPLA−PEG−GL2及び約98.75モル%のPLA−PEGを含むことができる)からなる最終的なナノ粒子となるかもしれない。そのようなプロセスは、約2〜約20重量%の治療剤(例えば、重量あたり約5、約8、約10、約15%の治療剤)を含む、患者への投与に適する最終的なナノ粒子を提供するかもしれない。
【0079】
凍結乾燥医薬組成物
本発明の別の側面によれば、ここに開示のナノ粒子は、医薬組成物を形成するために、薬理学的に許容できるキャリアと組み合わることができる。当業者には、後述するような投与経路、標的組織の位置、供給薬物、薬物供給の時間的経過等に基づいて、キャリアを選択することができることはいうまでもない。
【0080】
本発明の医薬組成物は、経口及び非経口ルートを含む当該分野で公知のいかなる手段によっても患者に投与することができる。ここで用いられる「患者」という語は、ヒト及び、例えば、哺乳類、鳥、爬虫類、両生類及び魚を含むヒト以外のものを含む。例えば、ヒト以外のものは、哺乳類(例えば、齧歯動物、マウス、ネズミ、ウサギ、猿、犬、猫、霊長類又はブタ)が挙げられる。一実施形態では、それらが消化管にある消化酵素との接触を避けるという点で、非経口ルートが好ましい。そのような実施形態によれば、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈、皮下、筋肉内、腹腔内注射)、直腸、経膣、局所(粉末、クリーム、軟膏又は滴によって)又は吸入(スプレー)によって投与することができる。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、必要に応じて、全身的に、例えば、非経口的にあるいは静脈内点滴又は注射によって患者に投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、例えば、単、二又は多糖類(例えば、蔗糖、トレハロース)のような糖及び/又は塩及び/又はシクロデキストリン溶液がナノ粒子懸濁液に添加された、凍結に適する溶液と開示のナノ粒子とを含む、凍結に適する組成物が意図される。糖(例えば、蔗糖又はトレハロース)は、例えば、粒子が凍結によって凝集することを防止する凍結防止剤の働きをするかもしれない。例えば、複数の開示のナノ粒子、蔗糖、イオン性ハロゲン化物及び水を含むナノ粒子製剤がここに提供され、ナノ粒子/蔗糖/水/イオン性ハロゲン化物は、3〜40%/10〜40%/20〜95%/0.1〜10%(w/w/w/w)又は約5〜10%/10〜15%/80〜90%/l〜10%(w/w/w/w)である。例えば、そのような溶液は、10〜100mMの濃度で、ここに開示のナノ粒子、約5%〜約20重量%の蔗糖及び塩化ナトリウムのようなイオン性ハロゲン化物を含むことができる。他の実施形態では、複数の開示のナノ粒子、トレハロース、シクロデキストリン及び水を含むナノ粒子製剤がここに提供され、ナノ粒子/トレハロース/水/シクロデキストリンは、約3〜40%/1〜25%/20〜95%/1〜25%(w/w/w/w)又は約5〜10%/l〜25%/80〜90%/10〜15%(w/w/w/w)である。例えば、そのような溶液は、ここに開示のナノ粒子、約1%〜約25重量%のトレハロース又は蔗糖(例えば、約5%から約25%のトレハロース又は蔗糖、例えば約l0%トレハロース又は蔗糖、約15%のトレハロース又は蔗糖、例えば、約5%の蔗糖)及びβ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン(約1%〜約25重量%、例えば約5%から約20%、例えば10%又は約20重量%又は約15%〜約20重量%のシクロデキストリン濃度)を含むかもしれない。意図する製剤は、複数の開示のナノ粒子(例えば、PLA−PEG及び活性剤を含むナノ粒子)及び約2重量%から約15重量%(又は約4%〜約6重量%、例えば約5重量%)の蔗糖及び約5重量%〜約20%(例えば約7重量%から約12重量%、例えば約10重量%のHPbCD)を含むことができる。
【0083】
本発明は、一部には、溶解される際、最小限量の大きな凝集体を有する凍結乾燥医薬組成物に関する。そのような大きな凝集体は、約0.5μmより大、約1μmより大又は約10μmより大のサイズを有するかもしれず、溶解された溶液では好ましくない。凝集体のサイズは、米国薬局方の32<788>で示された種々の技術を用いて測定することができる(全趣旨を参照することによりここに取り込む)USP32<788>で概説される試験は、光掩蔽粒子計数試験、顕微鏡粒子計数試験、レーザー回折及び単一粒子光学検出を含む。一実施形態では、あるサンプルの粒子サイズは、レーザー回折及び/又は単一粒子光学検出を用いて測定される。
【0084】
USP32<788>での光掩蔽粒子計数試験は、懸濁液中のサンプリング粒子のためのガイドラインを示す。100mL以下の溶液に対して、≧10μmが1容器あたり6000、≧25μmが1容器あたり600を超えない平均数の粒子が存在する場合に、プレパレーションがこの試験が適用される。
【0085】
USP32<788>で概説されるように、顕微鏡粒子計数試験は、接眼ミクロメーターを有する100±10倍に調整された双眼顕微鏡を用いる粒子数計数のためのガイドラインを示す。接眼ミクロメーターは、100倍拡大で観察される場合、10μm及び25μmを意味する黒い参照円で1/4に分割される円からなる円径グラチクルである。線形スケールは、グラチクル下で与えられる。10μm及び25μmの粒子数は、視覚的に計数される。100mL以下の溶液に対して、≧10μmが1容器あたり3000、≧25μmが1容器あたり300を超えない平均数の粒子が存在する場合に、プレパレーションがこの試験が適用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、溶解で、開示の組成物の10mlの水溶液サンプルは、10ミクロン以上のサイズが1mlあたり600粒子未満及び/又は25ミクロン以上のサイズが1mlあたり60粒子未満で含む。
【0087】
動的光散乱(DLS)は粒径を計数するために用いることができるが、この技術はいくらかのより大きな粒子を検出しないブラウン運動に依存する。レーザー回折は、粒子と懸濁液メディアとの間の屈折率の違いに依存する。この技術は、ミリメートル範囲にミクロン以下で粒子を検出することができる。より大きな粒子の比較的少量(例えば、約1から5重量%)を、ナノ粒子懸濁液で測定することができる。単一粒子光学検出(SPOS)は、希釈懸濁液の光掩蔽を用いて、約0.5μmの個々の粒子を計数する。測定サンプルの粒子濃度を知ることにより、凝集体の重量%又は凝集体の濃度(粒子/ml)を算出することができる。
【0088】
粒子表面の脱水により、凍結乾燥の間、凝集体の形成を生じさせるかもしれない。この脱水は、凍結乾燥の前に、懸濁液において、例えば、二糖類のような凍結乾燥保護剤を用いて防止することができる。適当な二糖類は、蔗糖、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース又はセロビオース及び/又はそれらの混合物が挙げられる。他の意図される二糖類は、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β−トレアロース、α,β−トレハロース、ソホロース、カミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツオース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、ミリビオース、ミキビウオース、ルチノース、ルチヌロース及びキシロビオースが挙げられる。溶解物は、原料懸濁液に比較すると等価なDLSサイズ分布を示す。しかし、レーザー回折は、いくらかの溶解物において>10μmのサイズの粒子が検出されるかもしれない。さらに、SPOSは、FDAガイドライン(>10μm粒子について104〜105粒子/ml)のそれよりも高濃度で>10μmサイズの粒子を検出するかもしれない。
【0089】
本発明は、一部には、糖(例えば、蔗糖、トレハロース又はそれらの混合物)に対して、さらなる凍結乾燥保護剤として、1以上のイオン性ハロゲン化物塩類の使用に関する。糖は、二糖類、単糖類、三糖類及び/又は多糖類を含むことができ、他の賦形剤(例えば、グリセロール及び/又は界面活性剤)を含むことができる。任意に、シクロデキストリンを、さらなる凍結乾燥保護剤として含むことができる。シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩の代わりに加えられてもよい。あるいは、シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩に加えて、加えられてもよい。
【0090】
適当なイオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛又はそれらの混合物が挙げられる。さらなる適当なイオン性ハロゲン化物塩は、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化亜鉛、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化アンモニウム、沃化ナトリウム、沃化カルシウム、沃化亜鉛、沃化カリウム、ヨウ化マグネシウム又はヨウ化アンモニウム及び/又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、約1〜約15重量%の蔗糖を、イオン性ハロゲン化物塩とともに用いてもよい。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含んでいてもよい。他の実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約100〜約500mMの二価イオン塩化物、例えば、塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、凍結乾燥される懸濁液は、シクロデキストリンをさらに含んでいてもよく、例えば、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを用いることができる。
【0091】
適当なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物を含んでいてもよい。ここに開示の組成物における使用のために意図される典型的なシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン(HPbCD)、ヒドロキシエチル−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル・エチル−β−シクロデキストリン、ジエチル-β−シクロデキストリン、トリ−O−アルキル-β-シクロデキストリン、グロコシル−シクロデキストリン及びマルトシル−シクロデキストリンが挙げられる。一実施形態では、約1〜約25重量%のトレハロース(例えば、約10重量%〜約15重量%、例えば、5〜約20重量%)が、シクロデキストリンとともに使用されてもよい。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約1〜約25重量%のβ-シクロデキストリンを含んでいてもよい。典型的な組成物は、PLA−PEG、活性/治療剤、約4%〜約6%の(例えば、約5重量%)の蔗糖及び約8〜約12重量%(例えば、約10重量%)のHPbCDを含むナノ粒子を含有してもよい。
【0092】
一側面において、本発明は、100mL以下の水性媒体中、50mg/mLの濃度のナノ粒子を含有する凍結乾燥医薬組成物の溶解において、非経口投与に適する溶解組成物は、10ミクロン以上のマイクロ粒子を6000以下、例えば、3000以下で及び/又は25ミクロン以上のマイクロ粒子を600以下、例えば、300以下で含有する凍結乾燥医薬組成物を提供する。
【0093】
マイクロ粒子の数は、USP32<788>の光掩蔽粒子計数試験、USP32<788>の顕微鏡粒子計数試験、レーザー回折及び単一粒子光学検出によって測定することができる。
【0094】
ナノ粒子は、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ブロック-ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含んでいてもよい。例えば、共重合体のポリ(乳)酸部分は、約16kDaの重量平均分子量を有することができ、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は、約5kDaの重量平均分子量を有することができる。
【0095】
イオン性ハロゲン化物塩及び/又はシクロデキストリンを含まない溶解組成物と比較して、溶解組成物は、最小限の凝集体を含有することができる。溶解組成物は、0.2未満の多分散インデックスを有していてもよい。
【0096】
一側面では、本発明は、疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子、活性剤、糖及びイオン性ハロゲン化物塩を含有する。溶解において、非経口用途に適する医薬組成物を提供する。その組成物は、さらにシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0097】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。一実施形態では、医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含有していてもよい。他の実施形態では、医薬組成物は、約100〜約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含有していてもよい。
【0098】
一側面では、本発明は、疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子、活性剤、糖及びシクロデキストリンを含有する溶解において、非経口用途に適する医薬組成物を提供する。
【0099】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの混合物を含んでいてもよい。一実施形態では、医薬組成物は、約1〜約25重量%のβ−シクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0100】
例えば、共重合体は、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体とすることができる。溶解において、100mLの水性サンプルは、10ミクロン以上のサイズの粒子を6000未満しか含まず、25ミクロン以上のサイズの粒子を600未満しか含まない。
【0101】
他の側面において、本発明は、以下の工程によって製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤を提供する。
a)疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩をこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する。一実施形態では、シクロデキストリンがこの製剤に含まれる。いくつかの実施形態では、そのような溶解は、2、3分間の簡便な手動の混合によって有利に管理することができる。溶解物の特性(例えば、薬物純度及び放出プロフィール)は、凍結乾燥前の組成物(例えば、懸濁剤)から実質的に不変かもしれない。
【0102】
さらに他の側面において、本発明は、以下の工程によって製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤を提供する。
a)各々疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する。一実施形態では、シクロデキストリンがこの製剤に含まれる。いくつかの実施形態では、そのような溶解は、2、3分間の簡便な手動の混合によって有利に管理することができる。溶解物の特性(例えば、薬物純度及び放出プロフィール)は、凍結乾燥前の組成物(例えば、懸濁剤)から実質的に不変かもしれない。
【0103】
凍結乾燥組成物は、治療用粒子を約40mg/mLより高い濃度で有していてもよい。非経口投与に適した製剤は、10mLの用量において、10ミクロンより大きなサイズを有する粒子を約600未満で有していてもよい。
【0104】
二糖類及びイオン・ハロゲン化物塩を加えるステップは、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%のトレハロース(例えば、約10〜約20重量%のトレハロース)及び約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化物塩を加えることを含んでいてもよい。イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛又はそれらの混合物から選択することができる。一実施形態では、さらに、約1〜約25重量%のシクロデキストリンを加えてもよい。
【0105】
一実施形態では、二糖類とシクロデキストリンを加えるステップは、約5〜約15重量%の蔗糖又は約5〜約20重量%のトレハロース(例えば、約10〜約20重量%のトレハロース)及び約1〜約25重量%のシクロデキストリンを加えることを含んでいてもよい。一実施形態では、約10〜約15重量%のシクロデキストリンが加えられる。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン又はそれらの混合物から選択することができる。
【0106】
凍結乾燥するステップは、約−40℃を超える温度又は、例えば、約−30℃未満の温度で組成物を凍結し、凍結組成物を形成し、凍結組成物を乾燥して凍結乾燥組成物を形成することを含んでいてもよい。乾燥ステップは、約−25〜約−34℃の温度又は約−30から約−34℃の温度にて、50mTorrで行うことができる。
【0107】
他の側面では、本発明は、溶解において、ナノ粒子の凝集を防止するために、糖及び塩を凍結乾燥製剤に加えることを含む医薬粒子組成物における実質的な粒子の凝集を防止する方法を提供する。一実施形態では、シクロデキストリンが、凍結乾燥製剤に加えられる。さらに他の実施形態では、本発明は、溶解において、ナノ粒子の凝集を防止するために、糖及びシクロデキストリンを凍結乾燥製剤に加えることを含む医薬ナノ粒子組成物における実質的な粒子の凝集を防止する方法を提供する。
【0108】
実施例
一般的に示す本発明は、以下の実施例を参照することにより、より理解しやすくなるであろうが、これらの実施例は、単に例示の目的で含まれるものであり、これらに限定されるものではない。
【0109】
実施例1:PLA-PEGの製造
以下に示すように、合成は、マクロ開始剤であるα−ヒドロキシ−コ−メトキシポリ(エチレングリコール)でのd,l−ラクチドの開環重合を、触媒として2−エチルヘキサン酸錫(II)を用いて高温で行うことにより行われる(PEG Mn:〜5,000Da、PLA Mn:〜16,000Da、PEG−PLA Mn:〜21,000Da)。
【0110】
ポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサン及びジエチルエーテルの混合物中で沈殿させることによりポリマーを精製する。この工程で回収されたポリマーを、オーブン中で乾燥する。
【0111】
実施例2:典型的なナノ粒子の製造−エマルジョン・プロセス
有機相を、ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマ、コポリマー及びリガンドとも共重合体)の混合物から構成するように形成する。有機相は、約1:2(油相:水相)の比率で水相と混合し、水相が界面活性剤(0.25%のナトリウム・コール酸塩)と多少溶解した溶媒(4%の酢酸エチル、2%のベンジルアルコール)から構成される。高い薬物充填を達成するために、有機相中約30%の固形分を用いる。
【0112】
第1の粗エマルジョンを、単純な混合又はローター固定子ホモジナイザーを用いることにより、2相の組合せによって形成する。ローター/固定子は均一な乳状の溶液を与え、一方、攪拌バーは視認できる大きなきめの粗いエマルジョンを生成する。攪拌バー法は、供給容器の側面に付着した著しい油相滴をもたらすことが観察され、粗エマルジョン・サイズは、品質にきわめて重大なプロセス・パラメータである一方、歩留まりの低下又は相分離を防止するために、適度に微細でなければならないことが示唆される。従って、高速ミキサーがより大きいスケールに適するかもしれないが、ローター固定子が粗エマルジョン形成の標準的な方法として用いる。
【0113】
次いで、第1のエマルジョンを、高圧ホモジナイザーを用いることによりきめの細かいエマルジョンに形成する。粗エマルジョンのサイズは、ホモジナイザーを通る連続したパス(103)後の粒径に顕著な影響を及ぼさない。
【0114】
2,3回のパスの後、粒径は顕著に低減せず、連続したパスは、粒径の増大を引き起こすこともある。有機相は、標準的な水相とともに、5:1(O:W)で乳化され、複数の慎重なパスを実行し、各々のパス後のエマルジョンの一部をクエンチングする。示されたスケールは、製剤の全固形分を表す。
【0115】
粒子のスケールの作用は、スケール依存を示す。その傾向は、2〜10gのバッチ・サイズ範囲では、より大きなバッチがより小さな粒子を生成する。このスケール依存性は、10gより大きいスケール・バッチを考慮すると消失することが証明された。油相中に用いられた固形分の量は、約30%である。
【0116】
表Aは、エマルション・プロセスのパラメータを要約する。
【表A】
【0117】
次いで、きめの細かいエマルジョンを、混合下、所定の温度で脱イオン水へ添加することによってクエンチする。クエンチ単位操作において、エマルジョンを、攪拌下冷水クエンチに添加する。これは、大量の油相溶媒のを抽出するのに役立ち、後のろ過のために効果的にナノ粒子を硬くする。クエンチのチリングは、薬物の封入を著しく改善する。クエンチ:エマルジョンの比は、約5:1である。
【0118】
Tween80の35%(重量%)の溶液を、クエンチに添加し、全体としてTween80約4%を達成する。エマルジョンをクエンチした後、Tween80の溶液を添加し、それは、薬物可溶化剤として機能し、ろ過中の封止されていない薬物の効果的な除去を可能にする。表Bは、各クエンチプロセス・パラメータを示す。
表B:クエンチ・プロセスのパラメータの要約
【表B】
【0119】
温度は、粒子のTgより下に維持するために、十分に希釈した懸濁剤(溶媒の十分低濃度)で、十分に冷たいままでなければならない。Q:E比が十分高くなければ、より高い濃度の溶媒が粒子を可塑化し、薬物もれをもたらす。これに対して、より低温度であれば、低いQ:E比(〜3:1)で高い薬物封止を可能にし、より効率的にプロセスを実行することが可能となる。
【0120】
次いで、ナノ粒子を、接線流ろ過プロセスによって分離し、名の粒子懸濁液を濃縮し、溶媒、遊離薬物及び薬物可溶化剤をクエンチング溶液から水への交換をやわらげる。再生セルロース膜を、300の分子量のカットオフ(MWCO)に用いる。
【0121】
定量透析ろ過(DF)を、クエンチ溶媒遊離薬物及びTween80を除去するために行う。定量DFを行うために、ろ液と除去する速度と同じ速度で、緩衝液を保留容器に添加する。TFF操作のプロセスパラメーターを表Cに要約する。この流れは、膜透過を汚染し得る分子を一掃するための力を与え、ろ過流を制限する。膜内外圧力は、膜に浸透性分子を通す力である。
【表C】
【0122】
続いて、ろ過したナノ粒子スラリーを、ワークアップの間、高温での熱サイクルに付す。カプセル化された薬物の小さな部分(一般的に5−10%)は、25℃でのその第1の暴露後、非常に迅速にナノ粒子から放出される。この現象のため、全ワークアップの間、冷たく保持されたバッチは、遊離薬物又は供給の間の薬物結晶形成又は未凍結保存のいずれかの部分に影響を受けやすい。精密検査の間、ナノ粒子スラリーを高熱にさらすことによって、この『弱く封止された』薬物を除去することができ、薬物充填におけるわずかな減少の代価で、製品安定性を改善することができる。表Dは、25℃プロセスの2つの例を要約する。大部分の封止された薬物を失うことなく、それを25℃にさらすために、製品が〜2−4の透析容量の後で十分に安定であることを、他の実験は示した。5つの透析容量を、25℃の処理前に冷却処理のために用いた。
【表D】
1 25℃のワークアップのサブロットを、種々の期間、少なくとも5透析容量で25℃に暴露した。25℃暴露した複数のサブロットがあったため、範囲を示した。
2 安定性のデータは、スラリーにおける結晶形成(顕微鏡検査によって視認)の前に、25℃で、10〜50mg/mlのナノ粒子濃度で最終製品を維持した時間を意味する。
3 インビトロバーストは、薬物が最初の時点(基本的にすぐに)で放出された薬物を示す。
【0123】
ろ過プロセスの後、ナノ粒子懸濁液を、殺菌するグレードのフィルタ(0.2μmの絶対値)に通す。プレフィルタを、プロセスのための合理的な濾過面積/時間を使うために用いて殺菌するグレードのフィルタを保護する。値を表Eに要約する。
【表E】
【0124】
プレフィルタは、Pall SUPRAcap又はStaxフィルターカートリッジ中の深層ろ過メディアを有する。0.2m2ろ過表面積/kgの深層フィルタ用粒子及び1.3m2ろ過表面積/kgの殺菌グレードのフィルタ用粒子を用いることができる。
【0125】
実施例3:糖及び塩による凍結乾燥組成物
図3で示すように、>40mg/mLのナノ粒子濃度のナノ粒子懸濁液(実施例として形成されたナノ粒子、ポリマーとして16/5のPLA−PEGで)を、10%の蔗糖及び添加剤:NaCl、CaCl2又はPBSの存在下で凍結乾燥する。この実験は、マイクロ凝集なしに溶解しることができる、高い(>40mg/ml)ナノ粒子濃度で、ナノ粒子懸濁液を処方する。3つの全てのCaCl2製剤は、崩壊した凍結乾燥品を生成した、中濃度(150mM)及び高濃度(200mM)の濃度範囲であっても、<100粒子/ml(10μ+)で溶解ケーキを生成する。
【0126】
低濃度の塩は、塩が存在しないものと同様の挙動を示す。高濃度の塩は、一般に、非常に高い粒子濃度を示す。
【0127】
実施例4:糖及び塩及び/又はシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、蔗糖又はトレハロース)、塩(例えば、NaCl又はCaCl2)及び/又はシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン:HPbCD)の存在下で凍結乾燥する。例えば、製剤は250mM又は500mMのNaCl又はCaCl2及び/又は15%、20%又は25重量%の蔗糖又はトレハロース(例えば、20重量%のトレハロース、500mMのCaCl2、5%のHPbCd)で製造される。代表的な製剤を、表Fに示す。
【0128】
表Fは、AccuSizerによって計数され、サイズ化された粒子を示し、製剤の中に存在した凝集体を見つけるために、粒子数の大きなサイズを計数した。表Fは、凍結乾燥ケーキに蒸留水を用いて溶解した溶液の後の粒子数を示す。表Fでは、F/Tサンプルは、乾燥がないだけの凍結及び解凍であり、一方、1〜4ならびにトールバイアル1及び2は、凍結乾燥サンプルである。15%のトレハロースを有するCaCl2 500mM以外の大部分の製剤は、わずかの数の粒子凝集を示し、続く試験を、製剤の最適化のために行った。
【0129】
【表F】
【0130】
実施例5:糖及び/又は塩及び/又はシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、トレハロース)、シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピルβシクロデキストリン:HPbCD)及び/又は塩(例えば、CaCl2)の存在下で、凍結乾燥する。Design of Experiment(DOE)を用いた製剤をスクリーンするための賦形剤及びレベルを以下の表Gに示す。トールバイアルを、5mLのフル容量にて、全製剤で用いる(n=5〜6バイアル/製剤)。第1の乾燥を−37℃の棚温度で行う。
【表G】
【0131】
凍結乾燥製剤の外観及びそれらの溶解特性を以下の表Hに示す。試験された製剤の全てにおいて、製剤の外観は少なくとも部分的な溶解であった。
【表H】
【0132】
サイクル・データ及び凍結乾燥プロセス・パラメータ(棚温度、製品温度、チャンバ圧及び時間)を図4に示す。製品の充填中、製品が除去されるまで、凍結乾燥機棚に最初に置かれた時から、これらのプロセス・パラメータをコントロールする。それぞれのチャートに反映された条件は、HPbCD濃度をスクリーンするために各凍結乾燥ランの1つに対するプロセスパラメータを示す。
【0133】
種々の凍結乾燥製剤での粒子サイズを、動的光散乱(DLS)で測定し、図5に示す。試験された製剤のすべてにおいて、ナノ粒子サイズは、凍結前サンプルに比較して凍結/解凍及び凍結乾燥後に増加した。
【0134】
種々の製剤における10μmより大のマイクロ粒子の数を、顕微鏡粒子計数試験によって測定し、図6に示した。一般に、シクロデキストリンのより高い濃度を含む製剤は、より良好な粒子計数を示す。
【0135】
実施例5:糖及びシクロデキストリンによる凍結乾燥組成物
ナノ粒子懸濁液を、糖(例えば、トレハロース又は蔗糖)及びシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン:HPbCD)の存在下で凍結乾燥する。試験した製剤を表Hに示す。トールバイアルを、5mLのフル容量にて、全製剤で用いる(n=10バイアル/製剤)。
【表H】
【0136】
凍結乾燥製剤の外観とそれらの溶解特性を表Iに示す。トレハロース及びシクロデキストリンの濃度を増大させると、悪い溶解特性を示すようである。全ての試験された製剤において、DLSサイズは、凍結/解凍後に増大したが、凍結乾燥後は減少した。
【表I】
【0137】
サイクル・データを図7に示す。種々の凍結乾燥製剤の粒子サイズを動的光散乱(DLS)で測定し、図8に示す。
【0138】
種々の製剤における10μmより大の、1mlあたりのマイクロ粒子の数を、図9に示すように、顕微鏡粒子計数試験で測定する。試験されほとんどすべての製剤は、USP32<788>の限界より下回わる。種々の製剤における1μmより大の、1mlあたりのマイクロ粒子の数を、図10及び図11に示す。大部分の製剤において、凍結前サンプル、凍結解凍サンプルに比較して、凍結乾燥サンプルで、1μmより大のマイクロ粒子の数が増加する。
【0139】
糖及びシクロデキストリンの存在下で凍結乾燥したドセタキセルのナノ粒子において、インビトロ放出試験を行う。その結果を図12に示す。
【0140】
示差走査熱量測定を、図13〜16に示したように、種々のナノ粒子製剤で行う。
【0141】
等価物
当業者であれば、単なる慣例の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解されるであろう、あるいは確かめることができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0142】
参照による援用
本明細書に記載のすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100mL以下の水性媒体での凍結乾燥医薬組成物の溶解において、非経口投与に適した溶解組成物が、
10ミクロン以上の微粒子を6000未満及び
25ミクロン以上の微粒子を600未満含有するポリマーナノ粒子を含有する凍結乾燥医薬組成物。
【請求項2】
溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を3000未満及び25ミクロン以上の微粒子をが300未満含有する請求項1の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項3】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた光掩蔽粒子計数試験によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項4】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた顕微鏡粒子計数試験によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項5】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた単一粒子光学検出によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項6】
ナノ粒子は、ポリ(乳酸)ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含む請求項1〜6のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項7】
溶解組成物は、約10〜100mg/mLのナノ粒子濃度を有する請求項1〜6のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項8】
共重合体のポリ(乳酸)部分は、約16kDaの重量平均分子量を有しており、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は約5kDaの重量平均分子量を有している請求項6又は7の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項9】
ナノ粒子は治療剤を含む請求項1〜8のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項10】
治療剤はドセタキセルである請求項9の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項11】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、糖とイオン性ハロゲン化物塩を含む請求項1〜10のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項12】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、二糖類とイオン性ハロゲン化物塩を含む請求項1〜11のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項13】
さらに、シクロデキストリンを含む請求項12の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項14】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、二糖類及びシクロデキストリンを含む請求項1〜10のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項15】
二糖類は、蔗糖又はトレハロースあるいはそれらの混合物である請求項12〜14のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項16】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛ならびにそれらの混合物から選択される請求項11〜15のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項17】
シクロデキキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物からなる群から選択される請求項13〜16のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項18】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1〜約15重量%の蔗糖を含む請求項15〜17のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項19】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1〜約15重量%のトレハロースを含む請求項14〜16のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項20】
凍結乾燥医薬品組成物は、約10から約100mMの塩化ナトリウムを含む請求項12〜19のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項21】
凍結乾燥された医薬品組成物は、約100から約500mMの二価のイオン性塩化物塩を含む請求項12〜19のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項22】
凍結乾燥医薬品組成物は、約100から約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含む請求項21の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項23】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1から約25重量%のβ―シクロデキストリンを含む請求項14〜21のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項24】
溶解組成物は、イオン性ハロゲン化物塩を含有しない溶解組成物に比較して最小限の凝集体しか含有しない請求項14〜23のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項25】
溶解組成物は、シクロデキストリンを含有しない溶解組成物に比較して最小限の凝集体しか含有しない請求項14〜23のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項26】
溶解組成物は、0.2未満のポリ分散インデックスを有する請求項1〜25のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項27】
ナノ粒子は約40〜60mg/mlの濃度を有する請求項1〜26のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項28】
溶解して非経口用途に適する医薬組成物であって、
複数の治療用粒子を含み、各粒子は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含むコポリマーと、活性剤と、糖と、イオン性ハロゲン化物塩とを含有する医薬組成物。
【請求項29】
さらにシクロデキストリンを含む請求項28の医薬組成物。
【請求項30】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項28又は29の医薬組成物。
【請求項31】
約10から約100mMの塩化ナトリウムを含む請求項30の医薬組成物。
【請求項32】
約100から約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含む請求項30の医薬組成物。
【請求項33】
溶解して非経口用途に適する医薬組成物であって、
複数の治療用粒子を含み、各粒子は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含むコポリマーと、活性剤と、糖と、シクロデキストリンとを含有する医薬組成物。
【請求項34】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物から選択される請求項33の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物は、約1から約25重量%のβ―シクロデキストリンを含む請求項34の医薬組成物。
【請求項36】
コポリマーは、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールである請求項28〜35のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項37】
溶解において、100mlの水性サンプルが、10ミクロン以上の微粒子を6000未満で、25ミクロン以上の微粒子を600未満で含む請求項28〜36のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項38】
溶解において、100mlの水性サンプルは、10ミクロン以上の微粒子を600未満で、25ミクロン以上の微粒子が60未満で含む請求項28〜36のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項39】
溶解して、ナノ粒子は、約40〜60mg/mLの濃度を有する請求項37又は38の医薬組成物。
【請求項40】
a)疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及び任意にシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程を含んで製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤。
【請求項41】
a)疎水性ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程を含んで製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤。
【請求項42】
凍結乾燥組成物が約40mg/mlより高濃度の治療用粒子を有する請求項40又は41の製剤。
【請求項43】
非経口投与に適する製剤が、10ml用量中、10ミクロンより大きなサイズの粒子を600個未満で含有する請求項40〜42のいずれか1つの製剤。
【請求項44】
二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩の添加が、
約5〜15重量%の蔗糖又は約10〜20重量%のトレハロースと、約10〜500mMのイオン性ハロゲン化物塩の添加を含む請求項40〜43のいずれか1つの製剤。
【請求項45】
二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及びシクロデキストリンの添加が、
約5〜15重量%の蔗糖と、約5〜20重量%のトレハロースと、約10〜500mMのイオン性ハロゲン化物塩と、約1〜25重量%のシクロデキストリンの添加を含む請求項40、42又は43の製剤。
【請求項46】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項40、41又は45の製剤。
【請求項47】
二糖類及びシクロデキストリンの添加が、
約5〜15重量%の蔗糖又は約10〜20重量%のトレハロースと、約1〜25重量%のシクロデキストリンの添加を含む請求項40、41又は45の製剤。
【請求項48】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物からなる群から選択される請求項45〜47のいずれか1つの製剤。
【請求項49】
凍結乾燥は、約−30℃未満の温度で組成物を凍結し、
凍結組成物を形成し、及び
凍結組成物を乾燥して凍結乾燥組成物を形成する薬理的に許容される製剤。
【請求項50】
乾燥を、約−30℃から−40℃のプロダクト温度で約50mTorrで行う請求項49の製剤。
【請求項51】
糖及び塩を、ナノ粒子を含有する凍結乾燥製剤に添加し、
凍結乾燥製剤を溶解し、溶解組成物は実質的にナノ粒子の凝集体を含まないことを含む溶解医薬ナノ粒子組成物における粒子の凝集を実質的に防止する方法。
【請求項52】
さらにシクロデキストリンの添加を含む請求項51の方法。
【請求項53】
糖及びシクロデキストリンを、ナノ粒子を含有する凍結乾燥製剤に添加し、
凍結乾燥製剤を溶解し、溶解組成物は実質的にナノ粒子の凝集体を含まないことを含む溶解医薬ナノ粒子組成物における粒子の凝集を実質的に防止する方法。
【請求項1】
約100mL以下の水性媒体での凍結乾燥医薬組成物の溶解において、非経口投与に適した溶解組成物が、
10ミクロン以上の微粒子を6000未満及び
25ミクロン以上の微粒子を600未満含有するポリマーナノ粒子を含有する凍結乾燥医薬組成物。
【請求項2】
溶解組成物は、10ミクロン以上の微粒子を3000未満及び25ミクロン以上の微粒子をが300未満含有する請求項1の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項3】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた光掩蔽粒子計数試験によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項4】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた顕微鏡粒子計数試験によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項5】
微粒子の数は、USP32<788>に準じた単一粒子光学検出によって測定される請求項1又は2の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項6】
ナノ粒子は、ポリ(乳酸)ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体又はポリ(乳酸)−コ−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコール共重合体を含む請求項1〜6のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項7】
溶解組成物は、約10〜100mg/mLのナノ粒子濃度を有する請求項1〜6のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項8】
共重合体のポリ(乳酸)部分は、約16kDaの重量平均分子量を有しており、共重合体のポリ(エチレン)グリコール部分は約5kDaの重量平均分子量を有している請求項6又は7の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項9】
ナノ粒子は治療剤を含む請求項1〜8のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項10】
治療剤はドセタキセルである請求項9の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項11】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、糖とイオン性ハロゲン化物塩を含む請求項1〜10のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項12】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、二糖類とイオン性ハロゲン化物塩を含む請求項1〜11のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項13】
さらに、シクロデキストリンを含む請求項12の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項14】
凍結乾燥医薬品組成物は、さらに、二糖類及びシクロデキストリンを含む請求項1〜10のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項15】
二糖類は、蔗糖又はトレハロースあるいはそれらの混合物である請求項12〜14のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項16】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛ならびにそれらの混合物から選択される請求項11〜15のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項17】
シクロデキキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物からなる群から選択される請求項13〜16のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項18】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1〜約15重量%の蔗糖を含む請求項15〜17のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項19】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1〜約15重量%のトレハロースを含む請求項14〜16のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項20】
凍結乾燥医薬品組成物は、約10から約100mMの塩化ナトリウムを含む請求項12〜19のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項21】
凍結乾燥された医薬品組成物は、約100から約500mMの二価のイオン性塩化物塩を含む請求項12〜19のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項22】
凍結乾燥医薬品組成物は、約100から約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含む請求項21の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項23】
凍結乾燥医薬品組成物は、約1から約25重量%のβ―シクロデキストリンを含む請求項14〜21のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項24】
溶解組成物は、イオン性ハロゲン化物塩を含有しない溶解組成物に比較して最小限の凝集体しか含有しない請求項14〜23のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項25】
溶解組成物は、シクロデキストリンを含有しない溶解組成物に比較して最小限の凝集体しか含有しない請求項14〜23のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項26】
溶解組成物は、0.2未満のポリ分散インデックスを有する請求項1〜25のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項27】
ナノ粒子は約40〜60mg/mlの濃度を有する請求項1〜26のいずれか1つの凍結乾燥医薬組成物。
【請求項28】
溶解して非経口用途に適する医薬組成物であって、
複数の治療用粒子を含み、各粒子は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含むコポリマーと、活性剤と、糖と、イオン性ハロゲン化物塩とを含有する医薬組成物。
【請求項29】
さらにシクロデキストリンを含む請求項28の医薬組成物。
【請求項30】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項28又は29の医薬組成物。
【請求項31】
約10から約100mMの塩化ナトリウムを含む請求項30の医薬組成物。
【請求項32】
約100から約500mMの塩化カルシウム又は塩化亜鉛を含む請求項30の医薬組成物。
【請求項33】
溶解して非経口用途に適する医薬組成物であって、
複数の治療用粒子を含み、各粒子は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含むコポリマーと、活性剤と、糖と、シクロデキストリンとを含有する医薬組成物。
【請求項34】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物から選択される請求項33の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物は、約1から約25重量%のβ―シクロデキストリンを含む請求項34の医薬組成物。
【請求項36】
コポリマーは、ポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールである請求項28〜35のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項37】
溶解において、100mlの水性サンプルが、10ミクロン以上の微粒子を6000未満で、25ミクロン以上の微粒子を600未満で含む請求項28〜36のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項38】
溶解において、100mlの水性サンプルは、10ミクロン以上の微粒子を600未満で、25ミクロン以上の微粒子が60未満で含む請求項28〜36のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項39】
溶解して、ナノ粒子は、約40〜60mg/mLの濃度を有する請求項37又は38の医薬組成物。
【請求項40】
a)疎水ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及び任意にシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程を含んで製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤。
【請求項41】
a)疎水性ポリマー部分と親水性ポリマー部分とを有する共重合体を各々含有する複数の治療用粒子と、活性剤とを含む組成物を準備し、
b)二糖類及びシクロデキストリンをこの組成物に添加し、
c)組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を形成し、
d)凍結乾燥組成物を溶解して非経口投与に適する製剤を形成する工程を含んで製造される非経口投与用の薬理学的に許容される製剤。
【請求項42】
凍結乾燥組成物が約40mg/mlより高濃度の治療用粒子を有する請求項40又は41の製剤。
【請求項43】
非経口投与に適する製剤が、10ml用量中、10ミクロンより大きなサイズの粒子を600個未満で含有する請求項40〜42のいずれか1つの製剤。
【請求項44】
二糖類及びイオン性ハロゲン化物塩の添加が、
約5〜15重量%の蔗糖又は約10〜20重量%のトレハロースと、約10〜500mMのイオン性ハロゲン化物塩の添加を含む請求項40〜43のいずれか1つの製剤。
【請求項45】
二糖類、イオン性ハロゲン化物塩及びシクロデキストリンの添加が、
約5〜15重量%の蔗糖と、約5〜20重量%のトレハロースと、約10〜500mMのイオン性ハロゲン化物塩と、約1〜25重量%のシクロデキストリンの添加を含む請求項40、42又は43の製剤。
【請求項46】
イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化亜鉛あるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項40、41又は45の製剤。
【請求項47】
二糖類及びシクロデキストリンの添加が、
約5〜15重量%の蔗糖又は約10〜20重量%のトレハロースと、約1〜25重量%のシクロデキストリンの添加を含む請求項40、41又は45の製剤。
【請求項48】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はこれらの混合物からなる群から選択される請求項45〜47のいずれか1つの製剤。
【請求項49】
凍結乾燥は、約−30℃未満の温度で組成物を凍結し、
凍結組成物を形成し、及び
凍結組成物を乾燥して凍結乾燥組成物を形成する薬理的に許容される製剤。
【請求項50】
乾燥を、約−30℃から−40℃のプロダクト温度で約50mTorrで行う請求項49の製剤。
【請求項51】
糖及び塩を、ナノ粒子を含有する凍結乾燥製剤に添加し、
凍結乾燥製剤を溶解し、溶解組成物は実質的にナノ粒子の凝集体を含まないことを含む溶解医薬ナノ粒子組成物における粒子の凝集を実質的に防止する方法。
【請求項52】
さらにシクロデキストリンの添加を含む請求項51の方法。
【請求項53】
糖及びシクロデキストリンを、ナノ粒子を含有する凍結乾燥製剤に添加し、
凍結乾燥製剤を溶解し、溶解組成物は実質的にナノ粒子の凝集体を含まないことを含む溶解医薬ナノ粒子組成物における粒子の凝集を実質的に防止する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−513616(P2013−513616A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543308(P2012−543308)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059879
【国際公開番号】WO2011/072218
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059879
【国際公開番号】WO2011/072218
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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